(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182461
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】無端ベルト、転写装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096077
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】六反 実
(72)【発明者】
【氏名】落合 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅士
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA01
2H200FA16
2H200GA23
2H200GA34
2H200GA44
2H200GB22
2H200JA02
2H200JB10
2H200JC04
2H200JC15
2H200JC16
2H200MA04
2H200MA06
2H200MA11
2H200MA20
2H200MB02
2H200MB04
2H200MB06
2H200MB07
(57)【要約】
【課題】画像の色抜け及び色点の発生を抑制する無端ベルトの提供。
【解決手段】1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が下記式(1)を満たし、1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が下記式(2)を満たし、1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が下記式(3)を満たす無端ベルト。
式(1):log10C≦3.18×log10Z-30.27
式(2):6.3≦log10Z0.63≦6.9
式(3):9.1≦log10Z630≦9.9
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が下記式(1)を満たし、
1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が下記式(2)を満たし、
1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が下記式(3)を満たす無端ベルト。
式(1):log10C≦3.18×log10Z-30.27
式(2):6.3≦log10Z0.63≦6.9
式(3):9.1≦log10Z630≦9.9
【請求項2】
前記静電容量Cの絶対値及び前記交流抵抗Zの絶対値が下記式(1-2)を満たす請求項1に記載の無端ベルト。
式(1-2):log10C≦3.18×log10Z-15.0
【請求項3】
前記交流抵抗Z630が下記式(3-3)を満たす請求項1に記載の無端ベルト。
式(3-3):9.4≦log10Z630≦9.9
【請求項4】
前記交流抵抗Z0.63が下記式(2-4)を満たす請求項3に記載の無端ベルト。
式(2-4):6.3≦log10Z0.63≦6.5
【請求項5】
前記静電容量Cの絶対値が下記式(4-1)を満たす請求項1に記載の無端ベルト。
式(4-1):-9.7≦log10C
【請求項6】
クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムを含む弾性材料並びにカーボンブラックを含有する基材層と、
フッ素樹脂を含む樹脂を含有する表面層と、を有し、
前記カーボンブラックの含有量が、前記基材層に含まれる弾性材料全体に対して、10質量%以上40質量%以下である請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項7】
前記フッ素樹脂の含有量が、前記表面層に含まれる樹脂全体に対して、10質量%以上35質量%以下である請求項6に記載の無端ベルト。
【請求項8】
前記表面層の厚さが3μm以上15μm以下である請求項7に記載の無端ベルト。
【請求項9】
外周面にトナー像が転写される中間転写体と、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体の外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写体の外周面に接触して配置され、前記中間転写体の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材であって、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の無端ベルトを有する二次転写装置と、
を備える転写装置。
【請求項10】
像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、請求項9に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端ベルト、転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「表面にトナー像が転写される中間転写体に、転写部材を当接させて帯状の転写ニップを構成する転写系を備えた画像形成装置において、前記転写系を、前記転写ニップの長手方向の単位長さ当たりの動的インピーダンスが、全環境で0.3MΩ・m以上、9.3MΩ・m以下になるように構成するとともに、前記転写ニップにて記録材を挟持搬送しつつ前記中間転写体と前記転写部材との間に転写バイアスを印加することで、前記中間転写体上のトナー像を前記記録材上に転写する、ことを特徴とする画像形成装置。」が提案されている。
