(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182329
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 25/18 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H02P25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095863
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 覚
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD05
5H505DD06
5H505EE23
5H505EE35
5H505HA06
5H505HA08
5H505HB01
5H505HB05
(57)【要約】
【課題】従来よりも大きな出力を得ることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る駆動装置は、固定子巻線が設けられた固定子15を有する三相電動機1と、第1及び第2のインバータ3、5を備える。第1~第3の固定子巻線11、12、13は、他の固定子巻線と電気的に離間している。第1のインバータ3からの三相交流のU相、V相、及びW相が、第1~第3の固定子巻線11、12、13の第1の端子11a、12a、13aに電気的に接続可能に構成され、第2のインバータ5からの三相交流のU相、V相、及びW相が、第3の固定子巻線13の第2の端子13b、第1の固定子巻線11の第2の端子11b、及び第2の固定子巻線12の第2の端子12bに電気的に接続可能に構成される。第1及び第2のインバータ3、5は、互いに位相がπ/3だけずれた三相交流を供給可能に構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相の固定子巻線が設けられた固定子を有する三相電動機と、
三相電力を供給するための第1のインバータ及び第2のインバータと、
を備える駆動装置であって、
前記三相の固定子巻線の第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、及び第3の固定子巻線は、それぞれ前記第1のインバータ及び前記第2のインバータと結線されていない状態では他の固定子巻線と電気的に離間するように前記固定子内に設けられており、
前記第1のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ前記第1の固定子巻線の第1の端子、前記第2の固定子巻線の第1の端子、及び前記第3の固定子巻線の第1の端子に電気的に接続可能に構成され、
前記第2のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ前記第3の固定子巻線の第2の端子、前記第1の固定子巻線の第2の端子、及び前記第2の固定子巻線の第2の端子に電気的に接続可能に構成され、
前記第1のインバータ及び前記第2のインバータは、同一の周波数、かつ、互いに位相がπ/3だけずれた三相交流を供給可能に構成されている、駆動装置。
【請求項2】
前記第1の固定子巻線、前記第2の固定子巻線、及び前記第3の固定子巻線と、前記第1のインバータ及び前記第2のインバータとの間の結線状態を、第1の結線状態、第2の結線状態、及び第3の結線状態の間で可逆的に変更する切り替え器をさらに備え、
前記第1の結線状態では、前記第1の固定子巻線、前記第2の固定子巻線、及び前記第3の固定子巻線は、前記第1のインバータ又は前記第2のインバータとスター結線され、
前記第2の結線状態では、前記第1の固定子巻線、前記第2の固定子巻線、及び前記第3の固定子巻線は、前記第1のインバータ又は前記第2のインバータとデルタ結線され、
前記第3の結線状態では、前記第1のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ前記第1の固定子巻線の第1の端子、前記第2の固定子巻線の第1の端子、及び前記第3の固定子巻線の第1の端子に電気的に接続され、かつ、前記第2のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ前記第3の固定子巻線の第2の端子、前記第1の固定子巻線の第2の端子、及び前記第2の固定子巻線の第2の端子に電気的に接続される、請求項1に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相電動機を備える駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド電気自動車用の動力源として、三相誘導電動機等の三相電動機が用いられている。従来の三相誘導電動機として、例えば下記特許文献1、2に記載のものが知られている。特許文献1、2には、三相電動機が、3相で6つの引き出し端子を持つ固定子巻線を備え、2台の三相インバータによって運転され、この電動機の定出力範囲内で且つ所定回転数以下の低速運転範囲では両インバータの出力を同相にした制御をし、該所定回転数を越えた高速運転範囲では一方のインバータの出力位相を180度反転することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-136184
【特許文献2】特開平7-336971
