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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182414
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/14 20190101AFI20231219BHJP
   G07D 11/12 20190101ALI20231219BHJP
【FI】
G07D11/14
G07D11/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096010
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】岩月 敬
(72)【発明者】
【氏名】中岡 陽一
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA03
3E141FA03
3E141FA10
3E141FL10
(57)【要約】
【課題】異物をより確実に除去できるようにする。
【解決手段】紙幣投入口と、前記紙幣投入口から投入された紙幣を収容する紙幣収容部と、前記紙幣収容部の下方に設けられた異物排出部とを備え、前記紙幣収容部の底部には、装置の後方から前方に向かって傾斜するように前記装置の前後方向に延び、前記装置の前後方向に直交する幅方向に間隔を空けて配置された複数の紙幣支持部と、前記紙幣支持部の前記幅方向の両側に位置し、前記異物排出部と繋がる異物落下穴とが設けられ、前記異物落下穴の前記幅方向の大きさは、異物として想定される最大径硬貨の直径よりも大きく、前記紙幣支持部は、前記装置の前方側に、前記装置の上方に向けて突出する突起部を有する。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣投入口と、
前記紙幣投入口から投入された紙幣を収容する紙幣収容部と、
前記紙幣収容部の下方に設けられた異物排出部と
を備え、
前記紙幣収容部の底部には、装置の後方から前方に向かって傾斜するように前記装置の前後方向に延び、前記装置の前後方向に直交する幅方向に間隔を空けて配置された複数の紙幣支持部と、前記紙幣支持部の前記幅方向の両側に位置し、前記異物排出部と繋がる異物落下穴とが設けられ、
前記異物落下穴の前記幅方向の大きさは、異物として想定される最大径硬貨の直径よりも大きく、
前記紙幣支持部は、
前記装置の前方側に、前記装置の上方に向けて突出する突起部を有する
ことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記異物排出部は、
前記装置の前方側の端である前端から異物が排出されるようになっていて、前記装置の前方側に前記異物排出部の前端に向かうにつれて前記異物排出部の幅を狭くする絞り壁部を有し、
前記幅方向の一端側に位置する紙幣支持部に設けられた前記突起部における前記装置の後方側の端となる後端と、当該突起部から見て前記幅方向の外側に位置する前記絞り壁部との間に、前記異物として想定される最大径硬貨の直径よりも大きな間隔が空くように前記突起部を配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記複数の紙幣支持部のうち、前記幅方向の一端側に位置する紙幣支持部と、前記幅方向の他端側に位置する紙幣支持部とに、前記突起部を設けた
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記紙幣収容部内を、前記装置の前後方向に移動可能なビルプレスを備え、
前記ビルプレスが前記紙幣収容部内で最も前記装置の前方側に位置するときに、前記突起部における前記装置の後方側の端となる後端が、前記ビルプレスにおける前記装置の後方側の面である後面よりも前記装置の後方側に突出しないように前記突起部を配置した
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記ビルプレスの下端における、前記突起部と対応する位置に、前記装置の前後方向から見て前記突起部よりも大きく、前記突起部を回避する凹部を設けた
ことを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記異物排出部は、
底部が前記装置の後方から前方に向かって傾斜していて、
前記異物落下穴を通って落下してきた異物が前記異物排出部の底部上を滑り落ちて排出される
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項7】
前記突起部における前記装置の後方側の端となる後端が、上方から見て前記装置の後方に膨らむ円形状となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項8】
前記突起部における前記装置の後方側の端となる後端が、上方から見て前記装置の後方に尖る先細り形状となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣の入金機能を有する紙幣処理装置では、例えば、紙幣投入口から紙幣収容部に投入された紙幣を1枚ずつ取り込んで金種を判別し、金種ごとに紙幣収納庫に収納することで入金するようになっている。
【0003】
