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特開2023-182415情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182415
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20231219BHJP
   G16H 10/20 20180101ALI20231219BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20231219BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20231219BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G16H50/20
G16H10/20
G16H20/00
A61B5/16 130
A61B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096011
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】502136780
【氏名又は名称】中津川 重一
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】中津川 重一
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C117XB18
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE17
4C117XE23
4C117XG05
4C117XL01
5L099AA04
5L099AA15
5L099AA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】利用者の個別の事情を加味して睡眠障害に関する治療方法を特定する情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置100は、利用者Uの睡眠に関する情報を含む利用者情報Pを学習済モデルMに入力することで、当該利用者Uの睡眠障害を治療するための治療方法を特定する制御装置11を具備する。睡眠に関する情報は、睡眠障害に関する自覚症状、睡眠時間、睡眠環境および睡眠内容を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の睡眠に関する情報を含む利用者情報を学習済モデルに入力することで、当該利用者の睡眠障害を治療するための治療方法を特定する特定部を具備し、
前記睡眠に関する情報は、睡眠障害に関する自覚症状、睡眠時間、睡眠環境および睡眠内容を含む
情報処理装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記特定した治療方法により治療中の利用者における睡眠の状態を表す情報を前記学習済モデルに入力することで、前記治療方法を再度特定する
請求項1の情報処理装置。
【請求項3】
検査、生活習慣改善療法、心理療法、認知行動療法、教育入院、専門診療科の受診、睡眠環境の改善、および、経過観察のうち少なくとも1つを前記治療方法として特定する
請求項1の情報処理装置。
【請求項4】
前記利用者情報は、前記利用者の生体に関する情報、前記利用者の生活に関する情報、利用者の身体に関する情報、および、前記利用者の病気に関する情報のうち少なくとも1つの情報を含む
請求項1の情報処理装置。
【請求項5】
前記利用者の生体に関する情報は、血圧、脈拍数、体温、および、心電図に関する情報の少なくとも1つを含む
請求項4の情報処理装置。
【請求項6】
前記利用者の生活に関する情報は、食事、ストレス、入浴、嗜好品、運動、仕事、学校、および、家族のうち少なくとも1つに関する情報を含む
請求項4の情報処理装置。
【請求項7】
前記利用者の身体に関する情報は、年齢、性別、身長、体重、BMI(Body Mass Index)、体組成、および、腹囲のうち少なくとも1つに関する情報を含む
請求項4の情報処理装置。
【請求項8】
前記利用者の病気に関する情報は、病歴、および、自覚症状のうち少なくとも1つに関する情報を含む
請求項4の情報処理装置。
【請求項9】
利用者の睡眠に関する情報を含む利用者情報を学習済モデルに入力することで、当該利用者の睡眠障害を治療するための治療方法を特定し、
前記睡眠に関する情報は、睡眠障害に関する自覚症状、睡眠時間、睡眠環境および睡眠内容を含む
コンピュータにより実現される情報処理方法。
【請求項10】
利用者の睡眠に関する情報を含む利用者情報を学習済モデルに入力することで、当該利用者の睡眠障害を治療するための治療方法を特定する特定部としてコンピュータを機能させ、
前記睡眠に関する情報は、睡眠障害に関する自覚症状、睡眠時間、睡眠環境および睡眠内容を含む
プログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、約30~50%の人が何らかの睡眠の問題を抱えてされている。しかし、実際に保険診療での睡眠障害に対する主に内服薬による治療を受けている人は約15%だという。睡眠障害には、下記のように、多種多様な病態が含まれるが、自覚症状には、大きな違いがある。例えば、全く自覚症状がないが、生命予後が不良なものから、自覚症状は重篤だが、生命予後には余り影響しないものまで幅広い。更に、睡眠障害は、しばしば再発する事が知られている。
【0003】
元来、睡眠は、生命誕生以来、脈々と受け継がれてきた体内時計(運動や活動に強く影響される自律神経系及び内分泌系のバランス)に裏付けられていて、呼吸、循環、消化・吸収、排泄、免疫などとも関連がある生命の維持、日常生活の支えとなる生体内恒常性の維持に不可欠で極めて重要な機能である。殊に、頸動脈洞には循環・呼吸・排泄、体液バランス、体温などの中枢となるセンサーがあり、動脈血温度、血中酸素分圧、血中二酸化炭素濃度、様々な電解質・有害物質濃度など含め血液の浸透圧などの変化に対応した整体反応を規定している可能性があり、頸動脈硬化症が、このセンサーの感受性を左右している為、加齢や間違った生活習慣などにより自律神経バランスを更に悪化させることとなると考えられる。
【0004】
従って睡眠障害は、加齢及びそれに伴う生活習慣病及び動脈硬化症、更年期、閉経後或いは、男性更年期、生活習慣病治療薬の副作用、脳卒中、ウイルス感染症や、女性ホルモンと男性ホルモンとのバランスの乱れも関連を疑われる。例えば、喫煙などによる動脈硬化は全身性に均一性に進むことはあるが、多くは不均一性で、脳動脈優位など局所的に進むことが知られている。いずれも、総頸動脈・内径動脈の動脈硬化や白質などの線維化に伴う脳神経細胞への血流低下による栄養、酸素供給低下が絡んでいることが知られている。また、動脈硬化症や過剰飲酒などに伴う脳梗塞、脳出血など、脳卒中に相応して睡眠障害が出現することも知られている。
【0005】
一方、睡眠障害は、多量飲酒やウイルス感染・炎症などに伴う脳萎縮・変性或いは認知症や、変形性脊椎症や脳動脈硬化症、更に睡眠障害なども関与する自律神経バランスの乱れもある中高年以降の男性に多い。特に最近では長く単身生活を過ごす男性が多くなっており、入浴などを介しての女性ホルモンへの曝露が減少していることが大きく関与している可能性がある。即ち、単身者の場合、男性では男性ホルモンへの、或いは女性では女性ホルモンへの曝露が強化される、ある意味、自家中毒状態になることも可能性として考えられる。ただ単身であっても、疲労回復や入眠効率改善に役立つ入浴であるが、性別にホルモンバランス・環境への影響が異なる。即ち、男性では睾丸の温度上昇を招き、テストステロン濃度低下、精子の数の減少、運動能低下を招き、ネガティブに作用する。逆に女性では、排卵など月経を含め卵巣の機能を保持すし、女性ホルモン濃度の低下を防ぎ、ポジティブに作用する。従って、性ホルモンのバランス上では、男性にはシャワーが、女性には入浴が好ましい。更に、男性の下着も、睾丸の挙上を防ぎ、降下を促すものの方が望ましく、女性では卵巣温度低下を招きやすいミニスカートは望ましくないこととなる。更に、肥満や脂肪肝を防ぐ、むしろ激しい運動に伴いテストステロンの濃度上昇がホルモンバランスを乱すことも、女性アスリートにおいて髭など体毛が濃くなることなどからも知られている。
【0006】
また、肥満に伴う睡眠障害では、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝による女性ホルモンと男性ホルモンとのバランスの乱れの関与も疑われる。更に加齢に伴う視力や聴覚、嗅覚、知覚の低下や障害、脳萎縮や変性も、認知機能低下や好奇心を失うなど直接的或いは間接的に脳の高次機能の低下に少なからず関与する。