特許文献2には、「像担持体と、前記像担持体にトナー像を形成する画像形成手段と、前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、前記中間転写体を支持する支持部材と、前記中間転写体との間に転写材を挟持する二次転写手段とを有し、前記二次転写手段の前記転写材に接触する面の十点平均粗さRzJISが7μm以下であり、前記中間転写体に形成したトナー像を前記転写材に転写する画像形成装置において、前記中間転写体の前記トナー像が形成される面と前記画像形成装置の基準電位間のインピーダンスZ1と、前記二次転写手段の前記転写材が接触する面と前記画像形成装置の基準電位間のインピーダンスZ2が、Z1≧Z2、であることを特徴とする画像形成装置。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-075675号公報
【特許文献2】特開2009-150962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が式(1)を満たさない場合、1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が式(2)を満たさない場合、又は1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が式(3)を満たさない場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が下記式(1)を満たし、
1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が下記式(2)を満たし、
1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が下記式(3)を満たす無端ベルト。
式(1):log10C≦3.18×log10Z-30.27
式(2):6.3≦log10Z0.63≦6.9
式(3):9.1≦log10Z630≦9.9
<2> 前記静電容量Cの絶対値及び前記交流抵抗Zの絶対値が下記式(1-2)を満たす<1>に記載の無端ベルト。
式(1-2):log10C≦3.18×log10Z-15.0
<3> 前記交流抵抗Z630が下記式(3-3)を満たす<1>又は<2>に記載の無端ベルト。
式(3-3):9.4≦log10Z630≦9.9
<4> 前記交流抵抗Z0.63が下記式(2-4)を満たす<3>に記載の無端ベルト。
式(2-4):6.3≦log10Z0.63≦6.5
<5> 前記静電容量Cの絶対値が下記式(4-1)を満たす<1>~<4>のいずれか1つに記載の無端ベルト。
式(4-1):-9.7≦log10C
<6> クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムを含む弾性材料並びにカーボンブラックを含有する基材層と、
フッ素樹脂を含む樹脂を含有する表面層と、を有し、
前記カーボンブラックの含有量が、前記基材層に含まれる弾性材料全体に対して、10質量%以上40質量%以下である<1>に記載の無端ベルト。
<7> 前記フッ素樹脂の含有量が、前記表面層に含まれる樹脂全体に対して、10質量%以上35質量%以下である<6>に記載の無端ベルト。
<8> 前記表面層の厚さが3μm以上15μm以下である<7>に記載の無端ベルト。
<9> 外周面にトナー像が転写される中間転写体と、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体の外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写体の外周面に接触して配置され、前記中間転写体の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材であって、<1>~<8>のいずれか1つに記載の無端ベルトを有する二次転写装置と、
を備える転写装置。
<10> 像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、<9>に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が式(1)を満たさない場合、1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が式(2)を満たさない場合、又は1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が式(3)を満たさない場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
<2>に係る発明によれば、静電容量Cの絶対値及び前記交流抵抗Zの絶対値が式(1-2)を満たさない場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
<3>に係る発明によれば、交流抵抗Z630が式(3-3)を満たさない場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
<4>に係る発明によれば、交流抵抗Z0.63が式(2-4)を満たさない場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
【0007】
<5>に係る発明によれば、静電容量Cの絶対値が式(4)を満たさない場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
<6>に係る発明によれば、弾性材料及びカーボンブラックを含有する基材層と、フッ素樹脂を含む樹脂を含有する表面層と、を有する無端ベルトにおいて、弾性材料がクロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムの両方を含まない場合、又はカーボンブラックの含有量が、基材層に含まれる弾性材料全体に対して、10質量%未満若しくは40質量%を超える場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
