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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182409
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】スロープ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 3/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096003
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 正明
(72)【発明者】
【氏名】前田 秀旭
(72)【発明者】
【氏名】岡部 晋宜
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AD01
3D022AE08
3D022AE15
(57)【要約】
【課題】スロープ装置に関して、格納部の蓋部材が意図せず開くことを抑制する。
【解決手段】スロープパネル11を格納部13から展開することができるスロープ装置10は、格納部13の開口を塞ぐ蓋部材31と、蓋部材31を移動させる四節リンク機構であるリンク機構40と、を備えている。リンク機構40は、蓋部材31を閉位置に移動させる方向に付勢する付勢部材を備えている。リンク機構40は、蓋部材31が閉位置にある状態では、蓋部材31に固定されている第2リンク部材42が格納部13に固定されている第1リンク部材41よりも上方に位置するように構成されている。蓋部材31が閉位置にある状態では、第3リンク部材43と第2リンク部材42とを連結する可動軸53が第3リンク部材43と第1リンク部材41とを連結する基部軸51よりも格納部13に近い位置に配置されるように、第3リンク部材43が傾斜した姿勢にある。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格納部に格納されているスロープパネルを前記格納部の開口を通過させて展開することができるように構成されているものであり、前記開口を塞ぐ蓋部材と、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開く開位置との間で前記蓋部材を移動させるリンク機構と、を備えるスロープ装置であって、
前記リンク機構は、
四節リンク機構であり、前記格納部に固定されている第1リンク部材と、前記蓋部材に固定されている第2リンク部材と、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とを連結する二つの連結リンク部材と、各リンク部材を連結する軸と、前記蓋部材を前記閉位置に移動させる方向に付勢する付勢力を付与する付勢部材と、を備え、
前記軸によって規定される回転軸が前記スロープパネルの幅方向に延びるように配置されており、前記格納部から展開される前記スロープパネルによって押し出されることで前記付勢力に抗して前記蓋部材を前記開位置に移動させる動作をするものであり、
前記蓋部材が前記閉位置にある状態では、前記第2リンク部材が前記第1リンク部材よりも上方に位置するように構成されており、且つ、前記蓋部材が前記閉位置にある状態では、前記連結リンク部材の一方に関して、前記軸のうち前記連結リンク部材と前記第2リンク部材とを連結する可動軸が前記軸のうち前記連結リンク部材と前記第1リンク部材とを連結する基部軸よりも前記スロープパネルの格納方向において前記格納部に近い位置に配置されるように、当該連結リンク部材が傾斜した姿勢にある
スロープ装置。
【請求項2】
前記蓋部材において、前記閉位置にある場合に前記開口を向いている面を内面として、
前記リンク機構は、前記蓋部材を前記閉位置と前記開位置との間で移動させる過程において、前記内面を上方に向けることなく前記蓋部材を移動させる
請求項1に記載のスロープ装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、前記スロープパネルが前記格納部から展開される際に前記スロープパネルと接触する接触部を備え、
前記接触部は、前記格納部から展開される前記スロープパネルによって押されることで、前記スロープパネルが移動する力を前記付勢力に抗する力として伝達させる
請求項1または請求項2に記載のスロープ装置。
【請求項4】
前記接触部は、いずれか一つの前記連結リンク部材と一体に成形されている
請求項3に記載のスロープ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格納部から展開されるスロープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スロープの取り出し時に開く蓋として機能する開閉部を備える車両用スロープが開示されている。開閉部は、蝶番によって支持されていることで、回転して開くように構成されている。
