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特開2023-182453通信装置、通信方法及びコンピュータプログラム
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  • 特開-通信装置、通信方法及びコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182453
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/106 20220101AFI20231219BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H04L43/106
H04L12/28 100A
H04L12/28 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096068
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 和之
(72)【発明者】
【氏名】河野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
(72)【発明者】
【氏名】北川 和樹
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033BA06
5K033DB14
5K033DB19
5K033EA06
(57)【要約】
【課題】通信装置、通信方法及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】処理部及び記憶部を備え、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを送受する通信装置であって、記憶部は、受信すべきフレームに含まれるタイムスタンプの特徴情報を記憶してあり、処理部は、特定の送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、収集したタイムスタンプの特徴情報と、記憶部に記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信するフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部及び記憶部を備え、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを送受する通信装置であって、
前記記憶部は、
受信すべきフレームに含まれるタイムスタンプの特徴情報を記憶してあり、
前記処理部は、
特定の送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、
収集したタイムスタンプの特徴情報と、前記記憶部に記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信するフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する
通信装置。
【請求項2】
複数の通信ポートを備え、
前記記憶部は、通信ポート毎に前記特徴情報を記憶してある
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記記憶部は、通信ポート毎に2種類以上の特徴情報を記憶してあり、
前記処理部は、一の通信ポートを通じて収集したタイムスタンプの特徴情報が、前記一の通信ポートについて記憶してある2種類以上の特徴情報の全てに一致する場合、前記一の通信ポートを通じて受信するタイムスタンプが正常であると判断する
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記記憶部は、タイムスタンプにおける特定の位の数値の並びを特徴情報として記憶してある
請求項1から請求項3の何れか1つに記載の通信装置。
【請求項5】
前記特徴情報は、タイムスタンプの下二桁の数値が00に固定されているという情報を含む
請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記特徴情報は、タイムスタンプの下二桁の数値が4の倍数であるという情報を含む
請求項4に記載の通信装置。
【請求項7】
特定の送信元からIEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを受信し、
受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、
収集したタイムスタンプの特徴情報と、メモリに予め記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する
処理をコンピュータにより実行する通信方法。
【請求項8】
特定の送信元からIEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを受信し、
受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、
