IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ペイントサービスの特許一覧

特開2023-182508凝集剤が添加される凝集槽を備えた廃水処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182508
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】凝集剤が添加される凝集槽を備えた廃水処理システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20231219BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20231219BHJP
   B01D 21/26 20060101ALI20231219BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20231219BHJP
   B01F 27/805 20220101ALI20231219BHJP
   B01F 27/806 20220101ALI20231219BHJP
   B01F 27/807 20220101ALI20231219BHJP
【FI】
B01D21/02 N
B01D21/01 D
B01D21/02 Q
B01D21/26
C02F1/52 G
B01F27/805
B01F27/806
B01F27/807
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188894
(22)【出願日】2022-11-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022095451
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022095540
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309017611
【氏名又は名称】株式会社ペイントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100107674
【弁理士】
【氏名又は名称】来栖 和則
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 栄次
【テーマコード(参考)】
4D015
4G078
【Fターム(参考)】
4D015BA28
4D015BB05
4D015CA09
4D015CA17
4D015DC04
4D015FA01
4D015FA15
4G078AA03
4G078AB20
4G078BA03
4G078BA05
4G078CA10
4G078DB08
(57)【要約】
【課題】廃水に凝集剤粉末を添加してその廃水中の標的物質を凝集させて固液分離する技術において、凝集剤粉末を撹拌する技術を改良する。
【解決手段】廃水中の標的物質を凝集させる凝集装置20は、凝集槽40と、各々、凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で並列配置される2本の撹拌シャフト104,104とを含む。それら撹拌シャフトは、それぞれ対応する2個または2群の撹拌翼106,106を同じ向きに回転させ、それにより、廃水内に下向きの渦巻きを廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成する。凝集剤粉末は渦巻きのくぼみに向けて投下され、その後、その渦巻きによって引き込まれて凝集槽の底部43に向かって沈降させられる。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと
を含み、
それら第1の撹拌シャフトは、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼を同じ向きに回転させ、それにより、前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記凝集剤は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、その後、前記渦巻きによって引き込まれて前記凝集槽の底部に向かって沈降させられる廃水処理システム。
【請求項2】
前記凝集装置は、さらに、前記凝集槽に取り付けられた少なくとも1本の第2の撹拌シャフトを含み、
その少なくとも1本の第2の撹拌シャフトは、それぞれ対応する少なくとも1つの第2の撹拌翼を回転させ、それにより、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を前記廃水内において拡散させる請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽内における廃水の液面に近い位置に配置される上側撹拌翼を含み、
その上側撹拌翼は、対応する撹拌シャフトに、その撹拌シャフトの組付け状態において軸方向位置調節可能に装着され、それにより、前記液面からの上下方向距離が調節可能である請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽の底部に近い位置に配置される下側撹拌翼を含み、
その下側撹拌翼は、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を補助的に加速してその凝集剤の拡散を促進するという用途と、前記凝集槽の底部上における沈殿物であって前記凝集剤および前記凝集フロックを含むものの再拡散を促進するという用途とのうちの少なくとも一方のために使用される請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記凝集装置は、さらに、
前記凝集槽の底部に形成されたドレインと、
前記凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において前記廃水をろ過するものと、
前記ろ過袋の底部と前記ドレインとの間に設置されるスペーサであって、それらろ過袋の底部とドレインとの間に隙間をその隙間内を前記廃水のうちの少なくとも液体成分が通過可能な状態で形成することにより、前記ドレインの目詰まりを防止するものと
を含む請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
当該廃水処理システムは、前記構造物の表面から既存塗膜を剥離剤を用いて剥離するためにその剥離剤が前記構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するために使用される請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
前記標的物質は、鉛、クロム、アスベストおよびPCBより成る群から選択される請求項6に記載の廃水処理システム。
【請求項8】
粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する粉粒体撹拌/混合システムであって、
前記液体を収容する槽と、
その槽内において略上下方向に延びる姿勢で配置された1本または並列近接配置された複数本の撹拌シャフトと
を含み、
前記1本または複数本の撹拌シャフトを回転させてそれと同軸的に撹拌翼を回転させ、それにより、前記槽内に収容された液体内に下向きの渦巻きを前記液体の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記粉粒体は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、
その投下された粉粒体は、前記渦巻きによって引き込まれて前記槽の底部に向かって沈降させられる粉粒体撹拌/混合システム。
【請求項9】
粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する粉粒体撹拌/混合方法であって、
前記液体を収容する槽内において略上下方向に延びる姿勢で配置された1本または並列近接配置された複数本の撹拌シャフトを回転させてそれと同軸的に撹拌翼を回転させることにより、前記槽内に収容された液体内に下向きの渦巻きを前記液体の液面に開口するくぼみを有するように生成する生成工程と、
その生成された渦巻きのくぼみに向けて前記粉粒体を投下する投下工程と、
その投下された粉粒体を前記渦巻きによって引き込んで前記槽の底部に向かって沈降させる沈降工程と
を含む粉粒体撹拌/混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の表面に噴射された洗浄水であってその使用後に廃水として回収されたものに凝集剤を添加してその廃水中の標的物質を凝集させて固液分離する技術または粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムが既に知られている(特許文献1-5などを参照。)。
【0003】
この種の廃水処理システムは、前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含むように構成される場合がある。
【0004】
その場合、その凝集装置は、具体的には、凝集槽を備えるように構成され、その凝集槽には、前記廃水中において標的物質を凝集させて固液分離するために凝集剤が添加される。
【0005】
本出願書類の全体を通じ、「凝集剤」という用語は広義に使用され、その広義の「凝集剤」は、狭義の「凝集剤」、「重金属不溶化剤」および「活性炭等の吸着剤」を選択的にまたは包括的に包含する。それら用語のそれぞれの定義は、後に詳述する。
【0006】
ところで、特定の場合、例えば、構造物の素地に付着されている既存塗膜中に鉛などの有害物質が存在することが確認されたために、厚生労働省からの平成26年5月30日付けの通達に従うことが必要である場合には、建築物(家屋、ビル等)、鉄製の骨組み構造を用いて構成される細長い建造物である鉄塔(例えば、送電用鉄塔、通信用鉄塔など)、土木構造物(橋梁等)、船舶、車両(自動車、列車等)、飛行機等の構造物または構造体の表面を塗り替えるために、その表面にすでに被着されている既存塗膜を構造物の表面(素地)から剥離し、その後、新たな塗料を構造物の同じ表面上に塗布する種類の施工が行われる。
【0007】
ここに、既存塗膜を剥離する方法としては、物理的手法と化学的手法とが存在する。
【0008】
物理的手法は、スクレーパなどの手工具、ワイヤーブラシなどの除去具を電動モータを用いて回転させる電動回転工具、同様な除去具をエアモータを用いて回転させるエア回転工具、高圧水噴射機などの剥離機械などを作業者が用いて既存塗膜を構造物から剥離する手法である。これに対し、化学的手法は、薬剤を含む剥離剤を既存塗膜に塗布してその既存塗膜を溶解または膨潤させ、それにより、既存塗膜を構造物から剥離する手法である。この手法は、塗膜剥離剤を用いた湿式による塗膜除去方法すなわち湿式剥離方法とも称される。
【0009】
その湿式剥離方法を採用する場合には、剥離剤が構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に洗浄水が噴射される。その洗浄水は、有害物質を含有する可能性があるため、使用後に廃水として回収されて処理されることが望ましい。
【0010】
要するに、以上説明した湿式塗膜剥離方法は、構造物の表面から既存塗膜を剥離剤を用いて剥離するためにその剥離剤をブラシ、刷毛、ローラ、噴霧器、エア型スプレーガン、エアレス型スプレーガンなどの塗布具を用いて前記構造物の表面に塗布する塗布工程を含む。同方法は、さらに、その塗布後に前記構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に洗浄水を噴射する洗浄工程を含む。同方法は、さらに、その噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理する廃水処理工程を含む。
【0011】
その廃水処理工程のために、前記廃水が凝集槽内に投入され、その廃水に粉状または粒状の凝集剤が添加され、それにより、前記廃水中の標的物質が凝集フロックとして凝集し、その凝集フロックが前記廃水から分離される。
【0012】
この廃水回収処理については、環境保護の観点から、次のような複数の要望がある。
【0013】
1.廃水(または廃液)としての剥離洗浄後の洗浄水の中に混入した有害物質(例えば、既存塗膜に含有されるもの、構造物の素地のメッキ層に含有されるものおよび洗浄水に溶出したもの)を含むものを分離除去して廃水を無毒化すること。
【0014】
2.その無毒化された廃水を新たな洗浄水として再利用すること。
【0015】
このような事情を背景とし、本発明者は、本発明に先立ち、剥離剤塗布後の構造物の表面に噴射された洗浄水を廃水として回収して処理する技術を開発し、その技術について特許第6853599号を取得した。この特許公報は、本明細書において特許文献1として引用されている。
【0016】
また、特許文献2-5は、廃水に凝集剤を添加し、その凝集剤を撹拌機を用いて撹拌し、その廃水のうちの標的物質(例えば、有害物質)を処理(例えば、凝集槽による凝集沈降処理または凝集沈殿処理、分離槽による分離処理など)する技術を開示している。それら文献は、それぞれ、粉体の液中分散技術の一従来例を開示している。
【0017】
ここに、撹拌機としては、粉体の液中分散のために、例えば、液中において撹拌翼を回転させる回転式や、ポンプを用いて液中にエアバブルを噴射して注入するエアバブル式などがある。回転式の撹拌機としては、電気で駆動される電動モータを用いる電動モータ式や、圧縮エアで駆動されるエアーモータを用いるエアー駆動式などがある。
【0018】
また、特許文献6は、粉状体(粉体、パウダーなど)や粒状体を回転ふるいを用いて撹拌して対象物に分散添加する技術を開示している。この文献は、粉体の気中分散技術の一従来例を開示している。
【0019】
ここに、ふるいとしては、例えば、静止状態で使用されるものや、往復回転、振動または音波が発生している動的状態で使用されるものが存在する。
【0020】
また、特許文献7は、液状の凝集剤すなわち凝集液剤を撹拌機を用いて撹拌して工業廃水に添加する技術を開示している。
【0021】
具体的には、その撹拌機は、中空ハウジングを有する撹拌シャフトと、それに装着された複数の撹拌翼とを有している。その中空ハウジングは、それと同軸に、凝集液剤の通路となる軸方向穴を有している。
【0022】
前記撹拌シャフトは、前記軸方向穴の上端において、凝集液剤が注入される液入口を有し、さらに、それより下流側の部分において、前記中空ハウジングを径方向に貫通する複数の貫通穴を軸方向に一列に配列された状態で有している。液入口から撹拌シャフト内に注入された凝集液剤は、撹拌中、前記複数の貫通穴から前記工業廃水内に放出される。
【0023】
また、特許文献8は、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理して再利用する技術を開示している。
【0024】
具体的には、この文献は、凝集剤を用いて前記廃水について沈殿分離を行う凝集装置を開示している。この文献は、その凝集装置の一従来例を開示しており、それによれば、前記廃水が凝集剤水溶液と共にろ布袋内に注入されて前記廃水について沈殿分離が行われ、その後、前記廃水が前記ろ布袋によってろ過され、そのろ過後の処理水がドレインではなくポンプを用いて汲み上げられて再利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特許第6853599号公報
【特許文献2】特開2006-0007176号公報
【特許文献3】特開2020-0025919号公報
【特許文献4】特開2020-0065964号公報
【特許文献5】特開2000-0325704号公報
【特許文献6】実開昭58-077638号公報
【特許文献7】中国実用新案第210764511号明細書
【特許文献8】実開平7-24497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明者は、その後、前記開発した廃水処理技術の実用性を向上させるべく種々の試験を行うとともに種々の研究開発を行った。
【0027】
その結果、本発明者は、前記廃水処理技術の実用性を向上させるために、次のいくつかの要請を満たすことが重要であることに気が付いた。
【0028】
1.現場での廃水処理およびそのための設備の可搬性
【0029】
廃水処理という作業については、廃水をその発生源である現場から別の場所にある処理施設に搬送してそこで処理するという持ち込み処理式と、廃水を現場で処理するという現場処理式とがある。
【0030】
一方、塗膜剥離(剥離剤塗布)から塗膜洗浄、ひいては廃水処理までの全工程を現場で簡易に、迅速にかつ効率的に行うことが作業者の立場からも、作業対象である構造物を所有または管理する者の立場からも重要である。
【0031】
よって、廃水処理という作業については、廃水処理のための設備を現場に搬送してそこで廃水処理を簡易に、迅速にかつ効率的に行いたいという要請がある。
【0032】
2.凝集剤の凝集作用の極大化すなわち分散状態の適正化
【0033】
廃水処理という作業においては、凝集剤が廃水に添加された後にその廃水が撹拌されることによって凝集剤が廃水中に分散させられる。
【0034】
ところで、廃水処理の分野においては、凝集剤が固形であるのに対し、廃水が液体であるから、凝集剤は、固液分散系の撹拌に使用される。そして、この場合、凝集剤を撹拌する目的は、例えば、主に、粒子の移動、具体的には、粒子の分散(沈降もしくは浮上が防止されるか、またはダマにならずに分散すること)にある。粒子が適度に分散することは、粒子が均一に撹拌されたことを意味する。
【0035】
しかし、凝集剤の撹拌が不良であると、凝集剤が廃水全体にくまなく分散することができないから、凝集剤が凝集作用を十分に発揮することが困難であり、無駄に多くの凝集剤や作業時間が消費される可能性もある。凝集剤を使用する際には、その凝集剤をいかにして高い撹拌能力(撹拌効率など)のもとに撹拌し、いかにして廃水全体にくまなく分散させるのかということが重要である。
【0036】
ここに、「撹拌能力」または「撹拌効率」は、例えば、凝集剤などの粒子の均一撹拌(例えば、目標の粒子分散度または粒子密度の達成)に必要な全時間(工数など)を消費エネルギーや設備規模、設備コストなどで割り算した値として数値化されて定量化される。
【0037】
よって、廃水処理という作業については、凝集剤が効果的に撹拌されて廃水全体に完全に分散されるようにして凝集作用を極大化したいという要請がある。
【0038】
3.処理水の再利用時における塗膜剥離作業の正常化
【0039】
処理後の廃水は、処理水と凝集フロックとに分離されるが、その処理水を再利用し、用途の一例である塗膜剥離が行われる可能性がある。例えば、その場合、その処理水に予定外の残留物が存在すると、塗膜剥離が支障を来してしまう可能性がある。そのような残理由物としては、例えば、廃水の撹拌中に予定外に発生する現象を抑制するために廃水に添加された別の物質である。
【0040】
よって、廃水処理という作業については、その処理によって生成された処理水が塗膜剥離作業に再利用された場合に、その塗膜剥離作業を正常に行いたいという要請がある。
【0041】
4.ろ過袋内での凝集化およびろ過袋によるろ過という処理が施された廃水が凝集槽からドレインを用いて排出される場合のそのドレインの目詰まり防止
【0042】
当該廃水処理システムが、凝集剤を用いて前記廃水について凝集化を行う凝集装置を含むように構成される可能性がある。この場合、その凝集装置は、前記廃水を収容可能な凝集槽であってそれの底部にドレインを有するものと、その凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において、その廃水をろ過するものとを含むように構成される可能性がある。
【0043】
それら可能性が実現された態様においては、前記ろ過袋の底部のうちの前記ドレインに対向する部分が単独でまたは前記ろ過袋内に存在する凝集フロックと共同して前記ドレインの目詰まりを引き起こす可能性がある。
【0044】
よって、廃水処理という作業については、凝集槽の底部にあるドレインの目詰まりを防止し、処理後の廃水の凝集槽からの排出またはその凝集槽から別の下流槽への移送を正常に行いたいという要請がある。
【0045】
以上説明したいくつかの要請は、廃水処理という特定の用途に限らず、他の用途、例えば、粉粒体を液体に添加して撹拌または混合するという用途についても存在する。
【0046】
それらの事情を背景にして、本発明は、構造物の表面に噴射された洗浄水であってその使用後に廃水として回収されたものに凝集剤を添加してその廃水中の標的物質を凝集させて固液分離する技術において、前記凝集剤を撹拌する技術を改良すること、および/または、粉状体または粒状体を含む粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する技術を改良することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
凝集剤を撹拌する技術を改良するという課題を解決するために、本発明の一側面によれば、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水中の標的物質を凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
凝集剤を前記凝集槽外において収容し、その収容した凝集剤を前記廃水に分散して添加するとともに、その添加された凝集剤を前記凝集槽内において撹拌する添加撹拌ユニットと、
その添加撹拌ユニットが、前記凝集槽に対して相対的に、平面視において移動することを可能にし、それにより、前記廃水への前記凝集剤の散布を可能にする移動機構と、
前記凝集槽内において、前記添加された凝集剤を撹拌翼の回転によって撹拌する撹拌機と
を含む廃水処理システムが提供される。
【0048】
同じ課題を解決するために、本発明の別の側面によれば、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと
を含み、
それら第1の撹拌シャフトは、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼を同じ向きに回転させ、それにより、前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記凝集剤は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、その後、前記渦巻きによって引き込まれて前記凝集槽の底部に向かって沈降させられる廃水処理システムが提供される。
【0049】
粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する技術を改良するという課題を解決するために、本発明の一側面によれば、粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する粉粒体撹拌/混合システムであって、
前記液体を収容する槽と、
その槽内において略上下方向に延びる姿勢で配置された1本または並列近接配置された複数本の撹拌シャフトと
を含み、
前記1本または複数本の撹拌シャフトを回転させてそれと同軸的に撹拌翼を回転させ、それにより、前記槽内に収容された液体内に下向きの渦巻きを前記液体の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記粉粒体は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、
その投下された粉粒体は、前記渦巻き内に引き込まれて前記槽の底部に向かって沈降させられる粉粒体撹拌/混合システムが提供される。
【0050】
同じ課題を解決するために、本発明の別の側面によれば、粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する粉粒体撹拌/混合方法であって、
前記液体を収容する槽内において略上下方向に延びる姿勢で配置された1本または並列近接配置された複数本の撹拌シャフトを回転させてそれと同軸的に撹拌翼を回転させることにより、前記槽内に収容された液体内に下向きの渦巻きを前記液体の液面に開口するくぼみを有するように生成する生成工程と、
その生成された渦巻きのくぼみに向けて前記粉粒体を投下する投下工程と、
その投下された粉粒体を前記渦巻きによって引き込んで前記槽の底部に向かって沈降させる沈降工程と
を含む粉粒体撹拌/混合方法が提供される。
【0051】
廃水について凝集槽内のろ過袋内において沈殿分離を行うとともに前記ろ過袋によってろ過を行う技術を改良するという課題を解決するために、本発明の一側面によれば、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集させて前記廃水を固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容可能な凝集槽であってそれの底部にドレインを有するものと、
その凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において前記廃水をろ過するものと、
前記凝集槽の底部の上面上に留置されるスペーサであって、前記ろ過袋の底部のうちの少なくとも前記ドレインに対向する部分をそのドレインから上方に押し退け、それにより、そのドレインの目詰まりを防止するものと
を含む廃水処理システムが提供される。
【0052】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0053】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0054】
(1) 構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
投入された廃水を収容する凝集槽であって、その収容する廃水に前記凝集剤が添加されると、前記標的物質が凝集して凝集フロックが生成されるものと、
前記凝集剤を前記廃水への添加前に前記凝集槽外において収容し、その収容した凝集剤を分散して前記廃水に添加し、それにより、前記凝集剤の気中分散を行い、その添加された凝集剤を前記凝集槽内において撹拌し、それにより、前記凝集剤の液中分散を行う添加撹拌ユニットと、
その添加撹拌ユニットが、前記廃水への前記凝集剤の分散添加中に、前記凝集槽に対して相対的に、平面視において移動する(例えば、水平方向に並進運動する)ことを可能にし、それにより、前記凝集剤の再度の気中分散としての、前記廃水への前記凝集剤の散布を可能にする移動機構と、
前記添加撹拌ユニットの一部としておよび/または前記添加撹拌ユニットとは別に設けられ、前記凝集槽内において、前記添加された凝集剤を撹拌翼の回転によって撹拌し、それにより、前記凝集剤の液中分散を行う少なくとも1つの撹拌機と
を含む廃水処理システム。
【0055】
(2) 前記移動機構は、前記添加撹拌ユニットが、前記廃水への前記凝集剤の添加中に、前記凝集槽に対して相対的に、平面視において1次元的にまたは2次元的に移動することを可能にする(1)項に記載の廃水処理システム。
【0056】
(3) 前記添加撹拌ユニットは、
フレームと、
そのフレームに装着され、投入された凝集剤を分散して排出して前記廃水に添加する容器と、
前記フレームに装着され、前記凝集槽内において、前記廃水に添加された凝集剤をエアバブルを用いることなく撹拌するために、少なくとも1つの第1の撹拌翼を回転させ、それにより、前記凝集剤の液中分散を行う少なくとも1つの第1の撹拌機と
を含み、
その少なくとも1つの第1の撹拌機は、前記凝集槽に対して前記添加撹拌ユニットが移動する状態において、前記少なくとも1つの第1の撹拌翼が自転しつつ、前記凝集槽に対して並進運動させられ、それら自転と並進運動との双方により、前記凝集剤の液中分散を行う(1)または(2)項に記載の廃水処理システム。
【0057】
(4) 前記容器は、投入された凝集剤を下方にまたは側方に排出するホッパであり、
そのホッパは、任意選択的に、前記凝集剤を手動でまたは自動的に分散させるふるいを有する(3)項に記載の廃水処理システム。
【0058】
(5) 前記添加撹拌ユニットは、前記凝集槽に対してらせん状またはジグザグ状の経路に沿って手動でまたは自動的に相対移動させられる(1)ないし(4)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0059】