【0003】
スロープが格納されている状態において、特許文献1に開示されている開閉部のような蓋は、車両の搭乗者によって踏まれることがある。蓋が踏まれることによって蓋が開くと、たとえば搭乗者が足を踏み外すおそれがある。
【0004】
特許文献1には、スロープの不使用時には開閉部を閉じてロックする構造を車両用スロープが備えていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-46211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
開閉部をロックする構造を適用している特許文献1に開示されているような車両用スロープによれば、蓋が意図せず開くことを抑制できる。しかし、蓋がロックされていることで、蓋のロックを解除しなければスロープを使用することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのスロープ装置の各態様を記載する。
[態様1]格納部に格納されているスロープパネルを前記格納部の開口を通過させて展開することができるように構成されているものであり、前記開口を塞ぐ蓋部材と、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開く開位置との間で前記蓋部材を移動させるリンク機構と、を備えるスロープ装置であって、前記リンク機構は、四節リンク機構であり、前記格納部に固定されている第1リンク部材と、前記蓋部材に固定されている第2リンク部材と、前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とを連結する二つの連結リンク部材と、各リンク部材を連結する軸と、前記蓋部材を前記閉位置に移動させる方向に付勢する付勢力を付与する付勢部材と、を備え、前記軸によって規定される回転軸が前記スロープパネルの幅方向に延びるように配置されており、前記格納部から展開される前記スロープパネルによって押し出されることで前記付勢力に抗して前記蓋部材を前記開位置に移動させる動作をするものであり、前記蓋部材が前記閉位置にある状態では、前記第2リンク部材が前記第1リンク部材よりも上方に位置するように構成されており、且つ、前記蓋部材が前記閉位置にある状態では、前記連結リンク部材の一方に関して、前記軸のうち前記連結リンク部材と前記第2リンク部材とを連結する可動軸が前記軸のうち前記連結リンク部材と前記第1リンク部材とを連結する基部軸よりも前記スロープパネルの格納方向において前記格納部に近い位置に配置されるように、当該連結リンク部材が傾斜した姿勢にあるスロープ装置。
【0008】
上記構成では、蓋部材が閉位置にある状態では可動軸が基部軸よりも格納部側に位置するように連結リンク部材が傾斜している。このため、蓋部材を上方から踏みつけるような力が蓋部材に加えられた場合には、リンク機構では、当該力は蓋部材を閉位置に移動させる方向の力として伝達される。すなわち、蓋部材を上方から踏みつけるような力が蓋部材に加えられた場合に蓋部材が開位置に向かって移動することを抑制できる。
【0009】
このように上記構成によれば、意図せずに蓋部材が開くことを抑制できる構成を、蓋部材をロックする機構によることなく実現できる。このため、蓋部材のロックを解除するという操作は、当然ながら発生しない。
【0010】
[態様2]前記蓋部材において、前記閉位置にある場合に前記開口を向いている面を内面として、前記リンク機構は、前記蓋部材を前記閉位置と前記開位置との間で移動させる過程において、前記内面を上方に向けることなく前記蓋部材を移動させる[態様1]に記載のスロープ装置。
【0011】
上記構成によれば、蓋部材の内面を露出させることなく閉位置と開位置との間で蓋部材を移動させることができる。これによって、閉位置から移動した状態の蓋部材の内側に異物が入り込むことを抑制できる。
【0012】
[態様3]前記リンク機構は、前記スロープパネルが前記格納部から展開される際に前記スロープパネルと接触する接触部を備え、前記接触部は、前記格納部から展開される前記スロープパネルによって押されることで、前記スロープパネルが移動する力を前記付勢力に抗する力として伝達させる[態様1]または[態様2]に記載のスロープ装置。
【0013】
上記構成では、格納部から展開されるスロープパネルによって接触部が押されることで、蓋部材を閉位置から開位置まで移動させる力が伝達される。このため、蓋部材を移動させる動力を発生させるための機構を別途備えることなく、蓋部材を移動させることができる。
【0014】
[態様4]前記接触部は、いずれか一つの前記連結リンク部材と一体に成形されている[態様3]に記載のスロープ装置。
