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  • 特開-再生コンクリート微粉末の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182463
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】再生コンクリート微粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/16 20230101AFI20231219BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20231219BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20231219BHJP
   B02C 23/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C04B18/16
C04B14/02 C
B09B3/35
B02C23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096083
(22)【出願日】2022-06-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/CO2を用いたコンクリート等製造技術開発/CO2排出削減・固定量最大化コンクリートの開発/革新的カーボンネガティブコンクリートの材料・施工および利用技術の開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000105626
【氏名又は名称】コトブキ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池尾 陽作
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】小島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】川尻 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 邦生
(72)【発明者】
【氏名】西岡 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】片村 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】奈良 知幸
(72)【発明者】
【氏名】杉本 南
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】景山 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】清塘 悠
(72)【発明者】
【氏名】長原 雄一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勝由
【テーマコード(参考)】
4D004
4D067
【Fターム(参考)】
4D004AA33
4D004AB01
4D004BA02
4D004CA04
4D004CA08
4D004CB13
4D004DA09
4D067EE17
4D067GA06
(57)【要約】
【課題】コンクリート塊から、骨材由来の成分が低減され、炭酸ガス吸着に有用な再生コンクリート微粉末を、低エネルギー消費量で製造する再生コンクリート微粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】コンクリート塊を破砕又は摩砕して得られた粒径40mm以下の破砕物を、再生粗骨材と再生細骨材とに分級する第1工程と、前記第1工程で分級した前記再生細骨材を回収し、回収した前記再生細骨材で前記再生粗骨材をショットブラストし、前記ショットブラストを複数回行って、吸水率が3.5%を超える再生細骨材と、ショットブラストにより生じる中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末と、を得る第2工程と、を含む再生コンクリート微粉末の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た粒径40mm以下の破砕物を、再生粗骨材と再生細骨材とに分級する第1工程と、
前記第1工程で分級した前記再生細骨材を回収し、回収した前記再生細骨材で前記再生粗骨材をショットブラストし、前記ショットブラストを複数回行って、吸水率が3.5%を超える再生細骨材と、ショットブラストにより生じる中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末と、を得る第2工程と、
を含む再生コンクリート微粉末の製造方法。
【請求項2】
横軸周りに旋回可能な円筒体と、
前記円筒体の内部に開孔部が採取を目的とする細骨材相当サイズである分級スクリーンを備え、前記円筒体に投入された破砕コンクリート塊を、前記分級スクリーンの上側に再生粗骨材と、前記分級スクリーンの下側に再生細骨材とに分級する回転分級機と、
前記円筒体内に発生した中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末を集塵して回収する集塵機と、
