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特開2023-182428運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成システム、運転診断用マップ作成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182428
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成システム、運転診断用マップ作成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096030
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 有輔
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL08
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】車両特性が大きく変化した場合においても、正確な運転診断を実行可能な運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成システム、運転診断用マップ作成方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】車両20、40に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するマップ作成部と、最新の検出値である最新検出値より前に取得した検出値に基づいてマップ作成部が作成した運転診断用マップ及び最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、運転診断用マップを破棄するマップ管理部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するマップ作成部と、
最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて前記マップ作成部が作成した前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄するマップ管理部と、
を備える運転診断用マップ作成装置。
【請求項2】
前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して、前記運転診断用マップと前記最新検出値との差が所定量以上になったときに成立する切替条件が成立したとき、前記マップ作成部が、前記切替条件を成立させた前記最新検出値に基づいて、所定の学習完了要件を満たしたときに前記運転診断部が新しい前記運転診断用マップとして利用可能となる保留マップを作成する請求項1に記載の運転診断用マップ作成装置。
【請求項3】
前記保留マップが前記学習完了要件を満たしたときに、前記破棄条件が成立する請求項2に記載の運転診断用マップ作成装置。
【請求項4】
前記保留マップが前記学習完了要件を満たすまでの間、前記運転診断部が、既存の前記運転診断用マップを用いて運転診断を行う請求項3に記載の運転診断用マップ作成装置。
【請求項5】
車両情報を検出可能なセンサを備える車両と、
前記センサが取得した前記車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するマップ作成部と、
最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて前記マップ作成部が作成した前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄するマップ管理部と、
を備える運転診断用マップ作成システム。
【請求項6】
車両に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するステップ、及び
最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて作成された前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄するステップ、
を有する運転診断用マップ作成方法。
【請求項7】
車両に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成する処理、及び
最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて作成された前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄する処理、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成システム、運転診断用マップ作成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両の進行方向前方にある診断対象エリアに事故多発地点が含まれる場合に、事故多発地点の事故要因に基づいて運転診断の判断基準を変更する発明が開示されている。下記特許文献1では、変更後の判断基準に基づいて、事故多発地点における運転診断が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-237829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、車両特性の変化が考慮されていない。この点において上記特許文献1には改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両特性が大きく変化した場合においても、正確な運転診断を実行可能な運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成システム、運転診断用マップ作成方法及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の運転診断用マップ作成装置は、車両に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するマップ作成部と、最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて前記マップ作成部が作成した前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄するマップ管理部と、を備える。
【0007】