上記構成によれば、一つの連結リンク部材をスロープパネルによって押すことで蓋部材を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、スロープ装置の一実施形態を搭載する車両を示す斜視図である。
図2図2は、同スロープ装置を示す模式図である。
図3図3は、同スロープ装置の蓋部材が閉位置にある状態を示す側面図である。
図4図4は、同スロープ装置の蓋部材を移動させるリンク機構を示す斜視図である。
図5図5は、同スロープ装置におけるリンク機構の動きを説明する模式図である。
図6図6は、同スロープ装置の蓋部材が閉位置と開位置との間にある状態を示す側面図である。
図7図7は、同スロープ装置の蓋部材が開位置にある状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、スロープ装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、スロープ装置10は、たとえば車両90に搭載される。図1には、一例として、車両前後方向に延在する四角略箱状の車体91を有している車両90を示す。車体91の側面には、車両90の搭乗者の乗降口となるドア開口部92が設けられている。ドア開口部92には、車両前後方向、相反する方向に開閉動作する一対のスライドドア93f,93rが設けられている。図1には、スライドドア93f,93rが開いた状態の車両90を例示している。
【0017】
車両前方側のスライドドア93fは、車両前方側に移動することにより開作動し、車両後方側に移動することにより閉作動する。一方、車両後方側のスライドドア93rは、車両後方側に移動することにより開作動し、車両前方側に移動することにより閉作動する。さらに、各スライドドア93f,93rは、それぞれ、図示しないドア用アクチュエータの駆動力に基づき開閉動作するパワースライドドア装置としての構成を有している。車両90は、各スライドドア93f,93rが連動するかたちで、ドア開口部92を開閉する構成になっている。
【0018】
車両90は、ドア開口部92の下端に位置するロッカーパネル95を備えていてもよい。
スロープ装置10は、スロープパネル11を格納する格納部13を備えている。格納部13は、車両90の車体91におけるドア開口部92の下方に位置している。より詳しくは、ドア開口部92の下方に格納部13が配置されており、格納部13よりも下方にロッカーパネル95が配置されている。スロープ装置10は、車両90のドア開口部92が開状態にある場合において、ドア開口部92から車外に延びるスロープパネル11を展開することができる。図1には、スロープパネル11が格納部13から展開されている状態を示している。車両90の搭乗者は、スロープパネル11が形成する傾斜路を利用することができる。たとえば、搭乗者が車椅子やベビーカー、或いはキャリーケース等を保有している場合であっても、容易に、ドア開口部92から乗降することができる。
【0019】
図2は、格納部13にスロープパネル11が格納されている状態のスロープ装置10を示す。図2には、格納部13からスロープパネル11が展開される際にスロープパネル11が移動する方向である展開方向D1を示す矢印を表示している。たとえば、展開方向D1は、水平方向における一方向である。図2には、スロープパネル11が格納部13に格納される際にスロープパネル11が移動する方向である格納方向D2を示す矢印を表示している。格納方向D2は、展開方向D1とは反対の方向である。図2には、スロープパネル11の幅方向D3を示す矢印を表示している。一例として幅方向D3は、車両後方から車両前方に向かう方向と一致している。たとえば幅方向D3は、展開方向D1と直交している。
【0020】
格納部13は、開口13aを有している。たとえば格納部13は、開口13aが車両90のドア開口部92と同一方向に臨むように配置されている。
スロープ装置10は、格納部13に格納されているスロープパネル11を格納部13の開口13aを通過させて、スロープパネル11を車外に展開することができるように構成されている。スロープ装置10は、開口13aを通過させて、展開させたスロープパネル11を再び格納部13内に格納することができるように構成されている。
【0021】
スロープ装置10は、格納部13の外に展開されたスロープパネル11を支える構成を備えていてもよい。たとえば、スロープ装置10は、図7に示すようなローラー19を備えていてもよい。ローラー19は、幅方向D3に沿って延びる軸部材によって回転可能に支持されている。
【0022】
スロープ装置10が備えるスロープパネル11は、図3に示すように、展開方向D1における端部であるパネル先端部11fに取り付けられている突出部12を備えていてもよい。突出部12は、パネル先端部11fから展開方向D1に突出するように取り付けられる。
【0023】
<スロープパネルを展開および格納する構成>
スロープ装置10に関して、スロープパネル11を移動させることができる構成の一例について説明する。
