(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182422
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ヒートシール紙および包装袋
(51)【国際特許分類】
D21H 19/22 20060101AFI20231219BHJP
D21H 27/10 20060101ALI20231219BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20231219BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
D21H19/22
D21H27/10
D21H19/20 A
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096023
(22)【出願日】2022-06-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
(72)【発明者】
【氏名】若林 美咲
(72)【発明者】
【氏名】社本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】浪岡 萌夏
【テーマコード(参考)】
3E086
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB85
3E086BB90
3E086CA01
3E086CA27
3E086CA28
3E086DA08
4L055AA02
4L055AC06
4L055AG51
4L055AG58
4L055AG63
4L055AG70
4L055AG76
4L055AG89
4L055AH37
4L055AH38
4L055BE08
4L055CH02
4L055CH13
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA20
4L055EA32
4L055FA11
4L055GA05
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋が得られるヒートシール紙、および該ヒートシール紙を用いた包装袋を提供する。
【解決手段】紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有し、前記ヒートシール紙の比引裂強さの縦横相乗平均が10mN・m2/g以上であり、前記ヒートシール紙の比破裂強さが3.0kPa・m2/g以上であり、前記ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際のヒートシール剥離強度が2.0N/15mm以上10N/15mm以下である、ヒートシール紙。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、
前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有し、
前記ヒートシール紙の比引裂強さの縦横相乗平均が10mN・m2/g以上であり、
前記ヒートシール紙の比破裂強さが3.0kPa・m2/g以上であり、
前記ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際のヒートシール剥離強度が2.0N/15mm以上10N/15mm以下である、
ヒートシール紙。
【請求項2】
前記ヒートシール層がさらに滑剤を含む、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項3】
前記滑剤が、パラフィンワックス、カルナバワックス、およびポリオレフィンワックスよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載のヒートシール紙。
【請求項4】
前記ヒートシール層中の滑剤の含有量が1質量%以上5質量%以下である、請求項2に記載のヒートシール紙。
【請求項5】
前記水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度が0℃以上100℃以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項6】
前記水分散性樹脂バインダーが、スチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項7】
前記紙基材を構成するパルプのカナダ標準ろ水度が、500mL以上750mL以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項8】
前記紙基材を構成するパルプの主成分が針葉樹未晒クラフトパルプである、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項9】
クラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m2)で除した値(クラークこわさ/坪量)が0.20m2/g以上1.20m2/g以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のヒートシール紙を用いてなる、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール紙およびこれを用いた包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール方式を利用した包装体は、一般の工業製品の包装の他、食品、医薬、医療器具の包装などに広く利用されている。
【0003】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量のうち、包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックごみの原因となっている。プラスチックは半永久的に分解されず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。その対策として、プラスチックを紙に代替することが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、耐水性、耐油性、ヒートシール適性を有すると共に長期保管が可能な耐水耐油ヒートシール紙を提供することを目的として、紙基材の少なくとも一方の面上に、熱可塑性樹脂とワックスと顔料とを含む塗工層を有することを特徴とする耐水耐油ヒートシール紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のヒートシール紙は、ブロッキング耐性に優れるものであるが、輸送中の破袋や、開封時の開封容易性については検討されていない。
【0007】
本発明の目的は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋が得られるヒートシール紙、および該ヒートシール紙を用いた包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、以下の<1>~<10>の構成によって解決することができる。
<1> 紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有し、前記ヒートシール紙の比引裂強さの縦横相乗平均が10mN・m2/g以上であり、前記ヒートシール紙の比破裂強さが3.0kPa・m2/g以上であり、前記ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際のヒートシール剥離強度が2.0N/15mm以上10N/15mm以下である、ヒートシール紙。
<2> 前記ヒートシール層がさらに滑剤を含む、<1>に記載のヒートシール紙。
<3> 前記滑剤が、パラフィンワックス、カルナバワックス、およびポリオレフィンワックスよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、<2>に記載のヒートシール紙。
<4> 前記ヒートシール層中の滑剤の含有量が1質量%以上5質量%以下である、<2>または<3>に記載のヒートシール紙。
