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特開2023-182624アルツハイマー病の病状のためのハイパースペクトル画像誘導ラマン眼球撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182624
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】アルツハイマー病の病状のためのハイパースペクトル画像誘導ラマン眼球撮像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20231219BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20231219BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B3/12
G01N21/27 A
G01N21/65
A61B10/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151505
(22)【出願日】2023-09-19
(62)【分割の表示】P 2020545830の分割
【原出願日】2018-11-27
(31)【優先権主張番号】62/590,836
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520184594
【氏名又は名称】レティスペック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RETISPEC INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】シャクド,エリアフ
(72)【発明者】
【氏名】ドモホフスキー,グジェゴシ
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】眼球の網膜におけるアルツハイマー病(AD)関連の病状を検出するための非侵襲性の眼光ベースの検出装置であって、2つの撮像装置を使用し、第1の撮像装置は、特定の領域が第2の撮像装置によって検査されるように導く。ハイパースペクトル反射率撮像部は、広帯域光源から網膜から反射及び/又は後方散乱した光を検出し、1つ以上の関心領域を決定するために使用される。ラマン分光部は、ハイパースペクトル反射率情報から決定される関心領域をターゲットとするレーザからのラマン散乱現象によって網膜によって再放射される光を検出する。ハイパースペクトル反射率撮像部及びラマン分光部から検出された情報は、1つ以上のAD関連の病状の存在を判定するために使用される。
【効果】検出装置は、リスクのある集団の特定、診断、及び治療に対する患者の応答の追跡を可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の眼球からの1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状を検出するための
非侵襲性の生体内眼光に基づく検出装置であって、
広帯域光源及びハイパースペクトルカメラを含むハイパースペクトル反射率撮像部と、
レーザ及び分光計を含むラマン分光部と、
メモリと、
前記メモリに格納された以下の命令を実行するように構成された1つ以上のプロセッサ
と、を備え、
前記プロセッサは、
前記ハイパースペクトル反射率撮像部を制御して、前記広帯域光源を使用して、前記眼
球の眼底の広視野を照明し、ハイパースペクトル反射率情報を決定するために、前記ハイ
パースペクトルカメラを使用して、前記眼球からの反射光及び/又は後方散乱光を検出し

前記ハイパースペクトル反射率情報から、1つ以上の関心領域(ROI)を、潜在的な
AD関連の病状として判定し、
前記レーザを使用して前記1つ以上のROIの各々を照明するように前記ラマン分光部
を制御し、ラマン分光情報を決定するために、前記分光計を使用して、前記レーザから得
られる前記眼球からのラマン散乱光を検出し、
前記ハイパースペクトル反射率情報及び前記ラマン分光情報を使用して、前記被験者を
1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類し、
前記1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、該タンパク質凝集体は、
タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はア
ミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含む、検出装置。
【請求項2】
前記被験者を前記1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類することは、前記
ハイパースペクトル反射率情報にさらに基づいている、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記被験者を前記1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類することは、前記
メモリ又は別の装置に格納されている前記被験者の以前のハイパースペクトル反射率情報
及び/又はラマン分光情報にさらに基づいている、請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記被験者を前記1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類することは、経時
的な前記被験者の前記ハイパースペクトル反射率情報及び/又は前記ラマン分光情報の変
化にさらに基づいている、請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記被験者を前記1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類することは、前記
被験者を複数のAD関連の病状を有するものとして分類することを含む、請求項1に記載
の検出装置。
【請求項6】
前記1つ以上のプロセッサは、さらに、
ハイパースペクトル撮像情報からのベースラインROIを、前記潜在的なAD関連の病
状を含まない背景組織であるとして判定し、
前記ラマン分光部を制御して、前記レーザを使用して前記眼球の前記ベースラインRO
Iを照明し、前記背景組織のラマン分光情報を決定するために、前記分光計を使用して、
前記レーザから生じた前記眼球からの光を検出するように構成され、
前記分類することは、さらに、前記潜在的なAD関連の病状の前記ラマン分光情報を、
前記背景組織の前記ラマン分光情報と比較することに基づいて分類する、請求項1に記載
の検出装置。
【請求項7】
前記1つ以上のAD関連の病状は、前記タウ神経原線維変化を含む前記AD関連の病状
の2つ以上を含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項8】
前記1つ以上のAD関連の病状は、前記被験者の前記眼球の神経炎若しくはグリア細胞
病状、又は、前記被験者の前記眼球の血管若しくは脈絡膜の血管特性を含む、請求項1に
記載の検出装置。
【請求項9】
前記1つ以上のAD関連の病状に前記アミロイドベータ沈着物が含まれる場合、前記分
類することは、アルファヘリックス及びベータプリーツシートのラマン振動共鳴に対応す
る1600cm-1から1700cm-1の範囲の波数シフトでラマン分光情報を分析す
ることに基づく、請求項1に記載の検出装置。
【請求項10】
前記1つ以上のAD関連の病状が前記タウ神経原線維変化を含む場合、前記分類するこ
とは、リン酸化されたタウのラマン振動共鳴に対応する1600cm-1から1700c
-1の範囲の波数シフトでラマン分光情報を分析することに基づいている、請求項1.
に記載の検出装置。
【請求項11】
前記1つ以上のプロセッサは、前記1つ以上のROIを判定すること、又は、前記被験
者を1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類することのうちの1つ又は両方に
対して機械学習アルゴリズムを使用する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項12】
前記機械学習アルゴリズムは、検証済みトレーニングデータを使用する、請求項11に
記載の検出装置。
【請求項13】
前記検証済みトレーニングデータは、
被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スライスにし、
前記組織スライスをスライドに配置し、
前記組織スライスのうちの1つの組織スライスの第1のスライドを染色し、
前記組織サンプル内の第1の組織スライスに隣接しており、未染色の別の組織スライス
を有する第2のスライドを提供し、
組織診断を使用して、前記第1のスライドが前記1つ以上のAD関連の病状を有するこ
とを検証し、
前記第2のスライドにおいて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、撮像情報を取得
し、
前記撮像情報を、前記1つ以上のAD関連の病状として分類することによって取得され
るものである、請求項12に記載の検出装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの撮像装置は、前記ラマン分光部、前記ハイパースペクトル反射率
撮像部、又はその両方である、請求項13に記載の検出装置。
【請求項15】
前記機械学習アルゴリズムは、1つ以上のニューラルネットワークを使用する、請求項
11に記載の検出装置。
【請求項16】
前記1つ以上のプロセッサは、さらに、(i)前記1つ以上のAD関連の病状の分類と
、(ii)前記1つ以上のAD関連の病状を有するものとする前記被験者の独立した検証
とを使用して、前記機械学習アルゴリズムをさらにトレーニングするように構成された、
請求項11に記載の検出装置。
【請求項17】
前記1つ以上のプロセッサは、前記ラマン分光法情報から、AD若しくはADに対する
前駆体、又はさらに調査が必要な潜在的なADの事前にスクリーニングされた分類、又は
治療若しくは介入への応答性を有するものとして前記被験者を分類するようにさらに構成
された、請求項1に記載の検出装置。
【請求項18】
前記1つ以上のAD関連の病状の分類のためには、外因性蛍光剤、色素、又はトレーサ
は、不要である、請求項1に記載の検出装置。
【請求項19】
前記分光計による検出に先立って、前記レーザの波長をフィルタリングして取り除くた
めの1つ以上の光学フィルタをさらに備えた、請求項1に記載の検出装置。
【請求項20】
前記1つ以上のプロセッサは、前記ハイパースペクトル反射率情報から前記1つ以上の
ROIの各々のそれぞれのサイズを決定し、前記ラマン分光部を制御して、前記それぞれ
のサイズを有する前記眼球の前記ROIの各々に前記レーザを放射するように構成された
、請求項1に記載の検出装置。
【請求項21】
前記ラマン分光部は、前記ラマン分光情報の決定のために、前記1つ以上のROIの各
々について、前記ラマン分光部の前記レーザを使用してそれぞれの前記ROIの走査を実
行するように、前記1つ以上のプロセッサによって制御される、請求項1に記載の検出装
置。
【請求項22】
前記ハイパースペクトルカメラは、
各光センサが光の波長の範囲に敏感な光センサの2次元アレイと、
個々の各フィルタが特定の波長の光を選択的に透過する光センサのアレイをオーバレイ
する2次元フィルタアレイと、を含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項23】
被験者の眼球からの1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状の非侵襲的生体内
検出の方法であって、
ハイパースペクトル反射率撮像部を制御して、広帯域光源を使用して前記眼球の眼底の
広視野を照明することと、
ハイパースペクトル反射率情報を決定するために、ハイパースペクトルカメラを使用し
て、前記広帯域光源から生じる前記眼球からの光を検出することと、
1つ以上のプロセッサを使用して、前記ハイパースペクトル反射率情報から、1つ以上
の関心領域(ROI)の場所を、潜在的なAD関連の病状として判定することと、
レーザを使用して1つ以上のROIの各々を照明するようにラマン分光部を制御するこ
とと、
ラマン分光情報を決定するために、分光計を使用して、前記レーザから得られる前記眼
球からのラマン散乱光を検出することと、
前記1つ以上のプロセッサを使用して、前記ハイパースペクトル反射率情報及び前記ラ
マン分光情報を使用して、前記被験者を、1つ以上のAD関連の病状を有するものとして
分類することとを含み、
前記1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、前記タンパク質凝集体は
、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又は
アミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含む、方法。
【請求項24】
機械学習トレーニングプロセスによるコンピュータプログラム製品であって、
不揮発性のコンピュータ可読媒体に格納され、コンピュータによって実行されると、前
記コンピュータに対して、被験者の眼球から1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の
病状の非侵襲的生体内検出を実行させる命令を備え、
前記機械学習トレーニングプロセスは、
1つ以上のプロセッサを使用して、検証済みトレーニングデータを使用して前記コンピ
ュータプログラムをトレーニングすることを備え、
前記検証済みトレーニングデータは、
被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スライスにし、
前記組織スライスをスライドに配置し、
第1のスライドの第1の組織スライスを染色し、
前記組織サンプル内の前記第1の組織スライスに隣接しており、未染色の第2の組織ス
ライスを有する第2のスライドを提供し、
組織診断を使用して、前記染色された第1の組織スライスが前記1つ以上のAD関連の
病状を有することを検証し、