【0007】
ストレス、男性更年期や脂肪肝とも関係する男性ホルモン代謝が深く関係している病態の1つには睡眠障害がある。また、自律神経のバランスの乱れや脳の高次機能とも関係し、想像力などを抑制する抑うつ状態の関与が知られている病態の1つには男性更年期がある。いずれも、脳卒中や中枢神経系・皮膚のウイルスなど感染症・慢性炎症・自己免疫疾患、変形性脊椎症や睡眠障害などが絡んだ自律神経のバランスの低下、或いは、戦争や仕事に関係した過去のネガティブな経験・記憶、友人・知人・家族又はパートナーとの関係性、戦争などPTSDなどを招く極度のストレス、精神的トラウマなどの関与も指摘されている。睡眠は、人の一生を規定する体内時計を維持する上で欠かせない内分泌及び自律神経のバランスを保つ上で重要で、様々な生活習慣病予防にも極めて大きく関与している。
【0008】
我が国の睡眠時間は、欧米と比べても、平均して1.5時間以上も短いとされる。睡眠時間が短くなることが齎す影響は、全体の生産性の低下など、広く深いものがある。一体、工業化と人口の都市集中、職住近接ではなく遠隔通勤、交代勤務・深夜勤務を含め、不規則な生活時間の普遍化、様々なストレスなどなど、戦後の経済発展と表裏一体での睡眠の短縮化或いは深睡眠の欠乏が深刻さを増してきた。
【0009】
一方で、睡眠障害は、鬱病など様々な精神神経学的な病態と強く相関しているだけでなく、事故、自殺等社会的な問題にまで関係している。特に、昨今の新型コロナウイルス感染症のパンデミックやロシアによるウクライナへの侵略というかってない大きな不安材料が、世界を大きく変化させている中、感染し後遺症が残る、職業を失う、家族を失う等、生活の基盤が極めて不安定化し睡眠障害を訴える人々が増加している。以上の通り、幅広い睡眠障害を、地域、季節、天候、個人の住環境、社会的環境、心身の状況によらず、確実に改善することが望まれる。
【0010】
そこで、例えば睡眠障害であるか否かを判定する技術が従来から提案されている。特許文献1には、睡眠障害の中でも睡眠時無呼吸症候群であるか否かの判定を行う睡眠時無呼吸症候群判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2020-151358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の技術では、睡眠時無呼吸症候群と判定されても利用者に最適な治療方法を提案することはできない。またその他、不規則勤務、時差等に伴うものも含めて様々な睡眠障害についても、睡眠障害に対する個別の症例毎の治療法・解決法を示す方法論が見当たらない。以上の事情を考慮して、本発明では、利用者の個別の事情を加味して睡眠障害を治療するための治療方法を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る情報処理装置は、利用者の睡眠に関する情報を含む利用者情報を学習済モデルに入力することで、当該利用者の睡眠障害を治療するための治療方法を特定する特定部を具備し、前記睡眠に関する情報は、睡眠障害に関する自覚症状、睡眠時間、睡眠環境および睡眠内容を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の好適な態様に係る情報処理装置によれば、利用者の個別の事情を加味して睡眠障害に関する治療方法が特定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の構成を例示するブロック図である。
図2】制御装置の機能的な構成を例示するブロック図である。
図3】制御装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る制御装置の機能的な構成を例示するブロック図である。
図5】第2実施形態に係るチェック表の模式図である。
図6】変形例に係る情報処理装置の構成を例示する構成図である。
図7】変形例に係る情報処理装置の構成を例示する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置100の構成を例示するブロック図である。具体的には、情報処理装置100は、利用者Uの睡眠障害を治療するための治療方法を特定する装置である。睡眠障害は、正常に睡眠を行うことが困難な障害である。睡眠障害の種類には、例えば、不眠症、睡眠関連呼吸障害群、中枢性過眠症群、概日リズム睡眠障害群、睡眠時随伴症群、睡眠関連運動障害群、弧発性の諸症状、および、閉経前後の更年期の女性やL O H症候群の男性にもあるとされる男性更年期などに伴う睡眠障害、薬剤の副作用、感染症の後遺症、他の睡眠障害などがある。
【0017】
第1実施形態に係る情報処理装置100によれば利用者Uの個別の事情を加味して適切な治療方法が特定される。情報処理装置100は、例えば、睡眠障害の治療が可能な医療施設において利用される。
【0018】
例えば、スマートフォンおよびタブレット等の可搬型の情報端末、またはパーソナルコンピュータ等の可搬型または据置型の情報端末が、情報処理装置100として好適に利用される。具体的な治療方法については後述する。
【0019】
第1実施形態の情報処理装置100は、制御装置11と記憶装置13と表示装置15と操作装置17とを具備する。
【0020】
表示装置15(例えば液晶表示パネル)は、制御装置11による制御のもとで各種の画像を表示する。第1実施形態では、情報処理装置100により特定した治療方法を表示する。
【0021】
操作装置17は、利用者Uからの入力を受け付ける入力機器である。例えば、利用者Uが操作可能な複数の操作子、または、表示装置15の表示面に対する接触を検知するタッチパネルが操作装置17として好適に利用される。
【0022】
制御装置11(コンピュータの例示)は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の単数または複数の処理回路で構成され、情報処理装置100の各要素を統括的に制御する。
【0023】
記憶装置13は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成された単数または複数のメモリであり、制御装置11が実行するプログラムと制御装置11が使用する各種のデータとを記憶する。また、情報処理装置100に対して着脱可能な可搬型の記録媒体、または情報処理装置100が通信網を介して通信可能な外部記録媒体(例えばオンラインストレージ)を、記憶装置13として利用してもよい。
【0024】
図2は、制御装置11の機能的な構成を例示するブロック図である。図2に例示される通り、第1実施形態の制御装置11は、利用者Uの睡眠障害の治療方法Kを特定するための複数の機能(取得部112,特定部114,表示制御部116)として機能する。なお、複数の装置の集合(すなわちシステム)で制御装置11の機能を実現してもよいし、制御装置11の機能の一部または全部を専用の電子回路(例えば信号処理回路)で実現してもよい。
【0025】
具体的には、利用者に関する各種の情報(以下「利用者情報」とうい)Pに応じて、治療方法Kが特定される。第1実施形態では、以下の[1]~[5]の情報が利用者情報Pに含まれる。
[1]利用者の睡眠に関する情報(以下「睡眠情報P1」という)
[2]利用者の生体に関する情報(以下「生体情報P2」という)
[3]利用者の生活に関する情報(以下「生活情報P3」という)
[4]利用者の身体に関する情報(以下「身体情報P4」という)
[5]利用者の病気に関する情報(以下「病気情報P5」という)
【0026】
なお、睡眠情報P1、生体情報P2、生活情報P3、身体情報P4、および、病気情報P5の具体的な例示については後述する。
【0027】
利用者情報P(P1-P5)は、利用者Uまたは担当者(典型的には医師等の医療従事者)による操作装置17の操作のもと、事前に記憶装置13に記憶される。
【0028】
取得部112は、記憶装置13に記憶された利用者情報P(P1-P5)を取得する。
【0029】
特定部114は、取得部112が取得した利用者情報P(P1-P5)に応じて治療方法Kを特定する。具体的には、特定部114は、利用者情報P(P1-P5)を学習済モデルMに入力することで、利用者Uの睡眠障害を治療するための治療方法Kを特定する。第1実施形態では、事前に用意された複数の治療方法のうちの何れかを利用者Uの睡眠障害を治療するための治療方法Kとして特定する。複数の治療方法は、利用者Uに提示する治療方法Kの候補であるとも換言できる。特定部114により特定された治療方法Kは、利用者Uに推奨される治療方法である。
【0030】
利用者Uに推奨される治療方法Kの候補となる複数の治療方法は、例えば、以下の[1]~[9]の治療方法である。
[1]検査
[2]生活習慣改善療法
[3]心理療法
[4]認知行動療法
[5]教育入院
[6]専門診療科の受診
[7]睡眠環境の改善