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載のような従来の三相電動機においては、その3つの固定子巻線とインバータとがスター結線又はデルタ結線されている。これらがスター結線されている場合、三相交流の電圧が線間で2系統に分圧されるため、1相当たりの相電圧が1/√3に低下する。また、これらがデルタ結線されている場合、三相交流の電流が回路の枝分かれに起因して分流するため、一相当たりの相電流が1/√3に低下する。そのため、インバータに入力される直流の電圧及び電流をそれぞれV(V)、I(A)とし、力率をcosθとすると、スター結線及びデルタ結線の場合の電力Pは、3VIcosθ(W)ではなく、√3VIcosθ(W)に低下してしまう。また、デルタ結線においては、デルタ形状の閉回路内に制御困難な循環電流が生じる場合があり、さらに電力が低下する場合がある。これらの理由により、従来の三相電動機を備える駆動装置では、本来期待し得る出力を得ることができなかった。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、従来よりも大きな出力を得ることができる三相電動機を備える駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る駆動装置は、三相の固定子巻線が設けられた固定子を有する三相電動機と、三相電力を供給するための第1のインバータ及び第2のインバータと、を備え、上記三相の固定子巻線の第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、及び第3の固定子巻線は、それぞれ第1のインバータ及び第2のインバータと結線されていない状態では他の固定子巻線と電気的に離間するように上記固定子内に設けられており、第1のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ第1の固定子巻線の第1の端子、第2の固定子巻線の第1の端子、及び第3の固定子巻線の第1の端子に電気的に接続可能に構成され、第2のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ第3の固定子巻線の第2の端子、第1の固定子巻線の第2の端子、及び第2の固定子巻線の第2の端子に電気的に接続可能に構成され、第1のインバータ及び第2のインバータは、同一の周波数、かつ、互いに位相がπ/3だけずれた三相交流を供給可能に構成されている。
【0007】
本発明に係る駆動装置によれば、各固定子巻線の第1の端子に第1のインバータで交流電流を供給し、各固定子巻線の第2の端子に第2のインバータで交流電流を供給することが可能であり、この際、それらの交流電流は逆位相となるため、各固定子巻線に流れる電流は時間平均で0となる。そして、上記固定子において、上記三相の固定子巻線の第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、及び第3の固定子巻線は、第1のインバータ及び第2のインバータと結線されていない状態ではそれぞれ他の固定子巻線と電気的に離間している上に、第1~第3の固定子巻線と、第1及び第2のインバータとの間の結線は、三相交流の各相が独立するように、即ち、第1~第3の固定子巻線が回路的に互いに独立するようになされている。そのため、当該結線において、三相交流の電圧が第1~第3の固定子巻線の線間で分圧されたり、三相交流の電流が回路の枝分かれに起因して分流されたり、閉回路が形成されたりすることはない。その結果、従来よりも大きな出力を得ることが可能となる。
【0008】
さらに、本発明に係る駆動装置は、第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、及び第3の固定子巻線と、第1のインバータ及び第2のインバータとの間の結線状態を、第1の結線状態、第2の結線状態、及び第3の結線状態の間で可逆的に変更する切り替え器をさらに備えることができ、第1の結線状態では、第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、及び第3の固定子巻線は、第1のインバータ又は前記第2のインバータとスター結線され、第2の結線状態では、第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、及び第3の固定子巻線は、第1のインバータ又は前記第2のインバータとデルタ結線され、第3の結線状態では、第1のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ第1の固定子巻線の第1の端子、第2の固定子巻線の第1の端子、及び第3の固定子巻線の第1の端子に電気的に接続され、かつ、第2のインバータから供給される三相交流のU相、V相、及びW相が、それぞれ第3の固定子巻線の第2の端子、第1の固定子巻線の第2の端子、及び第2の固定子巻線の第2の端子に電気的に接続される。
【0009】
これにより、当該切り替え器による切り替え動作のみで第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、及び第3の固定子巻線と、第1のインバータ及び第2のインバータとの間の結線状態を、第1の結線状態、第2の結線状態、及び第3の結線状態のうちのいずれかに可逆的に変更することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来よりも大きな出力を得ることができる三相電動機を備える駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る駆動装置の構成を示す模式図である。
【
図2】第1のインバータ及び第2のインバータの回路構成の例を示す図である。
【
図3】切り替え器及び三相電動機の回路構成の詳細を示す図である。
【
図4】第1のインバータ及び第2のインバータが供給する三相交流の電流波形の例を示す図である。
