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特開2023-18260再生可能エネルギーシステム、電力の取引方法
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  • 特開-再生可能エネルギーシステム、電力の取引方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018260
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】再生可能エネルギーシステム、電力の取引方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230201BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230201BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230201BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230201BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20230201BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230201BHJP
【FI】
H02J3/00 180
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J3/38 170
H02J7/10 P
G06Q50/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122247
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】519406809
【氏名又は名称】株式会社堤水素研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151046
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶌 宗
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】堤 香津雄
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5L049
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA05
5G503AA06
5G503GB06
5L049CC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デマンドレスポンスに関する契約に基づき、蓄電池からの電力を電力系統側に極めて短い時間内に供給することができ、電源の瞬低を未然に防止する再生可能エネルギーシステム及び電力の取引方法を提供する。
【解決手段】再生可能エネルギーシステムは、太陽電池10に接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池(水素電池15)を有する。電力系統20から電力の要求を受信したときに、二次電池の直流電力が太陽電池が接続されたインバータ12を介して電力系統に供給される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池に接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池を有し、電力系統から電力の要求を受信したときに前記二次電池の直流電力が前記太陽電池が接続されたインバータを介して前記電力系統に供給される再生可能エネルギーシステム。
【請求項2】
前記二次電池に並列に接続され前記太陽電池の電力により作動する水電解装置と、前記二次電池に並列に接続され前記水電解装置からの水素ガスにより発電を行う燃料電池とを備えた請求項1に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項3】
前記太陽電池の出力が所定の値より大きいときに前記水電解装置が作動し、前記太陽電池の出力が所定の値より小さいときに前記燃料電池が発電する請求項2に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項4】
前記太陽電池の出力が前記二次電池の満充電電圧より大きいとき前記水電解装置が作動する請求項3に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項5】
前記インバータの入力側に電力計が取り付けられている請求項3に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項6】
前記インバータの入力側に電力量計が取り付けられている請求項3または5に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項7】
電力事業者からの送電要求に対して設備事業者が所定の電力を所定の時間内に前記電力事業者の電力系統に送電することを定めたデンマンド契約に基づき、太陽電池が接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池からの電力を前記電力事業者の電力系統に送電する電力の取引方法。
【請求項8】
前記太陽電池からの直流電力により動作する水電解装置が前記二次電池に並列に接続されており、前記水電解装置からの水素ガスが前記二次電池に並列に接続された燃料電池に供給され、前記燃料電池からからの電力が前記電力事業者の電力系統に送電可能である請求項7に記載の電力の取引方法。
