(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182546
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】パワーアセンブリを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B60L 58/40 20190101AFI20231219BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231219BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20231219BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20231219BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20231219BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20231219BHJP
【FI】
B60L58/40
H02J7/00 P
B60L50/75
B60L15/20 J
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023095319
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】22179033.0
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】スタファン・ルオン
(72)【発明者】
【氏名】トーヴェ・アウダヴ
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB11
5G503EA05
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BD08
5H125BD10
5H125CA18
5H125EE27
5H125EE32
5H125EE38
5H125EE51
5H125EE57
5H125EE61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料電池ユニットと電気エネルギー貯蔵システムを含むパワーアセンブリの、費用効率の高い制御を行う方法を提供する。
【解決手段】方法は、パワーアセンブリからの電力供給に対する電力需要を予測するステップS1と、少なくとも2つの異なる制御シナリオに従い、パワーアセンブリを制御することに付随するコストを計算するステップS2を実行する。2つの異なる制御シナリオは、燃料電池ユニットをターンオフする第1の制御シナリオと、ターンオンする第2の制御シナリオを含む。ステップS3では、制御シナリオの夫々に対し、予測した電力需要に従い電力を供給した際のパワーアセンブリの能力に付随するコスト、燃料消費に付随するコスト、燃料電池の劣化に付随するコストを計算し、計算されたコストを比較する。ステップS4にて2つの制御シナリオのうちの一方を選択し、ステップS5にて選択した制御シナリオに従いパワーアセンブリを制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーアセンブリ(1)を制御するためのコンピューター実装方法であって、前記パワーアセンブリ(1)は、燃料電池ユニット(2、3)と、前記燃料電池ユニット(2、3)によって生成された余剰電気エネルギーを貯蔵するための電気エネルギー貯蔵システム(4)とを含み、前記方法は、
予測ホライズンにわたる前記パワーアセンブリ(1)からの電力供給に対する電力需要を予測すること(S1)と、
前記予測ホライズンの間に少なくとも2つの異なる制御シナリオに従って前記パワーアセンブリ(1)を制御することに付随するコストを計算すること(S2)であって、前記少なくとも2つの異なる制御シナリオは、前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオフする第1の制御シナリオと、前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオンする第2の制御シナリオとを含み、前記制御シナリオのそれぞれに対して、前記付随コストは、少なくとも、
前記予測した電力需要に従って電力を供給する前記パワーアセンブリ(1)の予想される能力または無能力に付随するコストと、
燃料消費に付随するコストと、
燃料電池の劣化に付随するコストと、
を含む、前記コストを計算すること(S2)と、
前記少なくとも2つの制御シナリオのそれぞれの前記計算されたコストを比較して(S3)、比較結果を得ることと、
前記比較結果に基づいて、前記少なくとも2つの制御シナリオの一方を選択すること(S4)と、
前記選択した制御シナリオに従って前記パワーアセンブリ(1)を制御すること(S5)と、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第2の制御シナリオにおいて、前記電気エネルギー貯蔵システム(4)によって提供される電力と前記燃料電池ユニット(2、3)によって提供される電力との間の比が、前記予測ホライズンにわたって変化することが許容される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パワーアセンブリ(1)は少なくとも2つの燃料電池ユニット(2、3)を含み、前記少なくとも2つの燃料電池ユニット(2、3)の各1つは、前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオンするオン状態と、前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオフするオフ状態とに独立して制御可能であり、