前記分級スクリーンの下側にある再生細骨材を回収して、前記分級スクリーンの上側にある再生粗骨材にショットブラストするブラストショット機と、
を備えた装置を使用する請求項1に記載の再生コンクリート微粉末の製造方法。
【請求項3】
前記再生コンクリート微粉末は、前記コンクリート塊に対する回収率が10質量%~45質量%であり、且つ、前記再生コンクリート微粉末に含まれるセメント由来成分が、微粉末の全質量に対し、25質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の再生コンクリート微粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は再生コンクリート微粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物等のコンクリートを解体して得られるコンクリート塊は処理困難な廃棄物であり、現状ではリサイクルの大部分が路盤材への利用になっている。そのため、より付加価値の高いコンクリート塊のリサイクル方法が課題となっている。
現状では、コンクリート塊を破砕して、再生骨材を得ることが試みられてはいるが、再生骨材の製造に多くのエネルギーを要すること、再生骨材と分離した解体コンクリート微粉末の用途が限られていること等の問題点があり、既述のようにコンクリート塊の大部分が路盤材へ利用されているにすぎない。
コンクリート塊のリサイクルにおいては、再生粗骨材を回収する技術は確立しているが、コンクリート塊から得られる解体コンクリート微粉末の用途が限られているため、解体コンクリート微粉末のリサイクルが進んでおらず、延いては、コンクリート塊全体のリサイクルが進んでいないのが現状である。
従って、再生粗骨材、再生細骨材を得た後の微粉末の用途が広がれば、コンクリート塊のリサイクルも進むことが期待される。
【0003】
廃コンクリート塊を粗破砕し、篩い分けを行い、篩い分けした残留分を破砕・摩砕・分級し、再生粗骨材と再生細骨材と未炭酸化廃コンクリート微粉末とを分離回収し、篩の通過分をさらに、破砕・摩砕・分級し、再生細骨材と炭酸化が進んだ廃コンクリート微粉末とに分離回収する廃コンクリート微粉末の回収方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法によれば、炭酸化の程度の異なる廃コンクリート微粉末が得られ、用途に適した微粉末の分離を可能としていると記載されている。
また、再生骨材におけるセメント由来成分の付着量が多いと、再生骨材の吸水率が上昇し、再生骨材をコンクリート硬化体の製造に用いる際に、得られるコンクリート硬化体の圧縮強度が低下するという問題があり、再生骨材におけるセメント由来成分を減少する方法として、コンクリート廃材由来の粗骨材原料を100℃以上に加熱し、乾式撹拌装置で撹拌し、表面を摩滅させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
一方、微粉末と分離した再生骨材の改質方法として、コンクリート廃棄物を破砕及び篩い分けして得た再生骨材を炭酸化してセメント由来成分に起因する吸水率の改良を図る再生骨材の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-17227号公報
【特許文献2】特開平8-109052号公報
【特許文献3】特開平5-238792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、廃コンクリート塊から、再生骨材と廃コンクリート微粉末を得る製造方法では、例えば、特許文献1に記載の如く、破砕、篩い分け、破砕を繰り返す方法では、破砕後の加熱処理も好ましいと記載されている。また、特許文献2に記載の方法でも、100℃以上の加熱を必要とする。このように、セメント由来成分の量を低減させ、高品質の再生骨材を得るために、高温での加熱、或いは、強い応力によりセメント由来成分を除去する方法では、再生骨材及び廃コンクリート由来微粉末の製造エネルギーが上昇する。さらに、本発明者らの検討によれば、上記方法では、再生骨材も熱で脆化する、強い摩砕力により骨材の表面が削り取られる、といった現象が生じ、再生骨材と分離された微粉末に骨材由来成分が多く含まれ、セメント由来成分が相対的に低くなり、例えば、炭酸ガス吸着剤、アルカリ刺激材等に利用する場合には、期待される性能が得難くなることが明らかとなった。
また、特許文献3は、コンクリート廃棄物から得られた骨材の改質に係る技術であり、分離された微粉末の物性に対する着目はない。
【0006】
本開示の一態様の課題は、コンクリート塊から、骨材由来の成分が低減され、炭酸ガス吸着に有用な再生コンクリート微粉末を、低エネルギー消費量で製造する再生コンクリート微粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段は、以下の態様を含む。
<1> コンクリート塊を破砕又は摩砕した破砕物を、粒径40mm以下の再生粗骨材と再生細骨材とに分級する第1工程と、前記第1工程で分級した前記再生細骨材を回収し、回収した前記再生細骨材で前記再生粗骨材をショットブラストし、前記ショットブラストを複数回行って、吸水率が3.5%を超える再生細骨材と、ショットブラストにより生じる中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末と、を得る第2工程と、を含む再生コンクリート微粉末の製造方法。