この種の紙幣処理装置として、紙幣収容部の底部が装置の後方から前方に向かって下るように傾斜していて、さらにこの底部が、装置の幅方向に間隔を空けて配置された前後方向に延びる複数本の紙幣支持部と、紙幣支持部と紙幣支持部との間の異物落下穴とで構成された簀の子形状となっているものがある。
【0004】
この紙幣処理装置では、例えば硬貨などの異物が紙幣と一緒に紙幣投入口から紙幣収容部に投入されてしまった場合に、紙幣については紙幣支持部により支持する一方で、異物については異物落下穴から紙幣収容部の下方に落下させることで、異物を除去できるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-170109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の紙幣処理装置では、紙幣投入口から紙幣収容部に投入された異物が異物落下穴に落下することなく紙幣支持部の上を装置の後方から前方へと滑って紙幣支持部上に滞留してしまう場合があるという問題を有していた。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、異物をより確実に除去できる紙幣処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の紙幣処理装置においては、紙幣投入口と、前記紙幣投入口から投入された紙幣を収容する紙幣収容部と、前記紙幣収容部の下方に設けられた異物排出部とを備え、前記紙幣収容部の底部には、装置の後方から前方に向かって傾斜するように前記装置の前後方向に延び、前記装置の前後方向に直交する幅方向に間隔を空けて配置された複数の紙幣支持部と、前記紙幣支持部の前記幅方向の両側に位置し、前記異物排出部と繋がる異物落下穴とが設けられ、前記異物落下穴の前記幅方向の大きさは、異物として想定される最大径硬貨の直径よりも大きく、前記紙幣支持部は、前記装置の前方側に、前記装置の上方に向けて突出する突起部を有するとした。
【0009】
紙幣支持部の前方側に上方に突出する突起部を設けたことにより、紙幣支持部上を滑ってきた異物を当該突起部と接触させて異物落下穴に落とすことができ、異物が紙幣支持部上に滞留してしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異物をより確実に除去できる紙幣処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態による入出金機の外観構成を示す斜視図である。
図2】第1の実施の形態による紙幣ユニットの外観構成を示す斜視図である。
図3】第1の実施の形態による紙幣入金部の内部構成を示す図である。
図4】第1の実施の形態によるビルプレスの構成を示す図である。
図5】第1の実施の形態による突起部の位置を説明する際に用いる1つ目の図である。
図6】第1の実施の形態による突起部の位置を説明する際に用いる2つ目の図である。
図7】第1の実施の形態による紙幣入金部の動作(紙幣投入時)を示す図である。
図8】第1の実施の形態による紙幣入金部の動作(紙幣取込時)を示す図である。
図9】第1の実施の形態による紙幣入金部の動作(異物排出時)を示す1つ目の図である。
図10】第1の実施の形態による紙幣入金部の動作(異物排出時)を示す2つ目の図である。
図11】第1の実施の形態による紙幣入金部の動作(異物排出時)を示す3つ目の図である。
図12】第1の実施の形態による紙幣入金部の比較対象となる構成を示す図である。
図13】第2の実施の形態による紙幣入金部の内部構成を示す図である。
図14】第2の実施の形態によるビルプレスの構成を示す図である。
図15】他の実施の形態による突起部の形状パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0013】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.入出金機の外観構成]
図1に、第1の実施の形態としての入出金機1の外観を示す。図1に示す入出金機1は、紙幣及び硬貨の入金及び出金が可能な例えばセルフ精算機であり、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ガソリンスタンド等の小売店の精算所に設置されている。この入出金機1は、図示しないPOSレジなどのレジスタと接続されており、当該レジスタの制御に基づき動作する。
【0014】
入出金機1は、箱型の装置筐体2を有している。ここで、装置筐体2を形成する各面のうち、利用者と対峙する面を前面2a、利用者から見て上側の面を上面2bとする。
【0015】
装置筐体2は、前後方向及び左右方向に比べて上下方向に長い箱型であり、上面2bの中央に、取引明細などが記載されたレシートを出力するレシートプリンタ3と、各種画面を表示する表示部及び表示部に表示された各種画面に対する操作入力を受け付ける操作部として機能する操作表示部4とが設けられている。操作表示部4としては、例えばタッチパネル付きディスプレイが用いられる。
【0016】
さらに装置筐体2の前面2aの上部左寄りには、紙幣が投入される紙幣投入口5が設けられ、さらに当該紙幣投入口5の下方に、紙幣が排出される紙幣排出口6が設けられている。尚、紙幣投入口5には、例えばシャッタが設けられ、シャッタの開閉により露出又は遮蔽されるようになっている。さらに装置筐体2の前面2aには、紙幣投入口5と紙幣排出口6の間に、紙幣投入口5に投入された異物が排出される異物排出口7が設けられている。紙幣投入口5、紙幣排出口6、異物排出口7は、後述する紙幣ユニット8の一部として入出金機1に組み込まれている。
