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特開2023-182396高周波信号伝送装置、及び配線基板とコネクタの電気的接続方法
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  • 特開-高周波信号伝送装置、及び配線基板とコネクタの電気的接続方法 図1
  • 特開-高周波信号伝送装置、及び配線基板とコネクタの電気的接続方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182396
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】高周波信号伝送装置、及び配線基板とコネクタの電気的接続方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6471 20110101AFI20231219BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20231219BHJP
【FI】
H01R13/6471
H01R12/71
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095975
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下山 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】米沢 章
(72)【発明者】
【氏名】高平 浩司
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FB01
5E021FC20
5E021LA06
5E223AB58
5E223AB65
5E223AB67
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223CD02
5E223DA05
5E223DB11
5E223DB25
5E223EA02
(57)【要約】
【課題】配線基板のグランドコンタクトパッドに対してコネクタのグランドコンタクト端子が当接する形態において配線基板に加えてコネクタを含む装置全体の高周波信号伝送特性を改善する余地がある。
【解決手段】コネクタ4のグランドコンタクト端子46のアーム部42bのコンタクト部b3は、FPC2がコネクタ4に電気的に接続される時、第1貫通電極28の直上で第1貫通電極28を被覆するグランドコンタクトパッドP2の被覆部58の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは被覆部58の外周近傍でグランドコンタクトパッドP2に当接するように位置付けられる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号コンタクト端子及び複数のグランドコンタクト端子を含む複数のコンタクト端子が規則的に配列されたコンタクト端子群がインシュレータにより支持されたコネクタと、
複数の信号コンタクトパッド、複数のグランドコンタクトパッド、及び1以上のグランド層が少なくとも一方のケーブル端に形成された配線基板にして、前記1以上のグランド層が、当該配線基板の誘電体層を貫通する少なくとも一つの第1貫通電極を介して前記グランドコンタクトパッドに電気的に接続された配線基板を備え、
前記グランドコンタクト端子は、前記グランドコンタクトパッドに対してコンタクト部にて局所的に当接するように屈曲したアーム部を有し、
前記アーム部の前記コンタクト部は、前記配線基板が前記コネクタに電気的に接続される時、(i)前記第1貫通電極の直上で前記第1貫通電極を被覆する前記グランドコンタクトパッドの被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)前記被覆部の外周近傍で前記グランドコンタクトパッドに当接するように位置付けられる、高周波信号伝送装置。
【請求項2】
前記コンタクト端子群は、2つの前記信号コンタクト端子が2つの前記グランドコンタクト端子により挟まれた単位配列を含み、
前記コネクタの幅方向で隣接する前記単位配列に含まれる2つの隣接した前記グランドコンタクト端子は、各々、(i)少なくとも一つの共通の前記被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)前記少なくとも一つの共通の前記被覆部の外周近傍で前記グランドコンタクトパッドに当接するように位置付けられる、請求項1に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項3】
高周波帯域においてリターンロス及び/又はインサーションロスに係るリップルが低減される、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項4】
前記配線基板が前記コネクタに電気的に接続される時、前記第1貫通電極は、前記アーム部の前記コンタクト部と比較して前記アーム部の自由端から離れる方向にオフセットして位置付けられる、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項5】
前記グランドコンタクトパッドと同層に形成されたグランド線を前記グランド層に電気的に接続するべく前記誘電体層を貫通する複数の第2貫通電極が前記第1貫通電極と同列に前記配線基板の長手方向に所定間隔を空けて配列され、
