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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018263
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】エネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/06 20060101AFI20230201BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230201BHJP
【FI】
B01D61/06
C02F1/44 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122254
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】工藤 昇太
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA53Z
4D006JA70Z
4D006KA14
4D006KA16
4D006KE01Q
4D006KE06Q
4D006KE22P
4D006KE22Q
4D006KE30P
4D006KE30Q
4D006PA01
4D006PB03
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】 シリンダ内のピストン前後の海水が混ざり合ってしまうことを抑制可能なエネルギー回収装置を提供すること。
【解決手段】 膜分離装置5に接続されるエネルギー回収装置であって、海水を供給する給水ポンプP1と、膜分離装置5へ高圧海水を供給する高圧ポンプP2と、複数のシリンダ装置7A,7Bと、流路方向規制機構11と、圧送工程と充填工程と行う制御機能を有した制御部Cとを備え、シリンダ装置が、他端側から濃縮海水が導入されると共に一端側から海水が導入されるシリンダ8と、シリンダ内で移動するピストン9と、ピストンに接続され他端がシリンダの他端から外部に突出したピストンロッド12とを備え、ピストンが、ピストンロッドの先端に設けられた先端部9aと、先端部から離間して設けられ空間部Sを介してピストンロッドの外周面に設けられた後端部9bとを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧海水を逆浸透膜で淡水と濃縮海水とに分離し前記淡水を淡水管に排出すると共に高圧の前記濃縮海水を濃縮水管に排出する膜分離装置に接続されるエネルギー回収装置であって、
海水を供給する給水ポンプと、
前記海水を加圧して前記膜分離装置へ前記高圧海水を供給する高圧ポンプと、
一端が前記給水ポンプに連通し、前記濃縮水管との連通と遮断とを行うと共に前記濃縮海水の排水路との連通と遮断とを行う流路切換機構を介してそれぞれ他端が前記濃縮水管と前記排水路とに接続された複数のシリンダ装置と、
複数の前記シリンダ装置の一端に接続され、前記海水を複数の前記シリンダ装置に交互に供給すると共に、複数の前記シリンダ装置から高圧で交互に押し出される前記海水を前記膜分離装置に送る流路方向規制機構と、
前記流路切換機構を制御して前記濃縮水管及び前記排水路に対する複数の前記シリンダ装置の接続を切り換え、高圧の前記濃縮海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記海水を高圧で押し出す圧送工程と、前記圧送工程後に前記給水ポンプからの前記海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記濃縮海水を排出しながら前記海水を充填させる充填工程と行う制御機能を有した制御部とを備え、
前記シリンダ装置が、前記濃縮水管と前記排水路とに他端が接続され他端側から前記濃縮海水が導入されると共に一端が前記給水ポンプに連通し一端側から前記海水が導入されるシリンダと、
前記シリンダ内で往復移動するピストンと、
前記ピストンに一端が接続され他端が前記シリンダの他端から外部に突出したピストンロッドとを備え、
前記ピストンが、前記ピストンロッドの先端に設けられた円板状又は円筒状の先端部と、
前記先端部から軸方向に離間して設けられ前記先端部との間に空間部を介して前記ピストンロッドの外周面に設けられた円環状又は円筒状の後端部とを備えていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエネルギー回収装置において、
前記ピストンロッドが、先端側で前記空間部に開口したピストン側開口部と、