(6) 前記凝集槽には、平面視において、前記添加撹拌ユニットが移動可能である移動可能範囲と、前記添加撹拌ユニットが移動可能ではない移動不可能範囲とが割り当てられ、
当該廃水処理システムは、さらに、前記凝集槽に取り付けられ、前記添加された凝集剤をエアバブルを用いることなく撹拌するために、少なくとも1つの第2の撹拌翼を回転させ、それにより、前記凝集剤の液中分散を、前記少なくとも1つの第1の撹拌機による前記凝集剤の液中分散に対して追加的に行う少なくとも1つの第2の撹拌機を含み、
その少なくとも1つの第2の撹拌機は、平面視において、前記少なくとも1つの第2の撹拌翼が前記凝集槽のうち前記移動不可能範囲に位置するように取り付けられる(1)ないし(5)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0060】
(7) 前記移動機構は、
前記凝集槽の槽体に装着され、その槽体に対して相対的に第1方向に移動可能である第1移動ユニットと、
その第1移動ユニットに装着され、前記槽体に対して相対的に、前記第1方向に交差する第2方向に移動可能である第2移動ユニットと
を含み、
その第2移動ユニットに前記添加撹拌ユニットが装着される(1)ないし(6)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0061】
(8) 前記少なくとも1つの第1の撹拌機および前記少なくとも1つの第2の撹拌機は、各撹拌翼の回転により、それぞれ互いに異なるフローパターンを生成する(6)項に記載の廃水処理システム。
【0062】
(9) 前記少なくとも1つの第1の撹拌機および前記少なくとも1つの第2の撹拌機は、各撹拌翼の回転により、軸流であるか旋回流であるかに関してそれぞれ互いに異なるフローパターンを生成する(6)項に記載の廃水処理システム。
【0063】
(10) 前記少なくとも1つの第1の撹拌機は、前記添加撹拌ユニットに対する側面視において、前記容器を隔ててそれぞれ互いに対向して下方に延びる2つの第1の撹拌機を含む(3)ないし(9)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0064】
(11) 前記2つの第1の撹拌機は、それぞれの第1の撹拌翼を互いに逆向きに回転させる(10)項に記載の廃水処理システム。
【0065】
(12) 前記少なくとも1つの第2の撹拌機は、2つの第2の撹拌機を含み、
それら第2の撹拌機は、平面視において、前記凝集槽に対し、食い違いとなるように配置され、それにより、前記凝集槽内において、平面視において、互いに共同して、前記凝集槽の内壁面に沿った一方向循環流を生起する(6)ないし(11)項のいずれかに記載の湿式塗膜剥離用廃水処理システム。
【0066】
(13) 前記少なくとも1つの第1の撹拌機は、第1の撹拌翼を回転させるモータを有し、そのモータは、電気ではなく圧縮エアによって駆動する(3)ないし(12)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0067】
(14) 前記少なくとも1つの第2の撹拌機は、第2の撹拌翼を回転させるモータを有し、そのモータは、電気ではなく圧縮エアによって駆動する(6)ないし(11)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0068】
(15) さらに、
前記凝集槽内に、その内部空間を外側空間と内側空間とに仕切るように配置される袋状のフレキシブルなフロック捕捉用ネットであって、前記廃水のうちの水分が処理水として漏れ出ることを許容しつつ、前記廃水内に生成された凝集フロックを捕捉することが可能であるとともに、前記凝集槽に対して沈降および浮上を選択的に行い得るものを含む(1)ないし(14)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0069】
(16) 前記フロック捕捉用ネットは、前記廃水への前記凝集剤の添加前に前記凝集層内に沈降させられる一方、前記凝集フロックの生成後に前記凝集槽から浮上させられ、それにより、前記廃水が、当該フロック捕捉用ネットから漏れ出る処理水と、当該フロック捕捉用ネット内に捕捉されて残留する凝集フロックとに分離され、それにより、当該フロック捕捉用ネットは凝集ステージと分離ステージとの双方に使用される(15)項に記載の廃水処理システム。
【0070】
(17) 前記添加撹拌ユニットは、平面視において、前記フロック捕捉用ネットより内側の範囲を移動させられる(15)または(16)項に記載の廃水処理システム。
【0071】
(18) 前記添加撹拌ユニットは、少なくとも1つの第1の撹拌機を搭載し、
その少なくとも1つの第1の撹拌機は、それの第1の撹拌翼が、平面視において、前記フロック捕捉用ネットの内側に位置するように配置され、
少なくとも1つの第2の撹拌機が、それの第2の撹拌翼が、平面視において、前記フロック捕捉用ネットの外側に位置するように配置される(17)項に記載の廃水処理システム。
【0072】
(19) 前記添加撹拌ユニットは、少なくとも1つの第1の撹拌機を搭載し、
その少なくとも1つの第1の撹拌機は、平面視において、前記フロック捕捉用ネットの内側に位置するように配置され、
少なくとも1つの第2の撹拌機が、平面視において、前記フロック捕捉用ネットの内側または外側に位置するように配置される(15)ないし(18)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0073】
(20) 前記フロック捕捉用ネットは、フレキシブルな材料によって構成され、自身の形状について自己保持性を有しないが、3次元的なフレームによって少なくとも局所的に補強されることにより、自身の形状が実質的に保持される(15)ないし(19)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0074】
(21) 前記フロック捕捉用ネットが前記フレームに、そのフレームのうち少なくとも底面と側面とに張り巡らされるように装着され、それにより、フロック捕捉用ケージが構成される(15)ないし(20)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0075】
(22) 前記凝集装置は、その組立状態において、前記廃水の発生源である現場に搬送することが可能であるか、または、組立前の状態において、前記現場に搬送し、その現場で組み立てることが可能である(1)ないし(21)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0076】
(23) 前記添加撹拌ユニットは、
フレームと、
そのフレームに装着され、投入された凝集剤を分散して排出して前記廃水に添加する容器と、
前記フレームに装着され、前記凝集槽内において、前記廃水に添加された凝集剤をエアバブルを用いることなく撹拌するために、前記フレームから概して下向きに延びて前記廃水内に沈降させられる少なくとも1つの撹拌部材であってモータ駆動されないものと
を含み、
その少なくとも1つの撹拌部材は、前記凝集槽に対して前記添加撹拌ユニットが移動する状態において、前記凝集槽に対して並進運動させられ、その並進運動により、前記廃水がかき混ぜられ、それにより、前記凝集剤の液中分散を行う(1)ないし(22)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0077】
(24) 構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
投入された廃水を収容する凝集槽であって、その収容する廃水に前記凝集剤が添加されると、前記標的物質が凝集して凝集フロックが生成されるものと、
その凝集槽内に、その内部空間を外側空間と内側空間とに仕切るように配置される袋状のフレキシブルなフロック捕捉用ネットであって、前記廃水のうちの水分が処理水として漏れ出ることを許容しつつ、前記廃水内に生成された凝集フロックを捕捉することが可能であるとともに、前記凝集槽に対して沈降および浮上を選択的に行い得るものと
を含む廃水処理システム。
【0078】
(25) 前記フロック捕捉用ネットは、前記廃水への前記凝集剤の添加前に前記凝集層内に沈降させられる一方、前記凝集フロックの生成後に前記凝集槽から浮上させられ、それにより、前記廃水が、当該フロック捕捉用ネットから漏れ出る処理水と、当該フロック捕捉用ネット内に捕捉されて残留する凝集フロックとに分離され、それにより、当該フロック捕捉用ネットは凝集ステージと分離ステージとの双方に使用される(24)項に記載の廃水処理システム。
【0079】
(26) 廃水中の標的物質を凝集させて固液分離する凝集装置であって、
廃水を収容する凝集槽と、
凝集剤を前記凝集槽外において収容し、その収容した凝集剤を前記廃水に分散して添加するとともに、その添加された凝集剤を前記凝集槽内において撹拌する添加撹拌ユニットと、
その添加撹拌ユニットが、前記凝集槽に対して相対的に、平面視において移動することを可能にし、それにより、前記廃水への前記凝集剤の散布を可能にする移動機構と、
前記凝集槽内において、前記添加された凝集剤を撹拌翼の回転によって撹拌する撹拌機と
を含む凝集装置。
【0080】
(27) 当該廃水処理システムは、前記構造物の表面から既存塗膜を剥離剤を用いて剥離するためにその剥離剤が前記構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するために使用される(1)ないし(25)のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0081】
(31) 構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集させて前記廃水を固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容可能な凝集槽であってそれの底部にドレインを有するものと、
その凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において前記廃水をろ過するものと、
前記ろ過袋の底部と前記ドレインとの間に設置されるスペーサであって、それらろ過袋の底部とドレインとの間に隙間をその隙間内を前記廃水のうちの少なくとも液体成分が通過可能な状態で形成することにより、前記ドレインの目詰まりを防止するものと
を含む廃水処理システム。
【0082】
(32) 前記ろ過袋は、単独で静置される単独静置状態において形状に関して自立するハード型であるか、または前記単独静置状態において形状に関して自立しないソフト型であって自身の形状が前記凝集槽に設置された後にその凝集槽の形状に依存して決まるものである(31)項に記載の廃水処理システム。
【0083】
(33) 前記ろ過袋は、前記凝集槽に設置された設置状態において自身に外力が作用しても実質的に変形しないハード型であるか、または前記設置状態において自身に外力が作用すると可塑的にもしくは弾性的に実質的に変形するソフト型である(31)または(32)項に記載の廃水処理システム。
【0084】
(34) 前記凝集槽の底部は、側面視において、前記ドレインが存在する部分とそれの周辺部分とが略同じ高さを有する形態を有し、
前記スペーサは、前記凝集槽の底部の上面上に留置され、それにより、前記ろ過袋の底部のうちの少なくとも前記ドレインに対向する部分をそのドレインから上方に押し退ける(31)ないし(33)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0085】
(35) 前記凝集槽の底部は、側面視において、前記ドレインが存在する部分がそれの周辺部分より低い形態を有し、それらドレインが存在する部分と周辺部分とは、高さ方向に延びる筒状接続部によって互いに接続され、
前記スペーサは、前記筒状接続部内に留置され、それにより、前記ろ過袋の底部のうちの少なくとも前記ドレインに対向する部分をそのドレインから上方に押し退ける(31)ないし(34)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0086】
(36) 前記スペーサは、シート状のワイヤメッシュまたは有孔パネルを用い、内部に空洞を有する立体形状を有するように構成される(35)項に記載の廃水処理システム。
【0087】
(37) 前記スペーサは、それの長さ方向の全体において前記凝集槽の底部の上面から浮上した位置に、前記ろ過袋を下方から支持する支持面を有するか、または、前記長さ方向のうちの中央部において他の部分より浮上した位置に、前記ろ過袋を下方から支持する支持面を有し、
前記スペーサは、前記支持面が隙間を隔てて前記ドレインに対向するように前記凝集槽の底部の上面上に留置される(31)ないし(36)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0088】
(38) 前記スペーサは、前記凝集槽の底部の長さ寸法に実質的に等しい長さ寸法を有し、それにより、前記凝集槽内における前記廃水の流動中に当該スペーサが長さ方向にずれることが抑制される(31)ないし(37)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0089】
(39) 前記スペーサは、前記凝集槽の底部の長さ寸法より短い長さ寸法を有し、前記支持面は、前記凝集槽内における前記廃水の流動中に前記スペーサが長さ方向にずれても、当該支持面が隙間を隔てて前記ドレインに対向する状態に維持されることを可能にする長さ寸法を有する(37)項に記載の廃水処理システム。
【0090】
(40) 前記ドレインは、平面視において、前記凝集槽の底部のうちの略中央部に配置され、
前記スペーサは、側面視において、当該スペーサのうちの略中央部において頂面を有する形態を有する(31)ないし(39)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0091】
(41) 前記スペーサは、平面視において、前記頂面と、その頂面を両側から挟む一対の斜面とが一列に配列された形態を有し、
それら頂面と一対の斜面とは、側面視において、実質的な段差を有することなく連続的に接続され、
各斜面は、側面視において、前記頂面から遠ざかるにつれて前記凝集槽の底部に接近する向きに傾斜し、
前記頂面は、隙間を隔てて前記ドレインに対向する(40)項に記載の廃水処理システム。
【0092】
(42) 前記スペーサは、前記凝集槽に対して着脱可能に設置される(31)ないし(41)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0093】
(43) さらに、
前記凝集槽から排水された廃水をろ過することにより、その廃水を、前記凝集槽での前記標的物質と同じ種類の標的物質と、ろ過後の廃水としての処理水であって前記標的物質が除去されたものとに分別する分離槽を有する分離装置を含み、
前記ろ過袋の最小捕捉粒子径は、前記分離槽の最小捕捉粒子径より大きく設定され、それにより、前記凝集槽において1次ろ過が、前記分離装置において、前記1次ろ過よりろ過精度が高い2次ろ過がそれぞれ順次行われる(31)ないし(42)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0094】
(44) 前記ろ過袋は、前記凝集槽への設置前に、当該ろ過袋の底部において前記スペーサに結合されて一体化され、それにより、前記凝集槽への設置に際し、前記スペーサが当該ろ過袋と一体的に移動して前記凝集槽の底部の上面上に留置される(31)ないし(43)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0095】
(45) 前記凝集剤は、粉状もしくは粒状または液状を成している(31)ないし(44)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0096】
(46) さらに、
前記凝集槽内の前記廃水に向けて前記凝集剤を添加する添加装置と、
その添加された凝集剤を前記凝集槽内において撹拌する撹拌装置と
を含む(31)ないし(45)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0097】
(47) 前記凝集剤は、粉状または粒状を成しており、
前記添加装置および前記撹拌装置は、
前記凝集剤を前記凝集槽外において収容し、その収容した凝集剤を前記廃水に分散して添加するとともに、その添加された凝集剤を前記凝集槽内において撹拌する添加撹拌ユニットと、
その添加撹拌ユニットが、前記凝集槽に対して相対的に、平面視において2次元的に移動することを可能にし、それにより、前記廃水への前記凝集剤の散布を可能にする移動機構と、
前記凝集槽内において、前記添加された凝集剤を撹拌翼の回転によって撹拌する撹拌機と
を含むように構成される(46)項に記載の廃水処理システム。
【0098】
(48) 構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させることにより、前記廃水を固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水が注入されるとその廃水を収容する凝集槽であって、それの底部にドレインを有し、前記収容された廃水は、重力により、前記ドレインを通過して排水されることが可能であるものと、
その凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において、前記廃水のうち、固体成分を捕捉する一方、液体成分を通過放出することにより、前記廃水をろ過するものと、
前記凝集槽の底部の上面上に留置されるスペーサであって、前記ろ過袋の底部のうちの少なくとも前記ドレインに対向する部分を前記凝集槽の底部の上面から押し上げて浮上させ、それにより、前記凝集槽からの廃水の排水中に、前記ろ過袋の底部が単独でまたは前記凝集フロックと共同して前記ドレインの目詰まりを引き起こすことを防止するものと
を含む廃水処理システム。
【0099】
(49) 当該廃水処理システムは、前記構造物の表面から既存塗膜を剥離剤を用いて剥離するためにその剥離剤が前記構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するために使用される(31)ないし(48)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0100】
(50) 可撓性を有する使用済シートであって液剤および/またはサイズが一様ではない複数の固形物が不要物として残留しているものを洗浄し、それにより、その使用済シートの再利用または廃棄を可能にするシート洗浄システムであって、
前記使用済シートを被洗浄シートとして、その被洗浄シートを展開状態で送り経路に沿ってガイドするシートガイド機構と、
前記被洗浄シートの表面にエアブローを吹き付けることにより、その被洗浄シートから前記複数の固形物のうちサイズが大きなものを分離して除去する第1除去装置と、
作業者が手動で前記被洗浄シートの表面に洗浄水を高圧で噴射してその被洗浄シートを水洗することを可能にするか、または、動力源を用いて自動的に前記被洗浄シートの表面に洗浄水を高圧で噴射してその被洗浄シートを水洗することにより、その被洗浄シートから前記複数の固形物のうちサイズが小さなものおよび前記液剤を分離して除去する第2除去装置と
を含み、
前記シートガイド機構は、
静止部材に設置され、展開状態にある前記被洗浄シートの両側のそれぞれにおいて、前記送り経路に対して平行に延びる一対のガイドワイヤと、
前記被洗浄シートの両側辺のそれぞれに、各側辺に沿って離散的に並ぶように装着された複数のスライドリングであって、前記送り経路に沿って前記被洗浄シートと一体的に移動するものと、
を含み、
各スライドリングは、前記一対のガイドワイヤのうち対応する側のガイドワイヤにそれの長さ方向にスライド可能に連結され、それにより、前記被洗浄シートが、前記一対のガイドワイヤから両端支持状態で吊り下げられるとともに、前記送り経路に沿って、前記複数のスライドリングと一体的に、前記一対のガイドワイヤに対してスライド移動可能であるシート洗浄システム。
【0101】
(51) 構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと
を含み、
それら第1の撹拌シャフトは、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼を同じ向きに回転させ、それにより、前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記凝集剤は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、その後、前記渦巻きによって引き込まれて前記凝集槽の底部に向かって沈降させられる廃水処理システム。
【0102】
(52) 前記凝集装置は、さらに、前記凝集槽に取り付けられた少なくとも1本の第2の撹拌シャフトを含み、
その少なくとも1本の第2の撹拌シャフトは、それぞれ対応する少なくとも1つの第2の撹拌翼を回転させ、それにより、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を前記廃水内において拡散させる(51)項に記載の廃水処理システム。
【0103】
(53) 前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽内における廃水の液面に近い位置に配置される上側撹拌翼を含み、
その上側撹拌翼は、対応する撹拌シャフトに、その撹拌シャフトの組付け状態において軸方向位置調節可能に装着され、それにより、前記液面からの上下方向距離が調節可能である(51)または(52)項に記載の廃水処理システム。
【0104】
(54) 前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽の底部に近い位置に配置される下側撹拌翼を含み、
その下側撹拌翼は、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を補助的に加速してその凝集剤の拡散を促進するという用途と、前記凝集槽の底部上における沈殿物であって前記凝集剤および前記凝集フロックを含むものの再拡散を促進するという用途とのうちの少なくとも一方のために使用される(51)ないし(53)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0105】
(55) 前記凝集装置は、さらに、
前記凝集槽の底部に形成されたドレインと、
前記凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において前記廃水をろ過するものと、
前記ろ過袋の底部と前記ドレインとの間に設置されるスペーサであって、それらろ過袋の底部とドレインとの間に隙間をその隙間内を前記廃水のうちの少なくとも液体成分が通過可能な状態で形成することにより、前記ドレインの目詰まりを防止するものと
を含む(51)ないし(54)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0106】
(56) 当該廃水処理システムは、前記構造物の表面から既存塗膜を剥離剤を用いて剥離するためにその剥離剤が前記構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するために使用される(51)ないし(55)項のいずれかに記載の廃水処理システム。
【0107】
(57) 前記標的物質は、鉛、クロム、アスベストおよびPCBより成る群から選択される(56)項に記載の廃水処理システム。
【0108】
(58) 粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する粉粒体撹拌/混合システムであって、
前記液体を収容する槽と、
その槽内において略上下方向に延びる姿勢で配置された1本または並列近接配置された複数本の撹拌シャフトと
を含み、
前記1本または複数本の撹拌シャフトを回転させてそれと同軸的に撹拌翼を回転させ、それにより、前記槽内に収容された液体内に下向きの渦巻きを前記液体の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記粉粒体は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、
その投下された粉粒体は、前記渦巻きによって引き込まれて前記槽の底部に向かって沈降させられる粉粒体撹拌/混合システム。
【0109】
(59) 粉粒体を液体に添加して撹拌または混合する粉粒体撹拌/混合方法であって、
前記液体を収容する槽内において略上下方向に延びる姿勢で配置された1本または並列近接配置された複数本の撹拌シャフトを回転させてそれと同軸的に撹拌翼を回転させることにより、前記槽内に収容された液体内に下向きの渦巻きを前記液体の液面に開口するくぼみを有するように生成する生成工程と、
その生成された渦巻きのくぼみに向けて前記粉粒体を投下する投下工程と、
その投下された粉粒体を前記渦巻きによって引き込んで前記槽の底部に向かって沈降させる沈降工程と
を含む粉粒体撹拌/混合方法。
【図面の簡単な説明】
【0110】
図1図1は、本発明の例示的な第1実施形態に従う廃水処理システムの凝集装置を部分的に分解組立状態で示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す凝集装置のうち、凝集槽、添加撹拌ユニット、横移動ユニットおよび縦移動ユニットを取り出して示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す添加撹拌ユニット、横移動ユニットおよび縦移動ユニットを、前記添加撹拌ユニットに装着されるホッパおよび第1の撹拌機と共に示す拡大して示す斜視図である。
図4図4(a)は、図2に示す凝集槽、添加撹拌ユニット、横移動ユニットおよび縦移動ユニットを示す部分横断面図であり、同図(b)は、図2に示す横移動ユニットおよび縦移動ユニットを示す部分横断面図である。
図5図5(a)は、2つの第2の撹拌機によって凝集槽内に生成されるフローパターンの一例を概念的に説明するための平面図であり、同図(b)は、2つの第1の撹拌機によって凝集槽内に生成されるフローパターンの一例を概念的に説明するための側面図であり、同図(c)は、2つの第1の撹拌機によって凝集槽内に生成されるフローパターンの別の例を概念的に説明するための側面図である。
図6図6は、図1に示す凝集装置であって、凝集槽、それに装着されるドレン管および分離槽を有するものを示す斜視図である。
図7図7は、図1に示す凝集装置の組立設置および解体撤去が取り扱われる様子を概念的に表す工程図である。
図8図8は、図1に示す凝集装置の作用により、原水としての廃水が固液分離される過程を概念的に表すブロック図である。
図9図9は、図1に示す凝集装置の組立ておよびその凝集装置を用いた廃水処理を時系列的に概念的に表す工程図である。
図10図10は、本発明の例示的な第2実施形態に従う廃水処理システムの凝集装置を部分的に分解組立状態で示す斜視図である。
図11図11は、図10に凝集槽をそれの内部に設置されるフロック捕捉用ケージと共に示す平面図である。
図12図12は、図10に示す凝集装置の組立ておよびその凝集装置を用いた廃水処理を時系列的に概念的に表す工程図である。
図13図13は、図10に示すフロック捕捉用ケージに代わる凝集フロック回収シート組立体の一例を示す斜視図である。
図14図14(a)は、前記第1または第2の実施形態において、並列配置または対向配置された一対の第1の撹拌機および食い違い配置された一対の第2の撹拌機によって凝集槽内に生成されるフローパターンの一例であって図5に示すいくつかの例とは部分的に異なるものを概念的に説明するための側面図であり、同図(b)は、平面図である。
図15図15(a)-(c)は、前記第1または第2の実施形態に従う凝集装置を備えた凝集槽を用いる一実施例(試作品)について実際に性能試験を行ったときの様子を撮影した複数枚の写真を示しており、具体的には、同図(a)は、前記対向配置された一対の第1の撹拌機(同図においては、「並列エアー回転撹拌機」という用語で表す。)と前記ホッパ(同図においては、「凝集剤投入器」という用語で表す。)と備えた凝集装置を、各撹拌機について作業者が回転調整を行う状態で撮影した写真を示し、また、同図(b)は、前記凝集槽内に下向き渦巻きが発生した状況を撮影した写真を示し、また、同図(c)は、前記ホッパから粉状の凝集剤が凝集槽内に添加または投入される状況を撮影した写真を示す。
