(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182385
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】自律走行装置および自律走行方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231219BHJP
【FI】
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095957
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083253
【弁理士】
【氏名又は名称】苫米地 正敏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】腰原 敬弘
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA03
5H301BB01
5H301BB02
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
5H301GG10
5H301LL01
5H301LL06
5H301LL11
(57)【要約】
【課題】決まった経路を容易かつ短時間で移動可能であるとともに、経路の途中で立往生となるリスクを減らすことができる自律走行装置を提供する。
【解決手段】移動台車1を指定領域A内で複数の経由点pを経由させながら自律走行させる自律走行装置であり、移動台車1を経由点p
iまで自律走行させるに当たり、移動台車1の自己位置を推定するとともに、予め記憶されている障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成し、前記推定された自己位置と生成された経由点情報bに基づいて経由点p
iまでの走行経路を算出し、その走行経路にしたがって移動台車1を経由点p
iまで移動させることを基本とし、移動台車1が自律走行中に立往生しないようにするため、移動中の移動台車1が経由点p
iに辿り着けないスタック状態であると判定した場合には、移動台車1の移動先の経由点pを変更する異常処理を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の駆動装置(2)を備えた移動台車(1)を指定領域(A)内で複数の経由点(p)を経由させながら自律走行させる自律走行装置であって、
移動台車(1)の自己位置を推定するとともに、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成し、前記推定された自己位置と生成された経由点情報bに基づいて移動台車(1)を移動させる経由点(pi)までの走行経路を算出し、移動台車(1)がその走行経路にしたがって経由点(pi)まで移動するように駆動装置(2)を制御する演算制御装置(4)を備え、
演算制御装置(4)は、経由点(pi)に向けて移動中の移動台車(1)が経由点(pi)に辿り着けないスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御することを特徴とする自律走行装置。
【請求項2】
移動台車(1)の周囲環境を測定して障害物情報aを取得する測域装置(3)をさらに備え、
演算制御装置(4)は、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と、測域装置(3)で取得された障害物情報aとを比較することで移動台車(1)の自己位置を推定することを特徴とする請求項1に記載の自律走行装置。
【請求項3】
演算制御装置(4)は、測域装置(3)で取得された障害物情報aに基づき、移動台車(1)が移動すべき経由点(pi)までの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御することを特徴とする請求項2に記載の自律走行装置。
【請求項4】
移動台車(1)は、指定領域(A)内で所定の作業を行うための作業ツール(5)と、該作業ツール(5)を駆動するためのアクチュエータ(6)を備え、
経由点情報bは、移動台車(1)の台車位置、移動台車(1)の台車姿勢、およびアクチュエータ(6)の動作指令の情報を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の自律走行装置。
【請求項5】
作業ツール(5)は、指定領域(A)内の堆積物をかき集めて清掃する清掃用スクレーパ(5a)であり、
アクチュエータ(6)は、清掃用スクレーパ(5a)が上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように清掃用スクレーパ(5a)を駆動するものであることを特徴とする請求項4に記載の自律走行装置。
【請求項6】
演算制御装置(4)は、移動台車(1)が経由点(pi)に移動する際に、当該経由点(pi)までの移動距離ΔLと姿勢角変化量Δθから経由点(pi)までの目標走破時間Tを算出し、移動台車(1)の移動開始からの経過時間実績値tと目標走破時間Tとを比較することで移動台車(1)がスタック状態であるか否か判定することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の自律走行装置。
【請求項7】
駆動装置(2)の動作量から移動台車(1)の移動量を検出する移動量検出装置(7)をさらに備え、
演算制御装置(4)は、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と、測域装置(3)で取得された障害物情報aとを比較することに加えて、移動量検出装置(7)で検出された移動台車(1)の移動量を用いて、SLAMアルゴリズムに基づくパーティクルフィルタにより移動台車(1)の自己位置を推定することを特徴とする請求項2または3に記載の自律走行装置。
【請求項8】
走行用の駆動装置(2)を備えた移動台車(1)を指定領域(A)内で複数の経由点(p)を経由させながら自律走行させる自律走行方法であって、
予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成する工程(ア)と、
移動台車(1)の自己位置を推定する工程(イ)と、
前記推定された自己位置と生成された経由点情報bとに基づいて移動台車(1)を移動させる経由点(pi)までの走行経路を算出し、移動台車(1)がその走行経路にしたがって経由点(pi)まで移動するように駆動装置(2)を制御する工程(ウ)と、
経由点(pi)に向けて移動中の移動台車(1)が経由点(pi)に辿り着けないスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御する工程(エ)を備えることを特徴とする自律走行方法。
【請求項9】
工程(イ)では、測域装置(3)により移動台車(1)の周囲環境を測定して障害物情報aを取得し、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と、測域装置(3)で取得された障害物情報aとを比較することで移動台車(1)の自己位置を推定することを特徴とする請求項8に記載の自律走行方法。
【請求項10】
さらに、測域装置(3)で取得された障害物情報aに基づき、移動台車(1)が移動すべき経由点(pi)までの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御する工程(オ)を備えることを特徴とする請求項9に記載の自律走行方法。
【請求項11】
移動台車(1)は、指定領域(A)内で所定の作業を行うための作業ツール(5)と、該作業ツール(5)を駆動するためのアクチュエータ(6)を備え、
指定領域(A)内で移動台車(1)を走行させながら作業ツール(5)で作業を行うことを特徴とする請求項8~10のいずれかに記載の自律走行方法。
【請求項12】
作業ツール(5)は、指定領域(A)内の地面の堆積物をかき集めて清掃する清掃用スクレーパ(5a)であり、
アクチュエータ(6)は、清掃用スクレーパ(5a)が上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように清掃用スクレーパ(5a)を駆動するものであり、
