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特開2023-182524枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリー及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182524
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリー及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C40B 40/10 20060101AFI20231219BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 30/34 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20231219BHJP
   C07K 7/04 20060101ALN20231219BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C40B40/10
G01N30/72 C ZNA
G01N30/88 J
G01N30/06 E
G01N30/26 A
G01N30/34 E
G01N27/62 V
C07K7/04
C07K14/47
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046786
(22)【出願日】2023-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】202210622026.4
(32)【優先日】2022-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521331364
【氏名又は名称】山東省食品薬品検験研究院
【氏名又は名称原語表記】Shandong Institute for Food and Drug Control
【住所又は居所原語表記】No. 2749, Xinluo Street, Innovation. Zone, Jinan City, Shandong Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 永強
(72)【発明者】
【氏名】薛 菲
(72)【発明者】
【氏名】孫 沛霖
(72)【発明者】
【氏名】郭 東暁
(72)【発明者】
【氏名】馬 双成
(72)【発明者】
【氏名】程 顕隆
(72)【発明者】
【氏名】牛 艶
(72)【発明者】
【氏名】穆 向栄
(72)【発明者】
【氏名】于 鳳蕊
(72)【発明者】
【氏名】許 麗麗
【テーマコード(参考)】
2G041
4H045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041FA12
2G041FA13
2G041GA03
2G041GA09
2G041HA01
2G041KA01
2G041LA07
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA40
4H045EA50
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】本発明は枝角種属鑑別の分野に属し、具体的には、枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリー及びその使用に関する。該特徴的ポリペプチドライブラリーの具体的な組成は、EFTPELQADYQK、VDEVGGEALGR、FFEHFGDLSTADAVMHNAK、VDEVGAEALGR、MLTSEEK、DFTPVLQADFQK、FFEHFGDLSSADAVmGNPK、LLGNVLVVVMAR、FFEHFGDLSTPDAVmGNPK、VVAGVAnALAHR、FFEHFGDLSTADAVmGNPKである。
【効果】本発明は、7種類の鹿科動物の枝角を鑑別、同定することができ、効率が高く、特異性に優れ、検出方法が簡単で効率的であり、枝角に関連する製品の品質制御のレベルを高め、臨床薬の安全性及び有効性を向上させ、しかも、検出限界が低く、検出用サンプルの使用量が少ない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリーであって、
前記特徴的ポリペプチドライブラリーは以下:
に示されることを特徴とする特徴的ポリペプチドライブラリー。
【請求項2】
前記特徴的ポリペプチド配列において、
ペプチドセグメント7は配列FFEHFGDLSSADAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント9は配列FFEHFGDLSTPDAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント10は配列VVAGVAnALAHRであり、nはNの脱アミド翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント11は配列FFEHFGDLSTADAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾であることを特徴とする請求項1に記載の特徴的ポリペプチドライブラリー。
