(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182395
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】保護シール
(51)【国際特許分類】
A61M 39/16 20060101AFI20231219BHJP
A61M 39/26 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61M39/16
A61M39/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095974
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真穂
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正彦
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066JJ03
4C066JJ05
4C066JJ06
4C066NN04
4C066QQ15
(57)【要約】
【課題】非接続状態のメスコネクタの弁体の表面が細菌で汚染される可能性を低減する。オスルアーの誤穿刺によりメスコネクタ内に細菌が混入する可能性を低減する。
【解決手段】保護シール1は、メスコネクタ100の天面142に貼付される主要部11を備える。主要部11は、主要部11を天面142に貼付したとき天面に設けられた開口143に露出された弁体110に対向するように配置された補強領域13と、補強領域13を取り囲む周辺領域14とを備える。周辺領域14のメスコネクタ100の天面142に対向する側の面は粘着性を有する。補強領域13は、周辺領域14より高強度である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通するスリットが形成された自閉式の弁体と、前記弁体の前記スリットを含む領域を露出させる開口が設けられた天面とを備えたメスコネクタに剥離可能に貼付することができる保護シールであって、
前記保護シールは、前記メスコネクタの前記天面に貼付される主要部を備え、
前記主要部は、前記主要部を前記天面に貼付したとき前記開口に露出された前記弁体に対向するように配置された補強領域と、前記補強領域を取り囲む周辺領域とを備え、
前記周辺領域の前記メスコネクタの前記天面に対向する側の面は粘着性を有し、
前記補強領域は、前記周辺領域より高強度であることを特徴とする保護シール。
【請求項2】
前記補強領域の前記弁体に対向する面は非粘着性を有する請求項1に記載の保護シール。
【請求項3】
前記補強領域は、前記周辺領域より厚い請求項1に記載の保護シール。
【請求項4】
前記保護シールは、基材層と、前記基材層の片面に設けられた粘着層とを有する基材シートを備える請求項1に記載の保護シール。
【請求項5】
前記補強領域において、補強層が前記粘着層上に設けられている請求項4に記載の保護シール。
【請求項6】
前記補強領域は、前記メスコネクタの前記開口より大きい請求項1に記載の保護シール。
【請求項7】
前記保護シールは、前記補強領域を前記弁体から離間させるように前記メスコネクタの前記天面に当接する突起を更に備える請求項1に記載の保護シール。
【請求項8】
前記周辺領域は、前記主要部を前記メスコネクタの前記天面に貼付したときに前記天面に沿って変形できるように可撓性を有する請求項1に記載の保護シール。
【請求項9】
前記主要部を前記メスコネクタの前記天面に貼付したとき、前記主要部は前記天面からはみ出さない請求項1に記載の保護シール。
【請求項10】
前記保護シールは、前記主要部から突出した少なくとも一つのタブを更に備える請求項1に記載の保護シール。
【請求項11】
前記少なくとも一つのタブの前記メスコネクタに対向する面の少なくとも一部に、非粘着性を有する非粘着領域が設けられている請求項10に記載の保護シール。
【請求項12】
前記少なくとも一つのタブの前記メスコネクタに対向する面に、粘着性を有する粘着領域が設けられている請求項10に記載の保護シール。
【請求項13】
前記メスコネクタは、前記メスコネクタに接続されるオスコネクタに設けられた係合構造が係合する係合溝を更に備え、
前記少なくとも一つのタブは、前記主要部を前記メスコネクタの前記天面に貼付したとき前記係合溝の少なくとも一部を塞ぐように前記メスコネクタに貼付することができる請求項10に記載の保護シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットが形成された自閉式の弁体を備えたメスコネクタに剥離可能に貼付することができる保護シールに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、薬液、輸液、血液などの各種の液体を搬送するために流路(ライン)が用いられる。流路は、一般に容器や各種器具、チューブなどを接続することによって形成される。異なる部材を接続するために、オスコネクタ及びメスコネクタからなる接続具が用いられる。
【0003】
このような分野に用いられるメスコネクタとして、自閉式の弁体を備えた閉鎖式のメスコネクタが知られている(例えば、特許文献1~5参照)。弁体は、ゴム弾性を有する軟質の材料からなる円形の板状物であり、その中央に、弁体を厚さ方向に貫通するスリットが形成されている。弁体は、キャップで覆われる。キャップの円形の天面の中央には開口が設けられており、当該開口を介して、スリットを含む弁体の中央の領域が外界に露出される。鋭利な先端を有しない筒状のオスルアーを当該開口内に押し込むと、弁体はオスルアーによって変形されてスリットが開く。これにより、メスコネクタとオスルアーとが連通する。その後、オスルアーを開口から引き抜くと、弁体は直ちに初期状態に弾性復帰し、スリットは閉じられる。オスルアーは、メスコネクタに、何度でも繰り返し挿抜することができる。
【0004】
上記の従来のメスコネクタが、オスルアーが接続(または挿入)されていない非接続状態にあるとき、弁体のスリットは閉じられるので、外界の細菌がメスコネクタ内に侵入するのを防止できる。しかしながら、非接続状態では、キャップの開口内に弁体のスリットを含む領域が露出されたままである。このため、露出した弁体の表面が細菌で汚染される可能性がある。この状態のメスコネクタにオスルアーを接続すると、弁体のスリットが開くことによって、弁体の表面に付着していた細菌がメスコネクタ内に混入し、患者が感染症に至るという事態が起こりうる。
【0005】
特許文献5には、非接続状態のメスコネクタに貼付することができる保護シールが記載されている。保護シールは、天面の開口内に露出された弁体の領域を覆うように、メスコネクタに貼付することができる。保護シールをメスコネクタに貼付すれば、メスコネクタの非接続状態において弁体の表面に細菌が付着するのを防止できる。したがって、保護シールは、メスコネクタ内に細菌が混入する可能性を低減するのに有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-197254号公報
