(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182604
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 75/12 20160101AFI20231219BHJP
C08G 59/30 20060101ALI20231219BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20231219BHJP
C08G 75/14 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G75/12
C08G59/30
C08G59/32
C08G75/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023147711
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2021083540の分割
【原出願日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】20175540
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】プロブスト クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クローブス オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト ヴォルカー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容易に調製でき、良好な貯蔵安定性および良好な柔軟性を有する、改善されたエポキシ末端ポリスルフィドポリマーを提供する。
【解決手段】本開示は、式R”-CHOH-CH2-S-R-(Sy-R)t-S-CH2-CHOH-R”構造を有する脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーおよびそれを調製するプロセスを対象とする。前記式中、各R”は、特定のエポキシ基を有するラジカルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
R”-CHOH-CH
2-S-R-(S
y-R)
t-S-CH
2-CHOH-R”
[式中、各Rは、分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジイル基および構造-
(CH
2)
a-O-(CH
2)
b-O-(CH
2)
c-を有する基から独立に選択され、
前記ポリマー中のR基の数の0~20%は分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレー
ンジイル基であり、前記ポリマー中のR基の数の80~100%は構造-(CH
2)
a-
O-(CH
2)
b-O-(CH
2)
c-を有し、tは、1から60の値を有し、yは、1
.0から2.5の平均値であり、bは、1から8の整数値であり、aおよびcは、独立に
、1から10の整数であり、各R”は、独立に、
【化1】
(式中、m、n、o、p、q、およびrは、独立に、1から10の値を有する)から選択
される式を有するラジカルである]
を有する脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマー。
【請求項2】
R”が
【化2】
[式中、mは、1から10、好ましくは2から8、より好ましくは3から7、最も好まし
くは4から6の値を有し、qは、1から10、好ましくは1から5、より好ましくは2か
ら3の値を有する]
から独立に選択される、請求項1に記載の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマー。
【請求項3】
R”が
【化3】
[式中、mは、4から6、好ましくは4の値を有する]
である、請求項1または2に記載の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマー。
【請求項4】
構造
R”-CHOH-CH2-S-(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-[
Sy-(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c]t-S-CH2-CHOH
-R”
[式中、R”、a、b、c、y、およびtは、請求項1と同じ意味を有する]
を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリ
マー。
【請求項5】
tが、1から40、好ましくは1から20、より好ましくは5から10の値を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマー。
【請求項6】
コーンプレート型粘度計により測定して、0.5から50.0Pa・s、好ましくは1
.0から20.0Pa・s、より好ましくは2.0から10.0Pa・s、最も好ましく
は3.0から4.0Pa・sの室温での粘度を有する、請求項1~5のいずれか1項に記
載の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマー。
【請求項7】
EN ISO 7142:2007に従って決定して、0.1から20.0%、好まし
くは0.5から10%、より好ましくは1.0から5.0%、最も好ましくは2.0から
3.0%のオキシラン酸素含量を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の脂肪族エ
ポキシ末端ポリスルフィドポリマー。
【請求項8】
少なくとも1種のポリエポキシドを、少なくとも1種のポリスルフィドと、アミン触媒
