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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182316
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G03G15/20 535
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095848
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】明石 亮太
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033AA29
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA25
2H033BB02
2H033BB12
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB28
2H033BB30
2H033BB35
(57)【要約】
【課題】加熱部材の耐久性を向上することを目的とする。
【解決手段】定着装置10は、円筒状の定着ローラ11(定着部材)と、定着ローラ11の内側に配置されたヒータ13(加熱部材)と、定着ローラ11に対向するように配置された加圧ローラ12(加圧部材)と、ヒータ13の端部13aに係合可能に設けられたヒータホルダ37(第1の係合部材)と、ヒータ13とヒータホルダ37との間に設けられた円錐ばね38(第1の弾性部材)とを備える。定着ローラ11および加圧ローラ12は、ニップ状態とリリース状態との間で切り替え可能である。ニップ状態では、ヒータ13の端部13aとヒータホルダ37とが係合し、ヒータ13の端部13aがヒータホルダ37によって支持される。リリース状態では、ヒータ13とヒータホルダ37との係合が解除され、ヒータ13の端部13aが円錐ばね38によって支持される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在する円筒状の定着部材と、
前記定着部材の内側に配置された加熱部材と、
前記定着部材に対向するように配置された加圧部材と、
前記加熱部材の前記第1の方向における一端部に係合可能に設けられた第1の係合部材と、
前記加熱部材と前記第1の係合部材との間に設けられた第1の弾性部材と
を備え、
前記定着部材および前記加圧部材は、互いに当接するニップ状態と、互いに離間するリリース状態との間で切り替え可能であり、
前記定着部材と前記加圧部材とが前記ニップ状態にあるときには、前記加熱部材の前記一端部と前記第1の係合部材とが係合し、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の係合部材によって支持され、
前記定着部材と前記加圧部材とが前記リリース状態にあるときには、前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合が解除され、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の弾性部材によって支持される
定着装置。
【請求項2】
前記ニップ状態から前記リリース状態への移行時に、前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合が解除され、
前記リリース状態から前記ニップ状態への移行時に、前記加熱部材と前記第1の係合部材とが係合する
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記加熱部材の前記第1の方向における他端部の側に、第2の弾性部材が配置され、
前記第1の弾性部材の弾性力が、前記第2の弾性部材の弾性力よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱部材の前記他端部に係合可能な第2の係合部材をさらに備え、
前記第2の弾性部材は、前記加熱部材と前記第2の係合部材との間に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱部材の前記一端部の側に、前記第1の方向に移動可能な可動板が設けられ、
前記第1の係合部材は、前記可動板に設けられ、
前記可動板の移動によって、前記第1の係合部材が前記加熱部材と係合し、またその係合が解除される
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記定着部材と前記加圧部材とを前記ニップ状態と前記リリース状態との間で切り替えを行う離接機構と、
前記離接機構に含まれるギアの回転を、前記可動板の前記第1の方向の移動に変換する駆動部材と
をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記駆動部材は、前記可動板を前記第1の方向に付勢する突出部を有し、
前記可動板は、前記駆動部材の回転位置に応じて前記突出部が挿入される穴部を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記第1の弾性部材は、前記可動板と前記加熱部材の両方に接触している
ことを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項9】
前記第1の係合部材は、前記加熱部材の前記一端部に係合する係合穴を有し、
前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合時には、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の係合部材の前記係合穴に係合し、
前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合の解除時には、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の係合部材の前記係合穴から抜け出す
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項10】
前記係合穴を介して、前記加熱部材に接続されるリード線が外部に引き出されている
ことを特徴とする請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
媒体を供給する媒体供給部と、
前記媒体に画像を形成する画像形成ユニットと、
前記画像を前記媒体に定着する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の定着装置と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、現像剤像を媒体に定着させる定着装置、および定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを利用した画像形成装置は、現像剤像を媒体に定着する定着装置を備える。定着装置は、現像剤像を加熱するための熱源である加熱部材を有する。
【0003】