【請求項3】
請求項1に記載の特徴的ポリペプチドライブラリーの、枝角種属由来の高速鑑別における使用であって、
判定原則として、
(1)サンプルにおいて、ヘラジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント1又はペプチドセグメント2又はペプチドセグメント3を検出していると、サンプルはヘラジカ由来であり、
(2)サンプルにおいて、トナカイ対照生薬に対応するペプチドセグメント4又はペプチドセグメント5又はペプチドセグメント6を検出していると、サンプルはトナカイ由来であり、
(3)サンプルにおいて、オジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント7を検出していると、サンプルはオジロジカ由来であり、
(4)サンプルにおいて、クチジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント8を検出していると、サンプルはクチジロジカ由来であり、
(5)サンプルにおいて、ダマジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント9を検出しているが、ペプチドセグメント8とペプチドセグメント11を検出していないと、サンプルはダマジカ由来であり、
(6)サンプルにおいて、ニホンジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント10を検出しているとともに、ペプチドセグメント11を検出していると、サンプルはニホンジカ由来であり、
(7)サンプルにおいて、アカシカ対照生薬に対応するペプチドセグメント11を検出しているが、ペプチドセグメント10を検出していないと、サンプルはアカシカ由来であるとすることを特徴とする使用。
【請求項4】
具体的には、
サンプルを製造する際には、サンプルを粉砕して、篩にかけ、粉末50mgを秤量して、変性緩衝液10mLを加え、よく混ぜて、80℃で一晩処理し、取り出して室温まで放冷し、12000rで10分遠心分離し、サンプル抽出液を500μL取り、分子量3kDaの限外濾過遠心分離管を用いてサンプルに脱塩と酵素分解を行うステップ(1)と、
高速液体クロマトグラフィー-トリプル四重極質量分析計により同定を行うステップ(2)と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記変性緩衝液は6Mグアニジン塩酸塩、1M Tris、2.5mMエチレンジアミン四酢酸に濃塩酸を加えてpHを8.0に調整したものであることを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記脱塩と酵素分解は、具体的には、サンプル抽出液を限外濾過遠心分離管の上層に加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、1% NHHCO溶液500μLと10mg/mLのウシトリプシン溶液10μLを加え、37℃で15分酵素分解し、取り出して室温まで放冷し、遠心分離して上澄み液を得ることであることを特徴とする請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
液相条件として、クロマトグラフィーカラムはAgilent SB C18 (2.1×100mm、1.8μm)、カラム温度は43℃、流速は0.3mL/min、移動相Aは0.1%ギ酸溶液、移動相Bは0.1%ギ酸アセトニトリル溶液であり、勾配溶出が行われ、注入量は5μLであることを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項8】
前記勾配溶出条件は、0~9min、3%B→7.5%B;9~13min、7.5%B→25%B;13~14min、25%B→90%B;14~17min、90%B;17~17.5min、90%B→97%B、17.5~21min、97%Bであることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記質量分析条件としては、質量分析検出器を用いて、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を行い、プラスイオンモードで多重反応モニタリングを行い、