【0008】
<2> 横軸周りに旋回可能な円筒体と、前記円筒体の内部に開孔部が採取を目的とする細骨材相当サイズである分級スクリーンを備え、前記円筒体に投入された破砕コンクリート塊を、前記分級スクリーンの上側に再生粗骨材と、前記分級スクリーンの下側に再生細骨材とに分級する回転分級機と、前記円筒体内に発生した中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末を集塵して回収する集塵機と、前記分級スクリーンの下側にある再生細骨材を回収して、前記分級スクリーンの上側にある再生粗骨材にショットブラストするブラストショット機と、を備えた装置を使用する<1>に記載の再生コンクリート微粉末の製造方法。
【0009】
<3> 前記再生コンクリート微粉末は、前記コンクリート塊に対する回収率が10質量%~45質量%であり、且つ、前記再生コンクリート微粉末に含まれるセメント由来成分が、微粉末の全質量に対し、25質量%以上である<1>又は<2>に記載の再生コンクリート微粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、コンクリート塊から、骨材由来の成分が低減され、炭酸ガス吸着に有用な再生コンクリート微粉末を、低エネルギー消費量で製造する再生コンクリート微粉末の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の再生コンクリート微粉末の製造方法に用い得る破砕装置の一態様における旋回可能な円筒体部分を示す概略断面図である。
図2】実施例1~実施例3、比較例1及び比較例2の製造方法におけるセメント成分1トンの回収に要する電力量と、再生細骨材の吸水率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の再生コンクリート微粉末の製造方法について具体例を挙げて詳細に説明する。以下に記載する説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、以下の記載は、一例を示すものであり、本開示は以下の記載に限定されない。
本開示において「~」を用いて記載した数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「解体コンクリート微粉末」は、コンクリート塊を破砕して得られた未処理のコンクリート微粉末を指し、「再生コンクリート微粉末」は、コンクリート塊を加工して微粉末を得る際に必要な処理を行い、炭酸ガスの吸着性を向上させたコンクリート微粉末を指す。
本開示においては、特に断らない限り、室温とは、特に温度制御を行わない雰囲気温度を指し、より具体的には20℃~30℃を包含する意味で用いられる。
【0013】
<再生コンクリート微粉末の製造方法>
本開示の再生コンクリート微粉末の製造方法(以下、「本開示の製造方法」と称することがある)は、コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た、粒径40mm以下の破砕物を、再生粗骨材と再生細骨材とに分級する第1工程と、前記第1工程で分級した前記再生細骨材を回収し、回収した前記再生細骨材で前記再生粗骨材をショットブラストし、前記ショットブラストを複数回行って、吸水率が3.5%を超える再生細骨材と、ショットブラストにより生じる中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末と、を得る第2工程と、を含む。
【0014】
(第1工程)
第1工程は、コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た粒径40mm以下の破砕物を、再生粗骨材と再生細骨材とに分級する工程である。
第1工程では、分級に先立ち、まず、コンクリート塊を破砕又は摩砕して粒径40mm以下の破砕物を得る。前記破砕物を得る工程を準備工程と称することがある。
第1工程は、コンクリート塊を破砕又は摩砕して粒径40mm以下の破砕物を得る準備工程と、破砕物を分級する工程とを含む。
本開示にて使用されるコンクリート塊は、コンクリートを含む建造物、構造物等を解体した塊状の解体コンクリートである。
コンクリート塊は、当初のコンクリートの組成、建造物、構造物等の置かれた環境、経時期間等の影響により、さまざまな組成のものがある。
本開示の製造方法によれば、コンクリート塊の組成に拘わらず、低エネルギーで、再利用に好適な再生コンクリート微粉末を得ることができる。
【0015】
準備工程では、まず、コンクリート塊を破砕又は摩砕し、粒径40mm以下の破砕物を得る。
なお、以下、本開示においては、「破砕又は摩砕」を、「破砕等」と総称することがある。
コンクリート塊を破砕又は摩砕する方法には特に制限はなく、公知の破砕装置又は摩砕装置を用いることができる。コンクリート塊をまず、粗破砕して、得られた粗破砕物を、さらに破砕又は摩砕する、多段階の破砕等を実施してもよい。
コンクリート塊の粗破砕には、例えば、ジョークラッシャー、インペラーブレーカー等の公知の破砕機を用いることができる。
粗破砕物に対し、さらに破砕等を実施する場合には、例えば、ショットブラスト方式の破砕装置、インパクトクラッシャー、加熱を行わない機械擦りもみ方式等の摩砕装置等を用いることができる。
【0016】
