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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182352
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20231219BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095894
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇史
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB01
5E070AB10
5E070BA12
5E070CB03
5E070CB13
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】内部応力が緩和された積層コイル部品の提供。
【解決手段】絶縁体部と、前記絶縁体部に埋設されたコイルと、前記絶縁体部の表面に設けられ、前記コイルと電気的に接続された外部電極とを含む積層コイル部品であって、前記コイルは、複数のコイル導体層と、ビア導体とを含み、積層方向に隣り合う前記コイル導体層は、その末端に位置するランド部において、ビア導体を介して電気的に接続されて構成されており、前記コイル導体層の両端に位置する前記ランド部の間には、第1空隙部が存在する、積層コイル部品。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体部と、
前記絶縁体部に埋設されたコイルと、
前記絶縁体部の表面に設けられ、前記コイルと電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記コイルは、複数のコイル導体層と、ビア導体とを含み、
積層方向に隣り合う前記コイル導体層は、その末端に位置するランド部において、ビア導体を介して電気的に接続されており、
前記コイル導体層の両端に位置する前記ランド部の間には、第1空隙部が存在する、
積層コイル部品。
【請求項2】
前記コイル導体層の両端に位置する前記ランド部の端部における主面と、前記絶縁体部との間に、第2空隙部が存在する、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記コイル導体層の一の主面と、前記絶縁体部との間に、第3空隙部が存在する、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記コイル導体層の両端に位置する前記ランド部の端部における主面と、前記絶縁体部との間に、第2空隙部が存在し、前記コイル導体層の一の主面と、前記絶縁体部との間に、第3空隙部が存在する、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記第1空隙部と、前記第2空隙部は、一体に形成されている、請求項2に記載の積層コイル部品。
【請求項6】
前記第1空隙部及び前記第2空隙部の厚みは、前記第3空隙部の厚みよりも小さい、請求項4に記載の積層コイル部品。
【請求項7】
前記第1空隙部及び前記第2空隙部の厚みの、前記第3空隙部の厚みに対する比は、0.2以上0.8以下である、請求項4に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層コイル部品において、内部応力の緩和のために、素体内部に空隙を設けることが知られている。例えば、特許文献1には、素体内において、第一方向に互いに離間しており且つ互いに電気的に接続されている複数の内部導体を含んでいるコイルと、内部導体の表面に接しており且つ粉体が存在している複数の応力緩和空間と、を備えた積層コイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-059749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような積層コイル部品では、内部導体上に設けられた応力緩和空間により内部応力が緩和されているものの、かかる応力緩和空間だけでは、応力緩和効果が十分でないおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、高度に内部応力が緩和された積層コイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 絶縁体部と、
前記絶縁体部に埋設されたコイルと、
前記絶縁体部の表面に設けられ、前記コイルと電気的に接続された外部電極と
を含む積層コイル部品であって、
前記コイルは、複数のコイル導体層と、ビア導体とを含み、
積層方向に隣り合う前記コイル導体層は、その末端に位置するランド部において、ビア導体を介して電気的に接続されており、
前記コイル導体層の両端に位置する前記ランド部の間には、第1空隙部が存在する、
積層コイル部品。
[2] 前記コイル導体層の両端に位置する前記ランド部の端部における主面と、前記絶縁体部との間に、第2空隙部が存在する、上記[1]に記載の積層コイル部品。
[3] 前記コイル導体層の一の主面と、前記絶縁体部との間に、第3空隙部が存在する、上記[1]又は[2]に記載の積層コイル部品。
