(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182484
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】安全装置、および、安全装置を備えた飛行体
(51)【国際特許分類】
B64D 17/80 20060101AFI20231219BHJP
B64D 17/72 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B64D17/80
B64D17/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096126
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】西尾 建佑
(72)【発明者】
【氏名】中村 博
(57)【要約】
【課題】パラシュートなどの射出物の表面と収容器の内壁面との間の摩擦を従来よりも低減させて、パラシュートなどの射出物を正常に射出可能な安全装置、および、当該安全装置を備えた飛行体を提供する。
【解決手段】安全装置は、アクチュエータ1と、アクチュエータ1により一方向に押し上げられる押し上げ部材15と、押し上げ部材15の支持部20により支持されつつ押し上げられる射出物16と、押し上げ部材15と射出物16とを内部に収容する収容器18と、を備える。収容器18の周壁部18aの内壁部には、複数の凸部18a1と、複数の凹部(溝部)18a2と、を備えている。凸部18a1は、長手方向が押し上げ部材15に接続されているピストン部材の摺動方向に沿うように設けられている。また、凸部18a1は、断面形状が、半円形を含む波線形状で形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動部材と、
前記摺動部材を一方側に摺動させる駆動力を発生する動力源を有したアクチュエータと、
前記摺動部材の前記一方側に設けられ、初期状態において射出物を支持する支持部と、
前記摺動部材、前記アクチュエータ、前記支持部、および前記射出物を少なくとも内部に収容する収容器と、
を備え、
前記収容器の内壁部には、前記摺動部材の摺動方向に沿って形成された線状の凸部が周方向に複数並設されているとともに、前記複数の凸部が設けられることによって前記凸部間に凹部が設けられ、
前記凸部の各先端部は前記射出物を支持しており、
前記射出物と前記凹部の底部を含む少なくとも一部との間には、空間が形成されていることを特徴とする安全装置。
【請求項2】
前記凸部に角部が含まれる場合、前記角部は、丸くする加工がされていることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記凸部は、断面が三角形、四角形、台形、および半円形の細長い線状部であることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項4】
前記飛行体または周囲環境の異常を検出可能な異常検出装置をさらに備え、
前記異常検出装置は、前記異常を検出した場合に前記アクチュエータを起動させることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項5】
前記異常検出装置により前記異常を検出した場合、前記飛行体に設けられた推進装置を停止させる飛行制御部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の安全装置。
【請求項6】
別の収容器と、前記別の収容器に収容されたパラシュートと、をさらに備え、
前記射出物が、パイロットシュートであり、
前記パイロットシュートは接続部材を介して前記パラシュートに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項7】
前記射出物が、捕獲用または捕縛用の網状部材、消火剤、救命具、および医薬品のうちいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項8】
機体と、
前記機体に設けられる請求項1~7のいずれか1項に記載の安全装置と、
前記機体に結合され、前記機体を推進させる1つ以上の推進機構と、を備えることを特徴とする飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラシュート又はパラグライダー等の射出物を射出する安全装置、および、当該安全装置を備えた飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律制御技術および飛行制御技術の発展に伴って、例えばドローンと呼ばれる複数の回転翼を備えた飛行体の産業上における利用が加速しつつある。ドローンは、例えば複数の回転翼を同時にバランスよく回転させることによって飛行し、上昇および下降は回転翼の回転数の増減によって行い、前進および後進は回転翼の回転数の増減を介して機体を傾けることによって成し得る。このような飛行体は今後世界的に拡大することが見込まれている。
【0003】
一方で、上記のような飛行体の落下事故のリスクが危険視されており、飛行体の普及の妨げとなっている。こうした落下事故のリスクを低減するために、安全装置として飛行体用パラシュート装置が製品化されつつある。
【0004】
たとえば、上記パラシュート安全装置の一例として、たとえば特許文献1には、開口部を有するコンテナ(収容器)と、パラシュートと、コンテナの内部空間を燃焼室とパラシュートを収納するための収納室に分割するためのプラグと、少なくとも1つの火工ガス発生器と、を備えているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような装置において、コンテナ(収容器)の内壁面には、パラシュートの表面が接触しており、当該パラシュートの射出時に、パラシュート表面とコンテナ(収容器)の内壁面との間に摩擦(摺動抵抗)が発生する。したがって、射出時において、当該摩擦(摺動抵抗)によって、パラシュートをうまく射出できなかったり、パラシュートの射出威力が弱まったりすることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、パラシュートなどの射出物の表面と収容器の内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を従来よりも低減させて、パラシュートなどの射出物を正常に射出可能な安全装置、および、当該安全装置を備えた飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明は、摺動部材と、前記摺動部材を一方側に摺動させる駆動力を発生する動力源を有したアクチュエータと、前記摺動部材の前記一方側に設けられ、初期状態において射出物を支持する支持部と、前記摺動部材、前記アクチュエータ、前記支持部、および前記射出物を少なくとも内部に収容する収容器と、を備え、前記収容器の内壁部には、前記摺動部材の摺動方向に沿って形成された線状の凸部が周方向に複数並設されているとともに、前記複数の凸部が設けられることによって前記凸部間に凹部が設けられ、前記凸部の各先端部は前記射出物を支持しており、前記射出物と前記凹部の底部を含む少なくとも一部との間には、空間が形成されていることを特徴とする。