前記第1貫通電極とこれに直に隣接する前記第2貫通電極の間隔は、前記複数の第2貫通電極の前記所定間隔とは異なる、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項6】
前記第1貫通電極が円柱又は円錐台状の形状を有し、前記アーム部が、前記被覆部の外周の接線方向に延びる、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項7】
前記複数の信号及びグランドコンタクトパッドは、前記信号コンタクトパッドのペアが2つの前記グランドコンタクトパッドにより挟まれた単位配列を形成するように前記配線基板の幅方向に配列され、前記配線基板の幅方向で隣接する前記信号コンタクトパッドのペアの間に一つの前記グランドコンタクトパッドが設けられる、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項8】
前記配線基板は、各々が2つの信号線から成る複数の差動信号線と、前記配線基板の幅方向において各差動信号線を挟むようにその両側に形成された複数のグランド線を有し、前記配線基板の幅方向において隣接する前記差動信号線の間には一つの前記グランド線が設けられる、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項9】
前記グランド層との電気的な接続のために一つの前記グランドコンタクトパッドに対して一つの前記第1貫通電極が割り当てられる、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項10】
前記1以上のグランド層は、各々が前記配線基板の長手方向に延びる複数のグランド層を含み、前記複数のグランドコンタクトパッドが、前記複数のグランド層に対して前記第1貫通電極を介して個別に電気的に接続される、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項11】
前記配線基板は、前記複数のグランドコンタクトパッドと同層に形成された複数のグランド線を更に含み、前記複数のグランド線の各グランド線は、前記複数のグランド層の各グランド層に対して前記誘電体層を貫通する複数の第2貫通電極を介して電気的に接続される、請求項10に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項12】
前記配線基板の前記ケーブル端を支持すると共に前記コネクタに対して機械的に連結されるアダプタを更に備え、前記コネクタと前記アダプタの機械的な連結によって前記コネクタにおいて前記ケーブル端が所定位置に位置決めされる、請求項1又は2に記載の高周波信号伝送装置。
【請求項13】
複数の信号コンタクト端子及び複数のグランドコンタクト端子を含む複数のコンタクト端子が規則的に配列されたコンタクト端子群がインシュレータにより支持されたコネクタと配線基板の電気的接続方法であって、
前記配線基板の少なくとも一方のケーブル端には、複数の信号コンタクトパッド、複数のグランドコンタクトパッド、及び1以上のグランド層が形成され、前記1以上のグランド層が、誘電体層を貫通する少なくとも一つの第1貫通電極を介して前記グランドコンタクトパッドに電気的に接続され、
前記方法は、(i)前記第1貫通電極の直上で前記第1貫通電極を被覆する前記グランドコンタクトパッドの被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)前記被覆部の外周近傍で前記グランドコンタクトパッドに当接するように前記グランドコンタクト端子のコンタクト部を位置付ける工程を含む、配線基板とコネクタの電気的接続方法。
【請求項14】
前記コンタクト端子群は、2つの前記信号コンタクト端子が2つの前記グランドコンタクト端子により挟まれた複数の単位配列を含み、
前記コネクタの幅方向で隣接する前記単位配列に含まれる2つの隣接した前記グランドコンタクト端子は、各々、(i)少なくとも一つの共通の前記被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)前記少なくとも一つの共通の前記被覆部の外周近傍で前記グランドコンタクトパッドに当接するように位置付けられる、請求項13に記載の配線基板とコネクタの電気的接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高周波信号伝送装置、及び配線基板とコネクタの電気的接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インピーダンスマッチングが良好な高速伝送用FPCが開示されている。特には、ベースの一面において高速伝送路とグラウンドパターンが形成される。このベースの一面上に誘電体シートを介して第1グランド層が積層される。ベースの他方の面には第2グランド層が積層される。上述のグラウンドパターンがスルーホールを介して第1及び第2グランド層に電気的に接続される。特には、同文献の図5には、FPCの端部の断面構成が図示されている。
【0003】
特許文献2にも、コンタクトホールを介して表裏のグランドラインが電気的に接続した構成が開示されている(同文献の図1及び図2参照)。特許文献3にはアダプタを用いてフレキシブルケーブルとコネクタを連結することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-234500号公報
【特許文献2】特許第5580994号公報