前記第2のスライドにおいて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、撮像情報を取得
し、
前記撮像情報を、前記1つ以上のAD関連の病状として分類することによって取得され
たものであり、
前記1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、前記タンパク質凝集体は
、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又は
アミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含む、コンピュータプログラム製品
【請求項25】
前記検証済みトレーニングデータは、前記第1の組織スライスと前記第2の組織スライ
スとをコレジスタすることによってさらに得られる、請求項24に記載のコンピュータプ
ログラム製品。
【請求項26】
前記少なくとも1つの撮像装置は、ラマン分光部、ハイパースペクトル反射率撮像部、
又は前記ラマン分光部と前記ハイパースペクトル反射率撮像部との両方である、請求項2
4に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項27】
前記少なくとも1つの撮像装置を作動させることは、前記撮像情報を前記1つ以上のA
D関連の病状として分類するために集合的に使用される少なくとも2つの撮像装置を作動
させることを含む、請求項24に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項28】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに対して、被験者の眼球から1
つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状の非侵襲的生体内検出を実行させる、メモ
リに格納されたコンピュータプログラムの機械学習トレーニングのための方法であって、
1つ以上のプロセッサを使用して、検証済みトレーニングデータを使用して前記コンピ
ュータプログラムをトレーニングすることを含み、
前記検証済みトレーニングデータは、
被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スライスにし、
前記組織スライスをスライドに配置し、
第1のスライドの第1の組織スライスを染色し、
前記組織サンプル内の前記第1の組織スライスに隣接しており、未染色の第2の組織ス
ライスを有する第2のスライドを提供し、
組織診断を使用して、前記染色された第1の組織スライスが前記1つ以上のAD関連の
病状を有することを検証し、
前記第2のスライドにおいて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、検出情報を取得
し、
前記検出情報を、前記1つ以上のAD関連の病状として分類することによって取得され
たものであり、
前記1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、前記タンパク質凝集体は
、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又は
アミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含み、さらに、トレーニングされた
コンピュータプログラムを前記メモリに格納することを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例示的な実施形態は、概して、眼球におけるアルツハイマー病関連の病状の検出、位置
特定、及び定量化のための眼光に基づく診断検出器に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2017年11月27日に出願されLIGHT-BASED OCULA
R SCANNER FOR DETECTION OF ALZHEIMER’S D
ISEASE PATHOLOGIESという題名の米国仮特許出願第62/590,8
36号の優先権の利益を主張し、その内容は、参照により本明細書の以下の例示的な実施
形態の詳細説明に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD:Alzheimer's disease)は致命的な神経変性疾患である。病
気の確認は、一般的に死後に行われている。診断のためのいくつかの既存の従来のシステ
ムは、非常に侵襲的な手順を伴うか、コストや複雑さのために撮像装置にアクセスできな
いか、又は有害な放射性トレーサを使用する。
【0004】
いくつかの従来のバイオマーカ法は、AD関連の病状を特定するために使用され、臨床
医がADを早期に検出し、その症状を他の形態の認知症と区別するのに役立てることがで
きる補助的な手段とみなされる。これらの手法は、アミロイド脳沈着又は下流の神経損傷
を評価することが多く、例えば、アミロイドベータ(Aβ)及びリン酸化されたタウ(神
経原線維変化成分、NFT:neurofibrillary tangles)の脳脊髄液(CSF:cerebral
spinal fluid)測定、アミロイドベータ又はフルオロデオキシグルコース(FDG:fluo
rodeoxyglucose)の取り込み(頭頂葉及び側頭葉の代謝)に関する陽電子放出断層撮影法
(PET:positron emission tomography)、及び脳萎縮の磁気共鳴撮像法(MRI:ma
gnetic resonance imaging)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの手法の多くは侵襲性が高く、時間がかかり(例えば、外部のラボでの
検証を必要とする)、費用がかかり、複雑であり、アクセスが困難であり、多くの臨床医
のトレーニングを経る必要があり、ADの初期段階又は無症候段階を特定するには不十分
である。
【0006】
そこで、AD関連の病状の早期検出、診断、及び予防又は治療の介入に対する患者の反
応の追跡のために患者集団をスクリーニングするために臨床医が簡単に操作及びアクセス
できる、非侵襲的な光を基礎とした検出システムを提供することが目的である。外因性の
蛍光剤、染料、又はトレーサを使用しないで検出を行なうことが目的である。
【0007】
AD関連の病状をより具体的に判定するために、眼球の部分の化学成分の特定の特性を
検出することがシステムの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態は、眼球におけるAD関連の病状を検出するための非侵襲性の眼光に
基づく検出装置に関する。この検出装置は、網膜等の眼底の一部を光学的に検査するため
に使用できる。この検出装置は、ADのリスクのある集団を特定し、診断し、治療と介入
の有効性を追跡するためのアクセス可能で非侵襲的な手順を提供する、光を基礎とした手
段である。
検出装置は、2つの撮像装置(imaging modality)を使用し、第1の撮像装置は、第2
の撮像装置の動作を導く。検出装置は、第1の撮像装置を使用して、網膜の反射及び/又
は散乱した広帯域光源からの光を検出し、さらに、検査が必要な1つ以上の関心領域(R
OI:regions of interest)の場所とサイズを決定する。
検出装置は、第2の撮像装置を使用して、各ROIへのレーザ光の入射によって開始さ
れるラマン散乱プロセスによって再放射される光を検出する。これにより、検出装置は、
ラマン分光情報を検出し、特異性の高い1つ以上のAD関連の病状の化学成分に特徴的な
特定の波数シフトのカウントを検出できる。
【0009】
検出装置は、1つ以上のAD関連の病状の検出のための感度と特異性を備えた非侵襲的
な手段であり、事前スクリーニング、診断、及び治療と介入の有効性の追跡に使用できる
。非侵襲的な検出のための従来の光学的方法は、特異性と感度の欠如を被る可能性がある
か、又は外因性の蛍光剤、色素、若しくはトレーサに依存し得る。
【0010】
ADを示すAD関連の病状の存在を判定するために、2つの撮像装置が順番に使用され
る。例示的な実施形態において、第1の撮像装置では、光源(例えば、広帯域ランプ又は
単色のパターン化された光)を利用し、ハイパースペクトル撮像法を使用して、被験者の
網膜の広視野(wide field-of-view)の反射光を基礎にした画像を取得する。
第1の撮像装置は、物理的特性に基づいて、タンパク質オリゴマ又は凝集体である可能
性のある異常な領域の検出を可能にし、1つ以上のROIの位置及びサイズを特定する。
これらは、単色レーザのような第2の光源を使用して、第2の撮像装置によって、さらに
検査を受ける。単色レーザは、各ROIをプローブして、例示的な実施形態において、ラ
マン分光法を使用して、これらのAD関連の病状の化学成分の特徴である特定の波数シフ
トがもたらされるかどうかを確認する。
ラマン分光法は、AD、又はADの前駆体に特徴的なタンパク質凝集体又は他の特徴を
検出する非常に特異的な方法である。ラマン分光法では、関心のあるターゲット(例えば
、タンパク質凝集体や他の機能)が、化学成分に特徴的な(ラマン散乱)光を再放射する
ことにより、単色レーザに応答する。このラマン散乱光は、検出装置によって収集され、
AD関連の病状の化学的痕跡を検出するためにスペクトル分析される。
【0011】
検出装置は、外因性の蛍光剤、染料、又は放射性トレーサに依存しない。検出装置は、
完全に非侵襲的であり、相乗的に作用して、タウオパシ、可溶性及び/又は不溶性アミロ
イドベータ種、アミロイド前駆体タンパク質(APP)等のAD関連の病状のみならず、
周囲の神経炎及びグリア細胞病状学及び血管の特徴のように、検出の高い感度のみならず
、高い特異性を生む、2つの異なる撮像装置を利用する。
【0012】
いくつかの例では、検出装置は、検出装置の操作、及び網膜を含む被験者の眼底から取
得された光学情報の分類のために機械学習アルゴリズムを使用する。この検出装置により
、AD疾患、診断、及び治療と介入の有効性の追跡(陽性又は陰性の応答性)について、
リスクのある集団の迅速かつ非侵襲的な事前スクリーニングが可能になる。網膜でのAD
検出において、現在の多くの非侵襲的な光学的方法は、外因性蛍光剤の使用に依存するが
、検出装置は、外因性蛍光剤を使用することなく、AD関連の病状の高い特異性の検出の
ために、眼球における内因性光学コントラスト及びラマン共鳴を使用する。
【0013】
いくつかの例では、機械学習アルゴリズムは、2つのステップで検出装置によって実施
され、最初に、ラマン分光部のレーザをそれらのROIに導くために使用されるハイパー
スペクトル反射率情報に基づいて、関心領域を特定する。次に、これら特定のROIの検
査から返されたラマンスペクトルとハイパースペクトル反射率情報とからAD関連の病状
を分類する。これら2つの光学分光装置(spectroscopy modalities)と機械学習アルゴ
リズムとを組み合わせると、ADのリスクのある集団の事前スクリーニング、診断、及び
治療と介入の有効性を追跡するための高感度、高特異性、非侵襲性の検出装置が得られる
【0014】
いくつかの例では、機械学習アルゴリズムは、検証済みトレーニングデータを使用して
トレーニングされる。検証済みトレーニングデータは、ADであることがわかっている被
験者からのエキソビボの組織サンプル(ex vivo tissue sample)の隣接するスライスを
比較することで取得できる。被験者の組織の1つのスライスが、ハイパースペクトル撮像
法とラマン分光法を使用して分析され、隣接するスライスが染色され、顕微鏡又は他の撮
像装置を使用した組織診断によって検証される。1つのスライスの組織診断を使用してA
Dの病状を検証すると、ハイパースペクトル撮像法とラマン分光法を使用して、隣接する
スライスを、対応する場所で分析できるため、機械学習アルゴリズムの検証済みトレーニ
ングデータとして使用できる。
【0015】
検出装置は、被験者の眼球からの1つ以上のAD関連の病状を検出するための非侵襲性
の生体内眼光に基づく検出装置であって、広帯域光源及びハイパースペクトルカメラを含
むハイパースペクトル反射率撮像部と、レーザ及び分光計を含むラマン分光部と、メモリ
と、メモリに格納された以下の命令を実行するように構成された1つ以上のプロセッサと
を備え、プロセッサは、ハイパースペクトル反射率撮像部を制御して、広帯域光源を使用
して、眼球の眼底の広視野を照明し、ハイパースペクトル反射率情報を決定するために、
ハイパースペクトルカメラを使用して、眼球からの反射光及び/又は後方散乱光を検出し
、ハイパースペクトル反射率情報から、1つ以上のROIを、潜在的なAD関連の病状と
して判定し、レーザを使用して1つ以上のROIの各々を照明するようにラマン分光部を
制御し、ラマン分光情報を決定するために、分光計を使用して、レーザから得られる眼球
からのラマン散乱光を検出し、ハイパースペクトル反射率情報及びラマン分光情報を使用
して、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類し、1つ以上のAD関
連の病状は、タンパク質凝集体を含み、タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミ
ロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質
のうち少なくとも1つを含む。
【0016】
別の例示的な実施形態は、被験者の眼球からの1つ以上のAD関連の病状の非侵襲的生
体内検出の方法であって、ハイパースペクトル反射率撮像部を制御して、広帯域光源を使
用して眼球の眼底の広視野を照明することと、ハイパースペクトル反射率情報を決定する
ために、ハイパースペクトルカメラを使用して、広帯域光源から生じる眼球からの光を検
出することと、1つ以上のプロセッサを使用して、ハイパースペクトル反射率情報から、
1つ以上のROIの場所を、潜在的なAD関連の病状として判定することと、レーザを使
用して1つ以上のROIの各々を照明するようにラマン分光部を制御することと、ラマン
分光情報を決定するために、分光計を使用して、レーザから得られる眼球からのラマン散
乱光を検出することと、1つ以上のプロセッサを使用して、ハイパースペクトル反射率情
報及びラマン分光情報を使用して、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有するものとし