【
図5】第1の結線状態での第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、第3の固定子巻線の結線状態を示す図である。
【
図6】第2の結線状態での第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、第3の固定子巻線の結線状態を示す図である。
【
図7】第3の結線状態での第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、第3の固定子巻線の結線状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る駆動装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように本実施形態の駆動装置Dは、三相電動機1と、第1のインバータ3と、第2のインバータ5と、切り替え器7と、制御部9を備える。
【0014】
三相電動機1は、三相電力によって動作する電動機であり、例えば誘導電動機又は同期電動機である。三相電動機1は、例えば電気自動車やハイブリッド電気自動車用の動力源として使用される。
【0015】
第1のインバータ3及び第2のインバータ5は、それぞれ直流電源Vから入力された直流を、所定の態様の三相交流に変換して出力する機能を有する三相インバータである。制御部9は、第1のインバータ3及び第2のインバータ5の当該機能に基づく動作等を制御する。切り替え器7は、第1のインバータ3及び第2のインバータ5から出力された三相交流が切り替え器7を介して三相電動機1に供給され得るように構成されている。直流電源Vは、例えば電気自動車やハイブリッド電気自動車に搭載された直流バッテリーである。直流電源Vは、第1のインバータ3及び第2のインバータ5に電気的に接続され、これらに直流電流を供給する。
【0016】
図2は、第1のインバータ及び第2のインバータの回路構成の例を示す図である。第1のインバータ3及び第2のインバータ5はそれぞれ、並列に接続されたトランジスタとダイオードの対を6対有し、
図2に示すように直流電源Vの正極と接続された上部配線と、直流電源Vの負極と接続された下部配線との間に当該対が2対直列に接続されている。
【0017】
第1のインバータ3は、U相出力端子3U、V相出力端子3V、及びW相出力端子3Wを有する。U相出力端子3U、V相出力端子3V、W相出力端子3Wはそれぞれ、上記上部配線と、上記下部配線との間に接続されたトランジスタとダイオードの2対の間に接続されている。同様に、第2のインバータ5は、U相出力端子5U、V相出力端子5V、及びW相出力端子5Wを有する。U相出力端子3U、V相出力端子3V、W相出力端子3Wはそれぞれ、上記上部配線と、上記下部配線との間に接続されたトランジスタとダイオードの2対の間に接続されている。
【0018】
これらのトランジスタとして、パワートランジスタを用いることができる。これらのトランジスタのオン・オフを制御部9(
図1参照)で適切に制御することによって、第1のインバータ3及び第2のインバータ5は、三相電流を出力することができる。第1のインバータ3は、U相出力端子3Uから三相交流のU相を出力し、V相出力端子3Vから三相交流のV相を出力し、W相出力端子3Wから三相交流のW相を出力する。同様に、第2のインバータ5は、U相出力端子5Uから三相交流のU相を出力し、V相出力端子5Vから三相交流のV相を出力し、W相出力端子5Wから三相交流のW相を出力する。
【0019】
図3は、切り替え器及び三相電動機の回路構成の詳細を示す図である。
図3に示すように、切り替え器7は、第1のインバータ3のU相出力端子3U、V相出力端子3V、及びW相出力端子3Wとそれぞれ接続された、U相入力端子7U1、V相入力端子7V1、及びW相入力端子7W1を有する。また、切り替え器7は、第2のインバータ5のU相出力端子5U、V相出力端子5V、及びW相出力端子5Wとそれぞれ接続された、U相入力端子7U2、V相入力端子7V2、及びW相入力端子7W2を有する。
【0020】
また、切り替え器7は、6つの出力端子7a、7b、7c、7d、7e、7fを有する。U相入力端子7U2は、配線E1によって出力端子7fに接続され、W相入力端子7W2は、配線E2によって出力端子7eに接続され、V相入力端子7V2は、配線E3によって出力端子7dに接続されている。配線E2は、スイッチS1を介して配線E5によって出力端子7cに接続され、配線E3は、スイッチS2を介して配線E6によって出力端子7bに接続され、配線E1は、スイッチS3を介して配線E4によって出力端子7aに接続されている。
【0021】
また、W相入力端子7W1は、スイッチS4及びスイッチS7を介して配線E7によって配線E5に接続されており、V相入力端子7V1は、スイッチS5及びスイッチS8を介して配線E8によって配線E6に接続されており、U相入力端子7U1は、スイッチS6及びスイッチS9を介して配線E9によって配線E4に接続されている。また、配線E7と配線E8の間にはスイッチS10が設けられており、配線E8と配線E9の間にはスイッチS11が設けられている。
【0022】
三相電動機1は、三相の固定子巻線が設けられた固定子15を有する。三相の固定子巻線は、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13を有する。第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13は、三相交流が供給された際に、固定子15内の回転子(図示せず)を回転させるための回転磁場を発生するように、互いに120°位相をずらして固定子15内に設けられている。