【0009】
(2) 上記(1)の安全装置においては、前記凸部に角部が含まれる場合、前記角部は、丸くする加工がされていることが好ましい。
【0010】
(3) 上記(1)の安全装置においては、前記凸部は、断面が三角形、四角形、台形、および半円形の細長い線状部であることが好ましい。
【0011】
(4) 上記(1)の安全装置においては、前記飛行体または周囲環境の異常を検出可能な異常検出装置をさらに備え、前記異常検出装置は、前記異常を検出した場合に前記アクチュエータを起動させることが好ましい。
【0012】
(5) 上記(4)の安全装置においては、前記異常検出装置により前記異常を検出した場合、前記飛行体に設けられた推進装置を停止させる飛行制御部をさらに備えることが好ましい。
【0013】
(6) 上記(1)の安全装置においては、別の収容器と、前記別の収容器に収容されたパラシュートと、をさらに備え、前記射出物が、パイロットシュートであり、前記パイロットシュートは接続部材を介して前記パラシュートに接続されていることが好ましい。
【0014】
(7) 上記(1)の安全装置においては、前記射出物が、捕獲用または捕縛用の網状部材、消火剤、救命具、および医薬品のうちいずれか1つ以上であることが好ましい。
【0015】
(8) 本発明に係る飛行体は、機体と、前記機体に設けられる上記(1)~(7)のいずれか1つの安全装置と、前記機体に結合され、前記機体を推進させる1つ以上の推進機構と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パラシュートなどの射出物の表面と収容器の内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を従来よりも低減させて、パラシュートなどの射出物を正常に射出可能な安全装置、および、当該安全装置を備えた飛行体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る安全装置の初期状態を示す断面図である。
【
図2】
図1の安全装置から蓋部を取り外した状態を示した平面図である。
【
図3】
図1の安全装置に用いられる収容器の内壁面の凹凸部の変形例を示す図である。
【
図4】
図1の安全装置(初期状態)が取り付けられた飛行体を示す模式図である。
【
図5】
図1の安全装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る安全装置の初期状態を示す断面図である。
【
図7】
図6の安全装置から蓋部およびパラシュートを取り外した状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る安全装置および飛行体について、
図1~
図5を参照しながら説明する。
【0019】
図1に示すように、安全装置100は、アクチュエータ1と、アクチュエータ1により一方向(
図1では上方向)に押し上げられる押し上げ部材15と、当該押し上げ部材15により支持されつつ押し上げられる射出物16と、アクチュエータ1、押し上げ部材15、および射出物16を収容する有底円筒状の収容器18と、収容器18の開口端部を閉塞する蓋部21と、を備えている。なお、本実施形態において、射出物16はパラシュート又はパラグライダー等の被展開体である。また、収容器18と蓋部21との間の隙間には、閉塞部材60が設けられており、液体又は粉塵などが侵入しないようになっている。この閉塞部材60の例としては、防水・防塵機能を有したものであれば、どのようなものでもよく、たとえば、O-リング、樹脂を硬化させたもの、フォーム材などが挙げられる。また、閉塞部材60の一変形例として、フィルム状部材でのラッピングによって、少なくとも蓋部21の縁と収容器18の側部とを覆うようなものであってもよい。
【0020】
なお、本実施形態において用いることが可能な被展開体の一例であるパラシュートは、たとえば、「フラットサーキュラー(FLAT CIRCULAR)」、「コニカル(CONICAL)」、「バイコニカル(BICONICAL)」、「トリコニカル(TRICONICAL)」、「エクステンドスカート(EXTENDED SKIRT)」、「ヘミスフェリカル(HEMISPHERICAL)」、「ガイドサーフェス(GUIDE SURFACE)」、「アニュラー(ANNULAR)」、「クロス(CROSS)」、「フラットリボン(FLAT RIBBON)」、「コニカルリボン(CONICAL RIBBON)」、「リボン(RIBBON)」、「リングスロット(RINGSLOT)」、「リングセイル(RING SAIL)」、「ディスク-ギャップ-バンド(DISC-GAP-BAND)」、「ロタフォイル(ROTAFOIL)」、「ヴォアテックスリング(VORTEX RING)」、「サンディアRFD(SANDIA RFD)」、「パラコマンダー(PARACOMMANDER)」、「パラウイング(PARAWING)」、「パラフォイル(PARAFOIL)」、「セイルウイング(SAILWING)」、「ヴォルプレーン(VOLPLANE)」「バルート(BALLUTE)」、などと呼ばれるものが挙げられる。
【0021】
アクチュエータ1は、摺動部材であるピストン部材10と、当該ピストン部材10を収容し、作動時に当該ピストン部材10が外方(
図1では上方向)に突出するための孔部13が設けられたシリンダ14と、シリンダ14の一端部がかしめ固定され、収容器18内部の底部中央の穴部25を介して取り付けられる基台2(スクイブホルダ)と、ピストン部材10をシリンダ14内で移動させる動力源としてのガス発生器(マイクロガスジェネレータ等)17と、を備えている。
【0022】
基台2は、ピストン部材10を摺動させる動力を発生するガス発生器17をシリンダ14側において保持する略筒状部材2Aと、略筒状部材2Aのシリンダ14側と反対側に設けられたフランジ部2Bと、を備えている。
【0023】
フランジ部2Bは、収容器18に取り付けるために用いられる複数の穴部2aと、後述する飛行体30の機体31に取り付けるために用いられる複数の固定用穴部(図示せず)と、ガス発生器17の下部の電極17bに通電用のコネクタ22を嵌挿するために用いられる挿入口2cと、を備え、略U字状の略馬蹄形状(図示せず)に加工されたものである。穴部2aの内壁には、雌ねじが切られており、後述するボルト28が螺合するようになっている。また、上記固定用穴部(図示せず)の内壁にも雌ねじが切られており、後述する飛行体30に機体31側からボルト(図示せず)が螺合し、基台2を機体31に固定できるようになっている。
【0024】
