(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182571
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】吸引デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20231219BHJP
A61B 5/15 20060101ALI20231219BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C12M1/26
A61B5/15
A61B10/02 110B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023137177
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2019521757の分割
【原出願日】2017-10-24
(31)【優先権主張番号】62/504,090
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/411,780
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
【住所又は居所原語表記】2 Whitney Avenue, New Haven, CT 06510, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エリオット ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク トムソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアナ シャビエルフェルシオ
(72)【発明者】
【氏名】ダイアン クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー ヘレーネ
(57)【要約】
【課題】本発明は、生検、吸引、幹細胞取得のための改善されたデバイス、およびそれを使用する方法を提供する。デバイスは、生検部位における圧力の変化を管理するために、吸引と同時注入とのバランスをとる。本発明は、脂肪組織吸引および骨髄吸引(BMA)を含む、任意の生検、吸引、または細胞採取処置に適合させることができる。
【解決手段】特に、本発明は、患者の疼痛を制限し、血液汚染を防止し、そしてBMA処置中の幹細胞の骨内(IO)薬理学的動員による幹細胞収量の改善、および脂肪からの幹細胞の薬理学的動員を用いた幹細胞収量の改善など、細胞動員を増大させる。細胞の薬理学的動員は、既存の方法よりも何倍も大きい生検からの細胞の採取を可能にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第1の細長部材と、
第2の細長部材であって、近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔と、該第2の細長部材の長さに沿って該内腔への少なくとも1つの側面開口部とを有する、該第2の細長部材を備え、
ここで該少なくとも1つの第1の細長部材は、該少なくとも1つの第1の細長部材の遠位先端部が該第2の細長部材の遠位先端開口部を通って延びるように、該第2の細長部材の内腔内に配置され、そしてここで該少なくとも1つの第1の部材の遠位先端部が、該第2の細長部材の遠位先端開口部と少なくとも1つの側面開口部との間で該第2の細長部材と密封係合を形成する、
吸引デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の細長部材が、前記第2の細長部材の内腔内に配置されると同時に、流路が該第2の細長部材の少なくとも1つの側面開口部から近位開口部まで存続するように寸法決めされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔を有する第3の細長部材をさらに備え、該第3の細長部材が前記少なくとも1つの第1の細長部材の内腔内に嵌合するように寸法決めされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記密封係合が、ガスケット、スペーサ、またはねじ山によって形成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1の細長部材の遠位先端開口部が、前記第2の細長部材の少なくとも1つの側面開口部から約1mmから1000mmの間の距離で配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの側面開口部のそれぞれが、5から25mmの長さにわたって前記第2の細長部材に沿って延びる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の細長部材が、単一の近位開口部を共有する複数である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の細長部材が、単一の遠位先端開口部を共有する複数である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の細長部材の近位開口部と前記少なくとも1つの第2の細長部材の近位開口部が、溶液リザーバにそれぞれ流体接続可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記溶液リザーバが、細胞動員組成物、疼痛軽減組成物、およびそれらの組み合わせから選択される組成物を含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記細胞動員組成物が、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記疼痛軽減組成物が、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第1の細長部材と、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第2の細長部材とを有する吸引デバイスを提供する工程、
該少なくとも1つの第1の細長部材の遠位開口部と該少なくとも1つの第2の細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように該吸引デバイスを組織内に挿入する工程、
該少なくとも1つの第1の細長部材を通して該生検部位の第1の領域に少なくとも1つの溶液を投与する工程、および
該生検部位の該第1の領域に隣接する第2の領域から該少なくとも1つの第2の細長部材を通して少なくとも1つの吸引物を抜き取る工程
を含む、組織吸引の方法。
【請求項14】
前記挿入工程が、前記少なくとも1つの第1の細長部材の内腔を通して少なくとも1つの疼痛軽減溶液を投与することによって補われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組織が骨髄組織である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記組織が脂肪組織である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの溶液が、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される疼痛軽減剤を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの溶液が、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む、細胞動員組成物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の領域と前記第2の領域が1mmから1000mmの間の距離で分離されている、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記投与工程および前記抜き取り工程が同時に行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記投与工程が、CXCR4阻害剤、VLA-4またはメタロプロテイナーゼまたはISP-1アゴニスト、神経幹細胞制御を調節する化合物、および細胞接着を損なう分子の連続投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記投与工程が最初に行われ、そして前記抜き取り工程が30秒~120分の間の遅延の後に行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記吸引物が、造血幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、間質細胞、腺細胞、神経細胞、脂肪細胞、生殖細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の細胞を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたは複数の細胞の10%未満が血液細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の領域および前記第2の領域における平均圧力変化が15から50mmHgの間である、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記第1または第2の細長部材のうちの少なくとも1つの内腔内に組織サンプルを収集する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの細長部材を有する吸引デバイスを提供する工程、
該少なくとも1つの細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように該吸引デバイスを組織内に挿入する工程、
該少なくとも1つの細長部材を通して該生検部位に少なくとも1つの細胞動員組成物を投与する工程、および
該少なくとも1つの細長部材を通して少なくとも1つの吸引物を抜き取る工程
を含む、組織吸引の方法。
【請求項28】
前記挿入工程が、前記少なくとも1つの細長部材を通して少なくとも1つの疼痛軽減溶液を投与することによって補われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記組織が骨髄組織である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記組織が脂肪組織である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの細胞動員組成物が、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの細胞動員組成物が、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される疼痛軽減剤をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記投与工程が、CXCR4阻害剤、VLA-4またはメタロプロテイナーゼまたはISP-1アゴニスト、神経幹細胞制御を調節する化合物、および細胞接着を損なう分子の連続投与を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記投与工程が最初に行われ、そして前記抜き取り工程が30秒~120分の間の遅延の後に行われる、請求項27記載の方法。
【請求項35】
前記吸引物が、造血幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、間質細胞、腺細胞、神経細胞、脂肪細胞、生殖細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の細胞を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記1つまたは複数の細胞の10%未満が血液細胞である、請求項35に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年10月24日に出願された米国仮出願No.62/411,780、および2017年5月10日に出願された米国仮出願No.62/504,090の優先権を主張し、当該出願の内容はそれらの全体が、本願において参照により各々援用される。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は多数の経路を介して採取される。この中で最も一般的には、脂肪細胞および骨髄からの取得である。骨髄穿刺(BMA)は、骨髄移植、血液がんの診断、および再生医療の目的で行われる。米国では、血液癌診断のために年間約700,000のBMA処置が行われ、そして幹細胞療法および整形外科処置のために推定500,000~1,000,000のBMA処置が毎年行われている。癌の分野では、BMAを用いて血液悪性腫瘍の診断、監視および研究を行っているが、サンプリングの悪さから診断において最大27%のサンプルを制限している。BMA由来の十分な数の癌細胞が、インビトロコロニーおよびヒト化マウスの「アバター」モデルを確立し、患者特異的なインビボ化学療法試験を可能にするために必要とされる。しかしながら、異種移植のためにはBMA由来の癌細胞が最低3×107個必要であり、いくつかの疾患においてはBMAの半分しかこの閾値に達しない(Rongvaux Aら、Nature biotechnology 32.4(2014):364-372)。
【0003】
