(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182339
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両用ケーブルガイド装置
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20231219BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20231219BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 075
H02G3/04 087
B60R16/02 620C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095878
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】今村 健太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 健志
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DA10
5G357DC12
5G357DD04
5G357DD16
5G357DE08
5G357DG04
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA02
(57)【要約】
【課題】ケーブルガイド装置を乗員の目線から目視しづらくして外観的な見栄えを向上し、ケーブルガイドの車体側取付部との接続部分の強度を向上して、乗員が踏みつけ等に起因したケーブルガイドの破損によるケーブルの損傷を防止する。
【解決手段】車体側取付部7と、ドア側取付部8と、湾曲可能に形成され内部にケーブルが挿通され、両端が車体側取付部7及びドア側取付部8にそれぞれ接続されたケーブルガイド9と、車体側取付部7に回転自在に支持されて車体側取付部7の内部において回転可能に配設され、ケーブルガイド9に接続されてケーブルガイド9内のケーブルが内部に導入される回転プロテクタ11とを備える。回転プロロテクタ11は、スライドドアの開放によりその一部が車体側取付部7から露出するように回転し、スライドドアの閉塞により車体側取付部7の内部に収納されるように回転する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体とスライドドアとの間に架設されるケーブルをガイドする車両用ケーブルガイド装置において、
前記車体に取り付けられる車体側取付部と、
前記スライドドアに取り付けられるドア側取付部と、
複数のガイド体が数珠繋ぎ状に連結されて平面視で湾曲可能に形成され、内部に前記ケーブルが挿通され、一端及び他端が前記車体側取付部及び前記ドア側取付部にそれぞれ接続されたケーブルガイドと、
支持部が前記車体側取付部に回転自在に支持されて前記車体側取付部の内部において回転可能に配設され、前記ケーブルガイドの一端に接続されて前記ケーブルガイドに挿通されている前記ケーブルが内部に導入された回転プロテクタと
を備え、
前記回転プロテクタは、前記ケーブルガイドの湾曲に応じて前記車体側取付部の内部において回転するものであって、前記スライドドアの開放により、前記回転プロテクタの一部が前記車体側取付部から露出するように回転し、前記スライドドアの閉塞により、前記回転プロテクタが前記車体側取付部の内部に収納されるように回転する
ことを特徴とする車両用ケーブルガイド装置。
【請求項2】
前記回転プロテクタは、
平面視で扇形を有し、当該扇形の中心部分が前記車体側取付部に回転自在に枢支され、一方側面から円弧状の空洞内部に前記ケーブルが導入されて、導入された前記ケーブルが前記円弧状の空洞に沿って配設され、一方向への回転時にその一部が前記車体側取付部から露出した状態になり、他方向への回転時に前記車体側取付部の内部に収納された状態になる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ケーブルガイド装置。
【請求項3】
前記車体側取付部は、
前記回転プロテクタの一方向への回転時に、前記回転プロテクタの前記一部が前記車体側取付部から露出した状態に保持されるように前記一方向への過剰な回転を規制する一方規制部、及び、前記回転プロテクタの他方向への回転時に、前記回転プロテクタが前記車体側取付部の内部に収納された状態に保持されるように前記他方向への過剰な回転を規制する他方規制部を有し、