請求項1に記載の運転診断用マップ作成装置では、車両の衝突等によって車両特性が大きく変化することに起因して、運転診断用マップに関して破棄条件が成立したときに、運転診断用マップが破棄される。そのため、車両特性が大きく変化した後に、運転診断部が破棄条件が成立した運転診断用マップを使用し続けることにより、不正確な運転診断を実行し続けるおそれが小さい。従って、請求項1に記載の運転診断用マップ作成装置は、車両特性が大きく変化した場合においても、正確な運転診断を実行可能である。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る運転診断用マップ作成装置は、請求項1の発明において、前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して、前記運転診断用マップと前記最新検出値との差が所定量以上になったときに成立する切替条件が成立したとき、前記マップ作成部が、前記切替条件を成立させた前記最新検出値に基づいて、所定の学習完了要件を満たしたときに前記運転診断部が新しい前記運転診断用マップとして利用可能となる保留マップを作成する。
【0009】
請求項2に記載の保留マップは、切替条件を成立させた前記最新検出値に基づいてマップ作成部が作成したものである。そのため、保留マップは切替条件を成立させた最新検出値が検出されたときの車両特性を正確に表している可能性が高い。そのため、学習完了要件が満たされた場合に、運転診断部が保留マップを運転診断用マップとして利用すると、正確な運転診断が実行される可能性が高い。
【0010】
請求項3に記載の発明に係る運転診断用マップ作成装置は、請求項2記載の発明において、前記保留マップが前記学習完了要件を満たしたときに、前記破棄条件が成立する。
【0011】
請求項3に記載の発明では、保留マップが運転診断用マップとして利用可能となったときに破棄条件が成立する。そのため、古い運転診断用マップが破棄された場合に、新しい運転診断用マップに基づいて運転診断が実行される。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る運転診断用マップ作成装置は、請求項3記載の発明において、前記保留マップが前記学習完了要件を満たすまでの間、前記運転診断部が、既存の前記運転診断用マップを用いて運転診断を行う。
【0013】
請求項4に記載の発明では、保留マップが学習完了要件を満たすまでの間、運転診断部が、既存の運転診断用マップを用いて運転診断を行う。そのため、保留マップに基づく新しい運転診断用マップが作成されるまでの間、運転診断部は車両の運転診断を実行可能である。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る運転診断用マップ作成システムは、車両情報を検出可能なセンサを備える車両と、前記センサが取得した前記車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するマップ作成部と、最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて前記マップ作成部が作成した前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄するマップ管理部と、を備える。
【0015】
請求項6に記載の発明に係る運転診断用マップ作成方法は、車両に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するステップ、及び最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて作成された前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄するステップ、を有する。
【0016】
請求項7に記載の発明に係るプログラムは、車両に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成する処理、及び最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて作成された前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄する処理、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成システム、運転診断用マップ作成方法及びプログラムは、車両特性が大きく変化した場合においても、正確な運転診断を実行可能である、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る運転診断用マップ作成システムを示す模式図である。
図2】実施形態に係る運転診断用マップ作成システムの診断対象車両及び基準車両を示す模式図である。
図3】診断対象車両及び基準車両のECUの制御ブロック図である。
図4】ECUの機能ブロック図である。
図5】運転診断用マップ作成システムの外部サーバの機能ブロック図である。
図6】外部サーバに記録された第1マップを示す図である。
図7】外部サーバに記録された第2マップを示す図である。
図8】第1マップ及び第2マップの作成方法を説明するための図である。
図9】外部サーバに記録された操舵診断マップを示す図である。
図10】診断対象車両及び基準車両のECUが実行する処理を示すフローチャートである。
図11】外部サーバが実行する処理を示すフローチャートである。
図12】外部サーバが実行する処理を示すフローチャートである。
図13】携帯端末が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る運転診断用マップ作成システム10(以下、システム10と称する)、運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成方法及びプログラムの実施形態について、図1図13を参照しながら説明する。図1に示されるように、システム10は、診断対象車両(車両)20、基準車両(車両)40、外部サーバ(運転診断用マップ作成装置)(コンピュータ)60及び携帯端末70を有する。
【0020】
システム10は、複数台の診断対象車両20を有する。便宜上、図1では診断対象車両20が一台のみ図示されている。診断対象車両20は、外部サーバ60と、ネットワークを介してデータ通信可能である。このネットワークは、通信事業者の通信網及びインターネット網を含んでいる。
【0021】
