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特開2023-182616エネルギー貯蔵装置のための非水性溶媒電解質組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182616
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置のための非水性溶媒電解質組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20231219BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231219BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231219BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231219BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20231219BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/38 Z
H01M10/058
H01G11/60
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149755
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2020527068の分割
【原出願日】2018-11-16
(31)【優先権主張番号】62/588,174
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥオン ヒエウ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ウィルマ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善型の電解質組成物を含むエネルギー貯蔵装置を提供する。改善された性能は、放電レートサイクリングの向上、容量の向上、クーロン効率の向上、またはサイクリング時の容量の向上として実現され得る。
【解決手段】カソード活物質を有するカソードと、アノード活物質を有するアノードと、前記カソードと前記アノードの間のセパレータと、リチウム塩および非水性電解質溶媒の組成物を有する電解質と、を備え、該非水性電解質溶媒の組成物は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを含み、ECとDMCとの体積比は、1:0.1~1:4であり、前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方は、溶媒残留物を実質的に含まない、エネルギー貯蔵装置とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード活物質を有するカソードと、
アノード活物質を有するアノードと、
前記カソードと前記アノードの間のセパレータと、
リチウム塩および非水性電解質溶媒の組成物を有する電解質と、を備え、該非水性電解質溶媒の組成物は、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびプロピレンカーボネート(PC)の少なくとも1つから選択される追加溶媒とを含み、ECと該追加溶媒の体積比が1:2から1:4であることを特徴とするエネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記電解質溶媒は、EC/EMC/DMC/PCを1:2:0.1:0.02の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記電解質溶媒は、EC/DMCを1:3の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記電解質溶媒は、EC/EMCを1:2.4の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記電解質溶媒は、EC/EMC/DMCを1:0.5:3の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記電解質溶媒は、EC/EMC/DMCを1:1:1の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
前記電解質溶媒は、EC/EMCを1:4の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記電解質溶媒は、EC/DMCを1:4の体積比で含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記アノード活物質は、天然黒鉛を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記アノード活物質は、表面修飾された人工黒鉛を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記アノード活物質は、薄片状の人工黒鉛を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記カソード活物質は、層状のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
前記カソード活物質は、硫黄または硫黄含有物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記リチウム塩は、LiPFであることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
前記エネルギー貯蔵装置は、少なくとも約150mAh/gの第1充電容量を有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記エネルギー貯蔵装置は、少なくとも約100mAh/gの第1放電容量を有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記エネルギー貯蔵装置は、少なくとも約70%の効率を有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
前記エネルギー貯蔵装置は、500サイクル後の容量維持率を少なくとも約80%有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項19】
前記エネルギー貯蔵装置は、1Cでの充電容量維持率を少なくとも約94%有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項20】
前記エネルギー貯蔵装置は、1Cでの放電容量維持率を少なくとも65%有することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
ハウジングを設け、
前記ハウジングに、アノード、カソード、および該アノードと該カソードの間のセパレータを配置し、該アノードと該カソードの少なくとも一方には溶媒残留物がなく、
前記ハウジングに、リチウム塩および非水性電解質溶媒組成物を有する電解質を配置し、該非水性電解質溶媒組成物は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびプロピレンカーボネート(PC)の少なくとも1つから選択される追加溶媒とを含み、ECと該追加溶媒の体積比が1:2から1:4であることを特徴とするエネルギー貯蔵装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月17日に出願され、「乾電池用電極のための非水性溶媒電解質およびその組成物」と題された米国仮出願第62/588,174号に基づく優先権の利益を主張し、当該出願の開示内容は全体として本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、エネルギー貯蔵装置に関し、具体的には、エネルギー貯蔵装置に用いられる改良された電解質組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギー蓄電池は、電子、電気機械、電気化学および他の有用なデバイスに電力を供給するために広く使用されている。そのような電池には、一次化学電池、二次(充電式)電池、燃料電池およびウルトラキャパシタを含む様々な種類のキャパシタが含まれる。キャパシタなどのエネルギー貯蔵装置の動作電圧と温度を増やすことは、エネルギー貯蔵性能を高め、電力性能を高め、実際の使用例を広げるために望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン電池は、例えば、消費者向け装置、生産性装置およびバッテリー駆動車両などの、多くの商業的および工業的用途における電源として信頼されてきた。しかしながら、エネルギー貯蔵装置に対する要求は、継続的かつ急速に高まっている。例えば、自動車業界では、プラグインハイブリッド車や純粋な電気自動車など、コンパクトで効率的なエネルギー貯蔵に依存する車両が開発されている。リチウムイオン電池は、将来の需要を満たすのに適しているが、1回の充電でより遠くへ移動可能な長寿命のバッテリーを提供するには、エネルギー密度の改善が必要である。
【0005】
電解質は、従来のリチウムイオン電池の電気化学的性能と安全性を決定する重要な構成要素の1つである。電極と電解質の互換性は、ある程度電池の性能を左右する。さらに、
電極がより厚く、および/または重くなるにつれて、電解質システムは電池の中で高性能を達成するために重要な役割を果たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