<7>に係る発明によれば、フッ素樹脂の含有量が、表面層に含まれる樹脂全体に対して、10質量%未満、又は35質量%を超える場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
<8>に係る発明によれば、表面層の厚さが3μm未満又は15μmを超える場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトが提供される。
<9>又は<10>に係る発明によれば、1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が式(1)を満たさない場合、1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が式(2)を満たさない場合、又は1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が式(3)を満たさない場合と比較して、画像の色抜け及び色点の発生が抑制される無端ベルトを備えた転写装置又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る画像形成装置の他の一例における二次転写部周辺を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
<無端ベルト>
本実施形態に係る無端ベルトは、1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が下記式(1)を満たし、1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が下記式(2)を満たし、1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が下記式(3)を満たす。
式(1):log10C≦3.18×log10Z-30.27
式(2):6.3≦log10Z0.63≦6.9
式(3):9.1≦log10Z630≦9.9
【0012】
本実施形態に係る無端ベルトは、上記構成により、画像の色抜け及び色点の発生を抑制する。その理由は、次の通り推測される。
【0013】
従来の無端ベルトを二次転写ベルトとして使用する場合、転写ニップ(二次転写ベルトと、それに対向して配置される背面部材と、で挟まれた領域)において電圧が印加された場合、ベルトに電荷が残留しやすいことがあった。そうすると、次サイクルにおいて電圧が印加され始めた場合、残留した電荷がベルト表面に到達してしまい、転写ニップ中でベルト表面での電界の横流れが生じることがあった。電界の横流れが生じると、トナーが記録媒体上で部分的に斜めに転写がされることがあった。
また、転写電流のリークにより用紙上にトナーが飛び散ることで色点が生じたり、転写電流不足による異常放電が原因の画像の色抜けなどが生じることがあった。
【0014】
本実施形態に係る無端ベルトは、静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が上記式(1)を満たす。そうすることで、ベルトに残留する電荷を適度に抑制し、ベルト表面での電界の横流れの発生が抑制されやすくなる。また、交流抵抗Z0.63が上記式(2)を満たし、交流抵抗Z630が上記式(3)を満たすことで、転写電流のリーク及び転写電流不足による異常放電が抑制されやすくなる。
【0015】
そのため、本実施形態に係る無端ベルトは、画像の色抜け及び色点の発生を抑制する。
【0016】
本実施形態に係る無端ベルトは、クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムを含む弾性材料並びにカーボンブラックを含有する基材層と、フッ素樹脂を含む樹脂を含有する表面層と、を有し、カーボンブラックの含有量が、基材層に含まれる弾性材料全体に対して、10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0017】
本実施形態に係る無端ベルトは、上記構成により、画像の色抜け及び色点の発生をより抑制する。その理由は、次の通り推測される。
【0018】
基材層の組成を上記構成とし、かつ、フッ素樹脂を含む樹脂を含有することで誘電体としての働きも有する表面層を備え、本実施形態に係る無端ベルトは、上記式(1)~式(3)を満たしやすくなる。
【0019】
そのため、本実施形態に係る無端ベルトは、画像の色抜け及び色点の発生を抑制する。
【0020】
以下、本実施形態に係る無端ベルトのいずれにも該当する無端ベルト(以下、本実施形態に係る無端ベルトと称する)について詳細に説明する。
【0021】
(静電容量C及び交流抵抗Z)
本実施形態に係る無端ベルトは、1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が下記式(1)を満たす。
式(1):log10C≦3.18×log10Z-30.27
【0022】
静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値は、下記式(1-2)を満たすことが好ましい。
式(1-2):log10C≦3.18×log10Z-15.0
【0023】
静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が上記式(1-2)を満たすことで、交流抵抗Zの絶対値に対する静電容量Cの絶対値の値が大きくなりすぎず、ベルトに残留する電荷をより適度に抑制し、ベルト表面での電界の横流れの発生がより抑制されやすくなる。
【0024】
静電容量Cの絶対値は下記式(4-1)を満たすことが好ましく、下記式(4-2)を満たすことがより好ましく、下記式(4-3)を満たすことが更に好ましい。
式(4-1):-9.7≦log10C
式(4-2):-9.7≦log10C≦-8.5
式(4-3):-9.7≦log10C≦-9.0
【0025】
静電容量C(単位:F)及び交流抵抗Z(単位:Ω)の測定は、インピーダンス測定により行う。具体的な手順は以下の通りである。