収集したタイムスタンプの特徴情報と、メモリに予め記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時刻同期の際の異常検知手法として、例えば、特許文献1には、タイムスタンプの時刻と現在時刻との差分により、遅延時間を算出し、その遅延時間の履歴に基づいて異常を検知する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-201110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、遅延時間の履歴に基づいて異常検知を行っているが、タイムスタンプ自体の特徴情報に基づき、異常を検知することはできない。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、タイムスタンプの特徴情報に着目して、特定の送信元から送信されたフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する通信装置、通信方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る通信装置は、処理部及び記憶部を備え、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを送受する通信装置であって、前記記憶部は、受信すべきフレームに含まれるタイムスタンプの特徴情報を記憶してあり、前記処理部は、特定の送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、収集したタイムスタンプの特徴情報と、前記記憶部に記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、タイムスタンプの特徴情報に着目して、特定の送信元から送信されたフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る通信システムの構成例を説明する説明図である。
図2】タイムスタンプの特徴情報を説明する説明図である。
図3】同期時刻を計算する際のシーケンス図である。
図4】Syncフレームを中継する際のシーケンス図である。
図5】伝搬遅延を計算する際のシーケンス図である。
図6】通信装置が実行する異常検知の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本開示の一態様に係る通信装置は、処理部及び記憶部を備え、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを送受する通信装置であって、前記記憶部は、受信すべきフレームに含まれるタイムスタンプの特徴情報を記憶してあり、前記処理部は、特定の送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、収集したタイムスタンプの特徴情報と、前記記憶部に記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信するフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する。
【0010】
本態様にあっては、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを利用することにより、ハードウェアに依存するようなタイムスタンプの特徴情報を抽出することができる。また、抽出した特徴情報を用いて、タイムスタンプの異常の有無を判断することができる。
【0011】
(2)本開示の一態様に係る通信装置は、複数の通信ポートを備え、前記記憶部は、通信ポート毎に前記特徴情報を記憶してある。
【0012】
本態様にあっては、通信ポート毎の特徴情報に基づきタイムスタンプが正常であるか否かを判断する。一の通信ポートを通じて受信するタイムスタンプが正常であった場合、その通信ポートに接続された通信相手は、正当な通信相手であると判断することができる。一方、他の通信ポートを通じて受信するタイムスタンプが正常でなかった場合、その通信ポートに接続された通信相手は、不当な通信相手であると判断することができる。
【0013】
(3)本開示の一態様に係る通信装置は、前記記憶部は、通信ポート毎に2種類以上の特徴情報を記憶してあり、前記処理部は、一の通信ポートを通じて収集したタイムスタンプの特徴情報が、前記一の通信ポートについて記憶してある2種類以上の特徴情報の全てに一致する場合、前記一の通信ポートを通じて受信するタイムスタンプが正常であると判断する。
【0014】
本態様にあっては、通信ポート毎に2種類以上の特徴情報が記憶されており、全ての特徴情報が一致する場合にのみタイムスタンプが正常であると判断する。タイムスタンプの特徴情報が偶然一致するという可能性は少なくなり、タイムスタンプが正常であるか否かをより精度よく判断することができる。
【0015】
(4)本開示の一態様に係る通信装置は、前記記憶部は、タイムスタンプにおける特定の位の数値の並びを特徴情報として記憶してある。
【0016】
本態様にあっては、タイムスタンプにおける特定の位の数値の並びを特徴情報として用いることができる。タイムスタンプのnsecの一の位の数値、十の位の通知、及び下二桁の数値は、ハードウェアの影響を受けやすい。このため、これらの数値の並びを特徴情報として抽出することにより、収集したタイムスタンプが正常であるか否かを判断することができる。
【0017】
(5)本開示の一態様に係る通信装置は、前記特徴情報は、タイムスタンプの下二桁の数値が00に固定されているという情報を含む。
【0018】
ハードウェアによっては、タイムスタンプの桁数を合わせるために、下二桁に00を付加する場合がある。本態様では、このようなハードウェアによって下二桁に00が付加されたタイムスタンプを検知することができる。
【0019】
