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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182394
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】点滴流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
A61M5/168 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095973
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】小宮 和磨
(72)【発明者】
【氏名】出水 俊
(72)【発明者】
【氏名】関口 彰太
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 克哉
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 めい
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066FF04
4C066QQ14
4C066QQ25
(57)【要約】
【課題】小型化と流量の微調整の容易化を実現し易い点滴流量制御装置を提供する。
【解決手段】点滴流量制御装置は、カム面と前記カム面を回転させる駆動部とを有し、前記カム面の回転によって点滴チューブを押圧する点滴流量制御装置であって、前記カム面が第1部分と第2部分を周方向一方側に向けてこの順に有し、前記第1部分が前記周方向一方側に向けて増加する半径を有し、前記第2部分が前記周方向一方側に向けて前記第1部分よりも緩やかに増加する半径を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム面と前記カム面を回転させる駆動部とを有し、前記カム面の回転によって点滴チューブを押圧する点滴流量制御装置であって、
前記カム面が第1部分と第2部分を周方向一方側に向けてこの順に有し、
前記第1部分が前記周方向一方側に向けて増加する半径を有し、
前記第2部分が前記周方向一方側に向けて前記第1部分よりも緩やかに増加する半径を有する、点滴流量制御装置。
【請求項2】
前記駆動部の非作動時に前記カム面の滑りを摩擦力によって防止する滑り防止構造を有する、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項3】
前記第2部分が前記滑り防止構造を有する、請求項2に記載の点滴流量制御装置。
【請求項4】
前記第1部分が前記滑り防止構造を有さない、請求項3に記載の点滴流量制御装置。
【請求項5】
前記カム面が前記第2部分よりも前記周方向一方側に、半径が一定の第3部分を有する、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項6】
前記第2部分の前記周方向一方側の端部と前記第1部分の周方向他方側の端部とを連ねる移行部分と、
前記移行部分と連携することで前記カム面の回転位置の基準合わせを行う基準合わせ部と、を有する、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項7】
前記第2部分が、前記第1部分が設けられる角度範囲よりも大きい角度範囲にわたって設けられる、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項8】
前記第2部分が180~270°の角度範囲にわたって設けられる、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項9】
前記第1部分が30~60°の角度範囲にわたって設けられる、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項10】
前記第2部分の周方向両端部間での半径の変化量が0.6~1.0mmである、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項11】
前記第1部分の周方向両端部間での半径の変化量が1.33~1.73mmである、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項12】
前記カム面によって押圧されることで前記点滴チューブを押圧する押圧部材を有する、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項13】
点滴筒内の流量を検出する検出部を有し、
前記駆動部が前記検出部の検出結果に応じて前記カム面を回転させる、請求項1に記載の点滴流量制御装置。
【請求項14】
前記点滴筒を有する、請求項13に記載の点滴流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は点滴流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点滴チューブを押圧する点滴流量制御装置が知られている(例えば特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-222485号公報
【特許文献2】特許第4587597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような点滴流量制御装置は、小型であり、且つ、流量の微調整が容易であることが望ましい。
