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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182568
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】管腔内デバイスおよびポリマー
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/04 20060101AFI20231219BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20231219BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61L29/04
A61L31/04
C08F220/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023135498
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2020522283の分割
【原出願日】2018-10-19
(31)【優先権主張番号】62/575,827
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506128064
【氏名又は名称】エンドーロジックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】デュラリ メディ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ ロニー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】管腔内デバイスに使用される組成物、および管腔内デバイスにおいて組成物を使用する方法を提供する。
【解決手段】組成物は、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含み、第1の溶液が、1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、第2の溶液が、重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含み、
第1の溶液が、1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、
第2の溶液が、重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、組成物。
【請求項2】
プレポリマーが、アクリレート、メタクリレートまたはビニル官能基から選択される少なくとも2つの官能基を有する化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
プレポリマーが、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート(EBPADA)、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(PEG-T)、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(PTMPTA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびこれらのメタクリル変異体、アジピン酸ジビニル、1,4-ジブタンジオールジビニルエーテル、ジおよびトリエチレングリコールジビニルエーテル、アリルエーテル、マレイン酸ジアリル、トリメチルプロパンジアリルエーテル、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
非水性溶媒が、アルコール、アルデヒド、アミド、カーボネート、エーテル、エステル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、炭化水素、ケトン、スルホキシド、および植物油からなる群から選択される脂肪族および芳香族溶媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
非水性溶媒が、メタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ヒマシ油、アマニ油、ゴマ油、ダイズ油、オリーブ油、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
鎖延長剤が、アクリレート、メタクリレートまたはビニル官能基を有する単官能性または二官能性の化合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
鎖延長剤が、ポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGMA)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(PPGMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMMA)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(PPGMMA)、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMEMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(PPGDMA)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
重合開始剤が、過酸化物およびヒドロペルオキシドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
重合開始剤が、過酸化ベンゾイル(BPO)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、過酸化ジクミル(CPO)、過酸化ラウリル、tert-アミルヒドロペルオキシド(t-AHP)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、過酸化ジ-tert-ブチル(DTBP)、トリブチルヒドロペルオキシド(TBPH)、テトラ-メチルブチルヒドロペルオキシド(MBHP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
重合共開始剤が、トリエタノールアミン(TEA)、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHEPT)、4-(ジ-メチルアミノ)フェネチルアルコール(DMAPE)、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(EDMAB)、2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)、ビス(ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
第1および第2の溶液のいずれか一方または両方が共溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
共溶媒が、ノナノール、ジメチルスルホキシド、ブチレンカーボネート、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールブチルエーテル、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
1種以上の添加剤が、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を含むオルガノゲル。
【請求項16】
組成物が、約1MPa~約18MPaの圧縮弾性率を示す、請求項15に記載のオルガノゲル組成物。
【請求項17】
組成物が、約1分~約20分のゲル化時間を示す、請求項15に記載のオルガノゲル組成物。
【請求項18】
オルガノゲルを形成する方法であって、
第1の溶液および第2の溶液を含む第2の部分を含む組成物をオルガノゲルの形成が意図される部位に送達することと、
第1の溶液を第2の溶液と接触させることと、
プレポリマーの重合を開始させてオルガノゲルを形成することと
を含み、
第1の溶液が、1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、
第2の溶液が、重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、方法。
【請求項19】
1種以上の添加剤が、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物で充填された充填構造体を含む、動脈瘤を処置するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2017年10月23日に出願された米国仮特許出願第62/575,827号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に開示されている実施形態は、一般に、管腔内デバイスに使用される組成物および管腔内デバイスにおいて組成物を使用する方法に関する。様々な実施形態は生体安定性のあるオルガノゲル、および動脈瘤を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤は、しばしば破裂する傾向にあり、従って患者に重大なリスクを呈する、血管内の腫脹または膨らみである。動脈瘤はあらゆる血管で起こる可能性があるが、脳血管系または患者の大動脈で起こる場合特に懸念される。
腹部大動脈瘤(AAA)は大動脈内のその位置ならびにその形状および複雑さに基づいて分類される。腎動脈の下部に見られる動脈瘤は腎動脈下腹部大動脈瘤といわれる。腎臓上腹部大動脈瘤は腎動脈の上部で起こる。胸部大動脈瘤(TAA)は上部大動脈の上行部、弓部、または下行部分で起こる。腎臓下動脈瘤は最も一般的であり、全ての大動脈瘤の約70%を示す。腎臓上動脈瘤はそれより少なく、大動脈瘤の約20%を示す。胸部大動脈瘤は最も少なく、処置が最も困難であることが多い。
動脈瘤の最も一般的な形態は、腫脹が大動脈の外周全体に拡張した「紡錘状」である。それほど一般的ではないが、動脈瘤は血管の片側で括れに付着した膨らみで特徴付けられることがある。胸部大動脈瘤は、大動脈壁における、通常中間層の出血性の分離により生じる解離性の動脈瘤であることが多い。これらの種類および形態の動脈瘤の各々の一般的な処置は切開による外科的修復である。切開による外科的修復は、他の点では適度に健康であり、重大な併存疾患をもたない患者では完全に成功している。しかし、腹部および胸部の大動脈へのアクセスは達成するのが困難であり、また大動脈を鉗子で止めなければならず、患者の心臓に著しい負担をかけることになるので、かかる切開による外科手法は問題がある。
最近管腔内移植片が患者の大動脈瘤の処置として広く普及した。一般に、管腔内修復では、総腸骨動脈のいずれかまたは両方を通して「管腔内」の動脈瘤にアクセスする。次いで移植片が移植される。成功した管腔内手法は切開による外科手法より回復期間がずっと短い。
【0003】