コンクリート塊を破砕又は摩砕して得られた粗破砕は、第1工程において粒径40mm以下の再生骨材原料に分級される。分級方法には、特に制限はなく、公知の方法、例えば、開孔部が40mm以下のメッシュを用いた篩い分け方法等を適用することができる。
【0017】
なお、準備工程において、コンクリート塊の破砕等を行う場合に、コンクリート塊の破砕等に伴い、微粉末が発生することがある。準備工程では、コンクリート塊に内包される骨材に大きな剪断力が掛かり難いことから、準備工程において発生した微粉末は、セメント由来成分の含有比率が多い微粉末であり、準備工程において発生した微粉末を、準備工程の段階で、集塵装置等により回収してもよい。
【0018】
第1工程は、既述のように、コンクリート塊を破砕又は摩砕して粒径40mm以下の破砕物を得る準備工程と、さらに、得られた粒径40mm以下の破砕物を再生粗骨材と再生細骨材とに分級する工程を含む。分級は、採取を目的とする再生細骨材の粒径を考慮して、既述の公知の分級方法を適用して行うことができる。
【0019】
(第2工程)
第2工程は、前記第1工程で得た粒径40mm以下の再生骨材原料の分級品のうち、再生細骨材を回収し、回収した再生細骨材で再生粗骨材をショットブラストし、ショットブラストを複数回行って、吸水率が3.5%を超える再生細骨材と、ショットブラストにより生じる中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末と、を得る工程である。
【0020】
再生骨材において、再生細骨材と再生粗骨材とを分離し、再生細骨材を回収する方法としては、分級スクリーンを用いる方法が好ましい。分級スクリーンにおけるスクリーンの開孔部のサイズを調整することにより、目的とするショットブラスト用の再生細骨材を回収することができる。分級スクリーンの開孔部サイズを、採取を目的とする細骨材相当サイズとすることにより、所望のサイズのショットブラスト用の再生細骨材を回収することができる。
【0021】
第2工程では、回収した再生細骨材で再生粗骨材をショットブラストすることにより、金属等の硬質のブラスト材を用いてショットブラストする方法に比較し、再生粗骨材の損傷が少なくなり、結果として、再生粗骨材から、骨材の表面近傍に存在するセメント由来成分のみを効果的に分離し、回収することができる。さらに、処理後に、再生細骨材からブラスト材を分離し、回収するという工程を必要としないという利点をも有する。
第2工程において、ショットブラストされる再生細骨材も、ショットブラストにより衝突する対象である固体が再生粗骨材であるため、ブラストされる再生細骨材における骨材成分の損傷も抑制される。
【0022】
第2工程において、回収された再生細骨材を、再生粗骨材にブラストするショットブラストを複数回行って、吸水率が3.5%を超える再生細骨材と、ショットブラストにより生じる中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末と、を得ることができる。
ショットブラストの実施回数は、本開示の製造方法を適用するコンクリート塊の物性により選択すればよい。ショットブラストの実施回数の決定方法としては、例えば、コンクリート塊のサンプルに対し、ブラストの回数毎に得られる再生細骨材の吸水率を測定する予備試験を行ってショットブラストの実施回数を決定する方法、所定回数のショットブラストを実施し、装置を止めて再生細骨材を回収し、ショットブラスト終了のタイミングを決定する方法等が挙げられるが、特に制限はない。
【0023】
再生細骨材の吸水率が3.5%を超えている時点でショットブラストを終了することにより、再生細骨材に対して過度に剪断力が付与されることに起因する骨材成分の剥離又は摩砕により、骨材成分が回収された再生コンクリート微粉末に含まれることが抑制され、得られた再生コンクリート微粉末は、セメント由来成分の含有量が多く、二酸化炭素の吸着性に優れた微粉末となり、種々の用途に適用することができる。
【0024】
本開示の製造方法では、横軸周りに旋回可能な円筒体と、前記円筒体の内部に開孔部が採取を目的とする細骨材相当サイズである分級スクリーンを備え、前記円筒体に投入された破砕コンクリート塊を、前記分級スクリーンの上側に再生粗骨材と、前記分級スクリーンの下側に再生細骨材とに分級する回転分級機と、前記円筒体内に発生した央径100μm以下の再生コンクリート微粉末を集塵して回収する集塵機と、前記分級スクリーンの下側にある再生細骨材を回収して、前記分級スクリーンの上側にある再生粗骨材にショットブラストするブラストショット機と、を備えた破砕装置を使用することが好ましい。
【0025】
前記装置を、以下、特定破砕装置と称する。
図1は、本開示の再生コンクリート微粉末の製造方法に用い得る破砕装置(特定破砕装置)の一態様における旋回可能な円筒体部分を示す概略断面図である。
特定破砕装置は、横軸周りに旋回可能な円筒体10と、前記円筒体10の内部に開孔部が採取を目的とする細骨材相当サイズである分級スクリーン12とを備え、前記円筒体10に投入された破砕コンクリート塊を、前記分級スクリーン12の上側に再生粗骨材14と、前記分級スクリーンの下側に再生細骨材16とに分級する回転分級機を備える。
円筒体10の内部に破砕コンクリート塊を投入し、円筒体10を旋回させることで、回転に伴って、破砕コンクリート塊同士が衝突すること、回転により上昇した破砕コンクリート塊が自重により落下する際に、下方に存在する破砕コンクリート塊に衝突すること等により、破砕コンクリート塊の破砕が進行する。