【0017】
さらに装置筐体2の前面2aには、紙幣投入口5の右側に、硬貨が投入される硬貨投入口9が設けられ、さらに紙幣排出口6の下方に、硬貨が排出される硬貨排出口10が設けられている。尚、異物排出口7から排出された異物(具体的には硬貨を想定)は、下方の硬貨排出口10に設けられたトレイ11へと落下してトレイ11に受け止められるようになっている。硬貨投入口9、硬貨排出口10は、硬貨ユニット12の一部として入出金機1に組み込まれている。
【0018】
[1-2.紙幣ユニットの構成]
つづけて、図2を用いて、紙幣ユニット8の構成について説明する。図2に外観斜視図を示すように、紙幣ユニット8は、前後方向に長い直方体形状の筐体20を有しており、この筐体20の前面上部に紙幣が投入される紙幣投入口5が設けられ、前面下部に紙幣が排出される紙幣排出口6が設けられ、紙幣投入口5と紙幣排出口6との間に異物排出口7が設けられている。この紙幣ユニット8は、使用者により紙幣投入口5に投入された紙幣を取り込んで筐体2内部に収納すると共に、内部に収納している紙幣を紙幣排出口6から釣銭として排出する。また紙幣ユニット8は、紙幣投入口5に投入された異物(例えば紙幣とともに投入された硬貨など)を異物排出口7から排出する。
【0019】
この紙幣ユニット8の筐体2内部には、前側上部(つまり紙幣投入口5の奥)に、紙幣投入口5に投入された紙幣を内部に取り込む紙幣入金部100が設けられている。以下、この紙幣入金部100の構成について詳しく説明する。
【0020】
[1-3.紙幣入金部の構成]
図3(A)に、紙幣入金部100を上方から見た場合の上面図を示す。また図3(B)に、紙幣入金部100を右方から見た場合の側面図を示す。図3(A)、(B)は、それぞれ一部を省略したり簡略化したりした模式図となっている。図3(A)、(B)に示すように、紙幣入金部100は、紙幣投入口5(図2)から投入された紙幣を収容する紙幣収容部101を中心に構成されている。尚、紙幣入金部100では、図7(A)、(B)に示すように、紙幣の長手方向が左右方向、厚さ方向が前後方向となる向きで、紙幣収容部101に紙幣が投入されるようになっていて、投入された紙幣を紙幣収容部101の底部上に立位状態で前後方向に集積するようにして収容する。
【0021】
紙幣収容部101の上端は開放されていて、紙幣投入口5とつながっている。紙幣収容部101の前端には、紙幣収容部101の前側の壁面を形成するフロントフレーム102が設けられ、紙幣収容部101の後端には、紙幣収容部101の後側の壁面を形成するガイド103が設けられている。尚、ガイド103は、紙幣収容部101の底部よりも下方まで延びている。また図示しないが紙幣収容部101の左端と右側には、それぞれ左側の壁面及び右側の壁面を形成するサイドフレームが設けられている。
【0022】
紙幣収容部101の底部は、後方から前方に向かって下るように傾斜していて、この底部の後端部分がゲートガイド104となっていて、ゲートガイド104よりも前側に位置する部分が紙幣支持部105となっている。さらに紙幣支持部105の下方には、異物ダクト106が設けられている。
【0023】
ゲートガイド104は、後端部分が下方へと延びる断面L字型の板状部材である。ゲートガイド104の下方に延びている部分と、ガイド103の下端部との間には所定の隙間Rが形成されていて、紙幣収容部101に収容されている紙幣はこの隙間Rを通って1枚ずつ繰り出されて、紙幣ユニット8に取り込まれていくようになっている。よってこの隙間Rを、以下、搬送路Rと呼ぶ。つまりゲートガイド104は、紙幣収容部101の底部の後端部分を形成する上部と、搬送路Rを形成する下部とで構成されている。
【0024】
またこの搬送路Rを挟んでゲートガイド104側(前側)にはゲートローラ107が設けられ、ガイド103側(後側)にはフィードローラ108が設けられている。これらゲートローラ107とフィードローラ108は、それぞれゲートガイド104及びガイド103から搬送路R内に一部が突出するように対向配置されていて、搬送路R内で当接するようになっている。またフィードローラ108の上方には、ガイド103から紙幣収容部101内に一部が突出するようにしてピッカローラ109(図3(A)では省略)が設けられている。
【0025】
これらゲートローラ107、フィードローラ108、ピッカローラ109は、図示しないアクチュエータにより回転するローラであり、紙幣収容部101に収容されている紙幣を1枚ずつ搬送路Rを通して繰り出す機能を有している。
【0026】
紙幣支持部105は、幅方向(つまり左右方向)の長さが紙幣収容部101よりも十分に短い前後方向に延びる角棒状の部材であり、ゲートガイド104の上部前端からフロントフレーム102の下端まで延びている。尚、紙幣支持部105の幅方向の長さ(つまり幅)は2mm程度であり、異物として想定される硬貨のうちの最小径硬貨(例えば1円硬貨)の直径と比較しても十分小さい幅となっている。この紙幣支持部105は、紙幣収容部101に収容された紙幣を支持する部材(リブ)である。紙幣収容部101の底部を形成するゲートガイド104の上部と紙幣支持部105は、それぞれ後方から前方に向かって下るように傾斜している。
【0027】