一端が前記ピストン側開口部に接続されていると共に他端が外部に開口したロッド内流通路とを備えていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエネルギー回収装置において、
前記先端部と前記後端部とが、それぞれ外周部に環状に延在するシール部を備えていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエネルギー回収装置において、
前記シリンダが、前記ピストンが一端側の端部まで移動した際の前記空間部に対向した部分に前記海水を外部に排出可能な一端側ドレインを備えていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のエネルギー回収装置において、
前記シリンダが、前記ピストンが他端側の端部まで移動した際の前記空間部に対向した部分に前記海水を外部に排出可能な他端側ドレインを備えていることを特徴とするエネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水の淡水化等に用いられる逆浸透膜法による水処理システムのエネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水から淡水を造水する方法の一つとして、逆浸透法が知られている。この逆浸透法は、海水に海水の浸透圧以上の高い圧力を浸透圧の作用する方向と逆方向に加えて半透膜(逆浸透膜:RO膜)でろ過し、塩類と淡水とを分離するものである。この逆浸透法において、淡水が分離されて塩類が濃縮された海水(濃縮海水)は、高い圧力エネルギーを保持したまま逆浸透膜モジュールから流出する。この流出する濃縮海水の有する高い圧力エネルギーを有効に利用するため、種々のエネルギー回収装置が実用化されている。
【0003】
従来、例えば特許文献1には、逆浸透法による海水淡水化システムにおけるエネルギー回収装置の一例が提案されている。この特許文献1では、一対のシリンダ装置のそれぞれの一端が、2つの逆止弁で構成された流路方向規制装置を介して給水ポンプおよび増圧ポンプに連通されている。また、シリンダ装置の他端は流路切換装置の流出入ポートに連通される。また、流路切換装置の流入ポートは逆浸透膜モジュールの高圧な濃縮海水の流出口に連通される。さらに、流路切換装置の一端に流出ポートが設けられている。
【0004】
このエネルギー回収装置では、給水ポンプから送水される海水を高圧ポンプで加圧して逆浸透膜モジュールに供給すると共に、逆浸透膜モジュールから排出される高圧の濃縮海水をシリンダ装置に供給して高圧で海水を押し出すピストンを駆動し、シリンダ装置からも増圧ポンプを介して高圧海水を逆浸透膜モジュールに送っている。この逆浸透膜モジュールから排出される高圧の濃縮海水をシリンダ装置に供給して高圧で海水を押し出すピストンを駆動する操作を圧送工程と称している。
また、圧送工程終了後、給水ポンプから流路方向規制装置を介してシリンダ装置に海水を供給し、圧送工程と逆方向にピストンを駆動することで濃縮海水を排出しながら海水を充填する操作を充填工程と称している。
このようにこのエネルギー回収装置では、シリンダ装置のピストンがシリンダの端部に達した際に流路切換装置によって逆浸透膜モジュールからの高圧濃縮海水を一対のシリンダ装置に交互に供給すると共に給水ポンプから一対のシリンダ装置に交互に海水を充填するように制御を行っている。
【0005】
これによって、2つのシリンダ装置で海水の圧送工程と充填工程とを繰り返し行って連続ろ過が可能となる。このように、逆浸透膜モジュールから排出される濃縮海水の高圧エネルギーを利用して2つのシリンダ装置から増圧ポンプを介して逆浸透モジュールに高圧海水を供給することで、高圧ポンプの消費エネルギーが削減される。
【0006】
このようなエネルギー回収装置では、給水ポンプから送られる海水を直接加圧する高圧ポンプと、シリンダ装置から送り出される海水を増圧する増圧ポンプとで高圧海水を膜分離装置に送っているが、加圧用のポンプを2つ用いた2系統の増圧経路が必要になり、設備が複雑になり、設備コストが増大してしまう。
その対策として、特許文献2には、シリンダ装置が、シリンダ内で往復移動するピストンに一端が接続され他端がシリンダの他端から外部に突出したピストンロッドを備えたエネルギー回収装置が記載されている。このエネルギー回収装置では、ピストンロッドの太さ(断面積)に応じてシリンダ内のピストンより一端側の断面積とピストンより他端側の断面積が異なり、シリンダ装置から送り出される海水を所望の圧力と流量とに設定することが可能になることで、加圧用のポンプが1つで済み、設備の簡易化が可能になるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-86043号公報