【特許文献3】特許第6721845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配線基板のグランドコンタクトパッドに対してコネクタのグランドコンタクト端子が当接する形態において配線基板に加えてコネクタを含む装置全体の高周波信号伝送特性を改善する余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る高周波信号伝送装置は、複数の信号コンタクト端子及び複数のグランドコンタクト端子を含む複数のコンタクト端子が規則的に配列されたコンタクト端子群がインシュレータにより支持されたコネクタと、複数の信号コンタクトパッド、複数のグランドコンタクトパッド、及び1以上のグランド層が少なくとも一方のケーブル端に形成された配線基板にして、1以上のグランド層が、当該配線基板の誘電体層を貫通する少なくとも一つの第1貫通電極を介してグランドコンタクトパッドに電気的に接続された配線基板を含む。グランドコンタクト端子は、グランドコンタクトパッドに対してコンタクト部にて局所的に当接するように屈曲したアーム部を有する。アーム部のコンタクト部は、配線基板がコネクタに電気的に接続される時、(i)第1貫通電極の直上で第1貫通電極を被覆するグランドコンタクトパッドの被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)被覆部の外周近傍でグランドコンタクトパッドに当接するように位置付けられる。
【0007】
幾つかの実施形態においては、コンタクト端子群は、2つの信号コンタクト端子が2つのグランドコンタクト端子により挟まれた単位配列を含む。コネクタの幅方向で隣接する単位配列に含まれる2つの隣接したグランドコンタクト端子は、各々、(i)少なくとも一つの共通の被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)少なくとも一つの共通の被覆部の外周近傍でグランドコンタクトパッドに当接するように位置付けられる。
【0008】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、高周波帯域(例えば、20~25GHz)においてリターンロス及び/又はインサーションロスに係るリップルが低減される。
【0009】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、配線基板がコネクタに電気的に接続される時、第1貫通電極は、アーム部のコンタクト部と比較してアーム部の自由端から離れる方向にオフセットして位置付けられる。
【0010】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、グランドコンタクトパッドと同層に形成されたグランド線をグランド層に電気的に接続するべく誘電体層を貫通する複数の第2貫通電極が第1貫通電極と同列に配線基板の長手方向に所定間隔を空けて配列され、第1貫通電極とこれに直に隣接する第2貫通電極の間隔は、複数の第2貫通電極の所定間隔とは異なる。
【0011】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、第1貫通電極が円柱又は円錐台状の形状を有し、アーム部が、被覆部の外周の接線方向に延びる。
【0012】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、複数の信号及びグランドコンタクトパッドは、信号コンタクトパッドのペアが2つのグランドコンタクトパッドにより挟まれた単位配列を形成するように配線基板の幅方向に配列され、配線基板の幅方向で隣接する信号コンタクトパッドのペアの間に一つのグランドコンタクトパッドが設けられる。
【0013】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、配線基板は、各々が2つの信号線から成る複数の差動信号線と、配線基板の幅方向において各差動信号線を挟むようにその両側に形成された複数のグランド線を有し、配線基板の幅方向において隣接する差動信号線の間には一つのグランド線が設けられる。
【0014】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、グランド層との電気的な接続のために一つのグランドコンタクトパッドに対して一つの第1貫通電極が割り当てられる。
【0015】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、1以上のグランド層は、各々が配線基板の長手方向に延びる複数のグランド層を含み、複数のグランドコンタクトパッドが、複数のグランド層に対して第1貫通電極を介して個別に電気的に接続される。
【0016】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、配線基板は、複数のグランドコンタクトパッドと同層に形成された複数のグランド線を更に含み、複数のグランド線の各グランド線は、複数のグランド層の各グランド層に対して誘電体層を貫通する複数の第2貫通電極を介して電気的に接続される。
【0017】
上述の形態の任意の組み合わせにおいて、高周波信号伝送装置は、配線基板のケーブル端を支持すると共にコネクタに対して機械的に連結されるアダプタを更に含み、コネクタとアダプタの機械的な連結によってコネクタにおいてケーブル端が所定位置に位置決めされる。
【0018】
