(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182600
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】耐候性繊維強化プロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 5/10 20060101AFI20231219BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20231219BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20231219BHJP
C08L 23/14 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/524 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/36 20060101ALI20231219BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20231219BHJP
C08K 3/017 20180101ALI20231219BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08J5/10 CES
C08L23/10
C08L23/12
C08L23/14
C08K5/13
C08K5/524
C08K5/36
C08K7/14
C08K3/017
C08K5/3492
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023147014
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2020543996の分割
【原出願日】2019-02-21
(31)【優先権主張番号】62/637,675
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,アーロン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】グリンステイナー,ダーリン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温及び/又は紫外光に曝露された後に、安定した状態をより良好に維持することができるという点で耐候性であるポリマー組成物を提供する。
【解決手段】ポリマーマトリクスは組成物の約20重量%~約90重量%を構成し、組成物はポリマーマトリクス内に分配されている複数の長い強化繊維を更に含み、繊維は組成物の約10重量%~約60重量%を構成する。更に、組成物はまた、立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含む安定剤系も含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化ポリマー組成物であって、
プロピレンポリマー及び帯電防止剤を含み、前記組成物の約20重量%~約90重量%を構成するポリマーマトリクス;
前記ポリマーマトリクス内に分配されており、前記組成物の約10重量%~約60重量%を構成する複数の長い強化繊維;及び
立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含む安定剤系;
を含む、前記繊維強化ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ホスファイト酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比が約1:1~約5:1である、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項3】
前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比が約2:1~約10:1である、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項4】
前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比が約2:1~約10:1である、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項5】
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、約0.01~約1重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項6】
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、次の一般構造(IV)、(V)、及び(VI):
【化1】
(式中、
a、b、及びcは、独立して1~10の範囲であり;
R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択され;
R
13、R
14、及びR
15は、独立して、次の一般構造(VII)及び(VIII):
【化2】
(式中、
dは1~10の範囲であり;
R
16、R
17、R
18、及びR
19は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
の内の1つによって表される基から選択される)
の内の1つを有する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項7】
前記立体障害フェノール酸化防止剤が一般構造(VI)を有する、請求項6に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項8】
前記立体障害フェノール酸化防止剤がトリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレ-トを含む、請求項7に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項9】
前記ホスファイト酸化防止剤が約0.02~約2重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項10】
前記ホスファイト酸化防止剤が、次の一般構造(IX):
【化3】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
を有するアリールジホスファイトである、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項11】
前記アリールジホスファイトが、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、又はそれらの組合せを含む、請求項10に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項12】
前記チオエステル酸化防止剤が、約0.04~約4重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項13】
前記チオエステル酸化防止剤が、次の一般構造:
R11-O(O)(CH2)x-S-(CH2)y(O)-R12
(式中、
x及びyは、独立して1~10であり;
R11及びR12は、独立して、線状又は分岐のC6~C30アルキルから選択される)
を有するチオカルボン酸エステルである、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項14】
前記チオカルボン酸エステルが、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジ-2-エチルヘキシル-チオジプロピオネート、ジイソデシルチオジプロピオネート、又はそれらの組合せである、請求項13に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項15】
前記ポリマーマトリクスが、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項16】
前記繊維強化組成物が約0.1重量%~約15重量%の相溶化剤を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項17】
前記相溶化剤が、極性官能基で修飾されているポリオレフィンを含む、請求項16に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項18】
前記繊維がガラス繊維である、請求項1に記載の繊維強化組成物。
【請求項19】
前記繊維が前記組成物の長手方向に配向されている、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
【請求項20】
請求項1に記載の繊維強化組成物を含む成形部品。
【請求項21】
射出成形されている、請求項20に記載の成形部品。
【請求項22】
約2.5ミリメートル以下の壁厚を有する、請求項20に記載の成形部品。
【請求項23】
請求項1に記載の繊維強化組成物を含む自動車部品。
【請求項24】
繊維強化ポリマー組成物において使用するための安定剤系であって、