紙幣収容部101の底部には、この紙幣支持部105が、幅方向に間隔を空けて複数本(本実施の形態では4本)配置されている。また紙幣収容部101の底部には、紙幣支持部105と紙幣支持部105との間、及び幅方向の1番外側に位置する紙幣支持部105(つまり左端の紙幣支持部105と右端の紙幣支持部105)のさらに外側に、それぞれ紙幣収容部101と異物ダクト106とを繋ぐ異物落下穴110が設けられている。
【0028】
紙幣入金部100では、紙幣収容部101に投入された紙幣を紙幣支持部105で支持する一方で、紙幣収容部101に投入された異物(硬貨を想定)については、異物落下穴110から異物ダクト106に落下させるようになっている。ここで、異物の落下のみに着目すると異物落下穴110の幅(左右方向の長さ)はできる限り広くすることが望ましいが、異物落下穴110の幅を広くすると、その分、紙幣支持部105の間隔が広くなってしまう。尚、ここで言う異物落下穴110の幅とは、異物落下穴110の後側の幅のことである。紙幣収容部101には半分に折られた状態の紙幣(半券紙幣と呼ぶ)が投入されることも想定される為、このようは半券紙幣が異物落下穴110から落下してしまうことのないように、紙幣支持部105の間隔を、少なくとも長手方向の長さが最小の紙幣の長手方向の長さの半分よりも狭くしなければならない。この為、紙幣入金部100では、紙幣支持部105の間隔(つまり異物落下穴110の幅)が、長手方向の長さが最小の紙幣の長手方向の長さの半分未満で最大となる間隔に選定されている。ここで、異物として想定される硬貨のうち、最大径硬貨(例えば500円硬貨)の直径は、長手方向の長さが最小の紙幣の長手方向の長さの半分よりも小さい。この為、異物として最大径硬貨が紙幣収容部101に投入された場合でも、この硬貨を異物落下穴110から落下させることができる。
【0029】
さらに紙幣支持部105のそれぞれの前端部には、上方に突出する突起部111が設けられている。突起部111は、例えば紙幣支持部105と同一幅を有する板状部材であり、後面が紙幣支持部105の上面とほぼ直交し、紙幣支持部105の長手方向に直交する平坦面となっている。詳しくは後述するが、この突起部111は、異物として想定される硬貨が紙幣支持部105上を前方に滑ってきた場合に、当該硬貨とぶつかって当該硬貨を異物落下穴110に落とす為のものである。この為、突起部111の紙幣支持部105の高さ(つまり突出量)は、ぶつかってきた硬貨が乗り越えてしまうことにないように、最大厚さ硬貨(例えば500円硬貨)の厚さよりも大きいことが望ましい。
【0030】
また紙幣収容部101内には、紙幣収容部101内を前後方向にスライド可能なビルプレス112が設けられている。ビルプレス112は、紙幣収容部101よりも前後方向の長さが十分に短く、左右方向及び上下方向の長さが紙幣収容部101と同程度の板状部材である。紙幣入金部100では、紙幣投入時、このビルプレス112をフロントフレーム102に近接する位置まで移動させ、ビルプレス112とガイド103との間に、投入された紙幣を収容するようになっている。つまり紙幣収容部101全体のうち、ビルプレス112とガイド103との間のスペースが紙幣収容空間となっていて、紙幣と異物はこの紙幣収容空間に投入されることになる。
【0031】
このビルプレス112の下端と、紙幣支持部105との間には製造時や組立時の誤差を考慮してわずかな隙間が設けられている。この隙間は、異物として想定される最大厚さ硬貨が通り抜けできる程度の大きさとなっている。またこの隙間は、紙幣支持部105に設けられた突起部111の突起量よりは小さい。この為、図4に、ビルプレス112を後方から見た場合の断面図を示すように、ビルプレス112の下端には、ビルプレス112がスライドする際に突起部111と干渉しないように、4つの突起部111と対応する4箇所に、それぞれ前後方向から見て突起部111よりもわずかに大きな凹部112hが形成されている。これにより、ビルプレス112は、凹部112hにより突起部111を回避し、突起部111と干渉することなくスライド可能となっている。
【0032】
また紙幣入金部100では、突起部111の後端がビルプレス112の後方に収容された紙幣とぶつかって干渉しないように、突起部111の後端がビルプレス112の後面よりも後方に突出しないようになっている。
【0033】
具体的には、図5に示すように、紙幣支持部105の前端から突起部111の後端までの長さをX、ビルプレス112がフロントフレーム102に最も近い位置まで移動したとき(つまりビルプレス112とガイド103との間の紙幣収容空間が最大となるとき)の紙幣支持部105の前端からビルプレス112の後面までの距離をYとして、X≦Yとなるように、突起部111のサイズやビルプレス112の位置などが選定されている。
【0034】
異物ダクト106は、底部が後方から前方に向かって下るように傾斜していて、上端と前端とが開放されていて、上端は異物落下穴110を介して紙幣収容部101と繋がっていて、前端は異物排出口7(図2)と繋がっている。
【0035】
紙幣収容部101から異物ダクト106へと落下してきた異物は、異物ダクト106の底部を前方へと滑り落ちていき、異物排出口7から排出される。このとき、異物を異物排出口7の幅方向(左右方向)の中央に寄せて排出した方が利用者による異物の視認性が向上する。この為、異物ダクト106は、図3(A)に示すように、左端の外壁の前端部分106AL以外の部分は、異物ダクト106の幅方向(左右方向)に直交している一方で、当該前端部分106ALは、前方に向かうにつれて(つまり異物排出口7に近づくにつれて)異物ダクト106の幅方向の中央に近づくように傾けられている。同様に、右端の外壁の前端部分106ARも、前方に向かうにつれて異物ダクト106の幅方向の中央に近づくように傾けられている。つまり、異物ダクト106は、左右の外壁の前端部分106AL、106ARが、前方に向かうにつれて異物ダクト106の幅を狭くする絞り形状となっていて、これにより、紙幣収容部101から落下してきた異物を、異物排出口7の幅方向(左右方向)の中央に寄せて排出できるようになっている。尚、左右の外壁の前端部分106AL、106ARを、以下、絞り壁部106AL、106ARと呼ぶ。