<5> 前記水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度が0℃以上100℃以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<6> 前記水分散性樹脂バインダーが、スチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<7> 前記紙基材を構成するパルプのカナダ標準ろ水度が、500mL以上750mL以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<8> 前記紙基材を構成するパルプの主成分が、針葉樹未晒クラフトパルプである、<1>~<7>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<9> クラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m2)で除した値(クラークこわさ/坪量)が0.20m2/g以上1.20m2/g以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のヒートシール紙。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載のヒートシール紙を用いてなる、包装袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋が得られるヒートシール紙、および該ヒートシール紙を用いた包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限および下限は任意に組み合わせることができる。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。また、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方を含む総称である。
【0011】
<ヒートシール紙>
本実施形態のヒートシール紙(以下、単に「ヒートシール紙」ともいう)は、紙基材の少なくとも一方の面に1層以上のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、前記ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有し、前記ヒートシール紙の比引裂強さの縦横相乗平均が10mN・m2/g以上であり、前記ヒートシール紙の比破裂強さが3.0kPa・m2/g以上であり、前記ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際のヒートシール剥離強度が2.0N/15mm以上10N/15mm以下である。本実施形態のヒートシール紙によれば、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋が得られる。
【0012】
水分散性樹脂バインダーを用いてヒートシール層を形成することで、ヒートシール性を発現させることができる。また、ヒートシール紙の比引裂強さの縦横相乗平均が10mN・m2/g以上であることにより、輸送時の落下や変形による剪断に耐えうるようになり、該ヒートシール紙が破れにくくなると考えられる。また、ヒートシール紙の比破裂強さが3.0kPa・m2/g以上であることにより、該ヒートシール紙から得られた包装袋は、輸送時の落下等による破袋が抑制されたものと考えられる。さらに、ヒートシール剥離強度が2.0N/15mm以上であることにより、輸送時の落下等によるヒートシール部の破壊が抑制され、また、10N/15mm以下であることにより、開封が容易となると考えられる。なお、本発明の効果は、上記メカニズムによって制限されるものではない。本明細書中、ヒートシール紙の縦方向は、紙基材の抄紙方向(MD方向)に対応する方向を意味し、ヒートシール紙の横方向は、紙基材の幅方向(CD方向)に対応する方向を意味する。
【0013】
[紙基材]
(原料パルプ)
紙基材を構成するパルプとしては、特に制限されず、公知のパルプを使用できる。具体的には、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の未晒パルプ;広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)等の機械パルプ;古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)および針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)よりなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)がさらに好ましい。
【0014】
本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材を構成するパルプの主成分は、針葉樹パルプであることが好ましく、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)であることがより好ましい。「紙基材を構成するパルプの主成分が針葉樹パルプ(または針葉樹未晒クラフトパルプ)である」とは、紙基材を構成するパルプ中、針葉樹パルプ(または針葉樹未晒クラフトパルプ)の含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹パルプ(または針葉樹未晒クラフトパルプ)の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。針葉樹パルプは、平均繊維長が長く、針葉樹パルプを原料パルプとして用いた紙基材を使用することによって、所望の比引裂強度および比破裂強さを有するヒートシール紙が得られるので好ましい。さらに、紙基材を構成するパルプとして針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)を用いると、パルプ繊維自身の強度が針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)や広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)などと比べて高いため、得られる紙基材の強度や伸びが高くなるという利点がある。
【0015】
針葉樹パルプとしては、所望の比引裂強度および比破裂強さを有するヒートシール紙を得る観点から、好ましくはダグラスファーおよびマツよりなる群から選ばれる1種以上から得られたパルプであり、より好ましくはダグラスファーから得られたパルプである。
【0016】
紙基材を構成する原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、未晒クラフトパルプであることがより好ましい。
【0017】
(カナダ標準ろ水度)
紙基材を構成する原料パルプの叩解度は、特に限定するものではないが、所望の比引裂強度および比破裂強さを有するヒートシール紙を得る観点から、カナダ標準ろ水度(CSF)として、好ましくは500mL以上、より好ましくは550mL以上であり、そして、好ましくは750mL以下、より好ましくは700mL以下である。また、紙表面の平滑性が良好となり、印刷適性を維持することができる。
CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
【0018】
(カッパー価)
JIS P 8211:2011に準拠して測定される、紙基材を構成するパルプのカッパー価は、耐衝撃性および加工性を有するヒートシール紙を得る観点から、好ましくは30以上であり、そして、好ましくは60以下、より好ましくは55以下、さらに好ましくは50以下、さらに好ましくは46以下である。紙基材を構成するパルプのカッパー価は、JIS P 8220-1:2012に準拠して離解した紙基材パルプを試料として、JIS P 8211:2011に準拠して測定される。
【0019】
(坪量)
紙基材の坪量は、特に限定されないが、所望の比引裂強度および比破裂強さを有するヒートシール紙を得る観点から、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは60g/m2以上、さらに好ましくは70g/m2以上であり、そして、好ましくは150g/m2以下、より好ましくは120g/m2以下、さらに好ましくは100g/m2以下である。紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0020】
(厚さ)
紙基材の厚さは、所望の比引裂強度および比破裂強さを有するヒートシール紙を得る観点から、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは160μm以下である。紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0021】
