(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182606
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】半導体封止材および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20231219BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231219BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231219BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 C
C08K3/013
H01L23/30 R
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148115
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2018228771の分割
【原出願日】2018-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】東野 稔久
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電率および誘電正接が低く、金属に対する密着性および成形性に優れた硬化物を与える半導体封止用樹脂組成物、該組成物からなる半導体封止材、および半導体装置を提供する。
【解決手段】トランスファー成形法または圧縮成形法による半導体の封止に用いられる半導体封止材6であって、当該半導体封止材は、タブレットまたは粉砕物の形態であり、当該半導体封止材は、半導体封止用樹脂組成物からなり、前記半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、活性エステル樹脂と、を含む、半導体封止材である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
活性エステル樹脂と、を含み、
前記活性エステル樹脂は、式(1)で表される構造を有し、
【化1】
式(1)において、
Bは、式(B)で表される構造であり、
【化2】
(式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、炭素原子数2~6の直鎖または環式のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。)
Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である、
半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記式(B)で表される構造は、式(B-1)~式(B-6)から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化3】
(式(B-1)~(B-6)中、R
1は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、またはアラルキル基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、またはフェニル基であり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、n、pは1~4の整数である。)。
【請求項3】
式(1)において、Aが、式(A)で表される構造を有する、請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化4】
(式(A)中、R
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、lは0または1であり、mは1以上の整数である。)。
【請求項4】
硬化剤をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記活性エステル樹脂が、当該封止樹脂組成物の固形分全体に対して、1質量%以上15質量%以下の量である、請求項1~4のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤が、前記活性エステル樹脂に対して、1質量%以上40質量%以下の量である、請求項4に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記活性エステル樹脂が、200g/eq以上230g/eq以下のエステル基当量を有する、請求項1~6のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
無機充填剤をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止材と、を備え、
前記封止材が、請求項1~8のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物および半導体装置に関する。より詳細には、半導体素子を封止するための材料として使用される樹脂組成物およびこれを用いて作製された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂は、その硬化物が優れた耐熱性、電気絶縁性などの特性を有しているため、電気及び電子材料、塗料、接着剤、複合材料など様々な分野に用いられている。特に、電気及び電子材料分野においては、エポキシ樹脂は半導体封止材やプリント基板材料などに用いられている。
【0003】
近年、電子デバイスの高性能化及び軽薄短小化にともない、伝送信号の高周波化が進んでいる。この高周波化にともない、プリント配線板及び半導体封止材に使用する材料に対して、高周波領域での低誘電率化が強く求められている。これらの低誘電率、低誘電正接を実現可能な材料として、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂と塩化ベンゾイルおよびビス(クロロカルボニル)ベンゼンとを反応させて得られる活性エステル化合物をエポキシ樹脂用硬化剤として用いる技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、特定の活性エステル化合物を用いたエポキシ樹脂組成物が記載されている。特許文献1には、特定の活性エステル化合物を用いることにより、フェノールノボラック樹脂のような従来型の硬化剤を用いた場合と比較して、誘電率及び誘電正接のより低い樹脂硬化物が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物は、昨今の誘電特性を満たすものではなく、また、封止する半導体素子の金属製リードフレーム等のインサート品に対する密着性において十分なものではなかった。
【0007】
本発明者は、特定の構造を有する活性エステル樹脂をエポキシ樹脂組成物に配合することにより、その硬化物の誘電率および誘電正接が低く、金属製リードフレーム等のインサート品に対する密着性に優れ、半導体の封止材料として好適に使用できる樹脂組成物が得られること見出し本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、エポキシ樹脂と、活性エステル樹脂と、を含み、
前記活性エステルは、式(1)で表される構造を有し、
【化1】
式(1)において、
Bは、式(B)で表される構造であり、
【化2】
(式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、炭素原子数2~6の直鎖または環式のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。)
Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である、半導体封止用樹脂組成物が提供される。
【0009】
また本発明によれば、基板と、前記基板上に搭載された半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材と、を備え、前記封止材が、上記半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬化物の誘電率および誘電正接が低く、金属に対する密着性および成形性に優れた、半導体封止用樹脂組成物、および当該樹脂組成物の硬化物を封止材として含む半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る半導体封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、半導体を封止するための封止材料として使用するための樹脂組成物であり、エポキシ樹脂と活性エステル樹脂とを含む。本実施形態において、活性エステル樹脂は、式(1)で表される構造を有する樹脂である。
【化3】
式(1)において、「B」は、式(B)で表される構造であり、
【化4】
(式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、炭素原子数2~6の直鎖または環式のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。)
Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物は、特定の活性エステル樹脂を含むことにより、優れた誘電特性を有するとともに、インサート品に対する優れた密着性を有する。
【0014】