【請求項9】
前記電力事業者の電力系統にインバータを介して送電する電力を前記インバータに取り付けた電力計に基づき前記デマンド契約が確認可能となっている請求項8に記載の電力の取引方法。
【請求項10】
前記インバータに取り付けた電力量計に基づき前記デマンド契約にしたがい電力使用料金の請求が可能な請求項9記載の電力の取引方法。
【請求項11】
前記インバータが前記電気事業者の資産である請求項9に記載の電力の取引方法。。
【請求項12】
前記電力使用料金と前記インバータの使用料が前記デマンド契約に基づき相殺される請求項11に記載の電力の取引方法。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギービジネスに関するものであり、再生可能エネルギーで電力系統を構成するエネルギーシステムとその電力の取引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーとして太陽光、風力、バイオマス及び潮流・潮力等の自然エネルギーを用いた発電設備が種々計画されている。これら自然エネルギーを利用した発電設備の最大の特徴は環境に対する負荷が少ない点であり、最大の弱点は発生電力の調節が困難であることである。
【0003】
特許文献1には、太陽光発電装置と燃料電池発電装置を連系させる電力系統において、太陽光発電装置に取り付けたパワーコンディショナと燃料電池発電装置に取り付けたパワーコンディショナと通信回線で接続して電力系統の安定を図る技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、風力発電システムと蓄電装置システムを有する蓄電装置併設型風力発電システムにおいて、風力発電システムが連系点において条件を満たした場合、蓄電装置システムに無効電力補償運転を指令する技術が開示されている。
【0005】
太陽光発電や風力発電はその発電力が自然の成り行きなので、電力系統を安定して運転するためには、別に発電力を調整する発電設備が必要となる。すなわち、再生可能エネルギーを用いた発電設備の発電量が低下したとき、電力系統の安定を保つために発電能力を補う発電装置が必要となり、再生可能エネルギーを用いた発電設備の発電量が増加したとき、その他の発電設備の発電量を減少させて、電力系統全体として電力の需給バランスを図る必要がある。
【0006】
電力系統において、電力供給の安定を維持するための需給バランスは、従来電力会社が行ってきており、電力会社は供給量よりも過剰に発電設備を用意しておく必要がある。常時使用しない発電設備を維持・管理するのは手間とコストがかかり経営上の負担となる。
【0007】
電力系統において電力不足が生じたときに、需要家が節電することで余裕が生じた電力を発電した電力と同等とみなし、電力会社からの依頼に応じて節電した場合に契約に基づき対価を支払う方法が提案されており、これをコマンドレスポンスと称している。節電を行う代わりに電力の供給を行うこともコマンドレスポンスに相当する。特許文献3には電力会社からの要請に応じて余剰電力が生じた場合の送電電力の削減に関する電力取引方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-138988号公報
【特許文献2】国際公開2020/152752号
【特許文献3】特開2016-167191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、太陽電池や風力発電等の自然エネルギーを利用した発電設備は、その発電量が自然の成り行きになるので、再生可能エネルギーだけで電力系統を構成することができない。安定な電力供給を行うためには、別に発電量を調整する発電所が必要であり、そのための設備の維持・管理に手間とコストがかかる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するために、本発明に係る再生可能エネルギーシステムは、太陽電池に接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池を有し、電力系統から電力の要求を受信したときに前記二次電池の直流電力が前記太陽電池が接続されたインバータを介して前記電力系統に供給される。
【0011】
この構成において、電力事業者からデマンド契約に基づく送電の依頼があったときは、二次電池に蓄えられた電気により電力系統側に送電する。
【0012】
本発明に係る再生可能エネルギーシステムは、前記二次電池に並列に接続され前記太陽電池の電力により作動する水電解装置と、前記二次電池に並列に接続され前記水電解装置からの水素ガスにより発電を行う燃料電池とを備えている。
【0013】
本発明に係る再生可能エネルギーシステムは、前記太陽電池の出力が所定の値より大きいときに前記水電解装置が作動し、前記太陽電池の出力が所定の値より小さいときに前記燃料電池が発電する。この構成において、太陽電池の出力が二次電池の満充電電圧より大きいとき水電解装置が作動し、太陽電池の出力が二次電池が例えば20%SOCの電圧より小さいときに燃料電池が発電するように設定してもよい。
【0014】
本発明に係る再生可能エネルギーシステムは、前記インバータの入力側に電力計が取り付けられている。また、本発明に係る再生可能エネルギーシステムは、前記インバータの入力側に電力量計が取り付けられている。
【0015】
本発明に係る電力の取引方法は、電力事業者からの送電要求に対して設備事業者が所定の電力を所定の時間内に前記電力事業者の電力系統に送電することを定めたデンマンド契約に基づき、太陽電池が接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池からの電力を前記電力事業者の電力系統に送電する。
【0016】