本開示の別態様に係るコネクタと配線基板の電気的接続方法は、複数の信号コンタクト端子及び複数のグランドコンタクト端子を含む複数のコンタクト端子が規則的に配列されたコンタクト端子群がインシュレータにより支持されたコネクタと配線基板の電気的接続方法であって、
配線基板の少なくとも一方のケーブル端には、複数の信号コンタクトパッド、複数のグランドコンタクトパッド、及び1以上のグランド層が形成され、1以上のグランド層が、誘電体層を貫通する少なくとも一つの第1貫通電極を介してグランドコンタクトパッドに電気的に接続され、
方法は、(i)第1貫通電極の直上で第1貫通電極を被覆するグランドコンタクトパッドの被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)被覆部の外周近傍でグランドコンタクトパッドに当接するようにグランドコンタクト端子のコンタクト部を位置付ける工程を含む。
【0019】
幾つかの実施形態においては、コンタクト端子群は、2つの信号コンタクト端子が2つのグランドコンタクト端子により挟まれた複数の単位配列を含む。コネクタの幅方向で隣接する単位配列に含まれる2つの隣接したグランドコンタクト端子は、各々、(i)少なくとも一つの共通の被覆部の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは(ii)少なくとも一つの共通の被覆部の外周近傍でグランドコンタクトパッドに当接するように位置付けられる。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一態様によれば、配線基板に加えてコネクタを含む装置全体の高周波信号伝送特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の一態様に係る高周波信号伝送装置の概略的な斜視図であり、高周波信号伝送装置を介して通信可能に接続される基板も併せて図示される。
図2】FPCの一方のケーブル端がコネクタから外された概略的な分解斜視図である。
図3図2の反対側の斜視図である。
図4】アダプタ付きのFPCの概略的な上面図であり、FPCの各ケーブル端が各アダプタにより支持されている。
図5】FPCの概略的な部分上面図である。グランドコンタクトパッドの幅中央に第1貫通電極が位置し、グランド線の幅中央に第2貫通電極が位置する。
図6図5の二点鎖線VI-VIに沿うFPCの概略的な部分断面模式図である。
図7】コネクタの概略的な側面図である。
図8】コネクタの概略的な上面図であり、FPCが挿入される挿入空間の開口が図示される。
図9】FPCのアダプタがコネクタに機械的に連結し、FPCとコネクタが電気的に接続された状態を示す概略図であり、コネクタのコンタクト端子がFPCのコンタクトパッドに当接した状態が部分断面に示されている。
図10】FPCのアダプタがコネクタに機械的に連結し、FPCとコネクタが電気的に接続された状態において、コネクタの信号及びグランドコンタクト端子が、各々、FPCの信号及びグランドコンタクトパッドに当接した状態を示す部分概略図である。
図11】リターンロスの改善を示すシミュレーション結果である。
図12】インサーションロスの改善を示すシミュレーション結果である。
図13】ニアエンドクロストークの改善を示すシミュレーション結果である。
図14】ファーエンドクロストークの改善を示すシミュレーション結果である。
図15】差動信号線の間に2つのグランド線が形成された別例に係る概略図である。
図16】グランド層に関して変更が加えられた別例に係る模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る様々な実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された高周波信号伝送装置及びこれに関する方法にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な高周波信号伝送装置及びこれに関する方法にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0023】
図1乃至図4を参照すると、高周波信号伝送装置1は、FPC(Flexible Printed Circuit)2、アダプタ3a,3b(総じてアダプタ3)、及びコネクタ4a,4b(総じてコネクタ4)を有する。FPC2のケーブル端2a,2bは、各々、(例えば、アダプタ3a,3bとコネクタ4a,4bの機械的連結に基づいて)コネクタ4a,4bに電気的に接続される。コネクタ4a,4bが異なる基板9a,9b又は同一基板の異なる基板部分に実装されて電気的に接続される。このようにして高周波信号伝送装置1を介した基板間通信が可能になる。
【0024】
FPC2は、配線基板の非限定の一例であるフレキシブルケーブルである。FPC2は、様々な形状を持つことができ、所定幅で一方向に延びる他、蛇行して延び、又は、S字又はL字を描くように延びることもできる。FPC2は、その延在方向において変化する幅を有することもでき、例えば、幅狭部、幅広部、テーパー部等を含むことができる。
【0025】
FPC2は、そのケーブル端2a,2bの間に高周波信号伝送用の1以上の伝送路7を有する。典型的には、複数の伝送路7がFPC2の幅方向に配列される。後述の説明から分かるように、FPC2の各ケーブル端2a,2bには、複数の信号コンタクトパッドP1、複数のグランドコンタクトパッドP2、及び1以上のグランド層27が形成される(図4乃至図6参照)。1以上のグランド層27は、誘電体層50を貫通する少なくとも一つの第1貫通電極28を介してグランドコンタクトパッドP2に電気的に接続されている。なお、FPC2の幅方向で隣接する伝送路7の間にスリットを形成することもできる。
