(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018239
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法およびそれに用いられる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230201BHJP
G01B 13/12 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
E02D3/12 102
G01B13/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122206
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】505097893
【氏名又は名称】基盤技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502128419
【氏名又は名称】地下防水工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506343704
【氏名又は名称】株式会社トーメック
(74)【代理人】
【識別番号】100130144
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健壱
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】小柳 敏昭
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和秀
(72)【発明者】
【氏名】植野 進一
(72)【発明者】
【氏名】青替 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】乾 敬三
【テーマコード(参考)】
2D040
2F066
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA01
2D040DC00
2D040FA17
2F066AA25
2F066CC40
2F066DD13
2F066FF09
2F066HH02
2F066HH12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来の改良体測定装置は、地盤中に改良体の出来形が造成された後に、改良体測定装置を用いて、改良体の出来形を測定するものであったので、改良体の出来形を測定するために多くの工数および時間を要するという問題があった。
【解決手段】本発明は、衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値を用いることにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射力の絶対的平均強さを考慮でき、また、衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値を用いることにより、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズルから噴射させた噴射水が標的6の所定の位置からの往復移動振れも考慮できるので、より正確に高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、
水が収納されている水槽内に配置された高圧噴射ノズル装置に高圧水とともに圧縮空気を供給させる高圧水圧縮空気供給工程と、
該高圧水圧縮空気供給工程により供給された高圧水が前記高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射されるとともに、圧縮空気が前記高圧水噴射ノズルを囲む該高圧噴射ノズル装置の空気噴射ノズルから噴射される高圧噴射ノズル噴射工程と、
該高圧噴射ノズル噴射工程により噴射された噴射水を標的に衝突させる噴射水標的衝突工程と、
該噴射水標的衝突工程により前記標的に衝突させた噴射水の衝突荷重が所定のサンプリングタイム毎に所定の時間測定される噴射水衝突荷重測定工程と、
該噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の平均値が算出される衝突荷重平均値算出工程と、
該噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の標準偏差値が算出される衝突荷重標準偏差算出工程と、
を有し、
該衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値から前記衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値による減衰分を差分することにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できることを特徴とする高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法。
【請求項2】
高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、
水が収納されている水槽内に配置された高圧噴射ノズル装置に高圧水とともに圧縮空気を供給させる高圧水圧縮空気供給工程と、
該高圧水圧縮空気供給工程により供給された高圧水が前記高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射されるとともに、圧縮空気が前記高圧水噴射ノズルを囲む前記高圧噴射ノズル装置の空気噴射ノズルから噴射される高圧噴射ノズル噴射工程と、
該高圧噴射ノズル噴射工程により噴射された噴射水を標的に衝突させる噴射水標的衝突工程と、
該噴射水標的衝突工程により前記標的に衝突させた噴射水の衝突荷重が所定のサンプリングタイム毎に所定の時間測定される噴射水衝突荷重測定工程と、
該噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の最大値が抽出される衝突荷重最大値抽出工程と、
該噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の標準偏差値が算出される衝突荷重標準偏差算出工程と、
を有し、
該衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値から前記衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値よる減衰分を差分することにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できることを特徴とする高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法。
【請求項3】
前記高圧水圧縮空気供給工程から前記衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行された後に、前記高圧噴射ノズル装置と前記標的の間の距離を所定の距離変化させて、前記高圧噴射ノズル装置と前記標的の間の距離を再設定するノズル標的距離再設定工程を、更に有し、
該ノズル標的距離再設定工程が実行された後に前記高圧水圧縮空気供給工程から前記衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行され、該ノズル標的距離再設定工程が複数回実行された後の前記衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値の推移と衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値の推移を用いることにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣がより正確に予測できることを特徴とする請求項1記載の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法。
【請求項4】
前記高圧水圧縮空気供給工程から前記衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行された後に、前記高圧噴射ノズル装置と前記標的の間の距離を所定の距離変化させて、前記高圧噴射ノズル装置と前記標的の間の距離を再設定するノズル標的距離再設定工程を、更に有し、
該ノズル標的距離再設定工程が実行された後に前記高圧水圧縮空気供給工程から前記衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行され、該ノズル標的距離再設定工程が複数回実行された後の前記衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値の推移と衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値の推移を用いることにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣がより正確に予測できることを特徴とする請求項2記載の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法。
【請求項5】
前記高圧水圧縮空気供給工程から前記衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が複数回実行された後に、横軸が「高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離」、縦軸が「前記衝突荷重標準偏差算出工程により求められた標準偏差値の対数値」とする標準偏差片対数値グラフが作成される標準偏差片対数グラフ化工程を、さらに有し、
該標準偏差片対数グラフ化工程により作成された標準偏差片対数値グラフの「高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離」が小さい方から始まる直線状の傾きが所定値以上増加した位置を用いることにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測できることを特徴とする請求項3または請求項4記載の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法。
【請求項6】
前記高圧水圧縮空気供給工程前に実行され、前記高圧噴射ノズル装置を上下方向移動および一面方向回転させるとともに、前記標的を上下方向移動させることにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射された噴射水が標的の中央部に衝突するよう初期設定を行なう標的中央部衝突初期設定工程を更に有することを特徴とする請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法
【請求項7】
前記高圧噴射ノズル装置と前記標的の間の直線方向略全域もしくは該高圧噴射ノズル装置から該標的の直線方向一部の上方を覆う仕切り板が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法。
【請求項8】
前記標的は、前記高圧噴射ノズルから噴射させた噴射水が当たる面の直径が略50mmの略円形形状で形成されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法。
【請求項9】
前記高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルに高圧水供給ホースを介し高圧水を供給させる高圧水供給ポンプと、
前記高圧噴射ノズル装置の空気噴射ノズルに圧縮空気供給ホースを介し圧縮空気を供給させる高圧コンプレッサーと、
前記標的に衝突された噴射水の衝突荷重が検出されるロードセルと、
該ロードセルにより検出された噴射水の衝突荷重が所定のサンプリングタイム毎に所定の時間測定される衝突荷重測定手段と、
該衝突荷重測定手段により所定の時間測定されたサンプリングタイム毎の衝突荷重の標準偏差値が算出される衝突荷重標準偏差算出手段と、