シースガス流速は46L/hr、補助ガス流速は850L/hr、スプレー電圧は3.5KV、イオン源温度は150℃、補助ガス温度は400℃、コーン電圧は30V、衝突電圧は35V、溶媒遅延(solvent delay)は0~4min及び16~20minとすることを特徴とする請求項7又は8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枝角種属鑑別の分野に属し、具体的には、枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリー及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鹿科動物は宝だらけである。昔から鹿製品はずっと皇室と貴族が長寿を追及するためのサプリメントとして使用されており、今も、すでに一般庶民の疾患を防いで体を丈夫にして、滋養美容、延命や健康維持に好適な製品になっている。現代の鹿飼い業の急速な発展に伴い、鹿製品はますます多く開発されてきて、医療や健康維持における鹿製品の不思議な効果が豊かになり、人々に多くの有益な効果をもたらす。鹿製品は人間に極めて豊富な製品を提供し、その中で最も貴重な製品の1つは極めて高い薬用価値と保健効果を持っている枝角である。鹿科動物の種類は非常に多いため、市販されている枝角の由来は顕微鏡鑑別及び薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーなどの伝統的な鑑別手段によって区別することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術に存在する問題に対して、本発明は枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリーを提供する。
【0004】
本発明はまた、上記特徴的ポリペプチドライブラリーの枝角種属由来の鑑別における使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が上記の目的を達成させるために使用される技術的解決手段は以下のとおりである。
【0006】
本発明は、枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリーを提供し、前記特徴的ポリペプチドライブラリーはSEQ ID NO.1~11に示され、具体的な配列を以下に示す。
上記の特徴的ポリペプチドにおいて、
ペプチドセグメント7は配列FFEHFGDLSSADAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント9は配列FFEHFGDLSTPDAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント10は配列VVAGVAnALAHRであり、nはNの脱アミド翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント11は配列FFEHFGDLSTADAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾である。
【0007】
本発明はまた、上記の特徴的ポリペプチドライブラリーの枝角種属由来の高速鑑別における使用であって、判定原則として、
(1)サンプルにおいて、ヘラジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント1又はペプチドセグメント2又はペプチドセグメント3を検出していると、サンプルはヘラジカ由来であり、
(2)サンプルにおいて、トナカイ対照生薬に対応するペプチドセグメント4又はペプチドセグメント5又はペプチドセグメント6を検出していると、サンプルはトナカイ由来であり、
(3)サンプルにおいて、オジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント7を検出していると、サンプルはオジロジカ由来であり、
(4)サンプルにおいて、クチジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント8を検出していると、サンプルはクチジロジカ由来であり、
(5)サンプルにおいて、ダマジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント9を検出しているが、ペプチドセグメント8とペプチドセグメント11を検出していないと、サンプルはダマジカ由来であり、
(6)サンプルにおいて、ニホンジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント10を検出しているとともに、ペプチドセグメント11を検出していると、サンプルはニホンジカ由来であり、
(7)サンプルにおいて、アカシカ対照生薬に対応するペプチドセグメント11を検出しているが、ペプチドセグメント10を検出していないと、サンプルはアカシカ由来であるとする使用を提供する。
【0008】
さらに、具体的には、
サンプルを製造する際には、サンプルを粉砕して、篩にかけ、粉末50mgを秤量して、変性緩衝液10mLを加え、よく混ぜて、80℃で一晩処理し、取り出して室温まで放冷し、12000rで10分遠心分離し、サンプル抽出液を500μL取り、分子量3kDaの限外濾過遠心分離管を用いてサンプルに脱塩と酵素分解を行うステップ(1)と、
高速液体クロマトグラフィー-トリプル四重極質量分析計により同定を行うステップ(2)と、を含む。
【0009】
本発明に使用される変性緩衝液は6Mグアニジン塩酸塩、1M Tris、2.5mMエチレンジアミン四酢酸に濃塩酸を加えてpHを8.0に調整したものである。
【0010】
さらに、前記脱塩と酵素分解は、具体的には、サンプル抽出液を限外濾過遠心分離管の上層に加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、1% NHHCO溶液500μLと10mg/mLのウシトリプシン溶液10μLを加え、37℃で15分酵素分解し、取り出して室温まで放冷し、遠心分離して上澄み液を得ることである。