【特許文献2】特開2013-252165号公報
【特許文献3】WO2019/181743
【特許文献4】WO2014/049811
【特許文献5】特開2017-136200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、メスコネクタに保護シールが貼付されていることに気付かずに、保護シールが貼付された状態のメスコネクタにオスルアーを挿入しようする操作ミス(誤穿刺)が起こる可能性がある。オスルアーの挿入強さによっては、オスルアーが保護シールを貫通し、更に、メスコネクタに挿入されてしまうかも知れない。この場合、保護シールの外表面が細菌で汚染されていれば、メスコネクタ内に細菌が混入する可能性がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、非接続状態のメスコネクタの弁体の表面が細菌で汚染される可能性を低減することにある。本発明の第2の目的は、オスルアーの誤穿刺によりメスコネクタ内に細菌が混入する可能性を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の保護シールは、厚さ方向に貫通するスリットが形成された自閉式の弁体と、前記弁体の前記スリットを含む領域を露出させる開口が設けられた天面とを備えたメスコネクタに剥離可能に貼付することができる。前記保護シールは、前記メスコネクタの前記天面に貼付される主要部を備える。前記主要部は、前記主要部を前記天面に貼付したとき前記開口に露出された前記弁体に対向するように配置された補強領域と、前記補強領域を取り囲む周辺領域とを備える。前記周辺領域の前記メスコネクタの前記天面に対向する側の面は粘着性を有する。前記補強領域は、前記周辺領域より高強度である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、主要部の周辺領域は粘着性を有する。このため、周辺領域を天面に貼付することができる。これは、天面の開口内の弁体の表面が細菌で汚染されるのを防止するのに有利である。
【0011】
主要部の補強領域は周辺領域より高強度である。このため、保護シールを貼付したメスコネクタにオスルアーを誤穿刺しようとしても、オスルアーが補強領域を貫通することは困難である。これは、オスルアーの誤穿刺によりメスコネクタ内に細菌が混入する可能性を低減するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、本発明の実施形態1にかかる保護シールの、メスコネクタに貼付される面側から見た斜視図である。
図1Bは、当該保護シールの分解斜視図である。
図1Cは、保護シールを構成する基材シートの、厚さ方向に沿った面での拡大断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の保護シールを貼付することができるメスコネクタの一例の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1にかかる保護シールをメスコネクタに貼付する直前の状態を示した斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の実施形態1にかかる保護シールをメスコネクタに貼付した状態を示した斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態2にかかる保護シールの、メスコネクタに貼付される面側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態2にかかる保護シールをメスコネクタに貼付した状態を示した斜視図である。
【
図8】
図8Aは、本発明の実施形態3にかかる保護シールの、メスコネクタに貼付される面側から見た斜視図である。
図8Bは、当該保護シールの、厚さ方向に沿った面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)本発明の保護シールは、厚さ方向に貫通するスリットが形成された自閉式の弁体と、前記弁体の前記スリットを含む領域を露出させる開口が設けられた天面とを備えたメスコネクタに剥離可能に貼付することができる。前記保護シールは、前記メスコネクタの前記天面に貼付される主要部を備える。前記主要部は、前記主要部を前記天面に貼付したとき前記開口に露出された前記弁体に対向するように配置された補強領域と、前記補強領域を取り囲む周辺領域とを備える。前記周辺領域の前記メスコネクタの前記天面に対向する側の面は粘着性を有する。前記補強領域は、前記周辺領域より高強度である。
【0014】
(2)上記(1)項の保護シールにおいて、前記補強領域の前記弁体に対向する面は非粘着性を有していてもよい。かかる態様によれば、保護シールをメスコネクタから剥離した後、天面の開口内の弁体の表面に粘着剤は付着しない。このため、その後、オスルアーをメスコネクタに接続しても、粘着剤や異物がメスコネクタ内に混入する可能性を低減することができる。
【0015】
(3)上記(1)項または上記(2)項の保護シールにおいて、前記補強領域は、前記周辺領域より厚くてもよい。かかる態様によれば、周辺領域より高強度の補強領域を簡単に構成することができる。
【0016】
(4)上記(1)項~上記(3)項のいずれか一項の前記保護シールは、基材層と、前記基材層の片面に設けられた粘着層とを有する基材シートを備えていてもよい。かかる態様は、保護シールの構造の簡単化及び製造の容易化に有利である。
【0017】
(5)上記(4)項の保護シールでは、前記補強領域において、補強層が前記粘着層上に設けられていてもよい。かかる態様によれば、相対的に高強度である補強領域を簡単に構成することができる。これは、保護シールの構造の簡単化及び製造の容易化に有利である。
【0018】
(6)上記(1)項~上記(5)項のいずれか一項の保護シールにおいて、前記補強領域は、前記メスコネクタの前記開口より大きくてもよい。かかる態様は、第1に、保護シールを貼付したメスコネクタにオスルアーを誤穿刺するのを防止するのに有利であり、第2に、周辺領域の粘着剤が天面の開口内の弁体の表面に付着するのを防止するのに有利である。
【0019】
(7)上記(1)項~上記(6)項のいずれか一項の前記保護シールは、前記補強領域を前記弁体から離間させるように前記メスコネクタの前記天面に当接する突起を更に備えていてもよい。かかる態様によれば、仮に補強領域の表面にゴミ等の異物が付着していたり、補強領域の表面が細菌で汚染されていたりしても、弁体に異物や細菌が転着する可能性を低減することができる。
【0020】
(8)上記(1)項~上記(7)項のいずれか一項の保護シールにおいて、前記周辺領域は、前記主要部を前記メスコネクタの前記天面に貼付したときに前記天面に沿って変形できるように可撓性を有していてもよい。かかる態様は、周辺領域を天面に隙間なく密着させることを容易にする。これは、メスコネクタに保護シールを貼付した状態において、開口内の弁体の表面が細菌で汚染される可能性を低減するのに有利である。