該衝突荷重測定手段により所定の時間測定されたサンプリングタイム毎の衝突荷重の平均値が算出される衝突荷重平均値算出手段と、
該衝突荷重測定手段により所定の時間測定されたサンプリングタイム毎の衝突荷重の最大値が抽出される衝突荷重最大値抽出手段と、
前記高圧噴射ノズル装置を上下方向に移動させることができるとともに、一面方向に回転させることができる高圧噴射ノズル装置上下移動回転手段と、
前記標的を上下方向に移動させることができる標的上下移動手段と、
前記高圧噴射ノズル装置と前記標的の間の距離を所定の距離変化させて設定させることができるノズル標的距離設定手段と、を有する請求項6記載の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法に用いられる高圧噴射ノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射ノズルから噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法およびそれに用いられる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置である。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤中に硬化材を噴射させて攪拌混合することによって造成される改良体の出来形を測定する改良体測定装置が知られている。
【0003】
この種の改良体測定装置は、未硬化改良体の中に略鉛直に配置することが可能なケーシング102と、ケーシング102内に収納された屈曲可能な長尺棒状の計測体103と、計測体103をケーシング102の下部に位置する送出口からケーシング102の外に送り出すと共に、送り出された計測体103の先端を、未硬化改良体と未改良地盤との境界面まで移動させる送り出し機構104と、送り出し機構104による計測体103の送り出し量を地上で経時的に検出する地上検出手段105と、を備え、送り出し機構104が、ケーシング102内に嵌装されていると共に該ケーシング102の軸方向に沿って摺動可能なピストン(図示略)と、ピストン(図示略)に対して上方から加圧してピストン(図示略)を押し下げる押下手段143と、地上に配置されたワイヤードラム144と、ワイヤードラム144から延出されてピストン(図示略)に連結されたワイヤー145と、を備え、計測体103が、ピストン(図示略)に連結されていると共にピストン(図示略)から下方に延出されており、押下手段143によってピストン(図示略)が押し下げられることで計測体103が送り出され、地上検出手段105が、ワイヤードラム144におけるワイヤー145の繰り出し量又は繰り出し速度を検出するワイヤー繰り出し検出センサー150を備え、ワイヤー繰り出し検出センサー150で検出された検出値から計測体103の送り出し量が検出されるものであった(
図17参照)。ここで、
図17は従来の改良体の出来形を測定する改良体測定装置を示す図である。
【0004】
そして、改良体の出来形を測定する際には、まず、改良直後の未硬化改良体の中にケーシング102を配置し、次に、送り出し機構104を駆動させ、この送り出し機構104によって長尺棒状の計測体103を送出口からケーシング102の外に送り出し、計測体103の先端を未硬化改良体と未改良地盤との境界面まで移動させる。そして、計測体103の先端が境界面(未改良地盤の壁面)に当接すると、地上検出手段105による経時的な検出値に特徴的な変化が表われ、検出値を注視して特徴的な変化を読み取ることで、計測体の先端が境界面に到達したことを検知すると共に、地上検出手段105による検出値から計測体103の送り出し量を検出する。これにより、改良体の出来形を測定することができるというものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の改良体測定装置は、地盤中に改良体の出来形が造成された後に、改良体測定装置を用いて、改良体の出来形を測定するものであったので、改良体の出来形を正確に測定することができるという利点を有するものであるが、改良体の出来形を測定するために多くの工数および時間を要するとともに、改良体の出来形を測定した結果、不十分な出来形であることが判明した場合には、他の工法(「薬液注入」など)で補修することが必要なり、施工コストが増大するとともに工期も長引くという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、改良体の出来形が造成する前に、高圧噴射ノズルから噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測し、改良体の出来形の大きさを事前に判断できる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法およびそれに用いられる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、水が収納されている水槽内に配置された高圧噴射ノズル装置に高圧水とともに圧縮空気を供給させる高圧水圧縮空気供給工程と、高圧水圧縮空気供給工程により供給された高圧水が高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射されるとともに、圧縮空気が高圧水噴射ノズルを囲む高圧噴射ノズル装置の空気噴射ノズルから噴射される高圧噴射ノズル噴射工程と、高圧噴射ノズル噴射工程により噴射された噴射水を標的に衝突させる噴射水標的衝突工程と、噴射水標的衝突工程により標的に衝突させた噴射水の衝突荷重が所定のサンプリングタイム毎に所定の時間測定される噴射水衝突荷重測定工程と、噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の平均値が算出される衝突荷重平均値算出工程と、噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の標準偏差値が算出される衝突荷重標準偏差算出工程と、を有し、衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値から衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値による減衰分を差分することにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できることを特徴とするものである。
【0009】
高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射させた噴射水が標的の所定の位置からの往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)が大きくなると、噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の標準偏差値が大きくなり、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離が短くなる方向に向かうことが本願の発明者により見出された。本発明によれば、衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値である「高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射力の絶対的平均強さ」から衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値である「高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射させた噴射水が標的の所定の位置からの往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)の大きさによる減衰分」を差分することにより、より正確に高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる。これにより、改良体の出来形が造成する前に、それぞれの高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測することができる。
【0010】
本発明のうち第2の態様に係るものは、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、水が収納されている水槽内に配置された高圧噴射ノズル装置に高圧水とともに圧縮空気を供給させる高圧水圧縮空気供給工程と、高圧水圧縮空気供給工程により供給された高圧水が高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射されるとともに、圧縮空気が高圧水噴射ノズルを囲む高圧噴射ノズル装置の空気噴射ノズルから噴射される高圧噴射ノズル噴射工程と、高圧噴射ノズル噴射工程により噴射された噴射水を標的に衝突させる噴射水標的衝突工程と、噴射水標的衝突工程により標的に衝突させた噴射水の衝突荷重が所定のサンプリングタイム毎に所定の時間測定される噴射水衝突荷重測定工程と、噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の最大値が抽出される衝突荷重最大値抽出工程と、噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の標準偏差値が算出される衝突荷重標準偏差算出工程と、を有し、衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値から衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値よる減衰分を差分することにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できることを特徴とするものである。
【0011】
高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射させた噴射水が標的の所定の位置からの往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)が大きくなると、噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の標準偏差値が大きくなり、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離が短くなる方向に向かうことが本願の発明者により見出された。本発明によれば、衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値である「高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射力の絶対的最大強さ」から衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値である「高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルから噴射させた噴射水が標的の所定の位置からの往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)の大きさによる減衰分」を差分することにより、より正確に高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる。これにより、改良体の出来形が造成する前に、それぞれの高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測することができる。
【0012】