前記安定剤系は、立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含み、前記系内の前記ホスファイト酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約1:1~約5:1であり、前記系内の前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約2:1~約10:1であり、前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約2
:1~約10:1である、前記安定剤系。
【請求項25】
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、約0.01~約1重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項24に記載の安定剤系。
【請求項26】
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、次の一般構造(IV)、(V)、及び(VI):
【化4】
(式中、
a、b、及びcは、独立して1~10の範囲であり;
R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択され;
R
13、R
14、及びR
15は、独立して、次の一般構造(VII)及び(VIII):
【化5】
(式中、
dは1~10の範囲であり;
R
16、R
17、R
18、及びR
19は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
の内の1つによって表される基から選択される)
の内の1つを有する、請求項24に記載の安定剤系。
【請求項27】
前記立体障害フェノール酸化防止剤が一般構造(VI)を有する、請求項26に記載の安定剤系。
【請求項28】
前記立体障害フェノール酸化防止剤がトリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレ-トを含む、請求項27に記載の安定剤系。
【請求項29】
前記ホスファイト酸化防止剤が約0.02~約2重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項24に記載の安定剤系。
【請求項30】
前記ホスファイト酸化防止剤が、次の一般構造(IX):
【化6】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
を有するアリールジホスファイトである、請求項24に記載の安定剤系。
【請求項31】
前記アリールジホスファイトが、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリト
ールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、又はそれらの組合せを含む、請求項30に記載の安定剤系。
【請求項32】
前記チオエステル酸化防止剤が、約0.04~約4重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項24に記載の安定剤系。
【請求項33】
前記チオエステル酸化防止剤が、次の一般構造:
R11-O(O)(CH2)x-S-(CH2)y(O)-R12
(式中、
x及びyは、独立して1~10であり;
R11及びR12は、独立して、線状又は分岐のC6~C30アルキルから選択される)
を有するチオカルボン酸エステルである、請求項24に記載の安定剤系。
【請求項34】
前記チオカルボン酸エステルが、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジ-2-エチルヘキシル-チオジプロピオネート、ジイソデシルチオジプロピオネート、又はそれらの組合せである、請求項33に記載の安定剤系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、米国出願第62/637,675号(2018年3月2日出願)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]自動車部品は、一般に広範囲のポリマー材料を含む。例えば、ポリプロピレン材料は自動車の内装部品においてしばしば使用される。しかしながら、かかる材料を自動車部品において使用しようと試みる際に製造者が直面する通常の問題の1つは、それらが高温又は紫外光に曝露された際に劣った性能を示す傾向があることである。より「耐候性」の材料の開発を助けるために、安定化系を組成物中に導入する種々の試みがなされてきた。残念ながら、いずれの系も今日まで満足できる性能を示していない。したがって、高温及び/又は紫外光に曝露された後に、安定した状態をより良好に維持することができるという点で耐候性であるポリマー組成物に対する必要性が現在存在する。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によれば、プロピレンポリマーを含むポリマーマトリクスを含む繊維強化ポリマー組成物が開示される。ポリマーマトリクスは組成物の約20重量%~約90重量%を構成し、組成物はポリマーマトリクス内に分配されている複数の長い強化繊維を更に含み、繊維は組成物の約10重量%~約60重量%を構成する。更に、組成物はまた、立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含む安定剤系も含む。
【0004】
[0004]本発明の別の実施形態によれば、繊維強化ポリマー組成物において使用するための安定剤系が開示される。安定剤系は、立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含み、系内のホスファイト酸化防止剤と立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約1:1~約5:1であり、系内のチオエステル酸化防止剤と立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約2:1~約10:1であり、チオエステル酸化防止剤とヒンダードフェノール酸化防止剤との重量比は約2:1~約10:1である。
【0005】
[0005]下記において、本発明の他の特徴及び態様をより詳細に示す。
[0006]当業者に対するそのベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面の参照を含む本明細書の残りの部分においてより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0007]
図1は、本発明の繊維強化ポリマー組成物を形成するために使用することができるシステムの一実施形態の概略図である。
【
図2】[0008]
図2は、
図1に示すシステムにおいて使用することができる含浸ダイの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0009]本明細書及び図面における参照符号の繰り返しの使用は、本発明の同一又は類似の特徴又は構成要素を表すことを意図している。
[0010]当業者であれば、本議論は例示的な実施形態の記載にすぎず、本発明のより広い態様を限定することは意図しないことを理解する。
【0008】
[0011]一般的に言えば、本発明は、種々の条件(例えば高い温度)に曝露された後であ
っても良好な性能を示すことができる成形部品(例えば射出成形部品)において使用するための耐候性繊維強化組成物に関する。より詳しくは、本組成物は、プロピレンポリマーを含むポリマーマトリクス内に分配されている複数の長い強化繊維を含む。長繊維は、例えば、組成物の約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約15重量%~約55重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約50重量%を構成し得る。また、ポリマーマトリクスは、通常は組成物の約20重量%~約90重量%、幾つかの実施形態においては約35重量%~約85重量%、幾つかの実施形態においては約50重量%~約80重量%を構成する。
【0009】
[0012]本組成物はまた、ヒンダードフェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含む種々の酸化防止剤の相乗的ブレンドを含む安定剤系も含む。本発明者らは、これらの成分のそれぞれの特定の性質及び濃度を選択的に制御することによって、得られる組成物が高温に曝露された後においても機械特性において優れた安定性を有することができることを見出した。例えば、本組成物は、初期において、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃で測定して約15kJ/m2より高く、幾つかの実施形態においては約20~約80kJ/m2、幾つかの実施形態においては約30~約60kJ/m2のシャルピーノッチ無し衝撃強さを示すことができる。初期引張及び曲げ機械特性もまた良好であり得る。例えば、本組成物は、約20~約300MPa、幾つかの実施形態においては約30~約200MPa、幾つかの実施形態においては約40~約150MPaの引張り強さ;約0.5%以上、幾つかの実施形態においては約0.6%~約5%、幾つかの実施形態においては約0.7%~約2.5%の引張破断歪み;及び/又は約3,500MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態においては約4,000MPa~約15,000MPa、幾つかの実施形態においては約5,000MPa~約10,000MPaの引張弾性率;を示すことができる。引張特性は、ISO試験No.527-1:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃又は80℃で求めることができる。本組成物はまた、約50MPa~約500MPa、幾つかの実施形態においては約80MPa~約400MPa、幾つかの実施形態においては約100MPa~約250MPaの初期曲げ強さ;及び/又は約2000MPa~約20,000MPa、幾つかの実施形態においては約3,000MPa~約15,000MPa、幾つかの実施形態においては約4,000MPa~約10,000MPaの曲げ弾性率;を示すこともできる。曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-15e2と技術的に同等)にしたがって23℃又は80℃で求めることができる。