[4] 前記第1空隙部と、前記第2空隙部は、一体に形成されている、上記[2]又は[3]に記載の積層コイル部品。
[5] 前記第1空隙部及び前記第2空隙部の厚みは、前記第3空隙部の厚みよりも小さい、上記[3]又は[4]に記載の積層コイル部品。
[6] 前記第1空隙部及び前記第2空隙部の厚みの、前記第3空隙部の厚みに対する比は、0.2以上0.8以下である、上記[3]~[5]のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、内部応力が高度に緩和された積層コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の積層コイル部品1aを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す積層コイル部品1aのII-IIに沿った切断面を示す断面図である。
図3図3は、図1に示す積層コイル部品1aのIII-IIIに沿った切断面を示す断面図である。
図4図4は、1に示す積層コイル部品1aのIV-IVに沿った切断面を示す断面図である。
図5図5は、積層コイル部品1bの概略断面図である。
図6図6は、積層コイル部品1cの概略断面図である。
図7図7は、本開示の積層コイル部品1aの製造方法を説明するための図である。
図8図8は、本開示の積層コイル部品1aの製造方法を説明するための図である。
図9図9は、本開示の積層コイル部品1aの製造方法を説明するための図である。
図10図10は、本開示の積層コイル部品1aの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本実施形態の積層コイル部品および各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。
【0010】
(第1実施形態)
本実施形態の積層コイル部品1aの斜視図を図1に、断面図を図2に示す。但し、下記実施形態の積層コイル部品および各構成要素の形状および配置等は、図示する例に限定されない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0011】
図1図4に示されるように、本実施形態の積層コイル部品1aは、略直方体形状を有する積層コイル部品である。積層コイル部品1aにおいて、図1のL軸に垂直な面を「端面」と称し、W軸に垂直な面を「側面」と称し、T軸に垂直な面を「上面」および「下面」と称する。
【0012】
積層コイル部品1aは、概略的には、絶縁体部6と、絶縁体部6に埋設されたコイル3と、絶縁体部6の表面に設けられ、コイル3と電気的に接続された外部電極4,5と、を含み、
コイル3は、複数のコイル導体層7と、ビア導体8とを含み、
積層方向に隣り合うコイル導体層7は、その末端に位置するランド部9において、ビア導体8を介して電気的に接続されており、
コイル導体層7の両端に位置するランド部9の間には、第1空隙部11が存在する。
【0013】
本開示の積層コイル部品は、コイル導体層7の両端に位置するランド部9の間に位置する絶縁体部6に、第1空隙部11が存在することにより、応力緩和効果が高くなる。
【0014】
より詳細には、積層コイル部品1aは、素体2と、該素体2の両端面に設けられた外部電極4,5とを含む。素体2は、絶縁体部6と絶縁体部6に埋設されたコイル3とを含む。コイル3は、コイル導体層7と、ビア導体8とを含む。コイル導体層7bは、ライン部10bと、その両端に位置するランド部9b,9b’を含む。コイル導体層7cは、ライン部10cと、その両端に位置するランド部9c,9c’を含む。コイル導体層7aは、一方の端が外部電極4に接続され、他方の端にランド部を有する。コイル導体層7dは、一方の端が外部電極5に接続され、他方の端にランド部を有する。積層方向に隣り合うコイル導体層7、即ち、コイル導体層7aと7b、コイル導体層7bと7c、及びコイル導体層7cと7dは、その末端に位置するランド部9において、それぞれ、ビア導体8a,8b及び8cを介して、電気的に接続されてコイル3を構成する。コイル導体層7bの両端に位置するランド部9b,9b’の間には、第1空隙部11が存在する。同様に、コイル導体層7cの両端に位置するランド部9c,9c’の間には、第1空隙部11が存在する。コイル導体層7のランド部9の端部における主面と、絶縁体部6との間には、第2空隙部12が存在する。コイル導体層7のライン部10における一の主面と、絶縁体部6との間には、第3空隙部13が存在する。
【0015】
上記した本実施形態の積層コイル部品1aを以下に説明する。本実施形態では、絶縁体部6がフェライト材料から形成される態様について説明する。
【0016】
本実施形態の積層コイル部品1aにおいて、素体2は、絶縁体部6とコイル3から構成される。
【0017】
絶縁体部6は、複数の絶縁体層を積層することにより形成される。
【0018】
絶縁体部6は、好ましくは磁性体、さらに好ましくは焼結フェライトから構成される。上記焼結フェライトは、主成分として、少なくともFe、Ni、およびZnを含む。焼結フェライトは、さらにCuを含んでいてもよい。
【0019】
一の態様において、上記焼結フェライトは、主成分として、少なくともFe、Ni、ZnおよびCuを含む。好ましくは、上記焼結フェライトは、Ni-Cu-Zn系フェライトである。