【0021】
(9)上記(1)項~上記(8)項のいずれか一項の保護シールにおいて、前記主要部を前記メスコネクタの前記天面に貼付したとき、前記主要部は前記天面からはみ出さなくてもよい。かかる態様によれば、主要部をメスコネクタの天面に貼付した状態において、周辺領域の粘着層にゴミ等の異物が付着する可能性を低減することができる。
【0022】
(10)上記(1)項~上記(9)項のいずれか一項の保護シールは、前記主要部から突出した少なくとも一つのタブを更に備えていてもよい。
【0023】
(11)上記(10)項の保護シールにおいて、前記少なくとも一つのタブの前記メスコネクタに対向する面の少なくとも一部に、非粘着性を有する非粘着領域が設けられていてもよい。かかる態様によれば、当該タブを、メスコネクタに対して保護シールを貼付及び剥離する際に作業者が保護シールを掴むための「取っ手」として利用することができる。
【0024】
(12)上記(10)項の保護シールにおいて、前記少なくとも一つのタブの前記メスコネクタに対向する面に、粘着性を有する粘着領域が設けられていてもよい。かかる態様によれば、当該タブを、メスコネクタの外周面に貼付することができる。
【0025】
(13)前記メスコネクタは、前記メスコネクタに接続されるオスコネクタに設けられた係合構造が係合する係合溝を更に備えていてもよい。上記(10)項または上記(12)項の保護シールにおいて、前記少なくとも一つのタブは、前記主要部を前記メスコネクタの前記天面に貼付したとき前記係合溝の少なくとも一部を塞ぐように前記メスコネクタに貼付することができるように構成されていてもよい。かかる態様は、オスルアーで保護シールを誤穿刺するのを防止するのに有利である。
【0026】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する図面は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の図面に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の図面に示された部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
【0027】
本発明において、部材(例えば保護シール、メスコネクタ、オスコネクタ等)の「軸」は、当該部材の中心軸を意味する。「軸」は、部材に含まれる円の中心を通り、且つ/又は、部材に含まれる円筒もしくは円錐(テーパ)の中心軸と一致する。以下に示す図面では、図面を簡単化するために「軸」を図示していない。軸に直交する直線に沿った方向を「半径方向」という。半径方向において、軸に近い側を「内」側、軸に遠い側を「外」側という。軸の周りを回転する方向を「周方向」という。
【0028】
(実施形態1)
図1Aは、本発明の実施形態1にかかる保護シール1の斜視図である。保護シール1は、略円形の主要部11と、主要部11の外周端から半径方向に沿って外向きに突出したタブ15とを備える。主要部11は、その中央の補強領域13と、補強領域13を取り囲む周辺領域14とを備える。補強領域13は、主要部11と同心の略円形である。周辺領域14は、主要部11の円形の外周端に沿って環状に連続している。タブ15は、その先端(主要部11から遠い側の端)を含む領域(先端領域)に非粘着領域19を備える。
【0029】
図1Bは、保護シール1の分解斜視図である。保護シール1は、基材シート20と、基材シート20の片面に設けられた補強層23及び非粘着層29とを備える。
図1Cは、基材シート20の厚さ方向に沿った面での拡大断面図である。基材シート20は、一定の厚さを有する基材層21と、基材層21の片面の全面に設けられた粘着層22とを備える。粘着層22は、粘着性を有する。一方、基材層21、補強層23、及び非粘着層29は非粘着性を有する。
【0030】
図1A~
図1Cから容易に理解できるように、補強領域13では、基材層21に、粘着層22を介して補強層23が設けられている。非粘着領域19では、基材層21に、粘着層22を介して非粘着層29が設けられている。保護シール1の補強層23及び非粘着層29が設けられた側の面のうち、補強層23及び非粘着層29が設けられていない領域では、粘着層22が露出されている。即ち、主要部11の周辺領域14では、粘着層22が露出されている。また、タブ15のうち、非粘着領域19以外の領域では、周辺領域14と同様に、粘着層22が露出されている。粘着層22が露出された領域を、非粘着領域19と対比して、「粘着領域」という。
【0031】
基材層21は、制限はないが、樹脂シートで構成しうる。基材層21を構成する材料としては、制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子樹脂材料を使用しうる。基材層21は、単層である必要はなく、複数の層が積層された多層構造を有していてもよい。多層構造は、例えば複数の層が共押出により一体的に積層されたものや、接着剤層等を介して複数の層が積層されたものなど任意の構成を有しうる。基材層21の粘着層22とは反対側の面に、印刷や着色が施されていてもよい。基材層21は、保護シール1をメスコネクタ100(後述する
図2A及び
図2Bを参照)に貼付したり、保護シール1をメスコネクタ100から剥離したりするときに保護シール1が破れないように、適度な機械的強度を有していることが好ましい。また、基材層21は、保護シール1をメスコネクタ100に貼付したとき、メスコネクタ100の曲面(例えばメスコネクタ100の天面142(後述する
図2A、
図2Bを参照)やメスコネクタ100の外周面(後述する
図6を参照))に沿って変形できるように、適度な可撓性(柔軟性)を有していることが好ましい。
【0032】
粘着層22は、制限はないが、シリコン系、アクリル系、ゴム系等の公知の粘着剤で構成しうる。粘着層22は、基材層21の片面の全面に、略均一の厚さで設けられる。保護シール1をメスコネクタ100に貼付した後、保護シール1をメスコネクタ100から剥離することが比較的容易であり、且つ、剥離した後にメスコネクタ100に粘着剤が残留しないように粘着層22が構成されることが好ましい。メスコネクタ100に残留した粘着剤は、メスコネクタ100を不衛生にするからである。
【0033】
補強層23は、基材シート20に相対的に高強度な領域(補強領域13)を形成するためのものである。非粘着層29は、基材シート20の粘着層22を覆うことにより、基材シート20(またはタブ15)のメスコネクタ100に対向する側の面に非粘着性の領域(非粘着領域19)を形成するためのものである。補強層23及び非粘着層29は、制限はないが、いずれも樹脂シートで構成しうる。補強層23及び非粘着層29を構成する材料としては、制限はないが、基材層21の材料として例示した上記の高分子樹脂材料を使用しうる。補強層23及び非粘着層29の材料は、基材層21の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、補強層23と非粘着層29とは、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。補強層23及び非粘着層29は、好ましくはそれぞれ一定の厚さを有するが、両者の厚さは同じであってもよいし、異なっていてもよい。補強層23及び/又は非粘着層29は、単層である必要はなく、複数の層が積層された多層構造を有していてもよい。多層構造は、例えば複数の層が共押出により一体的に積層されたものや、接着剤層等を介して複数の層が積層されたものなど任意の構成を有しうる。