前記少なくとも2つの制御シナリオは複数の制御シナリオを含み、前記制御シナリオの各1つは、前記少なくとも2つの燃料電池ユニット(2、3)のオン状態(複数可)とオフ状態(複数可)との一意の組み合わせに対応付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオフした状態で前記パワーアセンブリ(1)が動作する場合、前記第2の制御シナリオに従って前記パワーアセンブリ(1)を制御することに付随する前記コストを計算することは、前記燃料電池ユニット(2、3)の始動に付随するコストを計算することを含む、請求項1乃至3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオンした状態で前記パワーアセンブリ(1)が動作する場合、前記第1の制御シナリオに従って前記パワーアセンブリ(1)を制御することに付随する前記コストを計算することは、前記燃料電池ユニット(2、3)の停止に付随するコストを計算することを含む、請求項1乃至4いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記第1の制御シナリオにおいて、前記予測した電力需要に従って電力を供給する前記パワーアセンブリ(1)の前記予想される能力または無能力を、前記電気エネルギー貯蔵システム(4)のシステム状態を取得することと、前記システム状態を取得することに基づいて前記能力または無能力を計算することとによって判定する、請求項1乃至5いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの制御シナリオの各1つに付随する前記コストは、予想される電気エネルギー貯蔵システムの劣化に付随するコストをさらに含む、請求項1乃至6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、少なくとも1つの所定の条件が満たされているか否かを判定することをさらに含み、
前記少なくとも2つの異なる制御シナリオに対する前記コストの前記計算は、前記少なくとも1つの所定の条件が満たされていることのみに応じて行なわれる、請求項1乃至7いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオンした状態で前記パワーアセンブリ(1)が動作している場合、前記電気エネルギー貯蔵システム(4)の充電状態が第1の閾値レベルを上回っているときに、前記少なくとも1つの所定の条件は満たされていると考えられ、及び/または、
前記燃料電池ユニット(2、3)をターンオフした状態で前記パワーアセンブリが動作している場合、前記電気エネルギー貯蔵システム(4)の充電状態が第2の閾値レベルを下回っているときに、前記少なくとも1つの所定の条件は満たされていると考えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パワーアセンブリ(1)は、乗り物(100)の推進に寄与する電力を供給するように適応され、前記電力需要を予測することは、
前記予測ホライズン中の前記乗り物(100)の予想される走行ルートに対する交通情報、前記予想される走行ルートに対する地形情報、前記予測ホライズン中の前記予想される走行ルートに対するトポグラフィ情報、前記予測ホライズン中の前記予想される走行ルートに対する気象情報、及び乗り物総重量情報のうちの少なくとも1つを含む乗り物関連情報を受け取ることと、
前記予測ホライズンにわたる前記電力需要を予測するために、前記受け取った乗り物関連情報を用いることと、
を含む、請求項1乃至9いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
パワーアセンブリ(1)を制御するための制御ユニット(5)であって、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法を行うように構成されている、前記制御ユニット(5)。
【請求項12】
パワーアセンブリ(1)であって、1つ以上の燃料電池ユニット(2、3)と、前記1つ以上の燃料電池ユニット(2、3)によって生成された余剰電気エネルギーを貯蔵するための電気エネルギー貯蔵システム(4)とを含み、請求項11に記載の制御ユニット(5)をさらに含む、前記パワーアセンブリ(1)。
【請求項13】
請求項12に記載のパワーアセンブリ(1)を含む乗り物(100)であって、前記パワーアセンブリ(1)は、前記乗り物(100)の前記推進に寄与する電力を供給するように適応されている、前記乗り物(100)。
【請求項14】
コンピュータープログラム(580)であって、前記プログラム(580)がコンピューター上で実行されたときに、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法を行うためのプログラムコード手段を含む、前記コンピュータープログラム(580)。
【請求項15】
コンピュータープログラム(580)を保持するコンピューター可読媒体(590)であって、前記コンピュータープログラム(580)は、前記プログラムがコンピューター上で実行されたときに、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法を行うためのプログラムコード手段を含む、前記コンピューター可読媒体(590)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の燃料電池ユニットと電気エネルギー貯蔵システムとを含むパワーアセンブリを制御するための方法に関する。本発明はさらに、パワーアセンブリ、制御ユニット、乗り物、コンピュータープログラム、及びコンピューター可読媒体に関する。
【0002】
本発明はトラックに関して説明するが、本発明はこの特定の乗り物には限定されず、乗用車及びオフロード乗り物などの他の乗り物においても使用され得る。本発明は、船舶、及び系統接続された補助発電機または系統独立型発電機などの定置用途においても適用され得る。
【背景技術】
【0003】
燃料電池システムは、電気自動車に電力供給するための電気バッテリに対する代替物または補完物として使用できるが、系統接続及び系統独立型発電機などの定置用途においても使用できる。