[8]薬物療法
[9]経過観察
【0031】
[1]検査では、例えば、利用者Uの睡眠の状態を把握するための検査であり、例えば、睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)、睡眠覚醒リズムを評価するアクチグラフィ検査、過眠症の診断に用いられる反復睡眠潜時検査、日々の睡眠状態を把握するための睡眠日誌の記録、うつ病の罹患やストレスの有無等を確認するためのメンタルヘルス検査等である。さらには、血液検査(エストロガンなど女性ホルモン、テストステロンなど男性ホルモン、及び両者のバランス、視床・視床下部・下垂体の種々の内分泌レベル、各種甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモン、様々なウイルス感染の状態、種々の薬剤の血中濃度など)、超音波、X線CT、MRI検査なども検査に含まれる。
【0032】
[2]生活習慣改善療法は、例えば、食事指導や運動指導(例えば有酸素運動の指導)等を行うことで生活習慣を改善させる療法である。食事指導には、例えば、特に朝食時の高タンパク食の摂取、サプリメント(セロトニンから睡眠に重要なメラトニンへの代謝に重要なトリプトファン、ALA、グリシン、テアニン、オルニチン等アミノ酸やビタミンB群など)の摂取量などの指導が含まれる。
【0033】
[3]心理療法(個人)および[4]認知行動療法(団体)は、教示、対話および訓練を通して認知、情緒および行動などに変化をもたらすことで精神面から睡眠障害を改善するための療法である。
【0034】
[5]教育入院は、生活習慣(食生活、運動習慣、入浴(温度、入浴時間)等)、喫煙習慣を見直すことで睡眠障害を改善することを目的とした入院である。なお、食生活の見直しでは、例えば食事内容、食事時間、コーヒーやカフェイン摂取量や摂取時間などの見直しが含まれる。運動習慣の見直しでは、筋トレなど激しい無酸素運動の質量・時間、ウォーキングなど有酸素運動の従続時間・タイミングの見直しが含まれる。
【0035】
[6]専門診療科の受診は、例えば、循環器科、腎臓内科、糖尿病・代謝・内分泌専門医、精神神経科、神経内科、脳神経外科、整形外科、消化器外科、各種依存症外来(ニコチン・アルコール・薬剤依存など)、睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来、不眠症外来などの専門診療科の受診である。
【0036】
[7]睡眠環境の改善では、例えば、睡眠環境を改善するための各種の製品の使用を推奨する。例えば、アイマスク、遮光カーテン、耳栓、寝具(例えば特願2020-218673やPCT/JP2021/047966の寝具システム)、睡眠時に着用する衣類(例えば特願2021-021263やPCT/JP2021/047967の衣類システム、特願2020-218672やPCT/JP2022/003835のウェアセット)、カプセル(例えば特願2021-78400やPCT/JP2022/018207のシェルター)などの製品の使用が提示される。
【0037】
[8]薬物療法は、例えば、睡眠障害を改善するための各種の医薬品を使用する療法である。
【0038】
[9]経過観察は、定期的な通院による経過観察での睡眠習慣の見直しである。
【0039】
学習済モデルMは、統計的推定モデル(例えばニューラルネットワーク)であり、入力Aに応じた出力Bを生成する。具体的には、学習済モデルMは、入力Aから出力Bを特定する演算を制御装置11に実行させるプログラム(例えば人工知能ソフトウェアを構成するプログラムモジュール)と、当該演算に適用される複数の係数との組合せで実現される。学習済モデルMの複数の係数は、入力Aと出力Bとを対応させた複数の教師データを利用した事前の機械学習(深層学習)により最適化されている。すなわち、学習済モデルMは、入力Aと出力Bとの間の関係を学習した統計的推定モデルである。学習済モデルMは、機械学習に使用した複数の教師データに潜在する傾向(入力Aと出力Bとの間の関係)のもとで入力Aに対して統計的に妥当な出力Bを生成する。
【0040】
本発明において、入力Aは利用者情報P(P1-P5)であり、出力Bは睡眠障害の治療方法Kである。例えば、過去に睡眠障害の治療を行った患者の利用者情報P(P1-P5)と、当該患者が実際に睡眠障害を改善することができた治療方法とを対応させた教師データが機械学習に利用される。
【0041】
具体的には、特定部114は、学習済モデルMに利用者情報P(P1-P5)を入力し、当該学習済モデルMが出力した結果(すなわち複数の治療方法のうちの何れか)を、利用者Uの治療方法Kとして特定する。なお、利用者Uについて特定した治療方法Kと、当該治療方法Kの特定に利用した利用者情報Pとは、記憶装置13に記憶される。
【0042】
表示制御部116は、特定部114が特定した治療方法Kを表示装置15に表示させる。
【0043】
図3は、利用者情報P(P1-P5)から治療方法Kを特定する処理を例示するフローチャートである。例えば、担当者(典型的には医療従事者)からの指示を契機として図3の処理が開始される。
【0044】
取得部112は、記憶装置13に記憶された利用者情報P(P1-P5)を取得する(SA1)。特定部114は、取得部112が取得した利用者情報P(P1-P5)から利用者Uの睡眠障害の治療方法Kを特定する(SA2)。具体的には、特定部114は、学習済モデルMに利用者情報P(P1-P5)に入力した出力を利用者Uに最適な治療方法Kとして特定する。表示制御部116は、特定部114が特定した治療方法Kを表示装置15に表示させる。
【0045】
以下、睡眠情報P1、生体情報P2、生活情報P3、身体情報P4、および、病気情報P5の具体的な例示を記載する。
【0046】
睡眠情報P1は、例えば、睡眠障害に関する自覚症状(例えば睡眠不足感、アルコールなしでは眠れないなど入眠が難しい、早朝覚醒、いびき、起床時口内乾燥感、頭痛・頭重感がある、爽快感がない、倦怠感、疲れが取れない、日中の眠気(エプワース眠気尺度)、寝返りの有無などに関する自覚症状)、睡眠時間(例えば、時間帯、起床時刻、就寝時刻、昼寝や二度寝の時間等を含む)、睡眠環境(例えば騒音・振動・煙・埃・塵・匂い・花粉の有無、住居周囲の照明の有無、標高、近隣における河川・海・国道・高速道路・鉄道の有無、個室/相部屋、隣室との間の壁の性状)、および、睡眠内容(例えば睡眠の質、睡眠の深さ、中途覚醒の回数、夜間のトイレ回数、寝返りのうちやすさなど)、日中の集中力・持続力など生産性を含む。
【0047】
ただし、睡眠情報P1に含まれる情報は、以上の例示に限定されない。例えば、睡眠時の姿勢等の各種の睡眠に関する情報を睡眠情報P1が含んでもよい。
【0048】
生体情報P2は、血圧、脈拍数、体温、および、心電図に関する情報の少なくとも1つを含む。ただし、生体情報P2に含まれる情報は、以上の例示に限定されない。
【0049】
生活情報P3は、食事(食事時間、内容、回数、間食の有無、外食の頻度、食の好みなど)、ストレス(家庭・学校・仕事での対人関係でのストレスの有無)、入浴(時間、温度、サウナの利用の有無、シャワーのみかなど)、嗜好品(飲酒・喫煙の有無・一日当たりのたばこの本数・タイミング(特に入眠4時間以内の本数)、牛乳・ヨーグルト・お茶(濃いお茶か薄いお茶かなども含む)・ジュース・コーヒーの摂取回数・摂取量・タイミング(特に午後3時以降の摂取量))、運動(運動習慣の有無、内容など)、仕事(内容、勤務時間帯など)、学校、および、家族(同居家族の年齢・性別、介護家族の有無、配偶者の有無、親族構成など)に関する情報のうち少なくとも1つを含む。
【0050】
ただし、生活情報P3に含まれる情報は、以上の例示に限定されない。例えば、1日の消費・摂取カロリーに関する情報、排尿(昼および夜での回数など)・排便に関する情報等が生活情報P3に含まれてもよい。また、過去の喫煙、過去の飲酒、過去の運動等の利用者Uの過去の生活に関する情報を生活情報P3として含んでもよい。
【0051】
身体情報P4は、年齢、性別、身長、体重(急激な体重変化であるか慢性的な肥満であるか等の体重の変化を含む)、BMI(Body Mass Index)、体組成(例えば、筋肉量、体脂肪率)、および、腹囲に関する情報のうち少なくとも1つを含む。
【0052】
ただし、身体情報P4に含まれる情報は、以上の例示に限定されない。例えば、利用者Uの部位毎について計測した結果(例えば四肢の筋肉量)等が身体情報P4に含まれてもよい。
【0053】