【特許文献2】特開2020-110736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、上記従来の技術では、シリンダ内のピストン前方の海水がピストン後方へとピストンを越えて漏れ出したり、ピストン後方の海水がピストン前方へとピストンを越えて漏れ出したりすることがあり、シリンダ内のピストン前後の海水が混ざり合ってしまう不都合があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、シリンダ内のピストン前後の海水が混ざり合ってしまうことを抑制可能なエネルギー回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るエネルギー回収装置は、高圧海水を逆浸透膜で淡水と濃縮海水とに分離し前記淡水を淡水管に排出すると共に高圧の前記濃縮海水を濃縮水管に排出する膜分離装置に接続されるエネルギー回収装置であって、海水を供給する給水ポンプと、前記海水を加圧して前記膜分離装置へ前記高圧海水を供給する高圧ポンプと、一端が前記給水ポンプに連通し、前記濃縮水管との連通と遮断とを行うと共に前記濃縮海水の排水路との連通と遮断とを行う流路切換機構を介してそれぞれ他端が前記濃縮水管と前記排水路とに接続された複数のシリンダ装置と、複数の前記シリンダ装置の一端に接続され、前記海水を複数の前記シリンダ装置に交互に供給すると共に、複数の前記シリンダ装置から高圧で交互に押し出される前記海水を前記膜分離装置に送る流路方向規制機構と、前記流路切換機構を制御して前記濃縮水管及び前記排水路に対する複数の前記シリンダ装置の接続を切り換え、高圧の前記濃縮海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記海水を高圧で押し出す圧送工程と、前記圧送工程後に前記給水ポンプからの前記海水を前記シリンダ装置に供給して内部の前記濃縮海水を排出しながら前記海水を充填させる充填工程と行う制御機能を有した制御部とを備え、前記シリンダ装置が、前記濃縮水管と前記排水路とに他端が接続され他端側から前記濃縮海水が導入されると共に一端が前記給水ポンプに連通し一端側から前記海水が導入されるシリンダと、前記シリンダ内で往復移動するピストンと、前記ピストンに一端が接続され他端が前記シリンダの他端から外部に突出したピストンロッドとを備え、前記ピストンが、前記ピストンロッドの先端に設けられた円板状又は円筒状の先端部と、前記先端部から軸方向に離間して設けられ前記先端部との間に空間部を介して前記ピストンロッドの外周面に設けられた円環状又は円筒状の後端部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
このエネルギー回収装置では、ピストンが、ピストンロッドの先端に設けられた円板状又は円筒状の先端部と、先端部から軸方向に離間して設けられ先端部との間に空間部を介してピストンロッドの外周面に設けられた円環状又は円筒状の後端部とを備えているので、先端部や後端部を越えて漏れ出た海水がピストン内の空間部に溜まることで、シリンダ内のピストン前方の海水とピストン後方の海水とが、ピストンを越えてピストン前後で混ざり合ってしまうことを抑制可能となる。
【0012】
第2の発明に係るエネルギー回収装置は、第1の発明において、前記ピストンロッドが、先端側で前記空間部に開口したピストン側開口部と、一端が前記ピストン側開口部に接続されていると共に他端が外部に開口したロッド内流通路とを備えていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、ピストンロッドが、先端側で空間部に開口したピストン側開口部と、一端がピストン側開口部に接続されていると共に他端が外部に開口したロッド内流通路とを備えているので、空間部に溜まった海水をピストン側開口部からロッド内流通路を介して外部に排出することができる。特に、空間部内の海水は外部の大気圧より高圧であるため、ロッド内流通路を通して外部への排出が容易である。
【0013】
第3の発明に係るエネルギー回収装置は、第1又は第2の発明において、前記先端部と前記後端部とが、それぞれ外周部に環状に延在するシール部を備えていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、先端部と後端部とが、それぞれ外周部に環状に延在するシール部を備えているので、二重のシール部によって先端部前方からの海水の漏れと後端部後方からの海水の漏れとの両方を別々に抑制することができる。
【0014】