【0036】
またこのように、異物ダクト106の左右の絞り壁部106AL、106ARが幅方向の中央に向かって絞る絞り形状となっている為、前側に絞り壁部106ALが位置する左端の異物落下穴110と、前側に絞り壁部106ARが位置する右端の異物落下穴110は、それぞれ前方に向かって幅が狭くなっている。
【0037】
尚、4本あるうちの左端の紙幣支持部105は、異物ダクト106の左端の絞り壁部106ALの前端よりもわずかに異物ダクト106の幅方向の中央側(つまり内側)に配置されている。同様に、右端の紙幣支持部105は、右端の絞り壁部106ARの前端よりもわずかに異物ダクト106の幅方向の中央側(つまり内側)に配置されている。
【0038】
ここで、図6(A)に示すように、紙幣収容部101に投入された異物としての最大径硬貨Ciが、例えば左端の紙幣支持部105上を前方に滑っていく場合を考える。この場合、左端の紙幣支持部105上を前方に滑ってきた最大径硬貨Ciは、紙幣支持部105の前端部に設けられた突起部111の後端とぶつかり、例えば左側にずれ、左端の紙幣支持部105の左側に位置する異物落下穴110に落下することになる。
【0039】
しかしながら、上述したように、異物ダクト106の左端の絞り壁部106ALが前方に向かうにつれて異物ダクト106の幅方向の中央に近づくようになっている為、左端の紙幣支持部105の左側に位置する異物落下穴110は、前方に向かうにつれて幅が狭くなっている。この為、図6(A)の点線枠内を拡大した図6(B)に示すように、突起部111の後端の位置が左端の紙幣支持部105の前端に近すぎると最大径硬貨Ciが突起部111の後端とぶつかって左側にずれた際に左端の絞り壁部106ALの上に乗り上げてしまい、異物落下穴110に落下することなく滞留してしまう可能性が出てくる。
【0040】
この為、紙幣入金部100では、最大径硬貨Ciが紙幣支持部105上を滑ってきた場合でも、この最大径硬貨Ciを確実に異物落下穴110に落下させるように、紙幣支持部105の前端から突起部111の後端までの長さX(図5)が適切な長さに選定されている。
【0041】
具体的には、図6(C)に示すように、異物として想定される硬貨Ciのうちの最大径硬貨Ciの半径をr、左端の紙幣支持部105の前端から左端の絞り壁部106ALの前端までの距離をV、絞り壁部106ALの傾き角度(つまり紙幣支持部105と絞り壁部106ALのなす角度)をθ、最大径硬貨Ciの外周が絞り壁部106ALと紙幣支持部105の左端とに接する場合の紙幣支持部105の前端から最大径硬貨Ciの中心までの前後方向の距離をZ、紙幣支持部105と最大径硬貨Ciとが接している地点から絞り壁部106ALまでの異物落下穴110の幅をZ2とすると、以下に示す(1)~(3)式により、Zを求めることができる。
【0042】
Z2=r+r/cos(θ)……(1)
(Z2-V)/Z=tan(θ)……(2)
Z=(Z2-V)/tan(θ)=(r+r/cos(θ)-V)/tan(θ)……(3)
【0043】
ここで、紙幣支持部105の前端から突起部111の後端までの長さXがZ以上であれば(別の言い方をすると、突起部111の後端と絞り壁部106ALとの間に最大径硬貨Ciの直径よりも大きな間隔が設けられていれば)、最大径硬貨Ciが例えば左端の紙幣支持部105の突起部111の後端とぶつかって左側にずれた際に、最大径硬貨Ciが左端の絞り壁部106ALの上に乗り上げることなく異物落下穴110に落下することになる。よって、最大径硬貨Ciを異物落下穴110に確実に落下させるには、Z≦Xでなければならない。
【0044】
さらに上述したように、突起部111の前端が、ビルプレス112の後面よりも後方(つまり紙幣収容空間側)に突出することがないようXはY以下となる。これらのことを踏まえると、Xは、以下に示す(4)式を満たす必要がある。
【0045】
(r+r/cos(θ)-V)/tan(θ)≦X≦Y……(4)
【0046】
よって、紙幣入金部100では、紙幣支持部105の前端から突起部111の後端までの長さXが、上述した(4)式を満たす長さに選定されている。こうすることで、紙幣入金部100では、突起部111が紙幣収容部101に収容された紙幣に干渉することなく、異物としての硬貨Ciを確実に異物落下穴110に落下させることができる。紙幣入金部100の構成は、以上のようになっている。
【0047】
[1-4.紙幣入金部の動作]
次に、紙幣入金部100の動作として、投入された紙幣を取り込むときの通常動作について図7及び図8を用いて説明する。尚、図7は、紙幣投入時の通常動作を示し、図8は、紙幣取込時の通常動作を示している。
【0048】
図7(A)、(B)に示すように、紙幣投入時、紙幣入金部100は、紙幣収容部101におけるビルプレス112の前方に紙幣Biの束が投入される。このとき、紙幣Biは、立位状態で異物落下穴110に落下しないように紙幣支持部105により支持される。
【0049】