て分類することとを備え、1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、タン
パク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベー
タ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含む。
【0017】
別の例示的な実施形態は、機械学習トレーニングプロセスによるコンピュータプログラ
ム製品であって、コンピュータプログラム製品は、不揮発性のコンピュータ可読媒体に格
納され、コンピュータによって実行されると、コンピュータに対して、被験者の眼球から
1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状の非侵襲的生体内検出を実行させる命令
を備え、機械学習トレーニングプロセスは、1つ以上のプロセッサを使用して、検証済み
トレーニングデータを使用してコンピュータプログラムをトレーニングすることを備え、
検証済みトレーニングデータは、被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして
組織スライスにし、組織スライスをスライドに配置し、第1のスライドの第1の組織スラ
イスを染色し、エキソビボの組織サンプル内の第1の組織スライスに隣接しており、未染
色の第2の組織スライスを有する第2のスライドを提供し、組織診断を使用して、染色さ
れた第1の組織スライスが1つ以上のAD関連の病状を有することを検証し、第2のスラ
イドにおいて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、撮像情報を取得し、撮像情報を、
1つ以上のAD関連の病状として分類することによって取得されたものであり、1つ以上
のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変
化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タ
ンパク質のうち少なくとも1つを含む。
【0018】
別の例示的な実施形態は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに対して
、被験者の眼球から1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状の非侵襲的生体内検
出を実行させる、メモリに格納されたコンピュータプログラムの機械学習トレーニングの
ための方法であって、この方法は、1つ以上のプロセッサを使用して、検証済みトレーニ
ングデータを使用してコンピュータプログラムをトレーニングすることを備え、検証済み
トレーニングデータは、被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スラ
イスにし、組織スライスをスライドに配置し、第1のスライドの第1の組織スライスを染
色し、エキソビボの組織サンプル内の第1の組織スライスに隣接しており、未染色の第2
の組織スライスを有する第2のスライドを提供し、組織診断を使用して、染色された第1
の組織スライスが1つ以上のAD関連の病状を有することを検証し、第2のスライドにお
いて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、検出情報を取得し、検出情報を、1つ以上
のAD関連の病状として分類することによって取得され、1つ以上のAD関連の病状は、
タンパク質凝集体を含み、タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ
沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のうち少なく
とも1つを含み、方法はさらに、トレーニングされたコンピュータプログラムをメモリに
格納することを備える。
【0019】
次に、例として、例示的な実施形態を示す添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】例示的な実施形態による、眼球におけるADの病状を検出するための非侵襲性の眼光に基づく眼球用検出装置の概略的な形式を例示する図である。
図2図1の検出装置のインタフェースユニットの側面概略図である。
図3図1の検出装置のラマン分光部のトップダウン概略図である。
図4】死後のAD患者からの未染色のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)脳組織のラマンマップを示す図である。
図5図4のラマンマップからのピクセルに対応するADプラークの広帯域ラマンスペクトルを示す図である。
図6】背景組織を含む図4のラマンマップからのピクセルの広帯域ラマンスペクトルを示す図である。
図7】死後のAD患者からの未染色のFFPE脳組織の別のラマンマップを示す図である。
図8図7のラマンマップからのピクセルに対応する広帯域ラマンスペクトルを示す図である。
図9】背景組織を含む図7のラマンマップからのピクセルの広帯域ラマンスペクトルを示す図である。
図10】例示的な実施形態による、後続のラマン分光法のための関心領域を特定するための患者組織のハイパースペクトル撮像マップを示す図である。
図11】例示的な実施形態による、眼球におけるADの病状を検出するための方法のフロー図である。
図12】例示的な実施形態による、図1の検出装置の機械学習アルゴリズムのためのトレーニングデータを決定するための方法のフロー図である。
図13】例示的な実施形態による、眼球におけるADの病状を検出するためのシステムを示す図である。
図14図4のラマンマップに対応するプラーク(例えば、染色された赤い点)を含む偏光顕微鏡画像を示す図である。
図15図7のラマンマップ(鏡像)に対応して、血管の隣のプラークを示す、染色されたスライドの偏光顕微鏡画像の2つの異なる倍率(10倍、左、及び40倍、右)を示す図である。
図16】隣接するスライスにおいて図15に見られるものと同じ血管を含む、未染色のスライドのハイパースペクトル画像(左)と、その偏光顕微鏡画像(右、鏡像)とを示す図である。
図17A】ラマン分光部によって撮られた、図16と同じ未染色スライドの白色光画像を示し、図16の同じ血管がラマン分光部を使用して配置できることを示す図である。
図17B図17Aの白色光画像を例示し、ラマンマッピングされた領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
同様の参照番号は、同様の構成要素を示すために異なる図で使用される場合がある。
【0022】
図1は、例示的な実施形態による、眼球におけるAD関連の病状を検出するための非侵
襲性の眼球内生体光に基づく検出装置100を示す。検出装置100は、網膜等の眼底の
一部の光学的な検査を実行するために使用することができる。検出装置100は、ADの
リスクのある集団を特定するためにアクセス可能で非侵襲的な手順を提供するポイントオ
ブケア(POC:point-of-care)ツールである。検出装置100は、広帯域光源からの
眼底で反射された光を検出する。検出装置100は、また、1つ以上のAD関連の病状の
存在を高い特異性で検出するために、単色レーザによる入射に応じて、眼底から放出され
たラマン散乱光を検出することができる。これにより、1つ以上のAD関連の病状の存在
に基づいて、リスクのある集団を特定できる。
【0023】
検出装置100は、ラマンベースステーション1と、調査中の被験者との間に介在する
インタフェースユニット2とを含む。被験者は、例えば、ヒト又は動物であり得る。検出
装置100は、ハイパースペクトル反射率撮像部及びラマン分光部を含む。ハイパースペ
クトル反射率撮像部は、インタフェースユニット2の内部にある。ラマン分光部は、ラマ
ンベースステーション1と、インタフェースユニット2の構成要素とによって画定される
【0024】
被験者は、顎が顎当て5に置かれた状態で、ゴム製のアイカップ4に対して、インタフ
ェースユニット2の前に配置される。ラマンベースステーション1とインタフェースユニ
ット2は、光ファイバ3を介して接続されており、光ファイバ3は、ラマンベースステー
ション1からインタフェースユニット2へ、狭ビームの構成で単色レーザ光を供給する役
割を果たす。
レーザ光は、一例では532nmのコヒーレント光、又は別の例では785nmであり
得る。他の例では、他のレーザ波長を使用することができる。同じインタフェースユニッ
ト2を介して、光ファイバ3は、また、ラマンプロセスにより、レーザ励起に応じて特定
の領域又は被験者の眼球の一部によって再放射される光を収集し、この再放射された光を
、適切な光検出器(例えば、分光計)による検出のために、ラマンベースステーション1
に供給する。
他の例示的な実施形態では、ラマンベースステーション1及びインタフェースユニット
2は、本明細書の教示を考慮して当業者に明らかであるように、単一の装置に組み合わさ
れるか、又はさらに分離することができる。
コンピュータ6は、ラマンベースステーション1及びインタフェースユニット2に対し
てインタフェース(制御及び通信)をするために使用される。コンピュータ6は、メモリ
30及びプロセッサ32を含む。電気ケーブル7は、ラマンベースステーション1とコン
ピュータ6との間で情報を伝送し、同軸ケーブル8は、インタフェースユニット2とコン
ピュータ6との間で情報を伝送する。
コンピュータ6は、本明細書でより詳細に説明する機械学習アルゴリズムを使用して、
受信した情報を処理する。コンピュータ6は、機械学習アルゴリズムの出力又は他の制御
情報を、電気ケーブル9を介してインタフェースユニット2に送信し、インタフェースユ
ニット2は、受信した情報を使用して、光ファイバ3から、被験者の眼球の特定の領域又
は部分にレーザ光を導く。例えば、コンピュータ6は、受信した撮像情報を分析し、撮像
情報をリアルタイムで部分的又は全体的に処理することができる1つ以上の画像分析専用
チップ(例えば、グラフィック処理ユニットすなわちGPU(graphics processing unit
))を含むことができる。
【0025】
図2は、インタフェースユニット2をより詳細に示す。インタフェースユニット2は、
インタフェースユニット2の動作を制御し、コンピュータ6及びラマンベースステーショ
ン1と通信するための1つ以上のコントローラ又はプロセッサ(図示せず)を含むことが
できる。調査中のターゲットは、ゴム製のアイカップ4の前に置くことができる。生体内
撮像の場合、被験者は、そのアイカップ4に眼球を向け、顎当て5に顎を置く。これによ
り、被験者と、インタフェースユニット2の光路とを合わせることができる。
インタフェースユニット2は、動物の生体内撮像、組織の生体外撮像(ex vivo imagin
g)、又は他の任意の適切なターゲットにも使用でき、ステージをインタフェースユニッ
トに取り付けて、ターゲットを適切な位置(例えば、光学系の焦点面)に配置することが
できる。ターゲットを支持及び配置するための他の構成要素が、他の例で使用されてもよ
い。
【0026】
インタフェースユニット2は、被験者の眼底の広視野撮像が可能な眼底カメラ等を含む
ことができる。異なる波長の光を検出及び特定することができる光センサ10が、画像を
キャプチャするために使用される。光センサは、ハイパースペクトルカメラ、マルチスペ
クトルカメラ、赤、緑、青色のカメラ、又は単色カメラの形態を採り得る。この例では、
可視及び近赤外スペクトル(400nm~1100nm)をカバーする広帯域光源11を
使用して、被験者の網膜を照明する。
広帯域光源11は、2つのビームスプリッタ12、13を通過し、レンズアセンブリ1
4等の集束素子を介して網膜に向けられる。他の例示的な実施形態では、被験者の眼球の
配光を調整するために、他の集束及びビーム成形要素が存在してもよいことが理解されよ
う。いったん被験者の眼球に向けられると、広帯域光の少なくとも一部は、網膜又は眼球
の他の領域から反射及び/又は後方散乱される。この光の一部はインタフェースユニット
2に戻り、そこでレンズアセンブリ14によって収集され、ビームスプリッタ13によっ
てハイパースペクトルカメラ10に向けられる。ハイパースペクトルカメラ10の位置及
び反射光及び/又は後方散乱光を収集する幾何形状の他の適切な構成は、当業者には明ら
かであろう。
【0027】
レンズアセンブリ14によって向けられるように、視野全体が、1回のキャプチャで光
センサ10によって検出される。例えば、ハイパースペクトルカメラ10の場合、全ての
波長情報が視野全体にわたって同時に検出される。広視野のハイパースペクトル反射率撮
像部は、視野全体の行又は列を走査するラスタとは対照的であり、すなわち、一度に1つ
の波長帯域を検出(例えば、マルチスペクトル撮像)すること、又はラインハイパースペ
クトルカメラ、又はコヒーレンス(例えば、光コヒーレンストモグラフィ)を必要とする
照明光とは対照的である。
【0028】
この例では、被験者の網膜の中央領域が、視野全体を占める撮像ターゲットである。他
の例では、眼底の他の領域が、撮像ターゲットとして機能する。
【0029】
同軸ケーブル8は、ハイパースペクトルカメラ10によって検出されたハイパースペク
トル情報をリアルタイムで処理するためにコンピュータ6に伝送する。本明細書でより詳
細に説明するように、コンピュータ6の機械学習アルゴリズムは、このハイパースペクト
ル情報を使用して、以前に取得したトレーニングデータに基づいて、1つ以上のROIの
場所及びサイズを確認する。
いくつかの例では、各ROIのサイズは、この場所を中心とする円形の領域(例えば、
半径又は直径で示される)、又は長方形の領域(例えば、M×Nピクセルで示される)と
して定義できる。1つ以上のROIが特定されると、例えば、ラマン分光部を使用するラ
マン分光法等、別の撮像装置を検出装置100によって実行することができる。単色レー
ザ18(図3)等の第2の光源は、ラマン分光部内に収納される。
単色レーザ18からの光は、ミラー15,16,17によって適切なROIに向けられ
る。ミラー15,16,17は、インタフェースユニット2によって電気機械モータを使
用して制御され、ハイパースペクトル反射率撮像部によって取得されたハイパースペクト
ル情報から事前に特定されたように、被験者の網膜の適切なROIに集束レーザ光を向け
る。
電気ケーブル9は、ミラー15,16,17の角度を制御するために、信号をコンピュ