第4の発明に係るエネルギー回収装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記シリンダが、前記ピストンが一端側の端部まで移動した際の前記空間部に対向した部分に前記海水を外部に排出可能な一端側ドレインを備えていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、シリンダが、ピストンが一端側の端部まで移動した際の空間部に対向した部分に海水を外部に排出可能な一端側ドレインを備えているので、ピストンが一端側の端部まで移動した停止状態において、空間部に溜まった海水を一端側ドレインから外部に排出させることができる。
【0015】
第5の発明に係るエネルギー回収装置は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記シリンダが、前記ピストンが他端側の端部まで移動した際の前記空間部に対向した部分に前記海水を外部に排出可能な他端側ドレインを備えていることを特徴とする。
すなわち、このエネルギー回収装置では、シリンダが、ピストンが他端側の端部まで移動した際の空間部に対向した部分に海水を外部に排出可能な他端側ドレインを備えているので、ピストンが他端側の端部まで移動した停止状態において、空間部に溜まった海水を他端側ドレインから外部に排出させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明によるエネルギー回収装置によれば、ピストンが、ピストンロッドの先端に設けられた円板状又は円筒状の先端部と、先端部から軸方向に離間して設けられ先端部との間に空間部を介してピストンロッドの外周面に設けられた円環状又は円筒状の後端部とを備えているので、先端部や後端部を越えて漏れ出た海水がピストン内の空間部に溜まることで、シリンダ内のピストン前方の海水とピストン後方の海水とが、ピストンを越えてピストン前後で混ざり合ってしまうことを抑制可能となる。
したがって、本発明のエネルギー回収装置では、設備の簡易化が可能になり、設備コストの低減を図った構成において、濃縮前後の海水が混ざり合ってしまうことを抑制でき、効率的に淡水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るエネルギー回収装置の第1実施形態を示す模式図である。
図2】第1実施形態において、ピストンがシリンダの一端側の端部に移動した状態(a)とシリンダの他端側の端部に移動した状態(b)とを示す模式図である。
図3】本発明に係るエネルギー回収装置の第2実施形態を示す要部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明におけるエネルギー回収装置の第1実施形態を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0019】
本実施形態におけるエネルギー回収装置1は、図1に示すように、高圧海水を逆浸透膜で淡水と濃縮海水とに分離し淡水を淡水管3に排出すると共に高圧の濃縮海水を濃縮水管4に排出する膜分離装置5に接続されるエネルギー回収装置である。
【0020】
このエネルギー回収装置1は、海水を供給する給水ポンプP1と、海水を加圧して膜分離装置5へ高圧海水を供給する高圧ポンプP2と、一端が給水ポンプP1に連通し、濃縮水管4との連通と遮断とを行うと共に濃縮海水の排水路19との連通と遮断とを行う流路切換機構6A,6Bを介してそれぞれ他端が濃縮水管4と排水路19とに接続された複数のシリンダ装置7A,7Bと、複数のシリンダ装置7A,7Bの一端に接続され、海水を複数のシリンダ装置7A,7Bに交互に供給すると共に、複数のシリンダ装置7A,7Bから高圧で交互に押し出される海水を膜分離装置5に戻す流路方向規制機構11と、流路切換機構6A,6Bを制御して濃縮水管4及び排水路19に対する複数のシリンダ装置7A,7Bの接続を切り換え、高圧の濃縮海水をシリンダ装置7A,7Bに供給して内部の海水を高圧で押し出す圧送工程と、圧送工程後に給水ポンプP1からの海水をシリンダ装置7A,7Bに供給して内部の濃縮海水を排出しながら海水を充填させる充填工程と行う制御機能を有した制御部Cとを備えている。
【0021】
上記シリンダ装置7A,7Bは、濃縮水管4と排水路19とに他端が接続され他端側から濃縮海水が導入されると共に一端が給水ポンプP1に連通し一端側から海水が導入されるシリンダ8と、シリンダ8内で往復移動するピストン9と、ピストン9に一端が接続され他端がシリンダ8の他端から外部に突出したピストンロッド12とを備えている。
上記ピストン9は、ピストンロッド12の先端に設けられた円板状又は円筒状の先端部9aと、先端部9aから軸方向に離間して設けられ先端部9aとの間に空間部Sを介してピストンロッド12の外周面に設けられた円環状又は円筒状の後端部9bとを備えている。