前記回転プロテクタの前記一方向及び前記他方向への回転時に、前記回転プロテクタの他方側面から導出されて前記車体側取付部の外部のコネクタに接続される前記ケーブルの端部が可動する可動スペースを内部に有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用ケーブルガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体とスライドドアとの間に架設されるケーブルをガイドする車両用ケーブルガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のスライドドアに内装された電装品に給電するために、車体とスライドドアとの間にケーブルを架設するが、その際、特許文献1に記載のようなケーブルガイド装置により、ケーブルを保護しつつ所定の形態に案内することが行われている。
【0003】
この種のケーブルガイド装置は、内部にケーブルが挿通されるケーブルガイドと、車体に取り付けられる車体側取付部と、スライドドアの下端に取り付けられるドア側取付部とを備え、ケーブルガイドは湾曲変形可能に構成され、ケーブルガイドの一端及び他端が車体側取付部及びドア側取付部にそれぞれ接続され、スライドドアの開閉に伴ってドア側取付部が移動する。なお、車体側取付部はスライドドアの開閉により移動することはない。
【0004】
具体的には、スライドドアの閉塞時には、ケーブルガイドはスライドドアの例えばドアトリムの下端に沿って車両前後方向に伸びた形状を成し、スライドドアの開放時には、スライドドアの車両後方へのスライドに連動してケーブルガイドの車体側取付部に近い部分が車両外部に膨らむように湾曲変形しつつ、ドア側取付部が移動し、ケーブルガイドの内部のケーブルが保護されつつ、スライドドアの開状態、閉状態に応じた形態に案内される。
【0005】
このとき、例えば
図7に示すように、断面コ字状を有する複数の樹脂製ガイド体50の一端が、隣接するガイド体50の他端に枢支されて回転可能に数珠繋ぎ状に連結されることにより、ケーブルガイド51が形成され、ケーブルガイド51と、車体側取付部52及びドア側取付部53とは、ケーブルガイド51の両端に位置するガイド体50が車体側取付部52及びドア側取付部53にそれぞれ接続された状態で車両に組付けられており、1つ1つのガイド体50が回転することによりケーブルガイド51全体が湾曲変形し、スライドドアの開、閉動作に追従するようになっている。ここで、ケーブルガイドの長さはスライドドアの開、閉動作に追従できるように設定されている。尚、
図7において、54は車体に固定されケーブルガイド51内のケーブル端部が接続される給電用のケーブルコネクタである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-135891号公報(段落0017~0042、
図1~
図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、スライドドアが閉塞している状態では、
図7中の実線に示すようにケーブルガイド51はスライドドアの例えばドアトリムの下端に沿うように配置されるため、ドア側取付部が車両前方寄りに配置されている場合には、スライドドアから搭乗したリア席の乗員からケーブルガイド51の前寄りの部分が目視することが可能になり、外観的に見栄えを損なうおそれがある。他方、ケーブルガイド51の前寄りの部分をリア席の乗員から見えにくくするには、ドア側取付部をできるだけ車両後方寄りに配置すればよいが、ドア側取付部53を車両後方にずらして配置すると、ケーブルガイド51の長さが短くなってスライドドアの開動作及び閉動作、特に開動作に追従できなくなる不具合が生じるため、見栄え改善のためにドア側取付部53を車両後方にずらすにも限界がある。
【0008】
また、
図7に示す従来のケーブルガイド装置の場合、スライドドアが開放している状態では、
図7中の破線に示すようにケーブルガイド51が湾曲変形しており、ケーブルガイド51の車体側取付部52との接続部分が車体のドア開口部近くに位置するため、リア席の乗員が降車する際に、ケーブルガイド51の車体側取付部52との接続部分のガイド体50を踏みつけたり荷物が接触したりして樹脂製の当該ガイド体50を破損し、ケーブルガイド51の内部に挿通されたケーブルを損傷するおそれもある。
【0009】
