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特開2023-182465改質再生骨材の製造方法及び改質再生骨材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182465
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】改質再生骨材の製造方法及び改質再生骨材
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/16 20230101AFI20231219BHJP
   B09B 3/25 20220101ALI20231219BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20231219BHJP
   B02C 23/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C04B18/16
B09B3/25
B09B3/35
B02C23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096086
(22)【出願日】2022-06-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/コンクリート、セメント、炭酸塩、炭素、炭化物などへのCO2利用技術開発「セメント系廃材を活用したCO2固定プロセス及び副産物の建設分野への利用技術の研究」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池尾 陽作
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】川尻 聡
(72)【発明者】
【氏名】奈良 知幸
(72)【発明者】
【氏名】片村 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】西岡 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】小島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 邦生
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】杉本 南
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】景山 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】清塘 悠
【テーマコード(参考)】
4D004
4D067
【Fターム(参考)】
4D004AA33
4D004AB01
4D004BA02
4D004CA04
4D004CA08
4D004CA34
4D004CB13
4D004CC01
4D004DA03
4D004DA09
4D004DA10
4D067EE17
4D067GA06
(57)【要約】
【課題】コンクリート塊から、低エネルギー消費量で、吸水率が改善された緻密な改質再生骨材を得る、炭酸ガスの削減に有用な改質再生骨材の製造方法及び吸水率が改善され、緻密な構造を有する改質再生骨材を提供する。
【解決手段】コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た粒径40mm以下の破砕物から、吸水率が3.0%を超える再生骨材を得る第1工程と、前記第1工程で得た前記再生骨材を炭酸化処理して、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する改質再生骨材を得る第2工程と、を有する改質再生骨材の製造方法及び改質再生骨材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た粒径40mm以下の破砕物から、吸水率が3.0%を超える再生骨材を得る第1工程と、
前記第1工程で得た前記再生骨材を炭酸化処理して、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する改質再生骨材を得る第2工程と、
を有する改質再生骨材の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程は、前記再生骨材を、再生粗骨材と再生細骨材に分級し、吸水率が3.5%を超える再生細骨材を得る工程を含み、前記改質再生骨材が改質再生細骨材である請求項1に記載の改質再生骨材の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程は、前記再生骨材を、再生粗骨材と再生細骨材に分級し、吸水率が3.0%を超える再生粗骨材を得る工程を含み、前記改質再生骨材が改質再生粗骨材である請求項1に記載の改質再生骨材の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程における炭酸化処理は、前記第1工程で得た再生骨材を閉鎖空間内に配置し、5℃~200℃の温度雰囲気下、濃度5%以上の炭酸ガスと接触させる乾式処理であるか、又は、前記第1工程で得た再生骨材を水に浸漬し、水のpHが6~8の範囲に達するまで水に炭酸ガスを供給する湿式処理である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の改質再生骨材の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程で得た前記改質再生細骨材を機械的すりもみ処理する第3工程をさらに有する請求項2に記載の改質再生骨材の製造方法。
【請求項6】
コンクリート塊由来の吸水率3.0%を超える再生骨材と炭酸ガスとの反応生成物であり、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含む改質再生骨材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は改質再生骨材の製造方法及び改質再生細骨材に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物等のコンクリートを解体して得られるコンクリート塊は処理困難な廃棄物であり、現状ではリサイクルの大部分が路盤材への利用になっている。そのため、より付加価値の高いコンクリート塊のリサイクル方法が課題となっている。