指定領域(A)内で移動台車(1)を走行させ、アクチュエータ(6)により清掃用スクレーパ(5a)を駆動させつつ、清掃用スクレーパ(5a)で堆積物をかき集め、かき集めた前記堆積物を所定の場所まで移動させて集積することを特徴とする請求項11に記載の自律走行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行装置および自律走行方法に関するもので、特に指定領域内の堆積物(堆積粉)を清掃除去するのに用いられる清掃装置に好適な自律走行装置および自律走行方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばコークス工場では、炉内に石炭を装入する装炭車からの石炭粉の漏れや、石炭貯蔵庫からの石炭粉の漏れなどにより、コークス炉の炉頂部に石炭粉(落粉)が堆積する。この堆積した石炭粉を放置すると、石炭粉中の硫黄成分が上昇管などの金属構造物の腐食を促進させ、また、周囲に飛散して環境に悪影響を与えることから、炉体保護や粉塵飛散防止を目的として、炉頂部に堆積した石炭粉の清掃除去が行われる。しかし、炉頂部に堆積した石炭粉の清掃除去作業は、高温・粉塵環境下で行われる重筋作業であり、熱中症や粉塵吸引の恐れがある危険な作業でもある。
【0003】
ここで、自動で清掃作業を行う清掃装置として、例えば、特許文献1には、マッピングを行いながら領域全面を清掃していく清掃装置が開示されている。この清掃装置は、清掃領域全体を未知領域、未清掃領域、清掃済領域の3つに分類し、未知領域をなくすようにロボットを動作させ、未知領域がなくなり次第、未清掃領域と清掃済領域の境界を移動させて清掃を実施するような自律走行ロジックを有している。このような技術は、未知領域が毎回存在するような範囲の異なる清掃領域で全面に少量散らばった粉塵などを吸引清掃する際には非常に有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コークス炉の炉頂部のように大量(通常、1kg/m2以上)の落粉が存在する場合には、これを吸引捕集して清掃装置内に貯める方式では非常に大型の装置とする必要があり、このため、スクレーパなどにより落粉をかき集めて指定の場所に集積させる方式のほうが好ましい。しかし、特許文献1の清掃装置は、毎回マッピングを作り直し、原点・座標系が変化するので、コークス炉の炉頂部のように毎回同じ領域を同じパターンで清掃し、さらに指定の場所に落粉を集積させるというような動作を行わせることができない。また、毎回同じ領域を同じパターンで清掃するのに、未知領域を探索する工程が発生することは、時間効率が低下するという問題もある。
【0006】
これに対し、清掃領域の地図を与えて自律走行を行う一般のSLAM技術では、毎回同じ領域を同じパターンで清掃し、さらに落粉をかき集めて指定の場所に集積することが可能である。しかし、もしも、コークス炉の炉頂部に自律走行装置の押出力を超えるような大量の落粉が堆積していて、スクレーパで押し切れずにスタックが発生したり、物が置かれていて移動経路が完全に塞がれていたりすると、そこで自律走行装置が立往生し、清掃の続行が不可能になるという問題がある。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、決まった経路を容易かつ短時間で移動可能であるとともに、経路の途中で立往生するリスクを減らすことができる自律走行装置および自律走行方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、移動台車を指定領域内で複数の経由点pを経由させながら自律走行させるようにした自律走行装置および自律走行方法であって、移動台車を経由点piまで自律走行させるに当たり、移動台車の自己位置を推定するとともに、予め記憶されている指定領域内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成し、前記推定された自己位置と生成された経由点情報bに基づいて移動台車を移動させる経由点piまでの走行経路を算出し、その走行経路にしたがって移動台車を経由点piまで移動させることを基本とする。そして、移動台車が自律走行中に立往生しないようにするため、移動中の移動台車が経由点piに辿り着けないスタック状態であると判定した場合には、移動台車の移動先の経由点pを変更し、さらに好ましくは、測域装置で取得された障害物情報aに基づき移動台車の走行経路が生成できないと判定した場合にも、移動台車の移動先の経由点pを変更する異常処理を行うようにしたものである。すなわち、例えば、自律走行しながら指定領域内の堆積物を清掃用スクレーパでかき集めて清掃する自律走行装置に適用した場合には、清掃用スクレーパで大量の堆積物を押し切れなくなってスタック状態になった場合、さらには、予め記憶されている障害物位置情報a1にはなかった障害物によって走行経路が塞がれている場合に、移動台車の移動先の経由点pを変更する異常処理を行い、移動台車が自律走行中に立往生しないようにするものである。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するための本発明の自律走行装置および自律走行方法の特徴は、以下のとおりである。
[1]走行用の駆動装置(2)を備えた移動台車(1)を指定領域(A)内で複数の経由点(p)を経由させながら自律走行させる自律走行装置であって、
移動台車(1)の自己位置を推定するとともに、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成し、前記推定された自己位置と生成された経由点情報bに基づいて移動台車(1)を移動させる経由点(pi)までの走行経路を算出し、移動台車(1)がその走行経路にしたがって経由点(pi)まで移動するように駆動装置(2)を制御する演算制御装置(4)を備え、
演算制御装置(4)は、経由点(pi)に向けて移動中の移動台車(1)が経由点(pi)に辿り着けないスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御することを特徴とする自律走行装置。
【0009】
[2]上記[1]の自律走行装置において、移動台車(1)の周囲環境を測定して障害物情報aを取得する測域装置(3)をさらに備え、
演算制御装置(4)は、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と、測域装置(3)で取得された障害物情報aとを比較することで移動台車(1)の自己位置を推定することを特徴とする自律走行装置。
[3]上記[2]の自律走行装置において、演算制御装置(4)は、測域装置(3)で取得された障害物情報aに基づき、移動台車(1)が移動すべき経由点(pi)までの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御することを特徴とする自律走行装置。
【0010】
[4]上記[1]~[3]のいずれかの自律走行装置において、移動台車(1)は、指定領域(A)内で所定の作業を行うための作業ツール(5)と、該作業ツール(5)を駆動するためのアクチュエータ(6)を備え、
経由点情報bは、移動台車(1)の台車位置、移動台車(1)の台車姿勢、およびアクチュエータ(6)の動作指令の情報を含むことを特徴とする自律走行装置。
[5]上記[4]の自律走行装置において、作業ツール(5)は、指定領域(A)内の堆積物をかき集めて清掃する清掃用スクレーパ(5a)であり、
アクチュエータ(6)は、清掃用スクレーパ(5a)が上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように清掃用スクレーパ(5a)を駆動するものであることを特徴とする自律走行装置。
【0011】
[6]上記[1]~[5]のいずれかの自律走行装置において、演算制御装置(4)は、移動台車(1)が経由点(pi)に移動する際に、当該経由点(pi)までの移動距離ΔLと姿勢角変化量Δθから経由点(pi)までの目標走破時間Tを算出し、移動台車(1)の移動開始からの経過時間実績値tと目標走破時間Tとを比較することで移動台車(1)がスタック状態であるか否か判定することを特徴とする自律走行装置。
[7]上記[2]~[6]のいずれかの自律走行装置において、駆動装置(2)の動作量から移動台車(1)の移動量を検出する移動量検出装置(7)をさらに備え、
演算制御装置(4)は、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と、測域装置(3)で取得された障害物情報aとを比較することに加えて、移動量検出装置(7)で検出された移動台車(1)の移動量を用いて、SLAMアルゴリズムに基づくパーティクルフィルタにより移動台車(1)の自己位置を推定することを特徴とする自律走行装置。