本発明は、ケーブルガイド装置を乗員の目線から目視しづらくして外観的な見栄えを向上でき、ケーブルガイドの車体側取付部との接続部分の強度を向上して、乗員の踏みつけ等に起因したケーブルガイドの破損によるケーブルガイド内部のケーブルの損傷を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用ケーブルガイド装置は、車体とスライドドアとの間に架設されるケーブルをガイドする車両用ケーブルガイド装置において、前記車体に取り付けられる車体側取付部と、前記スライドドアに取り付けられるドア側取付部と、複数のガイド体が数珠繋ぎ状に連結されて平面視で湾曲可能に形成され、内部に前記ケーブルが挿通され、一端及び他端が前記車体側取付部及び前記ドア側取付部にそれぞれ接続されたケーブルガイドと、支持部が前記車体側取付部に回転自在に支持されて前記車体側取付部の内部において回転可能に配設され、前記ケーブルガイドの一端に接続されて前記ケーブルガイドに挿通されている前記ケーブルが内部に導入された回転プロテクタとを備え、前記回転プロテクタは、前記ケーブルガイドの湾曲に応じて前記車体側取付部の内部において回転するものであって、前記スライドドアの開放により、前記回転プロテクタの一部が前記車体側取付部から露出するように回転し、前記スライドドアの閉塞により、前記回転プロテクタが前記車体側取付部の内部に収納されるように回転することを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、スライドドアの開放時に、回転プロテクタのケーブルが車体側取付部から一部露出することにより、ケーブルガイドを車体側取付部に直結した場合に比べて、回転プロテクタの露出分だけケーブルガイドの変位量が多くなる一方、スライドドアの閉塞時には、回転プロテクタは車体側取付部に収納された状態になり、その結果スライドドアの閉塞状態におけるドア側取付部と車体側取付部との間ケーブルガイドの長さは、ケーブルガイドを車体側取付部に直結した場合とほぼ変わらないことから、回転プロテクタはケーブルガイドの変位量の可変作用を発揮することができる。
【0012】
したがって、スライドドアの開、閉に伴う回転プロテクタの回転によって、スライドドアの開放時には、スライドドアの閉塞時よりもケーブルガイドの変位量を増加させることが可能になって、ケーブルガイドの他端を接続するドア側取付部のスライドドアへの取り付け位置を車両の後方側に寄せることができるため、乗り込んだ乗員の目線からケーブルガイド装置を目視することが困難になり、外観的な見栄えの向上を図ることができる。
【0013】
さらに、スライドドア開放時には、回転プロテクタが車体側取付部から一部露出した状態になり、回転プロテクタにより、ケーブルガイドと車体側取付部との間を補強してケーブルガイドの車体側取付部との接続部分の強度を向上することができるため、開放状態のスライドドアから降車し、或いは車内に乗り込もうとする乗員が、ケーブルガイドの車体側取付部との接続部分を誤って踏みつけたり乗員の荷物が接触したりしても、開放状態のスライドドアと車体との間に露出した回転プロテクタが介在することにより、乗員がケーブルガイドを直接踏みつけたりケーブルガイドに直接荷物が接触したりすることを防止でき、従来のような乗員の踏みつけ等に起因したケーブルガイドの破損を未然に防止してケーブルガイド内部のケーブルの損傷を防止することができる。
【0014】
また、前記回転プロテクタは、平面視で扇形を有し、当該扇形の中心部分が前記車体側取付部に回転自在に枢支され、一方側面から円弧状の空洞内部に前記ケーブルが導入されて、導入された前記ケーブルが前記円弧状の空洞に沿って配設され、一方向への回転時にその一部が前記車体側取付部から露出した状態になり、他方向への回転時に前記車体側取付部の内部に収納された状態になるようにしてもよい。
【0015】
こうすると、回転プロテクタが、スライドドアの開動作に伴い一方向へ回転してその一部が車体側取付部から露出した状態になり、スライドドアの閉動作に伴い他方向に回転して車体側取付部の内部に収納された状態になるため、スライドドアの開動作、閉動作に円滑に追従して回転プロテクタを回転させることができる。
【0016】
また、前記車体側取付部は、前記回転プロテクタの一方向への回転時に、前記回転プロテクタの前記一部が前記車体側取付部から露出した状態に保持されるように前記一方向への過剰な回転を規制する一方規制部、及び、前記回転プロテクタの他方向への回転時に、前記回転プロテクタが前記車体側取付部の内部に収納された状態に保持されるように前記他方向への過剰な回転を規制する他方規制部を有し、前記回転プロテクタの前記一方向及び前記他方向への回転時に、前記回転プロテクタの他方側面から導出されて前記車体側取付部の外部のコネクタに接続される前記ケーブルの端部が可動する可動スペースを内部に有するとよい。
【0017】
この構成によれば、スライドドアの開動作によって回転プロテクタが一方向に回転すると、車体側取付部の一方規制部により回転プロテクタの一方向への過剰な回転を規制して、回転プロテクタをその一部が車体側取付部から露出した状態に保持することができるとともに、スライドドアの閉動作によって回転プロテクタが他方向に回転すると、車体側取付部の他方規制部により回転プロテクタの他方向への過剰な回転を規制して、回転プロテクタが車体側取付部の内部に収納された状態に保持することができる。