【0004】
燃料電池システムが低電流密度で動作すると、燃料電池の分極セル電圧が増加し、その結果、燃料電池の耐久性に悪影響を及ぼす。燃料電池の劣化を防ぐために、動作上の最大分極セル電圧が設定されるが、これは、実際には、燃料電池の最低の動作電力が制限されることを意味する。したがって、燃料電池システムによって電力供給される乗り物が下り坂を走行するときなどの特定の状況では、燃料電池システムは、乗り物の電力需要を考慮して必要以上に高い電力で動作する場合がある。その場合、燃料電池システムによって生成された余剰電力はバッテリに貯蔵され得る。しかし、バッテリがその最大充電状態(SoC)に達すると、燃料電池システムによって生成された電力は、その代わりに散逸されて、その結果、無駄になる場合がある。
【0005】
エネルギー散逸を回避するために、バッテリのSoCが比較的高くて電力需要が低いときにどの燃料電池システムをターンオフするかに基づいた制御戦略が存在する。US2016/0046204には、乗り物の燃料電池システムを制御するための方法が開示され、乗り物の予測される電力需要及びバッテリのSoCに応じて、燃料電池がオンまたはオフに制御される。しかし、燃料電池のターンオン及びオフは燃料電池の劣化を伴うため、燃料電池の耐用年数に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0006】
本発明の主な目的は、燃料電池ユニットと電気エネルギー貯蔵システムとを含むパワーアセンブリを制御するための方法を提供することであり、本方法は、少なくとも何らかの態様において、既知の方法に対して改善されている。詳細には、少なくとも何らかの態様において、パワーアセンブリの費用効率の高い制御を行うための改善された方法を提供することが目的である。
【0007】
少なくとも主な目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0008】
こうして、パワーアセンブリを制御するためのコンピューター実装方法が提供される。パワーアセンブリは、燃料電池ユニットと、燃料電池ユニットによって生成された余剰電気エネルギーを貯蔵するための電気エネルギー貯蔵システムとを含む。パワーアセンブリは、2つ以上の燃料電池ユニット、たとえば、少なくとも2つの独立して動作可能な燃料電池ユニット、すなわち、互いに独立してオン状態またはオフ状態に制御できる燃料電池ユニットを含んでいてもよい。本方法は、
予測ホライズンにわたるパワーアセンブリからの電力供給に対する電力需要を予測することと、
予測ホライズンの間に少なくとも2つの異なる制御シナリオに従ってパワーアセンブリを制御することに付随するコストを計算することであって、少なくとも2つの異なる制御シナリオは、燃料電池ユニットをターンオフする第1の制御シナリオと、燃料電池ユニットをターンオンする第2の制御シナリオとを含み、該制御シナリオのそれぞれに対して、付随コストは、少なくとも、
予測した電力需要に従って電力を供給するパワーアセンブリの予想される能力または無能力に付随するコストと、
燃料消費に付随するコストと、
燃料電池の劣化に付随するコストと、
を含む計算することと、
少なくとも2つの制御シナリオのそれぞれの計算されたコストを比較して、比較結果を得ることと、
比較結果に基づいて、少なくとも2つの制御シナリオのうちの一方を選択することと、
選択した制御シナリオに従ってパワーアセンブリを制御することと、を含む。
【0009】
少なくとも2つの制御シナリオに対するコストを並行して計算することであって、1つ制御シナリオでは燃料電池ユニットをターンオンし、別の制御シナリオでは燃料電池ユニットをターンオフする、計算することによって、コスト及び能力の点で最も有用なコストシナリオを選択することができる。燃料電池ユニット劣化によって生じるコストなど、燃料電池ユニットをターンオン及びオフすることから生じる負の影響は、本明細書では、電力需要が比較的低いにもかかわらず燃料電池ユニットをターンオンした状態でパワーアセンブリを動作させることから生じる負の影響、たとえば燃料消費の増加と、バランスさせ得る。
【0010】
最も有用な制御シナリオは通常、全体コストが最も低いシナリオであるが、コストは、たとえば、予測した電力需要の不遵守に対するコストが燃料消費に対する高コストよりも重みが付けられるように、または逆になるように、重み付けされ得る。乗り物では、このような重み付けは、たとえば、選択した運転モード、または運転手またはフリートオペレータなどの乗り物ユーザが設定した好みに基づいて行われ得る。
【0011】
たとえば、最も有用な制御シナリオは、予測した電力需要に従ってパワーアセンブリが出力電力を供給することができ、燃料消費及び燃料電池の劣化に付随する計算されたコストができる限り低いシナリオであり得る。したがって、パワーアセンブリが、予測した出力電力を供給することができる少なくとも2つの制御シナリオのすべてにある場合、燃料消費及び燃料電池の劣化に対する計算されたコストが最も低い制御シナリオを選択し得る。しかしパワーアセンブリが、比較した制御シナリオのうちの1つ(通常は、燃料電池をターンオンした状態である)において予測した出力電力を供給できるだけである場合、他の制御シナリオ(複数可)において予測した電力需要に従って出力電力を供給するパワーアセンブリの無能力に付随するコストの方が、比較的高い場合がある。このようなコストは、電力ディレーティングに対するコストと言ってもよい。乗り物では、電力ディレーティングは乗り物速度の低下を伴う場合があり、その結果、一定の遅延に付随するコストが生じる場合がある。しかし、場合によっては、乗り物が坂道を登れなくなる場合があり、その場合、電力ディレーティングに対するコストは容認できないほど高い場合がある。
【0012】
コストの計算では、入力パラメータとして、アイドリングにおける燃料消費量、始動及び/または停止における燃料電池の劣化、燃料価格、燃料電池の単価、燃料電池のユニット効率、燃料電池の電圧サイクル劣化コストなどを選んでもよい。