本発明のうち第3の態様に係るものは、第1の態様に係る高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、高圧水圧縮空気供給工程から衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行された後に、高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離を所定の距離変化させて、高圧噴射ノズル装置と前記標的の間の距離を再設定するノズル標的距離再設定工程を、更に有し、ノズル標的距離再設定工程が実行された後に高圧水圧縮空気供給工程から衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行され、ノズル標的距離再設定工程が複数回実行された後の衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値の推移と衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値の推移を用いることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣がより正確に予測できることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、ノズル標的距離再設定工程が実行された後に高圧水圧縮空気供給工程から衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行され、ノズル標的距離再設定工程が複数回実行された後の衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値の推移と衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値の推移を用いることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射された噴射水が高圧噴射ノズル装置からある距離になると減衰が激しくなるなどの高圧噴射ノズル装置からの距離毎の噴射水の噴射力を判断することができる。これにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣がより正確に予測でき、造成する固結体の大きさに対応させて用いることができる高圧噴射ノズル装置を判別することができる。
【0014】
本発明のうち第4の態様に係るものは、第2の態様に係る高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、高圧水圧縮空気供給工程から衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行された後に、高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離を所定の距離変化させて、高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離を再設定するノズル標的距離再設定工程を、更に有し、ノズル標的距離再設定工程が実行された後に高圧水圧縮空気供給工程から衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行され、ノズル標的距離再設定工程が複数回実行された後の衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値の推移と衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値の推移を用いることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射
距離の優劣がより正確に予測できることを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、ノズル標的距離再設定工程が実行された後に高圧水圧縮空気供給工程から衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が実行され、ノズル標的距離再設定工程が複数回実行された後の衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値の推移と衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値の推移を用いることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射された噴射水が高圧噴射ノズル装置からある距離になると減衰が激しくなるなどの高圧噴射ノズル装置からの距離毎の噴射水の噴射力を判断することができる。これにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣がより正確に予測でき、造成する固結体の大きさに対応させて用いることができる高圧噴射ノズル装置を判別することができる。
【0016】
本発明のうち第5の態様に係るものは、第3の態様または第4の態様に係る高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、高圧水圧縮空気供給工程から衝突荷重標準偏差算出工程の一連の工程が複数回実行された後に、横軸が「高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離」、縦軸が「前記衝突荷重標準偏差算出工程により求められた標準偏差値の対数値」とする標準偏差片対数値グラフが作成される標準偏差片対数グラフ化工程を、さらに有し、標準偏差片対数グラフ化工程により作成された標準偏差片対数値グラフの「高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離」が小さい方から始まる直線状の傾きが所定値以上増加した位置を用いることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測できることを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、標準偏差片対数グラフ化工程により作成された標準偏差片対数値グラフの「高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離」が小さい方から始まる直線状の傾きが所定値以上増加した位置は、高圧水噴射ノズル20から噴射された噴射水の標的往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)」が大きく増大する位置であるので、その位置から高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測することができる。
【0018】
本発明のうち第6の態様に係るものは、第3の態様~第5の態様のいずれかの態様に係る高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、前記高圧水圧縮空気供給工程前に実行され、前記高圧噴射ノズル装置を上下方向移動および一面方向回転させるとともに、前記標的を上下方向移動させることにより、前記高圧噴射ノズル装置から噴射された噴射水が標的の中央部に衝突するよう初期設定を行なう標的中央部衝突初期設定工程を更に有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、高圧水圧縮空気供給工程前に実行され、高圧噴射ノズル装置を上下方向移動および一面方向回転させるとともに、標的を上下方向移動させることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射された噴射水が標的の中央部に衝突するよう初期設定が行なわれるので、高圧噴射ノズル装置から噴射された噴射水が標的に衝突する衝突力をより正確に測定できる。これにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣がより正確に予測できる。
【0020】
本発明のうち第7の態様に係るものは、第1の態様~第6の態様のいずれかの態様に係る高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、高圧噴射ノズル装置と標的の間の直線方向略全域もしくは高圧噴射ノズル装置から標的の直線方向一部の上方を覆う仕切り板が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
高圧噴射ノズル装置を用いて地盤改良を行なう際には、注入ロッドを地盤内に挿入させた後に、注入ロッド先端に設けられた「高圧噴射ノズル装置から硬化材液および圧縮空気を噴射」→「注入ロッドを所定のストロークの長さ引き上げ」→「高圧噴射ノズル装置から硬化材液および圧縮を噴射」の順で行なわれる。このように、「注入ロッドを所定のストロークの長さ引き上げ」→「高圧噴射ノズル装置から硬化材液および圧縮空気を噴射」が行われるので、高圧噴射ノズル装置から噴射された硬化材液の下部は硬化材液で満たされているが、硬化材液の上部は地盤が存在している。本発明によれば、高圧噴射ノズル装置と標的の間の直線方向略全域もしくは高圧噴射ノズル装置から標的の直線方向一部の上方を覆う仕切り板が「地盤内で噴射される硬化材液の上部の地盤」の代用として用いられているので、地盤改良の際に高圧噴射ノズル装置から硬化材液が噴射される環境と同等の環境条件とすることができる。これにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣がより正確に予測することができる。
【0022】
本発明のうち第8の態様に係るものは、第3の態様または第4の態様に係る高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法であって、標的は、高圧噴射ノズルから噴射させた噴射水が当たる面の直径が略50mmの略円形形状で形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
高圧噴射ノズルから噴射される硬化材液は、上下また左右等に揺動されながら噴流されているが、高圧噴射ノズル装置から噴射された硬化材液が上下左右に揺動されていても、その上下左右等の揺動の略中央部の噴流により高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が決められる。本発明によれば、標的は、高圧噴射ノズルから噴射させた噴射水が当たる面の直径が略50mmの略円形形状で形成されているので、高圧噴射ノズル装置から上下左右等に揺動されながら噴射された噴射水の上下左右等の略中央部の衝突荷重を測定することができる。これにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣をより正確に予測することができる。
【0024】
本発明のうち第9の態様に係るものは、第6の態様に係る高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法に用いられる高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置であって、高圧噴射ノズル装置の高圧水噴射ノズルに高圧水供給ホースを介し高圧水を供給させる高圧水供給ポンプと、高圧噴射ノズル装置の空気噴射ノズルに圧縮空気供給ホースを介し圧縮空気を供給させる高圧コンプレッサーと、標的に衝突された噴射水の衝突荷重が検出されるロードセルと、ロードセルにより検出された噴射水の衝突荷重が所定のサンプリングタイム毎に所定の時間測定される衝突荷重測定手段と、衝突荷重測定手段により所定の時間測定されたサンプリングタイム毎の衝突荷重の標準偏差値が算出される衝突荷重標準偏差算出手段と、衝突荷重測定手段により所定の時間測定されたサンプリングタイム毎の衝突荷重の平均値が算出される衝突荷重平均値算出手段と、衝突荷重測定手段により所定の時間測定されたサンプリングタイム毎の衝突荷重の最大値が抽出される衝突荷重最大値抽出手段と、高圧噴射ノズル装置を上下方向に移動させることができるとともに、一面方向に回転させることができる高圧噴射ノズル装置上下移動回転手段と、標的を上下方向に移動させることができる標的上下移動手段と、高圧噴射ノズル装置と標的の間の距離を所定の距離変化させて設定させることができるノズル標的距離設定手段と、を有するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法によれば、改良体の出来形が造成する前に、高圧噴射ノズルから噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測し、改良体の出来形の大きさを事前に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の側面断面図である。
【