典型的なエンドグラフト(endograft)手法ではステント移植片の配置を利用して動脈瘤を処置する。最小またはゼロの漏れをもたらし、移動に抵抗し、配置するのが比較的容易であり、ほとんどまたはすべての動脈瘤形態を処置することができる改良された組成物、方法、システム、および移植補綴を提供することが望ましいであろう。インビボの環境に耐えるのに適した生体適合性、生分解性、粘性、安定性ならびに柔軟性および強度の均衡のとれた機械的特性を有する管腔内移植片充填構造体および組成物を提供するのがさらに望ましいであろう。これらの目的の少なくとも幾つかは以下に記載される技術により達成される。
【発明の概要】
【0004】
様々な実施形態は、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含み、第1の溶液が1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、第2の溶液が重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、組成物に関する。様々な実施形態は組成物を含むオルガノゲルに関する。
様々な実施形態において、プレポリマーは、アクリレート、メタクリレートまたはビニル官能基から選択される少なくとも2つの官能基を有する化合物を含む。
様々な実施形態において、プレポリマーは、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート(EBPADA)、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(PEG-T)、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(PTMPTA)、ペンタエリトリトール(pentaerythriol)トリアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびこれらのメタクリル変異体、アジピン酸ジビニル、1,4-ジブタンジオールジビニルエーテル、ジおよびトリエチレングリコールジビニルエーテル、アリルエーテル、マレイン酸ジアリル、トリメチルプロパンジアリルエーテル、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される。
【0005】
様々な実施形態において、非水性溶媒は、アルコール、アルデヒド、アミド、カーボネート、エーテル、エステル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、炭化水素、ケトン、スルホキシド、および植物油からなる群から選択される脂肪族および芳香族溶媒を含む。
様々な実施形態において、非水性溶媒は、メタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ヒマシ油、アマニ油、ゴマ油、ダイズ油、オリーブ油、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0006】
様々な実施形態において、鎖延長剤は、アクリレート、メタクリレートまたはビニル官能基を有する単官能性または二官能性の化合物を含む。
様々な実施形態において、鎖延長剤は、ポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGMA)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(PPGMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMMA)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(PPGMMA)、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMEMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(PPGDMA)、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0007】
様々な実施形態において、重合開始剤は過酸化物およびヒドロペルオキシドを含む。
様々な実施形態において、重合開始剤は、過酸化ベンゾイル(BPO)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、過酸化ジクミル(CPO)、過酸化ラウリル、tert-アミルヒドロペルオキシド(t-AHP)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、過酸化ジ-tert-ブチル(DTBP)、トリブチルヒドロペルオキシド(TBPH)、テトラ-メチルブチルヒドロペルオキシド(MBHP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
様々な実施形態において、重合共開始剤は、トリエタノールアミン(TEA)、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHEPT)、4-(ジ-メチルアミノ)フェネチルアルコール(DMAPE)、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(EDMAB)、2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)、ビス(ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
様々な実施形態において、第1および第2の溶液のいずれか一方または両方が共溶媒をさらに含む。
様々な実施形態において、共溶媒は、ノナノール、ジメチルスルホキシド、ブチレンカーボネート、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールブチルエーテル、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される。
【0008】
様々な実施形態において、組成物は1種以上の添加剤をさらに含む。
様々な実施形態において、1種以上の添加剤は、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択される。
様々な実施形態は、オルガノゲルを形成する方法であって、第1の溶液および第2の溶液を含む第2の部分を含む組成物を、オルガノゲルの形成が意図された部位に送達することと;第1の溶液を第2の溶液と接触させることと;プレポリマーの重合を開始させてオルガノゲルを形成することとを含み、第1の溶液が1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、第2の溶液が重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、方法に関する。
様々な実施形態において、1種以上の添加剤は、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択される。
【0009】
様々な実施形態において、組成物は、約1MPa~約18MPaの圧縮弾性率を示す。
様々な実施形態において、組成物は、約1分~約20分のゲル化時間を示す。
様々な実施形態は、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含む組成物で充填された充填構造体を含む、動脈瘤を処置するためのシステムであって、第1の溶液が1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、第2の溶液が重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、システムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、デリバリーカテーテル上に装備され、本技術の組成物で充填できる充填構造体を含む補綴システムを例示する。
図2図2は、腎動脈下腹部大動脈瘤を処置するための図1の実施形態の補綴システムの使用を説明する。
図3図3は、腎動脈下腹部大動脈瘤への送達のための一対の補綴を含むシステムを例示する。ここで、各々の補綴は、デリバリーカテーテル上に装備され、本技術の組成物で充填できる充填構造体を含んでいる。
図4図4は、腎動脈下腹部大動脈瘤を処置するための図1の補綴システムの実施形態の使用を説明する。
図5図5A、5B、5C、および5Dは、本技術の実施形態に従って様々な官能基を有するプレポリマーを例示する。図5Eは、図5A、5B、5C、および5D中の形状に対する凡例を提供する。
図6図6は、本技術の実施形態に従ったオルガノゲル組成物の形成を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、様々な実施形態を記載する。これら特定の実施形態は本明細書中に述べられているより広範な態様に対して網羅的な記載または限定を意図したものではないことに留意されたい。特定の実施形態に関連して記載されている1つの態様は必ずしもその実施形態に限定されることはなく、他のいずれの実施形態で実施してもよい。
【0012】
本明細書で使用されるとき、「約」は当業者により理解されており、使用されている状況に応じてある程度変化する。その用語が使用されている状況を考えて当業者には明白でない使用であるならば、「約」はその特定の用語のプラスマイナス10%までを意味する。
(殊に後述の特許請求の範囲との関連で)要素を説明する状況で用語「a」および「an」および「the」および類似の指示対象の使用は、本明細書中で他に指示されているかまたは状況により明らかに矛盾することがない限り、単数形および複数形の両方に及ぶと解釈されたい。本明細書中値の範囲の記述は、本明細書中で他に指示されていない限り、その範囲内に入る各々別々の値を個別に引用する簡単な方法として役立たせることを意図しただけであり、各々別々の値は本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載されているすべての方法は、本明細書中で他に指示されているかまたはその他状況により明らかに矛盾することがない限り、いかなる適切な順序で実施してもよい。本明細書で提供されているありとあらゆる例、または例示的な言葉(例えば、「のような」)の使用は、単に実施形態の理解をより良好にすることを意図したものであり、他に述べられない限り、特許請求の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言葉も、特許請求の範囲に記載されていないいずれかの要素が必須であることを示すと解釈するべきでない。
本明細書で使用されるとき、用語「および/または」は、関連して挙げられた事項の1以上のありとあらゆる組合せを包含する。
【0013】
比率、濃度、量、およびその他の数値データは本明細書において範囲形式で示されることがある。かかる範囲形式は単に便宜上かつ簡潔にするために使用されており、その範囲の限界として明示されている数値を含むのみでなく、その範囲内に包含されるすべての個別の数値または部分範囲も各々の数値および部分範囲が明示されているかのように含まれると柔軟に解釈されるべきであると理解されたい。例えば、5~40モル%は明示された5~40モル%の限界を含むだけでなく、10モル%~30モル%、7モル%~25モル%などのような部分範囲、ならびに規定された範囲内の例えば15.5モル%、29.1モル%、および12.9モル%のような端数を始めとする個々の量も含むと解釈されるべきである。
【0014】