先行技術を超えて達成される本発明とその優位性を要約する目的で、本明細書において本発明の特定の目的とその優位性について説明する。このような目的または優位性のすべてが本発明の特定の実施形態において達成されるわけではない。したがって、例えば、当業者は、本明細書において教示または示唆される他の目的または優位性を必ずしも達成する必要はなく、本明細書において教示される1つのまたは一群の優位性を達成または最適化する方法により、本発明を具体化または実行できることを認識する。
【0007】
第1の態様では、エネルギー貯蔵装置は、本明細書で提供される改良された電解質組成物を含むことができる。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置はリチウムイオン電池である。
【0008】
一の実施形態は、カソード活物質を含むカソードと、アノード活物質を含むカソードと、前記カソードと前記アノードの間のセパレータと、リチウム塩および非水性電解質溶媒の組成物を有する電解質と、を備え、前記非水性電解質溶媒の組成物は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびプロピレンカーボネート(PC)の少なくとも1つから選択される追加溶媒とを
含み、ECと該追加溶媒の体積比が1:2から1:4であることを特徴とするエネルギー貯蔵装置である。
【0009】
他の実施形態は、エネルギー貯蔵装置の製造方法である。前記製造方法は、ハウジングを設け、前記ハウジングに、アノード、カソード、および該アノードと該カソードの間のセパレータを配置し、該アノードと該カソードの少なくとも一方には溶媒残留物がなく、前記ハウジングに、リチウム塩および非水性電解質溶媒組成物を有する電解質を配置し、該非水性電解質溶媒組成物は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびプロピレンカーボネート(PC)の少なくとも1つから選択される追加溶媒とを含み、ECと該追加溶媒の体積比が1:2から1:4であることを特徴とする。
【0010】
これらの実施形態はすべて、本明細書に開示されている本発明の範囲内に示されている。本発明のこれらおよび他の実施形態は、添付図面を参照した好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明は、開示される特定の好ましい実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、改良された電解質組成物を有するエネルギー貯蔵装置の例示的な実施形態を示す縦断面図である。
図2図2は、改良された電解質組成物を有するエネルギー貯蔵装置の実施形態を示す。
図3A図3Aは、実施例1に係るハーフセル形式の天然黒鉛電極の充電および放電容量を示す
図3B図3Bは、実施例1に係るハーフセル形式の天然黒鉛電極のクーロン効率を示す。
図4A図4Aは、実施例1に係るハーフセル構造の乾電池電極プロセス1によって製造された人工黒鉛電極の充電および放電容量を示す。
図4B図4Bは、実施例1に係るハーフセル構造の乾電池電極プロセス2によって製造された人工黒鉛電極の充電および放電容量を示す。
図5図5は、実施例1に係るハーフセル構造のプロセス3によって製造された人工黒鉛電極の充電および放電容量を示す。
図6A図6Aは、実施例1に係るハーフセル形式の薄片状の人工黒鉛電極の充電および放電容量を示す。
図6B図6Bは、実施例1に係るハーフセル形式の薄片状の人工黒鉛電極のクーロン効率を示す。
図7A図7Aは、実施例1に係るNMC/黒鉛フルセルの充電および放電容量を示す。
図7B図7Bは、実施例1に係るNMC/黒鉛フルセルのクーロン効率を示す。
図8A図8Aは、実施例2に係る組成物1および3のNMC811/黒鉛フルセルの充電および放電容量を示す。
図8B図8Bは。実施例2に係る組成物1および3のNMC622/黒鉛フルセルの充電および放電容量を示す。
図8C図8Cは、実施例2に係る組成物1及び3のNMC811/黒鉛およびNMC622/黒鉛フルセルのクーロン効率を示す。
図9A図9Aは、実施例2に係る組成物1の電解質を有するNMC622/黒鉛フルセルの放電容量維持率を示す。
図9B図9Bは、実施例2に係る組成物1の電解質を有するNMC622/黒鉛フルセルの充電容量維持率を示す。
図10A図10Aは、実施例2に係る組成物3の電解質を有するNMC622/黒鉛フルセルの放電容量維持率を示す。
図10B図10Bは、実施例2に係る組成物3の電解質を有するNMC622/黒鉛フルセルの充電容量維持率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において使用される「バッテリー」および「キャパシタ」という用語は、当業者にとって一般的および習慣的な意味が与えられる。「バッテリー」および「キャパシタ」という用語は、互いに排他的ではない。キャパシタまたはバッテリーは、単独で、または、マルチセルシステムの構成要素として動作する単一の電気化学セルである。
【0013】
本明細書において使用される場合、エネルギー貯蔵装置の電圧は単一のバッテリーまたはキャパシタセルの動作電圧である。電圧は、定格電圧を超えるか、負荷を受けて定格電圧を下回るか、または、製造公差によって異なる。
【0014】
本明細書に記載されるように、「自己支持型」の電極膜または活性層は、電極膜または層が自立できるように、膜または層を支持し、その形状を維持するために十分なバインダマトリックス構造を組み込んだ電極膜または層である。エネルギー貯蔵装置に組み込まれる場合、自己支持型の電極膜または活性層は、そのようなバインダマトリックス構造を組み込んだものである。一般的に、および使用される方法によって、そのような電極膜または活性層は、集電体や他の膜などの外部の支持要素を用いることなくエネルギー貯蔵装置の製造工程で使用されるほど十分な強度を有する。例えば、「自己支持型」電極膜は、他の支持要素なしに電極製造工程中で、巻き取られ、取り扱われ、巻き出されるのに十分な強度を有することができる。
【0015】
本明細書に記載されるように、「溶媒を含まない」電極膜とは、検出可能な処理溶媒、処理溶媒残留物、または処理溶媒不純物を含まない電極膜である。処理溶媒または従来の溶媒には有機溶媒が含まれる。カソード電極膜またはアノード電極膜などの乾式電極膜は無溶媒であり得る。
【0016】
「湿式」電極または「湿式工程」電極は、活性材料、バインダおよび処理溶媒のスラリー、処理溶媒残留物、および/または処理溶媒不純物を含む少なくとも1つの工程によって製造された電極である。湿式電極は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の様々な実施形態は、改善された性能を有するエネルギー貯蔵装置のための電解質組成物に関する。エネルギー貯蔵装置は、一実施形態では、リチウムイオンベースのバッテリーであってもよい。
【0018】
一実施形態は、改良された非水性電解質溶媒ブレンドを有するエネルギー貯蔵装置である。改良された電解質は、粘度、湿潤性、および導電率などの電解質の物理的および化学的特性を改善することができる。電解質の性能効果は、粘度や湿潤性などの物理的特性、および、電極表面たとえば黒鉛表面上の溶媒の反応性などの化学的または電気化学的特性に一部起因することができる。活物質の粒子の形状もまたそのような役割を果たすことができる。たとえば、黒鉛材料の粒子は、球状黒鉛(ポテト型黒鉛としても知られる)または薄片状黒鉛であってもよい。
【0019】
一実施形態において、電解質組成物は、電極、特に乾式処理された電池電極の電気化学的性能を際立たせる。本開示は、比較的厚いまたは高負荷の電池電極とともに使用するための電解質組成物を提供する。本明細書で提供される改良された電解質組成物の放電速度性能は、典型的なリチウムイオン電池電解質と比較することができる。
【0020】
一実施形態では、改良された電解質組成物は、リチウム塩、非水性または有機溶媒の混合物などの電解質溶媒、および任意で1つまたは複数の添加剤を含むことができる。例えば、改良された電解質は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびそれらの組み合わせなどの1つまたは複数のカーボネートを含んでいてもよい。また電解質は、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびそれらの組み合わせなどの1つまたは複数の非環式カーボネートを含んでいてもよい。
【0021】
一般に、リチウム塩は、レドックス安定なアニオンを含むことができる。いくつかの実施形態では、アニオンは一価であってもよい。いくつかの実施形態において、リチウム塩は、ヘキサフルオロホスフェート(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)、およびそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態において、電解質は、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレートおよびヨウ化物からなる群から選択されるアニオンを含むことができる。いくつかの実施形態では、塩濃度は、約0.1mol/L(M)から約5M、約0.2Mから約3M、または約0.3Mから約2Mであってもよい。さらなる実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.7Mから約1Mでもよい。特定の実施形態では、電解質の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8M、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2M、またはそれらの間の任意の範囲の値でもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置の電解質は、液体溶媒を含むことができる。本明細書で提供される溶媒は、電解質のすべての成分を溶解する必要はなく、任意の成分を完全に溶解する必要もない。さらなる実施形態では、溶媒は有機溶媒でもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、カーボネート基、エーテル基および/またはエステル基から選択される1つ以上の官能基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、本明細書に記載されるカーボネートを含んでいてもよい。さらなる実施形態では、カーボネートは、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などの環状カーボネート、またはそれらの組み合わせから選択することも可能であり、また例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などの非環式カーボネート、またはそれらの組み合わせから選択することも可能である。特定の実施形態では、電解質は、LiPFおよび1つまたは複数のカーボネートを含むことができる。