図16図16は、本発明の例示的な第3実施形態に従う廃水処理システムの凝集装置を分離装置と共に示す正面断面図である。
図17図17(a)は、図16に示すスペーサを廃水出口と共に示す斜視図であり、同図(b)は、側面断面図である。
図18図18は、図16に示すろ過袋の一例をスペーサおよび浮上防止具と共に示す斜視図である。
図19図19は、図16に示す廃水処理システムに用いて実施される複数の工程を時系列的に概念的に表す工程図である。
図20図20(a)は、図16に示すスペーサの別の例を示す側面断面図であり、同図(b)は、さらに別の例を示す側面断面図であり、同図(c)は、さらに別の例を示す側面断面図であり、同図(d)は、さらに別の例を示す側面断面図である。
図21図21(a)は、本発明の例示的な第4実施形態に従うシート洗浄システムを示す部分断面側面図であり、また、同図(b)は、部分断面平面図である。
図22図22は、図21に示すシート洗浄システムを用いて実施されるシート洗浄方法を、先行する他の工程および後続する他の工程と共に時系列的に概略的に示す工程図である。
図23図23は、図22に示すシート洗浄方法を取り出して時系列的に示す工程図である。
図24図24は、図21に示すシート洗浄システムを構成する複数の要素と、図23に示すシート洗浄方法を構成する複数の工程との間の対応関係を表形式で表す図である。
図25図25(a)は、図21に示すシート洗浄システムのうちのシートガイド機構を示す斜視図であり、また、同図(b)は、横断面図である。
図26図26(a)は、図21に示すシート洗浄システムのうちの第1除去装置のうちの塗膜片回収シート組立体を示す斜視図であり、また、同図(b)は、その塗膜片回収シート組立体における入口開閉扉の開閉動作を説明するための縦断面図である。
図27図27(a)は、図21に示す第1除去装置のうちの第1の噴射ユニットを部分的に示す斜視図であり、また、同図(b)は、その第1の噴射ユニットを部分的に示す側面図であり、また、同図(c)は、同図(a)および(b)に示す継手を示す斜視図である。
図28図28は、図21に示すシート洗浄システムのうちの第2除去装置のうちの洗浄用集水シート組立体を示す斜視図である。
図29図29は、図21に示すシート洗浄システムのうちの第2除去装置のうちの作業床を示す斜視図である。
図30図30は、図21に示すシート洗浄システムのうちの第2除去装置をそれに付属するいくつかの凝集ろ過槽と共に示す正面図である。
図31図31(a)は、本発明の例示的な第5実施形態に従うシート洗浄システムのうちのシートガイド機構およびシート送り装置を示す斜視図であり、また、同図(b)は、そのシートガイド機構を部分的に示す縦断面図である。
図32図32(a)は、前記第5実施形態に従うシート洗浄システムのうちの第2除去装置のうちの噴射器移動装置を示す斜視図であり、また、同図(b)は、その噴射器移動装置の要部を示す縦断面図であり、また、同図(c)は、同図(a)および(b)に示す噴射器移動装置のうちの噴射器推進装置を示す斜視図である。
図33図33は、本発明の例示的な第6実施形態に従うシート洗浄方法を構成する複数の工程と、そのシート洗浄方法を実施するために使用されるシート洗浄システムを構成する複数の要素との間の対応関係を表形式で表す図である。
図34図34は、本発明のいくつかの実施形態に従うシート洗浄方法によって洗浄される使用済シートの一例としてのろ過シートの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0111】
[第1実施形態]
【0112】
以下、本発明の例示的な第1実施形態に従う湿式塗膜剥離用の廃水処理システム(以下、単に、「システム」と称する。)10を図面に基づいて詳細に説明する。
【0113】
図1に示すように、そのシステム10は、前述の湿式塗膜剥離作業中、塗膜洗浄工程において生成された廃水に凝集剤を添加してその廃水中の標的物質を凝集させて固液分離するために使用される。
【0114】
このシステム10は、より正確には、構造物(鉄塔、橋梁、道路、建造物、船舶、車両、航空機など)の表面から既存塗膜を剥離剤(液体、流動体、泡状体、エアバブルなど)を用いて剥離するためにその剥離剤が前記構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するために使用される。
【0115】
その用途を実現するために、このシステム10は、図6に示すように、通常、(a)前記噴射された洗浄水を廃水として回収するための集水装置(図示しない)と、(b)前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させる凝集槽を有する凝集装置20と、(c)その凝集槽内の廃水をろ過することにより、その廃水を、固形物としての有害物質(「標的物質」の一例)と、その有害物質が除去された、ろ過後の廃水(以下、「処理水」とも称する。)とに分別する分離槽50を有する分離装置30とを含むように構成される。
【0116】
その処理水は、例えば、同じ用途または他の工業用途に再利用しても、無毒化して通常の下水または工業廃水として排出してもよい。
【0117】
廃水から除去されるべき標的物質としての有害物質は、例えば、鉛、クロム、アスベストおよびPCBより成る群から選択され、また、それら成分をすべて含有するように選択される。
【0118】
それら集水装置、凝集装置20および分離装置30のうち、凝集装置20およびその凝集槽のすぐ下流に位置する分離装置30は本明細書において詳細に説明するが、集水装置は本明細書において、特許文献1を引用することにより、重複した説明を省略するとともに、図面を参照することなく簡単に概念的に説明する。
【0119】
<集水装置>
【0120】
特許文献1に示すように、前記集水装置は、その構成を説明するに、作業者のために前記構造物(被洗浄対象物の一例)に設置された足場に、それの床材より下方の位置に設置された二重シートを含む。その二重シートは、上側のろ過シートと下側の集水シートとであってそれぞれ平面視において互いにオーバーラップするように配置されるものを含む。
【0121】
前記ろ過シートは、前記廃水を受け止めるとともにその廃水をろ過してその廃水から固形物としての塗膜片を除去するように構成される。前記集水シートは、ろ過後の廃水を前記ろ過シートから受け止めるとともにそのろ過後の廃水をそれの自重を利用して廃水出口(例えば、当該集水シートのうち、使用状態(伸張状態、展開状態、張設状態、緊張状態など)において最も垂下している部分に形成される貫通穴)まで誘導するように構成される。
【0122】
<分離装置30>
【0123】
凝集装置20においては、廃水中の有害物質が目標レベルで凝集し、凝集ステージが完了すると、凝集槽40内において、上澄み液(処理水)と沈殿物(有害物質の凝集フロック)とが両者間の比重差によりそれぞれ上下に固液分離される。
【0124】
一例においては、凝集ステージの完了後、凝集槽40内の廃水が図示しないろ過部を用いて(例えば、作業者の手作業で)ろ過される。それにより、その廃水のうち、沈殿物(有害物質すなわち標的物質)が捕捉され、その結果、廃水のうち上澄み液のみが凝集槽40から、廃水出口44を経て排出される。
【0125】
その排出された廃水は、分離装置30のうちの分離槽50に投入される。その分離槽50は、その投入された廃水をふるい52を用いてろ過することにより、その廃水を、固形物としての有害物質と、その有害物質が除去された、ろ過後の廃水すなわち処理水(最終工程における処理水)とに分別する。
【0126】
図6の最下部に、その分離槽50の一例が概念的に断面図で示されている。この分離槽50は、ふるい(例えば、静止状態、または、往復回転、振動もしくは音波が発生している動的状態にある)52を有し、そのふるい52を通過するように前記廃水が分離槽50内に投入されると、ふるい52によって有害物質(例えば、微細化されたフロックまたは微細粒子)が捕捉される一方、水分がふるい52を通過する。そのふるい52を通過した水分が処理水である。
【0127】
同図に示すように、凝集槽40のシンク42の底部(例えば、底部が下向きに尖ったすり鉢状である場合には、その底部のうち最も垂下した位置。板状の底部、底板部、槽底部など)43に廃水出口44が形成されており、その廃水出口44に2次元的にまたは3次元的に屈曲するドレン管(またはフレキシブルなドレン用ホース)46が接続されている。そのドレン管46は、それの出口が分離槽50の開口に臨まされるように配管されている。
【0128】
シンク42は、概して矩形容器状を成しているため、それの外壁は、正面部、背面部および一対の側面部より構成される。それらのうち、正面部および背面部は、シンク42の長手方向において互いに対向し、一方、一対の側面部は、シンク42の幅方向において互いに対向する。
【0129】
<凝集装置20>
【0130】
<全体概略>
【0131】
図1に示すように、このシステム10においては、凝集装置20が、概略的には、凝集槽40と、添加撹拌ユニット60と、横移動ユニット80と、縦移動ユニット90とを含むように構成される。この凝集装置20は、さらに、2つ(それより多数でも少数でも可)の第1の撹拌機100と、2つ(それより多数でも少数でも可)の第2の撹拌機110とを備えている。
【0132】
なお、この凝集装置20は、粉末状の凝集剤を前述の「粉粒体」の一例とし、前記廃水を前述の「液体」の一例とし、凝集槽40を前述の「容器」の一例としてそれぞれ備えた、前述の「粉粒体撹拌/混合システム」の一例でもある。
【0133】
<撹拌機100,110の基本仕様>
【0134】
それら撹拌機100,110は、共通する基本仕様を有し、いずれも、前述の回転式かつ前述のエアー駆動式である。具体的には、各撹拌機100,110は、図3に示すように、エアーモータを内蔵する本体部102を有し、その本体部102から、前記エアーモータの出力軸に同軸にまたは平行に連結されたシャフト104が突出している。そのシャフト104は、例えば、円形断面で直線的に延びており、それの外周面は、凹凸を有しない平滑面である。このシャフト104の先端部(下端部)に撹拌翼(例えば、パドル翼、傾斜パドル翼、タービン翼、傾斜タービン翼、プロペラ翼など)106,116が取り付けられている。撹拌翼106が傾斜パドル翼、傾斜タービン翼またはプロペラ翼である場合には、撹拌機100により、それの軸線方向に平行な吐出流が生成される(例えば、図5(a)および図14(b)参照。)。
【0135】
各撹拌機100,110は、エアー駆動式であるため、防爆性を有し、凝集作業中に引火の原因とならずに済み、その点で、作業者の安全性が向上する。
【0136】
<凝集装置20を開発した技術的背景>
【0137】
ところで、撹拌機の仕様として、回転式の他に、エアバブル式も存在する。本発明者は、本発明に先立ち、エアバブル式の撹拌機の有効性の有無(例えば、撹拌能力または撹拌効率の高さ)を確認するための試験を行った。具体的には、発明者は、前述の湿式塗膜剥離作業中、前述の塗膜洗浄工程において生成された廃水を被処理対象として、その廃水中にエアバブルをノズルからジェット噴射して、当該廃水中の凝集剤を撹拌する方法の有効性の有無を確認した。
【0138】
しかし、前記湿式塗膜剥離作業に使用される剥離剤には、分散剤として界面活性剤が含有されていた。そのため、前記廃水にも、同じ界面活性剤が含有されていた。その結果、前記廃水にエアバブルをジェット噴射して凝集剤を撹拌すると、界面活性剤が原因となって前記廃水に激しい泡立ち現象(例えば、発生した泡が凝集槽から溢れ出るほどに激しい泡立ち現象)が発生することが発覚した。
【0139】
その泡立ち現象を抑制するために、本発明者は、廃水中へのエアバブルの注入に先立ち、その廃水に消泡剤を添加することを提案し、実行した。しかし、本発明者は、その提案には改善の余地があることが判明した。
【0140】
具体的には、一般的に入手可能な消泡剤の多くは、シリコーンを成分として含有している。そのため、その消泡剤が前記廃水の消泡効果に有効であっても、そのシリコーン成分が最終的な処理水から完全に除去できず、残存してしまう可能性がある。
【0141】
最終的な処理水に前記シリコーン成分が残存したまま、その処理水を別の構造物(今回の剥離対象)についての湿式剥離作業に使用すると、前記シリコーン成分が今回の剥離対象の表面に付着してしまう。
【0142】
そのため、本発明者は、前記シリコーン成分が今回の剥離対象の表面に付着した状態でその表面を再塗装すると、塗料が予定通り前記構造物の表面に付着せず、塗装不良という新たな問題が発生する可能性があることを懸念した。
【0143】
よって、本発明者は、エアバブル式の撹拌機の方が回転式の撹拌機より撹拌能力が高いとしても、上記の新たな問題の発生を回避することを優先させるべく、エアバブル式の撹拌機の採用を断念し、回転式の撹拌機を採用することを決断した。
【0144】
さらに、本発明者は、回転式の撹拌機を採用する場合の相対的な撹拌能力不足を補うべく、凝集剤をいかにして効果的に分散するかについて研究した。
【0145】
その研究の成果として、本発明者は、添加撹拌ユニット60の各瞬間位置(静止状態)での気中分散(静的気中分散、1次的な気中分散)と、添加撹拌ユニット60の2次元移動による追加的な気中分散(気中散布、動的気中分散、2次的な気中分散)と、複数の回転式の撹拌機の適切配備による液中分散とを実現し、その効果を極大化することが重要であるという知見を得た。
【0146】
本発明者は、さらに、液中分散による撹拌効果を極大化するために、複数の撹拌機によって合成的に生成されるフローパターンを適正化することも重要であるという知見を得た。
【0147】
そこで、本発明者は、後に詳述するように、それら知見を具現化するための技術思想を創作した。
【0148】
<凝集槽40の構成および作用効果>
【0149】
図6に示すように、凝集槽40は、概して容器状を成すステンレス製のシンク(槽体、ハウジングなど)42を有する。そのシンク42の形状は、例えば、角型であり、上面において開口した六面体を成している。そのシンク42は、密封型であり、液体を気密に収容する機能を有する。本実施形態においては、凝集槽40とシンク42とが、別体構造であるが、一体構造であってもよい。
【0150】
凝集槽40は、さらに、シンク42を支持するフレーム120を有する。そのフレーム120は、シンク42を支持する本体部122と、複数本(例えば、4本またはそれより少ない本数か多い本数)の脚部124と、それら脚部124に対応する複数のキャスター(足部、接地部など)126と、ドレン管(排水管など)46と、一対のストッパ(例えば、アングル材として構成される。図2参照。)128,128とを有する。
【0151】
本体部122は、複数本の水平部材(横部材および縦部材)および複数本の垂直部材を用いて構成される。それら水平部材のうち、平面視において、一対の長辺を形成する一部位の水平部材(一対の縦部材48,48)のそれぞれの上面が、一対の縦レール130,130として機能する。
【0152】
複数本の脚部124は、いずれも、支持面(地面、整地面、フロア面など)に接地し、そこから上方に延びて本体部122に到達する。
【0153】
複数のキャスター126は、それぞれ、対応する脚部124の下端部に装着される。それらキャスター126の転動により、作業者は凝集槽40に横力を加えてその凝集槽40を自由に操向して任意の目標位置に移動できる。
【0154】
ドレン管46は、シンク42の底部43に形成された廃水出口44から分離槽50まで2次元的または3次元的に延びている。
【0155】
図2に示すように、一対のストッパ128,128は、添加撹拌ユニット60との当接により、添加撹拌ユニット60が凝集槽40の一対の縦レール130,130に沿って移動する際の移動範囲を定義する。
【0156】
フレーム120は、複数の部材を作業者が工具を用いて組み立てることによって構成される。それら部材は、複数本のパイプ(例えば、角パイプ)、複数本のアングル材、複数の取付金具、複数の締結具などを有している。
【0157】
この凝集装置20の一例は、凝集槽40が、平面視において、横寸法(幅寸法)が約800-約1100mm、縦寸法(長さ寸法)が約1700-約2000mmであり、また、高さ寸法が約400-約600mmであるサイズを有し、これは、工業排水に用いられるものに比べて小形である。
【0158】
よって、この凝集装置20は、その組立状態において、廃水の発生源である現場に搬送することが可能である。さらに、この凝集装置20は、組立前の状態すなわち部材の集まり状態において、前記現場に搬送し、その現場で組み立てることも可能である。
【0159】
<添加撹拌ユニット60>
【0160】
<機能>
【0161】
図1図4に示すように、凝集装置20は、添加撹拌ユニット60を備えている。この添加撹拌ユニット60は、凝集剤を前記廃水への添加前に凝集槽40外において収容し、その収容した凝集剤を前記廃水に分散して添加し、それにより、凝集剤の気中分散を行う。
【0162】
さらに、添加撹拌ユニット60は、前記廃水への凝集剤の分散添加中に、横移動ユニット80および縦移動ユニット90のおかげで、凝集槽40に対して相対的に、平面視において2次元的に移動させられ、それにより、凝集剤の再度の気中分散としての、前記廃水への凝集剤の散布を行う。
【0163】
さらに、添加撹拌ユニット60は、前述の2つの第1の撹拌機100を搭載し、それにより、それらの2つの撹拌翼106を自転させ、それにより、前記添加された凝集剤を凝集槽40内において撹拌し、それにより、凝集剤の液中分散を行う。
【0164】
<構成>
【0165】
添加撹拌ユニット60は、フレーム140を有する。そのフレーム140に、投入された凝集剤を分散して排出して前記廃水に添加するホッパ142が装着される。さらに、フレーム140に2つの第1の撹拌機100も搭載される。それら第1の撹拌機100は、凝集槽40内において、前記廃水に添加された凝集剤をエアバブルを用いることなく撹拌するために、2つの第1の撹拌翼106を回転させる。
【0166】
ただし、本実施形態においては、フレーム140が、横移動ユニット80のフレームと共通化されているため、見かけ上、横移動ユニット80のフレームに、ホッパ142と2つの第1の撹拌機100とが搭載されている。
【0167】
ホッパ142は、投入された凝集剤を下方にまたは側方に排出する容器である。そのホッパ142は、投入された凝集剤を手動でまたは自動的に分散させるふるい143を有する。
【0168】
ところで、投入された凝集剤を手動で分散させるふるいを有するホッパの一例が特許文献6に開示されている。本実施形態におけるホッパ142は、同文献に開示されているものと同種であり、具体的には、図3に例示するように、作業者がトリガ144を握ったり離したりすると、ふるい143が往復回転し、それにより、粉体としての凝集剤が気中分散させられる。
【0169】
本実施形態においては、作業者が、ふるい143を、図3に例示するように、手動でまたは人力で作動させる。これに代えて、作業者は、そのふるい143を自動的に、例えば、モータ駆動によって作動させてもよい。その自動制御は、無人で、プログラム制御として行っても、有人で、作業者による有線または無線の遠隔制御として行ってもよい。
【0170】
図3に例示するように、フレーム140にホルダ146が装着される。そのホルダ146は、ホッパ142の取っ手148を逃げる逃げ穴を両側に有する状態で、そのホッパ142を外周から包囲するハウジング(例えば、ステンレス製のパネルを折り曲げて製作されたもの)を有する。それにより、ホルダ146は、ホッパ142を作業者によって垂直方向に着脱可能な状態で保持する。
【0171】
添加撹拌ユニット60、横移動ユニット80および縦移動ユニット90の共同作用により、ホッパ142からの凝集剤の分散添加(1次的気中分散)と、前記2次元移動(並進運動)による凝集剤の散布(2次的気中分散)と、各第1の撹拌機100の自転による凝集剤の撹拌(1次的液中分散)と、各第1の撹拌機100の並進運動による凝集剤の撹拌(2次的液中分散)とが並行的に行われる。
【0172】
図3には、この添加撹拌ユニット60がさらに具体的に示されている。この添加撹拌ユニット60は、ホッパ142を定位置に保持するためのホルダ146と、その定位置にあるホッパ142の排出穴に合致するようにフレーム140に形成された第1の貫通穴150と、2つの第1の撹拌機100を取り付けるためにフレーム140に形成された2つの第2の貫通穴152とを有する。
【0173】
各撹拌機100は、それの本体部102において、対応する第2の貫通穴152を利用して取り付けられる。
【0174】
<縦移動ユニット90の構成および作用効果>
【0175】
図1図4、特に、図2に示すように、縦移動ユニット90は、凝集槽40を横架するように延びてシンク42を跨ぐとともに、自身の両端部が凝集槽40における一対の縦レール130,130にそれぞれ支持されている。
【0176】
図3に示すように、縦移動ユニット90は、長手状のフレーム91を有し、それの両端部のそれぞれに、図3および図4(a)に示すように、少なくとも1つのホイール(転動体など)92が回転可能に装着されている。図4(a)に示すように、各ホイール92が、凝集槽40のうち、対応する縦レール130上を転動することにより、縦移動ユニット90が縦移動させられる。
【0177】
縦移動ユニット90は、本実施形態においては、ユーザによって(例えば、横移動ユニット80のハンドル86を持って)手動で移動させられるが、電動モータなどを用いる自走式でもよい。
【0178】
図4(a)に示すように、フレーム91には、それの長さ方向(横方向)に隔たった一対のガイド94,94が装着されている。それらガイド94,94は、一対の縦部材48,48に係合することにより、縦移動ユニット90が、それら縦部材48,48から脱線することなく縦移動するように案内される。一例においては、縦移動中、各ガイド94の外面が、対応する縦レール(アングル材より成る縦部材48)130の内側端面に摺接する。
【0179】
図3に示すように、フレーム91は、それの厚さ方向に貫通する長穴96を有し、その長穴96は、添加撹拌ユニット60が横移動する際にホッパ142および各第1の撹拌機100が描く軌跡に沿って延びている。その長穴96は、その縦移動中における任意の位置において、凝集剤の散布および各第1の撹拌機100のシャフト104および第1の撹拌翼106の通過を許容する。
【0180】
図3に示すように、フレーム91の両側部であって長穴96を隔てて対向するものは、横移動ユニット80のための一対の横レール98,98として機能する。
【0181】
<横移動ユニット80の構成および作用効果>
【0182】
図1図4、特に、図2に示すように、横移動ユニット80は、それのフレーム140の幅方向における両側部において、縦移動ユニット90の一対の横レール98,98にそれぞれ支持されている。
【0183】
横移動ユニット80は、長手状のフレーム140を有し、そのフレーム140の幅方向における両側部のそれぞれに、図3および図4(b)に示すように、少なくとも1つのホイール(転動体など)84が回転可能に装着されている。図4(b)に示すように、各ホイール84が、縦移動ユニット90のうち、対応する横レール98上を転動することにより、横移動ユニット80が横移動させられる。
【0184】
横移動ユニット80は、さらに、フレーム140の長さ方向における両端部において、ユーザによって握られることが可能な一対のハンドル86,86を有する。
【0185】
横移動ユニット80は、本実施形態においては、ユーザによって(例えば、一対のハンドル86,86を持って)手動で移動させられるが、電動モータなどを用いる自走式でもよい。
【0186】
図4(b)に示すように、フレーム140には、それの幅方向(縦方向)に隔たった一対のガイド88,88が装着されている。それらガイド88,88は、縦移動ユニット90のフレーム91の長穴96の対向内壁面に係合することにより、横移動ユニット80が、その長穴96から脱線することなく横移動するように案内される。一例においては、横移動中、各ガイド88の外面が、長穴96の対向内壁面、すなわち、対応する横レール98の内側端面に摺接する。
【0187】
<添加撹拌ユニット60の2次元移動>
【0188】
横移動ユニット80は、一例においては、添加撹拌ユニット60と一体的に、凝集槽40に対してらせん状またはジグザグ状の経路に沿って手動でまたは自動的に相対移動させられる。それにより、凝集剤が凝集槽40内の廃水の表面全体にくまなく散布されるように添加撹拌ユニット60が2次元的に移動させられる。
【0189】
図2および別の実施形態のための図11に示すように、凝集槽40には、平面視において、添加撹拌ユニット60が2次元移動可能である移動可能範囲(図2においては、「縦移動範囲」、図11においては、「縦移動範囲」および「横移動範囲」)と、添加撹拌ユニット60が移動可能ではない移動不可能範囲とが割り当てられる。
【0190】
本実施形態においては、説明の便宜上、横移動ユニット80が、前述の「第1移動ユニット」の一例を構成し、また、縦移動ユニット90が、前述の「第2移動ユニット」の一例を構成し、また、横移動ユニット80と縦移動ユニット90とが互いに共同して、前述の「移動機構」の一例を構成していると考えることが可能である。
【0191】
本実施形態においては、作業者が、横移動ユニット80および縦移動ユニット90(前述の「移動機構」の一例であり、以下、「2次元移動ユニット」と総称する。)を、図3に例示するように、手動でまたは人力で作動させる。
【0192】
これに代えて、作業者は、その2次元移動ユニットを自動的に、例えば、モータ駆動によって作動させてもよい。その自動制御は、無人で、プログラム制御として行っても、有人で、作業者による有線または無線の遠隔制御として行ってもよい。
【0193】
<移動可能な2つの第1の撹拌機100>
【0194】
図1ならびに図5(b)および(c)に示すように、各第1の撹拌機100は、凝集槽40に対し、例えば、中心撹拌または底部撹拌を行うように凝集槽40に対して配備される。
【0195】
一例においては、図5(b)に示すように、2つの第1の撹拌機100が、いずれも、同じ向きにそれぞれの第1の撹拌翼106を回転させる。
【0196】
それにより、2つの第1の撹拌機100は、互いに共同して、第1のフローパターン、すなわち、いずれの撹拌機100の位置においても下降流となり、やがて、凝集槽40の右側および左側の内壁面のいずれにおいても上昇流となるとともに、2つの第1の撹拌機100の位置において、それぞれの縦方向の水流が並行するフローパターン(一垂直断面において、並行流、平行流、対称流)を生成する。
【0197】
ただし、図示するフローパターンは、説明の便宜上、2つの第2の撹拌機110による水流の影響が無視されて描かれている。
【0198】
別の例においては、図5(c)に示すように、2つの第1の撹拌機100が、それぞれ互いに逆向きにそれぞれの第1の撹拌翼106を回転させる。
【0199】
それにより、2つの第1の撹拌機100は、互いに共同して、第2のフローパターン、すなわち、図において左側の撹拌機100の位置において下降流となり、やがて、凝集槽40の左側内壁面に沿って上昇流となる一方、図において右側の撹拌機100の位置において上昇流となり、やがて、凝集槽40の右側内壁面に沿って下降流となるとともに、2つの第1の撹拌機100の位置において、それぞれの縦方向の水流が互いに逆向きとなるフローパターン(一垂直断面において、対向流、非対称流)を生成する。
【0200】
ただし、図示するフローパターンは、説明の便宜上、2つの第2の撹拌機110による水流の影響が無視されて描かれている。
【0201】
それら2つのフローパターンを、凝集剤の撹拌効率を高めるか否かという視点で対比すると、図5(c)に示すフローパターンの方が凝集槽40内の水流が乱流化されるという点で有効であるかもしれない。
【0202】
本実施形態においては、添加撹拌ユニット100が、撹拌機能を実現するために、撹拌翼106の自転と、凝集槽40に対する相対的な並進運動とが行われる。その結果、撹拌翼106の自転による第1の液中分散と、シャフト104が、並進運動中は撹拌翼106に依存せずに撹拌を行い得る撹拌部材として、凝集槽40内の廃水をかき混ぜるかまたはかき回すことによる第2の液中分散とが一緒に行われる。
【0203】
図1に示す例においては、2つの第1の撹拌機100,100が、平面視において、横方向に並列されているが、これに代えて、例えば、縦方向に並列されてもよいし、また、横方向にも縦方向にも傾斜する方向に並列されてもよい。
【0204】
<固定設置される2つの第2の撹拌機110>
【0205】
