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  • 特開-車両の吸気制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182363
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両の吸気制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20231219BHJP
   F01P 11/10 20060101ALI20231219BHJP
   F01P 7/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60K11/04 J
F01P11/10 D
F01P11/10 G
F01P7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095916
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉寿
(72)【発明者】
【氏名】北岡 樹
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AA06
3D038AB01
3D038AC01
3D038AC11
3D038AC17
3D038AC23
3D038AC26
(57)【要約】
【課題】グリルシャッタ要求開度を運転条件や負荷状況から予測して調整し、グリルシャッタの開閉に伴う車両の空気抵抗を可及的に低減することができる車両の吸気制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンの吸気を加圧する過給機と、前記過給機で加圧された前記吸気を空冷するインタークーラと、前記インタークーラに対する走行風風量を制御するグリルシャッタとを備えた車両の吸気制御装置であって、前記グリルシャッタを開閉制御するコントローラを有し、前記コントローラは、前記インタークーラを通過した後の前記吸気の温度を予測し、予測された前記吸気の温度が所定温度以下の場合は、前記グリルシャッタの開放を禁止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気を加圧する過給機と、前記過給機で加圧された前記吸気を空冷するインタークーラと、前記インタークーラに対する走行風風量を制御するグリルシャッタとを備えた車両の吸気制御装置であって、
前記グリルシャッタを開閉制御するコントローラを有し、
前記コントローラは、
前記インタークーラを通過した後の前記吸気の温度を予測し、
予測された前記吸気の温度が所定温度以下の場合は、前記グリルシャッタの開放を禁止する
ことを特徴とする車両の吸気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体前部のグリル開口部に設けられたグリルシャッタを備える車両の吸気制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、フロントグリルなどの走行風導入口の背後にグリルシャッタを設けた車両がある。グリルシャッタの複数のフィンが、走行風導入口を閉鎖するように閉じたり、開放するように開いたりすることによって、エンジンルーム内に導入される走行風の走行風量を調整することができる。
【0003】
特許文献1には、上述した構成のグリルシャッタを設けた車両用グリルシャッタの制御装置が開示されている。この制御装置は、グリルシャッタが閉の状態において、エンジンルーム内に設置された電子制御ユニット(以下、ECUと記す)の温度が所定よりも高い温度に達した場合に、グリルシャッタの開放を要求し、ECUの冷却を行っている。特許文献1の発明によると、ECUの温度が高くなった場合は適切にグリルシャッタを開の状態にして、十分に冷却することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-148194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の中間開度を備えていないグリルシャッタでは、エンジンルーム内に温度センサを設けて、所定以上の温度を超えるとグリルシャッタを全開するように要求している。
【0006】
また、グリルシャッタは、グリルシャッタを閉の状態にして走行した場合に、エンジンルーム内に外気を導入させず、エンジンルーム内の空気の乱流を防ぐことができ、よって車両全体の空気抵抗(Cd値、抗力係数値)を低減することが従来知られている。車両の空気抵抗を低減することによって燃費性能が向上するので、グリルシャッタは、できるだけ閉の状態を維持することが求められている。
【0007】
一方で、過給機を搭載したエンジンでは、過給機によって加圧されて高温になった吸気を、フロントグリル付近に配置されたインタークーラによって放熱させることで、過給後の吸気の熱膨張を防ぎ、燃料を合わせた混合気を効率よく燃焼することができるとされている。したがって、過給機を搭載したエンジンにおいて、インタークーラを効率よく放熱、冷却させるためにグリルシャッタの開放を要求を出力する。