(密度)
紙基材の密度は、所望の比引裂強度および比破裂強さを有するヒートシール紙を得る観点、および成形加工性の観点から、好ましくは0.3g/cm3以上、より好ましくは0.5g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm3以下、より好ましくは0.9g/cm3以下、さらに好ましくは0.75g/cm3以下である。紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた、紙基材の坪量および厚さから算出される。
【0022】
(任意成分)
紙基材には、必要に応じて、例えば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、填料等の内添助剤、耐水化剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0023】
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。乾燥紙力増強剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
【0024】
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0025】
サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
【0026】
定着剤としては、硫酸バンド、ポリエチレンイミン等が挙げられる。定着剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
【0027】
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
【0028】
紙基材としては、例えば、紙匹を収縮させるクルパック処理を施したクルパック紙(伸張紙)等を用いてもよい。なお、伸張紙は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向または横方向の伸びが5%以上である紙をいい、JIS P 3401:2000に記載のクラフト紙5種 1号、2号が例示される。
【0029】
[ヒートシール層]
本実施形態のヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有する。ヒートシール層は、加熱、超音波等で溶融し、接着する層である。
【0030】
(水分散性樹脂バインダー)
ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有する。水分散性樹脂バインダーとは、水溶性ではない(具体的には、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下である)が、エマルションやサスペンションのように水中で微分散された状態となる樹脂バインダーをいう。水分散性樹脂バインダーを用いてヒートシール層を水系塗工することで、再離解性に優れ、紙として再生利用可能なヒートシール紙を得ることができる。なお、水分散性樹脂バインダーが下記の滑剤にも該当する場合は、滑剤に分類するものとする。
【0031】
水分散性樹脂バインダーとしては、本発明の効果を奏するものである限り、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-不飽和カルボン酸系共重合体(例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン系共重合体、ABS系樹脂、AAS系樹脂、AES系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1樹脂、ポリブテン-1樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アセタール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体、およびこれらの変性物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、スチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
さらに、ヒートシール剥離強度を高くする観点からは、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体がより好ましく、入手容易性、コスト面およびリサイクル性の観点からは、スチレン-ブタジエン共重合体がより好ましい。
【0032】
オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、エチレン-アクリル酸共重合体がより好ましい。
よって、ヒートシール層に含まれる水分散性樹脂バインダーは、スチレン-ブタジエン共重合体およびエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体は、アイオノマーであってもよい。
【0033】
スチレン-ブタジエン共重合体としては合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、日本ゼオン株式会社製NipolラテックスLX407G51、LX407S10、LX407S12、LX410、LX415M、LX416、LX430、LX433C、2507Hや、日本エイアンドエル株式会社製ナルスターSR-101、SR-102、SR-103、SR-115、SR-153や、JSR株式会社製スチレンブタジエンラテックス0602、0597C等が挙げられる。
【0034】
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、マイケルマンジャパン合同会社製のMP498345N、MP4983R、MP4990R、MFHS1279、住友精化株式会社製のザイクセン(登録商標)A、ザイクセン(登録商標)AC、三井化学株式会社製のケミパールSシリーズ等が挙げられる。
【0035】
水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上である。ガラス転移温度が上記下限値以上の水分散性樹脂バインダーを使用することで、ブロッキングの発生も抑制されうる。そして、ヒートシール性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは60℃以下、よりさらに好ましくは50℃以下である。
水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度は、示差走査熱量計により測定される値を採用するものとする。
【0036】
ヒートシール層中の水分散性樹脂バインダーの含有量は、好ましくは30質量%以上、よりに好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。上記範囲内であれば、高いヒートシール剥離強度を有するヒートシール紙を得ることができる。
【0037】
すなわち、本発明の一実施形態によれば、ヒートシール層中のスチレン-ブタジエン共重合体およびオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体(好ましくはエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体)の含有量が、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0038】
(滑剤)
ヒートシール紙の滑り性付与およびブロッキング抑制の観点から、ヒートシール層は、上記の水分散性樹脂バインダーに加えて、滑剤を含有することが好ましい。滑剤とは、ヒートシール層に配合することにより、ヒートシール層表面の摩擦係数を低減させることができる物質である。
【0039】