【0010】
[0013]しかしながら、特に、本発明者らはまた、本繊維強化組成物は高温におけるエージングに対してあまり感受性でないことも見出した。例えば、本繊維強化組成物から形成された部品は、約100℃以上、幾つかの実施形態においては約120℃~約200℃、幾つかの実施形態においては約130℃~約180℃(例えば150℃)の温度を有する雰囲気中で、約100時間以上、幾つかの実施形態においては約300時間~約3000時間、幾つかの実施形態においては約400時間~約2500時間(例えば約1,000時間)の時間エージングすることができる。エージングの後においても、機械特性(例えば、衝撃強さ、引張特性、及び/又は曲げ特性)を、上記の範囲内に維持することができる。例えば、150℃で1,000時間「エージング」した後の特定の機械特性(例えば、シャルピーノッチ無し衝撃強さ、曲げ強さなど)の、かかるエージングの前の初期機械特性に対する比は、約0.6以上、幾つかの実施形態においては約0.7以上、幾つかの実施形態においては約0.8~1.0であり得る。例えば一実施形態においては、部品は、高温(例えば150℃)で1,000時間エージングした後に、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃の温度で測定して約15kJ/m2より高く、幾つかの実施形態においては約20~約80kJ/m2、幾つかの実施形態においては約30~約60kJ/m2のシャルピーノッ
チ無し衝撃強さを示すことができる。部品はまた、例えば、高温雰囲気(例えば150℃)で1,000時間エージングした後に、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-15e2と技術的に同等)にしたがって23℃の温度で測定して約50~約500MPa、幾つかの実施形態においては約80~約400MPa、幾つかの実施形態においては約100~約250MPaの曲げ強さを示すことができる。またに、部品は、高温雰囲気(例えば150℃)で1,000時間エージングした後に、ISO試験No.527-1:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって23℃の温度で求めて約20~約300MPa、幾つかの実施形態においては約30~約200MPa、幾つかの実施形態においては約40~約150MPaの引張強さを示すことができる。
【0011】
[0014]同様に、本発明者らは、本繊維強化組成物が紫外光に対してあまり感受性でないことを見出した。例えば、繊維強化組成物から形成された部品は、1サイクル以上の紫外光に曝露することができる。例えば、一実施形態においては、試料を10サイクル(サイクルあたり2800kJ/m2又は280kJ/m2)にかけることができる。かかる曝露の後においても、機械特性(例えば、衝撃強さ、引張特性、及び/又は曲げ特性)並びにかかる特性の比を、上記の範囲内に維持することができる。
【0012】
[0015]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に記載する。
I.ポリマーマトリクス:
A.プロピレンポリマー:
[0016]ポリマーマトリクスは、組成物の連続相として機能し、1種類以上のプロピレンポリマーを含む。一般に、任意の種々のプロピレンポリマー又は複数のプロピレンポリマーの組合せ、例えばプロピレンホモポリマー(例えば、シンジオタクチック、アタクチック、アイソタクチックなど)、プロピレンコポリマー(例えば、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ヘテロ相コポリマーなど)などを使用することができる。例えば、一実施形態においては、アイソタクチック又はシンジオタクチックホモポリマーであるプロピレンポリマーを使用することができる。「シンジオタクチック」という用語は、一般に、メチル基の全部ではないにしても相当な部分がポリマー鎖に沿って反対側に交互に配されるタクチシティを指す。これに対し、「アイソタクチック」という用語は、一般に、メチル基の全部ではないにしても相当な部分がポリマー鎖に沿って同じ側に存在するタクチシティを指す。かかるホモポリマーは、約160℃~約170℃の融点を有し得る。更に他の実施形態においては、プロピレンとα-オレフィンモノマーのコポリマーを使用することができる。好適なα-オレフィンモノマーの具体例としては、エチレン、1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ペンテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘキセン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ヘプテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-オクテン;1以上のメチル、エチル、又はプロピル置換基を有する1-ノネン;エチル、メチル、又はジメチル置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレンを挙げることができる。エチレンが特に好適である。かかるコポリマーの全プロピレン含量は、約60重量%~約99重量%、幾つかの実施形態においては約70重量%~約97重量%、幾つかの実施形態においては約80重量%~約95重量%であってよい。また、全α-オレフィン含量はまた、約1重量%~約40重量%、幾つかの実施形態においては約3重量%~約30重量%、幾つかの実施形態においては約5重量%~約20重量%の範囲であってよい。
【0013】
[0017]幾つかの実施形態においては、プロピレンポリマーは、少なくとも2つの成分(即ちマトリクス相及び分散相)から形成されるヘテロ相コポリマーであってよい。マトリクス相は通常はアイソタクチックプロピレンホモポリマーを含むが、約10重量%以下、幾つかの実施形態においては約6重量%以下、幾つかの実施形態においては約4重量%以
下のような比較的少量のα-オレフィンコモノマーを使用することができる。決して必須ではないが、少量のコモノマーを含ませることによって、より低い剛性を有するが、より高い衝撃強さを有する生成物をもたらすことができる。使用される特定のポリマーにかかわらず、マトリクス相は、通常は、約3重量%以下、幾つかの実施形態においては約2重量%以下、幾つかの実施形態においては約1.5重量%以下のような低いキシレン可溶分含量を有する。分散相は、通常は上記記載のようなプロピレン/α-オレフィンコポリマー(例えばプロピレン/エチレンコポリマー)を含む。分散相においては、α-オレフィン含有物は、一般に上記のコポリマーの全含量よりも高いレベルで存在する。例えば、分散相のα-オレフィン含量は、約40重量%~約90重量%、幾つかの実施形態においては約45重量%~約85重量%、幾つかの実施形態においては約50重量%~約80重量%であってよい。また、分散相のプロピレン含量は、約10重量%~約60重量%、幾つかの実施形態においては約15重量%~約55重量%、幾つかの実施形態においては約20重量%~約50重量%の範囲であってよい。かかるヘテロ相コポリマーは個々のポリマー成分を溶融配合することによって製造することができるが、通常はそれらは反応器中で製造することが望ましい。これは、好都合には、プロピレンを第1の反応器内で重合し、高結晶質プロピレンホモポリマーを第1の反応器から第2の反応器中に移して、ここでプロピレンとα-オレフィンモノマー(例えばエチレン)をホモポリマーの存在下で共重合することによって行われる。一般に、任意の種々の公知の触媒系を使用してプロピレンポリマーを形成することができる。例えば、ポリマーは、フリーラジカル又は配位触媒(例えばチーグラー・ナッタ)又はシングルサイト配位触媒(例えばメタロセン触媒)を使用して形成することができる。
【0014】
[0018]プロピレンポリマーは、通常はISO-1133-1:2011(ASTM-D1238-13と技術的に同等)にしたがって、2.16kgの荷重及び230℃の温度で求めて、約20~約300グラム/10分又はそれ以上、幾つかの実施形態においては約50~約250グラム/10分又はそれ以下、幾つかの実施形態においては約80~約160グラム/10分のメルトフローインデックスを有する。更に、プロピレンポリマーはまた、高度の耐衝撃性を示すこともできる。この点に関して、ポリマーは、ISO試験No.180:2000(ASTM-D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃で測定して、約20kJ/m2より高く、幾つかの実施形態においては約30~約100kJ/m2、幾つかの実施形態においては約40~約80kJ/m2のアイゾットノッチ付き衝撃強さも示すことができる。特に、ポリマーは、極端な温度においてもこの強度の相当部分を保持することができる。例えば、-20℃におけるアイゾットノッチ付き衝撃強さの、23℃における衝撃強さに対する比は、約0.6以上、幾つかの実施形態においては約0.6以上、幾つかの実施形態においては約0.7~1.0であり得る。例えば、一実施形態においては、プロピレンポリマーは、ISO試験No.180:2000(ASTM-D256-10e1と技術的に同等)にしたがって23℃で測定して、約15kJ/m2より高く、幾つかの実施形態においては約20~約80kJ/m2、幾つかの実施形態においては約30~約50kJ/m2の-20℃におけるアイゾットノッチ付き衝撃強さを示すことができる。