さまざまな種類の幹細胞を骨髄-造血幹細胞(HSC)、上皮幹細胞(ESC)、間葉系幹細胞(MSC)などから採取できる。本稿執筆時点で再生医療分野は、FDAに登録されている何百もの臨床試験で急速に進歩している。この分野は、無数の他の新規な整形外科用途(Lodi Dら、Journal of Experimental & Clinical Cancer Research 30.1 (2011): 9; Cavallo Cら、Journal of biological regulators and homeostatic agents 30.2 (2016): 409; Chahla J ら、Orthopaedic journal of sports medicine 4.1 (2016): 1-8; Cruz-Pardos Aら、Hip international: the journal of clinical and experimental research on hip pathology and therapy 26 (2016): 432-7; Gianakos Aら、Journal of orthopaedic trauma 30.1 (2016): 1-9; Hernigou Pら、International Orthopaedics 41.1 (2017): 127-132; Holton Jら、Orthopedic reviews 8.3 (2016): 6659; Khafagy WWら、Colorectal Disease 19.1 (2017):O66-O74; Kim SJら、Cell Transplantation (2017); Lanham NSら、Foot & Ankle Specialist (2016): 1938640016679697; Prologo JDら、 Clinical radiology 71 (2016): 307-11)の中で、3Dプリントされた臓器および関節表面、骨再生(Zigdon-Giladi Hら、World journal of stem cell 7.3(2015):630)、椎間板再生(Vadala Gら、World journal of stem cells 8.5 (2016): 185; Vadala Gら、Journal of biological regulators and homeostatic agents 30.4 Suppl 1 (2016): 173)を患者に提供することが期待されている。幹細胞は、損傷/変性の部位に「入り込み」、そしてそれらの抗炎症性のために、自己免疫疾患を治療することができる(Ullah Iら、Bioscience reports 35.2(2015):e00191)。幹細胞の使用に関して自己免疫疾患に関するいくつかの進行中の臨床試験がある(Ullah Iら、Bioscience reports 35.2(2015):e00191)。例えば、ある用途は脊椎固定術を含み、そこでは骨髄から吸引された幹細胞が合成骨移植片に加えられ、新しい骨癒合椎体を一緒に迅速に形成する(Clough BHら、The Spine Journal 17.3(2017):418-430)。
【0004】
現在のBMA手順における一般的な問題としては、所望の細胞型の数が少ないこと、血液希釈、および疼痛が挙げられる。骨は大きな静脈空間であり、静脈血が柔組織に付随する幹細胞(parenchyma-attached stem cells)を継続的に浸している。シリンジ吸引によって作られる真空は、シリンジから骨、末梢血への圧力勾配を作り出す。血液は粘性が低いため、優先的に骨髄に流れる(Gurkan UA ら、Annals of biedicalical engineering 36.12(2008):1978-1991)。多数の研究が、1~2 mLの骨髄しか単一の位置から確実に得られず、単一の位置から吸引される容量が大きいほど、収率が低いことを実証している(Batinic Dら、Bone marrow transplantation 6.2 (1990): 103-107; Muschler GFら、J Bone Joint Surg Am 79.11 (1997): 1699-1709; Bacigalupo Aら、Bone marrow transplantation 9.6 (1992): 467-470; Helgestad Jら、Pediatric blood & cancer 57.2 (2011): 224-226; Li Jら、Chinese Journal of Cancer Research 23.1 (2011): 43-48; Wang TFら、Biology of Blood and Marrow Transplantation 17.3 (2011): 351-355; Loken MRら、Cytometry Part B: Clinical Cytometry 76.1 (2009): 27-36; Fennema EMら、Acta orthopaedica 80.5 (2009): 618-621; Riley RSら、Journal of clinical laboratory analysis 18.2 (2004): 70-90)。放射性標識赤血球を用いた他の実験は、幹細胞が血液体積(blood fluid volume)内で吸引されることを示唆している(Holdrinet RSGら、Experimental hematology 8(1980):103-7)。要約すると、現在行われている骨髄吸引では、少数の間葉系幹細胞、1×105個の細胞あたり約1~10個の細胞、または全骨髄有核細胞の0.0001%~0.01%しか得られない。
【0005】
癌領域における血液希釈は、たとえ少量の典型的な癌評価(7ml)であっても、診断を制限する非骨片(aspicular)血液希釈サンプルを生じる。三次医療機関での最近の研究では、骨髄穿刺および生検(BMAB)の遡及的検討において、高度な病理学的および組織学的手技によって、補正されていない吸引の割合を定量化した。350人の患者が少なくとも1回の不十分な吸引と比較のために少なくとも1回のその後の吸引を受けた。これら350人の患者の1250回の吸引のうち、470回(27%)が限定され、これらの58%がコアフローサイトメトリーまたは細胞遺伝学によって補正されていないという点で臨床的に有意であると思われた。7.7%が再生検を必要とし、4%が見逃された重要な診断があった。骨髄異形成症候群(MDS)の患者のドネーション登録の追加的遡及的検討が行われて、細胞数を疾患サブタイプ分類によって比較した。異種移植には3×107個の細胞の大まかなカットオフが必要とされる。これらの処置のうちの52%しか移植に十分な細胞をもたらさなかった。
【0006】
整形外科分野において血液希釈は処置の成功に影響を与える。処置はBMA中に得られる幹細胞の数に大きく左右されるからである。各患者は異なる幹細胞プロファイルを有し、高齢および病弱な患者は一般に骨髄および他の組織において利用可能な幹細胞が少ない。多くの場合1つの部位から最大60mLが採取され、大量の末梢血になる。骨髄から細胞を採取することから生じる困難のために、脂肪から幹細胞を得ることに関心がもたれている。脂肪組織は、低侵襲的処置によって十分な量で容易に入手可能であるため、幹細胞療法のためのMSCの魅力的な供給源である。さらに、脂肪組織は骨髄よりも多くのMSCを含む(脂肪1グラム当たり約100,000個のMSC)。しかしながら、このサンプリング方法は依然としてデバイスで直接吸引することができる脂肪の量によって制限される。
【0007】
BMAは、最大87%の患者における中等度から重度の疼痛の原因である(Vanhelleputte Pら、Journal of pain and symptom management 26.3 (2003): 860-866; Mainwaring CJら、International Journal of Laboratory Hematology 18.4 (1996): 285-288; Vigneault Lら、Canadian Journal of Anesthesia 58.1 (2011): 22-37)。疼痛は血液癌試験における妨げであり、骨髄登録減少の重要な原因であるので健康な個人による骨髄提供の制限要因である(Switzer GEら、Bone marrow transplantation 24.3 (1999); Johansen KAら、Transfusion Medicine 18.4 (2008): 250-259; Hyde MKら、Psychology, health & medicine 19.1 (2014): 115-125)。それはまた、疼痛を治療するための鎮静手順を提供するために病院にかかる費用を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それゆえ、脂肪と骨髄の両方からの幹細胞の収量を増加させること、および骨髄吸引の痛みを減少させることが当該分野において必要とされている。本発明はこの必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様で、本発明は、近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第1の細長部材と、第2の細長部材であって、近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔と、該第2の細長部材の長さに沿って該内腔への少なくとも1つの側面開口部とを有する、該第2の細長部材を備え、ここで該少なくとも1つの第1の細長部材は、該少なくとも1つの第1の細長部材の遠位先端部が該第2の細長部材の遠位先端開口部を通って延びるように、該第2の細長部材の内腔内に配置され、そしてここで該少なくとも1つの第1の部材の遠位先端部が、該第2の細長部材の遠位先端開口部と少なくとも1つの側面開口部との間で該第2の細長部材と密封係合を形成する、吸引デバイスに関する。
【0010】
一実施形態で、上記少なくとも1つの第1の細長部材は、上記第2の細長部材の内腔内に配置されると同時に、流路が該第2の細長部材の上記少なくとも1つの側面開口部から上記近位開口部まで存続するように寸法決めされる。
【0011】
一実施形態で、上記デバイスは、近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔を有する第3の細長部材をさらに備え、該第3の細長部材が上記少なくとも1つの第1の細長部材の内腔内に嵌合するように寸法決めされる。
【0012】
一実施形態で、上記密封係合は、ガスケット、スペーサ、またはねじ山によって形成される。一実施形態で、上記少なくとも1つの第1の細長部材の遠位先端開口部は、上記第2の細長部材の少なくとも1つの側面開口部から約1mmから1000mmの間の距離で配置される。一実施形態で、上記少なくとも1つの側面開口部のそれぞれは、5から25mmの長さにわたって上記第2の細長部材に沿って延びる。
【0013】
一実施形態で、上記少なくとも1つの第1の細長部材は、単一の近位開口部を共有する複数である。一実施形態で、上記少なくとも1つの第1の細長部材は、単一の遠位先端開口部を共有する複数である。一実施形態で、上記少なくとも1つの第1の細長部材の近位開口部と上記少なくとも1つの第2の細長部材の近位開口部は、溶液リザーバにそれぞれ流体接続可能である。一実施形態で、上記溶液リザーバは、細胞動員組成物、疼痛軽減組成物、およびそれらの組み合わせから選択される組成物を含む。
【0014】
一実施形態で、上記細胞動員組成物は、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト(firategast)、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤(multiple chemotherapies)、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む。
【0015】
一実施形態で、上記疼痛軽減組成物は、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0016】
別の態様では、本発明は、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第1の細長部材と、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第2の細長部材とを有する吸引デバイスを提供する工程、該少なくとも1つの第1の細長部材の遠位開口部と該少なくとも1つの第2の細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように該吸引デバイスを組織内に挿入する工程、該少なくとも1つの第1の細長部材を通して該生検部位の第1の領域に少なくとも1つの溶液を投与する工程、および該生検部位の該第1の領域に隣接する第2の領域から該少なくとも1つの第2の細長部材を通して少なくとも1つの吸引物を抜き取る工程を含む、組織吸引の方法に関する。
【0017】
一実施形態で、上記挿入工程は、上記少なくとも1つの第1の細長部材の内腔を通して少なくとも1つの疼痛軽減溶液を投与することによって補われる。一実施形態で、上記組織は骨髄組織である。一実施形態で、上記組織は脂肪組織である。
【0018】
一実施形態で、上記少なくとも1つの溶液は、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される疼痛軽減剤を含む。
【0019】
一実施形態で、上記少なくとも1つの溶液は、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む、細胞動員組成物を含む。
【0020】
一実施形態で、上記第1の領域と上記第2の領域は1mmから1000mmの間の距離で分離されている。一実施形態で、上記投与工程および上記抜き取り工程は同時に行われる。一実施形態で、上記投与工程は、CXCR4阻害剤、VLA-4またはメタロプロテイナーゼまたはISP-1アゴニスト、神経幹細胞制御を調節する化合物、および細胞接着を損なう分子の連続投与を含む。一実施形態で、上記投与工程は最初に行われ、そして上記抜き取り工程が30秒~120分の間の遅延の後に行われる。
【0021】
一実施形態で、上記吸引物は、造血幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、間質細胞、腺細胞、神経細胞、脂肪細胞、生殖細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の細胞を含む。一実施形態で、上記1つまたは複数の細胞の10%未満は血液細胞である。
【0022】
一実施形態で、上記第1の領域および上記第2の領域における平均圧力変化は15から50mmHgの間である。
【0023】
一実施形態で、上記方法は、上記第1または第2の細長部材のうちの少なくとも1つの内腔内に組織サンプルを収集する工程をさらに含む。
【0024】
別の態様で、本発明は、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの細長部材を有する吸引デバイスを提供する工程、該少なくとも1つの細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように該吸引デバイスを組織内に挿入する工程、該少なくとも1つの細長部材を通して該生検部位に少なくとも1つの細胞動員組成物を投与する工程、および該少なくとも1つの細長部材を通して少なくとも1つの吸引物を抜き取る工程を含む、組織吸引の方法に関する。
【0025】
一実施形態で、上記挿入工程は、上記少なくとも1つの細長部材を通して少なくとも1つの疼痛軽減溶液を投与することによって補われる。一実施形態で、上記組織は骨髄組織である。一実施形態で、上記組織は脂肪組織である。
【0026】
一実施形態で、上記少なくとも1つの細胞動員組成物は、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む。
【0027】
一実施形態で、上記少なくとも1つの細胞動員組成物は、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される疼痛軽減剤をさらに含む。
【0028】