従来より、加熱部材の破損を防止するため、加熱部材を支持する支持部材と、加熱部材の端部との間に弾性部材を配置することが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-26375号公報(要約参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の定着装置では加熱部材の耐久性が十分ではなく、加熱部材の耐久性のさらなる向上が望まれている。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、加熱部材の耐久性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の定着装置は、第1の方向に延在する円筒状の定着部材と、定着部材の内側に配置された加熱部材と、定着部材に対向するように配置された加圧部材と、加熱部材の第1の方向における一端部に係合可能に設けられた第1の係合部材と、加熱部材と第1の係合部材との間に設けられた第1の弾性部材とを備える。定着部材および加圧部材は、互いに当接するニップ状態と、互いに離間するリリース状態との間で切り替え可能である。定着部材と加圧部材とがニップ状態にあるときには、加熱部材の一端部と第1の係合部材とが係合し、加熱部材の一端部が第1の係合部材によって支持される。定着部材と加圧部材とがリリース状態にあるときには、加熱部材と第1の係合部材との係合が解除され、加熱部材の一端部が第1の弾性部材によって支持される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ニップ状態では加熱部材が第1の係合部材によって支持されるため、加熱部材を位置決めすることができる。また、リリース状態では、加熱部材が第1の弾性部材によって支持されるため、落下等による衝撃を第1の弾性部材で吸収し、加熱部材の破損を防止することができる。これにより、加熱部材の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態の画像形成装置の基本構成を示す図である。
図2】実施の形態の定着装置の外観を示す斜視図である。
図3】実施の形態の定着装置の内部構成を示す斜視図である。
図4】実施の形態の定着ローラおよびヒータを示す断面図(A)、並びに加圧ローラを示す断面図(B)である。
図5】実施の形態の定着ローラ、ヒータおよび加圧ローラを示す斜視図である。
図6】実施の形態のヒータ端部の支持機構を示す斜視図である。
図7】実施の形態のヒータ端部の支持機構を示す分解斜視図である。
図8】実施の形態のヒータ端部の支持機構を示す斜視図(A)および側面図(B)である。
図9】実施の形態のヒータ端部の支持状態の切り替えを示す側面図(A),(B)である。
図10】実施の形態のヒータ端部の支持状態の切り替えを示す拡大図(A),(B)である。
図11】実施の形態のヒータ両端の支持構造を示す図である。
図12】実施の形態1の離接機構の基本構成を示す図である。
図13】実施の形態1の離接機構の駆動部を示す斜視図である。
図14】実施の形態1の離接機構の動作を示す図(A),(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<画像形成装置>
まず、実施の形態の画像形成装置1について説明する。図1は、画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、電子写真プロセスを利用して画像を形成するプリンタである。
【0011】
画像形成装置1は、印刷用紙等の媒体Pを供給する媒体供給部60と、媒体Pに画像を形成する画像形成ユニット50と、媒体Pに画像を定着する定着装置10と、媒体Pを排出する媒体排出部70とを備える。これらの構成要素は、ハウジング1Aに収容されている。
【0012】
媒体供給部60は、媒体カセット61と、ピックアップローラ62と、フィードローラ63と、リタードローラ64と、レジストローラ対65とを有する。
【0013】
媒体カセット61は、積載状態の媒体Pを収容する。媒体Pは例えば印刷用紙である。ピックアップローラ62は、媒体カセット61内の媒体Pを一枚ずつ繰り出す。フィードローラ63およびリタードローラ64は、繰り出された媒体Pを一枚ずつ分離して搬送路に送り出す。レジストローラ対65は、搬送路に送り出された媒体Pのスキューを矯正して、画像形成ユニット50まで搬送する。
【0014】
画像形成ユニット50は、像担持体としての感光体ドラム51を有する。感光体ドラム51に対向するように、露光装置としての露光ヘッド53が配置されている。露光ヘッド53は、発光素子としてのLED(発光ダイオード)を配列したLEDアレイとレンズアレイとを有し、感光体ドラム51の表面に光を照射する。なお、露光ヘッド53は、ハウジング1Aの上部を覆うトップカバー1Bに懸架されて支持されている。
【0015】
画像形成ユニット50は、上記の感光体ドラム51と、帯電部材としての帯電ローラ52と、現像剤担持体としての現像ローラ54と、供給部材としての供給ローラ55と、クリーニング部材56と、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ57とを有する。
【0016】
感光体ドラム51は、導電性支持体の表面に感光層を形成した円筒状の部材であり、図中時計回りに回転する。感光体ドラム51の感光層には、露光ヘッド53の光照射により静電潜像が形成される。
【0017】
帯電ローラ52は、感光体ドラム51の表面に接触するように配置され、感光体ドラム51に追従して回転する。帯電ローラ52は、高圧電源部から帯電電圧を印加され、感光体ドラム51の表面を一様に帯電させる。
【0018】
現像ローラ54は、感光体ドラム51の表面に接触するように配置され、感光体ドラム51とは逆方向(接触部での表面の移動方向が順方向となる方向)に回転する。現像ローラ54は、高圧電源部から現像電圧を印加され、感光体ドラム51の表面の静電潜像をトナー(現像剤)により現像する。
【0019】
供給ローラ55は、現像ローラ54の表面に接触するように配置され、現像ローラ54と同方向(接触部での表面の移動方向が逆方向となる方向)に回転する。供給ローラ55は、高圧電源部から供給電圧を印加され、現像ローラ54にトナーを供給する。
【0020】
トナーカートリッジ57は、現像剤としてのトナーを収容する着脱可能な容器である。トナーは、例えばブラックトナーであるが、これに限定されるものではない。トナーカートリッジ57は、現像ローラ54および供給ローラ55にトナーを供給する。
【0021】
クリーニング部材56は、弾性体で形成されたブレードまたはローラであり、感光体ドラム51の表面に接触するように配置されている。クリーニング部材56は、転写後に感光体ドラム51の表面に残った残留トナーを掻き取る。
【0022】
なお、画像形成ユニット50は、画像形成部、プロセスユニット、あるいはイメージドラムユニット(IDユニット)とも称される。
【0023】
感光体ドラム51の表面に接触するように、転写部としての転写ローラ58が配置されている。転写ローラ58は、感光体ドラム51との間で転写ニップを形成する。転写ローラ58は高圧電源部から転写電圧を印加され、感光体ドラム51の表面のトナー像が転写ニップを通過する媒体Pに転写される。