コネクタ22は、挿入口2cを介して略筒状部材2A内に挿入可能な本体部22aと、本体部22a下部の側面から突出している突起部(図示せず)と、略筒状部材2A内に位置する電極17bが嵌挿される穴部22cと、を備えている。上記突起部(図示せず)は、コネクタ22の挿入方向と垂直な方向に向けて(基台2に取り付けた場合、基台2の中心から径方向沿って)延設された配線(図示せず)を介して、外部電源と接続されるコネクタ(図示せず)と電気的に接続されている。また、本体部22aは、電極17bおよび上記突起部(図示せず)に接続された上記配線(図示せず)の両方に電気的に接続される穴部22cが内部に設けられている。
【0025】
また、基台2の挿入口2cとコネクタ22とは、上記配線(図示せず)が穴部24を塞がないように配設できるように、基台2に取り付けた場合、基台2の中心から径方向沿って延設される状態となるように構成されている。
【0026】
ピストン部材10は、シリンダ14の内径とほぼ同じ外径の部分を備える本体部10aと、この本体部10aに接続され、上方に延びかつ本体部10aよりも小径の棒状部10bと、本体部10aおよび棒状部10bの内部に設けられた穴部10cと、棒状部10bの上端部に設けられた雌ねじ部10dと、本体部10aの周方向に設けられた溝部10eと、を有している。
【0027】
棒状部10bの少なくとも上端部側は、図示しないが、断面が非円形状に形成されている。ここで、非円形状とは、たとえば、多角形状、楕円形状、星型形状、または、歯車形状、などのことであるが、非円形状であれば、どのような形状のものでも含まれる。また、棒状部10bの下部において、本体部10aに一端部が接触した状態で、管状部材4が嵌設または遊嵌されている。なお、管状部材4の内壁と棒状部10bの外壁との間は、隙間があってもよいが、その隙間としては、後述する衝突時の略均一な圧縮による塑性変形を妨げない程度以内のものであればよい。
【0028】
管状部材4は、
図1に示したように、保持部材5によって、棒状部10bの下部に、一端部が本体部10aに接触した状態で保持されている。また、管状部材4は、塑性変形する材料であるとともに、引張強度がピストン部材10および後述のストッパー部材23(たとえば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅などの金属、ステンレス、などの合金、樹脂、など)よりも低い材料(たとえば、アルミニウム、真鍮、などの金属、ステンレスなどの合金、モノマーキャストナイロン、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6などのポリアミド合成樹脂などの樹脂、など)からなる。ここで、保持部材5は、ゴムなどの弾性部材であってもよいし、管状部材4と同様の材料からなるものであってもよく、また、形状はリング状でもよいし、クリップ状であってもよい。
【0029】
また、管状部材4が、シリンダ14の内壁部に接触しないように、管状部材4とシリンダ14の内壁部とが所定距離(たとえば、ストッパー部材23に衝突した際に略均一な圧縮によって塑性変形した管状部材4が、シリンダ14の内壁部に接触しない距離)以上離間している。これらにより、管状部材4は、ストッパー部材23に衝突して塑性変形しても、シリンダ14の内壁部に阻害されることなく変形し、ピストン部材10の衝撃を十分に緩和する。
【0030】
穴部10cは、本体部10aの下端部から棒状部10bの途中まで、中心軸に沿って形成されている。これにより、穴部10cが形成されていない場合に比べて、ピストン部材10は軽量化されている。
【0031】
雌ねじ部10dは、棒状部10bの先端部から中心軸に沿って途中まで形成されている。また、雌ねじ部10dには、後述するボルト部材50の雄ねじ部50bを螺合することができる。
【0032】
溝部10eには、周方向にO-リングなどのシール部材11が設けられている。
【0033】
シリンダ14内の上部には、ピストン部材10の棒状部10bの一部を取り囲むように配置された略筒状のストッパー部材23が設けられている。すなわち、棒状部10bはストッパー部材23の孔部13に挿通された状態で配されている。また、シリンダ14には、作動時に、空間6内にある空気を外部に放出するための貫通孔14aが設けられている。なお、
図1において、貫通孔14aは2つしか設けていないが、周方向に複数設けられていてもよい。
【0034】
ストッパー部材23は、管状部材4の移動をシリンダ14内に制限するものであり、外周に沿って設けられた溝部23aと、内周に沿って設けられた溝部23bと、有している。溝部23aは、シリンダ14の他端部をストッパー部材23にかしめ固定するために用いられている。また、溝部23bには、周方向にO-リングなどのシール部材12が設けられている。
【0035】
シリンダ14は、アクチュエータ1のピストン部材10が何かしらの原因で不動となってしまった場合、且つ、アクチュエータ1の初期燃焼容積を小さくした場合に火薬が燃焼し、シリンダ14の耐圧値以上の燃焼圧力が生じた場合(異常事態時)において、シリンダ14の径方向に塑性変形できるように、材料の選定および外周部の肉厚の適宜調整がなされていてもよい。シリンダ14を構成する材料としては、たとえば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅などの金属、ステンレス、などの合金が挙げられる。これにより、上記異常事態時において、シリンダ14が径方向に塑性変形するので、O-リングなどのシール部材12のシール性能が低下(緩和)し、シール部材12とシリンダ14の内壁との間に、発生したガスが通過可能な隙間ができる。したがって、この隙間から、上記異常事態時に発生したガスを漏れ出させることで、当該ガスは、貫通孔14aからシリンダ14外部に放出された後、シリンダ14外壁と有底筒状部19内壁との隙間から収容器18内部を経て、ガス圧によって後述する封止部40(シール材)を破断させ、穴部24から収容器18外部に放出されることになるので、シリンダ14を破断しないようにすることができる(フェールセーフ機能)。なお、このフェールセーフ機能を有する場合、シリンダ14外壁と有底筒状部19内壁との間には、シリンダ14が径方向に十分に塑性変形できるような空間(隙間)が設けられている。
【0036】
ガス発生器17は、シリンダ14の下方の開口端に圧入された状態で、ピストン部材10の後述の本体部10aの下方に配置されている。また、ガス発生器17のカップ体17aの周囲には、ピストン部材10との間に所定距離を形成するための筒状部材3が設けられている。
【0037】
押し上げ部材15は、金属製(アルミニウムまたは鉄などで、合金であってもよい)、樹脂製、または、樹脂と金属、CFRPもしくは繊維強化樹脂などとの複合材などからなり、
図1に示すように、シリンダ14の一部、つまり当該シリンダ14のうちガス発生器17が配されている側の開口端付近を除く外側の部分を覆うように配置された有底筒状部19と、当該有底筒状部19の開口部にフランジ(鍔状部)として設けられ射出物16を支持する円盤状の支持部20と、を有している。
【0038】