図2】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の上面図である。
【
図3】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の高圧噴射ノズル装置の装着側を示す図である。
【
図4】(a)同高圧噴射ノズル装置が装着されたモニターの外観斜視図である。 (b)同高圧噴射ノズル装置が装着された部分を示す外観斜視図である。 (c)同高圧噴射ノズル装置が装着される前の分解斜視図である。
【
図5】(a)
図4(a)のA-A断面図である。 (b)同高圧噴射ノズル装置が装着される前の分解断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロッド架台に支持されているロッド(高圧噴射ノズル装置含む)を示す図である。
【
図7】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロッド取付クランプのクランプ開閉係止孔が開放された状態を示す図である。
【
図8】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の高圧噴射ノズル装置の昇降回転させる方法を示す図である。
【
図9】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の標的の装着側を示す図である。
【
図10】(a)同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の標的の装着側の構成図である。 (b)同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の標的の装着部分の分解斜視図である。
【
図11】(a)同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロードセルを昇降させる方法を示す上面図である。 (b)
図11(a)のC-C断面図である。 (c)同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロードセルを昇降させる方法を示す正面図である。
【
図12】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の高圧噴射ノズル装置とロードセルとの距離を変更する方法を示す図である。
【
図13】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置と接続されたパソコンのディスプレイ表示画面を示す図である。
【
図14】本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法のフローチャートを示す図である。
【
図15】同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法の標的中央部衝突初期設定工程のサブルーチンプログラムである。
【
図16】本発明の第2実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法のフローチャートを示す図である。
【
図17】従来の改良体の出来形を測定する改良体測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の第1実施形態について図面を参照にしながら説明する。ここで、
図1は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の側面断面図であり、
図2は同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の上面図である。
【0028】
図1に示すように、高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置1は、水槽2と、高圧噴射ノズル装置3と、高圧水供給ポンプ4と、高圧コンプレッサー5と、標的6と、ロードセル7などを有している(
図1、
図3および
図9参照)。なお、本実施形態では水槽2を高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置1の構成に含めたが、これに限らず、水槽2を高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置1の構成に含めなくてもよい。
【0029】
水槽2は、内部に水が貯蔵されるタンクである。水槽2には、外部の貯留水槽2aから吸水ホース8を介し水が供給される(
図1および
図2参照)。
【0030】
次に、高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置1の高圧噴射ノズル装置3の装着側について、具体的に説明する。ここで、
図3は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の高圧噴射ノズル装置の装着側を示す図であり、
図4(a)は同高圧噴射ノズル装置が装着されたモニターの外観斜視図であり、
図4(b)は同高圧噴射ノズル装置が装着された部分を示す外観斜視図であり、
図4(c)は同高圧噴射ノズル装置が装着される前の分解斜視図であり、
図5(a)は
図4(a)のA-A断面図であり、
図5(b)は同高圧噴射ノズル装置が装着される前の分解断面図である。
【0031】
図3に示すように、ロッド9の先端にモニター10が結合して取り付けられている。このモニター10の側面には高圧噴射ノズル装置3が装着されている(
図3~
図5参照)。そして、高圧噴射ノズル装置3には、外部の貯留水槽2aから高圧水供給ホース11→高圧水供給ポンプ4→高圧水供給ホース11→高圧水流量計13→高圧水供給ホース11→スイベル15→ロッド9→モニター10内を介して高圧水が供給され、また、高圧コンプレッサー5から圧縮空気供給ホース12→圧縮空気流量計14→圧縮空気供給ホース12→スイベル15→ロッド9→モニター10内を介して圧縮空気が供給される(
図1参照)。そして、高圧水供給ポンプ4から高圧水供給ホース11を介し供給される高圧水の流量は高圧水流量計13で計測され、また、高圧コンプレッサー5から圧縮空気供給ホース12を介し供給される圧縮空気の流量は圧縮空気流量計14で計測されている。
【0032】
ロッド9の後端部にはスイベル15が取り付けられている(
図1および
図3参照)。また、ロッド9は2重管から構成され、ロッド9内の内側の高圧水供給路16には高圧水(液体)が供給され、ロッド9内の外側の圧縮空気供給路17には圧縮空気が供給される(
図5参照)。
【0033】
モニター10は、上述したようにロッド9の先端に結合して取り付けられている。そして、モニター10内部には、中央にロッド9の高圧水供給路16と連通する高圧水流路18が軸方向に形成され、その高圧水流路18の外周側にはロッド9の圧縮空気供給路17と連通する圧縮空気流路19が軸方向に形成されている(
図5参照)。
【0034】
高圧噴射ノズル装置3は、水槽2内に配置され、高圧水を噴射させる高圧水噴射ノズル20を囲むように圧縮空気を噴射させる空気噴射ノズル21が形成されている(
図3~
図5参照)。具体的には、高圧噴射ノズル装置3の内側に高圧水噴射ノズル20が設けられ、外側に空気噴射ノズル21が形成されている。このように、高圧噴射ノズル装置3から高圧水と圧縮空気が高圧噴射されると、高圧噴射ノズル装置3の内側から高圧水が噴射され、その外側(外周部)から圧縮空気が噴射され、高圧水の噴流の周りに圧縮空気の気層被膜を作ることにより、圧縮空気の気層被膜がない場合に比べて噴射到達距離を増大させることができる。
【0035】
高圧噴射ノズル装置3は、モニター10の側面の高圧噴射ノズル装置挿入孔22に螺合されることにより固定される。また、高圧水噴射ノズル20は、ノズル本体部23の先端に形成されている(
図4および
図5参照)。
【0036】
高圧水供給ポンプ4は、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20に高圧水供給ホース11を介し高圧水を供給させるものである(
図1参照)。具体的には、外部の貯留水槽2aから高圧水供給ポンプ4に水が供給され、そして、その高圧水供給ポンプ4に供給された水が高圧水供給ホース11を介し高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20に供給される。
【0037】
高圧コンプレッサー5は、高圧噴射ノズル装置3の空気噴射ノズル21に圧縮空気供給ホース12を介し圧縮空気を供給させるものである(
図1参照)。具体的には、高圧コンプレッサー5により気中の空気が吸引され、そして、その吸引された空気が圧縮空気供給ホース12を介し高圧噴射ノズル装置3の空気噴射ノズル21に供給される。
【0038】
スイベル15は、外部の貯留水槽2aから高圧水供給ポンプ4を介し供給された高圧水が挿通される高圧水供給ホース11と連結され、また、気中(空気)から高圧コンプレッサー5を介し供給された圧縮空気が挿通される圧縮空気供給ホース12と連結されている。そして、スイベル15から高圧水および圧縮空気がロッド9内に設けられた高圧水供給路16および圧縮空気供給路17に供給される(
図1および
図5参照)。このように、外部の貯留水槽2aから高圧水供給ポンプ4を介し供給された高圧水、および気中から高圧コンプレッサー5を介し供給された圧縮空気は、各供給ホース11、12→スイベル15→各供給路16、17→各流路18、19を経て、高圧噴射ノズル装置3から噴射される。
【0039】
ロッド9(モニター10含む)は、水槽2に設置されたロッド架台24で支持されている(
図1および
図3参照)。具体的には、ロッド9は、ロッド架台24の上下の位置に設置されているロッド取付クランプ25により支持されている(
図1、
図3および
図6参照)。ここで、
図6は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロッド架台に支持されているロッド(高圧噴射ノズル装置含む)を示す図である。
【0040】
ロッド9をロッド取付クランプ25に装着させるときには、まずロッド取付クランプ25のクランプ開閉係止棒状部25aを外側方向に回転させることにより、ロッド取付クランプ25のクランプ開閉係止棒状部25a側とクランプ開閉係止孔25b側の間を離させ、そして、そのクランプ開閉係止棒状部25a側とクランプ開閉係止孔25b側の間が開放された状態で、ロッド9をクレーン26で釣り上げながらロッド取付クランプ25の内部側に挿入させる(
図7および
図8参照)。そして、ロッド取付クランプ25内のロッド9を回転上下移動させることにより、モニター10の側面に装着されている高圧噴射ノズル装置3が所望な位置になったところで、ロッド架台24の上下の位置に設けられたロッド取付クランプ25のクランプ開閉係止孔25bを閉鎖させ、クランプ開閉係止棒状部25aを内側方向に回転させ締め付ける(
図7参照)。これにより、ロッド9をロッド取付クランプ25に装着させることができる。ここで、
図7は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロッド取付クランプのクランプ開閉係止孔が開放された状態を示す図であり、
図8は同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の高圧噴射ノズル装置の昇降回転させる方法を示す図である。
【0041】
次に、ロッド9先端のモニター10の側面に装着された高圧噴射ノズル装置3の上下回転方向の位置を変更させるときには、ロッド9をクレーン26で釣り上げた後に、ロッド9が締め付けているロッド取付クランプ25のクランプ開閉係止棒状部25aを外側方向に回転させることにより、クランプ開閉係止棒状部25a側とクランプ開閉係止孔25b側の間を離させる(
図7および
図8参照)。そして、ロッド取付クランプ25のクランプ開閉係止棒状部25a側とクランプ開閉係止孔25b側の間を離させた状態で、ロッド取付クランプ25内のロッド9を回転上下移動させることにより、モニター10の側面に装着されている高圧噴射ノズル装置3が所望な位置になったところで、ロッド架台24の上下の位置に設けられたロッド取付クランプ25によりロッド9を締め付ける。これにより、ロッド9先端のモニター10の側面に装着された高圧噴射ノズル装置3が水槽2内の所望な位置に配置させることができる。なお、本実施形態では、ロッド取付クランプ25を用いて、ロッド9をロッド架台24に取り付けたが、これに限らず、バンドやロープなどのロッド締め具を用いて、ロッド9をロッド架台24に取り付けるようにしてもよい。