【0015】
B.安定剤系:
[0019]上述のように、本発明の安定剤系は、立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含む種々の酸化防止剤の相乗的組合せを使用する。即ち、ホスファイト酸化防止剤とヒンダードフェノール酸化防止剤との重量比は、一般に約1:1~約5:1、幾つかの実施形態においては約1:1~約4:1、幾つかの実施形態においては約1.5:1~約3:1(例えば約2:1)である。チオエステル安定剤とホスファイト酸化防止剤との重量比はまた、一般に約1:1~約5:1、幾つかの実施形態においては約1:1~約4:1、幾つかの実施形態においては約1.5:1~約3:1(例えば約2:1)である。また、チオエステル酸化防止剤とヒンダードフェ
ノール酸化防止剤との重量比はまた、一般に約2:1~約10:1、幾つかの実施形態においては約2:1~約8:1、幾つかの実施形態においては約3:1~約6:1(例えば約4:1)である。これらの選択された比率内において、本組成物は、高温及び/又は紫外光への曝露の後においても安定した状態を維持する独特の能力を達成することができると考えられる。
【0016】
i.立体障害フェノール:
[0020]立体障害フェノールは、通常はポリマー組成物の約0.01~約1重量%、幾つかの実施形態においては約0.02重量%~約0.5重量%、幾つかの実施形態においては約0.05重量%~約0.3重量%の量で組成物内に存在する。種々の異なる化合物を使用することができるが、特に好適なヒンダードフェノール化合物は、次の一般構造(IV)、(V)、及び(VI):
【0017】
【0018】
(式中、
a、b、及びcは、独立して1~10、幾つかの実施形態においては2~6の範囲であり;
R8、R9、R10、R11、及びR12は、独立して、水素、C1~C10アルキル、及びC3~C30分岐アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、又はtert-ブチル基から選択され;
R13、R14、及びR15は、独立して、次の一般構造(VII)及び(VIII):
【0019】
【0020】
(式中、
dは1~10、幾つかの実施形態においては2~6の範囲であり;
R16、R17、R18、及びR19は、独立して、水素、C1~C10アルキル、及びC3~C30分岐アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、又はtert-ブチル基から選択される)
の内の1つによって表される基から選択される)
の内の1つを有するものである。
【0021】
[0021]上記に示す一般構造を有する好適なヒンダードフェノールの具体例としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,4-ジ-tert-ブチルフェノール;ペンタエリトリチルテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシシンナメ-ト)]メタン;ビス-2,2’-メチレン-ビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)テレフタレート;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレ-ト;1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル);1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン;1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン;1,3,5-トリス[[3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル];4,4’,4”-[(2,4,6-トリメチル-1,3,5-ベンゼントリイル)トリス-(メチレン)]トリス[2,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)];6-tert-ブチル-3-メチルフェニル;2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール);4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール);4,4’-ジヒドロキシジフェニル-シクロヘキサン;アルキル化ビスフェノール;スチレン化フェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;n-オクタデシル-3-(3’,5
’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル);4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);ステアリル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;ステアリル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメ-トなど;及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0022】
[0022]特に好適な化合物は、Irganox(登録商標)3114の名称で商業的に入手できるト
リス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレ-トのような一般式(VI)を有するものである。
【0023】
ii.ホスファイト:
[0023]ホスファイト酸化防止剤は、通常はポリマー組成物の約0.02~約2重量%、幾つかの実施形態においては約0.04重量%~約1重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約0.6重量%の量で組成物内に存在する。ホスファイト酸化防止剤としては、アリールモノホスファイト、アリールジホスファイトなどのような種々の異なる化合物、並びにそれらの混合物を挙げることができる。例えば、次の一般構造(IX):
【0024】
【0025】
(式中、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10は、独立して、水素、C1~C10アルキル、及びC3~C30分岐アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、又はtert-ブチル基から選択される)
を有するアリールジホスファイトを使用することができる。
【0026】
[0024]かかるアリールジホスファイト化合物の例としては、例えば、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(Doverphos(登録商標)S-9228
として商業的に入手できる)、及びビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(Ultranox(登録商標)626として商業的に入手できる)が挙
げられる。また、好適なアリールモノホスファイトとしては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168として商業的に入手できる);ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト(Irgafos(登録商標)38として商業的に入手できる)などを挙げることができる。
【0027】
iii.チオエステル:
[0025]チオエステル酸化防止剤は、通常はポリマー組成物の約0.04~約4重量%、幾つかの実施形態においては約0.08重量%~約2重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約1.2重量%の量で組成物内に存在する。本発明において使用するのに特に好適なチオエステル酸化防止剤は、次の一般構造:
R11-O(O)(CH2)x-S-(CH2)y(O)-R12
(式中、
x及びyは、独立して1~10、幾つかの実施形態においては1~6、幾つかの実施形態においては2~4(例えば2)であり;
R11及びR12は、独立して、線状又は分岐のC6~C30アルキル、幾つかの実施形態においてはC10~C24アルキル、幾つかの実施形態においてはC12~C20アルキル、例えばラウリル、ステアリル、オクチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、オレイルなどから選択される)
を有するもののようなチオカルボン酸エステルである。
【0028】
[0026]好適なチオカルボン酸エステルの具体例としては、例えば、ジステアリルチオジプロピオネート(Irganox(登録商標)PS 800として商業的に入手できる)、ジラウリル
チオジプロピオネート(Irganox(登録商標)PS 802として商業的に入手できる)、ジ-