本発明に係る電力の取引方法は、前記太陽電池からの直流電力により動作する水電解装置が前記二次電池に並列に接続されており、前記水電解装置からの水素ガスが前記二次電池に並列に接続された燃料電池に供給され、前記燃料電池からからの電力が前記電力事業者の電力系統に送電可能である。
【0017】
本発明に係る電力の取引方法は、前記電力事業者の電力系統にインバータを介して送電する電力を前記インバータに取り付けた電力計に基づき前記デマンド契約が確認可能となっている。また、本発明に係る電力の取引方法は、前記インバータに取り付けた電力量計に基づき前記デマンド契約にしたがい電力使用料金の請求が可能である。
【0018】
本発明に係る電力の取引方法において、前記インバータが前記電気事業者の資産であってもよく、更に前記デマンド契約が前記電力使用料金と前記インバータの使用料が前記デマンド契約に基づき相殺されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の再生可能エネルギーシステムを用いた電力の取引方法は、デマンドレスポンスに関する契約に基づき、蓄電池からの電力を電力系統側に極めて短い時間内に供給することができる。これにより電源の瞬低を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を実施するための機器構成の概要を示した説明図である。
図2】各構成機器の作動状況を説明するための図である。
図3A】従来の太陽電池の発電能力と発電量の関係を例示的に説明する図である。
図3B】本発明の太陽電池の発電量の推移と余剰電力の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明の実施に係る再生可能エネルギーシステムの主要機器の構成を図1に示す。太陽電池10が逆流防止のダイオード11を介してインバータ12に接続されている。インバータ12は太陽電池10からの直流電力を交流電力に変換して電力系統20に電力を供給する。
【0023】
太陽電池10の出力はダイオード11を介して高速遮断器13に接続されている。高速遮断器13はその下流に事故が生じたときにいち早く作動して、事故の影響がその上流側に波及するのを防ぐ。高速遮断器13の下流には水電解装置14,水素電池15および燃料電池16が並列に接続されている。水電解装置14で製造された水素ガスは水素タンク19に蓄えられる。水電解装置14の作動に必要な電力は高速遮断器13を経由して太陽電池10から供給される。水電解装置14には水タンク18から水が供給される。
【0024】
水素タンク19の水素ガスは燃料電池16に供給されて発電に資する。燃料電池16の排気には未反応の水素ガスと反応により生じた水蒸気が含まれている。燃料電池16の排気は水素分離装置17に流れ、ここで水素ガスは分離されて水素タンク19に流れて燃料電池16の発電に資する。水は水タンク18に流れる。燃料電池16からの直流電力はインバータ12で交流の電力に変換されて電力系統20の送電することができる。
【0025】
水素電池15は、水素を活物質とする二次電池であって、太陽電池10からの電力で充電可能である。また、水素電池15が放電することによりインバータ12介して電力系統20に電力を供給することができる。
【0026】
水素電池15は満充電状態でフローティング充電が可能であるので、特別な制御なして太陽電池10からの直流電力で満充電状態を維持することができる。従来の二次電池は満充電状態でフローティング充電を行えば、過充電による電池温度の上昇が生じ、この結果電池内部抵抗が低下して、充電電流が増加する。充電電流の増加は電池温度のさらなる上昇を招くという悪循環を引き起こし、電池内部の温度上昇による電池性能の劣化を招く。通常の二次電池は過充電すると電池が損傷しその寿命に大きな影響を受けるので満充電状態でフローティング充電することができない。
【0027】
しかし、水素ガスを封入した水素電池であれば自然放電等で減少した電気量をフローティング充電して常に満充電状態を維持することができる。デマンド(送電の要求)に即応することが可能となる。本発明の水素電池は常に満充電状態を維持している。
【0028】
本発明の再生可能エネルギーシステム(以下、本エネルギーシステムと称す)の設備を運用する者(以下単に、設備事業者と称す)と電力系統を運用する者(以下単に、電力事業者と称す)は、デマンドレスポンスに関する契約(以下、DR契約と称す)を締結する。DR契約は、電力事業者から電力の供給依頼(以下、デマンドと称す)があったときに速やかに定められた電力を電力事業者の電力系統に供給する旨が規定されている。
【0029】
デマンドから電力の供給までの時間は短いほうが好ましい。本発明の水素電池は200C放電が可能であり即応性を有している。水素電池からの電力の応答は、原理的に1サイクル以内に可能であり、これにインバータの遅れが加算される。本エネルギーシステムにおいてデマンドから電力供給までの時間は主としてインバータの応答性に依存する。
【0030】
電力事業者からのデマンドの依頼は電話連絡もしくは通信回線を介した自動もしくは手動で行われるものとし、デマンドを受信した設備事業者は速やかに所要電力を電力系統に送出する。設備事業者はデマンドを受信すると水素電池に蓄えられた電気を放電してインバータを介して交流電力として電力事業者の電力系統に送電する。燃料電池はその構造上即応性に欠けるところ水素電池は応答性に優れた二次電池であり速やかに放電ができるのでデマンドに即座に対応することができる。
【0031】
本発明にかかる電力の取引方法は、概ね、次のステップから構成される。
(1)電力事業者からの送電要求に対して所定の電力を所定の時間内に電力事業者の電力系統に送電することを定めたデンマンド契約を締結するステップと、電力事業者からの送電要求を受信するステップと、デンマンド契約に基づき太陽電池が接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池からの電力を電力事業者の電力系統に送電するステップとを備えた電力の取引方法。