すなわち、空間部Sは、先端部9aと後端部9bとに挟まれて形成された円環状の空間である。また、先端部9aと後端部9bとは、ピストンロッド12と同じ中心軸を有して設けられている。
【0022】
上記ピストンロッド12は、先端側で空間部Sに開口したピストン側開口部12aと、一端がピストン側開口部12aに接続されていると共に他端が外部に開口したロッド内流通路12bとを備えている。
なお、ピストン側開口部12aは、空間部Sに面したピストンロッド12の少なくとも上面側と下面側との2箇所で開口している。
上記ロッド内流通路12bの他端は、ピストンロッド12の他端で開口している。
なお、ピストンロッド12の他端部の下方には、ロッド内流通路12bから排出される海水を受けるドレイン受け12cが設けられている。
【0023】
上記ピストン9の先端部9aと後端部9bとは、それぞれ外周部に環状に延在するシール部9cを備えている。これらシール部9cは、板バネと樹脂とを組み合わせた漏れ防止用のピストンシールである。
上記シリンダ8は、図2に示すように、ピストン9が一端側の端部まで移動した際の空間部Sに対向した部分に海水を外部に排出可能な一端側ドレイン8cと、ピストン9が他端側の端部まで移動した際の空間部Sに対向した部分に海水を外部に排出可能な他端側ドレイン8dとを備えている。
上記一端側ドレイン8cと他端側ドレイン8dとは、シリンダ8の下側に接続しており、それぞれ開閉弁8eが接続されている。
【0024】
上記シリンダ8の他端または他端近傍の周面には、濃縮水管4と排水路19とに接続され濃縮海水の導入及び排出が行われる濃縮海水導入口8aが設けられている。
また、濃縮海水導入口8aは、接続管13eの一端に接続され、接続管13eの他端が流出入ポート13cに接続されている。すなわち、シリンダ8は、濃縮海水導入口8a及び接続管13eを介して流出入ポート13cに接続されている。
また、シリンダ8の他端には、ピストンロッド12が貫通する貫通孔8bが形成され、貫通孔8bの内周面に、濃縮海水の外部への漏れを防止するロッド用シール(図示略)が設けられている。
【0025】
また、上記流路方向規制機構11は、各シリンダ装置7A,7Bから押し出された海水を高圧ポンプP2の吸込側に供給するように設定されている。すなわち、流路方向規制機構11は、各シリンダ装置7A,7Bから押し出された海水を高圧ポンプP2の吸込側に接続された連結管11eに送るように設定されている。
【0026】
シリンダ装置7A,7Bは、濃縮水管4との連通と遮断とを行うと共に濃縮海水の排水管19との連通と遮断とを行う第1流路切換機構6Aを介して一端が濃縮水管4と排水管19とに接続された第1シリンダ装置7Aと、濃縮水管4との連通と遮断とを行うと共に排水管19との連通と遮断とを行う第2流路切換機構6Bを介して一端が濃縮水管4と排水管19とに接続された第2シリンダ装置7Bとを備えている。
【0027】
すなわち、制御部Cは、第1流路切換機構6A及び第2流路切換機構6Bを制御して濃縮水管4及び排水管19に対する第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとの接続を切り換え、高圧の濃縮海水を第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとに交互に流し込む制御機能と濃縮海水を第1シリンダ装置7A及び第2シリンダ装置7Bから交互に排出する制御機能とを有している。
【0028】
また、海水の供給管2aには、給水ポンプP1が接続されており、給水ポンプP1によって供給管2aから流路方向規制機構11に海水が送られる。
上記流路方向規制機構11は、海水を第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとに交互に供給すると共に、第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとから高圧で交互に押し出される海水を連結管11eを介して膜分離装置5に戻すように設定されている。
【0029】
上記濃縮水管4は、途中で分岐されて第1流路切換機構6Aと第2流路切換機構6Bとに接続されている。
上記第1流路切換機構6A及び第2流路切換機構6Bは、第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bへの濃縮海水の供給とその停止及び第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bからの濃縮海水の排出とその停止との切り換えを行う切換用シリンダ装置13と、切換用シリンダ装置13を駆動する駆動装置14とを備えている。
【0030】