【0013】
予測ホライズンは、時間に関して設定してもよい。代替的に、パワーアセンブリが乗り物に電力供給するように構成されている場合、予測ホライズンは距離に関して設定してもよい。予測ホライズンは固定値であってもよいし、たとえば動作条件の予測される安定性に応じて変化してもよい。たとえば、パワーアセンブリが乗り物内に設けられている場合、予測ホライズンは、乗り物が既知の交通状況下で、以前に走行したルートなどの既知のルートを走行している場合は、比較的長くてもよく、一方で、乗り物が、その乗り物にとって初めてのルートに沿って走行している場合、比較的短く設定してもよい。予測ホライズンはさらに、たとえば、予測に必要なデータ及び/または予測において生成されるデータを記憶するために用いるメモリのデータ容量に応じて設定してもよい。
【0014】
本方法は好ましくは、連続的に、たとえば特定の更新頻度で行ってもよい。結果として、パワーアセンブリの制御は、選択した制御シナリオに従って連続的に更新してもよい。
【0015】
燃料電池ユニットをターンオフすると、何ら出力電力を供給せず、何ら燃料も消費しない。燃料電池ユニットをターンオンすると、水素(H2)などの燃料を消費し、出力電力を供給する。出力電力は、乗り物の電動モータなどの電力消費部によって使用されるか、または電気エネルギー貯蔵システムに貯蔵される場合がある。したがって、燃料電池の消費に付随するコストは、燃料電池をターンオンしたときに生じる。
【0016】
任意選択で、第2の制御シナリオでは、電気エネルギー貯蔵システムによって提供される電力と燃料電池ユニットによって提供される電力との間の比は、予測ホライズンにわたって変化することが許容される。こうして、電気エネルギー貯蔵システムと燃料電池ユニットとの間の電力分割は、たとえば、予測した電力需要に応じて変化することが許容され得る。
【0017】
任意選択で、パワーアセンブリは少なくとも2つの燃料電池ユニットを含み、少なくとも2つの燃料電池ユニットのそれぞれは、燃料電池ユニットをターンオンするオン状態と、燃料電池ユニットをターンオフするオフ状態とに独立して制御可能であり、少なくとも2つの制御シナリオは複数の制御シナリオを含み、制御シナリオの各1つは、少なくとも2つの燃料電池ユニットのオン状態(複数可)とオフ状態(複数可)との一意の組み合わせに対応付けられる。したがって、各燃料電池ユニットは2つの状態のうちの1つに制御可能である。したがって、利用可能な組み合わせの数、したがって可能な制御シナリオの数は、個別に制御可能な燃料電池ユニットの数とともに増加する。n個の燃料電池ユニットを伴う燃料電池システムの場合、全部で2n個の制御シナリオが可能である。たとえば、燃料電池システムが2つの燃料電池ユニットを含む場合、全部で4つの制御シナリオが可能であり、したがって、少なくとも2つの制御シナリオは、第1、第2、第3、及び第4の制御シナリオを含む。提案した方法によって、たとえば、異なる燃料電池ユニットの年齢及び/または寸法の違いに起因して異なる燃料電池運転コストなどの、燃料電池ユニット間の運転コストの差を考慮することが可能になる。
【0018】
任意選択で、燃料電池ユニットをターンオフした状態でパワーアセンブリが動作する場合、第2の制御シナリオに従ってパワーアセンブリを制御することに付随するコストを計算することは、燃料電池ユニットの始動に付随するコストを計算することを含む。燃料電池ユニットの始動によって、本明細書では、燃料電池ユニットをターンオンして電力を立ち上げることを意図している。これは、一方では燃料コストに対応付けられ、他方では燃料電池ユニットの劣化コストに対応付けられる。
【0019】
任意選択で、燃料電池ユニットをターンオンした状態でパワーアセンブリが動作する場合、第1の制御シナリオに従ってパワーアセンブリを制御することに付随するコストを計算することは、燃料電池ユニットの停止に付随するコストを計算することを含む。燃料電池ユニットの停止によって、本明細書では、電力を減らして燃料電池ユニットをターンオフすることを意図している。全般的に、停止は、燃料電池ユニットの劣化コストに対応付けられる。
【0020】
任意選択で、少なくとも第1の制御シナリオにおいて、予測した電力需要に従って電力を供給するパワーアセンブリの予想される能力または無能力を、電気エネルギー貯蔵システムのシステム状態を取得することと、システム状態を取得することに基づいて該能力または無能力を計算することとによって判定する。システム状態には、たとえば、電気エネルギー貯蔵システムの温度、充電状態(SoC)、健康状態(SoH)、充電または放電の電力能力などが含まれ得る。これらのシステム状態は、通常は1つ以上のバッテリを含む電気エネルギー貯蔵システムが、予測した電力需要に適合できるか否かを判定することに関連する。システム状態は、たとえば、バッテリ管理ユニット、または電気エネルギー貯蔵システムの別の制御ユニットから受け取られてもよい。
【0021】
任意選択で、少なくとも2つの制御シナリオの各1つに付随するコストは、予想される電気エネルギー貯蔵システムの劣化に付随するコストをさらに含む。このようなコストは、電気エネルギー貯蔵システム内の高いバッテリ温度、ならびに/または高電力及び/もしくは高充電/放電電流(Cレート)での電気エネルギー貯蔵システムの動作によって生じる電気エネルギー貯蔵システム内の高いバッテリスループットによって、発生する場合がある。
【0022】