【0032】
(2)二次電池に並列に接続された水電解装置が太陽電池からの直流電力により作動するステップと、水電解装置からの水素ガスを燃料電池に供給するステップと、燃料電池の出力を電力事業者の電力系統に送電するステップとを備えた電力の取引方法。
【0033】
(3)インバータに取り付けられた電力計に基づき送電電力を確認するステップと、DR契約に基づき契約電力料金を計算するステップと、契約電力料金を電力事業者に請求するステップを有する電力の取引方法。
【0034】
(4)インバータに取り付けた電力量計に基づきDR契約にしたがい電力使用料金を算出するステップと、電力使用料金を電力事業者に請求するステップを有する電力の取引方法。
(5)電力使用料金を算出するステップからインバータの使用料を控除するステップを有する電力の取引方法。
【0035】
デマンド応答に対応する電気料金は、契約による契約電気料(以下、契約電気料)と従量による電気料(以下、使用電気料)の2種類の電気料金となる。契約電気料はDR契約に基づく電気料金であり、デマンドの対する電力により決める。例えば、1MWをデマンド電力とし、年間2万円/kWで契約すると、年間の契約電気料は2x1000=2,000万円となる。支払いは年度末に設備事業者からの請求により電力事業者が支払う。
【0036】
契約条件はこれに限らず両者間で自由に決めることできる。電力計(図示せず)をインバータの前もしくは後ろに設けて所要の電力が送電されたことを確認することができる。電力計にレコーダを取り付けておけば記録を残すことができる。使用電気料は送電した電気量(kWh)に応じて、毎月末に設備事業者から電力事業者に請求する。
【0037】
デンマンドに応答しない通常の運用においては、太陽電池10からの電力はインバータ12を介して電力系統20に送電することが可能である。電力系統20に電力の余力があり送電の必要がないときは、太陽電池10の電力は水電解装置14に送られて水素ガスと酸素ガスに分解されそれぞれ水素タンク19と酸素タンク(図示せず)に有効に貯蔵される。余剰電力が水素ガスの形で蓄えられることになる。
【0038】
電力系統20の電圧が低下するなどして、電力系統に電力の不足が生じたときは、燃料電池16を作動させて電力系統20に電力を供給する。燃料電池16に供給する水素ガスは電力に余裕のある時に水電解して蓄えた水素を使用する。余剰電力は水素電池15の充電にも使用可能である。
【0039】
インバータの前もしくは後ろに電力量計(図示せず)を設けておけば、設備事業者が電力事業者に送電した電気量を計測することができる。電力量計にレコーダを取り付けておけば日ごと乃至は月ごとの電力量の記録を残すことができる。電力事業者に送電した電気量に対して、設備事業者は電力事業者に使用電気料の支払いを請求することができる。その単価も、電力事業者と設備事業者の話し合いで決めることができる。
【0040】
インバータ12が電力事業者の資産であれば、契約に従い、インバータの使用料を前述の使用電気料から控除することができる。インバータ12が高価であることを考慮すれば、設備事業者がインバータ12を借用するメリットはある。またインバータの使用時間を、例えば夜間限定するなどすれば電力事業者にとってもメリットのある契約条件となる。
【0041】
図2は、各装置の動作の状況を表した図であり、太陽電池の出力電圧を横軸にとり、高速遮断器を流れる電流を上流に向かう方向を正にとり示してある。太陽電池10からの出力が大きく、その電圧が高いときは太陽電池10からの電流は水電解装置14に流れて水素ガスと酸素ガスが生産される(図2の(3))。このとき、通常水素電池15は満充電状態にある。太陽電池10からの出力が減少して、その電圧が小さいときは太陽電池の出力が大きいときに貯めた水素ガスと酸素ガスを用いて燃料電池16が発電して電力系統に送電する(図2の(1))。このとき、通常水素電池15は低充電状態にある。
【0042】
太陽電池10からの出力がある程度高いときにデマンドを受信すれば、太陽電池10の出力を用いてデマンドに対応する。太陽電池10は既に発電状態にあるのでデマンドに対して即応することができる。太陽電池10からの出力がないとき、または、小さいときにデマンドを受信すれば、水素電池15が放電してデマンドに対応する(図2の(2)の左側)。放電した水素電池15は太陽電池10からの電力でフローティング充電される(図2の(2)の右側)。
【0043】
図3Aは、太陽電池10の好天時の発電量と時刻の関係を模式的に表したグラフである。太陽電池10の出力は日の出から徐々に上昇して昼を過ぎる頃にピークとなり、その後徐々に低下する。夜間には発電しない。定格1MWの太陽電池は1.5MWの発電能力を有しているところ、1MWを超える電力は運用において1MWに制限され、図3Aの斜線で示される部分の電力が電力系統に送り出される。
【0044】
図3Aの斜線の部分の太陽電池の発電量を終日1MWの発電量に対する面積比で求めると12.5%となる。定格1MWの太陽電池は1年間に下式で示す電力を系統側に送電することになる。
24hx365x0.125x1MW=1095MWh (1)
【0045】
定格電力を超えて発電能力の限界まで発電して、その電力を水電解装置で水素ガスの形に変換して貯蔵して、貯蔵した水素ガスを用いて燃料電池で発電して1MWの電力を常時系統側に送電するためには、8倍の発電能力を有する太陽電池が必要になる。そのときの年間送電量は下式となる。これは、図3Aの太陽電池の8台分である。
24hx365x1MW=8760MWh (2)
【0046】
図3Bは従来の8倍の発電能力を有する太陽電池を用いた場合の好天時の発電の状況を模式的に表したグラフである。1MWを超える電力を水電解装置で水素ガスの形で蓄えて、太陽電池からの出力がないとき蓄えた水素ガスを用いて燃料電池で発電して電力系統に送電すれば、1日中1MWの電源を得ることになる。