電源及び電流計としてSI 1260 inpedance/gain phase analyzer(東陽テクニカ社製)にURプローブ(三菱化学社製)を接続し、URプローブを無端ベルトの外周面に押し当てる。1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加しながらインピーダンス測定を行い、静電容量C及び交流抵抗Zを測定する。
【0026】
(交流抵抗Z0.63)
本実施形態に係る無端ベルトは、1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が下記式(2)を満たす。
式(2):6.3≦log10Z0.63≦6.9
【0027】
画像の色抜け及び色点の発生をより抑制する観点から、交流抵抗Z0.63は下記式(2-2)を満たすことが好ましく、下記式(2-3)を満たすことがより好ましく、下記式(2-4)を満たすことが更に好ましい。
式(2-2):6.3≦log10Z0.63≦6.7
式(2-3):6.3≦log10Z0.63≦6.6
式(2-4):6.3≦log10Z0.63≦6.5
【0028】
交流抵抗Z0.63が式(2-2)~式(2-4)を満たすことで、転写電流のリーク及び転写電流不足による異常放電がより抑制されやすくなる。
【0029】
(交流抵抗Z630)
本実施形態に係る無端ベルトは、1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が下記式(3)を満たす。
式(3):9.1≦log10Z630≦9.9
【0030】
画像の色抜け及び色点の発生をより抑制する観点から、交流抵抗Z630は下記式(3-2)を満たすことが好ましく、下記式(3-3)を満たすことがより好ましく、下記式(3-4)を満たすことが更に好ましい。
式(3-2):9.3≦log10Z630≦9.9
式(3-3):9.4≦log10Z630≦9.9
式(3-4):9.4≦log10Z630≦9.6
【0031】
交流抵抗Z630が式(3-2)~式(3-4)を満たすことで、転写電流のリーク及び転写電流不足による異常放電がより抑制されやすくなる。
【0032】
交流抵抗Z0.63及び交流抵抗Z630(ともに単位:Ω)の測定は、インピーダンス測定により行う。具体的な手順は以下の通りである。
電源及び電流計としてSI 1260 inpedance/gain phase analyzer(東陽テクニカ社製)にURプローブ(三菱化学社製)を接続し、URプローブを無端ベルトの外周面に押し当てる。
1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加しながらインピーダンス測定を行い、交流抵抗Z0.63を測定する。
1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加しながらインピーダンス測定を行い、交流抵抗Z630を測定する。
【0033】
(無端ベルトの構成)
本実施形態に係る無端ベルトは、基材層と、表面層と、を有することが好ましい。
表面層は、基材層の外周面に設けられることが好ましく、必要に応じて基材層の内周面に設けられてもよい。
基材層の外周面に設けられた表面層は、無端ベルトの外周面を構成する。基材層の内周面に設けられた表面層は、無端ベルトの内周面を構成する。
【0034】
-基材層-
基材層は弾性材料を含有することが好ましい。
弾性材料としては、ゴム及び樹脂が挙げられる。
【0035】
ゴムとしては、例えば、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴム、これらの混合ゴムが挙げられる。
【0036】
樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルホン、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、これらの混合樹脂が挙げられる。
【0037】
画像の色抜け及び色点の発生をより抑制する観点から、弾性材料はゴムを含むことが好ましく、クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムを含むことがより好ましい。
弾性材料がクロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムを含む場合、クロロプレンゴムの含有量と、エチレンプロピレンジエンゴムの含有量と、の比(クロロプレンゴムの含有量/エチレンプロピレンジエンゴムの含有量)は、質量基準で、1以上100以下であることが好ましく、3以上50以下であることがより好ましく、5以上20以下であることが更に好ましい。
【0038】
基材層は導電性粒子を含有することが好ましい。
導電性粒子としては、例えば、ケッチェンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;アルミニウム、ニッケル等の金属粒子;酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化イットリウム等の金属酸化物粒子;などが挙げられる。
画像の色抜け及び色点の発生をより抑制する観点から、導電性粒子としては、カーボンブラックが好ましい。導電性粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
導電性粒子の平均一次粒径は、1nm以上150nm以下が好ましく、3nm以上100nm以下がより好ましく、5nm以上50nm以下が更に好ましい。
【0040】
導電性粒子の含有量は、基材層に含まれる弾性材料全体に対して、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0041】