【0005】
そこで本開示は、小型化と流量の微調整の容易化を実現し易い点滴流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は以下のとおりである。
【0007】
[1]
カム面と前記カム面を回転させる駆動部とを有し、前記カム面の回転によって点滴チューブを押圧する点滴流量制御装置であって、
前記カム面が第1部分と第2部分を周方向一方側に向けてこの順に有し、
前記第1部分が前記周方向一方側に向けて増加する半径を有し、
前記第2部分が前記周方向一方側に向けて前記第1部分よりも緩やかに増加する半径を有する、点滴流量制御装置。
【0008】
[2]
前記駆動部の非作動時に前記カム面の滑りを摩擦力によって防止する滑り防止構造を有する、[1]に記載の点滴流量制御装置。
【0009】
[3]
前記第2部分が前記滑り防止構造を有する、[2]に記載の点滴流量制御装置。
【0010】
[4]
前記第1部分が前記滑り防止構造を有さない、[3]に記載の点滴流量制御装置。
【0011】
[5]
前記カム面が前記第2部分よりも前記周方向一方側に、半径が一定の第3部分を有する、[1]~[4]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0012】
[6]
前記第2部分の前記周方向一方側の端部と前記第1部分の周方向他方側の端部とを連ねる移行部分と、
前記移行部分と連携することで前記カム面の回転位置の基準合わせを行う基準合わせ部と、を有する、[1]~[5]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0013】
[7]
前記第2部分が、前記第1部分が設けられる角度範囲よりも大きい角度範囲にわたって設けられる、[1]~[6]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0014】
[8]
前記第2部分が180~270°の角度範囲にわたって設けられる、[1]~[7]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0015】
[9]
前記第1部分が30~60°の角度範囲にわたって設けられる、[1]~[8]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0016】
[10]
前記第2部分の周方向両端部間での半径の変化量が0.6~1.0mmである、[1]~[9]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0017】
[11]
前記第1部分の周方向両端部間での半径の変化量が1.33~1.73mmである、[1]~[10]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0018】
[12]
前記カム面によって押圧されることで前記点滴チューブを押圧する押圧部材を有する、[1]~[11]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0019】
[13]
点滴筒内の流量を検出する検出部を有し、
前記駆動部が前記検出部の検出結果に応じて前記カム面を回転させる、[1]~[12]の何れか1項に記載の点滴流量制御装置。
【0020】
[14]
前記点滴筒と前記点滴チューブを有する、[13]に記載の点滴流量制御装置。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、小型化と流量の微調整の容易化を実現し易い点滴流量制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る点滴流量制御装置を示す斜視図である。
図2図1に示すカムの上面図である。
図3A図1に示すカムの動作を示す上面図である。
図3B図3Aに示す状態からカムが回転した時の状態を示す上面図である。
図3C図3Bに示す状態からカムが更に回転した時の状態を示す上面図である。
図3D図3Cに示す状態からカムが更に回転した時の状態を示す上面図である。
図4図1に示すカムと押圧部材の間に作用する力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に例示説明する。
【0024】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る点滴流量制御装置1は、注入コントローラ2、点滴筒3及び点滴チューブ4を有する。本実施形態では点滴流量制御装置1は、点滴筒3及び点滴チューブ4を介して人体などの生体内に生理食塩水又は栄養剤などの液体を注入する。注入コントローラ2は、カム5、押圧部材6、駆動部7及び検出部8を有する。注入コントローラ2は、図示するようにカム5、押圧部材6、駆動部7及び検出部8を少なくとも部分的に収容し保持する筐体9を有することができる。また注入コントローラ2は、駆動部7と検出部8のための電源として、図示しない電池を筐体9内に有することができる。筐体9は、点滴筒3を収容する点滴筒収容部10と、点滴チューブ4の上端周辺部分を収容するチューブ収容部11と、を有する。注入コントローラ2は、重力による流量を制限するために点滴チューブ4を窄める押圧力を自動で調整する電動クレンメとして機能する。
【0025】