【0034】
図2Aは、保護シール1を貼付することができるメスコネクタ100の斜視図である。
図2Bは、メスコネクタ100の、メスコネクタ100の軸(図示せず)を含む面に沿った断面図である。
【0035】
図2Bから理解できるように、メスコネクタ100は、弁体(「セプタム」と呼ばれることもある)110、メスコネクタ本体(以下「本体」という)120、及び、キャップ140を備える。本体120及びキャップ140は、弁体110を上下方向に挟持し固定する。
【0036】
弁体110は、全体として、円形の薄板形状を有する。弁体110の中央には、弁体110を厚さ方向(
図2Bにおいて上下方向)に貫通する直線状のスリット(切り込み)111が形成されている。弁体110は、外力によって比較的容易に変形可能であり、且つ、外力を取り除くと直ちに変形前の状態(初期状態)に復帰するように、弾性(あるいは可撓性)を有する軟質材料(いわゆるエラストマー)からなる。使用しうる軟質材料としては、制限はないが、軟質ポリ塩化ビニルや、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴム等を例示することができる。弁体110は、上記の材料を用いて、全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0037】
本体120の上側部分は、内筒121及び外筒125を備えた二重筒構造を有する。内筒121及び外筒125は、いずれも略円筒形状を有している。外筒125が、内筒121に対して半径方向外側に、内筒121から離間して、内筒121と同軸に配置されている。外筒125の内周面には、周方向に沿って延びた凸条(環状リブ)及び/又は凹条(環状溝)からなる嵌合構造126が設けられている。本体120の下側には、略円筒形状の接続部130が設けられている。内筒121の内腔と接続部130の内腔とは、流路135を介して連通されている。接続部130には、図示しないオスプラグが接続される。オスプラグは、例えば柔軟なチューブの終端に設けられていてもよい。チューブは、液体(例えば血液、薬液、生理食塩水等)が流れる流路を構成してもよい。あるいは、オスプラグは、シリンジの筒先に設けられていてもよい。
【0038】
図2Aに示されているように、本体120の外筒125の外周面には、一対の係合溝127(
図2Aではただ1つの係合溝127のみが見える)が、メスコネクタ100の軸(図示せず)に対して対称に設けられている。係合溝127は、外筒22の上端から下方に向かって斜めに(または略螺旋状に)延びた案内部128と、案内部128の下端から周方向に延びた係止部129とを備え、全体として略「L」(または「J」)字形状(または鉤形状)を有する。係合溝127(特に案内部128)は、上方に向かって開放されている。
【0039】
図2Bに戻り、キャップ140は、円板形状を有する天板141と、天板141の外周端またはその近傍から延びた円筒形状を有する周囲壁145とを備える。天板141の中央には円形の開口(貫通孔)143が形成されている。天板141の上面(または外面)である天面142は、制限されないが、本実施形態1では、開口143に近づくにしたがって下降した、緩やかな傾斜を有する凹状の円錐面である。天板141の下面には、下方に向かって突出した、略円筒形状のリブ144が設けられている。リブ144は、周囲壁145に対して半径方向内側に、周囲壁145から離間して、周囲壁145と同軸に配置されている。周囲壁145の外周面には、周方向に連続する凸条(環状リブ)及び/又は凹条(環状溝)からなる嵌合構造146が設けられている。
【0040】
本体120及びキャップ140は、硬質の材料からなることが好ましい。具体的には、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いうる。本体120及びキャップ140のそれぞれは、これらの樹脂材料を用いて射出成形法等により全体を一部品として一体的に製造することができる。
【0041】
メスコネクタ100は、概略、以下のようにして組み立てられる。弁体110が、内筒121の上端に載置される。次いで、キャップ140の周囲壁145が、外筒125と内筒121との間の隙間に挿入される。弁体110は、周囲壁145内に収納される。本体120の外筒125に設けられた嵌合構造126と、キャップ140の周囲壁145に設けられた嵌合構造146とが嵌合する。内筒121の上端とリブ144の下端とが、弁体110の周辺部を厚さ方向(即ち上下方向)に挟持する。弁体110のスリット111を含む中央の領域は、天板141に形成された開口143内に露出される(
図2A参照)。
【0042】
鋭利な先端を有しない中空の筒状のオスルアー(例えば後述する
図7A及び
図7Bのオスルアー210を参照)を、天面142の開口143に挿入し、弁体110に押し付けると、弁体110が変形されてスリット111が開く。かくして、メスコネクタ100の内筒121の内腔とオスルアーとが連通する。メスコネクタ100とオスルアーとの間に、任意の液体(例えば血液、薬液、生理食塩水等)を流すことができる。弁体110はオスルアーに密着するので、弁体110とオスルアーとの間から液体が外界に漏れ出ることはない。メスコネクタ100(特にその開口143)からオスルアーを引き抜くと、弁体110は直ちに初期状態に弾性復帰し、スリット111は液密及び気密に閉じられる。このように、弁体110はリシール性を有する。メスコネクタ100に対してオスルアーを繰り返し挿抜することができる。弁体110は、メスコネクタ100にオスルアーが接続されていないときに液体が意図せずにメスコネクタ100から外界へ漏れ出るのを防ぐ自閉式の弁として機能する。
【0043】
メスコネクタ100に対する保護シール1の使用方法を説明する。
【0044】
メスコネクタ100にオスルアー(図示せず。例えば後述する
図7A及び
図7Bのオスルアー210を参照)を接続(または挿入)してメスコネクタ100とオスルアーとの間に液体(例えば、薬液、輸液、血液など)を流し、その後、オスルアーをメスコネクタ100から分離する。開口143内に露出した弁体110の表面や、開口143を取り囲む天面142に、液体が付着している場合がある。この液体を清潔な脱脂綿(脱脂綿は消毒剤を含んでいてもよい)等で拭き取り清掃する。
【0045】
次いで、
図3に示すように、メスコネクタ100の天面142に、保護シール1の主要部11を対向させる。より詳細には、保護シール1の補強層23及び粘着層22が設けられた側の面(