【0023】
本明細書で提供される電解質組成物は、所定の組成物における個々の溶媒比を調整することによってさらに最適化することができる。例えば、エネルギー貯蔵装置は、エチレンカーボネート(EC)および少なくとも1つの追加の溶媒を含む非水性電解質溶媒組成物を含み得る。一実施形態では、追加の溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、またはプロピレンカーボネート(PC)を含み得る。いくつかの実施形態では、ECと追加の溶媒との体積比が約1:2から約1:4であるが、他の範囲も考えられる。
【0024】
本明細書で提供される電解質組成物は、1つまたは複数の添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、例えば、リチウム塩または液状添加剤であってもよい。リチウム塩の例としては、LiClO、LiBF、CFSONLiSOCF、C10
iNOおよびそれらの組み合わせであり、様々な塩濃度比のものである。添加剤は、SEI組成物の改良と湿潤速度の向上のために選択され、例えば、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、シクロヘキサンなども含まれる。いくつかの実施形態では、電解質組成物はリチウム塩添加剤を約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2%、3%、4%、5%、またはそれらの間の任意の範囲の値でもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、電解質溶媒は、体積比率1:2:0.1:0.02のEC/EMC/DMC/PC溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、電解質溶媒は、体積比率1:3のEC/DMCを含む。いくつかの実施形態では、電解質溶媒は、体積比率1:3のEC/EMCを含む。いくつかの実施形態では、電解質溶媒は、体積比率1:2.4のEC/EMCを含む。いくつかの実施形態では、電解質溶媒は、体積比率1:0.5:3のEC/EMC/DMCを含む。いくつかの実施形態では、電解質溶媒は、体積比率1:1:1のEC/EMC/DMCを含む。いくつかの実施形態では、電解質溶媒は、体積比率1:4のEC/EMCを含む。いくつかの実施形態では、体積比率1:4のEC/DMCを含む。さらに他の実施形態では、リチウム塩は約0.1Mから約2Mの濃度で電解質中に存在していてもよい。例えば、リチウム塩は、約1Mから1.3Mの濃度で電解質中に存在していてもよい。さらに他の実施形態では、リチウム塩はLiPFである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるような電解質組成物を含むエネルギー貯蔵装置は、改良型の電解質組成物を用いないエネルギー貯蔵装置と比較して、より高い放電率性能を示すことが可能である。このようなより高い放電率性能は、電気自動車の推進力などの高エネルギー、高出力の用途に適している。従来のリチウムイオン電池において、約C/5未満の放電率は、通常、高エネルギーの電極設計で管理される。なおC/5とは、5時間でセルが排出されるようなセル容量に対する放電電流である。しかし、電極が厚くなる(より高いセルエネルギーと相関する)につれて、電解質組成物はより高いCレート(1C以上)での放電性能に対処するためより重要性を増す。いくつかの実施形態では、開示された電解質組成物は、放電性能の利点を示し、より高い放電電流においてより高いエネルギー維持率を示す。いくつかの実施形態では、電解質組成物は本明細書に提供されるように、高い放電率性能を示す。
【0027】
本明細書で提供される電解質組成物を含むエネルギー貯蔵装置は、装置の寿命にわたって容量維持率が改善されたことを特徴とする。改善された容量維持率は、装置の寿命にわたって改善された出力密度を装置へ供給することができる。さらなる実施形態では、本明細書で提供される電解質化合物を含むエネルギー貯蔵装置は、高いCレートで改善されたエネルギー送達を示すことができる。例えば、改善されたエネルギー送達は1より大きいCレートで実現することができる。いくつかの実施形態では、典型的な電解質を含むエネルギー貯蔵装置と比較して、改善されたクーロン効率を示すエネルギー貯蔵装置を提供することができる。様々な実施形態で実現されるさらなる改善には、サイクリング中の貯蔵安定性の向上や、容量劣化の減少を含むサイクリング性能の改善が含まれる。
【0028】
電解質溶媒、および/または、電解質添加剤は電解質の表面に固体電解質層間膜(SEI)の形成を促進させることができる。SEIが形成される要因の1つは、電解質の1つ以上の成分の分解によるものであると考えられている。例えば、SEIを形成する1つ以上の電解質の成分に電子を移動させる1段階のまたは多段階の分解反応により、アノードと電解質との間の界面にSEIを形成することができる。SEI層を有する電極は、エネルギー貯蔵装置に対してより低い動作が可能なアノード電位、および/または、より高い
動作が可能な電位を示すことができる。
【0029】
本明細書に示される電解質組成物は、例えば1つまたは複数のバッテリー、キャパシタ、キャパシタ-バッテリーハイブリッド、燃料電池、他のエネルギー貯蔵システムもしくは装置、またはそれらの組み合わせなどの多くのエネルギー貯蔵システムまたは装置を備えた様々な実施形態に用いることが可能であることが理解される。いくつかの実施形態において、電解質添加剤または本明細書に記載されている添加剤を含む電解質は、リチウムイオン電池に実装されてもよい。
【0030】
本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、例えば、平面、らせん状に巻かれたもの、ボタン形状または袋状のような任意の適切な形状であってもよい。本発明で提供されるエネルギー貯蔵装置は、例えば、発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電システム、例えば産業機械および/または輸送で使用するためのエネルギー回収システムなどのシステムの構成要素であってもよい。本明細書で提供されるエネルギー貯蔵装置は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)および/または電気自動車(EV)を含む、様々な電子装置および/または自動車に電力を供給するために使用できる。
【0031】
図1は、例示的な一実施形態を縦断面視して示す。装置は、第1集電シートと第2集電シートを含み、本明細書に提供される改良された電解質に含浸され、ケース30に配置された捲回電極ユニット10を有する。ゴムキャップ40に面しているケース30の上端部は、ビード状やカール状になっていてもよく、それによってそれらの間は連結されている。第1端子21は上面53を通って内側部分41へ延び、正極集電体として使用される捲回電極ユニット10へ接続される。第1端子21は、正極端子として機能する。第2端子22は、上面53を通って第2内側部分42へ延び、負極集電体へ接続され、負極端子として機能する。ゴムキャップ40は、ケース30上部の内側に配置され、ケース30の内部から装置の外部へ電解質が漏出するのを防ぐ。
【0032】
図2は、本明細書で提供される改良された電解質組成物を含むエネルギー貯蔵装置100を例示的に示す横断面模式図である。エネルギー貯蔵装置100は、例えば、キャパシタ、バッテリー、キャパシタ-バッテリーハイブリッドまたは燃料電池として分類される。好ましい実施形態において、装置100はリチウムイオン電池である。
【0033】
前記装置は、第1電極102、第2電極104、および第1電極102と第2電極104との間に配置されるセパレータ106を備える。第1電極102および第2電極104は、それぞれセパレータ106の対向する表面に隣接する。エネルギー貯蔵装置100は、エネルギー貯蔵装置100の電極102,104間のイオンの伝達を促進するために改良型電解質組成物118を含む。例えば、改良型電解質組成物118は、第1電極102、第2電極104およびセパレータ106と接触させることができる。改良型電解質組成物118、第1電極102、第2電極104およびセパレータ106はエネルギー貯蔵装置のハウジング120に収容されている。
【0034】
第1電極102、第2電極104およびセパレータ106またはそれらの構成要素のうち1つ以上は、多孔性材料を含んでいてもよい。その多孔性材料の孔は、ハウジング120の内部で改良型電解質組成物118と接触させるために、および/または、表面積を増加させるための容器構造を与えることができる。エネルギー貯蔵装置のハウジング120は、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106の周囲を密封することが可能であり、外部環境から物理的に密封することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1電極102はアノード(陰極)であり、第2電極104