図1および平面図である図5(a)に示すように、2つの第2の撹拌機110が、凝集槽40に取り付けられている。図1に示すように、各撹拌機110は、それの本体部112が凝集槽40のフレーム120に取り付けられた取付金具160に着脱可能に取り付けられることにより、凝集槽40に装着されている。
【0206】
それら第2の撹拌機110は、前記廃水に添加された凝集剤をエアバブルを用いることなく撹拌するために、2つの第2の撹拌翼116を回転させ、それにより、凝集剤の液中分散を、2つの第1の撹拌機100による凝集剤の液中分散に対して追加的に行う。
【0207】
図1および図5(a)に示すように、2つの第2の撹拌機110は、凝集槽40に対し、平面視において互いに食い違うように、かつ、シンク42の、前述の複数(例えば、一対)の側面部(各撹拌機110の軸方向に平行に延びる側面部)のうち近接するものに沿って配置される。
【0208】
各第2の撹拌機110は、平面視においては、図5(a)に示すように、例えば、側面撹拌を実現する。
【0209】
一例においては、図5(a)に示すように、2つの第2の撹拌機110は、互いに共同して、第3のフローパターン、すなわち、図において左側の撹拌機110の位置において右向きの吐出流となり、やがて、その吐出流が、凝集槽40の右側内壁面に衝突して進路を、図において右側の撹拌機110に向かうように下向きに変更され、一方、その右側の撹拌機110の位置において左向きの吐出流となり、やがて、その吐出流が、凝集槽40の左側内壁面に衝突して進路を、図において左側の撹拌機110に向かうように上向きに変更されるフローパターン(一水平断面において、シンク42の内壁面に沿った一方向循環流、または、渦巻き状の水流)を生成する。
【0210】
ただし、図示するフローパターンは、説明の便宜上、2つの第1の撹拌機100による水流の影響が無視されて描かれている。
【0211】
各第2の撹拌機110は、3次元的には、図1に示すように、例えば、偏心傾斜撹拌を実現するように配置される。よって、各第2の撹拌機110は、図5(a)に示す側面撹拌によって生成される水流と図1に示す偏心傾斜撹拌によって生成される水流とが合成された水流を表すフローパターンを生成することが予想される。
【0212】
<第1および第2の撹拌機110によって生成される合成フローパターン>
【0213】
上述の第3のフローパターンは、シンク42内において、図5(b)および(c)にそれぞれ示す第1および第2のフローパターンのうち採用されたものと共に、同時に生成される。それら種類の異なる2つのフローパターンすなわち2種類の個別フローパターンは、シンク42内において混合されて、1つの合成フローパターンとなる。
【0214】
その合成フローパターンは、前記2つの個別フローパターンのいずれよりも、乱流化された水流を表す。よって、その合成フローパターンは、前記2つの個別フローパターンのいずれよりも、凝集剤の撹拌効率を高めることに寄与するという点で、有利であるかもしれない。
【0215】
一例においては、第1の撹拌機100および第2の撹拌機110が、各撹拌翼106,116の回転(自転)により、それぞれ互いに異なるフローパターンを生成する。
【0216】
別の例においては、第1の撹拌機100および第2の撹拌機110が、各撹拌翼106,116の回転により、軸流であるか旋回流であるかに関してそれぞれ互いに異なるフローパターンを生成する。
【0217】
別の実施形態を説明するための図11に示すように、2つの第2の撹拌機110は、平面視において、凝集槽40のうち移動不可能範囲に取り付けられる。これにより、添加撹拌ユニット60の移動中に、いずれの2次元位置においても、その添加撹拌ユニット60に搭載された2つの第1の撹拌機100が、凝集槽40に固定設置される2つの第2の撹拌機110と干渉することが防止される。
【0218】
<凝集剤の定義>
【0219】
前述のように、ここに、「凝集剤」という用語は、広義の「凝集剤」を意味する用語である。よって、その広義の「凝集剤」は、「液中標的物質捕捉剤」とか「有害物質捕捉剤」とか「重金属捕捉剤」とかという用語で等価的に置換することが可能である。その広義の「凝集剤」は、狭義の「凝集剤」、「重金属不溶化剤」および「活性炭等の吸着剤」を選択的にまたは包括的に包含する。
【0220】
例えば、狭義の「凝集剤」は、予め選択された有害物質の複数の粒子を、荷電中和により、凝集させるために添加される。
【0221】
また、「重金属不溶化剤」は、例えば、廃水中の塗膜片中の重金属を原位置で固化・不溶化し、それにより、その廃水中の溶媒としての洗浄水への重金属の溶出を抑制し、その結果、塗膜片が捕捉されればそれと一緒に重金属も漏れなく捕捉されることを促進するために添加される。
【0222】
また、「活性炭等の吸着剤」は、イオン交換により、廃水中の重金属イオンを吸着して捕捉するために添加される。その活性炭は、複数の粒子として構成したりフィルタとして構成することが効果的である。
【0223】
それら3種類の重金属捕捉剤のうちのいずれを使用しても、廃水中に、重金属または重金属を含有する物体が捕捉されて凝集物を構成することになる。また、それら3種類の重金属捕捉剤のうちの2つ以上のものを、同じ廃水中に複合的に使用してもよい。複合使用により捕捉効果の向上および捕捉対象物質の種類の広範化とが期待される。
【0224】
<撹拌作業の試験結果>
【0225】
本発明者は、図1に示すシステム10を用いることにより、凝集槽40内の廃水に凝集剤を添加して撹拌作業を行った。
【0226】
廃水が静止している状態で、撹拌機100,110をいきなり高速で回転させると、予定外に空気が廃水内に混入してエアバブルが発生した。これを防止するために、本発明者は、撹拌機100,110を廃水に生起される水流に同期するように徐々に回転速度を加速させ、それにより、廃水内でのエアバブル発生が効果的に抑制された。
【0227】
撹拌機100,110と同期する水流(例えば、乱流)が廃水内に生起される状態において、添加撹拌ユニット60から凝集剤を散布すると、その凝集剤が廃水内の渦巻きの中に吸い込まれるようにスムーズに巻き込まれていった。それにより、廃水全体に凝集剤がくまなく分散された。
【0228】
排水に乱流が発生している状態においては、撹拌機100,110を停止させても、その乱流が慣性によって継続し、そのことを撹拌機100,110が実質的に邪魔することはなかった。
【0229】
この試験においては、廃水内への凝集剤の散布を開始してから、その廃水内の標的物質のうち実質的な全部が凝集してフロックになるまでに、約10分程度しか経過しなかった。このように比較的短時間で凝集作業が完了した理由は、凝集剤が廃水内にくまなく分散して凝集剤の各部分が無駄にクラスター化することなく、凝集剤が廃水内のすべての標的物質に効果的に接触して作用したからであると推測される。
【0230】
<凝集装置20の組立設置および解体撤去の一例>
【0231】
図7には、凝集装置20の組立設置および解体撤去が取り扱われる様子が概念的に工程図で表されている。
【0232】
まず、ステップS11において、作業者本人または委託された第三者が、凝集装置20をその組立て前の状態で、すなわち、それの複数の部品の集まりの状態で、本拠地から、トラックなどの輸送手段を用いて、目的地である現場、すなわち、前述の湿式塗膜剥離作業が行われる予定の場所まで搬送する。
【0233】
次に、ステップS12において、作業者が、現場に到着した後、その現場において、前記複数の部品を組み立てて凝集装置20を完成させ、さらに、その凝集装置20を、必要位置まで移動させて設置する。
【0234】
続いて、ステップS13において、作業者または別の者が、現場において、前述の湿式塗膜剥離作業を行い、その過程において、塗膜洗浄工程において生成された廃水を、凝集装置20を用いて処理する。
【0235】
その後、ステップS14において、作業者が、一連の工程を終えた後、凝集装置20を解体して複数の部品に分解して現場から撤去する。
【0236】
最後に、ステップS15において、作業者または別の者が、それら部品の集まりを、トラックなどの輸送手段を用いて、本拠地に返送する。
【0237】
<廃水の変遷の一例>
【0238】
図8には、凝集装置20の作用により、原水としての廃水が固液分離される過程が概念的にブロック図で表されている。
【0239】
まず、凝集ステージにおいて、作業者は、凝集装置20を用いて、原水としての廃水に凝集剤を添加(散布)する。
【0240】
次に、分離ステージにおいて、作業者が、原水を、液体としての処理水と、個体としての凝集フロックとに固液分離する。
【0241】
この固液分離は、例えば、2段階で行われる。
【0242】
具体的には、第1段階においては、作業者が、凝集槽40から凝集フロック(有害物質)を分離して回収し(例えば、作業者がネットで掬う(例えば、小分け回収方式で)などして)、その後、作業者は、凝集槽40の廃水出口44から廃水を完全なまたは不完全な処理水として排出する。
【0243】
第2段階においては、作業者が、その排出された廃水(サイズの大きな有害物質粒子が除去された状態)を分離槽50に送給する。その分離槽50において、残存する有害物質粒子がふるい52によって捕捉される。作業者は、そのふるい52を通過した廃水を、処理水として、例えば、別の湿式塗膜剥離作業に再利用してもよい。
【0244】
ただし、この固液分離は、1段階で行ってもよいし、3以上の段階を経て行ってもよい。また、上述の第1段階を省略し、前記廃液の固液分離を上述の第2段階と同じ方法によって一気に行ってもよい。
【0245】
<廃水処理作業の一例>
【0246】
図9には、凝集装置20の組立ておよびその凝集装置20を用いた廃水処理が時系列的に概念的に工程図で表されている。
【0247】
まず、ステップS21において、作業者が、現場または本拠地において、前述の複数の部品を用いて凝集槽40を組み立てる。
【0248】
次に、ステップS22において、作業者が、縦移動ユニット90(例えば、完成状態で現場または本拠地に搬入される)を凝集槽40上に一対のガイド94,94を用いて設置する。
【0249】
続いて、ステップS23において、作業者が、横移動ユニット80(例えば、完成状態で現場または本拠地に搬入される)を縦移動ユニット90上に一対のガイド88,88を用いて設置する。
【0250】
その後、ステップS24において、作業者が、横移動ユニット80のフレーム140でもある添加撹拌ユニット60のフレーム140にホルダ146を装着し、そのホルダ146にホッパ142を装填し、さらに、フレーム140に2つの第1の撹拌機100を装着する。その結果、添加撹拌ユニット60が横移動ユニット80と一体化される。
【0251】
続いて、ステップS25において、作業者が、2つの第2の撹拌機110を凝集槽40のフレーム120(前述の正面部および背面部)上に取付金具160を用いて傾斜状態で設置する。
【0252】
その後、ステップS26において、作業者が、前記廃水を原水として凝集槽40のシンク42内に投入する。その結果、2つの第1の撹拌機100および2つの第2の撹拌機110のいずれも、それぞれの撹拌翼106,116が回転する状態で、前記廃水内に沈降させられる。
【0253】
続いて、ステップS27において、作業者が、凝集剤をホッパ142内に投入し、そのホッパ142によって凝集剤を前記廃水に分散添加しつつ、2つの第1の撹拌機100の自転により、凝集剤を撹拌する。ここに、「分散添加」は、1次的な気中分散に相当し、また、「自転による撹拌」は、1次的な液中分散に相当する。
【0254】
また、ステップS28において、作業者が、添加撹拌ユニット60を、それのハンドル86を用いて、凝集槽40の上方において、2次元的に移動させる。それにより、凝集剤が前記廃水の表面上に散布される。ここに、「散布」は、2次的な気中分散に相当する。
【0255】
また、ステップS29において、2つの第1の撹拌機100が自転しつつ、2次元移動(並進運動)させられることにより、凝集剤が撹拌される。ここに、「並進運動による撹拌」は、2次的な液中分散に相当する。
【0256】
また、ステップS30において、2つの第2の撹拌機110の自転により、凝集剤が撹拌される。ここに、「自転による撹拌」は、3次的な液中分散に相当する。
【0257】
それらステップS27-S30は、順次行われるのではなく、並行的に行われる。
【0258】
その後、ステップS31において、作業者が、原水を処理水と凝集フロックとに固液分離する。
【0259】
続いて、ステップS32において、作業者が、分離槽50から、または、凝集槽40からダイレクトに、処理水を排出する。
【0260】
作業者は、ホッパ142から凝集剤を凝集槽40に散布するために、片側の手で、添加撹拌ユニット60を2次元移動させ、それと並行して、反対側の手で、ホッパ142の取っ手148を握り、それに伴い、同じ手の指で、トリガ144を連続的にまたは断続的に圧迫・解放する操作(ふるい143の往復回転に変換されるトリガ144の往復運動を生起する操作)を反復する。
【0261】
作業者がトリガ144を連続操作すれば、添加撹拌ユニット60の移動中に凝集剤が連続的に散布され、一方、トリガ144を断続操作すれば、添加撹拌ユニット60の移動中に凝集剤が断続的に(散布されない区間を残しつつ)散布されることになる。
【0262】
その結果、最終的に、凝集槽40内の廃水の表面のうち前記移動可能範囲内にある部分の全体にできる限り均一に凝集剤が散布されることになる。
【0263】
[第2実施形態]
【0264】
次に、本発明の例示的な第2実施形態を説明する。ただし、第1実施形態と共通する要素については、同一の符号を引用するなどして重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。
【0265】
図10には、本実施形態に従う廃水処理システム200の凝集装置210が部分的に分解組立状態で斜視図で示されている。
【0266】
この凝集装置210は、第1実施形態における凝集装置20と共通する構成要素と、その凝集装置20には存在しない新規な構成要素とを有する。その新規な構成要素は、例えば、図10に示すように、フロック捕捉用ケージ220である。
【0267】
そのフロック捕捉用ケージ220は、袋状のフレキシブルなネット222が矩形箱状のフレーム224に、そのフレーム224のうち少なくとも底面部と外周面部(前述の正面部、背面部および一対の側面部)とに張り巡らされるように装着されることによって構成されている。
【0268】
ネット222は、フレキシブルな材料によって構成され、自身の形状について自己保持性を有しないが、3次元的な剛体製(金属製、合成樹脂製、木製など)のフレーム224によって少なくとも局所的に補強されることにより、自身の形状が実質的に保持される。よって、ネット222自体は、ソフト型のろ過袋の一例であるが、ネット222がフレーム224によって補強されて成るフロック捕捉用ケージ220は、ハード型のろ過袋の一例である。
【0269】
図11に平面図で示すように、ネット222は、凝集槽40内に、その内部空間を外側空間と内側空間とに仕切るように配置される。このネット222は、前記廃水のうちの水分が処理水として漏れ出ることを許容しつつ、前記廃水内に生成された凝集フロックを捕捉することが可能である。
【0270】
このようにネット222が凝集槽40内においてろ過作用を果たすために、そのネット222は、例えば、メッシュシートを用いて製作することが可能である。
【0271】
図11に平面図で示すように、2つの第1の撹拌機100は、フロック捕捉用ケージ220の内側に割り当てられた縦移動範囲および横移動範囲内において移動させられる。2つの第1の撹拌機100は、フロック捕捉用ケージ220の境界を超えて移動することが阻止されている。
【0272】
作業者は、フロック捕捉用ケージ220を凝集槽40に対して沈降させることと浮上ささせることとを選択的に行い得る。フロック捕捉用ケージ220の昇降は、手動で行っても機械を用いて行ってもよい。
【0273】
<フロック捕捉用ケージ220の昇降方法>
【0274】
一例においては、前記廃水への凝集剤の添加前に、フロック捕捉用ケージ220が凝集層40内に沈降させられる。
【0275】
前記廃水内での前記凝集フロックの生成が完了すると、フロック捕捉用ケージ220が凝集槽40から浮上させられる。
【0276】
その浮上により、前記廃水が、ネット222から漏れ出る処理水と、そのネット222内に捕捉されて残留する凝集フロックとに分離される。このように、ネット222は、凝集ステージと分離ステージとの双方に使用される。ネット222から漏れ出る処理水は、廃水出口44を経てドレン管46に排出される。
【0277】
別の例においては、前記廃水への凝集剤の添加前に、フロック捕捉用ケージ220が凝集層40内に、フロック捕捉用ケージ220の底面が凝集槽40のシンク42の底部43の上面(内面)から所定距離(例えば、約3-約10cm)浮上する位置まで沈降させられる。この状態では、フロック捕捉用ケージ220(ネット222)の下面とシンク42の底部43の上面(内面)との間に水平方向に延びる板状の隙間が形成される。
【0278】
その隙間を形成するために、フロック捕捉用ケージ220(ネット222)の下面とシンク42の底部43の上面(内面)との間にスペーサを挿入してもよいし、フロック捕捉用ケージ220の吊上げ位置の調節によって実現してもよい。
【0279】
前記廃水内での前記凝集フロックの生成が完了すると、フロック捕捉用ケージ220が沈降したまま、廃水出口44が開栓される。それにより、前記廃水がネット222によってろ過され、凝集フロックがネット222内に捕捉されたまま、前記廃水のうちの処理水がネット222から漏れ出る。その処理水は、前記隙間を経て廃水出口44に向かい、ネット222内の固形物によって流通が邪魔されることなく、やがて廃水出口44に集まり、その後、ドレン管46に排出される。
【0280】
その排水により、前記廃水が、ネット222から漏れ出る処理水と、そのネット222内に捕捉されて残留する凝集フロックとに分離される。このように、ネット222は、凝集ステージと分離ステージとの双方に使用される。
【0281】
この例においては、すべての処理水が凝集槽40から排出された後、フロック捕捉用ケージ220が凝集槽40から浮上させられ、それにより、凝集フロックが単独で回収されて(例えば、一括回収方式で)処分される。そのフロック捕捉用ケージ220は、例えば、少なくとも一時的に空間に固定された巻上機がワイヤロープ(例えば、図13に示す吊上げ紐状体240を参照。)を巻き上げてフロック捕捉用ケージ220を昇降させるホイスト式リフタなどのリフタを用いて凝集フロックを引き揚げるリフト式である。
【0282】
図11に平面図で示すように、フロック捕捉用ケージ220を備えるように構成された凝集槽40に対し、2つの第1の撹拌機100は、平面視において、フロック捕捉用ケージ220の内側に位置するように配置される。これに対し、2つの第2の撹拌機110は、平面視において、フロック捕捉用ケージ220の外側に位置するように配置される。
【0283】
ただし、2つの第2の撹拌機110は、それらの少なくとも一部が、平面視において、フロック捕捉用ケージ220の内側に位置するように配置されてもよい。
【0284】
図12には、図10に示す凝集装置210の組立ておよびその凝集装置210を用いた廃水処理が時系列的に概念的に工程図で表されている。
【0285】
まず、ステップS51において、作業者が、前述の複数の部品を用いて凝集槽40を組み立てる。
【0286】
次に、ステップS52において、作業者が、フロック捕捉用ケージ220を組み立て、それを凝集槽40内に沈降させる。
【0287】
続いて、ステップS53において、図9に示すステップS22-S24と同様にして、作業者が、縦移動ユニット90、横移動ユニット80および添加撹拌ユニット60を凝集槽40に対して配備する。
【0288】
その後、ステップS54において、作業者が、2つの第2の撹拌機110を凝集槽40のフレーム120上に取付金具160を用いて傾斜状態で設置する。
【0289】
続いて、ステップS55において、作業者が、前記廃水を原水として凝集槽40のシンク42内に投入する。その結果、2つの第1の撹拌機100および2つの第2の撹拌機110ならびにフロック捕捉用ケージ220のいずれも、前記廃水内に沈降させられる。フロック捕捉用ケージ220は、完全にまたは部分的に前記廃水内に沈降させられる。
【0290】
その後、ステップS56において、図9に示すステップS27と同様にして、作業者が、凝集剤をホッパ142内に投入し、そのホッパ142によって凝集剤を前記廃水に分散添加しつつ、2つの第1の撹拌機100の自転により、凝集剤を撹拌する。ここに、「分散添加」は、1次的な気中分散に相当し、また、「自転による撹拌」は、1次的な液中分散に相当する。
【0291】
また、ステップS57において、図9に示すステップS28と同様にして、作業者が、添加撹拌ユニット60を、それのハンドル86を用いて、凝集槽40の上方において、2次元的に移動させる。それにより、凝集剤が前記廃水の表面上に散布される。ここに、「散布」は、2次的な気中分散に相当する。
【0292】
また、ステップS58において、図9に示すステップS29と同様にして、2つの第1の撹拌機100が自転しつつ、2次元移動(並進運動)させられることにより、凝集剤が撹拌される。ここに、「並進運動による撹拌」は、2次的な液中分散に相当する。
【0293】
また、ステップS59において、図9に示すステップS30と同様にして、2つの第2の撹拌機110の自転により、凝集剤が撹拌される。ここに、「自転による撹拌」は、3次的な液中分散に相当する。
【0294】
それらステップS56-S59は、順次行われるのではなく、並行的に行われる。
【0295】
その後、ステップS60において、作業者が、フロック捕捉用ケージ220を凝集槽40から引き揚げて前記廃水から浮上させる。それにより、原水が、凝集槽40内の処理水と、フロック捕捉用ケージ220内の凝集フロックとに固液分離される。
【0296】
続いて、ステップS61において、作業者が、凝集槽40からダイレクトに処理水を排出するか、または、凝集槽40から排出された処理水を分離槽50に送給し、そこで、再度、固液分離を行う。
【0297】
なお付言するに、本実施形態においては、図10に例示するように、ネット222が剛体製のフレーム224によって少なくとも局所的に補強されることにより、自身の形状が実質的に保持される。
【0298】
これに代えて、図13に例示するように、フレーム224を用いることなく1枚または複数枚のメッシュシート230を立体的に接合する(または立体加工する)ことにより、自身の形状に関する自己保持性を実現するネットを、凝集槽40内の廃水をろ過してその廃水から凝集フロックを分離して回収する凝集フロック回収シート組立体234として用いる態様で本発明を実施してもよい。この態様においては、前記ネットすなわち凝集フロック回収シート組立体234がろ過シートとして機能する。
【0299】
ここに、「立体的に接合する(または立体加工する)」という文言は、例えば、分解不能な接合方式としてのメッシュシート230の縫製という方式であってもよいし、使用後に分解可能な接合方式としてのメッシュシート230の締結(例えば、1枚のメッシュシート230のうちの重ね代または複数枚のメッシュシート230の間の重ね代をねじによって締め付けるクランプ式)であってもよい。
【0300】
この態様においては、例えば、凝集フロック回収シート組立体234が、図13に示すように、天面において開口する六面体、すなわち、前後左右にそれぞれ配置された4つの側面(前後の側面と左右の側面)と底面とを有する五面体を成すように構成される。
【0301】
ここに、「五面体」は、それの底面にある4つの薄肉三角錐状コーナー部のそれぞれに局部的に、別のシートを薄肉三角錐状に立体加工したものまたは成形品としての薄肉三角錐を重ね合わせて補強してもよい。
【0302】
この例においては、凝集フロック回収シート組立体234が、平面視において、縦寸法が900mm、横寸法が1800mmであり、また、高さ寸法が500mmであるサイズを有する。
【0303】
この例においては、さらに、凝集フロック回収シート組立体234のうちの前記4つの側面を構成する4枚のメッシュシート230のそれぞれのうちのベルト状の上縁部236(例えば、メッシュシート230のもともとの上縁部、そのもともとの上縁部をメッシュシート230の本体部側に折り返して二重にして補強された折返し部、または、もともとの上縁部に別の帯状体を重ね合わせて補強したもの)に複数の貫通穴238がその上縁部236に沿って離散的に形成される。各貫通穴238は、例えば、ハトメという金具を装着して補強してもよい。
【0304】
この例においては、さらに、凝集フロック回収シート組立体234が、複数個の貫通穴238のうちの少なくとも一部に1本または複数本の吊上げ紐状体(例えば、ロープ、ワイヤ、チェーンなど)240が連結される。各吊上げ紐状体240は、凝集フロック回収シート組立体234を牽引する牽引具の一例である。
【0305】
その「連結」は、例えば、図13に示すように、各貫通穴238に各吊上げ紐状体240の先端部が連結されることにより、各吊上げ紐状体240の他端部が自由端部(例えば、上端部)となる態様で実現したり、図示しないが、互いに対向する2個の貫通穴238,238に同じ吊上げ紐状体240の両端部がそれぞれ連結されることにより、その吊上げ紐状体240の両端部がいずれも固定端部(連結端部)となり、それにより、吊上げ紐状体240が凝集フロック回収シート組立体234の本体部(例えば、上縁部236)と共同しててループ状を成す態様で実現してもよい。
【0306】
上述の例においては、凝集槽40を用いた凝集作業が終了すると、吊上げ紐状体240のうち凝集槽40から露出している部分が作業者によって手動でまたは動力源を用いて自動的に引き上げられる。それにより、凝集フロック回収シート組立体234が凝集槽40から浮上させられて水切りされる。
【0307】
このとき、凝集フロック回収シート組立体234から前記処理水(上澄み液)が漏れ出て凝集槽40内に留置される一方、凝集フロック回収シート組立体234内に前記凝集フロックが捕捉されて凝集槽40から引き揚げられ、それにより、前記処理水と前記凝集フロックとが互いに分離される。よって、この分離工程においては、凝集フロック回収シート組立体234が凝集槽40と共同して分離槽を構成すると考えることが可能である。
【0308】
<凝集槽内の流動解析について>
【0309】
ここで、凝集槽40内に2台の第1の撹拌機100,100を並列設置することによって粉末状の凝集剤が廃水中に位置安定的に分散されて添加される技術について説明する。
【0310】
ただし、この技術の本質は2台の第1の撹拌機100,100のうち2本の第1の撹拌シャフト104,104の並列配置を含むため、この技術を採用するために、それら2本の第1の撹拌シャフト104,104を、それらに共通の本体部102(駆動源)によって駆動してもよい。この構成は、駆動源の総数に着目すれば、1台の第1の撹拌機100として認識され得る。よって、上記の技術を採用するために2台の第1の撹拌機100,100を使用することは不可欠ではない。
【0311】
まず、この技術を開発した背景を説明するに、粉末状の凝集剤は、廃水中に投下した場合、液状のものとは異なり、自身が多孔質であるなどの理由で、浮上し、沈降せずに廃水中で分散しない傾向がある。
【0312】
そのため、粉末状の凝集剤については、欠点として、凝集剤の投下後に単に廃水を撹拌するのみでは、凝集剤を廃水の全体において効果的に分散し、廃水のうち凝集剤と接触する部分を極大化し、それにより、凝集剤の凝集効率を極大化することが困難である。すなわち、粉末状の凝集剤については、単なる撹拌では、凝集槽40内で高い均一撹拌性能を発揮できないのである。
【0313】
さらに、凝集剤を廃水中に投下しても、すぐに凝集剤自身がクラスター化して団子状態となり、廃水のうち凝集剤と接触する部分が減少し、そのため、凝集剤の均一分散効果が低下し、ひいては、凝集剤の凝集効率が低下してしまう。
【0314】
さらに、近年、環境保全、作業環境の安全性向上という社会的な要請などから、溶剤型剥離剤の使用が敬遠され、代わりに、水系剥離剤が脚光を浴びているが、その場合、剥離剤をエマルジョン系として調製するために界面活性剤が添加される。そのため、剥離剤が混入した廃水をエアバブルを用いて撹拌すると、廃水に大量のエアバブルが発生し、そのため、凝集剤の成果物としての凝集フロックの回収作業が困難化してしまう。よって、エアバブルを用いずに廃水を撹拌したいという要請もある。
【0315】
そこで、本発明者は、2本の第1の撹拌シャフト104,104を、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置(対向配置、並列近接配置)し、かつ、それら第1の撹拌シャフト104,104をいずれも同じ方向、例えば、図1図5図10および図14に例示するように、時計回りに回転させるという技術を案出した。