図2に示されるように、システム10による診断を受信可能な診断対象車両20は、4つの車輪、ECU(Electronic Control Unit)21、車速センサ(センサ)30、ステアリグホイール31、操舵角センサ(センサ)32、GPS受信機33、ヨーレートセンサ(センサ)34及びイグニッションスイッチ35を有する。各診断対象車両20には車両IDが付されている。2つの前輪20FWが転舵輪である。そのため、ステアリグホイール31の操舵角が変化すると、左右の転舵輪20FWの転舵角が変化する。車速センサ30、操舵角センサ32、GPS受信機33、ヨーレートセンサ34及びイグニッションスイッチ35はECU21に接続されている。イグニッションスイッチ35がオフ状態にあるとき診断対象車両20の駆動源は作動不能になり、イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき駆動源は作動可能になる。なお駆動源には、例えば、エンジン及び電動モータの少なくとも一方が含まれる。そのため本明細書の「イグニッションスイッチ35」には、キーによって操作されるイグニッションスイッチ及びその他のスイッチが含まれる。その他のスイッチには、例えばプッシュ式のスタートボタンが含まれる。
【0022】
イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、車速センサ30は、診断対象車両20の車速(車両情報)V1を取得し且つ取得した車速V1をECU21へ送信する。イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、操舵角センサ32は、ステアリグホイール31の回転角である操舵角(車両情報)ST1を取得し且つ取得した操舵角ST1をECU21へ送信する。イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、GPS受信機33は、GPS衛星から送信されたGPS信号を受信する。即ち、GPS受信機33は、診断対象車両20が走行している位置に関する情報(以下、「位置情報」と呼ぶ)を取得する。イグニッションスイッチ35がオン状態にあるとき、所定時間が経過する毎に、ヨーレートセンサ34は、診断対象車両20のヨーレート(車両情報)YR1を取得し且つ取得したヨーレートYR1をECU21へ送信する。ECU21へ送信された車速センサ30、操舵角センサ32及びヨーレートセンサ34の検出値は、診断対象車両20のID情報、上記位置情報及び時刻情報と関連付けられながら後述するストレージ25に記録される。
【0023】
図3に示されるようにECU21は、CPU(Central Processing
Unit:プロセッサ)22、ROM(Read Only Memory)23、RAM(Random Access Memory)24、ストレージ25、通信I/F(Inter Face)26及び入出力I/F27を含んで構成されている。CPU22、ROM23、RAM24、ストレージ25、通信I/F26及び入出力I/F27は、バス28を介して相互に通信可能に接続されている。ECU21は、タイマー(図示省略)から日時に関する情報を取得可能である。
【0024】
CPU22は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU22は、ROM23又はストレージ25からプログラムを読み出し、RAM24を作業領域としてプログラムを実行する。CPU22は、ROM23又はストレージ25に記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理(情報処理)を行う。
【0025】
ROM23は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM24は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ25は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。通信I/F26は、診断対象車両20の外部に位置する機器と通信可能なインタフェースである。例えば通信I/F26は外部サーバ60と無線通信可能である。通信I/F26は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。さらに通信I/F26は、診断対象車両20に設けられたECU21とは別のECUと、外部バスを介して通信可能である。
【0026】
図4に示されるようにECU21は、機能構成として、曲率演算部221及び通信制御部222を有する。曲率演算部221及び通信制御部222は、ECU21のCPU22がROM23に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0027】
曲率演算部221は、ヨーレートセンサ34が検出したヨーレートYR1及び車速センサ30が検出した車速V1に基づいて、診断対象車両20の走行軌跡の曲率Cv1=ヨーレートYR1÷車速V1を演算する。さらに曲率演算部221は、演算された曲率Cv1を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながらストレージ25に記録する。
【0028】
通信制御部222は、所定時間が経過する毎に、ストレージ25に記録され且つ上記位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V1、操舵角ST1、ヨーレートYR1、及び曲率Cv1を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F26を制御する。
【0029】
システム10は、一台の基準車両40を有する。基準車両40は、外部サーバ60とネットワークを介してデータ通信可能である。
【0030】
図2に示されるように、基準車両40は、2つの転舵輪(前輪)40FWを含む4つの車輪、ECU41、車速センサ30、ステアリグホイール31、操舵角センサ32、GPS受信機33、ヨーレートセンサ34及びイグニッションスイッチ35を有する。基準車両40には車両IDが付されている。車速センサ30、操舵角センサ32、GPS受信機33、ヨーレートセンサ34及びイグニッションスイッチ35はECU41に接続されている。ステアリグホイール31の操舵角が変化すると、左右の転舵輪40FWの転舵角が変化する。車速センサ30の検出値である車速(車両情報)V2、操舵角センサ32の検出値である操舵角(車両情報)ST2、ヨーレートセンサ34の検出値であるヨーレート(車両情報)YR2は、基準車両40のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けられながらストレージ45に記録される。