【0024】
画像形成装置1は、画像形成ユニット50により単色画像を形成するように構成されているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の複数の画像形成ユニットを媒体Pの搬送方向に配列し、カラー画像を形成するように構成してもよい。
【0025】
定着装置10は、定着部材としての定着ローラ11と、定着ローラ11の内側に配置された加熱部材としてのヒータ13と、加圧部材としての加圧ローラ12とを有する。定着装置10は、ハウジング1Aに対して着脱可能に構成されている。
【0026】
定着ローラ11は、円筒状の部材である。ヒータ13は、定着ローラ11を内側から加熱する。加圧ローラ12は定着ローラ11に圧接され、ニップ部(定着ニップ)を形成する。定着ローラ11および加圧ローラ12は、ニップ部を通過する媒体Pに熱と圧力を加え、トナー像を媒体Pに定着させる。
【0027】
媒体排出部70は、定着装置10を通過した媒体Pを搬送して排出口73から排出する排出ローラ対71,72を有する。トップカバー1Bには、排出口73から排出された媒体Pを載置するスタッカ74が形成されている。
【0028】
図1において、感光体ドラム51の軸方向を、X方向とする。X方向は、画像形成装置1内の各ローラの軸方向であり、搬送される媒体Pの幅方向でもある。媒体Pが画像形成ユニット50を通過するときの媒体Pの移動方向を、Y方向とする。X方向とY方向に直交する方向を、Z方向とする。ここでは、Z方向は上下方向である。
【0029】
Y方向については、媒体Pが画像形成ユニット50を通過するときの搬送方向を+Y方向とし、その反対方向を-Y方向とする。X方向については、+Y方向を向いて右手方向を+X方向とし、左手方向を-X方向とする。Z方向については、図1の上方向を+Z方向とし、下方向を-Z方向とする。なお、これらの方向は、画像形成装置1の向きを限定するものではない。
【0030】
<定着装置10の構成>
次に、定着装置10の構成について説明する。図2は、定着装置10の外観を示す断面図である。図3は、定着装置10の内部構成を示す斜視図である。
【0031】
図2に示すように、定着装置10は、前方(-Y方向)のフロントカバー15aと、後方(+Y方向)のリアカバー15bと、左右両側(-X方向および+X方向)のサイドカバー15cと、下方(-Z方向)のロアカバー15dと、上方(+Z方向)のトップカバー15eとを有する。
【0032】
これらのカバー15a~15eで囲まれた空間に、定着ローラ11、ヒータ13および加圧ローラ12(図3)等の構成要素が配置されている。フロントカバー15aには導入口16が形成され、リアカバー15bには排出口17(図1)が形成されている。
【0033】
一方のサイドカバー15c(ここでは-X方向のサイドカバー15c)には、位置決めレバー18が設けられている。位置決めレバー18は、定着装置10をハウジング1A(図1)内で位置決めする際にユーザに操作される。
【0034】
また、トップカバー15eには、リリースレバー44が設けられている。リリースレバー44は、媒体Pのジャム発生時に、定着ローラ11と加圧ローラ12とを離間させる際に操作される。
【0035】
図3に示すように、定着ローラ11、ヒータ13および加圧ローラ12は、いずれも長手方向をX方向(第1の方向とも称する)としている。定着装置10の筐体20は、第1のサイドフレームとしてのサイドフレーム21と、第2のサイドフレームとしてのサイドフレーム22と、これらを連結する下部フレーム23とを有する。
【0036】
サイドフレーム21,22はX方向に互いに対向する。サイドフレーム21は定着ローラ11および加圧ローラ12等に対して-X方向に位置し、サイドフレーム22は定着ローラ11および加圧ローラ12等に対して+X方向に位置する。また、サイドフレーム21,22のX方向内側には、一対の回動フレーム25(図3では一方が隠れている)が設けられている。
【0037】
定着ローラ11およびヒータ13は、サイドフレーム21,22によって支持されている。加圧ローラ12は、一対の回動フレーム25によって支持されている。
【0038】
回動フレーム25は、後述するように、サイドフレーム21,22に設けられた支軸25c(図12)を中心として回動可能に支持されている。回動フレーム25の回動により、加圧ローラ12が定着ローラ11に圧接され、また定着ローラ11から離間する。
【0039】
筐体20は、また、サイドフレーム22の外側(+X側)に、外側フレーム26を有する。外側フレーム26は、定着装置10に設けられた温度センサおよびその配線等を保持する部分である。
【0040】
定着ローラ11と加圧ローラ12との間にはニップ部Nが形成される。導入口16(図2)から導入された媒体Pは、ニップ部Nを通過し、排出口17(図1)から排出される。画像形成ユニット50(図1)で媒体Pに転写されたトナー像は、弱い静電気力で媒体Pに付着しているが、定着ローラ11の熱によって溶解し、加圧ローラ12の加圧力によって媒体Pに定着する。
【0041】
図4(A)は、定着ローラ11およびヒータ13を示す断面図である。図4(A)に示すように、定着ローラ11は、略円筒状の基材11aと、基材11aの表面を覆う弾性層11bと、弾性層11bの表面を覆う表面層11cとを有する。基材11aは、アルミニウムまたはステンレス鋼等の金属で構成される。弾性層11bは、シリコームゴム等の樹脂で構成される。表面層11cは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂で構成される。定着ローラ11は、基材11aの内側に配置されたヒータ13によって加熱される。
【0042】
図4(B)は、加圧ローラ12を示す断面図である。図4(B)に示すように、加圧ローラ12は、略円筒状の基材12aと、基材12aの表面に形成された弾性層12bとを有する。基材12aは、アルミニウムまたはステンレス鋼等の金属で形成される。弾性層12bは、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム等の樹脂で形成される。弾性層12bの表面を、PFA、PTFE等からなる表面層で覆ってもよい。
【0043】
図5は、定着ローラ11、ヒータ13および加圧ローラ12を示す斜視図である。定着ローラ11のX方向両端には、X方向中央部よりも外径の小さい小径部11e,11fが形成されている。
【0044】
定着ローラ11の小径部11eは、サイドフレーム21に形成された孔部21a(図11)に挿入される。定着ローラ11の小径部11fは、サイドフレーム22に形成された孔部22a(図11)に挿入される。これにより、定着ローラ11は、サイドフレーム21,22によって回転可能に支持される。また、定着ローラ11の小径部11fには、定着ローラ11を回転させるための定着ギア11g(図3)が固定される。
【0045】
加圧ローラ12のX方向両端には、軸部12eが形成されている。なお、図5では一方の軸部12eは隠れている。加圧ローラ12の軸部12eは、後述する回動フレーム25によって支持されている。
【0046】