【0316】
この技術によれば、それら撹拌シャフト104,104の共同作用(例えば、それら撹拌シャフト104,104によってそれぞれ、同じ向きに回転するように生成される2つの固体渦を近接させ、廃水のうちそれら固体渦によって挟まれる部分に回転力を与えること)によってそれら撹拌シャフト104,104の近傍に下向きの渦巻き(例えば、強制渦)が生成される。その結果、凝集剤粉末がその渦巻きのくぼみに投下されると、その後、その凝集剤粉末がその渦巻きに引き込まれ、その凝集剤粉末が凝集槽40の底部43(槽底部)に向かって沈降させられる。
【0317】
ここに、「凝集剤粉末がその渦巻きのくぼみに投下される」という行為は、例えば、「凝集剤粉末がその渦巻きのくぼみの内部すなわち空洞内に投下される」という行為、および/または、「凝集剤粉末がその渦巻きのくぼみの上端エッジまたはそれの外側外周近傍に投下される」という行為を含む。
【0318】
また、各撹拌機100,100は、対応する撹拌翼106によって発生させられる水流が主として軸流であるように構成される。
【0319】
廃水に渦巻きが発生すると、廃水の液面の自由表面に、概して逆円錐状を成すくぼみが発生する。この「くぼみ」は空洞ともいう。その渦巻きは、概して逆円錐状を成すくぼみが前記液面に開口する状態で形成されるように廃水中に生成される。
【0320】
また、「下向きの渦巻き」は、その渦巻き内に固形物が投入されると、その固形物に下向きの推進力が付与されることになる渦巻きを意味する。
【0321】
ところで、粉末状の凝集剤の一例は、自然由来の火山灰から生成されたものであり、多孔質である。よって、この種の凝集剤は、廃水に浮き易い。しかし、この種の凝集剤は、無害であり、また、それが投入された後の廃水のpHも8程度で、ほぼ中性の範囲に収まる。
【0322】
したがって、上述の下向きの渦巻きを廃水に生成すれば、そのような凝集剤の物性上の利点を享受しつつ、改善された撹拌能力、ひいては、改善された凝集効率を達成することが容易となる。
【0323】
図14(a)は、前記第1または第2の実施形態において、並列配置または対向配置された一対の第1の撹拌機100,100および食い違い配置(凝集槽40において一対の対角位置にそれぞれ傾斜姿勢で配置される対角傾斜配置)された一対の第2の撹拌機110,110によって凝集槽40内に生成されるフローパターンの一例であって図5に示すいくつかの例とは部分的に異なるものを概念的に説明するための側面図であり、同図(b)は、平面図である。
【0324】
このように構成された凝集装置20につき、本発明者による試験の結果、2本の第1の撹拌シャフト104,104が同じ方向に回転すると、図15に示すように、一対の第1の撹拌シャフト104,104間の上下方向隙間またはそれの周辺すなわち一対の第1の撹拌シャフト104,104の近傍に下向きの渦巻きが生成されることが確認された。
【0325】
図15(a)-(c)は、前記第1または第2の実施形態に従う凝集装置20を備えた凝集槽40を用いる一実施例(試作品)について実際に性能試験を行ったときの様子を撮影した複数枚の写真を示している。
【0326】
具体的には、同図(a)は、前記対向配置された一対の第1の撹拌機100,100(同図においては、「並列エアー回転撹拌機」という用語で表す。)とホッパ142(同図においては、「凝集剤投入器」という用語で表す。)と備えた凝集装置20を、各撹拌機100,100について回転調整を行う状態で撮影した写真を示す。この写真では、前記並列エアー回転撹拌機を視認できる。
【0327】
ここに、「回転調整」とは、廃水内に(例えば、一対の第1の撹拌シャフト104,104の近傍に生成された渦巻き内に)大気中の空気が撹拌翼106によって巻き込まれて(および/または、その渦巻きの中心で圧力が周辺より低下する結果、廃水中に予め混入されていた気泡がその渦巻きの中心に集中して)廃水内に過剰な泡が発生する状況を防止ないしは軽減するために、各撹拌機100,100の撹拌シャフト104の回転数(回転速度)を調整する作業者の動作または行為を意味する。
【0328】
また、同図(b)は、凝集槽40内に下向き渦巻きが発生した状況を撮影した写真を示す。この写真では、一対の第1の撹拌シャフト104,104の近傍に生成された渦巻きを視認できる。さらに、この写真では、その渦巻きの近傍において、廃水に泡が発生していない状況も視認できる。
【0329】
各撹拌機100,100については、軸方向に吐出流を生成する軸流タイプである場合には、対応する撹拌翼106として、例えば、3枚のプロペラ翼などが選択される。
【0330】
各第1の撹拌シャフト104,104には、1本当たり複数の撹拌翼106,106が装着されている。同図(a)に示す一例においては、それら撹拌翼106が、撹拌シャフト104の軸方向に沿って異なる直径を有する。
【0331】
具体的には、図示の例においては、上側において大径の撹拌翼106が、下側において小径の撹拌翼106が配置されている。この例においては、複数の撹拌翼106のそれぞれの直径が、撹拌シャフト104の自由端(先端)に近づくにつれて小径化される。
【0332】
同図(c)は、ホッパ142から粉状の凝集剤が凝集槽40内に添加または投入される状況を撮影した写真を示す。この写真では、ホッパ142の底面から粉状のものが前記渦巻きのくぼみを狙って落下する様子も視認できる。
【0333】
前記渦巻きは、廃水内に、位置に関してほぼ安定的に生成される。すなわち、前記渦巻きは、一対の第1の撹拌シャフト104,104の近傍という特定の領域(例えば、平面視において、各撹拌シャフト104から半径方向に最大で約30cm-約50cm離れた領域)内に限って発生する傾向が強いのであり、そのため、前記渦巻きは、常に、平面視において、ホッパ142に対して略同じ相対位置に生成される。
【0334】
よって、本実施例によれば、ホッパ142から投下された凝集剤がほぼ漏れなく、生成された渦巻きの空洞内に投入され、その後、その渦巻きによって下向きに引き込まれ、凝集槽40の底部43に向かって沈降させられる。
【0335】
このように、本実施例によれば、浮上し易い凝集剤が、前記渦巻きの位置安定的な発生のおかげで、漏れなく、凝集槽40の底部43に送り込まれることになるのである。
【0336】
むしろ、渦巻きが前記特定の領域内に安定的に生成されるという事実であって本発明者によって予め確認されたものを前提として、図1図5図10および図14に例示するように、ホッパ142という凝集剤粉末の投入器すなわち凝集剤粉末の投下位置が、平面視において、一対の第1の撹拌機100,100によって挟まれる領域内に設置されたのである。
【0337】
ここに、ホッパ142から廃水内に投入された凝集剤粉末は、凝集槽40の底部43に衝突する部分と衝突しない部分とに分岐する。
【0338】
そして、凝集剤粉末のうち凝集槽40の底部43に衝突した部分は、図14(a)に示すように、その衝突によって複数方向に(例えば、四方八方に)分散させられて廃水内において拡散させられる。
【0339】
図14に示すように、凝集装置20は、さらに、2本の第2の撹拌機110の2本の第2の撹拌シャフト104,104(それらの総数は、1本であっても、3本以上であってもよい。)を有する。それら第2の撹拌シャフト104,104は、それぞれ対応する少なくとも1つの第2の撹拌翼106,106を回転させ、それにより、凝集剤粉末のうち凝集槽40の底部43に衝突しない部分を撹拌し、それにより、その部分を廃水内において拡散させ、それにより、凝集剤粉末を凝集槽40の略全体に拡散させる。
【0340】
各第2の撹拌シャフト104は、傾斜姿勢で凝集槽40の壁部に着脱可能に取り付けられてもよいし、略水平姿勢で凝集槽40の壁部(槽壁部)に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0341】
傾斜姿勢での取付け態様においては、各撹拌シャフト104からの吐出流が水平方向成分(凝集槽40内において主に周方向の循環流に転化し得る。)と垂直方向成分(凝集槽40内において主に上下方向の循環流に転化し得る。)との双方を含む。これに対し、略水平姿勢での取付け態様においては、各撹拌シャフト104からの吐出流が主に水平方向成分(凝集槽40内において主に周方向の循環流に転化し得る。)のみを含む。
【0342】
このように、本実施例においては、一対の第1の撹拌シャフト104,104による凝集剤粉末の能動的な沈降効果と、一対の第2の撹拌シャフト104,104による凝集剤粉末の拡散効果との相乗効果により、凝集槽40内における凝集剤粉末の拡散が極大化し、ひいては、凝集剤の凝集効率が極大化される。
【0343】
ここに、各撹拌機110,110は、対応する撹拌翼106によって発生させられる水流が主として軸流であるように構成される。
【0344】
ところで、本発明者によれば、比較例として、1本の撹拌シャフト104のみ使用してそれを回転させて廃水を撹拌するという試験を行ったところ、その撹拌シャフト104の周辺に下向きの渦巻き(例えば、それの撹拌翼106と共回りする強制渦ないしは固体渦)が生成された。そして、その渦巻きのくぼみに凝集剤粉末を投入したら、その凝集剤粉末が槽底部43に向かって沈降させられたことが確認された。
【0345】
しかし、その渦巻きは、凝集槽40内において廃水が一対の第2の撹拌シャフト104,104によって循環されると、それに伴って当該渦巻きの位置が平面視において移動した。すなわち、この比較例においては、生成された渦巻きが、位置に関して安定せず、流動的であったのである。
【0346】
そのため、この比較例においては、その渦巻きの空洞内に凝集剤粉末を確実に投入しようとすると、その渦巻きの位置変化に追従するように作業者がホッパ142(凝集剤投入器、凝集剤粉末を投下する位置など)を移動させなければならず、作業が煩雑となることを避け得ないという欠点があることが判明した。
【0347】
また、この比較例においては、1本の第1の撹拌シャフト104のみによって自身近傍に渦巻きが生成される。これに対し、本実施例においては、2本または3本以上の本数の第1の撹拌シャフト104,104により、それらの近傍領域内において、それぞれ互いに逆向きの水流、すなわち、2つの対向流ないしは逆流が発生し、その結果、前記近傍領域内において下向きの渦巻きすなわち渦流が生成される。
【0348】
よって、この比較例と本実施例とを、各撹拌シャフト104の回転速度が同じである条件で試験すると、本実施例における方が、渦巻きの回転速度が高速化し、それにより、凝集剤を廃水内において運搬する能力、すなわち、凝集剤粉末を槽底部43に引き込む能力が高く、ひいては、凝集剤粉末の拡散能力および凝集能力が向上することが確認された。
【0349】
ここで、図14を参照することにより、より具体的に、凝集槽40内の流動を解析する。
【0350】
前記渦巻きによって槽底部43に引き込まれた凝集剤粉末(以下、単に「凝集剤」ともいう。)の流れは、同図(a)に概念的に側面視で示すように、槽底部43と衝突して反転し、上向き成分を有する上昇循環流に転化する傾向がある。
【0351】
その上昇循環流によって輸送される凝集剤は、続いて、同図(b)に概念的に平面視で示すように、一対の第2の撹拌機110,110の共同作用によって生成される周方向循環流および図示しない上下循環流によって輸送される。その結果、前記渦巻きによって槽底部43に引き込まれた凝集剤は、凝集槽40の略全体にわたり、分散されるように撹拌される。
【0352】
また、同図(b)に概念的に示すように、各第2の撹拌機110からの軸方向の吐出流のうちの水平方向成分は、凝集槽40の壁部に衝突するなどして、周方向循環流(または回転流)に転化すると推測される。
【0353】
一方、各第2の撹拌機110からの軸方向の吐出流のうちの上下方向成分は、図示しないが、凝集槽40の底部43に衝突するなどして、上下循環流(または往復流)に転化すると推測される。
【0354】
<第1の撹拌シャフト上における撹拌翼のレイアウト>
【0355】
図14および図15に示す実施例においては、2本の第1の撹拌シャフト104,104に対応する2群の第1の撹拌翼106,106が、それぞれ、対応する1本の撹拌シャフト106にそれの軸方向において互いに異なる複数の位置にそれぞれ装着される複数の撹拌翼106A,106Bとして構成されている。
【0356】
すなわち、本実施例においては、一方の第1の撹拌シャフト104に対応する1群の第1の撹拌翼106として、複数の撹拌翼106A,106Bが存在し、また、他方の第1の撹拌シャフト104に対応する1群の第1の撹拌翼106として、複数の撹拌翼106A,106Bが存在するのである。
【0357】
さらに具体的には、本実施例においては、図14(a)に示すように、各撹拌シャフト104ごとに、廃水の液面に最も近い上側撹拌翼106Aと、槽底部43に最も近い下側撹拌翼106Bとが装着されている。
【0358】
上側撹拌翼106Aは、撹拌シャフト104に、撹拌シャフト104の組付け状態(例えば、撹拌機100の完成状態)において軸方向位置調節可能に装着される。
【0359】
その調節機構の一例は、撹拌シャフト104と上側撹拌翼106Aとの一方に装着される第1部材と他方に装着される第2部材とを有して相対的に軸方向に移動可能である相対移動部(例えば、スライド嵌合部)と、それら第1部材および第2部材とを、選択された軸方向相対位置においてロックしまたはアンロックするロック/アンロック部とを含むように構成される。そのアンロック状態において、前記第1部材と前記第2部材とが軸方向に相対移動可能となる。
【0360】
一例においては、前記第1部材が、雄部のように、円形または角形断面を有する軸部材であり、また、前記第2部材が、雌部のように、前記棒状部材が軸方向スライド可能に挿入される中空部材であり、また、前記相対移動部が、スライド嵌合部であり、また、前記るロック/アンロック部は、前記軸部材および前記中空部材の一方に螺合される締結具であってそれの先端が他方に係合してロック状態となり、前記先端が前記他方から離間してアンロック状態となるものである。
【0361】
この調節機構によれば、作業者は、撹拌機100が製品として組み付けられて完成している状態において、上側撹拌翼106Aの、廃水の液面からの上下方向距離を調節することが可能である。
【0362】
例えば、作業者は、前記液面に近い上側撹拌翼106Aの高さ方向位置を、その上側撹拌翼106Aの回転中にそれが一部でも前記液面から露出してその露出部が大気中の空気を巻き込んで廃水中に混入させることがないかまたは軽減されるように調節する。
【0363】
本実施形態においては、2本の第1の撹拌シャフト104,104に対応する2個または2群の第1の撹拌翼106,106が、それぞれ、1段または複数段の撹拌翼106として構成されてもよい。
【0364】
具体的には、各撹拌シャフト104は、各撹拌シャフト104ごとに撹拌翼106を1段しか有しなくても複数段有してもよい。前者の場合、1段の撹拌翼106が、1本の撹拌シャフト104当たりの1個の撹拌翼を構成する一方、後者の場合、複数段の撹拌翼106が、1本の撹拌シャフト104当たりの1群の撹拌翼を構成する。
【0365】
この態様においては、上側の撹拌翼106(図14(a)に示す例においては、例えば、最上段の撹拌翼106A)が、主に、前記渦巻きを生成するという用途のために使用される。
【0366】
この態様においては、下側の撹拌翼106(図14(a)に示す例においては、例えば、最下段の撹拌翼106B)が、主に、前記渦巻きによって槽底部43に引き込まれた凝集剤が槽底部43に衝突する速度を補助的に高速化して(引き込まれた凝集剤の沈降を補助的に加速して)当該凝集剤の拡散を促進するという用途と、槽底部43上における沈殿物であって凝集剤および凝集フロックを含むものの再拡散を促進するという用途とのうちの少なくとも一方のために使用される。
【0367】
別の例においては、前記渦巻きの生成効率を優先させるために、1本の撹拌シャフト104に1段または複数段の撹拌翼106が前記液面に近い位置のみに装着されてもよい。
【0368】
<凝集剤粉末が風によって飛散されることを抑制する風避け部材としてのフード>
【0369】
さらに、本実施形態においては、図示しないが、凝集剤投入器の一例であるホッパ142の底面250(例えば、図3に示すように、ふるい143の通過面、第1の貫通穴150などの、凝集剤粉末の投下開始領域)から下向きに延びるフードが存在する。このフードは、それの自由端または先端が前記液面に臨まされるように設置される。
【0370】
今回の凝集剤は粉末であるため、液体である場合より風の影響を受け易いが、上述のフードが存在すれば、凝集剤粉末の投下経路であって前記投下開始領域と前記液面との間に位置するものの略全体が風によって乱されずに済む。
【0371】
そのフードは、例えば、包囲部材、遮蔽部材、風避け部材として構成される。また、このフードは、例えば、筒状を成すように構成される。また、このフードは、金属製もしくはプラスチック製またはそれらの複合材料製として構成されてもよい。また、作業者が前記渦巻きを観察する行為がそのフードによって視覚的に邪魔されることがないようにするために、そのフードは有孔性素材または透過性素材によって構成してもよい。
【0372】
このフードの効果として、凝集剤がホッパ142から投下される際に、凝集剤が、その投下経路の略全体において外気から遮蔽され、それにより、凝集剤の進路が風による悪影響を受け難くなる。
【0373】
その結果、前記投下開始領域の実際の位置すなわち添加撹拌ユニット60の位置(撹拌中、不変である場合と可変である場合とがある。)に対する相対位置としての、凝集剤粉末が実際に投下される前記液面上の位置が安定する。それにより、作業者においては、前記液面に生成される渦巻きのくぼみを標的として、凝集剤粉末を精度よく、その標的から外れることなく投入する作業が容易となる。
【0374】
その結果、作業者が、前記投下開始領域の位置が、実際に生成されている渦巻きのくぼみの位置に一致するように添加撹拌ユニット60を2次元的に移動させれば、その後、前記渦巻きの位置が変化しない限り、風があっても、その影響を受けることなく、添加撹拌ユニット60の定位置において、凝集剤を前記渦巻きのくぼみに正確に投下する作業が容易となる。
【0375】
<撹拌シャフト104の回転速度の調整機構>
【0376】
さらに、本実施形態においては、駆動源(例えば、エアモータ)を有する本体部102自体にまたはその本体部102から延びるエアホース(図示しないが、外部の高圧源などに接続される。)に、作業者が撹拌シャフト104の回転速度を調整するための調整弁(例えば、可変絞り弁)または調整器(例えば、前記高圧源の圧力を遠隔的に調整するコントローラ)を、撹拌シャフト104の近傍に居る作業者によって操作可能なものとして有する。
【0377】
その結果、作業者は、それら調整弁も調整器も存在しない場合に比較し、撹拌シャフト104の回転速度を調整するための操作が容易となり、それにより、例えば、廃水内に生成される渦巻きの深度を調整することが容易となる。
【0378】
ところで、前述の下向きの渦巻きを利用する場合には、投下された粉末状の凝集剤(例えば、多孔質であるために前記廃水において浮遊し易い。)の略全部を槽底部43に引き込んでその凝集剤(凝集剤粉末)を凝集槽40の略全体に分散させることが容易となるという利点がある一方で、前記渦巻きが、前記液面近くの撹拌翼106の回転によって生成されるため、大気中の空気が撹拌翼106との衝突によって前記廃水内に巻き込まれて前記凝集フロックを前記廃水から回収する作業が困難となる可能性があるという欠点がある。
【0379】
本発明者は、数々の試験研究の成果として、上記の利点を損なうことなく、上記の欠点を解消するかまたは軽減するために、上側撹拌翼106Aの高さ位置を前述のようにして調節することと、その上側撹拌翼106Aの回転速度を上述のようにして調整することとの双方を行った。
【0380】
本実施例においては、次のような粉粒体撹拌/混合方法が実施される。
【0381】
すなわち、この方法は、(a)液体の一例としての前記廃水を収容する槽40内において略上下方向に延びる姿勢で配置された1本撹拌シャフト104を回転させるかまたは並列配置(並列近接配置)された複数本の撹拌シャフト104を同じ向きに回転させることによってそれと同軸的に撹拌翼106を回転させることにより、槽40内に収容された前記廃水内に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するように概して逆円錐状を成すくぼみを有するように生成する生成工程と、(b)その生成された渦巻きのくぼみに向けて粉粒体の一例としての凝集剤粉末を投下する投下工程と、(c)その投下された凝集剤粉末を前記渦巻きによって引き込んで槽底部43に向かって沈降させる沈降工程とを含む。
【0382】
なお、本実施例においては、2個の第1の撹拌器100,100が、渦巻き発生部(例えば、上側撹拌翼106A)と、本来の撹拌部(例えば、下側撹拌翼106B)とを兼ね備えているが、それら渦巻き発生部と本来の撹拌部とを別々に切り離し、同じ向きに回転する一対の回転翼を有する渦巻き発生器と、少なくとも1個の第1の撹拌器100であって渦巻き発生に主に寄与するものとがそれぞれ個別部品として凝集槽40に設置される態様で本発明を実施してもよい。
【0383】
<撹拌機の撹拌能力について>
【0384】
ここで、第1の撹拌機100の各部位による撹拌機能を検討するに、第1の撹拌翼106が前記モータによって能動的に自転するため、第1の撹拌機100の並進運動であるか静止状態であるかを問わず、周辺の廃水に対して撹拌機能を有することはもちろんである。
【0385】
これに対し、第1の撹拌機100のシャフト104は、第1の撹拌翼106と同様に前記モータによって能動的に自転するが、シャフト104の表面に実質的な凹凸が存在しない。そのため、このシャフト104は、第1の撹拌機100の静止状態においては、実質的に、周辺の水流に影響を与えず、周辺の廃水に対する撹拌機能を有しない。
【0386】
とはいえ、このシャフト104は、第1の撹拌機100の並進運動中には、周辺の水流をかき混ぜて周辺の水流に影響を与え、それにより、周辺の廃水に対する撹拌機能を有するから、このシャフト104は、事実上、「受動的な撹拌部材」として機能することになる。
【0387】
よって、第1の撹拌機100は、能動的な撹拌部材(第1の撹拌機100の並進運動に依存しなくても撹拌作用を行い得る部材)としての撹拌翼106と、受動的な撹拌部材(第1の撹拌機100の並進運動に依存しないと撹拌作用を行い得ない部材)としてのシャフト104とを併有することになる。
【0388】
よって、前述のいくつかの実施形態においては、添加撹拌ユニット60が、撹拌機能を実現するために、第1の撹拌機100が撹拌翼106を能動的な撹拌部材として搭載するが、本発明は、例えば、第1の撹拌機100が、前記モータ、回転するシャフト104および回転する撹拌翼106に代えて、第1の撹拌機100に対して回転しないシャフト(非自転部材、非回転部材など)を受動的な撹拌部材として搭載する態様で実施してもよい。
【0389】
なぜなら、添加撹拌ユニット60が凝集槽40に対して相対移動させられることに伴って前記撹拌部材が凝集槽40に対して並進運動させられ、その並進運動により、前記撹拌部材が凝集槽40内の廃水をかき混ぜるかまたはかき回し、それにより、凝集剤の液中分散が行われるからである。
【0390】
ここに、「受動的な撹拌部材」は、例えば、第1の撹拌機100の並進運動中に、外力(相対的な水流など)により、平面視において、少なくとも回転方向、前後方向または左右方向に連続的にまたは往復的に受動的に動く可動部を有するものとして定義される。
【0391】
よって、「受動的な撹拌部材」は、具体的には、第1の撹拌機100の本体部102から概して下方に延びる非回転部材としての棒状部材(丸型、角型など)として構成したり、板状部材(ブレード、らせん体など)として構成することが可能である。
【0392】
前述の態様を採用すれば、撹拌機能を実現するために第1の撹拌機100が前記モータおよび撹拌翼106を搭載する場合より、第1の撹拌機100の構造、ひいては、添加撹拌ユニット60の構造が単純化されるとともに全体重量が軽量化され、それにより、作業者は、添加撹拌ユニット60をより小さな力で移動させることが可能となり、この点で、作業性が向上する。
【0393】
さらに、前述のいくつかの実施形態においては、添加撹拌ユニット60が、凝集剤の分散添加と凝集剤の撹拌との双方を行うように構成されているが、これに代えて、本発明を、専ら凝集剤の分散添加を行い、凝集剤の撹拌は行わない態様で実施し、それにより、添加撹拌ユニット60の軽量化および構造簡素化を実現してもよい。
【0394】
さらに、それら実施形態においては、移動可能な第1の撹拌機100に加えて、固定設置される第2の撹拌機110も凝集槽30に配備されるが、これに代えて、本発明を、第1の撹拌機100による撹拌能力で足りる場合には、第2の撹拌機110が凝集槽30に配備されない態様で実施し、それにより、凝集装置20の軽量化および構造簡素化を実現してもよい。
【0395】
以上、本発明を湿式塗膜剥離作業における塗膜洗浄工程に用いられる廃水処理システムに適用する場合のいくつかの実施形態を説明したが、これらは例示であり、本発明は他の用途、例えば、剥離剤を用いることなく、建築物(家屋、ビル等)、鉄製の骨組み構造を用いて構成される細長い建造物である鉄塔(例えば、送電用鉄塔、通信用鉄塔など)、土木構造物(橋梁等)、船舶、車両(自動車、列車等)、飛行機等の構造物または構造体の表面の洗浄であって作業中に有害物質を含み得る廃水が生成されるものに用いられる廃水処理システムに適用することが可能である。
【0396】
[第3実施形態]
【0397】
次に、本発明の例示的な第3実施形態を説明する。ただし、前述の第1または第2実施形態と共通する要素については、同一の符号を引用するなどして重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。
【0398】
図16は、本実施形態に従う廃水処理システム300の凝集装置310を分離装置30と共に示す正面断面図である。
【0399】
凝集装置310は、前記廃水を収容可能な凝集槽40であってそれの底部43にドレインとしての廃水出口44を有するものを有する。
【0400】
この凝集装置310は、さらに、凝集槽40内に設置される可撓性を有するろ過袋312であって、当該ろ過袋312内に注入された廃水が廃水出口44から排水される過程において前記廃水をろ過するものを有する。
【0401】
この凝集装置310は、さらに、ろ過袋312の底部314と廃水出口44との間に設置されるスペーサ320であって、ろ過袋312の底部314と廃水出口44との間に隙間をその隙間内を前記廃水のうちの少なくとも液体成分が通過可能な状態で形成することにより、廃水出口44の目詰まりを防止するものを有する。本実施形態においては、スペーサ320が、目詰まり防止具の一例である。
【0402】
図17(a)は、スペーサ320を廃水出口44と共に示す斜視図であり、同図(b)は、側面断面図である。
【0403】
同図に示すように、スペーサ320は、それの長さ方向の全体において槽底部43の上面から浮上した位置に、ろ過袋312を下方から支持する支持面を有するか、または、前記長さ方向のうちの中央部において他の部分より浮上した位置に、ろ過袋312を下方から支持する支持面を有する。スペーサ320は、前記支持面が隙間を隔てて廃水出口44に対向するように槽底部43の上面上に留置される。
【0404】
同図に示すように、スペーサ320は、シート状のワイヤメッシュを用い、内部に空洞を有する立体形状を有するように構成されるが、例えば、シート状のワイヤメッシュを用いて同様な形態を有するように構成されてもよい。スペーサ320は、側面視において、槽底部43の表面との間において台形状の空洞を形成する。
【0405】
同図に示すように、槽底部43は、側面視において、廃水出口44が存在する部分とそれの周辺部分とが略同じ高さを有する形態を有する。この形態において、スペーサ320は、槽底部43の上面上に留置され、それにより、ろ過袋320の底部のうちの少なくとも廃水出口44に対向する部分をその廃水出口44から上方に押し退ける。
【0406】
凝集槽40内において、前記廃水および凝集剤粉末は、同図(b)において複数本の矢印で示すように、スペーサ320を通過して流動したり、そのスペーサ320の下方にある前記空洞を通過して流動して、廃水出口44に到達することが可能である。
【0407】