現状では、コンクリート塊を破砕して、再生骨材を得ることが試みられてはいるが、表面にセメント由来成分が多く含まれる再生骨材は、再生骨材を用いた硬化体の品質に影響を及ぼすことがある。このため、できるだけセメント由来成分を少なくした再生骨材の製造が目標とされているのが現状である。
しかし、再生骨材の回収に際し、セメント由来成分を少なくするためには、多くのエネルギーを要すること、再生骨材と分離され、回収された再生コンクリート微粉末に骨材成分が含まれること、等により、再生コンクリート微粉末の利用が困難になるという問題がある。
【0003】
微粉末と分離した再生骨材の改質方法として、コンクリート廃棄物を破砕及び篩い分けして得た、水酸化カルシウムの含有量が多い骨材を炭酸ガスと接触させることで、セメント由来成分に起因する再生骨材の吸水率改良を図る再生骨材の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
コンクリート廃棄物を破砕し、炭酸ガスと接触させ、その後、炭酸ガスを含む水に浸漬した後、固液分離し、ろ液を煮沸して炭酸塩を得るコンクリート廃棄物の処理方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、再生骨材におけるセメント由来成分を減少する方法として、コンクリート廃材由来の粗骨材原料を100℃以上に加熱し、乾式撹拌装置で撹拌し、表面を摩滅させ、さらに、第2の撹拌装置内で表面を摩滅させ、モルタル分を除去する再生骨材の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-238792号公報
【特許文献2】特開平11-319765号公報
【特許文献3】特開平8-109052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法では、コンクリート廃棄物から得られた骨材が水酸化カルシウムを含むことを前提としており、骨材表面の水酸化カルシウムを炭酸カルシウムに変換させる技術である。しかし、コンクリート塊を破砕して骨材を得る場合、骨材表面の水酸化カルシウムは空気中で炭酸化される場合があり、そのような場合には炭酸ガスと接触させても十分な炭酸化が達成されないという問題がある。
従来、コンクリート廃棄物から炭酸塩を得る、或いは、再生骨材からモルタル分を除去するという目的に対しては、特許文献2及び特許文献3に記載の如く、固液分離した後のろ液を煮沸する、100℃以上に加熱して摩滅する等、高温での加熱が必要となり、再生骨材の製造エネルギーが上昇する。
さらに、本発明者らの検討によれば、特許文献2に記載の如く、骨材表面の水酸化カルシウムのみを炭酸化する方法では、特に再生骨材表面における水酸化カルシウムの付着量が少ない場合、吸水率の低下抑制効果及び強度向上効果が十分に得られないことが明らかとなった。
【0006】
本開示の一態様の課題は、コンクリート塊から、低エネルギー消費量で、吸水率が改善された緻密な改質再生骨材を得ることができ、炭酸ガスの削減に有用な改質再生骨材の製造方法を提供することにある。
本開示の別の態様の課題は、吸水率が改善され、緻密な構造を有する改質再生骨材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段は、以下の態様を含む。
<1> コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た粒径40mm以下の破砕物から、吸水率が3.0%を超える再生骨材を得る第1工程と、前記第1工程で得た前記再生骨材を炭酸化処理して、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する改質再生骨材を得る第2工程と、を有する改質再生骨材の製造方法。
【0008】
<2> 前記第1工程は、前記再生骨材を、再生粗骨材と再生細骨材に分級し、吸水率が3.5%を超える再生細骨材を得る工程を含み、前記改質再生骨材が改質再生細骨材である<1>に記載の改質再生骨材の製造方法。
<3> 前記第1工程は、前記再生骨材を、再生粗骨材と再生細骨材に分級し、吸水率が3.0%を超える再生粗骨材を得る工程を含み、前記改質再生骨材が改質再生粗骨材である<1>に記載の改質再生骨材の製造方法。
【0009】
<4> 前記第2工程における炭酸化処理は、前記第1工程で得た再生骨材を閉鎖空間内に配置し、5℃~200℃の温度雰囲気下、濃度5%以上の炭酸ガスと接触させる乾式処理であるか、又は、前記第1工程で得た再生骨材を水に浸漬し、水のpHが6~8の範囲に達するまで水に炭酸ガスを供給する湿式処理である<1>~<3>のいずれか1つに記載の改質再生骨材の製造方法。
【0010】
<5> 前記第2工程で得た前記改質再生細骨材を機械的すりもみ処理する第3工程をさらに有する<2>に記載の改質再生細骨材の製造方法。
【0011】
<6> コンクリート塊由来の吸水率3.0%を超える再生骨材と炭酸ガスとの反応生成物であり、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含む改質再生骨材。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、コンクリート塊から、低エネルギー消費量で、吸水率が改善された緻密な改質再生骨材を得ることができ、炭酸ガスの削減に有用な改質再生骨材の製造方法を提供することができる。
本開示の別の態様によれば、吸水率が改善され、緻密な構造を有する改質再生骨材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の改質再生骨材の製造方法及び改質再生骨材について具体例を挙げて詳細に説明する。以下の記載に記載する説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、以下の記載は、一例を示すものであり、本開示は以下の記載に限定されない。
本開示において「~」を用いて記載した数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、粗骨材は、5mmふるいを用いた分級した場合、85質量%以上が通過せず止まる骨材を指し、細骨材は、10mmふるいを全て通過し、5mm以下の粒子が85質量%以上含まれる骨材を指す。骨材のサイズについては、JIS A5022(2016年)「再生骨材コンクリートM」又は、JIS A5023(2016年)「再生骨材コンクリートL」の規定を援用する。