ヒータ13は、ここではハロゲンヒータである。ヒータ13の-X方向端部には、ヒータ13に電力を供給するためのリード線14が接続されている。ヒータ13はハロゲンヒータには限定されず、他の種類のヒータであってもよい。上述した図3では、定着ローラ11の内側に2つのヒータ13が並んで配置された例を示しているが、ヒータ13の数は任意である。以下では、定着ローラ11の内側に1つのヒータ13を配置した例について説明する。
【0047】
<ヒータ13の支持構造>
次に、ヒータ13の支持構造について説明する。図6は、ヒータ13の-X方向の端部の支持構造を示す斜視図である。サイドフレーム21の-X側には、駆動部材としての第1のカム31および第2のカム32、並びにリリースギア40が配置されている。
【0048】
第1のカム31および第2のカム32は、サイドフレーム21に固定された支持部材としてのポスト33,34(図7)によってそれぞれ回転可能に支持されている。ここでは第1のカム31が第2のカム32よりも上方(+Z方向)に配置されているが、このような配置には限定されない。
【0049】
リリースギア40は、サイドフレーム21に取り付けられたポスト29によって回転可能に支持されている。リリースギア40は、画像形成装置1のハウジング1A内に配置された図示しないリリースモータ(離接モータ)からの回転伝達によって回転する。
【0050】
また、X方向においてカム31,32とサイドフレーム21との間には、可動部材としての可動板30が設けられている。可動板30は、例えば、板面がYZ面と平行になるように配置されている。
【0051】
図7は、ヒータ13の-X方向の端部の支持構造を示す分解斜視図である。図8(A),(B)は、ヒータ13の-X方向の端部の支持構造を示す斜視図および正面図である。
【0052】
図7に示すように、第1のカム31は、X方向の中心軸X1を中心とする円板状の部材である。第1のカム31は、外周にギア部31aを有し、径方向中心に中心孔31bを有する。第1のカム31の+X方向の端面31cには、突出部であるカム部311が形成されている。カム部311は、中心軸X1を中心とする角度が180度となる円弧状に形成されている。
【0053】
図7において、X方向の中心軸に対する時計回り方向をA方向とし、反時計回り方向をB方向とすると、カム部311は、端面31cからの+X方向の突出量がB方向に増加する形状を有する。すなわち、カム部311のA方向の端部312は端面31cと連続しており、B方向の端部313は端面31cから+X方向に最も突出している。
【0054】
同様に、第2のカム32は、その中心軸X2を中心とする円板状の部材である。第2のカム32は、外周にギア部32aを有し、径方向中心に中心孔32bを有する。第2のカム32の+X方向の端面32cには、凸部であるカム部321が形成されている。カム部321は、中心軸X2を中心とする角度が180度となる円弧状に形成されている。
【0055】
カム部321は、端面32cからの+X方向の突出量がB方向に増加する形状を有する。すなわち、カム部321のA方向の端部322は端面32cと連続しており、B方向の端部323は端面32cから+X方向に最も突出している。
【0056】
可動板30は、ポスト33が貫通する貫通穴303と、ポスト34が貫通する貫通穴304とを有する。ポスト33,34はいずれも、X方向を軸方向とし、サイドフレーム21(図6)に固定されている。これにより、可動板30はポスト33,34によってX方向に移動可能に支持される。
【0057】
ポスト33は、第1のカム31の中心孔31bに係合している。第1のカム31は、ポスト33により、中心軸X1を中心として回転可能に、且つ-X方向に抜け落ちないように支持されている。ポスト34は、第2のカム32の中心孔32bに係合している。第2のカム32は、ポスト34により、中心軸X2を中心として回転可能に、且つ-X方向に抜け落ちないように支持されている。
【0058】
ポスト33を囲むように、付勢部材としてのコイルばね35が配置されている。ポスト34を囲むように、付勢部材としてのコイルばね36が配置されている。コイルばね35,36は、X方向において可動板30とサイドフレーム21とに挟まれている。コイルばね35,36は、可動板30を+X方向に付勢する。
【0059】
可動板30は、第1のカム31のカム部311に対応する形状の穴部301と、第2のカム32のカム部321に対応する形状の穴部302とを有する。穴部301は、第1のカム31が所定の回転位置にあるときに、カム部311が入り込む部分である。穴部302は、第2のカム32が所定の回転位置にあるときに、カム部321が入り込む部分である。
【0060】
穴部301は、例えば、ポスト33の中心軸(上記の中心軸X1)に対する角度が略180度となる円弧状に形成されている。同様に、穴部302は、例えば、ポスト34の中心軸(上記の中心軸X2)に対する角度が略180度となる円弧状に形成されている。
【0061】
可動板30は、Z方向において貫通穴303,304の間に、穴部305を有する。穴部305は、後述するようにヒータ13のリード線14を通過させる部分である。
【0062】
図8(A),(B)に示すように、可動板30には、第1の係合部としてのヒータホルダ37が固定される。ヒータホルダ37は、図7に示すように略円錐状のばね受け部37aと、係合穴37bとを有する。ばね受け部37aはヒータホルダ37の+X側に設けられている。係合穴37bは、ばね受け部37aの中央に形成され、可動板30の穴部305に対向している。
【0063】
ヒータホルダ37は、ばね受け部37aのX方向両側に固定穴37cを有する。ヒータホルダ37は、固定穴37cを貫通するねじ等により、可動板30に固定される。なお、ヒータホルダ37は、ねじ以外の方法(例えば接着)によって可動板30に固定してもよく、可動板30と一体に形成してもよい。
【0064】
ヒータホルダ37のばね受け部37aには、第1の弾性部材としての円錐ばね38が保持されている。円錐ばね38はX方向を軸方向とし、大径部が-X方向に位置し、小径部が+X方向に位置するように配置されている。円錐ばね38の大径部は、ヒータホルダ37のばね受け部37aに係合している。
【0065】
リリースギア40は、外周にギア部40aを有し、径方向中心に中心孔40bを有する。リリースギア40のギア部40aは、第1のカム31のギア部31aおよび第2のカム32のギア部32aと噛み合っている。リリースギア40の中心孔40bには、サイドフレーム21に設けられたポスト29(図6)が係合している。
【0066】
第1のカム31および第2のカム32のギア部31a,32aの歯数は、同数である。リリースギア40の回転に伴い、第1のカム31および第2のカム32が互いに同方向(リリースギア40とは反対方向)に同じ回転角度だけ回転する。リリースギア40は、定着ローラ11と加圧ローラ12とを、ニップ状態とリリース状態との間で切り替える離接機構4の一部をなしている。
【0067】
そのため、ニップ状態とリリース状態との切り替え動作(移行動作)と連動して、第1のカム31および第2のカム32が回転する。離接機構4の構成および動作については後述する。
【0068】
図9(A),(B)は、ヒータ13の-X方向の端部13aの支持状態の変化を示す図である。図9(B)に示すように、ヒータ13の端部13aの+X側に隣接して、大径部131が形成されている。円錐ばね38は、X方向においてヒータホルダ37と大径部131との間で保持されている。