【0020】
上記焼結フェライトにおいて、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0021】
上記焼結フェライトにおいて、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは5.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは10.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
【0022】
上記焼結フェライトにおいて、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは4.0モル%以上12.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0023】
上記焼結フェライトにおいて、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。例えば、Ni含有量は、NiOに換算して、好ましくは8.0モル%以上44.0モル%以下である。
【0024】
一の態様において、上記焼結フェライトは、Feは、Feに換算して40.0モル%以上49.5モル%以下、Znは、ZnOに換算して5.0モル%以上35.0モル%以下、Cuは、CuOに換算して4.0モル%以上13.0モル%以下、Niは、NiOに換算して、8.0モル%以上44.0モル%以下である。
【0025】
本開示において、上記焼結フェライトは、さらに添加成分を含んでいてもよい。焼結フェライトにおける添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、BiおよびSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)およびNi(NiO換算))の合計100重量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、およびSiOに換算して、0.1重量部以上1重量部以下であることが好ましい。また、上記焼結フェライトは、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0026】
上記したように、コイル3は、積層方向に互いに隣接するコイル導体層7が、絶縁体部6を貫通するビア導体8を介して、コイル状に相互に電気的に接続されることにより構成されている。詳細には、コイル導体層7aのランド部9cとコイル導体層7bのランド部9bは、ビア導体8aにより接続されている。コイル導体層7bのランド部9b’とコイル導体層7cのランド部9cは、ビア導体8bにより接続されている。コイル導体層7cのランド部9c’とコイル導体層7dのランド部9dは、ビア導体8cにより接続されている。コイル3は、コイル導体層7aの端において外部電極4に電気的に接続され、コイル導体層7dの端において外部電極5に電気的に接続される。
【0027】
コイル導体層7を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられる。コイル導体層7を構成する材料は、好ましくはAgまたはCu、より好ましくはAgである。導電性材料は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0028】
コイル導体層7の厚みは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上25μm以下であり得る。コイル導体層7の厚みを大きくすることにより、コイル導体層7の抵抗値がより小さくなり、大容量の積層コイル部品を得ることができる。ここにコイル導体層の厚みとは、積層方向(図1ではT方向)に沿ったコイル導体層の厚みをいう。
【0029】
隣り合うコイル導体層7間の距離は、好ましくは5μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下、さらに好ましくは16μm以上30μm以下であり得る。かかる距離を5μm以上とすることにより、コイル導体層間の絶縁性をより確実に確保できる。また、かかる距離を100μm以下とすることにより、より優れた電気特性を得ることができる。ここに、隣り合うコイル導体層7間の距離とは、隣り合うコイル導体層の対向する主面間の距離をいう。
【0030】
コイル導体層7の厚み及び隣り合うコイル導体層7間の距離は、以下のようにして測定することができる。
チップのLT面を研磨紙に向けた状態で研磨を行い、LT断面を露出させる。露出したLT断面をマイクロスコープで観察し、コイル導体層の厚み及び隣り合うコイル導体層間の距離を、マイクロスコープに付属している測定機能にて測定する。
【0031】
第1空隙部11は、コイル導体層7の両端に位置する2つのランド部9の間に形成される。コイル導体層7の両端に位置する2つのランド部9とは、図3及び図4に示すように、同一のコイル導体層における2つのランド部9を意味する。例えば、コイル導体層7bにおける2つのランド部9b,9b’、又はコイル導体層7cにおける2つのランド部9c,9c’を意味する。上記2つのランド部は対向するように配置される。