2-エチルヘキシル-チオジプロピオネート、ジイソデシルチオジプロピオネートなどを挙げることができる。
【0029】
C.他の成分:
[0027]プロピレンポリマー及び帯電防止剤に加えて、ポリマーマトリクスにはまた、種々の他の成分を含ませることもできる。かかる随意的な成分の例としては、例えば、相溶化剤、安定剤(例えば、紫外光安定剤、光安定剤、熱安定剤など)、粒状フィラー、滑剤、着色剤、流動性調整剤、並びに特性及び加工性を向上させるために加える他の材料を挙げることができる。例えば幾つかの実施形態においては、組成物にUV安定剤を含ませることができる。好適なUV安定剤としては、例えば、ベンゾフェノン(例えば、(2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)フェニル)フェニル,メタノン(Chimassorb(登録商標)81)、ベンゾトリアゾール(例えば、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-α-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)234)、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登
録商標)329)、2-(2-ヒドロキシ-3-α-クミル-5-tert-オクチルフェ
ニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Tinuvin(登録商標)928)など)、トリアジン(例えば、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-s-トリアジン(Tinuvin(登録商標)1577)、立体障害アミン(例えば、ビス(2,2,
6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケ-ト(Tinuvin(登録商標)770)、又はジメチルスクシネートと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンのポリマー(Tinuvin(登録商標)622)など、及びそれらの混合物を挙げることができる。使用する場合には、かかるUV安定剤は、通常は組成物の約0.05重量%~約2重量%、幾つかの実施形態においては約0.1重量%~約1.5重量%、幾つかの実施形態においては約0.2重量%~約1.0重量%を構成する。
【0030】
[0028]ポリマー組成物にはまた、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、フタロシアニン、アントラキノン、カーボンブラック、金属顔料など、並びにそれらの混合物のような顔料を含ませることもできる。かかる顔料は、通常は組成物の約0.01~約3重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約2重量%を構成する。所望であれば、相溶化剤を使用して、長繊維とプロピレンポリマーとの間の接着の程度を増大させることもできる。使用する場合には、かかる相溶化剤は、通常はポリマー組成物の約0.1重量%~約15重量%、幾つかの実施形態においては約0.5重量%~約10
重量%、幾つかの実施形態においては約1重量%~約5重量%を構成する。幾つかの実施形態においては、相溶化剤は、極性官能基で修飾されているポリオレフィンを含むポリオレフィン相溶化剤であってよい。ポリオレフィンは、オレフィンのホモポリマー(例えばポリプロピレン)、又はコポリマー(例えば、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマーなど)であってよい。官能基は、ポリオレフィン骨格上にグラフトすることができ、又はポリマー(例えばブロック又はランダムコポリマー)のモノマー成分などとして導入することができる。特に好適な官能基としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水マレイン酸とジアミンの反応生成物、ジクロロマレイン酸無水物、マレイン酸アミドなどが挙げられる。
【0031】
[0029]使用する特定の成分にかかわらず、原材料(例えば、プロピレンポリマー、安定化系、相溶化剤など)は、通常は、長繊維で強化する前に一緒に溶融ブレンドする。原材料は、材料を分散ブレンドする溶融ブレンド装置に同時か又は逐次のいずれかで供給することができる。バッチ及び/又は連続溶融ブレンド技術を使用することができる。例えば、ミキサー/ニーダー、バンバリーミキサー、ファレル連続ミキサー、一軸押出機、二軸押出機、ロールミルなどを利用して材料をブレンドすることができる。1つの特に好適な溶融ブレンド装置は、共回転二軸押出機(例えば、Ramsey N.J.のWerner & Pfleider Corporationから入手できるZSK-30二軸押出機)である。かかる押出機には、供給ポート及び通気ポートを含ませることができ、高強度の分配及び分散混合を与えることができる。例えば、プロピレンポリマーを二軸押出機の供給ポートに供給して溶融させることができる。その後、酸化防止剤及び/又は安定剤をポリマー溶融物中に注入することができる。或いは、酸化防止剤及び/又は安定剤は、押出機中に、その長さに沿った異なる位置において別々に供給することができる。選択される特定の溶融ブレンド技術にかかわらず、原材料は、十分な混合を確実にするために高い剪断/圧力及び熱の下でブレンドする。例えば、溶融ブレンドは、約150℃~約300℃、幾つかの実施形態においては約155℃~約250℃、幾つかの実施形態においては約160℃~約220℃の温度において行うことができる。
【0032】
[0030]上述のように、本発明の幾つかの実施形態は、ポリマーマトリクス内で複数のポリマー(例えば、プロピレンホモポリマー及び/又はプロピレン/α-オレフィンコポリマー)のブレンドを使用することを意図する。かかる実施形態においては、ブレンドにおいて使用するポリマーのそれぞれを上記に記載の方法で溶融ブレンドすることができる。しかしながら、更に他の実施形態においては、第1のプロピレンポリマー(例えばホモポリマー又はコポリマー)を溶融ブレンドして濃縮物を形成し、次にこれを下記に記載の方法で長繊維で強化して前駆体組成物を形成することが望ましい可能性がある。前駆体組成物はその後、第2のプロピレンポリマーとブレンド(例えば乾式ブレンド)して、所望の特性を有する繊維強化組成物を形成することができる。また、ポリマーマトリクスを長繊維で強化する前及び/又は強化している間に、更なるポリマーを加えることもできることも理解すべきである。
【0033】
II.長繊維:
[0031]本発明の繊維強化組成物を形成するために、一般に、長繊維をポリマーマトリクス内に埋封する。「長繊維」という用語は、一般に、連続しておらず、約1~約25ミリメートル、幾つかの実施形態においては約1.5~約20ミリメートル、幾つかの実施形態においては約2~約15ミリメートル、幾つかの実施形態においては約3~約12ミリメートルの長さを有する繊維、フィラメント、ヤーン、又はロービング(例えば、繊維の束)を指す。上述したように、組成物の独特の特性のために、繊維の相当部分は、成形部品(例えば射出成形)に成形した後においても比較的大きな長さを維持し得る。即ち、組成物中の繊維のメジアン長さ(D50)は、約1ミリメートル以上、幾つかの実施形態においては約1.5ミリメートル以上、幾つかの実施形態においては約2.0ミリメートル
以上、幾つかの実施形態においては約2.5~約8ミリメートルであり得る。
【0034】
[0032]繊維は、金属繊維;ガラス繊維(例えば、E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラス)、炭素繊維(例えば、グラファイト)、ホウ素繊維、セラミック繊維(例えば、アルミナ又はシリカ)、アラミド繊維(例えば、Kevlar(登録商標))、合成有機繊維(例えば、ポリアミド、ポリエチレン、パラフェニレン、テレフタルアミド、ポリエチレンテレフタレート、及びポリフェニレンスルフィド)、並びに熱可塑性組成物を強化することに関して公知の種々の他の天然又は合成の無機又は有機繊維材料のような当該技術において公知の任意の通常の材料から形成することができる。ガラス繊維及び炭素繊維が特に望ましい。かかる繊維は、しばしば約4~約35マイクロメートル、幾つかの実施形態においては約9~約35マイクロメートルの呼び径を有する。繊維は、撚られていても、直線状であってもよい。所望であれば、繊維は、単一の繊維タイプ又は異なる複数のタイプの繊維を含むロービング(例えば繊維の束)の形態であってよい。個々のロービング中に異なる繊維を含ませることができ、或いはそれぞれのロービングに異なるタイプの繊維を含ませることができる。例えば一実施形態においては、幾つかのロービングに炭素繊維を含ませることができ、一方で他のロービングにガラス繊維を含ませることができる。それぞれのロービング中に含まれる繊維の数は一定であってよく、又はロービングごとに変動してよい。通常は、ロービングには、約1,000の繊維~約50,000の個々の繊維、幾つかの実施形態においては約2,000~約40,000の繊維を含ませることができる。
【0035】