【0069】
図9(A)に示した第1の状態では、第1のカム31のカム部311および第2のカム32のカム部321が可動板30に当接し、これを+X方向に押圧している。このときのカム31,32の回転位置を、第1の回転位置と称する。
【0070】
この状態では、可動板30がカム部311,321に押圧されて+X方向に移動し、コイルばね35,36が可動板30とサイドフレーム21との間で圧縮される。可動板30に固定されたヒータホルダ37も+X方向に移動し、円錐ばね38がヒータホルダ37とヒータ13の大径部131との間で圧縮される。
【0071】
一方、図9(B)に示した第2の状態では、カム31,32が図9(A)に示した状態から180度回転している。カム31,32のカム部311,321は、可動板30の穴部301,302(図7)内に入り込む。すなわち、カム31,32の端面31c,32cが可動板30に当接している。このときのカム31,32の回転位置を、第2の回転位置と称する。
【0072】
この状態では、可動板30がカム31,32からの押圧力を受けないため、コイルばね35,36の付勢力によって-X方向に移動する。可動板30に固定されたヒータホルダ37も-X方向に移動し、円錐ばね38がヒータホルダ37とヒータ13の大径部131との間で伸長した状態となる。
【0073】
図10(A),(B)は、ヒータホルダ37によるヒータ13の-X方向端部の支持状態の変化を示す拡大図である。図10(A)は、図9(A)に示した第1の状態に対応し、図10(B)は、図9(B)に示した第2の状態に対応する。
【0074】
図10(A)に示すように、可動板30が+X方向に移動し、ヒータホルダ37も+X方向に移動すると、円錐ばね38がヒータホルダ37のばね受け部37aとヒータ13の大径部131との間で圧縮される。これにより、ヒータ13の-X方向の端部13aは、ヒータホルダ37の係合穴37bの内側に嵌合する。そのため、ヒータ13はヒータホルダ37によって支持される。
【0075】
図10(B)に示すように、可動板30が-X方向に移動し、ヒータホルダ37も-X方向に移動すると、円錐ばね38がヒータホルダ37のばね受け部37aとヒータ13の大径部131との間で延伸した状態となる。これにより、ヒータ13の-X方向の端部13aがヒータホルダ37の係合穴37bから抜け出し、円錐ばね38によって支持される。そのため、ヒータ13は円錐ばね38によって支持される。
【0076】
図11は、定着ローラ11およびヒータ13のX方向両端の支持構造を示す図である。上記の通り、定着ローラ11の-X方向端部の小径部11eは、サイドフレーム21の孔部21aに挿入されて保持されている。定着ローラ11の+X方向端部の小径部11fは、サイドフレーム22の孔部22aに挿入されて保持されている。
【0077】
ヒータ13の-X方向の端部13aの支持構造は、図7~10を参照して説明した通りである。ヒータ13の+X方向の端部13b側には、第2の係合部材としてのヒータホルダ137と、第2の弾性部材としての円錐ばね39とが設けられている。
【0078】
ヒータホルダ137は、図7~10を参照して説明した-X側のヒータホルダ37と同様に構成されている。但し、ヒータホルダ137は、サイドフレーム22の+X側に配置された外側フレーム26(図3)に設けられた固定部材26aによって支持されている。
【0079】
固定部材26aは、外側フレーム26から定着ローラ11の内側に突出するように設けられている。ヒータホルダ137を固定部材26aで支持する理由は、定着ローラ11の小径部11fの外側に定着ギア11g(図3)が取り付けられるためである。
【0080】
円錐ばね39は、図7~10を参照して説明した円錐ばね38と同様に構成されている。但し、円錐ばね39のばね定数は、円錐ばね38のばね定数よりも小さい。
【0081】
図11に示した状態では、カム31,32が第2の位置(図9(B),図10(B))にある。可動板30は、コイルばね35,36の付勢力によりカム31,32の端面31c,32cに当接している。円錐ばね38,39はいずれも伸長した状態にあり、ヒータ13の端部13a,13bは円錐ばね38,39によって支持されている。
【0082】
カム31,32が第1の位置(図9(A),10(A))にあり、可動板30を+X方向に押圧しているときには、円錐ばね38,39が圧縮され、ヒータ13の端部13a,13bがヒータホルダ37,137の各係合穴37b(図10(A))に嵌合する。すなわち、ヒータ13のX方向の両端部13a,13bが、ヒータホルダ37,137によって支持される。
【0083】
円錐ばね38は、ポスト33,34によってX方向に案内される可動板30に取り付けられているため、位置精度が確保されるのに対し、円錐ばね39はX方向に案内されていないため、円錐ばね38と比較して位置精度が低くなりやすい。そこで、円錐ばね39のばね定数を円錐ばね38よりも小さくし、円錐ばね38よりも先に圧縮されるようにしている。
【0084】
これにより、ヒータ13の-X方向の端部13aがヒータホルダ37に支持される前に、ヒータ13の+X方向の端部13bがヒータホルダ137に支持される。その結果、ヒータ13のX方向両端で位置精度を高めることができる。
【0085】
円錐ばね38のばね定数は、例えば3.7[N/mm]である。円錐ばね39のばね定数は、例えば3.0[N/mm]である。但し、これらの数値に限定されるものではなく、円錐ばね38のばね定数が円錐ばね39のばね定数よりも大きければよい。
【0086】
なお、円錐ばね38,39の代わりに、他の種類のばねを用いてもよい。但し、円錐ばねは、一般のコイルばね(外径一定のコイルばね)と比較して、圧縮時のX方向長さを短くし、また、伸長時のX方向長さを長くできるという利点があるため、本実施の形態では特に望ましい。
【0087】
上述したヒータ13の支持に関する各要素のうち、カム31,32およびリリースギア40は、金属または耐熱性の樹脂で形成されている。可動板30、ポスト33,34およびヒータホルダ37は、金属で形成されている。
【0088】
<離接機構4>
次に、実施の形態1の離接機構4について説明する。図3を参照して説明したように、サイドフレーム21,22のX方向の内側には、一対の回動フレーム25が設けられている(図3では一方の回動フレーム25が隠れている)。
【0089】
図12は、サイドフレーム22のX方向内側に取り付けられた回動フレーム25とその周囲を示す模式図である。回動フレーム25は、X方向の支軸25cを中心として回動可能に支持されている。支軸25cは、サイドフレーム22に取り付けられている。
【0090】
回動フレーム25は、定着ローラ11を挿通させる開口部25aと、加圧ローラ12の軸部12e(図5)を保持する孔部25bとを有する。加圧ローラ12の軸部12eは、回動フレーム25の孔部25bに回転可能に保持される。一方、定着ローラ11は、回動フレーム25の開口部25aにX方向に挿通され、回動フレーム25には当接しない。
【0091】
そのため、回動フレーム25が回動すると、定着ローラ11に対して加圧ローラ12が接近および離間する方向に移動する。なお、回動フレーム25の支軸25cは、定着ローラ11と加圧ローラ12とのニップ部Nに対して-X方向に設けられているが、この位置に限定されるものではない。