ータ6からインタフェースユニット2に伝送する。レーザ光は、ROIで網膜と相互作用
し、ラマン現象を介して、光は、検査された組織の化学成分に特徴的な特定の波数シフト
でラマン散乱される。この再放射された光は、レンズアセンブリ14を介して収集され、
ビームスプリッタ13を透過し、その後、ビームスプリッタ12及びミラー15,16,
17によって反射されてから、光ファイバ3に結合される。次に、光ファイバは、この再
放射されたラマン光を、検出のためにラマンベースステーション1に送り返す。
【0030】
ラマン分光法は、特定されたROIの各々に対して1つ以上の特定の化学成分に特徴的
な波数シフトの有無を特定するために実行される。機械的ミラー15,16,17、レン
ズアセンブリ14、及び/又は絞りを使用するラマン分光法によって、ROIのスペクト
ル情報は、組織環境内の1つ以上の特定のピクセルを備えることができるコンピュータ6
によって取得することができる。いくつかの例では、特定の波長でのカウントが検出され
、単色レーザ18の既知の波長との差を計算することにより、そこから1つ以上の波数シ
フトが計算される。
【0031】
例えば、場所及びサイズを有する特定された各ROIのラマン分光情報は、ラマン分光
部による1回のキャプチャで検出され、ROIの場所及びサイズの単色レーザ18の1つ
のインスタンスによって刺激され得る。例えば、レンズアセンブリ14は、ROI全体の
ラマン分光情報が1回のキャプチャで検出されるように、ラマン分光部の単色レーザ18
からのレーザ光によって刺激されるROIのサイズを制御するために使用することができ
る。いくつかの例では、絞り、アイリス、又はコリメーション装置(図示せず)を使用し
て、単色レーザ18によって刺激されるROIのサイズを制御することもできる。
【0032】
別の例では、ROIの各ピクセルは、単色レーザ18によって刺激される各ピクセルに
よって走査され、ROIの各ピクセルにわたってラマン分光部によってラマン分光情報が
取得されて、ROIのラマンマップが作成されるか、又は、ROIにわたる統合分光結果
が計算される。網膜の広い視野全体をラマン走査する必要がないことが理解されよう。
【0033】
本明細書でより詳細に説明する様々な例では、ラマン分光部について、光学フィルタ2
0(図3)を使用して、ラマン分光部による検出の前に特定の波長又は関心のある帯域を
通過させることができる。同様に、デジタルフィルタリングを、特定の波長又は関心のあ
る帯域に対してコンピュータ6によって実行することができる。
【0034】
次に、ハイパースペクトル撮像を実行するためのハイパースペクトルカメラ10の動作
をより詳細に説明する。ハイパースペクトルカメラ10は、可視及び近赤外範囲の光に敏
感な光センサであって、ピクセルによって特定される光センサの2次元アレイを含む。2
次元フィルタアレイは、この光センサのアレイ上に配置される。2次元フィルタアレイ内
の個々の各フィルタは、所定の波長の光を選択的に透過し、この光は、センサアレイにお
ける専用ピクセルによって検出される。フィルタアレイのパターンは、光センサ全体にわ
たって繰り返され、視野内の全てのポイントからの光がフィルタされ、センサによって検
出される。
このように、視野の全ての領域からの全ての波長/周波数情報が、1回のキャプチャで
同時に取得される。これは、視野内の1次元のラインを横切る光の異なる波長のみを検出
して区別できるラインハイパースペクトルカメラとは異なる。これは、複数のフィルタを
順番に使用して波長情報をキャプチャする一般的なマルチスペクトルアプローチとも異な
り、換言すれば、最初に「赤」の情報をキャプチャし、次に別のフィルタを挿入して「緑
」の情報をキャプチャするというようなアプローチとは異なる。
【0035】
図3は、ラマンベースステーション1の例示的な実施形態をより詳細に示す。可視又は
近赤外波長範囲内の単色レーザ18が、ラマンベースステーション1の内部に収容されて
いる。レーザ18は、この例では532nmコヒーレント光、又は、別の例では785n
mを送出する。レーザ18は、他の例では他の特定の波長を放射することができる。レー
ザ18からのレーザ出力は、ビームスプリッタ19を介して導かれ、ファイバアダプタ2
2を介して光ファイバ3に結合される。光ファイバ3は、レーザ光をインタフェースユニ
ット2に伝送する。上述のように、インタフェースユニット2は、このレーザ光を(ハイ
パースペクトル撮像に基づいてコンピュータ6によって特定されるように)被験者の網膜
の各ROIに向ける。
この例では、各ROIへのレーザ光のサイズ(半径)は、レンズアセンブリ14及び/
又は絞りを使用して制御することができる。他の例では、レーザ光は、各ROIをピクセ
ル毎に走査する。レーザ光は、これらの領域で組織と相互作用し、ラマン現象を介して、
検査された組織の特性である波長の変化を伴う光が組織から散乱する。このラマン散乱光
は、1つ以上のさらなるレンズ(図示せず)等の収集光学系によって成形され導かれるた
め、光ファイバ3に効率的に結合され、ラマンベースステーション1に戻され得る。
ビームスプリッタ19は、この戻り光を、検出のために分光計21に向け直す働きをす
る。光学フィルタ20は、534nm(レーザ18からのレーザ波長よりも大きい)にカ
ットオフを有するロングパスフィルタを備えることができ、光路に沿って後方反射を受け
、ラマンベースステーション1に戻ってきた任意の直進的なレーザ光を除去するために使
用される。
別の例では、光学フィルタ20は、レーザの特定の波長(例えば、一例では532nm
コヒーレント光、又は別の例では785nm)に対する狭いフィルタを備えたノッチフィ
ルタを備えることができる。光学フィルタ20は、ラマン現象からの光のみが分光計21
によって検出されること、及び元のレーザ18からの光が光学フィルタ20によって除去
されることを保証する。分光計21は、個々の波長成分を分離し、これら成分を光センサ
の別個のピクセルに投影する屈折素子を備える。
次に、分光計21によって測定されたスペクトル情報は、さらなる処理のために電気ケ
ーブル7を介してコンピュータ6に送られる。コンピュータ6は、代替として、又は物理
的な光学フィルタ20と連携して、アルゴリズム的にさらなるフィルタリング(デジタル
フィルタリング)を実行することができる。ラマンベースステーション1は、ラマンベー
スステーション1の動作を制御し、コンピュータ6及びインタフェースユニット2と通信
するための1つ以上のコントローラ又はプロセッサ(図示せず)を含むことができる。
【0036】
いくつかの例では、照明及び光収集システムは、適応光学(AO)システム及び方法を
使用することによって実行され得る。
【0037】
次に、1つ以上の物質のラマンスペクトルでトレーニングされた機械学習アルゴリズム
が、コンピュータ6によって実行され、ラマン信号の情報源についての化学成分の特性で
ある特定の波数シフトを特定し、これによって、特に、眼球におけるAD関連のタンパク
質凝集体又は他の病状の存在を特定する。特定することは、1つ以上の波数シフトのイン
スタンスのカウント、及び/又は、他の数式を含むことができる。
検出装置100によって検出され得る眼底の例示的なタンパク質凝集体は、タウ神経原
線維変化(例えば、可溶性又は不溶性タウオリゴマ又はタウ原線維)、アミロイドベータ
沈着物(例えば、可溶性アミロイドベータ凝集体又は不溶性アミロイドベータプラーク、
アミロイドベータオリゴマ、又はアミロイドベータ前駆体)、及びアミロイド前駆体タン
パク質(APP)を含む。
このラマン信号の検出により、ハイパースペクトル撮像のみと比較して、AD関連の病
状の検出の特異性が大幅に向上する。AD関連の病状は、経時的にも追跡でき、ADの病
状又は他のADの結論の分類を評価するために、同じ患者から異なる時間に取得されたラ
マン分光情報が比較される。例えば、特定のROIにおける潜在的プラークのラマンカウ
ント値(又は比率又は他の特性)は、AD被験者において経時的に増加する可能性がある
。いくつかの例において、機械学習アルゴリズムは、ラマン分光情報とハイパースペクト
ル反射率情報との両方を使用して、AD関連の病状又は他のAD関連の結論をより適切に
分類する。
【0038】
コンピュータ6は、ラマン分光情報を解釈し、機械学習アルゴリズムを使用して、RO
Iを、タンパク質凝集体等の1つ以上のAD関連の病状を含むか否かとして分類すること
ができる。例示的な実施形態では、被験者の分類は、被験者がAD、又はADの前駆体を
有しているか、又は、潜在的なADについて事前にスクリーニングされており、さらに調
査が必要であるか否かに関するADの結論でもあり得る。コンピュータ6は、分類を表示
画面に出力するか、ローカルメモリに格納するか、又はサーバ204、クライアントステ
ーション206、又はEMR(electronic medical record)サーバ214(図13)等
の別の装置に送信するようにプログラムすることができる。
【0039】
図4から図10は、機械学習アルゴリズムのトレーニングデータとして使用される撮像
情報を示している。同様に、図4から図10において、撮像情報は、検出装置100がど
のように生体内で使用されて特定の被験者(患者)の眼球におけるAD関連の病状を分類
できるかを示す。両方のシナリオについて、図4図10を参照して説明する。
【0040】
図4は、死後のAD患者からの未染色のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)脳
組織のラマンマップ400を示す。輝点は、アミロイドベータプラークの場所に対応して
いる。これは、同じ被験者の隣接する体外組織スライスの組織診断を通じて独立して検証
されたものである。このマップ400は、全てのピクセル(ベータシートタンパク質構造
のラマン振動共鳴に対応する)毎に波数1663cm-1の信号強度をプロットし、20
00cm-1と2500cm-1との間のラマン信号の線形バックグラウンドを差し引く
ことにより、コンピュータ6によって生成される。軸は、組織スライスの物理的な距離の
単位(マイクロメートルの単位)に対応している。輝点402は、図4のピクセル(55
μm,46μm)にある。
この例では、特定のラマンキャプチャは、ラマンユニット分光ユニットによってなされ
る1回のキャプチャのために、レーザ18によって照射されるROIの2つ以上のピクセ
ルを包含することができる。別の例では、ROIの各ピクセルは、単色レーザ18によっ
て刺激される各ピクセルによって走査され、ROIの各ピクセルにわたってラマン分光部
によってラマン分光法情報が取得され、ROIのラマンマップを作成するか、又はROI
にわたる統合分光結果を計算する。
【0041】
図5は、図4の輝点402ピクセル(55μm,46μm)に対応する、ADプラーク
の広帯域ラマンスペクトルグラフ500を示す。グラフ500は、そのピクセルについて
、受信したラマン散乱光のカウントに対応する波数シフトを示す。1600cm-1及び
1663cm-1におけるピーク502,504は、それぞれアルファヘリックス及びベ
ータプリーツシートタンパク質コンフォメーション、いわゆるアミドIバンドのラマン振
動共鳴に対応する。
残りのピークのほとんどは、パラフィンの存在に対応している。1600cm-1及び
1663cm-1におけるピークは、この場所にタンパク質が存在することを示し、これ
らのピークは、視野の近隣領域のこれら波長に存在する低いバックグラウンド信号(図6
、602及び604)に対してはっきりと見える。
これにより、アミロイドベータプラークに特徴的なタンパク質の局在化された存在が確
認される。1800cm-1におけるベータシートからのラマン信号がなく、1800c
-1に対する1663cm-1のラマン信号の比を示すマップは、アミロイドベータプ
ラークに対応する場所にホットスポットを示すことに注目されたい。所定のレベルのバッ
クグラウンド信号(「ノイズ」)の場合、1800cm-1に対する1663cm-1
信号の比に従って基準を設定できる。例えば、3:1の信号対雑音比を使用して、アミロ
イドベータプラークの存在を確認できる。
【0042】
図6は、図4の背景組織ピクセル(10μm,15μm)の広帯域ラマンスペクトルグ
ラフ600を示す。1600cm-1及び1663cm-1にピークがないことに注目さ
れたい。これは、アルファヘリックス及びベータプリーツシートタンパク質のコンフォメ
ーションの欠如を示している。これは、同じ被験者の隣接する体外組織スライスの組織診
断を通じて独立して検証される。いくつかの例では、ラマンスペクトルグラフ600又は
背景組織の他のラマン分光情報を、機械学習アルゴリズムのトレーニングのための制御情
報として(負の分類又は減算/除算される値として)使用できる。
【0043】
いくつかの例において、本主題のROIから得られたラマンスペクトルグラフ600は
、プラーク又はAD関連の病状を分類するために機械学習アルゴリズムによって使用され
得る。例えば、コンピュータ6は、被験者の背景組織のラマンスペクトルグラフ600と
、被験者の潜在的プラークのラマンスペクトルグラフ500(図5)との比較を行なう。
ラマンスペクトルグラフ600は、ラマンスペクトルグラフ500と同じ被験者から取
得されているため、比較により、有用な結果が得られる。比較は、プラーク又は他のAD
関連の病状として分類するために、機械学習アルゴリズム、比較、式、計算、表、減算、
比、又は、コンピュータ6によって実行される他の比較を含み得る。
【0044】
いくつかの例では、検証済みトレーニングデータのラマンマップは、ラマン信号をスペ
クトル領域にわたって積分し、この積分された量を全てのピクセルに対してプロットする
ことによって生成される。
図7は、そのような例を示しており、各ピクセルは、その領域の1663cm-1と1
698cm-1との間の積算カウントをエンコードする。2000cm-1と2500c
-1との間のラマンスペクトルに基づく線形バックグラウンド信号も差し引かれている
図7における輝点702は、容易に特定可能であり、隣接する組織スライスの組織診断
を通じて独立して確認されるように、アミロイドベータプラークに対応する。
【0045】
他の例では、ケモメトリックスを使用して、AD関連の病状に最もよく対応するスペク
トル領域を推測することができる。すなわち、広いラマンスペクトルのアルゴリズム的統
計分析を実行して、容易には明らかではないAD関連の病状に特有の特徴を特定すること
ができる。
【0046】
いくつかの例では、単一の広いスペクトル範囲ではなく、取得されたラマン信号は、図