一実施形態で、上記投与工程は、CXCR4阻害剤、VLA-4またはメタロプロテイナーゼまたはISP-1アゴニスト、神経幹細胞制御を調節する化合物、および細胞接着を損なう分子の連続投与を含む。一実施形態で、上記投与工程は最初に行われ、そして上記抜き取り工程が30秒~120分の間の遅延の後に行われる。
【0029】
一実施形態で、上記吸引物は、造血幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、間質細胞、腺細胞、神経細胞、脂肪細胞、生殖細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の細胞を含む。一実施形態で、上記1つまたは複数の細胞の10%未満は血液細胞である。
【0030】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解される。しかしながら、本発明は、図面に示された実施形態の正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、カニューレ、トロカール、およびスタイレットを含む例示的な吸引デバイスの個々の構成要素を示す。
【
図2】
図2は、標的吸引部位内に駆動可能である構成の例示的な吸引デバイスを示す。
【
図3】
図3は、例示的な吸引デバイスのハンドル部分の断面図を示す。
【
図4】
図4は、例示的な吸引デバイスのハンドル部分(左)および遠位端(右)の断面図を示す。
【
図5】
図5は、流体接続を維持しながらアクセスポートから独立して回転可能である内腔を有する例示的な吸引デバイスの図を示す。
【
図6】
図6は、例えば穿孔構成の、例示的な吸引デバイスのハンドル部分に嵌合するシリンジを示す。
【
図7】
図7Aと
図7Bは、例示的な吸引デバイスを用いた穿孔中の注入工程を示す。
図7Aでは、吸引デバイスは吸引部位の近くに配置されて示されており、嵌合シリンジは注入溶液で調製される。
図7Bでは、溶液の注入は吸引デバイスの遠位先端で起こる。
【
図8】
図8は、例えば吸引構成の、例示的な吸引デバイスのハンドル部分に嵌合するシリンジを示す。
【
図9】
図9は、吸引および注入を示す本発明の例示的なデバイスの図である。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bは、例示的な吸引デバイスを用いた吸引工程を示す。
図10Aでは、骨髄内に挿入された吸引デバイスが示されており、そして嵌合シリンジが吸引のために準備されている。
図10Bでは、単一の側面開口部を使用して方向性(directional)吸引が達成される。
【
図11】
図11は、同時吸引および注入構成の場合のような、例示的な吸引デバイスのハンドル部分に嵌合する2つのシリンジを示す。
【
図12】
図12Aおよび
図12Bは、例示的な吸引デバイスを用いた生検コアの抜き取りを示す。
図12Aは、生検コアを除去するカニューレ部分を示す。
図12Bは、雌ねじ付き先端部を介した生検コアの保持を示す拡大図である。
【
図14】
図14は、例示的な吸引デバイスのカニューレを示す。
【
図16】
図16は、例示的な吸引デバイスのカニューレに適合するマルチ内腔スタイレットを示す。
【
図17】
図17は、例示的な吸引デバイスのカニューレと適合する単一の内腔スタイレットを示す。
【
図18】
図18は、例示的な吸引デバイスのカニューレと適合する非対称の内腔スタイレットを示す。
【
図19】
図19は、例示的な吸引デバイスのカニューレと適合する方向性内腔スタイレットを示す。
【
図21】
図21は、対照(左)対本発明の例示的な吸引デバイス(右)における骨髄の真空圧を示す棒グラフである。本発明の例示的な吸引デバイスは、圧力を97%減少させた。
【
図22】
図22は、10ccのシリンジと標準的な端部孔の針を使って行われた3回の連続した対照吸引の間の圧力測定を示す。600mmHgの最小ピークに気づく(完全な真空は-760mmHgおよびガスが自発的に溶液から出て効果を損なう場合、血液がキャビテーションを起こす陰圧の近くである)。
【
図23】
図23は、本発明の例示的な吸引デバイスを用いた実験運転を示す。異なるスケールに留意する。骨に伝達される心臓の拍動を表すベースラインに小さなピークと谷がある骨の正常な灌流陽圧(~10mmHg)の視覚化を可能にする。これは、均等化シリンジ(equalization syringe)と組み合わされた例示的な吸引デバイスによる単一の実験的吸引である。吸引時の圧力のほぼ完全な均等化に気づく。
【
図24】
図24は、骨髄の微小解剖学的構造を示す。右図は骨髄の血管キャストの電子顕微鏡写真であり、管状構造は小さな血液で満たされた洞様毛細血管と細静脈である。青い星は、幹細胞が柔組織に固定されている空間である。針が骨の中に配置されると、針はこれらの血管空間に侵入する。吸引力を加えると、固定されている幹細胞ではなく、血液が、これらのチューブから針に流れ込む。これが血液汚染の理由であり、そしてなぜ現在の骨髄吸引が真の幹細胞採取ではなく血液のみを引くかの理由である。
【
図25】
図25は、薬物の骨内投与による増強を用いた幹細胞動員を示す1つの分子経路の図を示し、それは作用部位で直接、別の方法で他の投与経路で可能であろうよりはるかに高い濃度の初期ピーク濃度を達成する。薬物投与は、細胞をそれらのニッチから出てこれらの血管空間に入れ、細胞がより多くの数で採取されることを可能にする。
【
図26】
図26は、例示的な吸引デバイスを骨に挿入し、放射線不透過性の造影剤を注入口に注入したブタモデルのCTスキャンの3D体積の写真を示し、骨の大部分にわたって薬剤が拡散していることを示す。
【
図27】
図27Aおよび
図27Bは、対照方法を用いて、本発明の吸引デバイスを用いて、薬理学的動員剤を用いた本発明の吸引デバイスを用いて、および薬理学的動員剤を用いた対照方法を用いて、吸引性能を比較する実験の結果を示す。
図27Aは、1mLの吸引物当たりのコロニー形成単位(CFU)を示し、これは吸引物の細胞数の違いを考慮して計算されている。幹細胞は複製と分化によってコロニーを形成するが、非幹細胞はそうではない。したがって、コロニーの数は幹細胞取得の認められた尺度である。細胞数を制御する場合、圧力解放機構および薬理学的動員機構両方が、対照よりも白血球当たりのコロニー数がはるかに多く、血液汚染の減少と一致する。幹細胞動員剤が制御デバイスを介して投与され、吸引が薬物投与と同じ経路を通して行われた場合、細胞数は対照でさえよりも有意に少なく、薬物送達および採取のためのメカニズムにおけるデバイスの重要性を示している。
図27Bは、細胞数について正規化された
図27Aの結果を示す。総コロニー数を白血球数を制御するのではなく計数すると、圧力解放機構および薬物動員法の重要性は明らかであり、なぜならこれらの方法ははるかに高い総白血球計数率(total white count yield)を得るからであり、デバイス方法を単独で用いて、そして薬理学的動員方法と組み合わせると、幹細胞の収率は有意に高いことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、生検、吸引、幹細胞取得のための改善されたデバイス、およびそれを使用する方法を提供する。このデバイスは、生検部位における圧力の変化を管理するために、吸引と同時注入とのバランスをとる。本発明は、脂肪組織吸引および骨髄吸引(BMA)を含む、任意の生検、吸引、または細胞採取処置に適合させることができる。特に、本発明は、患者の疼痛を制限し、血液汚染を防止し、そしてBMA処置中の幹細胞の骨内(IO)薬理学的動員による幹細胞収量の改善、および脂肪からの幹細胞の薬理学的動員を用いた幹細胞収量の改善など、細胞動員を増加させる。細胞の薬理学的動員は、既存の方法よりも何倍も大きい生検からの細胞の採取を可能にする。
【0033】
定義
本発明の図および説明は、本発明の明確な理解に関連する要素を説明するために簡略化されているが、明確さのために当該技術分野において典型的に見られる他の多くの要素を排除している。当業者は、他の要素および/または工程が本発明を実施するのに望ましいおよび/または必要であることを認識し得る。しかしながら、そのような要素および工程は当技術分野において周知であるから、またそれらは本発明のよりよい理解を容易にしないので、そのような要素および工程の説明は本明細書では提供されない。本明細書の開示は、当業者に知られているそのような要素および方法に対するそのようなすべての変形および修正を対象とする。
【0034】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および材料が記載される。
【0035】
本明細書で使用されているように、以下の用語のそれぞれは、この節でそれに関連する意味を有する。
【0036】
冠詞「a」および「an」は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1または複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの要素」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0037】
本明細書で使用される「約」は、量、持続時間などの測定可能な値を指すとき、指定された値から±20%、±10%、±5%、±1%、±0.1%の変動を包含することを意味し、なぜならそのような変動が適当であるからである。
【0038】
本明細書で使用される「麻酔薬」は、被検体の身体のある領域において可逆的な感覚喪失を生じる薬剤を指す。麻酔薬の例はリドカインである。
【0039】
本明細書で使用される「非骨片サンプル(aspicular sample)」は、「骨片(spicules)」を含まない骨髄の液体サンプルを指す。骨片は、分析に使用される幹細胞を含む骨柔組織の粒子であり;骨片評価なし(without a spicule evaluation)で非常に制限され、幹細胞収率は低い。
【0040】
本明細書で使用される「骨アクセス針」は、骨の硬質皮質を通して骨髄腔空間にアクセスするために使用されるデバイスを指す。
【0041】
本明細書で使用される「遠位」は、取り付け点または原点から離れたデバイスの下端を指す。開示された実施形態では、遠位とは、デバイスを患者に導入するときに医療専門家から最も離れた端部を指す。本明細書で使用される「近位」は、身体の中心または取り付け点のより近くに位置するデバイスの最も近い端部を指す。開示された実施形態では、近位とは、デバイスを患者に配置するときに医療専門家に最も近い端部を指す。
【0042】
本明細書で使用される「ドライタップ」は、骨髄吸引の間に液体骨髄が得られない場合を指す。これは、針の位置ずれ、または通常では骨内の静脈血が線維性組織または腫瘍細胞に置き換わる状況で発生する。
本明細書で使用される「骨内注入」は、治療薬を骨の髄に直接注射するプロセスを指す。
【0043】
本明細書で使用される「髄内空間」は、骨の骨髄腔内の空間を指す。
本明細書で使用される「内腔」は、管状構造内の管、導管または空洞を指す。
本明細書で使用される「軸方向に一体化された」は、構造体の長手方向軸に沿って一体化されている状態を指す。
【0044】
本明細書で使用される「チャネル」は、いずれかの長手方向への輸送に使用される導管、ダクトまたは任意の種類の長手方向中空経路を指す。例えば、チャネルは、シリンジから標的解剖学的部位へのチャネルに沿って麻酔薬を送達するために使用され得るか、またはチャネルは、解剖学的部位または病変からシリンジ内へのチャネルに沿って組織または細胞サンプルを輸送するために使用され得る。
【0045】
本明細書で使用される「注入」は、標的中または標的上への要素、例えば溶液のゆっくりとした導入のプロセスを指す。
本明細書で使用される「内部解剖学的空間」は、外部皮膚層の下に存在する任意の領域および/または部位を指す。内部の解剖学的空間は、空洞および/または細胞構造を含み得る。
【0046】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式(a range format)で提示され得る。範囲形式での説明は単に便宜上および簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、その範囲内の個々の数値だけでなくすべての可能な部分範囲を具体的に開示していると見なされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような具体的に開示されている部分的範囲、およびその範囲内の個々の数、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、6、およびそれらの間の任意の全体的および部分的増分と考えられるべきである。これは範囲の幅に関係なく適用される。
【0047】
吸引デバイス
本発明は、癌診断、骨髄採取、再生医療または科学目的のための幹細胞採取、骨内注入、骨梁採取、骨生検などにおける骨髄吸引に適合させることができる吸引デバイスを含む。再生医療の傘下では、本発明のデバイスは整形外科用および脊椎固定デバイスにも使用することができる。本発明のデバイスは、別々に使用することも、整形外科用または脊椎固定システム内に合体させることもできる。例えば、このデバイスは、脊椎固定術時に椎骨から骨髄を得るために椎弓根スクリューを配置するシステムに組み込むことができる。このデバイスは、患者の痛みを軽減し、処置工程(procedural steps)を強化し、骨髄および幹細胞のサンプル収量を増加させ、末梢血を排除し(血液希釈)、そしてコア生検中の吸引アーチファクト(aspiration artifact)を排除する。このデバイスは、これらの処置の間骨内の圧力を調整し、収量を増加させ、痛みを軽減し、これは能動的機構(骨への注入)または受動的機構(骨髄を採取するシリンジなどのデバイスからの陰圧/吸引が第2のチャネルを介して流体を引き、吸引からの陰圧を減らすかまたは減圧する)であり得る。独自の設計により、癌分析用の「ドライタップ」の設定で骨粒子を採取することもできる。大きな側部孔の設計は、「非骨片サンプル」率を減少させることができる。
【0048】
図1を参照すると、例示的な吸引デバイス100が示されている。デバイス100は、カニューレ110、トロカール120、およびスタイレット130を含む。いくつかの実施形態で、スタイレット130はトロカール120内に嵌合することができ、トロカール120はカニューレ110内に嵌合することができ、スタイレット130、トロカール120、およびカニューレ110は同心であってもよい。他の実施形態で、スタイレット130、トロカール120、およびカニューレ110は互いに隣接して配置されてもよい。例えば、いくつかの実施形態で、スタイレット130、トロカール120、またはカニューレ110は、並べて接着または溶接されてもよい。デバイス100はまた、スタイレット130、トロカール120、またはカニューレ110を互いに隣接して解放可能に保持するための1つまたは複数のブラケットまたはスリップフィッティングを含み得る。他の実施形態で、スタイレット130、トロカール120、またはカニューレ110は、別々の構成要素として独立して使用され得る。