【0092】
回動フレーム25の+Z方向の端部には、ばね受け部25eが形成されている。ばね受け部25eとサイドフレーム22の前方壁部22bとの間には、付勢部材としての押圧ばね28が設けられている。押圧ばね28は、ここでは、+Y方向に付勢力を発生するように配置されている。
【0093】
押圧ばね28の付勢力により、回動フレーム25は支軸25cを中心としてB方向(図12では反時計回り方向)に回動するように付勢される。押圧ばね28に対して略+Y方向には、リリースカム45が配置されている。リリースカム45は、X方向のシャフト41に取り付けられた偏心カムである。リリースカム45において、シャフト41の中心軸からの突出量が最も大きい部分が、回動フレーム25を押圧する押圧部45aとなる。
【0094】
回動フレーム25においてリリースカム45に対向する箇所には、リリースカム45に当接可能な当接部25dが形成されている。リリースカム45が回転して当接部25dに当接すると、後述する図14(B)に示すように、押圧ばね28の付勢力に抗して、回動フレーム25を、支軸25cを中心としてA方向に回動するように付勢する。
【0095】
なお、図12では、サイドフレーム22に隣接して配置された回動フレーム25を示したが、サイドフレーム21(図3)に隣接した配置された回動フレーム25も同様に構成されている。
【0096】
図13は、離接機構4の駆動部を示す斜視図である。リリースカム45が取り付けられたシャフト41には、伝達ギア42が固定されている。伝達ギア42は、上述した第1のカム31のギア部31aと噛み合っている。リリースギア40の回転は第1のカム31を経由して伝達ギア42に伝達され、これによりシャフト41が回転し、リリースカム45も回転する。
【0097】
図14(A),(B)は、リリースカム45による回動フレーム25の回動動作を示す模式図である。図14(A)に示した状態では、リリースカム45は回動フレーム25の当接部25dから離間した位置にあり、回動フレーム25を押圧していない。回動フレーム25は、押圧ばね28(図12)の付勢力により、加圧ローラ12を定着ローラ11に押し当てる位置にある。すなわち、定着ローラ11および加圧ローラ12は、両者の間にニップ部が形成される状態、言い換えるとニップ状態にある。
【0098】
このとき、カム31,32のカム部311,321は、図9(A)で示したように可動板30を+X方向に押圧する位置にある。これにより円錐ばね38,39が圧縮され、ヒータ13の両端がヒータホルダ37,137で支持された状態となる。すなわち、ニップ状態では、ヒータ13の両端がヒータホルダ37,137で支持される。
【0099】
この状態から、リリースギア40(図13)がA方向に回転すると、これと噛み合うカム31,32がいずれもB方向に回転する。また、第1のカム31のギア部31aと噛み合う伝達ギア42がA方向に回転し、シャフト41およびリリースカム45がA方向に回転する。
【0100】
図14(B)に示すように、リリースカム45が回動フレーム25の当接部25dに当接してこれを押圧すると、回動フレーム25が回動し、加圧ローラ12が定着ローラ11から矢印Dで示すように離間する。すなわち、定着ローラ11および加圧ローラ12は、互いに離間した状態、言い換えるとリリース状態に移行する。
【0101】
また、カム31,32のB方向の上記回転により、第1のカム31および第2のカム32のカム部311,321が可動板30の穴部301,302に入り込み、可動板30に対する押圧が解除される。これにより円錐ばね38,39が伸長し、ヒータ13が円錐ばね38,39で支持された状態となる。すなわち、リリース状態では、ヒータ13の両端が円錐ばね38,39で支持される。
【0102】
なお、ニップ状態からリリース状態への切り替えは、リリースギア40の回転による以外に、リリースレバー44の操作によっても行われる。媒体Pのジャム発生時にユーザがリリースレバー44(図3)を操作すると、リリースレバー44が固定されたシャフト41がA方向に回転し、図14(B)に示したようにリリースカム45がA方向に回転して、定着ローラ11から加圧ローラ12を離間させる。
【0103】
<画像成装置の印刷動作>
次に、画像形成装置1の基本動作(印刷動作)について、図1を参照して説明する。画像形成装置1は、上位装置から印刷コマンドと印刷データを受信すると、印刷動作を開始する。
【0104】
印刷動作の開始時には、まず、リリースモータにより定着装置10のリリースギア40が回転し、加圧ローラ12が定着ローラ11に圧接され、ニップ状態に移行する。また、定着モータにより定着ローラ11の回転が開始され、ヒータ13に電力が供給されて加熱される。
【0105】
ヒータ13が所定の定着温度まで加熱されると、媒体供給部60のピックアップローラ62が回転し、さらにフィードローラ63が回転し、媒体カセット61内の媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す。また、レジストローラ対65が回転し、媒体Pの斜行を矯正して画像形成ユニット50まで搬送する。
【0106】
画像形成ユニット50では、帯電ローラ52、現像ローラ54および供給ローラ55に、高圧電源部から帯電電圧、現像電圧および供給電圧がそれぞれ印加される。また、感光体ドラム51が回転し、これに伴って帯電ローラ52、現像ローラ54および供給ローラ55が回転する。
【0107】
帯電ローラ52は、感光体ドラム51の表面を一様に帯電させる。露光ヘッド53は、感光体ドラム51の表面を露光し、静電潜像を形成する。現像ローラ54の表面には、供給ローラ55から供給されたトナーが付着する。感光体ドラム51の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ54に付着したトナーによって現像され、感光体ドラム51の表面にトナー像が形成される。感光体ドラム51に形成されたトナー像は、転写ローラ58に印加される転写電圧により、媒体Pに転写される。
【0108】
このようにしてトナー像が転写された媒体Pは、感光体ドラム51の回転によってさらに搬送され、導入口16から定着装置10内に送り込まれる。媒体Pは定着ローラ11と加圧ローラ12との間のニップ部Nに導かれ、熱および圧力の印加によりトナー像が媒体Pに定着する。
【0109】
トナー像が定着した媒体Pは、定着装置10の排出口17から排出され、媒体排出部70の排出ローラ対71,72により排出口73から排出される。排出された媒体Pは、スタッカ74上に積載される。これにより媒体Pへの印刷動作が完了する。
【0110】
印刷動作の完了後、後続の印刷ページが無い場合には、リリースモータにより定着装置10のリリースギア40が回転し、加圧ローラ12が定着ローラ11から離間する(すなわちリリース状態に移行する)。また、定着モータによる定着ローラ11の回転が停止し、ヒータ13への通電も停止される。
【0111】
<定着装置10の動作>
次に、定着装置10の動作について説明する。印刷動作の開始前は、定着ローラ11と加圧ローラ12はリリース状態にある。定着ローラ11と加圧ローラ12とがリリース状態にある場合には、図14(B)に示すように、リリースカム45が回動フレーム25を押圧しており、加圧ローラ12が定着ローラ11から矢印Dで示すように離間している。