基材層は、導電性粒子以外の導電剤を含有していてもよい。導電剤としては、例えば、チタン酸カリウム、塩化カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のイオン導電性物質;ポリアニリン、ポリエーテル、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレン等のイオン導電性高分子;などが挙げられる。導電剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
基材層は、酸化防止剤、架橋剤、難燃剤、着色剤、界面活性剤、分散剤、フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0043】
基材層の厚さは、400μm以上800μm以下が好ましく、420μm以上600μm以下がより好ましく、440μm以上500μm以下が更に好ましい。
【0044】
-表面層-
表面層は樹脂(以下、表面層に含有される樹脂を「表面層樹脂」と称する)を含有することが好ましい。
表面層樹脂は、フッ素樹脂を含むことが好ましい。
フッ素樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂、及びこれらの共重合体が挙げられる。
これらの中でも、画像の色抜け及び色点の発生をより抑制する観点から、フッ素樹脂としては、4フッ化エチレン樹脂(PTFE: polytetrafluoroethylene)が好ましい。
【0045】
表面層樹脂は、フッ素樹脂と共にウレタン樹脂を含むことが好ましい。
ウレタン樹脂(ポリウレタン又はウレタンゴムとも呼ばれる。)は一般的に、ポリイソシアネートとポリオールとを重合して合成される。ウレタン樹脂はハードセグメントとソフトセグメントとを有していることが好ましい。
【0046】
フッ素樹脂の含有量は、表面層に含まれる樹脂全体に対して、10質量%以上35質量%以下であることが好ましく、15質量%以上33質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
フッ素樹脂の含有量を、表面層に含まれる樹脂全体に対して、10質量%以上とすることで、表面層に含まれるフッ素樹脂の含有量が、表面層の誘電体としての働きをより向上することができる量となる。
また、フッ素樹脂の含有量を、表面層に含まれる樹脂全体に対して、35質量%以下とすることで、表面層のクラック耐性に必要な機械的強度を確保することが可能となる。
【0048】
表面層は、酸化防止剤、架橋剤、難燃剤、着色剤、フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。
【0049】
表面層の厚さは、3μm以上15μm以下であることが好ましく、4μm以上12μm以下であることがより好ましく、7μm以上10μm以下であることが更に好ましい。
【0050】
表面層の厚さは、光学顕微鏡を用いて測定する。光学顕微鏡としては、例えばキーエンス社製、品名デジタルマイクロスコープVHXが使用可能である。
表面層の厚さの測定手順は次の通りである。無端ベルトを厚さ方向に切断する。得られた断面を観測し、表面層の厚さを光学顕微鏡の撮影像により測定する。
【0051】
(無端ベルトの製造方法)
無端ベルトの製造方法としては、例えば、基材層となる管状部材を用意し、管状部材の外周面及び内周面の少なくともいずれか一方に表面層を形成する製造方法が挙げられる。
【0052】
管状部材の製造方法は、例えば、弾性材料及び導電性粒子を含有する組成物を溶融し、ダイスからベルト状に押し出して固化させる押出成形;弾性材料及び導電性粒子を含有する組成物を溶融し、ベルト状の金型に入れて固化させる射出成形;弾性材料の前駆体又は単量体と導電性粒子とを含有する組成物を芯体に塗布し固化させる塗布成形;などが挙げられる。
【0053】
表面層の形成方法は、例えば、フッ素樹脂を含む樹脂を含有する液状組成物を管状部材の外周面及び内周面の少なくともいずれか一方に塗布し固化させる;フッ素樹脂以外の表面層樹脂の前駆体又は単量体とフッ素樹脂とを含有する液状組成物を管状部材の外周面又は内周面に塗布し固化させる;などが挙げられる。液状組成物を固化させるために、成分の種類に応じて、乾燥、加熱、電子線照射又は紫外線照射を行ってもよい。
【0054】
<転写装置>
本実施形態に係る転写装置は、外周面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、中間転写体の外周面に接触して配置され、中間転写体の外周面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材を有する二次転写装置と、を備える。
【0055】
一次転写装置において、一次転写部材は、中間転写体を挟んで像保持体に対向して配置される。一次転写装置においては、上記一次転写部材により中間転写体に対しトナーの帯電極性と逆極性の電圧を付与することで、トナー像が中間転写体の外周面に一次転写される。
【0056】
二次転写装置において、二次転写部材は、中間転写体のトナー像保持側に配置される。そして、二次転写装置は、例えば、二次転写部材と共に、中間転写体のトナー像保持側と反対側に配置される背面部材と、を備える。二次転写装置においては、中間転写体及び記録媒体を二次転写部材と背面部材とで挟み込み転写電界を形成することで、中間転写体上のトナー像が記録媒体に二次転写される。
二次転写部材は、二次転写ロールであってもよいし、二次転写ベルトであってもよい。なお、背面部材は、例えば、背面ロールが適用される。
【0057】
画像の色抜け及び色点の発生を抑制する観点から、二次転写部材は、二次転写ベルトであり、二次転写ベルトとして本実施形態に係る無端ベルトを適用することが好ましい。