【0049】
カニューレ110は、全体に延びるカニューレ内腔119を有する細長中空管である。カニューレ110は、近位ハンドル112、遠位開口端部114、および遠位開口端部114付近の少なくとも1つの側面開口部116を備える。側面開口部116は、1mmから1000mmの間など、遠位開口端部114から任意の適切な距離に配置することができる。大きな単一の側面開口部116は、吸引が行われる場所の回転制御を可能にし、従来の端部孔デバイスよりも最大48倍またはそれ以上のはるかに大きい、単一の孔からのサンプリング面積を可能にする。いくつかの実施形態で、側面開口部116は、脂肪のみを含む脂肪骨髄ではなく、幹細胞を含む造血骨髄の島を横切る可能性を高めるために細長い形状を有する。側面開口部116は、5~25mmの間など、任意の適切な長さを有することができる。いくつかの実施形態で、カニューレ110は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の側面開口部を備える。遠位開口端部114は、1つまたは複数の切削歯またはフルートを含み得る。カニューレ110は任意の適切な寸法を有し得る。例えば、カニューレ110は、2~10インチの長さおよび8~19ゲージの管サイズのような、当該分野で一般的に使用される骨髄穿刺針に匹敵する長さおよび管サイズを有し得る。いくつかの実施形態で、カニューレ110は、挿入の深さを示すためにその外側に沿って間隔を置いて配置された印を含み得る。
【0050】
トロカール120は、全体にわたって延びる内腔129を有する細長中空管である。トロカール120は、近位グリップ122、遠位テーパ状端部124、および遠位テーパ状端部124の近くに配置されたねじ領域126を備える。トロカール120は、カニューレ内腔119内に嵌合するように寸法決めされている。好ましくは、トロカール120の外径は、本明細書の他の箇所で説明される目的のために、流体の通過を可能にするようカニューレ内腔119の内径よりも小さい。
図4に示すように、ねじ領域126をカニューレ内腔119の遠位端付近のねじ領域に係合させることができる。
【0051】
スタイレット130は、全体にわたって延びるスタイレット内腔138を有する細長中空管である。スタイレット130は、近位ハンドル132、および遠位開口端部134を備える。スタイレット130は、トロカール120の内腔129内に嵌合するよう寸法決めされる。特定の実施形態で、スタイレット130とトロカール120との間に最小限のスペースしかないように、スタイレット130はトロカール120の内腔129内にぴったり収まる。
【0052】
ここで
図2、
図3、および
図4を参照すると、組み立てデバイス100の近位および遠位構造が示されている。近位ハンドル112、近位グリップ122、および近位ハンドル132は互いに嵌合して単一のより大きなハンドルを形成する。トロカール120の遠位テーパ状端部124は、カニューレ110の遠位開口端部114を越えて延びるように配置することができる。スタイレット130の遠位開口端部134は、トロカール120の遠位テーパ状端部124を越えて延びるように配置され得る。それによって、組み合わされた遠位端は、骨への穿孔に適した穿刺点を形成する。
【0053】
図3は、近位ハンドル112、近位グリップ122、および近位ハンドル132の断面分解図を示す。これは、カニューレ110の中心にある、近位開放端部128(トロカール内腔129によってその反対側の遠位テーパ状端部124に接続している)に入れ子にされる針を受け入れる近位開放端部136(スタイレット内腔138によってその反対側の遠位開口端部134に接続している)がある3軸アセンブリを表す。断面図は、トロカール120内の近位開口端部128およびスタイレット130内の近位開口端部136を表す。断面図はまた、カニューレ110の近位開口端部117から側方に延びる近位側部内腔118を表す。近位側部内腔118は、カニューレ内腔119にアクセスする手段を提供する。
【0054】
図4には、組み立てデバイス100の近位および遠位構造の断面図が示されている。注目すべきことに、組み立てられた近位構造において、近位グリップ122は、カニューレ内腔119がその遠位端から近位側部内腔118を通って流体的に延びるよう、近位開口端部117と気密シールを形成する。組み立てられた遠位構造において、カニューレ110とトロカール120との間のねじ領域126におけるねじ係合が見える。カニューレ内腔119の内径とトロカール120の外径との間の隙間も明らかであり、この隙間によって、少なくとも1つの側面開口部116を通る流体の移動が可能になる。
【0055】
近位側部内腔118は、近位ハンドル112に埋め込まれてハンドル132によってブロックされるように
図4に示されているが、当業者は、近位側部内腔118の任意の実施が企図されることを理解するであろう。例えば、近位側部内腔118は、近位ハンドル132を通って延びることができ、近位ハンドル132上の追加の開口部によってアクセス可能であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態で、デバイス100の内腔にアクセスするための近位手段は、デバイス100の近位ハンドルが内腔とは無関係に操作または回転され得るように配置される。第1の例では、いくつかの実施形態で、近位側部内腔118は、近位ハンドル112、近位グリップ122、および近位ハンドル132を近位側部内腔118から独立して回転させることができるよう、別個に回転可能な構造として、近位ハンドル112の側部または下からのカニューレ110から延びてもよい(図示せず)。
【0057】
図5に示す第2の例では、吸引デバイス140は、カニューレ内腔119およびトロカール内腔129から独立して回転可能な、カニューレ内腔119およびトロカール内腔129の両方へのアクセスポイントを提供する。吸引デバイスは、流体移送ドラム144に接続された近位ハンドル142を備える。流体移送ドラム144は、直径および垂直方向に整列した長手方向軸を有する実質的に円筒形の形状を有し、この円筒形の形状は近位部分および遠位部分を有する。流体移送ドラム144は、その遠位端に中央に配置されたポケットを備え、このポケットは、流体移送ドラム144の遠位端内に深く延びている。流体移送ドラム144は、近位部分の表面に配置された少なくとも1つのチャネル開口部146aと、遠位部分の表面に配置された少なくとも1つのチャネル開口部146bとを備える。
【0058】
少なくとも1つのチャネル開口部146aは、流体移送ドラム144の長手方向軸と整列される中央に配置されるチャネルに開口し、中央に位置するチャネルは、流体移送ドラム144の遠位端のポケットの頂部に位置する開口で終わる。流体移送ドラム144の遠位端のポケットの頂部に配置された開口部は、少なくとも1つのチャネル開口部146a、中央に配置されたチャネル、およびトロカール内腔129の間で流体接続が行われるようにトロカール120に接続可能である。
【0059】
少なくとも1つのチャネル開口部146bは、流体移送ドラム144の遠位端のポケットの側面で終わるポケットチャネルに開口している。ポケットは、少なくとも1つのチャネル開口部146b、ポケットの側面で終わるポケットチャネル、およびカニューレ内腔119の間で流体接続が行われるように、カニューレ110に接続可能である。
【0060】
吸引デバイス140は、外径、内径、および外径と内径との間の厚さを有する実質的に中空の円筒形状を有する外側ケーシング148を備える。外側ケーシング148は、流体移送ドラム144の長手方向軸と同軸の垂直方向に整列した長手方向軸を有する。外側ケーシング148の内径は、流体移送ドラム144の直径よりも大きくなるように寸法決めされ、外側ケーシング148と流体移送ドラム144との間の空間を画定する。
【0061】
吸引デバイス140は、3つのOリング150a、150b、および150cを含み、各Oリングは、外側ケーシング148と流体移送ドラム144との間の空間内に確実に嵌合する厚さを有する。Oリング150aは少なくとも1つのチャネル開口部146aの近位に配置され、Oリング150bは少なくとも1つのチャネル開口部146aと少なくとも1つのチャネル146bとの間に配置され、そしてOリング150cは少なくとも1つのチャネル開口部146bの遠位に配置される。このように、外側ケーシング148と流体移送ドラム144との間の空間は、流体移送ドラム144を取り囲む2つの流体的に隔離されたチャンバ、すなわちOリング150aとOリング150bとの間の近位液体チャンバ152a、およびOリング150bおよびOリング150cとの間の遠位液体チャンバ152bに分けられる。Oリング150a、150b、および150cは、外側ケーシング148および流体移送ドラム144を互いに独立して回転させることを可能にしながら、漏れ屋根嵌合(leak-roof fit)を維持する。
【0062】
外側ケーシング148は、その厚さにわたって液体チャンバ152a内に開口するポート154aと、その厚さにわたって液体チャンバ152b内に開口するポート154bとをさらに備える。シリンジ102は、ポート154aおよび154bのそれぞれに嵌合することができる。これにより、ポート154aに嵌合したシリンジ102から液体チャンバ152aへの液体接続が確立され、そこで液体は、流体移送ドラム144の回転において任意の方向に向けられた少なくとも1つのチャネル開口部146aに入り、中央に配置されたチャネルを通って、そしてトロカール内腔129内に流れることができる。ポート154bに嵌合されたシリンジ102から液体チャンバ152bへの液体接続も確立され、そこで液体は、流体移送ドラム144の回転において任意の方向に向けられた少なくとも1つのチャネル開口部146bに入り、ポケットチャネルを通ってポケットとカニューレ内腔119の中へ流れることができる。
【0063】
図6において、シリンジ102は、スタイレット130の近位開口端部136に嵌合するように示されている。このようにして、シリンジ102の内容物は、スタイレット内腔138を通って移動して遠位開口端部134から出るように、近位開口端部136を通って挿入され得る。シリンジ102は、それにより、スタイレット130を通して任意の適当な化合物を送達することができる。特定の実施形態において、シリンジ102は、骨穿孔工程(
図7A、
図7B)の直前に麻酔薬が痛みを軽減するように、リドカインなどの麻酔薬を送達することができ、それにより、骨侵入部位への直接の麻酔薬送達が保証される。
【0064】
多くの吸引処置では、全骨麻酔は骨内リドカイン注入で行われるが、注入によって引き起こされる陽圧変化のために投与が苦痛となる。ここで
図8を参照すると、痛みを伴わずに注入剤を投与するための手段としてスタイレット130が取り外された状態の組み立てデバイス100が示されている。スタイレット130は、組み立てデバイス100が標的部位にうまく穿孔された後に除去されてもよい。スタイレット130を取り外すと、近位側部内腔118および近位開口端部128が露出する。シリンジ102または他の何らかの溶液源を近位側部内腔118に嵌合することができる。このようにして、シリンジ102または溶液の供給源が、近位側部内腔118を通り、カニューレ内腔119を通り、そしてカニューレ110の遠位端付近の少なくとも1つの側面開口部116から外への注入を行うことができる(
図10A、
図10B)。この構成で、近位開口端部128が、注入部位の排出された流体を遠位テーパ状端部124に進入させ、トロカール120の内腔129に流入させ、そして置換された空気を近位開口端部128から押し出させることによって注入部位における圧力均等化を受動的に支援する。さらに、減圧ポートを有することは、痛みを引き起こす可能性がある陽圧レベルなしで輸液および薬物注入を可能にし得、リドカインの必要性を排除する。当業者であれば、シリンジ102または溶液供給源を近位開口端部128に嵌合することで同様の効果を得ることができることを理解する。その際に注入は、近位開口端部128を通り、トロカール120の内腔129を通り、そして遠位テーパ状端部124から外へ行うことができ、そして近位側部内腔118が、注入部位の排出された流体を少なくとも1つの側面開口部116に進入させ、カニューレ内腔119に流入させ、そして置換された空気を近位側部内腔118から押し出させることによって、注入部位における圧力均等化を受動的に支援する。好ましくは、吸引は、
図8に示されている組み立てデバイス100を用いては行われない。一方の近位開口端部から、溶液を対立する近位開口端部に供給せずに吸引すると、対立する近位開口端部、対立する内腔、対立する遠位または側面開口部内に、またある量の吸引物が除去される吸引部位内に、空気またはガスが導入される。空気またはガスが血流中に引き込まれる可能性があり、それは空気またはガスの塞栓症を引き起こし、患者に傷害を引き起こす可能性がある。
【0065】
図9は、圧力調整の概念を説明するために、トロカール120およびカニューレ110のみを有するデバイス100の遠位先端部を示す。本明細書の他の箇所に記載されているように、一般的に使用される骨髄吸引デバイスは吸引する能力のみを提供し、これは吸引部位に圧力変化をもたらして広範囲の痛みを引き起こし、血液をサンプルに引き込んで真空に減圧する。デバイス100は、吸引部位に少なくとも1つの追加の内腔を設けることによって圧力変化を調整することができる。
図9では、例示的なデバイス100は、トロカール120の内腔129を通して、前述のシリンジ102などの溶液供給源から溶液10を投与することができる。デバイス100はまた、カニューレ110の内腔119を通して吸引物12を抜き出すことができる。カニューレ110の遠位開口端部は、トロカール120のねじ領域126とねじ係合することによって封止され、これは、側面開口部116を介して全ての吸引物12を内腔119内に導く。溶液10および吸引物12の流れは独立して制御することができ、その結果、投与および抜き取りは、必要に応じて同時にまたは断続的に、任意に行うことができる。デバイス100は、1つまたは複数の溶液供給源を切り替えて、第1段階の第1貯留部からの薬理学的溶液、および第2段階の第2貯留部からの生理食塩水のような1つまたは複数の溶液10を投与することができる。デバイス100はまた、溶液10の投与速度および/または吸引物12の抜き取り速度を調節することができる。
【0066】
いくつかの実施形態で、シリンジ102は、
図11のように、近位側部内腔118と近位開口端部128とに嵌合するシリンジを含むことができる。いくつかの実施形態で、近位開放端部128に嵌合するシリンジは、嵌合シリンジの内容物を、近位開放端部128に進入させ、トロカール120の内腔129を通って流し、遠位テーパ状端部124を出て、移された吸引物の量と置き換えることによって受動的に圧力均等化を支援し得る。他の実施形態で、近位開口端部128に嵌合するシリンジは、手動または電動手段のいずれかによって、近位開口端部128に嵌合するシリンジを能動的に押し下げることなどによって、圧力均等化を能動的に支援することができる。シリンジは、圧力均等化を支援するために気体または液体を分配することができる。