電動クレンメによれば、輸液バッグと人体との高低差や、輸液セットの針などの太さや、液体の粘度や、輸液バッグの経時的な液面高さの変化などに関連して流量が不安定になる場合でも、自動で流量を安定させることができる。
【0026】
点滴筒3は、流入部3a、滴下部3b及び流出部3cを有する。流入部3a、滴下部3b及び流出部3cは、鉛直方向下側に向けてこの順に並ぶように配置される。流出部3cは点滴チューブ4の一端部(上端部)に連結する。輸液バッグ等の液体容器から流入部3aを通って点滴筒3内に流入した液体は、滴下部3b内で滴下し、流出部3cを通って点滴筒3内から流出し、点滴チューブ4を通って生体内に注入される。滴下部3b内で滴下する液体の滴下量は、生体内に注入される液体の流量、つまり輸液の流量に一致する。
【0027】
検出部8は点滴筒3内の流量を検出する。検出部8は例えば、滴下部3b内で滴下する液体を検出する滴下センサによって構成することができる。滴下センサとしては例えば、赤外線センサなどの光センサ、超音波センサなどを用いることができる。
【0028】
駆動部7は回転軸線Oを中心にカム5を回転させる。駆動部7は、図示するように電動モータ7aと減速機7bを有することができる。減速機7bは、電動モータ7aの出力軸の回転を、回転数を落としてカム5に伝える。減速機7bは例えば、図示するような歯車機構によって構成することができる。電動モータとしては例えば、DCモータ、ACモータ、ステッピングモータ又はサーボモータなどを利用可能である。電動モータによれば、カム5を例えば360°の広い角度範囲で容易に使用でき、角度の制御も容易である。検出部8と通信可能な図示しないコンピュータ(プロセッサ)が筐体9内に配置される。当該コンピュータは、検出部8の検出結果(検出された流量)に応じて電動モータ7aの出力軸の回転(回転方向、回転位置、回転速度など)を制御し、その結果、カム5の回転を制御する。このように、駆動部7は検出部8の検出結果に応じてカム5を周方向一方側と周方向他方側に択一的に回転させる。
【0029】
カム5は、カム5の外周面によって構成されるカム面12を有する。カム面12は、駆動部7によるカム5の回転に伴って回転軸線Oを中心に回転する。点滴流量制御装置1は、カム面12の回転によって点滴チューブ4を押圧することにより、点滴流量を制御する。点滴流量の制御を回転するカム面12によって実現する構成によれば、リンク機構やラック・ピニオン、送りねじ機構などによる構成と比べ、点滴流量制御装置1の小型化(・軽量化)を実現し易くすることができる。
【0030】
小型化・軽量化によれば、(i)携帯性を向上し、体力のない患者の負担を軽減できる、(ii)機器管理性を向上し、保管スペースを少なくし、病院等の負担を軽減できる、(iii)使い易さを向上し、在宅医療等の限られたスペースでの利用を簡単にできる、(iv)医療経済性を向上し、低価格を実現できる、等の効果を実現できる。
【0031】
図2に示すように、カム面12は、第1部分12aと第2部分12bを回転軸線Oを中心とする周方向一方側に向けてこの順に有し、第1部分12aが周方向一方側(図2における半時計回り方向)に向けて増加する半径を有し、第2部分12bが周方向一方側に向けて第1部分12aよりも緩やかに増加する半径を有する。またカム面12は、第2部分12bよりも周方向一方側に、半径が一定の第3部分12cを有し、第1部分12aよりも周方向他方側(図2における時計回り方向)に、半径が一定の第4部分12dを有する。
【0032】
第4部分12d、第1部分12a、第2部分12b及び第3部分12cは例えば、図示するように周方向一方側にこの順に連続して連なる構成とすることができる。第1部分12aの半径は例えば、図示するように周方向一方側に向けて徐々に滑らかに増加する構成とすることができる。第1部分12aの半径は例えば、図示するように周方向一方側に向けて一定の勾配で増加する構成とすることができる。第2部分12bの半径は例えば、図示するように周方向一方側に向けて徐々に滑らかに増加する構成とすることができる。第2部分12bの半径は例えば、図示するように周方向一方側に向けて第1部分12aよりも小さい一定の勾配で増加する構成とすることができる。
【0033】
第2部分12bは、図示するように、第1部分12aが設けられる角度範囲(第1角度範囲θ1ともいう)よりも大きい角度範囲(第2角度範囲θ2ともいう)にわたって設けることが好ましい。
【0034】
第2角度範囲θ2は大きければ大きいほど、第2部分12bによって微調整できる点滴流量の設定範囲が大きくなるので好ましい。第2角度範囲θ2は、180°以上であることが好ましく、200°以上であることがより好ましく、220°以上であることがより好ましい。また第2角度範囲θ2は、270°以下であることが好ましく、250°以下であることがより好ましく、230°以下であることがより好ましい。第2角度範囲θ2は、第1角度範囲θ1、第3角度範囲θ3及び第4角度範囲θ4との兼ね合いによって決定する。
【0035】
第1角度範囲θ1が小さければ小さいほど、第2角度範囲θ2を大きく設定し易くなるものの、第1部分12aの半径の急激な増加のために、電動モータ7aに要求されるトルクが大きくなる。要求トルクを小さくし、電動モータ7a、ひいては点滴流量制御装置1の小型化を図る観点から、第1角度範囲θ1は、30°以上であることが好ましく、35°以上であることがより好ましく、40°以上であることがより好ましい。また第1角度範囲θ1は、第2角度範囲θ2を大きく設定し易くする観点から、60°以下であることが好ましく、55°以下であることがより好ましく、50°以下であることがより好ましい。