本開示においては、特に断らない限り、室温とは、特に温度制御を行わない雰囲気温度を指し、より具体的には20℃~30℃を包含する意味で用いられる。
【0014】
<改質再生骨材の製造方法>
本開示の改質再生骨材の製造方法(以下、「本開示の製造方法」と称することがある)は、コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た粒径40mm以下の破砕物から、吸水率が3.0%を超える再生骨材を得る第1工程と、前記第1工程で得た前記再生骨材を炭酸化処理して、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する改質再生骨材を得る第2工程と、を有する。
【0015】
(第1工程)
第1工程は、コンクリート塊を破砕又は摩砕して得た粒径40mm以下の破砕物から、吸水率が3.0%を超える再生骨材を得る工程である。
本開示にて使用されるコンクリート塊は、コンクリートを含む建造物、構造物等を解体した塊状の解体コンクリートである。
コンクリート塊は、当初のコンクリートの組成、建造物、構造物等の置かれた環境、経時期間等の影響により、さまざまな組成のものがある。
本開示の製造方法によれば、コンクリート塊の組成に拘わらず、低エネルギーで、再利用に好適な改質再生骨材を得ることができる。
【0016】
第1工程では、まず、コンクリート塊を破砕又は摩砕し、粒径40mm以下の破砕物を得る。
なお、以下、本開示において「破砕又は摩砕」を、「破砕等」と総称することがある。
コンクリート塊を破砕又は摩砕して粒径40mm以下の破砕物を得る方法には特に制限はなく、公知の破砕装置又は摩砕装置を用いることができる。コンクリート塊を、まず、粗破砕して、得られた粗破砕物を、さらに破砕又は摩砕する、多段階の破砕等を実施してもよい。
解体コンクリートの粗破砕には、例えば、ジョークラッシャー、インペラーブレーカー等の公知の破砕機を用いることができる。
粗破砕物に対し、さらに破砕等を実施する場合には、例えば、ショットブラスト方式の破砕装置、インパクトクラッシャー、加熱を行わない機械すりもみ方式等の摩砕装置等を用いることができる。
【0017】
コンクリート塊を粉砕又は摩砕して得られた粒径40mm以下の破砕物は、再生骨材原料となる。40mm以下の再生骨材原料である破砕物に対し、さらに破砕等を行って、その後、破砕物を粒径によって分級し、再生粗骨材と再生細骨材と再生粉末とを得ることができる。破砕等と、再生粗骨材と再生細骨材と再生粉末とを分級する方法には、特に制限はなく、公知の方法を、破砕等、分級等の条件を選択して適用することができる。
前記再生骨材を得る第1工程は、前記再生骨材を、再生粗骨材と再生細骨材に分級し、吸水率が3.5%を超える再生細骨材を得る工程を含み、前記改質再生骨材が改質再生細骨材であってもよく、また、第1工程は、前記再生骨材を、再生粗骨材と再生細骨材に分級し、吸水率が3.0%を超える再生粗骨材を得る工程を含み、前記改質再生骨材が改質再生粗骨材であってもよい。
より具体的には、粗破砕後、粒径40mm以下とした破砕物に対し、さらに破砕等を行って、5mmふるい上に85質量%以上が留まるサイズの再生粗骨材と、10mmふるいを全て通過し、5mm以下の粒子が85質量%以上含まれる再生細骨材とを得ることができる。
粒径40mm以下の破砕物をさらに破砕する方法としては、ジョークラッシャーやインペラーブレーカー等の破砕機を用いて破砕する方法、加熱を行わない機械すりもみ方式を利用する方法、加熱すりもみ方式を利用する方法、ブラストショット法等が挙げられ、エネルギー消費量がより少ないという観点からは、破砕機による破砕、加熱を行わない機械すりもみ方式、ブラストショット法等が好ましい。
再生粗骨材の最大寸法には特に制限はないが、使用性の観点から、再生粗骨材の最大寸法は25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましい。
【0018】
再生粗骨材を分離した後には、再生細骨材と、コンクリート塊由来の粉末との混合物が得られる。
再生粗骨材を分級した後に得られる5mm以下の破砕物から再生コンクリート粉末(再生粉末とも称する)を分離することで、再生細骨材を得ることができる。再生コンクリート粉末の分離は、公知の方法、例えば、篩分け、風力分級等の方法で行なうことができる。
機械的な破砕等及び分級によって得られた再生骨材は、骨材表面にセメント由来の成分が残存しており、従って、得られた再生骨材の吸水率は、再生骨材に付着するセメント由来成分に起因して3.0%を超える。
本開示の製造方法において、得られた再生骨材は、吸水率が3.0%を超え、3.5%以上であることが好ましい。吸水率の上限には特に制限はない。
【0019】
なお、得られる再生骨材が再生細骨材である場合を例に挙げれば、第2工程における炭酸化処理により、コンクリート組成物等の品質への改質再生細骨材に起因する影響がより小さくなるという観点から、第1工程を経て得られる再生細骨材の吸水率は15%以下であることが好ましく、9%以下であることがより好ましい。
第1工程において、再生骨材の吸水率を3.0%以下に抑える、より具体的には、再生粗骨材の吸水率を3.0%以下、再生細骨材の吸水率を3.5%以下に抑えると、セメント組成物、コンクリート組成物等に、より好適に使用する再生細骨材となるが、分級した再生細骨材からセメント由来成分をさらに除去するためには、加熱、機械的摩砕等の、追加の処理が必要となり、消費エネルギーの観点からは好ましくない。
【0020】
再生骨材の粒子の大きさの一つの指標として粗粒率が挙げられる。以下、本開示においては、再生粗骨材及び再生細骨材のサイズの目安として粒度を採用する。
再生粗骨材及び再生細骨材の粒度は、JIS A1102(2014年)に準拠して測定することができる。得られた粒度から、再生骨材の粗粒率を求めることができる。
再生骨材の粗粒率とは、80mm、40mm、20mm、10mm、5mm、2.5mm、1.2mm、0.6mm、0.3mm、及び、0.15mmの各ふるいにとどまる骨材粒子の質量分率(%)の和を100で除した値である。
【0021】