図1A参照)をメスコネクタ100に対向させる。
【0046】
次いで、
図4Aに示すように、保護シール1の主要部11をメスコネクタ100の天面142に貼付する。保護シール1の貼付作業は、タブ15(特に非粘着領域19)を指で摘まむことで容易に行うことができる。
【0047】
図4Bは、
図4Aの断面図である。
図4Bでは、図面を簡単化するために、基材シート20を、基材層21と粘着層22(
図1C参照)とを区別せずに単一層のシートとして示している。主要部11の周辺領域14の粘着層22(
図1A参照)が天面142に貼着している。主要部11をメスコネクタ100に向かって指で押さえることにより、主要部11(特に周辺領域14)を、天面142の凹状の円錐面に沿うように凹状に湾曲させることができる。補強層23(または補強領域13、
図1A参照)は、開口143内に露出された弁体110に対向している。周辺領域14が天面142に全周にわたって密着しているので、開口143内の弁体110は保護シール1(特に主要部11)により封止されている。
【0048】
保護シール1の主要部11の外径は、メスコネクタ100の天面142の外径と同じか、これよりわずかに小さく設定されている。したがって、主要部11は天面142の外周端よりも半径方向外側にはみ出さない。タブ15は、天面142の外周端を越えて、外筒125よりも更に半径方向外向きに突出している(
図4A参照)。メスコネクタ100は、その後にオスルアーが再挿入されるまでの間、
図4A及び
図4Bのように保護シール1が貼付された状態で放置される。
【0049】
保護シール1は、メスコネクタ100にオスルアーを再接続する直前にメスコネクタ100から剥離される。具体的には、タブ15(特に非粘着領域19)を指で摘まんで引っ張ると、保護シール1をメスコネクタ100から容易に剥離することができる。必要な場合には、天面142及び開口143内の弁体110の表面を、清潔な脱脂綿(脱脂綿は消毒剤を含んでいてもよい)等で拭き取り清掃してもよい。その後、オスルアー(図示せず)を開口143に挿入し、オスルアーをメスコネクタ100に連通させる。メスコネクタ100から剥離された保護シール1は、廃棄される。
【0050】
以上のように、本実施形態1の保護シール1は、メスコネクタ1の天面142に貼付することができる主要部11を備える。メスコネクタ100が、オスルアーが接続されていない非接続状態にあるときに、天面142に主要部11が貼付される(
図4A及び
図4B参照)。主要部11は、天面142の開口143内に露出された弁体110を覆う。保護シール1は、非接続状態のメスコネクタ100の弁体110に細菌が付着するのを防止する。したがって、その後、保護シール1をメスコネクタ100から剥離し、続いてオスルアーをメスコネクタ100に接続しても、メスコネクタ100内に細菌が混入する可能性は低い。
【0051】
主要部11を天面142に貼付したとき、補強領域13は、開口143内に露出された弁体110に対向する(
図4B参照)。補強領域13は、基材シート20に補強層23が積層されることにより高強度化されている。このため、メスコネクタ100に保護シール1が貼付されていることに気付かずに、保護シール1が貼付された状態のメスコネクタ100(
図4A及び
図4B参照)にオスルアーを誤って挿入(誤穿刺)しようとしても、オスルアーが補強領域13を突き破ることは困難である。
【0052】
従来の保護シール(特許文献5参照)は、本実施形態1の補強領域13を備えておらず、保護シールの強度は、保護シールの全領域にわたって一様であった。このため、保護シールを貼付したメスコネクタにオスルアーを誤穿刺しようとすると、オスルアーが保護シールを突き破り、弁体のスリットを開かせる可能性がある。この場合、保護シールの外表面が細菌で汚染されていれば、メスコネクタ内に当該細菌が混入する可能性がある。保護シールを厚くすれば誤穿刺を防止することは可能である。ところが、厚い保護シールは可撓性に劣るため、保護シールをメスコネクタ100の凹状の天面142に沿うように湾曲変形させることが困難になり、保護シールを天面142に密着して貼付することが困難になる。これは、開口143内の弁体110の表面が細菌で汚染される可能性を高める。
【0053】
これに対して、本実施形態1の保護シール1は、開口143内の弁体110に対向する位置に補強領域13が設けられている。補強領域13は、保護シール1を貼付したメスコネクタ100にオスルアーを誤穿刺しようとした場合に、オスルアーに対抗する。オスルアーが補強領域13を突き破ることは困難である。したがって、たとえ保護シール1の外表面(メスコネクタ100に対向する面とは反対側の面)が細菌で汚染されていたとしても、メスコネクタ100内に当該細菌が混入する可能性は低い。
【0054】
なお、本発明において保護シール(または補強領域)の「強度」とは、オスルアーの誤穿刺に対する抵抗力(耐力)を意味する。具体的には、保護シール(または補強領域)の「強度」とは、オスルアーを保護シール(または補強領域)に垂直に突き当てたときに、保護シール(または補強領域)がオスルアーによって突き破られることなくオスルアーに対抗しうる、オスルアーの最大の突き当て力である。一般には、「強度」は破断荷重と相関性を有する。
【0055】
補強領域13は、主要部11の全領域ではなく、主要部11の中央の領域のみに設けられている。主要部11には、補強領域13を取り囲むように、粘着性を有する周辺領域14が設けられている。このため、周辺領域14を、メスコネクタ100の開口143を取り囲む天面142に貼付することができる。周辺領域14は、補強領域13よりも相対的に低強度であり、好ましくは可撓性を有する。このため、天面142が曲面(例えば凹状の円錐面)を有している場合には、周辺領域14を、天面142に沿って変形(例えば湾曲変形)させて、天面142に隙間なく密着させることができる。これは、メスコネクタ100に保護シール1を貼付した状態(
図4A及び
図4B参照)において、周辺領域14と天面142との間を介して開口143内の弁体110の表面が細菌で汚染される可能性を低減するのに有利である。
【0056】
本発明では、補強領域13の弁体110に対向する面(対向面)は、周辺領域14と同様に粘着性を有していてもい。但し、好ましくは、本実施形態1のように、補強領域13の弁体110に対向する面は非粘着性を有している。本実施形態1とは異なり、補強領域13の対向面が粘着性を有していると、保護シールをメスコネクタ100から剥離した後、開口143内の弁体110の表面に粘着剤が付着する可能性がある。粘着剤にはゴミ等の異物が付着しやすい。その後、オスルアーをメスコネクタ100に接続すると、弁体110に付着した粘着剤や異物がメスコネクタ100内に混入する可能性がある。本実施形態1では、補強領域13の対向面には粘着層は設けられていないので、保護シール1をメスコネクタ100から剥離した後、オスルアーをメスコネクタ100に接続しても、粘着剤や異物がメスコネクタ100内に混入する可能性は低い。
【0057】