【0018】
さらに、車体側取付部の内部に可動スペースを形成したため、回転プロテクタの一方向及び他方向に回転したときに、回転プロテクタの他方側面から導出されて車体側取付部の外部のコネクタに接続されるケーブルの端部が可動スペースを移動できるため、スライドドアの開閉に伴う回転プロテクタが回転する際に、回転プロテクタの他方側面から導出されたケーブルの端部に負荷がかかることを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケーブルガイド装置を乗員の目線から目視しづらくして外観的な見栄えの向上を図ることができる。また、ケーブルガイドの車体側取付部との接続部分の強度を回転プロテクタにより向上でき、乗員の踏みつけ等に起因したケーブルガイドの破損によるケーブルガイド内部のケーブルの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る車両用ケーブルガイド装置の一実施形態を示し、ケーブルガイド装置を車体に組付けた状態の示し、スライドドア開状態における一部の斜視図である。
【
図2】
図1の一部を、スライドドア閉状態における車室内から車外方向を見た側面図である。
【
図3】
図2におけるケーブルガイド装置の斜視図である。
【
図4】
図2の一部である車体側取付部の分解斜視図である。
【
図5】スライドドア開状態における
図3の車体側取付部の分解斜視図である。
【
図6】スライドドア閉状態における
図3の車体側取付部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る車両用ケーブルガイド装置の一実施形態について
図1ないし
図6を参照して詳細に説明する。
【0022】
本実施形態における車両用ケーブルガイド装置は、
図1~
図6に示すように構成される。なお、
図1、
図2は車両用ケーブルガイド装置を車体に組み付けた状態を示し、
図3は車両用ケーブルガイド装置の一部の斜視図、
図4は車体側取付部の分解斜視図、
図5、
図6はそれぞれスライドドア開状態、閉状態における車体側取付部の分解斜視図である。
【0023】
図1、
図2において、1は車体、2は車体1に形成されスライドドア用開口、3はアウターパネル(図示省略)、インナーパネル3a、ドアトリム3b等から成り駆動モータ(図示せず)の駆動によりスライドガイドに沿って車両前後方向にスライドして開口2を開閉するスライドドア、4は車体1とスライドドア3との間に架設されスライドドア3の駆動モータへの給電用ケーブルをガイドするケーブルガイド装置である。
【0024】
そして、ケーブルガイド装置4は、特に
図2に示されるように、閉状態のスライドドア3のドアトリム3bの下端と開口2の下端の車体1との間の隙間6に配設され、
図3~
図6に示すように、車体1の車室床面にボルト等により固定して取り付けられる車体側取付部7と、スライドドア3にボルト等により固定して取り付けられるドア側取付部8と、複数の樹脂製ガイド体9aが数珠繋ぎ状に連結されて平面視で湾曲可能に形成され、内部にケーブル10が挿通され、一端及び他端が車体側取付部7及びドア側取付部8にそれぞれ例えば嵌合により接続されたケーブルガイド9と、支持部10aが車体側取付部7に回転自在に支持されて車体側取付部7の内部において回転可能に配設され、ケーブルガイド9の一端に接続されてケーブルガイド9内に挿通されたケーブル10が内部に導入される回転プロテクタ11とを備える。なお、
図2、
図3、
図5、
図6において、12は車体1の車室床面に固定されてケーブル10の端部が接続されバッテリからの電力を供給する給電用のコネクタである。
【0025】
このとき、ケーブルガイド9は周知構成によって湾曲可能に形成されており、例えば上壁、下壁及びこれら上下壁を連結する側壁を有するコ字状を成す樹脂製のガイド体9aを、それぞれの上下壁の一端が側壁に近い位置において隣接するガイド体9aの他端の側壁に近い位置で回転自在に連結することにより、複数のガイド体9aが数珠繋ぎ状に湾曲可能に連結することができる。なお、ケーブルガイド9の構成は、このような複数のガイド体9aにより構成に限るものではなく、湾曲可能な構成であればどのようでもよい。
【0026】
車体側取付部7は、
図4に示すようにほぼ四角形の外観を有し、上下2分割される上ケース7a及び下ケース7bを備え、合体状態の上、下ケース7a,7bの内部には、上ケース7aの上面7c、下ケース7bの下面7d、合体状態の上ケース7aの周側面7e1及び下ケース7bの周側面7e2による周側面7eで囲まれた空間7fが形成され、この空間7fに回転プロテクタ11が回転自在に収納されている。