滑剤としては、特に限定されず、例えば、ワックス、金属石鹸、脂肪酸エステル等を使用することができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ワックスとしては、例えば、動物または植物由来のワックス(例えば、ミツロウ、カルナバワックスなど)、鉱物ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックスなど)、石油ワックス等の天然ワックス;ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、ポリエステルワックス等の合成ワックス等が挙げられる。金属石鹸としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸、およびそれらの複合体等が挙げられる。上記の滑剤の中でも、融点が比較的低くワックス成分が塗工層表面に形成されやすく、ブロッキング抑制効果に優れることから、パラフィンワックス、カルナバワックスおよびポリオレフィンワックスが好ましい。すなわち、滑剤は、パラフィンワックス、カルナバワックスおよびポリオレフィンワックスよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。滑り性付与および防湿性向上の観点からは、パラフィンワックスが好ましい。
カルナバワックスとしては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては中京油脂株式会社製セロゾール524、マイケルマン社製ML160RPH等が挙げられる。パラフィンワックスとしても、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては中京油脂株式会社製ハイドリンL-700等が挙げられる。ポリエチレンワックスとしても、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としてはBYK社製Aquacer 531等が挙げられる。
【0040】
ヒートシール層が滑剤を含有する場合、滑剤の含有量は、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0041】
ヒートシール層が滑剤を含有する場合、ヒートシール層中の滑剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0042】
本実施形態において、ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含有し、水分散性樹脂バインダーに加えて、滑剤を含有することが好ましい。また、水分散性樹脂バインダー、および必要に応じて滑剤に加えて、顔料を含有してもよい。
【0043】
(顔料)
本実施形態において、ヒートシール層は、上記水分散性樹脂バインダーに加えて、顔料を含有してもよい。顔料を含有することにより、ヒートシール紙を製造する際に、ヒートシール層塗工面が、ヒートシール紙の裏面に貼り付き、剥がれが生じる(ブロッキングする)という問題が抑制され、耐ブロッキング性に優れたヒートシール紙が得られる。
【0044】
顔料としては、特に限定されるものではなく、従来の顔料塗工層に使用されている各種顔料が例示される。顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。顔料としては、ヒートシール剥離強度の観点、および耐ブロッキング性の観点から、アスペクト比が20以上の顔料が好ましい。顔料のアスペクト比は、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは60以上であり、そして、入手容易性およびヒートシール層表面の平滑性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは300以下である。顔料のアスペクト比は、長径/短径を意味し、下記の方法により測定してもよい。
【0045】
顔料は、アスペクト比20以上の層状無機化合物であることが好ましい。層状無機化合物の形態は、平板状である。顔料が平板状であると、顔料のヒートシール層表面からの突出が抑制され、ヒートシール性を維持しつつ、耐ブロッキング性に優れたヒートシール層が得られる。
【0046】
顔料は、長さ(平均粒子径)が0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。長さが0.1μm以上であると、顔料が紙基材に対して平行に配列し易い。また、長さが100μm以下であると顔料の一部がヒートシール層から突出する懸念が少ない。顔料の長さは、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、特に好ましくは1.0μm以上であり、そして、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。
【0047】
ここで、ヒートシール層中に含まれている状態での顔料の長さは、以下のようにして求められる。ヒートシール層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に顔料が20~30個程度含まれる倍率とする。画面内の顔料の個々の長さを測定する。そして、得られた長さの平均値を算出して、顔料の長さとする。なお、顔料の長さは、粒子径という表現で記載されることもある。
【0048】
顔料は、厚さが200nm以下であることが好ましい。顔料の厚さは、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、よりさらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。また、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。顔料の平均厚さが小さい方が、高いヒートシール剥離強度が得られる。ここで、ヒートシール層中に含まれている状態での顔料の厚さは、以下のようにして求められる。ヒートシール層の断面について、電子顕微鏡を用いて拡大写真を撮影する。このとき、画面内に顔料が20~30個程度含まれる倍率とする。画面内の顔料の個々の厚さを測定する。そして、得られた厚さの平均値を算出して、顔料の厚さとする。
【0049】
顔料の具体例としては、マイカ、ベントナイト、カオリン、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイト、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、中空もしくは密実である有機顔料のプラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどが挙げられる。
【0050】
マイカの具体例としては、合成マイカ(例えば、膨潤性合成マイカ)、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。また、ベントナイトの具体例としては、モンモリロナイトが挙げられる。
【0051】
カオリンの具体例としては、カオリン、焼成カオリン、構造化カオリン、デラミネーテッドカオリン等の各種カオリンが例示される。
【0052】
これらの中でも特に、ヒートシール剥離強度の観点、耐ブロッキング性の観点および経済性の観点から、アスペクト比が20以上の顔料が好ましく、マイカ、ベントナイト、カオリンおよびタルクのうちいずれか1種以上を含有することがより好ましく、カオリンがさらに好ましい。
【0053】
ヒートシール層が顔料を含有する場合、顔料の含有量は、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、耐ブロッキング性およびリサイクル性の観点からは、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、よりさらに好ましくは8質量部以上であり、一方、ヒートシール性の観点からは、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0054】
ヒートシール層が顔料を含有する場合、ヒートシール層中の顔料の含有量は、耐ブロッキング性およびリサイクル性の観点からは、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりさらに好ましくは8質量%以上であり、そして、ヒートシール性の観点からは、好ましくは70質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0055】
(他の成分)
ヒートシール層は、上記水分散性樹脂バインダー、必要に応じて滑剤および/または顔料に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤;消泡剤;粘度調整剤;界面活性剤、アルコール等のレベリング剤;着色染料等の着色剤などが例示される。
【0056】
ヒートシール層の塗工量(坪量)は、特に限定されないが、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、好ましくは3g/m2以上、より好ましくは5g/m2以上、さらに好ましくは8g/m2以上であり、そして、好ましくは30g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下、さらに好ましくは15g/m2以下である。