本明細書で使用されるとき、用語「オルガノゲル」とは、三次元の架橋網目構造内の液体有機相から成る1種のゲルを指す。
本明細書で使用されるとき、用語「開始剤」とは、硬化可能な組成物のゲル化のプロセスを開始させる要素を指す。場合によって、用語「開始剤」とは、本明細書で使用されるとき、開始剤系の1つの部分を指す。例えば、1つの部分が硬化性組成物に含まれ、他の部分が別途提供される、2つの部分からなる開始剤系が使用できる。この別途提供される他の部分は、本発明では「共開始剤」といわれる。
「実質的に水を含まない」とは、本明細書で使用されるとき、組成物の水分含量が組成物の総質量の約1%未満であることを意味する。「実質的に非水性」または「低い水分含量」を有するとは、組成物中の水の量が、存在しても、少なく、約1.0%未満、好ましくは約0.5%未満、より好ましくは約0.2%未満であることを意味する。例えば、本明細書に記載されている組成物は実質的に水を含まないか、または実質的に非水性であるか、もしくは低い水分含量を有し得る。水は組成物の意図された成分ではないが、不純物として少量存在することがあり得る。しかしながら、通例、本明細書に記載されている組成物は水を含まない。
【0015】
AAAを処置するためのエンドバッグまたは充填できる構造体を使用する方法は、一般に、医療機器の膨張可能な部材の体積を増大させることによりその場で材料を生成させることを含む。膨張可能な部材は、通例、水の存在下でその場で重合してヒドロゲルを生成することができるポリエチレングリコール(PEG)または別のポリマーのような充填材料で充填される。ヒドロゲル材料は、処置される動脈瘤に形状を合わせ、また医療機器を適所に固定するのにも役に立つ。材料は、架橋剤ならびにフリーラジカル開始剤および/または共開始剤の1種以上と混合されたポリマー前駆体(プレポリマー)の重合によって生成する。重合は、例えば、エンドバッグのような単一壁または二重壁のバッグを含むエンドグラフトの内側で行うことができる。この度、優れた安定性および望ましい機械的性質を有するオルガノゲル材料を製造することができ、医療機器の膨張可能な部材のための充填材料として使用することができるということが見出された。
【0016】
様々な実施形態において、本技術は、腹部および胸部大動脈瘤の処置のような治療用途向けの生体適合性オルガノゲルを提供する。オルガノゲルは硬化可能な組成物から形成され、この組成物は、開始剤系に応答して意図された適用部位で、その場で硬化または変性することができる1種以上のゲル化可能なプレポリマーを含み、所望の形態および位置を保持するためにその物理的状態が変化を受けるように構成されている。プレポリマー、および任意に他の成分から形成される硬化可能な組成物は意図された適用部位に送達可能である。硬化可能な組成物の特性、例えば粘性は組成物の意図された最終用途に応じて変化する。組成物は、カテーテルまたは注射器のような適当なデリバリーデバイスによって意図された部位に送達される。送達の前、間、または後に、組成物は開始剤系に曝露され、硬化、架橋およびゲル化の1以上を受けて、オルガノゲルを含有するデバイスを提供する。
【0017】
1つの態様において、2つの部分を含み、それらの部分の少なくとも1つが、2つの部分を混ぜ合わせたときにオルガノゲルを形成するプレポリマーを非水性溶媒中に含む組成物が提供される。組成物は、意図された部位への送達後迅速に架橋してオルガノゲルを形成することができるプレポリマーを含んでいる。組成物は1種以上の非水性溶媒、重合助剤、例えば酸化還元成分を含み、また添加剤および活性薬剤をさらに含んでいてもよい。組成物はその場、意図された適用部位でオルガノゲルを形成するのに適している。通例、オルガノゲルの形成に寄与するすべての成分は非水性溶媒に可溶性である。
【0018】
様々な実施形態において、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含む組成物が提供される。様々な実施形態において、組成物は、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含み、第1の溶液が1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、第2の溶液が重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む。様々な実施形態が一般に2つの溶液に関して記載されているが、本技術は溶液を含む第1の部分および固体(例えば、粉末)を含む第2の部分を含む組成物を含んでもよく、または両方の部分がそれぞれの成分の溶液ではなく固体を含んでいてもよい。
【0019】
プレポリマーは多官能性の架橋性プレポリマーを包含し得る。多官能性のプレポリマーは類似の官能基または異なる官能基を含み得る。様々な実施形態において、プレポリマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルまたはアリル官能基から選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物を包含する。様々な実施形態において、少なくとも1つの官能基を含む化合物は、アクリレート、メタクリレート、ビニルまたはアリル官能基から選択される官能基を含有する別の化合物と反応して共有結合を形成し得る。様々な実施形態において、プレポリマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルまたはアリル官能基から選択される少なくとも2つの官能基を含む化合物を包含する。少なくとも1つの実施形態において、適切なプレポリマーには、限定されることはないが、ポリエチレングリコールをベースとするアクリレート、メタクリレート、ビニルおよびアリル化合物がある。かかる化合物の幾つかの例としては、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート(EBPADA)、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(PEG-T)、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(PTMPTA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびこれらのメタクリル変異体から選択されるPEGアクリレートおよびメタクリレート、ならびにアジピン酸ジビニル、1,4-ジブタンジオールジビニルエーテル、ジおよびトリエチレングリコールジビニルエーテル、アリルエーテル、マレイン酸ジアリル、トリメチルプロパンジアリルエーテルなど、およびこれらの混合物から選択されるビニルおよびアリル化合物がある。実例となる実施形態において、プレポリマーはエトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレートを含む。少なくとも1つの実施形態において、プレポリマーは100~8000の範囲の平均分子量を有する。様々な官能基を有する例示的なプレポリマーが図5A、5B、5C、および5Dに例示されている。図5Eは、図5A、5B、5C、および5D中の形状の凡例を示す。図の幾つかに描かれているダイマー、トリマー、およびテトラマーの例示的な組成物は同一の官能基を有しているが、ダイマー、トリマー、およびテトラマー上の官能基はすべてが同じ種類であることも、または本明細書に開示されている様々な官能基のいずれかの組合せであることもできよう。
【0020】
プレポリマーは、所望の性質をもつオルガノゲルを得るのに適した量で加えることができる。プレポリマーは組成物の総質量の約1質量%~約80質量%の量で存在し得る。これは、組成物の総質量の約5質量%~約75質量%、約10質量%~約70質量%、約15質量%~約65質量%、約2質量0%~約60質量%、約25質量%~約55質量%、約30質量%~約50質量%、または約35質量%~約45質量%、これらの値の任意の2つを含めてそれらの間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲を含み得る。実例となる実施形態において、プレポリマーは組成物の総質量の約10質量%~約40質量%の量で存在する。
【0021】
第1の溶液および任意に第2の溶液は非水性溶媒を含んでも含まなくてもよい。非水性溶媒は、プレポリマーおよびその他の成分を溶解する一方で、すべての反応物質に対して不活性であるようなものでよい。適切な非水性溶媒には、限定されることはないが、脂肪族および芳香族の溶媒、例えば、限定されることはないが、アルコール、アルデヒド、アミド、カーボネート、エーテル、エステル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、炭化水素、ケトン、およびスルホキシド、植物油および油脂など、およびこれらの組合せ、ならびにその他当業者に公知の非水性溶媒がある。実例となる溶媒としては、限定されることはないが、メタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド、ヒマシ油、アマニ油、ゴマ油、ダイズ油、オリーブ油など、ならびにこれらの混合物がある。
【0022】
非水性溶媒は約1質量%~約90質量%の量で組成物中に存在し得る。これには、組成物の総質量の約5質量%~約80質量%、約10質量%~約70質量%、約15質量%~約65質量%、約20質量%~約60質量%、約25質量%~約55質量%、約30質量%~約50質量%、または約35質量%~約45質量%の非水性溶媒が含まれ得る。様々な実施形態において、第1および第2の溶液は約1質量%、約5質量%、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、約35質量%、約40質量%、約45質量%、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、約75質量%、約80質量%、約85質量%、約90質量%、これらの値の任意の2つを含めてその間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲の非水性溶媒を含み得る。実例となる実施形態において、第1の溶液は約20質量%~約80質量%の1種以上の非水性溶媒を含む。実例となる実施形態において、第2の溶液は約20質量%~約80質量%の1種以上の非水性溶媒を含む。実例となる実施形態において、非水性溶媒は組成物の総質量の約10質量%~約40質量%の量で存在する。
【0023】
プレポリマーおよび溶媒に加えて、組成物は任意に1種以上の鎖延長剤を含んでいてもよい。オルガノゲルの特性は鎖延長剤の適当な選択によって変更することができる。例えば、鎖延長剤は、オルガノゲルの堅く架橋した網目構造に侵入し、強靭性を増大させるために利用できる。適切な鎖延長剤は、非水性溶媒に可溶性であり、プレポリマーと共に重合をするか、またはオルガノゲル構造内に独立した網目構造を形成することができるものである。鎖延長剤には、二官能性の拡張モノマーおよび/または単官能性の拡張モノマーが含まれ得る。様々な実施形態において、適切な鎖延長剤には、あらゆる単または二官能性のアクリレート、メタクリレート、ビニルまたはアリル化合物が含まれる。かかる適切な鎖延長剤の例として、限定されることはないが、ポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGMA)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(PPGMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMMA)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(PPGMMA)、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMEMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(PPGDMA)などおよびこれらの混合物がある。