【0031】
図2に示されるようにECU41は、CPU(プロセッサ)42、ROM43、RAM44、ストレージ45、通信I/F46及び入出力I/F47を含んで構成されている。CPU42、ROM43、RAM44、ストレージ45、通信I/F46及び入出力I/F47は、バス48を介して相互に通信可能に接続されている。CPU42、ROM43、RAM44、ストレージ45、通信I/F46及び入出力I/F47の仕様は、CPU22、ROM23、RAM24、ストレージ25、通信I/F26及び入出力I/F27とそれぞれ同一である。
【0032】
図4に示されるようにECU41は機能構成として、曲率演算部421及び通信制御部422を有する。曲率演算部421及び通信制御部422の機能は、曲率演算部221及び通信制御部222の機能とそれぞれ同一である。曲率演算部421及び通信制御部422は、ECU41のCPU42がROM43に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0033】
曲率演算部421は、基準車両40のヨーレートセンサ34が検出したヨーレートYR2及び基準車両40の車速センサ30が検出した車速V2に基づいて、基準車両40の走行軌跡の曲率Cv2=ヨーレートYR2÷車速V2を演算する。さらに曲率演算部421は、演算された曲率Cv2を、基準車両40のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながらストレージ45に記録する。
【0034】
通信制御部422は、所定時間が経過する毎に、ストレージ45に記録され且つ上記位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V2、操舵角ST2、ヨーレートYR2、及び曲率Cv2を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F46を制御する。
【0035】
図1に示された外部サーバ60は、ハードウェア構成として、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fを含んで構成されている。CPU、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。外部サーバ60のCPUは、タイマーから時刻に関する情報を取得可能である。
【0036】
図5に示されるように外部サーバ60のハードウェアは、機能構成として、運転診断部601、通信制御部602、マップ作成部603及びマップ管理部604を有する。これらの機能は、外部サーバ60のCPUがROM又はストレージに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0037】
運転診断部601は、後述する補正操舵角Stc1を二階微分することにより、補正操舵角Stc1の加速度である操舵角加速度STca1を演算する。さらに運転診断部601が、車速V1及び操舵角加速度STca1を後述する操舵診断マップ65に適用することにより、診断対象車両20の操舵に関する得点を取得する。さらに運転診断部601は、取得した得点を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながら、外部サーバ60のストレージに記録する。
【0038】
外部サーバ60のROM又はストレージには、図9に示された操舵診断マップ65が記録されている。操舵診断マップ65は、基準車両40の車速V2、操舵角ST2の二階微分値である操舵角加速度STa2、及び操舵に関する得点について規定する。車速V2は、基準車両40の車速センサ30の検出値である。操舵角ST2は、基準車両40の操舵角センサ32の検出値である。この得点は、基準車両40の操舵に起因する挙動に基づいて規定されている。即ち、操舵診断マップ65は、基準車両40の操舵角加速度と、基準車両40の操舵に起因する挙動との関係性を、車速毎に規定している。従って、操舵角加速度STa2を操舵診断マップ65に適用することにより、基準車両40の操舵に起因する挙動を表す得点を取得できる。
【0039】
操舵診断マップ65は、車速V2を、3つの領域に分けて規定している。この3つの領域は、A(km/h)未満の領域、A以上且つB(km/h)未満の領域、及びB以上の領域である。なお、B>Aであり且つA、Bは正の値である。操舵診断マップ65が表すように、車速V2がA未満の場合、操舵角加速度STa2がX1未満のときの得点は10点であり、操舵角加速度STa2がX1以上のときの得点は1点である。車速V2がA以上且つB未満の場合、操舵角加速度STa2がX2未満のときの得点は10点であり、操舵角加速度STa2がX2以上のときの得点は1点である。車速V2がB以上の場合、操舵角加速度STa2がX3未満のときの得点は10点であり、操舵角加速度STa2がX3以上のときの得点は1点である。なお、X1<X2<X3である。X1、X2、X3は絶対値である。運転診断部601は、車速V1及び操舵角加速度STca1を、操舵診断マップ65に適用することにより、各診断対象車両20の操舵に関する得点を取得する。例えば、車速V1がA未満且つ操舵角加速度STca1がX1未満のときの得点は10点である。さらに運転診断部601は、取得した得点を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながら、外部サーバ60のストレージに記録する。
【0040】
通信制御部602は、ストレージに記録され且つ上記位置情報及び時刻情報と関連付けられた診断対象車両20の得点に関する情報を、この得点が与えられた診断対象車両20の乗員が所持する携帯端末70へ無線送信するように、外部サーバ60の通信I/Fを制御する。
【0041】
マップ作成部603は、各診断対象車両20から受信した操舵角ST1及び曲率Cv1に基づいて、図6に示された第1マップ(運転診断用マップ)75を作成する。第1マップ75の縦軸は操舵角ST1を表し、横軸は曲率Cv1を表す。なお、ステアリグホイール31が時計方向に操舵されたときの操舵角ST1の符号が+(プラス)であり、ステアリグホイール31が反時計方向に操舵されたときの操舵角ST1の符号が-(マイナス)である。また、診断対象車両20が右旋回するときの曲率Cv1の符号が+(プラス)であり、診断対象車両20が左旋回するときの曲率Cv1の符号が-(マイナス)である。
【0042】