すなわち、本実施形態に係る転写装置は、外周面にトナー像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー像を中間転写体の外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、中間転写体の外周面に接触して配置され、中間転写体の外周面に転写されたトナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材であって、本実施形態に係る無端ベルトを有する二次転写装置と、を備えることが好ましい。
【0058】
なお、本実施形態に係る転写装置は、複数の中間転写体を介して、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であってもよい。つまり、転写装置は、例えば、像保持体から第1中間転写体にトナー像を一次転写し、さらに、第1中間転写体から第2中間転写体にトナー像を二次転写した後、第二中間転写体から記録媒体にトナー像を三次転写する転写装置であってもよい。
【0059】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。そして、転写装置は、上記本実施形態に係る転写装置が適用される。
【0060】
トナー像形成装置は、例えば、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、を備える装置が例示される。
【0061】
本実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段を備える装置;トナー像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;像保持体の温度を上昇させ、相対温度を低減させるための像保持体加熱部材を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0062】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0063】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、像保持体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、トナー像形成装置と転写装置とを備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0064】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例について図面を参照しつつ説明する。ただし、本実施形態に係る画像形成装置は、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0065】
(画像形成装置)
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【0066】
本実施形態に係る画像形成装置100は、
図1に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1K(トナー像形成装置の一例)と、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0067】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する、矢印A方向に回転する感光体11(像保持体の一例)を備えている。
【0068】
感光体11の周囲には、帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0069】
また、感光体11の周囲には、現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0070】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0071】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって
図1に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0072】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0073】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0074】
背面ロール25は、表面抵抗率が1×107Ω/□以上1×1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0075】
一方、二次転写ロール22は、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0076】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の外周面をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング部材35が接離自在に設けられている。
また、二次転写ロール22の二次転写部20の下流側には、二次転写後の二次転写ロール22上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の外周面をクリーニングする二次転写ロールクリーニング部材22Aが設けられている。二次転写ロールクリーニング部材22Aは、クリーニングブレードが例示される。ただし、クリーニングロールであってもよい。
【0077】
なお、中間転写ベルト15、一次転写ロール16、及び二次転写ロール22が、転写装置の一例に該当する。
ここで、画像の色抜け及び色点の発生を抑制する観点から、画像形成装置100は、二次転写ロール22に代えて、二次転写ベルト(二次転写部材の一例)を備える構成であり、二次転写ベルトとして本実施形態に係る無端ベルトと適用することが好ましい。具体的には、