【0008】
しかしながら、グリルシャッタの開閉に時間を要するため、開の状態のグリルシャッタを通る外気によってインタークーラが冷やされて、これ以上冷やす必要がない場合にグリルシャッタを閉めるまでの間は、グリルシャッタは開の状態であって、グリルシャッタの開閉の遅れによって、車両全体の空気抵抗は閉の状態のときに比べて大きくなる可能性がある。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、グリルシャッタ要求開度を運転条件や負荷状況から予測して調整し、グリルシャッタの開閉に伴う車両の空気抵抗を可及的に低減することができる車両の吸気制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記の目的を達成するために、エンジンの吸気を加圧する過給機と、前記過給機で加圧された前記吸気を空冷するインタークーラと、前記インタークーラに対する走行風風量を制御するグリルシャッタとを備えた車両の吸気制御装置であって、前記グリルシャッタを開閉制御するコントローラを有し、前記コントローラは、前記インタークーラを通過した後の前記吸気の温度を予測し、予測された前記吸気の温度が所定温度以下の場合は、前記グリルシャッタの開放を禁止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の車両の吸気制御装置によれば、過給機で加圧され、かつインタークーラを通過した後の吸気の温度を予測し、予測された吸気温度が所定温度以下の場合はグリルシャッタの開放を禁止することによって、グリルシャッタの開閉に伴う車両の空気抵抗を可及的に低減することができる。
【0012】
具体的には、過給機によって加圧され、高温となった吸気が、インタークーラを通過したときの吸気温度を予測し、その予測された吸気温度が所定値以下だった場合には、グリルシャッタを開放させないことで、グリルシャッタをタイミングよく閉じて、グリルシャッタの不必要な開放を禁止することができ、吸気温度が所定値以下のときは、グリルシャッタを閉の状態で維持することができる。したがって、グリルシャッタを閉の状態にして走行した場合に、エンジンルーム内に外気を導入させず、エンジンルーム内の空気の乱流を防ぐことができ、車両全体の空気抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施例の構成を説明するための模式図である。
図2】この発明の実施例における制御装置の一例を説明するためのブロック図である。
図3】この発明の実施例1における車両の吸気制御装置の制御例を説明するためのフローチャートである。
図4】この発明の実施例2における車両の吸気制御装置の制御例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施例における車両の吸気制御装置について、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に説明する実施例は、この発明を実施した場合の一例に過ぎないのであって、この発明を限定するものではない。
【0015】
図1は、この発明の実施例の構成を説明するための図であって、車両Veのエンジンルーム1を模式的に示す図である。縦矢印は車両前後方向、横矢印は車両左右方向を示している。
【0016】
エンジンルーム1には、吸気通路2と排気通路3との間に接続されたエンジン4と、吸気通路2によりエンジン4へ導入される圧縮空気を生成する過給機5が配置されている。 過給機5は、吸気通路2に設けられたコンプレッサ6と、排気通路3に設けられたタービン7を備える。排気通路3を通過する排ガスによってタービン7が駆動され、タービン7と、回転力伝達可能に連結されたコンプレッサ6とによって、吸気を圧縮して圧縮空気を生成する。
【0017】
吸気通路2には、上流から順に、エアクリーナ8、過給機5のコンプレッサ6、空冷によるインタークーラ9、そしてスロットルバルブ10が設けられている。図示しない吸気口から取り込まれた吸気は、エアクリーナ8を通過し、コンプレッサ6によって圧縮された吸気(以下、圧縮空気と記すことがある)となる。加圧されて高温になった圧縮空気は、インタークーラ9の放熱によって冷却され、スロットルバルブ10によって吸気量を調整して、エンジン4の気筒11に送り込まれる。過給機5のコンプレッサ6と、インタークーラ9との間には、過給後における圧縮空気の圧力を検出する過給後圧力センサ12が設けられており、インタークーラ9と、スロットルバルブ10との間には、インタークーラ9を通過した圧縮空気の温度を検出するI/C出口温度センサ13が設けられている。
【0018】
エンジン4の気筒11において、圧縮空気と、図示しない燃料噴射弁から噴射される燃料との混合気が燃焼され、燃焼後の排ガスが排気通路3へ排出される。