【0012】
[8]走行用の駆動装置(2)を備えた移動台車(1)を指定領域(A)内で複数の経由点(p)を経由させながら自律走行させる自律走行方法であって、
予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成する工程(ア)と、
移動台車(1)の自己位置を推定する工程(イ)と、
前記推定された自己位置と生成された経由点情報bとに基づいて移動台車(1)を移動させる経由点(pi)までの走行経路を算出し、移動台車(1)がその走行経路にしたがって経由点(pi)まで移動するように駆動装置(2)を制御する工程(ウ)と、
経由点(pi)に向けて移動中の移動台車(1)が経由点(pi)に辿り着けないスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御する工程(エ)を備えることを特徴とする自律走行方法。
【0013】
[9]上記[8]の自律走行方法において、工程(イ)では、測域装置(3)により移動台車(1)の周囲環境を測定して障害物情報aを取得し、予め記憶されている指定領域(A)内の障害物位置情報a1と、測域装置(3)で取得された障害物情報aとを比較することで移動台車(1)の自己位置を推定することを特徴とする自律走行方法。
[10]上記[9]の自律走行方法において、さらに、測域装置(3)で取得された障害物情報aに基づき、移動台車(1)が移動すべき経由点(pi)までの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、移動台車(1)を移動させるべき経由点(p)を変更し、その変更先の経由点(p)に移動台車(1)を移動させるよう駆動装置(2)を制御する工程(オ)を備えることを特徴とする自律走行方法。
【0014】
[11]上記[8]~[10]のいずれかの自律走行方法において、移動台車(1)は、指定領域(A)内で所定の作業を行うための作業ツール(5)と、該作業ツール(5)を駆動するためのアクチュエータ(6)を備え、
指定領域(A)内で移動台車(1)を走行させながら作業ツール(5)で作業を行うことを特徴とする自律走行方法。
[12]上記[11]の自律走行方法において、作業ツール(5)は、指定領域(A)内の地面の堆積物をかき集めて清掃する清掃用スクレーパ(5a)であり、
アクチュエータ(6)は、清掃用スクレーパ(5a)が上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように清掃用スクレーパ(5a)を駆動するものであり、
指定領域(A)内で移動台車(1)を走行させ、アクチュエータ(6)により清掃用スクレーパ(5a)を駆動させつつ、清掃用スクレーパ(5a)で堆積物をかき集め、かき集めた前記堆積物を所定の場所まで移動させて集積することを特徴とする自律走行方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、移動台車を指定領域内で複数の経由点pを経由させながら自律走行させるようにし、移動台車を経由点piまで自律走行させるに当たり、移動台車の自己位置を推定するとともに、予め記憶されている指定領域内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成し、前記推定された自己位置と生成された経由点情報bに基づいて移動台車を移動させる経由点piまでの走行経路を算出し、その走行経路にしたがって移動台車を経由点piまで移動させるようにしたので、移動台車を決まった経路で所望の場所に容易かつ短時間で移動させることができ、例えば、自律走行しながら指定領域内の堆積物を清掃用スクレーパでかき集めて清掃する自律走行装置に適用した場合には、毎回同じ領域を同じパターンで清掃し、さらに指定の場所に堆積物を集積させることができ、指定領域の清掃を容易かつ短時間で効率的に行うことができる。
【0016】
そして、移動中の移動台車が経由点piに辿り着けないスタック状態であると判定した場合には、移動台車の移動先の経由点pを変更し、さらに好ましくは、測域装置で取得された障害物情報aに基づき移動台車の走行経路が生成できないと判定した場合にも、移動台車の移動先の経由点pを変更する異常処理を行うため、移動台車が自律走行中に立往生するリスクを低減することができ、自律走行によって移動台車を所望の場所までより確実かつ短時間で移動させることができる。
【0017】
このため、例えば、自律走行しながら指定領域内の堆積物を清掃用スクレーパでかき集めて清掃する自律走行装置に適用した場合には、清掃用スクレーパで大量の堆積物を押し切れなくなってスタック状態になった場合、さらには、予め記憶されている障害物位置情報a1にはなかった障害物によって走行経路が塞がれている場合に、移動台車の移動先の経由点pを変更する異常処理を行い、移動台車が自律走行中に立往生しないようにすることができるので、指定領域の清掃をより効率的に行うことができる。また、スタック状態が生じたり、走行経路を生成できないときに移動台車の移動先の経由点pを変更する場合も、予め変更先の経由点pを指定しておくことができるので、複雑な異常処理プログラムを実装する必要がない利点がある。
以上のことから本発明の自律走行装置および方法は、石炭粉(落粉)が堆積するコークス炉の炉頂部の清掃装置などとして好適であり、堆積物の清掃除去作業を効率的かつ適切に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の自律走行装置の一実施形態を模式的に示す側面図
【
図3】
図1の実施形態の自律走行装置の各構成部材の制御系統を示す構成図
【
図5】本発明の自律走行装置の制御ロジックのフロー図
【
図6】本発明における経由点の設定と経由点情報の生成方法の一例を模式的に示す説明図
【
図7】本発明における経由点の設定と経由点情報の生成方法の一例を模式的に示す説明図
【
図8】本発明における経由点の設定と経由点情報の生成方法の一例を模式的に示す説明図
【
図9】本発明において設定される経由点と生成される経由点情報を、経由点順に模式的に示す図面
【
図10】本発明において3D形状測定装置を用いて障害物位置情報a1を作成する方法を示す説明図
【
図12】実施例1における清掃装置の移動軌跡を示す説明図
【
図14】実施例2における発明例の清掃装置の移動軌跡を示す説明図
【
図15】実施例2における比較例の清掃装置の移動軌跡を示す説明図
【
図17】実施例3における発明例の清掃装置の移動軌跡を示す説明図
【
図18】実施例3における比較例の清掃装置の移動軌跡を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、走行用の駆動装置2を備えた移動台車1を指定領域A内で複数の経由点pを経由させながら自律走行させるようにした自律走行装置および自律走行方法であり、移動台車1を経由点pi(i番目の経由点p)まで自律走行させるに当たり、移動台車1の自己位置を推定するとともに、予め記憶されている指定領域A内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成し、前記推定された自己位置と生成された経由点情報bに基づいて移動台車を移動させる経由点piまでの走行経路を算出し、その走行経路にしたがって移動台車1を経由点piまで移動させることを基本とする。そして、この自律走行中に移動台車1が立往生しないようにするため、移動中の移動台車1が経由点piに辿り着けないスタック状態であると判定した場合には、移動台車1の移動先の経由点pを変更し、さらに好ましくは、測域装置3で取得された障害物情報aに基づき移動台車1の走行経路が生成できないと判定した場合にも、移動台車1の移動先の経由点pを変更する異常処理を行うようにするものである。
【0020】
このため本発明の自律走行装置は、走行用の駆動装置2を備えた移動台車1と、移動台車1の自己位置の推定、上記情報a1~a3に基づく経由点情報bの生成、および走行経路の算出を行い、さらにスタック状態の判定などを行い、これらに基づき駆動装置2を制御して移動台車1を自律走行させる演算制御装置4を備え、さらに好ましくは、移動台車1の周囲環境を測定して障害物情報aを取得する測域装置3、駆動装置2の動作量から移動台車1の移動量を検出する移動量検出装置7などを備える。なお、これら本発明装置の構成部材については、後に
図1~