一例においては、スペーサ320が、槽底部43の長さ寸法に実質的に等しい長さ寸法を有し、それにより、凝集槽40内における前記廃水の流動中にスペーサ320が長さ方向にずれることが抑制される。
【0408】
別の例においては、スペーサ320が、槽底部43の長さ寸法より短い長さ寸法を有し、前記支持面は、凝集槽40内における前記廃水の流動中にスペーサ320が長さ方向にずれても、当該支持面が隙間を隔てて廃水出口44に対向する状態に維持されることを可能にする長さ寸法を有する。
【0409】
図17に示す例においては、廃水出口44が、平面視において、槽底部43のうちの略中央部に配置され、スペーサ320は、側面視において、スペーサ320のうちの略中央部において頂面を有する形態を有する。
【0410】
この例においては、スペーサ320が、平面視において、前記頂面と、その頂面を両側から挟む一対の斜面とが一列に配列された形態を有し、それら頂面と一対の斜面とは、側面視において、実質的な段差を有することなく連続的に接続される。各斜面は、側面視において、前記頂面から遠ざかるにつれて槽底部43に接近する向きに傾斜する。前記頂面は、隙間を隔てて廃水出口44に対向する。
【0411】
さらに、スペーサ320は、凝集槽40に対して着脱可能に設置される。
【0412】
図18は、ろ過袋312の一例をスペーサ320および浮上防止具322と共に示す斜視図である。
【0413】
ろ過袋312は、単独で静置される単独静置状態において形状に関して自立しないソフト型であって自身の形状が凝集槽40に設置された後にその凝集槽40の内壁面形状に依存して決まる。これに代えて、ろ過袋312は、単独静置状態において形状に関して自立するハード型として構成されてもよい。
【0414】
ろ過袋312が上述のソフト型である場合には、ろ過袋312の上側エッジは、図示しないが、凝集槽40の上側エッジに取付具などを用いて着脱可能に取り付けて固定することが可能である。
【0415】
一方、ろ過袋312の底部は、前記廃水の撹拌中に、意に反して槽底部43から浮上してしまうおそれがあるため、同図に示すように、いくつかの浮上防止具322が槽底部43に着脱可能に載置される。その浮上防止具322は、例えば、自重を利用してろ過袋312の底部を槽底部43に押し付けるもの(例えば、重り、重錘)であり、例えば、金属製のアングル材として構成されたり、他の形状を有する重量物として構成される。
【0416】
図19は、本実施形態に従う廃水処理システム300に用いて実施される複数の工程を時系列的に概念的に表す工程図である。
【0417】
廃水処理システム300に用いて廃水処理を行うために、まず、ステップS301において、作業者が、前述の湿式剥離作業が行われる現場に凝集槽40のキットを搬入し、その現場で凝集槽40を組み立てる。本実施形態においては、湿式剥離が行われて廃水が生成された現場で、その廃水が凝集槽40を用いて処理される。これは、現場廃水処理方式の一例である。
【0418】
次に、ステップS302において、作業者が、組み立てられた凝集槽40の底部43の表面上にスペーサ320を沈座させる。続いて、ステップS303において、作業者が、ソフト型のろ過袋320を凝集槽40の内部に設置する。その後、ステップS304において、作業者が、いくつかの浮上防止具322をろ過袋312の底部314の表面上に設置する。
【0419】
別の例においては、ろ過袋312が、凝集槽40への設置前に、ろ過袋312の底部314において、一対のプレートを相手部材を挟む込む連結具を用いて、スペーサ320に結合されて一体化される。それにより、凝集槽40への設置に際し、スペーサ320がろ過袋312と一体的に移動して槽底部43の上面上に留置される。この例によれば、作業者が浮上防止具322をろ過袋312の底部314上に載置する作業を省略可能となり、作業性が向上する。
【0420】
ろ過袋320を凝集槽40の内部に設置した後、作業者は、図16に示すように、一対の第1の撹拌機100,100を備えた添加撹拌ユニット60と一対の第2の撹拌機110,110とを有する凝集装置310を凝集槽40に設置する。
【0421】
続いて、ステップS305において、作業者が、前記湿式剥離の作業と並行してかまたはその終了後に前記廃水(ろ過・分離・無毒化される対象という意味において「原水」ともいう。)を凝集槽40内に注入する。
【0422】
その後、ステップS306において、作業者が、一対の第1の撹拌機100,100および一対の第2の撹拌機110,110を起動させた後、一対の第1の撹拌機100,100についての前述の回転調整を含む機器調整作業を、凝集槽40内において前記廃水中に、許容限度を超える程度の泡が発生しないように、かつ、前記渦巻きが予定通り、規模的にも位置的にも安定的に生成されるように配慮しつつ行う。
【0423】
続いて、ステップS307において、作業者が、凝集剤粉末をホッパ142から投下することによって前記廃水に添加する。このとき、作業者は、添凝集剤粉末を、前記廃水に生成された下向きの渦巻きのくぼみを狙って投下する。
【0424】
さらに、作業者は、添加撹拌ユニット60を凝集槽40に対して相対的に平面2次元移動させることにより、凝集剤粉末の投下位置を前記廃水の略全体にわたって移動させ、凝集剤粉末を平面2次元的に散布して撹拌能率を向上させる。
【0425】
その後、ステップS308において、凝集槽40内に添加された凝集剤粉末が、第1および第2の撹拌機100,100の撹拌作用により、凝集槽40内の略全体にわたり撹拌される。
【0426】
続いて、ステップS309において、前記廃水が凝集化によって固液分離される。その後、ステップS310において、前記廃水が廃水出口44から排水される。
【0427】
続いて、ステップS311において、前記廃水がろ過袋312を通過する過程において前記廃水がろ過袋312によって1次ろ過される。その後、ステップS312において、その1次ろ過された廃水は、分離装置50内に投入され、その分離装置50により、前記廃水について2次ろ過が行われる。
【0428】
本実施形態においては、ろ過袋312の最小捕捉粒子径が、分離槽50の最小捕捉粒子径より大きく設定され、それにより、凝集槽40において1次ろ過が、分離装置50において、前記1次ろ過よりろ過精度が高い2次ろ過がそれぞれ順次行われる。
【0429】
図20(a)は、図16に示すスペーサ320の別の例を示す側面断面図であり、同図(b)は、さらに別の例を示す側面断面図であり、同図(c)は、さらに別の例を示す側面断面図であり、同図(d)は、さらに別の例を示す側面断面図である。
【0430】
同図(a)-(c)にそれぞれ示す例においては、いずれも、槽底部43が、側面視において、廃水出口44が存在する部分とそれの周辺部分とが略同じ高さを有する形態を有する。
【0431】
これに対し、同図(d)に示す例においては、槽底部43の表面が、側面視において、段付き面となっており、槽底部43は、廃水出口44が存在する部分(低部)がそれの周辺部分(基本部すなわち高部)より低い形態を有し、それら低部と高部とは、高さ方向に延びる筒状接続部326によって互いに接続される。
【0432】
この例においては、スペーサ320が、筒状接続部326内に留置され、それにより、ろ過袋312の底部314のうちの少なくとも廃水出口44に対向する部分をその廃水出口44から上方に押し退ける。
【0433】
同図(a)に示す例においては、スペーサ320が、槽底部43の表面上に三角形状の空洞が形成されるように、山形断面を有する。この例においては、スペーサ320が、平坦な頂面を有せず、互いに接続された一対の斜面を有する。
【0434】
同図(b)に示す例においては、スペーサ320が、槽底部43の表面上に段付き状の空洞が形成されるように、高部とそれを挟む一対の低部とを有する段付き状断面を有する。この例においては、スペーサ320が、平坦な頂面を高部として有し、さらに、それを挟む一対の平面を一対の低部として有する。
【0435】
同図(c)に示す例においては、スペーサ320が、槽底部43の表面上に矩形状の空洞が形成されるように、平坦な頂面を長さ方向全体にわたって有する。
【0436】
同図(d)に示す例においては、スペーサ320が、筒状接続部326内に半径方向隙間を残して挿入されるように筒状を成している。この例においては、スペーサ320の上面が、槽底部43のうちの筒状接続部326の周辺部の表面(槽底部43の基本表面)と略同一となっている。
【0437】
ただし、スペーサ320は、他の形状を有するように構成されることが可能である。
【0438】
[第4実施形態]
【0439】
技術分野
【0440】
以下に説明する実施形態は、使用済シートを洗浄する技術に関し、特に、可撓性を有する使用済シートであって液剤および/またはサイズが一様ではない複数の固形物が不要物として残留しているものを洗浄し、それにより、その使用済シートの再利用または廃棄を可能にする技術に関する。すなわち、本実施形態は、可撓性を有する使用済シートを洗浄する方法およびシステムに関する技術的思想を具現化するものである。
【0441】
背景技術
【0442】
不要物が残留している部材を被処理部材として、その被処理部材から前記不要物を除去する技術が既に知られている。
【0443】
そして、後掲の特許文献11には、塗装が施されている使用済の部材をリサイクルすることを目的として、その部材にブラスト加工(粒子を投射して被処理面に衝突させる方法)を施してその部材から塗料を不要物として除去する乾式塗膜剥離技術が開示されている。
【0444】
同文献には、さらに、その除去後に、その除去によって出現した母材の表面をエアブローしてその表面から塗膜片などを除去する乾式洗浄技術も開示されている。
【0445】
一方、後掲の特許文献12には、アスベストを原因とする健康被害から人体を保護することを目的として、アスベストが吹き付けられた建築部材から機械的除去方法によってアスベストを除去する技術が開示されている。
【0446】
同文献には、さらに、その「機械的除去方法」として、ナイフのような鋭利な刃部材やスチール製ブラシを用いてアスベストを建築部材から削り取る方法や、回転ブラシを用いてアスベストを建築部材から削り取る方法が開示されている。
【0447】
同文献には、さらに、除去作業場をプラスチック製のシートで密閉し、その内部にフィルタを有する吸引ブロアを設置してアスベストを吸引する技術も開示されている。
【0448】
ところで、特定の場合、例えば、構造物の素地に付着されている既存塗膜中に鉛などの有害物質が存在することが確認されたために、厚生労働省からの平成26年5月30日付けの通達に従うことが必要である場合には、建築物(家屋、ビル等)、鉄製の骨組み構造を用いて構成される細長い建造物である鉄塔(例えば、送電用鉄塔、通信用鉄塔など)、土木構造物(橋梁等)、船舶、車両(自動車、列車等)、飛行機等の構造物または構造体の表面を塗り替えるために、その表面にすでに被着されている既存塗膜を構造物の表面(素地)から剥離し、その後、新たな塗料を構造物の同じ表面上に塗布する種類の施工が行われる。
【0449】
このような事情を背景とし、本発明者は、本実施形態の完成に先立ち、塗膜剥離方法を開発した(図22参照。)。
【0450】
その開発された塗膜剥離方法は、液状の剥離剤をエアバブル化して構造物の表面に塗布し、それにより、前記構造物の表面から既存塗膜を剥離する湿式剥離工程と、その塗布後に前記構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に洗浄水を噴射する湿式洗浄工程とを含むように構成される。この塗膜剥離方法は後掲の特許文献13に開示されている。
【0451】
ところで、この塗膜剥離方法を実施する場合には、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理する廃水処理工程が必要である。
【0452】
そして、本発明者は、この廃水回収処理については、例えば、資源の有効利用という観点から、前記廃水を部分的にまたは完全に無毒化して新たな洗浄水として再利用したいという要請があることに気が付いた。
【0453】
このような知見を踏まえ、本発明者は、本発明に先立ち、剥離剤塗布後の構造物の表面に噴射された洗浄水を廃水として回収して処理する廃水処理工程を開発し、それについて特許第6853599号を取得した。この特許公報は、本明細書において前述の特許文献13として引用されている。
【0454】
その廃水処理工程においては、具体的に、前記廃水を集水する集水工程と、凝集槽を用いた凝集工程と、分離槽を用いた分離工程とが順に実行されるように実行される。
【0455】
ここに、「集水工程」は、後に詳述するが、可撓性を有するメッシュシートであるろ過シートを用いて前記廃水をろ過する工程を含む。
【0456】
また、「凝集工程」は、例えば、前記ろ過後に前記廃水を凝集槽内に投入し、その廃水に粉状または粒状の凝集剤を添加し、それにより、前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させる工程である。
【0457】
また、「分離工程」は、例えば、その凝集工程の終了後に、前記凝集槽から前記廃液を分離槽内に投入し、その分離槽内のろ過部を前記廃液に通過させ、それにより、前記廃液を処理水と凝集フロックとに固液分離する工程である。
【0458】
先行技術文献
特許文献11:特開2003-200349号公報
特許文献12:特開平3-221669号公報
特許文献13:特許第6853599号公報
【0459】
解決課題
【0460】
本発明者は、その後、前記開発した廃水処理技術の実用性を向上させるべく種々の試験を行うとともに種々の研究開発を行った。
【0461】
その結果、本発明者は、この廃水回収処理については、例えば、資源の有効利用という観点から、さらに、次のような要請があることにも気が付いた。
【0462】
すなわち、本発明者は、この廃水処理工程を実施するために使用された部材や、それに先行して実施された工程、例えば、前述の湿式剥離工程や湿式洗浄工程において使用された部材を洗浄して再利用したいという要請もあることに気が付いたのである。
【0463】
さらに、本発明者は、「この廃水処理工程を実施するために使用された部材」として、例えば、前述の集水工程において使用済の洗浄水を回収する際にその洗浄水をろ過するためのろ過シートや、前述の凝集槽や分離槽に使用されるろ過シートを選択することが有効であることに気が付いた。
【0464】
そのろ過シートはメッシュシートであるため、それに起因し、そのろ過シートには、通常、不要物として前記剥離剤(液剤の一例)の一部、前記既存塗膜が断片化した塗膜片(固形物の一例)などが残留する。
【0465】
具体的には、このろ過シートに残留する不要物としての剥離剤は、例えば、当該廃水処理工程に先行する湿式剥離工程において構造物の表面に塗布された剥離剤であって、その後、当該廃水処理工程に先行する湿式洗浄工程において洗浄水に溶解してそれが飛沫化したものの一例である。
【0466】
また、このろ過シートに残留する別の不要物としての塗膜片は、例えば、当該廃水処理工程に先行する湿式洗浄工程において付随的に発生した固形物の一例である。
【0467】
さらに、本発明者は、「湿式剥離工程において使用された部材」として、その工程の直接の被処理対象ではなく、湿式剥離を支援するための補助的な部材を選択することが有効であることにも気が付いた。
【0468】
湿式剥離工程においては、そのような補助的な部材として、剥離剤という液体が構造物の表面に当たることによってその飛沫が発生した場合にその飛沫が飛散することを防止するための剥離剤飛散防止シートがある。その剥離剤飛散防止シートには、剥離剤の飛沫が飛散して、その剥離剤という液体成分(場合によっては、塗膜片を含む。)が不要な残留物として付着する可能性がある。
【0469】
さらに、本発明者は、「湿式洗浄工程において使用された部材」として、その工程の直接の被処理対象ではなく、湿式剥離を支援するための補助的な部材を選択することが有効であることにも気が付いた。
【0470】
湿式洗浄工程においては、そのような補助的な部材として、洗浄水という液体が構造物の表面に当たることによってその飛沫(当該湿式洗浄工程において使用された洗浄水の飛沫や、当該湿式洗浄工程に先行する湿式剥離工程において構造物の表面に塗布された剥離剤の飛沫など)が構造物の表面に付着していた塗膜片と共に発生した場合にそれら飛沫および塗膜片が飛散することを防止するための塗膜片飛散防止シートがある。その塗膜片飛散防止シートには、前記飛沫および前記塗膜片が不要な残留物として付着する可能性がある。
【0471】
ここに、本発明者は、それら「ろ過シート」、「剥離剤飛散防止シート」および「塗膜片飛散防止シート」を、いずれも、高い収納性という要請を満たすために、可撓性を有する部材、すなわち、自身の形状に関して自己保持性を有せず、外力によって変形する部材として構成することを提案した。
【0472】
この種の可撓性シートは、折り曲げるか、折り畳むかまたはロール状に曲げるかなどして、コンパクトな収納形態を実現することが容易であり、また、それを立体形状に展開しまたは平面形状に展開して使用状態を実現することも容易であるという特性を有する。
【0473】
ここに、「可撓性シート」は、軟質素材を用いて構成される場合もあれば、硬質素材を用いて構成されるが、複数のブロックに分割され、それらブロックが折り畳み可能または折り曲げ可能に接合されるように構成される場合もあれば、他の場合もある。
【0474】
ただし、上述の「ろ過シート」、「剥離剤飛散防止シート」および「塗膜片飛散防止シート」のそれぞれの素材は、それぞれの用途の違いから、必ずしも種類が同じであるとは限らない。
【0475】
このような本発明者の提案に対し、特許文献11-13のいずれにも、自己保持性を有しない材料特性を有する可撓性シートを被洗浄対象として選択し、それを洗浄して再利用することが開示されていない。
【0476】
さらに、特許文献11-13のいずれにも、シート洗浄工程に先行してそれとは別の工程の実行中に使用された使用済シートであって液剤および/またはサイズが一様ではない複数の固形物が不要物として残留しているものを被洗浄対象として選択し、それを洗浄して再利用することも開示されていない。
【0477】
ここに、「液剤」は、例えば、該当する工程において、その目的を達成するかまたはその目的達成を促進するために被洗浄対象に使用される物質として定義される。また、「固形物」は、例えば、被洗浄対象から分離する物質として定義される。
【0478】
さらに、特許文献11-13のいずれにも、使用済シートを湿式洗浄して再利用することも開示されていない。
【0479】
なお、上述のいくつかの要請に加え、使用済シートから有害物質を除去してその使用済シートを合法的に廃棄したいという要請もある。
【0480】
ところで、「シート」という用語は、本出願書類の全体を通じ、例えば、薄い帯状の部材、薄い矩形状の部材、薄い扁平な断面を有する部材などを意味する用語として使用する。
【0481】
また、製法について説明するに、この種のシートは、例えば、合成樹脂製の複数本の糸を編むことによって製造される。
【0482】
そのため、このように製造されたシートについては、例えば、編まれた状態における複数本の糸の隙間の大きさや表面コーティングの特性次第で、シートの通気性の有無やその程度が決まる。
【0483】
そして、シートは、ブルーシートと称されるものや防炎シートのように、通気性がほとんどなく、防水性も高く、気密性も高い低通気性タイプと、メッシュ状になっていて通気性に富んだ高通気性タイプ(例えば、1種メッシュシートなど)とに分類される。
【0484】
その分類によれば、いずれもシートに属する前述の「ろ過シート」、「剥離剤飛散防止シート」および「塗膜片飛散防止シート」のうち、「剥離剤飛散防止シート」および「塗膜片飛散防止シート」は、飛散防止を優先的な目的とするため、例えば、基本的には、前者の低通気性タイプが採用される。これに対し、「ろ過シート」は、ろ過を目的とするため、後者の高通気性タイプや、メッシュタイプが採用される。
【0485】
それらの事情を背景にして、本実施形態(技術的思想)は、可撓性を有する使用済シートであって液剤および/またはサイズが一様ではない複数の固形物が不要物として残留しているものを洗浄し、その使用済シートの再利用または廃棄を可能にする技術を提供することを課題としてなされたものである。
【0486】
課題解決手段
【0487】
以下、本実施形態に従うシート洗浄システム(以下、単に、「システム」と称する。)10を、それを用いて実施されるシート洗浄方法と共に、図21図34に基づいて詳細に説明する。
【0488】
図21(a)は、システム10を示す部分断面側面図であり、また、同図(b)は、部分断面平面図である。
【0489】
システム10は、前記シート洗浄方法に先行する別の工程(例えば、前述の湿式剥離工程、湿式洗浄工程および廃水処理工程)の実行中に使用された、不要物が残留しているシートを洗浄し、それにより、その使用済シートの再利用または廃棄を可能にする。
【0490】
図22は、システム10を用いて実施される前述のシート洗浄方法を、上述の先行する他の工程および後続する他の工程(例えば、使用済シートを洗浄後に他の工程のために再利用する工程)と共に時系列的に概略的に示す工程図である。
【0491】
本実施形態においては、「使用済シート」として、例えば、図22に示すように、先行する前記湿式塗布工程の実行中に使用された前述の剥離剤飛散防止シートを選択したり、先行する前記湿式洗浄工程の実行中に使用された前述の塗膜片飛散防止シートを選択したり、先行する前記廃水処理工程の実行中に使用されたろ過シートを選択することが可能である。
【0492】
<廃水処理ユニット>
【0493】
前記廃水処理工程の実行中に使用されるろ過シートの一例が特許文献13に開示されている。
【0494】
本願の図34には、本発明のいくつかの実施形態に従うシート洗浄方法によって洗浄される使用済シートの一例としてのろ過シートの一例を説明するために、前記廃水処理工程を実施するために使用される廃水処理ユニット200の一部としての二重シート202の一例が足場210と共に斜視図で示されている。
【0495】
足場210は、よく知られているように、支持面(基礎面)の一例としての地面から垂直に延びる複数本の柱材212と、それら柱材212により、水平方向に延びる姿勢で懸架(支持)される床材214であって作業者の足を下方から支持して作業者が、洗浄水を高圧で噴射する洗浄ガン216を用いて高圧洗浄作業(前記湿式洗浄工程)を行うこと可能にするものと、図示しない複数本の手すりとを含む複数の部材を有するように構成される。
【0496】
床材214は、例えば、平面視において複数の開口部(洗浄水が通過する)を有する部材によって構成される。
【0497】
足場210は、被洗浄対象物の一例である構造物218を洗浄剥離する作業者の足場として提供され、よって、足場210は、通常、地上に、構造物218に隣接するように設置される。
【0498】
二重シート202は、作業者のために構造物218に設置された足場210に、それの床材212より下方の位置に設置される。その二重シート202は、上側のろ過シート220と下側の集水シート222とであってそれぞれ平面視において互いにオーバーラップするように配置されるものによって構成される。
【0499】
<ろ過シート>
【0500】
ろ過シート220は、洗浄ガン216から噴射された洗浄水(主に、構造物218の表面に衝突してそこで跳ね返った使用済の洗浄水)を廃水として受け止めるとともにその廃水をろ過してその廃水から固形物としての塗膜片などを捕捉して回収するように構成される。
【0501】
このろ過シート220は、フレキシブルなメッシュシートであり、前記複数本の手すりのうち選択された複数本の手すりにより、水平方向に張られて展開する状態で懸架される。このろ過シート220は、メッシュシートのメッシュにより、受け止められた廃水から塗膜片のうちの一部を捕捉する。
【0502】
そのろ過作用について具体的に説明するに、ろ過シート220に投入された廃水は、そのろ過シート220のメッシュのサイズや形状に応じ、捕捉されるものと捕捉されずに通過するものとにサイズ分別または形状分別される。
【0503】
ろ過シート220は、前記廃水に最初に混入した複数の塗膜片(剥離残片など)や破片のうち前記メッシュよりサイズが大きなものを捕捉し、それにより、前記メッシュよりサイズが小さなものから分離して回収する。この回収の主な目的は、例えば、前記廃水が大きな固形物と共にドレン管138(図30参照。)やそれに接続される他の管内に流入することによってそれらの管に目詰まりが発生することを防止することにある。
【0504】
このろ過シート220は、前記廃水のうちの洗浄水(真水)と、前記廃水に最初に混入した複数の塗膜片(剥離残片など)や破片のうち前記メッシュよりサイズが小さなものとを通過させて流出させる。
【0505】
<集水シート>
【0506】
集水シート222は、ろ過シート220によるろ過後の廃水をろ過シート220から受け止めるとともにそのろ過後の廃水をそれの自重を利用して廃水出口224まで誘導するように構成される。この集水シート222は、フレキシブルなメッシュなしのシートによって主体的に構成されており、前記複数本の手すりのうち選択された複数本の手すりにより、水平方向に張られて展開する状態で懸架される。
【0507】
この集水シート222は、それの中央部において、その周辺部222aより低い底部222bを有しており、全体として、概してすり鉢状を成している。ろ過シート220からの廃水をこの集水シート222が周辺部222aにおいて受け取ると、その廃水は、その自重により、周辺部222aに沿って下降し、やがて底部222bにおいて合流する。その底部222bに、廃水を下流に送り出すための廃水出口224が設置されている。
【0508】
その廃水出口224は、接続管230を経由し、図示しないが、さらにドレン管を経由して凝集槽および分離槽に接続される。その凝集槽を用いて前記凝集工程が実行され、また、その分離槽を用いて前記分離工程が実行される。
【0509】
前述のように、本実施形態に従うシート洗浄方法が実行される「使用済シート」としていくつかの候補が存在するが、本実施形態においては、ろ過シート220がその「使用済シート」として選択されている。
【0510】
上述のように、ろ過シート220は、前記湿式洗浄工程において使用された使用済の洗浄水をろ過するために使用される。その使用済の洗浄水には、前記湿式剥離工程において前記構造物の表面に塗布された剥離剤、前記湿式洗浄工程において前記構造物の表面に出現した複数の塗膜片(前述の既存塗膜が破砕されるなどして断片化されたもの)などが使用済の洗浄水に混入している可能性がある。
【0511】
塗膜剥離の分野においては、一般に、構造物の表面に出現する複数の塗膜片が、サイズが一様ではなく、サイズの大きなもの(例えば、cmのオーダー)やサイズが小さなもの(例えば、mmのオーダーや1mmより小さなもの)が混在している。
【0512】
よって、「使用済シート」としてろ過シート220が選択される場合には、その「使用済シート」に「不要物」として前記剥離剤(「液剤」の一例)や前記複数の塗膜片(「サイズが一様ではない複数の固形物」の一例)が残留している可能性がある。
【0513】
一方、ろ過シート220は、前述のように、メッシュシートとして構成される。よって、そのろ過シートは、低通気性シートより大きな隙間を有して複数本の糸を編むことによって構成されるため、高い通気性を有する。
【0514】
そのため、使用済のろ過シート220において、一部の固形物がそのろ過シート220の繊維に付着しまたは絡み付くことによってその一部の固形物が不要物として残留する可能性がある。
【0515】
そこで、本実施形態においては、前述のシート洗浄方法が、上述の使用済のろ過シート220に対し、そのろ過シート220から前記残留物をできる限り完全に、すなわち、そのろ過シートの再利用または合法的な廃棄が可能となるように分離除去することを目的として実行される。
【0516】
さらに、このろ過シート220は、軟質素材より成る複数本の糸を編むことによって構成され、全体として薄板状を成している。よって、このろ過シート220は、自身の全体形状に関して自己保持性を有しないから、可撓性を有する。その結果、このろ過シート220は、例えば展開状態と変形状態との間での遷移が容易である一方、展開状態で保持するためには、このろ過シート220に外力を加えすることが必要となる。
【0517】
さらに、このろ過シート220は、平面展開状態において、長さ寸法と幅寸法とを有して概して矩形状を成している。
【0518】
以上説明した事情を踏まえ、システム10は、ろ過シート220を被洗浄シートSCとして洗浄することを目的として開発された。
【0519】
