(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182476
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B25J15/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096100
(22)【出願日】2022-06-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和3年8月4日に、橋本雅弘が主催した株式会社ミスミとのWeb会議 2.令和3年11月25日に、株式会社西日本エフエムにて商談 3.令和3年12月21日に、有限会社橋本鋼業にて商談 4.令和4年1月21日に、株式会社ミスミに対してサンプルを発送 5.令和4年5月17日に、株式会社トーハラにサンプルの提供 6.令和4年5月17日に、株式会社マイティミズタニにて商談 7.令和4年5月25日に、株式会社トーハラにて商談 8.令和4年6月1日に、太平洋工業株式会社にて運用試験を実施
(71)【出願人】
【識別番号】522238479
【氏名又は名称】有限会社橋本鋼業
(71)【出願人】
【識別番号】522238480
【氏名又は名称】株式会社西日本エフエム
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅弘
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707CY13
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET03
3C707EU09
3C707EV07
3C707EV10
3C707HS14
3C707LV22
3C707MT05
(57)【要約】
【課題】対象物に対する把持安定性が高く、且つ安価に製造することができるグリッパを提供する。
【解決手段】把持型のグリッパ1であって、対象物を挟む一対の指部230,240を備え、前記指部の一方230は、所定の間隔を維持した状態で並行移動する複数の板状体231,232を有し、前記指部の他方240は、前記複数の板状体231,232の間に向かって移動する板状体241を有する、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持型のグリッパであって、
対象物を挟む一対の指部を備え、
前記指部の一方は、並行移動する複数の板状体を有し、
前記指部の他方は、前記複数の板状体に向かって移動する板状体を有する、
ことを特徴とする、グリッパ。
【請求項2】
前記指部の一方が有する複数の板状体は、所定の間隔を維持した状態で並行移動し、
前記指部の他方が有する板状体は、前記複数の板状体の間に向かって移動する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のグリッパ。
【請求項3】
前記指部の一方の板状体および前記指部の他方の板状体は、金属板のレーザー切断加工により形成されたことを特徴とする、請求項1に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記他方の指部は、前記対象物に接触する揺動体を有し、
前記揺動体は、前記他方の指部が備える板状体に対して揺動可能に軸支されていることを特徴とする、請求項1に記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動生産におけるロボットの使用が広まるにつれて、ロボットによる対象物ハンドリングは広く用いられるようになった。例えば、工作機械によって対象物の加工が行われる場合には、工作機械の加工位置までロボットの動作によって対象物が運ばれる。そして、エンドエフェクタの動作によって工作機械に対して対象物の受け渡しが行われる。
【0003】
ここで、特許文献1には、エンドエフェクタである把持型のグリッパが記載されている。当該グリッパは一対の腕部を有しており、腕部の各々はリンク構造を介して、軸部材の先端部に接続されている。当該軸部材の押し行程によって、一対の腕部は把持動作を行い、軸部材の引き行程によって、一対の腕部は開放動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、対象物ハンドリングが広く用いられるようになった結果、対象物に対する把持安定性が高く、且つ安価なエンドエフェクタが求められるようになった。しかしながら、上記特許文献1に記載の把持型グリッパは、その先端に形成された接触面で対象物に接触するため把持安定性は高いものの、接触面を形成するためには、鋼材を削り出して製造する必要があるため、安価に製造することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、対象物に対する把持安定性が高く、且つ安価に製造することができるグリッパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、把持型のグリッパであって、対象物を挟む一対の指部を備え、前記指部の一方は、並行移動する複数の板状体を有し、前記指部の他方は、前記複数の板状体に向かって移動する板状体を有する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、前記指部の一方が有する複数の板状体は、所定の間隔を維持した状態で並行移動し、前記指部の他方が有する板状体は、前記複数の板状体の間に向かって移動する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記指部の一方の板状体および前記指部の他方の板状体が、金属板のレーザー切断加工により形成されたことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記他方の指部が、前記対象物に接触する接触部材を有し、
前記接触部材は、前記他方の指部が備える板状体に対して揺動可能に軸支されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象物に対する把持安定性が高く、且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るグリッパの斜視図