図3に示す実施形態を例に詳述する。
【0021】
移動台車1が備える走行用の駆動装置2は、車輪や無限軌道などの走行用回転体、この走行用回転体を回転駆動させるモータなどの駆動源、および走行用回転体の操舵手段などを含む。
また、移動台車1の自己位置の推定は、例えば、自律走行装置に測域装置3を設け、この測域装置3によって移動台車1の周囲環境を測定して障害物情報aを取得し、予め記憶されている指定領域A内の障害物位置情報a1と、測域装置3で取得された障害物情報aとを演算制御装置4によって比較することによって行われる。
測域装置3は、移動台車1の周囲の障害物情報aをリアルタイムで取得するものであればよく、例えば、カメラやレーザー距離計などで移動台車1の周囲環境を測定することで障害物情報aを取得するものが用いられる。
なお、測域装置3で取得される障害物情報aを用いる以外に、GPSなどの衛星測位システムによる位置情報に基づいて移動台車1の自己位置を推定するようにしてもよい。
【0022】
障害物情報aは、移動台車1の周囲に存在する障害物(例えば、構造物、建物の構造部、設備類、その他の物体)の形状や位置情報である。
障害物位置情報a1は、指定領域A内で移動台車1の移動の障害となり得る物体の位置情報(例えば、平面位置座標)であり、通常、構造物、建物の構造部、設備類などの位置情報であるが、これらに限定されない。
指定領域情報a2は、自律走行装置が所定の作業を行うために自律走行して移動する指定領域Aの位置情報(例えば、指定領域Aの外縁(外周)の平面位置座標)であり、例えば、自律走行装置が清掃装置である場合には、指定領域Aである清掃領域についての位置情報(清掃領域情報a2)などが挙げられる。
最終目標点情報a3は、自律走行装置が所定の作業を終えるために最終的に到達する地点の位置情報(例えば、平面位置座標)であり、例えば、自律走行装置が清掃装置である場合には、かき集めた堆積物を最終的に集積する地点についての位置情報(堆積物の集積箇所情報a3)などが挙げられる。
障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3は、予め記憶手段(記憶装置)に記憶されている。
【0023】
経由点情報bは、移動台車1が指定領域A内を移動して所定の作業を行うために、移動台車1が目標地点まで移動する際にたどる経由点(走行経路)、各経由点における移動台車1の姿勢、作業ツール5を駆動するアクチュエータ6の動作などについての情報であり、各経由点pでの移動台車1の台車位置(x座標、y座標)、移動台車1の台車姿勢(台車の姿勢角θ)、さらに移動台車1が下記するような作業ツール5とこれを駆動するためのアクチュエータ6を備える場合におけるアクチュエータ動作指令mなどを含み、移動台車1が巡回する経由点p1~経由点pjの順番にj個並んで記載されたデータとなっている。なお、台車姿勢とは、x-y座標において移動台車1が向いている方向(方位角)、すなわち経由点に到着した時点での方位(方位角)のことである。
【0024】
演算制御装置4は、上述したように、(i)移動台車1の自己位置を推定する、(ii)上記情報a1~a3から経由点情報bを生成する、(iii)前記推定された自己位置と生成された経由点情報bに基づいて移動台車1を移動させる経由点piまでの走行経路を算出する、(iv)経由点piに向けて移動中の移動台車1が経由点piに辿り着けないスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、移動台車1を移動させるべき経由点pを変更する、(v)さらに必要に応じて、測域装置3で取得された障害物情報aに基づき、移動台車1が移動すべき経由点piまでの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、移動台車1を移動させるべき経由点pを変更する、などを実行し、これらに基づき駆動装置2を制御して移動台車1を自律走行させる。なお、上記(ii)で生成された経由点情報bは記憶手段(記憶装置)に格納され、各経由点pに向かう際に、上記(iii)において読み込まれ、走行経路が算出される。
移動台車1が自律走行中にスタック状態となって立往生するケースとしては、例えば、自律走行しながら指定領域A内の堆積物を清掃用スクレーパでかき集めて清掃する自律走行装置(清掃装置)に適用した場合に、清掃用スクレーパで大量の堆積物を押し切れなくなってスタック状態となるようなケースが挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
移動台車1は、指定領域A内で所定の作業を行うための作業ツール5と、この作業ツール5を駆動するためのアクチュエータ6を備えることができる。
移動台車1が備える作業ツール5に特別な制限はないが、本発明の自律走行装置は、自律走行しながら指定領域A内の堆積物をかき集めて清掃する清掃装置に好適であり、この場合の作業ツール5は、指定領域A内の堆積物をかき集めて清掃する清掃用スクレーパ5aである。
また、移動台車1は、上記の清掃用スクレーパ5aに限らず、指定領域A内で所定の作業を行うための種々の作業ツール5を備えることができる。例えば、洗浄用の液体(水など)を撒く散水装置、指定領域A内の物体(石炭投入口の蓋など)を持ち上げるアームなどが挙げられる。その場合、アクチュエータ6は、散水装置やアーム等の作業ツール5を使用位置と非使用位置との間で移動するように駆動する。
なお、移動台車1は、必ずしも作業ツール5を備える必要はない。
【0026】
図1および
図2は、本発明の自律走行装置の一実施形態を模式的に示すものであり、
図1は側面図、
図2は平面図である。本実施形態の自律走行装置は、自律走行しながら指定領域A内の堆積物を清掃用スクレーパ5aでかき集めて清掃する清掃装置である。また、
図3は、この自律走行装置の各構成部材の制御系統を示した構成図である。
自律走行装置は、移動台車1を備えており、この移動台車1は、走行用の駆動装置2として、車輪20と、車輪20の駆動源(モータなど)と、車輪20の操舵機構などを備えており、この駆動装置2により移動台車1は任意の方向に走行(前進・後進)可能である。
【0027】
移動台車1には、測域装置3、演算制御装置4、移動量検出装置7、記憶装置8などが搭載されている。さらに、移動台車1は、路面(地面)の堆積物をかき集めて清掃する清掃用スクレーパ5a(作業ツール5)と、この清掃用スクレーパ5aを駆動する(主に上下に動かす)ためのアクチュエータ6を備えており、清掃用スクレーパ5aは、アクチュエータ6に上下動可能に保持されている。
なお、この自律走行装置(以下、「清掃装置」という場合がある)は、路面を走行することに伴って清掃用スクレーパ5aが路面上の堆積物(堆積粉)をかき集めることにより路面を清掃するものであり、したがって、堆積物の吸引機構や吸引した堆積物の貯留機構などは備えていない。
【0028】
測域装置3は、周囲の障害物(例えば、構造物、建物の構造部、設備類、その他の物体)と移動台車1との距離を測定し、或いは周囲を撮影することで、その障害物の2次元ないし3次元形状および位置情報を障害物情報aとして取得する装置である。測域装置3の種類は問わず、例えば、レーザーレンジファインダ、赤外線センサ、超音波センサ、電波によるレーダーセンサ、デプスカメラ、ステレオカメラなどの1種以上を用いることができるが、なかでも測定精度などの観点から2Dまたは3Dレーザー式のレーザーレンジファインダが好ましい。
移動量検出装置7は、例えば車輪エンコーダなどで構成され、駆動装置2を構成する車輪20の動作量から移動台車1の移動量を検出(推定)する。
【0029】
記憶装置8には、指定領域A内の障害物位置情報a1と、指定領域情報a2(本実施形態では清掃領域についての情報であるため、以下「清掃領域情報a2」という)と、最終目標点情報a3(本実施形態では堆積物の集積箇所についての情報であるため、以下「堆積物の集積箇所情報a3」という)が予め格納されている。
本実施形態において、障害物位置情報a1とは、指定領域A内に存在する障害物(構造物など)の平面位置座標の情報であり、清掃領域情報a2とは、清掃領域である指定領域Aの外縁(外周)の平面位置座標の情報であり、堆積物の集積箇所情報a3とは、移動台車1の移動の最終目標位置である堆積物の集積位置(箇所)の平面位置座標の情報である。障害物位置情報a1、清掃領域情報a2、および堆積物の集積箇所情報a3は、マップ(障害物マップ)などで予め与えられている情報であってもよいし、測域装置3で予め測定して記憶しておいた情報や、測域装置3以外の装置を用いて予め測定して記憶しておいた情報等であってもよい。