【0011】
さらに、前記液相条件として、クロマトグラフィーカラムはAgilent SB C18 (2.1×100mm、1.8μm)、カラム温度は43℃、流速は0.3mL/min、移動相Aは0.1%ギ酸溶液、移動相Bは0.1%ギ酸アセトニトリル溶液であり、勾配溶出が行われ、注入量は5μLである。
【0012】
上記の勾配溶出条件は、0~9min、3%B→7.5%B;9~13min、7.5%B→25%B;13~14min、25%B→90%B;14~17min、90%B;17~17.5min、90%B→97%B、17.5~21min、97%Bである。
【0013】
さらに、前記質量分析条件としては、質量分析検出器を用いて、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を行い、プラスイオンモードで多重反応モニタリングを行い、
シースガス流速は46L/hr、補助ガス流速は850L/hr;スプレー電圧は3.5KV;イオン源温度は150℃、補助ガス温度は400℃、コーン電圧は30V、衝突電圧は35V、溶媒遅延(solvent delay)は0~4min及び16~20minとする。
【0014】
本発明は、7種類の鹿科動物の枝角を鑑別できる枝角の特徴的ポリペプチドライブラリーを提供する。本発明の特徴的ペプチドセグメント由来は鹿科動物の血液に広く存在しているβグロビンであり、このため、微量の血液を含有するサンプルでは適用できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明では、高速液体クロマトグラフィー-トリプル四重極質量分析方法を用いることで、7種類の鹿科動物を鑑別、同定することができ、効率が高く、特異性に優れる。
【0016】
(2)本発明では、大量の実験を通じて研究して、区分して同定することができる特徴的ポリペプチドが得られ、この特徴的ポリペプチドは特異性が高く、検出方法が簡単で効率的であり、鹿科動物に関連する製品の品質制御のレベルを高め、臨床薬の安全性及び有効性を向上させ、しかも、検出限界が低く、検出用サンプルの使用量が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1において特徴的ポリペプチドライブラリーを利用して検出するときの判定原則についてのフローチャートである。
図2】ペプチドセグメント1、2、3の正確な配列及びb、yイオンの帰属である。
図3】ペプチドセグメント4、5、6の正確な配列及びb、yイオンの帰属である。
図4】ペプチドセグメント7の正確な配列及びb、yイオンの帰属である。
図5】ペプチドセグメント8、9の正確な配列及びb、yイオンの帰属である。
図6】ペプチドセグメント10、11の正確な配列及びb、yイオンの帰属である。
図7】実施例1における各特徴的ポリペプチドセグメントのピークタイムであり、(A)ヘラジカペプチドセグメント1、2、3MRMピークタイム;(B)トナカイペプチドセグメント4、5、6MRMピークタイム;(C)オジロジカペプチドセグメント7MRMピークタイム;(D)クチジロジカペプチドセグメント8、9MRMピークタイム;(E)ニホンジカペプチドセグメント10、11MRMピークタイムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、特定実施例によって本発明の技術的解決手段をさらに解釈して説明する。
【0019】
実施例1 特徴的ポリペプチドのスクリーニング
サンプル上澄み液をナノリットル液体クロマトグラフィー-高分解能質量分析にかけて、質量分析データをPEAKS 8.5ソフトウェアに導入し、「Adult-beta globin of deer」タンパク質データベースを用いて、ペプチドセグメントのすべてについてde novoシークエンシング及びペプチドセグメントマッチングを行った。合計33185本のペプチドセグメントまでde novoシークエンシングを行い、データベースにおいてマッチングさせたところ、合計333本のペプチドセグメントを同定した。高速液体クロマトグラフィー-トリプル四重極質量分析計により同定した333本のペプチドセグメントの、アカシカ、ニホンジカ、ヘラジカ、トナカイ、クチジロジカ、オジロジカ及びダマジカに対する特異性を検証して調べ、応答が最も強い親イオンと娘イオンを定性イオンと定量イオンとした。
【0020】
実施例2
(1)サンプルを製造する際に、アカシカ枝角、ニホンジカ枝角、ヘラジカ枝角、トナカイ枝角、ダマジカ枝角、オジロジカ枝角、クチジロジカ枝角サンプルを粉砕して、篩にかけ、粉末50mgを秤量して、変性緩衝液10mLを加え(6Mグアニジン塩酸塩、1M Tris、2.5mMエチレンジアミン四酢酸に濃塩酸を加えてpHを8.0に調整したもの)、よく混ぜて、80℃で一晩処理し、取り出して室温まで放冷し、12000rで10分遠心分離し、500μLを取り、分子量3kの限外濾過遠心分離管を用いてサンプルに脱塩と酵素分解を行った(12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、1% NHHCO溶液500μLとウシトリプシン溶液10μLを加え、37℃で15分酵素分解し、取り出して室温まで放冷し、遠心分離し、上澄み液を得る)。