【
図5】(a)上記グリッパが備える一方の回転指を構成する板状体の側面図、(b)他方の回転指を構成する板状体の側面図
【
図6】本発明の第2実施形態に係るグリッパの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態に係るグリッパを説明する。
図1乃至
図4に示すように、本実施形態に係るグリッパ1は、工作機械の加工位置までワーク(対象物)を搬送するマニピュレータに取り付けられるエンドエフェクタであって、エアシリンダ10とグリッパ本体20を備える。
【0015】
エアシリンダ10は、グリッパ本体20を動かすために用いられる動力機構であって、マニピュレータの先端に設けられた取付面に取り付けられている。当該エアシリンダ10の給排気口11a,11bはホースを介して電磁弁に接続されている。当該電磁弁にはコンプレッサーから出力された圧縮空気が供給される。電磁弁は、更に、制御装置に接続されており、当該制御装置による制御によって給排気口11a,11bに対する圧縮空気の供給方向が切り替えられる。エアシリンダ10が有するピストンロッド12は、供給された圧縮空気に応じて、押し行程および引き行程が切り替えられる。
【0016】
上記エアシリンダ10にグリッパ本体20が取り付けられている。グリッパ本体20は、グリッパ1の掌として機能するベース部210と、グリッパ1の動力伝達機構として機能する直動ジョイント220と、グリッパ1の指として機能する一対の回転指230,240と、を備えている。
【0017】
ベース部210は、一対の回転指230,240を軸支する固定部材であり、エアシリンダ10のケーシング13に対してボルト15により固定されている。当該ベース部210は、ピストンロッド12の両側に設けられた一対の金具211a,211bを備えている。当該金具211a,211bの各々は、プレート部212a,212bと、一対の軸支部213a,213b,214a,214bと、により構成されている。プレート部212a,212bは、ピストンロッド12の側方に配置され、ケーシング13の前面に沿って延出する薄板状に形成されている。当該プレート部212a,212bの両端部には貫通穴が形成されており、当該貫通穴を介して上記ボルト15がケーシング13に取り付けられる。これにより、プレート部212a,212bはエアシリンダ10に固定される。このプレート部212a,212bの両端部から、ピストンロッド12の押し方向に向かって垂直に一対の軸支部213a,213b,214a,214bが延出している。すなわち、金具211a,211bは、プレート部212a,212bの一端部から延出する一の軸支部213a,213bと、プレート部212a,212bの他端部から延出する他の軸支部214a,214bと、を備えている。一対の金具211a,211bは、一の軸支部213a,213b同士が対向し、他の軸支部214a,214b同士が対向するようにエアシリンダ10に固定される。また、一の軸支部213a,213bの間には軸216(以下、「第一軸216」という。)が取り付けられ、当該第一軸216と平行な軸217(以下、「第二軸217」という。)が他の軸支部214a,214bの間に設けられている。
【0018】
直動ジョイント220は、エアシリンダ10のピストンロッド12の先端部12aに取り付けられており、エアシリンダ10による駆動力を一対の回転指230,240へと伝達する動力伝達機構として機能する部材である。当該直動ジョイント220は、コ字状に形成されており、取付部221と、一対の軸支部222,223と、により構成されている。取付部221はピストンロッド12の先端部12aに取り付けられる部分であり、ピストンロッド12の側方に向かって(一対の金具211a,211bに向かって)平板上に延在している。当該取付部221の両端部からピストンロッド12の押方向に向かって一対の軸支部222,223が延出している。当該一対の軸支部222,223の間には軸224(以下、「第三軸224」という。)が設けられている。
【0019】
上記ベース部210の第一軸216及び第二軸217に対して、上記直動ジョイント220の第三軸224は平行に設けられている。また、正面視において、第一軸216ないし第三軸224の一端を支持する各軸支部213a,214a,222は互いに直列的に設けられており、第一軸216ないし第三軸224の他端を支持する各軸支部213b,214b,223は互いに直列的に設けられている。
【0020】
一対の回転指230,240は、直動ジョイント220からの駆動力によって回転運動し、対象物に接触する。回転指の一方230は、第二軸217および第三軸224に軸支され、平行に配置された2つの板状体231,232を有している。当該板状体231,232は、鋼板などの金属板をレーザー切断加工によって形成されたものであり、
図5(b)に示すように、第二軸217に軸支される固定端部231a,232aと、第三軸224に軸支される被駆動端部231b,232bと、固定端部231a,232aと被駆動端部231b,232bの間に介在する介在部231c,232cと、介在部231c,232cから前方(ピストンロッド12の押方向)に延出する延出部231d,232dと、延出部231d,232dの先端に形成され、対象物に接触する接触部231e,232eと、から構成されている。
【0021】
図1乃至
図4に示すように、回転指の他方240は、第一軸216および第三軸224に軸支された板状体241を有している。当該板状体241も、上記一方の回転指230の板状体231,232と同様に、鋼板などの金属板をレーザー切断加工によって形成されたものであり、
図5(a)に示すように、第一軸216に軸支される固定端部241aと、第三軸224に軸支される被駆動端部241bと、固定端部241aと被駆動端部241bの間に介在する介在部241cと、介在部241cから前方(ピストンロッド12の押方向)に延出する延出部241dと、延出部241dの先端に形成され、対象物に接触する接触部241eと、から構成されている。
【0022】
上記のように構成されるグリッパ1の解放動作を説明する。解放動作では、エアシリンダ10の押し行程が実施される。押し行程では、ピストンロッド12が押し出されることにより、直動ジョイント220が対象物に対して前進する。この際、一方の回転指230は第二軸217を中心として外側に向かって回転し、他方の回転指240は第一軸216を中心として外側に向かって回転する。これによって、一対の回転指230,240が開く方向に作動するので対象物が解放される。