【0112】
また、この状態では、第1のカム31および第2のカム32のカム部311,321が可動板30の穴部301,302に入り込んでいるため、可動板30を+X方向に押圧していない。すなわち、円錐ばね38,39は伸張した状態にある。ヒータ13は、円錐ばね38,39によって支持されている。
【0113】
印刷動作の開始と共に、リリースギア40がB方向(図13)に回転する。リリースギア40のB方向の回転に伴い、これと噛み合うカム31,32がA方向に回転する。また、第1のカム31のギア部31aと噛み合う伝達ギア42がB方向に回転し、シャフト41およびリリースカム45もB方向に回転する。
【0114】
図14(A)に示すように、リリースカム45がB方向に回転し、回動フレーム25の当接部25dから離間すると、回動フレーム25は、押圧ばね28の付勢力により、加圧ローラ12が定着ローラ11に当接する位置まで回動する。すなわち、定着ローラ11および加圧ローラ12は、ニップ状態に移行する。
【0115】
また、カム31,32のA方向の上記回転により、カム31,32のカム部311,321が可動板30の穴部301,302から抜け出し、可動板30を+X方向に押圧する。これにより円錐ばね38,39が圧縮され、ヒータ13の両端がヒータホルダ37,137の各係合穴37bに係合する。すなわち、ヒータ13はヒータホルダ37,137で支持される。
【0116】
このように定着ローラ11および加圧ローラ12がニップ状態に移行し、ヒータ13の両端がヒータホルダ37,137によって支持された状態で、定着動作が行われる。定着動作の間は、ヒータ13の両端がヒータホルダ37,137によって支持されているため、ヒータ13がX方向、Y方向およびZ方向において高い位置精度に保たれている。
【0117】
印刷動作の完了後には、定着ローラ11および加圧ローラ12がリリース状態に移行する。具体的には、リリースギア40(図13)がA方向に回転し、これと噛み合う第1のカム31および第2のカム32がB方向に回転する。また、第1のカム31のギア部31aと噛み合う伝達ギア42がA方向に回転し、シャフト41およびリリースカム45もA方向に回転する。
【0118】
図14(B)に示すように、リリースカム45がA方向に回転し、回動フレーム25の当接部25dに当接してこれを押圧すると、回動フレーム25が回動し、加圧ローラ12が定着ローラ11から矢印Dで示すように離間する。すなわち、定着ローラ11および加圧ローラ12は、リリース状態に移行する。
【0119】
また、カム31,32のB方向の上記回転により、カム31,32のカム部311,321が可動板30の穴部301,302に入り込み、可動板30に対する押圧が解除される。これにより円錐ばね38,39が伸長し、ヒータ13が円錐ばね38,39で支持される。
【0120】
このように、印刷動作が行われていないときには、定着ローラ11および加圧ローラ12がリリース状態に移行し、ヒータ13の両端が円錐ばね38,39によって支持される。円錐ばね38,39は、X方向、Y方向およびZ方向に変位可能であるため、定着装置10の落下等による衝撃を受けた場合であっても、円錐ばね38,39によってヒータ13に加わる衝撃を吸収することができる。そのため、ヒータ13の破損を防止し、耐久性を向上することができる。
【0121】
近年、定着装置10の小型化に伴い、ヒータ13を構成するハロゲンヒータのパイプの薄肉化が進んでおり、定着装置10の落下時等の衝撃への対策が求められている。この実施の形態では、印刷動作中を除き、ヒータ13の両端が円錐ばね38,39で支持されているため、ヒータ13のパイプを薄肉化した場合であっても、落下等による衝撃を円錐ばね38,39で吸収し、ヒータ13の破損を効果的に防止することができる。
【0122】
なお、ヒータ13の支持状態の切り替えは、ジャム解除時にも行われる。すなわち、媒体Pのジャムによって画像形成装置1の動作が停止した場合に、ユーザがリリースレバー44を操作してシャフト41がA方向に回転すると、図14に示したように回動フレーム25が回動して定着ローラ11と加圧ローラ12とがリリース状態に移行する。
【0123】
さらに、シャフト41に取り付けられた伝達ギア42と噛み合うカム31,32がB方向に回転し、カム31,32の可動板30に対する押圧が解除される。これにより円錐ばね38,39が伸長し、図11に示したようにヒータ13が円錐ばね38,39で支持された状態となる。そのため、ジャム解除時にユーザが定着装置10をハウジング1Aから取り外す際にも、ヒータ13の破損を防止することができる。
【0124】
ここでは、リリースギア40の回転をカム31,32によって可動板30のX方向の移動に変換したが、離接機構4の動作を可動板30のX方向の移動に変換可能な駆動部材であれば、他の駆動部材を利用してもよい。
【0125】
また、ここではヒータ13のX方向両側に円錐ばね38,39を配置したが、ヒータ13のX方向の一端側のみ(例えば端部13a側のみ)に円錐ばねを配置してもよい。但し、ヒータ13のX方向両側に円錐ばね38,39を配置した方がヒータ13の耐久性をより向上することができる。
【0126】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、実施の形態の定着装置10は、定着ローラ11(定着部材)と加圧ローラ12(加圧部材)とがニップ状態にあるときには、ヒータ13(加熱部材)の端部13aとヒータホルダ37(第1の係合部材)とが係合し、ヒータ13の端部13aがヒータホルダ37によって支持される。また、定着ローラ11と加圧ローラ12とがリリース状態にあるときには、ヒータ13とヒータホルダ37との係合が解除され、ヒータ13の端部13aが円錐ばね38(第1の弾性部材)によって支持される。そのため、定着動作時にはヒータ13を高い位置精度で支持し、定着動作時以外はヒータ13に伝わる衝撃を緩和することができる。これにより、ヒータ13の破損を防止し、耐久性を向上することができる。
【0127】
また、ニップ状態からリリース状態への移行時に、ヒータ13とヒータホルダ37との係合が解除され、リリース状態からニップ状態への移行時に、ヒータ13とヒータホルダ37とが係合するため、ニップ状態/リリース状態の切り替えに伴ってヒータ13の支持状態を切り替えることができる。
【0128】
また、ヒータ13の端部13b側に円錐ばね39(第2の弾性部材)が配置されており、円錐ばね38の弾性力が円錐ばね39の弾性力よりも大きいため、ニップ状態への移行時に円錐ばね39を先に圧縮させることができる。これによりヒータ13の両端を高い位置精度で支持することができる。
【0129】
また、ヒータ13の端部13b側にヒータホルダ137(第2の係合部材)が配置されており、円錐ばね39がヒータ13とヒータホルダ137との間に設けられている。そのため、円錐ばね38,39の伸縮により、ヒータ13の両端の支持状態を切り替えることができる。
【0130】
また、ヒータ13の端部13a側に、X方向に移動可能な可動板30が設けられており、ヒータホルダ37が可動板30に設けられているため、可動板30の移動を利用してヒータ13の支持状態の切り替えを行うことができる。