【0027】
さらに、車体側取付部7の空間7fには、上ケース7aの上面7cの内面側に扇形の上肉厚部7gが形成され、下ケース7bの下面7dの内面側に扇形の下肉厚部7hが形成され、上肉厚部7g及び下肉厚部7hそれぞれに横断面円形の凹穴7i,7jが穿設され、これら両凹穴7i,7jに後述する回転プロテクタ11の突起部が嵌挿することにより、回転プロテクタ11が車体側取付部7の空間7fを回転可能に枢支されている。
【0028】
そして、上、下ケース7a,7bの上、下肉厚部7g,7hは、上、下ケース7a,7bの合体時に後述する回転プロテクタ11の扇形の平板状基部の厚みとほぼ同じか若干大きい隙間ができるように形成されており、この隙間において回転プロテクタ11の基部が下肉厚部7hの上面を摺動するように移動して回転プロテクタ11が回転する。
【0029】
さらに、車体側取付部7の周側面7eの一の隅部には、後述する回転プロテクタ11の円弧部が外部に露出するための露出開口7kが形成され、車体側取付部7の周側面7eの他の隅部には、回転プロテクタ11の円弧部から導出されたケーブル10の端部を更に車体側取付部7の外部に導出するための導出開口7lが形成され、導出開口7lから車体側取付部7の外部に導出されたケーブル10の端部がコネクタ12に接続されている。
【0030】
ところで、回転プロテクタ11は、扇形の平板状基部11aと、断面矩形のケーブル収容空間を有し基部11aの円弧に沿って一体的に設けられ内部にケーブル10が導入される円弧部11bと、扇形の基部11aのほぼ中心に上下に延出して形成された突起部11c(本発明にける「支持部」に相当)とを備えている。ここで、円弧部11bが、本発明における「ケーブルの導入部分」に相当する。
【0031】
円弧部11bは縦断面矩形で円弧状の空洞を有し、内部に給電用のケーブル10が挿通される。突起部11cが上、下ケース7a,7bの上、下肉厚部7g,7hそれぞれに穿設された凹穴7i,7jに上端、下端が嵌挿し、これにより回転プロテクタ11が上、下ケース7a,7b内部の空間7fにおいて回転自在に枢支される。
【0032】
そして、回転プロテクタ11の回転に伴い、車体側取付部7の空間7fにおいて、回転プロテクタ11の円弧部11bから導出されたケーブル10が可動するようになっており、空間7fは本発明における「可動スペース」としての役目を果たす。
【0033】
ところで、回転プロテクタ11は、ケーブルガイド9の湾曲に応じて車体側取付部7の空間7fで回転し、上記したスライドドア3の開放により、ケーブル10が導入されている回転プロテクタ11の円弧部11bの一部が空間7fから車体側取付部7の外部に露出するように回転し、スライドドア3の閉塞により、回転プロテクタ11全体が車体側取付部7の空間7fに収納されるように回転する。
【0034】
また、
図5に示すように、スライドドア3の開動作により回転プロテクタ11が回転して、車体側取付部7の露出開口7kから回転プロテクタ11の一部が外部に露出する際に、円弧部11bから可動スペースとしての空間7fに導出されて車体側取付部7の導出開口7l付近で屈曲するケーブル10が、車体側取付部7の周側面7eの内面に当接して回転プロテクタ11の露出方向への過剰な回転が規制される。このように、車体側取付部7の導出開口7l付近で屈曲するケーブル10が当接する車体側取付部7の周側面7eが、本発明における一方規制部7mとしての役目を果たす。
【0035】
さらに、
図6に示すように、スライドドア3の閉動作により回転プロテクタ11が回転して回転プロテクタ11全体が車体側取付部7に収納される際に、円弧部11bから可動スぺースとしての空間7fに導出された直後のケーブル10の屈曲部分が、車体側取付部7の周側面7eの内面に当接して回転プロテクタ11の収納方向への過剰な回転が規制される。このように、回転プロテクタ11の円弧部11bからの導出直後におけるケーブル10の屈曲部分が当接する車体側取付部7の周側面7eが、本発明における他方規制部7nとしての役目を果たす。
【0036】
そして、スライドドア3の開放時に、回転プロテクタ11が車体側取付部7から一部露出することにより、ケーブルガイド9を車体側取付部7に直結した場合に比べて、回転プロテクタ11の露出分だけケーブルガイド9の変位量が多くなる一方、スライドドア3の閉塞時には、回転プロテクタ11は車体側取付部7に収納された状態になり、その結果スライドドア3の閉塞状態におけるドア側取付部8と車体側取付部7との間ケーブルガイド9の長さは、ケーブルガイド9を車体側取付部7に直結した場合とほぼ変わらないことから、回転プロテクタ11はケーブルガイド9の変位量の可変作用を発揮する。