(6)本開示の一態様に係る通信装置は、前記特徴情報は、タイムスタンプの下二桁の数値が4の倍数であるという情報を含む。
【0020】
ハードウェアによっては、タイムスタンプの下二桁が4の倍数になる場合がある。本態様では、このようなハードウェアにより生成されたタイムスタンプを検知することができる。
【0021】
(7)本開示の一態様に係る通信方法は、特定の送信元からIEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを受信し、受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、収集したタイムスタンプの特徴情報と、メモリに予め記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する処理をコンピュータにより実行する。
【0022】
本態様にあっては、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを利用することにより、ハードウェアに依存するような特徴情報を抽出することができ、抽出した特徴情報を用いて、タイムスタンプの異常の有無を判断することができる。
【0023】
(8)本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、特定の送信元からIEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを受信し、受信したフレームに含まれるタイムスタンプを収集し、収集したタイムスタンプの特徴情報と、メモリに予め記憶してあるタイムスタンプの特徴情報とを比較することにより、前記送信元から受信したフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する処理をコンピュータに実行させる。
【0024】
本態様にあっては、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを利用することにより、ハードウェアに依存するような特徴情報を抽出することができ、抽出した特徴情報を用いて、タイムスタンプの異常の有無を判断することができる。
【0025】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態に係る通信システムの構成例を説明する説明図である。本実施の形態に係る通信システムは、通信装置10及び通信装置10に接続される複数のECUを含んでいる。通信装置10は、例えば、車両に搭載されるECU(Electronic Control Unit)やスイッチ装置などの通信装置である。通信装置10は、処理部11、記憶部12、通信部13、第1通信ポート14、第2通信ポート15、第3通信ポート16などを備える。
【0026】
処理部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える。処理部11内のCPUは、ROMに格納された制御プログラム及び記憶部12に記憶されたプログラムPGを実行することにより、上記ハードウェアの動作を制御し、装置全体を本願の通信装置として機能させる。処理部11内のRAMには、各種プログラムの実行中に生成される各種データが記憶される。
【0027】
処理部11は、上記の構成に限定されるものではなく、MCU(Micro Controller Unit)、揮発性又は不揮発性のメモリ等を含む1又は複数の処理回路であればよい。また、処理部11は、日時情報を出力するクロック、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ等の機能を備えていてもよい。
【0028】
記憶部12は、EEPROM(Electronically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリにより構成されており、各種データを記憶する。記憶部12に記憶されるデータは、後述するタイムスタンプ情報を含む。記憶部12に記憶されるプログラムPGは、第1通信ポート14~第3通信ポート16を介して受信したフレームに含まれるタイムスタンプが正常であるか否かを判断する処理を実行させるためのコンピュータプログラムを含む。プログラムPG(プログラム製品)は、例えば、処理部11によって読み取り可能な記録媒体によって提供される。また、記憶部12に記憶されるプログラムPGは、図示しない外部サーバからダウンロードしたものであってもよい。
【0029】
通信部13は、第1通信ポート14~第3通信ポート16を介して接続された複数の通信装置と通信するための処理を行う。本実施の形態では、例えばイーサネットケーブルを介して、第1通信ポート14には第1ECU100が接続され、第2通信ポート15には第2ECU200が接続され、第3通信ポート16には第3ECU300が接続される。
【0030】
通信装置10と各ECU100~300との間では、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを送受し、gPTP(generalized Precision Time Protocol)を利用することによって時刻同期を実現する。図1に示すシステム構成において、例えば、第1ECU100をマスタノード、通信装置10及び第2ECU200をスレーブノードとして、時刻同期の手法を説明する。
【0031】