破砕により、分級スクリーン12の開孔部を通過し得るサイズとなった破砕コンクリート塊は、再生細骨材16として分離され、分級スクリーンの上側に再生粗骨材14と、分級スクリーンの下側に再生細骨材16として分級される。
【0026】
特定破砕装置が備える分級スクリーンの開孔部を、採取を目的とする細骨材相当サイズとすることで、所望のサイズの再生細骨材を分級することができる。
なお、細骨材の最大寸法は5mmと規定されてはいるが、実際には、細骨材は複数のサイズの砕砂の混合物であり、個々の粒子として最大径が5mmを超え10mm以下の細骨材が存在しても、含有量が10質量%以下であれば基準として許容される。
分級スクリーンの開孔部サイズは、上記基準を満たし、且つ、採取を目的とする細骨材の最大寸法相当サイズを考慮して定めることができる。上記基準によれば、分級スクリーンの開孔部は、目的とする最大寸法に対し、所定の幅を持たせることができるが、10mmを超えるサイズの粒子の含有は許容されないため、分級スクリーン開孔部のサイズは10mm以下である。
上記特定破砕装置では、再生粗骨材に対し、ショットブラストされる再生細骨材を分級することを目的とするため、開孔部のサイズは、10mmを超えることがない範囲にて、適宜選択される。なお、開孔部のサイズの下限値は、目的とする細骨材の粒径(例えば、2mm~5mm)等を考慮して定めればよい。例えば、再生粗骨材にショットブラストする目的においては、最大寸法が大きい程ブラスト効果が高いといえ、そのような観点からは、分級スクリーンの開孔部サイズは5mmを超えてもよい。
開孔部のサイズが5mmを超える場合、ショットブラストの完了後、必要に応じて、ふるいを用いて再生細骨材を分級して回収することもできる。
【0027】
特定破砕装置は、前記円筒体内10に発生した中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末を集塵して回収する集塵機(図示せず)を備えており、円筒体10の回転によりコンクリート塊が破砕されて発生した中央径100μm以下の再生コンクリート微粉末(図示せず)は、集塵機により回収される。
特定破砕装置の円筒体10の回転と、分級スクリーン12による分離により、分級スクリーンの下側に集められた再生細骨材16は回収されて、ブラストショット機18に搬送され、ブラストショット機18により、分級スクリーン12の上側にある再生粗骨材14にショットブラストされる。
【0028】
本開示における再生コンクリート微粉末の中央径は、以下の方法で測定した値を用いている。
再生コンクリート微粉末約0.05gを、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3300EXII:マイクロトラック・ベル(株)製)で、溶媒にエタノールを用いて180秒間超音波分散させた後、室温(25℃)にて測定した50%粒径を、本開示における再生コンクリート微粉末の中央径の値としている。即ち、本開示における「中央径」とは、上記で例示した如き粒度分布装置で測定した50%粒径を意味する。
【0029】
特定破砕装置によれば、円筒体内における分級スクリーンの上側に存在する破砕物全体に研磨粒としての再生細骨材を均等に衝突させて、効率のよい摩砕を行うことができる。
再生細骨材を再生粗骨材にショットブラストする回数を制御することにより、目的とする吸水率が3.5%を超える再生細骨材を得ることができる。
また、分離回収された再生コンクリート微粉末は、破砕コンクリート塊に含まれるセメント由来成分を多く含み、骨材由来成分の含有量が極めて少ないために、炭酸ガスの吸着用途に好適に使用することができる。
例えば、特許文献1には、粗骨材を分離して得た再生コンクリート微粉末は炭酸化が進行しておらず、脱炭酸セメント原料として使用し得るが、細骨材を分離して得た微粉末は、炭酸化が進行しており、混合材、地盤改良材として使用されるとの記載がある。しかし、本開示の製造方法によれば、回収した再生細骨材で再生粗骨材を複数回ショットブラストして、再生粗骨材、再生細骨材、及び再生コンクリート微粉末を同時に回収し得るために、特許文献1に記載される如き、再生細骨材回収後の再生コンクリート微粉末の炭酸化が進行するという懸念がより少なくなり、炭酸ガス吸着能を有する再生コンクリート微粉末をより効率よく回収し得る。
【0030】
特定破砕装置による処理において、ショットブラストを繰り返す回数は、回収された再生細骨材の吸水率が3.5%を超えている時点を考慮して選択する。
ショットブラストの回数の決定方法は、既述の通りであるが、上記特定破砕装置を用いた場合について、より詳細に説明する。
特定破砕装置においては、ショットブラストの繰り返し回数と集塵機における集塵風量とを制御することにより、回収される再生細骨材の物性を制御することができる。
例えば、処理対象の破砕コンクリート塊の原料サイズ(本開示では0mmを超え、40mm以下)を決定し、初期段階で、数パターンの運転条件(ショットブラスト回数と集塵機における風量)を適用して基本データを採取する。得られた基本データを基に、運転条件をプログラムに入力し、以降はプログラムに沿って自動運転を行うことができる。特定破砕装置の運転記録をデータ管理し、得られたデータにより、間接的に再生細骨材の吸水率、回収された再生コンクリート微粉末の品質を管理することが可能となる。
【0031】