図2に示すように、画像形成装置100は、二次転写ベルト23と、中間転写ベルト15および二次転写ベルト23を介して背面ロール25に対向配置されている駆動ロール23Aと、駆動ロール23Aと共に二次転写ベルト23を張架するアイドラロール23Bと、を備えた二次転写装置を備えることが好ましい。そして、二次転写ベルト23として本実施形態に係る無端ベルトと適用することが好ましい。
【0078】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0079】
更に、本実施形態に係る画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0080】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0081】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0082】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0083】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の外周面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0084】
トナー像が中間転写ベルト15の外周面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0085】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0086】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0087】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0088】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例0089】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0090】
<実施例1>
(基材層の作製)
弾性材料であるクロロプレンゴム及び導電性粒子であるカーボンブラックの混合物(混合物全体に対するカーボンブラックの含有量は25質量%)85部と、弾性材料であるエチレンプロピレンジエンゴム15部と、を混合し、混練押し出し機で押出成形し、成形物を得た。成形物を熱風乾燥し、直径(外径)40mm、厚さ450μmの管状体を得た。管状体を長さ355mmに切断し、基材層とした。
【0091】
(表面層の作製)
フッ素樹脂である4フッ化エチレン樹脂を含有するウレタン樹脂(ボンデライトT862A、ヘンケルジャパン社製)に対して、硬化剤(ロックタイトWH-1、ヘンケルジャパン社製)を1質量%添加し、水で希釈することで塗布液を調製した(塗布液全体に対する4フッ化エチレン樹脂の含有量は20質量%とした。)。
基材層の中心軸を水平方向とした状態で、基材層を回転させながら基材層の外周面に塗布液を散布した。次いで、150℃かつ35分間の熱風乾燥を行い、基材層の外周面に表面層を形成した(以下、基材層の外周面に形成した表面層を「外周表面層」と称する)。外周表面層の厚さは8μmとした。
基材層の内周面にも同様にして塗布液を散布し、同様の熱風乾燥を行い、基材層の内周面に表面層を形成した(以下、基材層の内周面に形成した表面層を「内周表面層」と称する)。内周表面層の厚さは5μmとした。
上記手順で無端ベルトを得た。
【0092】
<実施例2>
(基材層の作製)において、クロロプレンゴム及びカーボンブラックの混合物全体に対するカーボンブラックの含有量を25質量%から15質量%に変更したこと以外は実施例1と同一の手順で無端ベルトを得た。
【0093】
<実施例3>
(基材層の作製)において、クロロプレンゴム及びカーボンブラックの混合物全体に対するカーボンブラックの含有量を25質量%から30質量%に変更したこと以外は実施例1と同一の手順で無端ベルトを得た。
【0094】
<比較例1>
(基材層の作製)においてクロロプレンゴム及びカーボンブラックの混合物全体に対するカーボンブラックの含有量を25質量%から15質量%に変更したこと、及びエチレンプロピレンジエンゴムを添加しないこと以外は実施例1と同一の手順で無端ベルトを得た。
【0095】
<比較例2>
Iridesse Digital Press(富士フイルムビジネスイノベーション社製)の二次転写ベルトを準備した。
【0096】
<比較例3>
Color1000 Press(富士フイルムビジネスイノベーション社製)の二次転写ベルトを準備した。
【0097】
<比較例4>
(基材層の作製)において、クロロプレンゴム及びカーボンブラックの混合物全体に対するカーボンブラックの含有量を25質量%から30質量%に変更したこと、(表面層の作製)において、フッ素樹脂である4フッ化エチレン樹脂を含有するウレタン樹脂(ボンデライトT862A、ヘンケルジャパン社製)の代わりにボンデライトT845B、ヘンケルジャパン社製を使用したこと、外周表面層の厚さを12μmとしたこと以外は実施例1と同一の手順で無端ベルトを得た。
【0098】
<実施例4>
(基材層の作製)において、クロロプレンゴム及びカーボンブラックの混合物全体に対するカーボンブラックの含有量を25質量%から30質量%に変更したこと、(表面層の作製)において、フッ素樹脂である4フッ化エチレン樹脂を含有するウレタン樹脂(ボンデライトT862A、ヘンケルジャパン社製)の代わりにDM-A6000、ダイゾー社製を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で無端ベルトを得た。
【0099】
<評価>
各例で得た無端ベルトをApeosPro C810(富士フイルムビジネスイノベーション社)に二次転写ベルトとして取り付け、下記手順により評価を行った。
【0100】
(画像評価)
