(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182411
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】可搬式投光器
(51)【国際特許分類】
F21L 14/02 20060101AFI20231219BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231219BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231219BHJP
F21W 131/40 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
F21L14/02
F21S2/00 320
F21S2/00 360
F21Y115:10
F21W131:40
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096007
(22)【出願日】2022-06-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000104216
【氏名又は名称】株式会社カネコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】手塚 昌利
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】小山 愛
(57)【要約】
【課題】投光しているときに光路を調整しやすい可搬式投光器を提供する。
【解決手段】本発明の可搬式投光器は、本体、前方支持部材、後方支持部材、ハンドルを備える。本体は、光源部を前面に有し、ケーブルとの接続部を後面に有する。前方支持部材は、本体の前方上部に取り付けられる。後方支持部材は、本体の後方上部に取り付けられる。ハンドルは、前方支持部材と後方支持部材との間に取り付けられる。前方支持部材は、ハンドルの前方上部にカラビナ取付部を形成する。ハンドルは、本体側に複数の凹部を有する。複数の凹部の中の1つは、可搬式投光器の重心が真下に配置されたときに、光源部が水平方向を投光する位置である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬式投光器であって、
光源部を前面に有し、ケーブルとの接続部を後面に有する本体と、
前記本体の前方上部に取り付けられた前方支持部材と、
前記本体の後方上部に取り付けられた後方支持部材と、
前記前方支持部材と前記後方支持部材との間に取り付けられたハンドル
を備え、
前記前方支持部材は、前記ハンドルの前方上部にカラビナ取付部を形成し、
前記ハンドルは、前記本体側に複数の凹部を有し、
前記複数の凹部の中の1つは、当該可搬式投光器の重心が真下に配置されたときに、前記光源部が水平方向を投光する位置である
ことを特徴とする可搬式投光器。
【請求項2】
請求項1記載の可搬式投光器であって、
前記後方支持部材は、前記ハンドルの後方上部にカラビナ取付部を形成している
ことを特徴とする可搬式投光器。
【請求項3】
請求項1または2記載の可搬式投光器であって、
前記凹部の深さは、5mm以上である
ことを特徴とする可搬式投光器。
【請求項4】
請求項1または2記載の可搬式投光器であって、
前記凹部の表面には弾性材が配置されている
ことを特徴とする可搬式投光器。
【請求項5】
請求項1または2記載の可搬式投光器であって、
前記ハンドルは、カラビナ移動防止具も有している
ことを特徴とする可搬式投光器。
【請求項6】
請求項5記載の可搬式投光器であって、
前記カラビナ移動防止具は、前記ハンドルの凹部以外の部分の周長よりは自然長が短いリング状の弾性体であり、前記ハンドルの長手方向に移動させることが可能である
ことを特徴とする可搬式投光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に消防用に使用される可搬式投光器に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1の可搬式投光器、特許文献1の可搬式投光器が従来技術として知られている。非特許文献1の可搬式投光器は、光源部筐体の後方に設けたケーブル保護も兼ねたブラケット(後方支持部材)へカラビナを取り付けるか、もしくは前方に設けたブラケット(前方支持部材)にカラビナを取り付けることで、ハンドルを手で把持することなく、カラビナ取り付け位置を固定して携行できる。