例えば、後述の実施例の結果等を考慮すれば、通常、建造物の廃材から得たコンクリート塊を処理する場合、ブラスト回数は、2回~30回とすることができる。なかでも、再生コンクリート微粉末を得る際の消費エネルギーを抑制する観点からは、ブラスト回数は2回~10回とすることが好ましく、セメント成分の含有比率が多い再生コンクリート微粉末を得安いという観点からは、ブラスト回数は5回~20回とすることが好ましく、再生骨材の吸水率をより低くし、且つ、再生コンクリート微粉末の回収量を向上させる観点からは、ブラスト回数は10回~30回とすることが好ましい。
【0032】
本開示における再生細骨材の吸水率は、JIS A1109(2020年)に準拠して測定した値を、再生粗骨材の吸水率は、JIS A1110(2020年)に準拠して測定した値を、それぞれ用いている。
【0033】
特定破砕装置としては、既述のように、横軸周りに旋回可能な円筒体と、分級スクリーンを備えた回転分級機と、集塵機と、ブラストショット機とを備え、分級した再生細骨材をブラストし得る装置であればよい。
特定破砕装置の好ましい例としては、例えば、特許第6161586号公報に記載の粒状物質の摩砕装置等が挙げられる。
【0034】
本開示の製造方法では、分級した再生細骨材を、再生粗骨材にショットブラストして摩砕し、再生コンクリート微粉末を集塵することが特徴の一つである。
従来、破砕コンクリート塊から再生細骨材を得る場合、再生細骨材に付着するセメント由来成分をできる限り少なくすることが試みられてきた。
再生細骨材の性能を定めたJIS A5021(2018年)によれば、吸水率3.5%以下の再生細骨材が、高品質のクラスHと規定されている。
従来、品質のよい、即ち、クラスHレベルの再生細骨材を得るために、再生細骨材の吸水率を3.5%以下とすることが目標とされ、100℃以上の加熱又は高剪断力により、骨材の表面におけるセメント由来成分を可能な限り除去することが試みられている。しかし、加熱及び高剪断力の付与は、いずれもエネルギー消費量が大きくなり、且つ、再生細骨材と分離されて得られる再生コンクリート微粉末において骨材成分の含有量が増加し、微粉末のセメント由来成分の比率が低下するという問題がある。
本開示の製造方法によれば、再生細骨材の吸水率が3.5%を超えている段階で、破砕及び分級を終了させることにより、エネルギー消費量を低く抑え、再生細骨材の損傷を抑制し、炭酸ガス吸着量の良好な再生コンクリート微粉末を製造し得るという効果を奏する。
【0035】
本開示の製造方法により得られた再生コンクリート微粉末は、原料として用いられた前記コンクリート塊に対する回収率が10質量%~45質量%であり、且つ、前記再生コンクリート微粉末に含まれるセメント由来成分が、微粉末の全質量に対し、25質量%以上であることが好ましい。
【0036】
再生コンクリート微粉末の回収率は、例えば、特定破砕装置に当初投入されたコンクリート塊の質量と、回収された再生コンクリート微粉末の質量とを測定し、その値を基に算出することができる。
コンクリート塊に対する再生コンクリート微粉末の回収率は10質量%~45質量%であることが好ましく、15質量%~40質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることがさらに好ましい。
再生コンクリート微粉末の回収率が、10質量%~45質量%の範囲であることにより、廃コンクリート塊からの再生コンクリート微粉末の回収がより効率的となり、再生コンクリート微粉末における骨材由来成分が減少し、セメント由来成分の含有量がより向上する。
【0037】
また、回収された再生コンクリート微粉末に含まれるセメント由来成分は、回収された再生コンクリート微粉末の全量に対し、25質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましい。
再生コンクリート微粉末におけるセメント由来成分の含有量の上限値には特に制限はないが、本開示の製造方法における再生コンクリート微粉末の回収率を考慮すれば、70質量%以下とすることができる。
【0038】
微粉末中に含まれるセメント由来成分が、炭酸ガス吸着性を発揮するため、再生コンクリート微粉末におけるセメント由来成分が多いほど、再生コンクリート微粉末は炭酸ガスの吸着性能がより良好となり、また、必要に応じてコンクリート組成物のアルカリ刺激材として使用することもできる。
【0039】
再生コンクリート微粉末におけるセメント由来成分の含有量は、以下の方法で測定することができる。
【0040】
(セメント由来成分含有量の測定方法)
試薬特級の塩酸(濃度約35質量%)を容積比で1:100 の割合で純水と混合し、HCl(1+100)塩酸水溶液を得る。塩酸水溶液の調製は、室温にて行う。
室温下、再生コンクリート微粉末を1g秤量し、上記で得た塩酸水溶液250ml(ミリリットル)に加えて20分間撹拌する。
撹拌後、溶液をろ過して、固形分をろ別する。ろ物は、ろ紙上で、80℃~90℃の温水で十分洗浄し、るつぼにいれてろ紙を灰化させた後、950℃で30分間強熱する。
強熱した試料を室温まで放冷し、残存物の質量を測定する。当初秤量した試料に対し、残存した固形分の量を不溶分、減少した質量を可溶分とする。
上記測定方法により、塩酸水溶液に溶解した可溶分は、殆どが微粉末中のセメント由来成分であるため、本開示においては、上記測定方法により得られた可溶分を、微粉末中のセメント由来成分の量と規定する。
【0041】