A3サイズのコート紙に画像濃度10%から100%に10%毎に変更した20mm×20mmのシアン色の画像パッチを出力し、最もざらつき感のあるパッチを観察することによって評価した。
-評価基準-
A:目視及びルーペにより観測した場合でドット欠け(ドット欠けは、画像の色抜け又は色点の発生によって生じるもの。以下同様。)が視認できない。
B:目視ではドット欠け認められないがルーペにより観測した場合で認められるドット欠けがある。
C:目視で認められるドット欠けがある。
D:ドットそのものが失われており、目視できない。
【0101】
(用紙搬送性評価)
A3サイズのトレーシングペーパー(40gsm相当)を手差しトレイから出力することで評価した。
-評価基準-
A:通常出力する。
B:出力するが、用紙しわが目視で確認できる。
C:紙詰まりが発生し、出力できない。
【0102】
【0103】
表1中の記載について説明する。
・log10Cの最小値:インピーダンス測定において得られた静電容量Cの絶対値の常用対数log10Cのうち、最小値を示す。
・log10Cの最大値:インピーダンス測定において得られた静電容量Cの絶対値の常用対数log10Cのうち、最大値を示す。
・3.18×log10Z-30.27の最小値:インピーダンス測定において得られた交流抵抗Zの絶対値を用いて算出される3.18×log10Z-30.27の値のうち、最小値を示す。
・3.18×log10Z-15.0の最小値:インピーダンス測定において得られた交流抵抗Zの絶対値を用いて算出される3.18×log10Z-15.0の値のうち、最小値を示す。
・log10C0.63:後述の手順により測定される静電容量C0.63の絶対値の常用対数である。
・log10C630:後述の手順により測定される静電容量C630の絶対値の常用対数である。
・弾性材料の種類:「CR」はクロロプレンゴムであり、「EPDM」はエチレンプロピレンジエンゴムである。
・CB含有量(%):基材層に含まれる弾性材料全体に対するカーボンブラックの含有量である。
・フッ素樹脂含有量(%):表面層に含まれる樹脂全体に対するフッ素樹脂の含有量である。
【0104】
・静電容量C0.63及び静電容量C630の測定手順
静電容量C0.63及び静電容量C630(ともに単位:F)の測定は、インピーダンス測定により行う。具体的な手順は以下の通りである。
電源及び電流計としてSI 1260 inpedance/gain phase analyzer(東陽テクニカ社製)にURプローブ(三菱化学社製)を接続し、URプローブを無端ベルトの外周面に押し当てる。
1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加しながらインピーダンス測定を行い、静電容量C0.63を測定する。
1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加しながらインピーダンス測定を行い、静電容量C630を測定する。
【0105】
上記結果から、本実施例の無端ベルトは、画像の色抜け及び色点の発生を抑制することがわかる。
【0106】
(((1))) 1Vp-pの交流電圧を周波数10000Hzから0.1mHzまでの範囲で高周波側から印加した際の静電容量Cの絶対値及び交流抵抗Zの絶対値が下記式(1)を満たし、
1Vp-pの交流電圧を周波数0.63Hzで印加した際の交流抵抗Z0.63が下記式(2)を満たし、
1Vp-pの交流電圧を周波数630Hzで印加した際の交流抵抗Z630が下記式(3)を満たす無端ベルト。
式(1):log10C≦3.18×log10Z-30.27
式(2):6.3≦log10Z0.63≦6.9
式(3):9.1≦log10Z630≦9.9
(((2))) 前記静電容量Cの絶対値及び前記交流抵抗Zの絶対値が下記式(1-2)を満たす(((1)))に記載の無端ベルト。
式(1-2):log10C≦3.18×log10Z-15.0
(((3))) 前記交流抵抗Z630が下記式(3-3)を満たす(((1)))又は(((2)))に記載の無端ベルト。
式(3-3):9.4≦log10Z630≦9.9
(((4))) 前記交流抵抗Z0.63が下記式(2-4)を満たす(((3)))に記載の無端ベルト。
式(2-4):6.3≦log10Z0.63≦6.5
(((5))) 前記静電容量Cの絶対値が下記式(4-1)を満たす(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の無端ベルト。
式(4-1):-9.7≦log10C
(((6))) クロロプレンゴム及びエチレンプロピレンジエンゴムを含む弾性材料並びにカーボンブラックを含有する基材層と、
フッ素樹脂を含む樹脂を含有する表面層と、を有し、
前記カーボンブラックの含有量が、前記基材層に含まれる弾性材料全体に対して、10質量%以上40質量%以下である(((1)))に記載の無端ベルト。
(((7))) 前記フッ素樹脂の含有量が、前記表面層に含まれる樹脂全体に対して、10質量%以上35質量%以下である(((6)))に記載の無端ベルト。
(((8))) 前記表面層の厚さが3μm以上15μm以下である(((7)))に記載の無端ベルト。
(((9))) 外周面にトナー像が転写される中間転写体と、
像保持体の表面に形成されたトナー像を前記中間転写体の外周面に一次転写する一次転写部材を有する一次転写装置と、
前記中間転写体の外周面に接触して配置され、前記中間転写体の外周面に転写された前記トナー像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写部材であって、(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の無端ベルトを有する二次転写装置と、
を備える転写装置。
(((10))) 像保持体を有し、前記像保持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置であって、(((9)))に記載の転写装置と、
を備える画像形成装置。