【0024】
図2に示すように、スロープ装置10は、スロープパネル11の展開方向D1および格納方向D2に延びる一対のガイドレール14を備えている。言い換えれば、一対のガイドレール14は、格納部13の奥行き方向に延びるように配置されている。ガイドレール14は、格納部13に格納されているスロープパネル11の幅方向D3における一端と他端とを挟み込む態様で、略平行に配置されている。
【0025】
スロープ装置10は、一対の移動体24を備えている。移動体24は、各ガイドレール14に係合する状態で、それぞれ、その係合する各ガイドレール14の延伸方向に沿って摺動可能に設けられている。
【0026】
スロープ装置10は、一対の支持アーム15を備えている。支持アーム15は、スロープパネル11のパネル後端部11rに対して回動可能に連結されるとともに移動体24に対して回動可能に連結されている。これによって、各移動体24に連動して、スロープパネル11が展開方向D1および格納方向D2に移動することができる。
【0027】
スロープ装置10は、スロープパネル11に駆動力を付与するアクチュエータ20を備えている。アクチュエータ20は、たとえばモータ21を駆動源としている。アクチュエータ20は、各ガイドレール14の後端部14rよりも奥側において、格納部13内に配置されている。スロープ装置10は、ガイドレール14の延伸方向に沿って配索される一対の駆動ケーブル22を備えている。スロープ装置10は、各駆動ケーブル22を介して伝達されるアクチュエータ20の駆動力に基づいて、各移動体24が各ガイドレール14の延伸方向に沿って移動する構成になっている。
【0028】
具体的には、アクチュエータ20は、モータ21が発生する駆動力に基づき回転する駆動ギヤ23を有している。アクチュエータ20は、駆動ギヤ23を径方向に挟む二位置において各駆動ケーブル22が、それぞれ、駆動ギヤ23に対して噛合するように構成されている。すなわち、アクチュエータ20は、駆動ギヤ23が回転することによって、各駆動ケーブル22を各ガイドレール14の延伸方向に沿って摺動させる。スロープ装置10においては、各駆動ケーブル22の端末に移動体24がそれぞれ連結されている。このため、スロープ装置10は、各移動体24が、各駆動ケーブル22と一体に各ガイドレール14に案内される状態で、スロープパネル11の展開方向D1および格納方向D2に摺動する構成になっている。
【0029】
スロープ装置10において、スロープパネル11は、ガイドレール14に対する移動体24および支持アーム15の係合力に基づいて、略水平な姿勢が保持された状態で格納部13内に収容されている。スロープ装置10は、略水平な姿勢を保持したまま、ガイドレール14の延伸方向に沿って、移動体24および支持アーム15と一体にスロープパネル11が展開方向D1および格納方向D2に移動する構成となっている。
【0030】
スロープ装置10は、格納部13が設けられた車両90の側縁部から車幅方向外側に延出する態様で、スロープパネル11を車外に展開する。さらに、スロープ装置10においては、この状態で、移動体24とスロープパネル11との間に介在された支持アーム15が回動することによって、スロープパネル11のパネル後端部11rが持ち上がるように構成されていてもよい。この場合には、スロープ装置10は、車両フロア94にパネル後端部11rを近づける態様で、スロープパネル11が傾斜路を形成する構成になっている。図1に示すスロープパネル11は、このようにパネル後端部11rが持ち上げられた状態を例示している。
【0031】
<蓋部>
図2に示すように、スロープ装置10は、蓋部30を備えている。蓋部30は、蓋部材31と、リンク機構40と、によって構成されている。たとえば、蓋部30は、二つのリンク機構40を備えている。二つのリンク機構40は、幅方向D3に並んで配置されている。二つのリンク機構40は、互いに対称の構成を有している。以下では、一方のリンク機構40について説明して、他方のリンク機構40についての説明を省略する。
【0032】
蓋部材31は、格納部13の開口13aを塞ぐことができる。蓋部材31の一例は、図2および図3に示すように、蓋パネル32と、フレーム33と、によって構成されている。フレーム33は、リンク機構40に連結されている。蓋パネル32は、フレーム33を覆うようにフレーム33に取り付けられている。蓋パネル32において、開口13aを向いている面を内面32aという。
【0033】
リンク機構40は、開口13aを閉じる閉位置と開口13aを開く開位置との間で蓋部材31を移動させることができる。なお、開位置とは、たとえば、蓋部材31が最大の開度まで開いた位置である。図3および図4には、蓋部材31が閉位置にある状態のリンク機構40を示している。
【0034】
図3に示すように、蓋部30は、蓋部材31が閉位置にある状態において、ロッカーパネル95と蓋パネル32とが面一になるように構成されている。