【0042】
次に、高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置1の標的6の装着側について、図面を参照にしながら説明する。ここで、
図9は本発明の第1実施形態における同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の標的の装着側を示す図であり、
図10(a)は同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の標的の装着側の構成図であり、
図10(b)は同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の標的の装着部分の分解斜視図である。
【0043】
ロードセル7は、標的6に衝突された噴射水の衝突荷重が検出される衝突荷重検出センサーである。具体的には、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射された噴射水が標的6に衝突し、その標的6に衝突した際の衝突荷重がロードセル7により検出される。ここで、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射された噴射水は、標的6に直交方向に衝突されるように、標的6がロードセル7に支持されている(
図9参照)。
【0044】
ロードセル7は、ロードセル架台27により支持され、水槽2の所望の位置に配置されている(
図1、
図9参照)。具体的には、ロードセル7は、ロードセル架台27の側面のロードセル取付板28aに取り付けられている(
図10参照)。そして、ロードセル取付板28aは、ロードセル昇降シャフト下端支持体30と一体構成されているロードセル昇降シャフト取付板28bに、昇降支持板28cを挟んで、ボルト28dにより取り付けられている(
図10参照)。このロードセル昇降シャフト下端支持体30は、ロードセル昇降シャフト29と螺合され、ロードセル昇降シャフト29が回転することにより、上下方向に移動される。具体的には、ロードセル昇降シャフト29は、ロードセル7が取り付けられているロードセル架台27の反対面に配され、このロードセル昇降シャフト29の上端には、ウオームギア31を介し、ロードセル昇降ハンドル32が設けられている。そして、ロードセル昇降ハンドル32が回転することにより、ウオームギア31が回転→ロードセル昇降シャフト29が回転→ロードセル昇降シャフト下端支持体30が昇降→ロードセル取付板28aを昇降させることができる(
図10および
図11参照)。ここで、
図11(a)は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロードセルを昇降させる方法を示す上面図であり、
図11(b)は
図11(a)のC-C断面図であり、
図11(c)は同高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置のロードセルを昇降させる方法を示す正面図である。
【0045】
標的6は、高圧噴射ノズル3から噴射させた噴射水が当たる面の直径が50mmの円形形状で形成されている(
図10参照)。この標的6の先端側はその円形形状を一面とする円柱形状で形成され、後方側はその先端側より径が小さい円柱形状からなる標的支持部6aが形成されている。そして、標的6の後方側の標的支持部6aがロードセル7の標的取付穴7aに挿入され螺合させることにより、標的6がロードセル7に取り付けられている(
図10参照)。なお、本実施形態では、標的6を直径50mmの円形形状で形成させたが、これに限らず、直径略50mmの円形形状で形成させてもよく、また、直径略180mmの円形形状で形成させてもよく、すなわち、直径50mm~直径180mmの円形形状で形成させてもよい。
【0046】
ロードセル架台27とロッド架台24の上部は、架台フレーム33に載置されている(
図1、
図2、
図7および
図10参照)。架台フレーム33の上部には、位置決め孔33aが50センチ毎に形成されている(
図2、
図6および
図12参照)。ロードセル架台27とロッド架台24は、架台フレーム33の位置決め孔33aにボルト36が挿入されそれぞれボルト留めされることにより、ロードセル架台27とロッド架台24が架台フレーム33の所定の位置に設置される(
図7および
図12参照)。また、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を変更したいときは、架台フレーム33の位置決め孔33aに挿入されているボルト36を抜き、そして、ロードセル架台27の上部を架台フレーム33に沿って移動させた後に、架台フレーム33の位置決め孔33aにロードセル架台27のロードセル架台上部挿入孔27aを介しボルト36が挿入螺合させることにより、ロードセル架台27を介し装着されている標的6と高圧噴射ノズル装置3の間の距離を変更させることができる(
図12参照)。ここで、
図12は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置の高圧噴射ノズル装置とロードセルとの距離を変更する方法を示す図である。なお、本実施形態では、標的6を移動させて、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を変更させたが、これに限らず、高圧噴射ノズル装置3を移動させて、また、高圧噴射ノズル装置3と標的6を共に移動させて、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を変更させてもよい。
【0047】
エアー上昇防止壁機器34(仕切り板)は、高圧噴射ノズル装置3の空気噴射ノズル21から噴射された圧縮空気が水槽2の上部に上昇することを防止するものである(
図1、
図2参照)。具体的には、エアー上昇防止壁機器34は、高圧噴射ノズル装置3の少し標的6側の位置から標的6の少し高圧噴射ノズル装置3側の位置までの長さ、すなわち、高圧噴射ノズル装置3から標的6までの長さより少し短い長さで、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の直線方向略全域で、長手方向中央部が高い形状の断面くの字形状で形成されている(
図1参照)。エアー上昇防止壁機器34は、上部がエアー遮断壁機器架台34aと一体的に構成され、エアー遮断壁機器架台34aの上部は、架台フレーム33に載置されている(
図1、
図2および
図9参照)。これにより、エアー遮断壁機器架台34aは、ロードセル架台27とロッド架台24と同様の方法で、架台フレーム33の位置決め孔33aにボルト36が挿入されそれぞれボルト留めされることにより、エアー遮断壁機器架台34aを架台フレーム33の所定の位置に設置することができる。なお、本実施形態では、断面くの字形状のエアー上昇防止壁機器34を長手方向に一体構成させたが、これに限らず、エアー上昇防止壁機器34が長手方向に所定の長さ毎分割させ、そのそれぞれ分割させたエアー上昇防止壁機器34をボルトで一体的に結合できるようにしてもよい。このように、長手方向に所定の長さ毎分割させたエアー上昇防止壁機器34をボルトで一体的に結合させることにより、エアー上昇防止壁機器34の長さ方向の長さを変更させることができる。すなわち、標的6と高圧噴射ノズル装置3の間の距離を変更させた場合に、その標的6と高圧噴射ノズル装置3の間の距離に従って、エアー上昇防止壁機器34の長手方向の距離を変更させることができる。また、本実施形態では、エアー上昇防止壁機器34(仕切り板)を高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の直線方向略全域の上方を覆うように形成させたが、これに限らず、エアー上昇防止壁機器34(仕切り板)を高圧噴射ノズル装置3から標的6の直線方向一部の上方を覆うように形成させてもよい。
【0048】
高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置1の周辺(「操作小屋」)には、高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置1からの衝突荷重値信号などを受信するパソコン35が設置されている。このパソコン35は、データーロガーを介し、ロードセル7、高圧水流量計13および圧縮空気流量計14に配線により接続されている(
図1参照)。以下、パソコン35(ディスプレイ)に表示されるディスプレイ表示画面35aについて説明する。ここで、
図13は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置と接続されたパソコンのディスプレイ表示画面を示す図である
【0049】
図13に示すように、ディスプレイ表示画面35aには、「記録/停止スイッチ37」と、「中断/再開スイッチ38」と、「設定スイッチ39」と、「終了スイッチ40」などが備えられている。
【0050】
「記録/停止スイッチ37」は、高圧水流量計13の高圧水計測流量データ(噴射量データ)、高圧水圧力計(図示略)の高圧水計測圧力データ(噴射圧データ)、圧縮空気流量計14の計測流量(エアー量)の計測データ、および圧縮空気圧計測計(図示略)の計測圧力(エアー圧力)の計測データなどの「記録」を開始または開始した後に「停止」させるスイッチであり、作業者によりこの「記録/停止スイッチ37」が押圧されることにより、上記内容の「記録」が開始されるとともに、「記録/停止スイッチ37」の「記録」の表示が「停止」に変更され、そして、上記内容の「記録」が実行されているときに、この「停止」に表示が変更されている「記録/停止スイッチ37」が押圧されることにより、上記内容の「記録」が停止する。また、「中断/再開スイッチ38」は、上記内容の「記録」を中断し、またその中断した上記内容の記録を再開させるためのスイッチであり、上記内容の「記録」が実行されているときに、作業者により「中断/再開スイッチ38」が押圧されることにより、上記内容の「記録」が中断し、そして、上記内容の記録が「中断」しているときに、この「中断/再開スイッチ38」が押圧されることにより、再び上記内容の「記録」が実行される。
【0051】
「設定スイッチ39」は、計測時間(
図13参照)などを設定するためのスイッチである。この「設定スイッチ39」が押圧されることにより、入力画面(図示略)が表示され、その入力画面を用いて計測時間(
図13参照)などを入力し、計測時間(
図13参照)などが登録され設定される。
【0052】
「終了スイッチ40」は、ディスプレイ表示画面35aの表示を終了させるスイッチであり、作業者によりこの「終了スイッチ40」が押圧されることにより、ディスプレイ表示画面35aが表示されなくなる。
【0053】
また、ディスプレイ表示画面35aには、噴射量表示部41と、噴射圧表示部42と、電流表示部43と、回転数表示部44と、エアー圧力表示部45と、エアー量表示部46と、積算噴射量表示部47と、記録時間表示部48を有している(
図13参照)。
【0054】
「噴射量表示部41」は、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水の噴射量が表示されるものである。この高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水の噴射量は、高圧水流量計13により高圧水計測流量が計測され、その高圧水計測流量データがパソコン35(ディスプレイ)に送られることにより表示される。
【0055】
「噴射圧表示部42」は、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水の噴射圧が表示されるものである。この高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水の噴射圧は、高圧水圧力計(図示略)により高圧水計測圧力が計測され、その高圧水計測圧力データがパソコン35(ディスプレイ)に送られることにより表示される。
【0056】
「電流表示部43」は高圧水供給ポンプ4への供給電流が表示されるものであり、「回転数表示部44」は高圧水供給ポンプ4のモータ回転数が表示されるものである。