【0030】
ここで、測域装置3以外の装置を用いて障害物位置情報a1を作成する方法としては、例えば、
図10に示すような3Dスキャナ等の3D形状測定装置10を用いる方法が挙げられる。具体的には、移動台車1とは別の3D形状測定装置10を用いて指定領域Aの3D形状をスキャンし、そのスキャンデータから3DCADモデルを作成し、ある特定の高さでの断面形状、あるいはその3DCADモデルを用いたシミュレーション結果より障害物位置情報a1を作成する。このように、3D形状測定装置10を用いて障害物位置情報a1を作成することで、移動台車1の測域装置3を用いて障害物位置情報a1を作成する場合に比べて測定誤差を小さくすることができる。また、予め与えられているマップ(障害物マップ)を用いる場合に比べて後付けの設備や経年劣化による障害物の変形等の情報を反映することができ、正確な障害物位置情報a1を作成することが可能となる。
【0031】
演算制御装置4は、算出された走行経路にしたがって経由点pを順に巡って目的地点(最終の経由点p)に到達するように、移動台車1を自律走行させる。その際に、測域装置3による周囲環境の測定で取得された障害物情報aと、予め記憶装置8に記憶(格納)されている指定領域A内の障害物位置情報a1とを比較することで移動台車1の自己位置を推定する。この自己位置推定の手法は、カルマンフィルタ、拡張カルマンフィルタ、パーティクルフィルタ、ベイズフィルタなどを用いたSLAMアルゴリズムを使用することが好ましいが、特に、SLAMアルゴリズムに基づくパーティクルフィルタによって移動台車の自己位置を推定することが好ましい。
また、SLAMアルゴリズムによる自己位置推定の際には、障害物位置情報a1および上記の測域装置3による測定で取得された障害物情報aに加えて、車輪エンコーダなどの移動量検出装置7によるオドメトリを組み合わせることで、計算負荷を軽減しつつ高い精度で移動台車1の自己位置を推定することができる。また、移動量検出装置7によるオドメトリに代えて、GPSによる測位やIMU出力などの情報を組み合わせることもでき、これによっても同様の効果が期待できる。
【0032】
演算制御装置4は、上記の指定領域A内の障害物位置情報a1と清掃領域情報a2と堆積物の集積箇所情報a3とから経由点情報b(自律移動する経由点情報)を生成する。具体的には、清掃領域全体を効率的に清掃して堆積物を所定位置に集積させるために、上記情報a1~a3に基づいて、移動台車1がたどるべき経由点の位置、各経由点での移動台車1の姿勢(姿勢角)、清掃用スクレーパ5aを駆動するアクチュエータ6の動作態様などを求め、経由点情報bとする。
ここで、経由点情報bには、各経由点pにおける移動台車1の台車位置(x座標、y座標)、移動台車1の台車姿勢(台車の姿勢角θ)、アクチュエータ6の動作指令mなどの情報が含まれる。各経由点pで移動台車1がとるべき台車位置(x座標、y座標)、台車姿勢(台車の姿勢角θ)、アクチュエータ動作(上げ、下げ動作)を指定するアクチュエータ動作指令mを与えることで、移動台車1を所望の位置に移動させることができ、所望の領域の堆積物をかき集めて所望の位置に集積することができる。
経由点情報bは、台車位置x座標、台車位置y座標、台車姿勢角θ、アクチュエータ動作指令mが、移動台車1が巡回する経由点p1~経由点pjの順番にj個並んで記載されたデータとなっており、i番目の経由点pに到達したらi+1番目の経由点情報bの経由点を次の経由点pとして自律走行を行うことを繰り返し、最後のj番目の経由点pに到達するまで自律走行を行う。
【0033】
演算制御装置4は、前記推定された自己位置と前記生成された経由点情報bに基づいて移動台車1を移動させる経由点pi(i番目の経由点p)までの走行経路を算出し(走行経路を生成し)、移動台車1がその走行経路にしたがって経由点piまで移動するように駆動装置2を制御する。そして、このような走行経路の算出と、これに基づく駆動装置2の制御を、巡回移動する経由点p毎に繰り返すことにより、移動台車1を目的地点(最終の経由点p)まで自律走行させる。すなわち、予め決められた経由点pを順に巡って最終の経由点pまで自律走行させるに当たり、移動台車1がi番目の経由点pに向けて移動する際に、その経由点情報bを読み込んで次に向かう経由点として設定し、走行経路を生成(算出)して自律走行を行わせる。移動台車1がi番目の経由点pに到達したら、i+1番目の経由点pの経由点情報bを読み込んで次に向かう経由点として設定し、自律走行を行わせる、ということを最終の経由点pに到達するまで繰り返し行う。なお、移動台車1がi番目の経由点pに向けて自律走行する場合、通常、目標点(i番目の経由点p)に達するまでの間、一定の時間間隔で自己位置を推定し、推定された自己位置に基づいて目標点までの走行経路を生成し、その走行経路に沿って走行する。この手順を繰り返し実施しながら目標点を目指して走行し、逐次推定される自己位置と目標点との距離が一定の値以下になった場合に、目標点(i番目の経由点p)に到達したと判定される。
また、演算制御装置4は、「移動台車1がi番目の経由点pに向かって移動している間」または/および「i番目の経由点pに到着した後」に、i番目の経由点情報bにあるアクチュエータ動作指令mに基づいてアクチュエータ6を制御し、清掃用スクレーパ5aが上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように清掃用スクレーパ5aを駆動する。
【0034】
さらに、演算制御装置4は、移動台車1が自律走行中に立往生しないようにするため、経由点piに向けて移動中の移動台車1が経由点piに辿り着けないスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、次に移動台車1を移動させるべき経由点pを変更して設定し、その変更先の経由点pに移動台車1を移動させるよう駆動装置2を制御する。経由点pを変更する場合の変更先の経由点pは、予め「何番目先の経由点」と決められており、i番目の経由点pに向かっている際にスタック状態と判定がなされたときに、i+n番目(nは予め指定した自然数)の経由点情報bを次の経由点pに変更して設定することで、移動台車1の立往生を回避する。通常、nは“1”とするが、これに限定されない。
さきに説明したように、移動台車1が自律走行中にスタック状態となって立往生するケースとしては、例えば、清掃用スクレーパ5aで大量の堆積物を押し切れなくなってスタック状態となるようなケースが挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
スタック状態であるか否かは、例えば、経由点piまでの移動時間(移動開始からの経過時間t)で判定することができる。この場合には、演算制御装置4は、移動台車1が経由点piに移動する際に、当該経由点piまでの移動距離ΔLと姿勢角変化量Δθ(台車の姿勢角θの変化)から経由点piまでの目標走破時間T(目標移動時間)を算出し、移動台車1の移動開始からの経過時間t(実績値)と目標走破時間Tとを比較することで移動台車1がスタック状態であるか否か判定する。すなわち、経過時間tが目標走破時間Tを超えた場合(t>T)にスタック状態になったと判定する。
ここで、目標走破時間Tは、例えば、i番目の経由点pに到達してi+1番目の経由点pを次の経由点として設定する際に、i番目とi+1番目の経由点p間の距離ΔLと姿勢角変化量Δθ(台車の姿勢角θの変化)を用いて算出を行う。目標走破時間Tは、移動台車の並進速度、旋回速度を加味して決定した係数α、β、γを用いて、以下の(1)式で算出することが好ましいが、さらに移動台車1の並進加減速度、旋回加減速度等を加味して他の式で導出してもよい。
T=αΔL+βΔθ+γ …(1)
【0036】
なお、スタック状態であるか否かを判定する他の方法としては、本実施形態のように自律走行しながら指定領域A内の堆積物を清掃用スクレーパ5aでかき集めて清掃する自律走行装置の場合、例えば、(i)アクチュエータ6と清掃用スクレーパ5aの間にロードセルなどの負荷検出器を設け、この負荷検出器によって堆積物の重さにより清掃用スクレーパ5aにかかる負荷(=清掃用スクレーパ5aの押し出し力)を測定し、この負荷検出器で検出された負荷を閾値と比較し、閾値以上である場合に移動台車1がスタック状態であると判定する方法、(ii)移動台車1にカメラを取り付けて清掃用スクレーパ5aでかき集めようとする堆積物を撮影し、画像認識により堆積物の堆積状況を見て移動台車1がスタック状態であると判定する方法、(iii)移動台車1の自己位置の経時変化を見て一定時間以上動きがない状態を検出したら、移動台車1がスタック状態であると判定する方法、などが挙げられる。