リンク機構40の一例は、蓋部材31を閉位置と開位置との間で移動させる過程において、内面32aを上方に向けることなく蓋部材31を移動させる。具体的には、内面32aが上方を向くような角度に蓋部材31を回転させることなく蓋部材31を移動させる。
【0035】
<リンク機構>
リンク機構40について詳細に説明する。
リンク機構40は、クローズドループ構造の四節リンク機構である。
【0036】
図3および図4に示すように、リンク機構40は、第1リンク部材41、第2リンク部材42、第3リンク部材43および第4リンク部材44を備えている。
第1リンク部材41は、格納部13に固定されている。第2リンク部材42は、蓋部材31に固定されている。たとえば第2リンク部材42は、蓋部材31のフレーム33に固定されている。リンク機構40は、蓋部材31が閉位置にある状態では、第2リンク部材42が第1リンク部材41よりも鉛直方向における上方に位置するように構成されている。図3には、鉛直方向における上方である鉛直上方D4を示す矢印を表示している。図3には、鉛直方向における下方である鉛直下方D5を示す矢印を表示している。
【0037】
第3リンク部材43および第4リンク部材44は、第1リンク部材41と第2リンク部材42とを連結する連結リンク部材に対応する。第3リンク部材43は、第1リンク部材41における一方の端部と、第2リンク部材42における一方の端部と、を連結している。第4リンク部材44は、第1リンク部材41における他方の端部と、第2リンク部材42における他方の端部と、を連結している。
【0038】
リンク機構40は、各リンク部材を連結する軸を備えている。リンク機構40は、第1リンク部材41と第3リンク部材43とを連結する第1基部軸51を備えている。リンク機構40は、第1リンク部材41と第4リンク部材44とを連結する第2基部軸52を備えている。リンク機構40は、第2リンク部材42と第3リンク部材43とを連結する第1可動軸53を備えている。リンク機構40は、第2リンク部材42と第4リンク部材44とを連結する第2可動軸54を備えている。リンク機構40では、第1基部軸51の方が第2基部軸52よりも格納部13に近い位置に取り付けられている。リンク機構40では、第1可動軸53の方が第2可動軸54よりも格納部13に近い位置に取り付けられている。第1基部軸51、第2基部軸52、第1可動軸53および第2可動軸54は、図3に示すように、各軸によって規定される回転軸がスロープパネル11の幅方向D3に延びるように配置されている。
【0039】
リンク機構40では、蓋部材31が閉位置にある状態では、第1可動軸53が第1基部軸51よりも格納方向D2において格納部13に近い位置に配置されるように、第3リンク部材43が傾斜した姿勢にある。すなわち、第3リンク部材43は、鉛直方向を基準として、第1可動軸53が格納部13に近づくように傾いている。また、同様に、蓋部材31が閉位置にある状態では、第2可動軸54が第2基部軸52よりも格納方向D2において格納部13に近い位置に配置されるように、第4リンク部材44が傾斜した姿勢にある。
【0040】
図4を用いて、第3リンク部材43の一例について説明する。
第3リンク部材43は、第1リンク部材41および第2リンク部材42に連結されている第1アーム43aと、第1アーム43aと対になる第2アーム43bと、を備えている。第2アーム43bは、第1アーム43aに対して回転軸の軸線が延びる方向に間隔を置いて並んで配置されている。
【0041】
第1アーム43aと第2アーム43bとを連結する軸部材であり、第1基部軸51と同軸上にある第1シャフト45を、リンク機構40が備えている。第1アーム43aと第2アーム43bとを連結する軸部材であり、第1可動軸53と同軸上にある第2シャフト47をリンク機構40が備えている。
【0042】
リンク機構40は、付勢部材46を備えている。付勢部材46は、蓋部材31を閉位置に移動させる方向に付勢する付勢力を付与している。一例として、付勢部材46は、蓋部材31を閉位置に移動させる方向に付勢する付勢力を第3リンク部材43に対して加えるように取り付けられている。たとえば、付勢部材46は、コイルばねである。コイルばねの芯棒として第1シャフト45が挿入されている。コイルばねである付勢部材46の一端は、第3リンク部材43に取り付けられている。コイルばねである付勢部材46の他端は、第1リンク部材41に取り付けられている。このようにして、第3リンク部材43と付勢部材46と第1リンク部材41とによる蝶番構造をなしている。
【0043】
第3リンク部材43は、第1アーム43aおよび第2アーム43bと一体に成形されている接触部43cを備えている。接触部43cは、第1アーム43aにおける第1リンク部材41との連結部位と、第1アーム43aにおける第2リンク部材42との連結部位と、の間に接続されている。接触部43cは、第2アーム43bにおける第1リンク部材41との連結部位と、第2アーム43bにおける第2リンク部材42との連結部位と、の間に接続されている。