その後、図8(A)、(B)に示すように、紙幣取込時、紙幣入金部100は、ビルプレス112を後方(つまりガイド103側)へと移動させることで、紙幣Biの束をピッカローラ109(図8(B))に押し付ける。このとき、紙幣Biの束は、紙幣支持部105の後方に位置するゲートガイド104の上部により立位状態のまま支持される。この状態で、紙幣入金部100は、ピッカローラ109とフィードローラ108を回転させることにより、紙幣Biの束を1枚ずつ分離して下方の搬送路Rへと送り搬送路Rから繰り出す。このようにして紙幣入金部100から繰り出された紙幣Biは紙幣ユニット8の内部に取り込まれる。
【0050】
尚、本実施の形態では、紙幣入金部100に入金機能のみを持たせているが、出金機能を持たせることもできる。この場合、紙幣入金部100は、ゲートローラ107とフィードローラ108を回転させることにより、紙幣ユニット8の内部から搬送路Rへと送られてきた紙幣を、ビルプレス112とガイド103との間へと繰り出して集積していく。このとき、紙幣入金部100は、集積している紙幣の枚数が増えるにつれて、ビルプレス112を前方へ移動させて、ビルプレス112とガイド103との間の紙幣収容空間を広げていく。利用者は、このようにして紙幣入金部100に収容された紙幣を、紙幣投入口5から受け取る。
【0051】
つづけて、紙幣入金部100の動作として、紙幣投入口5から投入された異物を異物排出口7から排出する排出動作について図9図11を用いて説明する。尚、図9は、異物落下穴110上に異物が落下してきた際の排出動作を示し、図10図11は、ゲートガイド104上に異物が落下してきた際の排出動作を示している。
【0052】
図9(A)、(B)に示すように、異物としての硬貨Ciが異物落下穴110上に落下してきた場合、当該硬貨Ciは、そのまま異物落下穴110を通って異物ダクト106へと落下し、異物ダクト106の底部上を前方に滑り落ちていき、異物ダクト106の前方に位置する異物排出口7(図2)から排出される。また図は省略するが、異物としての硬貨Ciが紙幣支持部105上に落下した場合、紙幣支持部105の幅が硬貨Ciの直径と比較して十分小さい為に、硬貨Ciが紙幣支持部105の左右どちらかにずれ、異物落下穴110を通って異物ダクト106へと落下する。異物ダクト106へと落下した硬貨Ciは、異物ダクト106内を前方に滑り落ちていき、異物ダクト106の前方に位置する異物排出口7(図2)から排出される。
【0053】
このように、異物落下穴110又は紙幣支持部105上に落下した異物は、どちらの場合も異物落下穴110を通って異物ダクト106へと落下し、異物ダクト106内を滑り落ちて異物排出口7から排出される。
【0054】
また図10(A)、(B)に示すように、異物としての硬貨Ciがゲートガイド104上に落下すると、当該硬貨Ciは、ゲートガイド104と平行になった状態で前方に滑る。ここで、当該硬貨Ciの前方に異物落下穴110が位置する場合、当該硬貨Ciは異物落下穴110を通って異物ダクト106へと落下する。異物ダクト106へと落下した硬貨Ciは、異物ダクト106内を前方に滑り落ちていき、異物ダクト106の前方に位置する異物排出口7(図2)から排出される。
【0055】
また図11(A)に示すように、ゲートガイド104上に落下した硬貨Ciの前方に、紙幣支持部105が位置する場合、当該硬貨Ciがゲートガイド104と平行になった状態で前方に滑り、そこからさらに紙幣支持部105上を前方に滑っていくことがある。この場合、紙幣支持部105上を前方に滑る硬貨Ciは、紙幣支持部105の前端部に設けられた突起部111の後端とぶつかる。このとき硬貨Ciは、バランスを崩して、突起部111の左右どちらかにずれる。ここで、図11(B)に示すように、突起部111は、上述した条件(Z≦X)を満たす位置に設けられている為、硬貨Ciが、左端の絞り壁部106AL(もしくは右端の絞り壁部106AR)に乗り上げることなく異物落下穴110を通って異物ダクト106へと落下する。異物ダクト106へと落下した硬貨Ciは、異物ダクト106内を前方に滑り落ちていき、異物ダクト106の前方に位置する異物排出口7(図2)から排出される。
【0056】
このように、ゲートガイド104上に落下した異物は、そのまま異物落下穴110を通って異物ダクト106へと落下し、もしくは紙幣支持部105上を前方に滑り落ちて突起部111とぶつかり異物落下穴110を通って異物ダクト106内へと落下し、異物ダクト106内を滑り落ちて異物排出口7から排出される。
【0057】
[1-5.まとめと効果]
ここまで説明したように、本実施の形態では、紙幣処理装置としての紙幣ユニット8に、紙幣が投入される紙幣投入口5と、紙幣投入口5から投入された紙幣を立位状態で収容する紙幣収容部101と、紙幣収容部101の下方に設けられた異物排出部としての異物ダクト106とを設けた。さらに紙幣収容部101の底部には、紙幣ユニット8の後方から前方に向かって傾斜するように(下るように)紙幣ユニット8の前後方向に延び、紙幣ユニット8の前後方向に直交する幅方向に間隔を空けて配置された複数の紙幣支持部105と、紙幣支持部105の幅方向の両側に位置し、異物ダクト106と繋がる異物落下穴110とが設けられ、異物落下穴110の幅方向の大きさを、異物として想定される最大径硬貨の直径よりも大きくした。そして紙幣支持部105は、紙幣ユニット8の前方側となる前端部に、紙幣ユニット8の上方に向けて突出する突起部111を有するとした。
【0058】