【0067】
ここで
図12Aおよび
図12Bを参照すると、トロカール120を取り外してカニューレ110を後に残すことができる。カニューレ内腔119が閉塞していない状態で、カニューレ110を使用してコア生検サンプルを採取することができる。本明細書の他の箇所に記載されるように、特定の実施形態で、遠位開口端部114は、カニューレ110がそれ自体で生検部位に深く入り込み生検サンプルを捕捉することを可能にする、1つまたは複数の切削歯またはフルートを備える。遠位開口端部114付近の雌ねじ領域は、生検サンプルをカニューレ内腔119内に保持するのを助け、すると、サンプルは、カニューレ110を抜き出すことによって容易に除去され得る。
【0068】
ここで
図13を参照すると、例示的な均等化シリンジ200が示されている。均等化シリンジ200は、吸引チャンバ202および圧力調整チャンバ210を含む。吸引チャンバ202は、遠位端にプランジャ206および吸引ポート204を含む気密エンクロージャである。圧力調整チャンバ203は、遠位端で注入ポート212で終わる気密エンクロージャである。継手208は、近位端で吸引チャンバ202と圧力調整チャンバ203とを流体的に接続する。いくつかの実施形態で、圧力調整チャンバ203は1つまたは複数の弁214を含む。1つまたは複数の弁214を使用して溶液を圧力調整チャンバ203に導入することができる。弁214はまた、圧力調整チャンバ203内の過剰な圧力を軽減するためにも使用され得る。弁214は、所定の圧力レベルに応じて手動でまたは受動的に開くことができる。いくつかの実施形態で、圧力調整チャンバ203は、それぞれが弁214を有する複数の相互接続された球形チャンバ210に細分することができ、各弁214は受動的に開いて各球内の圧力を軽減することができる。例えば、個々のチャンバ210のサイズは、より大きいチャンバ210がより低い圧力で過剰の気体または液体を排出し、より小さなチャンバ210がより高い圧力で過剰の気体または液体を排出するように、弁214が開く圧力に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態で、吸引ポート204と圧力調整ポート212とは、吸引ポート204が吸引デバイス100の近位側部内腔118に嵌合することができ、そして注入ポート212が吸引デバイス100の近位開口端部128に嵌合できるように離間される。
【0069】
様々な実施形態において、均等化シリンジ200は、吸引部位における圧力を自動的に調整することができる。プランジャ206が近位方向に引き込まれると、吸引チャンバ202は、吸引ポート204から入るある量の吸引物で満たされ、等量の気体または流体が吸引チャンバ202の近位端から外へ排出される。気体または液体の量は、カップリング208を通って吸引チャンバ202を出て、圧力調整チャンバ203に入り、チャンバ210を順次通って、気体または液体の量が圧力調整チャンバ203の内容物を押しのけて、注入気体または液体の量を注入ポート212の外に追い出す。
【0070】
2つの隣接するチャンバの内容物を駆動するための任意の機構が企図されるので、均等化シリンジ200が
図13に示される実施形態に限定されないことを理解されたい。例えば、いくつかの実施形態で、吸引チャンバ202および圧力調整チャンバ203がそれぞれプランジャを有することができる。各プランジャの動きは、例えば、レバーアームによって、または1つのチャンバから反対側のチャンバへと通過する置換気体または液体によって、機械的に連結することができる。各プランジャの動きはまた、センサが1つのチャンバ内の値を検出することができ、コントローラが反対側のチャンバのプランジャを自動的に再配置することができるように、電子的にリンクさせることもできる。検出可能な値の非限定的な例には、プランジャ位置、チャンバ内の気体または液体の量、チャンバ内の圧力などが含まれる。
【0071】
様々な実施形態において、吸引部位における圧力管理は、回収のための陰圧と調整のための陽圧とを結合する付属のデバイスを有することによって受動的または能動的に行われ得る。この結合は、骨内の生理的圧力を維持するために-1:1の比率で、または特定の所望の効果のための任意の他の比率、例えば骨髄を骨から「洗い流す」ために-1:2で行うことができる。様々な実施形態が、特定のパラメータが満たされない限り、吸引または注入を介して陽圧または陰圧が吸引部位に印加されないことを確実にするために弁を統合してもよい。例えば、注入圧力が適用される真空度として所望の比率にない場合、吸引を一時停止することができる。これは、シリンジと、吸引部位に通じている吸引および注入ポートとの間で動作する手動または自動の係合バルブシステムであり得る。
【0072】
本明細書で企図される吸引デバイスの構成要素は、複数の設計を包含する。ここで
図14を参照すると、カニューレ310の遠位先端が示されている。カニューレ310は、カニューレ内腔312が全体にわたって走っている細長い中空管形状を含む。カニューレ310は、少なくとも1つのテーパ状縁部316を有する開放遠位端部314を含む。カニューレ310は、開放遠位端部314の近くに少なくとも1つの側面開口部318をさらに含む。
【0073】
ここで
図15Aおよび
図15Bを参照すると、様々な穿孔器具が示されている。トロカール320は、カニューレ内腔312内に嵌合するように寸法決めされた細長いロッド形状を備え、そして遠位テーパ状端部322で終結する。いくつかの実施形態において、トロカール320は、その全長にわたって延びる内腔324を含む。内腔324は、別個のスタイレットを必要とせずに薬剤を直接投与するために使用することができる。いくつかの実施形態で、カニューレ内腔312内に嵌合するように寸法決めされたドリルビット330をトロカールとして使用することができる。いくつかの実施形態で、ドリルビット330は、その全長にわたって延びる内腔をさらに含むことができ、内腔324と同様の薬剤を投与することができる。
【0074】
ここで
図16を参照すると、例示的なマルチ内腔スタイレット340が示されている。マルチ内腔スタイレット340は、複数の内腔342を含み、スタイレット先端344で終わる。スタイレット先端部344は、少なくとも1つの側面開口部348および閉鎖端部346を有する実質的に円筒形の形状を含む。少なくとも1つの側面開口部348は、カニューレ310の少なくとも1つのテーパ状縁部316と同じ長さを有することができる。いくつかの実施形態で、スタイレット先端部344は、カニューレ内腔312内にぴったりと収まるように寸法決めされた直径を有する。いくつかの実施形態で、スタイレット先端部344は、ねじ領域またはガスケットなど、カニューレ内腔312との嵌合を向上させるための1つまたは複数の特徴を備える。マルチ内腔スタイレット340は、閉鎖端部346および少なくとも1つの側面開口部348が注入気体または液体を横方向に案内してカニューレ310の側面開口部318により近い吸引をもたらすように、1つまたは複数の注入気体または液体を各々のその内腔を通して吸引部位に向けるために使用できる。
【0075】
ここで
図17を参照すると、例示的な単一内腔スタイレット350が示されている。単一内腔スタイレット350は、全体にわたって走っている内腔352を有する単一の細長いチューブを備え、そしてスタイレット先端部354で終わっている。単一内腔スタイレット350は、好ましくは、カニューレ内腔312の内径よりも狭い外径を有し、その結果、2つの間に隙間が形成されて流体の移動を可能にする。スタイレット先端部354は、少なくとも1つの側面開口部358および閉鎖端部356を有する実質的に円筒形の形状を含む。少なくとも1つの側面開口部358は、カニューレ310の少なくとも1つのテーパ状縁部316と同じ長さを有することができる。いくつかの実施形態で、スタイレット先端部354は、カニューレ内腔312内にぴったりと収まるように寸法決めされる直径を有する。いくつかの実施形態で、スタイレット先端部354は、ねじ領域またはガスケットなどの、カニューレ内腔312との嵌合を強化するための1つまたは複数の特徴を備える。単一内腔スタイレット350は、閉鎖端部356および少なくとも1つの側面開口部358が注入気体または液体を横方向に案内してカニューレ310の側面開口部318により近い吸引をもたらすように、注入気体または液体を吸引部位に向けるために使用できる。
【0076】
ここで
図18を参照すると、例示的な非対称内腔スタイレット360が示されている。非対称内腔スタイレット360は、全体にわたって延びる内腔362を有する単一の細長い導管を含み、そしてスタイレット先端364で終わる。非対称内腔スタイレット360の導管形状は、カニューレ内腔312よりも小さい断面積を有し、その結果、2つの間に隙間が形成されて流体の移動を可能にする。導管は、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形などの任意の適切な断面形状を有することができる。いくつかの実施形態で、導管は円弧の断面形状を有し、その結果、断面形状は、カニューレ内腔312の内面に対してぴったりと収まることができる弧状側面と、弧状側面とは反対側を向く少なくとも1つの平坦側面とを有する。このようにして、非対称内腔スタイレット360は、弧状側面を使用してカニューレ310の少なくとも1つの側面開口部318を選択的に塞ぎ、それによって流体移送の方向を制御することができるという特徴を有する。スタイレット先端部364は、少なくとも1つの側面開口部368および閉鎖端部366を有する実質的に円筒形の形状を含む。少なくとも1つの側面開口部368は、カニューレ310の少なくとも1つのテーパ状縁部316と同じ長さを有することができる。いくつかの実施形態で、スタイレット先端部364は、カニューレ内腔312内にぴったりと収まるように寸法決めされる直径を有する。いくつかの実施形態で、スタイレット先端部364は、ねじ領域またはガスケットなど、カニューレ内腔312との嵌合を向上させるための1つまたは複数の特徴を備える。非対称内腔スタイレット360は、閉鎖端部366および少なくとも1つの側面開口部368が注入気体または液体を横方向に案内してカニューレ310の側面開口部318により近い吸引をもたらすように、注入気体または液体を吸引部位に向けるために使用できる。
【0077】
ここで
図19を参照すると、例示的な方向性(directional)内腔スタイレット370が示されている。方向性内腔スタイレット370は、スタイレット先端部374に固定された複数の個々の内腔372を含む。各内腔372は、スタイレット先端部374を越えて延び、側面開口部318から任意の適切な距離に配置された開口端部376で終わる。開口端部376は任意の方向に面するように向けることができる。いくつかの実施形態で、開口端部376を作動させて、その方向または側面開口部318からの距離を変えることができる。開放端部376はまた、吸引部位で組織を浸軟(macerate)するように作動され得る。いくつかの実施形態で、方向性内腔スタイレット370は、少なくとも部分的にニチノールなどの形状記憶材料から構成され、各内腔372がカニューレ内腔312を通して挿入された後に所定の形状をとることを可能にする。スタイレット先端部344は、カニューレ内腔312内にぴったりと収まる大きさの直径を有する実質的に円筒形の形状を含む。いくつかの実施形態で、スタイレット先端部374は、ねじ領域またはガスケットなど、カニューレ内腔312との嵌合を向上させるための1つまたは複数の特徴を備える。方向性内腔スタイレット370を使用して、その内腔372のそれぞれを通して1つまたは複数の注入気体または液体を任意の所望の方向に向けることができる。いくつかの実施形態で、1つまたは複数の内腔372を使用して、吸引部位から吸引物を移送することができる。
【0078】
上述した本発明の様々な構成要素は、当技術分野で知られている任意の適切な方法を使用して構成することができる。製造方法は、使用される材料に応じて変わり得る。例えば、実質的に金属を含む構成要素は、より大きい金属ブロックから製粉することができ、または溶融金属から鋳造することができる。同様に、プラスチックまたはポリマーを実質的に含む構成要素は、より大きなブロックからミリング、鋳造、または射出成形することができる。実質的にガラスを含む構成要素は、より大きなガラス片から切断することができる。いくつかの実施形態で、デバイスは、当技術分野で一般的に使用されている3Dプリントまたは他の積層造形技術(additive manufacturing techniques)を使用して製造することができる。
【0079】
吸引の方法
本発明はさらに、細胞収量を増加させそして痛みを軽減させる生検吸引の強化された方法を含む。この方法は、吸引と溶液の投与とを組み合わせたものであり、本明細書の他の箇所に記載されている本発明の吸引デバイスを用いて実施することができる。
【0080】
本発明の方法は、BMA手順において本発明の新規なデバイスを使用してリドカインを投与すると、対照方法と比較して幹細胞収率が200%を超えて増加したという驚くべきかつ予想外の発見に一部基づく。標準のBMAデバイスを使用してリドカインを投与した場合、幹細胞の収量は、あたかも細胞が投与されたリドカインの部位から洗い流されたかのように劇的に減少した。しかしながら、リドカインが骨の一部に投与され、そして吸引が骨の第2の部分で遠隔的に起こるとき、幹細胞収率は非常に増加した。
【0081】
本発明の方法はまた、吸引中に吸引デバイスが骨内で相対的生理学的圧力を維持する能力に基づいている。これは、2つの目的に役立つ:1)他のデバイスにおける真空/圧力勾配は、シリンジからデバイスへ、骨髄へ、血液へと及び、それによって、より粘性の低い血液を吸引し、吸引物を汚染する。一方、この吸引デバイスは、真空/圧力をシリンジからデバイスへ、骨髄へ通過させ、シリンジに戻して、吸引物から成熟血球を除き、また、肯定的な基準(affirmative standard)は静脈汚染のために利用できないが、105個の細胞当たりのCFUを2倍にすると、血液希釈の有意な減少を示す。そして、2)骨は痛みを伴うことが多い圧力変化に非常に敏感であるため、真空の低下が吸引中に生じる痛みを軽減する。
【0082】
さらに、リドカインの投与は、それが全ての神経伝達を遮断する既知の麻酔薬であるので患者の疼痛を軽減するのに役立ち、そして骨内注入の間に全体の骨麻酔を作り出すことができることが示されている。
【0083】
次に
図20を参照すると、例示的な方法600が示されている。方法600は、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第1の細長部材と、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第2の細長部材とを有する吸引デバイスを提供する工程602で始まる。工程604において、少なくとも1つの第1の細長部材の遠位開口部および少なくとも1つの第2の細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように、吸引デバイスが組織に挿入される。工程606において、少なくとも1つの溶液が少なくとも1つの第1の細長部材を通して生検部位の第1の領域に投与される。工程608において、少なくとも1つの吸引物が、生検部位の第1の領域に隣接する第2の領域から少なくとも1つの第2の細長部材を通して抜き取られる。