【0044】
接触部43cは、図3に示すように蓋部材31が閉位置にある状態において、スロープパネル11のパネル先端部11fに対向する位置に配置されている。接触部43cは、スロープパネル11が格納部13から展開される際にスロープパネル11と接触するように構成されている。接触部43cは、格納部13から展開されるスロープパネル11によって押されることで、スロープパネル11が展開方向D1に移動する力を、付勢部材46による付勢力に抗する力として伝達させることができる。なお、本実施形態のスロープ装置10では、スロープパネル11と接触部43cとの間に、パネル先端部11fから突出している突出部12が介在している。
【0045】
接触部43cの一例は、図3および図4に示すように蓋部材31が閉位置にある状態において、第1アーム43aおよび第2アーム43bに接続されている部分を基端として格納方向D2に突出するように形成されている。接触部43cは、先端が鉛直上方D4に向けて弧を描くように第1可動軸53に近づく形状である。言い換えれば、接触部43cは、格納方向D2に向かって突き出るように湾曲した円弧状である。
【0046】
接触部43cには、スロープパネル11のパネル先端部11fに対向する部分を被覆するカバー49が取り付けられていてもよい。すなわち、カバー49にスロープパネル11を接触させるようにしてもよい。より具体的にいえば、カバー49に突出部12を接触させるようにしてもよい。
【0047】
図4を用いて、第1リンク部材41の一例について説明する。
第1リンク部材41は、第3リンク部材43および第4リンク部材44に連結されている第1固定部41aと、第1固定部41aと対になる第2固定部41bと、を備えている。第1固定部41aおよび第2固定部41bには、第1シャフト45が取り付けられている。第1リンク部材41は、第1固定部41aおよび第2固定部41bと一体に成形されている基部41cを備えている。基部41cは、第1固定部41aにおける格納方向D2の先端と、第2固定部41bにおける格納方向D2の先端と、を接続している。基部41cが格納部13に固定されている。
【0048】
図4を用いて、第2リンク部材42の一例について説明する。
第2リンク部材42は、第3リンク部材43および第4リンク部材44に連結されている第1側壁部42aと、第1側壁部42aと対になる第2側壁部42bと、を備えている。第1側壁部42aおよび第2側壁部42bには、第2シャフト47が取り付けられている。第2リンク部材42は、第1側壁部42aおよび第2側壁部42bと一体に成形されている取付部42cを備えている。取付部42cは、第1側壁部42aにおける展開方向D1の先端と、第2側壁部42bにおける展開方向D1の先端と、を接続している。取付部42cに蓋部材31のフレーム33が取り付けられている。
【0049】
第4リンク部材44の一例について説明する。
図3および図4に示すように、第4リンク部材44は、第2基部軸52との連結部位を一端として、第2可動軸54との連結部位を他端とする棒状である。
【0050】
<リンク機構の動作>
図5を用いて、リンク機構40が閉位置と開位置との間で蓋部材31を移動させる動作について説明する。図5には、蓋部材31が閉位置にある状態のリンク機構40を実線で示す。図5には、蓋部材31が開位置にある状態のリンク機構40を二点鎖線で示す。図5には、蓋部材31が閉位置から開位置に移動する際に、第1可動軸53および第2可動軸54が回転運動する方向を示す矢印を表示している。
【0051】
図5では、以下のようにリンク機構40を模式的に示している。
第1リンク部材41上における第1基部軸51と第2基部軸52とを繋ぐ線分として第1リンクL1を表示している。第2リンク部材42上における第1可動軸53と第2可動軸54とを繋ぐ線分として第2リンクL2を表示している。
【0052】
第1基部軸51と第1可動軸53とを繋ぐ線分として第3リンクL3を表示している。第3リンクL3は、第3リンク部材43を模式的に示したものに対応する。第2基部軸52と第2可動軸54とを繋ぐ線分として第4リンクL4を表示している。第4リンクL4は、第4リンク部材44を模式的に示したものに対応する。
【0053】
たとえばリンク機構40は、平行リンク機構である。すなわち、第1リンクL1の長さと第2リンクL2の長さとが等しく、第3リンクL3の長さと第4リンクL4の長さとが等しい。
【0054】
図5に二点鎖線で示すように、開位置における第2リンクL2は、閉位置における第2リンクL2に対して、展開方向D1および鉛直下方D5に移動している。図5に示すように、リンク機構40は、第2リンクL2を平行に移動させることができる。すなわち、リンク機構40は、第2リンク部材42に固定されている蓋部材31を、閉位置と開位置との間で平行に移動させることができる。