【0057】
「エアー圧力表示部45」は、高圧噴射ノズル装置3の空気噴射ノズル21から噴射される圧縮空気の圧力が表示されるものである。この空気噴射ノズル21から噴射される圧縮空気の圧力は、圧縮空気圧力計(図示略)により圧縮空気計測圧力が計測され、その圧縮空気計測圧力データがパソコン35(ディスプレイ)に送られることにより表示される。
【0058】
「エアー量表示部46」は、高圧噴射ノズル装置3の空気噴射ノズル21から噴射される圧縮空気量が表示されるものである。この空気噴射ノズル21から噴射される圧縮空気のエアー量は、圧縮空気流量計14により圧縮空気計測流量が計測され、その圧縮空気計測流量データがパソコン35(ディスプレイ)に送られることにより表示される。
【0059】
「積算噴射量表示部47」は、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水の積算噴射量が表示されるものである。この高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水の積算噴射量は、作業者により「記録/停止スイッチ37」が押され、高圧水流量計13の高圧水計測流量データ(噴射量データ)の記録が実行されている間の高圧水流量計13により計測された高圧水計測流量の積算値が表示される。
【0060】
「記録時間表示部48」は、「記録/停止スイッチ37」が押されてから、データの記録が実行されたトータル記録時間が表示されるものである。なお、「記録時間表示部48」の左横には「記録中/待機中表示部49」を有し、「待機中」の表示はデータの記録が実行されることにより「記録中」に切り替わる。
【0061】
また、ディスプレイ表示画面35aには、計測時間表示部50と、現在荷重値表示部51と、平均荷重値表示部52と、距離表示部53と、標準偏差表示部54と、荷重値経過グラフ表示部55を有している(
図13参照)。
【0062】
「計測時間表示部50」は、上述した「設定スイッチ39」が押圧されることにより設定された計測時間(
図13参照)が表示されるものである。つまり、「設定スイッチ39」が押圧されることにより計測時間が「60秒」と設定されると、「計測時間表示部50」には「60.00」が表示される。
【0063】
「現在荷重値表示部51」は、噴射水が標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値が表示されるものである。この噴射水が標的6に衝突されたときの衝突荷重値は、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射された高圧水が標的6に衝突し、その標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値がロードセル7により検出され、その衝突荷重値データがパソコン35(ディスプレイ)に送られることにより表示される。
【0064】
「平均荷重値表示部52」は、計測スタート後所定の時間測定された標的6に衝突された噴射水の平均衝突荷重値が表示される。この計測スタート後所定の時間測定された標的6に衝突された噴射水の平均衝突荷重値は、パソコン35に送られてきた標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値データと計測がスタートしてからの時間により求められ表示される。
【0065】
「距離表示部53」は、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20と標的6との間の距離が表示される。この距離表示部53に表示されている距離表示を変更した場合は、カーソルで距離表示部53をクリックすることにより変更することができる。
【0066】
「標準偏差表示部54」は、噴射水が標的6に衝突された噴射水の衝突荷重の標準偏差値が表示される。この衝突荷重の標準偏差値については、後述する。
【0067】
「荷重値経過グラフ表示部55」は、計測スタート後の標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値のグラフが表示される。このグラフの下に「全体表示56」とあるが、これは計測スタート後のすべての衝突荷重値のグラフが表示されている場合に表示される。そして、「荷重値経過グラフ表示部55」に、60秒以上の衝突荷重値のグラフが表示されると、「全体表示56」の右横に「部分表示(図示略)」が表示され、「部分表示(図示略)」をクリックすることにより、60秒間の標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値のグラフが表示される。このように、「部分表示(図示略)」を用いることにより、グラフをより細かく見ることができる。また、「部分表示(図示略)」の60秒間の衝突荷重値のグラフは、「全体表示56」の右横の「移動ボタン57」をクリックすることにより、「荷重値経過グラフ表示部55」に表示させたい「60秒間の標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値のグラフ」の範囲に移動させることができる。なお、この衝突荷重値のグラフが部分表示される60秒間の時間は、「設定スイッチ39」が押圧されることにより、60秒以外の時間を入力し設定することができる。
【0068】
次に、本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法の予測手順について説明する。ここで、
図14は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法のフローチャートを示す図である。
【0069】
まず、S1において、標的中央部衝突初期設定工程が実施される(
図15参照)。標的中央部衝突初期設定工程では、モニター10の側面に設けられた高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水が標的6の中央部に衝突するように設定される。ここで、「標的6の中央部」とは、「標的6に衝突したときの衝突荷重値をある程度正確に測定できる位置」の意味であり、「標的6の中央部近傍」であってもよい。具体的には、高圧噴射ノズル装置3を上下方向移動および一面方向回転させるとともに、標的6を上下方向移動させることにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射された噴射水が標的6の中央部に衝突するよう初期設定が行なわれる。なお、この標的中央部衝突初期設定工程(S1)は、高圧水圧縮空気供給工程(S5)が実施される前に、実行される。ここで、
図15は本発明の第1実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法の標的中央部衝突初期設定工程のサブルーチンプログラムである。
【0070】
S101において、高圧水噴射ノズル標的距離設定工程が実施される。この高圧水噴射ノズル標的距離設定工程では、ロードセル架台27を架台フレーム33の上部に沿って移動させ、高圧水噴射ノズル20と標的6が所望の距離になったところで、架台フレーム33の位置決め孔33aとロードセル架台27の上部の位置決め孔27aにボルト36を通しナットで締め付けることにより、高圧水噴射ノズル20と標的6の距離が設定される。なお、高圧水噴射ノズル標的距離設定工程は、先端にモニター10(側面に高圧噴射ノズル装置3)が設けられたロッド9がロッド架台24により支持され、ロードセル7(側面に標的6)がロードセル架台27に支持されている状態で行なわれる。また、高圧水噴射ノズル標的距離設定工程で設定された高圧水噴射ノズル20と標的6の間の距離は、パソコン35(ディスプレイ)に表示されるディスプレイ表示画面35aの「距離表示部53」に入力(変更)される。そして、S102に進む。
【0071】
S102において、事前高圧水圧縮空気供給工程が実施される。この事前高圧水圧縮空気供給工程では、水槽2内に配置された高圧噴射ノズル装置3に高圧水とともに圧縮空気が供給される。具体的には、高圧水供給ポンプ4を駆動させることにより、外部の貯留水槽2a内の水が高圧水供給ホース11→ロッド9→モニター10内を介し、高圧噴射ノズル装置3に供給され、また、高圧コンプレッサー5を駆動させることにより、圧縮空気が圧縮空気供給ホース12→ロッド9→モニター10内を介し、高圧噴射ノズル装置3に供給される。そして、S103に進む。
【0072】
S103において、高圧噴射ノズル噴射工程が実施される。この高圧噴射ノズル噴射工程では、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から高圧水が40Mpaの水圧で噴射されるとともに、高圧水噴射ノズル20を囲むように形成された空気噴射ノズル21から圧縮空気が1.05MPaの空気圧で噴射される。なお、本実施形態では、高圧水噴射ノズル20から40Mpaの水圧で高圧水を噴射させたが、これに限らず、30Mpa~60Mpa(好ましくは、30Mpa~50Mpaや40Mpa~60Mpa(より好ましくは40Mpa~50Mpa))の水圧で高圧水を噴射させてもよい。そして、S104に進む。
【0073】
S104において、高圧噴射ノズル装置昇降回転設定工程が実施される。この高圧噴射ノズル装置昇降回転設定工程では、先端にモニター10(側面に高圧噴射ノズル装置3)が設けられたロッド9をクレーン26で釣り上げた後に、ロッド取付クランプ25が開放される。そして、ロッド9をクレーン26により昇降させるとともに、手動により回転させることにより、モニター10の側面に設けられた高圧噴射ノズル装置3が標的6の中央部に衝突する方向に向かうように設定される(
図7および
図8参照)。そして、ロッド取付クランプ25のクランプ開閉係止孔25bを閉鎖させ、クランプ開閉係止棒状部25aを内側方向に回転させ締め付けることにより、ロッド9が固定され、ロッド9先端のモニター10の側面に設けられた高圧噴射ノズル装置3が標的6の中央部に衝突する方向に向かうように設定される。ここで、「クランプ開閉係止棒状部25aを内側方向に回転させ締め付ける」とは、ロッド取付クランプ25の開放一端に設けられたクランプハンドル25aを内側方向に回転させ、そして、ロッド取付クランプ25の開口他端に係止勘合させることにより、ロッド取付クランプ25が閉まることをいう。そして、S105に進む。
【0074】
S105において、標的昇降設定工程が実施される。この標的昇降設定工程では、ロードセル昇降ハンドル32を回転させることにより、ロードセル7に取り付けられた標的6が昇降される(
図9参照)。これにより、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射された高圧水が標的6の中央部により正確に衝突できるように高さ方向の調整を行わせることができる。以上により、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射された高圧水が標的6の中央部近傍に衝突するようになり、標的中央部衝突初期設定工程が完了する。そして、S2に進む。
【0075】
S2において、水槽水供給工程が実施される。この水槽水供給工程では、外部の貯留水槽2aから吸水ホース8を介し水槽2に水が供給される(
図1および
図2参照)。これにより、水槽2内に所定量の水が貯留される。なお、本実施形態では、外部の貯留水槽2aに水が貯留されている場合について説明したが、外部の貯留水槽2aに水が貯留されていない場合は、水道からホース(図示略)を介し直接水が供給される。そして、S3に進む。
【0076】
S3において、高圧水供給工程が実施される。この高圧水供給工程では、水が収納されている水槽2内に配置された高圧噴射ノズル装置3に高圧水が供給される。具体的には、高圧水供給ポンプ4を駆動させることにより、外部の貯留水槽2a内の水が高圧水供給ホース11→ロッド9→モニター10内を介し、高圧噴射ノズル装置3に供給される。そして、S4に進む。
【0077】
S4において、標的位置昇降微調整工程が実施される。この標的位置昇降微調整工程では、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から高圧水が40MPaの水圧で噴射され、その高圧水噴射ノズル20から噴射された高圧水が標的6に衝突した衝突荷重をロードセル7により検出させながら、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射された高圧水が標的6の中央部により正確に衝突できるように高さ方向の微調整が行われる(