本発明では、補強領域13の大きさに制限はない。例えば補強領域13はメスコネクタ100の開口143より小さくてもよい。但し、補強領域13は、メスコネクタ100の開口143と同じかこれより大きいことが好ましく、メスコネクタ100の開口143より大きいことがより好ましい。本実施形態1では、開口143は円形であり、補強領域13は、開口143の開口径より大きな径を有する円形である。このため、保護シール1をメスコネクタ100に貼付したとき、補強領域13は、開口143を覆い、開口143から半径方向外側にはみ出す(
図4B参照)。補強領域13の外周端は、天面142に軸方向に対向する。これは、以下の効果を奏する。第1に、保護シール1を貼付したメスコネクタ100にオスルアーを誤穿刺しようとしても、オスルアーが保護シール1を突き破る可能性が更に低減する。第2に、周辺領域14の粘着層22を構成する粘着剤が、開口143内の弁体110の表面に付着する可能性が低減する。
【0058】
本発明では、主要部11(タブ15を除く)の大きさに制限はない。例えば、主要部11が天面142より大きくてもよい。但し、好ましくは、本実施形態1のように、主要部11をメスコネクタ100の天面142に貼付したとき、主要部11は天面142から半径方向外側にはみ出さない(
図4A及び
図4B参照)。本実施形態1とは異なり、主要部11が天面142からはみ出すと、天面142からはみ出した主要部11(周辺領域14)の粘着層22にゴミ等の異物が付着し、粘着層22や天面142が不衛生になりやすい。本実施形態1では、主要部11をメスコネクタ100の天面142に貼付したとき、主要部11(周辺領域14)の粘着層22が外界に露出されないので、粘着層22にゴミ等の異物が付着する可能性が低い。本実施形態1では、天面142の、メスコネクタ100の軸に沿って見た正面視形状は円形である。主要部11は天面142の径と同じかこれより小さな径を有する円形である。
【0059】
本発明では、補強領域13は周辺領域14より高強度に構成される。高強度の補強領域13の構成に制限はない。例えば、補強領域13を、周辺領域14より高強度の材料で構成し、当該補強領域13に、これと同一厚さの環状の周辺領域14を二色成形等の方法により一体化させてもよい。この場合、主要部11は、その全領域にわたって一定厚さに構成される。但し、好ましくは、本実施形態1のように、補強領域13は、周辺領域14より厚く構成される。これにより、周辺領域14より高強度の補強領域13を簡単に構成することができる。
【0060】
本発明では、補強領域13を、本実施形態1のように基材シート20に基材層21とは別部材の補強層23を積層することにより構成するのではなく、基材層21を補強領域13において厚くすることにより補強領域13を構成してもよい。あるいは、本実施形態1とは異なり、補強層を、基材シート20のメスコネクタ100に対向する面とは反対側の面に粘着剤を介して積層して補強領域13を構成してもよい。但し、好ましくは、本実施形態1のように、基材シート20の粘着層22上に、基材シート20とは別部材の補強層23が設けられる。これにより、基材シート20に単に補強層23を積層するだけで、周辺領域14より高強度の補強領域13を簡単に構成することができる。また、補強領域13の弁体110に対向する面を非粘着性にすることが容易である。補強層23は、基材シート20(または基材層21)に比べて、高強度でも低強度でもよい。基材シート20(または基材層21)に、基材シート20より低強度の補強層23が積層されていても、当該補強層23が積層された領域は、補強層23が積層されていない周辺領域14より高強度であるから、本発明の補強領域として機能しうる。補強層23と基材シート20との間に別の層が介在していてもよく、また、補強層23の基材シート20とは反対側の面に別の層が設けられていてもよい。これらのいずれの場合においても、当該別の層は、周辺領域14より高強度である補強領域13を形成しているから、本発明の補強層の一部を構成している見なすことができる。
【0061】
なお、補強領域13において、基材シート20のメスコネクタ100に対向する面とは反対側の面に、補強層23とは別の補強層(第2補強層)を粘着剤を介して積層して、補強領域13の強度を向上させてもよい。
【0062】
本発明において、保護シールを構成する層に制限はない。但し、好ましくは、本実施形態1のように、一定の厚さを有する基材層21と、基材層21の片面の全面に一定の厚さで設けられた粘着層22とを有する基材シート20が、保護シール1の全領域にわたって延びている。かかる好ましい構成によれば、補強領域13は、補強層23を粘着層22上に設けることで簡単に構成することができる。同様に、タブ15の非粘着領域19は、非粘着層29を粘着層22上に設けることで簡単に構成することができる。補強層23及び非粘着層29が設けられていない粘着層22は露出されるから、補強領域13の周囲に、粘着性の周辺領域14を簡単に形成することができる。したがって、本実施形態1の保護シール1は、構造が簡単であり、容易に製造することができる。
【0063】
本発明の保護シールは、タブ15を備えておらず、天面142に貼付される主要部11のみで構成されていてもよい。但し、好ましくは、本実施形態1のように、保護シール1は、主要部11から突出したタブ15を備える。タブ15は、保護シール1をメスコネクタ100に貼付したり、メスコネクタ100から剥離したりする際に、作業者が保護シールを掴むための「取っ手」として利用することができる。これは、以下の効果を奏する。第1に、メスコネクタ100に対する保護シール1の貼付及び剥離を容易にする。第2に、作業者の指が主要部11(特にそのメスコネクタ100に対向する側の面)に触れる可能性が低下するので、主要部11を介してメスコネクタ100の弁体110及び天面142が細菌で汚染される可能性が低下する。
【0064】
本発明では、タブ15には、非粘着領域19が設けられていなくてもよい。即ち、タブ15のメスコネクタ100に対向する面の全領域にわたって粘着層22が露出されていてもよい。但し、好ましくは、本実施形態1のように、タブ15のメスコネクタ100に対向する面に、非粘着領域19が設けられている。かかる好ましい構成は、以下の効果を奏する。第1に、保護シール1をメスコネクタ100に貼付したり、メスコネクタ100から剥離したりする際に、作業者は非粘着領域19にて保護シール1を掴むことができる。指に粘着層22が粘着しないので、メスコネクタ100に対する保護シール1の貼付及び剥離が容易である。第2に、保護シール1をメスコネクタ100に貼付したとき、非粘着領域19をメスコネクタ100に貼付することはできない(
図4A参照)。このため、保護シール1をメスコネクタ100から剥離する際には、タブ15を指で容易に摘まむことができる。
【0065】
非粘着領域19は、タブ15の全領域に設けてもよいし、タブ15の一部のみに設けてもよい。非粘着領域19をタブ15の一部のみに設ける場合、非粘着領域19を、本実施形態1のように、タブ15の先端を含む領域(先端領域)に設けることが好ましい。かかる好ましい構成によれば、保護シール1をメスコネクタ100に貼付したとき、非粘着領域19が設けられたタブ15の先端領域はメスコネクタ100に貼付されない。このため、タブ15を指で容易に摘まむことができる。