【0057】
<ヒートシール紙の物性>
(比引裂強さ)
ヒートシール紙の比引裂強さの縦横相乗平均は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、10mN・m2/g以上であり、好ましくは12mN・m2/g以上であり、そして、上限は特に限定されないが、好ましくは30mN・m2/g以下、より好ましくは25mN・m2/g以下、さらに好ましくは20mN・m2/g以下である。
ヒートシール紙の比引裂強さは、JIS P 8116:2000に準じて測定される引裂強さを坪量で除した値である。
ヒートシール紙の比引裂強さの相乗平均を上記の範囲に調整する方法は特に限定されないが、紙基材を構成するパルプの種類や叩解条件(叩解度、叩解時のパルプ濃度など)を選択することで調整することができ、例えば、針葉樹パルプ、好ましくは針葉樹未晒クラフトパルプを使用することで、比引裂強さを高くすることができる。また、適切な叩解度とすることで、比引裂強さを調整することができ、叩解度が高い(CSFが小さい)と、比引裂強さが低下する傾向がある。また、高濃度叩解することにより、パルプがより分枝化あるいはマイクロフィブリル状になり、引裂強さを高めることもできる。さらに、紙基材として、クルパック処理した伸張紙を採用することでも、伸びることにより引裂時のエネルギーを吸収することが可能となり、高い比引裂強さを得ることができる。
【0058】
ヒートシール紙の縦方向の比引裂強さは、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、好ましくは8mN・m2/g以上、より好ましくは10mN・m2/g以上であり、そして、上限は特に限定されないが、好ましくは30mN・m2/g以下、より好ましくは24mN・m2/g以下、さらに好ましくは18mN・m2/g以下である。
【0059】
ヒートシール紙の横方向の比引裂強さは、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、好ましくは10mN・m2/g以上、より好ましくは12mN・m2/g以上、さらに好ましくは14mN・m2/g以上であり、そして、上限は特に限定されないが、好ましくは32mN・m2/g以下、より好ましくは28mN・m2/g以下、さらに好ましくは24mN・m2/g以下である。
【0060】
(比破裂強さ)
ヒートシール紙の比破裂強さは、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、3.0kPa・m2/g以上であり、好ましくは3.5kPa・m2/g以上であり、そして、上限は特に限定されないが、好ましくは10.0kPa・m2/g以下、より好ましくは8.5kPa・m2/g以下、さらに好ましくは7.0kPa・m2/g以下である。
ヒートシール紙の比破裂強さは、JIS P 8112:2008に準じて測定される破裂強さを坪量で除した値である。
ヒートシール紙の比破裂強さを上記の範囲に調整する方法は特に限定されないが、紙基材を構成するパルプの種類や叩解度を選択することで調整することができ、例えば、針葉樹パルプ、好ましくは針葉樹未晒クラフトパルプを使用することで、比破裂強さを高くすることができる。また、適切な叩解度とすることで、比破裂強さを調整することができ、叩解度が高い(CSFが小さい)と、比破裂強さが低下する傾向がある。また、高濃度叩解することにより、パルプがより分枝化あるいはマイクロフィブリル状になり、破裂強さを高めることもできる。
さらに、紙基材として、クルパック処理した伸張紙を採用することでも、高い比破裂強さを得ることができる。また、紙基材に内添紙力増強剤等を添加することによって、比破裂強さを高くすることができる。
【0061】
(ヒートシール剥離強度)
本実施形態のヒートシール紙は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、ヒートシール剥離強度が、2.0N/15mm以上、好ましくは3.0N/15mm以上、より好ましくは4.0N/15mm以上、さらに好ましくは4.5N/15mm以上であり、そして10N/15mm以下、より好ましくは9.0N/15mm以下、さらに好ましくは8.0N/15mm以下、よりさらに好ましくは7.0N/15mm以下である。さらに、加工適性の観点からは、4.8N/15mm以上であることが好ましい。ヒートシール層の剥離強度は、ヒートシール層同士を150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際の剥離強度であり、具体的には後述の実施例に記載の方法によって測定される値である。
水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度および種類、並びに塗工量を選択することによって、剥離強度を調整することができる。例えば、水分散性樹脂バインダーのガラス転移温度を100℃以下とすることで、所定のヒートシール条件で樹脂が溶融してヒートシール層同士が良好に接着するため、所望の剥離強度を確保することができる。
【0062】
(表面平滑度)
本実施形態のヒートシール紙のヒートシール層表面の王研式平滑度は、ヒートシール剥離強度を向上させる観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは40秒以上、さらに好ましくは50秒以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは500秒以下、より好ましくは300秒以下、さらに好ましくは100秒以下である。
なお、ヒートシール層は、紙基材のW面(ワイヤー面)に設けてもよく、F面(フェルト面)に設けてもよく、特に限定されない。ここで、W面(ワイヤー面)とは、紙匹が形成されるときのワイヤーに接した面であり、その反対面はF面(フェルト面)である。
また、ヒートシール層と反対面(例えば、紙基材の一方の面のみにヒートシール層が設けられ、他方の面は紙基材が露出している場合は、紙基材表面)の王研式平滑度は、印刷適性を向上させる観点から、好ましくは3秒以上、より好ましくは5秒以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは1000秒以下、より好ましくは300秒以下、さらに好ましくは100秒以下である。
王研式平滑度は、JIS P8155:2010に準拠して測定される。
ヒートシール紙のヒートシール層表面および反対面の王研式平滑度は、後述するスーパーカレンダー処理等により、上記範囲内に調整することができる。
【0063】
(坪量)
本実施形態のヒートシール紙の坪量は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、好ましくは50g/m2以上、より好ましくは70g/m2以上、さらに好ましくは80g/m2以上、よりさらに好ましくは85g/m2以上であり、そして、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下、さらに好ましくは120g/m2以下、よりさらに好ましくは100g/m2以下である。
ヒートシール紙の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0064】
(厚さ)
本実施形態のヒートシール紙の厚さは、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、好ましくは60μm以上、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは90μm以上、よりさらに好ましくは100μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
ヒートシール紙の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
【0065】
(密度)
ヒートシール紙の密度は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点から、好ましくは0.50g/cm3以上、より好ましくは0.60g/cm3以上、さらに好ましくは0.65g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm3以下、より好ましくは0.90g/cm3以下、さらに好ましくは0.80g/cm3以下である。ヒートシール紙の密度は、上述した測定方法により得られた、ヒートシール紙の坪量および厚さから算出される。