概略的には、このシステム10は、図21に示すように、支持フレームとして、例えば、作業者が現場で複数本の鋼管などの構造材を組み立てることによって仮設される足場20を備えている。このシステム10は、作業者がその足場20に、シート洗浄に必要な複数の構成要素を例えば着脱可能に取り付けることによって組み立てられる。図21に示すように、足場20には、必要な複数枚の足場板22が装着される。
【0520】
<システム10の全体の概略的構成>
【0521】
図21に示すように、本実施形態に従うシート洗浄に必要な複数の構成要素として足場20に装着されるものとして、シートガイド機構30、第1除去装置32、第2除去装置34、シート回収装置36などがある。足場20が接地する床面(地面を含む。)は、今回のシート洗浄方法の実施に伴って発生する物質によって汚染されないように、無通気性のシート(床面養生シート)によって養生される。以下、それら構成要素を個々に説明する。
【0522】
<シートガイド機構30>
【0523】
シートガイド機構30は、被洗浄シートSCを展開状態で送り経路FP(例えば、被洗浄シートSCが送られる際にその被洗浄シートSCによって描かれる軌跡に等しい)に沿ってガイドするために足場20に装着される。
【0524】
<第1除去装置32>
【0525】
第1除去装置32は、送り経路FPにおける第1位置P1において少なくとも部分的に包囲された第1作業空間WS1内において、第1の噴射ユニット40により、被洗浄シートSCの表面にエアブローを吹き付ける。
【0526】
それにより、この第1除去装置32は、被洗浄シートSCから前記複数の塗膜片のうちサイズが大きなものを吹き飛ばして空気中に浮遊させ、それにより、被洗浄シートSCから前記複数の塗膜片のうちサイズが大きなものを除去する。
【0527】
<第2除去装置34>
【0528】
第2除去装置34は、送り経路FPにおいて第1位置P1より下流側の第2位置P2において少なくとも部分的に包囲された第2作業空間WS2内において、高圧洗浄ガン42により、作業者が手動で被洗浄シートSCの表面に洗浄水を高圧で噴射してその被洗浄シートSCを水洗することを可能にする。
【0529】
それにより、この第2除去装置34は、被洗浄シートSCから前記複数の塗膜片のうちサイズが小さなものおよび前記剥離剤を、それらに接触した洗浄水によって洗い流して分離し、その分離したものを洗浄水によって運搬して落下させ、それにより、被洗浄シートSCから除去する。
【0530】
この第2除去装置34は、さらに、被洗浄シートSCが水洗された後に、同じ第2作業空間WS2内において、第2の噴射ユニット46により、エアブローを被洗浄シートSCの表面に吹き付けることにより、その被洗浄シートSCの水切りを行う。
【0531】
<シート回収装置36>
【0532】
シート回収装置36は、送り経路FPの最下流側において、被洗浄シートSCのうち洗浄済の部分を巻き取ることにより、その被洗浄シートSCをシートロール50として回収するように構成される。
【0533】
本実施形態においては、作業者によってハンドル52が回転させられることによって手動で巻芯54が回転させられてそれに被洗浄シートSCのうち洗浄済の部分が巻き付けられる。
【0534】
これに代えて、このシート回収装置36は、動力源(例えば、電動モータ)を用い、かつ、例えば、作業者による遠隔操作により、被洗浄シートSCを、適当なタイミングで、連続的にまたは断続的に自動的に被洗浄シートSCを巻き取るように構成してもよい。
【0535】
<シート洗浄方法>
【0536】
図23は、システム10を用いて実施される、本実施形態に従う例示的なシート洗浄方法を取り出して時系列的に示す工程図である。また、図24は、システム10を構成する複数の要素と、このシート洗浄方法を構成する複数の工程との間の対応関係を表形式で表す図である。
【0537】
S1:シート取付工程
【0538】
図23に示すように、このシート洗浄方法は、ステップS1として、シート取付工程を有する。このシート取付工程S1は、作業者が被洗浄シートSCを水平面方向の展開状態でシートガイド機構30に取り付ける工程である。
【0539】
図24に示すように、このシート取付工程S1は、シートガイド機構30を用いて実行されるが、その代わりに、後に図31を参照して詳述する第5実施形態におけるシートガイド機構130を用いてもよい。
【0540】
今回の被洗浄シートSCは、前述のように、ろ過シート220であるから、基本的には、被洗浄シートSCの両面のうちのいずれか一面(作用面)に主に不要物が残留することになる。
【0541】
このことを踏まえ、被洗浄シートSCは、シートガイド機構30に、被洗浄シートSCの作用面が下向きとなる状態で取り付けられ、それにより、後述の第1除去工程において、エアブローが被洗浄シートSCのうち作用面とは反対側の面に吹き付けられ、その後、そのエアブローは被洗浄シートSCの複数の開口部(編まれた糸間の隙間、繊維内の隙間など)を通過して作用面から排出される。
【0542】
その結果、その第1除去工程S3において、被洗浄シートSCに付着している不要物は、ほぼ全部が、上記エアブローによる風圧と重力との双方により、下方に落下して被洗浄シートSCから分離される。
【0543】
本実施形態においては、被洗浄シートSCがシステム10内において展開状態で連続的にまたは断続的に送られるが、本出願書類の全体を通じて「展開状態」という用語は、被洗浄シートSCが常時、その全長にわたって展開状態にあることを必ずしも意味しない。「展開状態」という用語は、被洗浄シートSCがシステム10のうちの洗浄処理部、正確には、少なくとも、後に詳述する第1除去装置32および第2除去装置34を通過する部分(領域)において展開状態にあれば足り、そのように展開状態にある部分(領域)は、被洗浄シートSCの全長において下流側から上流側に時間と共に遷移してもよいことを意味する。
【0544】
このことを裏付けるように、図21に示すように、被洗浄シートSCのうちの上流側部に、洗浄前に待機している洗浄前部分、すなわち、シートガイド機構30の上流側空間において被洗浄シートSCが折り畳まれて待機させられている部分が存在するとともに、同じ被洗浄シートSCのうちの下流側部に、洗浄後に被洗浄シートSCが巻き取られて回収された回収済部分が存在する。
【0545】
S2:シート送り工程
【0546】
図23に示すように、このシート洗浄方法は、さらに、後続するステップS2として、シート送り工程を有する。このシート送り工程S2は、被洗浄シートSCを展開状態で送り経路FPに沿って連続的にもしくは断続的にまたは一方向にもしくは正逆双方向に送る工程である。
【0547】
本実施形態においては、被洗浄シートSCが作業者によって手動で送られるが、その代わりに、後に図31を参照して詳述する第5実施形態におけるように、シート送り装置132により、動力源を用いて自動で送られるようにしてもよい。
【0548】
S3:第1除去工程
【0549】
図23に示すように、このシート洗浄方法は、さらに、後続するステップS3として、第1除去工程を有する。この第1除去工程S3は、第1作業空間WS1内において、被洗浄シートSCの表面にエアブローを吹き付けることにより、前記複数の塗膜片のうちサイズが大きなものを分離して除去する工程である。
【0550】
図24に示すように、この第1除去工程S3は、第1除去装置32のうち第1の噴射ユニット40(後に詳述する)を用いて実行される。また、この第1除去工程S3によって被洗浄シートSCから除去される対象物は、サイズが大きな塗膜片などである。
【0551】
S4:第2除去工程
【0552】
図23に示すように、このシート洗浄方法は、さらに、後続するステップS4として、第2除去工程を有する。この第2除去工程S4は、第2作業空間WS2内において、被洗浄シートSCの表面に洗浄水を高圧で噴射してその被洗浄シートSCを水洗することにより、その被洗浄シートSCから前記複数の塗膜片のうちサイズが小さなものおよび前記剥離剤を分離して除去する工程である。
【0553】
図24に示すように、この第2除去工程S4は、第2除去装置34のうち高圧洗浄ガン42(後に詳述する)を用いて実行される。また、この第2除去工程S4によって被洗浄シートSCから除去される対象物は、サイズが小さな塗膜片、剥離剤などである。
【0554】
S5:第3除去工程
【0555】
図23に示すように、このシート洗浄方法は、さらに、後続するステップS5として、第3除去工程を有する。この第3除去工程S5は、第2作業空間WS2において、被洗浄シートSCの表面にエアブローを吹き付けることにより、その被洗浄シートSCを水切り(例えば、強制乾燥など)する工程である。
【0556】
図24に示すように、この第3除去工程S5は、第2除去装置34のうち第2の噴射ユニット46(後に詳述する)を用いて実行される。また、この第3除去工程S5によって被洗浄シートSCから除去される対象物は、水分などである。
【0557】
本実施形態においては、この第3除去工程S5が、上述の第2除去工程S4と一緒に、同じ第2作業空間WS2において実行されるが、その代わりに、送り経路FPにおいて第2位置P2より下流側の第3位置P3に位置する第3作業空間WS3において、被洗浄シートSCの表面にエアブローを吹き付けることにより、その被洗浄シートSCを水切りする工程として実行してもよい。
【0558】
S6:シート回収工程
【0559】
図23に示すように、このシート洗浄方法は、さらに、後続するステップS6として、シート回収工程を有する。このシート回収工程S6は、送り経路FPにおいて第3位置P3より下流側の第4位置P4において、被洗浄シートSCのうち洗浄済の部分を巻き取ってシートロール50として回収する工程である。
【0560】
図24に示すように、このシート回収工程S6は、シート回収装置36(後に詳述する)を用いて実行される。
【0561】
<システム10の各構成要素の具体的構成>
【0562】
<シートガイド機構30>
【0563】
図25(a)および(b)に例示するように、一例においては、シートガイド機構30が、被洗浄シートSCの両側辺のそれぞれに沿って離散的に並んだ複数のスライドリング60(例えば、カラビナなど)であって、送り経路FPに沿って被洗浄シートSCと一体的に移動するものと、(b)静止部材としての足場20に設置され、送り経路FPに対して平行に延びる一対のガイドワイヤ62,62(「一対のガイドレール」の一例)とを含むように構成される。
【0564】
図21に例示するように、一対のガイドワイヤ62,62は、足場20に固定設置される。図25(a)および(b)に例示するように、各スライドリング60は、一対のガイドワイヤ62,62のうち対応するものにそれの長さ方向にスライド可能に連結される。
【0565】
図25(a)および(b)に例示するように、一例においては、被洗浄シートSCが、それの両側辺のそれぞれに沿って複数のハトメ66が離散的に並んだものとされる。ハトメ66は、よく知られているように、被洗浄シートSCの貫通穴162(図31(b)参照。)ごとに、その貫通穴162を補強するために被洗浄シートSCに装着される金具(貫通穴補強具)である。
【0566】
図25(a)および(b)に例示するように、各ハトメ66(貫通穴162)と、対応する側のガイドワイヤ62とを束ねるように、対応するスライドリング60がそれらハトメ66とガイドワイヤ62とに緩く装着されて連結される。それにより、被洗浄シートSCが、送り方向に、スライドリング60と一体的に、実質的な静止部材としてのガイドワイヤ62に対してスライド移動可能とされる。
【0567】
被洗浄シートSCは、それの幅方向両端部において、一対のガイドワイヤ62,62にそれぞれ連結され、それにより、一対のガイドワイヤ62,62から両端支持状態で吊り下げられる。このとき、被洗浄シートSCは、図21に例示するように、第1および第2の網目状板72,116を含む複数の部材(例えば、送り経路FPに沿って一列に並ぶ複数枚の板状部材)によって構成される、送り経路FPに沿って実質的に連続するシート支持面に接触(スライド可能に接触)する状態で吊り下げられるか、または、そのシート支持面に接触せず、そこから浮上した状態で吊り下げられる。
【0568】
図25(a)および(b)に例示するように、本実施形態においては、被洗浄シートSCの長さ方向における両端部のうちの先端部に、幅方向に沿って複数のハトメ66が装着されている。それらハトメ66のうちの少なくとも一つに引出しロープ70が、被洗浄シートSCを送り方向に手動で牽引するための牽引具の一例として着脱可能に取り付けられる。
【0569】
この例においては、作業者が、例えば、被洗浄シートSCの先端部がシート回収装置36に到達する前の第1段階においては、引出しロープ70を用いて被洗浄シートSCをそれの長さ方向に手動で送り、被洗浄シートSCの先端部がシート回収装置36に到達した後の第2段階においては、シート回収装置36を用いて手動でまたは自動的に巻き取ることにより、被洗浄シートSCを送ることが可能である。
【0570】
<第1除去装置32>
【0571】
<第1の網目状板72>
【0572】
図21に示すように、第1除去装置32は、被洗浄シートSCの下面(前述の作用面)に非接触状態で概して平行に対向する第1の網目状板72を有する。
【0573】
その第1の網目状板72は、平面視において網目状を成しており、その素材は、エクスパンドメタル(例えば、金属板をエキスパンド製造機を用いて千鳥状に切れ目を入れながら押し広げ、その切れ目を菱形や亀甲形に成形したメッシュ状の部材)であるが、その代わりに、例えば、金網(例えば、複数本の金属製線材を織り込んで網目状にされた部材)としてもよい。この第1の網目状板72は、足場20に装着されて固定される。
【0574】
この第1の網目状板72の各開口部は、例えば、被洗浄シートSCに付着しているサイズが大きな塗膜片がその被洗浄シートSCから落下すると、その塗膜片が第1の網目状板72の各開口部を通過することを許容するサイズを有する。
【0575】
<塗膜片回収シート組立体>
【0576】
図21に示すように、第1除去装置32は、さらに、エアブローの吹付けによって被洗浄シートSCから分離した複数の塗膜片のうちサイズが大きなもの(例えば、浮遊する粒子、浮遊体)を回収するために、概して六面体状を成す塗膜片回収シート組立体74を有する。
【0577】
この塗膜片回収シート組立体74の内部に第1作業空間WS1が定義される。この塗膜片回収シート組立体74は、図26(a)に示すように、六面体状の第1作業空間WS1を全面的に包囲し、よって、「第1の包囲体」の一例を構成する。
【0578】
同図(a)に示すように、この塗膜片回収シート組立体74は、複数枚のシートを折り曲げたり相互にファスナーなどを用いて着脱可能に接合することにより、第1作業空間WS1を全方位から包囲するように立体化されている。
【0579】
同図(a)に示すように、この塗膜片回収シート組立体74は、送り経路FPを境界として、上部体76と下部体78とに仕切られる。
【0580】
上部体76は、天板80、前板82、後板84および左右の側板86,86により構成され、底板を有しない。一方、下部体78は、底板90、前板92、後板94および左右の側板96,96とにより構成され、天板を有しない。この塗膜片回収シート組立体74は、上部体76のうちの底面(実在しない面)が送り経路FPの下方に配置されるように、足場20に対して位置決めされる。
【0581】
上部体76において、天板80、前板82、後板84および左右の側板86,86はいずれも可撓性のシートとして構成される。
【0582】
それら板のうち、前板82、後板84および左右の側板86,86はいずれも、第1除去工程S3において被洗浄シートSCにエアブローが吹き付けられることによって第1作業空間WS1内を浮遊する複数の塗膜片が第1作業空間WS1外に飛散することを防止するために、無通気性シートとして構成される。前板82、後板84および左右の側板86,86はいずれも、「飛散防止手段」の一例である。
【0583】
これに対し、天板80は、上記エアブローが外気に放散すること、すなわち、ガス抜きを可能とするために、複数の開口部を有する(多孔性の)メッシュシートとして構成されている。
【0584】
これに対し、下部体78において、底板90、前板92、後板94および左右の側板96,96はいずれも可撓性のシートとして構成される。
【0585】
それら板のうち、前板92、後板94および左右の側板96,96は、前記浮遊する複数の塗膜片が第1作業空間WS1外に飛散することを防止するために、無通気性シートによって構成される。
【0586】
被洗浄シートSCから分離した複数の塗膜片のうちの大半は、被洗浄シートSCからダイレクトに自重によって落下して底板90上に着地するか、または、わずかな数であるとしても、浮遊した後に自重によって落下して底板90上に着地し、いずれにしても最終的に底板90上に着地して蓄積される。よって、底板90も、無通気性シートによって構成される。
【0587】
同図(a)に示すように、上部体76のうちの前板82において、それの水平帯状の下端部が、横長フラップ状となるように部分的に切断され、それにより、入口開閉扉100として機能し、同様に、上部体76のうちの後板84において、それの水平帯状の下端部が出口開閉扉102として機能する。ここに、「開閉扉」は、例えば、のれん、カーテン、すだれと同一視できる可動片である。
【0588】
前板82においては、入口開閉扉100とそれより上方の部分との間に水平の折り曲げ線BLがヒンジとして形成され、それにより、入口開閉扉100が、外力に応じ、それより上方の部分に対して折り曲げ線BLを起点として折れ曲がることが促進されている。
【0589】
具体的には、同図(b)に示すように、入口開閉扉100は、常には、自重により、垂下し、前板82を閉塞する閉状態にあり、これにより、第1作業空間WS1が閉塞される。
【0590】
これに対し、被洗浄シートSCが上流側から入口開閉扉100の外側面に接近し、やがて被洗浄シートSCの下流端が入口開閉扉100の外側面に当接すると、被洗浄シートSCの前進力によって入口開閉扉100が折れ曲がり、その結果、前板82を部分的に開放する開状態に遷移する。
【0591】
このとき、入口開閉扉100の下端は被洗浄シートSCの表面に接触するから、入口開閉扉100は、被洗浄シートSCの通過を許容するに足る角度でしか折れ曲がらず、前板82が無駄に広い面積で、しかも、無駄に長い時間で開放されることが抑制される。
【0592】
同様に、出口開閉扉102は、常には、自重により、垂下し、後板84を閉塞する閉状態にあり、これにより、第1作業空間WS1が閉塞される。
【0593】
これに対し、被洗浄シートSCが上流側から出口開閉扉102の内側面に接近し、やがて被洗浄シートSCの下流端が出口開閉扉102の内側面に当接すると、被洗浄シートSCの前進力によって出口開閉扉102が折り曲げ線BLを起点として折れ曲がり、その結果、後板84を部分的に開放する開状態に遷移する。
【0594】
このとき、出口開閉扉102の下端は被洗浄シートSCの表面に接触するから、出口開閉扉102は、被洗浄シートSCの通過を許容するに足る角度でしか折れ曲がらず、後板84が無駄に広い面積で、しかも、無駄に長い時間で開放されることが抑制される。
【0595】
図1に示すように、被洗浄シートSCが塗膜片回収シート組立体74を送り方向に貫通する状態においては、その被洗浄シートSCに対して入口開閉扉100も出口開閉扉102も開状態にあるが、上述のように、入口開閉扉100および出口開閉扉102により、前板82および後板84がそれぞれ無駄に広い面積で開放されることが抑制される。
【0596】
よって、前記浮遊した複数の塗膜片がそれら入口開閉扉100および出口開閉扉102のそれぞれの開口面積を通過して外気に漏れ出すことが抑制される。
【0597】
この塗膜片回収シート組立体74は、例えば、使用後に廃棄される。
【0598】
<第1の噴射ユニット40>
【0599】
図21に示すように、第1除去装置32は、さらに、被洗浄シートSCに向けて圧縮気体を噴射する乾式の第1の噴射ユニット40を有する。図21および図27に示すように、この第1の噴射ユニット40は、複数本のチューブ104が複数の継手106によって連結されて成る枠状体を有している。
【0600】
それらチューブ104および継手106は、互いに共同して連続した流路を形成しており、その流路に、外部の空圧源108が図示しないホースを介して接続されている。各継手106にノズル110が下向きに接続され、そのノズル110からエアブローが円錐状または扇形に噴射される。
【0601】
図21および図27に示すように、この第1の噴射ユニット40は、互いに平行に対向する2本の直線部112,112を有しており、それぞれの直線部112に、複数のノズル110が隙間を隔てて直線的に並んでいる。その結果、第1の噴射ユニット40は、複数のノズル110を2列分有している。
【0602】
図21に示すように、この第1の噴射ユニット40は、送り経路FPの上方(被洗浄シートSCの上方)においてその送り経路FPを横断し、かつ、2つのノズル列が下向きにエアブローを噴射するように足場20に着脱可能に横架される。
【0603】
<第2除去装置34>
【0604】
<第2の網目状板116>
【0605】
図21に示すように、第2除去装置34は、被洗浄シートSCの下面(前述の作用面)に非接触状態で概して平行に対向する第2の網目状板116を有する。その第2の網目状板116は、平面視において網目状を成しており、その素材は、鉄筋メッシュ張りであるが、その代わりに、例えば、金網としてもよい。この第2の網目状板116も、第1の網目状板72と同様に、足場20に装着されて固定される。
【0606】
この第2の網目状板116の各開口部は、例えば、被洗浄シートSCに付着しているサイズが小さな塗膜片がその被洗浄シートSCから落下すると、その塗膜片が第2の網目状板116の各開口部を通過することを許容するサイズを有する。この第2の網目状板116の各開口部は、例えば、第1の網目状板72の各開口部より小さくてもよい。
【0607】
<洗浄用集水シート組立体118>
【0608】
図21に示すように、第2除去装置34は、さらに、被洗浄シートSCから跳ね返った洗浄水であってその洗浄水との衝突によって被洗浄シートSCから分離した複数の塗膜片のうちサイズが小さなものおよび剥離剤を運搬するものを回収するために、概してC字断面で前後に延びる形状を有する洗浄用集水シート組立体118を有する。
【0609】
この洗浄用集水シート組立体118の内部に第2作業空間WS2が定義される。この洗浄用集水シート組立体118は、図28に示すように、六面体状の第2作業空間WS2を部分的に、すなわち、天面と前面と後面とを除く3面(いずれも実在しない面)としての、左右の側面と底面とを包囲し、それにより、「第2の包囲体」の一例を構成する。
【0610】
同図に示すように、この洗浄用集水シート組立体118は、複数枚のシートを折り曲げたり相互にファスナーなどを用いて着脱可能に接合することにより、第2作業空間WS2を3方位から包囲するように立体化されている。
【0611】
同図に示すように、この洗浄用集水シート組立体118は、左右の側板120,120および底板122により構成され、天板も前板も後板も有しない。この洗浄用集水シート組立体118は、底板122が送り経路FPの下方に配置されるように足場20に対して位置決めされる。左右の側板120,120および底板122はいずれも可撓性のシートとして構成される。
【0612】
この洗浄用集水シート組立体118は、それの前面において、送り方向に沿って、前述の塗膜片回収シート組立体74の上部体76の後板84に正対して隣接する。このとき、前記前面の下端位置と、後板84の下端位置とが水平方向において実質的に合致させられる。よって、この洗浄用集水シート組立体118は、塗膜片回収シート組立体74の後板84により、その塗膜片回収シート組立体74から流体的に遮断される。
【0613】
この洗浄用集水シート組立体118が送り方向において塗膜片回収シート組立体74に隣接する状態において、両者間に、有害物質の漏出が予想されるほどに大きな隙間が存在せざるを得ないときには、その隙間を塞ぐシール部材が洗浄用集水シート組立体118と塗膜片回収シート組立体74とを跨ぐように設置される。
【0614】
そのシール部材は、例えば、送り経路FPを邪魔しないようにそれの下方において水平面を有する横部材として構成される。これにより、送り経路FPが、実体的に、塗膜片回収シート組立体74から洗浄用集水シート組立体118まで隙間なく連続する。
【0615】
第2作業空間WS2内においては、第2除去装置34により、高圧洗浄ガン42から洗浄水が被洗浄シートSCの全体または洗浄が必要な部分を標的として噴射されてその標的に衝突する。その衝突した洗浄水は、前記複数の塗膜片のうちサイズが大きなものや前記剥離剤であって前記衝突によって生成されたものを運搬する。
【0616】
その運搬媒体としての洗浄水は、ダイレクトに被洗浄シートSCの各貫通穴(各ハトメ66の貫通穴)を通過して落下するか、または、被洗浄シートSCで跳ね返って浮遊し、やがて自重で落下し、その後、被洗浄シートSCの各貫通穴を通過して落下することが予想される。いずれにしても、そのように被洗浄シートSCの不要物の影響を受けた洗浄水(被洗浄シートSCからの分離・剥離という使命を果たした使用済の洗浄水)が落下すると、その洗浄水は、最終的にこの洗浄用集水シート組立体118の底板122上に着地する。
【0617】
その底板122は、すり鉢状を成しており、その概して中央に位置する廃水出口124において最も垂下するように概して逆角錐状または逆円錐状を成している。その結果、使用済の洗浄水は、底板122上のいずれの位置に着地しても、自重と底板122の傾斜面の作用とにより、最終的に廃水出口124に集まる。
【0618】
この洗浄用集水シート組立体118も、前述の塗膜片回収シート組立体74と同様に、例えば、使用後に廃棄される。
【0619】
<高圧洗浄ガン42>
【0620】
図21に示すように、第2除去装置34は、さらに、作業者によって手動で被洗浄シートSCに向けて洗浄水を高圧で噴射する高圧洗浄ガン42を「高圧噴射器」の一例として有する。
【0621】
その高圧洗浄ガン42は、特許文献3に開示されている洗浄ガン216と共通する構造を有してもよく、洗浄水を噴射ノズルから高圧で噴射するように構成される。
【0622】
この高圧洗浄ガン42は、一例においては、洗浄ガン216と同様に、作業者の片方の手で操作される操作具としてのトリガと、そのトリガの操作量に応じて当該高圧洗浄ガン42のオンオフと流量調整とを行う流量調整弁とを含むように構成される。上記の噴射ノズルは、例えば、円錐噴射や扇形噴射(図27(c)参照。)を行うように選定される。
【0623】
<第2の噴射ユニット46>
【0624】
図21に示すように、第2除去装置34は、さらに、被洗浄シートSCに向けて圧縮気体を噴射する乾式の第2の噴射ユニット46を有する。この第2の噴射ユニット46は、前述の第1の噴射ユニット40と共通の構造を有するため、重複した説明を省略する。
【0625】
図21に示すように、この第2の噴射ユニット46は、送り経路FPの上方(被洗浄シートSCの上方)においてその送り経路FPを横断し、かつ、2つのノズル列が下向きにエアブローを噴射し、かつ、各ノズル列が送り経路FPの幅方向に延びるように足場20に着脱可能に横架される。
【0626】
この第2の噴射ユニット46は、上述のように、構造に関しては、前述の第1の噴射ユニット40と共通するが、用途に関しては、被洗浄シートSCが水洗された後に、第2作業空間WS2内において、エアブローを被洗浄シートSCに吹き付けることにより、その被洗浄シートSCの水切りを行う点で、被洗浄シートSCからサイズの大きな塗膜片を分離除去するという用途を有する第1の噴射ユニット40とは相違する。
【0627】
<作業床126>
【0628】
図21に示すように、第2除去装置34は、さらに、第2作業空間WS2内において作業者が直立姿勢で高圧洗浄作業を行うための足場板として作業床126を有する。その作業床126は、図29に示すように、一例においては、複数本の角材、アングル材などの長手状の中空組立体として構成され、それの表面には、網目状板128が装着されている。その網目状板128は、例えば、前述のエクスパンドメタルを用いて製作される。
【0629】
図21に示すように、この作業床126は、前述の第2の噴射ユニット46の上方において送り経路FPを横断するように足場20に着脱可能に横架される。
【0630】
図30は、第2除去装置34をそれに付属するいくつかのろ過槽と共に示す正面図である。
【0631】
第2作業空間WS2内においては、作業床126の設置位置において、上から順に、作業床126、一対のガイドワイヤ62,62に展開状態で横架された被洗浄シートSC、第2の網目状板116、支持材(例えば、横棒)136、および洗浄用集水シート組立体118のうちの底板122が並んでいる。