【0026】
アダプタ3a,3bは、各々、FPC2のケーブル端2a,2bに対して取り付けられてケーブル端2a,2bを支持する。アダプタ3は、FPC2のケーブル端を受容するように形状付けられた本体31と、FPC2のケーブル端を支持するように本体31から突出した突出部32と、突出部32を挟むようにその両側に設けられた一対のアライメント突起33を有する。アダプタ3は、FPC2と同じ方向に幅広に形状付けられる。FPC2に対してアダプタ3が取り付けられた時、アライメント突起33の間にFPC2の信号及びグランドコンタクトパッドP1,P2が配列される。アダプタ3a,3bがコネクタ4a,4bに機械的に連結され、コネクタ4a,4bにおいてFPC2のケーブル端2a,2bが所定位置に位置決めされる。
【0027】
コネクタ4は、少なくともFPC2のケーブル端2a,2bが挿入される挿入空間44を持つように形状付けられたインシュレータ41と、インシュレータ41により支持されたコンタクト端子42(信号及びグランドコンタクト端子を総じてコンタクト端子と呼ぶ場合もある)の配列(即ち、コンタクト端子群)と、コネクタ4を基板9に固定するための固定金具43を有する。インシュレータ41は、FPC2と同じ方向に幅広に形状付けられる。コンタクト端子42の配列においてコンタクト端子42(詳細には、信号及びグランドコンタクト端子)が規則的に配列される。より具体的には、コンタクト端子42の配列方向(典型的には、コネクタ4の幅方向)において隣接する同一又は異類のコンタクト端子42が同一又は異なるピッチで配列される。インシュレータ41によるコンタクト端子42の支持の態様は、インサート成形、圧入、接着といった様々な方法で達成可能である。なお、インシュレータ41の挿入空間44には、FPC2のケーブル端2a,2bに加えてアダプタ3の突出部32及びアライメント突起33が挿入される。この目的のためにインシュレータ41の挿入空間44が適切に形状付けられる。
【0028】
コネクタ4のインシュレータ41の外面にロック突起49を設け、アダプタ3に対してロック突起49によりロックされる被ロック部39を設けることができる(図3参照)。これによりコネクタ4からアダプタ3が意図せずに外れてしまうことを阻止可能であると共に、コネクタ4に対するアダプタ3の位置精度が高められる。ロック突起をアダプタ3に設け、被ロック部をコネクタ4に設けることもできる。ロック突起と被ロック部のロック箇所を2箇所以上に設けることもできる。尚、アダプタ3を用いることなくFPC2を直接的にコネクタ4に接続することもできる。
【0029】
図4及び図5を参照すると、FPC2の幅方向に複数の伝送路7が配列される。伝送路7は、差動信号が伝送される2つの信号線25a,25bから成る差動信号線25と、FPC2の幅方向で差動信号線25を挟むように差動信号線25の両側に形成された一対のグランド線26を含む。差動信号線25(信号線25a,25b)は、ケーブル端2aとケーブル端2bの間に亘って形成される。同様、一対のグランド線26は、ケーブル端2aとケーブル端2bの間に亘って形成される。
【0030】
FPC2のケーブル端2a,2bには、信号コンタクトパッドP1a,P1b(総じて、信号コンタクトパッドP1)とグランドコンタクトパッドP2の配列が形成される。信号及びグランドコンタクトパッドP1,P2は、信号コンタクトパッドP1a,P1bのペアが2つのグランドコンタクトパッドP2により挟まれた単位配列PUを形成するようにFPC2の幅方向に配列され得る。なお、信号コンタクトパッドP1a,P1bは、各々、差動信号線25の信号線25a,25bと同層にそれと連結して形成される。信号コンタクトパッドP1a,P1bは、信号コンタクト端子との接触のために後述の第1カバーレイ53により被覆されない領域を有する。グランドコンタクトパッドP2は、グランド線26と同層にそれと連結して形成される。グランドコンタクトパッドP2は、グランドコンタクト端子との接触のために後述の第1カバーレイ53により被覆されない領域を有する。信号コンタクトパッドを信号線の露出部と見なし、グランドコンタクトパッドをグランド線の露出部と見なすこともできる。
【0031】
幾つかの場合、FPC2の幅方向で隣接する差動信号線25の間には一つのグランド線26が設けられる。FPC2の幅方向で隣接する差動信号線25は、これらの間に形成された共通のグランド線26に電磁的に結合される。同様、FPC2の幅方向で隣接する信号コンタクトパッドP1a,P1bのペアの間に一つのグランドコンタクトパッドP2が設けられる。FPC2の幅方向で隣接する信号コンタクトパッドP1a,P1bのペアは、これらの間に形成された共通のグランドコンタクトパッドP2に電磁的に結合される。上述の場合、グランド線26及び/又はグランドコンタクトパッドP2を幅広に形成することができ、後述の貫通電極をより安価な方法で形成することが促進される。
【0032】
FPC2は、図6から分かるように、第1面50p及び第2面50qにより層厚が定められた誘電体層50、誘電体層50の第1面50pに形成された第1配線層51、誘電体層50の第2面50qに形成された第2配線層52、第1配線層51を介して誘電体層50の第1面50p上に積層された第1カバーレイ53、第2配線層52を介して誘電体層50の第2面50q上に積層された第2カバーレイ54、及び補強板55を有する。なお、補強板55は、アダプタ3への組立のために設けられ、FPC2の全長において形成されていない。