5で特定されたもの等、関心のあるスペクトル領域を中心とする1つ以上の狭いスペクト
ル領域又は帯域で構成できる。
【0047】
例えば、ラマン分光法は、拡張された領域にわたってラスタ走査を実行するのではなく
、1つ以上の特定されたROIで実行される。これらの場合の結果は、全てのピクセルの
ラマンスペクトルで構成される完全な画像ではなく、図5に示すような単一のラマンスペ
クトルグラフになる。場合によっては、より広い範囲をカバーするために、入射レーザビ
ームがより大きな直径に拡大され得、ラマン散乱光は、拡大されたレーザ点サイズによっ
てカバーされるROIから収集される。
【0048】
図10は、患者組織の例示的なハイパースペクトル撮像マップ1000を示し、これは
、後続のラマン分光法のための1つ以上のROIを特定するために使用され得るハイパー
スペクトル撮像情報を例示する。ハイパースペクトル撮像マップ1000は、各々が、ハ
イパースペクトルカメラ10からの特定の検出された波長のカウントのマップを表す複数
の個々のハイパースペクトル画像マップ1000a,1000b,・・・,1000eを
含むことができる。
特定のハイパースペクトル画像マップのピクセルのカウントが高い(又は低い)場合、
そのピクセルは、ラマン分光法を使用してさらに調査する必要があることを意味する。ハ
イパースペクトル撮像マップ1000から、コンピュータ6は、機械学習アルゴリズムを
使用して、ラマン分光法によるさらなる調査を必要とする1つ以上のピクセル等の1つ以
上のROI1002(1つが示される)を決定することができる。
他の例では、各ハイパースペクトルマップ1000は、1つの特定の波長ではなく、あ
る範囲の波長を表すことができ、カウントは、その特定の範囲の波長に対するものである
。さらに他の例では、ハイパースペクトルマップ1000は、特定の波長の線形結合を使
用することによって生成されてもよく、これは、AD関連の病状の特徴を最もよくカプセ
ル化する。
【0049】
ハイパースペクトル反射率撮像情報の別の例示的な表現は、被験者の各ピクセル又は領
域に対するスペクトルグラフ(図示せず)である。スペクトルグラフは、そのピクセルの
受信光のカウント対波長を例示する。ハイパースペクトル撮像スペクトルグラフは、機械
学習アルゴリズムのトレーニングや、機械学習アルゴリズムによる分類にも使用できる。
【0050】
例えば、ROIは、ハイパースペクトル撮像マップ1000又はハイパースペクトル撮
像スペクトルグラフに示されるように、ハイパースペクトル撮像情報から決定することが
できる。
【0051】
さらに図10を参照すると、ハイパースペクトル撮像マップ1000のいくつかの波長
は、他よりも良い結果を提供するので、コンピュータ6は、機械学習アルゴリズムを使用
して、ハイパースペクトル反射率マップ1000及びそれらの対応する波長のどれを処理
するかを決定する。例えば、可視スペクトル及び近赤外スペクトルの全体に対応するハイ
パースペクトル撮像マップ1000を分析する必要はなく、むしろハイパースペクトル撮
像マップ1000の1つ以上の特定の波長が、さらなる処理のためにコンピュータ6によ
って選択される。
他のいくつかの例では、コンピュータ6がラマン分光法のためのROIを決定するため
に、関心のあるADの病状との関連性が低いハイパースペクトル撮像マップ1000には
より少ない重みが与えられ、より関連性の高いハイパースペクトル撮像マップ1000に
はより大きな重みが与えられる。
【0052】
一例において、コンピュータ6によって使用される関心のあるハイパースペクトル撮像
マップ1000又はハイパースペクトル撮像スペクトルグラフは、可視-近赤外(VNI
R)波長範囲(400~1400ナノメートル)にあり、具体的には、460nmから6
00nmの光学波長範囲、又は650nmから950nmの光学波長範囲にあり、アミロ
イドベータ沈着等のタンパク質凝集体の検出により適している。検出される特定のAD関
連の病状及び機械学習アルゴリズムに基づいて、他の例示的な実施形態では、異なる又は
より多くの特定の波長範囲が使用される。
【0053】
再び図4を参照すると、コンピュータ6によって、ハイパースペクトル反射率マップ1
000(又はハイパースペクトル反射率スペクトルグラフ)が生成され、使用されて、ラ
マン分光法を使用してさらに分析される被験者の1つ以上の特定のROIの位置及びサイ
ズが決定される。ROIは、1つ以上のピクセルを含むことができる。この例では、RO
Iは、図4のピクセル(55μm,46μm)における輝点である。
したがって、ハイパースペクトル反射率マップの視野全体をラマン走査する必要はない
が、図4のピクセル(55μm,46μm)等の局在化された領域では、ラマン分光情報
が、1回のキャプチャでラマン分光部によって検出され、これは、図10におけるROI
1002と同じ被験者の場所にある。いくつかの例では、輝点ピクセルの周囲のいくつか
のピクセル、又は輝点ピクセルの周囲の定義されたピクセル半径も、1回のキャプチャで
ラマン分光法を使用して分析できる。
【0054】
図7は、死後のAD患者からの未染色のFFPE脳組織の別のラマンマップ700を示
す。繰り返すが、エキソビボの被験者の隣接する組織スライスにおける組織診断を通じて
独立して検証されたように、輝点は、アミロイドベータプラークの場所に対応する。輝点
702は、図7のピクセル(17μm,31μm)にある。このマップ700は、200
0cm-1と2500cm-1との間のラマン信号の線形バックグラウンドの減算がなさ
れた後、1663cm-1と1698cm-1との間の統合ラマン信号を全てのピクセル
でプロットすることによって生成される。軸は、組織スライスの物理的な距離の単位(マ
イクロメートル単位)に対応する。
【0055】
図8は、図7の輝点702ピクセル(17μm,31μm)に対応する広帯域ラマンス
ペクトルグラフ800を示す。1600cm-1及び1663cm-1におけるピーク8
02,804は、アミドIバンドのラマン振動共鳴、すなわち、それぞれアルファヘリッ
クス及びベータプリーツシートコンフォメーションに対応する。残りのピークは、パラフ
ィンの存在に対応している。
【0056】
図9は、図7の背景組織ピクセル(45μm,10μm)の広帯域ラマンスペクトルグ
ラフ900を示す。1600cm-1と1663cm-1にピークがないことに注目され
たい。これは、アルファヘリックスとベータプリーツのシートタンパク質コンフォメーシ
ョンの欠如を示している。これは、隣接する組織スライスにおける組織診断によって独立
して検証される(図15参照)。背景組織ピクセルのラマンスペクトルグラフ900又は
他のラマン分光情報は、機械学習アルゴリズムのトレーニングのための制御(負の分類)
情報として使用できる。背景組織ピクセルのラマンスペクトルグラフ900又は他のラマ
ン分光情報は、プラークを分類するために、スペクトルグラフ800(図8)に対する比
較又は他の計算に使用することができる。
【0057】
再び図7を参照すると、ハイパースペクトル反射率マップ1000(図10)の1つ以
上は、コンピュータ6によって、ラマン分光法を使用してさらに調査される被験者の眼球
の特定のROIの場所及びサイズを決定することができる。この例では、ROIは図7
ピクセル(17μm,21μm)における輝点である。
したがって、図7のラマンマップ700の視野全体は、ADの病状を評価するときにラ
マン走査される必要はない。むしろ、図7のピクセル(17μm,21μm)等の局在化
された領域は、図10におけるROI1002と同じ被験者上の場所でラマン分光法によ
って検出される。一例では、ROIのラマン分光法は、ラマン分光部による1回のキャプ
チャで検出される。別の例では、ROIはピクセル毎に走査され、ROIのラマンマップ
を生成するか、又は関心のある特定の波長の統合されたカウントを計算する。
【0058】
図4図10の結果は、被験者のアミロイドベータプラークの分類と検出のトレーニン
グに使用できる検証済みトレーニングデータを示している。他の例示的な実施形態では、
アミロイドベータプラークの代わりに、又はそれに加えて、他のAD関連の病状が分類さ
れる。例えば、AD関連の病状がタウ神経原線維変化である場合、関心のあるラマン共鳴
波長は同じままである(リン酸化されたタウの場合は1600cm-1~1700cm
)が、現在は細胞内で発見される。他のAD関連の病状については、さらに他のラマン
共鳴波長を使用して、AD関連の病状を分類及び検出することができる。
【0059】
図13は、例示的な実施形態による、被験者の眼球におけるADの病状を検出するため
のシステム200を示す。いくつかの例において、システム200は、被験者に対して検
出装置100を操作するために機械学習アルゴリズムを実施する。システム200は、検
出装置100、サーバ204、クライアントステーション206、及び電子医療記録(E
MR)サーバ214を含む。システム200には、各タイプの装置が複数存在する可能性
がある。システム200の装置は、ネットワーク202を介して通信することができる。
クライアントステーション206は、コンピュータ、ラップトップ、モバイル電話、タ
ブレットコンピュータ等であり得る。ネットワーク202は、ローカルエリアネットワー
ク(LAN)、ワイヤレス広域ネットワーク(WWAN)、プライベートネットワーク、
及びインターネットを含むことができる。検出装置100のコンピュータ6(図1)は、
ネットワーク202を介して通信するための通信サブシステムを有する。
【0060】
図13では、サーバ204は、通常、検出装置100から離れており、機械学習アルゴ
リズムをトレーニングするように構成されている。サーバ204は、1つ以上の専用サー
バ、又は1つ以上のクラウドサーバを含むことができる。
いくつかの例では、サーバ204は、Amazon(登録商標)AWS、Micros
oft(登録商標)Azure、Google(登録商標)Cloud、及びIBM(登
録商標)Watson等のサードパーティ機械学習プラットフォームを含むか、又はそれ
にアクセスすることができる。
サーバ204は、機械学習モジュール218と、検証済みトレーニングデータのデータ
ベースを格納し、トレーニングされたニューラルネットワークを格納するためのメモリ2
16とを含むことができる。サーバ204は、メモリ216に格納された命令を実行する
ように構成された1つ以上のコントローラ又はプロセッサ(図示せず)を含むことができ
る。
【0061】
EMRサーバ214は、患者の電子医療記録を格納、蓄積、及び検索するために使用す
ることができる。EMRサーバ214は、患者データのためのデータリポジトリであるメ
モリを含むことができる。EMRサーバ214は、一例では、サードパーティサーバであ
り得る。EMRサーバ214は、患者の医療、人口統計、及び身体情報を含むことができ
る。EMRサーバ214は、いくつかの例では、検証済みトレーニングデータを含むこと
ができる。
【0062】
メモリ216又はEMRサーバ214は、特定の患者の以前のハイパースペクトル撮像
情報又はラマン分光情報を含むことができ、それにより、以前のハイパースペクトル撮像
情報又はラマン分光情報は、他の時に取得された患者の他のラマン分光情報と比較される
ことができ、コンピュータ6又はサーバ204は、特定の患者に対してADの結論を実行
できるようになる。例えば、時間で区切られたハイパースペクトル撮像情報又は同じRO
Iの同じ患者のラマン分光情報を、同じ患者の個人履歴と比較して、進行(退行)を確認
できる。患者の進行(退行)は、他の集団コホート及びその履歴的な進行(退行)と比較
することもできる。
【0063】
サーバ204は、1つ以上のニューラルネットワークによって機械学習アルゴリズムを
実施することができる。機械学習アルゴリズムには、ロジスティック回帰、変分オートエ
ンコーディング、畳み込みニューラルネットワーク、又はAD関連の病状を特定及び区別
するために使用される他の統計的手法を含めることができる。機械学習アルゴリズムは、
事前に検証されたラマン散乱モデル、他の散乱モデル、又は光学物理モデルを使用するこ
ともできる。ニューラルネットワークは、複数の層を含むことができ、それらのいくつか
は定義され、いくつかは未定義である(又は、隠されている)。ニューラルネットワーク
は、教師あり学習ニューラルネットワークである。
【0064】
いくつかの例では、ニューラルネットワークは、ニューラルネットワーク入力層、1つ
以上のニューラルネットワーク中間隠れ層、及びニューラルネットワーク出力層を含み得
る。ニューラルネットワーク層の各々は、複数のノード(又はニューロン)を含む。ニュ
ーラルネットワーク層のノードは、通常は直列に接続されている。所定のニューラルネッ
トワーク層の各ノードの出力は、後続のニューラルネットワーク層の1つ以上のノードの
入力に接続される。
各ノードは、入力、重み(存在する場合)、及びバイアス係数(存在する場合)に基づ
いてデータを変換又は操作し、出力を生成するためのアクティブ化関数(伝達関数とも呼
ばれる)を実行する論理プログラミングユニットである。各ノードのアクティブ化機能に
より、特定の入力、重み、バイアス係数に応じて特定の出力が生成される。
各ノードの入力は、スカラ、ベクトル、行列、オブジェクト、データ構造、及び/又は
他のアイテム、又はそれらへの参照であり得る。各ノードは、他のノードから独立して、
それぞれのアクティブ化関数、重み(存在する場合)、及びバイアス係数(存在する場合
)を格納できる。いくつかの例示的な実施形態では、ニューラルネットワーク出力層の1
つ以上の出力ノードの決定は、当技術分野で理解されているように、以前に決定された重
み及びバイアス係数を使用して、スコアリング関数及び/又は決定ツリー関数を使用して
計算又は決定することができる。
【0065】
サーバ204は、施術者によるクライアントステーション206への入力として、検証
済みトレーニングデータ208を使用してニューラルネットワークをトレーニングするこ
とができる。追加のトレーニングデータセットは、EMRサーバ214から、又は検出装
置100自体の動作から取得することができる。
例えば、検出装置100の動作から、ハイパースペクトル反射率情報及びラマン分光情
報を取得し、これらは、サーバ204又はEMRサーバ214に格納される。後続する追
加のラマンキャプチャを後で実行して、より多くのラマン分光情報を取得できる。ハイパ
ースペクトル反射率情報及びラマン分光情報の履歴的傾向は、後日、ADを示すものとし