有底筒状部19は、略平板形状または略柱形状(本実施形態では略柱形状)の底部19aと、底部19aの蓋部21側に形成された穴部51と、穴部51よりも径の小さい穴部52(第2穴部)と、穴部52を介して穴部51と連通し、穴部52よりも径の大きい穴部53(第1穴部)と、を有している。穴部51は、ボルト部材50のヘッド部50aの径よりも大きい径を有している。穴部52は、ヘッド部50aの径よりも小さい径を有し、穴部51側から挿入されたボルト部材50の雄ねじ部50bを穴部53側へ案内することができる。穴部53は、棒状部10bの一端部(上端部)の形状と略同一であり、有底筒状部19の底部19aのシリンダ14側に設けられた挿入用開口部53aから棒状部10bの一端部が挿入されることによって、棒状部10bの一端部が嵌合する嵌合部となっている。
【0039】
ボルト部材50は、雄ねじ部50bを、穴部51側から穴部52に挿入し、穴部53の嵌合した棒状部10bの雌ねじ部10dに螺合することによって、棒状部10bと押し上げ部材15とを連結するものである。このとき、棒状部10bの一端部は、非円形状であり、略同一形状の穴部53に嵌合しているので、ボルト部材50を雌ねじ部10dに螺合する際、棒状部10bが共回りすることがない。具体的には、押し上げ部材15とピストン部材10の先端部が非円形で嵌め合いになっているため、ボルト部材50で締結する際に、押し上げ部材15を固定しながら回すことができ、ピストン部材10がガス発生器17の方向に向かって締り、共回りすることなく、締め付けることができる。
【0040】
支持部20は、初期状態で収容器18の底部内面と離間して設けられている。また、支持部20には、作動時において射出物16の底部と支持部20との間で発生する負圧の影響を軽減して射出物16が射出されやすくするための穴部26を有している。また、支持部20の外周部は、収容器18の内側に接触しないように形成されている。また、支持部20の上面には、射出物16について有底筒状部19の周囲方向への移動を防止する移動防止部材27が少なくとも1つ(本実施形態では8部)設けられている。
【0041】
移動防止部材27は、樹脂製、または、樹脂と金属、CFRPもしくは繊維強化樹脂などとの複合材などからなる略三角形状の部材であり、有底筒状部19を中心として、回転対称となるように複数設けられている。また、これらの移動防止部材27の間ごとに穴部26が設けられている。ここで、一変形例として、移動防止部材27は、1つだけ設けられているものであってもよい。この場合でも、穴部26は、支持部20に複数設けられる。
【0042】
図1および
図2に示すように、収容器18は、周壁部18aと、底部18bと、を備えている。周壁部18aは、
図2に示すように、内壁部に、射出物16を支持する複数の凸部18a1と、射出物16との間に空間を有する複数の凹部(溝部)18a2と、を備えている。凸部18a1は、線状に形成されており、長手方向がピストン部材10の摺動方向に沿うように設けられている。また、凸部18a1は、断面形状が、半円形を含む波線形状で形成されている。なお、収容器18を形成する材料としては、ポリアミド(ナチュラル)またはポリアミド(カーボンガラスFRP)が好ましい。ポリアミド(ナチュラル)およびポリアミド(カーボンガラスFRP)どちらの材料も、静摩擦係数0.71、動摩擦係数0.08である。
【0043】
凹部(溝部)18a2は、隣り合う凸部18a1の間において、ピストン部材10の摺動方向に沿って形成されており、周壁部18aを研削することによって形成してもよいし(このとき、同時に凸部18a1も形成される。)、または、2つの凸部18a1を周壁部18aに所定距離を空けて隣り合うように接着することによって、形成してもよい。なお、凹部(溝部)18a2は、周壁部18aの内壁部に1つ以上設けられていればよい。また、凹部(溝部)18a2の底部に射出物16が接触しないように、凹部(溝部)18a2の開口部(隣り合う凸部18a1の頂点間の距離)の幅は、1mm~3mmであることが好ましい。これにより、凸部18a1で射出物16を支持することができるので、凸部18a1および凹部(溝部)18a2がない従来の凹凸のない曲面の周壁部の内壁面のみの場合と比べ、射出物16と周壁部18aの内壁面との接触面積を減少(たとえば50%以下に減少)させることができる。さらに確実に凹部(溝部)18a2の底部に射出物16が接触しないようにするには、凹部(溝部)18a2の深さを1mm以上(たとえば1mm~3mmの範囲以内)にすることが好ましい。
【0044】
ここで、凸部18a1および凹部(溝部)18a2の変形例について、
図3を参照して説明するが、凸部18a1および凹部(溝部)18a2の変形例は
図3に示したものに限られない。たとえば、凹部(溝部)が、凹部(溝部)の開口部(凸部間)で射出物を支持可能な幅で形成されていれば、どのような形状のものでもよい。なお、
図3(a)~(h)の各左側の図は、収容器の内側に接着して凸部および凹部(溝部)を構成する場合の部品の一部を示したもの(紙面左右方向途中から図示省略。)、
図3(a)~(h)の各右側の図は、研削加工して凸部および凹部(溝部)を構成した場合の収容器の内側の一部を示したもの(紙面左右方向途中から図示省略。収容器の厚み方向の一部も図示省略。)、である。また、
図3に示した変形例は、後述の第2実施形態および他の変形例にも適用可能である。
【0045】
図3に示した変形例の凸部は、断面形状が、台形(
図3(a)、(b)のような略台形を含む)、三角形(頂角が60°~120°(好ましくは90°)であることが好ましい。
図3(c)、(d)のような略三角形を含む。必ずしも二等辺三角形でなくてもよい。)、四角形(
図3(e)、(f)のような略四角形を含む)、半円形(
図3(g)、(h)のような略半円形を含む)のものを用いてもよい。また、
図3(a)~(f)に示したように、各凸部の角部は丸くする加工(いわゆるRと呼ばれる丸みを形成する加工)がされていることが好ましい。これにより、射出物16の当該角部への引っかかりを防止することができる。また、これらの
図3に示した形状のうち、単独種類を用いて形成してもよいが、複数種類を組み合わせて凸部および凹部(溝部)を形成してもよい。なお、本実施形態および変形例の凸部は、連続的に形成してもよいし、射出物16と周壁部18aの内壁面との接触面積が増加しないのであれば、断続的に形成してもよい。
【0046】
また、凹部(溝部)は、
図3に示した凸部間に形成されており、底部は鋭角部であってもよいし(
図3(b)、(d)参照)、平面部(
図3(f)、(h)参照)または曲面部(
図3(a)、(c)、(e)、(g)参照)であってもよい。
【0047】
図1に示すように、収容器18の底部18bには、収容器18内部と外部とを連通する複数の穴部24と、基台2が挿入される穴部25と、ボルト締結用の穴29と、が設けられている。また、
図1に示すように、収容器18の底部18bは、中央部が凹部になっており、この中央部と中央部の周囲とで少なくとも二段の階段形状を形成している。
【0048】