病気情報P5は、病歴(現病歴および既往歴を含む)、および、自覚症状(睡眠障害に関するものを除く)に関する情報のうち少なくとも1つを含む。病歴は、例えば、現在罹患している、または、過去に罹患した各種の病気(不整脈等の心臓病、呼吸器疾患、肝疾患、腎臓病、自律神経失調症、睡眠障害、運動機能障害、悪性腫瘍、内分泌疾患、うつ・統合失調症、高血圧症、脳卒中、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞、高度脳機能障害、脂質異常、高尿酸血症、脂肪肝、肝嚢胞、睡眠時無呼吸症候群、腎嚢胞、肺気腫、水腎症、月経異常・妊娠合併症、卵巣機能異常、卵巣腫瘍、卵巣嚢胞、更年期障害、LOH症候群(男性更年期障害)、貧血、喘息など)に関する情報の他に、合併疾患(例えば、ストレートネック、椎間板ヘルニア・変形性脊椎症など脊椎症、慢性扁桃腺炎、副鼻腔炎、症候性肥満、うつ、統合失調症、甲状腺機能低下症、クッシング症候群、心血管疾患、1型糖尿病(自己免疫性を含む)、耐糖能異常、2型糖尿病、小児糖尿病、摂食障害など)に関する情報、現在服薬中の薬剤に関する情報、薬剤の副作用に関する情報、アレルギーに関する情報等も含む。
【0054】
自覚症状は、例えば、過食、体重増加、頻脈、動悸、息切れ、むくみ、火照り、咳・痰、乏尿、頸静脈怒張、発作性夜間呼吸困難、頻呼吸、起座呼吸、夜間咳嗽、労作性呼吸困難、右季肋部痛、膨満感、食欲不振、心窩部不快感、意識障害、不穏、記銘力低下、耳鳴り、めまい・立ちくらみ、自律神経失調傾向、倦怠感、疲れが取れない、咽頭違和感、慢性疼痛、膝痛・腰痛、起床時頭痛、胸焼け、胃もたれ、便秘・血便・黒色便、ニキビ等何らかの皮膚症状、手足のしびれ、筋肉のこり、多汗、口の渇き、下肢静脈瘤、排尿痛、残尿感、血尿、疼痛、乳腺のしこり、乳頭分泌、腫脹、月経異常、おりもの異常、吐き気、血圧上昇、片(偏)頭痛、頭のモヤモヤ違和感、歯痛、歯茎からの出血など歯周病、不妊、薄毛、勃起不全、不安、抑うつ、不定愁訴、メディア・SNSなどを介して入ってくる様々な情報に対するリテラシーがしっかりしていない為絶えず不安がある、生活習慣・人間関係・仕事の出来栄えなどにこだわりがあり、思い通りにならない或いは変化が起こった時に対応しにくく悩んでしまう性向がある、などである。
【0055】
ただし、病気情報P5に含まれる情報は、以上の例示に限定されない。例えば、血縁者(例えば3親等くらいまで)に高血圧症、心臓病、脳卒中、くも膜下出血、脳出血或いは脳梗塞、大動脈瘤或いは解離、肥満、(2型)糖尿病、脂質異常、悪性腫瘍(特に大腸、膵臓、腎臓、甲状腺、乳腺、卵巣や子宮腫瘍)等に罹患している者がいるか等の親族に関する病歴も病気情報P5に含まれる。
【0056】
以上の説明から理解される通り、本発明では、学習済モデルMに利用者情報Pを入力することで利用者Uの睡眠障害を改善するための治療方法Kが特定されるから、利用者Uの個別の事情を加味して適切に治療方法Kを特定することが可能である。すなわち、利用者Uに個別最適化された治療方法Kが提供される。
【0057】
第1実施形態では、睡眠情報P1、生体情報P2、生活情報P3、身体情報P4および病気情報P5を利用者情報Pが含むから、睡眠情報P1に加えて、生体情報P2、生活情報P3、身体情報P4および病気情報P5を加味して、利用者Uに適切な治療方法Kを特定できるという利点がある。
【0058】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0059】
利用者Uは、特定部114が特定した治療方法Kにより睡眠障害を治療する。ここで、特定部114が特定した治療方法Kにより治療を進めることで利用者Uの睡眠の状態が変化することが想定される。例えば、治療方法Kが利用者Uに適切だった場合には、快眠できるようになる(すなわち正常な睡眠がとれている状態になる)。一方で、治療方法Kが利用者Uに不適切だった場合には、睡眠障害の状態が維持されている(すなわち快眠できていない状態が維持される)ことが想定される。
【0060】
以上の事情を考慮して、第2実施形態では、特定部114が特定した治療方法Kにより治療中の利用者Uにおける睡眠の状態を加味して治療方法Kを再度特定する。睡眠の状態には、例えば、快眠できている状態または快眠できていない状態(不眠・過眠である状態)などである。
【0061】
図4は、第2実施形態の制御装置11の機能を例示するブロック図である。第2実施形態の制御装置11は、取得部112、特定部114および表示制御部116に加えて、処理部115を具備する。
【0062】
特定部114は、第1実施形態と同様に、取得部112が取得した利用者情報P(P1-P5)を学習済モデルMに入力することで、利用者Uの睡眠障害を治療するための治療方法Kを特定する。そして、特定された治療方法Kにより治療が開始されると、利用者Uは自身の睡眠の状態を特定するための情報(以下「特定情報」という)Hを情報処理装置100に操作装置17を利用して入力する。
【0063】
特定情報Hは、例えば、図5のチェック表をもとに情報処理装置100に入力される。図5のチェック表は、表示装置15に表示される。
【0064】
図5に例示される通り、チェック表には、例えば、利用者Uの睡眠に関する複数の質問(問診)と、当該質問に対する回答となる複数の選択肢とが示されている。例えば、入眠時間(寝床に入ってから眠りにつくまでの時間)、中途覚醒の回数、起床時間(予定していた時間との比較)、睡眠時間(入眠してから最終的な目覚めまでの時間)、睡眠の質(睡眠に対する満足度)、日中の気分、日中の体調、および、日中の眠気に関する質問が例示される。
【0065】
利用者Uは、各質問について複数の選択肢のうちの何れかを操作装置17により選択することで回答を入力する。第2実施形態では、各質問に対する回答を特定情報Hとして例示する。なお、利用者Uは、所定の間隔で(例えば1週間毎に)チェック表に対する回答を行う。
【0066】
処理部115は、特定情報Hから利用者Uは自身の睡眠の状態を特定する。例えば、質問に対する複数の選択肢の各々に事前にスコアが設定される。そして、処理部115は、複数の質問に対する回答のスコアの合計値に応じて、睡眠の状態を特定する。図5では、合計値が25の場合を例示する。例えば、複数の数値範囲の各々について、睡眠の状態が設定(例えば「8~15:快眠である状態、16~24:普通である状態、25以上:快眠できていない状態」)される。したがって、図5の場合には、利用者Uの睡眠の状態が快眠できていない状態であると特定される。
【0067】
特定部114は、処理部115が特定した利用者Uの睡眠の状態を表す情報(以下「状態情報」という)Qを学習済モデルMに入力することで、治療方法Kを再度特定する。第2実施形態の状態情報Qは、処理部115が特定した利用者Uの睡眠の状態である。例えば、特定部114は、利用者情報P(P1-P5)と、当該利用者情報Pにより特定された治療方法K(すなわち現在の治療方法K)と、状態情報Qとを学習済モデルに入力することで、治療方法Kを再度特定する。したがって、現在の治療方法Kによる睡眠障害の改善の可否を踏まえて、最適な治療方法Kが特定され得る。
【0068】
なお、特定部114が特定した治療方法Kと、当該治療方法Kにより治療をした利用者Uの睡眠の状態とは、学習済モデルMにフィードバックして機械学習される。したがって、学習済モデルMの精度が向上する。
【0069】
以上の説明から理解される通り、第2実施形態の特定部114は、特定した治療方法Kにより治療中の利用者Uにおける睡眠の状態を表す情報を学習済モデルMに入力することで、治療方法Kを再度特定する要素として機能する。
【0070】
第2実施形態では、処理部115が特定した利用者Uの睡眠の状態を状態情報Qとして例示したが、状態情報Qは以上の例示には限定されない。例えば、チェック表の各質問に対する回答を状態情報Qとして学習済モデルに入力してもよい。
【0071】
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を適宜に併合することも可能である。
【0072】
(1)前述の各形態において、利用者情報Pは、利用者Uまたは担当者(医療従事者)が入力する。例えば、利用者U自身で入力が可能な利用者情報P(例えば睡眠情報P1、生活情報P3、病気情報P5)は利用者Uが入力し、担当者でなければ入力が不可能な利用者情報P(例えば生体情報P2、病気情報P5)は担当者が入力することが想定される。したがって、例えば、図6に例示する情報処理装置100の構成も採用される。
【0073】
図6では、サーバ装置を情報処理装置100として使用する。図6のサーバ装置は、利用者Uの端末装置Gおよび担当者Dの端末装置Gとそれぞれインターネット等の通信網Nを介して相互に通信可能である。利用者Uおよび担当者Dは、それぞれ自身の端末装置Gにより利用者情報Pを入力し、入力した利用者情報Pは情報処理装置100に送信される。そして、情報処理装置100で治療方法Kを特定し、当該治療方法Kが利用者Uの端末装置Gおよび担当者Dの端末装置Gに送信される。
【0074】
また、図7に例示される通り、例えば、担当者Dの端末装置Gに情報処理装置100の機能を搭載してもよい。以上の構成では、利用者Uの端末装置Gから入力された利用者情報Pが担当者Dの端末装置Gに送信される。なお、図6および図7の構成の何れにおいても、利用者Uの端末装置Gに治療方法Kを送信することは必須ではない。