の存在下で、20から150℃の温度で反応させるステップを含む、脂肪族エポキシ末端
ポリスルフィドポリマーの製造のプロセスであって、
前記少なくとも1種のポリスルフィドが、式
HS-R-(S
y-R)
t-SH (I)
[式中、各Rは、分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジイル基および構造-
(CH
2)
a-O-(CH
2)
b-O-(CH
2)
c-を有する基から独立に選択され、
前記ポリマー中のR基の数の0~20%は分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレー
ンジイル基であり、前記ポリマー中のR基の数の80~100%は構造-(CH
2)
a-
O-(CH
2)
b-O-(CH
2)
c-を有し、tは、1から60の値を有し、yは、1
.0から2.5の平均値であり、bは、1から8の整数値であり、aおよびcは、独立に
、1から10の整数である]
の化合物であり、
前記少なくとも1種のポリエポキシドが、
【化4】
[式中、m、n、o、p、q、およびrは、独立に、1から10の値を有する]
から選択される式を有する化合物である、脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーの
製造のプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1種のポリエポキシドが
【化5】
[式中、mは、1から10、好ましくは2から8、より好ましくは4から6の値を有し、
qは、1から10、好ましくは1から5、より好ましくは2から3の値を有する]
から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1種のポリエポキシドが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテ
ルまたは1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルである、請求項8または9に記
載のプロセス。
【請求項11】
前記少なくとも1種のポリスルフィドが、構造
HS-(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-[Sy-(CH2)a-O
-(CH2)b-O-(CH2)c]t-SH
[式中、a、b、c、y、およびtは、請求項8と同じ意味を有する]
を有する、請求項8~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
tが、1から40、好ましくは1から20、より好ましくは5から10の値を有する、
請求項8~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応が、2molのポリスルフィドと4molのポリエポキシド、好ましくは1m
olのポリスルフィドと2.5molのポリエポキシドのモル比で実施される、請求項8
~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記アミン触媒が、好ましくは、メチルジエタノールアミン、トリエチレンジアミン、
メチルジエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチル
ピペリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フ
ェノール、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ジエチルエステルジメチルア
ンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、メチルトリカプリルア
ンモニウムクロリド、メチルトリブチルアンモニウムクロリド、およびメチルトリオクチ
ルアンモニウムクロリドから選択される三級または四級アミンである、請求項8~13の
いずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーおよびそれを調製するプロセス
に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、ポリスルフィドの柔軟性、耐薬品性、および
クラックブリッジングを、エポキシ樹脂技術の化学反応性と組み合わせる、接着剤、コー
ティング、およびシーラントを含むエポキシ系の優れた結合剤である。
【0003】
エポキシ末端ポリスルフィドポリマーおよびそれらの製造方法は長い間知られている。
【0004】
国際公開第03/099908号は、例えば、チオール末端基を含むポリスルフィドを
アルカリ水溶液(aqueous alkali lye)の存在下でエピクロロヒドリンと反応させること
を含む、エポキシ末端基を含むポリマーポリスルフィドの製造方法を開示している。エピ
クロロヒドリンは最初に導入され、ポリスルフィドは計量される方式で加えられる。次い
で、反応混合物は後処理される。
【0005】
しかし、国際公開第03/099908号の方法の問題は、それが完了するのに16時
間以上かかることである。さらに、その方法は、濾過および蒸留ステップに関与する有機
溶媒の使用ならびに揮発性が高く可燃性が高いエピクロロヒドリンの取扱いを必要とする
。さらに、エピクロロヒドリンの残留物が、必然的に生成物に含まれる。
【0006】
エポキシ末端ポリスルフィドを調製する代替方法は、国際公開第2004/09928
3号に記載されている。ここで、ビスフェノールAおよび/またはビスフェノールFに基
づくエポキシ樹脂は、触媒としての四級アンモニウム化合物の存在下で、20から150
℃の温度でポリスルフィドと反応させられる。例示された反応は、有機溶媒を全く必要と