図11参照)。具体的には、ロードセル昇降ハンドル32を正転方向または逆転方向に回転させて、ロードセル7に取り付けられた標的6が昇降されながら、ロードセル7により検出された標的6に衝突した高圧水の衝突荷重が最大値になる高圧水噴射ノズル20の位置に調整される。これにより、高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射された高圧水の衝突荷重が正確に検出できるにすることができる。なお、本実施形態では、高圧水噴射ノズル20から40Mpaの水圧で高圧水を噴射させたが、上述した高圧噴射ノズル噴射工程と同様、30Mpa~60Mpa(好ましくは、30Mpa~50Mpaや40Mpa~60Mpa(より好ましくは40Mpa~50Mpa))の水圧で高圧水を噴射させてもよい。S5に進む。
【0078】
S5において、高圧水圧縮空気供給工程が実施される。この高圧水圧縮空気供給工程では、水が収納されている水槽2内に配置された高圧噴射ノズル装置3に高圧水とともに圧縮空気が供給される。具体的には、高圧水供給ポンプ4を駆動させることにより、外部の貯留水槽2a内の水が高圧水供給ホース11→ロッド9→モニター10内を介し、高圧噴射ノズル装置3に供給され、また、高圧コンプレッサー5を駆動させることにより、圧縮空気が圧縮空気供給ホース12、ロッド9→モニター10内を介し、高圧噴射ノズル装置3に供給される。そして、S6に進む。
【0079】
S6において、高圧噴射ノズル噴射工程が実施される。この高圧噴射ノズル噴射工程では、高圧水圧縮空気供給工程(S4)により供給された高圧水が高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射されるとともに、高圧水圧縮空気供給工程(S4)により供給された圧縮空気が高圧水噴射ノズル20を囲む該高圧噴射ノズル装置3の空気噴射ノズル21から噴射される。具体的には、まず高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から高圧水が噴射され、そして、高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水の水圧が所定の水圧(たとえば、40MPa)になったと高圧水流量計13により計測された後に、高圧噴射ノズル装置3の空気噴射ノズル21から圧縮空気が噴射される。そして、S7に進む。
【0080】
S7において、噴射水標的衝突工程が実施される。この噴射水標的衝突工程では、高圧噴射ノズル噴射工程により噴射された噴射水が標的6に衝突される。ここで、噴射水標的衝突工程は、高圧噴射ノズル噴射工程により行われているとしてもよい。そして、噴射水標的衝突工程が実行されるタイミングで、パソコン35(ディスプレイ)に表示されるディスプレイ表示画面35aの「記録/停止スイッチ37」が押圧される。これにより、高圧水流量計13の高圧水計測流量データ(噴射量データ)、高圧水圧力計(図示略)の高圧水計測圧力データ(噴射圧データ)、圧縮空気流量計14の計測流量(エアー量)の計測データ、および圧縮空気圧計測計(図示略)の計測圧力(エアー圧力)の計測データなどの記録が開始される。そして、S8に進む。
【0081】
S8において、高圧水流量計13で計測された高圧水噴射ノズル20から噴射される高圧水が設定高圧水流量になったか、また、圧縮空気流量計14で計測される空気噴射ノズル21から噴射される圧縮空気が設定圧縮空気流量になったかが判断され、「NO」と判断された場合は「YES」と判断されるまでS8の処理が繰り返し実施され、「YES」と判断された場合は「S9」に進む。
【0082】
S9において、噴射水衝突荷重測定工程が実施される。この噴射水衝突荷重測定工程では、高圧水圧縮空気供給工程(S5)、高圧噴射ノズル噴射工程(S6)、および噴射水標的衝突工程(S7)が継続して実施された状態で、噴射水標的衝突工程により標的6に衝突させた噴射水の衝突荷重が4msのサンプリングタイム毎に60秒間(「計測時間(
図13参照)」)測定される。具体的には、噴射水標的衝突工程により標的6に衝突された噴射水の衝突荷重がロードセル7により検出され、そして、ロードセル7により検出された衝突荷重がパソコン35は4msのサンプリングタイム毎に60秒間(「計測時間」)受信される。そして、パソコン35(ディスプレイ)に表示されるディスプレイ表示画面35aの「計測時間表示部50」に表示された60秒(「計測時間」)の間、ロードセル7により検出された衝突荷重が計測され、ディスプレイ表示画面35aの「現在荷重値表示部51」に標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値が表示され、「荷重値経過グラフ表示部55」に計測スタート後の標的6に衝突された噴射水の衝突荷重値のグラフが表示される。なお、本実施形態では、標的6に衝突させた噴射水の衝突荷重が4msのサンプリングタイム毎に60秒間測定されたが、これに限らず、4ms以外の所定のサンプリングタイム毎に送信受信され測定されるようにしてもよく、また、本実施形態では、計測時間として60秒を設定しているので60秒間測定されたが、計測時間として60秒以下や60秒以上の時間が設定されれば、60秒以下や60秒以上の所定の時間測定されることになる。そして、S10に進む。
【0083】
S10において、衝突荷重平均値算出工程が実施される。この衝突荷重平均値算出工程では、噴射水衝突荷重測定工程により所定の時間測定された衝突荷重の平均値が算出される。具体的には、本実施形態では、サンプリングタイムが4msで60秒間測定されるので、衝突荷重の加算総数(60秒間)/15000回で衝突荷重平均値が算出される。そして、衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値は、パソコン35(ディスプレイ)に表示されるディスプレイ表示画面35aの「平均荷重値表示部52」に表示される。そして、S11に進む。
【0084】
S11において、衝突荷重標準偏差算出工程が実施される。この衝突荷重標準偏差算出工程では、噴射水衝突荷重測定工程により60秒間測定された衝突荷重(n=15000)の標準偏差値が「式1」を用いて算出される(「標準偏差計算式」参照)。そして、衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値は、パソコン35(ディスプレイ)に表示されるディスプレイ表示画面35aの「標準偏差表示部54」に表示される。そして、S12に進む。
(標準偏差計算式)
【0085】
S12において、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を変化させるか判定され、「YES」と判断された場合は「NO」と判断されるまでS13→S1→S2→・・→S9→S12の処理が実施され、「NO」と判断された場合はS14に進む。
【0086】
S13において、ノズル標的距離再設定工程が実施される。このノズル標的距離再設定工程では、上記のように高圧水圧縮空気供給工程(S5)から衝突荷重標準偏差算出工程(S11)の一連の工程が実行された後に、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を50cmの距離近づけ変化させて、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離が再設定される。具体的には、ロードセル7が支持されているロードセル架台27が架台フレーム33上を50cm移動され、架台フレーム33の位置決め孔33aとロードセル架台27の上部の位置決め孔27aにボルト36により螺合させることにより、ロッド架台24とロードセル架台27の距離が変更されるので、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を変更させることができる(
図12参照)。また、ノズル標的距離再設定工程で再設定された高圧水噴射ノズル20と標的6の間の距離は、パソコン35(ディスプレイ)に表示されるディスプレイ表示画面35aの「距離表示部53」に入力(変更)される。なお、本実施形態では、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を50cmの距離近づけて変化させたが、これに限らず、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離を所定の距離(10cm~60cm(好ましくは、10cm~50cm(より好ましくは、10cm~30cm)))近づけて変化させてもよい。このように、高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離をより小さく変化されることにより、より精密なデータを得ることができる。そして、S1に進み、S1→S2→・・→S9→S12の処理が実施される。ここで、ノズル標的距離再設定工程(S13)が実行される前、またはノズル標的距離再設定工程(S13)が実行された後に、水槽2内に水が外部の貯留水槽2aに排水ホース8bを介し排水される(
図1および
図2参照)。
【0087】
S14において、衝突荷重平均値グラフ化工程が実施される。この衝突荷重平均値グラフ化工程では、横軸を「ノズル-標的距離(高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離)」、縦軸が衝突荷重平均値算出工程(S9)により求められた「平均荷重値(衝突荷重平均値)」のグラフが作成される。具体的には、パソコンのメモリに記憶された衝突荷重平均値グラフ化プログラムによりグラフ化される。これにより、以下に示す「衝突荷重平均値グラフ」が作成される。この「衝突荷重平均値グラフ」には、「エアカバーA」、「エアカバーB」、および「エアカバーC」の3種類のエアカバーについて作成させている。そして、S15に進む。
(衝突荷重平均値グラフ)
【0088】
S15において、衝突荷重標準偏差グラフ化工程が実施される。この衝突荷重標準偏差グラフ化工程では、横軸を「ノズル-標的距離(高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離)」し、縦軸が衝突荷重標準偏差算出工程(S10)により求められた「標準偏差(衝突荷重標準偏差値)」のグラフが作成される。具体的には、パソコンのメモリに記憶された衝突荷重標準偏差値グラフ化プログラムによりグラフ化される。これにより、以下に示す「衝突荷重標準偏差値グラフ」が作成される。この「衝突荷重標準偏差値グラフ」についても、「エアカバーA」、「エアカバーB」、および「エアカバーC」の3種類のエアカバーについて作成させている。そして、S16に進む。
(衝突荷重標準偏差値グラフ)
【0089】
以上のように、衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値が同等の値であっても、衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値が大きくなれば、高圧噴射ノズル装置3から噴射された噴射水の減衰率が大きくなることにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射された噴射水を遠距離まで到達させることができなくなる。このように、衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値である「高圧噴射ノズル装置3から噴射された噴射水の噴射力絶対的平均強さ」から、衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値である「高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射させた噴射水の標的往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)」の減衰分を差分することにより、すなわち、下記の「噴射距離優劣判断度式」を用いることにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる。つまり、たとえば「衝突荷重標準偏差値グラフ」において、2000mm(ノズル-標的距離)のところでは、「エアカバーB」→「エアカバーA」→「エアカバーC」の順で、標準偏差が大きくなっているので、その標準偏差の大きさに相当する減衰距離を差分することにより、噴射距離の優劣を判断することができる。ここで、「噴射距離優劣判断度式」の「a」の係数は、発明者の多くの実験例等から「10」が適切であると見いだされ、「10」を用いている。これにより、複数のそれぞれの高圧噴射ノズル装置について、高圧噴射ノズル装置3から標的6までのそれぞれの噴射距離において、高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を判断することができ、改良体の出来形が造成する前に、それぞれの高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測することができる。なお、本実施形態では「a=10」の係数を用いたが、これに限らず、「a=8~12(好ましくは、9~11)」等の他の係数値を用いてもよい。