このように、本実施の形態の紙幣ユニット8では、紙幣支持部105の前端部に上方に突出する突起部111を設けたことにより、紙幣支持部105上を滑ってきた異物を突起部111と衝突させて異物落下穴110から異物ダクト106へと落とすことができ、異物が紙幣支持部105上に滞留してしまうことを防ぐことができる。かくして、本実施の形態による紙幣ユニット8では、異物をより確実に除去することができる。
【0059】
また異物ダクト106は、底部が紙幣ユニット8の後方から前方に向かって傾斜していて(下っていて)、前端が異物排出口7と繋がっている。さらに異物ダクト106は、前側に、異物ダクト106の前端に向かうにつれて異物ダクト106の幅を狭くする絞り壁部106AL、106ARを有している。この為、紙幣収容部101の幅方向の一端側(左端側)に位置する紙幣支持部105と当該紙幣支持部105の幅方向の外側に位置する絞り壁部106ALとの間に位置する異物落下穴110と、紙幣収容部101の幅方向の他端側(右端側)に位置する紙幣支持部105と当該紙幣支持部105の幅方向の外側に位置する絞り壁部106ALとの間に位置する異物落下穴110が、それぞれ前方に向かうにつれて幅が狭くなっている。
【0060】
そして紙幣ユニット8では、異物として想定される硬貨が突起部111に衝突して絞り壁部106AL(106AR)側にずれた際に当該絞り壁部106AL(106AR)に乗り上げてしまうことのないように、突起部111の後端と、当該突起部111から見て幅方向の外側に位置する絞り壁部106ALとの間に最大径硬貨Ciの直径よりも大きな間隔が空くように突起部111を配置した。こうすることで、本実施の形態の紙幣ユニット8では、左右両端の紙幣支持部105上を滑ってきて突起部111と衝突した硬貨が左右両端の絞り壁部106AL、106ARに乗り上げて滞留してしまう状況を防ぐことができる。
【0061】
ここで比較対象として、紙幣支持部105上の突起部111を省略した構成を図12(A)、(B)に示す。この図12(A)、(B)に示すように、紙幣支持部105上の突起部111を省略した場合、例えば、左端の紙幣支持部105上を滑ってきた硬貨Ciが左端の紙幣支持部105と絞り壁部106ALとの上にまたがるようにして滞留してしまう状況が発生する。このような比較対象に対して、本実施の形態の紙幣ユニット8では、突起部111を設けたことにより、紙幣支持部105上を滑ってきた異物を突起部111と衝突させて左右どちらかにずらし、異物落下穴110から異物ダクト106へとより確実に落とすことができる。
【0062】
[2.第2の実施の形態]
次に第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、紙幣支持部105上に設けられた突起部111の数を第1の実施の形態よりも減らした実施の形態である。ゆえに、ここでは、突起部111についてのみ説明する。
【0063】
[2-1.紙幣入金部の構成]
図3(A)、(B)に対応する図13(A)、(B)に、第2の実施の形態による紙幣入金部100xの構成を示す。図13(A)に示すように、紙幣入金部100xは、4本ある紙幣支持部105のうち、幅方向(左右方向)の両端に位置する2本の紙幣支持部105(つまり左端の紙幣支持部105と右端の紙幣支持部105)にのみ突起部111が設けられ、それ以外の紙幣支持部105からは突起部111を省略した構成となっている。
【0064】
またこれにともなって、図4に対応する図14に示すように、ビルプレス112xの下端には、ビルプレス112の下端には、ビルプレス112がスライドする際に突起部111と干渉しないように、2つの突起部111と対応する2箇所に、それぞれ突起部111よりもわずかに大きな凹部112hが形成されている。
【0065】
[2-2.まとめと効果]
第1の実施の形態でも説明したように、幅方向の両端に位置する2本の紙幣支持部105(つまり左端の紙幣支持部105と右端の紙幣支持部105)上を硬貨が前方に滑ってきた場合に、突起部111がないと、当該硬貨が絞り壁部106AL(106AR)に乗り上げて滞留してしまうことがある。換言すると、幅方向の両端に位置する2本の紙幣支持部105以外の紙幣支持部105上を硬貨が前方に滑ってきた場合、突起部111がなくても、当該硬貨は、絞り壁部106AL(106AR)に乗り上げることはなく、紙幣支持部105の左右どちらかにずれ、異物落下穴110を通って異物ダクト106に落下する。
【0066】
この為、第2の実施の形態の紙幣入金部100xでは、幅方向の両端に位置する2本の紙幣支持部105(つまり左端の紙幣支持部105と右端の紙幣支持部105)上にのみ突起部111を設けるようにした。この構成でも、第1の実施の形態とほぼ同様の効果を得ることができる。尚、幅方向の両端に位置する2本の紙幣支持部105以外の紙幣支持部105上を硬貨が前方に滑ってきた場合に、当該硬貨が紙幣支持部105上にバランス良く留まる可能性もあるが、紙幣入金部100xでは、紙幣支持部105の幅が当該硬貨の直径と比較して十分短くなっている為、この可能性は低いものと考えられる。
【0067】
また第2の実施の形態の紙幣入金部100xでは、第1の実施の形態と比較して、突起部111の数を減らしたことにともない、ビルプレス112の下端に形成される凹部112hの数も減っている。ビルプレス112は、紙幣と接触する部分であり、凹部112hの数が少ないほどジャム(紙幣詰まり)や集積不良の発生確率が減る。つまり、第2の実施の形態の紙幣入金部100xでは、第1の実施の形態と比較して、ジャム(紙幣詰まり)や集積不良の発生確率を減らすこともできる。