【0024】
鎖延長剤は、適切には、約200~約25,000ダルトンの範囲の数平均分子量(Mn)を有し得る。これには、約200ダルトン、約400ダルトン、約600ダルトン、約800ダルトン、約1,000ダルトン、約2,000ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約5,000ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約25,000ダルトン、ならびにこれらの値の任意の2つを含めてその間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の値の数平均分子量が含まれる。少なくとも1つの実施形態において、鎖延長剤は約200~約15,000ダルトンの数平均分子量を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、鎖延長剤は約200~約10,000ダルトンの範囲の数平均分子量を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、鎖延長剤は約200~約2000ダルトンの範囲の数平均分子量を有し得る。その結果、実例となる鎖延長剤としては、限定されることはないが、PEGMMA 500、PEGMEMA 950、PEGDA 500、PEGDA 1000、PEGDA 2000、PEGDMA 300、PEGDMA 700、PEGDMA 1000、PEGDMA 2000、PPGDMA 1000、PPGDMA 2000、PEGDMA 10,000など、およびこれらの混合物がある。
【0025】
少なくとも1つの実施形態において、鎖延長剤は約0質量%~約70質量%の濃度で組成物中に存在する。これには、組成物の総質量の約1質量%~約60質量%、約5質量%~約50質量%、約10質量%~約40質量%、約15質量%~約30質量%、約20質量%~約25質量%の鎖延長剤が含まれ得る。様々な実施形態において、第1および/または第2の溶液は1種以上の鎖延長剤を0質量%、約1質量%、約2質量%、約5質量%、約8質量%、約10質量%、約12質量%、約15質量%、約18質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、約35質量%、約40質量%、約45質量%、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、これらの値の任意の2つを含めてその間またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲の量で含み得る。実例となる実施形態において、第1の溶液は組成物の総質量の約0質量%~約40質量%の鎖延長剤を含む。他の実施形態において、第1の溶液は組成物の総質量の約5質量%~約30質量%の鎖延長剤を含む。
【0026】
プレポリマーのゲル化および架橋は、化学的または物理的架橋、例えば、限定されることはないが、フリーラジカル重合、縮合重合、錯体形成、水素結合などのような幾つかのメカニズムによって生じ得る。様々な実施形態において、オルガノゲルは、生理的温度におけるプレポリマーのフリーラジカル重合を容易にするために開始剤/共開始剤対をさらに含み得る。開始剤および共開始剤は二部分組成物の別々の溶液に含まれる。開始剤には過酸化物、ヒドロペルオキシドおよびその他あらゆる過酸化物含有化合物が含まれ得る。適切な重合開始剤として、限定されることはないが、過酸化ベンゾイル(BPO)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、過酸化ジクミル(CPO)、過酸化ラウリル、tert-アミルヒドロペルオキシド(t-AHP)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、過酸化ジ-tert-ブチル(DTBP)、トリブチルヒドロペルオキシド(TBPH)、テトラ-メチルブチルヒドロペルオキシド(MBHP)など、およびこれらの混合物がある。
【0027】
組成物はまた、開始剤と混ぜ合わせたとき生理的温度におけるプレポリマーの硬化を引き起こす共開始剤も含む。少なくとも1つの実施形態において、共開始剤は第二級または第三級アミンであり得る。適切な共開始剤として、限定されることはないが、N,N-ジメチルアニリン、トリエタノールアミン(TEA)、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHEPT)、4-(ジ-メチルアミノ)フェネチルアルコール(DMAPE)、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(EDMAB)、2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)、ビス(ヒドロキシエチル)-p-トルイジンなど、およびこれらの混合物がある。
【0028】
重合開始剤および共開始剤の量は架橋の所望のレベルおよび重合速度に応じて変更され得る。組成物の総質量%における1種以上の重合開始剤および1種以上の共開始剤の量の例は、約0.005質量%、約0.001質量%、約0.01質量%、約0.05質量%、約0.1質量%、約0.2質量%、約0.5質量%、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、これらの値の任意の2つを含めてその間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲を含む。少なくとも1つの実施形態において、第1の溶液は約0.01質量%~約3質量%の開始剤を含む。他の実施形態において、第2の溶液は約0.01質量%~約3質量%の共開始剤を含む。
実例となる実施形態において、第1の溶液は約0.5質量%~1.5質量%のクメンヒドロペルオキシドを含む。別の実例となる実施形態において、第2の溶液は約0.5質量%~1.5質量%の1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素を含む。
【0029】
少なくとも1つの実施形態において、本技術の組成物はまた重合防止剤も含み得、これは二部分オルガノゲル配合物の溶液の一方または両方に含まれ得る。防止剤の役割はプレポリマーおよび鎖延長剤の早期重合を防止することである。防止剤の作用は永続的でない可能性があり、例示的な実施形態において防止剤は貯蔵中の組成物の安定性を保証する。配合物の2つの成分を混ぜ合わせると、重合反応が開始し、その結果オルガノゲルが生成する。適切な重合防止剤の例としては、限定されることはないが、ヒドロキノン(HQ)、メチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、4-tert-ブチルピロカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、1,4-ベンゾキノン、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル、フェノチアジンなどがある。
【0030】
防止剤は反応性の成分に対して3質量%未満、約1質量%未満または約0.1質量%未満の量で配合物中に存在し得る。
本技術の組成物は、密度、粘性、分配性、機械的特性または視覚特徴、例えばスキャン下での照明補助などのような特性を変更または改良するために1種以上の添加剤をさらに含み得る。様々な実施形態において、組成物は、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、粘度降下剤、高分子量ポリマー、増量剤、安定剤、マイクロスフェア、繊維、粉末、ガス、放射線不透過物質、薬剤などのような1種以上の添加剤を含み得る。例示的な添加剤としては、3,3’-チオジプロピオン酸ジメチル、ジアトリゾ酸ナトリウム、ブチレンカーボネート、ポリウレタン、コラーゲン、ポリエチレングリコール、マイクロスフェアなどがある。少なくとも1つの実施形態において、1種以上の添加剤は第1の溶液もしくは第2の溶液、または両方の溶液に含まれ得る。少なくとも1つの実施形態において、第1の溶液が1種以上の添加剤をさらに含む。少なくとも1つの実施形態において、第2の溶液が1種以上の添加剤をさらに含む。少なくとも1つの実施形態において、1種以上の添加剤は充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択される。
【0031】
少なくとも1つの実施形態において、本技術の組成物は、所望の全身性または局所性の効果を誘発する、投与に適した有効量の1種以上の薬理学的に活性な薬剤をさらに含み得る。適切な、薬理学的に活性な薬剤は当業者に自明であり、限定されることはないが、酵素、タンパク質、抗炎症剤、抗生物質、防腐剤、抗腫瘍剤、細胞毒素、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、増殖因子、血管拡張剤、麻酔剤などまたはこれらの組合せがある。
【0032】
二部分組成物の第1および/または第2の溶液の粘度は、任意に、オルガノゲルを分配することを容易にするように、粘度調節剤、乳化剤、または混和性の共溶媒を用いて変更してもよい。適切な粘度調節共溶媒には、脂肪族および芳香族の溶媒、例えば、炭化水素、アルコール、アルデヒド、アミド、カーボネート、エーテル、エステル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、ケトン、スルホキシドおよびその他当業者に公知の非水性溶媒が含まれる。かかる溶媒の例としては、限定されることはないが、ノナノール、ジメチルスルホキシド、ブチレンカーボネート、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールブチルエーテルなど、またはこれらの組合せがある。実例となる実施形態において、組成物はノナノールを共溶媒として含む。
【0033】
組成物は、インビボの可視化を達成し、送達、追跡、位置決め、およびその他の目的でデバイスの撮像を可能にするために生体適合性の造影剤またはその他の添加剤を含み得る。組成物が造影剤を含む場合、実例となる造影剤には、限定されることはないが、イオン性および非イオン性の薬剤、例えばイオカルム酸、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオキサグル酸、アセトリゾ酸、ジアトリゾ酸、ヨーダム酸(iodamic acid)、イオグリク酸、イオパノ酸、イオプロン酸、イオタラム酸、イオキシタラム酸、イポド酸、メトリゾ酸、およびこれらの薬学的に許容される塩、イオジキサノール、イオフォルミノール、イオトロラン、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオシミド、イオベルソール、イオキシラン、およびメトリザミドなどおよびこれらの組合せがある。少なくとも1つの実施形態において、造影剤には、ジアトリゾ酸ナトリウム水和物(NaDi)、アミドトリゾ酸ナトリウム、チロパノ酸ナトリウム、フェンテチオタレインナトリウム、エデト酸カルシウムナトリウム、アミドトリゾ酸メグルミン、ジアトリゾ酸メグルミン、トリフェニルビスマス、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、メトリザミド、メトリゾ酸、フェノブチオジル、イオジキサノール(lodixanol)など、またはこれらの組合せがある。