機械的な破砕等及び分級によって得られた骨材のうち、再生細骨材は、再生粗骨材よりも表面積が大きく、破砕及び破砕後の保存等により、経時すると空気中の二酸化炭素と反応することで、セメント由来成分のうち、水酸化カルシウムの含有量が低下する。
第1工程において得られた再生骨材は、水酸化カルシウムの含有量が5質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよく、1質量%以下であってもよい。
例えば、特許文献2における炭酸化処理は、骨材の表面近傍に存在する水酸化カルシウムを炭酸化することで、表面に炭酸カルシウムを生成させる処理であるが、本開示の製造方法では、炭酸化処理される再生骨材は水酸化カルシウムの含有量に依存するものではなく、後述の実施例にも明らかなように、表面近傍に水酸化カルシウムが存在しない再生骨材であっても、炭酸化により吸水率が低下し、緻密な構造を有する改質再生骨材を得ることができる。
従って、本開示の製造方法によれば、後述の第2工程において、特定条件にて炭酸化処理を行うことで、吸水率が3.0%を超える再生骨材であっても、再生骨材のセメント由来成分に起因する水酸化カルシウムの含有量が5質量%以下であっても、セメント組成物、コンクリート組成物等に好適な物性を有する改質再生骨材を得ることができる。
【0022】
(第2工程)
第2工程は、前記第1工程で得た前記再生骨材を炭酸化処理して、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する改質再生粗骨材を得る工程である。
【0023】
第2工程における炭酸化処理は、乾式法であってもよく、湿式法であってもよい。
炭酸化処理としては、前記第1工程で得た再生骨材を閉鎖空間内に配置し、5℃~200℃の温度雰囲気下、濃度5%以上の炭酸ガスと接触させる乾式処理であるか、又は、前記第1工程で得た再生骨材を、水に浸漬し、水のpHが6~8に達するまで水に炭酸ガスを供給する湿式処理であることが好ましい。
【0024】
(炭酸化処理:乾式処理)
第2工程で、炭酸化処理を乾式で行う場合、再生骨材を閉鎖空間内に静置して、前記閉鎖空間内を炭酸ガスで満たして接触させることができる。
【0025】
閉鎖空間内の温度は5℃~200℃が好ましく、20℃~100℃がより好ましい。なお、例えば、特に温度制御を行わない閉鎖空間で、温度0℃~40℃の温度雰囲気下で炭酸化処理を行うこともできる。
閉鎖空間の湿度は、炭酸化効率がより向上するという観点から、30%RH~90%RHとすることができ、50%RH~80%RHが好ましい。
【0026】
接触させる気体中の炭酸ガス濃度は、5%以上であり、10%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。接触させる炭酸ガスは、100%炭酸ガスであってもよい。
炭酸化処理に使用する炭酸ガスは、炭酸ガスを含む排気ガスを適用してもよい。排気ガスとしては、加熱炉から排出される排気ガス、動力機関から排出される排気ガス等が挙げられ、濃度5%以上の炭酸ガスを含めば特に制限はない。
炭酸ガスを含む排気ガスを炭酸化処理に用いることで、排気ガス中の炭酸ガスの低減と、炭酸ガスの再生骨材への吸着による再生骨材の改質とを、同時に行うことができる。排気ガスの温度が100℃を超える高温である場合には、特に閉鎖空間を加熱しなくても、効率のよい炭酸化処理を行うことができ、消費エネルギーの低減及び排ガス中の炭酸ガスの低減を同時に達成できるという利点をも有する。
また、再生骨材の炭酸化を効率よく行う目的で、閉鎖空間を加圧状態として炭酸ガスを供給し、再生骨材に接触させてもよい。
【0027】
乾式処理における好ましい処理時間は、炭酸ガス濃度及び供給量との関連で適宜選択される。処理時間は、例えば、10%~50%濃度の炭酸ガスを用いた場合、1時間以上とすることができ、24時間以上が好ましく、2日間以上がより好ましく、5日以上がさらに好ましく、10日以上がさらに好ましい。処理時間に特に上限はないが、製造効率の観点からは、20日以下とすることができる。
なお、好ましい処理時間は、骨材の状態、必要な改質再生骨材の物性により適宜選択することができる。例えば、再生骨材に付着しているセメント成分の量が少ない場合、及び、再生骨材の表面及びその近傍に付着するセメント粉末のみを炭酸化処理する場合には、処理時間は、1時間~2時間で目的とする改質再生骨材を得ることができる。
なお、乾式処理における処理時間を5日以上とする場合には、炭酸化の進行をより効率的にするという観点から、閉鎖空間内に静置した再生骨材を、数時間~3日間に一度程度の頻度で撹拌することが好ましい。撹拌により、再生骨材と炭酸ガスとの接触がより均一に行われ、再生骨材の一部、又は、個々の再生骨材の一部領域が炭酸化されないといった未反応の領域をより少なくすることができる。
【0028】
(炭酸化処理:湿式処理)
湿式の炭酸化処理は、前記第1工程で得た再生骨材を水に浸漬し、水のpHが6~8に達するまで水に炭酸ガスを供給する方法で行うことができる。
湿式処理の具体的な方法としては、再生骨材を配置した容器に水を満たすことで再生骨材を水に浸漬し、水に炭酸ガスを吹き込んでバブリングする方法が挙げられる。
浸漬に用いる水には特に制限はない。使用される水は、炭酸ガスと接触して塩を形成する不純物が少ないことが処理効率の観点から好ましく、水としては、例えば、イオン交換水、水道水等を用いることができる。
【0029】
第2工程において、湿式処理を行う場合に水中に供給する炭酸ガス濃度は、5%とすることができ、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。炭酸ガス濃度の上限には特に制限はなく、炭酸ガス濃度は100%であってもよい。
炭酸ガス濃度は高い方が、再生骨材の炭酸化処理効率がより良好になる傾向がある。
供給する炭酸ガスは、乾式処理と同様に、炭酸ガスを含む排気ガスを用いてもよい。炭酸ガスの供給源として排気ガスを用いる場合には、炭酸ガス濃度は排気ガスに含まれる炭酸ガス量に依存する。排気ガスを用いる場合においても、排気ガス中の炭酸ガス濃度は、5%以上であることが好ましい。
【0030】
再生骨材を浸漬した水中への炭酸ガスの供給量、及び、上記濃度の炭酸ガスの供給速度は、目的に応じて適宜選択することができる。炭酸ガスの供給量(総量)及び供給速度を最適化して炭酸ガスを吹き込むことにより、水に浸漬された再生骨材と炭酸ガスとの接触が効率よく行われ、再生骨材の炭酸化が進行する。