任意選択で、本方法は、少なくとも1つの所定の条件が満たされているか否かを判定することをさらに含み、少なくとも2つの異なる制御シナリオに対するコストの計算は、少なくとも1つの所定の条件が満たされていることのみに応じて行なわれる。少なくとも1つの所定の条件が満たされない場合、単一の制御シナリオに対するコストを計算してもよい。これには、2つの制御シナリオに対するコストを計算する必要がない場合、たとえば、燃料電池がターンオンまたはオフのいずれかの状態でパワーアセンブリを動作させる必用があることが明らかな場合は、計算能力が節約されるという利点がある。この実施形態による本方法は、パワーアセンブリが単一の燃料電池ユニット、または共通にオンまたはオフに制御されるいくつかの燃料電池ユニットを含む場合に、最も有用である。パワーアセンブリがいくつかの独立して制御可能な燃料電池ユニットを含む場合、複数の制御シナリオに対するコストを並行して計算してもよく、それらのうちの1つを省略することによって節約され得る計算能力は無視できるほどであり得る。少なくとも1つの所定の条件には、電気エネルギー貯蔵システムのSoC閾値(複数可)、時間閾値(複数可)、及び/または電力需要閾値(複数可)に関係する1つ以上の条件が含まれ得る。
【0023】
任意選択で、少なくとも1つの所定の条件には第1及び第2の所定の条件が含まれ、第1の所定の条件が満たされない場合、コストの計算は第1の制御シナリオに対してのみ行い、第2の所定の条件が満たされない場合、コストの計算は第2の制御シナリオに対してのみ行う。
【0024】
任意選択で、燃料電池ユニットをターンオンした状態でパワーアセンブリが動作している場合、電気エネルギー貯蔵システムの充電状態が第1の閾値レベルを上回っているときに、少なくとも1つの所定の条件は満たされていると考えられる。第1の閾値レベルは、そのレベルを下回ると電気エネルギー貯蔵システムが典型的な予想される電力需要に対して十分な出力電力を供給できないと予想されるレベルに、設定してもよい。したがって、第1の閾値レベルを下回っていると、燃料電池ユニットをターンオフした場合に、パワーアセンブリが予測した電力需要に適合できるとは予想できない。これにより、燃料電池ユニットをターンオンした状態での継続動作に対するコストを計算することだけによって、計算能力が節約され得る。燃料電池ユニットをターンオンした状態での継続動作に対するコストを計算する場合、燃料電池ユニットと電気エネルギー貯蔵システムとの間の電力分割は、予測ホライズンにわたって変化することが許容され得る。
【0025】
任意選択で、燃料電池ユニットをターンオフした状態でパワーアセンブリが動作している場合、電気エネルギー貯蔵システムの充電状態が第2の閾値レベルを下回っているときに、少なくとも1つの所定の条件は満たされていると考えられる。第2の閾値レベルは、電気エネルギー貯蔵システムが通常は、それ自体で、すなわち燃料電池ユニットがターンオフした状態で、予想される電力需要に従って出力電力を供給できるSoCに設定してもよい。SoCが第2の閾値レベルを上回っている限り、燃料電池ユニットがターンオフした状態での継続動作に対するコストのみを計算する。
【0026】
任意選択で、パワーアセンブリは、乗り物の推進に寄与する電力を供給するように適応され、電力需要を予測することは、
予測ホライズン中の乗り物の予想される走行ルートに対する交通情報、予想される走行ルートに対する地形情報、予測ホライズン中の予想される走行ルートに対するトポグラフィ情報、予測ホライズン中の予想される走行ルートに対する気象情報、及び乗り物総重量情報のうちの少なくとも1つを含む乗り物関連情報を受け取ることと、
予測ホライズンにわたる電力需要を予測するために、前記受け取った乗り物関連情報を用いることと、を含む。
【0027】
前述の乗り物関連情報のうちの1つ以上は、電力需要の適切な予測に貢献することができる。
【0028】
第2の態様によれば、前述の目的は、パワーアセンブリを制御するための制御ユニットによって達成され、制御ユニットは、第1の態様による方法を行うように構成される。制御ユニットは電子制御ユニットとして理解するべきである。
【0029】
第3の態様によれば、前述の目的は、1つ以上の燃料電池ユニットと、1つ以上の燃料電池ユニットによって生成される余剰電気エネルギーを貯蔵するための電気エネルギー貯蔵システムとを含むパワーアセンブリによって達成され、パワーアセンブリはさらに、第2の態様による制御ユニットを含む。
【0030】
第4の態様によれば、第3の態様によるパワーアセンブリを含む乗り物が提供され、パワーアセンブリは、乗り物の推進に寄与する電力を供給するように適応されている。
【0031】
第5の態様によれば、コンピュータープログラムであって、プログラムがコンピューター上で実行されたときに、第1の態様による方法を行うためのプログラムコード手段を含むコンピュータープログラムが提供される。コンピューターは、第2の態様による制御ユニットであってもよい。
【0032】
第6の態様によれば、コンピュータープログラムを保持するコンピューター可読媒体であって、コンピュータープログラムは、プログラムがコンピューター上で実行されたときに、第1の態様による方法を行うためのプログラムコード手段を含む、コンピューター可読媒体が提供される。コンピューターは、第2の態様による制御ユニットであってもよい。
【0033】
本発明のさらなる利点及び有利な特徴は、以下の説明及び従属請求項に開示される。
【0034】
添付図面を参照して、例として引用した本発明の実施形態のより詳細な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】本発明の実施形態例によるパワーアセンブリの概略図である。
【
図3】本発明の方法の実施形態を例示するフローチャートである。
【
図4a】本明細書の実施形態による制御ユニットを例示する概略ブロック図である。
【
図4b】本明細書の実施形態による制御ユニットを例示する概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
添付図面を参照して、例として引用した本発明の実施形態のより詳細な説明を以下に示す。
【0037】
図1に、本発明の実施形態例による乗り物100の側面図を示す。乗り物100は、ここではトラックであり、より具体的には、1つ以上のトレーラー(図示せず)を牽引するための大型トラックである。大型トラック100を示しているが、本発明はこのタイプの乗り物に限定されず、任意の他のタイプの乗り物、たとえば、バス、建設機械、たとえばホイールローダ及び掘削機、乗用車、及び海上船舶に対して用いてもよいことに留意されたい。本発明は、燃料電池ユニットと電気エネルギー貯蔵システムESSとを含むパワーアセンブリが使用される限り、乗り物に関係しない他の用途にも適用できる。