【0033】
誘電体層50は、所定の比誘電率を有する材料から成り、例えば、液晶ポリマーから成る。第1配線層51は、金属箔がパターニングされた配線層であり得る。第1配線層51には、上述の差動信号線25とグランド線26が形成される。第2配線層52は、金属箔がパターニングされた配線層であり得る。第2配線層52には、誘電体層50を貫通する第1貫通電極28(バンプとも呼ぶ)を介してグランドコンタクトパッドP2に電気的に接続された1以上のグランド層27が形成される。
【0034】
図5及び図6に示すようにグランド層27は信号コンタクトパッドP1の直下を除き第2配線層52の全域を被覆するベタ層として形成される。
【0035】
図5及び図6に示すようにグランドコンタクトパッドP2とグランド層27が第1貫通電極28を介して電気的に接続されて伝送路7のグランド電位が安定化される。同様、グランド線26とグランド層27が第1貫通電極28とは別の第2貫通電極29を介して電気的に接続されて伝送路7のグランド電位が安定化される。グランド電位の安定によって高周波信号伝送特性が高められる。なお、第1貫通電極28及び第2貫通電極29は、同一の任意の導電性材料(例えば、銅又は銀といった金属、又は銅又は銀といった金属粒子が混入した導電性樹脂)から成るが、前者がグランドコンタクトパッドP2のために設けられ、後者がグランド線26のために設けられているため区別されている。言うまでも無く、一つのグランドコンタクトパッドP2に対して2以上の第1貫通電極28を割り当てることができる。
【0036】
グランド線26をグランド層27に電気的に接続するべく誘電体層50を貫通する複数の第2貫通電極29が第1貫通電極28と同列(又は同一直線上)にFPC2の長手方向に所定間隔を空けて配列され得る。図5の参照から分かるように、第1貫通電極28とこれに直に隣接する第2貫通電極29の間隔は、第2貫通電極29の所定間隔とは異なり得る(例えば、これ未満である)。これにより、後述の如く第1貫通電極28とグランドコンタクト端子46の意図したアライメントを促進することができる。グランドコンタクトパッドP2に対して第1貫通電極28を割り当てることで第2貫通電極29のピッチとは無関係に後述のようにリップルの発生が抑制される。
【0037】
図7及び図8を参照してコネクタ4について更に説明すると、複数の信号コンタクト端子45及び複数のグランドコンタクト端子46がインシュレータ41により(例えば、一定又は異なる配列ピッチで)支持されている。典型的には、信号コンタクト端子45及びグランドコンタクト端子46は、FPC2の片面に配置された信号コンタクトパッドP1及びグランドコンタクトパッドP2に対して個別に接触可能に設けられるが、別の配置態様もとり得る。高周波信号伝送のため、幾つかの場合、2つの信号コンタクト端子45a,45b(総じて、信号コンタクト端子45)が2つのグランドコンタクト端子46の間で挟まれた単位配列6がコネクタ4の幅方向に配列される。
【0038】
コネクタ4は、コンタクト端子42に関して一定又は異なる(例えば、2以上の)配列ピッチを持ち得る。前者の場合、コンタクト端子42の配列において全コンタクト端子42(信号及びグランドコンタクト端子45,46の全て)が一定のピッチで配置される(図10において、D1=E1=F1を満足する)。後者の場合、直に隣接する信号コンタクト端子間のピッチ(図10のF1)、直に隣接するグランドコンタクト端子同士間のピッチ(図10のD1)、及び直に隣接する信号コンタクト端子とグランドコンタクト端子間のピッチが異なるように設定される。なお、ピッチは、コンタクト端子42の配列方向(典型的には、コネクタ4の幅方向に等しい)における各コンタクト端子42の中心線の間隔として定義される(尚、中心線は、配列方向に直交する平面に存在する)。
【0039】
コンタクト端子42(信号コンタクト端子45及びグランドコンタクト端子46)は、典型的には、1以上の箇所で屈曲した金属板であり、コネクタ4のインシュレータ41に片持ち梁状に支持され、弾性的に変位可能である(図9参照)。コネクタ4にアダプタ3が機械的に連結されていない時、コンタクト端子42が初期位置を取る。コネクタ4にアダプタ3が機械的に連結されると、FPC2によってコンタクト端子42が押されて変位する。
【0040】
コンタクト端子42は、コンタクトパッドに対してコンタクト部にて局所的に当接するように屈曲したアーム部を有し得る(図9参照)。詳細には、信号コンタクト端子45は、信号コンタクトパッドP1に対してコンタクト部にて局所的に当接するように屈曲したアーム部を有し得る。同様、グランドコンタクト端子46は、グランドコンタクトパッドP2に対してコンタクト部b3にて局所的に当接するように屈曲したアーム部を有し得る。
【0041】
より具体的には、コンタクト端子42は、インシュレータ41に固定された固定部42a、固定部42aからインシュレータ41の挿入空間44の開口に向けて延びるアーム部42b、及び基板9上のコンタクト(不図示)に(例えば、リフロー半田付け等で)電気的に接続される接続部42cを有し得る。アーム部42bは、固定部42aとアーム部42bの自由端の間に信号又はグランドコンタクトパッドP1,P2に当接するコンタクト部b3を有するべく屈曲された形状を持つ。詳細には、アーム部42bは、第1傾斜部b1と第2傾斜部b2を有し、これらの間にコンタクト部b3が形成される。第1傾斜部b1は、固定部42aから傾斜して延びる。第2傾斜部b2は、第1傾斜部b1の傾斜方向とは反対側に傾斜して延びるスタブである。このようにして第1傾斜部b1と第2傾斜部b2の間にコンタクト部b3が凸状に形成される。アーム部42bの自由端は、コンタクト部b3とは反対側の第2傾斜部b2の一端にある。