【0019】
排気通路3には、過給機5のタービン7が設けられ、タービン7を通過した排ガスが、図示しない触媒コンバータやマフラーに送り込まれるように構成されている。なお、タービン7の上流と下流とを結ぶバイパス通路を設けて、そのバイパス流路に設けたウェストゲートバルブによって過給圧を調整する構成にしてもよい。
【0020】
次に、グリルシャッタ14について説明する。グリルシャッタ14は、インタークーラ9に対する走行風風量を調整するために、車両Veのボディ15の前面に形成された開口部16に配置している。グリルシャッタ14の内部には、外気および走行風Wを遮蔽することができる複数のフィン部17と、フィン部17を回転可能に固定している複数のフィン軸18とを備えている。それぞれのフィン軸18が軸線方向に回転することで、それぞれのフィン部17は軸線方向に傾くことができ、フィン部17の傾く角度が、車両前後方向に対して平行となる場合は「開放」または「開の状態」であり、一方で、フィン部17の傾く角度が、車両前後方向に対して垂直となる場合は「閉鎖」または「閉の状態」である。
【0021】
なお、フィン部17の傾く角度とは、グリルシャッタ開度のことであり、この発明の実施例のフィン部17は、車両前後方向に対して平行である「開の状態」、あるいは車両前後方向に垂直である「閉の状態」に限らず、適宜の開度に設定できる中間開度を設けてもよい。グリルシャッタ14は、フィン軸18を駆動するための図示しないグリルシャッタのアクチュエータを備え、グリルシャッタ開度は、グリルシャッタ14に付設するグリルシャッタ開度センサ19によって検出され、グリルシャッタ開度の要求は、アクチュエータに出力される。
【0022】
図1に示すように、フィン部17が車両前後方向に対して平行となる、すなわち開の状態では、走行風Wがフィン部17の間を通過しエンジンルーム1に入り込み、インタークーラ9含む他の図示しない冷却装置などに当たることで、冷却装置が放熱されて冷却される。
【0023】
なお、グリルシャッタ14の開閉機構は、上述した構成に限定されるものではなく、たとえばフィン軸18が車両左右方向に対して平行であって、フィン部17が軸線方向に傾くように構成されていてもよい。つまり、グリルシャッタ開度によって、少なくともインタークーラ9に走行風Wが当たるように構成されていればよい。
【0024】
つづいて、グリルシャッタ14の開閉制御のための電子制御装置(ECU)20が設けられている。このECU20は、この発明の実施例における「コントローラ」に相当するものであり、マイクロコンピュータを主体にして構成されている。図2は、ECU20の構成の一例を説明するためのブロック図である。
【0025】
ECU20は、車両Veに搭載された種々のセンサからデータが入力され、その入力されたデータと、予め記憶されているマップや演算式などとに基づいて指令信号を出力するように構成されている。ECU20に入力されるデータの一例を図2に示してあり、車速を検出する車速センサの信号、エンジン4の回転数を検出するセンサの信号、図示しないアクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサの信号、外気温度を検出するセンサの信号、大気圧を検出するセンサの信号、そして先述の過給後圧力センサ12、I/C出口温度センサ13、グリルシャッタ開度センサ19などのデータが、ECU20に入力される。
【0026】
図2に示すECU20は、機能的構成として少なくとも、吸気量算出部21、過給後吸気温度予測部22、I/C放熱量予測部23、I/C出口温度予測部24、そして、グリルシャッタ開度算出部25を備えている。
【0027】
吸気量算出部21は、エンジン回転数とアクセル開度とに基づいてエンジン4の要求吸気量を演算する機能を有している。あるいは、ECU20に予め記憶されている吸気量マップによって定めてもよい。
【0028】
過給後吸気温度予測部22は、一例として、外気温度センサおよび大気圧センサからの検出信号と、過給後圧力センサ12からの検出信号とに基づいて、将来の過給後の吸気温度を予測する機能を有している。なお、将来とは、所定時間後のことであって、運転条件などによって期間を適宜変更してもよい。
【0029】
I/C放熱量予測部23は、一例として、吸気量算出部21で定めた要求吸気量と、過給後吸気温度予測部22で定めた将来の過給後の吸気温度とに基づいて、インタークーラ9の出口温度が予め定めた目標温度になるように、インタークーラ9による要求放熱量を予測する機能を有している。
【0030】
I/C出口温度予測部24は、一例として、予めECU20に記憶されている放熱量マップから定めたインタークーラ9による放熱量と、吸気量算出部21で定めた要求吸気量とに基づいて、インタークーラ9の出口温度を予測する機能を有している。
【0031】
グリルシャッタ開度算出部25は、車速と、吸気量算出部21で定めた要求吸気量と、I/C放熱量予測部23で定めたインタークーラ9による要求放熱量とに基づいて、グリルシャッタ14の要求開度を演算する機能を有している。