【0047】
電力系統の負荷が増加したときは、燃料電池からの電力を活用することにより電力系統側は火力発電所の出力を増やす必要がない。また、電力系統の負荷が減少したときは燃料電池からの送電量を減らすことにより、電力系統の発電量を減らす必要がなく、火力発電所は負荷を下げて低効率運転をする必要がない。自然エネルギーを利用した発電設備が、安定な電力供給を行うためには、火力発電所など別に発電量を調整する発電所が必要であることは前述したが、水電解装置と燃料電池とを組み合わせた本発明による再生可能エネルギーシステムおよびその取引方法を採用すれば、別途発電量を調整する発電所を必要としない。
【0048】
本発明の再生可能エネルギーシステムは、瞬時の電力調整を蓄電池が行うことにより、瞬低、停電、ブラックアウトを防ぎ、発電所のガバナフリーによる高効率運転が可能となる。また、長期にわたる電力調整は電力を水電解して水素ガスの形で貯蔵して、燃料電池で電力に変換して電力の需給バランスを図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る再生可能エネルギーを利用した電力の取引方法は、電力事業に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 太陽電池
11 逆流防止ダイオード
12 インバータ
13 高速遮断器
14 水電解装置
15 水素電池
16 燃料電池
17 水素分離装置
18 水タンク
19 水素タンク
20 電力系統

図1
図2
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2022-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池に接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池と、前記二次電池に並列に接続され前記太陽電池の電力により作動する水電解装置と、前記二次電池に並列に接続され前記水電解装置からの水素ガスにより発電を行う燃料電池とを備え、電力系統から電力の要求を受信したときに最初に前記二次電池の直流電力が前記電力系統に供給され、その後に前記燃料電池からの直流電力が前記電力系統に供給される再生可能エネルギーシステム。
【請求項2】
前記太陽電池の出力が所定の値より大きいときに前記水電解装置が作動し、前記太陽電池の出力が所定の値より小さいときに前記燃料電池が発電して前記電力系統に直流電力を供給する請求項1に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項3】
前記太陽電池の出力が前記二次電池の満充電電圧より大きいとき前記水電解装置が作動する請求項2に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項4】
水素ガスを封入した前記二次電池は前記太陽電池の出力で常に満充電状態を維持している請求項3に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項5】
前記インバータの入力側に電力量計が取り付けられている請求項2に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項6】
前記インバータの入力側に電力計が取り付けられている請求項2に記載の再生可能エネルギーシステム。
【請求項7】
電力事業者からの送電要求に対して設備事業者が所定の電力を所定の時間内に前記電力事業者の電力系統に送電することを定めたデマンド契約に基づき、最初に太陽電池接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池からの電力を前記電力事業者の電力系統に送電し、その後に前記二次電池に並列に接続された水電解装置からの水素ガスにより発電を行う燃料電池からの電力を送電する電力の取引方法。
【請求項8】
前記電力事業者の電力系統にインバータを介して送電する電力を前記インバータに取り付けた電力計に基づき前記デマンド契約が確認可能となっている請求項7に記載の電力の取引方法。
【請求項9】
前記インバータに取り付けた電力量計に基づき前記デマンド契約にしたがい電力使用料金の請求が可能な請求項8記載の電力の取引方法。
【請求項10】
前記インバータが前記電気事業者の資産である請求項9に記載の電力の取引方法。。
【請求項11】
前記インバータの使用料が前記デマンド契約に基づき前記電力使用料金から控除される請求項10に記載の電力の取引方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明に係る電力の取引方法は、電力事業者からの送電要求に対して設備事業者が所定の電力を所定の時間内に前記電力事業者の電力系統に送電することを定めたデマンド契約に基づき、太陽電池が接続され満充電状態でフローティング充電が可能な二次電池からの電力を前記電力事業者の電力系統に送電する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
水素電池15は満充電状態でフローティング充電が可能であるので、特別な制御なしで太陽電池10からの直流電力で満充電状態を維持することができる。従来の二次電池は満充電状態でフローティング充電を行えば、過充電による電池温度の上昇が生じ、この結果電池内部抵抗が低下して、充電電流が増加する。充電電流の増加は電池温度のさらなる上昇を招くという悪循環を引き起こし、電池内部の温度上昇による電池性能の劣化を招く。通常の二次電池は過充電すると電池が損傷しその寿命に大きな影響を受けるので満充電状態でフローティング充電することができない。