【0066】
(クラークこわさ)
ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点、および成形性の観点から、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上であり、そして、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは70以下、よりさらに好ましくは50以下である。
ヒートシール紙のクラークこわさは、JIS P 8143:2009に準じて、実施例の方法により測定される。
ヒートシール紙のクラークこわさは、後述のようにスーパーカレンダー処理を行うことにより、低下させることが可能である。
【0067】
ヒートシール紙の縦方向のクラークこわさは、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点、および成形性(例えば、袋の外観)や自動包装への適用の観点から、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上であり、そして、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下、よりさらに好ましくは100以下、特に好ましくは55以下である。
【0068】
ヒートシール紙の横方向のクラークこわさは、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点、および成形性の観点から、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは35以上であり、そして、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下、よりさらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下である。
【0069】
(クラークこわさ/坪量)
ヒートシール紙のクラークこわさの縦横相乗平均を坪量(g/m2)で除した値(クラークこわさ/坪量)(単位:m2/g)は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点、および成形性(例えば、袋の外観)や自動包装への適用の観点から、好ましくは0.20m2/g以上、より好ましくは0.30m2/g以上、さらに好ましくは0.40m2/g以上であり、そして、好ましくは1.20m2/g以下、より好ましくは1.00m2/g以下、さらに好ましくは0.80m2/g以下、よりさらに好ましくは0.60m2/g以下、特に好ましくは0.55m2/g以下である。
【0070】
ヒートシール紙の縦方向のクラークこわさを坪量(g/m2)で除した値(クラークこわさ/坪量)(単位:m2/g)は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点、および成形性(例えば、袋の外観)や自動包装への適用の観点から、好ましくは0.20m2/g以上、より好ましくは0.30m2/g以上、さらに好ましくは0.40m2/g以上であり、そして、好ましくは2.40m2/g以下、より好ましくは2.00m2/g以下、さらに好ましくは1.50m2/g以下、よりさらに好ましくは1.00m2/g以下、より一層好ましくは0.70m2/g以下、特に好ましくは0.60m2/g以下である。
【0071】
ヒートシール紙の横方向のクラークこわさを坪量(g/m2)で除した値(クラークこわさ/坪量)(単位:m2/g)は、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を得る観点、および成形性の観点から、好ましくは0.20m2/g以上、より好ましくは0.30m2/g以上、さらに好ましくは0.40m2/g以上であり、そして、好ましくは1.20m2/g以下、より好ましくは1.00m2/g以下、さらに好ましくは0.80m2/g以下、よりさらに好ましくは0.60m2/g以下である。
【0072】
[ヒートシール紙の製造方法]
本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、特に限定されない。例えば、原料パルプの蒸解処理を行なう蒸解工程と、蒸解処理した原料パルプを20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理する叩解工程と、叩解処理した原料パルプを抄紙する抄紙工程と、を含む方法により得られた紙基材の少なくとも一方の面上に、少なくとも1層のヒートシール層を塗工する塗工工程を含む製造方法が挙げられる。当該製造方法のそれぞれの工程について、以下に説明する。
【0073】
(蒸解工程)
蒸解工程は、原料パルプの蒸解処理を行なう工程である。蒸解工程により、原料パルプのカッパー価を30以上60以下とすることが好ましい。特に限定されないが、原料パルプの材料として用いられる原料チップを、水酸化ナトリウムを含む薬液で処理することが好ましく、水酸化ナトリウムを含む薬液による処理方法としては、公知の薬液を使用する公知の処理方法を用いることができる。
【0074】
原料パルプのカッパー価を30以上60以下とすることにより、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋を形成可能なヒートシール紙が得られる。当該観点から、原料パルプのカッパー価は、50以下とすることが好ましく、45以下とすることがより好ましい。
【0075】
原料パルプの材料として用いられる原料チップは、針葉樹パルプを主成分とすることが好ましい。「針葉樹パルプを主成分とする原料チップ」とは、原料チップ中、針葉樹の含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0076】
原料パルプに、漂白処理を施さなくてもよいし、漂白処理を施してもよい。原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、未晒クラフトパルプであることがより好ましい。
【0077】
(叩解工程)
叩解工程は、蒸解処理した原料パルプを好ましくは20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理する工程である。叩解処理の方法は特に限定されないが、蒸解処理した原料パルプを水中に分散させて、上記の原料パルプ濃度の分散液を作製し、叩解することが好ましい。叩解処理方法としては、特に限定されないが、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等の叩解機を用いて行うことができる。
【0078】
蒸解処理した原料パルプを20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理することにより、耐衝撃性および加工性を有する紙基材および該紙基材を用いたヒートシール紙が得られると共に、生産性に優れる。
【0079】
(抄紙工程)
抄紙工程は、叩解処理した原料パルプを抄紙する工程である。抄紙方法については、特に限定されず、例えばpHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法等が挙げられる。抄紙工程では、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙工程用薬剤を適宜添加できる。抄紙機についても、特に限定されず、例えば、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。
【0080】
本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材は、上述した蒸解工程と、叩解工程と、抄紙工程と、を含む方法により得ることができる。抄紙工程の後に、必要に応じて、クルパック設備を用いて紙匹を収縮させるクルパック工程を有していてもよい。クルパック設備としては、公知のものを用いることができる。なお、実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材の製造方法は、上記方法に限定されない。
【0081】
また、本実施形態において、ヒートシール紙の製造方法は、紙基材の表面を薬剤で処理する表面処理工程を含んでいてもよい。表面処理工程に用いられる薬剤としては、サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤等が挙げられる。表面処理工程に用いられる装置としては、公知の装置を用いることができる。