なお、炭酸ガスの水に対する溶解度は、水温が低い方が大きくなる。このため、水の温度は特に制御しなくてもよい。
なお、炭酸ガスの供給源として排気ガスを用いる場合、排気ガスの温度によっては、水の温度が上昇することがあるが、水温は100℃に達することはないため、再生骨材の炭酸化処理の進行に影響を与えることはないと考えられる。
【0031】
湿式処理における水の温度には特に制限はなく、常温で行うことができる。また、炭酸ガスの供給に排気ガスを用いた場合、排気ガスの温度及び供給量に起因して水の温度が、例えば、90℃程度に上昇する場合があるが、当該温度条件においても炭酸化処理を行うことができる。
【0032】
湿式処理の処理時間には特に制限はない。湿式処理時間としては、例えば、5分間~10時間とすることができ、30分間~6時間であることが好ましい。
再生骨材と炭酸ガスとの接触により、再生骨材に含まれるセメント由来成分の炭酸化が進行すると水のpHが低下する傾向にあるため、水のpHが6~8に達する時点を炭酸化処理の終点としてもよい。水のpHが6.5~7.0に達する時点まで湿式処理を行うことが好ましく、pHが6.5~6.8に達する時点まで湿式処理を行うことがより好ましい。水のpHが目的となる値、例えば、上記水のpHが6.5~7.0に達した時点からさらに30分間~90分間湿式処理を継続することがさらに好ましい。
湿式処理における水のpHは、公知のpHメーターで測定することができる。本開示では、液温20℃として、(株)東興化学研究所のガラス電極式水素イオン濃度指示計(TPX-999Si)で測定した値を用いている。
【0033】
本開示の製造方法によれば、前記第1工程で得た再生骨材に対し、前記第2工程を行うことで、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する改質再生骨材を得る。
【0034】
(任意の工程)
本開示の製造方法は、前記第1工程及び第2工程に加え、所望により、さらに任意の工程を有していてもよい。任意の工程としては、改質再生骨材を表面処理する工程、改質再生骨材を含浸処理する工程等が挙げられる。また、前記第1工程及び第2工程を経て得られた改質再生骨材が改質再生細骨材である場合には、改質再生細骨材を機械的すりもみ処理する工程をさらに有していてもよい。
【0035】
本開示の製造方法は、前記第2工程で得た前記改質再生細骨材を機械的すりもみ処理する第3工程をさらに有していてもよい。
【0036】
(第3工程)
第3工程は、第2工程を経て得られた改質再生細骨材を機械的すりもみ処理する工程である。機械的すりもみ処理は加熱を伴ってもよく、加熱を伴わなくてもよいが、製造エネルギー低減の観点からは、加熱を伴わない機械的すりもみ処理であることが好ましい。
第1工程を経て得られた再生細骨材は、再生細骨材の表面近傍に破砕、分級により脆弱化した骨材の脆弱層、セメント水和物層、破砕時に発生した微粉末等が付着しており、第2工程における炭酸化処理により、それらの脆弱層が浮き上がりやすく場合がある。その場合には、改質再生細骨材として使用前に、脆弱層を剥離、除去することで、改質再生細骨材の特性がより向上すると考えられる。
【0037】
機械的すりもみ処理は、改質再生細骨材を転動ミルに封入し、所定時間作動させて行うことができる。
機械的すりもみ処理に使用し得る転動ミルは、公知の装置を用いることができる。装置としては、ボールミル、ロッドミル等が挙げられ、本開示では、(株)マツ・コウケンのMK-ARM7100型(商品名)を用いている。
転動ミルの作動時間は、1分間~20分間とすることができ、2分間~10分間であることが好ましい。この範囲で、低エネルギー消費量で有効な処理を行うことができる。
再生細骨材を第3工程に付する場合の1回の処理量には特に制限はなく、装置の処理容量、生産性等の観点から適宜選択することができる。
第3工程は、改質再生細骨材の表面に存在する脆弱層、粉体等の不純物を除去する目的で行われるため、転動ミルには特にメディア等の媒体を封入しなくてもよく、転動ミル内で改質再生細骨材の粒子同士が接触することで、脆弱層が容易に除去されると考えられる。
【0038】
(得られた改質再生細骨材の物性)
まず、前記第1工程、第2工程、及び所望により行われる任意の第3工程を経て得られた改質再生細骨材の物性について説明する。
前記第1工程、第2工程、及び所望により行われる任意の第3工程を経て得られた改質再生細骨材は、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する。
改質再生細骨材に含まれる炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素は、再生細骨材に含まれるセメント成分、詳細には、水酸化カルシウム及びケイ酸カルシウム水和物(以下、CSHとも称する)が炭酸化されて生成されると考えている。二酸化ケイ素は、水和物であるシリカゲルとして改質再生細骨材に含有されることがある。
一般に、再生細骨材の表面に存在する水酸化カルシウムは、セメント成分の20質量%程度に過ぎず、水酸化カルシウムを炭酸化して炭酸カルシウムを得るのみでは、再生細骨材の改質は不十分である。一方、CSHは、セメント成分の50質量%程度を占める。
CSHには、様々な組成があるといわれており、一例として、以下の組成を示し、CSHに含まれるCaOが炭酸化される反応について説明する。例えば、下記式で表されるように、CSHに含まれるCaOが炭酸化され、炭酸カルシウムと、二酸化ケイ素とが生成する。
1.7CaO・SiO・2.17HO+1.7CO(炭酸化)→
1.7CaCO+SiO+2.17H
【0039】
第1工程及び第2工程を行うことで、再生細骨材の表面近傍に存在する水酸化カルシウムのみならず、再生細骨材の微細な空隙に存在するCSHが炭酸化され、硬質の炭酸カルシウムが改質再生細骨材の表面のみならず微細な内部の空隙に充填される。このため、本開示の製造方法により得られた改質再生細骨材は、未処理の再生細骨材に比較して吸水率がより低くなり、緻密性がより向上し、セメント組成物及びコンクリート組成物に好適に使用し得る物性を有することになり、再生細骨材の利用の促進が期待できる。
さらに、再生細骨材の改質に伴い、多くの二酸化炭素が炭酸カルシウムの生成に寄与し、改質再生細骨材に固定化されるため、本開示の製造方法は、固定化による二酸化炭素の削減に有用である。
【0040】