【0032】
第1空隙部11が存在することにより、積層コイル部品の内部応力が緩和される。
【0033】
上記「2つのランド部の間」とは、2つのランド部9に挟まれる領域に加え、その近傍領域、例えば2つのランド部9に挟まれる領域から0.1mm上及び下の領域(ただし、隣り合うコイル導体層7よりも上記ランド部9側の領域に限る)も含む。
【0034】
第1空隙部11は、好ましくは、2つのランド部9に挟まれる領域よりも上又は下の領域に形成される。
【0035】
上記2つのランド部の間の距離は、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは50μm以上300μm以下であり得る。第1空隙部11の厚みを上記の範囲とすることにより、内部応力をより緩和することができ、クラックの発生をより抑制することができる。
【0036】
第1空隙部11は、好ましくは、2つのランド部9の中間部に形成される。ここに、「2つのランド部の中間部」とは、2つのランド部間の中点を含む領域であって、当該ランド部に接しない領域を意味する。一の態様において、第1空隙部11から、一のランド部9までの距離と、他のランド部9までの距離は、同程度、好ましくは同じであり得る。
【0037】
第1空隙部11の厚みは、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下であり得る。第1空隙部11の厚みを上記の範囲とすることにより、内部応力をより緩和することができ、クラックの発生をより抑制することができる。ここに、第1空隙部11の厚みとは、積層方向(図1ではT方向)に沿った空隙部の厚みをいう。
【0038】
第1空隙部11の長さは、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは30μm以上100μm以下であり得る。第1空隙部11の長さを上記の範囲とすることにより、内部応力をより緩和することができ、クラックの発生をより抑制することができる。ここに、第1空隙部11の長さとは、2つのランド部9を結ぶ方向(図1ではL方向)に沿った空隙部の長さをいう。
【0039】
積層コイル部品1aにおいて、第2空隙部12は、コイル導体層7の対向する2つのランド部の対向する端部における主面と、絶縁体部6との間に形成される。換言すれば、第2空隙部12は、対向する2つのランド部の端部の主面上に形成される。
【0040】
上記主面とは、コイル導体層7の上下面、図2においては、上面及び下面に平行な面をいう。以下、コイル導体層7の主面のうち、上面側の主面を第1主面、下面側の主面を第2主面という。
【0041】
積層コイル部品1aにおいて、第2空隙部12は、コイル導体層7の第1主面上に形成されているが、これに限定されず、第2主面上に形成されていてもよい。
【0042】
第2空隙部12が存在することにより、積層コイル部品の内部応力がより緩和される。
【0043】
第2空隙部12の厚みは、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下であり得る。第2空隙部12の厚みを上記の範囲とすることにより、内部応力をより緩和することができ、クラックの発生をより抑制することができる。ここに、第2空隙部12の厚みとは、積層方向(図1ではT方向)に沿った空隙部の厚みをいう。
【0044】
第2空隙部12の長さは、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは30μm以上100μm以下であり得る。第2空隙部12の長さを上記の範囲とすることにより、内部応力をより緩和することができ、クラックの発生をより抑制することができる。ここに、第2空隙部12の長さとは、2つのランド部9を結ぶ方向(図1ではL方向)に沿った空隙部の長さをいう。
【0045】
積層コイル部品1aにおいて、第3空隙部13は、コイル導体層7のライン部10の第2主面と、絶縁体部6との間に形成される。換言すれば、第3空隙部13は、コイル導体層7のライン部10の第2主面上に形成される。
【0046】
積層コイル部品1aにおいて、第3空隙部13は、コイル導体層7の第2主面上に形成されているが、これに限定されず、第1主面上に形成されていてもよい。
【0047】
第3空隙部13が存在することにより、積層コイル部品の内部応力がより緩和される。
【0048】
第3空隙部13の厚みは、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは4μm以上28μm以下、さらに好ましくは10μm以上20μm以下である。第3空隙部13の厚みを上記の範囲とすることにより、内部応力をより緩和することができ、クラックの発生をより抑制することができる。
【0049】
好ましい態様において、第1空隙部11及び第2空隙部12の厚みは、第3空隙部13の厚みよりも小さい。第1空隙部11及び第2空隙部12の厚みの、第3空隙部13の厚みに対する比は、好ましくは0.2以上0.8以下、例えば0.4以上0.6以下であり得る。
【0050】
第1空隙部11、第2空隙部12及び第3空隙部13の厚み及び長さは、以下のようにして測定することができる。