【0082】
本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、上記のように得られた紙基材上の少なくとも一方の面上に、ヒートシール層を塗工する塗工工程を含む。なお、ヒートシール層塗工液(ヒートシール層塗料)は、二度以上塗工してもよい。
【0083】
紙基材に複数のヒートシール層を形成する場合において、逐次的にヒートシール層を形成する上記の方法が好ましいが、これに限定されるものではなく、同時多層塗工法を採用してもよい。同時多層塗工法とは、複数種の塗工液をそれぞれ別個にスリット状ノズルから吐出させて、液体状の積層体を形成し、それを紙基材上に塗工することにより、多層のヒートシール層を同時に形成する方法である。
【0084】
ヒートシール層塗工液を紙基材に塗工するための塗工設備には、特に限定はなく、公知の設備を用いればよい。塗工設備としては、例えば、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロールコーター、サイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等が挙げられる。
【0085】
ヒートシール層を乾燥するための乾燥設備には、特に限定されず、公知の設備を用いることができる。乾燥設備としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ガスバーナー、熱板等が挙げられる。また、乾燥温度は、乾燥時間等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0086】
ヒートシール層塗工液の溶媒としては、特に限定されず、水またはエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、揮発性有機溶媒の問題を生じない観点から、ヒートシール層塗工液の分散媒としては、水が好ましい。すなわち、ヒートシール層塗工液は、ヒートシール層用水系組成物であることが好ましい。
【0087】
ヒートシール層塗工液の固形分量(固形分濃度)は、特に限定されず、塗工性および乾燥容易性の観点から適宜選択すればよいが、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは40質量%以下である。
【0088】
ヒートシール層の塗工量(乾燥後)の好ましい範囲は、上述した通りである。ヒートシール層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。ヒートシール層が2層以上である場合、上記の塗工量は合計塗工量を表す。
【0089】
ヒートシール層を塗工乾燥した後、スーパーカレンダー処理を行うことも好ましい。ここで、スーパーカレンダー処理とは、抄紙とは独立して設置され、一般には、金属ロール間、または金属ロールと弾性ロールとの間に処理対象である紙等を通し、加熱、加圧等を行うものである。スーパーカレンダー処理は、一段で行ってもよく、多段であってもよく、特に限定されない。
スーパーカレンダー処理を行うことによって、ヒートシール層表面の平滑性が向上し、その結果、ヒートシール剥離強度の向上(最低基材破壊温度の低下)、およびクラークこわさの減少につながるので好ましい。
また、ヒートシール層とは反対面(例えば、紙基材の一方の面のみにヒートシール層が設けられ、他方の面は紙基材が露出している場合は、紙基材表面)の平滑性が向上し、その結果、印刷適性が向上するので好ましい。
さらに、スーパーカレンダー処理を行うことによって、ヒートシール紙の密度が上がる傾向があり、また、上述したように表面平滑性が向上することから、製袋の際に、包装機におけるヒートシール紙の送り出しが良好となり、加工適性が向上するので好ましい。
スーパーカレンダー処理における線圧は、好ましくは10kg/cm以上、より好ましくは30kg/cm以上、さらに好ましくは50kg/cm以上であり、そして、好ましくは1000kg/cm以下、より好ましくは500kg/cm以下、さらに好ましくは200kg/cm以下である。ただし、上記の線圧は、所望の平滑度や密度に応じて適宜変更すればよい。
また、スーパーカレンダー処理において加熱を行う場合、加熱温度は特に限定されないが、処理の効果を高めつつ、紙基材やヒートシール層の熱による劣化やヒートシール層の貼り付きを防ぐ観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは35℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0090】
<用途>
本実施形態に係るヒートシール紙は、食品、生活雑貨、書籍、日用品(石鹸、洗剤、おむつ)などの包装袋として好適に使用できる。従って、本発明は、上記ヒートシール紙を用いた包装袋についても提供する。
【実施例0091】
以下に、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、以下の操作は23℃、相対湿度50%RHの条件で行った。また、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0092】
[実施例1]
<ヒートシール層塗料の調製>
スチレン/ブタジエン系共重合体の水分散液(日本ゼオン株式会社製、NipolラテックスLX407S12、固形分46%、ガラス転移温度18℃(カタログ値))98部(固形分換算)、パラフィンワックスエマルション(中京油脂株式会社製、ハイドリンL-700、固形分30%)2部(固形分換算)を混合し、固形分濃度が33%になるよう水を加えて撹拌し、ヒートシール層塗料(濃度33%)を調製した。上記スチレン/ブタジエン系共重合体は、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下であった。
【0093】
<ヒートシール紙の製造>
得られたヒートシール層塗料を、坪量82.9g/m2、厚さ123μm、密度0.67g/cm3の伸張紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス677mL、クルパック処理あり、平滑度F面4秒、W面7秒)のW面にヒートシール層の乾燥後の塗工量が10g/m2となるように、エアナイフコーターでヒートシール層を形成し、130~160℃のドライヤーで乾燥し、最後に線圧90kg/cmとなるようにして、塗工面にチルドロール、非塗工面にコットンロールが接触するようにし、ロールを40℃に加温して1段のスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面8秒、W面64秒)を得た。スーパーカレンダー処理により、塗工前の紙と比べて平滑度が上がり、印刷適性が向上した。
【0094】
[実施例2]
伸張紙を、坪量78.3g/m2、厚さ126μm、密度0.62g/cm3の伸張紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス563mL、平滑度F面12秒、W面29秒)に変更し、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が12g/m2となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面15秒、W面61秒)を得た。
【0095】
[実施例3]
伸張紙を、坪量79.2g/m2、厚さ132μm、密度0.60g/cm3の重包装用紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス578mL、平滑度F面3秒、W面2秒、クルパック処理なし)に変更し、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が10g/m2となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面25秒、W面65秒)を得た。
【0096】
[実施例4]
市販のエチレン-アクリル酸共重合体(ガラス転移温度45℃)の水分散液98部(固形分換算)と、市販のカルナバワックスの水分散液2部(固形分換算)を混合し、固形分濃度が35%になるよう水を加えて撹拌し、ヒートシール層塗料(濃度35%)を調製した。得られたヒートシール層塗料を使用したこと以外は実施例2と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面8秒、W面82秒)を得た。上記エチレン-アクリル酸共重合体は、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下であった。