【0084】
挿入工程が、任意の適切な手段を用いて行われ得る。例えば、吸引デバイスは、本明細書の他の箇所に記載されているように、テーパ状遠位端部を有するトロカールを使用して、またはドリルビットを使用して挿入することができる。挿入工程は、
図7Aおよび
図7Bのように、痛みを軽減するための麻酔薬の注入を補うことができる。組織は、関心のある細胞を含む任意の組織であり得、例えば脂肪組織、骨髄組織、腹腔などである。しかしながら、この方法はまた、関心のある任意の組織内の細胞を動員するためにも使用することができ、したがって、全ての解剖学的部位、例えば、聴覚有毛細胞の内耳、神経細胞、軸索細胞、または支持細胞の中枢神経系、網膜細胞の目、またはさまざまな骨格筋、皮膚、歯、心臓、腸、肝臓、他の臓器および組織のいずれかに適用可能である。目的の細胞は、幹細胞、間質細胞、腺細胞、神経細胞、脂肪細胞、生殖細胞などの任意の適切な細胞であり得る。第1の領域と第2の領域とは、直接隣接していてもよいし、または1mmから1000mmの間の距離で分離されていてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態で、投与工程および抜き取り工程が同時に行われる。このようにして、組織内の圧力が実質的に一定となるように、ある量の溶液が、ある量の吸引物が抜き取られるにつれて絶えず投与される。一実施形態で、溶液投与および吸引物抜き取りの同時作用が、それらのそれぞれの部位で両方の媒体を能動的にポンピングすることによって推進することができる。一実施形態で、溶液投与および吸引物抜き取りの同時作用が、組織内の流体圧力によって推進される。例えば、第1の領域への溶液のみの能動的なポンピングが組織内の圧力を増加させ、ここで圧力の増加は第2の領域への吸引物の流れを推進する。別の例では、第2の領域からの吸引物のみの組織からの能動的なポンピング(吸引)が組織内の圧力を減少させ、ここで圧力の減少は第1の領域への溶液の流れを推進する。すべての上記の機構が、ブタモデルにおいて吸引部位の圧力変化を減少させることを示している。圧力は患者の疼痛に関連し得るので、本方法は、約400~700mmHgの対照値と比較して約15~50mmHgの平均圧力変化をもたらすのが好ましい。
【0086】
いくつかの実施形態で、抜き取り工程が遅延後に投与工程のあとに続く。遅延は、投与溶液がそのうちに組織に浸透し、そして1つまたは複数の細胞を含む吸引物の抜き取りの前に、任意の数の治療的または細胞動員効果を組織に適用することを可能にする。本発明のデバイスの複数の細長部材は、注入および吸引中に発生する可能性がある圧力変化の緩和を可能にする。投与される溶液の量は、溶液の薬物動態によって必要とされる用量に応じて1mL~15mLの溶液の量など、予想される吸引物の量以下または実質的に等しくあることができ、これはおよそ患者の体重に基づくことができる。遅延時間は、30秒~120分の間の期間などの任意の適切な時間であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態で、投与工程および抜き取り工程は、少なくとも1つの細長部材を使用して実施することができる。例えば、方法は、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの細長部材を有する吸引デバイスを提供する工程、少なくとも1つの細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように、吸引デバイスを組織内に挿入する工程、少なくとも1つの細長部材を通して生検部位に少なくとも1つの細胞動員組成物を投与する工程、および同じ細長部材を通して少なくとも1つの吸引物を抜き取る工程を含むことができる。
【0088】
本明細書の他の箇所に記載されているように、投与される溶液は細胞収量を増加させることができる。投与される溶液は、1つまたは複数の機序を介して作用することができ、以下に限定されないが、細胞をそれらの本来の環境から動員すること、細胞逸脱(cell departure)の阻害をブロックすること、細胞のそれらの周囲環境への接着を減少させること、細胞の環境からのその細胞の安定性、進入または退出(the stability, ingress, or egress of cells from their milieu)を指令する神経のまたは細胞の制御を調節することを含む。従来の手順と比較して、本発明の方法は、細胞収率を少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、またはそれ以上増加させることができる。この溶液は、細胞移動の神経系制御を調節することによって、本来の組織への付着を減少させることによって、または細胞動員効果を生み出すことによって、細胞収量を増大させることができる任意の適切な組成物を含み得る。細胞は、周囲の血管空間を含み得る周囲の細胞外環境/マトリックスに動員される可能性があり、骨髄の場合には、これは周囲の毛細血管床および洞様毛細血管内へがあり得る。溶液は、小分子、ペプチド、ポリペプチド、核酸、および炭水化物を含み得る。使用することができる薬剤の非限定的なカテゴリーには、組織外への細胞の移動または組織内での細胞の保持を制御することが知られているタンパク質および受容体の現在知られているおよびまだ発見されていないクラスが含まれる(表1参照)。これらは組み合わせ、例えばBOP(抗体または他の小分子選択的阻害剤)およびAMD3100の組み合わせによるα9β1阻害を含み得る。これらには、次のような幅広いカテゴリーがある:VLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3 SK9H5F、およびBIO5192などのインテグリンファミリーの調節;CXCR4阻害剤プレリキサホル(Plerixafor)のようなCXCL12/CXCR4相互作用の調節;CXCR7分子の調節;CXCL12類似体;神経/幹細胞相互作用の調節、例えばドーパミン受容体(1~5サブタイプ)およびノルアドレナリン作動性αおよびβ受容体およびカテコールアミンの全てのそのような受容体、それらの前駆体ならびに誘導体;それらの受容体のモジュレーターまたはシナプス/作用部位からの神経伝達物質の取り込みのモジュレーター;カテコールアミン分解阻害剤、例えばカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)またはモノアミンオキシダーゼ(MAO)酵素による脱アミノ化(amination)の阻害剤;アデニル酸シクラーゼおよび代替ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/Akt経路などのカテコールアミン受容体の下流カスケードのモジュレーター;カテコールアミン受容体a1、a2、b1、b2、およびb3のアゴニストおよびブロッカー;L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-DOPAなどのカテコールアミン前駆体;ドーパミンアゴニスト、例えばアリピプラゾール、フェンシクリジン、キンピロール、サルビノリンA、アポモルヒネ、ブロモクリプチン(Parlodel)、カベルゴリン(Dostinex)、シラドーパ、ジヒドレキシジン、ジナプソリン、ドキサントリン、エピクリプチン、リスリド、ペルゴリド、ピリベジル(PronoranとTrivastal)、プラミペキソール(MirapexとSifrol)、プロピルノルアポモルフィン、キナゴリド(Norprolac)、ロピニロール、ロチゴチン、ロキシンドール、スマニロール、ドーパミン受容体D1に選択的なフェノルドパム、コカイン、アンフェタミン;ドーパミン再取り込み阻害剤、例えばブプロピオンアルトロパン(buproprion altropane)(O-587)、アンホネル酸(WIN 25978)、アミネプチン(ノルエピネフリンよりドーパミン再取り込み阻害に対して合理的な程度の選択性を持つ)、BTCP(GK-13)、3C-PEP(非常に強力で、ドーパミントランスポーターに対して選択的)、DBL-583、ジフルオロピン(O-620)、GBR-12783、GBR-12935、GBR-13069、GBR-13098、GYKI-52895、イオメトパン(β-CIT,RTI-55)、メチルフェニデート、エチルフェニデート、モダフィニル、アルモダフィニル、RTI-229、バノキセリン(GBR-12909)、ハロペリドール、クロルプロマジン、エチクロプリド、ピモジド、クロルプロマジン、エチクロプリド;デシプラミンおよびノルエピネフリンの再取り込みを阻害する他の薬;DRD1、DRD2、DRD3、DRD4、DRD4受容体アゴニスト、およびエチクロプリドなどのアンタゴニスト;ニコチン;クレンブテロールなどのb2-アドレナリンアゴニスト;α9インテグリンアゴニスト;BOP、N-(ベンゼン-スルホニル)-L-プロリル-L-O-(1-ピロリジニルカルボニル)チロシン);VLA-4アンタゴニスト、例えばトランス-4-[1-[[2-(5-フルオロ-2-メチルフェニルアミノ)-7-フルオロ-6-ベンゾオキサゾリル]アセチル]-(5S)-[メトキシ(メチル)アミノ]メチル-(2S)-ピロリジニルメトキシ]シクロヘキサンカルボン酸、ナタリズマブ、およびBIO5192;マトリックスメタロプロテイナーゼおよびそれらの誘導剤、例えばMe6TREN;プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤、例えばジメチルオキサリルグリシン(DMOG);ケモカインGROβ;硫酸化コロミン酸;β-ケモカインCCL15;三七人参サポニン(panax notoginseng saponins);VEGF;ALT-1188;P2RY14アゴニスト、例えばMRS2690;UDP-グルコース;γ-トコトリエノール;TGFβ、TGF-β1、およびサブスタンスP(Substance P);VCAM-1などの接着分子の調節;VLA-4(α9β1)などのインテグリンとの相互作用;P2Yプリンレセプター-14などのGタンパク質共役型受容体;ACT-128800、SEW2871、GSK2018682、FTY720、MRS2690、およびドーパミンを含むS1P-1モジュレーター;NOTCHタンパク質(副甲状腺ホルモン)などのさまざまな内分泌標的;顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)および類似体(フィルグラスチム);G-CSFのPEG化およびグリコシル化バージョン;顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF);チロシンキナーゼ3(FLT-3);アンセスチム(ancestim);幹細胞因子;AMD3100;TG-0054;KRP203;4F-ベンゾイル-TN14003;POL6326;P2G、SDF-1βの変異体タンパク質;CTCE-0021;CS549、ATI-2341などのペプデュシン(pepducin);サイトカイン(例えばインターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、インターロイキン-12);メタロプロテイナーゼ;セリンプロテアーゼ;システインプロテアーゼ;ペプチダーゼ;ケモカインなど。複合化学療法剤、例えばシクロホスファミドも現在静脈内投与されているように投与することができる。
【0089】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0090】
様々な種類の幹細胞が様々な種類の用途において必要とされている。間葉系幹細胞は再生医療目的に望ましい。造血幹細胞は骨髄移植用途に望ましい。上皮幹細胞は血管再生目的に望ましい。特定の実施形態で、溶液は、幹細胞または間質細胞などの特定の細胞型の抜き取りのために選択される組成物を含む。これは、ドーパミンDRD2受容体の活性化/阻害を含む、1つまたは複数の種類の受容体の選択的活性化によって可能であることが示されている。特定の実施形態で、溶液は、造血幹細胞、内皮幹細胞、および間葉系幹細胞などの特定の幹細胞型の抜き取りのために選択される組成物を含む。例えば、ドーパミンは、間葉系幹細胞動員を阻害しながら造血幹細胞動員を増加させることができることが示されている。特定の実施形態で、化学物質を様々な順序で投与することができる。例えば、幹細胞をその本来のニッチから動員するように化学物質が設計される(CXCR4、CXCL12、インテグリンインヒビターまたはG-CSF、続いて細胞の細胞外マトリックスへの結合に一般的に作用するプロテアーゼまたはプロテアーゼインデューサー、続いて神経系、神経、または神経受容体を介して作用する薬剤が続く調節を介する)。
【0091】
本明細書の他の箇所に記載されるように、投与される溶液は疼痛を軽減することができる。溶液は、疼痛の感覚を低下させるかまたは幹細胞を動員することができる任意の適切な組成物を含み得る。非限定的な例としては、1つまたは複数のリドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペラカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシケイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン等が挙げられる。
【0092】
本明細書に記載されている様々な組成物は、塩が示されていなくても塩として存在してもよく、そして当業者が十分理解されているとおり、本発明は、示される組成物のすべての塩および溶媒和物、ならびに非塩形態および非溶媒和物形態を含むことが理解される。本明細書に記載の様々な組成物はまた、示されている組成物の任意のエナンチオマー形態またはジアステレオマー形態を含む立体化学形態を包含する。本明細書における構造または名称の列挙は、結晶形態または非結晶形態など、示された組成物のすべての可能な立体異性体を含むことを意図している。組成物は、その特定の立体化学形態を含む実質的に純粋な組成物、または立体化学混合物を任意の比率で含む組成物も含み得る。本明細書に記載されている様々な組成物はまた、示されている組成物と同様の構造を有するが、連結原子またはより長いもしくはより短いリンカーを有する基、または異なる数の原子を有する環基のような、ある特定の成分または構造的構成に関しては異なる類似体および誘導体を包含する。
【0093】