本開示の製造方法では、前記特定破砕装置に代表される装置を用いて、高温加熱、高剪断力の付与を伴わず、円筒体を旋回させながら再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末の分離を行い、回収した再生細骨材の再生粗骨材に対するブラストの回数を制御することで、炭酸ガス吸着能の良好な再生コンクリート微粉末を製造することができる。
製造に必要なエネルギーは、加熱を伴う処理に比較して極めて低く、例えば、コンクリート塊を破砕した40mmアンダーの破砕物1t(トン)を処理するための消費電力を30kwh以下とすることができ、好ましい態様では、20kwh以下とすることができる。
例えば、特許文献2に記載の方法を適用し、細骨材の分離において、破砕及び分級に加え、100℃の加熱を行う場合、さらに、破砕物1t(トン)を100℃まで昇温するための消費電力が必要となることを考慮すれば、炭酸ガス吸着量の良好な再生コンクリート微粉末の製造に要する消費電力を大幅に低減することができるといえる。
【0042】
得られた再生コンクリート微粉末は、微粒子であり、空気中に放置すると空気に含まれる二酸化炭素を反応して、炭酸ガス吸着能が低下する可能性がある。このため、回収後の再生コンクリート微粉末は、例えば、不活性ガス雰囲気下、水中等で保存してもよい。
【0043】
本開示の製造方法により得られた再生コンクリート微粉末は、セメント由来成分の含有量が多いことから、炭酸ガス吸着能が良好であり、例えば、発電所、工場等から排出される二酸化炭素の固定化、動力機械等の排ガス中の二酸化炭素吸着等に好適に使用し得る。
また、セメント由来成分の含有量が多いことから、コンクリート組成物のアルカリ刺激材としても用いることができる。
【実施例0044】
以下、本開示の製造方法を、具体例を挙げて詳細に説明するが、以下の具体例は一例に過ぎず、本開示の主旨に従い、種々の変形例を実施することができる。
【0045】
〔特定破砕装置の予備試験〕
以下の実施例では、処理対象の破砕コンクリート塊の原料サイズを40mm以下と決定し、初期段階で、数パターンの運転条件(ショットブラスト回数と集塵機における風量)を適用して基本データを採取した。得られた基本データによれば、ショットブラストの回数を2回~30回とし、集塵機の風量を100m/min~250m/minとすることで、目的とする吸水率3.5%を超える再生細骨材が得られることが推定されたため、運転条件をプログラムに入力し、プログラムに沿って特定破砕装置を自動運転した。再生細骨材の吸水率、再生コンクリート微粉末に含まれるセメント成分が目的の範囲となるよう、ショットブラストの回数を、下記実施例1~実施例3の回数で特定破砕装置の運転を停止し、得られた再生細骨材の吸水率、回収された再生コンクリート微粉末の品質を評価した。
【0046】
〔実施例1〕
1.再生コンクリート微粉末の調製
建物の解体時に発生したコンクリート塊を40mmアンダーに破砕した破砕物を得た。(準備工程)
得られた40mmアンダーの破砕物は、図1に示す旋回可能な円筒体を備えた特定破砕装置を用いて、再生粗骨材、再生細骨材、及び再生コンクリート微粉末に分離した。
円筒体内部に配置する分級スクリーンの開孔部は、回収を目的とする再生細骨材のサイズを考慮して5mmとした。
【0047】
コンクリート塊から得た40mmアンダーの破砕物を前記円筒体に298kg投入し、円筒体の回転を開始し、円筒体内において、破砕、分級、回収した再生細骨材の再生粗骨材へのショットブラストを開始した。
ショットブラストの回数が6回となったところで、特定破砕装置の運転を停止し、装置内から、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を回収した。
再生粗骨材、再生細骨材、及び再生コンクリート微粉末の回収率は、それぞれ、52.1質量%、33.0質量%、及び14.9質量%であった。
【0048】
2.回収物の評価
2-1.再生粗骨材及び再生細骨材の吸水率
再生粗骨材の吸水率を、JIS A1110(2020年)に準拠し、再生細骨材の吸水率を、JIS A1109(2020年)に準拠して測定した。
結果を、下記表1に記載した。
表1に記載の如く、再生細骨材の吸水率は、7.55%であり、3.5%を超える値であった。
【0049】
2-2.再生コンクリート微粉末に含まれるセメント成分の測定
試薬特級の塩酸(濃度約35質量%)を容積比で1:100 の割合で純水と混合したHCl(1+100)塩酸水溶液を得た。塩酸水溶液の調製は、室温(25℃)にて行った。
室温下、回収された再生コンクリート微粉末を1g秤量し、上記で得た塩酸水溶液250mlに加えて2分間撹拌し、撹拌後、溶液をろ過して、固形分をろ別した。ろ物は、ろ紙上で、80℃~90℃の温水で十分に洗浄し、るつぼにいれてろ紙を灰化させた後、950℃で30分間強熱した。
強熱した試料を室温まで放冷し、残存物の質量を測定した。秤量した試料1gに対し、残存した固形分の量を不溶分、減少した質量を可溶分として計算したところ、可溶分は質量換算で49.5%であった。可溶分は、ほぼセメント由来成分であるため、実施例1の方法で得た再生コンクリート微粉末におけるセメント由来成分の含有量は49.5質量%と見積もられた。
回収された微粉末の量を考慮して、原料であるコンクリート塊の40mmアンダーの破砕物1t当たりの回収された再生コンクリート微粉末に含まれるセメント由来成分の総含有量は、0.074tと算出された。
【0050】