上記切換用シリンダ装置13は、第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bの一端と排水管19と濃縮水管4とに接続された切換用シリンダ20と、切換用シリンダ20内で往復移動し第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bの一端と排水管19及び濃縮水管4との連通及び遮断が可能な排水側ピストン20aと、切換用シリンダ20内で排水側ピストン20aと一体で往復移動する供給側ピストン20bと、一端に排水側ピストン20aが設けられていると共に中間部に供給側ピストン20bが設けられ他端が切換用シリンダ20の他端から外部に突出して駆動装置14に接続された切換用ピストンロッド22とを備えている。
【0031】
上記切換用シリンダ20は、濃縮海水の排水管19に接続され一端側に設けられた流出ポート13aと、濃縮水管4に接続され中間部に設けられた流入ポート13bと、第1シリンダ装置7A又は第2シリンダ装置7Bに接続され流出ポート13aと流入ポート13bとの間に設けられた流出入ポート13cとを有している。
【0032】
制御部Cは、例えば各シリンダ装置7A,7Bのシリンダ8の他端近傍を含む複数箇所にそれぞれ設けられピストン9の位置、特にピストン9がシリンダ8の他端近傍に達したことを検出可能な位置に位置検出器(図示略)を備え、これら位置検出器の検出信号に基づいて第1流路切換機構6A及び第2流路切換機構6Bを制御する機能を有している。
なお、位置検出器は、シリンダ8の上記以外の箇所にも設置しても構わない。
【0033】
また、上記シリンダ8に取り付ける位置検出器を設けなくても、本実施形態では、ピストンロッド12がシリンダ8から突出しており、その突出量からピストン9の位置を判断することができる。したがって、ピストンロッド12が所定の突出量に達した際に、信号を発して第1流路切換機構6A及び第2流路切換機構6Bを制御する機能を採用しても構わない。
【0034】
上記第1流路切換機構6A及び上記第2流路切換機構6Bは、切換用シリンダ装置13を駆動する上記駆動装置14を備えている。
上記駆動装置14は、例えば油圧ポンプに接続された油圧ピストン,電動アクチュエータなどを用いて構成されている。
上記制御部Cは、前記検出信号に基づいて油圧サーボ弁またはサーボモータ(図示略)を制御して駆動装置14を操作する機能を有している。
【0035】
第1シリンダ装置7Aおよび第2シリンダ装置7Bのそれぞれの他端は、一対の逆止弁11aで構成された流路方向規制機構11を介して給水ポンプP1に連通されている。
第1シリンダ装置7Aの一端は、第1流路切換機構6Aにおける切換用シリンダ装置13の流出入ポート13cに連通され、第2シリンダ装置7Bの一端は、第2流路切換機構6Bにおける切換用シリンダ装置13の流出入ポート13cに連通されている。
【0036】
また、切換用シリンダ装置13の流入ポート13bは、濃縮水管4に連通されている。さらに、切換用シリンダ装置13の一端には、排水管19に接続された流出ポート13aが設けられている。切換用シリンダ20内に配設された排水側ピストン20a及び供給側ピストン20bは切換用ピストンロッド22に連結されている。また、切換用ピストンロッド22の一端は、駆動装置14に連結されて駆動装置14に連動して切換用シリンダ20内を往復動する。
【0037】
上記流路方向規制機構11は、供給管2aに接続された一対の分岐管11cを有し、これらの分岐管11cの途中に、対応する第1シリンダ装置7A及び第2シリンダ装置7Bの一端がシリンダ接続管11dを介して接続されている。分岐管11cにおいて、シリンダ接続管11dの接続部分の両側には、それぞれ一対の逆止弁11が設けられている。また、一対の分岐管11cの他端は、連結管11eに接続されている。
【0038】
次に、本実施形態のエネルギー回収装置1の動作について、図面を参照して説明する。
まず、図1に示すように、圧送工程にある第1シリンダ装置7Aのピストン9が矢印Y1の方向に移動すると、シリンダ8内の海水が分岐管11c側に押し出される。分岐管11cに押し出された海水は、連結管11eを介して高圧ポンプP2に供給される。
一方、充填工程にある第2シリンダ装置7Bのピストン9が矢印Y2の方向に移動すると、シリンダ8内の濃縮海水が濃縮海水導入口8a及び流出入ポート13cを介して排水管19に排出される。
【0039】
第1シリンダ装置7Aのピストン9が所定の位置検出器の位置に到達すると、その位置検出器から検出信号が制御部Cに送信され、この検出信号を制御部Cが受信すると、制御部Cが第2流路切換機構6Bの駆動装置14を制御して流路の切り換えを行う。
このとき、第2流路切換機構6Bにおける切換用シリンダ装置13の流入ポート13bと流出入ポート13cとが連通されて高圧の濃縮海水が膜分離装置5から第2シリンダ装置7Bに供給されると共に、流出入ポート13cと流出ポート13aとの連通が遮断されて、第2シリンダ装置7Bの圧送工程が開始される。