外部サーバ60は各診断対象車両20から操舵角ST1及び曲率Cv1を表す大量のデータを受信する。マップ作成部603は、受信した操舵角ST1及び曲率Cv1を表すデータを第1マップ75上にプロットする。さらにマップ作成部603は、プロットされた全データに基づいて第1マップ75を作成する。このときマップ作成部603はデータの平均化を行う。即ち、例えば図8に示されるように、曲率Cv1の所定値であるP1に対応する操舵角ST1が、〇(丸)で表された4つの操舵角ST1を含む場合を想定する。この場合にマップ作成部603は、□(四角)で表された4つの操舵角ST1の平均値を、P1に対応する操舵角ST1の値Q1と見做す。なお、第1マップ75は診断対象車両20毎に作成されている。即ち、ストレージには、診断対象車両20と同数の第1マップ75が記録され、且つ、各第1マップ75と各診断対象車両20のID情報がそれぞれ関連づけられている。さらに車両の操舵角と走行軌跡の曲率はほぼ比例することが知られている。そのため第1マップ75が示すグラフは略直線状である。
【0043】
さらにマップ作成部603は、これと同じ要領によって、基準車両40から受信した操舵角ST2及び曲率Cv2を表す大量のデータに基づいて、図7に示された第2マップ(運転診断用マップ)80を作成する。
【0044】
一般的にヨーレートセンサ34の検出精度は高くない。しかしこのように作成された第1マップ75及び第2マップ80は、平均値に基づかずに作成された第1マップ75及び第2マップ80と比べて、診断対象車両20及び基準車両40の操舵角と曲率との関係をより正確に表す。従って、このようにして作成された第1マップ75及び第2マップ80の信頼性は高い。
【0045】
なお、マップ作成部603が実行する第1マップ75及び第2マップ80の作成方法については、後で詳述する。
【0046】
マップ管理部604は、第1マップ75に関して後述する破棄条件が成立したときに、ストレージに記録されている第1マップ75を破棄する。同様に、マップ管理部604は、第2マップ80に関して破棄条件が成立したときに、ストレージに記録されている第2マップ80を破棄する。
【0047】
図1に示される携帯端末70は、ハードウェア構成として、CPU、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fを含んで構成されている。携帯端末70は、例えば、スマートフォン又はタブレット型コンピュータである。携帯端末70のCPU、ROM、RAM、ストレージ、通信I/F及び入出力I/Fは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。携帯端末70の通信I/Fは、外部サーバ60の通信I/Fと無線通信可能である。携帯端末70は、タイマー(図示省略)から日時に関する情報を取得可能である。携帯端末70にはタッチパネルを有するディスプレイ71が設けられている。
さらに携帯端末70のストレージには、地図データが記録されている。携帯端末70は、例えば、診断対象車両20の運転者が所持する。携帯端末70には、所定の運転診断表示アプリケーションがインストールされている。
【0048】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0049】
まず各診断対象車両20のECU21及び基準車両40のECU41が行う処理の流れについて、図10のフローチャートを用いて説明する。ECU21、41は、所定時間が経過する毎に、図10のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0050】
まずS10(ステップ10)においてECU21、41の曲率演算部221、421は、ヨーレートセンサ34が検出したヨーレートYR1、YR2及び車速センサ30が検出した車速V1、V2に基づいて曲率Cv1、Cv2を演算する。
【0051】
S10の処理を終えたECU21、41はS11へ進む。S11においてECU21の通信制御部222は、ID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V1、操舵角ST1、ヨーレートYR1、及び曲率Cv1を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F26を制御する。S11においてECU41の通信制御部422は、ID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けられた車速V2、操舵角ST2、ヨーレートYR2、及び曲率Cv2を外部サーバ60へ無線送信するように、通信I/F46を制御する。
【0052】
S11の処理を終えたとき、ECU21、41は図10のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0053】
次に外部サーバ60が行う処理の流れについて、図11図12のフローチャートを用いて説明する。外部サーバ60は、所定時間が経過する毎に、図11図12のフローチャートの処理を繰り返し実行する。まずは図11のフローチャートの処理について説明する。
【0054】
まずS20において外部サーバ60の通信制御部602は、通信I/Fが、診断対象車両20から車速V1、操舵角ST1、ヨーレートYR1及び曲率Cv1を受信したか否かを判定する。
【0055】
続いて、外部サーバ60はS21へ進み、ストレージに記録されている第1マップ75及び第2マップ80を用いて診断対象車両20の補正操舵角Stc1を演算する。より詳細には、運転診断部601は、診断対象車両20の操舵角ST1を第1マップ75に引数として適用することにより、この操舵角ST1に対応する曲率Cv1を取得する。この際、運転診断部601は必要に応じて第1マップ75の補間処理を実行する。例えば、この操舵角ST1の大きさが、図6に示された操舵角ST-Aである場合を想定する。この操舵角ST-Aを第1マップ75に引数として適用することにより取得される曲率Cv1の大きさは曲率Cv-Aである。さらに運転診断部601は、この曲率Cv-Aを第2マップ80に引数として適用することにより、曲率Cv-Aに対応する基準車両40の操舵角ST2である操舵角ST-Bを取得する。この際、運転診断部60は必要に応じて第2マップ80の補間処理を実行する。この操舵角ST-Bが、診断対象車両20の補正操舵角Stc1である。なお、後述するように、ストレージに記録されている第1マップ75及び第2マップ80は、それぞれ新しいマップに差し替えられる場合がある。即ち、例えば衝突等に起因して、診断対象車両20の車両特性が大きく変化した場合に第1マップ75が新しいマップに差し替えられ、基準車両40の車両特性が大きく変化した場合に第2マップ80が新しいマップに差し替えられる。
【0056】