【0034】
組成物は、意図された適用部位へのその送達を容易にするのに適した流動性を維持しながら、ポリマー性組成物の粘度を低下させるのに充分な量の粘度低下剤をさらに含み得る。適切な粘度低下剤には、限定されることはないが、ポリエチレングリコールポリマー、親水性、疎水性もしくは両親媒性の界面活性剤、有機溶媒などまたはこれらの組合せがある。
【0035】
様々な実施形態において、添加剤および薬理学的に活性な薬剤は、存在するならば、約0.001質量%、約0.01質量%、約0.02質量%、約0.05質量%、約0.1質量%、約0.5質量%、約1.0質量%、約2質量%、約5質量%、約10.0質量%、約15.0質量%、約20.0質量%の範囲、ならびにこれらの値の任意の2つの間の範囲またはこれらの値のいずれか1つ未満の濃度の範囲で組成物中に組み込むことができる。例えば、組成物は約0.1質量%~10.0質量%の造影剤を含み得る。
【0036】
1つの態様において、2つの部分を含み、第1の部分が多官能性の架橋性プレポリマーおよび二官能性の鎖延長剤、第三級アミン共開始剤、非水性溶媒、ならびに任意に共溶媒を含み、第2の部分が過酸化物開始剤、非水性溶媒、および任意に共溶媒を含む、組成物が提供される。適切な多官能性の架橋性プレポリマー、二官能性の鎖延長剤、過酸化物開始剤、アミン共開始剤、ならびに非水性溶媒および共溶媒は本明細書に記載されている通りである。少なくとも1つの実施形態において、多官能性の架橋性プレポリマーにはエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートが含まれる。少なくとも1つの実施形態において、二官能性の鎖延長剤はポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートおよびポリプロピレングリコールジメタクリレートからなる群から選択される。少なくとも1つの実施形態において、非水性溶媒はプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、ブチレンカーボネート、およびこれらの組合せからなる群から選択される。少なくとも1つの実施形態において、共溶媒にはノナノールが含まれる。少なくとも1つの実施形態において、過酸化物開始剤はクメンヒドロペルオキシドおよび過酸化ベンゾイルから選択される。少なくとも1つの実施形態において、第三級アミン共開始剤は1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン、および1-アセチル-2-チオ尿素からなる群から選択される。少なくとも1つの実施形態において、組成物は、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素およびプロピレングリコールを含む第1の溶液、ならびにクメンヒドロペルオキシドおよびプロピレングリコールを含む第2の溶液を含む。少なくとも1つの実施形態において、第1の溶液および/または第2の溶液は造影剤をさらに含む。少なくとも1つの実施形態において、造影剤はジアトリゾ酸ナトリウム水和物である。
【0037】
様々な実施形態において、本明細書に記載されている組成物を用いて調製されるオルガノゲルが提供される。例示的な実施形態において、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含み、第1の溶液がプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤および任意に鎖延長剤を含み、第2の溶液が重合開始剤および非水性溶媒を含む、組成物を含む、オルガノゲルが提供される。様々な実施形態において、非水性溶媒中にエトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(PEG-T)、およびプロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(PTMPTA)から選択される架橋性または硬化性のプレポリマーを、酸化還元開始剤および共開始剤対と共に含むオルガノゲルが提供される。オルガノゲルは実質的に膨潤も収縮もせず、膨潤したオルガノゲルの質量は経時的に変化しないままである。
【0038】
様々な実施形態において、本明細書に記載されている方法を用いて調製されたオルガノゲルが提供される。少なくとも1つの実施形態において、方法は、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分を含む組成物をオルガノゲルの形成が意図される部位に送達することと、第1の溶液を第2の溶液と接触させることと、プレポリマーの重合を開始させてオルガノゲルを形成することとを含む。第1および第2の溶液は本明細書に記載されている通りである。様々な実施形態において、第1の溶液はプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤および任意に鎖延長剤を含み、第2の溶液は重合開始剤および非水性溶媒を含む。
別の態様において、重合してインビボの適用に適したマトリックスを形成するのに適合した組成物で充填できる充填構造体を含むシステムを提供する方法が提供される。方法は、本明細書に記載されている二部分組成物を含む組成物で充填できる充填構造体を送達することと、インビボでプレポリマーの重合を開始させてオルガノゲルを形成することとを含む。組成物を送達するのに使用される適切な送達プロトコルには、限定されることはないが、充填構造体を担持するためのバルーンまたはその他の膨張可能な支持体を有するデリバリーカテーテルが含まれ得る。様々な実施形態において、方法は、本明細書に記載されている二部分組成物で充填構造体を充填することと、インビボでプレポリマーの重合を開始させてオルガノゲルを形成することとを含む。様々な実施形態において、充填構造体は充填ラインを介して充填される。
【0039】
重合は、限定されることはないが、フリーラジカル開始、熱的開始、または可視光への曝露のような方法により開始させることができる。少なくとも1つの実施形態において、重合は酸化還元ラジカル開始溶液重合を用いて開始される場合がある。したがって、少なくとも1つの実施形態において、重合および架橋は重合開始剤および共開始剤系を用いることによって開始される。適切なプレポリマー、鎖延長剤、溶媒、開始剤および共開始剤は本明細書に記載されている通りである。
【0040】
オルガノゲルは、二部分組成物を移植可能なデバイス中に注入することによって形成され得、デバイス中で組成物が硬化して、耐久性および生体安定性のあるオルガノゲルが得られる。1つの態様において、オルガノゲルをその場で形成する方法が提供される。この方法は二部分組成物を含む移植可能なデバイスをオルガノゲルの形成が意図される部位に送達することを含む。組成物は液体、ゲル、泡、スラリーなどとして送達し得る。組成物は本明細書に記載されているプレポリマーを含み、これは硬化後一定の形状を有する。少なくとも1つの実施形態において、充填材料は本明細書に記載されている二部分組成物系を含み得る。他の実施形態において、充填材料は、生理的環境に曝露されると時間と共に硬化または固化する単一の組成物を含み得る。充填材料を硬化または固化する方法は充填材料の種類に依存する。例えば、ある種のプレポリマーは、超音波エネルギーまたは可視光のようなエネルギーの適用によって硬化し得る。他のプレポリマーは、体温、または組成物の重合を引き起こす他の条件に曝露したとき硬化し得る。さらに他の組成物は、成分が使用の直前に混合され、一定の時間後硬化し得るようなものである。
【0041】
様々な実施形態において、組成物の各々の部分は最初、意図された部位への送達を可能にするために流体であり、硬化可能、またはその他の形で固化可能であって、所定の位置に配置されると、組成物、およびそれが充填されたまたは組み込まれた充填構造体はデリバリーシステムが除去された後所定の位置に残るようになっている。本技術のある態様は、管腔内用途向けの組成物を提供し、これは容易に送達することができ、安定な特性を有する。
【0042】
様々な実施形態において、組成物は、以前から知られている組成物と比較して改良された特性、例えば、圧縮強さ、硬度、硬化特性、許容される反応の発熱、殺菌の容易さ、室温貯蔵安定性、生体適合性、使用中の耐久性、および低い収-膨潤のような特性の改良された組合せを提供する。改良は、送達前またはその間、硬化中またはその後、および長時間のインビボの使用の過程で起こるものを含めて他の望ましい特性に有害な影響を及ぼすことなく達成することができる。最終のオルガノゲルの特性は、例えば、二部分組成物の第1および第2の部分の適当な比重および粘度を選択することにより変えることができる。第1の溶液および/または第2の溶液の特性は用途に望ましい特性を有するオルガノゲルを提供するように変えることができる。例えば、第1および/または第2の溶液は意図された適用部位への送達の容易さのために高い比重および低い粘度を有し得る。様々な実施形態は組成物を含むオルガノゲルに関する。例示的な実施形態において、本明細書に記載されているプレポリマーを含むプレポリマー網目構造を含むスーパー網目構造を含むオルガノゲルが本明細書で提供され、網目構造は、例えば図6に示されているように、鎖延長剤により共有結合されている。
【0043】
オルガノゲルは約100cP以下、例えば、限定されることはないが、約80cP以下、約50cP以下、例えば、約45cP以下、約40cP以下、約35cP以下、約30cP以下、約25cP以下、約20cP以下、または約10cP以下の粘度を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲルの粘度は約5cP~約50cP、例えば約10cP~約30cP、約15cP~約25cPであり、この粘度は25℃、30%溶液でセンチポアズ(cP)単位で測定される。
オルガノゲルは約0.1~約5、例えば、限定されることはないが、約0.2~2、約0.3~1.8、約0.5~1.5、または約0.8~1.3の範囲の比重を有し得る。少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲルは約0.85~約1.25の比重を有する。少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲルは、一般に血液または血栓と同じ比重を有する。
オルガノゲルは約1デュロメーター~約400デュロメーター、例えば、限定されることはないが、約2デュロメーター~約300デュロメーター、約5デュロメーター~約200デュロメーター、約10デュロメーター~約140デュロメーター、または約50デュロメーター~約100デュロメーターの範囲のショア硬さを有し得る。
【0044】
二部分組成物の第1および第2の溶液を一緒に混合すると、硬化は迅速に、しかし組成物が液体から可塑性またはエラストマー性になり、さらにオルガノゲル稠度になる様々な段階を経て生じ得る。オルガノゲル組成物は注入可能な溶液であり、臨床的に関連のある時間は、狭い管を通して溶液を注入またはポンプで送り込むことができる時間として定義される操作時間である。ゲルが硬化し、その最大限の機械的特性を獲得するのに必要とされる時間は合計硬化時間である。