[0033]一般に、繊維をポリマーマトリクス中に導入するために、任意の種々の異なる技術を使用することができる。長繊維は、ポリマーマトリクス内にランダムに分配することができ、あるいは整列した様式で分配することができる。例えば一実施形態においては、最初に連続繊維をポリマーマトリクス中に含浸させて押出物を形成し、その後にそれを冷却し、次にペレットに切断して、得られる繊維が長繊維について所望の長さを有するようにすることができる。かかる実施形態においては、ポリマーマトリクス及び連続繊維(例えばロービング)は、通常は含浸ダイを通して引抜成形して、繊維とポリマーとの間の所望の接触を達成する。引抜成形はまた、繊維を離隔させて、ペレットの主軸(例えば長さ)に平行な長手方向に配向することを確実にすることも助けることができ、これにより機械特性が更に増大する。例えば、
図1を参照すると、引抜成形プロセス10の一実施形態が示されており、ここでは、ポリマーマトリクスを押出機13から含浸ダイ11に供給し、一方で連続繊維12をプーラー装置18によってダイ11を通して牽引して複合構造体14を製造する。通常のプーラー装置としては、例えばキャタピラプーラー及び往復プーラーを挙げることができる。随意的であるが、複合構造体14はまた、押出機16に取り付けられた被覆ダイ15(それを通して被覆樹脂を塗布して被覆構造体17を形成する)を通して牽引することもできる。
図1に示されるように、被覆構造体17は、次にプーラーアセンブリ18によって牽引してペレタイザ19に供給し、構造体17を、長繊維強化組成物を形成するために所望の寸法に切断する。
【0036】
[0034]引抜成形プロセス中に使用する含浸ダイの性質を選択的に変化させて、ポリマーマトリクスと長繊維との間の良好な接触を達成するのを助けることができる。好適な含浸ダイシステムの例は、Hawleyの再発行特許第32,772号;Reganらの第9,233,
486号;及びEastepらの第9,278,472号に詳細に記載されている。例えば
図2を参照すると、かかる好適な含浸ダイ11の一実施形態が示されている。示されるように、ポリマーマトリクス127は、押出機(図示せず)を介して含浸ダイ11に供給することができる。より詳しくは、ポリマーマトリクス127は、バレルフランジ128を通して押出機から排出して、ダイ11のダイフランジ132に導入することができる。ダイ11は、下側ダイ半体136と噛合する上側ダイ半体134を含む。連続繊維142(例えばロービング)を、リール144から供給ポート138を通してダイ11の上側ダイ半体
134に供給する。同様に、連続繊維146もリール148から供給ポート140を通して供給する。マトリクス127を、上側ダイ半体134及び/又は下側ダイ半体136内に取り付けられたヒータ133によって、ダイ半体134及び136の内側で加熱する。ダイは一般に、熱可塑性ポリマーの溶融及び含浸を引き起こすのに十分な温度で操作する。通常は、ダイの操作温度はポリマーマトリクスの融点よりも高い。このように処理すると、連続繊維142及び146はマトリクス127中に埋封されるようになる。次に、この混合物を含浸ダイ11を通して牽引して繊維強化組成物152を生成する。必要に応じて、圧力センサ137によって含浸ダイ11付近の圧力を検知して、スクリューシャフトの回転速度、又はフィーダの供給量を制御することによって、押出速度に対する制御を発揮させることを可能にすることもできる。
【0037】
[0035]含浸ダイ内では、繊維が一連の衝突ゾーンに接触することが一般に望ましい。これらのゾーンにおいては、ポリマー溶融体を繊維を通して横方向に流して剪断及び圧力を生成させることができ、これにより含浸の度合いが大きく増大する。これは、高い繊維含量のリボンから複合体を形成する場合に特に有用である。通常は、ダイは、十分な程度の剪断及び圧力を生成するために、ロービング当たり少なくとも2、幾つかの実施形態においては少なくとも3、幾つかの実施形態においては4~50の衝突ゾーンを含む。それらの特定の形態は変化させることができるが、衝突ゾーンは、通常は湾曲した突出部、ロッドなどのような湾曲した表面を有する。衝突ゾーンはまた、通常は金属材料で作製する。
【0038】
[0036]
図2は、突出部182の形態の複数の衝突ゾーンを含む含浸ダイ11の一部の拡大概略図を示す。本発明は、場合により機械方向と同軸であってよい複数の供給ポートを使用して実施することができることを理解すべきである。使用する供給ポートの数は、ダイ内で一度に処理される繊維の数に伴って変化させることができ、供給ポートは、上側ダイ半体134又は下側ダイ半体136内に取り付けることができる。供給ポート138は、上側ダイ半体134内に取り付けられたスリーブ170を含む。供給ポート138は、スリーブ170内に摺動可能に取り付けられている。供給ポート138は、ピース172及び174として示される少なくとも2つのピースに分割される。供給ポート138は、長手方向に貫通するボア176を有する。ボア176は、上側ダイ半体134から離隔する直円柱状コーン開口として成形することができる。繊維142は、ボア176を通過し、上側ダイ半体134と下側ダイ半体136との間の通路180に導入される。また、通路210が回旋状の経路をとるように、一連の突出部182が上側ダイ半体134及び下側ダイ半体136内に形成される。突出部182によって繊維142及び146が少なくとも1つの突出部上を通過して、通路180の内部のポリマーマトリクスがそれぞれの繊維と十分に接触するようになる。このようにして、溶融ポリマーと繊維142及び146との間の十分な接触が確実になる。
【0039】
[0037]含浸を更に促進するために、繊維はまた、含浸ダイ内に存在している間に張力下に維持することもできる。張力は、例えば、繊維のトウあたり約5~約300ニュートン、幾つかの実施形態においては約50~約250ニュートン、幾つかの実施形態においては約100~約200ニュートンの範囲であってよい。更に、繊維はまた、剪断を増大させるために、曲がりくねった経路で衝突ゾーンを通過させることもできる。例えば、
図2に示す実施形態においては、繊維は正弦波タイプの経路で衝突ゾーンを横切る。ロービングが1つの衝突ゾーンから別の衝突ゾーンへ横切る角度は、一般に剪断を増大させるのに十分に高いが、繊維を破断する過剰な力を引き起こすほどは高くない。而して、例えばこの角度は約1°~約30°、幾つかの実施形態においては約5°~約25°の範囲であってよい。
【0040】
[0038]上記に示して記載した含浸ダイは、本発明において使用することができる種々の可能な構成の1つにすぎない。例えば別の実施形態においては、繊維はポリマー溶融体の
流れの方向に対してある角度で配置されるクロスヘッドダイ中に導入することができる。繊維がクロスヘッドダイを通って移動し、ポリマーが押出機バレルから排出される位置に到達すると、ポリマーは強制的に繊維と接触させられる。二軸押出機のような任意の他の押出機デザインも使用できることも理解すべきである。更に、場合によっては、繊維の含浸を補助するために他の構成要素を使用することもできる。例えば、幾つかの実施形態においては、「ガスジェット」アセンブリを使用して、それぞれが24,000本までの繊維を含んでいてよい個々の繊維の束又はトウを、合体したトウの全幅にわたって均一に拡げるのを助けることができる。これは、リボン内の強度特性の均一な分布を達成するのを助ける。かかるアセンブリには、出口ポートを通過する移動している繊維トウ上に概して垂直に衝突する圧縮空気又は他のガスの供給部を含ませることができる。次に、拡げられた繊維束を、上記に記載したように、含浸のためにダイ中に導入することができる。
【0041】
III.成形部品:
[0039]本繊維強化組成物は、一般に、種々の異なる技術を使用して成形部品を形成するために使用することができる。好適な技術としては、例えば、射出成形、低圧射出成形、押出圧縮成形、ガス射出成形、フォーム射出成形、低圧ガス射出成形、低圧フォーム射出成形、ガス押出圧縮成形、フォーム押出圧縮成形、押出成形、フォーム押出成形、圧縮成形、フォーム圧縮成形、ガス圧縮成形などを挙げることができる。例えば、その中に繊維強化組成物を射出することができる金型を含む射出成形システムを使用することができる。射出機内部の時間は、ポリマーマトリクスが早期に固化しないように制御及び最適化することができる。サイクル時間に達して、バレルが排出のために満杯になった時点で、ピストンを使用して組成物を金型キャビティに射出することができる。圧縮成形システムを使用することもできる。射出成形と同様に、繊維強化組成物の所望の物品への成形も金型内で行われる。組成物は任意の公知の技術を使用して、例えば自動化ロボットアームによって取り上げることによって圧縮金型中に配置することができる。金型の温度は、固化を可能にするために、所望の時間、ポリマーマトリクスの固化温度以上に維持することができる。次に、成形品を融点より低い温度にすることによって、成形品を固化させることができる。得られた生成物を離型することができる。それぞれの成形プロセスに関するサイクル時間は、ポリマーマトリクスに適合するように、十分な結合を達成するように、及びプロセス全体の生産性を高めるように調整することができる。
【0042】