【0066】
本発明では、非粘着領域19の構成に制限はなく、例えば、非粘着領域19では、基材層21上に粘着層22が形成されていなくてもよい。但し、好ましくは、本実施形態1のように、非粘着領域19は、非粘着層29を粘着層22上に設けることで構成される。かかる構成は、非粘着領域19が設けられた保護シール1の製造を容易にするのに有利である。
【0067】
タブ15の形状は任意である。本実施形態1のタブ15は、主要部11の中心から半径方向に延びる直線を挟み且つこれに平行な一対の直線と当該一対の直線をつなぐ半円とで構成された形状を有しているが、本発明のタブの形状はこれに限定されない。例えば、タブ15の把持性を向上させるために、タブ15の先端(主要部11から遠い端)に拡幅した部分が設けられていてもよい。
【0068】
非粘着領域19が設けられたタブ15の数は、1つに限定されず、2以上であってもよい。この場合、2以上のタブ15の形状や大きさは同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0069】
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2にかかる保護シール2の斜視図である。保護シール2は、主要部11の外周端から半径方向に沿って外向きに突出した一対のタブ(第2タブ)17を備える点で、実施形態1の保護シール1と異なる。一対のタブ17は、主要部11の中心に対して対称位置に配置されている。より詳細には、一対のタブ17を結ぶ方向は、主要部11の中心とタブ(第1タブ)15とを結ぶ方向に対して垂直である。タブ15と異なり、タブ17には非粘着領域19は設けられていない。タブ17のメスコネクタ100に対向する側の面の全領域において粘着層22が露出されている。
【0070】
図6は、保護シール2をメスコネクタ100に貼付した状態を示した斜視図である。メスコネクタ100は、実施形態1で説明したメスコネクタ100(
図2A及び
図2B参照)と同じものである。
図6を、実施形態1で説明した
図4Aと比較すれば分かるように、保護シール2のタブ17が、下方に折り曲げられて、メスコネクタ100の外周面に貼付されている。タブ17は、メスコネクタ100の外周面に設けられた係合溝127(
図2A参照)の少なくとも一部を塞いでいる。
【0071】
タブ17の効果を以下に説明する。
【0072】
図7Aは、メスコネクタ100に接続されるオスコネクタ200の斜視図である。
図7Bは、オスコネクタ200の、オスコネクタ200の軸(図示せず)を含む面に沿った断面斜視図である。オスコネクタ200は、まっすぐに延びた細長い棒状のオスルアー210と、オスルアー210を取り囲むフード220とを備える。オスルアー210は、中空の略円筒形状を有している。フード220は、全体として略円筒形状を有している。フード220は、オスルアー210を取り囲むように、オスルアー210と同軸に、オスルアー210から半径方向に離間している。フード220の内周面には一対の係合突起(係合構造)227(
図7A及び
図7Bではただ1つの係合突起227のみが見える)が、オスコネクタ200の軸(またはオスルアー210)に対して対称に設けられている。係合突起227は、フード220の内周面からオスルアー210に向かって突出している。オスコネクタ200の上側(フード220とは反対側)には、略円筒形状の接続部230が設けられている。オスルアー210の内腔と接続部230の内腔とは、流路235を介して連通されている。接続部230には、図示しないオスプラグが接続される。オスプラグは、例えば柔軟なチューブの終端に設けられていてもよい。チューブは、液体(例えば血液、薬液、生理食塩水等)が流れる流路を構成してもよい。あるいは、オスプラグは、シリンジの筒先に設けられていてもよい。
【0073】
オスコネクタ200は、本発明の保護シールが貼付されていないメスコネクタ100(
図2A及び
図2B参照)に対して繰り返し接続及び分離することができる。オスコネクタ200をメスコネクタ100に接続するとき、オスルアー210はメスコネクタ100の開口143に挿入され、メスコネクタ100はオスコネクタ200のフード220内に挿入され、係合突起227はメスコネクタ100の係合溝127(特にその案内部128)に挿入される。オスコネクタ200をメスコネクタ100に対して回転させながら、オスルアー210を開口143に更に深く挿入する。係合突起227は係合溝127の案内部128内を下降する。オスルアー210が栓体110を変形させてスリット111を開かせたとき、係合突起227は案内部128の最深部(または最下部)に到達する。その後、オスコネクタ200をメスコネクタ100に対して更に回転させると、係合突起227は係止部129へ移動する。係合突起227は係止部129に軸方向に係合するので、軸方向の張力が加えられてもオスコネクタ200がメスコネクタ100から意図せずに分離するのが防止される。このように、メスコネクタ100の係合溝127とオスコネクタ200の係合突起227とは、メスコネクタ100とオスコネクタ200との接続状態を安定的に維持するための「ロック機構」として機能する。
【0074】
上記から分かるように、作業者がオスコネクタ200をメスコネクタ100に接続するとき、オスコネクタ200の係合突起227がメスコネクタ100の係合溝127に入るように、オスコネクタ200をメスコネクタ100に対して軸周りの回転方向に位置合わせをする必要がある。このとき、
図6のように係合溝127の少なくとも一部がタブ17で塞がれていると、作業者は、メスコネクタ100に保護シール2が貼付されていることに気付き、接続作業を中断する。したがって、本実施形態2の保護シール2は、保護シール2に気付かずにメスコネクタ100にオスコネクタ200を強引に接続しようとしてオスルアー210で保護シール2を誤穿刺してしまうのを防止するのに有利である。
【0075】
また、万が一作業者が保護シール2に気付かなかったとしても、オスコネクタ200の係合突起227がメスコネクタ100の係合溝127に進入するのを、タブ17が防止する。この点からも、保護シール2は、オスルアー210で保護シール2を誤穿刺してしまうのを防止するのに有利である。
【0076】
タブ17は、係合溝127の少なくとも一部(例えば案内部128及び係止部129のうちのいずれか一方のみ)を塞いでいれば、オスルアー210による誤穿刺を防止することが可能である。但し、好ましくはタブ17が案内部128を塞ぐように、更に好ましくは
図6に示すようにタブ17が係合溝127の上方に向いた開放端(上端)を塞ぐように、保護シール2をメスコネクタ100に貼付することが好ましい。
【0077】