【0023】
第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13は、それぞれ第1のインバータ3及び第2のインバータ5と結線されていないと仮定した状態では他の固定子巻線と電気的に離間するように、固定子15内に設けられている。即ち、第1の固定子巻線11の一対の端子(第1の端子11a及び第2の端子11b)、第2の固定子巻線12の一対の端子(第1の端子12a及び第2の端子12b)、及び第3の固定子巻線13の一対の端子(第1の端子13a及び第2の端子13b)は、固定子15の構成要素のみで見た場合、互いに電気的に接続されていない。このような電気的な離間は、例えば各固定子巻線の一対の端子と、他の固定子巻線の一対の端子との間に、物理的なギャップを設けたり、絶縁材料を設けたりすることによって実現することができる。
【0024】
各固定子巻線の一対の端子は、それぞれ切り替え器7の6つの出力端子7a、7b、7c、7d、7e、7fのいずれかに接続されている。具体的には、第1の固定子巻線11の第1の端子11aは切り替え器7の出力端子7aに接続され、第1の固定子巻線11の第2の端子11bは切り替え器7の出力端子7dに接続され、第2の固定子巻線12の第1の端子12aは切り替え器7の出力端子7bに接続され、第2の固定子巻線12の第2の端子12bは切り替え器7の出力端子7eに接続され、第3の固定子巻線13の第1の端子13aは切り替え器7の出力端子7cに接続され、第3の固定子巻線13の第2の端子13bは切り替え器7の出力端子7fに接続されている。
【0025】
図1の第1のインバータ3及び第2のインバータ5は、同一の周波数、かつ、互いに位相がπ/3だけずれた三相交流を供給可能に構成されている。
図4は、そのような場合の第1のインバータ及び第2のインバータが供給する三相交流の電流波形の例を示す図である。
図4の(a)は、第1のインバータ3が供給する三相交流を示しており、実線で示される波形は、U相出力端子3U(
図1参照)から出力されるU相電流I3Uを表し、破線で示される波形は、V相出力端子3V(
図1参照)から出力されるV相電流I3Vを表し、一点鎖線で示される波形は、W相出力端子3W(
図1参照)から出力されるW相電流I3Wを表している。
【0026】
また、
図4の(b)は、
図4の(a)の第1のインバータ3と同じタイミングで第2のインバータ5が供給する三相交流を示しており、実線で示される波形は、U相出力端子5U(
図1参照)から出力されるU相電流I5Uを表し、破線で示される波形は、V相出力端子5V(
図1参照)から出力されるV相電流I5Vを表し、一点鎖線で示される波形は、W相出力端子5W(
図1参照)から出力されるW相電流I5Wを表している。本実施形態では、
図4に示されるように、第2のインバータ5から供給される三相電流の位相は、第1のインバータ3から供給される三相電流の位相よりもπ/3だけ進んでいる。
【0027】
図3に示される切り替え器7は、スイッチS1~S11のオン・オフの切り替えによって、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第1のインバータ3及び第2のインバータ5との間の結線状態を、第1の結線状態、第2の結線状態、及び第3の結線状態の間で可逆的に変更する機能を有する。
【0028】
(第1の結線状態、スター結線)
第1の結線状態では、
図3に示す切り替え器7のスイッチS1、S2、S3、S4、S5、S6をオフにし、スイッチS7、S8、S9、S10、S11をオンにする。
図5は、第1の結線状態での第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、第3の固定子巻線の結線状態を示す図である。
図5に示すように、この結線状態では、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とが、スター結線される。
【0029】
即ち、第1の固定子巻線11の第1の端子11a、第2の固定子巻線12の第1の端子12a、及び第3の固定子巻線13の第1の端子13aが電気的に接続されるため、出力端子7a、7b、7cが中性点となる。第1の固定子巻線11の第2の端子11bは、出力端子7d及びV相入力端子7V2を介して第2のインバータ5のV相出力端子5Vと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるV相と電気的に接続される。第2の固定子巻線12の第2の端子12bは、出力端子7e及びW相入力端子7W2を介して第2のインバータ5のW相出力端子5Wと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるW相と電気的に接続される。第3の固定子巻線13の第2の端子13bは、出力端子7f及びU相入力端子7U2を介して第2のインバータ5のU相出力端子5Uと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるU相と電気的に接続される。
【0030】
このようにして、第1の結線状態では、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とをスター結線させて、第2のインバータ5から第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13に三相交流を供給することによって、三相電動機1を動作させることができる。
【0031】
(第2の結線状態、デルタ結線)
第2の結線状態では、