光路を下向きにしたい場合は後方部のブラケットへ、正面または上向きにしたい場合は前方部のブラケットへカラビナを取り付けることで、光路を変えることができる。特許文献1の可搬式投光器の場合は、ハンドルに1つ以上の貫通孔が形成されており、その貫通孔にカラビナを取り付けることができる。貫通孔が複数ある場合は、どの貫通孔にカラビナを通すかで光路の向きを変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】KANEKO、“信号器付投光器(LED式)”,[令和4年6月9日検索]、インターネット<http://www.kaneko-ks.co.jp/products/syoubou/ks9302.html>.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の技術の場合は、ブラケットのカラビナ取付部を利用すると持ち運ぶ際は便利だが、投光する際には腕などで可搬式投光器を持たなければならない。また、仮に投光する際にハンドルにカラビナを取り付けるとカラビナが滑るため光路を固定しにくいという問題がある。特許文献1の技術の場合は、投光中に光路を変更するためには、カラビナを貫通孔から外して別の貫通孔に付け替えなければならないという問題がある。
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、投光しているときに光路を調整しやすい可搬式投光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の可搬式投光器は、本体、前方支持部材、後方支持部材、ハンドルを備える。本体は、光源部を前面に有し、ケーブルとの接続部を後面に有する。前方支持部材は、本体の前方上部に取り付けられる。後方支持部材は、本体の後方上部に取り付けられる。ハンドルは、前方支持部材と後方支持部材との間に取り付けられる。前方支持部材は、ハンドルの前方上部にカラビナ取付部を形成する。ハンドルは、本体側に複数の凹部を有する。複数の凹部の中の1つは、可搬式投光器の重心が真下に配置されたときに、光源部が水平方向を投光する位置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の可搬式投光器によれば、前方支持部材によって形成されるカラビナ取付部はハンドルの上部に位置する。よって、カラビナ取付部を利用する場合でも、非特許文献1の可搬式投光器に比べると、腕などを用いて光路を一定にするときに可搬式投光器の向きを変更する量が少ない。したがって、可搬式投光器の向きを小さい力で安定にできる。また、静止した状態で光路を調整する場合など、比較的安定した状態での作業が可能な場合は、ハンドルの凹部を選択してカラビナを配置すれば、カラビナを着脱しなくても光路を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の可搬式投光器を前方斜め上から見た斜視図。
【
図2】実施例1の可搬式投光器を後方斜め上から見た斜視図。
【
図7】カラビナ取付部21にカラビナ80を取り付けて可搬式投光器100を吊り下げた場合の様子を示す図。
【
図8】カラビナ取付部31にカラビナ80を取り付けて可搬式投光器100を吊り下げた場合の様子を示す図。
【
図9】凹部41にカラビナ80を配置して可搬式投光器100を吊り下げた場合の様子を示す図。
【
図10】実施例1の可搬式投光器にカラビナ移動防止具も配置した場合の側面から見た図。
【
図11】カラビナを移動させたい場合のカラビナ移動防止具の様子を示した図。
【
図12】変形例2の可搬式投光器を側面から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例0010】
図1に実施例1の可搬式投光器を前方斜め上から見た斜視図、
図2に実施例1の可搬式投光器を後方斜め上から見た斜視図、
図3に実施例1の可搬式投光器を側面から見た図を示す。実施例1の可搬式投光器100は、本体10、前方支持部材20、後方支持部材30、ハンドル40を備える。なお、前方支持部材20と後方支持部材30は、ブラケットと呼ぶこともある。
【0011】
本体10は、光源部11を前面に有し、ケーブル90との接続部12を後面に有する。また、本体10には、警報スイッチ13、警報表示ランプ14、切替スイッチ15なども配置されている。光源部11は複数のLED(Light Emitting Diode)などの光源を備えている。接続部12は、外部からの電力供給および通信のためのケーブル90と接続される。警報スイッチ13は、緊急時に即座にユーザが押せるように、ユーザがハンドル40を持ったときに親指が届く範囲に配置するのが望ましい。警報表示ランプ14は、ユーザの腕、手などでさえぎる可能性が低い位置に配置される。具体的には、