【0038】
乗り物100はパワーアセンブリ1を含む。パワーアセンブリ1は、ここでは、乗り物100に対する推進力を形成するために使用される1つ以上の電動モータ(図示せず)に電力供給するために使用される。パワーアセンブリ1は、それに加えてまたはその代わりに、冷蔵庫システム用の電動モータ、空調システム用の電動モータ、または乗り物100の任意の他の電力消費機能などの、乗り物100の他の電力消費機能(図示せず)に電力供給するために用いてもよい。
【0039】
乗り物100はさらに、本発明の実施形態例による制御ユニット5を含む。したがって、制御ユニット5は、パワーアセンブリ1を制御するために用いられる。オンボード制御ユニット5を示しているが、制御ユニット5は、遠隔制御ユニット5、すなわちオフボード制御ユニット、またはオンボード制御ユニットとオフボード制御ユニットの組み合わせとすることもできることを理解されたい。制御ユニット5は、制御信号を発し、パワーアセンブリ1に関係するステータス情報を受け取ることによってパワーアセンブリ1を制御するように構成してもよい。制御ユニット5は、パワーアセンブリ1の一部を構成してもよい。
【0040】
制御ユニット5は、電子制御ユニットであり、本明細書で開示するコンピュータープログラムを実行するように適応された処理回路を含んでいてもよい。制御ユニット5は、本発明による方法を行うためのハードウェア及び/またはソフトウェアを含んでいてもよい。一実施形態では、制御ユニット5は、コンピューターを表してもよい。制御ユニット5は、1つ以上の別個のサブ制御ユニットによって構成されてもよい。加えて、制御ユニット5は、有線及び/または無線の通信手段を用いて通信してもよい。
【0041】
図2に、本発明の実施形態例によるパワーアセンブリ1の概略図を示す。パワーアセンブリ1は、たとえば、
図1に示すように乗り物100内で用いてもよい。
【0042】
パワーアセンブリ1は、少なくとも1つの燃料電池ユニット、本明細書では第1の燃料電池ユニット2及び第2の燃料電池ユニット3を含む。各燃料電池ユニット2、3は、詳細には例示していないが、1つ以上の燃料電池、通常はいくつかの燃料電池を含んでいてもよい。燃料電池は燃料電池スタックと示してもよく、燃料電池スタックは数百個の燃料電池を含んでいてもよい。さらに、各燃料電池ユニットは、燃料電池に水素燃料(H2)及び空気、冷却などの必要な供給を提供するように構成される。各燃料電池ユニット2、3は、それ独自の制御システムを含んでいてもよく、制御システムは制御ユニット5に通信可能に接続されていてもよい。例示した実施形態におけるパワーアセンブリ1は、2つの燃料電池ユニット2、3を含んでいるが、代替的に、単一の燃料電池ユニット、または3つ以上の燃料電池ユニットなどの2つ超の燃料電池ユニットを含んでいてもよい。さらに、いくつかの燃料電池ユニットが設けられている場合、燃料電池ユニットは、独立して制御可能であってもよいし、共通に制御可能であってもよい。独立して制御可能である場合、各燃料電池ユニットは、他の燃料電池ユニット(複数可)の状態(複数可)にかかわらず、オン状態またはオフ状態に制御され得る。燃料電池ユニットのうちの2つ以上が共通に制御可能である場合、それらの燃料電池ユニットはオン状態またはオフ状態に共通に制御可能であり、すなわち、すべての燃料電池ユニットが同じ状態に共通に制御される。2つの燃料電池ユニットを、場合によっては、燃料電池ユニットのうちの1つが他の燃料電池ユニットの状態に応じてオン状態またはオフ状態に制御されるように、互いに依存して制御してもよい。
【0043】
パワーアセンブリ1はさらに、ESS4を含む。ESS4自体は、燃料電池ユニット2、3によって生成された余剰電気エネルギーを貯蔵するため、ならびにパワーアセンブリ1から出力電力を提供するための1つ以上のバッテリを含み得る。ESS4は、燃料電池ユニット2、3に電気的に接続されている。ESS4は、制御ユニット5に通信可能に接続されたそれ独自の制御システムを含んでいてもよい。ESS4はさらに、制動中に再生されたエネルギーを貯蔵するために用いられてもよく、または外部電源網などからの充電器によって充電するように構成されてもよい。
【0044】
パワーアセンブリ1はさらに、燃料電池ユニット2、3によって生成された電力及び/またはESS4から提供される電力を、電動モータなどの電力消費部6または他の電力消費部によって使用可能な電力に変換するためのパワーエレクトロニクス(図示せず)を含んでいてもよい。さらに、前述で述べたことに加えてまたはその代わりに、パワーアセンブリ1は、圧縮機、センサ、ポンプ、バルブ、及び電気部品などの種々のコンポーネントを含んでいてもよい。
【0045】
図3に、本発明の実施形態による、
図2に例示したパワーアセンブリ1などのパワーアセンブリを制御するための方法を示す。本方法は、制御ユニット5によって行われ得る。
【0046】
第1のステップS1では、予測期間範囲などの予測ホライズンにわたるパワーアセンブリ1からの電力供給に対する電力需要を予測する。パワーアセンブリ1が、乗り物100の推進に寄与する電力を供給するように適応されている場合、電力需要を予測するステップS1は、
予測ホライズン中の乗り物100の予想される走行ルートに対する交通情報、予想される走行ルートに対する地形情報、予測ホライズン中の予想される走行ルートに対するトポグラフィ情報、予測ホライズン中の予想される走行ルートに対する気象情報、及び乗り物総重量情報のうちの少なくとも1つを含む乗り物関連情報を受け取ることと、
予測ホライズンにわたる電力需要を予測するために、該受け取った乗り物関連情報を用いることと、を含んでいてもよい。
【0047】