複数の穴部24それぞれの収容器18側には、封止部40(シール材)が貼付されている。このシール材は、作動時において、支持部20と収容器18の底部との間で発生する負圧によって破断するものであって、たとえばテープ状の部材である。なお、押し上げ部材15が収容器18内において急速で移動する際には、当該押し上げ部材15と収容器18の底面との間の領域に負圧が生じる。そのため、押し上げ部材15を移動させ難くなる。そこで、上記穴部24を設けることで、負圧現象を低減することができ、押し上げ部材15をスムーズに移動させることが可能となるが、作動前においては、収容器18内部への液体・粉塵などの侵入を防いで、射出物16の劣化・破損などを防止すべく、上述の封止部40(シール材)が設けられている。
【0049】
穴部25は、収容器18の底部の外側に位置する基台2のフランジ部2Bに設けられた穴部2aを、穴29を介してボルト28で収容器18の内側から締結固定することにより、閉口される。また、支持部20と収容器18内側の底面との距離を小さくすることで、射出物16の収容器18内側の底面への落下を防止している。
【0050】
射出物16は、収容器18内において当該収容器18の内面と押し上げ部材15の有底筒状部19の外側面との間に、たとえば有底筒状部19の外側面を取り巻くように収容されている。また、射出物16は、その外側が収容器18の周壁部18aの内壁面に接触した状態で折り畳まれているものである。なお、射出物16は、サスペンションライン(図示せず)を介して、後述の飛行体30の機体31または収容器18に取り付けられたブライドルライン(図示せず)の一端部に接続されている。ここで、一変形例として、射出物16は、縁部から中央方向に向かって蛇腹状(断面が波形状)に折り畳んだものであってもよいし、その他の折り畳み方でもよい。
【0051】
ここで、本実施形態における射出物16は、たとえば、パラシュートまたはパラグライダーである。パラシュートまたはパラグライダーの基布は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリイミド系、塩化ビニル系、ポリカーボネート系、アクリル系、およびポリオレフィン系の繊維のうち少なくとも1つの繊維を編み込んで形成されたものが好ましい。たとえば、1種類の繊維を編み込んで形成した布地を複数枚つなぎ合わせた基布としてもよいし、一の繊維を編み込んで形成した布地と他の繊維を編み込んで形成した布地とをつなぎ合わせた基布としてもよいし、複数種の繊維を編み込んで形成した基布であってもよい。また、パラシュートまたはパラグライダーの基布は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリイミド系、塩化ビニル系、ポリカーボネート系、アクリル系、もしくはポリオレフィン系の樹脂からなるフィルムのうち少なくとも1つのフィルムからなるものであってもよい。たとえば、1種類のフィルムを複数枚つなぎ合わせた基布としてもよいし、複数種のフィルムをつなぎ合わせた基布としてもよい。なお、上記布地または上記フィルムのつなぎ合わせは、圧着、接着剤などによる接着、縫合など、どのような手段によるものであってもよい。
【0052】
なお、ポリアミド系の繊維または樹脂の例としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,6などが挙げられる。また、ポリエステル系の繊維または樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。また、ポリイミド系の繊維または樹脂の例としては、芳香族ポリイミド、脂肪族ポリイミドなどが挙げられる。また、塩化ビニル系の繊維または樹脂の例としては、塩ビフィルム、ポリカーボネート系の繊維または樹脂の例としては、ポリカーボネートフィルム、アクリル系の繊維または樹脂の例としては、アクリルフィルム、ポリオレフィン系の繊維または樹脂の例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどがあげられる。前記基布は、例えばシリコーン、ポリウレタン等のコーティング剤でコーティングされていてもよい。
【0053】
ガス発生器17は、点火器のみ用いても良いし、点火器およびガス発生剤を備えたガス発生器を用いても良い。また、火薬式の点火器により小型のガスボンベにおける封板を開裂させ、内部のガスを外部へと排出するハイブリッド型、ストアード型のガス発生器を用いてもよい。この場合、ガスボンベ内の加圧ガスとしては、アルゴン、ヘリウム、窒素、二酸化炭素などの不燃性のガスあるいはこれらの混合物を用いることができる。また、加圧ガスが放出される際に確実にピストンを推進させるために、ガス発生剤組成物またはテルミット組成物等からなる発熱体をガス発生器に具備させてもよい。
【0054】
なお、主に、ピストン部材10、シリンダ14、押し上げ部材15、ガス発生器17、などで、射出物16を射出する射出部を構成している。
【0055】
また、安全装置100は、
図5の飛行体の模式図に示したように、飛行体30の機体31に基台2の固定用穴部(図示せず)を介して機体31側からボルト(図示せず)によって連結固定されている。このとき、
図5に示したように、基台2は、穴部24を閉塞しない位置において、収容器18と機体31とを連結している。したがって、飛行体30は、機体31と、当該機体31に結合される安全装置100と、機体31に結合され、当該機体31を推進させる1つ以上の推進機構(たとえばプロペラ等)32と、機体31の下部に設けられた複数の脚部33と、を備えている。
【0056】
また、基台2のフランジ部2Bが収容器18の底部の外側に設けられているので、基台2を飛行体30の機体31に直接取り付けることができる。これにより、作動時の反動は、収容器18を介してではなく、直接、機体31が受けることになるが、収容器18への作動時の影響を小さくすることができるので、基台2が収容器18の内部に設けられた場合に比べて、収容器18の底部の強度を小さくすることができる。すなわち、収容器18の底部の強度を従前よりも安全に低下させ(たとえば、収容器18の底部の厚みを安全な所定の厚みに低下させる設計として)、従来と同様の安全性を確保しながら、収容器18を全体として従来よりも軽量化することができる。また、収容器18の底面には段差が設けられているので、収容器18の底面の強度を、段差がない平坦なものに比べて強化することができる。
【0057】
また、安全装置100は、飛行体30の異常を検出する加速度センサ等を含む異常検出装置200(
図5では図示略)を備えている。
【0058】
ここで、異常検出装置200の機能的構成について説明する。異常検出装置200は、
図4に示すように、センサ(検知部)210と、制御部(CPU、ROM、RAM等を有するコンピュータ)220と、を備えており、射出部のガス発生器17内の点火器と、記憶部201と、飛行制御部202と、報知部203と電気的に接続されている。
【0059】