【0632】
被洗浄シートSCから流出した使用済の洗浄水は、底板122上に着地してその底板122に沿って流下して廃水出口124に集まり、その後、ドレン管138を経て凝集工程のための設備に移行させられる。その凝集工程のための設備は、一例においては、1次凝集ろ過槽140と2次凝集ろ過槽142とが直列接続されたものとして構成される。
【0633】
[第5実施形態]
【0634】
次に、本発明の例示的な第5実施形態を説明する。ただし、上述の第4実施形態と共通する要素については、同一の符号を引用するなどして重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。
【0635】
<第4実施形態との相違点>
【0636】
上述の第4実施形態においては、作業者によって手動で被洗浄シートSCがシートガイド機構30によってガイドされつつ送り経路FPに沿って送られる。
【0637】
これに対し、本実施形態に従うシート洗浄システム148においては、動力源を有するシート送り装置132を用いて自動的に(場合によっては、作業者による遠隔操作などに従い)被洗浄シートSCが送り経路FPに沿って送られる。よって、本実施形態によれば、被洗浄シートSCの送り作業を無人化することが可能である。
【0638】
さらに、上述の第4実施形態においては、作業者によって手動で高圧洗浄ガン42が洗浄水を被洗浄シートSCの表面上に噴射する。
【0639】
これに対し、本実施形態に従うシステム148においては、動力源を有する噴射器移動装置150を用いて自動的に(場合によっては、作業者による遠隔操作などに従い)高圧噴射器152が洗浄水を被洗浄シートSCの表面上に噴射する。よって、本実施形態によれば、被洗浄シートSCの高圧洗浄作業を無人化することが可能である。
【0640】
<シート送りの無人化・自動化>
【0641】
図31(a)に示すように、本実施形態に従うシステム148は、被洗浄シートSCの送りを自動化するために、第4実施形態に対し、追加的に、第4実施形態には存在しないシート送り装置132を備えるとともに、構造が異なるシートガイド機構130を備えている。
【0642】
要するに、本実施形態は、動力源としてのモータの回転力を被洗浄シートSCにそれの送り方向に沿った推進力として伝動するための伝動装置を備えている点で、それを備えていない第4実施形態と相違するのである。
【0643】
<シートガイド機構130>
【0644】
同図(a)に示すように、シートガイド機構130は、送り方向に延びる2連のコンベヤベルト154,154をそれぞれ「無限軌道体」の一例として備えている。それら2連のコンベヤベルト154,154は、互いに同期して運行させられる。
【0645】
このシートガイド機構130は、さらに、各コンベヤベルト154が緊張状態で巻き掛けられる駆動プーリ(「駆動回転体」の一例)156および従動プーリ(「従動回転体」の一例)158より成るプーリ・セットを備えている。それら駆動プーリ156および従動プーリ158は、それぞれ互いに送り方向に隔たるように、足場20に位置決めされて装着される。
【0646】
2連のコンベヤベルト154,154は、それぞれ、被洗浄シートSCの両側辺に下方(または上方)から対向するように被洗浄シートSCに対して相対的に配置される。同図(b)に示すように、各コンベヤベルト154の表面に複数の突起(係合突起、凸部など)160が離散的に一列に並んでいる。それら突起160は、被洗浄シートSCの各側辺に離散的に一列に並んで形成されている複数の貫通穴162(ハトメ66)内に嵌まり入る。
【0647】
よって、各突起160が、対応する貫通穴162内に嵌まり入った状態においては、被洗浄シートSCが送り方向にも左右方向にも、足場20に対して変動しない。したがって、本実施形態においては、2連のコンベヤベルト154,154および前記プーリ・セットによってシートガイド機構130が、第4実施形態におけるシートガイド機構130と同様に被洗浄シートSCの複数の貫通穴162を利用する方式で構成されている。
【0648】
<シート送り装置132>
【0649】
同図(a)に示すように、シート送り装置132は、動力源としてのモータ164と、減速機166と、その減速機166の出力を駆動プーリ156に回転力として伝達する部材としてのシャフト168とを備えている。モータ164は、図示しない電源からの電気エネルギーによって駆動される。このモータ164は、作業者からの指令に従い、発停はもちろん、逆転も加減速も可能である。
【0650】
<高圧噴射の自動化>
【0651】
図32(a)に示すように、本実施形態に従うシステム148は、被洗浄シートSCの高圧洗浄を自動化するために、動力源を用いて自動的に高圧噴射器152から洗浄水を被洗浄シートSCに向けて高圧で噴射しつつその被洗浄シートSCの幅方向に移動させる噴射器移動装置150を備えている。
【0652】
<噴射器移動装置150>
【0653】
同図(a)に示すように、噴射器移動装置150は、噴射ノズル170を有する高圧噴射器152を備えている。その高圧噴射器152は、フレキシブルなホース172を介して外部の水圧源174に接続されている。
【0654】
噴射器移動装置150は、さらに、ベースサポート176を備えており、そのベースサポート176は、被洗浄シートSCを横断する姿勢で第2作業空間WS2内の所定位置に配置されるように足場20に着脱可能に横架される。
【0655】
同図(b)に示すように、噴射器移動装置150は、さらに、高圧噴射器152をベースサポート176にスライド可能に装着するためにリニアガイド178を備えている。そのリニアガイド178は、ベースサポート176において、被洗浄シートSCの幅方向(左右方向)に直線的に延びるレール180と、そのレール180に摺動可能に嵌合するスライダ182とを備えている。そのスライダ182は高圧噴射器152と一体的に移動する。ここに、レール180は、「軌道体」の一例であり、また、リニアガイド178は、「連結機構」の一例である。
【0656】
同図(c)に示すように、噴射器移動装置150は、さらに、噴射器推進装置184を備えている。その噴射器推進装置184は、動力源としてのモータ186と、その186モータの出力を高圧噴射器152の推進力に変換する変換機構188とを有する。モータ186の一例は、電動モータである。
【0657】
変換機構188の一例は、モータ186の回転をエンドレスなベルト190の回転に変換し、そのベルト190のうちの直線部196の推進力を高圧噴射器152に付与する機構である。この例においては、そのベルト190が、高圧噴射器152の移動方向に隔たった駆動プーリ192と従動プーリ194とに巻き掛けられ、そのベルト190の2本の直線部196,196のうちの一方と、高圧噴射器152とが機械的に互いに連携させられる。
【0658】
本実施形態においては、一例においては、コントローラ204が、現場に居る作業者からリアルタイムで発出される指令または予めプログラムされた指令に従い、モータ186を制御し、それにより、高圧噴射器152を左右方向において前進、停止または後退させるとともに、高圧噴射器152の流量制御機構を制御し、それにより、高圧噴射器152の噴射量を制御することが可能である。この場合、コントローラ204は、高圧噴射器152の往復運動によって被洗浄シートSCの全面を走査するとともに、その高圧噴射器152の各瞬間の位置に応じて高圧噴射器152の噴射量を制御することが可能である。
【0659】
一例においては、コントローラ204が、高圧噴射器152を左右方向において目標位置に移動させて停止させるとともに、その停止位置において、高圧噴射器152の噴射を目標時間の間、目標の噴射量で行うことが可能である。この場合、被洗浄シートSCのうちの1つの標的エリアを局所的に高圧洗浄したり、洗浄シートのうちの複数の標的エリアを順次、それぞれ局所的に高圧洗浄することが可能である。
【0660】
[第6実施形態]
【0661】
次に、本発明の例示的な第6実施形態を説明する。ただし、前述の第4実施形態と共通する要素については、同一の符号を引用するなどして重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。
【0662】
図33には、本実施形態に従うシート洗浄方法を構成する複数の工程と、そのシート洗浄方法を実施するために使用されるシート洗浄システムを構成する複数の要素との間の対応関係が表形式で表されている。
【0663】
<第4実施形態との相違点>
【0664】
本実施形態は、前述の第4実施形態に対し、次のいくつかの点で相違する。
【0665】
1.図33の上部に表形式で示すように、第3除去工程S5が、送り経路FPにおいて第2位置P2より下流側の第3位置P3に位置する第3作業空間WS3内において、第2除去工程S4から独立して実行される。
【0666】
2.同図に示すように、新たな第4除去工程S6が、送り経路FPにおいて第3位置P3より下流側の第4位置P4に位置する第4作業空間WS4内において、第4除去装置206を用いることにより、被洗浄シートSCが水切りされた後に、その被洗浄シートSCをブラシで叩き出すかおよび/または吸引具を用いて吸引する。
【0667】
この第4除去工程S6によれば、それより上流側において実行される工程では被洗浄シートSCから分離除去できなかった、被洗浄シートSCの繊維に付着したり絡み付いた微細な塗膜片や鋭利な塗膜片をブラシによる衝撃力または吸引具による吸引力により、被洗浄シートSCから除去することが可能である。
【0668】
一例においては、同図の下部に機能ブロック図で概念的に表すように、第4除去装置206が、電気掃除機のヘッドに使用されるモータ駆動式回転ブラシ装置を含むように構成される。そのモータ駆動式回転ブラシ装置は、モータ207と、そのモータ207によって回転(例えば自転)させられるブラシ208と、回転するブラシ207によって被洗浄シートSCから塗膜片など(固形物)を叩き出しながらそれを吸引するエアポンプ209(「吸引具」の一例)とを含むように構成される。
【0669】
以上説明したいくつかの実施形態においては、各シート洗浄システム10,148のうちの第1除去装置32および第2除去装置34が、側面視において、空間に固定される一方、被洗浄シートSCが、側面視において、空間に対して移動させられることにより、両者間の送り方向における相対移動が実現される。
【0670】
前述のいくつかの実施形態の代わりに、各シート洗浄システム10,148のうちの第1除去装置32および第2除去装置34が、側面視において、空間に対して移動させられる一方、被洗浄シートSCが、側面視において、空間に固定されることにより、両者間の送り方向における相対移動が実現される態様で本発明を実施してもよい。
【0671】
この態様において、第1除去装置32および第2除去装置34がそれぞれ構造が互いに共通する設備(例えば、第1の噴射ユニット40および第2の噴射ユニット46)を有するときは、1つの設備を第1除去工程S3の実行と第2除去工程S4の実行とに用いてもよい。その場合には、各シート洗浄システム10,148の部品点数が削減される。
【0672】
以上、本発明を湿式塗膜剥離作業のための廃水処理に用いられた使用済シートを洗浄するという用途に適用する場合のいくつかの実施形態を説明したが、これらは例示であり、本発明は他の用途、例えば、剥離剤を用いることなく、建築物(家屋、ビル等)、鉄製の骨組み構造を用いて構成される細長い建造物である鉄塔(例えば、送電用鉄塔、通信用鉄塔など)、土木構造物(橋梁等)、船舶、車両(自動車、列車等)、飛行機等の構造物または構造体の表面の洗浄であって作業中に有害物質を含み得る廃水が生成されるものに用いられた使用済シートを洗浄するという用途に適用することが可能である。
【0673】
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
【手続補正書】
【提出日】2023-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させる凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと
それら第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内において前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成する駆動源と、
前記凝集剤を収容するとともにその凝集剤の投入開始領域を前記液面に臨むように有し、その投入開始領域から前記凝集剤を前記廃水内に投入可能な投入器であって、前記投入開始領域が前記くぼみの発生領域に対応するように前記凝集槽に対して配置されるものと
を含む廃水処理システム。
【請求項2】
前記凝集装置は、さらに、前記凝集槽に取り付けられた少なくとも1本の第2の撹拌シャフトを含み、
その少なくとも1本の第2の撹拌シャフトは、それぞれ対応する少なくとも1つの第2の撹拌翼を回転させ、それにより、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を前記廃水内において拡散させる請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽内における廃水の液面に近い位置に配置される上側撹拌翼を含み、
その上側撹拌翼は、対応する撹拌シャフトに、その撹拌シャフトの組付け状態において軸方向位置調節可能に装着され、それにより、前記液面からの上下方向距離が調節可能である請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽の底部に近い位置に配置される下側撹拌翼を含み、
その下側撹拌翼は、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を補助的に加速してその凝集剤の拡散を促進するという用途と、前記凝集槽の底部上における沈殿物であって前記凝集剤および前記凝集フロックを含むものの再拡散を促進するという用途とのうちの少なくとも一方のために使用される請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記凝集装置は、さらに、
前記凝集槽の底部に形成されたドレインと、
前記凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において前記廃水をろ過するものと、
前記ろ過袋の底部と前記ドレインとの間に設置されるスペーサであって、それらろ過袋の底部とドレインとの間に隙間をその隙間内を前記廃水のうちの少なくとも液体成分が通過可能な状態で形成することにより、前記ドレインの目詰まりを防止するものと
を含む請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
当該廃水処理システムは、前記構造物の表面から既存塗膜を剥離剤を用いて剥離するためにその剥離剤が前記構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するために使用される請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
前記標的物質は、鉛、クロム、アスベストおよびPCBより成る群から選択される請求項6に記載の廃水処理システム。
【請求項8】
粉状または粒状の凝集剤を用いて凝集槽内の標的物質を凝集フロックとして凝集させるために前記凝集剤を前記凝集槽内の原水に添加する装置であって、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと、
それら第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内において前記原水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記原水の液面に開口するくぼみを有するように生成する駆動源と、
前記凝集剤を収容するとともにその凝集剤の投入開始領域を前記液面に臨むように有し、その投入開始領域から前記凝集剤を前記廃水内に投入可能な投入器であって、前記投入開始領域が前記くぼみの発生領域に対応するように前記凝集槽に対して配置されるものと
を含む凝集剤添加装置。
【請求項9】
粉状または粒状の凝集剤を用いて凝集槽内の標的物質を凝集フロックとして凝集させるために前記凝集剤を前記凝集槽内の原水に添加する方法であって、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内の原水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記原水の液面に開口するくぼみを有するように生成する回転工程と、
前記凝集剤を前記渦巻きのくぼみに向けて投入する投入工程と
を含む凝集剤添加方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
同じ課題を解決するために、本発明の別の側面によれば、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させる凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと、
それら第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内において前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成する駆動源と、
前記凝集剤を収容するとともにその凝集剤の投入開始領域を前記液面に臨むように有し、その投入開始領域から前記凝集剤を前記廃水内に投入可能な投入器であって、前記投入開始領域が前記くぼみの発生領域に対応するように前記凝集槽に対して配置されるものと
を含む廃水処理システムが提供される。
同じ課題を解決するために、本発明のさらに別の側面によれば、粉状または粒状の凝集剤を用いて凝集槽内の標的物質を凝集フロックとして凝集させるために前記凝集剤を前記凝集槽内の原水に添加する装置であって、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと、
それら第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内において前記原水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記原水の液面に開口するくぼみを有するように生成する駆動源と、
前記凝集剤を収容するとともにその凝集剤の投入開始領域を前記液面に臨むように有し、その投入開始領域から前記凝集剤を前記廃水内に投入可能な投入器であって、前記投入開始領域が前記くぼみの発生領域に対応するように前記凝集槽に対して配置されるものと
を含む凝集剤添加装置が提供される。
同じ課題を解決するために、本発明のさらに別の側面によれば、粉状または粒状の凝集剤を用いて凝集槽内の標的物質を凝集フロックとして凝集させるために前記凝集剤を前記凝集槽内の原水に添加する方法であって、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内の原水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記原水の液面に開口するくぼみを有するように生成する回転工程と、
前記凝集剤を前記渦巻きのくぼみに向けて投入する投入工程と
を含む凝集剤添加方法が提供される。
同じ課題を解決するために、本発明のさらに別の側面によれば、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと
を含み、
それら第1の撹拌シャフトは、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼を同じ向きに回転させ、それにより、前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記凝集剤は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、その後、前記渦巻きによって引き込まれて前記凝集槽の底部に向かって沈降させられる廃水処理システムが提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図14
【補正方法】変更
【補正の内容】
図14
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図16
【補正方法】変更
【補正の内容】
図16
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図17
【補正方法】変更
【補正の内容】
図17
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図18
【補正方法】変更
【補正の内容】
図18
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図19
【補正方法】変更
【補正の内容】
図19
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図20
【補正方法】変更
【補正の内容】
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させる凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと、
それら第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内において前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成する駆動源と、
前記凝集剤を収容するとともにその凝集剤の投入開始領域を前記液面に臨むように有し、その投入開始領域から前記凝集剤を前記廃水内に投入可能な投入器であって、前記投入開始領域が前記くぼみの発生領域に対応するように前記凝集槽に対して配置されるものと
を含む廃水処理システム。
【請求項2】
前記凝集装置は、さらに、前記凝集槽に取り付けられた少なくとも1本の第2の撹拌シャフトを含み、
その少なくとも1本の第2の撹拌シャフトは、それぞれ対応する少なくとも1つの第2の撹拌翼を回転させ、それにより、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を前記廃水内において拡散させる請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽内における廃水の液面に近い位置に配置される上側撹拌翼を含み、
その上側撹拌翼は、対応する撹拌シャフトに、その撹拌シャフトの組付け状態において軸方向位置調節可能に装着され、それにより、前記液面からの上下方向距離が調節可能である請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記2本の第1の撹拌シャフトにそれぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼は、前記凝集槽の底部に近い位置に配置される下側撹拌翼を含み、
その下側撹拌翼は、前記渦巻きによって引き込まれた凝集剤を補助的に加速してその凝集剤の拡散を促進するという用途と、前記凝集槽の底部上における沈殿物であって前記凝集剤および前記凝集フロックを含むものの再拡散を促進するという用途とのうちの少なくとも一方のために使用される請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記凝集装置は、さらに、
前記凝集槽の底部に形成されたドレインと、
前記凝集槽内に設置されるろ過袋であって、当該ろ過袋内に注入された廃水が前記ドレインから排水される過程において前記廃水をろ過するものと、
前記ろ過袋の底部と前記ドレインとの間に設置されるスペーサであって、それらろ過袋の底部とドレインとの間に隙間をその隙間内を前記廃水のうちの少なくとも液体成分が通過可能な状態で形成することにより、前記ドレインの目詰まりを防止するものと
を含む請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項6】
当該廃水処理システムは、前記構造物の表面から既存塗膜を剥離剤を用いて剥離するためにその剥離剤が前記構造物の表面に塗布された後にその構造物の表面を洗浄するためにその構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するために使用される請求項1に記載の廃水処理システム。
【請求項7】
前記標的物質は、鉛、クロム、アスベストおよびPCBより成る群から選択される請求項6に記載の廃水処理システム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
同じ課題を解決するために、本発明の別の側面によれば、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させる凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと、
それら第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内において前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成する駆動源と、
前記凝集剤を収容するとともにその凝集剤の投入開始領域を前記液面に臨むように有し、その投入開始領域から前記凝集剤を前記廃水内に投入可能な投入器であって、前記投入開始領域が前記くぼみの発生領域に対応するように前記凝集槽に対して配置されるものと
を含む廃水処理システムが提供される。
同じ課題を解決するために、本発明のさらに別の側面によれば、粉状または粒状の凝集剤を用いて凝集槽内の標的物質を凝集フロックとして凝集させるために前記凝集剤を前記凝集槽内の原水に添加する装置であって、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと、
それら第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内において前記原水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記原水の液面に開口するくぼみを有するように生成する駆動源と、
前記凝集剤を収容するとともにその凝集剤の投入開始領域を前記液面に臨むように有し、その投入開始領域から前記凝集剤を前記原水内に投入可能な投入器であって、前記投入開始領域が前記くぼみの発生領域に対応するように前記凝集槽に対して配置されるものと
を含む凝集剤添加装置が提供される。
同じ課題を解決するために、本発明のさらに別の側面によれば、粉状または粒状の凝集剤を用いて凝集槽内の標的物質を凝集フロックとして凝集させるために前記凝集剤を前記凝集槽内の原水に添加する方法であって、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトを、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼が同じ向きに回転するように回転させ、それにより、前記凝集槽内の原水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記原水の液面に開口するくぼみを有するように生成する回転工程と、
前記凝集剤を前記渦巻きのくぼみに向けて投入する投入工程と
を含む凝集剤添加方法が提供される。
同じ課題を解決するために、本発明のさらに別の側面によれば、構造物の表面に噴射された洗浄水をその使用後に廃水として回収して処理するための廃水処理システムであって、
前記廃水に添加された粉状または粒状の凝集剤を用いて前記廃水中の標的物質を凝集フロックとして凝集させて固液分離する凝集装置を含み、
その凝集装置は、
前記廃水を収容する凝集槽と、
各々、前記凝集槽内において略上下方向に延びる姿勢で、略上下方向に延びる長手状の隙間を隔てて並列配置される2本の第1の撹拌シャフトと
を含み、
それら第1の撹拌シャフトは、それぞれ対応する2個または2群の第1の撹拌翼を同じ向きに回転させ、それにより、前記廃水のうち前記隙間に対応する部分またはその周辺に下向きの渦巻きを前記廃水の液面に開口するくぼみを有するように生成し、
前記凝集剤は、前記渦巻きのくぼみに向けて投下され、その後、前記渦巻きによって引き込まれて前記凝集槽の底部に向かって沈降させられる廃水処理システムが提供される。