はカソード(正極)であってもよい。セパレータ106は、第1電極102および第2電極104のようにセパレータ106の対向する側に隣接する2つの電極を電気的に絶縁する一方で、2つの隣接する電極間でイオンの伝達を可能にするように構成してもよい。セパレータ106は、適当な多孔性で電気的な絶縁材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、セパレータ106は高分子材料を含んでいてもよい。例えば、セパレータ106は、セルロース系材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)材料、ポリプロピレン(PP)材料、および/またはポリエチレン、そして、ポリプロピレン材料である。
【0036】
一般的に、第1電極102と第2電極104はそれぞれ集電体と電極膜とを備える。電極102,104は、それぞれ高密度の電極膜112,114を有する。高密度の電極膜112,114は、適当な形状、大きさおよび厚さであってもよい。例えば、電極膜の厚
さは、約30ミクロン(μm)から約250ミクロン、例えば、約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、約2000ミクロン、またはそれらの間の任意の範囲の値でもよい。一般的に、電極膜は1つまたは複数の活物質を含み、例えば、本明細書に提供されるアノード活物質またはカソード活物質である。電極膜112,114は本明細書で提供される乾式および/または自立電極膜であってもよく、本明細書で提供される厚さ、エネルギー密度、比エネルギー密度、面積エネルギー、または面積容量などの有利な特性を有していてもよい。第1電極膜112および/または第2電極膜114は、本明細書で提供されるように、1つまたは複数のバインダを含んでいてもよい。電極膜112,114は、本明細書で提供される方法により用意される。電極膜112および/または114は、湿式または本明細書で提供されるような自己支持型の乾式電極であってもよい。
【0037】
図2に示されるように、第1電極102と第2電極104は、それぞれ、高密度な第1電極膜112と接触する第1集電体108と、高密度な第2電極膜114と接触する第2集電体110を含む。第1集電体108と第2集電体110は、対応する各電極膜と外部電気回路(図示せず)との間の電気的結合を促進する。第1集電体108および/または第2集電体110は、1つまたは複数の導電性材料を含み、対応する電極と外部電気回路との間の電荷の移動を促進するように選択された任意の適切な形状と大きさを有することができる。集電体は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタル、および、銀、金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウムなどの貴金属、合金、およびこれらの組み合わせのような金属を含む金属材料を含んでもよい。例えば、第1集電体108および/または第2集電体は、アルミホイルまたは銅ホイルを含むことができる。第1集電体108および/または第2集電体110は、対応する電極と外部回路の間の電荷の移動を提供することのできる大きさの長方形または略長方形であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置100は、リチウムイオン電池であってもよい。いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池電極の電極膜は、1つまたは複数の活物質と、本明細書で提供されるフィブリル化バインダマトリックスを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池は、約2.5から4.5Vまたは約3.0から4.2Vで動作するように構成されている。更なる実施形態では、リチウムイオン電池は、最小動作電圧がそれぞれ約2.5Vから約3Vとなるように構成されている。また更なる実施形態では、リチウムイオン電池は、最大動作電圧が約4.1Vから約4.4Vとなるように構成されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される電極膜は、少なくとも1つの活物質と
少なくとも1つのバインダを含む。少なくとも1つの活物質は、当技術分野で周知の活物質であってもよい。少なくとも1つの活物質は、バッテリーのアノードまたはカソードに用いられるのに適した材料であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置の電極膜は、アノード活物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、アノード活物質は例えば、炭素、グラファイトおよび/またはグラフェンなどの挿入材や、シリコン、酸化ケイ素、スズおよび/または酸化スズなどの合金材料又は脱合金材料、ケイ素-アルミニウム、および/またはケイ素-スズなどの金属の合金または化合物、および/または、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケルおよび/または酸化銅などの変換材料を含むことができる。アノード活物質は、単独で、または混合して多相材料(Si-C、Sn-C、SiOx-C、SnOx-C、Si-Sn、Si-SiOx、Sn-SnOx、Si-SiOx-C、Sn-SnOx-C、Si-Sn-C、SiOx-SnOx-C、Si-SiOx-Sn、またはSn-SiOx-SnOxなど)を形成してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンエネルギー貯蔵装置の電極膜は、カソード活物質を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、金属酸化物、金属硫化物またはリチウム金属酸化物を含むことができる。リチウム金属酸化物は、例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、および/またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード活物質は、例えば、LiCoO(LCO)、Li(NiMnCo)O(NMC)および/またはLiNi0.8Co0.15Al0.05(NCA)などの層状遷移金属酸化物、LiMn(LMO)および/またはLiMn1.5Ni0.5(LMNO)などのスピネルマンガン酸化物、LiFePOなどのかんらん石、ケイ素、酸化ケイ素(SiOx)、アルミニウム、スズ、酸化スズ(SnOx)、酸化マンガン(MnOx)、酸化モリブデン(MoO)、二硫化モリブデン(MoS)、酸化ニッケル(NiOx)または酸化銅(CuOx)を含むことができる。カソード活物質は、硫黄または硫化リチウム(LiS)などの硫黄を含む材料、または他の硫黄ベースの材料、またはそれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、カソード膜は、硫黄または硫黄活性物質を含む材料を少なくとも50重量%の濃度で含む材料を含む。いくつかの実施形態では、カソード膜は、硫黄またはバインダをさらに含む硫黄活物質を含む材料を含む。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活物質を含む材料を含むカソード膜のバインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)、ゼラチン、他の熱硬化性樹脂、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0043】
アノード活物質は、一般的な天然黒鉛、合成または人工の黒鉛、表面修飾させた黒鉛、球状黒鉛、薄片状黒鉛、およびこれらの種類の黒鉛の混合または組み合わせ、金属元素、およびアノード用の金属-C化合物を含む。
【0044】
上記したように、エネルギー貯蔵装置において用いられるアノード活物質と電解質溶媒組成物の種類や形状は、エネルギー貯蔵装置の性能に影響を与えることができる。特定の電解質組成物を利用するアノード電極の電気化学的性能は、粘度および湿潤性などの物理的特性、およびアノード活物質表面上の溶媒の反応性などの電解質組成物の化学的または電気化学的特性に起因する可能性がある。例えば、黒鉛粉末の粒子形状や粒子サイズは、電解質に利用可能な粉末の表面積に影響を与える。表面積の大きさの違いは、黒鉛粒子表面上の電解質成分の不可逆的な電気化学反応の規模に影響を与えることができる。理論に縛られることなく、溶媒分解が主な不可逆的反応であり、最初のリチウム化プロセス中に
黒鉛粒子上で行われると考えられる。典型的なLi/Li還元電位は、含まれる溶媒によって、EC=1.36V、DMC=1.32V、DEC=1.32V、EMC<1.32V、PC=1.0~1.6Vである。
【0045】
一般的に、薄片状粒子は球状粒子の面積と比較して広い表面積を有する。さらに、いくつかの実施形態では、電解質組成物へ環状カーボネート(すなわち、EC)を使用することにより、溶媒混合物の粘度を高めることができる。いくつかの実施形態では、電解質の粘度を高めると黒鉛粒子上の固体電解質層間膜(SEI)が安定化され、比較的低電圧で動作する。いくつかの実施形態では、電解質組成物へ線状カーボネート(すなわち、DMC)を使用することにより、溶媒混合物の粘度を低下させることができる。いくつかの実施形態では、電解質の粘度を低下させると、電解質溶媒のイオン電導性が向上する。
【0046】