チップのLT面を研磨紙に向けた状態で研磨を行い、LT断面を露出させる。露出したLT断面をマイクロスコープで観察し、各空隙部の厚み及び長さを、マイクロスコープに付属している測定機能にて測定する。
【0051】
外部電極4,5は、素体2の両端面を覆うように設けられる。上記外部電極は、導電性材料、好ましくはAu、Ag、Pd、Ni、SnおよびCuから選択される1種またはそれ以上の金属材料から構成される。
【0052】
上記外部電極は、単層であっても、多層であってもよい。一の態様において、上記外部電極は、多層、好ましくは2層以上4層以下、例えば3層であり得る。
【0053】
一の態様において、外部電極は多層であり、AgまたはPdを含む層、Niを含む層、またはSnを含む層を含み得る。好ましい態様において、上記外部電極は、AgまたはPdを含む層、Niを含む層、およびSnを含む層からなる。好ましくは、上記の各層は、コイル導体層側から、AgまたはPd、好ましくはAgを含む層、Niを含む層、Snを含む層の順で設けられる。好ましくは、上記AgまたはPdを含む層はAgペーストまたはPdペーストを焼き付けた層であり、上記Niを含む層およびSnを含む層は、めっき層であり得る。
【0054】
本開示の積層コイル部品は、好ましくは、長さが0.4mm以上3.2mm以下であり、幅が0.2mm以上2.5mm以下であり、高さが0.2mm以上2.0mm以下であり、より好ましくは長さが0.6mm以上2.0mm以下であり、幅が0.3mm以上1.0mm以下であり、高さが0.3mm以上1.0mm以下である。
【0055】
(第2実施形態)
第2実施形態の積層コイル部品1bは、第1実施形態の積層コイル部品1aから第2空隙部12を除いたものである。図5は、第2実施形態の積層コイル部品1bの概略断面図である。
【0056】
積層コイル部品1bは、積層コイル部品1aにおいて第2空隙部12が存在していた箇所にも絶縁体部6が存在し得ることから、積層コイル部品の磁気特性が向上する。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態の積層コイル部品1cは、第1実施形態の積層コイル部品1aの第1空隙部11と第2空隙部12が一体となっているものである。図6は、第3実施形態の積層コイル部品1cの概略断面図である。
【0058】
積層コイル部品1cは、ランド部間に一続きの空隙部14が存在することから、応力緩和効果がより向上する。
【0059】
上記した本実施形態の積層コイル部品1aの製造方法を以下に説明する。本実施形態では、絶縁体部6がフェライト材料から形成される態様について説明する。
【0060】
(1)フェライトペーストの調製
【0061】
まず、フェライト材料を準備する。フェライト材料は、主成分としてFe、Zn、およびNiを含み、所望によりさらにCuを含む。通常、上記フェライト材料の主成分は、実質的にFe、Zn、NiおよびCuの酸化物(理想的には、Fe、ZnO、NiOおよびCuO)から成る。
【0062】
フェライト材料として、Fe、ZnO、CuO、NiO、および必要に応じて添加成分を所定の組成になるように秤量し、混合および粉砕する。粉砕したフェライト材料を乾燥し、仮焼し、仮焼粉末を得る。この仮焼粉末に、所定量の溶剤(ケトン系溶剤など)、樹脂(ポリビニルアセタールなど)、および可塑剤(アルキド系可塑剤など)を加え、プラネタリーミキサー等で混錬した後、さらに3本ロールミル等で分散することでフェライトペーストを作製することができる。
【0063】
上記フェライト材料において、Fe含有量は、Feに換算して、好ましくは40.0モル%以上49.5モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは45.0モル%以上49.5モル%以下であり得る。
【0064】
上記フェライト材料において、Zn含有量は、ZnOに換算して、好ましくは5.0モル%以上35.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは10.0モル%以上30.0モル%以下であり得る。
【0065】
上記フェライト材料において、Cu含有量は、CuOに換算して、好ましくは4.0モル%以上12.0モル%以下(主成分合計基準、以下も同様)であり、より好ましくは7.0モル%以上10.0モル%以下である。
【0066】
上記フェライト材料において、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。例えば、Ni含有量は、NiOに換算して、好ましくは8.0モル%以上44.0モル%以下である。
【0067】
一の態様において、上記フェライト材料は、Feは、Feに換算して40.0モル%以上49.5モル%以下、Znは、ZnOに換算して5.0モル%以上35.0モル%以下、Cuは、CuOに換算して4.0モル%以上12.0モル%以下、Niは、NiOに換算して、8.0モル%以上44.0モル%以下である。
【0068】
本開示において、上記フェライト材料は、さらに添加成分を含んでいてもよい。フェライト材料における添加成分としては、例えばMn、Co、Sn、Bi、Si等が挙げられるが、これに限定されるものではない。Mn、Co、Sn、BiおよびSiの含有量(添加量)は、主成分(Fe(Fe換算)、Zn(ZnO換算)、Cu(CuO換算)およびNi(NiO換算))の合計100重量部に対して、それぞれ、Mn、Co、SnO、Bi、およびSiOに換算して、0.1重量部以上1重量部以下であることが好ましい。また、上記フェライト材料は、さらに製造上不可避な不純物を含んでいてもよい。