センサ210は、飛行体30の飛行状態(衝突、墜落などを含む)を検知するものである。具体的には、センサ210は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、気圧センサ、レーザーセンサ、赤外線センサ、単眼/複眼のビジョンセンサ、超音波センサ、電圧計、燃料計などから1以上選択されてなるセンサであり、飛行体30の速度、加速度、角加速度、傾き、高度、位置、飛行体30の飛行障害となりうる障害物など、飛行体30の飛行状態のデータ、周囲環境(障害物、地形、建物の形状など)のデータ、電源量、燃料量などのデータなど、を取得することができる。
【0060】
制御部220は、機能的構成として、異常検知部221と、演算部222と、通知部223と、を備えている。これらの異常検知部221、演算部222、および通知部223は、制御部220が所定のプログラムを実行することで機能的に実現されるものである。
【0061】
異常検知部221は、センサ210から受信した情報に基づいて上記周囲環境に関する異常状態を検知するだけでなく、飛行体30の飛行状態(飛行中に落下などの異常状態となっていないか)を検知するものである。つまり、異常検知部221は、センサ210および飛行体30が正常に動作可能であるか否かを検知する。例えば、異常検知部221は、飛行体30内部の人員の救急状態、飛行体30内部の機器の致命的な故障、飛行体30の電源が予め設定された所定値以下、飛行体30の燃料量が予め設定された所定値以下、飛行体30の加速度または角速度が所定値以上または所定値以下、飛行体30の姿勢角が所定値以上、飛行体30の降下速度が所定値以上、などを検知可能である。また、飛行体30が操作者によってコントローラを用いて操作されている場合、異常検知部221は、コントローラからの操作信号の消失または異常信号の受信を検知可能である。また、異常検知部221は、地上局からの信号の消失または異常信号の受信を検知可能である。
【0062】
演算部222は、センサ210が実測して取得した各データを基に、飛行体30の飛行状態が異常か否かを判定するものである。具体的には、演算部222は、センサ210により取得した各データと予め設定された各閾値とを比較することにより異常を判定する。また、演算部222は、センサ210からリアルタイムで障害物検知信号、距離検出信号、高度検出信号などを受信し、これらの受信した各信号に基づいて、異常を判定する。また、演算部222は、飛行体30の位置情報に基づいて、禁止区域への接近、侵入、または予定経路からの逸脱の判定を行う。
【0063】
また、演算部222は、飛行体30の飛行状態が異常であると判定した場合、異常信号(他の機器を起動または作動させる命令信号を含むこともある)を外部に出力するものである。なお、演算部222とは別に異常信号出力部を設け、演算部222の命令によって、この異常信号出力部が異常信号を出力するように構成してもよい。
【0064】
通知部223は、異常検知部221によりセンサ210および飛行体30の異常が検知された場合、異常が検知された旨の通知を管理者などに対して行うものである。
【0065】
記憶部201は、センサ210により取得した各データ、演算部222により異常が判定された場合の判定データなど各種データを保存可能なものである。
【0066】
飛行制御部202は、飛行体30の飛行姿勢を制御するものであり、演算部222により異常が判定された場合、飛行体30に設けられた推進装置(モータ等)を停止させることが可能なものである。
【0067】
報知部203は、演算部222により異常が判定された場合、周囲に異常を知らせることが可能なものである。例えば、報知部203は、音声発生装置(アラームなど)または/および照明装置(LEDなど)を作動させて、周囲に異常を報知するものである。
【0068】
以上のような構成において、安全装置100が搭載されるたとえば飛行体30などが落下する際に演算部222から異常信号を受信してガス発生器17が作動すると、
図1の初期状態から、当該作動により発生するガスの圧力によってピストン部材10がシリンダ14内を上方に推進する。これにより、ピストン部材10の棒状部10bに接続された有底筒状部19を有する押し上げ部材15が収容器18内において上方に推進(突出)する。これによって、蓋部21が外れ、収容器18の開口端部が開放されると共に、射出物16が収容器18内から外方(
図1の紙面の上方向)に射出される。また、押し上げ部材15の支持部20と収容器18の底面との間の領域に負圧が生じ、封止部40(シール材)が破断し、外気が穴部24外部から収容器18内部に流入する。続いて、ピストン部材10および管状部材4が上方に移動するが、管状部材4がストッパー部材23に衝突して停止する。そして、射出物16がパラシュート又はパラグライダーである場合には、射出物16は収容器18から射出された後、展開される。
【0069】
本実施形態によれば、凸部18a1および凹部18a2が形成されていることによって、パラシュートなどの射出物16の表面と収容器18の周壁部18aの内壁面との間の接触面積が、従来の平らな内壁面の場合とくらべて減少する。これにより、パラシュート表面と収容器の内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を従来よりも低減させることができる。その結果として、パラシュートなどの射出物が当該内壁面に引っかかることなどがなく、パラシュートなどの射出物を正常に射出することができる安全装置100、および、当該安全装置100を備えた飛行体30を提供することができる。
【0070】
また、パラシュートなどの射出物16の表面と収容器18の周壁部18aの内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を従来よりも低減させることができることにより、アクチュエータ1のガス発生器17における点火器(図示せず)の火薬の薬量を減らすことが可能となる。その結果として、ガス発生器17を小型化、引いてはアクチュエータ1を小型化することが可能となり、軽量化することができる。すなわち、安全装置100の軽量化が図れることとなる。
【0071】
また、パラシュートなどの射出物16の表面と収容器18の周壁部18aの内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を従来よりも低減させることができることにより、射出物16の射出速度が従来よりも向上する。したがって、射出物16がパラシュートまたはパラグライダーの場合、開傘までの時間を短縮できるため、設置対象(たとえば、飛行体30)の高度損失を抑えることが可能である。
【0072】
また、上記構成においては、収容器18の内外を連通させる穴部24と、初期状態において穴部24を封止し、押し上げ部材15の支持部20と収容器18の底面との間の領域で作動時に発生する負圧によって破断する封止部40(シール材)とが設けられている。したがって、本実施形態によれば、作動時でも、収容器18に穴部24が設けられていない場合の射出性能の低下が発生しないようにすることができる。また、本実施形態によれば、初期状態において穴部24が封止部40(シール材)によって封止されているので、作動前において、射出物16の早期劣化又は破損を防止できる。