【0037】
さらに好ましくは、演算制御装置4は、予め記憶装置8に格納されている障害物位置情報a1にはない障害物(例えば、或る作業を行うために走行経路上に置かれている物体)によって走行経路が塞がれている場合、移動台車1が立往生することがないようにするため、測域装置3による測定で取得された障害物情報aに基づき、移動台車1が移動すべき経由点piまでの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、移動台車1を移動させるべき経由点pを変更して設定し、その変更先の経由点pに移動台車1を移動させるよう駆動装置2を制御する。経由点pを変更する場合の変更先の経由点pは、予め「何番目先の経由点」と決められており、i番目の経由点pに向かおうとする際、若しくは向かっている際に、障害物情報aによって走行経路が生成できないと判定したときに、i+n番目(nは予め指定した自然数)の経由点情報bを次の経由点pに変更して設定することで、移動台車1の立ち往生を回避する。通常、nは“1”とするが、これに限定されない。
【0038】
図4は、演算制御装置4のブロック図である。この演算制御装置4は、自己位置推定部40、経由点情報生成部41、経路生成部42、制御部43、スタック判定部44、経路生成判定部45などを備えている。
移動台車1を経由点p
i(i番目の経由点p)まで移動させるに当たり、自己位置推定部40は、記憶装置8に格納されている障害物位置情報a1と、測域装置3による周囲環境の測定により取得された障害物情報aを取り込み、両情報を比較(照合)することにより移動台車1の自己位置を推定する。ここでSLAMアルゴリズムによる自己位置推定を行う場合には、移動量検出装置7(車輪エンコーダなど)で検出される移動台車1の移動量を取り込み、移動量検出装置7によるオドメトリを組み合わせることで、自己位置推定を行うことができる。
経由点情報生成部41は、記憶装置8に格納されている障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3を取り込み、これらの情報a1~a3に基づき経由点情報bを生成する。
【0039】
経路生成部42は、自己位置推定部40で推定された自己位置の情報と、経由点情報生成部41で生成された経由点情報bを取り込み、これらに基づいて移動台車1を移動させる経由点piまでの走行経路を生成(算出)し、これを制御部43に出力する。その指令に基づき、制御部43は移動台車1がその走行経路にしたがって経由点piまで移動するように駆動装置2を制御する。ここで、経路生成部42は、自己位置推定部40から取り込まれた自己位置の情報に基づき、自己位置と経由点piとの距離が一定の値以下となった時に経由点piに到達したと判断する。
また、経路生成部42は、経由点piに関する経由点情報bに基づくアクチュエータ6の動作指令を制御部43に出力し、その指令に基づき、制御部43はアクチュエータ6を制御する。
【0040】
スタック判定部44は、制御部43から移動開始からの経過時間tを取り込み、この経過時間tを目標走破時間Tと比較してt>Tとなったら、経由点piに向けて移動中の移動台車1が経由点piに辿り着けないスタック状態にあると判定し、そのスタック発生情報を経路生成部42に出力する。これに基づき、経路生成部42は、移動台車1を移動させるべき経由点pを変更し(例えばi+1番目の経由点pに変更する)、その変更先の経由点pまでの走行経路を生成(算出)し、これを制御部43に出力する。その指令に基づき、制御部43は移動台車1がその走行経路にしたがって変更先の経由点pまで移動するように駆動装置2を制御する。また、経路生成部42は、変更先の経由点pに関する経由点情報bに基づくアクチュエータ6の動作指令を制御部43に出力し、その指令に基づき、制御部43はアクチュエータ6を制御する。
【0041】
経路生成判定部45は、測域装置3による周囲環境の測定により取得された障害物情報aを取り込み、この障害物情報aに基づき移動台車1が移動すべき経由点piまでの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、経路生成不可情報を経路生成部42に出力する。これに基づき、経路生成部42は移動台車1を移動させるべき経由点pを変更し(例えばi+1番目の経由点pに変更する)、その変更先の経由点pまでの走行経路を生成(算出)し、これを制御部43に出力する。その指令に基づき、制御部43は移動台車1がその走行経路にしたがって変更先の経由点pまで移動するように駆動装置2を制御する。また、経路生成部42は、変更先の経由点pに関する経由点情報bに基づくアクチュエータ6の動作指令を制御部43に出力し、その指令に基づき、制御部43はアクチュエータ6を制御する。
【0042】
図1および
図2に示すように、作業ツール5である清掃用スクレーパ5aは、下端部が路面に接地した状態で移動台車1が走行することにより路面上の堆積物(堆積粉)をかき集める部材であり、本実施形態では、移動台車1の前部側(清掃時走行方向の前部側)にその幅方向に沿って配置される板状(壁状)のドーザー部材で構成され、移動台車1に支持アーム9を介して上下動可能に支持されている。
アクチュエータ6は、清掃用スクレーパ5aが上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように、支持アーム9を介して清掃用スクレーパ5aを駆動する。また、清掃用スクレーパ5aが路面に接地した状態で、その下端部が地面(清掃面)に密着するように、清掃用スクレーパ5aはアクチュエータ6で常時地面に押し付けられるようにすることが好ましい。なお、清掃の対象が石炭粉の場合は押し付け力まで制御する必要はないが、堆積物の粒径や密度によっては押し付け力の制御などが行えるようにしてもよい。
【0043】
清掃用スクレーパ5aが上下動可能に支持される機構には、通常、スライド式のガイド機構(所謂スライドガイドなど)が用いられる。このガイド機構としては、例えば、移動台車1に上下方向に沿って設けられるガイド部と、支持アーム9に設けられ、前記ガイド部にスライド移動可能に係合するスライド部材で構成される。アクチュエータ6は、この支持アーム9のスライド部材をガイド部に沿って上下動させることで、清掃用スクレーパ5aが上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように清掃用スクレーパ5aを駆動する。アクチュエータ6は、例えば、油圧シリンダやボールねじなどで構成される。
清掃用スクレーパ5aは、移動台車1の幅方向に沿った板状本体部50(ドーザー本体部)と、かき集めた堆積物を囲い込んで(せき止めて)移動台車幅方向の外側に逃さないようにするために、この板状本体部50の両端に連成された側板部51(サイドドーザー部)からなっている。すなわち、清掃用スクレーパ5aは、板状本体部50とその両端に連成された側板部51によって平面コ字状に構成されている。
【0044】
清掃用スクレーパ5aの本体部は、通常、金属製の板状部材などで構成されるが、下端部の少なくとも一部(例えば板状本体部50の下端部)は、路面上の堆積物をかき集めやすくするため、ゴム製の平板や樹脂製または金属製のブラシなどで構成することが好ましく、特に、石炭粉のように粒径およびかさ密度の小さい堆積物(通常、石炭粉は粒径1mm以下、嵩密度1.0g/cm3以下)をかき集める場合には有効であり、堆積物を高い集塵効率で回収することができる。ただし、清掃面の性状(凹凸状況等)、堆積物の粒径、密度によっては樹脂製や金属製の平板などを用いてもよい。
【0045】
なお、清掃用スクレーパ5aは、移動台車1に支持アームを介して上下回動自在に支持させてもよく、この場合には、アクチュエータ6は、清掃用スクレーパ5aを移動台車1に対して上下回動(駆動)させるものであり、例えば、支持アームの軸支部に設けられるロータリーアクチュエーターや、移動台車1と支持アーム間に連結される油圧シリンダなどで構成される。
以上のような清掃用スクレーパ5aとアクチュエータ6を備える清掃装置は、アクチュエータ6によって清掃用スクレーパ5aの下端部を路面に密着させた状態で走行することで、路面上の堆積物を確実かつ効率的にかき集めることができ、かき集めた堆積物を所定の場所まで移動させて集積することができる。また、清掃スクレーパ5aは上下動可能であるので、清掃を行わない場合には、清掃スクレーパ5aの下端部を路面から離した状態で移動台車1を走行させることができる。