【0069】
なお、焼結フェライトにおけるFe含有量(Fe換算)、Mn含有量(Mn換算)、Cu含有量(CuO換算)、Zn含有量(ZnO換算)およびNi含有量(NiO換算)は、焼成前のフェライト材料におけるFe含有量(Fe換算)、Mn含有量(Mn換算)、Cu含有量(CuO換算)、Zn含有量(ZnO換算)およびNi含有量(NiO換算)と実質的に相違ないと考えて差し支えない。
【0070】
(2)コイル導体用導電性ペーストの調製
【0071】
まず、導電性材料を準備する。導電性材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Ni等が挙げられ、好ましくはAgまたはCu、より好ましくはAgである。所定量の導電性材料の粉末を秤量し、所定量の溶剤(オイゲノールなど)、樹脂(エチルセルロースなど)、および分散剤と、プラネタリーミキサー等で混錬した後、3本ロールミル等で分散することで、コイル導体用導電性ペーストを作製することができる。
【0072】
(3)樹脂ペーストの調製
【0073】
上記積層コイル部品1aの空隙部を作製するための樹脂ペーストを調製する。かかる樹脂ペーストは、溶剤(イソホロンなど)に、焼成時に消失する樹脂(アクリル樹脂など)を含有させることにより作製することができる。
【0074】
(4)積層コイル部品の作製
【0075】
(4-1)未焼成積層体ブロックの作製
まず、フェライトシート21を準備する(図7(a))。フェライトシートは、ドクターブレード法等で、上記で作製したフェライト材料(仮焼粉末)をシート状に成形加工して作製することができる。
【0076】
次に、第3空隙部13を形成する箇所に、上記樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層31を形成する(図7(b))。
【0077】
次に、コイル導体層7aを形成する箇所全体に、上記導電性ペーストを印刷し、導電性ペースト層41を形成する(図7(c))。
【0078】
次に、導電性ペースト層41が形成されていない領域に、上記フェライトペーストを印刷し、フェライトペースト層51を形成する(図7(d))。フェライトペースト層51は、好ましくは上記導電性ペースト層41の外縁部を覆うように設けられる。
【0079】
次に、ランド部となる導電性ペースト層41の端部の第2空隙部12を形成する箇所に、樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層61を形成する(図7(e))。
【0080】
上記のようにして樹脂ペースト層、導電性ペースト層、フェライトペースト層が印刷されたシート(1)を作製する。
【0081】
次に、シート(1)と同様にしてシート(2)を作製する。具体的には、まず、フェライトシート22を準備する。フェライトシート22には、シート(1)に形成した導電性ペースト層と接続する箇所にレーザーを照射し、ビアホール71を形成する(図8(a))。
【0082】
次に、第3空隙部13を形成する箇所に、上記樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層32を形成する(図8(b))。
【0083】
次に、ビアホール71に導電性ペーストを充填しながら、コイル導体層7bを形成する箇所全体に、上記導電性ペーストを印刷し、導電性ペースト層42を形成する(図8(c))。
【0084】
次に、導電性ペースト層42が形成されていない領域に、上記フェライトペーストを印刷し、フェライトペースト層52を形成する(図8(d))。フェライトペースト層52は、好ましくは上記導電性ペースト層42の外縁部を覆うように設けられる。
【0085】
次に、ランド部となる導電性ペースト層42の端部の第1空隙部11及び第2空隙部12を形成する箇所に、樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層62を形成する(図8(e))。
【0086】
上記のようにして樹脂ペースト層、導電性ペースト層、フェライトペースト層が印刷されたシート(2)を作製する。
【0087】
次に、シート(3)を作製する。具体的には、まず、フェライトシート23を準備する。フェライトシート23には、シート(2)に形成した導電性ペースト層と接続する箇所にレーザーを照射し、ビアホール72を形成する(図9(a))。
【0088】
次に、第3空隙部13を形成する箇所に、上記樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層33を形成する(図9(b))。
【0089】
次に、ビアホール72に導電性ペーストを充填しながら、コイル導体層7cを形成する箇所全体に、上記導電性ペーストを印刷し、導電性ペースト層43を形成する(図9(c))。
【0090】
次に、導電性ペースト層43が形成されていない領域に、上記フェライトペーストを印刷し、フェライトペースト層53を形成する(図9(d))。フェライトペースト層53は、好ましくは上記導電性ペースト層43の外縁部を覆うように設けられる。