【0036】
とりわけ、第2角度範囲θ2と第1角度範囲θ1の合計値は、250°以上であることが好ましく、255°以上であることがより好ましく、260°以上であることがより好ましい。また、第2角度範囲θ2と第1角度範囲θ1の合計値は、290°以下であることが好ましく、285°以下であることがより好ましく、280°以下であることがより好ましい。
【0037】
第3部分12cが設けられる角度範囲(第3角度範囲θ3ともいう)は、第3部分12cの半径が一定であることにより、点滴チューブ4が過剰に圧し潰されることが抑制される効果を得るために或る程度の大きさが必要である。この観点から、第3角度範囲θ3は20°以上であることが好ましく、25°以上であることがより好ましい。また第3角度範囲θ3は、第2角度範囲θ2を大きく設定し易くする観点から、40°以下であることが好ましく、35°以下であることがより好ましい。
【0038】
第4部分12dが設けられる角度範囲(第4角度範囲θ4ともいう)は、第4部分12dの半径が一定であることにより、点滴チューブ4が実質的に窄められない状態を確実に確保し易くするために、押圧部材6の幅(つまり後端部6bでの周方向幅)に対応して或る程度の大きさが必要である。この観点から、第4角度範囲θ4は50°以上であることが好ましく、55°以上であることがより好ましい。また第4角度範囲θ4は、第2角度範囲θ2を大きく設定し易くする観点から、70°以下であることが好ましく、65°以下であることがより好ましい。
【0039】
第2部分12bの周方向一方側の端部での半径(第3半径r3)から第2部分12bの周方向他方側の端部での半径(第2半径r2)を減算して得られる値である、第2部分12bの周方向両端部間での半径の変化量(r3-r2)は、0.6mm以上であることが好ましく、0.65mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることがより好ましい。第2部分12bの周方向両端部間での半径の変化量は、1.0mm以下であることが好ましく、0.95mm以下であることがより好ましく、0.9mm以下であることがより好ましい。
【0040】
第2部分12bの勾配((r3-r2)/θ2)は、0.0022(≒0.6/270)mm/deg以上であることが好ましく、0.0026(≒0.65/250)mm/deg以上であることがより好ましく、0.0030(≒0.70/230)mm/deg以上であることがより好ましい。第2部分12bの勾配は、0.0056(≒1.0/180)mm/deg以下であることが好ましく、0.0048(≒0.95/200)mm/deg以下であることがより好ましく、0.0041(≒0.9/220)mm/deg以下であることがより好ましい。
【0041】
第1部分12aの周方向一方側の端部での半径(第2半径r2)から第1部分12aの周方向他方側の端部での半径(第1半径r1)を減算して得られる値である、第1部分12aの周方向両端部間での半径の変化量(r2-r1)は、1.33mm以上であることが好ましく、1.38mm以上であることがより好ましく、1.43mm以上であることがより好ましい。第1部分12aの周方向両端部間での半径の変化量は、1.73mm以下であることが好ましく、1.68mm以下であることがより好ましく、1.63mm以下であることがより好ましい。
【0042】
第1部分12aの勾配((r2-r1)/θ1)は、0.022(≒1.33/60)mm/deg以上であることが好ましく、0.025(≒1.38/55)mm/deg以上であることがより好ましく、0.029(≒1.43/50)mm/deg以上であることがより好ましい。第1部分12aの勾配は、0.058(≒1.73/30)mm/deg以下であることが好ましく、0.048(≒1.68/35)mm/deg以下であることがより好ましく、0.041(≒1.63/40)mm/deg以下であることがより好ましい。
【0043】
第1半径r1は、5.07mm以上であることが好ましく、5.12mm以上であることがより好ましく、5.17mm以上であることがより好ましい。第1半径r1は、5.47mm以下であることが好ましく、5.42mm以下であることがより好ましく、5.37mm以下であることがより好ましい。
【0044】
押圧部材6は、カム面12によって押圧されることで点滴チューブ4の所定部分4aを押圧する。点滴チューブ4の所定部分4aは、押圧部材6によって片側から押圧されることで窄められて流量が減少するように、チューブ収容部11内で移動を制限される。
【0045】
押圧部材6は例えば、点滴チューブ4の所定部分4aを窄めて流量を減少させるように所定部分4aに対して前進可能(図3Aに示す位置から図3Dに示す位置まで)、且つ、点滴チューブ4の所定部分4aが弾性力(点滴チューブ4の弾性変形からの復元力)によって膨らみ流量を増加させるように所定部分4aに対して後退可能(図3Dに示す位置から図3Aに示す位置まで)に、筐体9に保持される構成とすることができる。
【0046】
この場合、カム5が周方向他方側に回転するのに伴ってカム面12と押圧部材6の後退方向の端部(後端部6bともいう)との接点Pでの半径が増加することにより、押圧部材6の前進方向の端部(前端部6aともいう)に作用する点滴チューブ4からの反力F1に抗して押圧部材6の後端部6bがカム面12によって押圧され、その結果、押圧部材6が前進する。また、カム5が周方向一方側に回転するのに伴ってカム面12と押圧部材6の後端部6bとの接点Pでの半径が減少することにより、点滴チューブ4からの押圧力によって押圧部材6が後退する。なお、押圧部材6の後退動作を助けるために、押圧部材6を後退方向に付勢するばねなどの付勢部材を設けてもよい。