【0042】
本実施形態においては、グランドコンタクト端子46のアーム部42bのコンタクト部b3は、FPC2がコネクタ4に電気的に接続される時、第1貫通電極28の直上で第1貫通電極28を被覆するグランドコンタクトパッドP2の被覆部58の表面に少なくとも部分的に当接し、又はその被覆部58の外周近傍でグランドコンタクトパッドP2に当接するように位置付けられる(図10参照)。これにより高周波信号伝送特性の改善を図ることができる(例えば、図11乃至図14参照)。コンタクト部b3が被覆部58の外周近傍に位置する時のコンタクト部b3と被覆部58の外周の間の距離(例えば、最小距離)は、高周波信号伝送特性の改善を生じさせる距離であり、具体的には、20~25GHzの高周波帯域においてリターンロス及び/又はインサーションロスに係るリップルの低減を生じさせる距離である。なお、上述のグランドコンタクトパッドP2の被覆部58は、図10の他、図6にも図示されている。被覆部58は、グランドコンタクトパッドP2の一部分であり、従って、被覆部58の外周は、被覆部58の範囲を定める仮想面(典型的には円筒面)に等しく、又は、これに照らして理解される。
【0043】
FPC2がコネクタ4に電気的に接続される時、第1貫通電極28は、アーム部42bのコンタクト部b3と比較してアーム部42bの自由端から離れる方向にオフセットして位置付けられ得る。この場合、リターンロス及び/又はインサーションロスに係るリップルの低減を更に促進することが期待できる。
【0044】
コンタクト端子42の狭ピッチ化が、上述の目的の達成のために有利であり得る。幾つかの場合、配列ピッチが、0.4mm~1.0mmの範囲内にあり、より好適には、0.5mm~0.8mmの範囲内にある。また、コンタクト部と被覆部の外周との隙間は、0mmを超え、かつ0.4mm以下の任意の値であり得る。僅かな距離であっても高周波信号にとっては線路になり得るが、0.4mm以下の距離とすることで同様の高周波信号伝送特性の改善が見られる。コンタクト端子42の狭ピッチ化の追加又は代替として、第1貫通電極28を幅広又は拡径に形成することも有利であり得る(尚、安価な貫通電極の形成方法も同時に採用可能になる)。
【0045】
アーム部42bのコンタクト部b3が、グランドコンタクトパッドP2の被覆部58の外周に隣接して位置付けられる時、コンタクト部b3が被覆部58の外周に接することなく、コンタクト部b3と被覆部58の外周の間に僅かな隙間が形成されることが想定される。コンタクト部b3と被覆部58の外周の間で許容される隙間の寸法は、好ましくは、0mmを超え、かつ0.4mm以下の任意の値である。なお、製造誤差等の影響から、グランドコンタクト端子46のコンタクト部と被覆部58の位置にバラツキがあることも想定される。例えば、あるグランドコンタクト端子46のコンタクト部が被覆部58に当接し、別のグランドコンタクト端子46のコンタクト部が、被覆部58の外周に接し、別のグランドコンタクト端子46のコンタクト部が被覆部58の外周から僅かな間隔を空けて位置付けられ得る。
【0046】
グランドコンタクト端子46のアーム部42bは、FPC2がコネクタ4に電気的に接続される時、第1貫通電極28の直上で第1貫通電極28を被覆するグランドコンタクトパッドP2の被覆部58の外周に関する接線方向に延び得る(図10参照)。典型的には、アーム部42bの延在方向は、コネクタ4に対するFPC2の挿入方向又はFPC2の長手方向に等しい。
【0047】
コネクタ4の幅方向で隣接する単位配列6に含まれる2つの隣接したグランドコンタクト端子46は、各々、少なくとも一つの共通の被覆部58の表面に少なくとも部分的に当接し、若しくは少なくとも一つの共通の被覆部58の外周近傍でグランドコンタクトパッドP2に当接するように位置付けられる(図10参照)。換言すれば、コンタクト端子42のGSSG配列の隣接ペアにおいて直に隣接するグランドコンタクト端子46のペア(即ち、「GSSGGSSG」の中央のGGペア)が共通の被覆部58(或いは、共通の第1貫通電極28)に関して上述のように位置付けられる。これにより少数の第1貫通電極28で高周波信号伝送特性の向上を図ることができ、例えば、安価な貫通電極の形成方法の採用が促進される。また、最適には、グランド層27との電気的な接続のために一つのグランドコンタクトパッドP2に対して一つの第1貫通電極28が割り当てられる。
【0048】
第1貫通電極28と第2貫通電極29がFPC2の長手方向に沿って同列(又は同一直線上)に配置され、また、グランドコンタクト端子46のコンタクト部b3が第1貫通電極28(及びグランドコンタクトパッドP2の被覆部58)の直上に配置されない。グランドコンタクトパッドP2の幅中心の位置に第1貫通電極28を形成し、グランド線26の幅中心の位置に第2貫通電極29を形成しやすくなり、FPC2の幅方向における貫通電極の位置精度に関してFPC2をより安価な方法で製造することができる。
【0049】
第1貫通電極28が円柱又は円錐台状の形状を有する場合、被覆部58が円形の外周を有し、アーム部42bが、その外周の接線方向に延び得る。但し、第1貫通電極28が三角形、四角形、五角形といった多角形の外周を持つように形成することも可能である。
【0050】