(1)対照サンプルの製造方法はサンプルの製造方法と同様であった。
(3)液相条件:クロマトグラフィーカラムはAgilent SB C18 (2.1×100mm、1.8μm)、カラム温度は43℃、流速は0.3mL/min、移動相Aは0.1%ギ酸溶液、移動相Bは0.1%ギ酸アセトニトリル溶液とし、勾配溶出が行われ(0~9min、3%B→7.5%B;9~13min、7.5%B→25%B;13~14min、25%B→90%B;14~17min、90%B;17~17.5min、90%B →97%B、17.5~21min、97%B)、注入量は5μLであった。質量分析条件:質量分析検出器を用いて、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を行い、プラスイオンモードで多重反応モニタリングを行い、シースガス流速は46L/hr、補助ガス流速は850 L/hr、スプレー電圧は3.5KV、イオン源温度は150℃、補助ガス温度は400℃。コーン電圧は30V、衝突電圧は35V、溶媒遅延(solvent delay)は0~4min及び16~20minとした。
【0021】
使用される特徴的ポリペプチドライブラリーを表1に示す。
【0022】
表1
上記のペプチドセグメントの配列及びイオンの帰属を図2~6に示す。
【0023】
上記の特徴的ポリペプチドライブラリーを用いて検出を行う場合、判定原則は以下のとおりである。
【0024】
1.サンプルにおいて、ヘラジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント1又はペプチドセグメント2又はペプチドセグメント3を検出していると、サンプルはヘラジカ由来であるとする。
【0025】
2.サンプルにおいて、トナカイ対照生薬に対応するペプチドセグメント4又はペプチドセグメント5又はペプチドセグメント6を検出していると、サンプルはトナカイ由来であるとする。
【0026】
3.サンプルにおいて、オジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント7を検出していると、サンプルはオジロジカ由来であるとする。
【0027】
4.サンプルにおいて、クチジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント8を検出していると、サンプルはクチジロジカ由来であるとする。
【0028】
5.サンプルにおいて、ダマジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント9を検出しているが、ペプチドセグメント8とペプチドセグメント11を検出していないと、サンプルはダマジカ由来であるとする。
【0029】
6.サンプルにおいて、ニホンジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント10を検出しているとともに、ペプチドセグメント11を検出していると、サンプルはニホンジカ由来であるとする。
【0030】
7.サンプルにおいて、アカシカ対照生薬に対応するペプチドセグメント11を検出しているが、ペプチドセグメント10を検出していないと、サンプルはアカシカ由来であるとする。
【0031】
具体的な判定フローチャートを図1に示す。各特徴的ポリペプチドセグメントのピークタイムを図7に示す。
【0032】
効果の検証
特異性の検証:アカシカ枝角、ニホンジカ枝角、ヘラジカ枝角、トナカイ枝角、ダマジカ枝角、オジロジカ枝角、クチジロジカ枝角サンプルをそれぞれ実験したところ、各鹿科動物の枝角に特異的なペプチドセグメントはいずれも検出可能であり、しかも、他の鹿科動物においては検出されておらず、このため、該方法は特異性に優れたと確認できた。
【0033】
耐久性の実験:Agilent ZORBAX SB RRHD、Agilent ZORBAX Eclipse RRHD、Waters ACQUITY UPLC HSSクロマトグラフィーカラムをそれぞれ用いて、アカシカ枝角、ニホンジカ枝角、ヘラジカ枝角、トナカイ枝角、ダマジカ枝角、オジロジカ枝角、クチジロジカ枝角サンプルを実験したところ、各鹿科動物の枝角に特異的なペプチドセグメントはいずれも検出可能であり、このため、該方法は耐久性に優れたと確認できた。
【0034】
再現性実験:アカシカ枝角、ニホンジカ枝角、ヘラジカ枝角、トナカイ枝角、ダマジカ枝角、オジロジカ枝角、クチジロジカ枝角サンプルを3つにして平行実験を行ったところ、各鹿科動物の枝角に特異的なペプチドセグメントはいずれも検出可能であり、このため、該方法は再現性に優れたと確認できた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023182524000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枝角種属由来を高速で鑑別する特徴的ポリペプチドライブラリーであって、
前記特徴的ポリペプチドライブラリーは以下:
に示され、
前記特徴的ポリペプチド配列において、