S21の処理を終えた外部サーバ60はS22へ進み、運転診断部601が、補正操舵角Stc1の加速度である操舵角加速度STca1を演算する。さらに運転診断部601が、車速V1及び操舵角加速度STca1を操舵診断マップ65に適用することにより、診断対象車両20の操舵に関する得点を取得する。さらに運転診断部601は、取得した得点を、診断対象車両20のID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けながら、外部サーバ60のストレージに記録する。
【0057】
S22の処理を終えた外部サーバ60はS23へ進む。S23において外部サーバ60の通信制御部602は、ストレージに記録され且つID情報、位置情報及び時刻情報と関連付けられた得点に関する情報を携帯端末70へ無線送信するように、通信I/F46を制御する。
【0058】
S20でNoと判定したとき又はS23の処理を終えたとき、外部サーバ60は図11のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0059】
続いて図12のフローチャートの処理について説明する。より詳細には、所定の一台の診断対象車両20である特定診断対象車両20から受信した操舵角ST1及び曲率Cv1に基づいて、マップ作成部603が特定診断対象車両20に対応する第1マップ75を作成する処理について説明する。
【0060】
まずS30において、マップ作成部603は、外部サーバ60が特定診断対象車両20から操舵角ST1及び曲率Cv1を受信したか否かを判定する。なお、以下の説明では、外部サーバ60が特定診断対象車両20から新たに受信した操舵角ST1及び曲率Cv1を「最新検出値」と称する。
【0061】
S30においてYesと判定した場合、マップ作成部603は、S31において、運転診断用マップである第1マップ75がストレージに記録されているか否かを判定する。換言すると、マップ作成部603は、S21の処理に利用可能な第1マップ75がストレージに記録されているか否かを判定する。
【0062】
S31においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS32へ進み、ストレージに記録された最新検出値に基づいて第1マップ75を新規に作成し、且つ、作成した第1マップ75をストレージに記録する。なお、S31でNoと判定される場合は、第1マップ75を作成するのに十分な量の操舵角ST1及び曲率Cv1を外部サーバ60が特定診断対象車両20から受信し且つストレージに記録している。換言すると、この場合の第1マップ75は、後述する学習完了要件を満たす。
【0063】
一方、S31においてYesと判定した場合、マップ作成部603はS33へ進み、ストレージに記録されている第1マップ75と、最新検出値と、に基づいて、第1マップ75と最新検出値との差が所定量以上か否かを判定する。即ち、マップ作成部603は、特定診断対象車両20から最新検出値を受信した第1時刻と、最新検出値より古い操舵角ST1及び曲率Cv1の中で最も新しいデータを受信した第2時刻と、の間における特定診断対象車両20の車両特性の変化量が所定量より大きいか否かを判定する。例えば、第2時刻と第1時刻との間に特定診断対象車両20が別の車両と衝突し、これによって特定診断対象車両20の車両特性が大きく変化した場合は、特定診断対象車両20の車両特性の変化量が所定量より大きくなる。即ち、この場合、ストレージに記録されている第1マップ75は、特定診断対象車両20の操舵角ST1と曲率Cv1との関係を正確に表さない。
【0064】
S33においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS34へ進み、ストレージに後述する保留マップ(図示省略)が記録されているか否かを判定する。
【0065】
S34においてYesと判定した場合、マップ作成部603はS35において、最新検出値を第1マップ75に統合して、ストレージに記録された第1マップ75を更新する。さらにマップ作成部603はS35において保留マップをストレージから廃棄(削除)する。
【0066】
S34においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS36において、最新検出値を第1マップ75に統合して、ストレージに記録された第1マップ75を更新する。
【0067】
一方、S33においてYesと判定した場合、マップ作成部603はS37へ進み、ストレージに特定診断対象車両20に関する保留マップが記録されているか否かを判定する。なお、S33においてYesと判定した場合に、第1マップ75及び最新検出値に関して切替条件が成立する。
【0068】
S37においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS38へ進み保留マップを作成する。この保留マップとは、切替条件を成立させた最新検出値に基づいて、マップ作成部603が作成した、操舵角ST1と曲率Cv1との関係を表すマップである。
【0069】
続いてマップ作成部603はS39へ進み、保留マップに関して所定の学習完了条件が成立するか否かを判定する。即ち、保留マップの基となる操舵角ST1及び曲率Cv1のデータ量が十分であるか否かを判定する。操舵角ST1及び曲率Cv1のデータ量が十分である場合、このデータに基づいて作成された保留マップは、操舵角ST1と曲率Cv1との関係を正確に表す。一方、操舵角ST1及び曲率Cv1のデータの量が十分ではない場合、このデータに基づいて作成された保留マップは、操舵角ST1と曲率Cv1との関係を正確に表さない可能性が高い。なお、外部サーバ60が図12のフローチャートの処理を複数回連続で行い且つS37で複数回連続してNoと判定した場合は、複数回分の最新検出値に基づいて保留マップが作成される。即ち、この場合は、ストレージに記録された保留マップが更新される。
【0070】
S39においてYesと判定した場合に、第1マップ75及び最新検出値に関して破棄条件が成立する。即ち、切替条件が成立し且つ保留マップに関して学習完了条件が成立したときに、第1マップ75及び最新検出値に関して破棄条件が成立する。この場合、マップ管理部604がS40において、ストレージに記録された古い第1マップ75を破棄し、且つ、保留マップを新しい第1マップ75としてストレージに記録する。即ち、ストレージに記録された古い第1マップ75が、新しい第1マップ75に差し替えらえる。
【0071】
一方、S39においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS41へ進み、ストレージに記録された第1マップ75をそのままにし、且つ、保留マップをストレージに記録する。