て、又はADの前駆体として検証される可能性がある。例えば、数年後又は数十年後、被
験者はADを有すると診断され、この診断は、以前のハイパースペクトル反射率情報及び
ラマン分光情報をAD又は事前ADとして分類することができる。
同様に、一部の被験者では、EMR情報が後の年に更新される場合があり、ADがない
と示される場合がある。いくつかの例では、死後の組織診断を使用して、患者のAD情報
を検証できる。組織診断は、顕微鏡又は他の撮像装置を使用して実行できる。
【0066】
いくつかの例では、サーバ204は、2つのニューラルネットワークを実施することが
できる。当技術分野で理解されているように、各ニューラルネットワークは、それ自体、
並列、直列、又は他の構成で、1つ以上のニューラルネットワークを有することができる
。第1のニューラルネットワークは、第1のニューラルネットワークへの入力として、ハ
イパースペクトル反射率情報に基づいて、第1のニューラルネットワークの出力として、
1つ以上のROIを特定するために使用される。
第2のニューラルネットワークは、これらの特定のROIの検査から返されたラマンス
ペクトルを、第2のニューラルネットワークへの入力としてラマン分光情報とともに分類
するために使用される。第2のニューラルネットワークの出力は、ROIの各々に、タン
パク質凝集体等の1つ以上の関心のあるAD関連の病状が含まれているか否かの分類であ
る。
【0067】
いくつかの例では、分類(第2のニューラルネットワークの出力)は、被験者がADを
有しているか、又はADの前駆体を有しているか、又は潜在的なADについて事前にスク
リーニングされ、さらに調査が必要かどうかに関する1つ以上のADの結論である場合が
ある。
そのようなADの結論は、第2のニューラルネットワークによって分類され、例えば、
組み合わされた加重スコア、スコアカード、又は確率的決定を使用して決定又は計算され
る1つ以上のADの病状に基づくことができる。例えば、アミロイドベータとタウとの両
方の神経原線維変化の存在又は確率的分類は、より高い確率のADの結論につながる可能
性がある。
いくつかの例では、ADの結論は、例えば患者の以前のラマン分光法情報と比較するこ
とにより、患者の生理機能の経時的な変化に基づくこともできる。いくつかの例では、ハ
イパースペクトル反射率情報は、ADの病状の分類をさらに支援する第2のニューラルネ
ットワークへの入力情報としても使用される。
【0068】
次に、サーバ204を使用するニューラルネットワークのトレーニングについて、より
詳細に説明する。検証済みトレーニングデータ208は、クライアントステーション20
6に入力され、その後、クライアントステーション206によってサーバ204に送信さ
れる。
例示的な実施形態では、検証済みトレーニングデータ208は、被験者の隣接するエキ
ソビボの組織スライスを比較することによって取得され、1つのスライスが分析されてハ
イパースペクトル反射率情報及びラマン分光情報が取得され、隣接するスライスが組織診
断によって検証され、検証されたハイパースペクトル反射率情報と、検証されたラマン分
光情報とが得られる。
第1のニューラルネットワークのトレーニングのために、検証されたハイパースペクト
ル反射率情報210は、クライアントステーション206に入力される。例えば、検証さ
れたハイパースペクトル反射率情報210は、ハイパースペクトル反射率マップの特定の
波長のカウントを、1つ以上のAD関連の病状に相関させる。第2のニューラルネットワ
ークのトレーニングのために、検証されたラマン分光情報212が、クライアントステー
ション206に入力される。一例として、検証されたラマン分光情報212は、ROI又
はラマンマップの特定の波長のカウントを、1つ以上のAD関連の病状に相関させる。
【0069】
いくつかの例では、ハイパースペクトル反射率情報は、ROIを決定するために、単に
、第1のニューラルネットワークのトレーニングにとどまらずに、使用することができる
。例えば、ハイパースペクトル反射率情報は、特定のAD関連の病状の分類を支援するた
めに、第2のニューラルネットワークのトレーニングにも使用できる。ハイパースペクト
ル反射率情報は、ラマン分光法情報とともに使用でき、特定のAD関連の病状を分類する
ときに、重み付け又は追加の保証が与えられる。
同様に、機械学習アルゴリズムは、特定のAD関連の病状を分類するために、ハイパー
スペクトル情報とラマン分光情報の間の相関及び関係を決定できる。コンピュータ6が、
トレーニングされたニューラルネットワークを実行し、分類のためにハイパースペクトル
反射率情報とラマン分光情報との両方を使用するとき、同じROIを整列させるために、
ハイパースペクトル反射率情報とラマン分光情報とに対して、コンピュータ6によってコ
レジストレーション(co-registration)をデジタルで実行することができる。
【0070】
いくつかの例では、ROIは、プラークをカバーするピクセルのグループを含むことが
できる。一例では、プラークのサイズ(例えば、半径によって示される円形領域、又はM
×Nのピクセルによって示される長方形領域)は、AD関連の病状を分類するために使用
される。いくつかの例では、ラマン分光情報212は、ROIの中心で特定の波長につい
てより高いカウントを有し、ROIの周辺でより少ないカウントを有し得る(しかし、依
然として背景組織よりも高い)。
いくつかの例では、ROI内の異なるピクセルにおける個々のカウントは、AD関連の
病状の分類に使用できる。他の例では、ROI内のピクセルのグループの凝集(統合)特
性を使用して、例えば1つのラマンキャプチャでプラークを分類することができる。
したがって、プラークのROIのサイズは、プラークを分類するための追加情報として
使用される、第2のニューラルネットワークのトレーニングの一部でもある場合がある。
【0071】
いくつかの例では、被験者の背景組織のラマン分光情報212も、検証済みトレーニン
グデータ208に含まれる。所定の患者の背景組織のラマン分光情報を使用して、その患
者のROIのラマン分光情報と比較できる。背景組織とROIとの比較は、AD関連の病
状を分類するための第2のニューラルネットワークのトレーニングの一部である場合があ
る。ロジスティック回帰、変分自動エンコード、畳み込みニューラルネットワーク、及び
他の統計的アプローチを含む他のアルゴリズム又は計算が、第2のニューラルネットワー
クの教師ありトレーニングに使用できる。
【0072】
サーバ204がニューラルネットワークをトレーニングした後、サーバ204は、コン
ピュータ6によってトレーニングされたニューラルネットワークを実行するために、トレ
ーニングされたニューラルネットワークを検出装置100に送信することができる。これ
で、コンピュータ6に、関心のあるAD関連の病状を評価するために使用すべき基準が通
知される。
ニューラルネットワークへのトレーニングの更新は、サーバ204によって定期的に、
リアルタイムで、又はより多くの利用可能なトレーニングデータがあるときはいつでも実
行でき、それらの更新されたニューラルネットワークは検出装置100に送信され得る。
【0073】
他の例では、ニューラルネットワークの少なくともいくつか又は全てがサーバ204に
よって実行され、検出されたハイパースペクトル反射率情報、検出されたラマン分光情報
、及び制御情報が、サーバ204とコンピュータ6との間で通信される。そのような例で
は、サーバ204は、コンピュータ6からハイパースペクトル反射率情報を受信し、ラマ
ン分光部のROIが何であるかについてコンピュータ6に命令することにより、ニューラ
ルネットワークを実行する。サーバ204は、コンピュータ6からラマン分光情報を受信
し、AD関連の病状又はADの結論を分類する。
【0074】
図11は、例示的な実施形態による、被験者の眼球におけるAD関連の病状を検出する
ために、検出装置100によって実施される方法1100のフロー図を示す。例示的な実
施形態では、検出装置100のコンピュータ6は、方法1100の少なくともいくつかに
対してニューラルネットワークを使用する。
ステップ1102において、検出装置100は、ハイパースペクトル反射率撮像部(図
1)を制御し、ハイパースペクトル反射率撮像部からハイパースペクトル反射率情報を受
信することにより、被験者の眼底の広視野撮像を実行する。
ステップ1104において、コンピュータ6は、ハイパースペクトル反射率撮像部及び
第1のニューラルネットワークからのハイパースペクトル反射率情報を使用して、さらな
る検査を必要とする被験者の1つ以上のROIの場所及びサイズを決定する。
ステップ1106において、検出装置100は、ラマン分光部(図1)を制御して、決
定された場所及びサイズでROIを1回のキャプチャで刺激し、ラマン分光部からラマン
分光情報を受信することにより、ROIに対してラマン分光を実行する。
ステップ1108において、第2のニューラルネットワークは、ROIのラマン分光部
から得られたラマン分光情報と、ハイパースペクトル反射率撮像部からのハイパースペク
トル反射率情報とを使用して、1つ以上のAD関連の病状又はADの結論を分類する。
ステップ1110において、検出装置100は、分類を出力装置(例えば、表示画面)
、メモリ、又は別のコンピュータに出力する。他のいくつかの例では、ステップ1108
,1110は、サーバ204によって実行される。
例示的な実施形態において、複数のAD関連の病状が検出されることに関心がある場合
、方法1100では、1つ以上のROI上で全てのAD関連の病状に対して実行され(並
行決定)、関心のある全てのAD関連の病状を検出することができる。同じサンプルの施
術者、組織診断者、病状学者等による肯定的な診断がある場合、クライアントステーショ
ン206は、そのような施術者によって、被験者が1つ以上のAD関連の病状又はADを
有していることを肯定的に(及び、独立して)検証するために使用され得る。そのような
検証は、機械学習アルゴリズムを改善するために、さらなるトレーニングデータとして機
械学習アルゴリズム(第1及び第2のニューラルネットワーク)で使用できる。
【0075】
いくつかの例では、ステップ1106の後、検出装置100は、ラマン分光部によるさ
らなる調査を必要とし得るハイパースペクトル反射率撮像部によって特定された別のRO
Iのラマン分光法を決定するために、ステップ1102に戻るループ1112を有するよ
うに構成され得る。
ループ1112は、同じセッションで、例えば、ユーザが、まだ顎当て5に当てている
間の連続時間内に実行することができる。例えば、ステップ1104において、コンピュ
ータ6は、さらなる検査を必要とし得る被験者の2つ以上のROIを決定する場合がある
ので、ループ1112は、それら他のROIを調査するために実行される。
ステップ1108における分類は、ハイパースペクトル反射率撮像部及びラマン分光部
によって取られた、同じ被験者の複数の異なる個々のキャプチャに基づく結論を提供する
ことができる。
他の例では、ループ1112は実行されず、ハイパースペクトル反射率撮像情報から決
定された特定の位置及びサイズを有する1つのROIに対して1つのラマンキャプチャの
みが実行される。
【0076】
いくつかの例では、コンピュータ6は、ハイパースペクトル反射率撮像部からのハイパ
ースペクトル反射率情報を使用して、(機械学習アルゴリズム又はデフォルトの位置を使
用して、)潜在的なAD関連の病状ではない眼球の部分に関連するベースラインROIを
決定する。ベースラインROIは、ラマン分光法を使用して分析できる。
ステップ1108において、コンピュータ6は、1つ以上のAD関連の病状又はADの
結論を分類するために、ベースラインROIを、ラマン分光法を使用して分析されるRO
Iの1つ以上と比較することができる。
【0077】
いくつかの例では、ステップ1104において、コンピュータ6は、その特定の(又は
、既知の患者集団から検証された)患者に関して、関心のある1つ以上の潜在的なAD関
連の病状(又は特定のROI)を事前に保存した。
例えば、検出装置100を使用して、以前のセッションは、1つ以上の潜在的なAD関
連の病状を事前に保存していた。特定のランドマークを使用して、動脈血管、視神経等の
特定の患者における1つ以上の潜在的なAD関連の病状を見つけることができる。
ハイパースペクトル反射率撮像部及び第1のニューラルネットワークからのハイパース
ペクトル反射率情報を使用して、コンピュータ6は、患者の事前に保存された潜在的なA
D関連の病状(又は特定のROI)を特定し、適切なROIを決定し、その後、コンピュ
ータ6はさらに、ユーザが、顎当て5に当てている間、全て同じセッション中に、ラマン
分光部を使用して適切なROIを調査する。
【0078】
図12は、例示的な実施形態による、ニューラルネットワークの検証済みトレーニング
データ208を決定するための方法1200のフロー図を示す。一般に、検証済みトレー
ニングデータ208は、被験者からの隣接する体外組織スライスを、ハイパースペクトル
反射率撮像部及びラマン分光部によって分析された1つのスライス、及び組織診断によっ
て検証された隣接するスライスと比較することで取得できる。
方法1200の例示的な結果は、図4から図9に示されるラマン分光情報212、及び
図10に示されるハイパースペクトルマップ1000に示されるハイパースペクトル反射
率情報210である。
さらに、いくつかの例では、検出装置100の動作からの生体内撮像を使用して、さら
なるトレーニングデータを取得することもできる。
【0079】
方法1200では、死亡した、確認されたAD患者からの体外ヒト脳組織(皮質)が得
られた。サンプルとして、新鮮凍結と、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)との
両方が使用された。
ステップ1202において、サンプルはスライスされ、スライド上に配置される。ミク
ロトーム又はクライオスタットを使用して、サンプルの厚さ12μmのスライスが切り取
られた。一系列に隣接するようにスライスが切り取られ、顕微鏡のスライドに配置された

ステップ1204において、一系列のうちで2つおきのスライスが、アミロイドベータ
に結合するコンゴレッドで染色されるか、又は、例えば免疫染色等の同様の染色手順で染
色される。残りの中間スライドは未染色のままである。
ステップ1206において、標準的な偏光顕微鏡法又は他の組織診断の方法を使用して
、アミロイドベータプラークが、染色されたスライド上で特定される。組織診断は、臨床