【0075】
(2)前述の各形態において、利用者Uが各種の利用者情報Pを入力するための情報端末(例えばタブレットまたはスマートフォン)を情報処理装置100とは個別に用意してもよい。以上の構成では、情報処理装置100と当該情報端末とは、インターネット等の通信網または近距離無線通信を介して相互に通信可能である。端末装置により利用者Uに入力された利用者情報Pは情報処理装置100に送信される。情報処理装置100は、端末装置から送信された利用者情報Pを利用して治療方法Kを特定する。
【0076】
また、例えばインターネット等の通信網を介して端末装置(例えばタブレットまたはスマートフォン)と通信するサーバ装置により情報処理装置100を実現してもよい。以上の構成では、端末装置から利用者情報Pが情報処理装置100に送信され、情報処理装置100は利用者情報Pを利用して治療方法Kを特定する。そして、特定した治療方法Kを端末装置に送信する。
【0077】
(3)利用者Uが自身の端末装置において利用者情報Pを入力する構成においては、例えば、変化し得る利用者情報Pについては、利用者Uに特定の周期で(例えば毎日)利用者情報Pを入力させてもよい。例えば、食事に関する情報(例えば食事の内容や量)、嗜好品に関する情報(例えば飲酒の有無や量)、睡眠(例えば時間、質、睡眠の状態)に関する情報、運動(例えば運動の有無や内容)に関する情報、入浴(例えば時間)に関する情報、体重に関する情報、体調(例えば疲労感や頭痛の有無)に関する情報、現在行っている治療方法Kに対する感想・満足度などは、日々変化し得る。
【0078】
情報処理装置100は、利用者Uにより毎日入力された上記の利用者情報Pを学習済モデルに入力して、治療方法Kを特定してもよい。また、情報処理装置100は、利用者Uが利用者情報Pを入力する度に治療方法Kを再度特定(すなわち更新)してもよい。すなわち、新規の利用者情報Pが入力されたことを契機として、治療方法Kを特定する処理が再度実行される。特定部114は、学習済モデルMに入力する利用者情報Pが更新された場合に、当該更新後の利用者情報Pを学習済モデルMに入力することで治療方法Kを再度特定する要素として機能する。したがって、利用者Uの変化を加味して適切に治療方法Kを特定することが可能である。
【0079】
なお、利用者Uの睡眠の状態は、天候、季節、温度および湿度等の気候に応じても変化し得るから、利用者情報Pと気候と学習済モデルMに入力して、治療方法Kを特定してもよい。
【0080】
さらに、情報処理装置100は、所定の期間毎にわたる利用者情報Pの変化(例えば、所定の期間にわたる利用者情報Pの平均、直前の期間における利用者情報Pとの比較など)を加味して治療方法Kを特定してもよい。以上の通り、利用者情報Pは、最初の治療方法Kを特定する前(すなわち治療前)と、特定後の治療方法Kに基づく治療中との双方において、入力され得る。そして、治療方法Kが特定された後も、利用者情報Pが入力(更新)される度に治療方法Kが再度特定(更新)される。したがって、治療前、治療中随時、利用者情報Pを学習済モデルに入力することで、その時々で個別最適化された治療方法Kが特定されるという利点がある。
【0081】
(4)前述の形態において、特定部114は、治療方法Kを特定する前に、利用者情報Pを使用して利用者Uが睡眠障害であるか否かを判定してもよい。睡眠障害であるか否かの判定には、例えば学習済モデルが利用される。そして、特定部114は、利用者Uが睡眠障害であると判定した場合に、利用者情報Pから治療方法Kを特定する。
【0082】
(5)前述の各形態において、例えば、治療方法Kによる治療中の利用者Uは、体調、仕事でのストレス、運動時間・内容、食事時間・内容、飲酒の有無・量、入浴時間・内容等、睡眠時間・内容(目覚め回数、夜間のトイレ回数など含め)、起床時の体調、快眠感・頭痛・乾きなど症状等の日々変化し得る情報を情報処理装置100に日々入力する。そして、特定部114は、連日にわたり入力された情報を加味して、治療方法Kを特定してもよい。
【0083】
(6)前述の形態では、睡眠情報P1、生体情報P2、生活情報P3、身体情報P4および病気情報P5の全てを含む利用者情報Pを例示したが、利用者情報Pは少なくとも睡眠情報P1を含めばよい。また、利用者情報Pにおいて睡眠情報P1以外に含まれる情報は任意である。ただし、利用者Uの個別の事情を加味して最適な治療方法Kを特定するという観点からは、睡眠情報P1の他に、生体情報P2、生活情報P3、身体情報P4および病気情報P5の少なくとも1つを利用者情報Pが含む構成が好適である。
【0084】
また、以上に例示にした利用者情報P(P1-P5)の他に、利用者に関する各種の情報が利用者情報Pに含まれる。
【0085】
例えば、利用者Uによっては、薬物療法は希望せず、生活習慣改善療法や心理療法等を中心に睡眠障害を改善したいというような要望もある。したがって、利用者情報P(P1-P5)に加えて、利用者U自身が所望する治療方法Kに関する情報を学習済モデルに入力してもよい。
【0086】
利用者Uが女性である場合には、妊娠(妊娠の有無など)、出産(出産・授乳歴の有無など)、月経(周期、閉経の時期、初潮の時期など)、女性特有の疾患(例えば、乳がん、乳腺炎、子宮がん、子宮筋腫、子宮内膜症、貧血、卵巣がん、卵巣嚢腫、甲状腺がんなど)に関する情報を利用者情報Pとして含める構成が好適である。さらには、経口避妊薬を飲んでいるか、豊胸手術をしたことがあるか、子宮内避妊具を使用しているか、アフターピルを使用しているか、更年期症状があるか、家庭内暴力があるか、家事・育児・介護等・家庭内にトラブルがあるか、恋愛中か、失恋したか、職場環境に問題があるか、相談相手がいるか、困った時には自分で抱え込むか、乳がん・子宮がん・大腸がん検診を受けたことがあるか、乳がん・子宮がん・大腸がんの精密検査を受けたことがあるか等を利用者情報Pに含ませてもよい。
【0087】
また、以下の[1]-[2]のような情報が利用者情報Pに含められる。
【0088】
[1]利用者に対する検査(PSG検査(簡易検査含む)、血液検査、生化学検査、X線検査、CT(Computed Tomography)検査、MRI(magnetic resonance imaging)・MRA(magnetic resonance angiography)検査および、超音波検査、尿検査等の各種の検査)の結果に関する情報
[2]利用者Uの性格に関する情報(健康で好ましい・いやで仕方がない・諦めている等の現在の自分をどう見ているか、努力が嫌いか、同じことを続けることが得意・不得か、飽きっぽいか、最初に口にするのは最も好きなもの(例えば甘いもの)か、最後に口にするのは最も嫌いなもの(例えば野菜)かなど)
【0089】
また、各種の問診に対する回答を利用者情報Pとして含んでもよい。問診は、例えば、現在の生活・環境(身体的健康状態、精神的或いは心理的健康状態、交友関係、経済的状態、家庭環境学校生活、成績、学校環境、職場生活、職場環境)の満足度や、国内・世界状況(現在および将来を含む)・将来の政界状況・新型コロナウイルス感染症への安心度、または、現在の不安感、過去における治療の有無(もし治療をしていたが失敗をしている場合にはその原因)、経過観察中であるか否か等を問う内容である。
【0090】
(7)治療方法Kの候補となる複数の治療方法は、上記の例示(検査、生活習慣改善療法,心理療法,認知行動療法,教育入院,専門診療科の受診,睡眠環境の改善,薬物療法,経過観察)には限定されない。例えば、各治療方法をさらに細分類化したものを治療方法Kの候補となる複数の治療方法としてもよい。
【0091】
なお、特定部114は、薬物療法を利用者Uに適切な治療方法Kとして特定する場合には、学習済モデルを利用して具体的な薬剤を特定してもよい。
【0092】
また、特定部114は、生活習慣改善療法を利用者Uに適切な治療方法Kとして特定する場合には、具体的な食事の内容(例えば、糖質やタンパク質等の各栄養素の摂取量)や、具体的な運動の内容(例えば、有酸素運動の運動時間、無酸素運動の運動時間、無酸素運動を行うべき部位)等を治療方法Kとして特定してもよい。
【0093】
(8)前述の形態では、複数の治療方法(検査,生活習慣改善療法,心理療法,認知行動療法,薬物療法,教育入院,専門診療科の受診,経過観察)のうち利用者Uに統計的に妥当な治療方法Kを特定したが、例えば、複数の治療方法において利用者Uに妥当な順番を特定してもよい。すなわち、学習済モデルMの出力は所定の治療方法Kには限定されない。なお、学習済モデルMの出力に応じて、機械学習に利用される教師データも適宜に変更し得る。
【0094】