【0055】
第2リンクL2の両端である第1可動軸53と第2可動軸54とを用いて、蓋部材31の動きをより具体的に説明する。リンク機構40では、第1基部軸51を回転中心とする円を描くように第1可動軸53が回転運動することができる。蓋部材31が閉位置から開位置に移動する際には、第1可動軸53は、図5に矢印で示すように図中の反時計回りに回転運動する。リンク機構40では、第2基部軸52を回転中心とする円を描くように第2可動軸54が回転運動することができる。蓋部材31が閉位置から開位置に移動する際には、第2可動軸54は、図5に矢印で示すように図中の反時計回りに回転運動する。なお、蓋部材31を開位置から閉位置の方向に移動する際には、第1可動軸53および第2可動軸54が図中の時計回りに回転運動することによって開位置に戻ることができる。
【0056】
リンク機構40は、格納部13から展開されるスロープパネル11によって第3リンク部材43が展開方向D1に押し出されることで、付勢部材46による付勢力に抗して蓋部材31を開位置に移動させる動作をするものである。すなわち、第3リンクL3は、いわゆる駆動リンクに対応している。その他、次のような対応関係があるといえる。第1リンクL1は、固定リンクに対応している。第2リンクL2は、中間リンクに対応している。第4リンクL4は、従動リンクに対応している。
【0057】
<本実施形態の作用>
本実施形態の作用を説明する。
図5図6および図7を用いて、蓋部材31が開位置に移動する際のリンク部材の動きを説明する。
【0058】
図6は、第3リンク部材43がスロープパネル11によって展開方向D1に押され始めた状態、すなわち蓋部材31が閉位置から移動し始めた状態を示す。第2リンク部材42が図5を用いて説明したような回転運動をすることで、蓋部材31は、ロッカーパネル95から離れるように、展開方向D1に移動することになる。閉位置から移動し始める蓋部材31は、鉛直上方D4に一旦持ち上げられながら展開方向D1に移動する。
【0059】
図7は、スロープパネル11が格納部13の外に展開された状態を示す。すなわち、蓋部材31が開位置に移動した状態を示す。第3リンク部材43は、図5を用いて説明した第3リンクL3のように、展開方向D1および鉛直下方D5に倒れ込むように回転している。このように倒れ込む第3リンク部材43が備える接触部43cは、弧を描くように形成されていることで、スロープパネル11が展開される過程でスロープパネル11における下方の面に接触するようになる。このようにスロープパネル11は、スロープパネル11と接触部43cとが接触する箇所を徐々にずらしながら、格納部13から展開される。接触部43cは、蓋部材31が開位置に移動した状態においては、図7に示すようにスロープパネル11を支えることができる。図7に示す例では、展開されたスロープパネル11は、接触部43cとローラー19とによって支えられている。
【0060】
スロープ装置10では、スロープパネル11を格納すると、展開されている状態のスロープパネル11から第3リンク部材43にかかっていた荷重が解消される。このため、付勢部材46による付勢力によって蓋部材31が閉位置に戻るように移動する。
【0061】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)スロープ装置10では、蓋部材31が閉位置にある状態では第1可動軸53が第1基部軸51よりも格納部13側に位置するように第3リンク部材43が傾斜している。すなわち、第3リンクL3が格納部13側に傾斜している。このように構成されているリンク機構40によって蓋部材31を閉位置から開位置に移動させるには、第3リンクL3が鉛直になる状態を経由する必要がある。すなわち、蓋部材31を鉛直方向における上方に一旦持ち上げる動作が必要になる。
【0062】
ここで、蓋部材31を鉛直方向における上方から踏みつけるような力が蓋部材31に加えられた場合には、リンク機構40では第3リンク部材43が傾斜していることで、当該力は蓋部材31を閉位置に移動させる方向の力として伝達される。すなわち、蓋部材31を上方から踏みつけるような力が蓋部材31に加えられた場合には、蓋部材31を閉位置から開位置に向けて移動させるための力とは逆方向の力が加わることになる。これによって、蓋部材31が踏まれたとしても、蓋部材31が開位置に向かって移動することを抑制できる。
【0063】
スロープ装置10によれば、蓋部材31をロックする機構を別途搭載することなく、意図せずに蓋部材31が開くことを抑制できる。意図せずに蓋部材31が開くことを抑制できる構成を、蓋部材31をロックする機構によることなく実現できるスロープ装置10によれば、蓋部材31のロックを解除するという操作を行う必要が生じない。
【0064】
(2)仮に、蓋部材31が開位置に移動する際に蓋部材31の内側が鉛直方向における上方を向くような場合には、蓋部材31の内側に異物が入り込むおそれがある。蓋部材31の内側に異物が入り込むことで、リンク機構40が異物を噛み込むおそれもある。