また、本実施形態の半導体装置は、上述の樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止されていることを特徴とする。これにより、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているものを使用できる。これらの例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含むフェノール;クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類および/またはα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合または共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化することにより得られるエポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル;アルキル置換または非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;フェノール類および/またはナフトール類とジメトキシパラキシレンまたはビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂のエポキシ化物;スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノ-ル類の共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン環を有するエポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂;およびこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物に用いられる活性エステル樹脂は、式(B)で表される活性エステル基を有する。エポキシ樹脂と活性エステル樹脂との硬化反応において、活性エステル樹脂の活性エステル基はエポキシ樹脂のエポキシ基と反応して2級の水酸基を生じる。この2級の水酸基は、活性エステル樹脂のエステル残基により封鎖される。そのため、硬化物の誘電率と誘電正接が低減される。
【0017】
一実施形態において、上記式(B)で表される構造は、以下の式(B-1)~式(B-6)から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【化5】
式(B-1)~(B-6)において、
R
1はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
R
2はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、
n、pは1~4の整数である。
【0018】
上記式(B-1)~(B-6)で表される構造は、いずれも配向性が高い構造であることから、これを含む活性エステル樹脂を用いた場合、得られる樹脂組成物の硬化物は、低誘電率および低誘電正接を有するとともに、金属に対する密着性に優れ、そのため半導体封止材料として好適に用いることができる。中でも、低誘電率および低誘電正接の観点から、式(B-3)または(B-5)で表される構造を有する活性エステル樹脂が好ましく、さらに式(B-3)のXがエーテル結合である構造、または式(B-5)において二つのカルボニルオキシ基が4,4’-位にある構造を有する活性エステル樹脂がより好ましい。また各式中のR1はすべて水素原子であることが好ましい。
【0019】
式(1)における「Ar’」はアリール基であり、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、3,5-キシリル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、2-ベンジルフェニル基、4-ベンジルフェニル基、4-(α-クミル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等であり得る。中でも、特に誘電率および誘電正接の低い硬化物が得られることから、1-ナフチル基または2-ナフチル基であることが好ましい。
【0020】
本実施形態において、式(1)で表される活性エステル樹脂における「A」は、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、このようなアリーレン基としては、例えば、1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物と、フェノール性化合物とを重付加反応させて得られる構造が挙げられる。
【0021】
前記1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物は、例えば、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンの多量体、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、リモネン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、耐熱性に優れる硬化物が得られることからジシクロペンタジエンが好ましい。尚、ジシクロペンタジエンは石油留分中に含まれることから、工業用ジシクロペンタジエンにはシクロペンタジエンの多量体や、他の脂肪族或いは芳香族性ジエン化合物等が不純物として含有されることがあるが、耐熱性、硬化性、成形性等の性能を考慮すると、ジシクロペンタジエンの純度90質量%以上の製品を用いることが望ましい。
【0022】
一方、前記フェノール性化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、硬化性が高く硬化物における誘電特性に優れる活性エステル樹脂となることからフェノールが好ましい。
【0023】
好ましい実施形態において、式(1)で表される活性エステル樹脂における「A」は、式(A)で表される構造を有する。式(1)における「A」が以下の構造である活性エステル樹脂を含む樹脂組成物は、その硬化物が低誘電率、低誘電正接であり、インサート品に対する密着性に優れる。
【化6】
式(A)において、
R
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
lは0または1であり、mは1以上の整数である。
【0024】
式(1)で表される活性エステル樹脂のうち、特に好ましいものとして、下記式(1-1)および式(1-2)で表される樹脂が挙げられる。
【化7】
(式(1-1)中、R
1及びR
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。)。
【化8】
(式(1-2)中、R
1及びR
3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。)。
【0025】
本発明で用いられる活性エステル樹脂は、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール性水酸基を有するアリール基が複数結節された構造を有するフェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)とを反応させる、公知の方法により製造することができる。
【0026】
上記フェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)との反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜調整することができるが、中でも、より硬化性の高い活性エステル樹脂が得られることから、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.25~0.90モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.10~0.75モルの範囲となる割合で各原料を用いることが好ましく、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.50~0.75モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.25~0.50モルの範囲となる割合で各原料を用いることがより好ましい。
【0027】
また、活性エステル樹脂の官能基当量は、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の合計を樹脂の官能基数とした場合、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、200g/eq以上230g/eq以下の範囲であることが好ましく、210g/eq以上220g/eq以下の範囲であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物において、活性エステル樹脂とエポキシ樹脂との配合量は、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、活性エステル樹脂中の活性基の合計1当量に対して、エポキシ樹脂中のエポキシ基が0.8~1.2当量となる割合であることが好ましい。ここで、活性エステル樹脂中の活性基とは、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基を指す。
【0029】