図1~3に示したように、本体10の前方上部に配置すればよい。切替スイッチ15は、光源部11から投光する光の集光・拡散の程度を調整するスイッチである。切替スイッチ15は、頻繁に切り替える必要はないので、焦ったときに警報スイッチ13と間違えない位置に配置する方が望ましい。
【0012】
前方支持部材20は、本体10の前方上部に取り付けられる。
図4は前方支持部材の例を示す図である。前方支持部材20は、ステンレスなどの金属で形成すればよい。前方支持部材20は、前方支持部材20を本体10に取り付けるための本体取付孔22、ハンドル40を前方支持部材20に取り付けるためのハンドル取付孔23を有する。また、前方支持部材20は、警報スイッチ13と警報表示ランプ14を上述の位置に配置するための操作用孔25も有する。さらに、前方支持部材20は、ハンドル40の前方上部にカラビナ取付部21を形成する。
図3に示すように、カラビナ取付部21の先端は、ハンドル40の前方上部に形成したスリット48に挿入してもよい。カラビナ取付部21の先端をスリット48に挿入すれば、使用中にカラビナ取付部21が変形することなどを防ぐことができる。ただし、スリット48はなくてもよい(
図1,2などにはスリット48は示していない)。消防のために用いるカラビナは一般的には直径10mmもしくは直径12mmなので、カラビナ取付部21は、このカラビナが通しやすい大きさ、例えば直径12.5~15mm程度にすればよい。
【0013】
なお、警報スイッチ13と警報表示ランプ14は、ハンドル40の上面よりは高い位置とし、カラビナ取付部21もしくは前方支持部材20に隠れるような位置にすればよい。そのような位置に配置することで、可搬式投光器100のいずれかの場所に取り付けたカラビナによって、警報スイッチ13と警報表示ランプ14が傷つくことを防ぎやすくできる。
【0014】
後方支持部材30は、本体10の後方上部に取り付けられる。
図5は後方支持部材の例を示す図である。後方支持部材30は、ステンレスなどの金属で形成すればよい。後方支持部材30は、後方支持部材30を本体10に取り付けるための本体取付孔32、ハンドル40を後方支持部材30に取り付けるためのハンドル取付孔33、接続部12のための接続用孔35を有する。また、後方支持部材30は、ハンドル40の後方上部にカラビナ取付部31を形成する。
図3に示すように、カラビナ取付部31の先端は、ハンドル40の後方上部に形成したスリット49に挿入してもよい。カラビナ取付部31の先端をスリット49に挿入すれば、使用中にカラビナ取付部31が変形することなどを防ぐことができる。ただし、スリット49はなくてもよい(
図1,2などにはスリット49は示していない)。カラビナ取付部31も、直径10mmのカラビナが取り付けやすい大きさにすればよい。
【0015】
ハンドル40は、前方支持部材20と後方支持部材30との間に取り付けられる。
図6はハンドルの例を示す図である。ハンドル40は、本体10側に複数の凹部41,42,43が形成される。消防のために用いるカラビナは一般的には直径10mmもしくは直径12mmなので、凹部41,42,43の深さは5mm以上とすればよい。凹部41,42,43は、特許文献1に示されたハンドルに形成された貫通孔よりも小さくできる。よって、数を多くできるので、より細かい投光方向の調整を行いやすい。また、ハンドルの強度に影響を与えにくいので、設計も容易になるという長所がある。凹部41,42,43の深さは深い方が、カラビナが移動しにくくできるが、ハンドル40の強度も考慮して適宜決めればよい。凹部の数を少なくするのであれば(例えば2つ)、凹部はスリットのような形状でもよい。また、滑り防止のため、凹部41,42,43の表面には弾性材を配置すればよい。ハンドル40は、前方支持部材20と取り付けるためのブラケット取付孔47も有する。
図6では見えないが、ハンドル40は、ブラケット取付孔47の反対側の面に、後方支持部材30と取り付けるためのブラケット取付孔も有する。
【0016】
複数の凹部41,42,43の中の1つは、可搬式投光器100の重心が真下に配置されたときに、光源部11が水平方向を投光する位置である。
図3のA-A線は、光源部11が水平方向を投光する状態のときに重心を通る鉛直線を示している。