しないワンポット・ワンステップ合成である。さらに、反応は、およそ4時間で完了する
。
【0007】
しかし、国際公開第2004/099283号の芳香族エポキシ末端ポリスルフィドポ
リマーは、国際公開第03/099908号の脂肪族ポリマーよりも簡単で、コストがよ
り低く、より環境にやさしく、製造が迅速である一方で、貯蔵安定性が低く、柔軟性が低
いことが見いだされた。
【0008】
したがって、容易に調製でき、良好な貯蔵安定性および良好な柔軟性を有する、改善さ
れたエポキシ末端ポリスルフィドポリマーを提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第03/099908号
【特許文献2】国際公開第2004/099283号
【発明の概要】
【0010】
第1の態様において、本発明は、式
R”-CHOH-CH2-S-R-(Sy-R)t-S-CH2-CHOH-R”
[式中、各Rは、分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジイル基および構造-
(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-を有する基から独立に選択され、
ポリマー中のR基の数の0~20%は分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジ
イル基であり、ポリマー中のR基の数の80~100%は構造-(CH2)a-O-(C
H2)b-O-(CH2)c-を有し、tは、1から60の値を有し、yは、1.0から
2.5の平均値であり、bは、1から8の整数値であり、aおよびcは、独立に、1から
10の整数であり、各R”は、独立に、
【0011】
【0012】
(式中、m、n、o、p、q、およびrは、独立に、1から10の値を有する)から選択
される式を有するラジカルである]を有する脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマー
を提供する。
【0013】
有利には、本発明の第1の態様による脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、
簡単なワンポット・ワンステップ合成で製造できる。その反応はおよそ6時間で完了し、
有機溶媒も、濾過または蒸留ステップも必要としない。さらに、国際公開第03/099
908号とは対照的に、その反応では、危険な反応物を取り扱う必要がない。
【0014】
さらに、本発明の第1の態様による脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、改
善された貯蔵安定性、増加した柔軟性、およびより低い粘度を含む、国際公開第2004
/099283号の芳香族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーよりも改善された性質を
有することが見いだされた。
【0015】
第2の態様において、本発明は、少なくとも1種のポリエポキシドを、少なくとも1種
のポリスルフィドと、アミン触媒の存在下で、20から150℃の温度で反応させるステ
ップを含む、脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーを調製するプロセスであって、
少なくとも1種のポリスルフィドは、式
HS-R-(Sy-R)t-SH (I)
[式中、各Rは、分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジイル基および構造-
(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-を有する基から独立に選択され、
ポリマー中のR基の数の0~20%は分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジ
イル基であり、ポリマー中のR基の数の80~100%は構造-(CH2)a-O-(C
H2)b-O-(CH2)c-を有し、tは、1から60の値を有し、yは、1.0から
2.5の平均値であり、bは、1から8の整数値であり、aおよびcは、独立に、1から
10の整数である]の化合物であり、少なくとも1種のポリエポキシドは、
【0016】
【0017】
[式中、m、n、o、p、q、およびrは、独立に、1から10の値を有する]から選択
される式を有する化合物である、プロセスを提供する。
【0018】
少なくとも1種のSH末端ポリスルフィドと少なくとも1種のポリエポキシドとの間の
この無溶媒のアミン触媒付加反応は、国際公開第03/099908号よりも安全で、よ
り迅速で、より簡単で、コストがより低く、より環境にやさしい、脂肪族エポキシ末端ポ
リスルフィドポリマーに至る経路を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1で調製されたエポキシ末端ポリスルフィドポリマーの0~300日間貯蔵時の粘度を示す。
【
図2】Thioplast EPS 25の0~12か月貯蔵時の粘度を示す。
【
図3】Thioplast EPS 70の0~12か月貯蔵時の粘度を示す。
【
図4-1】実施例3の柔軟性試験の結果を示す(
図4Aは実施例1のポリマーを使用、
図4BはThioplast EPS 25を使用、
図4CはThioplast EPS 70を使用)。
【
図4-2】実施例3の柔軟性試験の結果を示す(
図4Aは実施例1のポリマーを使用、
図4BはThioplast EPS 25を使用、
図4CはThioplast EPS 70を使用)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記で示された通り、本開示は、式
R”-CHOH-CH2-S-R-(Sy-R)t-S-CH2-CHOH-R”