その結果、少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲルは約30秒~約30分のゲル硬化時間を有する。これは約30秒~約20分、約45秒~約15分、約1分~約10分、およびこれらの値の任意の2つを含めてその間またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲のゲル硬化時間を含む。
少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲルは約25分未満の硬化時間を有する。これは約20分未満、約15分未満または約10分未満の硬化時間を含む。少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲルは約30秒~約10分、約1分~約8分、約3分~約5分、およびこれらの値の任意の2つを含めてその間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲の硬化時間を有する。
【0045】
本技術のオルガノゲルは、望ましくは、低い溶媒損失を示す。組成物の揮発性は使用される溶媒の蒸気圧に依存する。様々な実施形態において、オルガノゲル組成物は室温で24mmHg未満の蒸気圧を有する少なくとも1種の溶媒を含む。少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲル組成物は約0.01mmHg~約23.8mmHg、約0.05mmHg~約20mmHg、約0.1mmHg~約10mmHg、約0.5mmHg~約5mmHg、または約0.01mmHg~約1.0mmHg、およびこれらの値の任意の2つを含めてその間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲の蒸気圧を有する少なくとも1種の溶媒を含む。少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲル組成物は約0.01mmHg~約1.0mmHgの蒸気圧を有する少なくとも1種の溶媒を含む。
【0046】
本技術の実施形態によると、オルガノゲルは移植片移植プロセスの間およびその後移植片を所要の位置に維持するためにその機械的強度を適切に保持する。従って、オルガノゲルは約0.1MPaを超える静的圧縮弾性率を有する。これは約0.5MPa~約18MPa、約2MPa~約15MPa、約3MPa~約12MPa、約5MPa~約10MPaおよびこれらの値の任意の2つを含めてその間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の値の圧縮弾性率を含む。少なくとも1つの実施形態において、オルガノゲルは約1MPa~約50Mpa、約5MPa~約40Mpa、約10MPa~約30Mpa、約15MPa~約25Mpa、およびこれらの値の任意の2つを含めてその間、またはこれらの値のいずれか1つ未満の範囲の圧縮弾性率を有する。静的圧縮弾性率および動的圧縮弾性率はそれぞれ静的および振動条件下での圧縮時の応力対歪みの比を示す。少なくとも1つの実施形態において、組成物は約1MPa~約15MPaの静的圧縮弾性率を有する。少なくとも1つの実施形態において、組成物は約0.5MPa~約2.5MPaの弾性率を有する。幾つかの他の実施形態において、組成物は約0.1MPa~約3MPaのずれ弾性率を有する。
【0047】
様々な実施形態において、本技術のオルガノゲルは、望ましくは、低い収縮-膨潤特性を示し得る。例えば、オルガノゲルの体積は硬化後約15%未満、約10%未満または約5%未満収縮し得る。様々な実施形態において、本技術のオルガノゲルは他の同等な組成物と比較して改良された安定性を示し得る。例えば、オルガノゲルのモジュラスは本明細書に記載されている安定性および/または促進安定性試験に従って行った促進老化試験でごく少しだけ変化した。
本明細書に記載されている組成物は一般に移植可能な補綴に、特に、管腔内デバイスを血管壁に密封するか、または動脈瘤嚢のような管腔内の充填構造体に充填するためのシーリング組成物に、またはシーリング組成物として使用され得る。管腔内デバイスの密封、または動脈瘤嚢の充填はデバイスを通る血流の保持を容易にする。
【0048】
1つの態様において、オルガノゲルを形成する方法が提供される。この方法は、第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分を含む組成物をオルガノゲルの形成が意図される部位に送達することと、第1の溶液を第2の溶液と接触させることと、プレポリマーの重合を開始させてオルガノゲルを形成することとを含む。第1の溶液および第2の溶液は本明細書に記載されている通りである。方法の少なくとも1つの実施形態において、第1の溶液は、1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤および任意に1種以上の鎖延長剤を含み得、第2の溶液は重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒および任意に1種以上の鎖延長剤を含み得る。方法の少なくとも1つの実施形態において、第1の溶液もしくは第2の溶液、または両方の溶液はさらに1種以上の添加剤を含み得る。適切な添加剤は本明細書中上に記載された通りであり、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択され得る。第1の溶液が開始剤を含んでいるとき、第2の溶液が共開始剤を含み得、またその逆もあることは理解されよう。
【0049】
1つの態様において、動脈瘤の管腔内処置のためのシステムにおいてオルガノゲルを使用する方法が提供される。1つの態様において、本明細書に記載されている組成物を含むか、または本明細書に記載されている組成物が充填されたデバイスが提供される。デバイスは移植片システムであり得、支持体または足場を含み得る。少なくとも1つの実施形態において、デバイスは腹部大動脈瘤(AAA)および胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む動脈瘤の管腔内処置のためのシステムを含む。システムは二重壁充填構造体を含む補綴を含み、これらは充填されたとき動脈瘤の増大した体積を実質的に充填し、管腔を血流のために適所に残すように予め形作られ、その他適合される。様々な実施形態において、システムは二重壁充填構造体を含む補綴を含み得、これらは充填されたとき動脈瘤の増大した体積を充分に充填し、管腔を血流のために適所に残すように予め形作られ、その他適合される。幾つかの実施形態において、充分に充填されたとは、例えば移動を回避し、管腔を支持し、等のために十分に充填することを含み得る。かかるシステムおよび方法の一例が米国特許第8,048,145号に記載されており、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
1つの態様において、本技術は、動脈瘤、特に腹部大動脈瘤(AAA)および胸部大動脈瘤(TAA)の両方を含む大動脈瘤の管腔内処置のための方法およびシステムを提供する。システムは二重壁充填構造体を含む補綴を含み、これらは充填されたとき動脈瘤、特に紡錘状動脈瘤の増大した体積を実質的に充填するかまたは充分に充填して管腔を血流のために適所に残すように予め形作られ、その他適合される。
デリバリーカテーテル上に装備された充填構造体を含む例示的な単一の補綴システムを図1に示す。二重壁充填構造体12を動脈瘤に送達するように構築されたシステム10は充填構造体12および拡張性要素16、通例膨張可能なバルーンをその遠位端に有するデリバリーカテーテル14を含む。カテーテル14は、ガイドワイヤルーメン18、他の拡張可能な構成要素を拡張するためのバルーン膨張ルーメン(図示されていない)またはその他の構造体、および充填媒体もしくは材料を二重壁充填構造体12の内部空間22に送達するための充填チューブ20を含む。内部空間22は充填構造体12の外壁24と内壁26の間に画定される。充填材料または媒体による膨張の際、外壁24は、破線で示されているように、やはり破線で示されている内壁26と同様に、半径方向外方に拡張する。内壁26の拡張は内部ルーメン28を画定する。バルーンまたはその他の構造体のような拡張性要素16は拡張可能であって、やはり図1に破線で示されているようにルーメン28の内面を支持する。
【0051】
図1の処置システム10は、図2に示されているように、最初にデリバリーカテーテル14を位置決めして、通常腎動脈(RA)下方の大動脈領域から腸骨動脈(IA)を越えた領域まで動脈瘤を横切って二重壁充填構造体12を(その未充填状態で)配置することによって、貫壁性の腹部大動脈瘤(AAA)の複雑な形態を処置するために利用できる。通常、デリバリーカテーテル14は、Seldinger法により腸骨動脈にアクセスする患者の鼠径部の穴を通ってガイドワイヤ(GW)を越えて導入される。二重壁充填構造体12を適切に配置した後、本技術のオルガノゲルを形成する前駆体を内部空間22中に導入する。内部空間22を充填すると構造体の外壁24が外方に拡張し、その結果動脈瘤スペースの内面(S)に合わさる。膨張媒体による二重壁充填構造体12の充填前、中、または後、バルーンまたはその他の拡張可能な構造体のような拡張性要素16もまた膨張または拡張して、内壁26の内面により画定される管状ルーメンを開く。
【0052】
少なくとも1つの実施形態において、図2に例示されている単一の充填構造体のみの代わりに一対の二重壁充填構造体を使用して腎動脈下腹部大動脈瘤を処置することができる。かかる一対の充填構造体を含むシステムが図3に例示されており、これは第1の充填構造体112および第2の充填構造体212を含んでいる。各々の充填構造体112および212はそれぞれデリバリーカテーテル114および214上に装備されている。充填構造体112および212ならびにデリバリーカテーテル114および214の構成要素は一般に図1の単一の充填構造体システム10に関して先に記載したものと同じであり、充填システム112および212の各々の対応する部分には基本数100または基本数200のいずれか一方と共に同じ番号が付けられている。図3に示されているように、デリバリーカテーテル114はガイドワイヤルーメン118および充填チューブ120を含んでいる。デリバリーカテーテル214はガイドワイヤルーメン218および充填チューブ220を含んでいる。第1の充填構造体112は外壁124を含んでいる。第2の充填構造体212は外壁224を含んでいる。外壁124および外壁224は、それぞれ破線により示されているように、第1の充填構造体112および第2の充填構造体212の充填を可能にするために拡張可能である。バルーンまたはその他の構造体のような拡張性要素116は図3に破線で示されているように、ルーメン128の内面を支持するために拡張可能であり、バルーンまたはその他の構造体のような拡張性要素216はやはり図3に破線で示されているように、ルーメン228の内面を支持するために拡張可能である。
【0053】
一方で図3の充填構造体112および212と図1の充填構造体12との主要な違いは、充填構造体の対が概して非対称の形状を有していることであり、その意味するところはそれらが動脈瘤スペース内で互いに隣接して位置し、一緒になってそのスペースを充填することである。図3の充填構造体112および212が本技術の二部分組成物で充填された後、組成物は硬化またはその他の形で固化して本技術のオルガノゲルを形成し、デリバリーカテーテル114および214はそれぞれ除去される。その後、固化した充填構造体は腎動脈下方の大動脈から左右の腸骨動脈に開口している一対の管状ルーメンを提供する。充填構造体112および212の動脈瘤の内面に合わせる能力はそれらの構造体がほとんどまたはまったく移動することなく動脈瘤内に固定されたままであるのに役立つ。