この例では、第1ECU100からマスタクロックに基づくタイムスタンプを含むSyncフレームを通信装置10に送信し、通信装置10にて同期時刻を求めることにより、通信装置10の時刻を第1ECU100の時刻(マスタクロック)に同期させることができる。また、第1ECU100から第2ECU200へのSyncフレームを通信装置10が中継し、第2ECU200が伝搬遅延を考慮して同期時刻を求めることにより、第2ECU200の時刻を第1ECU100の時刻(マスタクロック)に同期させることができる。
【0032】
ここで、第3ECU300がマスタノードを偽装し、第3ECU300から偽装されたタイムスタンプを含むSyncフレームが送信された場合、システム内の同期を担保することはできない。
【0033】
本実施の形態では、システム内で用いられるタイムスタンプの特徴情報を事前に把握して記憶部12に記憶しておき、新たに収集したタイムスタンプから得られる特徴情報と比較することにより、タイムスタンプが正常であるか否かの判断(異常検知)を行う。
【0034】
図2はタイムスタンプの特徴情報を説明する説明図である。本実施の形態では、タイムスタンプのnsecの位の値はハードウェアの影響を受けやすいということに着目して特徴情報を事前に抽出する。図2Aは、例えば第1ECU100から送信されるSyncフレームからタイムスタンプを収集した結果、nsecの一の位が全て6であった例を示している。この場合、通信装置10の記憶部12には、nsecの一の位が全て6である(若しくは全て同じである)という特徴情報が記憶される。
【0035】
図2Bは、例えば第1ECU100から送信されるSyncフレームからタイムスタンプを収集した結果、nsecの下二桁が4の倍数であった例を示している。この場合、通信装置10の記憶部12には、nsecの下二桁が4の倍数であるという特徴情報が記憶される。
【0036】
図2Cは、例えば第1ECU100から送信されるSyncフレームからタイムスタンプを収集した結果、nsecの下二桁に特徴がない例を示している。この場合、通信装置10の記憶部12には、nsecの下二桁に特徴がないという特徴情報が記憶される。
【0037】
このように、タイムスタンプを事前に収集して特徴を把握することにより、特徴情報を事前に見出すことができる。特徴情報は、図2A図2Cに示すものに限定されず、例えば、タイムスタンプのnsecの一の位が全て偶数であるという特徴情報であってもよい。また、nsecの一の位が略同一であるが、数秒単位で少しずつずれるという特徴情報であってもよい。更に、nsecの十の位が偶数(若しくは奇数)である頻度が高く、奇数(若しくは偶数)である頻度が低いという特徴情報であってもよい。更に、nsecの下二桁が00に固定されているという特徴情報であってもよい。タイムスタンプの特徴情報は、これらに限定されず、事前に見出された特徴情報が通信装置10の記憶部12に記憶されていればよい。
【0038】
なお、記憶部12には、第1通信ポート14~第3通信ポート16の夫々に接続されるべき正当なECUのタイムスタンプの特徴情報が通信ポート毎に記憶されるとよい。例えば、第1通信ポート14に接続されるべき正当なECUが第1ECU100であれば、記憶部12には、第1ECU100より得られるタイムスタンプの特徴情報が第1通信ポート14に関連付けられて記憶される。第2通信ポート15及び第3通信ポート16についても同様である。
【0039】
また、記憶部12には、通信ポート毎に2種類以上の特徴情報が記憶されてもよい。処理部11は、例えば、第1通信ポート14を通じて収集したタイムスタンプの特徴情報が、第1通信ポート14について記憶してある2種類以上の特徴情報の全てに一致する場合、第1通信ポート14を通じて受信するタイムスタンプが正常であると判断する。第2通信ポート15及び第3通信ポート16についても同様である。
【0040】
通信装置10は、上述のような特徴情報を用いて、タイムスタンプの異常検知を行う。通信装置10は、(1)同期時刻を計算する際、(2)Syncフレームを中継する際、(3)伝搬遅延を計算する際にタイムスタンプの異常検知を実行することができる。
【0041】
図3は同期時刻を計算する際のシーケンス図である。図3のシーケンス図において、時刻同期マスタは例えば第1ECU100であり、時刻同期スレーブは通信装置10である。第1ECU100は、自装置のマスタクロックから出力される時刻(t1)に基づきタイムスタンプを生成し、タイムスタンプを付加したSyncフレームを通信装置10へ送信する。第1ECU100は、Syncフレームを送信した後、必要に応じてFllow Upフレームを送信してもよい。
【0042】
通信装置10の処理部11は、通信部13を通じてSyncフレームを受信した場合、当該Syncフレームに含まれるタイムスタンプを参照して同期時刻を計算する。なお、本実施の形態において、第1ECU100と通信装置10との伝搬遅延は既知であるとする。
【0043】
処理部11は、Syncフレームに含まれるタイムスタンプを適宜の期間収集し、収集したタイムスタンプから得られる特徴情報と、記憶部12に事前に記憶されている通信ポート毎の特徴情報とを比較することにより、タイムスタンプの異常を検知する。すなわち、処理部11は、収集したタイムスタンプから得られる特徴情報と、記憶部12に事前に記憶されている通信ポート毎の特徴情報とが一致する場合、収集したタイムスタンプは正常であると判断し、一致しない場合、収集したタイムスタンプは異常であると判断すればよい。
【0044】
図4はSyncフレームを中継する際のシーケンス図である。図4のシーケンス図において、時刻同期マスタは例えば第1ECU100であり、中継装置は通信装置10であり、時刻同期スレーブは例えば第2ECU200である。