[0040]使用する成形技術にかかわらず、本発明の繊維強化組成物から広範囲の部品を形成することができる。例えば、本発明者らは、得られる組成物から比較的薄い成形部品(例えば射出成形部品)を容易に形成することができることを見出した。例えば、部品は、約4ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約2.5ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約2ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約1.8ミリメートル以下、幾つかの実施形態においては約0.1~約1.6ミリメートル(例えば1.2ミリメートル)の厚さを有し得る。形成することができる部品の薄い性質のために、本繊維強化組成物は、自動車の内装及び外装部品(例えば射出成形部品)において使用するのに特によく適している。好適な自動車外装部品としては、ファンシュラウド、サンルーフシステム、ドアパネル、フロントエンドモジュール、サイドボディパネル、アンダーボディシールド、バンパーパネル、クラッディング(例えば、リアドアナンバープレート付近)、カウル、スプレーノズルボディ、キャプチャリングホース(capturing hose)アセンブリ、ピラーカバー、ロッカーパネルなどを挙げることができる。また、本発明の繊維強化組成物から形成することができる好適な自動車内装部品としては、例えば、ペダルモジュール、インストルメントパネル(例えばダッシュボード)、アームレスト、コンソール(例えばセンターコンソール)、シート構造体(例えば、リアベンチのバックレスト又はシートカバー)、インテリアモジュール(例えば、トリム、ボディパネル、又はドアモジュール)、リフトゲート、インテリアオーガナイザー、ステップアシスト、灰皿、グローブボックス、ギアシフトレバーなどを挙げることができる。他の好適な部品としては、
サイディングパネル、フェンスピケット部品、エンドキャップ、ジョイント、ヒンジ、内装及び外装装飾用トリムボード、合成屋根板、スレート、シェーク、又はパネルなどを挙げることができる。
【実施例0043】
[0041]本発明は、下記の実施例を参照することによってより良好に理解することができる。
試験方法:
[0042]メルトフローインデックス:ポリマー又はポリマー組成物のメルトフローインデックスは、ISO-1133-1:2011(ASTM-D1238-13と技術的に同等)にしたがって2.16kgの荷重及び230℃の温度において求めることができる。
【0044】
[0043]引張弾性率、引張応力、及び破断引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(ASTM-D638-14と技術的に同等)にしたがって試験することができる。80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する同じ試験片試料について、弾性率及び強度の測定を行うことができる。試験温度は23℃又は150℃であってよく、試験速度は1又は5mm/分であってよい。
【0045】
[0044]曲げ弾性率、破断曲げ伸び、及び曲げ応力:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(ASTM-D790-15e2と技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は64mmの支持材スパンに関して行うことができる。試験は、未切断のISO-3167多目的棒材の中央部分について行うことができる。試験温度は23℃又は150℃であってよく、試験速度は2mm/分であってよい。
【0046】
[0045]ノッチ無し及びノッチ付きシャルピー衝撃強さ:シャルピー特性は、ISO試験No.179-1:2010(ASTM-D256-10,方法Bと技術的に同等)にしたがって試験することができる。この試験は、タイプ1の試験片寸法(80mmの長さ、10mmの幅、及び4mmの厚さ)を使用して行うことができる。ノッチ付き衝撃強さを試験する場合には、ノッチはタイプAのノッチ(0.25mmの底半径)であってよい。試験片は、一枚歯フライス盤を使用して多目的棒材の中央部分から切り出すことができる。試験温度は23℃又は-30℃であってよい。
【0047】
[0046]荷重撓み温度(DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2:2013(ASTM-D648-07と技術的に同等)にしたがって求めることができる。より詳しくは、80mmの長さ、10mmの厚さ、及び4mmの幅を有する試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルである沿層方向3点曲げ試験にかけることができる。試験片をシリコーン油浴中に降下させることができ、そこで0.25mm(ISO試験No.75-2:2013に関しては0.32mm)歪むまで温度を2℃/分で上昇させる。
【0048】
実施例1:
[0047]約47.8重量%のプロピレンホモポリマー(65g/10分のメルトフローインデックス、0.902g/cm3の密度)、1重量%のカップリング剤、0.8重量%の黒色顔料、0.4重量%の安定剤、及び50重量%の連続ガラス繊維ロービング(2400テックス、16μmのフィラメント径)を含む試料を形成する。安定剤は、44重量%のIrganox(登録商標)1010、10.1重量%のIrgafos(登録商標)168、2重量%のChimassorb(登録商標)234、及び44重量%のUltranox(登録商標)626を含んでいた。
溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、ゾーン温度が160℃~320℃の範囲、スクリュー速度が160rpmである一軸押出機(90mm)内で試料を溶融加工する。
【0049】
実施例2:
[0048]14.3重量%のIrganox(登録商標)3114、28.6重量%のUltranox(登録
商標)626、及び57.1重量%のIrganox(登録商標)PS 802のブレンド0.35重量%を含ませたことを除いて実施例1に記載のようにして試料を形成する。
【0050】
実施例3:
[0049]14.3重量%のIrganox(登録商標)3114、28.6重量%のUltranox(登録
商標)626、及び57.1重量%のIrganox(登録商標)PS 802のブレンド0.53重量%を含ませたことを除いて実施例1に記載のようにして試料を形成する。
【0051】
実施例4:
[0050]14.3重量%のIrganox(登録商標)3114、28.6重量%のUltranox(登録
商標)626、及び57.1重量%のIrganox(登録商標)PS 802のブレンド0.70重量%を含ませたことを除いて実施例1に記載のようにして試料を形成する。
【0052】
[0051]実施例1~4の試料を、150℃におけるエージングの前後の引張強さについて試験した。結果を下記に示す。
【0053】
【0054】
実施例5:
[0052]約47.6重量%のプロピレンホモポリマー(65g/10分のメルトフローインデックス、0.902g/cm3の密度)、1重量%のカップリング剤、0.8重量%の黒色顔料、0.6重量%の安定剤、及び50重量%の連続ガラス繊維ロービング(2400テックス、16μmのフィラメント径)を含む試料を形成する。安定剤は、19.5重量%のIrganox(登録商標)1010、11重量%のIrgafos(登録商標)168、0.5重量
%のChimassorb(登録商標)234、57.9重量%のChimassorb(登録商標)944、及び11重量%のUltranox(登録商標)626を含んでいた。溶融温度が265℃、ダイ温度が3
30℃、ゾーン温度が160℃~320℃の範囲、スクリュー速度が160rpmである一軸押出機(90mm)内で試料を溶融加工する。
【0055】
実施例6:
[0053]約47.8重量%のプロピレンホモポリマー(65g/10分のメルトフローインデックス、0.902g/cm3の密度)、1重量%のカップリング剤、0.8重量%の黒色顔料、0.4重量%の安定剤、及び50重量%の連続ガラス繊維ロービング(2400テックス、16μmのフィラメント径)を含む試料を形成する。安定剤は、9重量%のIrganox(登録商標)3114、26重量%のUltranox(登録商標)626、及び65重量%のIrganox(登録商標)PS 802を含んでいた。溶融温度が265℃、ダイ温度が330℃、
ゾーン温度が160℃~320℃の範囲、スクリュー速度が160rpmである一軸押出機(90mm)内で試料を溶融加工する。
【0056】
実施例7:
[0054]5.9重量%のIrganox(登録商標)3114、17重量%のUltranox(登録商標)626、34.5重量%のChimmassorb(登録商標)81、及び42.6重量%のIrganox(登録商標)PS 802のブレンド0.58重量%を含ませたことを除いて実施例1に記載したようにして試料を形成する。
【0057】
[0055]実施例5~7の試料を、150℃におけるエージングの前後の引張強度さについて試験した。結果を下記に示す。
【0058】
【0059】
[0056]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載が単に例の目的であり、添付の特許請求の範囲に更に記載される発明を限定することは意図しないことを理解する。
[0056]本発明のこれら及び他の修正及び変更は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施することができる。更に、種々の実施形態の複数の態様は、全体的に又は部分的に交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載が単に例の目的であり、添付の特許請求の範囲に更に記載される発明を限定することは意図しないことを理解する。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
繊維強化ポリマー組成物であって、
プロピレンポリマー及び帯電防止剤を含み、前記組成物の約20重量%~約90重量%を構成するポリマーマトリクス;
前記ポリマーマトリクス内に分配されており、前記組成物の約10重量%~約60重量%を構成する複数の長い強化繊維;及び
立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含む安定剤系;