図10に示すように、信号コンタクトパッドP1a,P1bは、FPC2の長手方向に延びるに応じてパッド幅が変位する幅変動部61を有し得る。幅変動部61は、幅狭部62と幅広部63の間に設けられ、これらの間でそのパッド幅が連続的に変化している。
【0051】
図11乃至図14に示すシミュレーション結果において、実線が、図1乃至図10に示した実施例に係る高周波信号伝送特性を示し、破線が、図10に示した第1貫通電極28がない比較例に係る高周波信号伝送特性を示す。図11に示すように、リターンロスが改善された。図12に示すように、インサーションロスが改善された。図13に示すように、ニアエンドクロストークが改善された。図14に示すように、ファーエンドクロストークが改善された。特には、図11乃至図14から分かるように、実施例においては、20~25GHz付近においてリップルが抑えられた。
【0052】
バンプビルドアップ工法によりFPC2を製造することができる。バンプビルドアップ工法においては、第1銅箔の第1面上に多数のバンプを形成し、バンプが形成された第1金属箔の第1面上に誘電体層(例えば、液晶ポリマー)と第2金属箔をこの順で積層する。その後、熱プレスによって第1金属箔、誘電体層、及び第2金属箔を密着させる。この積層体において第1金属箔と第2金属箔がバンプ由来の貫通電極を介して電気的に接続される。第1及び第2金属箔の一方が第1配線層51として用いられ、その他方が第2配線層52として用いられる。金属箔のパターニング(例えば、選択的エッチング)により信号線、グランド線、グランド層、及びコンタクトパッドを形成可能である。金属箔として銅箔を使用することができる。FPC2について他の製法も採用可能である。
【0053】
コネクタ4のインシュレータ41は、射出成形装置を用いてプラスチック材料から製造可能である。コンタクト端子42は、金属板の加工(打ち抜き加工、曲げ加工)により製造可能である。インサート成形、圧入、接着等の方法でインシュレータ41に対してコンタクト端子42を取り付けて支持させることができる。
【0054】
図10においては、差動信号線25の間に1つのグランド線26が形成され、信号コンタクトパッドP1a,P1bのペアの間に一つのグランドコンタクトパッドP2が設けられていたが、これに限られない。図15に示すように、差動信号線25の間に2つのグランド線26を形成し、信号コンタクトパッドP1a,P1bのペアの間に2つのグランドコンタクトパッドP2を設けることもできる。換言すれば、一つのグランドコンタクト端子46に対して一つのグランドコンタクトパッドP2(又はグランド線26)を割り当てることもできる。
【0055】
図10においては、グランドコンタクト端子46のアーム部42bは、グランドコンタクトパッドP2の被覆部58に重畳しない態様でその外周に関する接線方向に延びていたが、これに限られない。図15に示すように、グランドコンタクト端子46のアーム部42bは、グランドコンタクトパッドP2の被覆部58の一部に重畳する態様でその外周に関する接線方向に延びることができる。なお、図10の場合、アーム部42b及びコンタクト部b3が第1貫通電極28の直上に配置されない。図15の場合、アーム部42b及びコンタクト部b3が第1貫通電極28の直上に部分的に配置される。グランドコンタクト端子46のアーム部42bをより幅広にすることで、アーム部42bが第1貫通電極28の直上の被覆部58の全体に重畳することも可能である。
【0056】
図16に示す形態では、伝送路7が差動コプレーナ線路とマイクロストリップ線路の組み合わせとして構成され、グランド層27はコンタクトパッドP1の直下を除き伝送路7に対向するように形成され得る。典型的には、第2配線層52には複数のグランド層27が形成され、その数は、伝送路7の数に等しい。各伝送路に対応のグランド線26及びグランドコンタクトパッドP2とグランド層27を電気的に接続する事によりFPC2の伝送路7間でグランド電位を区分又は非共通化することができ、高周波信号伝送特性が高められ得る(例えば、クロストークが低減される)。また、このような形態においても第1貫通電極28とグランドコンタクト端子46のアライメントを上述のように設定することによって上述と同様の効果が得られることが見込まれる。
【0057】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態及び各特徴に対して様々な変更を加えることができる。配線基板は、可撓性を有する必要はなく、フレキシブルケーブルに限定されるべきではない。例えば、カードエッジコネクタの配線基板に本願に開示の様々な特徴を適用することができる。差動信号伝送用の信号コンタクト端子対の間に設けられるグランドコンタクト端子の本数は2本に限らず1本であっても良い。コネクタからアダプタを省略しても同様の効果が期待できる。
【符号の説明】
【0058】
1 :高周波信号伝送装置
2 :FPC
2a :ケーブル端
2b :ケーブル端
3 :アダプタ
4 :コネクタ

25 :差動信号線
25a :信号線
25b :信号線
26 :グランド線
27 :グランド層
28 :第1貫通電極
29 :第2貫通電極

41 :インシュレータ
42 :コンタクト端子
45 :信号コンタクト端子
46 :グランドコンタクト端子
b3 :コンタクト部

50 :誘電体層
58 :被覆部

P1 :信号コンタクトパッド
P2 :グランドコンタクトパッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16