本開示の製造方法により得られた改質再生細骨材における炭酸カルシウムの含有量は、熱分析により確認することができる。
(改質再生細骨材における炭酸カルシウムの定量)
本開示では、熱分析装置TG-DTA(リガク社製 Thermo plus EVO2 TG-DTA8122)を用いて、600℃~800℃の減量から炭酸カルシウムの含有量を算定している。
【0041】
本開示の製造方法により得られた改質再生細骨材における二酸化ケイ素の含有量は、発光分光分析により確認することができる。なお、シリカゲルは二酸化ケイ素の水和物であるため、含有量は、Si元素基準にて測定した値となる。
(改質再生細骨材における二酸化ケイ素の定量)
本開示では、CSHの炭酸化を、シリカゲル(SiOgel)の含有量を測定することで確認する。
まず、改質再生細骨材を粉砕して試料を調製する。得られた試料を試薬特級の塩酸(濃度約35%)を容積比で1:4の割合で純水と混合したHCl(1+4)水溶液で溶解し、未溶解分を、さらに0.2N KOHで溶解し、得られた溶解液中のSiを誘導結合プラズマ(以下、ICP)発光分光分析装置で測定して、SiOgelの含有量を確認する。
本開示では、ICP発光分光分析装置として、(株)日立ハイテクサイエンス、SPECTROBLUE(登録商標)EOPを用いて測定した値を採用している。
【0042】
本開示の製造方法により得られた改質再生細骨材は、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する。改質再生細骨材が炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有することは、既述の定量方法により、確認することができる。
【0043】
第2工程を経て得られた改質再生細骨材の密度がより向上し、吸水率がより低下するという観点からは、改質再生細骨材に含まれる炭酸カルシウムの含有量は、改質再生細骨材全質量に対し、4質量%~20質量%であることが好ましく、8質量%~20質量%であることがより好ましく、10質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
第2工程を経て得られた改質再生細骨材の密度及び組織の緻密性による強度向上の観点からは、改質再生細骨材に含まれる二酸化ケイ素の含有量は、改質再生細骨材全質量に対し、1.5質量%~5質量%であることが好ましく、2質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0044】
改質再生細骨材が、上記含有量で炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有することで、炭酸化処理される前の再生細骨材に比較し、吸水率が低下する。改質再生細骨材の吸水率は、再生細骨材の吸水率よりもより低くなることにより上記効果を奏することから、必ずしもJISに定められる通常の細骨材の吸水率である3.5%以下とならなくてもよい。
【0045】
(改質再生粗骨材の製造)
次に、本開示の製造方法により得られる改質再生粗骨材について説明する。
第1工程において、コンクリート塊を破砕等して40mm以下とした破砕物に対し、さらに破砕等を行って、5mmふるい上に85質量%以上残る骨材を分取することで、再生粗骨材を得る。
第1工程を経て得られた再生粗骨材は、吸水率が3%を超え、4%以上であることが好ましい。吸水率の上限には特に制限はないが、第2工程における炭酸化処理によりコンクリートの品質への影響が小さくなるという観点から、7%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。
【0046】
第2工程では、再生粗骨材を炭酸化処理して改質再生粗骨材を得る。
再生粗骨材に対する第2工程における炭酸化処理条件は、既述の第2工程に係る記載の通りであり、好ましい例も同様である。
【0047】
(改質再生粗骨材の物性)
第2工程を経て得られた改質再生粗骨材は、密度がより向上し、吸水率がより低下するという観点からは、改質再生粗骨材に含まれる炭酸カルシウムの含有量は、改質再生粗骨材全質量に対し、2.5質量%~15質量%であることが好ましく、5質量%~15質量%であることがより好ましい。
第2工程を経て得られた改質再生粗骨材の密度及び組織の緻密性による強度向上の観点からは、改質再生粗骨材に含まれる二酸化ケイ素の含有量は、改質再生粗骨材全質量に対し、0.5質量%~4質量%であることが好ましく、1質量%~4質量%であることがより好ましい。
【0048】
<改質再生骨材>
本開示の改質再生骨材は、コンクリート塊由来の吸水率3.0%を超える再生細骨材と炭酸ガスとの反応生成物であり、炭酸カルシウムと二酸化ケイ素とを含む。
【0049】
(改質再生細骨材)
本開示の改質再生骨材が、改質再生細骨材である場合、改質再生細骨材の密度及び組織の緻密性による強度向上の観点からは、二酸化ケイ素を改質再生細骨材全質量に対し、1.5質量%~5質量%含有することが好ましく、2質量%~5質量%含有することがより好ましい。また、炭酸カルシウムを改質再生細骨材全質量に対し、4質量%~20質量%含有することが好ましく、8質量%~20質量%含有することがより好ましく、10質量%~20質量%含有することがさらに好ましい。
なお、本開示における改質再生細骨材は、改質再生細骨材の密度及び組織の緻密性がより向上し、吸水率がより低下するという観点からは、二酸化ケイ素を改質再生細骨材全質量に対し1.5質量%~5質量%含有し、且つ、炭酸カルシウムを改質再生細骨材全質量に対し4質量%~20量%含有することが好ましく、二酸化ケイ素を改質再生粗骨材全質量に対し2質量%~5質量%含有し、且つ、炭酸カルシウムを改質再生細骨材全質量に対し8質量%~20量%含有することがより好ましい。
上記範囲で二酸化ケイ素及び炭酸カルシウムを含有する本開示の改質再生細骨材は、緻密性がより良好となり、セメント組成物、コンクリート組成物等に細骨材として好適に使用し得る。
【0050】
(改質再生粗骨材)
本開示の改質再生骨材が、改質再生粗骨材である場合、改質再生粗骨材の密度及び組織の緻密性がより向上し、吸水率がより低下するという観点からは、二酸化ケイ素を改質再生粗骨材全質量に対し0.5質量%~4質量%含有することが好ましく、1質量%~4質量%含有することがより好ましい。また、炭酸カルシウムを改質再生粗骨材全質量に対し2.5質量%~15質量%含有することが好ましく、5質量%~15質量%含有ことがより好ましい。