第2のステップS2では、予測ホライズン中に少なくとも2つの異なる制御シナリオに従ってパワーアセンブリ1を制御することに付随するコストを計算する。コストは金銭的なコストであってもよい。少なくとも2つの異なる制御シナリオは、両方の燃料電池ユニット2、3をターンオフして、何ら出力電力を提供しない第1の制御シナリオと、燃料電池ユニット2、3をターンオンして、出力電力を提供する第2の制御シナリオとを含む。制御シナリオの各1つに対して、付随コストは、少なくとも、予測した電力需要に従って電力を供給するパワーアセンブリ1の予想される能力または無能力に付随するコストと、燃料電池ユニット2、3の燃料消費に付随するコストと、燃料電池の劣化に付随するコストと、を含む。例示したパワーアセンブリ1では、2つの独立して制御可能な燃料電池ユニット2、3を含み、4つの異なる制御シナリオに付随するコストを並行して計算する。すなわち、両方の燃料電池ユニット2、3をターンオフする第1の制御シナリオ、両方の燃料電池ユニット2、3をターンオンする第2の制御シナリオ、第1の燃料電池ユニット2をターンオンして、第2の燃料電池ユニット3をターンオフする第3の制御シナリオ、及び第2の燃料電池ユニット3をターンオンして、第1の燃料電池ユニット2をターンオフする第4の制御シナリオである。
【0048】
燃料電池ユニット2、3をターンオフした状態でパワーアセンブリ1が動作している場合、第2の制御シナリオ、すなわち、両方の燃料電池ユニット2、3をターンオンするシナリオに従ってパワーアセンブリ1を制御することに付随するコストを計算することは、第1の燃料電池ユニット2、3の始動に付随するコストを計算することを含んでいてもよい。このコストは、始動時の燃料電池の劣化により生じるコストと燃料コストとの両方を含んでいてもよい。
【0049】
両方の燃料電池ユニット2、3をターンオンした状態でパワーアセンブリ1が動作している場合、第1の制御シナリオ、すなわち、両方の燃料電池ユニット2、3をターンオフするシナリオに従ってパワーアセンブリ1を制御することに付随するコストを計算することは、燃料電池ユニット2、3の停止に付随するコストを計算することを含んでいてもよい。このコストは、停止時の燃料電池の劣化により生じるコストと燃料コストとの両方を含んでいてもよい。
【0050】
燃料電池ユニット2、3をターンオフする少なくとも第1の制御シナリオにおいて、予測した電力需要に従って電力を供給するパワーアセンブリの予想される能力または無能力を、ESS4のバッテリ状態などのシステム状態を取得することと、システム状態を取得することに基づいて能力または無能力を計算することとによって判定してもよい。SoC、ESS温度などのシステム状態は、予測した電力需要に応じて出力電力を供給できるESS4の能力を示し得る。ESS4のシステム状態(複数可)を、ESS4の制御システムによって決定して、制御ユニット5に伝達してもよい。予想される能力または無能力に付随するコストは、たとえば、燃料電池ユニット2、3をターンオフした状態、すなわち電力供給に対してESS4のみを用いる状態で、予測した電力需要に従って電力を供給するパワーアセンブリ1の無能力による予想される遅延から、計算される。
【0051】
制御シナリオの各1つに付随するコストはさらに、予測ホライズンにわたるESS4の予想される劣化に付随するコストを含んでいてもよい。
【0052】
第3のステップS3では、少なくとも2つの制御シナリオのそれぞれの計算されたコストを比較して、比較結果を得る。典型的な実施形態では、すべての4つの制御シナリオのコストを比較する。
【0053】
第4のステップS4では、少なくとも2つの制御シナリオのうちの1つを、比較結果に基づいて選択する。通常は、コストの観点から最も有用な制御シナリオを選択する。すなわち、少なくとも燃料コスト、燃料電池の劣化、及び予測した電力需要に従って電力を供給する能力または無能力に関して総コストが最も低い制御シナリオである。
【0054】
第5のステップS5では、パワーアセンブリ1を、選択した制御シナリオに従って制御する。
【0055】
本方法は、少なくとも1つの所定の条件が満たされているか否かを判定する任意的なステップS0(破線でマーキングした)を含んでいてもよい。所定の条件が満たされている場合、少なくとも2つの異なる制御シナリオに対するコストを計算するステップS2を行う。所定の条件が満たされていない場合、すべての可能なコストシナリオに対してコストを計算するわけではない。その代わりに、コストを、第1または第2の制御シナリオのみなど、単一の制御シナリオに対して計算してもよい。
【0056】
たとえば、燃料電池ユニット2、3の両方をターンオンした状態でパワーアセンブリ1が動作している場合、少なくとも1つの所定の条件を、ESS4のSoCが第1の閾値レベルを上回っているときに満たされていると考えられるように、設定してもよい。SoCが第1の閾値レベルを下回っている場合、燃料電池ユニット2、3をターンオフすることは望ましくないかまたは可能でさえもない場合がある。したがって、ESS4の制御システムから受け取ったSoC値が第1の閾値レベルを下回っている場合、コストを、燃料電池ユニット2、3をターンオンし続ける第2の制御シナリオに対してのみ計算する。また少なくとも1つの所定の条件は、それを下回ると条件が満たされていると考えられるレベルであって、第1及び第2の制御シナリオの両方に対するコストを計算する第1の電力需要閾値レベルなど、予測した電力需要に関する条件を含んでいてもよい。SoCと電力需要閾値との組み合わせを用いて、少なくとも1つの所定の条件が満たされているか否かを判定してもよい。
【0057】
その代わりに、燃料電池ユニット2、3をターンオフした状態でパワーアセンブリ1が動作している場合、少なくとも1つの所定の条件を、ESS4のSoCが第2の閾値レベルを下回っているときに満たされていると考えられるように、設定してもよい。SoCが第2の閾値レベルを上回っている限り、ESS4は、燃料電池ユニット2、3をターンオンすることなく十分な出力電力を供給できると予想される。したがって、コストを、燃料電池ユニット2、3をターンオフし続ける第1の制御シナリオに対してのみ計算する。本明細書では、第2の閾値レベルを、第1の閾値レベルよりも高い値に設定する。
【0058】