【0037】
そのため、スライドドア3の開、閉に伴う回転プロテクタ11の回転によって、スライドドア3の開放時には、スライドドア3の閉塞時よりもケーブルガイド9の変位量を増加させることが可能になって、ケーブルガイド98の他端を接続するドア側取付部のスライドドア3への取り付け位置を車両の後方側に寄せることができるため、
図2に示すように、車両の乗員の目線からケーブルガイド装置4を目視することが困難になって外観的な見栄えが向上する。
【0038】
また、スライドドア3の開放時には、回転プロテクタ11が車体側取付部7からその一部を露出した状態になり、回転プロテクタ11により、ケーブルガイド9と車体側取付部7との間を補強してケーブルガイド9の車体側取付部7との接続部分の強度を向上することができるため、開放状態のスライドドア3から降車し、或いは車内に乗り込もうとする乗員が、ケーブルガイド9の車体側取付部7との接続部分を誤って踏みつけたり乗員の荷物が接触したりしても、開放状態のスライドドア3と車体1との間に露出した回転プロテクタ11が介在することにより、乗員がケーブルガイド9を直接踏みつけたりケーブルガイド9に直接荷物が接触したりするのを防止でき、従来のような乗員の踏みつけ等に起因したケーブルガイド9の破損を未然に防止してケーブルガイド9の内部のケーブル10の損傷が防止される。
【0039】
したがって、上記した実施形態によれば、スライドドア3の開、閉に伴う回転プロテクタ11の回転によって、スライドドア3の開放時には、スライドドア3の閉塞時よりもケーブルガイド9の変位量を増加させることが可能になって、ケーブルガイド9の他端を接続するドア側取付部のスライドドア3への取り付け位置を車両の後方側に寄せることができるため、ケーブルガイド装置4を乗員の目線から目視しづらくして外観的な見栄えの向上を図ることができる。
【0040】
また、ケーブルガイド9の車体側取付部7との接続部分の強度を回転プロテクタ11により向上でき、スライドドア開放時に乗員の踏みつけ等に起因したケーブルガイド9の破損を防止することができ、ケーブルガイド9の破損によるケーブルガイド9の内部のケーブル10の損傷を防止することができる。
【0041】
また、平面視で扇形の回転プロテクタ11を設けたため、スライドドア3の開動作に伴う回転により回転プロテクタ11がその一部を車体側取付部7から露出した状態になり、スライドドア3の閉動作に伴う回転により車体側取付7部の内部に回転プロテクタ11が収納された状態になるため、スライドドア3の開動作、閉動作に円滑に追従して回転プロテクタ11を回転させることができる。
【0042】
また、スライドドア3の開動作によって回転プロテクタ11が回転するときに、車体側取付部7の一方規制部7mにより回転プロテクタ11の過剰な回転が規制され、回転プロテクタ11の円弧部11bが車体側取付部7から露出した状態に保持することができるとともに、スライドドア3の閉動作によって回転プロテクタ11が回転するときに、車体側取付部7の他方規制部7nにより回転プロテクタ11の過剰な回転が規制され、回転プロテクタ11が車体側取付部7の内部の空間7fに収納された状態に保持することができる。
【0043】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0044】
例えば上記した実施形態では、回転プロテクタ11を、厚みの異なる基部11aと円弧部11bとを有する形状のものとして説明したが、厚みが均一な平面視扇形を有し、円弧部分に両端面が開口したケーブル10を導入可能な円弧状の空洞が形成されたものであってもよい。
【0045】
また、回転プロテクタ11は、車体側取付部7の空間7fにおいて回転可能であってケーブル10を導入可能な部分を備えていればよく、必ずしも上記実施形態のような扇形の基部11aと円弧部11bを有する必要はない。
【0046】
また、上記した実施形態では、回転プロテクタ11の一方向及び他方向への回転をそれぞれ規制する一方規制部7m及び他方規制部7nを車体側取付部7に設けた例を示したが、これら規制部7m,7nを必ずしも設ける必要はない。
【0047】
本発明は、車体とスライドドアとの間に架設されるケーブルをガイドする車両用ケーブルガイド装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 …車体
3 …スライドドア
4 …ケーブルガイド装置
7 …車体側取付部
7m …一方規制部
7n …他方規制部
8 …ドア側取付部
9 …ケーブルガイド
9a ガイド体
10 …ケーブル
11 …回転プロテクタ
11b…円弧部(円弧状の空洞)
11c…突起部(支持部)