本発明の溶液は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体を用いて製剤化することができる。有用な薬学的に許容される担体としては、グリセロール、水、食塩水、エタノール、およびリン酸塩および有機酸の塩などの他の薬学的に許容される塩溶液が挙げられるが、これらに限定されない。追加の成分としては、以下:分散剤、不活性希釈剤、結合剤、潤滑剤、防腐剤、懸濁剤、分散剤、バッファ、酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤、安定剤などのうちの1つまたは複数が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0094】
いくつかの実施形態で、本発明の方法はまた、小柱骨を採取することができる。例えば、吸引デバイスが、定位置に前進すると、その遠位端で骨片を切断し、これは、最小の力および最小の熱発生で骨を切断するのに理想的である、実験的に示されたすくい角および逃げ角を有する。これらの骨片は、フルートを介してデバイスの側面開口部に導かれ、これらの小片を採取するためにデバイス内腔にすくい入れる。骨と骨髄の両方が、脊椎固定術やその他の整形外科的処置を補助するためにしばしば必要とされるので、これは再生医療治療において重要な意味を持つ。時に、骨髄が細胞でいっぱいになって液体骨髄が得られないことがある-いわゆる、「ドライタップ」である。それによって、分析のために小柱骨を得る方法は、骨髄が得られない場合でも有用である。デバイスは、吸引位置に進む間に骨を浸軟するので細胞が「解離(disaggregated)」され、細胞を採取可能にする。
【0095】
いくつかの実施形態で、本発明の方法はまた、標的部位からの物質の移動を促進するための洗い流し作用を誘導することができる。例えば、デバイスおよび方法は、石灰化腱炎および腫瘍性石灰沈着症におけるカルシウム沈着物を洗い流すために、あるいは、関節炎または感染症のために関節を非侵襲的に洗い流すために使用することができる。
【実施例0096】
以下の実験例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は説明の目的のためだけに提供され、そして他に特定されない限り限定することを意図しない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ本明細書に提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0097】
さらなる説明なしに、当業者は、上記の説明および以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を製造および利用し、そして特許請求の範囲に記載の方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の例示的な実施形態を具体的に指摘しており、本開示の残りの部分を決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0098】
実施例1:幹細胞の薬理学的動員のための骨内方法
典型的な骨髄吸引(BMA)処置では、吸引口付近の幹細胞が採取されると、静脈血が必然的に洞様毛細血管から流入し、サンプルを汚染し、採取される幹細胞を制限する。骨内への薬物のゆっくりとした注入は、骨がスポンジのように、大きい相互接続された静脈空間であるため、骨のほぼ全体にわたって拡散することができる。注入が速すぎると、骨ではなく静脈系に薬物がただ押し込まれてしまう。最初に骨の静脈空間を薬理学的にあふれさせることによって、吸引部位から離れた幹細胞を洞様毛細血管血液(sinusoidal blood)で採取することができ、既存のデバイス構成の範囲を超えて収量を大幅に改善する。皮下および静脈内(IV)の薬理学的方法は、再生医療および癌の診断に必要とされる術中採取に有用であるには長すぎる。骨内注入は、直接吸引することができる幹細胞を急速に動員する骨髄中で直接、ピーク濃度を保証する。一般的で安価な薬物リドカインを用いた予備データは、驚くべきことにそして意外にも、対照と比較して200%を超えて有意に増加した収率をもたらし(
図27A、
図27B)、リドカインが動員効果を有することを実証した。新規なBMAデバイスの独特な二重内腔構成は、吸引から離れた部位での薬物の送達を可能にし、吸引されるべき幹細胞を洗い流すことなく、吸引の部位への薬物の拡散を可能にする。さらに、リドカインは全骨麻酔に有効であり、それは痛みのない吸引を可能にする(Manohar Mら、Veterinary Radiology & Ultrasound 17.4 (1976): 152-156; Tobias JDら、Pediatric emergency care 6.2 (1990): 108-109; Waisman Mら、Journal of Trauma and Acute Care Surgery 39.6 (1995): 1153-1156; Replogle Kら、The Journal of the American Dental Association 130.5 (1999): 649-657; Chamberlain TMら、General dentistry 48.3 (1999): 299-302; Joseph Gら、Journal of clinical anesthesia 20.6 (2008): 469-473; Ngo ASYら、International journal of emergency medicine 2.3 (2009): 155-160; Philbeck TEら、JEMS: a journal of emergency medical services 35.9 (2010): 58-62; Tobias JDら、Anesthesia & Analgesia 110.2 (2010): 391-401; Sokov ELら、Terapevticheskii arkhiv 85.4 (2012): 61-65)。しかしながら、リドカイン注入が従来のデバイスで行われた場合、収率は対照より有意に低く、注入部位の幹細胞は従来のデバイスの構成による注入によって洗い流されたことを示した。
【0099】
コロニー形成単位(CFU)アッセイは、BMA中の相対的な幹細胞濃度の認められた尺度である。幹細胞はコロニーに成長するが、成熟細胞は成長しない。生きたブタモデルにおけるBMAの予備的(N=4)試験を、単孔式癌吸引デバイスを新規な二重内腔BMA法と比較して行った。圧力調整を伴う新規な二重内腔デバイスは、対照よりも多くのCFU/mLを提供した。リドカイン注入を伴う新規な二重内腔デバイス(圧力調整なし)は、CFU/mLを2倍以上にした(
図27A)。
【0100】
実施例2:サンプリングエラーの解消
がんの診断では、サンプルエラーの3つの主な原因がある。第一の原因は骨髄が得られない「ドライタップ」である(吸引の6.8%)。これは通常の患者に見られ得るが、骨髄が腫瘍細胞であまりに密に詰め込まれていて液体骨髄を得ることができない場合のように、重大な疾患を示すことがある。これは化学療法後、骨髄内の全ての幹細胞が除去されている場合、ならびに骨髄線維症などの線維性骨髄内の場合にも発生する可能性がある。第二の原因は、非骨片サンプル(吸引の20.6%)によるものである。これは、骨全体の骨片含有造血骨髄のランダムな分布と組み合わされた小さいサンプリング領域の結果である。サンプリング針が赤色造血骨髄ではなく脂肪骨髄を含む領域に配置された場合に起こる。この骨髄分布はMRIで容易に見ることができるが、MRIで各吸引を案内することは非常に面倒であろう。
【0101】
第三の原因は、血液希釈(吸引の27%)である。多数の小さな静脈性洞様毛細血管が骨空洞に流れ込み、大きな静脈空間と見なすことができる。この静脈空間はときに緊急時に静脈と間違えられることさえある。この血流の集まりが吸引真空に引き込まれる。初期の研究者らは、骨髄の吸引の際に末梢血および成熟細胞による骨髄吸引物の希釈が避けられないことを証明している。血液疾患を有する患者を対象とした別の研究では、有核細胞の6~93%が血液由来であり、最大の混合は白血病患者で発生している。2mLを超える量を吸引した場合、期待されるような多くの骨髄は吸引されず、むしろ静脈血が、これらの静脈チャネルからの流れに対してはるかに低い抵抗のために骨髄に対して優先的に針に流れ込む。多数の研究が、1~2mLの骨髄しか単一の位置から確実に得られず、そして単一の位置からのより大きな吸引量が収率を低下させることを実証している。別の研究では、健康なドナーから吸引された骨髄の最初の1.0mLは末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells)(PBNC)が8%混入していることがわかり、一方、骨髄採取のために続いて行われた吸引物は有核血球が20%混入していた。
【0102】
51Cr標識自己由来赤血球および125I標識アルブミンを用いた実験では、骨髄吸引物中のヘモグロビンの約97%が、吸引の開始時または終了時にかかわらず末梢血に由来し、骨髄細胞が血液体積内で吸引されることを示唆した。重要なことに、必要とされる試験の数に応じて、最大10~20mLのサンプルが分析に必要とされる可能性があり、患者がより多くの骨髄を必要とし得る臨床試験にある場合にはより多くの量が必要とされる。
【0103】
この血液希釈は技術および患者に依存するが、最適化されたチェックリストおよびCTガイダンスにもかかわらず、依然として重大な制限がある。特にそれは成熟細胞と未成熟細胞の比率を混乱させる。骨髄の末梢/静脈血は成熟細胞を含むが、骨髄は幹細胞(未熟)と成熟細胞の両方を含む。これらの細胞の比率が、骨髄異形成症候群(MDS)および急性骨髄性白血病(AML)の分類のための究極の基準であり、したがって、末梢血によるこの比率の希釈は、MDSおよびAML診断における感度を低下させる主な要因である。
【0104】
白血病では、芽球数が診断および予後予測/リスク層別化において、ならびに再発性および残存疾患に対する診断基準としても使用される。血液希釈は、急性リンパ芽球性白血病の小児におけるリスク層別化に悪影響を及ぼすことが示されている。治療を受けた急性骨髄性白血病の微小残存病変を評価した研究では、非希釈検体と比較して血液希釈検体の芽球割合は83%に変化し、被験者の4/9(44%)が、非血液希釈サンプルを用い、「微小残存病変」について、0.1%のカットオフにアップグレードされた。末梢血による汚染は、MRDのサーチだけでなく、25%の芽球が骨髄にあり、末梢血に0%である場合に、診断時にも重要である。希釈サンプルでは25%未満しか芽球は示されず、誤った診断をもたらす可能性がある。
【0105】
骨髄異形成症候群(MDS)では、芽球の閾値は5%、10%、および20%の任意の個別の工程で上昇し、カテゴリーの変更の可能性は、サンプルの末梢血希釈度に加えて、閾値に対する芽球数の近さに依存する。66人のMDS患者を対象としたある研究では、血液希釈を抑制しようとしたところ、33%の驚くほどの患者で疾患が再分類された。別の研究では、末梢血の希釈はMDSの疾患の分類におけるフローサイトメトリーを著しく制限し、血液希釈の補正時に最大26.8%の患者が再分類された。この補正は骨髄の純度が40%以上の場合にのみ適用できる。
【0106】
血液希釈の影響を定量化するための別の取り組みとして、少なくとも1回の吸引が不良であった355人のMDS患者からの骨髄穿刺および生検結果に対して遡及的検討が行われた。血液希釈吸引をその後のまたは繰り返しの吸引と比較して、血液希釈吸引の臨床的意義を評価した。1250回の吸引のうち、470回(37%)が限定され、これらの58%が臨床的に有意であると思われ(MDSのすべての吸引の22%)、4%が見逃された重要な診断があり、7.7%が再生検を必要とし、そして46%が芽球数に対する信頼度の低下または形成異常のための不十分な評価に起因して臨床的に有意であると思われた。
【0107】
サンプリングエラーを克服するためのこれまでの試み
ドライタップ:多くの著者は、ドライタップの背景でロールインプリントを実行することを提案している。これは、コアトレフィン生検が骨髄塗抹標本をシミュレートするためにスライド上に広げられる場合である。しかしながら、これらは技術に非常に依存しており、有効性は10%~60%までの範囲である。ドライタップを補うための別の代替方法は「解離(disaggregation)」と呼ばれ、追加のコア生検が行われ、その生検内の細胞の全量が機械的または酵素的手段のいずれかによって骨から単離され、骨髄塗抹標本の代用だけでなく、細胞遺伝学およびフローサイトメトリーを可能にする。2005年の研究では、60%のサンプルが高品質の吸引様分析(a good-quality aspirate-like analysis)をもたらし、さらに13%(合計75%)が中程度だがそれでも有益な品質をもたらしたことが示された。しかしながら、これは患者に追加のまたはより長い生検を受けることを要求し、したがって臨床診療では日常的ではない。
【0108】
非骨片サンプル:トレーニングとチェックリストの介入を使用して最適化された手法により、非骨片サンプルの問題を克服しようとした。2013年の前向き研究では、介入前は18.5%のサンプルが非骨片であり、介入後は20%が非骨片であり、そして非骨片サンプルの非診断率は20%であった。血液学者らの裏付けに乏しい確信は、針の配置が非骨片サンプルの原因である可能性があることを示唆している。しかしながら、腸骨稜におけるCTスキャンおよび完全な配置の使用は、サンプル品質の遡及的検討のサブセット分析において非骨片サンプルの割合を改善しなかった。
【0109】
血液希釈:この長期間の骨髄穿刺を克服する試みは1960年代にさかのぼり、針の先端に側部孔が追加された。これは、吸引の表面積を増大させ、それ故に血液よりも骨髄の収量を増大させると多くの人が依然として考えている。しかしながら、物質は最も抵抗の少ない場所に自然に流れるので、血液は依然としてこれらのデバイスの大きな端部孔または骨髄腔内の静脈湖に接続されているかもしれない側部孔を通して優先的に流れる。無作為化試験では、これらの側部孔が骨髄収量を増加させないことを示し、これは2011年の研究で裏付けられた。いくつかのデータは、針のコアの直径を大きくすると収率が上がることを示唆している。しかしながら、主な問題に適切に対処するデバイスはない。開放端部孔を有するデバイスは、血液希釈を引き起こさずに骨の単一の位置から1~2mLしか吸引することができない。そのようなデバイスは、骨の中の異なる位置に再配置されなければならず、患者にさらなる苦痛および不快感を強いるもので、したがって、臨床診療では実現不可能である。現在のデバイスは血液希釈の問題に適切に対処していないので、病理学者はこの事実の後に様々な手段を用いて補填しようとしている。これは、標準的な治療法ではなく、静脈血と骨髄の両方のフローサイトメトリーを併用して希釈効果を管理しようとする試みであるが、少数の細胞で細胞のカウントを行うことを含み、骨髄サンプルが「十分に純粋」(40~90%純粋)である場合のみ、部分的に有効である。主任研究者らは、これらの方法は実用的ではないか、またはほとんどの場合に適用できないことを示唆している。
【0110】
サンプリングエラーを克服するためのイノベーション