(式中、各Rは、分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジイル基および構造-
(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-を有する基から独立に選択され、
ポリマー中のR基の数の0~20%は分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジ
イル基であり、ポリマー中のR基の数の80~100%は構造-(CH2)a-O-(C
H2)b-O-(CH2)c-を有し、tは、1から60の値を有し、yは、1.0から
2.5の平均値であり、bは、1から8の整数値であり、aおよびcは、独立に、1から
10の整数であり、各R”は、独立に、
【0021】
【0022】
(式中、m、n、o、p、q、およびrは、独立に、1から10、好ましくは2から8、
より好ましくは3から7、最も好ましくは2から6の値を有する)から選択される式を有
するラジカルである)を有する脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーを対象とする
。
【0023】
好ましくは、tは、1から40、より好ましくは1から20、最も好ましくは5から1
0の値を有し、yは、1.4から2.4、より好ましくは1.8から2.2、最も好まし
くは2の平均値である。構造-(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-に
関して、bは、好ましくは、1から4、最も好ましくは1または2の整数値であり、aお
よびcは、好ましくは独立に、1から6、最も好ましくは2の整数である。好ましくは、
aとcは同じ整数値である。
【0024】
上記で示された通り、各R”は、同じでも異なっていてもよい。好ましくは、各R”は
同じである。
【0025】
好ましい実施形態において、R”は、独立に、
【0026】
【0027】
(式中、m、n、o、p、およびqは、独立に、1から10、好ましくは2から8、より
好ましくは3から7、最も好ましくは2から6の値を有する)から選択される式を有する
ラジカルである。
【0028】
好ましくは、R”は、独立に、
【0029】
【0030】
(式中、mは、1から10、好ましくは2から8、より好ましくは3から7、最も好まし
くは4から6の値を有し、qは、1から10、好ましくは1から5、より好ましくは2か
ら3の値を有する)から選択される式を有するラジカルである。
【0031】
R”が、式
【0032】
【化6】
(式中、mは、4から6、好ましくは4または6、より好ましくは4の値を有する)を有
するラジカルである、上述の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーが特に好ましい
。
【0033】
脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、構造R”-CHOH-CH2-S-(
CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-[Sy-(CH2)a-O-(CH
2)b-O-(CH2)c]t-S-CH2-CHOH-R”(式中、R”、a、b、c
、y、およびtは、上述のものと同じ意味を有する)を有し得る。
【0034】
有利には、本発明の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、室温で低粘度の液
体である。これにより、それらは、溶媒なしでも噴霧製剤(sprayable formulation)で
の使用に特に好適になる。とりわけ、脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、コ
ーンプレート型粘度計(以下に記載)により測定して、0.5から50.0Pa・s、好
ましくは1.0から20.0Pa・s、より好ましくは2.0から10.0Pa・s、最
も好ましくは3.0から4.0Pa・sの室温での粘度を有し得る。
【0035】
脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、EN ISO 7142:2007に
従って決定して、0.1から20.0%、好ましくは0.5から10%、より好ましくは
1.0から5.0%、最も好ましくは2.0から3.0%のオキシラン酸素含量を有し得
る。
【0036】
本発明は、脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーの製造のプロセスであって、少
なくとも1種のポリエポキシドを、少なくとも1種のポリスルフィドと、アミン触媒の存
在下で、20から150℃の温度で反応させるステップを含み、少なくとも1種のポリス
ルフィドが、式
HS-R-(Sy-R)t-SH (I)
(式中、各Rは、分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジイル基および構造-
(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-を有する基から独立に選択され、
ポリマー中のR基の数の0~20%は分岐鎖のアルカンジイルまたは分岐鎖のアレーンジ
イル基であり、ポリマー中のR基の数の80~100%は構造-(CH2)a-O-(C
H2)b-O-(CH2)c-を有し、tは、1から60の値を有し、yは、1.0から
2.5の平均値であり、bは、1から8の整数値であり、aおよびcは、独立に、1から
10の整数である)の化合物であり、少なくとも1種のポリエポキシドが
【0037】
【0038】
(式中、m、n、o、p、q、およびrは、独立に、1から10、好ましくは2から8、
より好ましくは3から7、最も好ましくは2から6の値を有する)から選択される式を有
する化合物である、プロセスをさらに対象とする。