また、特定部114は、複数の治療方法のうちの2以上の治療方法を特定してもよい。例えば、学習済モデルが出力した利用者Uに妥当な治療方法の順番において上位にある2以上の治療方法が特定される。以上の説明から理解される通り、特定部114は、複数の治療方法のうちの少なくとも1つを特定する要素として機能する。
【0095】
(9)利用者情報Pのうち利用者Uにより入力可能な利用者情報Pは、例えば、問診に対する回答として情報処理装置100に入力させる構成が好適である。各利用者情報Pに対応する問診は、端末装置の表示制御部116により表示装置15に表示させる。問診に対する回答は、複数の選択肢から選択させる構成でも任意に記載させる構成でもよい。なお、利用者Uによる利用者情報Pの入力は、利用者Uの端末装置を介して行ってもよい。
【0096】
なお、対人恐怖や人間不信が著しい場合には、ロボットによる合成音声による問診、無人問診室で利用者U自身によるタブレット入力による問診が考慮されるべきで、本発明の主要な要素の一つである。また、効率的に運用する目的で、バーチャルリアリティーの手法を取り込むことも重要である。例えば、待合室などでの待ち時間に、利用者情報Pの入力の参考にする観点、利用者Uがどの治療方法が好ましく向いているかを検討する観点から、バーチャル健康健診(問診、血液検査、画像診断、内科診察)、バーチャル心理療法・バーチャル認知行動療法、バーチャル食事指導・運動指導、バーチャル教育入院(断食療法を含む)等を見ることが好ましい・
【0097】
ただ、利用者Uの状態を観察する目的、安全を確保する目的で防犯カメラによる観察が、利用者Uの同意のもとでの必要である。原則的には、看護師或いは保健師による問診、病歴確認が必要で、その際、受け答えの状態など含めて、気づいた点を担当者のみ入力可能な(パスワード或いは指紋・顔認証による本人確認後入力)ページに入力し、担当者間で情報共有することでその後の検査、診察をスムーズに行えるようにする。
【0098】
(10)前述の各形態において、利用者情報Pを学習済モデルに入力して、利用者Uの睡眠障害の種類を特定するための処理部を具備してもよい。睡眠障害の種類は、例えば、不眠症、睡眠関連呼吸障害群、中枢性過眠症群、概日リズム睡眠障害群、睡眠時随伴症群、睡眠関連運動障害群、弧発性の諸症状、および、その他の睡眠障害などである。処理部は、相異なる複数の睡眠障害の種類のうちの何れかを利用者Uの睡眠障害の種類として特定する。なお、上記の各睡眠障害の種類をさらに詳細に分類した種類を睡眠障害の種類として例示してもよい。
【0099】
また、処理部は、利用者情報Pを学習済モデルに入力することで、不適切な睡眠衛生、適応障害性不眠症、精神生理性不眠症、身体的な睡眠障害、精神的な睡眠障害、睡眠不足症候群(睡眠不足)、および、薬剤に関連した睡眠障害というような睡眠障害の原因を特定してもよい。
【0100】
(11)前述の形態に係る情報処理装置100は、コンピュータ(具体的には制御装置11)とプログラムとの協働により実現される。前述の形態に係るプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を含み得る。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。また、通信網を介した配信の形態でプログラムをコンピュータに提供することも可能である。
【0101】
また、本発明は、利用者情報P(P1-P5)を学習済モデルに入力することで、当該利用者Uの睡眠障害を改善するための治療方法Kを特定する、コンピュータにより実現される情報処理方法としても特定される。
【0102】
(12)働き方改革などでストレスを少なくし、健康寿命を長くし、労働年齢を上げ、少子高齢化で国際競争力や生産性の低下を防ぐことは、国からの要請であるばかりでなく、個々人にとっても、重要なことだと考えられる。しかしながら、わが国では、自殺者が新型コロナウイルス感染症の影響もあり、小学生など若年者も含めて、むしろ増加傾向にある。更に若年から壮年期、更に高齢者を悩ませているのが睡眠障害である。悩みや抑うつ症状により、睡眠時間を確保する為にも必要な生産性を下げる原因ともなる諦めや希望・意欲の喪失にも繋がる。
【0103】
その為、睡眠障害を改善、解消する為には、既にその主な原因であることが明らかにされているストレスに対する抵抗力を高める運動不足や肥満に伴うメタボリック症候群を防ぐことが肝要で、また生産性を上げるべく、意欲・記憶力・集中力を高める為にも、十分な快眠を得ることは、内分泌機能にも大きな役割を占める自律神経のバランスを保つ上でも極めて重要である。特に、音楽を聴きながらなど楽しみながらの適度の有酸素運動などにより入眠後90分間(睡眠のゴールデンタイム)に深い睡眠が得られれば、薄毛の予防にもなる成長ホルモンが大量に分泌されることも知られている。ただ、過激な運動は、ストレスにもなり、筋肉痛や関節痛の原因ともなり、睡眠には必ずしもプラスに働かない。
【0104】
ところが、日本人はストレスに極めて弱い特別な民族であることが証明されつつある。すなわち、日本人は、欧米各国と比較して、自律神経や内分泌バランスを維持する上で極めて重要な睡眠時間が約1時間半短いとされている。また日本人はLL型遺伝子(最も性格がおおらか、楽天的・ポジティブな性格)を持つ割合が、全体の3%しかいない。すなわち、ネガティブな性格のSS型遺伝子(不安を感じやすく、うつ病の発症リスクが高い)を持つ者の割合が、世界で最も高い民族である。すなわち、睡眠不足に陥りやすい民族でもある。
【0105】
その原因としてストレスに対するアジア人、特に日本人特有の反応が下記のように脳内セロトニン(精神の安定、心の安らぎに関与)分泌量によって規定されているという。更にそのセロトニン分泌量はセロトニントランスポーター遺伝子のタイプによって決まるとされる。すなわち、欧米人と比較してアジア人は、ポジティブな性格のLL遺伝子を持つ人の割合が低い。アジアが高温多湿で伝染病感染リスクが高い地域であり、ヒトの体が外敵のストレスに対して敏感になる遺伝子が組み込まれたという説もある。つまり、日本人はLL型遺伝子(最も性格がおおらか、楽天的・ポジティブな性格)を持つ割合が、全体の3%しかいなく、ネガティブな性格のSS型遺伝子(不安を感じやすく、うつ病の発症リスクが高い)を持つ者の割合が、世界で最も高い民族とされる。なお、その中間がヘテロのSL型である。朝の明るい日光を浴びることによりセロトニンから14時間後のメラトニン産生が影響される。したがって、セロトニンの材料ともなる朝食時のトリプトファン等のアミノ酸を積極的に摂取すること、および、朝の陽射しを浴びることが、ストレス耐性や睡眠の質にも影響するとも考えられる。
【0106】
なお、睡眠6時間では集中力、注意力、判断力、実行機能、即時記憶、作業記憶、数量的能力、数学能力、論理的推論能力、気分、感情等殆どの脳機能低下が認められ、徹夜明けと同程度の認知機能、作業能力に陥ってしまう。結果、頑張っても捗らない。ミスや失敗が多く叱られる、残業が増え、睡眠時間を削るという悪循環に陥ることとなる。また疲れやすい、感情が不安定、人間関係も悪化など更に事態を悪化させ、睡眠障害を引き起こすことになる。そこで、1時間の睡眠時間延長或いは26分間の仮眠で作業能力の34%アップ、注意力が54%アップも報告されている。
【0107】
快眠感には、目覚めの状態も大きな役割を占めている。また、目覚めには膀胱刺激に伴う尿意・頻脈・血圧上昇、更には目に入る明るさも重要である。すなわち、尿意及び目に入る明かるさのコントロールが必要となる。なお、覚醒時には青色照明を、睡眠時には暖系照明をというのが原則である。また睡眠時の服装も頭寒足温を実現するのに適したものとし、歯の管理、特に疼痛を伴う虫歯や歯周病の管理は快眠を実現する為にも必要である。明るさ、光の質・強さや振動、照明等はコントロールが可能であるが、天候、気圧など様々な因子によって変化する自律神経のバランスが大きく関係する尿意には、多くの因子が関係し、コントロールが容易ではない。
【0108】
そこで、ストレスのチェックとして活性化SITH-1(ヘルペスウイルス6型(HHV-6(SITH-1遺伝子)))対する抗体価及びグルココルチコイドレベルチェックを行い、心理状態(不安状態にあるか否かなど)、生活習慣(食事回数・量(カロリー)・内容・食習慣(空腹感を覚えてから食べる、満腹感が幸せ)、運動量(歩数、カロリー)、排便回数・量、喫煙本数・回数、飲酒量・回数、飲コーヒー回数・量、お茶の種類・回数・量、水(ミネラルウオーター含む)回数・量、尿検査結果の経日的変化・水分摂取量・体重、尿回数・尿量など)との関係も利用者情報Pに含めることが好ましい。
【0109】
また、尿が膀胱に貯まって、個人によって、またその時の疲労・睡眠不足などの状況(さらには抗利尿ホルモンの分泌の状況)によっても異なるが、一定の量を超えると、交感神経が刺激され、脈拍数が増え、血圧も上昇し、他の刺激が加わると、目覚めに至ると考えられる。目覚めが、十分な睡眠時間のあとであれば、全く問題ないが、切迫した尿意に伴う中途覚醒や早朝覚醒では、睡眠不足、日中の眠気など、生産性の低下にも繋がり、社会的にも問題となる。したがって、快眠の為には、尿意および目に入る明かるさ、光の質・強さ・音・振動のコントロールが必要となる。特に切迫した尿意は血圧上昇を伴い、快眠感を削ぐことになる。