(噴射距離優劣判断度式)
【0090】
S16において、標準偏差片対数グラフ化工程が実施される。この標準偏差片対数グラフ化工程では、横軸を「ノズル-標的距離(高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離)」し、縦軸が衝突荷重標準偏差算出工程(S10)により求められた「標準偏差値の対数値(「log
10標準偏差」)」のグラフが作成される。具体的には、パソコンのメモリに記憶された標準偏差片対数値グラフ化プログラムによりグラフ化される。これにより、以下に示す「標準偏差片対数値グラフ」が作成される。この「標準偏差片対数値グラフ」についても、「エアカバーA」、「エアカバーB」、および「エアカバーC」の3種類のエアカバーについて作成させている。そして、以上で攪拌回数計測処置が終了する。
(標準偏差片対数値グラフ)
【0091】
「標準偏差片対数値グラフ」では縦軸を「標準偏差(衝突荷重標準偏差値)の対数値(「log10標準偏差」)」としているので、縦軸の数値が「1増加」すれば標準偏差値が10倍になる。そして、この「標準偏差片対数値グラフ」では、「標準偏差片対数値グラフ」の傾きが変化しない直線状のところまでは、高圧水噴射ノズル20から噴射された高圧水の往復移動振れの増加率が一定となり、そして、この「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが0.0004 以上増加している点からは、高圧水噴射ノズル20から噴射された噴射水の標的往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)」が大きく増大するようになるので、その「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが0.0004以上増加した位置を「噴射距離優劣判断位置」として、その「噴射距離優劣判断位置」から高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測(判断)することができる。このように、衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差の対数値の「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが0.0004以上増加するところまでは、高圧噴射ノズル装置3から噴射された噴射水の勢いが安定していると考えられるので、その衝突荷重の標準偏差対数値の「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが0.0004以上増加する点(「噴射距離優劣判断位置」)を検出することにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射到達距離の優劣を予想することができる。すなわち、上記した「標準偏差片対数値グラフ」において、「エアカバーC(1000mm)」→「エアカバーA(1500mm)」→「エアカバーB(2000mm)」の順で、「噴射距離優劣判断位置」が大きくなっているので、「エアカバーC」→「エアカバーA」→「エアカバーB」の順で、高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液が遠距離まで到着させることができると予測することができる。このように、「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが0.0004以上増加している点を検出することにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液が到達できる距離の優劣がより正確に予測でき、造成する固結体の大きさに対応させて用いることができる高圧噴射ノズル装置3を判別することができる。ここで、本実施形態では、「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが0.0004以上増加したところを「噴射距離優劣判断位置」と判断しているが、これに限らず、「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが所定値(たとえば、0.0003以上)増加したところを「噴射距離優劣判断位置」としてもよい。
【0092】
(第2実施形態)
次に、本発明の高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法の第2実施形態について図面を参照にしながら説明する。ここで、
図16は本発明の第2実施形態における高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測方法のフローチャートを示す図である。
【0093】
本発明の第2実施形態と第1実施形態の異なるところは、第1実施形態では、「噴射水衝突荷重測定工程により60秒の時間測定された衝突荷重の平均値が算出される衝突荷重平均値算出工程」を設け、その「衝突荷重平均値算出工程により算出された衝突荷重の平均値」と「衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値」を用いることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測できるようにしたのに対し、第2実施形態では、「噴射水衝突荷重測定工程により60秒の時間測定された衝突荷重の最大値が抽出される衝突荷重最大値抽出工程」を設け、その「衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値」と「衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値」を用いることにより、高圧噴射ノズル装置から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測できるようにしたところが異なる。なお、第2実施形態においては、第1実施形態と異なるところを中心に説明する。また、第2実施形態では、第1実施形態と同一構成については、同一符号を用い、同一作用効果を奏するものとし説明は省略する。第2実施形態については、標的中央部衝突初期設定工程(S1)~噴射水衝突荷重測定工程(S9)は第1実施形態と同様であるので、S10(S100)から説明する。
【0094】
S100において、衝突荷重最大値抽出工程が実施される。この衝突荷重最大値抽出工程では、噴射水衝突荷重測定工程により60秒の時間測定された衝突荷重の最大値が抽出される。具体的には、本実施形態では、サンプリングタイムが4msで60秒間測定されるので、4ms毎15000回で測定された衝突荷重うちの衝突荷重の最大値が抽出される。そして、S11に進む。ここで、衝突荷重標準偏差算出工程(S11)~ノズル標的距離再設定工程(S13)については第1実施形態と同一であるので説明を省略し、次にS114の説明を行なう。
【0095】
S114において、衝突荷重最大値グラフ化工程が実施される。この衝突荷重最大値グラフ化工程では、横軸を「高圧噴射ノズル装置3と標的6の間の距離」とし、縦軸が衝突荷重最大値抽出工程(S100)により抽出された「衝突荷重最大値」のグラフが作成される。具体的には、パソコンのメモリに記憶された衝突荷重最大値グラフ化プログラムによりグラフ化される。そして、S15に進む。ここで、S15以降については第1実施形態と同一であるので説明を省略する。
【0096】
以上説明したように、衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値が同等の値であっても、衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値が大きくなれば、高圧噴射ノズル装置3から噴射される噴射水の減衰率が大きくなることにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射された噴射水(硬化材液)を遠距離まで到達させることができなくなる。このように、衝突荷重最大値抽出工程により抽出された衝突荷重の最大値である「高圧噴射ノズル装置3から噴射された噴射水の噴射力絶対的最大強さ」から、衝突荷重標準偏差算出工程により算出された衝突荷重の標準偏差値である「高圧噴射ノズル装置3の高圧水噴射ノズル20から噴射させた噴射水の標的往復移動振れ(「上下方向の往復移動振れ」や「左右方向の往復移動振れ」)」分を差分することにより、高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣が予測できる。その他については、第一実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0097】
また、「標準偏差片対数値グラフ」を用いることにより、その「標準偏差片対数値グラフ」の直線状の傾きが所定値以上増加している位置から高圧噴射ノズル装置3から噴射される硬化材液の噴射距離の優劣を予測することができる。本内容については、第1実施形態と同様であるので、具体的な説明は省略する。
【0098】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。さらに本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 高圧噴射ノズル噴射距離優劣予測装置
2 水槽
2a 貯留水槽
3 高圧噴射ノズル装置
4 高圧水供給ポンプ
5 高圧コンプレッサー
6 標的
6a 標的支持部
7 ロードセル
7a 標的取付穴
8 吸水ホース
9 ロッド
10 モニター
11 高圧水供給ホース
12 高圧水供給ホース
13 高圧水流量計
14 圧縮空気流量計
15 スイベル
16 高圧水供給路
17 圧縮空気供給路
18 高圧水流路
19 圧縮空気流路
20 高圧水噴射ノズル
21 空気噴射ノズル
22 高圧噴射ノズル装置挿入孔
23 ノズル本体部
24 ロッド架台
25 ロッド取付クランプ
25a クランプ開閉係止棒状部
25b クランプ開閉係止孔
26 クレーン
27 ロードセル架台
27a ロードセル架台上部挿入孔
28a ロードセル取付板
28b ロードセル昇降シャフト取付板
28c 昇降支持板
28d ボルト
29 ロードセル昇降シャフト
30 ロードセル昇降シャフト下端支持体
31 ウオームギア
32 ロードセル昇降ハンドル
33 架台フレーム
33a 位置決め孔
34 エアー上昇防止壁機器
34a エアー遮断壁機器架台
35 パソコン
35a ディスプレイ表示画面
36 ボルト
37 記録/停止スイッチ
38 中断/再開スイッチ
39 設定スイッチ
40 終了スイッチ
41 噴射量表示部
42 噴射圧表示部
43 電流表示部
44 回転数表示部
45 エアー圧力表示部
46 エアー量表示部
47 積算噴射量表示部
48 記録時間表示部
49 記録中/待機中表示部
50 計測時間表示部
51 現在荷重値表示部
52 平均荷重値表示部
53 距離表示部
54 標準偏差表示部
55 荷重値経過グラフ表示部
56 全体表示
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