また、本実施形態の樹脂組成物には、必要に応じて他の熱硬化性樹脂を配合してもよい。ここで使用し得る他の熱硬化性樹脂としては、シアネートエステル化合物、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、スチレンとマレイン酸無水物の共重合物などが挙げられる。中でも、得られる樹脂組成物の流動性が良好であることから、アクリル化合物を用いることが好ましい。上記した他の熱硬化性樹脂を使用する場合、その使用量は本発明の効果を阻害しなければ特に制限をうけないが、樹脂組成物の固形分全体に対して、1質量%以上50質量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
本実施形態の組成物において、活性エステル樹脂は、樹脂組成物の固形分全体に対して、1質量%以上15質量%以下、好ましくは、3質量%以上10質量%以下の量で用いられる。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0032】
硬化剤を用いる場合、その配合量は、活性エステル樹脂に対して、好ましくは、1質量%以上40質量%以下の量であることが好ましい。硬化剤の活性エステル樹脂に対する配合量の下限値は、例えば、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、または30質量%以上とすることができ、上限値は、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下とすることができる。上記範囲の量で硬化剤を使用することにより、優れた硬化性を有する樹脂組成物が得られる。
【0033】
一実施形態において、樹脂組成物には、吸湿性低減、線膨張係数低減、熱伝導性向上および強度向上のために無機充填剤が配合される。無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、またはこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の無機充填材の中で、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、充填材形状は成形時の流動性および金型摩耗性の点から球形が好ましい。
【0034】
無機充填材の配合量は、成形性、熱膨張性の低減、および強度向上の観点から、樹脂組成物の固形分全体に対して80質量%以上、96質量%以下の範囲が好ましく、82質量%以上、92質量%以下の範囲がより好ましく、86質量%以上、90質量%以下の範囲がさらに好ましい。下限値未満では熱膨張性低減の効果が得られない場合があり、上限値を超えると成形性が低下する場合がある。
【0035】
本実施形態の樹脂組成物は、上記成分に加え、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料等の種々の成分を含み得る。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物は、上述の各成分を均一に混合することにより製造できる。製造方法としては、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。得られた樹脂組成物は、必要に応じて、成形条件に合うような寸法および質量でタブレット化してもよい。
【0037】
あるいは、本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤に溶かして液状の封止材料として使用することができる。この場合、液状樹脂組成物を板またはフィルム上に薄く塗布し、樹脂の硬化反応が余り進まないような条件で有機溶剤を飛散させることによって得られるシートあるいはフィルム状の材料として使用することもできる。
【0038】
次に、本実施形態の半導体装置について説明する。本実施形態の半導体装置は、上述の樹脂組成物により半導体素子を封止することにより得られる。このような半導体装置としては、銅リードフレームの支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止した、半導体装置などが挙げられる。また、このような半導体装置としては、例えば、銅リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤーボンディングやバンプで接続した後、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファー成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outlaine J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型ICが挙げられる。また、MCP(Multi Chip Stacked Package)等の半導体チップが多段に積層された半導体パッケージも挙げられる。
【0039】
図1は、本発明に係る半導体封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の一例について、断面構造を示した図である。
図1において、ダイパッド3上に、ダイボンド材硬化体2を介して半導体素子1が2段に積層されて固定されている。半導体素子1の電極パッドとリードフレーム5との間は金線4によって接続されている。半導体素子1は、上述の封止用樹脂組成物の硬化体からなる封止材6によって封止されている。半導体素子1は、誘電特性に優れ、インサート品に対して優れた密着性を有する上述の樹脂組成物の硬化物により封止されているため、信頼性に優れた半導体装置を得ることができる。
【0040】
本発明の半導体封止用樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。半導体封止用樹脂組成物が常温で液状またはペースト状の場合は、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等が挙げられる。
【0041】
また、素子を直接樹脂封止する一般的な封止方法ばかりではなく、素子に直接半導体封止用樹脂組成物が接触しない形態である中空パッケージの方式もあり、中空パッケージ用の半導体封止用樹脂組成物としても好適に使用できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0043】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
(活性エステル樹脂(1)の調製)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ジクロライド279.1g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン1338gとを仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。次いで、α-ナフトール96.5g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を219.5g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し不揮発分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂(1)を得た。この不揮発分65質量%のトルエン溶液の溶液粘度は5540mPa・S(25℃)であった。また、これを乾燥して得た活性エステル樹脂の固形分の軟化点は138℃であった。
【0045】
(樹脂組成物の調製と物性評価)
下記、表1記載の配合に従い、エポキシ樹脂として、DIC製HP-7200H(ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、150℃における溶融粘度0.30ポイズ、エポキシ基当量277g/当量)、硬化剤として、上記で得られた活性エステル樹脂(1)を配合し、更に、硬化触媒としてジメチルアミノピリジン0.5phrとなる量を加え、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して調整した。得られた樹脂組成物のスパイラルフローを、以下の方法により作製した。
<スパイラルフローの測定>
EMMI-I-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用い、金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、硬化時間2分で測定した結果、120cmであった。
<誘電特性の測定>
次いで、得られた樹脂組成物を、金型温度175℃、注入圧力10MPa、硬化時間2分間で成型し、直径50mm、厚さ3mmの円盤を作製した。得られた硬化物について、JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
(半導体装置の作製と物性評価)
各金属(Ag,Cu,Ni)に対する密着性を以下の方法で評価した。各種金属(銀、銅、ニッケル)からなる基板上に、上記で得られた樹脂組成物を175℃、6.9MPa、2分間の条件で成型し4時間ポストキュアーを行った。その後、各基板との剪断密着性を室温で測定した。結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
実施例1の樹脂組成物の硬化物は、優れた誘電特性を有するとともに、上記金属に対する優れた密着性を有していた。よって、リードフレーム等を備える半導体素子を封止するための材料として好適に使用できる。