本開示における改質再生粗骨材は、密度及び組織の緻密性がより向上し、吸水率がより低下するという観点からは、二酸化ケイ素を改質再生粗骨材全質量に対し0.5質量%~4質量%含有し、且つ、炭酸カルシウムを改質再生粗骨材全質量に対し2.5質量%~15質量%含有することが好ましく、二酸化ケイ素を改質再生粗骨材全質量に対し、1質量%~4質量%含有し、且つ、炭酸カルシウムを改質再生粗骨材全質量に対し、5質量%~15質量%含有することがより好ましい。
上記範囲で炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素を含有する本開示の改質再生粗骨材は、一般の再生粗骨材に比較し、緻密性がより良好となり、吸水率がより低いことから、セメント組成物、コンクリート組成物等に粗骨材として好適に使用し得る。
【実施例0051】
以下、本開示の製造方法及び改質再生骨材について、具体例を挙げて詳細に説明するが、以下の具体例は一例に過ぎず、本開示の主旨に従い、種々の変形例を実施することができる。
【0052】
〔比較例1、比較例2、比較例3〕
(第1工程)
(比較例1)
建物の解体時に発生したコンクリート塊を、40mmアンダーに破砕した。
得られた40mmアンダーの破砕物をさらに破砕して、目開き5mmのふるいで分級し、粉末を集塵装置にて分離して、再生細骨材A(比較例1:粗粒率:2.48、吸水率:6.67%)を得た。
(比較例2)
得られた40mmアンダーの破砕物を、目開き8mmのふるいを用いて8mmアンダーを回収し、再生細骨材B(比較例2:粗粒率:3.51、吸水率:12.35%)を得た。
(比較例3)
前記再生細骨材Bにおいて、0.15mm以下の粉末を取り除いて、再生細骨材C(比較例3:粗粒率:3.71、吸水率:9.96%)を得た。
【0053】
上記の条件により第1工程を行い、吸水率が互いに異なる3種の再生細骨材を得た。
再生細骨材の粒度は、JIS A1102(2014年)に準拠して測定し、それぞれの再生細骨材の粗粒率を求めた。
【0054】
得られた再生細骨材A、再生細骨材B及び再生細骨材Cの水酸化カルシウムの含有量を熱分析装置TG-DTA(リガク社製 Thermo plus EVO2 TG-DTA8122)を用いて確認した。水酸化カルシウムの脱水に伴う400℃~500℃付近の吸熱ピークが認められず、水酸化カルシウムは検出されなかった。
【0055】
〔実施例1〕
(第2工程)
比較例1、即ち第1工程で得た再生細骨材A 5kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、10%濃度の炭酸ガスで7日処理し、改質再生細骨材を得た。
処理後の改質再生細骨材の粒度を、第1工程で得た再生細骨材と同様にして測定したところ、粗粒率:2.46であった。
【0056】
〔実施例2〕
(第2工程)
比較例1、即ち第1工程で得た再生細骨材A 5kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、10%濃度の炭酸ガスで14日処理し、改質再生細骨材を得た。
処理後の改質再生細骨材の粒度を、第1工程で得た再生細骨材と同様にして測定したところ、粗粒率:2.46であった。
【0057】
〔実施例3〕
(第2工程)
比較例1、即ち第1工程で得た再生細骨材A 5kgを、容積20Lのプラスチック製ボトル内に配置し、ボトル内を20℃の水で満たした。水のpHを(株)東興化学研究所のガラス電極式水素イオン濃度指示計(TPX-999Si)で測定したところ、pH11.1であった。
ボトルの底面に達する管を用いて、ボトル内に100%濃度の炭酸ガスを吹き込んでバブリングした。水のpHが6.8に達した時点でバブリング処理を終了し、1時間静置後に、改質再生細骨材を得た。水のpHが6.8に達するまでの時間は、約2分間であった。
処理後の改質再生細骨材の粒径を第1工程で得た再生細骨材と同様にして測定したところ、粗粒率2.45であった。
【0058】
(再生細骨材の評価)
1.粒度
実施例1~実施例3の製造方法で得た改質再生細骨材の粒度を第1工程で得た再生細骨材と同様にして測定し、粗粒率を求めた。
【0059】
2.絶乾密度及び吸水率
比較例1、実施例1~実施例3の製造方法で得た再生細骨材A及び炭酸化処理した改質再生細骨材の絶乾密度及び吸水率をJIS A 1109(2020年)に準拠して測定した。
【0060】
3.細骨材中の炭酸カルシウム含有量
熱分析装置TG-DTA(リガク社製 Thermo plus EVO2 TG-DTA8122)を用いて、600℃~800℃の減量から炭酸カルシウムの含有量を算定した。
【0061】
4.細骨材中の二酸化ケイ素含有量
再生細骨材を粉砕して試料を調製し、得られた試料を試薬特級の塩酸(濃度約35%)を容積比で1:4の割合で純水と混合したHCl(1+4)水溶液で溶解し、未溶解分を、さらに0.2N KOHで溶解し、得られた溶解液中のSiをICP発光分光分析装置で測定して、SiOgelの含有量を確認した。
ICP発光分光分析装置として、(株)日立ハイテクサイエンス、SPECTROBLUE(登録商標)EOPを用いた。
【0062】
各評価の結果を下記表1に示した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に明らかなように、炭酸化処理を行って得た改質再生細骨材は、炭酸化処理を行わない比較例1で得た再生細骨材Aに対し、絶乾密度が向上し、吸水率が低下していることが確認された。これは、改質再生細骨材における二酸化ケイ素の含有量が増加して好ましい範囲となったこと、さらには、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量がともに増加して、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量の双方が既述の好ましい範囲内となったためと考えられる。このことから、第2工程の炭酸化処理により、再生細骨材の物性が改善されたことがわかる。
実施例1で炭酸化処理に要した消費電力は、炭酸ガスの製造と、チャンバー内への炭酸ガスの供給に要する電力のみであり、例えば、特許文献1に記載のように、再生細骨材を100℃に加熱するために要する消費電力を考慮すれば、本開示の製造方法によれば、より低エネルギーで良質な改質再生細骨材を得られることが分かる。