【0068】
[3.他の実施の形態]
[3-1.他の実施の形態1]
尚、上述した第1及び第2の実施の形態では、紙幣支持部105の前端部に、紙幣支持部105と同一幅を有する板状部材である突起部111を設けた。ここで、突起部111の形状については、板状以外の形状であってもよい。例えば、図15(A)、(B)、(C)に示すように、突起部111の後端側の形状(つまり異物とぶつかる部分の形状)を、平坦面ではなく、上方から見て後方に膨らむ円形状や、後方に尖る先細り形状(例えば三角形状)としてもよい。また先細り形状とする場合、図15(B)に示すように、先端が突起部111の幅方向の中心に位置するようになっていてもよいし、図15(C)に示すように、先端が突起部111の幅方向の一端側(具体的には異物ダクト106の幅方向の中心から遠い側)に位置するようになっていてもよい。
【0069】
突起部111の後端側の形状を、図15(C)に示すような三角形状とすれば、突起部111の後端にぶつかった異物を、異物ダクト106の幅方向の中心側へずらして異物落下穴110に落とすことができる。こうすることで、異物を異物ダクト106の幅方向の中央により一層寄せた状態で排出することができる。
【0070】
また突起部111を、板状ではなく例えば上方に延びる丸い棒状などとしてもよい。尚、突起部111の形状が板状以外の形状である場合も、突起部111の後端の位置(つまり異物とぶつかる位置)は、図5に示したように、紙幣支持部105の前端からXだけ離れた位置とすることが望ましい。一方、突起部111の前端の位置については、必ずしも突起部111の後端からXだけ離れた位置である必要はない。
【0071】
[3-2.他の実施の形態2]
また上述した第1及び第2の実施の形態では、異物ダクト106の前側が前方に向かうにつれて幅が狭くなるしぼり形状になっているとしたが、これに限らず、異物ダクト106の前側が絞り形状になっていなくてもよい(つまり異物ダクト106の幅が一定になっていてもよい)。
【0072】
この場合であっても、突起部111を設けることで、紙幣支持部105上を滑ってきた異物が紙幣支持部105の前端側に滞留してしまうことを防ぐことができるので、突起部111がない場合と比較して、異物をより確実に除去することができる。
【0073】
[3-3.他の実施の形態3]
また上述した第1の実施の形態では、ビルプレス112がフロントフレーム102に最も近い位置まで移動したときにビルプレス112が突起部111と干渉しないように、ビルプレス112の下端に突起部111よりもわずかに大きな凹部112hを形成するようにした。
【0074】
ここで、例えば、ビルプレス112がフロントフレーム102に最も近い位置まで移動したときでも、ビルプレス112が突起部111よりも後方に位置するように、ビルプレス112のスライド可能範囲を設定するようにしてもよい。このようにすれば、ビルプレス112がどの位置にあっても突起部111と干渉しなくなる為、ビルプレス112から凹部112hを取り除くことができる。第2の実施の形態についても同様である。
【0075】
[3-4.他の実施の形態4]
上述した第1及び第2の実施の形態では、異物ダクト106の前側の幅方向の両端を絞り壁部106AL、106ARとした。これに限らず、例えば、異物ダクト106の前側の幅方向の左端(もしくは右端)のみを絞り壁部106AL(106AR)とするようにしてもよい。
【0076】
[3-5.他の実施の形態5]
さらに上述した第1及び第2の実施の形態では、入金機能を有する紙幣入金部100(100x)に本発明を適用したが、これに限らず、紙幣入金部100(100x)と同様、紙幣収容部の底部に紙幣支持部を有する構成のものであれば、入金機能に加えて出金機能を有する紙幣入出金部に適用することもできる。
【0077】
[3-6.他の実施の形態6]
さらに上述した各実施の形態では、本発明を、紙幣処理装置としての紙幣ユニット8及び当該紙幣ユニット8を有する紙幣取扱装置としての入出金機1に適用した。これに限らず、本発明は、紙幣収容部の底部に紙幣支持部を有する構成のものであれば、紙幣ユニット8とは部分的に構成が異なる紙幣処理装置や入出金機1とは部分的に構成が異なる紙幣取扱装置(例えば入金機など)にも適用することができる。
【0078】
さらに上述した各実施の形態では、本発明を、紙幣を扱う紙幣ユニット8及び入出金機1に適用したが、これに限らず、本発明は、紙幣以外の紙葉状の媒体(例えば切符やチケットなど)を扱う様々な媒体処理装置や媒体取扱装置にも適用することができる。
【0079】
[3-7.他の実施の形態7]
さらに本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、例えば紙幣を扱う紙幣処理装置で利用できる。
【符号の説明】
【0081】
1……入出金機、2……装置筐体、5……紙幣投入口、7……異物排出口、8……紙幣ユニット、100、100x……紙幣入金部、101……紙幣収容部、102……フロントフレーム、103……ガイド、104……ゲートガイド、105……紙幣支持部、106……異物ダクト、106AL、106AR……絞り壁部、110……異物落下穴、111……突起部、112、112x……ビルプレス、112h……凹部、Bi……紙幣、Ci……硬貨。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15