【0091】
次に、ランド部となる導電性ペースト層43の端部の第1空隙部11及び第2空隙部12を形成する箇所に、樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層63を形成する(図9(e))。
【0092】
上記のようにして樹脂ペースト層、導電性ペースト層、フェライトペースト層が印刷されたシート(3)を作製する。
【0093】
最後に、シート(4)を作製する。具体的には、まず、フェライトシート24を準備する。フェライトシート24には、シート(3)に形成した導電性ペースト層と接続する箇所にレーザーを照射し、ビアホール73を形成する(図10(a))。
【0094】
次に、第3空隙部13を形成する箇所に、上記樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層34を形成する(図10(b))。
【0095】
次に、コイル導体層7dを形成する箇所全体に、上記導電性ペーストを印刷し、導電性ペースト層44を形成する(図10(c))。
【0096】
次に、導電性ペースト層44が形成されていない領域に、上記フェライトペーストを印刷し、フェライトペースト層54を形成する(図10(d))。フェライトペースト層53は、好ましくは上記導電性ペースト層44の外縁部を覆うように設けられる。
【0097】
次に、ランド部となる導電性ペースト層44の端部の第2空隙部12を形成する箇所に、樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層64を形成する(図10(e))。
【0098】
上記のようにして樹脂ペースト層、導電性ペースト層、フェライトペースト層が印刷されたシート(4)を作製する。
【0099】
作製したシート(1)、(2)、(3)及び(4)を所定の順番で積層し、上下に所定枚数の印刷されていないフェライトシートを積み重ね、温度70~90℃、圧力60~100MPaの条件で、温間等方圧プレス(Wip)処理して、未焼成積層体ブロックを作製する。このようにして素子の集合体(積層体ブロック)が得られる。
【0100】
(4-2)焼成
次に、上記で得られた未焼成積層体ブロックを、ダイサーなどで切断して、各素体に個片化する。
【0101】
ついで、例えば900℃以上920℃以下の温度で1~4時間、未焼成素体を焼成し、積層コイル部品1aの素体2を得る。
【0102】
ついで、得られた素体2を、バレル処理することにより、素体の角を削り、丸みを形成してもよい。なお、バレル処理は、未焼成の積層体に対して行ってもよく、焼成後の積層体に対して行ってもよい。また、バレル処理は、乾式または湿式のどちらであってもよい。バレル処理は、素子同士を共擦する方法であってもよく、メディアと一緒にバレル処理する方法であってもよい。
【0103】
(4-3)外部電極の形成
次に、素体2の端面にAgおよびガラスを含む外部電極形成用Agペーストを塗布し、800℃以上820℃以下で焼き付けすることで下地電極を形成する。下地電極の厚みは、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上6μm以下であり得る。次に、電解めっきで下地電極の上に、Ni被膜、Sn被膜を順次形成する。Ni被膜、及びSn被膜の厚みは、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上5μm以下であり得る。上記のようにして、外部電極を形成し、図1に示すような積層コイル部品1aが得られる。
【0104】
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本実施形態は種々の改変が可能である。
【0105】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例0106】
実施例
ムラタソフトウェア株式会社の解析シミュレーションソフトウェアFemtet(登録商標)を用いて、図1~4に示すような、第1空隙部11及び第2空隙部12を形成した実施例試料と、第1空隙部11及び第2空隙部12を形成していない比較例試料について、温度が300℃、500℃、及び700℃のときの内部応力をシミュレーションした。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
上記の結果から、空隙部を設けることにより、内部応力を低減できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本開示の積層コイル部品は、インダクタなどとして幅広く様々な用途に使用され得る。
【符号の説明】
【0110】
1a,1b,1c…積層コイル部品
2…素体
3…コイル
4,5…外部電極
6…絶縁体部
7,7a~7d…コイル導体層
8,8a~8c…ビア導体
9,9b,9b’,9c、9c’…ランド部
10,10…ライン部
11…第1空隙部
12…第2空隙部
13…第3空隙部
21~24…フェライトシート
31~34…樹脂ペースト層
41~44…導電性ペースト層
51~54…フェライトペースト層
61~64…樹脂ペースト層
71~73…ビアホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10