【0032】
そして、ECU20に入力されたデータなどに基づいてグリルシャッタ開度の指令信号をアクチュエータに出力される。
【0033】
グリルシャッタ14は、グリルシャッタ14を閉の状態にして走行した場合に、エンジンルーム1内に外気を導入させず、エンジンルーム1内の空気の乱流を防ぐことができるから、車両Ve全体の空気抵抗を低減することができる。また、車両Veの空気抵抗を低減することによって燃費性能が向上するので、その点では、グリルシャッタ14は、閉の状態を維持することが好ましい。
【0034】
一方で、過給機5を搭載したエンジン4では、過給機5によって加圧されて高温になった圧縮空気を、インタークーラ9によって放熱させることで、過給後の圧縮空気の熱膨張を防ぎ、燃料を合わせた混合気を効率よく燃焼することができるから、インタークーラ9によって圧縮空気を効率よく放熱、冷却させるためにグリルシャッタ14は、開の状態であることが望ましい。
【0035】
またさらに、グリルシャッタ14の開閉に時間を要するため、開の状態のグリルシャッタ14を通る走行風Wによってインタークーラ9が冷やされて、これ以上冷やす必要がない場合にグリルシャッタ14を閉めるまでの間は、グリルシャッタ14は少なくとも開の状態であって、その分車両Ve全体の空気抵抗は閉の状態のときに比べて大きくなる可能性がある。
【0036】
このように車両Ve全体の空気抵抗を可及的に低減するためにグリルシャッタ14は、できるだけ閉の状態を維持させて、かつ運転条件や負荷状況から予測してインタークーラ9によって放熱させる場合のときだけグリルシャッタ14を開の状態にするために、上述したこの発明の実施例における車両の吸気制御装置は、以下に説明する制御を実行するように構成されている。
【0037】
図3および図4は、その制御の一例を説明するためのフローチャートであって、それらのフローチャートで示す制御は、エンジン4が運転されているときにECU20によって繰り返し実行される。図3は、この発明の実施例1における車両の吸気制御装置の制御例を説明するためのフローチャートである。まず、要求吸気量を算出する(ステップS1)。要求吸気量は、吸気量算出部21によって求められる。具体的には、エンジン回転数とアクセル開度とに基づいてエンジン4の要求吸気量を演算する。
【0038】
次に、将来の過給後の吸気温度を予測する(ステップS2)。将来の過給後の吸気温度は、過給後吸気温度予測部22によって求められる。具体的には、外気温度センサおよび大気圧センサからの検出信号と、過給後圧力センサ12からの検出信号とに基づいて、将来の過給後の吸気温度を予測する。
【0039】
これに続けて、インタークーラ9の出口温度が予め定めた温度となるように、吸気量と、過給後の推定吸気温度とからインタークーラ9による放熱量を予測する(ステップS3)。この放熱量は、I/C放熱量予測部23によって求められる。具体的には、ステップS1で定めた要求吸気量と、ステップS2で定めた将来の過給後の吸気温度とに基づいて、インタークーラ9の出口温度が予め定めた目標温度になるように、インタークーラ9による要求放熱量を予測する。
【0040】
続いて、車両Veの車速と、以上で求めた要求吸気量の算出値およびインタークーラ9による放熱量の予測値とから、要求グリルシャッタ開度を算出する(ステップS4)。要求グリルシャッタ開度は、グリルシャッタ開度算出部25によって求められる。そしてグリルシャッタ開度算出部25によって求められたグリルシャッタ開度を要求する(ステップS5)。グリルシャッタ開度の指令信号をアクチュエータに出力し、フィン軸18を駆動させてフィン部17を所定の角度まで傾ける。グリルシャッタ14の開度要求がなされたら、図3に示すルーチンを一旦終了する。
【0041】
フィン部17を傾けて、走行風Wがエンジンルーム内に導入されると、インタークーラ9は走行風Wによって冷却され、インタークーラ9の内部の圧縮空気が放熱されて、圧縮空気の温度が下がる。つまり、要求吸気量を求め、将来の過給後の吸気温度を予測し、インタークーラ9の出口温度が所定温度となるように、インタークーラ9を通過する圧縮空気の温度をどの程度冷却すればよいか、すなわちインタークーラ9による放熱量を定めることによって、グリルシャッタ14の開度要求を必要な分だけ出力することができ、また、インタークーラ9の出口温度が下がったら、すぐにグリルシャッタ14を閉じることができる。つまり、インタークーラ9による放熱量を定めることで、グリルシャッタ14の不必要な開放を禁止することができ、圧縮空気の温度が所定値以下のときはグリルシャッタ14を閉の状態で維持することができる。したがって、グリルシャッタ14を閉の状態にして走行した場合に、エンジンルーム1内に外気を導入させず、エンジンルーム1内の空気の乱流を防ぐことができ、車両Ve全体の空気抵抗を低減することができる。
【0042】