【0046】
自律走行装置の自律走行方法は、
図5に記載のフローに従って行われる。
自律走行(清掃)を開始(スタート)する際、予め記憶されている障害物位置情報a1と清掃領域情報a2と堆積物の集積箇所情報a3とから演算制御装置4によって経由点情報bを生成し、この経由点情報bは記憶装置8に記憶しておく。移動台車1は初期位置からスタートするが、ステップS1でこれから向かう経由点番号i=1(経由点p
i=p
1)と設定する。そして、ステップS2で経由点番号1(経由点p
1)の経由点情報bを読み込むとともに、ステップS3で経由点番号1までの目標走破時間Tを算出する。また、ステップS4で移動台車1の自己位置を推定し、ステップS5で走行経路を生成する。
【0047】
走行経路が生成できた場合(ステップS5成功)は、ステップS6で経由点番号1(経由点p1)へ向かって自律走行を開始する。一方、走行経路が生成できなかった場合(ステップS5失敗)は、ステップS7で現在の経由点番号iをi+nに変更する(経由点番号1を1+nに変更する)とともに、ステップS8において、この変更後の経由点番号iが経由点数jより大きいか判定する。ここで、走行経路が生成できなかった場合としては、例えば、障害物位置情報a1には無い予期しない障害物(侵入してきた人など)によって経路が生成できない場合などが挙げられる。変更後の経由点番号iが経由点数j以下の場合(ステップS8がNo)、ステップS2に戻って、変更後の経由点番号iの経由点情報bを読み込む。一方、経由点番号iが経由点数jより大きい場合(ステップS8がYes)、ステップS9でエラーと判定し、エラー表示を行ってフローを終了する。
【0048】
ステップS6の経由点番号1(経由点p1)に向かっての自律走行中、走行開始からの経過時間tを測定し、ステップS10で経過時間tが目標走破時間Tをオーバーしたかどうかを判定する。経過時間tが目標走破時間Tをオーバーしていない場合(ステップS10がNo)は、ステップS11で移動台車1が目標点(経由点番号1)に到達したかを判定する。一方、経過時間tが目標走破時間Tをオーバーしている場合(ステップS10がYes)は、ステップS7に進み、それ以降は上記と同じフローとなる。
ここで、ステップS11で目標点(経由点番号1)に到達したかどうかは、自己位置の推定に基づき判定される。すなわち、目標点に達するまでの間、一定の時間間隔で自己位置を推定し、推定された自己位置に基づいて目標点までの走行経路を生成し、その走行経路に沿って走行する。この手順を繰り返し実施しながら目標点を目指して走行し、逐次推定される自己位置と目標点(経由点番号1)との距離が一定の値以下になった場合に到達したと判定される。
【0049】
ステップS11で移動台車1が目標点(経由点番号1)に到達したと判定された場合(ステップS11がYes)、ステップS12で次の経由点を設定し(i=i+1)、ステップS13において、その設定された経由点番号iが経由点数j以上か(i≧j)判定する。経由点番号iが経由点数j未満の場合(ステップS13がNo)、ステップS2に戻って、ステップS2以降のフローを繰り返す。一方、ステップS13で経由点番号iが経由点数j以上である場合(ステップS13がYes)、フローを終了する。また、ステップS11で目標点(経由点番号1)に到達していないと判定された場合(ステップS11がNo)、そのままステップS2へ戻り、ステップS2以降のフローを繰り返す。
【0050】
次に、清掃経路の設定と経由点情報bの生成方法の一例について、
図6~
図9に基づいて説明する。
経由点情報bは、指定領域A内の障害物位置情報a1、清掃領域情報a2、および堆積物の集積箇所情報a3から生成される。
図6および
図7に模式的に示す指定領域A(清掃領域)では、障害物位置情報a1はマップの領域全体にある障害物の位置情報であり、清掃領域情報a2は清掃領域の座標(a≦x≦b,c≦y≦d)、集積箇所情報a3は最終的な堆積物集積位置の座標(x
c,y
c)である。
【0051】
経由点情報bを生成する場合、まず、
図6に示すように、清掃領域(a≦x≦b,c≦y≦d)のx軸方向に沿って左端(x=a)から集積位置(x=x
c)までの堆積物を「始点(a,d-s)→終点(x
c,d-s)」のようにかき集め、集積位置(x=x
c)に仮置き集積させる清掃経路を設定する。このような清掃経路を、スクレーパ幅2sごとに清掃領域をはみ出さない範囲で、「始点(a,d-(2n-1)s)→終点(x
c,d-(2n-1)s)」の清掃経路までn本設定し、最後に一番下端を清掃する「始点(a,c+s)→終点(x
c,c+s)」の清掃経路を設定する。すなわちn+1本の清掃経路を設定し、これに伴い(n+1)×2=2n+2個の経由点情報b(清掃経路の始点、終点となる経由点の情報)を生成する。
さらに、
図7に示すように、清掃領域(a≦x≦b,c≦y≦d)のx軸方向に沿って右端(x=b)から集積位置(x=x
c)までの堆積物を「始点(b,d-s)→終点(x
c,d-s)」のようにかき集め、集積位置(x=x
c)に仮置き集積させる清掃経路を設定し、このような清掃経路を、上記と同様にn+1本設定し、これに伴い(n+1)×2=2n+2個の経由点情報b(清掃経路の始点、終点となる経由点の情報)を生成する。
【0052】
さらに、
図8に示すように、清掃領域(a≦x≦b,c≦y≦d)のy軸方向に沿って上端(y=d)から集積位置(y=y
c)までの堆積物(上述したように仮置き集積された堆積物)を「始点(x
c,d)→終点(x
c,y
c)」のようにかき集め、最終的な集積位置(x
c,y
c)に集積させる清掃経路と、清掃領域(a≦x≦b,c≦y≦d)のy軸方向に沿って下端(y=c)から集積位置(y=y
c)までの堆積物(上述したように仮置き集積された堆積物)を「始点(x
c,c)→終点(x
c,y
c)」のようにかき集め、最終的な集積位置(x
c,y
c)に集積させる清掃経路をそれぞれ設定し、これに伴い4個の経由点情報b(清掃経路の始点、終点となる経由点の情報)を生成する。最後に初期位置(0,0)を経由点(最終地点)に設定することで、
図9に例示するようなj=(2n+2)×2+4+1=4n+9個の経由点情報bが生成される。
【0053】
次に、本発明の自律走行方法について説明する。
この自律走行方法は、以上述べたような装置構成を用いて移動台車1を自律走行させる方法である。したがって、走行用の駆動装置2を備えた移動台車1を指定領域A内で複数の経由点pを経由させながら自律走行させる自律走行方法であり、予め記憶されている指定領域A内の障害物位置情報a1と指定領域情報a2と最終目標点情報a3とから経由点情報bを生成する工程(ア)と、移動台車1の自己位置を推定する工程(イ)と、前記推定された自己位置と前記生成された経由点情報bとに基づいて移動台車1を移動させる経由点pi(i番目の経由点p)までの走行経路を算出し、移動台車1がその走行経路にしたがって経由点piまで移動するように駆動装置2を制御する工程(ウ)と、経由点piに向けて移動中の移動台車1が経由点piに辿り着けないスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、移動台車1を移動させるべき経由点pを変更し、その変更先の経由点pに移動台車1を移動させるよう駆動装置2を制御する工程(エ)を備える。
【0054】
また、この自律走行方法は、下記(i)~(iv)に示すような、より具体的な実施形態を採り得る。
(i)工程(イ)では、測域装置3により移動台車1の周囲環境を測定して障害物情報aを取得し、予め記憶されている指定領域A内の障害物位置情報a1と、測域装置3で取得された障害物情報aとを比較することで移動台車1の自己位置を推定する。
(ii)さらに、測域装置3で取得された障害物情報aに基づき、移動台車1が移動すべき経由点piまでの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、移動台車1を移動させるべき経由点pを変更し、その変更先の経由点pに移動台車1を移動させるよう駆動装置2を制御する工程(オ)を備える。
【0055】
(iii)移動台車1は、指定領域A内で所定の作業を行うための作業ツール5と、この作業ツール5を駆動するためのアクチュエータ6を備え、指定領域A内で移動台車1を走行させながら作業ツール5で作業を行う。