【0097】
[実施例5]
パラフィンワックスエマルション2部(固形分換算)の代わりに、ポリエチレンワックスエマルション(Aquacer 531、BYK社製、固形分濃度45質量%)2部(固形分換算)を添加してヒートシール層塗料を調製したこと以外、実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面8秒、W面42秒)を得た。
【0098】
[実施例6]
スーパーカレンダー処理をしなかったこと以外は、実施例2と同様にして、ヒートシール紙を得た(平滑度F面12秒、W面40秒)。
【0099】
[実施例7]
パラフィンワックスエマルションを添加しなかったこと以外、実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面8秒、W面60秒)を得た。
【0100】
[実施例8]
ヒートシール層塗料に、カオリン(平均粒子径8μm、アスペクト比80~100)の濃度50%水分散液を10部(固形分換算)となるように混合し、スチレン/ブタジエン系共重合体の水分散液(日本ゼオン株式会社製、NipolラテックスLX407S12、固形分46%、ガラス転移温度18℃(カタログ値))を88部(固形分換算)としたこと以外、実施例1と同様にして、ヒートシール紙(平滑度F面8秒、W面12秒)を得た。
【0101】
[実施例9]
パラフィンワックスエマルション2部(固形分換算)の代わりに、カルナバワックスエマルション(ML160RPH、マイケルマン社製、固形分濃度25質量%)2部(固形分換算)を添加してヒートシール層塗料を調製したこと以外、実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面8秒、W面64秒)を得た。
【0102】
[比較例1]
超伸張紙を、坪量80.5g/m2、厚さ114μm、密度0.71g/cm3の未晒軽包装用紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ/広葉樹晒クラフトパルプ=80/20(質量比)、フリーネス478mL、平滑度F面17秒、W面16秒)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面89秒、W面219秒)を得た。
【0103】
[比較例2]
坪量70g/m2、厚さ100μm、密度0.70g/cm3の未晒軽包装用紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹未晒クラフトパルプ/広葉樹晒クラフトパルプ=80/20(質量比)、フリーネス478mL、平滑度F面16秒、W面14秒)にポリエチレンを厚さ20μmとなるように溶融押出ラミネートしてできた坪量89.2g/m2のポリエチレンラミネート紙(平滑度F面16秒、W面140秒)を作製した。
【0104】
[比較例3]
ヒートシール層塗料のスチレン/ブタジエン系共重合体の水分散液の代わりにエチレン/酢酸ビニル共重合体の水分散液(住化ケムテックス株式会社製、スミカフレックス470HQ、固形分55%、ガラス転移温度0℃(カタログ値))を用い、パラフィンワックスエマルションを使用しなかったこと以外、実施例3と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙を得た(平滑度F面25秒、W面56秒)。
【0105】
[比較例4]
超伸張紙を坪量78.2g/m2、厚さ100μm、密度0.78g/cm3の片艶クラフト紙(王子マテリア株式会社製、針葉樹晒クラフトパルプ/広葉樹晒クラフトパルプ=35/65(質量比)、フリーネス578mL、平滑度F面120秒、W面18秒)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ヒートシール層形成およびスーパーカレンダー処理を行い、ヒートシール紙(平滑度F面300秒、W面291秒)を得た。
【0106】
[測定方法]
得られたヒートシール紙について、以下の測定を行った。
<クラークこわさ>
JIS P 8143:2009に準じて、紙の縦方向と横方向のクラークこわさをそれぞれ測定し、両者を相乗平均して、クラークこわさ相乗平均値とした。
【0107】
<ヒートシール剥離強度の測定>
2枚1組のヒートシール紙を、ヒートシール層が向き合うように重ね、ヒートシールテスター(テスター産業製、TP-701-B)を用いて、150℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。ヒートシールされた試験片を温度23℃±1℃、湿度50%±2%の室内で4時間以上静置した。続いて、ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minでT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。
【0108】
<ヒートシール紙の比引裂強さ>
JIS P 8116:2000に準じて、ヒートシール紙の引裂強さの測定を行った。縦方向、横方向のそれぞれについて引裂強さを測定し、得られた値を坪量で除算し、得られた値を比引裂強さとした。得られた縦方向および横方向の比引裂強さから、縦横相乗平均を求めた。
【0109】
<ヒートシール紙の比破裂強さ>
JIS P 8112:2008に準じて、ヒートシール紙の破裂強さの測定を行った。また、得られた値を坪量で除算し、得られた値を比破裂強さとした。
【0110】
<落下試験>
400mm角のヒートシール紙2枚を、ヒートシール層面を向かい合わせとして、3方をヒートシールし、約2kg分の砂を封入してから最後の1方をヒートシールして内容物入りの包装袋を作製した。これに対して、JIS Z 0202:2017に準じて落下試験を行った。落下試験は上記の様にして5つの袋を作製し、すべての袋での破れおよび破袋、ヒートシール部分開封回数を合算し、下記基準に基づいて判定した(Aのみが合格である)。
A:落下試験で紙の破れや袋の破袋、ヒートシール部の開封が全く発生しなかった
B:落下試験で紙の破れあるいはヒートシール部の開封のいずれかの合計箇所が1つ以上4つ以下であった
C:落下試験で紙の破れあるいはヒートシール部の開封のいずれかの合計箇所が5つ以上であった
【0111】
<易開封性試験>
前記落下試験に使用したものと同様の包装袋のヒートシール部を、引き裂くことなく、ヒートシール面に対して垂直に両方向から引張って(ヒートシール層同士を剥離させるように、両方のヒートシール紙を逆方向に引っ張って)、開封した時の開封しやすさを以下の様に評価した。
A:容易に開封できる
B:非常に硬く、開封しにくい
【0112】
<ブロッキング性>
ヒートシール紙を塗工面と非塗工面が接触するようにして、ヒートシール紙を10枚積層し、ホットプレス機で上下40℃に加温しながら20kgf/cm2の圧力で15時間プレスした。圧力解放後の紙を取り出し、手で剥離した時の結果を評価した。
A:破れおよび紙剥けが発生しない
B:破れまたは紙剥けが発生する
【0113】
<平滑度>
JIS P8155:2010に準じて王研式平滑度測定を行い、平滑度の値とした。紙基材の平滑度についても、上記と同様にして測定した。
【0114】
【0115】
表1より、実施例1~9のヒートシール紙から得られた包装袋は、耐落下性に優れ、破袋が抑制されていた。また、開封時には容易に開封することができた。一方、比破裂強さが3.0kPa・m2/g未満である比較例1のヒートシール紙から得られた包装袋は、耐落下性に劣り、破袋した。また、未晒軽包装用紙にラミネートによりPE層を設け、ヒートシール剥離強度が10N/15mmを超える比較例2のヒートシール紙から得られた包装袋は、耐落下性に劣り、また、易開封性に劣るものであった。さらに、ヒートシール剥離強度が10N/15mmを超える比較例3のヒートシール紙から得られた包装袋は、易開封性に劣るものであった。また、比引裂強さの縦横相乗平均が10mN・m2/g未満である比較例4のヒートシール紙から得られた包装袋は、耐落下性に劣り、破袋した。
なお、滑剤を含有する実施例1~6、8および9のヒートシール紙は、耐ブロッキング性に優れるものであった。また、実施例2および6の対比から、スーパーカレンダー処理を行うことにより、クラークこわさが低減され、また、ヒートシール剥離強度が向上することが分かった。
【0116】
上記結果から、本実施形態のヒートシール紙により、破袋しにくく、かつ、開封時には容易に開封可能な包装袋が得られると言える。