【0039】
好ましくは、tは、1から40、より好ましくは1から20、最も好ましくは5から1
0の値を有し、yは、1.4から2.4、より好ましくは1.8から2.2、最も好まし
くは2の平均値である。構造-(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c-に
関して、bは、好ましくは1から4、最も好ましくは1または2の整数値であり、aおよ
びcは、好ましくは、独立に、1から6、最も好ましくは2の整数である。好ましくは、
aおよびcは同じ整数値である。
【0040】
上記で示された通り、プロセスは、少なくとも1種のポリエポキシドを、少なくとも1
種のポリスルフィドと反応させることを含む。これは、1種のポリエポキシドまたは2種
以上の異なるポリエポキシドの混合物を、1種のポリスルフィドまたは2種以上の異なる
ポリスルフィドの混合物と反応させることを含む。好ましくは、プロセスは、1種のポリ
エポキシドを1種のポリスルフィドと反応させることを含む。
【0041】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のポリエポキシドは、
【0042】
【0043】
(式中、m、n、o、p、およびqは、独立に、1から10、好ましくは2から8、より
好ましくは3から7、最も好ましくは2から6の値を有する)から選択される。
【0044】
好ましくは、少なくとも1種のポリエポキシドは、
【0045】
【0046】
(式中、mは、1から10、好ましくは2から8、より好ましくは3から7、最も好まし
くは4から6の値を有し、qは、1から10、好ましくは1から5、より好ましくは2か
ら3の値を有する)から選択される。少なくとも1種のポリエポキシドは、好ましくは1
,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【0047】
少なくとも1種のポリスルフィドは、構造HS-(CH2)a-O-(CH2)b-O
-(CH2)c-[Sy-(CH2)a-O-(CH2)b-O-(CH2)c]t-S
H(式中、a、b、c、y、およびtは、上述のものと同じ意味を有する)を有し得る。
【0048】
好ましくは、反応は、2molのポリスルフィドと4molのポリエポキシド、好まし
くは1molのポリスルフィドと2.5molのポリエポキシドのモル比で実施される。
好ましくは、ポリスルフィドは最初に導入され、ポリエポキシドは量り入れられる。使用
されるアミン触媒が既に存在している容器中に量り入れることが有利である。しかし、ポ
リスルフィドおよび/またはポリエポキシドが量り入れられると同時に、アミン触媒を容
器に量り入れることも可能である。
【0049】
アミン触媒は、三級アミンでも四級アミンでもよい。とりわけ、アミン触媒は、メチル
ジエタノールアミン、トリエチレンジアミン、メチルジエタノールアミン、ビス(ジメチ
ルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルピペリジン、ベンジルジメチルアミン、2
,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルジオクタデシルアンモ
ニウムクロリド、ジエチルエステルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチル
アンモニウムクロリド、メチルトリカプリルアンモニウムクロリド、メチルトリブチルア
ンモニウムクロリド、およびメチルトリオクチルアンモニウムクロリドから選択され得る
。
【0050】
好ましくは、アミン触媒は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ジエチル
エステルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、メ
チルトリカプリルアンモニウムクロリド、メチルトリブチルアンモニウムクロリド、およ
びメチルトリオクチルアンモニウムクロリドから選択される四級アンモニウム塩触媒、好
ましくは、メチルトリオクチルアンモニウムクロリドである。
【0051】
アミン触媒は触媒量で使用される。具体的な量は、選択される反応温度および使用され
るポリエポキシドの反応性に依存し、簡単な予備的実験により平均的な当業者により決定
され得る。一般に、反応物の総重量に対して0.01から0.5重量%が充分である。
【0052】
少なくとも1種のポリエポキシドと少なくとも1種のポリスルフィドとの反応は、室温
で実施できるが、より高い温度が好ましくは利用される。20から150℃の温度範囲が
好適である。好ましくは、30から120℃、より好ましくは40から100℃、より好
ましくは50から90℃、最も好ましくは60から80℃の温度が使用される。発熱性の
付加反応の温度は、反応器を冷却することにより制御できる。冷却可能な反応器を使用す
ることにより、反応の間の温度は、例えば、50から80℃の間に正確に維持できる。反
応は、好ましくは、撹拌しながら実施される。
【0053】
上記で示された通り、反応は、溶媒の添加なしに実施され、すなわち、反応は無溶媒で
ある。これは、プロセスの安全性、容易さ、コスト、および環境への影響の点で有利であ
る。
【0054】
本発明の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、接着剤、コーティング、およ
びシーラントを含むエポキシ系の結合剤として使用できる。ポリアミン、ポリチオール、
または少なくとも2つの反応性水素原子を有する他の通常の化合物が、硬化剤として使用
できる。
【0055】
本発明の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーは、特にコーティングに有用であ
り、溶媒なしで噴霧製剤に使用できる。
【0056】