つづいて、図4は、この発明の実施例2における車両の吸気制御装置の制御例を説明するためのフローチャートであって、実施例1(図3)では、ステップS3に記載のインタークーラ9の出口温度を目標温度に設定した場合であることに対して、実施例2(図4)では、インタークーラ9の出口温度を圧縮空気の温度やインタークーラ9の放熱量などに基づいて予測する場合の制御例である。
【0043】
まず、要求吸気量を算出する(ステップS11)。要求吸気量は、吸気量算出部21によって求められる。具体的には、エンジン回転数とアクセル開度とに基づいてエンジン4の要求吸気量を演算する。
【0044】
次に、将来の過給後の吸気温度を予測する(ステップS12)。将来の過給後の吸気温度は、過給後吸気温度予測部22によって求められる。具体的には、外気温度センサおよび大気圧センサからの検出信号と、過給後圧力センサ12からの検出信号とに基づいて、将来の過給後の吸気温度を予測する。
【0045】
これに続けて、車両Veの車速と、ステップS11で定めた要求吸気量とからインタークーラ9による放熱量を算出する(ステップS13)。具体的には、吸気量算出部21で定めた要求吸気量と車速とに基づいて、予めECU20に記憶されている放熱量マップからインタークーラ9による放熱量を定める。
【0046】
ステップS12で定めた推定吸気温度と、ステップS13で定められたインタークーラ9による放熱量とから、インタークーラ9の出口温度を予測する(ステップS14)。これは、I/C出口温度予測部24から求めることができ、具体的には、ステップS13で定めたインタークーラ9による放熱量と、ステップS11で定めた要求吸気量とに基づいて、インタークーラ9の出口温度を予測する。
【0047】
そして、ステップS14で予測したインタークーラ9の出口温度が所定値以上であるか否かが判断される(ステップS15)。ここで所定値とは、グリルシャッタ14を開く必要がある温度であって、気象条件や運転条件などによって所定温度を適宜変更してもよい。このステップS15で肯定的に判断された場合には、グリルシャッタ14の開放を要求し(ステップS16)、図4に示すルーチンを一旦終了する。これとは反対に、ステップS15で否定的に判断された場合には、グリルシャッタ14の閉鎖を要求し(ステップS17)、図4に示すルーチンを一旦終了する。なお、ステップS16におけるグリルシャッタ14の開度は、全開でなくても、インタークーラ9の冷却要求に合わせたグリルシャッタ14の中間開度の要求であってもよい。
【0048】
ステップS14にて、将来のインタークーラ9の出口温度を、将来の過給後の吸気温度やインタークーラ9の放熱量などに基づいて予測することによって、インタークーラ9を冷却させる必要があるか否かを判断することができる。また、インタークーラ9を冷却させる必要があるときだけ、グリルシャッタ14を開の状態にできるので、グリルシャッタ14の不必要な開放を禁止することができる。したがって、インタークーラ9を冷却させる必要がない場合は、グリルシャッタ14を閉の状態にして走行できるので、エンジンルーム1内に外気を導入させず、エンジンルーム1内の空気の乱流を防ぐことができ、車両Ve全体の空気抵抗を低減することができる。
【0049】
またさらに、将来のインタークーラ9の出口温度を予測することによって、前もってグリルシャッタ14の開閉を行えるため、従来のようにインタークーラ9の出口温度が所定値以上になってからグリルシャッタ14の開度要求を行うより、要求に応じたグリルシャッタ14の開閉にかかる時間を短縮することができる。つまり、インタークーラ9の出口温度を予測することによって、グリルシャッタ14の開閉を行うので、インタークーラ9の出口温度が所定値よりも上がることを抑制することができる。また、インタークーラ9の出口温度を予測して、インタークーラ9をこれ以上冷却させる必要がない場合には、グリルシャッタ14をタイミングよく閉じることができるので、グリルシャッタ14の開閉の遅れを防止することができ、グリルシャッタ14の不必要な開放を禁止することができる。
【0050】
なお、この発明は上述した実施例に限定されないのであって、この発明の目的の範囲で適宜に変更して実施することができる。また、上述したフローチャートの構成に限定しない。例えば、ステップS1とステップS2との順序を替えてもよいし、温度や放熱量の算出および予測は、ECU20に予め記憶されている2次元配列のマップによって定めてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジンルーム
2 吸気通路
3 排気通路
4 エンジン
5 過給機
6 コンプレッサ
7 タービン
8 エアクリーナ
9 インタークーラ
10 スロットルバルブ
11 気筒
12 過給後圧力センサ
13 出口温度センサ
14 グリルシャッタ
15 ボディ
16 開口部
17 フィン部
18 フィン軸
19 グリルシャッタ開度センサ
20 電子制御装置(ECU)
21 吸気量算出部
22 過給後吸気温度予測部
23 I/C放熱量予測部
24 I/C出口温度予測部
25 グリルシャッタ開度算出部
Ve 車両
W 走行風
図1
図2
図3
図4