いくつかの実施形態では、ECベースかつEMCリッチな電解質組成物を、球状黒鉛のアノード活物質とともに用いると、電気化学的性能が向上する。いくつかの実施形態では、ECベースかつEMCリッチな電解質組成物を、天然黒鉛のアノード活物質とともに用いると、電気化学的性能が向上する。いくつかの実施形態では、ECベースかつEMCリッチな電解質組成物を、表面修飾した人工黒鉛のアノード活物質とともに用いると、電気化学的性質が向上する。いくつかの実施形態では、ECベースかつEMCリッチな電解質組成物を、薄片状の人工黒鉛のアノード活物質とともに用いると、電気化学的性能が向上する。いくつかの実施形態では、ECベースかつDMCリッチな電解質組成物を、薄片状の黒鉛のアノード活物質とともに用いると、電気化学的性質が向上する。いくつかの実施形態では、ECベースかつDMCリッチな電解質組成物を、薄片状の人工の黒鉛のアノード活物質とともに用いると、電気化学的性質が向上する。
【0047】
少なくとも1つの活物質には、1つ以上の炭素材料が含まれていてもよい。炭素材料は、例えば、黒鉛材料、黒鉛、グラフェン含有材、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンナノチューブ、多孔質カーボン、導電性カーボン、またはこれらの組み合わせから選択することができる。活性炭は、蒸気プロセスまたは酸/エッチングプロセスから得られる。いくつかの実施形態では、黒鉛材料は表面処理された材料であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔質カーボンは活性炭を含んでもよい。いくつかの実施形態では、多孔質カーボンは構造化カーボンナノチューブ、構造化カーボンナノワイヤおよび/または構造化カーボンナノシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質カーボンは、グラフェンシートを含むことができる。いくつかの実施形態では、多孔質カーボンは表面処理された炭素であってもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、リチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極膜は、約70重量%から約92重量%、または約70重量%から約96重量%を含む、約70重量%から約98重量%の少なくとも1つの活物質を含んでもよい。いくつかの実施形態において、カソード電極膜は、約5重量%以下、または約1重量%から約5重量%を含む、約10重量%以下の多孔質カーボン材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、カソード電極膜は、約1重量%から約3重量%を含む、約5重量%以下の導電性添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、カソード電極膜は、例えば、約1.5重量%から10重量%、約1.5重量%から5重量%、約1.5重量%から3重量%のように、約20重量%以下のバインダを含んでもよい。いくつかの実施形態において、カソード電極膜は、約1.5重量%から約3重量%のバインダを含んでもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、アノード電極膜は、少なくとも1つの活物質、バインダおよび任意で導電性添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、導電性添加剤は、例えばカーボンブラックのような導電性カーボン添加剤を含むことができる。い
くつかの実施形態において、アノードの活物質の少なくとも1つは、合成黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラフェン、メソ多孔質カーボン、シリコン、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、混合物または前記材料の複材料を含むことができる。いくつかの実施形態において、アノード電極膜は、少なくとも1つの活物質を、約80重量%から約98重量%、または約94重量%から約97重量%を含む、約80重量%から約98重量%含むことができる。いくつかの実施形態において、アノード電極膜は約1重量%から約3重量%を含む、約5重量%以下の導電性添加剤を含む。いくつかの実施形態において、アノード電極膜は、約1.5重量%から10重量%、約1.5重量%から5重量%、約3重量%から5重量%を含む、約20重量%以下のバインダを含む。いくつかの実施形態において、アノード電極膜は、約4重量%のバインダを含む。いくつかの実施形態において、アノード電極膜は導電性添加剤を含まない。
【0050】
いくつかの実施形態は、高分子バインダ材料を含む1つ以上の活性層を有するアノードまたはカソードなどの電極膜を含む。前記バインダは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリアルキレン、ポリエーテル、スチレンブタジエン、ポリシロキサンおよびポリシロキサンのコポリマー、分岐ポリエーテル、ポリビニルエーテル、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。前記バインダは、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)のようなセルロースを含むことができる。いくつかの実施形態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF),それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。例えば、前記バインダは、塩化ポリビニリデン、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態において、バインダは、フィブリル化可能なポリマーを含む。特定の実施形態では、バインダはPTFEを含むか、基本的にPTFEからなるか、PTFEから構成される。
【0051】
いくつかの実施形態において、バインダはPTFEを含み、任意で1つ以上の追加のバインダ成分を含むことができる。いくつかの実施形態において、バインダは1つ以上のポリオレフィン、および/またはそのコポリマー、およびPTFEを含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダはPTFEと1つ以上のセルロース、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテル前駆体、ポリシロキサン、それらのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含むことができる。ポリマーの混合物は、前述のポリマーまたはコポリマーの相互浸透ネットワークを含むことができる。
【0052】
前記バインダは、ポリマー成分を様々な適切な比率で含むことができる。例えば、PTFEは、約100重量%以下であり、例えば、約20重量%から約95重量%、約20重量%から約90重量%であり、約20重量%から約80重量%、約30重量%から約70重量%、約30重量%から約50重量%、約50重量%から約90重量%を含んでもよい。さらなる実施形態では、前記バインダはPTFE、CMCおよびPVDFをバインダとして含むことができる。特定の実施形態では、前記電極膜は、2重量%のPTFEと、1重量%のCMCと、1重量%のPVDFを含むことができる。例えば、そのバインダ混合物は、電極膜のバインダ総容量の50%であり、電極膜の総重量の2%である量のPTFEを含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、電極膜混合物はサイズを選択されたバインダ粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、バインダ粒子は約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約
450nm、約500nm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約10μm、約50μm、約100μm、またそれらの間の任意の範囲の値のとすることができる。
【0054】
本明細書において、乾式製造プロセスは、溶媒を用いない、または、ほぼ用いないで電極膜を形成するプロセスを参照することができる。例えば、炭素材料およびバインダを含む活性層または電極膜の成分は、乾燥粒子を含むことができる。活性層または電極膜を形成する乾燥粒子は、乾燥粒子活性層混合物を得るために混合することができる。いくつかの実施形態では、活性層と電極膜は、活性層または電極膜の成分の重量パーセントと乾燥粒子活性層混合物の成分の重量パーセントがほぼ同じであるような乾燥粒子活性層混合物から形成されることができる。乾燥製造プロセスを用いた乾燥粒子活性層混合物から形成された活性層または電極膜は、溶媒やそれから生じる溶媒残留物などの加工添加剤を含まない、または、ほどんど含まない。いくつかの実施形態において、得られた活性層または電極膜は、乾燥粒子混合物から乾燥プロセスを用いて形成された自己支持膜である。いくつかの実施形態において、得られた活性層または電極膜は、乾燥粒子混合物から乾燥プロセスを用いて形成された自立膜である。活性層または電極膜を形成するプロセスは、フィブリル化されたバインダを含む膜のようなフィブリル化可能なバインダ成分のフィブリル化を含むことができる。さらなる実施形態において、自立活性層または電極膜は、集電体のない状態でも形成可能である。またさらなる実施形態において、活性層または電極膜は、自己支持型の膜のようなフィブリル化されたポリマーマトリックスを含むことができる。フィブリルのマトリックス、格子または網目が形成されることによって、電極膜に機械的構造を与えることができると考えられている。
【0055】