2-3.再生コンクリート微粉末の50%粒径の測定
回収された再生コンクリート微粉末約0.05gを、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3300EXII:マイクロトラック・ベル(株)製)で、溶媒としてエタノールを使用し、180秒間超音波分散させた後、室温(25℃)にて50%粒径測定した。
その結果、50%粒径は、25.9μmであり、種々の用途に使用し得る微細な粒子であることが確認された。
【0051】
2-4.再生コンクリート微粉末の回収に要した消費電力
上記1tのコンクリート塊を処理して、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を分離するために、特定破砕装置の運転に要した消費電力を、測定したところ、10.0kwhであった。
上記再生コンクリート微粉末に含まれるセメント由来成分の含有量の測定結果を基に、セメント由来成分の回収に要した消費電力を算出したところ、セメント由来成分1tを回収するための消費電力量は、135.6kwhと算出された。
【0052】
〔実施例2~実施例3〕
実施例1において、ショットブラストの回数を下記表1に示す回数に変えた以外は、同様にしてコンクリート塊1tを処理して、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を分離回収し、実施例1と同様にして評価した。
【0053】
〔比較例1〕
実施例1において、ショットブラストの回数を、上記所定の範囲を超えた45回に変えた以外は、同様にしてコンクリート塊から得た40mmアンダーの破砕物1tを処理して、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を分離回収し、得られた再生細骨材の吸水率を測定したところ、吸水率は3.21%であり、本開示の製造方法に規定する吸水率の範囲外となった。
その他の項目についても、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例2〕
実施例1において、ショットブラストを複数回行わず、1回のみ行った以外は、同様にしてコンクリート塊1tを処理して、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を分離回収し、得られた再生細骨材の吸水率を測定したところ、吸水率は9.63%であり、本開示の製造方法に規定する吸水率3.5%を超える値となったが、ブラストにより生じる再生コンクリート微粉末の中央径は117.6μmであり、本開示の規定の範囲外であった。さらに、再生コンクリート微粉末の回収率は6.6質量%に止まった。
その他の項目についても、実施例1と同様にして評価した。
【0055】
上記評価結果を下記表1に示す。
また、実施例1~実施例3、比較例1及び比較例2の製造方法における再生コンクリート微粉末に含まれるセメント成分1tの回収に要した電力量と、再生細骨材の吸水率の関係を示すグラフを図2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の結果より、実施例1~3の再生コンクリート微粉末の製造方法によれば、得られた再生コンクリート微粉末はセメント成分を多く含み、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を分離する消費電力が低く、セメント由来成分の回収に要した消費電力も低かった。従って、実施例1~3の製造方法によれば、二酸化炭素吸着に適するセメント由来成分の含有量が多く、微細な粒径の再生コンクリート微粉末を、低エネルギーで効率よく得られることが分かる。
【0058】
他方、比較例1の製造方法では、再生細骨材として吸水率の低いものが得られ、再生コンクリート微粉末の回収も良好であるが、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を分離する消費電力、及び、セメント由来成分の回収に要した消費電力が、実施例に比較して高い値となった。
比較例2の製造方法では、再生粗骨材、再生細骨材及び再生コンクリート微粉末を分離する消費電力は低かったが、得られた再生コンクリート微粉末の粒子径が大きく、再生コンクリート微粉末に含まれるセメント由来成分の含有量が低かったため、セメント由来成分の回収に要した消費電力は、各実施例よりも高い値となった。
【0059】
図2に記載の結果より、実施例1~実施例3の製造方法における再生コンクリート微粉末の回収に使用した電力量と、再生細骨材の吸水率との関係によれば、本開示の製造方法に規定した範囲の吸水率を有する再生細骨材を得ることにより、セメント成分回収に要する消費電力量が低く抑えられることが分かる。
【0060】
このように、本開示の再生コンクリート微粉末の製造方法によれば、コンクリート廃材を用いて、二酸化炭素吸着能が良好なセメント由来成分を多く含む再生コンクリート微粉末を、低エネルギーで製造することができる。従って、本開示の製造方法は、コンクリート塊のリサイクルに有用であり、二酸化炭素の排出量を抑制しつつ、二酸化炭素の吸着処理に有効な再生コンクリート微粉末を効率よく製造し得るという利点を有することが確認された。
【符号の説明】
【0061】
10 横軸周りに旋回可能な円筒体(円筒体)
12 分級スクリーン
14 再生粗骨材
16 再生細骨材
18 ブラストショット機
図1
図2