図3の場合であれば、凹部41が、「可搬式投光器100の重心が真下に配置されたときに、光源部11が水平方向を投光する位置」である。
【0017】
図7はカラビナ取付部21にカラビナ80を取り付けて可搬式投光器100を吊り下げた場合の様子を示す図、
図8はカラビナ取付部31にカラビナ80を取り付けて可搬式投光器100を吊り下げた場合の様子を示す図、
図9は凹部41にカラビナ80を配置して可搬式投光器100を吊り下げた場合の様子を示す図である。
図7の場合は、光源部11は少し上を向いている。
図8の場合は、光源部11は下(足元)を向いている。
図9の場合は、光源部11はほぼ水平方向を向いている。消防の場合、ユーザはカラビナ80を腰の安全ベルトに取り付けることが多い。安全ベルトに取り付けるカラビナ80の位置を選択することで、ユーザが望む方向を投光できる。
【0018】
可搬式投光器100によれば、前方支持部材20によって形成されるカラビナ取付部21と後方支持部材30によって形成されるカラビナ取付部31はハンドル40の上部に位置する。よって、カラビナ取付部21,31を利用する場合でも、非特許文献1の可搬式投光器に比べると、腕などを用いて光路を一定にするときに可搬式投光器100の向きを変更する量が少ない。したがって、可搬式投光器100の向きを小さい力で安定にできる。また、静止した状態で光路を調整する場合など、比較的安定した状態での作業が可能な場合は、ハンドル40の凹部41,42,43を選択してカラビナ80を配置すれば、カラビナ80を着脱しなくても光路を調整できる。
[変形例1]
【0019】
図10に実施例1の可搬式投光器にカラビナ移動防止具も配置した場合の側面から見た図を示す。ハンドル40は、カラビナ移動防止具50も有している。
図10に示したカラビナ移動防止具50は、ハンドル40の凹部以外の部分の周長よりは自然長が短いリング状の弾性体である。したがって、カラビナ移動防止具50は、少なくとも凹部以外の部分ではハンドル40を保持するので、動きにくい状態である。ただし、ユーザがカラビナ移動防止具50をハンドルの長手方向に移動させることは可能である。
【0020】
例えば、
図10のようにカラビナ80を凹部41の位置に配置したときに、カラビナ移動防止具50を
図10の位置に移動させれば、カラビナ80は、カラビナ移動防止具50がない場合よりも移動しにくくなる。
図11は、カラビナを移動させたい場合のカラビナ移動防止具様子を示した図である。カラビナ移動防止具50は移動させることができるので、不要なときは
図11に示した位置に移動させておけばよい。
【0021】
なお、本変形例では、カラビナ移動防止具50としてリング状の弾性体を示した。しかし、カラビナ移動防止具50は、クリップのようにハンドルを挟むことでハンドル40に固定し、カラビナ80の移動を妨げる構造でもよい。もしくは、カラビナ移動防止具50は、二股に分かれた洗濯挟みのような形状とし、二股に分かれた部分でカラビナ80を挟みながらハンドルを保持するような構造でもよい。カラビナ移動防止具50は、ユーザの意思で移動させた位置を保持できる構造であり、カラビナ80の移動を妨げる構造であればよい。
[変形例2]
【0022】
図12に変形例2の可搬式投光器を側面から見た図を示す。変形例2の可搬式投光器101は、後方支持部材38がカラビナ取付部31を形成しない点だけ可搬式投光器100と異なる。例えば、
図12に“B”で示したハンドル40と後方支持部材38の接続部分にカラビナ80を配置すれば、光源部11を下(足元)に向けることができる。したがって、カラビナ取付部31はなくても、足元を投光できる。また、カラビナ取付部21およびハンドル40の凹部41,42,43によって得られる効果は実施例1の可搬式投光器100と同じである。また、可搬式投光器101の場合も変形例1で説明したカラビナ移動防止具50も備えてもよい。カラビナ移動防止具50によって得られる効果は変形例1と同じである。
【0023】
可搬式投光器101によれば、前方支持部材20によって形成されるカラビナ取付部21はハンドル40の上部に位置する。よって、カラビナ取付部21を利用する場合でも、非特許文献1の可搬式投光器に比べると、腕などを用いて光路を一定にするときに可搬式投光器100の向きを変更する量が少ない。したがって、可搬式投光器100の向きを小さい力で安定にできる。また、静止した状態で光路を調整する場合など、比較的安定した状態での作業が可能な場合は、ハンドル40の凹部41,42,43を選択してカラビナ80を配置すれば、カラビナ80を着脱しなくても光路を調整できる。