【0131】
また、定着ローラ11と加圧ローラ12とをニップ状態とリリース状態との間で切り替えを行う離接機構4を備え、離接機構4のリリースギア40(ギア)の回転を第1のカム31(駆動部材)によって可動板30のX方向の移動に変換するため、ニップ状態とリリース状態との切り替えに応じてヒータ13の支持状態の切り替えを行うことができる。
【0132】
また、円錐ばね38がヒータホルダ37とヒータ13の両方に接触しているため、両者の間での円錐ばね38の伸縮を利用して、ヒータ13の支持状態を切り替えることができる。
【0133】
また、ヒータホルダ37がヒータ13の端部13aに係合する係合穴37bを有し、可動板30が係合穴37bに対向する穴部305を有するため、ヒータ13の支持状態にかかわらず、ヒータ13のリード線14を係合穴37bおよび穴部305から外部に引き出すことができる。
【0134】
以上、望ましい実施の形態について具体的に説明したが、本開示は上記の実施の形態に限定されるものではなく、各種の改良または変形を行なうことができる。上記の各実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。
【0135】
各実施の形態の画像形成装置は、例えば、LEDプリンタ、レーザビームプリンタ、複写機、ファクシミリ、MFP(MultiFunction Peripherals)等に利用することができる。
【0136】
以下、本開示の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
(付記1)
第1の方向に延在する円筒状の定着部材と、
前記定着部材の内側に配置された加熱部材と、
前記定着部材に対向するように配置された加圧部材と、
前記加熱部材に対して前記第1の方向の一端部に係合可能に設けられた第1の係合部材と、
前記加熱部材と前記第1の係合部材との間に設けられた第1の弾性部材と
を備え、
前記定着部材および前記加圧部材は、互いに当接するニップ状態と、互いに離間するリリース状態との間で切り替え可能であり、
前記定着部材と前記加圧部材とが前記ニップ状態にあるときには、前記加熱部材と前記第1の係合部材とが係合し、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の係合部材によって支持され、
前記定着部材と前記加圧部材とが前記リリース状態にあるときには、前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合が解除され、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の弾性部材によって支持される
定着装置。
(付記2)
前記ニップ状態から前記リリース状態への移行時に、前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合が解除され、
前記リリース状態から前記ニップ状態への移行時に、前記加熱部材と前記第1の係合部材とが係合する
ことを特徴とする付記1に記載の定着装置。
(付記3)
前記加熱部材の前記第1の方向における他端部に、第2の弾性部材が配置され、
前記第1の弾性部材の弾性力が、前記第2の弾性部材の弾性力よりも大きい
ことを特徴とする付記1または2に記載の定着装置。
(付記4)
前記加熱部材の前記他端部に係合可能な第2の係合部材をさらに備え、
前記第2の弾性部材は、前記加熱部材と前記第2の係合部材との間に設けられている
ことを特徴とする付記3に記載の定着装置。
(付記5)
前記加熱部材の前記一端部の側に、前記第1の方向に移動可能な可動板が設けられ、
前記第1の係合部材は、前記可動板に設けられ、
前記可動板の移動によって、前記第1の係合部材が前記加熱部材と係合し、またその係合が解除される
ことを特徴とする付記1から4までのいずれか1項に記載の定着装置。
(付記6)
前記定着部材と前記加圧部材とを前記ニップ状態と前記リリース状態との間で切り替えを行う離接機構と、
前記離接機構に含まれるギアの回転を、前記可動板の前記第1の方向の移動に変換する駆動部材と
をさらに備えたことを特徴とする付記5に記載の定着装置。
(付記7)
前記駆動部材は、前記可動板を前記第1の方向に付勢する突出部を有し、
前記可動板は、前記駆動部材の回転位置に応じて前記突出部が挿入される穴部を有する
ことを特徴とする付記6に記載の定着装置。
(付記8)
前記第1の弾性部材は、前記可動板と前記加熱部材の両方に接触している
ことを特徴とする付記5から7までのいずれか1項に記載の定着装置。
(付記9)
前記第1の係合部材は、前記加熱部材の前記一端部に係合する係合穴を有し、
前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合時には、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の係合部材の前記係合穴に係合し、
前記加熱部材と前記第1の係合部材との係合の解除時には、前記加熱部材の前記一端部が前記第1の係合部材の前記係合穴から抜け出す
ことを特徴とする付記1から8までのいずれか1項に記載の定着装置。
(付記10)
前記係合穴を介して、前記加熱部材に接続されるリード線が外部に引き出されている
ことを特徴とする付記9に記載の定着装置。
(付記11)
媒体を供給する媒体供給部と、
前記媒体に画像を形成する画像形成ユニットと、
前記画像を前記媒体に定着する、付記1から10までのいずれか1項に記載の定着装置と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0137】
1 画像形成装置、 4 離接機構、 10 定着装置、 11 定着ローラ(定着部材)、 12 加圧ローラ(加圧部材)、 13 ヒータ(加熱部材)、 13a 端部(一端部)、 13b 端部(他端部)、 14 リード線、 15 筐体、 21 サイドフレーム(第1のサイドフレーム)、 22 サイドフレーム(第2のサイドフレーム)、 25 回動フレーム、 26 外側フレーム、 28 押圧ばね(押圧部材)、 29 ポスト、 30 可動板(可動部材)、 31 第1のカム(駆動部材)、 32 第2のカム(駆動部材)、 33 ポスト(支持部材)、 34 ポスト(支持部材)、 35,36 コイルばね(付勢部材)、 37 ヒータホルダ(第1の係合部材)、 38 円錐ばね(第1の弾性部材)、 39 円錐ばね(第2の弾性部材)、 40 リリースギア(第1のギア)、 42 伝達ギア、 43 シャフト、 45 リリースカム(離間部材)、 50 画像形成ユニット(画像形成部)、 51 感光体ドラム(像担持体)、 52 帯電ローラ(帯電部材)、 53 露光ヘッド(露光装置)、 54 現像ローラ(現像剤担持体)、 55 供給ローラ(供給部材)、 57 トナーカートリッジ(現像剤収容体)、 58 転写ローラ(転写部)、 60 媒体供給部、 70 媒体排出部、 137 ヒータホルダ、 301,302 穴部、 303,304 貫通穴、 311,321 カム部。
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