図3に示す切り替え器7のスイッチS1、S2、S3をオンにし、スイッチS4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11をオフにする。
図6は、第2の結線状態での第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、第3の固定子巻線の結線状態を示す図である。
図6に示すように、この結線状態では、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とが、デルタ結線される。
【0032】
即ち、第1の固定子巻線11の第1の端子11aと第3の固定子巻線13の第2の端子13bが、互いに電気的に接続されて出力端子7a、7f及びU相入力端子7U2を介して第2のインバータ5のU相出力端子5Uと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるU相と電気的に接続される。また、第1の固定子巻線11の第2の端子11bと第2の固定子巻線12の第1の端子12aが、互いに電気的に接続されて出力端子7b、7d及びV相入力端子7V2を介して第2のインバータ5のV相出力端子5Vと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるV相と電気的に接続される。また、第2の固定子巻線12の第2の端子12bと第3の固定子巻線13の第1の端子13aが、互いに電気的に接続されて出力端子7c、7e及びW相入力端子7W2を介して第2のインバータ5のW相出力端子5Wと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるW相と電気的に接続される。
【0033】
このようにして、第2の結線状態では、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とをデルタ結線させて、第2のインバータ5から第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13に三相交流を供給することによって、三相電動機1を動作させることができる。
【0034】
(第3の結線状態、スプリット結線)
第2の結線状態では、
図3に示す切り替え器7のスイッチS1、S2、S3、S10、S11をオフにし、スイッチS4、S5、S6、S7、S8、S9をオンにする。
図7は、第3の結線状態での第1の固定子巻線、第2の固定子巻線、第3の固定子巻線の結線状態を示す図である。
図7に示すように、この結線状態では、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とが、本明細書中でスプリット結線と表現される態様で結線される。
【0035】
即ち、第1の固定子巻線11の第1の端子11aは、出力端子7a、U相入力端子7U1を介して第1のインバータ3のU相出力端子3Uと電気的に接続されるため、第1のインバータ3から供給されるU相と電気的に接続される。また、第1の固定子巻線11の第2の端子11bは、出力端子7d、V相入力端子7V2を介して第2のインバータ5のV相出力端子5Vと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるV相と電気的に接続される。
【0036】
また、第2の固定子巻線12の第1の端子12aは、出力端子7b、V相入力端子7V1を介して第1のインバータ3のV相出力端子3Vと電気的に接続されるため、第1のインバータ3から供給されるV相と電気的に接続される。また、第2の固定子巻線12の第2の端子12bは、出力端子7e、W相入力端子7W2を介して第2のインバータ5のW相出力端子5Wと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるW相と電気的に接続される。
【0037】
また、第3の固定子巻線13の第1の端子13aは、出力端子7c、W相入力端子7W1を介して第1のインバータ3のW相出力端子3Wと電気的に接続されるため、第1のインバータ3から供給されるW相と電気的に接続される。また、第3の固定子巻線13の第2の端子13bは、出力端子7f、U相入力端子7U2を介して第2のインバータ5のU相出力端子5Uと電気的に接続されるため、第2のインバータ5から供給されるU相と電気的に接続される。
【0038】
そのため、第1の固定子巻線11の第1の端子11aには、第1のインバータ3からU相交流が供給され、第1の固定子巻線11の第2の端子11bには、第2のインバータ5からV相交流が供給され、第2の固定子巻線12の第1の端子12aには、第1のインバータ3からV相交流が供給され、第2の固定子巻線12の第2の端子12bには、第2のインバータ5からW相交流が供給され、第3の固定子巻線13の第1の端子13aには、第1のインバータ3からW相交流が供給され、第3の固定子巻線13の第2の端子13bには、第2のインバータ5からU相交流が供給される。
【0039】
そして、第3の結線状態では、第1のインバータ3及び第2のインバータ5は、同一振幅及び同一周波数の三相交流を第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13に供給するが、第2のインバータ5から供給される三相電流の位相は、第1のインバータ3から供給される三相電流の位相よりもπ/3だけ進んでいる(
図4参照)。そのため、各固定子巻線の第1の端子と第2の端子には、互いに逆位相の交流が印加される。例えば、上述のように第1の固定子巻線11の第1の端子11aには第1のインバータ3からU相交流が供給され、第1の固定子巻線11の第2の端子11bには、第2のインバータ5からV相交流が供給されるが、V相はU相よりも120°位相が進んでいることに加えて、第2のインバータ5から供給される三相電流の位相は、第1のインバータ3から供給される三相電流の位相よりもπ/3だけ進んでいるため、これらの交流の位相差は180°となる。第2の固定子巻線12及び第3の固定子巻線13についても、同様となる。