【0073】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る飛行体用安全装置について、
図6および
図7を参照しながら説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と下二桁が同じ番号の符号は、同様のものであるので、説明を省略することがある。また、特に説明しない部分に関しては、上記第1実施形態の安全装置および飛行体と同様であるので、説明を省略することがある。
【0074】
本実施形態における安全装置300は、主に、(1)収容器118の断面が一部に弦を有した円形状(一部が切り欠けた円形状)に近似する形状となるように形成されている点(
図7参照)、(2)押し上げ部材115の支持部120の形状および蓋部121が収容器118の断面形状に倣った形状になっている点(
図7参照)、(3)収容器118の断面の幾何中心からずれているアクチュエータ101の設置位置の点(
図7参照)、(4)複数の凸部118a1および複数の凹部118a2が形成されている点、で、第1実施形態と異なっている。
【0075】
収容器118は、上述したとおり、断面が一部に弦を有した円形状に近似する形状となるように形成されているが、収容器118の弦を含む部分は平面部となっている。蓋部121は、収容器118の開口部を閉口することができるように形成されている。
【0076】
凸部118a1は、断面形状が半円形のものであり、長手方向がピストン部材110の摺動方向に沿うように設けられている。また、凹部118a2は、底部を周壁部118aの内壁部として、隣り合う凸部118a1間に形成されている。
【0077】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。たとえば、安全装置は、収容器内部に射出物を射出する射出部があればよく、収容器の形状は断面形状が扇形、四角形など、どのようなものであってもよいし、また、蓋部で収容器の開口部を閉塞しないようなものであってもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、基台の一部が収容器の外側に位置するように構成されたものであったが、基台全体が収容器の内側に位置するように構成されていてもよい。
【0080】
また、上記各実施形態では動力源としてガス発生器を採用したが、摺動部材がシリンダ内を推進するための駆動力を当該摺動部材に付与することが可能なものであればその構成は限定されるものではなく、例えば、バネ等の弾性体を用いた弾性体式、容器に閉じ込めたガス圧を用いるガスボンベ式、2つ以上の物質を混合して化学反応させてガス圧を発生させる化学反応式(非火薬)、などの駆動源を採用してもよい。また、上記実施形態および変形例の射出装置の代わりに、引出式(引張式とも呼ばれる)の射出装置を用いてもよい。この引出式の射出装置としては、たとえば、ロケットを飛ばしてパラシュートを引き出す方式、アクチュエータで錘を飛ばしてからパラシュートを引き出す方式、アクチュエータで発射体を飛ばしてからパラシュートを引き出す方式、最初に別の収容器に収容されたパイロットシュートを射出装置で射出し、当該パイロットシュートで本発明に係る収容器からパラシュートを引き出す方式、などが挙げられる。
【0081】
また、上記各実施形態において、射出物としてパラシュート又はパラグライダーを採用する場合、当該パラシュート又はパラグライダーがパッキングされていてもよい。なお、当該パッキングは作動時に破れるまたは剥がれるように構成されている。
【0082】
さらに、上記各実施形態では、射出物として、パラシュート又はパラグライダーを挙げたが、これに限らず、揚力発生部材を含むものを射出物として射出してもよい。揚力発生部材としては、たとえば、パラフォイル、ロガロ型パラシュート、シングルサーフェース型パラシュート、飛行機の翼、プロペラ、バルーン等が挙げられる。また、揚力発生部材がコントロールラインを有する場合、安全装置は、コントロールラインを利用して、射出した揚力発生部材の傾斜角度の変更などを行うことができる操舵機構を備えておくことが望ましい。この操舵機構は、たとえば、揚力発生部材に連結された複数のコントロールラインをそれぞれ巻き取る複数のリールと、これらのリールの動力となるモータと、を備えたものであり、モータの駆動により、コントロールラインを巻き取ったり、出したりすることで、適宜、揚力発生部材を引っ張ったり、引っ張りを緩めたりすることができる。
【0083】
また、パラシュート又はパラグライダーの代わりに、ネット(網)を射出することが可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。これにより、タイミングを合わせて、フックまたは突起物などに向けてネットを射出すれば、当該フックまたは突起物に飛行体を引っ掛けることができる。その結果として、飛行体が地面へ落下衝突することを防止できる。また、パラシュート又はパラグライダーの代わりに、医薬品、荷物、などを射出することができるものであってもよい。
【0084】
また、アクチュエータによって、収縮させたまたは折り畳んだ浮き輪(フロート)を駆動機構(ガス発生器などを含む膨張装置など)とともに射出し、駆動機構によって当該浮き輪を膨張展開させることが可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。これにより、飛行体が水没することを防止できるととともに、飛行体が墜落した際の回収場所の目印とすることができる。
【0085】
また、アクチュエータによって、収縮させたまたは折り畳んだ浮き輪(フロート)およびパラシュートを駆動機構(ガス発生器などを含む膨張装置など)とともに射出し、駆動機構によって当該浮き輪およびパラシュートを展開させることが可能な安全装置を備えた飛行体であってもよい。これにより、飛行体の墜落時の落下速度を低減させるととともに、飛行体が水没することを防止でき、さらに飛行体が墜落した際の回収場所の目印とすることができる。
【0086】
また、アクチュエータによってパラシュートを駆動機構(駆動部を備えた切断装置など)とともに射出し、当該パラシュートが展開した後に、駆動機構によって当該パラシュートと飛行体とを連結している複数の連結部材のうち一部を切断し、飛行体の機体の重心をずらして横向きにして落下させ、その後、飛行体の落下側の側面に設けられているエアバッグ装置を用いて地面などへの衝突の衝撃を緩和することが可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。
【0087】
また、アクチュエータによって、いわゆるパラモーターを駆動機構(電源などの駆動部を含む)とともに射出し、パラシュートまたはパラグライダーが完全に展開した後に、駆動機構によってモータを駆動させてプロペラを回転させることが可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。これにより、パラシュートまたはパラグライダーがプロペラに絡まることがない。なお、パラモーターとは、パラシュートまたはパラグライダーのハーネス部分に動力(モーターによるプロペラ回転機など)を設けて、推力を得て飛行可能なものである。