【0065】
この点、スロープ装置10によれば、蓋部材31を平行に移動させることができる。すなわち、蓋部材31が有する蓋パネル32の内面32aを露出させることなく閉位置と開位置との間で蓋部材31を移動させることができる。これによって、閉位置から移動した状態の蓋部材31の内側に異物が入り込むことを抑制できる。スロープ装置10によれば、リンク機構40への異物の噛み込みを抑制できる。
【0066】
(3)スロープ装置10では、格納部13から展開されるスロープパネル11によって接触部43cが押されることで、蓋部材31を閉位置から開位置まで移動させる力が伝達される。このため、蓋部材31を移動させる動力を発生させるための機構を別途備えることなく、蓋部材31を移動させることができる。
【0067】
(4)スロープ装置10によれば、第3リンク部材43をスロープパネル11によって押すことで蓋部材31を移動させることができる。このため、第3リンク部材43を駆動リンクとして機能させることができる。
【0068】
(5)スロープ装置10によれば、蓋部材31が踏まれたとしても蓋部材31が開くことがない。このため、蓋部材31が意図せず開くことによる踏み外しの発生を抑制できる。踏み外しを抑制できることで、蓋部材31およびリンク機構40によって構成される蓋部30に対して意図しない過大な負荷がかかることを抑制できる。
【0069】
(6)スロープ装置10によれば、蓋部材31を閉位置と開位置との間で移動させる際に、蓋部材31がロッカーパネル95に干渉することを抑制できる。
(7)接触部43cを有しているスロープ装置10では、展開方向D1に移動するスロープパネル11と蓋部材31とが接触しないように構成されている。仮に蓋部材31にスロープパネル11が接触すると、接触時の衝撃および摩擦等によって蓋部材31の意匠性が低下するおそれがある。この点、スロープ装置10によれば、蓋部材31の意匠性が低下することを抑制できる。
【0070】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
・上記実施形態では、第3リンク部材43が接触部43cを備える例を示した。これに替えて、第4リンク部材44がスロープパネル11との接触部を備えていてもよい。この場合には、第4リンクL4が駆動リンクに対応し、第3リンクL3が従動リンクに対応することになる。
【0072】
・上記実施形態では、スロープパネル11が接触部43cを展開方向D1に押すことで、スロープパネル11が展開方向D1に移動する力をリンク機構40に伝達するように構成した。スロープパネル11がリンク機構40に直接接触することは必須の構成ではない。
【0073】
たとえば、スロープ装置は、スロープパネル11が展開方向D1に移動する動力を、リンク機構40に機械的に伝達する伝達機構を備えていてもよい。たとえば、伝達機構は、スロープパネル11によって押される部材と、当該部材に連動して動くギヤの組み合わせによって構成することができる。こうした伝達機構を備えるスロープ装置によれば、スロープパネル11をリンク機構40に接触させることなく、スロープパネル11の展開に連動して蓋部材31を開位置に移動させることができる。
【0074】
・上記実施形態では、蓋部材31を閉位置と開位置との間で移動させる際に蓋部材31を平行に移動させるように構成したリンク機構40を例示した。蓋部材31を平行に移動させることは、必須の構成ではない。たとえば、蓋部材31の内側が上方を向かない範囲で、閉位置と開位置との間で蓋部材31の角度が変わってもよい。
【0075】
・リンク機構40が平行リンク機構であることは必須の構成ではない。リンク機構としては、蓋部材31が閉位置にある状態において、中間リンクが固定リンクよりも上方に位置しており、且つ、図5において例示した第3リンクL3のように、駆動リンクが傾斜していればよい。
【0076】
・上記実施形態では、二つのリンク機構40を備えるスロープ装置10を例示した。リンク機構40の数は、特に限定されない。スロープ装置としては、一つのリンク機構を備えていてもよいし、三つ以上のリンク機構を備えていてもよい。なお、複数のリンク機構は、それぞれが共通の構成を備えていることが好ましい。
【符号の説明】
【0077】
10…スロープ装置
11…スロープパネル
11f…パネル先端部
13…格納部
13a…開口
30…蓋部
31…蓋部材
32…蓋パネル
32a…内面
40…リンク機構
41…第1リンク部材
42…第2リンク部材
43…第3リンク部材
43c…接触部
44…第4リンク部材
46…付勢部材
51…第1基部軸
52…第2基部軸
53…第1可動軸
54…第2可動軸
D1…展開方向
D4…鉛直上方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7