なお、メスコネクタとオスコネクタとの接続状態を安定的に維持するための、互いに係合し合う係合溝と係合構造(係合突起)とからなる「ロック機構」は、公知である。本実施形態2のメスコネクタ100に設けられた係合溝127は、特許文献3のメスコネクタに設けられたものと概略同じ構造を有している。但し、メスコネクタの係合溝はこれに限定されない。本実施形態2の保護シール2は、例えば係合溝として螺旋溝(または雄ネジ)を備えたメスコネクタ(例えば特許文献4参照)にも適用可能である。
【0078】
本実施形態2の保護シール2は、メスコネクタ100の係合溝127を塞ぐために2つのタブ17を備えていたが、本発明においてタブ17の数はこれに限定されない。タブ17の数は、係合溝の数に応じて、または、これとは無関係に、任意に設定することができる。タブ17の位置についても、同様に、本実施形態2に限定されず任意に設定することができる。メスコネクタが複数の係合溝を有する場合、複数の係合溝のうちの少なくとも1つの係合溝を保護シールのタブ17で塞げればよい。タブ17の形状も、本実施形態2に限定されず任意である。
【0079】
本実施形態2では、タブ17のメスコネクタ100に対向する側の面の全領域が粘着性を有している。これは、タブ17をメスコネクタ100の外周面にしっかりと貼付するのに有利である。但し、本発明はこれに限定されない。例えば、タブ17のメスコネクタに対向する側の面の一部に非粘着領域が設けられていてもよい。例えば、タブ17の先端(主要部11から遠い側の端)を含む領域(先端領域)に、タブ15の非粘着領域19と同様の非粘着領域を設けてもよい。タブ17の非粘着領域は、タブ17をメスコネクタ100から剥離するのを容易にする。
【0080】
本実施形態2の保護シール2がタブ15を備えていなくてもよい。この場合、タブ17を、メスコネクタ100に対して保護シール2を貼付及び剥離する際に作業者が保護シール2を掴むための「取っ手」として利用してもよい。
【0081】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態2にも適宜適用される。
【0082】
(実施形態3)
図8Aは、本発明の実施形態3にかかる保護シール3の斜視図である。
図8Bは、保護シール3の断面図である。
図8Bでは、図面を簡単化するために、基材シート20を、基材層21と粘着層22(
図1C参照)とを区別せずに単一層のシートとして示している。保護シール3は、補強領域13に突起24が設けられている点で、実施形態1の保護シール1と異なる。突起24は、補強層23(または補強領域13)の円形の外周端に沿った、低背の円筒形状を有する環状のリブである。突起24の高さ(軸方向寸法)は、制限されないが、好ましくは周方向に一定である。環状の突起24の内径は、制限されないが、好ましくはメスコネクタ100の天面142に形成された開口143(
図2A及び
図2B参照)の内径と同じかこれより大きい。本実施形態3では、突起24と補強層23とが、同一材料を用いて全体が一部品として同時に一体的に形成されている。但し、本発明の突起24はこれに限定されず、補強層23とは別に形成された突起24が接着剤等を用いて補強層23に固定されていてもよい。
【0083】
図示を省略するが、保護シール3は、実施形態1の保護シール1と同様にメスコネクタ100(
図2A及び
図2B参照)に貼付される(
図4A及び
図4B参照)。保護シール3がメスコネクタ100に貼付されたとき、突起24は、メスコネクタ100の天面142に軸方向に当接する。このため、突起24は、突起24で囲まれた補強領域13(または補強層23)を、開口143内に露出した弁体110からより大きく離間させる。例えば、周辺領域14の粘着層22を天面142に密着させるために主要部11をメスコネクタ100に向かって指で押さえても、補強領域13(または補強層23)が弁体110に接触する可能性が低い。また、メスコネクタ100に保護シール3が貼付されていることに気付かずにオスルアーを主要部11に押し付けても、補強領域13(または補強層23)が弁体110に接触する可能性が低い。仮に補強領域13(または補強層23)の表面にゴミ等の異物が付着していたり、補強領域13(または補強層23)の表面が細菌で汚染されていたりしても、弁体110に異物や細菌が転着する可能性は低い。したがって、その後、保護シール3をメスコネクタ100から剥離してメスコネクタ100にオスルアーを接続しても、メスコネクタ100内に異物や細菌が混入する可能性は低い。
【0084】
本実施形態3では、環状の突起24が補強層23(または補強領域13)上に設けられていたが、本発明の突起はこれに限定されない。例えば、補強層23とは別に形成された環状の突起が、その内側に補強層23(または補強領域13)が収納されるように、基材シート20の粘着層22上に設けられていてもよい。この場合であっても、当該環状の突起は、保護シール3をメスコネクタ100に貼付したとき補強領域13をメスコネクタ100の弁体110から離間させることができる。
【0085】
本実施形態3の突起24は、周方向に連続する環状のリブであったが、本発明の突起はこれに限定されない。例えば、複数の突起が、円形の補強領域13(または補強層23)と同心の円に沿って離散的に設けられていてもよい。
【0086】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。実施形態1の説明が、本実施形態3にも適宜適用される。本実施形態3で説明した、補強領域13を弁体110から離間させることができる突起を、実施形態2の保護シールに適用することができる。
【0087】
本発明の保護シールは、スリットが形成された自閉式の弁体を備えた任意のメスコネクタに貼付することができる。上記の実施形態1~3のメスコネクタ100は、柔軟なチューブの終端やシリンジの筒先などに設けられうるように構成されているが、本発明の保護シールが貼付されるメスコネクタはこれに限定されない。メスコネクタは、例えば特許文献1や特許文献4の
図2に記載されたような、液体が流れるチューブの途中に設けられる、いわゆる混注ポートであってもよく、または、特許文献4の
図7Aに記載されたような、三方活栓に設けられたメスコネクタであってもよい。あるいは、メスコネクタは、液体が貯留される容器のポートを構成していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、スリットが形成された自閉式の弁体を備えたメスコネクタが使用される任意の分野に利用することができる。本発明の保護シールは、制限されないが、医療用メスコネクタ、特に輸液や血液などのため流路であって、薬剤被曝や細菌感染を防止する必要がある閉鎖系の流路を構成するメスコネクタに適用されることが好ましい。
【符号の説明】
【0089】
1,2,3 保護シール
11 主要部
13 補強領域
14 周辺領域
15 タブ(第1タブ)
17 タブ(第2タブ)
19 非粘着領域
20 基材シート
21 基材層
22 粘着層
23 補強層
24 突起
29 非粘着層
100 メスコネクタ
110 弁体
111 スリット
127 係合溝
128 案内部
129 係止部
141 天板
142 天面
143 開口
200 オスコネクタ
210 オスルアー
227 係合突起(係合構造)