医によって手動で、コンピュータによって自動的に、又はその両方で実行することができ
る。脳プラークの一般的なサイズは、直径が20μmを超える。したがって、所定のプラ
ークは、複数の12μmのスライスにまたがる可能性が高くなる。
【0080】
ステップ1208で、1つ以上のプラークを有する染色されたスライドは、各々、それ
らの隣接する未染色のスライドとコレジスタされる。コレジストレーションは、コンピュ
ータを使用して自動的に行なうか、手動で行なうか、又はその両方で行なうことができる
。隣接するスライドのコレジストレーションにより、未染色のスライド上のプラークの位
置を特定できる。
様々なサイズスケールの複数の特徴を確認することで、コレジストレーションが達成さ
れる。皮質のひだは、2つの隣接するスライスの一般的な配向のために使用される大規模
な特徴を提供する。血管は、隣接するスライスをより細かいサイズスケールでコレジスタ
するために使用される小さな特徴を構成する。画像内で複数の血管を使用し、これらを隣
接するスライス内の同じ場所に配置すると、所定のプラークを数マイクロメートル以内に
配置することが容易になる。2つの隣接するスライスの画像を重ね合わせることにより、
血管の位置合わせは、一例において画像のコレジストレーションを可能にする。
【0081】
ステップ1210において、染色されたスライドの対応する場所で、隣接する未染色の
スライドのコレジスタされた場所に対して撮像装置が作動され、AD関連の病状の撮像特
性が決定される。他の例では、隣接する未染色のスライド全体が、例えば、背景組織、他
のAD関連の病状、マクロ構造等に関する追加情報を取得するために、撮像装置を使用し
て撮像される。例示的な実施形態では、撮像装置は、本明細書で詳細に説明するように、
ハイパースペクトル反射率撮像又はラマン分光法とすることができる。
ステップ1212において、プラークの撮像情報が取得された後、撮像情報(又は処理
された撮像情報)は、プラークとして分類される。検証されたハイパースペクトル反射率
情報210は、この例では、アミロイドベータプラークと相関している。検証されたハイ
パースペクトル反射率情報210の例は、図16に示されるハイパースペクトル画像であ
る。検証されたラマン分光情報212は、この例ではアミロイドベータプラークとも相関
している。図7を参照されたい。ラマン分光情報212の例は、図4及び図8にそれぞれ
示されるラマン分光情報500,800である。
【0082】
検証済みトレーニングデータ208は、クライアントステーション206に入力され、
ニューラルネットワークのトレーニングのためにサーバ204に送信することができる。
【0083】
方法1200は、さらに検証済みトレーニングデータ208を得るために、タウパシ、
他のタンパク質凝集体、及び血管特性等の他のAD関連の病状について繰り返すことがで
きる。撮像装置を使用して検出された背景組織のプラーク以外の領域は、ニューラルネッ
トワークのトレーニング用の制御情報又は負の分類情報として使用できる。背景組織は、
ROIをプラークであると分類するために、ROIのカウントからの減算又は除算にも使
用できる。他の非プラーク領域は、例えば、被験者内の関心のある部分の相対的な場所情
報のためのような、コレジストレーションのためのマクロ構造を有することができる。背
景組織の検出は、ニューラルネットワークのトレーニングにも使用できる。
【0084】
方法1200は、例えば、1人の被験者からの脳組織と眼球組織との両方のように、1
人の被験者からの複数の組織サンプルについて繰り返すことができる。方法1200は、
異なる被験者からの組織サンプルについて繰り返すことができる。複数の組織サンプルを
使用することにより、機械学習アルゴリズムの検証済みトレーニングデータ208を決定
するために十分なサンプルセットが使用される。ベースライン又は制御トレーニングデー
タは、ハイパースペクトル反射率情報210及びラマン分光情報212を取得することに
よって、及び健康な(非AD)被験者から取得することもできる。
【0085】
図14は、図4のラマンマップ400に対応するプラーク1402(例えば、染色され
た赤い点)を含む偏光顕微鏡画像1400を示す。偏光顕微鏡画像1400を使用して、
ラマンマップ700が、同じROIでプラーク1402を含むラマン分光情報を含むこと
を確認することができる。
【0086】
図15は、染色されたスライドの偏光顕微鏡画像の2つの異なる倍率(10倍、左、及
び40倍、右)を示し、図7(鏡像)のラマンマップ700に対応する、血管の隣のプラ
ーク1502,1504(例えば、染色された赤い点)を示す。偏光顕微鏡画像を使用し
て、ラマンマップ700が、同じROIでプラーク1502,1504を含むラマン分光
情報を含むことを確認できる。
【0087】
図16は、隣接するスライスに図15に見られるのと同じ血管1602を含む未染色ス
ライド(左)のハイパースペクトル画像1600と、同じ隣接スライスにおいて同じ血管
1604を示す、同じ(右)の偏光顕微鏡画像とを示す。
【0088】
ラマン分光部1は、白色光画像を撮るように構成することもできる。図17Aは、ラマ
ン分光部によって撮られた、図16に示されるものと同じ未染色スライド(同じ隣接スラ
イス)の白色光画像1700を示す。図17Aは、図16に示されるものと同じ血管17
02が、ラマン分光部を使用して検出装置100によって位置決め及びキャプチャされ得
ることを示す。
【0089】
図17Bは、図17Aの白色光画像1700を示し、ラマン分光法を使用してキャプチ
ャされた血管1702の領域1704を示している。領域1704は、ハイパースペクト
ル画像1600によって決定されるような特定の位置及びサイズを有することができ、ラ
マン分光部による1回のキャプチャで撮ることができる。他の例では、領域1704は、
マップを生成するか、又は特定の波長の統合されたカウントを計算するために、ラマン分
光部を使用してピクセル毎に走査することができる。
【0090】
再び図1を参照すると、いくつかの例では、検出装置100は、ROIにおける潜在的
なADの病状の化学成分の特徴である特定の波長を決定するために、他のタイプの撮像装
置を実施することができる。例では、撮像装置は、一方の光源を、広帯域光源とし、第2
の光源を、特定の波長のコヒーレント単一波長光源として、逆ラマン効果を使用して実施
される。
【0091】
別の例では、撮像装置は、特定の波長で2つのコヒーレントレーザを用いた誘導ラマン
効果を使用して実施される。別の例では、パルス光コヒーレント照明源を使用して、いく
つかの異なる波長で自動蛍光測定を使用することにより、撮像装置が実施される。
【0092】
いくつかの例では、白色光非ハイパースペクトル眼底カメラ等の別の撮像装置を使用す
ることができる。この追加の撮像装置は、ハイパースペクトル反射率撮像部の広視野の位
置決めを導くために使用できる。このような位置決めは、この追加の撮像装置からの画像
情報を使用してコンピュータ6によって自動的に実行することができ、及び/又は、操作
する臨床医が手動で実行することができる。コンピュータ6は、機械学習及び1つ以上の
ニューラルネットワークを使用して、位置決めを自動的に実行することができる。
【0093】
例示的な実施形態では、システム200のいくつかの構成要素は、相対的な動き、振動
を低減し、システム200に入る外来電磁放射線の量を低減するために、取り付けられ、
締め付けられ、包囲される。
【0094】
例示的な実施形態では、コンピュータ6、サーバ204、及びシステム200の任意の
装置は、1つ以上の通信サブシステム(ワイヤ又はワイヤレス)及び1つ以上のコントロ
ーラを含むことができる。コントローラは、特定のアプリケーション、構成要素、又は機
能に応じて、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組合せ
を備えることができる。
いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上のコントローラは、アナログ又はデジタル
の構成要素を含むことができ、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のプロセッサによって実
行可能な命令を格納したメモリ等の1つ以上の不揮発性の記憶媒体、及び/又は、1つ以
上のアナログ回路構成要素を含むことができる。
【0095】
例示的な実施形態は、被験者の眼球からの1つ以上のAD関連の病状を検出するための
非侵襲性の生体内眼光に基づく検出装置であって、広帯域光源及びハイパースペクトルカ
メラを含むハイパースペクトル反射率撮像部と、レーザ及び分光計を含むラマン分光部と
、メモリと、メモリに格納された以下の命令を実行するように構成された1つ以上のプロ
セッサとを備え、プロセッサは、ハイパースペクトル反射率撮像部を制御して、広帯域光
源を使用して、眼球の眼底の広視野を照明し、ハイパースペクトル反射率情報を決定する
ために、ハイパースペクトルカメラを使用して、眼球からの反射光及び/又は後方散乱光
を検出し、ハイパースペクトル反射率情報から、1つ以上のROIを、潜在的なAD関連
の病状として判定し、レーザを使用して1つ以上のROIの各々を照明するようにラマン
分光部を制御し、ラマン分光情報を決定するために、分光計を使用して、レーザから得ら
れる眼球からのラマン散乱光を検出し、ハイパースペクトル反射率情報及びラマン分光情
報を使用して、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類し、1つ以上
のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変
化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タ
ンパク質のうち少なくとも1つを含む。
【0096】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有す
るものとして分類することは、ハイパースペクトル反射率情報にさらに基づいている。
【0097】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有す
るものとして分類することは、メモリ又は別の装置に格納されている被験者の以前のハイ
パースペクトル反射率情報及び/又はラマン分光情報にさらに基づいている。
【0098】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有す
るものとして分類することは、経時的な被験者のハイパースペクトル反射率情報及び/又
はラマン分光情報の変化にさらに基づいている。
【0099】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有す
るものとして分類することは、被験者を複数のAD関連の病状を有するものとして分類す
ることを含む。
【0100】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のプロセッサはさらに、ハイパー
スペクトル撮像情報からのベースラインROIを、潜在的なAD関連の病状を含まない背
景組織であるとして判定し、ラマン分光部を制御して、レーザを使用して眼球のベースラ
インROIを照明し、背景組織のラマン分光情報を決定するために、分光計を使用して、
レーザから生じた眼球からの光を検出するように構成され、分類することはさらに、潜在
的なAD関連の病状のラマン分光情報を、背景組織のラマン分光情報と比較することに基
づく。
【0101】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のAD関連の病状は、タウ神経原
線維変化を含むAD関連の病状の2つ以上を含む。
【0102】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のAD関連の病状は、被験者の眼
球の神経炎又はグリア細胞病状、又は被験者の眼球の血管又は脈絡膜の血管特性を含む。
【0103】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のAD関連の病状にアミロイドベ
ータ沈着が含まれる場合、分類することは、アルファヘリックス及びベータプリーツシー
トのラマン振動共鳴に対応する1600cm-1から1700cm-1の範囲の波数シフ
トでラマン分光情報を分析することに基づく。
【0104】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のAD関連の病状がタウ神経原線
維変化を含む場合、分類することは、リン酸化されたタウのラマン振動共鳴に対応する1
600cm-1から1700cm-1の範囲の波数シフトでラマン分光情報を分析するこ
とに基づく。
【0105】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のプロセッサは、1つ以上のRO
Iを決定すること、又は、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有するものとして分類す
ることのうちの1つ又は両方に対して機械学習アルゴリズムを使用する。
【0106】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、機械学習アルゴリズムは、検証済みトレー
ニングデータを使用する。
【0107】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、検証済みトレーニングデータは、被験者か
らのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スライスにし、組織スライスをスライ
ドに配置し、組織スライスのうちの1つの組織スライスの第1のスライドを染色し、エキ
ソビボの組織サンプル内の第1の組織スライスに隣接しており、未染色の別の組織スライ
スを有する第2のスライドを提供し、組織診断を使用して、第1のスライドが1つ以上の
AD関連の病状を有することを検証し、第2のスライドにおいて少なくとも1つの撮像装
置を作動させて、撮像情報を取得し、撮像情報を、1つ以上のAD関連の病状として分類
することによって取得される。
【0108】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、少なくとも1つの撮像装置は、ラマン分光