種々のパラメーターの好ましい範囲を含むがこれに限定されない本発明の種々の要素が
、それらが相互排他的でない限り組み合わせ可能であることが留意される。
【0057】
本発明は、以下の実施例により、それに限定されず、それにより限定もされずに説明さ
れる。
【実施例0058】
粘度測定
粘度は、試料を25℃±0.1Kの一定温度に保つ温度制御ユニットを有するコーンプ
レート型粘度計(MCR 102、Anton Paar)により測定する。測定は、6
種の異なるせん断応力/せん断勾配(上昇性)で実施する。測定原理に依存して、せん断
応力τまたはせん断速度γの値は、以下の範囲に明示される:
せん断応力範囲:100<τ<5×102Pa(τ1…τn;n>6)
せん断速度:10-1<γ<5×102s-1(γ1…γn;n>6)
【0059】
試料貯蔵
試料を、23℃±2Kの温度および50±5%の相対湿度で貯蔵した。粘度を、上述の
方法を利用して定期的に測定した。
【0060】
オキシラン酸素含量測定
オキシラン酸素含量は、EN ISO 7142:2007に従って、テトラエチレン
アンモニウムブロミドの添加およびその後のクリスタルバイオレットに対する過塩素酸に
よる滴定により決定した。
【0061】
ショア硬さ測定
ショア硬さ測定は、DIN ISO 7619-1に従って、Bareiss Dig
itest測定装置で実施した。ショア硬さを、5秒および3分の測定時間の後で確認す
る。
【0062】
破断点伸びおよび引張強度測定
破断点伸びおよび引張強度を測定するために、DIN 53504 S2に従って、硬
化したフィルムからショルダーバー(shoulder bars)を打ち抜き、TIRAtest
2410引張/伸び試験機に対称的に挿入した。試験片を、100mm/分の試験速度で
破断まで伸ばし、物理的パラメーターをDIN 53504 S2に従って計算した。
【0063】
[実施例1]
脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーの調製
1263gのポリスルフィド(Thioplast G4、Mwおよそ1100g/m
ol、Nouryon製)を、アンカー型撹拌機、ボトムドレンバルブ、および計量装置
を備えた5リットルのダブルジャケット反応器に導入する。反応器を湧き水で冷却し、撹
拌しながら1.5gのAliquat 336(メチルトリオクチルアンモニウムクロリ
ド)を混合する。次いで、800gのEpilox 13-21(1,4-ブタンジオー
ルジグリシジルエーテル、Leuna Harze製)を、連続的に計量する方式で、往
復ポンプにより、激しく撹拌しながら反応混合物に加える。次いで、反応温度を注意深く
モニターしながら、反応器を60℃に加熱する。反応温度は、付加反応の発熱性により、
60℃を超えて上昇する。75℃のピーク温度に達した後、反応混合物をさらに2.5時
間撹拌する。その後、反応器内容物を20℃に冷却し、撹拌装置のスイッチを切り、生成
物を、反応器からポンプにより送り出す。
【0064】
[実施例2]
貯蔵安定性試験
実施例1で調製した脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーを、23℃±2Kの温
度および50±5%の相対湿度で300日貯蔵し、上記方法を利用して粘度を定期的に測
定した。結果を
図1に示す。
【0065】
比較のため、市販のエポキシ末端ポリスルフィドポリマーThioplast EPS
25(エピクロロヒドリンによりエンドキャップされている、Nouryon製)およ
びThioplast EPS 70(ビスフェノールA/F樹脂のジグリシジル-エー
テルによりエンドキャップされている、Nouryon製)を23℃±2Kの温度および
50±5%の相対湿度で12か月貯蔵した。上述の方法を利用して定期的に測定した粘度
を、それぞれ
図2および3に示す。
【0066】
図1~3から、実施例1の脂肪族エポキシ末端ポリスルフィドポリマーおよびThio
plast EPS 25は、300日間の貯蔵で粘度がほんの僅か増加したことがわか
る。対照的に、芳香族のThioplast EPS 70の粘度は2倍以上になる。結
果を表1に含める。
【0067】
【0068】
[実施例3]
柔軟性試験
エポキシ末端ポリスルフィドポリマー(「EPS」と称する)の性質を、異なる濃度で
試験した。破断点引張強度、破断点伸び、およびショア硬さを、上述の方法を利用して測
定する。結果を
図4A~4Cに示す。
【0069】
実施例1のエポキシ末端ポリスルフィドポリマーの結果(
図4Aに示す)をThiop
last EPS 25の結果(
図4Bに示す)と比較すると、本発明のポリマーが、よ
り低い濃度で、より良好な柔軟性を有することがわかる。これは、最大破断点伸びからわ
かる。
【0070】
実施例1のエポキシ末端ポリスルフィドポリマーの柔軟性はまた、Thioplast
EPS 70(
図4Cに示す)よりも全濃度にわたり著しく良好である。
【0071】
例示的な実施形態を参照して本発明が説明されてきたが、本発明の範囲内で種々の改良
が可能であることが認識されるだろう。
【0072】
本明細書において、明確に別段の指示がない限り、「または」という用語は、条件のう
ち1つのみが満たされることを要する演算子「排他的なまたは」ではなく、述べられた条
件のいずれかまたは両方が満たされる場合真値を返す演算子の意味で使用される。「含む
(comprising)」という用語は、「からなる(consisting of)」を意味するのではなく
「含む(including)」の意味で使用される。上記で認識された全ての以前の教示は、参
照により本明細書に組み込まれる。以前に発表された文書の本明細書における認識を、そ
の教示が欧州または他の場所において本明細書の日付で(at the date hereof)共通一般
知識であったことの了解または表明と解釈すべきではない。