(iv)上記(iii)の場合において、作業ツール5は、指定領域A内の地面の堆積物をかき集めて清掃する清掃用スクレーパ5aであり、アクチュエータ6は、清掃用スクレーパ5aが上下方向に移動して路面に接地しまたは路面から離れるように清掃用スクレーパ5aを駆動するものであり、指定領域A内で移動台車1を走行させ、アクチュエータ6により清掃用スクレーパ5aを駆動させつつ、清掃用スクレーパ5aで堆積物をかき集め、かき集めた前記堆積物を所定の場所まで移動させて集積する。
【0056】
以上のような本発明の自律走行方法の詳細とその実施に供する装置は、さきに自律走行装置について説明した通りであり、詳細な説明は省略する。
本発明の自律走行装置および方法は、石炭粉(落粉)が堆積するコークス炉の炉頂部の清掃装置などとして好適であり、堆積物の清掃除去作業を効率的且つ適切に実施することができる。
【実施例0057】
図1~
図4に示すような清掃用スクレーパ5aおよび制御系を備えた本発明の自律走行装置(清掃装置)について、自律走行性と清掃能力を評価するため、建屋内で以下のような清掃試験を行った。この試験では、清掃領域に清掃対象となる石炭粉を散布しておき、清掃装置を自律走行させつつ清掃用スクレーパ5aで石炭粉をかき集め、石炭粉回収場所であるシュート(集積位置)に集めてそこから落下させた。
清掃装置が備える清掃用スクレーパ5aは、幅0.4mであり、下端部が平板状のブラシで構成されている。
図11~
図18は、試験を実施した建屋内を座標系で表したものであり、清掃領域(石炭粉の散布領域)、清掃装置の初期位置(清掃装置の移動の出発点および終点)、シュート(最終的に石炭粉を集積させて回収する位置)、周囲の壁の一部などを表してある。
【0058】
[実施例1]
図11に示すような建屋内の領域において、長方形の清掃領域(0≦x≦5,1≦y≦4)に清掃対象となる石炭粉を約1kg/m
2でほぼ均一な厚さとなるよう散布(散布量:約15kg)した。清掃装置の初期位置を清掃用スクレーパ5aの中心位置が原点(0,0)となる位置に設定するとともに、
図6~
図8に模式的に示すような清掃経路を設定し、座標(2,2)に設けられたシュートに石炭粉を集めて落下させるようにする清掃を行った。この際に生成された経由点情報bを表1に示す。この表1に示す経由点情報bは、左側から台車位置のx座標、同じくy座標、台車の姿勢角θ(その経由点に到着した時点で台車がどの方向を向いているかを示す)、アクチュエータ動作指令m(その経由点に行くまでの間に清掃用スクレーパ5aをどのように動作させるのかを示す)であり、清掃装置は1行目から順番に経由点として読み込んで自律走行を行う。アクチュエータ動作指令mは、“1”が清掃用スクレーパ5aを路面に下ろして押し付ける動作であり、“0”が清掃用スクレーパ5aを持ち上げて路面から離す動作である。
【0059】
清掃装置は、「移動の途中でスタック状態になる」または「走行経路を生成できない」ことがない限り、表1の経由点情報bに基づき、経由点p1~p36を順次経て経由点p37(終点)まで移動するとともに、経由点情報bに基づく動作(台車姿勢角θに基づく移動台車1の旋回、アクチュエータ動作指令mに基づくアクチュエータ6の動作)を行う。一方、経由点pi(i番目の経由点p)に移動する際に「スタック状態になる」または「走行経路を生成できない」と判定された場合には、移動すべき経由点を経由点pi+1(i+1番目の経由点p)に変更し、その経由点情報を読み込んで自律走行を行う。
【0060】
【0061】
清掃装置の移動軌跡を
図12に示す。この
図12の移動軌跡には、経由点pの一部を示してある。清掃装置は、経由点p
1~p
36を通ることで、清掃領域内の石炭粉を清掃用スクレーパ5aでかき集め、座標(2,2)に設けられたシュートに集めて落下させた後、初期位置(清掃装置の移動の終点)に戻ることができた。シュートで回収された石炭粉量(回収量)は12.4kgであり、回収率を(回収量)÷(散布量)×100で求めると82.7%であった。これにより、石炭粉の清掃が適切に行われたこと、清掃装置が優れた自律走行性と清掃能力を有することが確認できた。
【0062】
[実施例2]
図13に示すような建屋内の領域において、座標(5,3)の位置に元々の障害物マップに存在しない障害物(障害物位置情報a1には無かった予期しない障害物)を設置して物理的に通行できないようにしたうえで、実施例1と同様に、清掃領域に清掃対象となる石炭粉を約1kg/m
2でほぼ均一な厚さとなるよう散布し(散布量:約15kg)、実施例1と同様の試験を実施した。ここで、演算制御装置4は、測域装置3で取得された障害物情報aに基づき、清掃装置が移動すべきi番目の経由点pまでの走行経路が生成できるか否かを判定し、生成できないと判定した場合に、清掃装置を移動させるべき経由点をi+1番目の経由点pに変更するように設定されている。
【0063】
清掃装置の移動軌跡を
図14に示す。この
図14の移動軌跡には、経由点pの一部を示してある。この実施例では、清掃装置が座標(2,3.4)の20番目の経由点p
20から座標(5,3)の21番目の経由点p
21に向かう際に、経由点p
21に辿り着く経路を生成できないと判定されたため、清掃装置を移動させるべき経由点が経由点p
22に変更され、清掃装置は20番目の経由点p
20から座標(2,3)の22番目の経由点p
22に向かい、その後は23番目以降の経由点pを通り初期位置(清掃装置の移動の終点)まで戻ることができた。シュートで回収された石炭粉量(回収量)は11.5kgであり、回収率を(回収量)÷(散布量)×100で求めると76.7%であった。以上の通り、回収量は1パス分減少したものの、石炭粉の清掃を可能な範囲で適切に行うことができ、しかも、移動経路が障害物で塞がれている場合にも、立往生することなく最後まで清掃を実行することができた。これにより、石炭粉の清掃が適切に行われたこと、清掃装置が優れた自律走行性と清掃能力を有することが確認できた。
比較のために、一般のSLAM技術で清掃装置を自律走行させた場合の移動軌跡を
図15に示す。この場合には、障害物により21番目の経由点が完全に塞がれているため走行の継続が不可能になり、清掃装置は立往生した。
【0064】
[実施例3]
図16に示すような建屋内の領域において、実施例1と同様に、清掃領域に清掃対象となる石炭粉を約1kg/m
2でほぼ均一な厚さとなるよう散布し(散布量:約15kg)、さらに、追加で領域Gに対して10kgの石炭粉を散布して、実施例1と同様の試験を実施した。ここで、演算制御装置4は、清掃装置がi番目の経由点pに移動する際に、当該経由点pまでの目標走破時間Tを算出し、清掃装置の移動開始からの経過時間実績値tと目標走破時間Tとを比較することで清掃装置がスタック状態であるか否かを判定し、スタック状態であると判定した場合に、清掃装置を移動させるべき経由点をi+1番目の経由点pに変更するように設定されている。目標走破時間Tは上記(1)式で求め、係数α、β、γはそれぞれ0.4、0.4、10とした。
【0065】
清掃装置の移動軌跡を
図17に示す。この
図17の移動軌跡には、経由点pの一部を示してある。この実施例では、清掃装置が座標(5,3)の21番目の経由点p
21から座標(2,3)の22番目の経由点p
22に向かう途中で押し切れなくなり、経由点p
21を出発してからの経過時間tが目標走破時間Tをオーバーしたので、スタック状態であると判定され、清掃装置を移動させるべき経由点が経由点p
23に変更された。このため清掃装置は、経由点p
22をパスして座標(5,2.6)の23番目の経由点p
23に向かい、その後は24番目以降の経由点pを通り初期位置(清掃装置の移動の終点)まで戻ることができた。シュートで回収された石炭粉量(回収量)は11.6kgであり、回収率を(回収量)÷(散布量)×100で求めると46.4%であった。以上の通り、追加で散布した分が回収できないので回収率は低下したものの、石炭粉の清掃を可能な範囲で適切に行うことができ、しかも、スタック状態となった場合にも、立往生することなく最後まで清掃を実行することができた。これにより、石炭粉の清掃が適切に行われたこと、清掃装置が優れた自律走行性と清掃能力を有することが確認できた。
比較のために、一般のSLAM技術で清掃装置を自律走行させた場合の移動軌跡を
図18に示す。この場合には、21番目の経由点から22番目の経由点である座標(2,3)に向かう途中で石炭粉を押し切れなくなるので、走行の継続が不可能になり清掃装置は立往生した。