いくつかの実施形態において、乾燥膜および/または自己支持膜であるエネルギー貯蔵装置の電極膜は、電極膜または集電体の単位面積あたりの質量として表すと、約12mg/cm、約13mg/cm、約14mg/cm、約15mg/cm、約16mg/cm、約17mg/cm、約18mg/cm、約19mg/cm、約20mg/cm、約21mg/cm、約22mg/cm、約23mg/cm、約24mg/cm、約25mg/cm、約26mg/cm、約27mg/cm、約28mg/cm、約29mg/cm、約30mg/cm、約50mg/cm、約60mg/cm、約70mg/cm、約80mg/cm、約90mg/cm、約100mg/cm、またはそれらの間の任意の範囲の値の充填量または活物質充填量を与えることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、乾燥膜および/または自己支持膜であるエネルギー貯蔵装置の電極膜は、活物質の質量あたりの容量として表すと、100mAh/g、約125mAh/g、約150mAh/g、約160mAh/g、約170mAh/g、約175mAh/g、約176mAh/g、約177mAh/g、約179mAh/g、約180mAh/g、約185mAh/g、約190mAh/g、約196mAh/g、約200mAh/g、約250mAh/g、約300mAh/g、約350mAh/g、約354mAh/g、約400mAh/g、またはそれらの間の任意の範囲の値の特定の容量を与えることができる。さらなる実施形態において、乾燥膜および/または自己支持膜であるエネルギー貯蔵装置の電極膜は、電極膜または集電体の質量あたりの容量として表すと、少なくとも100mAh/g、または少なくとも150mAh/g、またはそれらの間の任意の範囲の値の特定の容量を与えることができる。いくつかの実施形態において、前記特定の容量とは充電容量である。さらなる実施形態において、前記特定の容量とは放電容量である。いくつかの実施形態において、前記電極はアノードおよび/またはカソードである。いくつかの実施形態において、前記特定の容量とは第1の充電および/または放電容量である。いくつかの実施形態において、前記特定の容量とは第1の充電および/または放電の後に測定された充電および/または放電容量である。
【0057】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の自己支持型乾燥電極膜は、典型的な電極膜と比較して有利な改善された性能を示すことができる。その性能は、例えば、引っ張り強度、弾性(伸長)、曲げ性、クーロン効率、容量または導電率である。いくつかの実施形態において、乾燥膜および/または自己支持膜であるエネルギー貯蔵装置の電極膜は、例えば、放電容量を充電容量で割ってパーセントとして表すと、第1サイクルのクーロン効率の約80%、85%、86%、87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、または少なくともそれらの値、またはそれらの間の任意の範囲の値、例えば、90.1%、90.5%、および91.9%またはそれらの間の任意の範囲の値のクーロン効率を与えることができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、乾燥および/または自己支持膜であるエネルギー貯蔵装置の電極膜、または、乾燥および/または自己支持膜を有するエネルギー貯蔵装置の電極は、C/10で測定された際の充電または放電容量で割った所定の比率での充電または放電容量を表すと、約10%または少なくとも約10%、約20%または少なくとも約20%、約30%または少なくとも約30%、約40%または少なくとも約40%、約50%または少なくとも約50%、約60%または少なくとも約60%、約70%または少なくとも約70%、約80%または少なくとも約80%、約90%または少なくとも約90%、約98%または少なくとも約98%、約99%または少なくとも約99%、約99.9%または少なくとも約99.9%、約100%または少なくとも約100%、またはそれらの間の任意の範囲の値の容量維持率を与えることができる。いくつかの実施形態において、容量維持率の充電または放電量は、少なくともC/10、C/5、C/3(0.33C)、C/2、1C、1.5C、2Cまたはそれらの間の任意の範囲の値である。容量維持率の前記充電または放電量は、最初の充電または放電サイクル後の設定された数の充電および放電サイクルにおいて測定することができる。いくつかの実施形態において、容量維持率の前記充電または放電量は、1、5、10、50、100、200、300、400、500、600、700、1000サイクルまたはそれらの間の任意のサイクル数で測定される。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の自己支持型の乾燥電極膜は、典型的な電極膜と比較して、有利な改善された性能を示すことができる。その性能とは、例えば、クーロン効率、容量または導電率である。
【0060】
以下の特定の例示では、本明細書に記載の電解質組成物を含むエネルギー貯蔵装置が製造されている。
【0061】
実施例1
実施例1に示す実験は、主にEC、EMC、DMC、PCおよびLiPFを含む電解質組成物であり(表1参照)、フルセル構成と同様にハーフセルの電気化学的性質に対する電極材料、電極組成物、乾式の電極プロセスの効果を評価した。ECベースの各電解質溶媒におけるEMCまたはDMCの割合は、アノード電極の電気化学的性能をある程度決定することが明らかになった。例えば、球状黒鉛組成物用のECベースでEMCリッチな電解質配合溶媒は、高い放電率により性能を向上させた。加えて、ECベースでDMCリッチな電解質溶媒は、薄片状の黒鉛組成物とともに用いられた場合、高い放電Cレートにおいて性能の向上が確認された。
【0062】
以下の6つの溶媒組成物は、全体的な電気化学的性能を改善するために、様々な活物質と電極処理条件で作られた乾式処理されたバッテリー電極を用いて開発および評価された。その改善は、乾式電極表面における電解質の望ましくない反応の防止だけでなく、得られる電解質候補と設計された乾電池電極との適合性を利用したものである。
【0063】
1つ以上の溶媒を含むECベースの溶媒混合物。
【0064】
EMCの標準的な配合割合より多い1つ以上の溶媒を含むECベースの溶媒混合物。
【0065】
DMCの標準的な配合割合より多い1つ以上の溶媒を含むECベースの溶媒混合物。
【0066】
DECの標準的な配合割合より多い1つ以上の溶媒を含むECベースの溶媒混合物。
【0067】
PCの標準的な配合割合より多い1つ以上の溶媒を含むECベースの溶媒混合物。
【0068】
溶媒間で同じ配合割合の1つ以上の溶媒を含むECベースの溶媒混合物。
【0069】
EC、EMC、DEC、DMC、PC、EAおよびそれらの混合物を含む市販の非水性溶媒は、さまざまな組み合わせで、それ以上の精製を必要とせず用いられる。組成の例とともに以下に詳細に記載される配合された溶媒の体積比を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
得られた電解質組成物は、電極性能に対する溶媒組成物の影響を評価するために、単層乾式電極のハーフセルおよびフルセルで評価された。セルの電気化学的性能は、定電流充電ステップとそれに続く定電圧ステップによって測定され、室温において定電流ステップで放電された。
【0072】
亀裂、層間剥離、剛性などによる湿式コーティング技術によって制限される全体的な性能や優位性に対する感度を高くするため、厚い乾式電極を基準に用いて電解質組成物の候補を評価した。ここに開示されている予備実験では、乾式アノードでは約23mg/cm、乾式カソードでは約45mg/cmの電極負荷を使用した。
【0073】
電解質組成物1および組成物3を使用した天然黒鉛ベースのアノードハーフセルの、容量を図3Aに示し、クーロン効率を図3Bに示す。図3Aおよび3Bは、約360mAh/gの第1充電容量、約330mAh/gの第1放電容量および約91%の効率を有する組成物1と、約380mAh/gの第1充電容量、約350mAh/gの第1放電容量および約92%の効率を有する組成物3を示す。図3Aおよび3Bは、天然黒鉛ベースのアノードにおいて、EMCリッチな2成分EC-EMC溶媒を備えた組成物3が、EMCリッチな4成分EC-EMC-DMC-PC溶媒を備えた組成物1よりも高い可逆容量および効率を提供することを明示している。
【0074】
図4Aおよび4Bは、いくつかの電解質溶媒系を用い、2つの異なる電極組成(プロセス1とプロセス2)を使用して用意された表面修飾人工黒鉛アノードハーフセルの充電容量と放電容量を示している。図4Aは、約385mAh/gの第1充電容量および約325mAh/gの第1放電容量を有する組成物1、約310mAh/gの第1充電容量および約300mAh/gの第1放電容量を有する組成物2、約410mAh/gの第1充電容量および約350mAh/gの第1の放電容量を有する組成物3、約315mAh/gの第1充電容量および約255mAh/gの第1放電容量を有する組成物4、約365mAh/gの第1充電容量および約315mAh/gの第1放電容量を有する組成物5を示す。図4Bは、約375mAh/gの第1充電容量および約335mAh/gの第1放電容量を有する組成物1、約305mAh/gの第1充電容量および約350mAh/gの第1放電容量を有する組成物2、約350mAh/gの第1充電容量および約395mA
h/gの第1放電容量を持つ組成物3、約415mAh/gの第1充電容量および約31
5mAh/gの第1放電容量を有する組成物4を示す。データは、組成物1や組成物3などのEMCリッチな系がプロセス1および2に従って用意された電極に対して同様のクーロン効率を維持しながら、改善された充電および放電容量を、一貫性をもって示したことを示す。プロセス1とプロセス2の組成と仕様を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
図5は、いくつかの電解質溶媒系を用い、第3の電極組成(プロセス3)を使用して用意された表面修飾人工黒鉛アノードハーフセルの充電および放電容量を示している。図5は、約380mAh/gの第1充電容量および約335mA/gの第1放電容量を有する組成物1、約320Ah/gの第1充電容量および約290Ah/gの第1放電容量を有する組成物2、約385Ah/gの第1充電容量および約340Ah/gの第1放電容量を有する組成物3、約310Ah/gの第1充電容量および約240Ah/gの第1放電容量を有する組成物4、約375Ah/gの第1充電容量および約335Ah/gの第1放電容量を有する組成物5、約390Ah/gの第1充電容量および約350Ah/gの第1放電容量を有する組成物6、約320mAh/gの第1充電容量および約290mAh/gの第1の放電容量を有する組成物7を示す。データは、組成物1、組成物3、組成物6などの比較的EMCリッチな配合の電解質溶媒系が、プロセス3に従って調製された