【0110】
上記のように、尿意のコントロールが快眠を実現するのに必要な為、自動検査ロボット導入を前提とした在宅時の尿検査(尿量、色(濃さ)、比重、pH、塩分(Na、Cl、K)濃度、定量検査(糖、蛋白、潜血、アルブミン)、定性検査(ウロビリノーゲン・ビリルビンアセトン体・クレアチニン))、心理状態、食事回数・量(カロリー)・内容、運動量(歩数、カロリー)、排便回数・量、喫煙本数・回数、飲酒量・回数、飲コーヒー回数・量、お茶の種類・回数・量、水(ミネラルウオーター含む)回数・量、その他のソフトドリンクの種類・回数・量、アルコール飲料の種類・回数・量、尿検査結果の経日的変化・(在宅時)水分摂取量・体重の一日変化と在宅時(特に夜間)尿回数・尿量を利用者情報Pに含めることが好ましい。
【0111】
(13)温度と睡眠との関係については、多くの知見があるが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが収束しないまま、中国、米国を除いての世界的な経済停滞下、雇用が不安定で、不規則かつ交代勤務など、現在の厳しい環境下での様々な睡眠障害の解決策に必ずしも活かされているとは言い難い。むしろ、効果に個人差が大きい薬物治療や生活習慣の見直しに集中しているかに見える。ところが、睡眠薬については、依存症やポリファーマシーの重篤な副作用などを含めて問題とされ、その長期投与が見直されて久しい。もし深い睡眠が十分取れれば、記憶が固定され生産性が向上し、内臓など各臓器組織の疲労が取れ、免疫機能が高まり、感染症に対する抵抗力も高まり、前向きの考えも生まれ、平和・平穏な環境を取り戻すという好循環を齎すことができる。正に、十分な快眠が個人・家族だけでなく、所属組織、国にも、平和など世界にも大変良い影響を及ぼすことは間違いないと考えられる。
【0112】
本発明の発明者は、登山中等の低体温症に伴い、抵抗できない程の眠気が、個人差なく生じ、深い睡眠に陥ることに着目した。一方、様々な動物が冬季、冬眠でやはり深い睡眠に入るとされている。つまり、低い温度により、脳活動が低下することで、深い睡眠が個人差なく得られる可能性があると考えた。他方、脳死に近い状態でも、低温に維持することで、脳組織の損傷からの回復が認められる症例があるとも報告されており、如何にして、脳活動の低下を起こし、脳以外の組織での低体温症の影響を避けるかを考え、従来なかった温度、湿度、明るさなど物理的或いは環境的アプローチにより快眠の実現をする。しかし、地域、季節、天候、ご本人の体調、心身のストレスなど環境によっても、快眠についての対応が変化する可能性があり、それぞれの変化に応じて随時、睡眠などの状態を把握しながら、快眠を実現する為のソリューションを提案できる発明を提案する。
【0113】
(14)特定の症状がある場合には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いが濃厚であるため、睡眠時無呼吸症候群専門外来の受診を治療方法Kとして優先的に特定することが好ましい。
【0114】
例えば、高度肥満や閉経後の女性など顎が小さく、2重・3重顎など頸部に脂肪が沈着している、サルコペニアやフレイルなど極端な運動不足、肺気腫、不整脈など心肺機能不全の状態では、浮腫みなどで下半身に貯留していた血液が睡眠時には、心臓へ還流しやすくなるなど、病態によっては、肺・心臓への負担がむしろ増える。このように、患者の基礎疾患など病態によるが、睡眠中に各臓器組織内の疲労物質の回収、成長ホルモン、女性ホルモンと男性ホルモン及びそのバランス等の生理活性物質の生産・分泌などを行うなど、睡眠は生きることそのもの・生命維持に直結したものでもある。
【0115】
一日の睡眠時間が3~5時間である慢性的な睡眠不足は、睡眠負債とも呼ばれ、免疫能の低下を招き、悪性腫瘍、糖尿病、不整脈や高血圧症など循環器疾患等のリスクを高めるだけでなく、それぞれの疾患の治療の効果を妨げ、記憶力・集中力・生産性の低下を招き、交通事故・自殺等のリスクをも高める。しかし、睡眠に関した自覚症状は、主観的なもので、また色々な事情や欲望の為、睡眠時間は削られることが稀ではない。例えば更年期などでは睡眠不足がうつ傾向を招くことはよく知られている。一方で、逆にうつ病では、入眠障害以外に、中途覚醒や早朝覚醒など睡眠障害を伴うことが多い。また加齢と共に、また日中の身体活動・精神神経的活動の質量の変化と共に、高齢者では、睡眠時間が短くなるのは、自然のことと、従来、理解されてきた。しかし、最近の認知症に関した知見では、高齢者でも、日中の適度の運動、食習慣等を続けることを前提としてではあるが、8時間以上の睡眠を確保できれば、認知症の予防になることが明らかとなってきた。このように、質の良い、また8時間以上の睡眠を取り、運動習慣や食習慣を保つことは、幅広い様々な生活習慣病の予防に直結している。以上の通り、適切な睡眠をとることは社会的にも非常に重要である。
【0116】
ここで、睡眠時における呼吸障害(例えば肥満、顎が小さい方、閉経後の女性に多い睡眠時無呼吸症群)がある利用者の呼吸を補助する各種の技術が従来から提案されている。睡眠時無呼吸症候群には、舌根部などで上気道が狭小化することで上気道が閉塞し、呼吸ができない閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome)と、呼吸中枢などの異常により呼吸指示がされないことで睡眠時に呼吸ができない中枢性睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome)と、その他原因不明例とがある。閉塞性睡眠時無呼吸症候群および中枢性睡眠時無呼吸症候群の双方の場合において、持続的陽圧治療法(continuous positive airway pressure)や、適応補助換気治療法(Adaptive Servo Ventilation)が標準的な治療として確立している。このような具体的な治療方法を治療方法Kとして特定してもよい。
【0117】
(15)肥満と睡眠とには深い関係がある。そこで、治療方法Kを特定するにあたって、睡眠促進因子と覚醒促進因子と食欲促進因子と食欲抑制因子とのバランスが取れているかを考慮する構成も採用される。具体的には、以下の通りである。
【0118】
因子(睡眠促進因子,覚醒促進因子,食欲促進因子,食欲抑制因子)に関する各項目について1~5の何れかのスコアを付ける。
【0119】
例えば、例えば、睡眠促進因子または食欲抑制因子が十分であれば、1どちらとも言えない場合には3、覚醒促進因子または食欲促進因子が強ければ5というようにスコアを付ける。各因子について付されたスコアを学習済モデルMに入力することで、治療方法Kを特定してもよい。
【0120】
各因子におけるスコアの付け方は、例えば、以下の通りである。以下の複数の項目の各々についてスコアが付けられる。なお、各項目のAに該当する場合には、睡眠促進因子・食欲抑制因子覚醒促進因子・食欲促進因子が十分であると判断して、1を付ける。一方で、各項目のBに該当する場合には、覚醒促進因子・食欲促進因子が高いと判断して、5を付ける。AおよびBの何れにも該当しない場合には3を付ける。なお、以下の各項目は例示であり、その他の項目も適宜に採用される。
【0121】
スコア(合計)を複数の段階に区分して、当該区分毎に最適な治療方法Kが特定される。スコアが高いほど問題があると判断されるため、より専門的な治療方法Kが特定される。治療方法Kを特定するにあたって、例えば、長期的にわたり因子について問題が多いと、体重を減少させ体調を改善するのが難しく、生活習慣の見直し等の必要があるため、それも加味して治療方法Kを特定する。
【0122】
<長期的な背景:幼少期>
項目(a1)
A:環境(経済的、住環境、家族関係)が安定
B:環境(経済的、住環境、家族関係)が不安定
項目(a2)
A:家族が健康で、食事・運動バランスが良かった。
B:家族に肥満の上、通院或いは入院中の病気の方がいた。
項目(a3)
A:家族の健康の知識・情報が十分だった。
B:家族の健康の知識・情報が不十分だった。
項目(a4)
A:家族に喫煙や飲酒をする人がいなかった。
B:家族に喫煙や飲酒をする人がいた。
項目(a5)
A:運動が好きで、疲れて8時間以上よく眠れた。
B:運動が苦手で、睡眠が6時間程度以下と短かった。
項目(a6)
A:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが安定。
B:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが不安定。