【0054】
本明細書中上に記載された充填構造体に加えて、システムは、充填構造体とは別の少なくとも第1の足場をさらに含み得、この足場は概して管状ルーメン内で拡張することができ、充填構造体が動脈瘤内に配備された後血流を提供することができる。第1の足場は充填構造体の管状ルーメンの少なくとも第1の部分内で拡張するように適合しており、1以上の特定の利点を提供し得る。例えば、足場は、場合によってポリマー充填材の固化中にでこぼこになることがある管状ルーメンの内壁を支持し、滑らかにし得る。足場はまた、特にAAA内に配置されたとき移植片の大動脈端における充填構造体の固定も提供し得る。足場は移植片を形成するために一部または全体を膜で覆うことができる。かかる場合、移植片構造体は血管から概して充填構造体の管状ルーメン中への大動脈端からの移行を提供する役に立ち得る。或いは、移植片構造体は充填構造体の腸骨端からの一つまたは一対の移行を提供することができるであろう。特定の例において、移植片構造体は、隣接する血管における追加または連続する動脈瘤領域を処置するために充填構造体の両側に使用することができる。少なくとも1つの実施形態において、システムは多数の足場構造体を含み得る。例えば、システムは、第1および第2の二重壁充填構造体によりそれぞれ規定される管状ルーメンの各々に一つずつ、少なくとも第1および第2の足場を含み得る。足場は、連続して、しばしば重なって配置するのに適合していてもよいし、またはいずれか一方または両方の端で、任意に両端間の領域で離隔するように適合していてもよい。
【0055】
単一の補綴システムのための短いステント様足場構造体の一例を図4に示す。足場60は、充填構造体12の上端を固定し、外壁24と動脈瘤の内面(S)との間の領域への血液の侵入を防止する役に立たせ、一般に大動脈から管状ルーメン中への移行を改良するために、充填構造体12の管状ルーメンの上部開口52内に移植することができる。胸部大動脈(TA)に対する、ならびに充填構造体12の位置に関する腎動脈(RA)および腸骨動脈(IA)の位置をある実施形態について図4に示す。充填構造体12は外壁24および内壁26を含んでおり、その間に内部空間22が画定される。充填構造体12の管状ルーメンはまた下端50も有する。
【0056】
充填構造体12のためのステント様構造体または動脈瘤を処置するのに使用できる他のステント移植片には、当技術分野で公知の従来のステント、移植片、またはその他拡張可能な管腔支持構造体が含まれ得る。例えば、移植片は、移植片本体の外周全体に延びる1以上の周辺の膨張性流路を含んでいてもよいし、または移植片本体の外周の一部に延びていてもよい。周辺の膨張性流路は長手方向の膨張可能な充填流路を介して互いに連通してもよい。膨張性流路の網目構造は、任意に、流路に注入された後固化し、硬化し、もしくはその他の形で粘度を増大させるか、またはより剛性になるように構成され得る固化可能な材料で充填されてもよい。より密で堅い、または実質的に固化した状態に硬化可能なゲル、液体またはその他流動性の材料のような固化可能な膨張材料を使用して、流路内に配置された固化した物質の機械的特性のおかげで移植片本体に機械的な支持を提供することができる。かかるシステムおよび方法の一例は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0100650号に記載されている。少なくとも1つの実施形態において、膨張性流路は本技術のオルガノゲル組成物で充填され得る。
【0057】
以上広範に記載した本技術は、例示のために提供され、本技術を限定する意図のない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されよう。
【実施例0058】
以下の実施例は例示のみであり、記載された他の実施形態の範囲をいかなる意味でも限定する意図はない。
【0059】
すべての実施例で以下の略語を使用する。
ATU: 1-アセチル-2-チオ尿素
BPO: 過酸化ベンゾイル
CHP: クメンヒドロペルオキシド
DHEPT: N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン
PTU: 1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素
PEG-T: エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート
PEGDMA 1000: ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート MW1000
PEGDMA 8000: ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート MW8000
PEGDMA 10,000: ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート MW10,000
PEGMEMA 950: ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート MW950
PEGMEMA 500: ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート MW500
PEGMEMA 300: ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート MW300
PEGMMA 2000: ポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート MW2000
PG: プロピレングリコール
DPG: ジプロピレングリコール
TPG: トリプロピレングリコール
TPGME: トリプロピレングリコールメチルエーテル
DEGEE; ジ(エチレングリコール)エチルエーテル
DPGBE: ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル
BC: ブチレンカーボネート
DMTDP: 3,3’-チオジプロピオン酸ジメチル
NaDi: ジアトリゾ酸ナトリウム水和物
PPGDA 2000: ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート MW2000
PPGDMA 2000: ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート MW2000
HQ ヒドロキノン
MEHQ メチルエーテルヒドロキノン
BHT ブチル化ヒドロキシトルエン
DMSO ジメチルスルホキシド
【0060】
(実施例1)
オルガノゲルの調製
オルガノゲルは、2つの溶液、すなわちC1およびC2を一緒に混合することにより調製した。最初に、適切な量の適当な成分を、溶液が一様になり、配合物の一部であるあらゆる固形物が完全に溶けるまで、一緒に混合することによりC1およびC2溶液を別々に調製した。次いで、C1をC2に加え(または、C2をC1に加え)、2つの成分を5~15秒絶えず掻き混ぜながら一緒に混合する。或いは、2つのバレルカートリッジ、バレル1およびバレル2にそれぞれC1およびC2を充填し、静的ミキサーを通して適当な容器に溶液を分配する間に溶液を一緒に混合した。最終の混合溶液を37℃の水浴に入れ、ゲル化が完了するまでモニターした。オルガノゲル組成物の形成の例示を図6に示す。
【0061】
【表1】

追加のオルガノゲルは、上に記載した方法を用いて調製される。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
【表10】
【0071】
【表11】

【表12】
【0072】
【表13】

【表14】
【0073】
【表15】

【表16】
【0074】
【表17】
【0075】
【表18】

【表19】
【0076】
【表20】

【表21】
【0077】
【表22】
【0078】
【表23】
【0079】
【表24】
【0080】
【表25】
【0081】
【表26】
【0082】
【表27】
【0083】
【表28】
【0084】
【表29】
【0085】
(実施例2)
オルガノゲルの特性決定
調製したオルガノゲルの圧縮弾性率を、単一カラム材料試験システム(Instronモデル番号3343)により、ASTM Standard D575-91 Standard Test Method for Rubber in Compression(参照により本明細書中に組み込まれる)を用いて測定した。
表1に、調製したオルガノゲルに対するゲル硬化時間および圧縮弾性率を要約する。
【0086】
【表30】
【0087】
(実施例3)
安定性試験
上で調製したオルガノゲルを促進条件下60℃において室温で18カ月に対応する等価な時間、個々のポリマー系成分(C1およびC2溶液)の貯蔵寿命安定性についてスクリーニングした。結果は、個々の成分溶液が安定であり、混ぜ合わせると意図した適用に適したオルガノゲルを形成したことを示していた。
組成物1のオルガノゲルを、腹部大動脈瘤(AAA)内に配置されたステントを取り囲んでいる、血管内動脈瘤修復システムの構成要素としてのエンドバッグ(Endologix)と共に試験した。エンドバッグを予め充填し、生理食塩水でフラッシュして空気を除去し、充填体積を決定した。フラッシュした後、ラチェット銃を用いて180mmHgの圧力で分配された2-バレルカートリッジを使用して組成物1からの二成分ポリマー系をエンドバッグ中に注入した。エンドバッグはその予め設定した形状を維持し、それによりオルガノゲルの安定性を例証した。
【0088】
本明細書に開示されている実施形態はあらゆる点で例示と考えられ、本発明を制限すると考えるべきではない。本発明はいかなる意味でも上に記載された実施形態に限定されない。これらの実施形態に、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変化を施すことができる。
例示として本明細書に記載されている実施形態は、本明細書に具体的に開示されていないいずれか1以上の要素、限定なしで適切に実施できる。したがって、例えば、用語「含む」、「包含する」、「含有する」等は制限なく拡張的に読まなければならない。さらに、本明細書で使用されている用語および表現は説明のための用語として使用されており、限定する意味はなく、かかる用語および表現の使用には示され記載されている特徴またはその部分と等価なものを排除する意図はなく、本技術の範囲内で様々な修正が可能であると認められる。加えて、語句「から本質的になる」とは、具体的に記述されている要素および本技術の基本的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素を含むことを理解されたい。語句「からなる」は特定されてないいずれの要素も除外する。
【0089】