【0023】
次に、グリッパ1の把持動作を説明する。把持動作では、エアシリンダ10の引き行程が実施される。引き行程では、ピストンロッド12が引き込まれることにより、直動ジョイント220が対象物に対して後退する。この際、一方の回転指230は第二軸217を中心として内側に向かって回転し、他方の回転指240は第一軸216を中心として内側に向かって回転する。これによって、一対の回転指230,240が閉じる方向に作動するので対象物が拘束される。
【0024】
ここで、本実施形態では、第三軸224の中央に他方の回転指240の被駆動端部241bが配置され、当該被駆動端部241bを挟み込む態様で一方の回転指230の被駆動端部231b,232bが配置されている。すなわち、一方の回転指230が有する一対の板状体231,232の間に、他方の回転指240の板状体241が配置される態様で、これらの板状体231,232,241が第三軸224に軸支されている。
【0025】
また、第二軸217の中央には、板状体231,232,241の厚みと同じ幅のスペーサ225が配置されており、当該スペーサ225の両側に一対の板状体231,232(一方の回転指230)の固定端部231a,232aが配置されている。また、第一軸216の中央には、板状体241(他方の回転指240)の固定端部241aが配置されており、その両側にスペーサ218が配置されている。
【0026】
したがって、グリッパ1の把持動作においては、一方の回転指230を構成している一対の板状体231,232は、所定の間隔(他方の回転指240の板状体241の板厚)を維持した状態で内側に向かって並行回転する。また、他方の回転指240を構成している板状体241は、一方の回転指230の間に向かって内側に回転する。
【0027】
本実施形態のグリッパ1は、一対の回転指230,240が板状体231,232,241により構成されているので、従来のグリッパの指に比べると安価に製造することができる。また、一方の回転指230を構成している一対の板状体231,232と、他方の回転指240を構成している板状体241が互い違いに対象物に接触することとなるので、対象物が外力を受けたときに接触部231e,232e,241eが滑りにくく、対象物と常に接触状態を保つことができ、把持安定性を維持することができる。さらに、一方の回転指230については、2つの板状体231,232の間に隙間を設けることで、上記把持安定性を維持するとともに軽量化を実現している。さらにまた、このような回転指230,240を板状体231,232,241で構成することで、加工も容易であり、コンパクトな設計も容易である。
【0028】
さらに、一対の回転指230,240を構成する板状体231,232,241は、鋼板をレーザー切断加工することによって形成されているので、レーザー照射によって生じた発熱により接触部231e,232e,241eに焼き加工を加えることができ、耐久性を向上させることができる。また、切断加工と焼き加工を同時に加えることができるので製造効率が良い。
【0029】
[第2実施形態]
【0030】
第2実施形態にかかるグリッパ2は、エアシリンダ10およびグリッパ本体20を備えている点で第1実施形態と共通している。一方で、
図6に示すように、本実施形態に係るグリッパ2は、他方の回転指240の延出部241dの先端部に揺動体250を備える点で第1実施形態とは異なっている。以下、第1実施形態と異なる構成(揺動体250)を具体的に説明することとし、第1実施形態と共通する構成については説明を適宜省略する。
【0031】
揺動体250は、延出部241dの先端部に設けられた軸251に軸支され、当該軸251の周り(ピストンロッド12の押方向および引方向、以下「前後方向」ともいう。)に揺動可能な接触部材である。当該揺動体250は、軸251の両端に吊り下げられた一対の被軸支部252,253と、一対の被軸支部252,253の先端同士を繋ぐように形成された接触部254と、を備えている。接触部254と延出部241dの先端部の間にはわずかな隙間が設けられている。接触部254の表面には凹凸が形成されており、当該凹凸が対象物に接することとなる。なお、このように揺動体250が対象物に接触することとなるので、本実施形態における他方の回転指240の板状体241には、接触部241eが形成されていない。
【0032】
第2実施形態に係るグリッパ2は、揺動体250の接触部254と、一方の回転指230の接触部231e,232eが対象物を挟み込む態様で把持する。ここで、揺動体250が前後に揺動することで、揺動体250の接触部の接触角度が対象物の外面に沿って整合することとなる。よって、対象物の把持安定性を向上させることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態の態様に限定されず、下記の変形態様であっても構わない。
【0034】
[変形例1]
上記実施形態はエアシリンダ10を用いているが、油圧シリンダであっても構わない。また、シリンダに限定されず、直動ジョイント220を前後に移動させるアクチュエータを用いても構わない。
【0035】
[変形例2]
ベース部210の態様は第1実施形態に限定されず、第三軸224に対して平行に設けられた第一軸216および第二軸217を軸支する態様であればよい。
【0036】
[変形例3]
また、一方の回転指230は2つの板状体231,232に限定されず。所定の間隔を開けて配置された3つ以上の板状体を備えても構わない。当該態様において、他方の回転指240は、一方の回転体230の複数の板状体の隙間に向かって並行回転する2つの板状体を備えても構わない。
【0037】
[変形例4]
上記実施形態は、把持型のグリッパであって、回転指をもつグリッパ(角度開閉グリッパ)を例に説明しているが、本発明は互いに並行に動く並進指をもつグリッパ(平行グリッパ)に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1,2 グリッパ
230,240 一対の回転指(指部)
231,232 一方の回転指の複数の板状体
241 他方の回転指の板状体
250 揺動体