【0047】
図3Aに示すように、点滴チューブ4の所定部分4aは例えば、カム面12と押圧部材6の接点Pが第4部分12dにある時におおよそ、押圧部材6の前端部6aに接し且つ弾性変形前の自然状態となるように、チューブ収容部11内に配置することができる。
【0048】
この状態から、図3Bに示すようにカム面12を周方向他方側に回転させて、カム面12と押圧部材6の接点Pが第1部分12aにある時には、第1部分12aの急な勾配により、少ない回転角度で押圧部材6を前進させることができる。したがって、実際には点滴流量の調整に使われることがない点滴チューブ4の変形範囲をカム面12の少ない回転角度によって効率的に変形させることができる。また、その結果、実際に点滴流量の調整に使われる第2部分12bの角度範囲を大きく設定することを可能にできるため、図3Cに示すように、第2部分12bによる点滴流量の微調整を容易に且つ精度良く行うことを可能にできる。
【0049】
図4に示すように、押圧部材6からの反力F1は、カム面12と押圧部材6の後端部6bとの接点Pに、押圧部材6の後退方向に向けて生じる。したがって、押圧部材6の後端部6bが後退方向に垂直な平面状である場合、カム面12における周方向一方側に向けて半径が増加する勾配のある部分(第1部分12aと第2部分12b)に作用する押圧部材6からの反力F1は、反力F1のベクトルの延長線が回転軸線Oからずれることにより、カム5(カム面12)を周方向一方側に回転させる回転モーメントMを生じる。
【0050】
このため、点滴流量制御装置1は、駆動部7の非作動時にカム面12の滑りを摩擦力F2によって防止する滑り防止構造13(図4参照)を有することが好ましい。滑り防止構造13によれば、駆動部7の非作動時に上記の回転モーメントMによってカム面12が回転し、点滴流量が不安定になることを防止することができる。したがって、カム面12を回転させて点滴流量を調整した後は駆動部7の電源を切ることができるので、省電力を実現し易くすることができる。また、必要とする電源(電池)が小さくなることにより、小型化をより実現し易くすることができる。また、電源の意図しない遮断によって点滴流量が増加することを防止できる、AFF(Anti-free flow)機能を実現できる。
【0051】
滑り防止構造13は、カム面12と押圧部材6の後端部6bとの少なくとも一方に対し、例えば、高摩擦素材による成形、凹凸面状となるような成形、凹凸面状にする後加工(ブラスト加工など)、高摩擦素材の貼り付けなどの手段を適用することにより形成することができる。
【0052】
滑り防止構造13は、省電力の観点から、点滴流量を調整する部分である第2部分12bに設けることが好ましい。滑り防止構造13は、省電力の観点から、点滴流量を調整する部分ではない第1部分12aには設けないことが好ましい。滑り防止構造13は、省電力の観点から、第2部分12bに設け、第1部分12aと押圧部材6の後端部6bには設けないことが好ましい。
【0053】
図3Cに示すようにカム面12と押圧部材6の接点Pが第2部分12bにある状態から更にカム面12が周方向他方側に回転し、図3Dに示すようにカム面12と押圧部材6の接点Pが第3部分12cにある状態になると、第3部分12cの半径が一定であることにより、点滴チューブ4が過剰に圧し潰されることが抑制され、その結果、損傷等の発生が抑制される。
【0054】
点滴流量制御装置1は、点滴流量の制御精度を高めるために、カム面12の回転位置の基準合わせを行う基準合わせ部14を有することが好ましい。基準合わせ部14は例えば、第2部分12bの周方向一方側の端部と第1部分12aの周方向他方側の端部とを連ねる移行部分15と連携することでカム面12の回転位置の基準合わせを行う構成とすることができる。基準合わせ部14は、半径が段差状に変化する段差部15aと連携して基準合わせを行うことが好ましい。本実施形態では、移行部分15は、第3部分12cと、第4部分12dと、第3部分12cの周方向一方側の端部と第4部分12dの周方向他方側の端部とを連ねる段差部15aと、を有する。
【0055】
基準合わせ部14は、カム面12を回転させて段差部15aの回転位置をスイッチ(押し下げスイッチ、光センサ、磁気センサなどを利用したもの)によって検出することにより、カム面12の回転位置を検出する構成とすることができる。基準合わせ部14は、カム面12を回転させて段差部15aをストッパに突き当てて回転を停止させることでカム面12の回転位置の基準合わせを行う構成としてもよい。
【0056】
本開示は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0057】
したがって、前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、カム面12とカム面12を回転させる駆動部7とを有し、カム面12の回転によって点滴チューブ4を押圧する点滴流量制御装置1であって、カム面12が第1部分12aと第2部分12bを周方向一方側に向けてこの順に有し、第1部分12aが周方向一方側に向けて増加する半径を有し、第2部分12bが周方向一方側に向けて第1部分12aよりも緩やかに増加する半径を有する、点滴流量制御装置1である限り、種々変更可能である。
【0058】