ドライタップ:上述のように、トレフィン骨からの細胞の「解離」は、ドライタップの背景において吸引様分析を得るための非常に効果的な手段であるが、サンプルを送る能率化した方法がなく、そしてそれは患者に追加の生検を要求するため、臨床診療には用いられない。現在の針は、針が骨を通って吸引位置に前進すると、骨髄組織を針から離れる方向に圧縮する。本発明の吸引デバイスは、吸引位置へと前進すると、鋸歯状部を介して骨を細かく刻むように設計されている。鋸歯状部は、最小の力および最小の熱発生で骨組織を切断するのに理想的であることが示されているすくい角および逃げ角を有する。これらの破片は、それ自体短いすくい角を有する大きな吸引チャンバに採取され、吸引サンプルと吸引されるか、またはスタイレットが取り外されるとデバイスからすべての固体片を運ぶ棚状集水構造(ledge-like catchment)を有するスタイレットで除去され得る(
図16~
図18を参照)。これらの固体片は、細胞解離およびその後の吸引物状分析のために比較的安価な機械に入れることができる。
【0111】
非骨片サンプル:検討したように、非骨片サンプルは、造血骨髄よりむしろ脂肪骨髄における吸引針の配置によるものと考えられる。骨髄内に造血骨髄のランダムな分布があり、これは多くの患者においてまばらに散在している可能性がある。これが、世界保健機関(WHO)が適切な診断のために長さ2cmの骨コア生検を要求する理由の1つである。このサンプリングアーチファクト(sampling artifact)を減少させるためには、骨内のサンプリングの長さおよびサンプリングされる骨の総体積が骨コア生検のそれと等しくなるように増加されなければならない。骨をサンプリングする長さを長くすると、骨片を採取するための吸引中に針が造血骨髄の島を横切る可能性が高まる。この増大したサンプリング長さは、本発明のデバイスにおいて、所定の位置に残っているスタイレットによる吸引中の端部孔の閉塞と組み合わされた10mmの長さの単一の細長い側部孔を通して吸引することによって達成することができる。これにより、吸引はスタイレットの周囲で起こる(
図10B参照)。側部孔を有する他の針が存在するが、最大孔である端部孔が常に吸引における主要な開口部となる。さらに、側部孔を有する他の針は針の周囲にそれらが散在し、それ故に使用者はどの孔が実際に骨髄を採取したかに関して不確実であるが、単一孔の使用は使用者が孔が向く回転角度を制御することを可能にする。吸引の間に端部孔を塞ぐことによって、吸引は端点ではなく定義された長さの側部孔を横切って起こる。スタイレットを保持することにより、別々の吸引中またはそれらの間で、針を骨の内外に移動させることができる。これにより、WHOが骨のコアのために必要とするのと同等の長さの骨を横切って起こる吸引を可能にする。
【0112】
サンプリングの面積を増大させることが、細長い孔によって達成されるだけでなく、使用者はまた、針を回転させることができ、そしてこの増大された表面積を針の周囲に混合することもできる。吸引中にスタイレットを保持しながら端部孔を塞ぐと、側部孔からの排他的な吸引が可能になる。したがって、使用者は、吸引チャンバが骨内で向く回転角度を制御することによって骨の吸引面積を制御することができる。従って、例示的な10mmの側部孔は、各10mmの深さ位置で円周方向の吸引のために6回回転させることができる。同じ吸引部位内の2つの深度を考慮すると、サンプリングされた面積における48倍の増加が説明される。
【0113】
血液希釈:血液希釈の主な問題は、陰圧を調整しない現在の方法では末梢血に汚染される前に骨髄の任意の位置から1~2mLしか吸引できないことである。臨床上の必要性は、単一の骨侵入部位内で骨髄腔内の複数の異なる領域から吸引することができることである。これもまた、例えば、単一の側部孔からの排他的吸引、端部孔の閉塞、および吸引孔が向いている方向の回転角度を使用者が制御することによって達成される。例えば、2つの異なる深さにおける6つの回転位置は、12以上の異なる吸引位置を可能にする。1箇所あたりの吸引量を1~2mLに制限することで、最大24mLの「純粋な骨髄」を得ることができる。
【0114】
本明細書に引用されたありとあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示が、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明を特定の実施形態を参照して開示したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく本発明の他の実施形態および変形を他の当業者が考案できることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態および等価の変形形態を含むと解釈されることを意図している。
本明細書に引用されたありとあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示が、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明を特定の実施形態を参照して開示したが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく本発明の他の実施形態および変形を他の当業者が考案できることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのそのような実施形態および等価の変形形態を含むと解釈されることを意図している。
本発明の態様の一部を以下に記載する。
1.近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第1の細長部材と、
第2の細長部材であって、近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔と、該第2の細長部材の長さに沿って該内腔への少なくとも1つの側面開口部とを有する、該第2の細長部材を備え、
ここで該少なくとも1つの第1の細長部材は、該少なくとも1つの第1の細長部材の遠位先端部が該第2の細長部材の遠位先端開口部を通って延びるように、該第2の細長部材の内腔内に配置され、そしてここで該少なくとも1つの第1の部材の遠位先端部が、該第2の細長部材の遠位先端開口部と少なくとも1つの側面開口部との間で該第2の細長部材と密封係合を形成する、
吸引デバイス。
2.前記少なくとも1つの第1の細長部材が、前記第2の細長部材の内腔内に配置されると同時に、流路が該第2の細長部材の少なくとも1つの側面開口部から近位開口部まで存続するように寸法決めされる、項目1に記載のデバイス。
3.近位開口部と遠位先端開口部との間に延びる内腔を有する第3の細長部材をさらに備え、該第3の細長部材が前記少なくとも1つの第1の細長部材の内腔内に嵌合するように寸法決めされる、項目1に記載のデバイス。
4.前記密封係合が、ガスケット、スペーサ、またはねじ山によって形成される、項目1に記載のデバイス。
5.前記少なくとも1つの第1の細長部材の遠位先端開口部が、前記第2の細長部材の少なくとも1つの側面開口部から約1mmから1000mmの間の距離で配置される、項目1に記載のデバイス。
6.前記少なくとも1つの側面開口部のそれぞれが、5から25mmの長さにわたって前記第2の細長部材に沿って延びる、項目1に記載のデバイス。
7.前記少なくとも1つの第1の細長部材が、単一の近位開口部を共有する複数である、項目1に記載のデバイス。
8.前記少なくとも1つの第1の細長部材が、単一の遠位先端開口部を共有する複数である、項目1に記載のデバイス。
9.前記少なくとも1つの第1の細長部材の近位開口部と前記少なくとも1つの第2の細長部材の近位開口部が、溶液リザーバにそれぞれ流体接続可能である、項目1に記載のデバイス。
10.前記溶液リザーバが、細胞動員組成物、疼痛軽減組成物、およびそれらの組み合わせから選択される組成物を含む、項目9に記載のデバイス。
11.前記細胞動員組成物が、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む、項目10に記載のデバイス。
12.前記疼痛軽減組成物が、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目10に記載のデバイス。
13.近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第1の細長部材と、近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの第2の細長部材とを有する吸引デバイスを提供する工程、
該少なくとも1つの第1の細長部材の遠位開口部と該少なくとも1つの第2の細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように該吸引デバイスを組織内に挿入する工程、
該少なくとも1つの第1の細長部材を通して該生検部位の第1の領域に少なくとも1つの溶液を投与する工程、および
該生検部位の該第1の領域に隣接する第2の領域から該少なくとも1つの第2の細長部材を通して少なくとも1つの吸引物を抜き取る工程
を含む、組織吸引の方法。
14.前記挿入工程が、前記少なくとも1つの第1の細長部材の内腔を通して少なくとも1つの疼痛軽減溶液を投与することによって補われる、項目13に記載の方法。
15.前記組織が骨髄組織である、項目13に記載の方法。
16.前記組織が脂肪組織である、項目13に記載の方法。
17.前記少なくとも1つの溶液が、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される疼痛軽減剤を含む、項目13に記載の方法。
18.前記少なくとも1つの溶液が、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む、細胞動員組成物を含む、項目13に記載の方法。
19.前記第1の領域と前記第2の領域が1mmから1000mmの間の距離で分離されている、項目13に記載の方法。
20.前記投与工程および前記抜き取り工程が同時に行われる、項目13に記載の方法。
21.前記投与工程が、CXCR4阻害剤、VLA-4またはメタロプロテイナーゼまたはISP-1アゴニスト、神経幹細胞制御を調節する化合物、および細胞接着を損なう分子の連続投与を含む、項目13に記載の方法。
22.前記投与工程が最初に行われ、そして前記抜き取り工程が30秒~120分の間の遅延の後に行われる、項目13に記載の方法。
23.前記吸引物が、造血幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、間質細胞、腺細胞、神経細胞、脂肪細胞、生殖細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の細胞を含む、項目13に記載の方法。
24.前記1つまたは複数の細胞の10%未満が血液細胞である、項目23に記載の方法。
25.前記第1の領域および前記第2の領域における平均圧力変化が15から50mmHgの間である、項目13に記載の方法。
26.前記第1または第2の細長部材のうちの少なくとも1つの内腔内に組織サンプルを収集する工程をさらに含む、項目13に記載の方法。
27.近位開口部と遠位開口部との間に延びる内腔を有する少なくとも1つの細長部材を有する吸引デバイスを提供する工程、
該少なくとも1つの細長部材の遠位開口部が生検部位の近くに配置されるように該吸引デバイスを組織内に挿入する工程、
該少なくとも1つの細長部材を通して該生検部位に少なくとも1つの細胞動員組成物を投与する工程、および
該少なくとも1つの細長部材を通して少なくとも1つの吸引物を抜き取る工程
を含む、組織吸引の方法。
28.前記挿入工程が、前記少なくとも1つの細長部材を通して少なくとも1つの疼痛軽減溶液を投与することによって補われる、項目27に記載の方法。
29.前記組織が骨髄組織である、項目27に記載の方法。
30.前記組織が脂肪組織である、項目27に記載の方法。
31.前記少なくとも1つの細胞動員組成物が、インテグリンファミリーのモジュレーター、例えばVLA-4分子阻害剤フィラテグラスト、UNII-OJY3SK9H5F、およびBIO5192、CXCL12/CXCR4相互作用のモジュレーター、例えばAMD3100、CXCR7分子のモジュレーター、CXCL12類似体、ドーパミン調節を介するかまたは神経軸索発火の阻害によるなどの神経/幹細胞相互作用のモジュレーター、接着分子のモジュレーター、インテグリン、Gタンパク質共役型受容体、S1P-1アゴニスト、内分泌標的、プレリキサホル、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、ペグ化およびグリコシル化バージョンのG-CSF、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、チロシンキナーゼ3(FLT-3)、アンセスチム、幹細胞因子、サイトカイン(インターロイキン-1、インターロイキン-3、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-11、およびインターロイキン-12を含む)、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、ペプチダーゼ、ケモカイン、複合化学療法剤、例えばシクロホスファミド、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群より選択される細胞接着または細胞動員に関与する分子経路内の分子のモジュレーターを含む、項目27に記載の方法。
32.前記少なくとも1つの細胞動員組成物が、リドカイン、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、プロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、エチドカイン、トロパコカイン、ピペロカイン、ストバイン、シクロメチルカイン、パレトキシカイン、ジクロニン、ファリカイン、プラモキシン、アモラノン、フェナカイン、ジペロドン、ジブカイン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される疼痛軽減剤をさらに含む、項目27に記載の方法。
33.前記投与工程が、CXCR4阻害剤、VLA-4またはメタロプロテイナーゼまたはISP-1アゴニスト、神経幹細胞制御を調節する化合物、および細胞接着を損なう分子の連続投与を含む、項目27に記載の方法。
34.前記投与工程が最初に行われ、そして前記抜き取り工程が30秒~120分の間の遅延の後に行われる、項目27記載の方法。
35.前記吸引物が、造血幹細胞、間葉系幹細胞、上皮幹細胞、間質細胞、腺細胞、神経細胞、脂肪細胞、生殖細胞、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の細胞を含む、項目27に記載の方法。
36.前記1つまたは複数の細胞の10%未満が血液細胞である、項目35に記載の方法。