【0065】
〔実施例4〕
(第2工程)
比較例2、即ち第1工程で得た再生細骨材B 5kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、10質%濃度の炭酸ガスで7日間処理し、改質再生細骨材を得た。
【0066】
〔実施例5〕
(第2工程)
比較例2、即ち第1工程で得た再生細骨材B5kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、50%濃度の炭酸ガスで7日間処理し、改質再生細骨材を得た。
【0067】
比較例2、実施例4及び実施例5の製造方法で得た再生細骨材を、実施例1と同様にして評価した。
各評価の結果を下記表2に示した。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に明らかなように、炭酸化処理を行って得た改質再生細骨材は、炭酸化処理を行わない比較例2で得た再生細骨材Bに対し、絶乾密度が向上し、吸水率が低下していた。これは、改質再生細骨材における二酸化ケイ素の含有量が増加して好ましい範囲となったこと、さらには、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量がともに増加して、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量の双方が既述の好ましい範囲内となったためと考えられる。
また、実施例4と実施例5との対比より、炭酸化処理において、より高濃度の50%炭酸ガスを用いた実施例5は、10%濃度の炭酸ガスを用いた実施例4よりも、絶乾密度がより高く、吸水率がより低くなっていることがわかる。
【0070】
〔比較例4〕
比較例3、即ち第1工程で得た再生細骨材C 4kgを、転動ミル内に格納し、3分間転動することで、機械的すりもみ処理を行った。転動ミルは、(株)マツ・コウケンのMK-ARM7100型(商品名)を用いた。
【0071】
〔実施例6〕
(第2工程)
比較例3、即ち第1工程で得た再生細骨材C 5kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、5%濃度の炭酸ガスで7日間処理し、改質再生細骨材を得た。
【0072】
〔実施例7〕
(第2工程)
比較例3、即ち第1工程で得た再生細骨材C 5kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、5%濃度の炭酸ガスで7日間処理し、改質再生細骨材を得た。
その後、比較例4と同様にして、得られた改質再生細骨材に対し、機械的すりもみ処理を3分間行った。
【0073】
比較例3、比較例4、実施例6及び実施例7の製造方法で得た再生細骨材を、実施例1と同様にして評価した。
各評価の結果を下記表3に示した。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に明らかなように、実施例6で炭酸化処理を行って得た改質再生細骨材は、炭酸化処理を行わない比較例3で得た再生細骨材Cに対し、絶乾密度が向上し、吸水率が低下していた。これは、改質再生細骨材における二酸化ケイ素の含有量が増加して好ましい範囲となったこと、さらには、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量がともに増加して、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量の双方が既述の好ましい範囲内となったためと考えられる。
また、実施例6と同様にして得た改質再生細骨材に機械的すりもみ処理を行った実施例7では、実施例6と比較して、機械的すりもみ処理により、絶乾密度がより高く、吸水率がより低くなっていることがわかる。これにより、任意の第3工程である機械的すりもみ処理により、得られる改質再生細骨材の物性がより良好になることが分かる。
他方、比較例3で得た再生細骨材に、機械的すりもみ処理を行っても、絶乾密度は改善されず、吸水率も殆ど改善されなかった。このことから、機械的すりもみ処理は、炭酸化処理である第2工程後に実施することより、改質再生細骨材の物性をより向上させるのに有効であると考えられる。
【0076】
〔比較例5〕
(第1工程)
建物の解体時に発生したコンクリート塊を40mmアンダーに破砕した。
得られた40mmアンダーの破砕物をさらに破砕して、開孔部5mmのふるいで分級し、5mm以上の再生粗骨材(比較例1:粗粒率6.69、吸水率:4.69%)を得た。
【0077】
〔実施例8〕
(第2工程)
比較例5、即ち第1工程で得た再生粗骨材10kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、10%濃度の炭酸ガスで7日処理し、改質再生粗骨材を得た。
処理後の改質再生粗骨材の粒度を第1工程で得た再生粗骨材と同様にして測定したところ、粗粒率6.68であった。
【0078】
〔実施例9〕
(第2工程)
比較例5、即ち第1工程で得た再生粗骨材10kgを、密閉空間(容積850Lのチャンバー)に配置し、10%濃度の炭酸ガスで14日間処理し、改質再生粗骨材を得た。
処理後の改質再生粗骨材の粒度を第1工程で得た再生粗骨材と同様にして測定したところ、粗粒率6.67であった。
【0079】
(再生粗骨材の評価)
比較例5、実施例8及び実施例9の再生粗骨材を、実施例1の再生細骨材と同様にして評価した。結果を下記表4に示した。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に明らかなように、炭酸化処理を行って得た実施例8及び実施例9の改質再生粗骨材は、炭酸化処理を行わない比較例5で得た再生粗骨材に対し、絶乾密度が向上し、吸水率が低下していた。これは、改質再生粗骨材における二酸化ケイ素の含有量が増加して好ましい範囲となったこと、さらには、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量がともに増加して、炭酸カルシウムの含有量及び二酸化ケイ素の含有量の双方が既述の好ましい範囲内となったためと考えられる。また、実施例8と実施例9との対比より、炭酸化処理において、14日間炭酸ガス処理を行った実施例9は、7日間炭酸ガス処理を行った実施例8よりも、絶乾密度がより高く、吸水率がより低くなり、炭酸カルシウム及び二酸化ケイ素の含有量もより多くなっていることがわかる。