表面修飾人工黒鉛を含むアノードによって高い容量を提供したことを示す。プロセス3の組成と仕様を下記表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
電解質組成物2および組成物3を使用した薄片状の人工黒鉛アノードハーフセルの、容量を図6Aに示し、クーロン効率を図6Bに示す。図6Aおよび6Bは、約330mAh/gの第1の充電容量、約290mAh/gの第1の放電容量および約85%の効率を有する組成物2、約350mAh/gの第1の充電容量、約255mAh/gの第1の放電容量および約70%の効率を有する組成物3を示す。図6Aと6Bは、薄片状の人工黒鉛アノードでは、EMCリッチな組成物3がより高い充電容量を示すが、組成物3の効率はDMCリッチな組成物2よりも低いことを明示している。理論に縛られることなく、比較的DMCリッチな電解質系のクーロン効率の向上は、DMCが薄片状の人工乾電池電極の使用中に発生する不可逆反応を抑制できることを、示唆している。
【0079】
ドライカソードとして層状リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)および、ドライアノードとして表面修飾された人工黒鉛で構成されるフルセルに使用された組成物1~5の、容量を図7Aに示し、クーロン効率を図7Bに示す。図7Aおよび7Bは、約175mAh/gの第1の充電容量、約135mAh/gの第1の放電容量および約78%の効率を有する組成物1、約185mAh/gの第1の充電容量、約150mAh/gの第1の放電容量、および約80%の効率を持つ組成物3、約165mAh/gの第1の充電容量、約120mAh/gの第1の放電容量、および約74%の効率を持つ組成物4、約175mAh/gの第1の充電容量、約140mAh/gの第1の放電容量および約79%の効率を有する組成物5を示す。図7Aおよび7Bは、比較的EMCリッチな電解質系を備えた組成物3が、NMC/グラファイトフルセルの充電/放電容量とクーロン効率の両方を大幅に向上させることを明示している。
【0080】
実施例2
実施例2では、電解質組成物1および組成物3を組み込んだNMCカソードおよび表面修飾人工黒鉛(SMG-A5)アノードフルセル(NMC/Gr)の電気化学的性能を調査した。カソード電極とアノード電極の仕様、およびフルセルで使用される電解質を表4に示す。
【0081】
図8Aは、NMC811/Grフルセルの容量を示し、図8Bは、NMC622/Grフルセルの容量を示し、図8Cは、NMC811/GrおよびNMC622/Grフルセ
ルの効率を示し、いずれも組成物1および組成物3の電解質で満たされたものであり、セルの第1サイクル容量と効率は、0.05Cのレートでサイクルするセルと、充電では4.2V、放電では2.7Vのカットオフ電圧に基づいて計算された。図8Aおよび8Cは、約217mAh/gの第1の充電容量、約184mAh/gの第1の放電容量および約84.7%の効率を有する組成物1の電解質、および、約218mAh/gの第1の充電容量、約184mAh/gの第1の放電容量および約84.6%の効率を有する組成物3の電解質を用いたNMC811/Grフルセルを示す。図8Bおよび8Cは、約193mAh/gの第1の充電容量、約161mAh/gの第1の放電容量および約83.6%の効率を有する処方1の電解質、および、約195mAh/gの第1の充電容量、約162mAh/gの第1の放電容量および約83.1%の効率を有する組成物3の電解質を用いたNMC8622/Grフルセルを示す。図8A~8Cは、組成物1および3がNMC611/GrおよびNMC811/Grフルセルの両方で同様の第1サイクル容量および効率を示すことを明示している。
【0082】
【表4】
【0083】
条件サイクルと、図8Aから図8Cに示す第1形成サイクルの後、組成物1及び組成物3を使用したNMC811/Grフルセルの性能を評価した。フルセルは、0.33のレートでサイクルされ、電圧ウィンドウは充電および放電でそれぞれ4.2Vおよび2.7Vであった。組成物1の電解質セルは、組成物3の電解質セルと比較して、500サイクル後に向上した容量維持率の値を示すことが明らかとなったが、その時の容量維持率は、組成物1の電解質が約88.5%、組成物3の電解質が84.7%であった。
【0084】
組成物1の電解質を用いたNMC622/Grフルセルの、条件サイクルと第1形成サイクル後における、放電容量維持率を図9Aに示し、充電容量維持率を図9Bに示す。図9Aおよび9Bの充電容量維持率を表5に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
組成物3の電解質を用いたNMC622/Grフルセルの、条件サイクルと第1形成サ
イクル後における、放電容量維持率を図10Aに示し、充電容量維持率を図10Bに示す。図10Aおよび10Bの充電容量維持率を表6に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
図9Aから図10Bと表5および表6は、NMC622/Grフルセルの電解質組成物1および3が、Cレートの増加に伴って維持率は減少しているように、さまざまなCレートの作用によって充電及び放電容量維持率が同様の挙動を示すことを明示しており、そして、組成物3は1Cを超えるCレートにおいて組成物1よりも向上した充電容量維持率を示すことを表している。
【0089】
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は例としてのみ提示されており、本開示の範囲を限定することを意図していない。実際、本明細書に記載されている新規の方法およびシステムは、さまざまな他の形態で具体化することができる。さらに、本明細書に記載のシステムおよび方法における様々な省略、置換、および変更は、本開示の主旨から逸脱することなく行われ得る。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本開示の範囲およびその主旨に含まれるような形態または改善を含むことを意図している。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0090】
特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明された特徴、材料、特性、またはグループは、互換性がない限り、このセクションまたは本明細書の他の場所に記載された他の任意の態様、実施形態、または実施例に適用できると理解されるべきである。本明細書に開示されているすべての特徴(添付の請求項、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示されている方法または工程のすべての工程は、そのような機能および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせとすることができる。保護は、前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書に開示された機能(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)の新しいもの、または新しい組み合わせ、または方法または工程のステップの新しいもの、または新しい組み合わせにまで及ぶ。
【0091】
さらに、別個の実装の状況で本開示に記載されている特定の機能は、単一の実装で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装の状況で説明されているさまざまな機能は、複数の実装で個別に実装することも、適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明されているが、請求された組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除することが可能であり、その組み合わせは、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションのバリエーションとして請求されることが可能である。
【0092】
さらに、操作は、図面に示されるか、または特定の順序で明細書に記載されるが、そのような操作は、望ましい結果を達成するために、示される特定の順序または連続した順序で、またはすべての操作が実行される必要はない。図示または説明されていない他の操作
は、例示的な方法および工程に組み込むことができる。例えば、1つまたは複数の追加の操作は、説明された操作のいずれかの前、後、同時、または間に実行することができる。さらに、他の実装では、操作を再配置または再配列することができる。当業者は、いくつかの実施形態では、図示および/または開示された工程で行われる実際のステップは、図に示されるものとは異なる場合があることを理解するであろう。実施形態に応じて、上記の特定の工程が削除されてもよく、他の工程が追加されてもよい。さらに、上記開示された特定の実施形態の特徴および属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わせることができ、それらのすべては本開示の範囲内に含まれる。また、上記の実装におけるさまざまなシステムコンポーネントの分離は、すべての実装においてそのような分離が必要であると理解されるべきではなく、説明されているコンポーネントおよびシステムは、一般に、単一の製品に統合するか、複数の製品にパッケージ化できることが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載されるエネルギー貯蔵システムの構成要素のいずれかは、別個に提供され得るか、または一緒に統合され(例えば、一緒にパッケージングされるか、または一緒に取り付けられ)、エネルギー貯蔵システムを形成し得る。