このように流路の切り換えが行われ、第1シリンダ装置7Aと第2シリンダ装置7Bとで交互に圧送工程と充填工程とが繰り返し行われる。
【0040】
本実施形態では、シリンダ装置7A,7Bにより、高圧ポンプP2に送られる海水の流量は、
:シリンダ内のピストンより他端側に送り込まれる濃縮海水の流量
:シリンダ内のピストンより一端側から送り出される海水の流量
:シリンダ内のピストンより他端側の断面積(シリンダの内側の断面積からピストンロッドの断面積を差し引いた面積、すなわち、ピストンロッド外周のリング状の面積)
:シリンダ内のピストンより一端側の断面積(シリンダの内側の断面積)、
とすると、以下の関係式により流量と面積との関係が決まる。
流量比:面積比=Q/Q:A/A
【0041】
例えば、シリンダ8内のピストン9より他端側の断面積Aと、シリンダ8内のピストン9より一端側の断面積Aとの比が、A:A=1:2である場合について以下に説明する。
この場合、圧送工程の第1シリンダ装置7Aでは、シリンダ8内のピストン9より他端側における濃縮海水の導入流量が5,000m/d、圧力が4.0MPaとすると、シリンダ8内のピストン9より一端側における海水の排出流量が10,000m/d、圧力が2.0MPaとなる。
【0042】
このとき、高圧ポンプP2には、第1シリンダ装置7Aから流量が10,000m/dで圧力が2.0MPaの海水が送られるため、膜分離装置5に流量が10,000m/dで圧力が4.0MPaの海水を送り込みたい場合は、高圧ポンプP2において2.0MPaだけ昇圧すれば良い。
したがって、従来の技術では、給水ポンプから送られる海水を直接加圧する高圧ポンプと、シリンダ装置から送り出される海水を増圧する増圧ポンプとで高圧海水を膜分離装置に送っており、加圧用のポンプを2つ用いた2系統の増圧経路が必要であった。これに対し、本実施形態ではシリンダ装置から送り出される海水を高圧ポンプの吸込み側に全量送り、増圧ポンプが補っていたRO膜および各配管等の各部の損失水頭分は高圧ポンプの全揚程に見込むため増圧ポンプが不要になる。
【0043】
また、膜分離装置5では、濃縮海水が流量5,000m/d、圧力4.0MPaで第1シリンダ装置7Aへ送り出されると共に、淡水(透過水)が流量5,000m/dで淡水管3に送り出される。
なお、この際、充填工程である第2シリンダ装置7Bでは、シリンダ8の一端からの海水の流量が10,000m/dであり、シリンダ8の他端側からの濃縮海水の排出量が5,000m/dとなる。
【0044】
このように、シリンダ装置7A,7Bが、シリンダ8内で往復移動するピストン9と、ピストン9に一端が接続され他端がシリンダ8の他端から外部に突出したピストンロッド12を備えているので、ピストンロッド12の太さ(断面積)に応じてシリンダ8内のピストン9より一端側の断面積とピストン9より他端側の断面積とが異なり、シリンダ装置7A,7Bから送り出される海水の圧力と流量とを設定することが可能になる。
【0045】
また、本実施形態では、上記ピストン9が、前方(一端側)に移動する際、ピストン9の後方から海水がシール部9cを越えて漏れ出た場合、空間部Sに海水が流れ込む。
また、上記ピストン9が、後方(他端側)に移動する際、ピストン9の前方から海水がシール部9cを越えて漏れ出た場合も、空間部Sに海水が流れ込む。
さらに、空間部S内に漏れて流れ込んだ海水は、ピストン側開口部12aからロッド内流通路12bを介してピストンロッド12の他端から外部のドレイン受け12cに排出される。
【0046】
このように本実施形態のエネルギー回収装置1では、ピストン9が、ピストンロッド12の先端に設けられた円板状又は円筒状の先端部9aと、先端部から軸方向に離間して設けられ先端部9aとの間に空間部Sを介してピストンロッド12の外周面に設けられた円環状又は円筒状の後端部9bとを備えているので、先端部9aや後端部9bを越えて漏れ出た海水がピストン9内の空間部Sに溜まることで、シリンダ8内のピストン9前方の海水とピストン9後方の海水とが、ピストン9を越えてピストン9前後で混ざり合ってしまうことを抑制可能となる。
【0047】
また、ピストンロッド12が、先端側で空間部Sに開口したピストン側開口部12aと、一端がピストン側開口部12aに接続されていると共に他端が外部に開口したロッド内流通路12bとを備えているので、空間部Sに溜まった海水をピストン側開口部12aからロッド内流通路12bを介して外部に排出することができる。特に、空間部S内の海水は外部の大気圧より高圧であるため、ロッド内流通路12bを通して外部への排出が容易である。
【0048】