項目(a7)
A:体重は標準体重か下回っていた。
B:体重が増え、肥満か肥満傾向にあった。
【0123】
<中長期的な背景:主に学校(生徒・学生)時代>
上記の項目(a1)~(a7)に加えて、例えば下記の項目が採用される。
項目(b1)
A:栄養のことに気を配ることができた。
B:栄養のことなど構う余裕がなかった。
項目(b2)
A:通学時間が短かく疲れを感じなかった。
B:通学時間が長く、いつも疲れて居眠りもしていた。
項目(b3)
A:ストレスは少なく、適度の有酸素運動など解決策を編み出していた。
B:ストレスが多く、食事や間食など口にすることで解決した。
項目(b4)
A:友人も多く、ストレスが少なかった。
B:人付合いが苦手で、苛め等ストレスがあった。
項目(b5)
A:授業内容が理解でき学業成績も良かった。
B:授業内容が理解できず、学業成績が悪かった。
項目(b6)
A:体重は標準体重以内で安定していた。
B:体重の増加・減少を繰り返し、平均して標準体重を超えていた。
【0124】
<中期的な背景:主に社会に出てからの期間>
項目(c1)
A:友人も多く、ストレスが少なかった。
B:人付合いが苦手で、苛め等ストレスがあった。
項目(c2)
A:恋愛など異性との付き合いも問題ない。
B:異性との付き合いもうまく行かなかった。
項目(c3)
A:業務内容が理解でき業務成績も良かった。
B:業務内容が理解できず、業務成績が悪かった。
項目(c4)
A:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが安定。
B:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが不安定。
項目(c5)
A:帰宅後食事を済ませ、入浴後、スマートフォンやパソコン等せずに就寝する。
B:帰宅後、まず入浴し、食事をし、喫煙しながらコーヒーを飲み、スマートフォンやパソコン等しながら寝床に入る。
項目(c6)
A:喫煙や飲酒を経験しなかった。
B:喫煙や飲酒を始めてしまった。
項目(c7)
A:通勤時間が短く疲れを感じなかった。
B:通勤時間も長く、いつも疲れて居眠りした。
項目(c8)
A:ストレスは少なく、適度の有酸素運動など解決策を編み出していた。
B:ストレスが多く、食事や間食など口にすることで解決した。
項目(c9)
A:体重は標準体重以内で安定していた。
B:体重の増加・減少を繰り返し、平均して標準体重を超えていた。
【0125】
<短期的な背景:数ヶ月以内>
項目(d1)
A:環境(経済的、住環境、家族関係)が安定。
B:環境(経済的、住環境、家族関係)が不安定。
項目(d2)
A:家族が健康で、食事・運動バランスが良かった。
B:家族に通院或いは入院中の病気の方がいた。
項目(d3)
A:家族の健康の知識・情報が十分だった。
B:家族の健康の知識・情報が不十分だった。
項目(d4)
A:栄養のことに気を配ることができた。
B:栄養のことなど構う余裕がなかった。
項目(d5)
A:体重は標準体重か下回っていた。
B:体重が増え、肥満か肥満傾向にあった。
項目(d6)
A:家族に喫煙や飲酒をする人がいなかった。
B:家族に喫煙や飲酒をする人がいた。
項目(d7)
A:運動が好きで、疲れて8時間以上よく眠れた。
B:運動が苦手で、睡眠が6時間以下と短かった。
項目(d8)
A:疼痛なく、運動しても平気。
B:腰痛や膝痛で歩けなくなって運動すること自体がストレスになり、運動量減少。
項目(d9)
A:友人も多く、ストレスが少なかった。
B:人付合いが苦手で、苛め等ストレスがあった。
項目(d10)
A:恋愛など異性との付き合いも問題ない。
B:異性との付き合いもうまく行かなかった。
項目(d11)
A:業務内容が理解でき業務成績も良かった。
B:業務内容が理解できず、業務成績が悪かった。
項目(d12)
A:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが安定。
B:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが不安定。
項目(d13)
A:健康で、手術や治療を受けずにいた。
B:他の疾病の為の手術や治療を受けていた。
項目(d14)
A:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが安定。
B:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが不安定。
項目(d15)
A:喫煙や飲酒を経験しなかった。
B:喫煙や飲酒を始めてしまった。
項目(d16)
A:通勤時間が短く疲れを感じなかった。
B:通勤時間が長く、いつも疲れていた。
項目(d17)
A:ストレスは少なく、安定している。
B:ストレスが強く、運動する時間もないので、ついつい食事・間食を口にすることで、ストレス解消をしている。
項目(d18)
A:体重は標準体重以内で安定している。
B:体重の増加・減少を繰り返し、平均して標準体重を超えている。
【0126】
<短期的な背景:2~3週間以内>
上記の項目(d1)~(d18)に加えて、例えば、以下の項目が採用される。
項目(e1)
A:業務内容が理解でき業務成績も良かった。
B:業務内容が理解できず、業務成績が悪かった。
項目(e2)
A:仕事の上で、高い評価を受けて居る。
B:仕事上、ミスが重なり、批判を浴びている。
項目(e3)
A:出張やプレゼンがなく、ストレスがない。
B:出張、プレゼン等緊張を強いられストレス有り。
項目(e4)
A:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが安定。
B:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが不安定。
項目(e5)
A:健康で、手術や治療を受けずにいた。
B:他の疾病の為の手術や治療を受けていた。
項目(e6)
A:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが安定。
B:夕食、入浴、就寝時間など生活リズムが不安定。
項目(e7)
A:喫煙や飲酒を経験しなかった。
B:喫煙や飲酒を始め、或いは再開してしまった。
項目(e8)
A:通勤時間が短かく疲れを感じなかった。
B:通勤時間が長く、いつも疲れて居眠りもする。
項目(e9)
A:最近もストレスは少なく、安定している。
B:特に最近ストレスが強く、運動する時間もない。
項目(e10)
A:体重は標準体重以内で安定していた。
B:体重は増加し、或いは減少しているが、平均して標準体重を超えている。
【0127】
<ごく短期的な背景:直近の2、3日以内>
上記の項目(d1)~(d18)や項目(e1)~(e10)と同様の項目が採用される。
【0128】
なお、肥満に対して影響力がある項目(例えば項目(a)~(c))については、適宜に重みづけをしてスコアを付けてもよい。
【0129】
さらに、睡眠時間、起床時間、就寝時間、室内外気温、寝室の状況、睡眠時に利用者が置かれている環境、食生活、心理的な状況、緊張感、消化の状況、入眠時の血圧、身体的な疲労、乳酸濃度、アドレナリン濃度、メラトニン濃度、オレキシン濃度、アミノ酸バランス、一日当たりの運動量、消費カロリー、身長の変化、脈拍、BMI、発汗効率、睡眠に関する自覚症状(例えば、いびき、寝返り、睡眠時無呼吸)、過去の治療の状況(減量の為、食事療法・運動療法などを受けたが失敗したなど)等に関する項目も採用される。
【0130】
(16)家族(例えば三親等以内)や自身の病歴については、病気毎にスコアを特定して、病気について付されたスコアを学習済モデルMに入力することで、治療方法Kを特定してもよい。例えば、新型コロナ感染症は5を付し、各種悪事性腫瘍は10を付し、循環器疾患は3を付す。また、現在服薬中の薬剤について特定したスコアを学習済モデルMに入力することで、治療方法Kを特定してもよい。
【0131】
(17)また、睡眠関連以外の自覚症状(例えば、過食、頻脈、動悸、息切れ、むくみ、咳・痰、乏尿、胸焼け、胃もたれ、便秘、意識障害、肩こり、関節痛、筋肉痛、筋肉のつり、しびれ、薄毛、発疹、ニキビ、排尿痛、残尿感、血尿、下腹部痛、側腹部痛、尿量増加、頻尿、口臭、眼精疲労、不安、抑うつ、前向きに考えられない、自殺念慮など)について特定したスコアを学習済モデルMに入力することで、治療方法Kを特定してもよい。さらには、自身の性格に関するスコアを学習済モデルMに入力することで、治療方法Kを特定してもよい。
【符号の説明】
【0132】
11 :制御装置
13 :記憶装置
15 :表示装置
17 :操作装置
100 :情報処理装置
112 :取得部
114 :特定部
115 :処理部
116 :表示制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7