本開示は本出願に記載されている特定の実施形態に限定されることがない。当業者には明らかなように、その思想および範囲から逸脱することなく多くの修正および変形をなすことができる。当業者には、上記の説明から、本明細書に列挙されているものに加えて、本開示の範囲内に入る機能的に等価な方法および組成物が明らかであろう。かかる修正および変形は添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図されている。本開示は、かかる特許請求の範囲に権利が与えられる最大限の範囲の等価なものを含めて、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定される。本開示は、当然変化することができる特定の方法、試薬、化合物 組成物または生物学的系に限定されないと理解されたい。また、本明細書で使用される術語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためのものであり、限定する意図はないものと理解されたい。
【0090】
当業者には理解されるように、ありとあらゆる目的で、特に書面による説明を提供する観点から、本明細書に開示されているすべての範囲はまた、ありとあらゆる可能な部分範囲ならびにその部分範囲の組合せも包含する。挙げられたいずれの範囲も、少なくとも等しい1/2、1/3、1/4、1/5、1/10、等に分解される同じ範囲を充分に記載し実施可能にすると容易に認めることができる。非限定例として、本明細書中で述べた各々の範囲は下部の1/3、中央の1/3および上部の1/3、等に容易に分解することができる。やはり当業者には理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「を超える」、「未満」などのような言葉はすべて、列挙されている数を含み、上に述べたように、後に部分範囲に分解することができる範囲に言及する。最後に、当業者には理解されるように、ある範囲は各個別のメンバーを含む。
【0091】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許出願、交付された特許、およびその他の文書は、参照により、各個々の刊行物、特許出願、交付された特許、またはその他の文書が、参照によりその全体が組み込まれると具体的かつ個別に指示されているかのように本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた文章に含まれる定義が本開示の定義と矛盾する場合はその程度において排除される。
【0092】
本明細書に開示されている実施形態はあらゆる点で例示と考えられ、本発明を制限するとは考えられない。本発明はいかなる意味でも上に記載された実施形態に限定されない。本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々な修正および変化を実施形態に加えることができる。特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入る様々な修正および変化は本発明の範囲内に入ることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-09-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含み、
第1の溶液が、1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、
第2の溶液が、重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
本明細書に開示されている実施形態はあらゆる点で例示と考えられ、本発明を制限するとは考えられない。本発明はいかなる意味でも上に記載された実施形態に限定されない。本発明の思想および範囲から逸脱することなく様々な修正および変化を実施形態に加えることができる。特許請求の範囲の等価の意味および範囲内に入る様々な修正および変化は本発明の範囲内に入ることが意図されている。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕第1の溶液を含む第1の部分および第2の溶液を含む第2の部分の2つの部分を含み、
第1の溶液が、1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、
第2の溶液が、重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、組成物。
〔2〕プレポリマーが、アクリレート、メタクリレートまたはビニル官能基から選択される少なくとも2つの官能基を有する化合物を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕プレポリマーが、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート(EBPADA)、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(PEG-T)、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(PTMPTA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、およびこれらのメタクリル変異体、アジピン酸ジビニル、1,4-ジブタンジオールジビニルエーテル、ジおよびトリエチレングリコールジビニルエーテル、アリルエーテル、マレイン酸ジアリル、トリメチルプロパンジアリルエーテル、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔2〕に記載の組成物。
〔4〕非水性溶媒が、アルコール、アルデヒド、アミド、カーボネート、エーテル、エステル、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル、炭化水素、ケトン、スルホキシド、および植物油からなる群から選択される脂肪族および芳香族溶媒を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔5〕非水性溶媒が、メタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ヒマシ油、アマニ油、ゴマ油、ダイズ油、オリーブ油、およびこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔4〕に記載の組成物。
〔6〕鎖延長剤が、アクリレート、メタクリレートまたはビニル官能基を有する単官能性または二官能性の化合物を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔7〕鎖延長剤が、ポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGMA)、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(PPGMA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(PPGDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、テトラエチレングリコールジアクリレート(TEGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMMA)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(PPGMMA)、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMEMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(PPGDMA)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔6〕に記載の組成物。
〔8〕重合開始剤が、過酸化物およびヒドロペルオキシドを含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔9〕重合開始剤が、過酸化ベンゾイル(BPO)、クメンヒドロペルオキシド(CHP)、過酸化ジクミル(CPO)、過酸化ラウリル、tert-アミルヒドロペルオキシド(t-AHP)、tert-ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、過酸化ジ-tert-ブチル(DTBP)、トリブチルヒドロペルオキシド(TBPH)、テトラ-メチルブチルヒドロペルオキシド(MBHP)、およびこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔8〕に記載の組成物。
〔10〕重合共開始剤が、トリエタノールアミン(TEA)、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHEPT)、4-(ジ-メチルアミノ)フェネチルアルコール(DMAPE)、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(EDMAB)、2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エタノール、N,N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)、ビス(ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔11〕第1および第2の溶液のいずれか一方または両方が共溶媒をさらに含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔12〕共溶媒が、ノナノール、ジメチルスルホキシド、ブチレンカーボネート、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルおよびトリプロピレングリコールブチルエーテル、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される、前記〔11〕に記載の組成物。
〔13〕1種以上の添加剤をさらに含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔14〕1種以上の添加剤が、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択される、前記〔13〕に記載の組成物。
〔15〕前記〔1〕に記載の組成物を含むオルガノゲル。
〔16〕組成物が、約1MPa~約18MPaの圧縮弾性率を示す、前記〔15〕に記載のオルガノゲル組成物。
〔17〕組成物が、約1分~約20分のゲル化時間を示す、前記〔15〕に記載のオルガノゲル組成物。
〔18〕オルガノゲルを形成する方法であって、
第1の溶液および第2の溶液を含む第2の部分を含む組成物をオルガノゲルの形成が意図される部位に送達することと、
第1の溶液を第2の溶液と接触させることと、
プレポリマーの重合を開始させてオルガノゲルを形成することと
を含み、
第1の溶液が、1種以上のプレポリマー、非水性溶媒、重合共開始剤または開始剤ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含み、
第2の溶液が、重合開始剤または共開始剤、非水性溶媒ならびに任意に1種以上の鎖延長剤および添加剤を含む、方法。
〔19〕1種以上の添加剤が、充填剤、造影剤、加工助剤、可塑剤、および粘度降下剤からなる群から選択される、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の組成物で充填された充填構造体を含む、動脈瘤を処置するためのシステム。
【外国語明細書】