【0072】
一方、S33において判定不能(IP)と判定された場合、マップ作成部603はS42へ進む。例えば、第1マップ75と最新検出値の対応する曲率Cv1の数が10個以下の場合に、マップ作成部603はS33において判定不能と判定する。
【0073】
S42においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS36の処理を実行する。
【0074】
一方、S42又はS37においてYesと判定した場合、マップ作成部603はS43へ進み、最新検出値を保留マップに統合して、ストレージに記録された保留マップを更新する。
【0075】
続いてマップ作成部603はS44へ進み、ストレージに記録されている第1マップ75及び保留マップに基づいて、第1マップ75と保留マップとの間のズレ量を判定する。
【0076】
S44においてYesと判定した場合、マップ作成部603はS45において、S39と同様の処理を実行する。即ち、マップ作成部603は、ストレージに記録されている第1マップ75と保留マップとに基づいて、第1マップ75と保留マップとの差が所定量以上か否かを判定する。
【0077】
S45においてYesと判定した場合に破棄条件が成立する。破棄条件が成立した場合は、ストレージに記録されている第1マップ75が表す特定診断対象車両20の操舵角ST1と曲率Cv1との関係を表す特性と、保留マップが表す当該特性と、の間に大きな差が生じていると考えられる。破棄条件が成立すると、マップ管理部604がS46において、S40と同様の処理を実行する。一方、S45においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS47において、S41と同様の処理を実行する。
【0078】
S44においてNoと判定した場合、マップ作成部603はS48において、保留マップを第1マップ75に統合して、ストレージに記録された第1マップ75を更新する。さらにマップ作成部603は、ストレージから保留マップを廃棄(削除)する。
【0079】
S30でNoと判定したとき又はS32、35、36、40、41、46、47、48の処理を終えたとき、外部サーバ60は図12のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0080】
さらに外部サーバ60は、特定診断対象車両20以外の診断対象車両20について、図12のフローチャートの処理を実行する。
【0081】
さらに外部サーバ60は、基準車両40について、図12のフローチャートの処理を実行する。即ち、外部サーバ60は基準車両40から受信した操舵角ST2及び曲率Cv2を表すデータに基づいて、第2マップ80を作成(更新)する。この場合、外部サーバ60が基準車両40から新たに受信した操舵角ST2及び曲率Cv2が「最新検出値」である。
【0082】
次に携帯端末70が行う処理の流れについて、図13のフローチャートを用いて説明する。携帯端末70は、所定時間が経過する毎に、図13のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0083】
まずS50において携帯端末70のCPUは、運転診断表示アプリケーションが起動中か否かを判定する。
【0084】
S50でYesと判定された携帯端末70はS51へ進み、携帯端末70の通信I/Fが外部サーバ60の通信I/Fから、携帯端末70の所持者が乗車する診断対象車両20に関する得点情報を受信したか否かを判定する。
【0085】
S51でYesと判定した携帯端末70はS52へ進み、CPUが、得点を表す画像(図示省略)をディスプレイ71に表示させる。このときディスプレイ71は、携帯端末70のストレージに記録された地図データが表す地図画像を表示し、且つ、得点に対応する操舵操作が行われた位置を、特定の画像として地図画像に重ねて表示してもよい。さらにディスプレイ71は、得点に対応する操舵操作が行われた時刻を表す情報を、得点と関連付けながら表示してもよい。
【0086】
S50でNoと判定したとき又はS52の処理を終えたとき、携帯端末70は図13のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0087】
以上説明したように本実施形態では、衝突等によって診断対象車両20の車両特性が大きく変化することに起因して第1マップ75に関して破棄条件が成立したときに、外部サーバ60のストレージに記録されていた古い第1マップ75が破棄される。同様に、衝突等によって基準車両40の車両特性が大きく変化することに起因して第2マップ80に関して破棄条件が成立したときに、外部サーバ60のストレージに記録されていた古い第2マップ80が破棄される。そのため、診断対象車両20及び基準車両40の少なくとも一方の車両特性が大きく変化した後に、車両特性が変化した車両に関するマップを外部サーバ60が使用し続けることにより、外部サーバ60が不正確な運転診断を実行し続けるおそれは小さい。従って、診断対象車両20及び基準車両40の少なくとも一方の車両特性が大きく変化した場合においても、外部サーバ60は正確な運転診断を実行可能である。
【0088】
さらに診断対象車両20に関する保留マップは、切替条件を成立させた最新検出値に基づいて作成されたものである。そのため、保留マップは切替条件を成立させた最新検出値が検出されたときの診断対象車両20の車両特性を正確に表している可能性が高い。同様に、基準車両40に関する保留マップは、切替条件を成立させた最新検出値が検出されたときの基準車両40の車両特性を正確に表している可能性が高い。そのため、学習完了要件が満たされた場合に、マップ作成部603が診断対象車両20に関する保留マップを第1マップ75として利用し且つ基準車両40に関する保留マップを第2マップ80として利用すると、正確な運転診断が実行される可能性が高い。
【0089】
さらに診断対象車両20に関する保留マップが第1マップ75として利用可能となったときに破棄条件が成立し、基準車両40に関する保留マップが第2マップ80として利用可能となったときに破棄条件が成立する。そのため、古い第1マップ75が破棄された場合、新しい第1マップ75に基づいて運転診断が実行され、且つ、古い第2マップ80が破棄された場合、新しい第2マップ80に基づいて運転診断が実行される。さらに、診断対象車両20の車両特性に大きな変化が生じた場合においても、新しい第1マップ75が作成されるまでは、外部サーバ60のストレージに記録されている古い第1マップ75に基づいて運転診断が実行される。同様に、基準車両40の車両特性に大きな変化が生じた場合においても、新しい第2マップ80が作成されるまでは、外部サーバ60のストレージに記録されている古い第2マップ80に基づいて運転診断が実行される。従って、保留マップに基づく新しい第1マップ75及び第2マップ80が作成されるまでの間、外部サーバ60は診断対象車両20の運転診断を実行可能である。