を含む、前記繊維強化ポリマー組成物。
[請求項2]
前記ホスファイト酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比が約1:1~約5:1である、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項3]
前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比が約2:1~約10:1である、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項4]
前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比が約2:1~約10:1である、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項5]
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、約0.01~約1重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項6]
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、次の一般構造(IV)、(V)、及び(VI):
【化1】
(式中、
a、b、及びcは、独立して1~10の範囲であり;
R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択され;
R
13、R
14、及びR
15は、独立して、次の一般構造(VII)及び(VIII):
【化2】
(式中、
dは1~10の範囲であり;
R
16、R
17、R
18、及びR
19は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
の内の1つによって表される基から選択される)
の内の1つを有する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項7]
前記立体障害フェノール酸化防止剤が一般構造(VI)を有する、請求項6に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項8]
前記立体障害フェノール酸化防止剤がトリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレ-トを含む、請求項7に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項9]
前記ホスファイト酸化防止剤が約0.02~約2重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項10]
前記ホスファイト酸化防止剤が、次の一般構造(IX):
【化3】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
を有するアリールジホスファイトである、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項11]
前記アリールジホスファイトが、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、又はそれらの組合せを含む、請求項10に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項12]
前記チオエステル酸化防止剤が、約0.04~約4重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項13]
前記チオエステル酸化防止剤が、次の一般構造:
R
11-O(O)(CH
2)
x-S-(CH
2)
y(O)-R
12
(式中、
x及びyは、独立して1~10であり;
R
11及びR
12は、独立して、線状又は分岐のC
6~C
30アルキルから選択される)
を有するチオカルボン酸エステルである、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項14]
前記チオカルボン酸エステルが、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジ-2-エチルヘキシル-チオジプロピオネート、ジイソデシルチオジプロピオネート、又はそれらの組合せである、請求項13に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項15]
前記ポリマーマトリクスが、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項16]
前記繊維強化組成物が約0.1重量%~約15重量%の相溶化剤を含む、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項17]
前記相溶化剤が、極性官能基で修飾されているポリオレフィンを含む、請求項16に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項18]
前記繊維がガラス繊維である、請求項1に記載の繊維強化組成物。
[請求項19]
前記繊維が前記組成物の長手方向に配向されている、請求項1に記載の繊維強化ポリマー組成物。
[請求項20]
請求項1に記載の繊維強化組成物を含む成形部品。
[請求項21]
射出成形されている、請求項20に記載の成形部品。
[請求項22]
約2.5ミリメートル以下の壁厚を有する、請求項20に記載の成形部品。
[請求項23]
請求項1に記載の繊維強化組成物を含む自動車部品。
[請求項24]
繊維強化ポリマー組成物において使用するための安定剤系であって、
前記安定剤系は、立体障害フェノール酸化防止剤、ホスファイト酸化防止剤、及びチオエステル酸化防止剤を含み、前記系内の前記ホスファイト酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約1:1~約5:1であり、前記系内の前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約2:1~約10:1であり、前記チオエステル酸化防止剤と前記立体障害フェノール酸化防止剤との重量比は約2
:1~約10:1である、前記安定剤系。
[請求項25]
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、約0.01~約1重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項24に記載の安定剤系。
[請求項26]
前記立体障害フェノール酸化防止剤が、次の一般構造(IV)、(V)、及び(VI):
【化4】
(式中、
a、b、及びcは、独立して1~10の範囲であり;
R
8、R
9、R
10、R
11、及びR
12は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択され;
R
13、R
14、及びR
15は、独立して、次の一般構造(VII)及び(VIII):
【化5】
(式中、
dは1~10の範囲であり;
R
16、R
17、R
18、及びR
19は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
の内の1つによって表される基から選択される)
の内の1つを有する、請求項24に記載の安定剤系。
[請求項27]
前記立体障害フェノール酸化防止剤が一般構造(VI)を有する、請求項26に記載の安定剤系。
[請求項28]
前記立体障害フェノール酸化防止剤がトリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレ-トを含む、請求項27に記載の安定剤系。
[請求項29]
前記ホスファイト酸化防止剤が約0.02~約2重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項24に記載の安定剤系。
[請求項30]
前記ホスファイト酸化防止剤が、次の一般構造(IX):
【化6】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、独立して、水素、C
1~C
10アルキル、及びC
3~C
30分岐アルキルから選択される)
を有するアリールジホスファイトである、請求項24に記載の安定剤系。
[請求項31]
前記アリールジホスファイトが、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリト
ールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、又はそれらの組合せを含む、請求項30に記載の安定剤系。
[請求項32]
前記チオエステル酸化防止剤が、約0.04~約4重量%の量で前記組成物内に存在する、請求項24に記載の安定剤系。
[請求項33]
前記チオエステル酸化防止剤が、次の一般構造:
R
11-O(O)(CH
2)
x-S-(CH
2)
y(O)-R
12
(式中、
x及びyは、独立して1~10であり;
R
11及びR
12は、独立して、線状又は分岐のC
6~C
30アルキルから選択される)
を有するチオカルボン酸エステルである、請求項24に記載の安定剤系。
[請求項34]
前記チオカルボン酸エステルが、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジ-2-エチルヘキシル-チオジプロピオネート、ジイソデシルチオジプロピオネート、又はそれらの組合せである、請求項33に記載の安定剤系。