【0088】
また、アクチュエータによって音声発生装置を駆動機構(電源などの駆動部を含む)とともに射出し、駆動機構によって飛行体の墜落時に当該音声発生装置を作動させ、周囲に危険を報知することが可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。
【0089】
また、アクチュエータによって照明装置(フラッシュライトなど)を駆動機構(電源などの駆動部を含む)とともに射出し、駆動機構によって飛行体の墜落時に当該照明装置を作動させ、周囲に危険を報知することが可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。
【0090】
また、アクチュエータによって消火器を駆動機構(電源などの駆動部を含む)とともに射出し、駆動機構によって飛行体の墜落時に当該消火器を作動させて、飛行体の機体および周囲に消火剤を噴霧可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。
【0091】
また、アクチュエータによって、予め射出可能に搭載しておいたパラシュート付き搭載物(たとえば高価な装置類)を駆動機構とともに射出し、駆動機構によって当該パラシュート付き搭載物のパラシュートを展開させる安全装置を備えた飛行体としてもよい。これにより、当該パラシュート付き搭載物を重点的に保護することができる。
【0092】
また、アクチュエータによって、予め射出可能に搭載しておいたエアバッグ装置付き搭載物(たとえば高価な装置類)を駆動機構(ガス発生器などを含む膨張装置など)とともに射出し、駆動機構によって当該エアバッグ装置付き搭載物のエアバッグを膨張展開させる安全装置を備えた飛行体としてもよい。これにより、当該エアバッグ装置付き搭載物を重点的に保護することができる。
【0093】
また、アクチュエータによって救難信号送信装置を駆動機構(電源などの駆動部を含む)とともに射出し、駆動機構によって飛行体の墜落時に当該救難信号送信装置を作動させて、救難信号を外部に送信することが可能な安全装置を備えた飛行体としてもよい。これにより、飛行体が墜落した場合、墜落地点を特定することができる。
【0094】
また、アクチュエータによってパラシュート付きブラックボックス(フライトレコーダーなど)を駆動機構(ガス発生器などを含む膨張装置など)とともに射出し、駆動機構によって飛行体の墜落時に当該パラシュート付きブラックボックスのパラシュートを展開させる安全装置を備えた飛行体としてもよい。これにより、当該パラシュート付きブラックボックスを重点的に保護することができる。その結果として、飛行データを保護することができる。
【0095】
(実施例)
次に、第2実施形態と同様の構成の安全装置の収容器について、凸部および凹部の形状が下記表1に記載の実施例1、2および比較例1に係るものを作成し、本発明に係る実施例1、2が、パラシュートなどの射出物の表面と収容器の周壁部の内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を従来(比較例)よりも低減させることができることを検証するための引張試験を行った。なお、本引張試験では、ピストン部材および押上部材を取り付けた各収容器に射出物(本試験においては、Zero Porosityの材料からなるパラシュート)を収容した状態(安全装置の初期状態を想定)から、速度200mm/minでピストン部材を引っ張り上げた場合に、どの程度の引っ張り力(N)が必要かについて試験を3回ずつ行った。当該引っ張り力は、島津製作所製の型番AGX-20kNVDの精密万能試験機を用いて測定した。下記表1には、引っ張り試験の結果も示す。なお、射出物は、収容器に収容する前に、上記第1実施形態のシリンダ14と同じ形状の筒状部材の頂部に、展開されている上記パラシュートの中央を載置し、上記パラシュートの縁部から中央方向に向かって蛇腹状(断面が波形状)に折り畳んだものである。本試験では、このようにして折り畳んだパラシュートを上記筒状部材から取り外し、試験用の収容器内に設置して、試験を行った。
【0096】
【0097】
表1の結果から、本発明に係る実施例1、2が、パラシュートなどの射出物の表面と収容器の周壁部の内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を従来(比較例)よりも大きく低減させることができることがわかった。
【0098】
また、表1の結果に基づくと、引張強度(平均値)が44N以下で射出物を射出できるように、射出物の表面と収容器の周壁部の内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を予め調整しておけば、スムーズに射出物を射出可能なことがわかる。たとえば、仮に射出物の一例のパラシュートが比較的柔軟な素材からなるものであったとしても、引張強度(平均値)が44N以下で射出物を射出できるように、折り畳み後の当該パラシュートの表面と収容器の周壁部の内壁面との間の摩擦(摺動抵抗)を予め調整(具体的には、収容器の内径の大きさをパラシュートの素材の柔軟さに合わせて変化させる調整)しておけば、スムーズに当該パラシュートを射出することができる。
【符号の説明】
【0099】
1、101 アクチュエータ
2、102 基台
2A、102A 筒状部材
2B、102B フランジ部
2a、102a 穴部
2c、102c 挿入口
3、103 筒状部材
4、104 管状部材
5、105 保持部材
6、106 空間
10、110 ピストン部材
10a、110a 本体部
10b、110b 棒状部
10c、110c 穴部
10d、110d 雌ねじ部
10e、110e 溝部
11、12、111、112 シール部材
13、113 孔部
14、114 シリンダ
14a、114a 貫通孔
15、115 押し上げ部材
16、116 射出物
17、117 ガス発生器
17a、117a カップ体
17b、117b 電極
18、118 収容器
18a、118a 周壁部
18a1、118a1 凸部
18a2、118a2 凹部(溝部)
18b、118b 底部
19、119 有底筒状部
19a、119a 底部
20、120 支持部
21、121 蓋部
22、122 コネクタ
22a、122a 本体部
22c、24、25、26、51、52、53 穴部
23、123 ストッパー部材
23a、23b、123a、123b 溝部
27、127 移動防止部材
28、128 ボルト
29、129 穴
30 飛行体
31 機体
33 脚部
40 封止部
50 ボルト部材
50a ヘッド部
50b 雄ねじ部
53a 挿入用開口部
60 閉塞部材
100、300 安全装置
200 異常検出装置
201 記憶部
202 飛行制御部
203 報知部
210 センサ
220 制御部
221 異常検知部
222 演算部
223 通知部