【0090】
さらに本実施形態では、診断対象車両20のヨーレートYR1及び車速V1に基づいて、診断対象車両20の走行軌跡の曲率Cv1が求められる。さらに操舵診断マップ65と操舵角加速度STca1に基づいて、診断対象車両20の操舵に関する運転診断が行われる。上記のように操舵診断マップ65は、基準車両40の操舵角加速度と基準車両40の挙動との関係性を規定したものである。即ち、操舵診断マップ65は、診断対象車両20の操舵角加速度STca1と診断対象車両20の挙動との関係性を規定したものではない。しかし、走行軌跡の曲率と車両の操舵に起因する挙動との関係性は、車両の車種(仕様)に拘わらず、実質的に同一であることが知られている。さらに、上述のように、車両の操舵角と走行軌跡の曲率はほぼ比例することが知られている。即ち、操舵角と曲率の間には相関関係があることが知られている。そのため、診断対象車両20の曲率Cv1に基づく値である操舵角加速度STa1を操舵診断マップ65に適用することにより得られた得点は、診断対象車両20の操舵に起因する挙動を表す。そのため操舵診断マップ65と診断対象車両20の操舵角加速度STca1とに基づいて、診断対象車両20の操舵に関する運転診断を実行可能である。さらに、操舵角加速度STa2を操舵診断マップ65に適用することにより、基準車両40の操舵に関する運転診断を実行可能である。即ち、一つの判定基準に基づいて、基準車両40及び診断対象車両20の操舵に関する運転診断を実行可能である。
【0091】
以上、実施形態に係るシステム10、運転診断用マップ作成装置、運転診断用マップ作成方法及びプログラムについて説明したが、これらは本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0092】
例えば、外部サーバ60が、診断対象車両20のセンサの検出値に基づいて、第1マップ75とは異なるマップを作成し、基準車両40のセンサの検出値に基づいて第2マップ80とは異なるマップを作成してもよい。例えば、これらのマップの引数の少なくとも一方は、操舵角及び曲率とは異なる。
【0093】
さらに各車両がマップ作成部603及びマップ管理部604に相当する機能を有してもよい。例えば、診断対象車両20のECU21がマップ作成部603及びマップ管理部604に相当する機能を有し、ECU21が第1マップ75を作成してもよい。また、基準車両40のECU41がマップ作成部603及びマップ管理部604に相当する機能を有し、ECU41が第2マップ80を作成してもよい。この場合、診断対象車両20が作成した第1マップ75が外部サーバ60へ送信され、基準車両40が作成した第2マップ80が外部サーバ60へ送信され、外部サーバ60が受信した第1マップ75及び第2マップ80を利用して診断対象車両20の運転診断を実行してもよい。また、この場合に、基準車両40が作成した第2マップ80を、基準車両40が診断対象車両20へ無線送信し、診断対象車両20のECU21が第1マップ75及び第2マップ80を利用して診断対象車両20の運転診断を実行してもよい。この場合はシステム10から外部サーバ60を省略可能である。
【0094】
基準車両40の操舵角ST2及び曲率Cv2を表す大量のデータに基づいて予め第2マップ80を作成し、この第2マップ80を外部サーバ60のROM又はストレージに記録してもよい。この第2マップ80は更新されない。さらに、この第2マップ80は、外部サーバ60によって作成されてもよいし、外部サーバ60とは別の演算装置(コンピュータ)によって作成された後に外部サーバ60のROM又はストレージに記録されてもよい。
【0095】
システム10がインターネットに接続されていなくてもよい。この場合は、例えば診断対象車両20及び基準車両40から取得した検出値データ群をポータブル式の記録媒体(例えば、USB)に記録させ、且つ、この記録媒体内の検出値データ群を外部サーバ60のストレージにコピーする。
【0096】
外部サーバ60が診断結果を診断対象車両20へ無線送信し、診断対象車両20に設けられたディスプレイ(図示省略)が診断結果を表示してもよい。
【0097】
[付記]
本発明の運転診断用マップ作成装置は以下の構成1~構成4を任意に組み合わせたものであってもよい。さらに、本発明の運転診断用マップ作成システム、運転診断用マップ作成方法及びプログラムは、構成1~構成4を任意に組み合わせたものに相当するものであってもよい。
〈構成1〉車両に設けられたセンサが取得した車両情報の検出値に基づいて、運転診断部が前記車両の運転診断のために用いる運転診断用マップを作成するマップ作成部と、最新の前記検出値である最新検出値より前に取得した前記検出値に基づいて前記マップ作成部が作成した前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して破棄条件が成立したときに、前記運転診断用マップを破棄するマップ管理部と、を備える運転診断用マップ作成装置。
〈構成2〉前記運転診断用マップ及び前記最新検出値に関して、前記運転診断用マップと前記最新検出値との差が所定量以上になったときに成立する切替条件が成立したとき、前記マップ作成部が、前記切替条件を成立させた前記最新検出値に基づいて、所定の学習完了要件を満たしたときに前記運転診断部が新しい前記運転診断用マップとして利用可能となる保留マップを作成する運転診断用マップ作成装置。
〈構成3〉前記保留マップが前記学習完了要件を満たしたときに、前記破棄条件が成立する運転診断用マップ作成装置。
〈構成4〉前記保留マップが前記学習完了要件を満たすまでの間、前記運転診断部が、既存の前記運転診断用マップを用いて運転診断を行う運転診断用マップ作成装置。
【符号の説明】
【0098】
10 運転診断用マップ生成システム(システム10)
20 診断対象車両(車両)
30 車速センサ(センサ)
32 操舵角センサ(センサ)
34 ヨーレートセンサ(センサ)
40 基準車両(車両)
60 外部サーバ(運転診断用マップ生成装置)
601 運転診断部
603 マップ作成部
604 マップ管理部
75 第1マップ(運転診断用マップ)
80 第2マップ(運転診断用マップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13