ペプチドセグメント7は配列FFEHFGDLSSADAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント9は配列FFEHFGDLSTPDAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント10は配列VVAGVAnALAHRであり、nはNの脱アミド翻訳後修飾であり、
ペプチドセグメント11は配列FFEHFGDLSTADAVmGNPKであり、mはMの酸化翻訳後修飾である

各配列のポリペプチドからなることを特徴とする特徴的ポリペプチドライブラリー。
【請求項2】
請求項1に記載の特徴的ポリペプチドライブラリーの、枝角種属由来の高速鑑別における使用であって、
判定原則として、
(1)サンプルにおいて、ヘラジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント1又はペプチドセグメント2又はペプチドセグメント3を検出していると、サンプルはヘラジカ由来であり、
(2)サンプルにおいて、トナカイ対照生薬に対応するペプチドセグメント4又はペプチドセグメント5又はペプチドセグメント6を検出していると、サンプルはトナカイ由来であり、
(3)サンプルにおいて、オジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント7を検出していると、サンプルはオジロジカ由来であり、
(4)サンプルにおいて、クチジロジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント8を検出していると、サンプルはクチジロジカ由来であり、
(5)サンプルにおいて、ダマジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント9を検出しているが、ペプチドセグメント8とペプチドセグメント11を検出していないと、サンプルはダマジカ由来であり、
(6)サンプルにおいて、ニホンジカ対照生薬に対応するペプチドセグメント10を検出しているとともに、ペプチドセグメント11を検出していると、サンプルはニホンジカ由来であり、
(7)サンプルにおいて、アカシカ対照生薬に対応するペプチドセグメント11を検出しているが、ペプチドセグメント10を検出していないと、サンプルはアカシカ由来であるとすることを特徴とする使用。
【請求項3】
具体的には、
サンプルを製造する際には、サンプルを粉砕して、篩にかけ、粉末50mgを秤量して、変性緩衝液10mLを加え、よく混ぜて、80℃で一晩処理し、取り出して室温まで放冷し、12000rで10分遠心分離し、サンプル抽出液を500μL取り、分子量3kDaの限外濾過遠心分離管を用いてサンプルに脱塩と酵素分解を行うステップ(1)と、
高速液体クロマトグラフィー-トリプル四重極質量分析計により同定を行うステップ(2)と、を含むことを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項4】
前記変性緩衝液は6Mグアニジン塩酸塩、1M Tris、2.5mMエチレンジアミン四酢酸に濃塩酸を加えてpHを8.0に調整したものであることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項5】
前記脱塩と酵素分解は、具体的には、サンプル抽出液を限外濾過遠心分離管の上層に加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、水500μLを加え、12000rで10分遠心分離し、下層の溶液を捨てて、1% NHHCO溶液500μLと10mg/mLのウシトリプシン溶液10μLを加え、37℃で15分酵素分解し、取り出して室温まで放冷し、遠心分離して上澄み液を得ることであることを特徴とする請求項又はに記載の使用。
【請求項6】
液相条件として、クロマトグラフィーカラムはAgilent SB C18 (2.1×100mm、1.8μm)、カラム温度は43℃、流速は0.3mL/min、移動相Aは0.1%ギ酸溶液、移動相Bは0.1%ギ酸アセトニトリル溶液であり、勾配溶出が行われ、注入量は5μLであることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項7】
前記勾配溶出条件は、0~9min、3%B→7.5%B;9~13min、7.5%B→25%B;13~14min、25%B→90%B;14~17min、90%B;17~17.5min、90%B→97%B、17.5~21min、97%Bであることを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項8】
前記質量分析条件としては、質量分析検出器を用いて、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を行い、プラスイオンモードで多重反応モニタリングを行い、
シースガス流速は46L/hr、補助ガス流速は850L/hr、スプレー電圧は3.5KV、イオン源温度は150℃、補助ガス温度は400℃、コーン電圧は30V、衝突電圧は35V、溶媒遅延(solvent delay)は0~4min及び16~20minとすることを特徴とする請求項又はに記載の使用。