【0045】
時刻同期スレーブは通信装置10である。第1ECU100は、自装置のマスタクロックから出力される時刻(t1)に基づきタイムスタンプを生成し、タイムスタンプを付加したSyncフレームを通信装置10へ送信する。
【0046】
通信装置10の処理部11は、通信部13を通じてSyncフレームを受信した場合、受信したSyncフレームを第2ECU200へ転送する。処理部11は、転送するSyncフレームに含まれるタイムスタンプを適宜の期間収集し、収集したタイムスタンプから得られる特徴情報と、記憶部12に事前に記憶されている通信ポート毎の特徴情報とを比較することにより、タイムスタンプの異常を検知する。すなわち、処理部11は、収集したタイムスタンプから得られる特徴情報と、記憶部12に事前に記憶されている通信ポート毎の特徴情報とが一致する場合、収集したタイムスタンプは正常であると判断し、一致しない場合、収集したタイムスタンプは異常であると判断すればよい。
【0047】
第2ECU200は、通信装置10を介して転送されるSyncフレームを受信する。第2ECU200は、受信したSyncフレームに含まれるタイムスタンプを参照して同期時刻を計算する。なお、本実施の形態において、第1ECU100と通信装置10との伝搬遅延(t2-t1)、通信装置10における中継処理遅延(t3-t2)、通信装置10と第2ECU200との伝搬遅延(t4-t3)等は既知であるとする。第2ECU200においても、システムで使用されるタイムスタンプの特徴情報が事前に記憶されていれば、通信装置10と同様の手順にてタイムスタンプの異常を検知することができる。
【0048】
図5は伝搬遅延を計算する際のシーケンス図である。図5のシーケンス図において、時刻同期マスタは例えば第1ECU100であり、時刻同期スレーブは通信装置10である。通信装置10は、自装置のスレーブクロックから出力される時刻(t1)に基づきタイムスタンプを生成し、タイムスタンプを付加したPdelay_Reqメッセージを第1ECU100へ送信する。
【0049】
第1ECU100は、Pdelay_Reqメッセージの受信時刻を、Pdelay_Resメッセージで通信装置10に返信する。
【0050】
通信装置10の処理部11は、第1ECU100からPdelay_Resメッセージを受信した場合、伝搬遅延時間を計算する。処理部11は、時刻t1~t4を参照することによって、伝搬遅延時間を計算することができる。
【0051】
処理部11は、Pdelay_Resメッセージに含まれるタイムスタンプを適宜の期間収集し、収集したタイムスタンプから得られる特徴情報と、記憶部12に事前に記憶されている通信ポート毎の特徴情報とを比較することにより、タイムスタンプの異常を検知する。すなわち、処理部11は、収集したタイムスタンプから得られる特徴情報と、記憶部12に事前に記憶されている通信ポート毎の特徴情報とが一致する場合、収集したタイムスタンプは正常であると判断し、一致しない場合、収集したタイムスタンプは異常であると判断すればよい。
【0052】
図6は通信装置10が実行する異常検知の処理手順を示すフローチャートである。通信装置10の処理部11は、特定の通信ポート(例えば、第3通信ポート16)を通じて入力されるフレームからタイムスタンプを収集する(ステップS101)。
【0053】
処理部11は、収集したタイムスタンプから特徴情報を抽出する(ステップS102)。処理部11は、例えば、タイムスタンプのnsecの一の位の数値、十の位の数値、下二桁の数値の並びに着目して特徴情報を抽出すればよい。
【0054】
処理部11は、ステップS102で抽出した特徴情報と、記憶部12に事前に記憶されている特定の通信ポート(例えば、第3通信ポート16)の特徴情報とを比較し(ステップS103)、両者が一致するか否かを判断する(ステップS104)。
【0055】
両者が一致すると判断した場合(S104:YES)、処理部11は、特定の通信ポートに接続されているECUのタイムスタンプは正常であると判断する(ステップS105)。
【0056】
両者が一致しないと判断した場合(S104:NO)、処理部11は、特定の通信ポートに接続されているECUのタイムスタンプは異常であると判断する(ステップS106)。処理部11は、タイムスタンプが異常であると判断した場合、警告を発したり、特定の通信ポートを介した通信を停止したりしてもよい。
【0057】
図6のフローチャートでは、記憶部12に記憶されている1つの特徴情報と比較する構成としたが、記憶部12に複数の特徴情報を記憶させておき、複数の特徴情報と一致する場合に、正常と判断する構成としてもよい。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、IEEE802.1ASの規約に従って生成されるフレームを利用することにより、ハードウェアに依存するような特徴情報を抽出することができ、抽出した特徴情報を用いて、タイムスタンプの異常の有無を判断することができる。
【0059】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0060】
特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 通信装置
11 処理部
12 記憶部
13 通信部
14 第1通信ポート
15 第2通信ポート
16 第3通信ポート
100 第1ECU
200 第2ECU
300 第3ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6