例えば、カム面12は第3部分12cと第4部分12dの一方又は両方を有さない構成としてもよい。点滴流量制御装置1は押圧部材6を介さずに直接、点滴チューブ4を押圧する構成としてもよい。点滴流量制御装置1は滑り防止構造13を有さない構成としてもよい。点滴流量制御装置1は基準合わせ部14を有さない構成としてもよい。
【0059】
なお、前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、駆動部7の非作動時にカム面12の滑りを摩擦力F2によって防止する滑り防止構造13を有する点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0060】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第2部分12bが滑り防止構造13を有する、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0061】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第1部分12aが滑り防止構造13を有さない、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0062】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、カム面12が第2部分12bよりも周方向一方側に、半径が一定の第3部分12cを有する、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0063】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第2部分12bの周方向一方側の端部と第1部分12aの周方向他方側の端部とを連ねる移行部分15と、移行部分15と連携することでカム面12の回転位置の基準合わせを行う基準合わせ部14と、を有する点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0064】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第2部分12bが、第1部分12aが設けられる角度範囲よりも大きい角度範囲にわたって設けられる、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0065】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第2部分12bが180~270°の角度範囲にわたって設けられる、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0066】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第1部分12aが30~60°の角度範囲にわたって設けられる、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0067】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第2部分12bの周方向両端部間での半径の変化量が0.6~1.0mmである、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0068】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、第1部分12aの周方向両端部間での半径の変化量が1.33~1.73mmである、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0069】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、カム面12によって押圧されることで点滴チューブ4を押圧する押圧部材6を有する、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0070】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、点滴筒3内の流量を検出する検出部8を有し、
駆動部7が検出部8の検出結果に応じてカム面12を回転させる、点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【0071】
前述した実施形態に係る点滴流量制御装置1は、点滴筒3を有する点滴流量制御装置1であることが好ましい。
【符号の説明】
【0072】
1 点滴流量制御装置
2 注入コントローラ
3 点滴筒
3a 流入部
3b 滴下部
3c 流出部
4 点滴チューブ
4a 所定部分
5 カム
6 押圧部材
6a 前端部
6b 後端部
7 駆動部
7a 電動モータ
7b 減速機
8 検出部
9 筐体
10 点滴筒収容部
11 チューブ収容部
12 カム面
12a 第1部分
12b 第2部分
12c 第3部分
12d 第4部分
13 滑り防止構造
14 基準合わせ部
15 移行部分
15a 段差部
F1 反力
F2 摩擦力
M 回転モーメント
O 回転軸線
P 接点
r1 第1半径
r2 第2半径
r3 第3半径
θ1 第1角度範囲
θ2 第2角度範囲
θ3 第3角度範囲
θ4 第4角度範囲
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4