少なくとも1つの所定の条件が、予測した電力需要に関連する条件をさらに含む場合、この場合は、電力需要が第2の電力需要閾値レベルを超える場合に満たされていると考えてもよい。したがって、電力需要が第2の電力需要閾値レベルを上回っている場合、第1及び第2の制御シナリオの両方に対するコストを計算する。少なくとも1つの所定の条件はさらに、時間に関連する条件を含んでいてもよく、時間閾値を超える期間にわたって燃料電池2、3をターンオフした状態でパワーアセンブリ1が動作した場合、所定の条件は満たされていると考えられ、第1及び第2の制御シナリオの両方に対するコストを計算する。
【0059】
本明細書に記載の方法ステップを行うために、制御ユニット5を、前述のステップS0~S5のうちのいずれか1つ以上、及び/または本明細書の任意の他の例または実施形態を行うように構成してもよい。制御ユニット5は、たとえば、
図4a及び4bに示すような構成を含んでいてもよい。
【0060】
制御ユニット5は、本明細書の実施形態の任意の必要なコンポーネント及び/またはエンティティと通信するように構成された入出力インターフェース500を含んで、たとえば、ESS4からシステム状態を受け取り、交通情報、地形情報、トポグラフィ情報、気象情報、及び乗り物総重量情報を受け取ってもよい。入出力インターフェース500は、無線及び/または有線の受信部(図示せず)及び無線及び/または有線の送信部(図示せず)を含んでいてもよい。制御ユニット5は、乗り物100の任意の好適な場所において配置してもよい。制御ユニット5は、入出力インターフェース500を用いて、コントローラエリアネットワーク(CAN)、イーサネットケーブル、Wi-Fi、ブルートゥース、及び他のネットワークインターフェースのうちのいずれか1つ以上を用いることによって、乗り物100内のセンサ、駆動部、サブシステム、及びインターフェースを制御し及びこれらと通信してもよい。
【0061】
制御ユニット5は、予測ユニット501によって、予測ホライズンにわたるパワーアセンブリ1からの電力供給に対する電力需要を、インターフェース500を介して受け取ったデータに基づいて予測するように構成される。
【0062】
制御ユニット5はさらに、判定ユニット502によって、少なくとも1つの所定の条件が満たされているか否かを判定するように構成されてもよい。
【0063】
制御ユニット5はさらに、計算ユニット503によって、予測ホライズン中に少なくとも2つの異なる制御シナリオに従ってパワーアセンブリ1を制御することに付随するコストを計算するように構成される。
【0064】
制御ユニット5はさらに、比較ユニット504によって、少なくとも2つの制御シナリオのそれぞれの計算されたコストを比較して、比較結果を得るように構成される。
【0065】
制御ユニット5はさらに、選択ユニット505によって、比較結果に基づいて少なくとも2つの制御シナリオのうちの1つを選択し、制御ユニット506によって、選択した制御シナリオに従ってパワーアセンブリ1を制御するように構成される。
【0066】
本明細書に記載の方法は、本明細書の実施形態の機能及び動作を行うためのコンピュータープログラムコードとともに、
図4aに示した制御ユニット5内の処理回路のプロセッサ560などのプロセッサまたは1つ以上のプロセッサを通して実装されてもよい。また前述のプログラムコードは、コンピュータープログラム媒体として、たとえば、制御ユニット5内にロードされたときに本明細書に記載の方法ステップを行うためのコンピュータープログラムコードを保持するデータコンピューター可読媒体の形態で、提供されてもよい。このようなコンピューター可読媒体の1つは、メモリスティックの形態であってもよい。コンピュータープログラムコードはさらに、純粋なプログラムコードとしてサーバ上に提供されてもよく、制御ユニット5にダウンロードされてもよい。
【0067】
制御ユニット5はさらに、1つ以上のメモリユニットを含むメモリ570を含んでいてもよい。メモリ570は、制御ユニット5内のプロセッサによって実行可能な命令を含む。メモリ570は、制御ユニット5内で実行されたときに本明細書の方法を行うために、たとえば、情報、データ、制御シナリオ、コストなどを記憶するために用いられるように構成される。
【0068】
いくつかの実施形態では、コンピュータープログラム580は、命令であって、コンピューター、たとえば少なくとも1つのプロセッサ560によって実行されると、制御ユニット5の少なくとも1つのプロセッサに前述の方法ステップを行わせる命令を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、コンピューター可読記憶媒体590は、それぞれのコンピュータープログラム580を含む。コンピューター可読記憶媒体590は、前記プログラム製品がコンピューター、たとえば少なくとも1つのプロセッサ560上で実行されたときに前述の方法ステップを行うためのプログラムコードを含んでいてもよい。
【0070】
当業者であれば分かるように、前述した制御ユニット5内のユニットは、アナログ回路とデジタル回路との組み合わせ、及び/または1つ以上のプロセッサであって、前述したプロセッサなどのそれぞれの1つ以上のプロセッサによって実行されたときのソフトウェア及び/またはファームウェア(たとえば、制御ユニット5内に記憶された)によって構成されたプロセッサ、を指す場合がある。これらのプロセッサのうちの1つ以上、ならびに他のデジタルハードウェアを、単一の特定用途向け集積回路構成(ASIC)内に含めてもよいし、または複数のプロセッサ及び種々のデジタルハードウェアを、個別にパッケージされようとまたはシステムオンチップ内に組み立てられようと、いくつかの別個のコンポーネント間で分散してもよい。
【0071】
本発明は、前述して図面に例示した実施形態には限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば分かるように、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び修正を行ってもよい。
【外国語明細書】