【0093】
本開示のために、特定の態様、優位性、および新規の特徴が本明細書で説明されている。必ずしもすべてのそのような利点が特定の実施形態に従って達成されるとは限らない。したがって、例えば、当業者は、本開示は、本明細書で教示または示唆され得る他の利点が必ずしも達成される必要はなく、本明細書で教示される1つの利点または一群の利点を達成する方法で具体化または実行されてもよいことを認識するであろう。
【0094】
「可能である」「し得る」「できる」「でもよい」などの条件付き文言は、一般的に、特に明記されていない限り、または使用されている文脈内で別に理解されていない限り、特定の実施形態は、他の実施形態は含まない一方で、特定の特徴、要素、および/またはステップを含むことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き文言は、一般に、1以上の実施形態に機能、要素、および/またはステップが必要であること、または、1以上の実施形態がユーザーの入力もしくは指示の有無にかかわらず、これらの機能、要素、および/またはステップが特定の実施形態に含まれるかもしくは実行されるかどうかを決定するためのロジックを必ず含むことを意図するものではない。
【0095】
「X、Y、およびZの少なくとも1つ」などの接続詞は、特に明記されていない限り、品目や用語などを伝えるために一般的に使用される状況とは別に理解され、X、YまたはZのいずれか、も同じである。したがって、そのような接続詞は、特定の実施形態が少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、および少なくとも1つのZの存在を必要とすることを示唆することを一般に意図するものではない。
【0096】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「おおむね」、および「実質的に」などの程度を示す語は、記載された値、量、または特性に近い値、量、または特性を示し、それでも所望の機能を実施するか、または所望の結果を達成するものを示す。例えば、「およそ」、「約」、「おおむね」、および「実質的に」という言葉は、期待される機能や結果に応じて、記載された量の10%未満、5%未満、1%未満、および0.1%未満を示すことがある。
【0097】
本開示の範囲は、このセクションまたは本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図せず、このセクションもしくはこの仕様の他の場所に提示されている、または将来提示される請求項によって定義される場合がある。請求項の文言は、請求項で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例に限定されず、または出願の審査中に、その例は非限定的であると解釈されるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード活物質を有するカソードと、
アノード活物質を有するアノードと、
前記カソードと前記アノードの間のセパレータと、
リチウム塩および非水性電解質溶媒の組成物を有する電解質と、を備え、
該非水性電解質溶媒の組成物は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを含み、
ECとDMCとの体積比は、1:0.1~1:4であり、
前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方は、溶媒残留物を実質的に含まない、エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとDMCとの体積比が1:2~1:4である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとDMCとの体積比が1:3である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとDMCとの体積比が1:4である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、エチルメチルカーボネート(EMC)及びプロピオンカーボネート(PC)のすくなくとも一方から選択される追加溶媒を含む、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとEMCとの体積比が1:0.5~1:2である、請求項5に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとEMCとDMCとの体積比が1:0.5:3である、請求項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとEMCとDMCとの体積比が1:1:1である、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとPCとの体積比が1:0.02である、請求項5に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとEMCとDMCとPCとの体積比が1:2:0.1:0.02である、請求項9に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
カソード活物質を有するカソードと、
アノード活物質を有するアノードと、
前記カソードと前記アノードの間のセパレータと、
リチウム塩および非水性電解質溶媒の組成物を有する電解質と、を備え、
該非水性電解質溶媒の組成物は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを含み、
ECとEMCとの体積比は、1:0.5~1:4であり、
前記カソード及び前記アノードの少なくとも一方は、溶媒残留物を実質的に含まない、エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとEMCとの体積比が1:2~1:4である、請求項11に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとEMCとの体積比が1:2.4である、請求項11に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ECとEMCとの体積比が1:4である、請求項11に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
前記非水性電解質溶媒の組成物は、ジメチルカーボネート(DMC)及びプロピオンカーボネート(PC)のすくなくとも一方から選択される追加溶媒を含む、請求項11に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記アノード活物質は、天然黒鉛を含む請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記アノード活物質は、表面修飾された人工黒鉛を含む請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
前記アノード活物質は、薄片状の人工黒鉛を含む請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項19】
前記カソード活物質は、層状のリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を含む請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項20】
前記カソード活物質は、硫黄または硫黄含有物質を含む請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
前記リチウム塩は、LiPFである請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項22】
前記エネルギー貯蔵装置は、0.05Cの充電レートでサイクルが行われる場合に、少なくとも約150mAh/gの第1充電容量を有する請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項23】
前記エネルギー貯蔵装置は、0.05Cの充電レートでサイクルが行われる場合に、少なくとも約100mAh/gの第1放電容量を有する請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項24】
前記エネルギー貯蔵装置は、0.05Cの充電レートでサイクルが行われる場合に、少なくとも約70%の効率を有する請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項25】
前記エネルギー貯蔵装置は、0.33Cの充電レートでサイクルが行われる場合に、500サイクル後の容量維持率を少なくとも80%有する請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項26】
前記エネルギー貯蔵装置は、1Cでの充電容量維持率を少なくとも94%有する請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項27】
前記エネルギー貯蔵装置は、1Cでの放電容量維持率を少なくとも65%有する請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項28】
請求項1~15のいずれか1項に記載のエネルギー貯蔵装置の製造方法であって、
前記カソードと、前記アノードと、前記セパレータと、前記電解質とをハウジング内に設け、
前記セパレータは、前記カソードと前記アノードとの間に配置する、エネルギー貯蔵装置の製造方法。