【0040】
このようにして、第3の結線状態では、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とをスプリット結線させて、三相電動機1を動作させることができる。
【0041】
上述のような本実施形態に係る駆動装置Dによれば、第3の結線状態にすることによって、各固定子巻線11、12、13の第1の端子11a、12a、13aに第1のインバータ3で交流電流を供給し、各固定子巻線11、12、13の第2の端子11b、12b、13bに第2のインバータ5で交流電流を供給することが可能であり、この際、それらの交流電流は逆位相となるため、各固定子巻線11、12、13に流れる電流は時間平均で0となる(
図4及び
図7参照)。
【0042】
そして、固定子15において、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13は、第1のインバータ3及び第2のインバータ5と結線されていない状態ではそれぞれ他の固定子巻線と電気的に離間している上に、第1~第3の固定子巻線11、12、13と、第1及び第2のインバータ3、5との間の結線は、三相交流の各相が独立するように、即ち、第1~第3の固定子巻線11、12、13が回路的に互いに独立するようになされている(
図7参照)。そのため、当該結線において、三相交流の電圧が第1~第3の固定子巻線11、12、13の線間で分圧されたり、三相交流の電流が回路の枝分かれに起因して分流されたり、閉回路が形成されたりすることはない。その結果、従来よりも大きな出力を得ることが可能となる。具体的には、インバータに入力される直流の電圧及び電流をそれぞれV(V)、I(A)とし、力率をcosθとすると、第1の結線状態(スター結線)及び第2の結線状態(デルタ結線)の場合の第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13の電力Pは、√3VIcosθ(W)であるのに対して、第3の結線状態(スプリット結線)の場合の第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13の電力Pは、3VIcosθ(W)となる。
【0043】
また、上述のような本実施形態に係る駆動装置Dは、上述のような切り替え器7を備えている(
図7参照)。これにより、切り替え器7による切り替え動作のみで第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第1のインバータ3及び第2のインバータ5との間の結線状態を、第1の結線状態(スター結線)、第2の結線状態(デルタ結線)、及び第3の結線状態(スプリット結線)のうちのいずれかに可逆的に変更することができる。
【0044】
本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
【0045】
例えば、上述の実施形態では、第1の結線状態(スター結線)において、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とが、スター結線されるが(
図7参照)、これに加えて、1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第1のインバータ3とが、スター結線され得るように切り替え器7が構成されていてもよい。この場合、第1のインバータ3及び第2のインバータ5の一方が故障した場合であっても、他方のインバータと、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13とをスター結線させて三相電動機1を動作させることができる。
【0046】
また、上述の実施形態では、第2の結線状態(デルタ結線)において、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第2のインバータ5とが、デルタ結線されるが(
図7参照)、これに加えて、1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13と、第1のインバータ3とが、デルタ結線され得るように切り替え器7が構成されていてもよい。この場合、第1のインバータ3及び第2のインバータ5の一方が故障した場合であっても、他方のインバータと、第1の固定子巻線11、第2の固定子巻線12、及び第3の固定子巻線13とをデルタ結線させて三相電動機1を動作させることができる。
【0047】
また、上述の実施形態では、第3の結線状態(スプリット結線)において、第2のインバータ5から供給される三相電流の位相は、第1のインバータ3から供給される三相電流の位相よりもπ/3だけ進んでいるが(
図4参照)、第2のインバータ5から供給される三相電流の位相は、第1のインバータ3から供給される三相電流の位相よりもπ/3だけ遅れていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…三相電動機、3…第1のインバータ、5…第2のインバータ、7…切り替え器、11…第1の固定子巻線、11a…第1の固定子巻線の第1の端子、11b…第1の固定子巻線の第2の端子、12…第2の固定子巻線、12a…第2の固定子巻線の第1の端子、12b…第2の固定子巻線の第2の端子、13…第3の固定子巻線、13a…第3の固定子巻線の第1の端子、13b…第3の固定子巻線の2の端子、15…固定子。