部、ハイパースペクトル反射率撮像部、又はその両方である。
【0109】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、機械学習アルゴリズムは、1つ以上のニュ
ーラルネットワークを使用する。
【0110】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のプロセッサはさらに、(i)1
つ以上のAD関連の病状の分類と、(ii)1つ以上のAD関連の病状を有するものとす
る被験者の独立した検証とを使用して、機械学習アルゴリズムをさらにトレーニングする
ように構成される。
【0111】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のプロセッサは、ラマン分光法情
報から、AD、又はADに対する前駆体、又はさらに調査が必要な潜在的なADの事前に
スクリーニングされた分類、又は治療又は介入への応答性を有するものとして被験者を分
類するようにさらに構成される。
【0112】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のAD関連の病状の分類のために
は、外因性蛍光剤、色素、又はトレーサは、不要である。
【0113】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、検出装置は、さらに、分光計による検出の
前にレーザの波長をフィルタリングして取り除くための1つ以上の光学フィルタを備える
【0114】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、1つ以上のプロセッサは、ハイパースペク
トル反射率情報から1つ以上のROIの各々のそれぞれのサイズを決定し、ラマン分光部
を制御して、それぞれのサイズを有する眼球のROIの各々にレーザを放射するように構
成される。
【0115】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、ラマン分光部は、ラマン分光情報の決定の
ために、1つ以上のROIの各々について、ラマン分光部のレーザを使用してそれぞれの
ROIの走査を実行するように、1つ以上のプロセッサによって制御される。
【0116】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、ハイパースペクトルカメラは、各光センサ
が光の波長の範囲に敏感な光センサの2次元アレイと、個々の各フィルタが特定の波長の
光を選択的に透過する光センサのアレイをオーバレイする2次元フィルタアレイとを含む
【0117】
別の例示的な実施形態は、被験者の眼球からの1つ以上のAD関連の病状の非侵襲的生
体内検出の方法であって、ハイパースペクトル反射率撮像部を制御して、広帯域光源を使
用して眼球の眼底の広視野を照明することと、ハイパースペクトル反射率情報を決定する
ために、ハイパースペクトルカメラを使用して、広帯域光源から生じる眼球からの光を検
出することと、1つ以上のプロセッサを使用して、ハイパースペクトル反射率情報から、
1つ以上のROIの場所を、潜在的なAD関連の病状として判定することと、レーザを使
用して1つ以上のROIの各々を照明するようにラマン分光部を制御することと、ラマン
分光情報を決定するために、分光計を使用して、レーザから得られる眼球からのラマン散
乱光を検出することと、1つ以上のプロセッサを使用して、ハイパースペクトル反射率情
報及びラマン分光情報を使用して、被験者を1つ以上のAD関連の病状を有するものとし
て分類することとを備え、1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、タン
パク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベー
タ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含む。
【0118】
別の例示的な実施形態は、機械学習トレーニングプロセスによるコンピュータプログラ
ム製品であって、コンピュータプログラム製品は、不揮発性のコンピュータ可読媒体に格
納され、コンピュータによって実行されると、コンピュータに対して、被験者の眼球から
1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状の非侵襲的生体内検出を実行させる命令
を備え、機械学習トレーニングプロセスは、1つ以上のプロセッサを使用して、検証済み
トレーニングデータを使用してコンピュータプログラムをトレーニングすることを備え、
検証済みトレーニングデータは、被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして
組織スライスにし、組織スライスをスライドに配置し、第1のスライドの第1の組織スラ
イスを染色し、エキソビボの組織サンプル内の第1の組織スライスに隣接しており、未染
色の第2の組織スライスを有する第2のスライドを提供し、組織診断を使用して、染色さ
れた第1の組織スライスが1つ以上のAD関連の病状を有することを検証し、第2のスラ
イドにおいて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、撮像情報を取得し、撮像情報を、
1つ以上のAD関連の病状として分類することによって取得され、1つ以上のAD関連の
病状は、タンパク質凝集体を含み、タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイ
ドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のう
ち少なくとも1つを含む。
【0119】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、検証済みトレーニングデータは、第1の組
織スライスと第2の組織スライスとをコレジスタすることによってさらに得られる。
【0120】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、少なくとも1つの撮像装置は、ラマン分光
部、ハイパースペクトル反射率撮像部、又はラマン分光部とハイパースペクトル反射率撮
像部との両方である。
【0121】
上記の例示的な実施形態の何れかにおいて、少なくとも1つの撮像装置を作動させるこ
とは、撮像情報を1つ以上のAD関連の病状として分類するために集合的に使用される少
なくとも2つの撮像装置を作動させることを含む。
【0122】
別の例示的な実施形態は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに対して
、被験者の眼球から1つ以上のAD関連の病状の非侵襲的生体内検出を実行させる、メモ
リに格納されたコンピュータプログラムの機械学習トレーニングのための方法であって、
この方法は、1つ以上のプロセッサを使用して、検証済みトレーニングデータを使用して
コンピュータプログラムをトレーニングすることを備え、検証済みトレーニングデータは
、被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スライスにし、組織スライ
スをスライドに配置し、第1のスライドの第1の組織スライスを染色し、エキソビボの組
織サンプル内の第1の組織スライスに隣接しており、未染色の第2の組織スライスを有す
る第2のスライドを提供し、組織診断を使用して、染色された第1の組織スライスが1つ
以上のAD関連の病状を有することを検証し、第2のスライドにおいて少なくとも1つの
撮像装置を作動させて、検出情報を取得し、検出情報を、1つ以上のAD関連の病状とし
て分類することによって取得され、1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含
み、タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロ
イドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含み、方法
はさらに、トレーニングされたコンピュータプログラムをメモリに格納することを備える
【0123】
本実施形態のいくつかは方法に関して説明されているが、当業者は、本実施形態が、ハ
ードウェア構成要素、ソフトウェア、又はこの2つの任意の組合せ、又は他の方式で、適
宜説明されている方法の態様及び特徴の少なくともいくつかを実行するための構成要素を
含むプロセッサ、回路構成、及びコントローラのような様々な装置にも向けられることを
理解するであろう。
【0124】
図において、適宜、例示されたサブシステム又はブロックの少なくとも一部又は全ては
、メモリ又は不揮発性のコンピュータ可読媒体に格納された命令を実行するプロセッサを
含むか、又はプロセッサによって制御され得る。上記の何れかの組合せ及び部分的組合せ
を含み得る、いくつかの例示的な実施形態に変更を加えてもよい。上記の様々な実施形態
は単なる例であり、本開示の範囲を限定することを決して意味しない。本明細書で説明さ
れるイノベーションのバリエーションは、例示的な実施形態の利益を有する当業者には明
らかであり、そのようなバリエーションは、本開示の意図された範囲内である。特に、上
記の実施形態のうちの1つ又は複数からの特徴は、特徴の部分的組合せからなる代替実施
形態を作成するために選択されてもよく、これは、上記で明示的に説明されなくてもよい
。さらに、上記の実施形態の1つ又は複数からの特徴を選択し、組み合わせて、上記で明
示的に説明されていない可能性がある特徴の組合せからなる代替実施形態を作成すること
ができる。そのような組合せ及び部分的組合せに適した特徴は、本開示全体を検討すると
、当業者に容易に明らかになるであろう。本明細書で説明する主題は、技術の全ての適切
な変更を網羅し、包含することを意図している。
【0125】
記載された実施形態の特定の適合及び変更を行なうことができる。したがって、上記の
実施形態は、例示的であり、限定的ではないとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
【手続補正書】
【提出日】2023-10-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習トレーニングプロセスによるコンピュータプログラム製品であって、
不揮発性のコンピュータ可読媒体に格納され、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに対して、被験者の眼球から1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状の非侵襲的生体内検出を実行させる命令を備え、
前記機械学習トレーニングプロセスは、
1つ以上のプロセッサを使用して、検証済みトレーニングデータを使用して前記コンピュータプログラムをトレーニングすることを備え、
前記検証済みトレーニングデータは、
被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スライスにし、
前記組織スライスをスライドに配置し、
第1のスライドの第1の組織スライスを染色し、
前記組織サンプル内の前記第1の組織スライスに隣接しており、未染色の第2の組織スライスを有する第2のスライドを提供し、
組織診断を使用して、前記染色された第1の組織スライスが前記1つ以上のAD関連の病状を有することを検証し、
前記第2のスライドにおいて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、撮像情報を取得し、
前記撮像情報を、前記1つ以上のAD関連の病状として分類することによって取得されたものであり、
前記1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、前記タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項2】
前記検証済みトレーニングデータは、前記第1の組織スライスと前記第2の組織スライスとをコレジスタすることによってさらに得られる、請求項に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項3】
前記少なくとも1つの撮像装置は、ラマン分光部、ハイパースペクトル反射率撮像部、又は前記ラマン分光部と前記ハイパースペクトル反射率撮像部との両方である、請求項に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項4】
前記少なくとも1つの撮像装置を作動させることは、前記撮像情報を前記1つ以上のAD関連の病状として分類するために集合的に使用される少なくとも2つの撮像装置を作動させることを含む、請求項に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項5】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに対して、被験者の眼球から1つ以上のアルツハイマー病(AD)関連の病状の非侵襲的生体内検出を実行させる、メモリに格納されたコンピュータプログラムの機械学習トレーニングのための方法であって、
1つ以上のプロセッサを使用して、検証済みトレーニングデータを使用して前記コンピュータプログラムをトレーニングすることを含み、
前記検証済みトレーニングデータは、
被験者からのエキソビボの組織サンプルをスライスして組織スライスにし、
前記組織スライスをスライドに配置し、
第1のスライドの第1の組織スライスを染色し、
前記組織サンプル内の前記第1の組織スライスに隣接しており、未染色の第2の組織スライスを有する第2のスライドを提供し、
組織診断を使用して、前記染色された第1の組織スライスが前記1つ以上のAD関連の病状を有することを検証し、
前記第2のスライドにおいて少なくとも1つの撮像装置を作動させて、検出情報を取得し、
前記検出情報を、前記1つ以上のAD関連の病状として分類することによって取得されたものであり、
前記1つ以上のAD関連の病状は、タンパク質凝集体を含み、前記タンパク質凝集体は、タウ神経原線維変化、アミロイドベータ沈着物、可溶性アミロイドベータ凝集体、又はアミロイド前駆体タンパク質のうち少なくとも1つを含み、さらに、トレーニングされたコンピュータプログラムを前記メモリに格納することを備える、方法。