また、先端部9aと後端部9bとが、それぞれ外周部に環状に延在するシール部9cを備えているので、二重のシール部9cによって先端部9a前方からの海水の漏れと後端部9b後方からの海水の漏れとの両方を別々に抑制することができる。
なお、ロッド内流通路12bを通して外部への排出される海水の量に応じて、シール部9cの摩耗劣化状態を検出することも可能になる。
【0049】
さらに、シリンダ8が、ピストン9が一端側の端部まで移動した際の空間部Sに対向した部分に海水を外部に排出可能な一端側ドレイン8cを備えているので、ピストン9が一端側の端部まで移動した停止状態において、空間部Sに溜まった海水を一端側ドレイン8cから外部に排出させることができる。
また、シリンダ8が、ピストン9が他端側の端部まで移動した際の空間部Sに対向した部分に海水を外部に排出可能な他端側ドレイン8dを備えているので、ピストン9が他端側の端部まで移動した停止状態において、空間部Sに溜まった海水を他端側ドレイン8dから外部に排出させることができる。
【0050】
次に、本発明におけるエネルギー回収装置の第2実施形態を、図3に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0051】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、2つのシリンダ装置7A,7Bを備えているのに対し、第2実施形態のエネルギー回収装置21では、図3に示すように、3つのシリンダ装置7A,7B,7Cを備えている点である。
すなわち、第2実施形態では、シリンダ装置が、第1シリンダ装置7A,第2シリンダ装置7B及び第3シリンダ装置7Cで構成されている。
【0052】
第2実施形態では、分岐管11cが3つのシリンダ装置に対応して3つに分岐してそれぞれ逆止弁11aを介して第1シリンダ装置7A,第2シリンダ装置7B及び第3シリンダ装置7Cに接続されている。
また、流路切換機構も、3つのシリンダ装置に対応して第1流路切換機構6A,第2流路切換機構6B及び第3流路切換機構6Cの3つで構成されている。
第3シリンダ装置7Cも、第1シリンダ装置7A,第2シリンダ装置7Bと同様のシリンダ構造を有している。
【0053】
なお、第2実施形態では、例えば3つのシリンダ装置7A,7B,7Cのうち、第1シリンダ装置7Aが圧送工程であると共に第3シリンダ装置7Cが充填工程であるとき、第2シリンダ装置7Bはピストン9が第2シリンダ装置7Bの他端に到達している状態であり、第2シリンダ装置7Bが待機工程となるようにシリンダ装置7A,7B,7Cの工程の切り換えが設定されている。すなわち、3本のシリンダ装置7A,7B,7Cのうち1本を圧送工程とし、1本を充填工程とし、1本を待機工程として使用することで、給水ポンプP1から常に海水が供給されて給水ポンプP1の脈動を抑制することができる。
なお、図3では、ドレイン受けの図示は省略している。
【0054】
このように第2実施形態のエネルギー回収装置21でも、3つのシリンダ装置7A,7B,7Cが、シリンダ8内で往復移動するピストン9と、ピストン9に一端が接続され他端がシリンダ8の他端から外部に突出したピストンロッド12を備えているので、ピストンロッド12の太さ(断面積)に応じてシリンダ8内のピストン9より一端側の断面積とピストン9より他端側の断面積とが異なり、シリンダ装置7A,7B,7Cから送り出される海水の圧力と流量とを設定することが可能になる。
【0055】
また、シリンダ装置7A,7B,7Cにおいて、それぞれのピストン9が、ピストンロッド12の先端に設けられた先端部9aと、先端部9aとの間に空間部Sを介してピストンロッド12の外周面に設けられた後端部9bとを備えているので、先端部9aや後端部9bを越えて漏れ出た海水がピストン9内の空間部Sに溜まることで、シリンダ8内のピストン9前方の海水とピストン9後方の海水とが、ピストン9を越えてピストン9前後で混ざり合ってしまうことを抑制可能となる。
【0056】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1,21…エネルギー回収装置、2a…供給管、3…淡水管、4…濃縮水管、5…膜分離装置、6A…第1流路切換機構、6B…第2流路切換機構、6C…第3流路切換機構、7A…第1シリンダ装置、7B…第2シリンダ装置、7C…第3シリンダ装置、8…シリンダ、8a…濃縮海水導入口、8b…貫通孔、8c…一端側ドレイン、8d…他端側ドレイン、9…ピストン、9a…先端部、9b…後端部、9c…シール部、11…流路方向規制機構、12…ピストンロッド、12a…ピストン側開口部、12b…ロッド内流通路、19…濃縮海水の排水路、P1…給水ポンプ、P2…高圧ポンプ、C…制御部、S…空間部
図1
図2
図3