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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182633
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の使用方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20231219BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/124 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/122 20210101ALI20231219BHJP
   H01M 50/143 20210101ALI20231219BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20231219BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20231219BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B32B27/12
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/124
H01M50/117
H01M50/131
H01M50/122
H01M50/143
B32B5/02 B
B32B5/28 Z
B32B7/027
B32B27/04 Z
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155516
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2021560005の分割
【原出願日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2020163929
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】望月 弘章
(72)【発明者】
【氏名】松村 健一
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 武久
(57)【要約】
【課題】優れた遮炎性能、遮熱性能を有し、特に車載用バッテリーのカバーとして用いた際に電池内部からの発火により生じる炎や熱が外部に伝わることを抑制できる積層体を提供する。
【解決手段】樹脂及び繊維を含む繊維層と前記繊維層の少なくとも一方の面に設けられた断熱層とを有する積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及び繊維を含む繊維層と前記繊維層の少なくとも一方の面に設けられた断熱層とを有する積層体。
【請求項2】
800℃で1分間加熱した後の熱伝導率が0.01~0.15W/mKである、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
下記式(1)で表される800℃で1分間加熱した後の熱伝導率の変化率が1~10である、請求項1又は2に記載の積層体。
(熱伝導率の変化率)=[(加熱前の熱伝導率)-(加熱後の熱伝導率)]/(加熱後の熱伝導率) (1)
【請求項4】
800℃で1分間加熱した後の下記式(3)で表される体積膨張率が2倍以上である、請求項1~3のいずれかに記載の積層体。
(体積膨張率)=[(加熱後の最大厚み)-(加熱前の厚み)]/(加熱前の厚み) (3)
【請求項5】
断熱層の繊維層と対向する面に、樹脂及び繊維を含む繊維層を更に有する、請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
繊維層を構成する樹脂の酸素指数が20以上である、請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【請求項7】
繊維層を構成する樹脂は、平均重合度が400~3000、塩素含有量が57~72質量%である塩素化塩化ビニル樹脂である、請求項1~6のいずれかに記載の積層体。
【請求項8】
繊維層を構成する繊維は、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれかに記載の積層体。
【請求項9】
繊維層における繊維の含有量が10~80質量%である、請求項1~8のいずれかに記載の積層体。
【請求項10】
リチウムイオンバッテリー用カバーである、請求項1~9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
リチウムイオンバッテリー用カバーとしての請求項1~9のいずれかに記載の積層体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた遮炎性能、遮熱性能を有し、特に車載用バッテリーのカバーとして用いた際に電池内部からの発火により生じる炎や熱が外部に伝わることを抑制できる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の各種バッテリーは、内部短絡等によってバッテリーが熱暴走し、発火する危険性がある。特に車載用バッテリーでは、車両事故等の衝撃によってバッテリーが熱暴走して発火し、車両火災の原因となるおそれがある。このため、バッテリーを覆うカバーには、熱暴走により異常高温になったバッテリーの熱を周囲に伝え難くしたり、バッテリーの発火により生じる炎を外部に伝え難くしたりすることが必要となる。
【0003】
このような車載用バッテリーのカバーとして、例えば、特許文献1には、鉄やアルミニウム等の金属材料で形成されたバッテリーケースが開示されている。
また、特許文献2には、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属材料を基材とした車両用バッテリーケースが開示されている。
また、特許文献3には、ポリアミド等の熱可塑性樹脂とガラス繊維等の強化繊維とを含む層を有する積層体により構成された車載用電池収容体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-294048号公報
【特許文献2】特開2013-97883号公報
【特許文献3】国際公開第2019/044801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のような金属材料を基材とするカバーは、バッテリーの発火により生じる熱の伝達を充分に抑制することができず、車内が急速に高温となることを防止できない。また、特許文献3に記載の車載用電池収容体であっても、樹脂自体の燃焼を充分に抑制できないという問題がある。
【0006】
本発明は、優れた遮炎性能、遮熱性能を有し、特に車載用バッテリーのカバーとして用いた際に電池内部からの発火により生じる炎や熱が外部に伝わることを抑制できる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂及び繊維を含む繊維層と前記繊維層の少なくとも一方の面に設けられた断熱層とを有する積層体である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、樹脂及び繊維を含む繊維層の少なくとも一方の面に断熱層を設けることで、特に車載用バッテリーのカバーとして用いた際に、電池内部で発生した炎や熱を外部に伝わりにくくすることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の積層体は、樹脂及び繊維を含む繊維層を有する。
上記繊維層を有することで、バッテリーのカバーとして用いた場合に、充分な機械的強度を発揮して、衝突事故の発生による破損等を防止することができる。
【0010】
上記繊維層は、樹脂を含有する。
上記樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂、エラストマー等が挙げられる。
【0011】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン(PSU樹脂)、ポリフェニルスルフォン(PPSU)、ポリエーテルスルフォン(PES樹脂)、ポリエーテルイミド(PEI樹脂)、ポリフェニレンスルファイド(PPS樹脂)、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアセタール、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0012】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0013】
上記エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0014】
上記樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、熱可塑性樹脂が好ましく、塩素化塩化ビニル樹脂がより好ましい。
また、上記樹脂には、本発明の効果を阻害しない範囲で、架橋や変性が施されてもよい。
架橋方法については、特に限定されず、上記樹脂分について通常行われる架橋方法、例えば、各種架橋剤、過酸化物等を使用する架橋方法、電子線照射による架橋方法などが挙げられる。
【0015】
上記樹脂が塩素化塩化ビニル樹脂を含有する場合、上記塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量は、57質量%以上であることが好ましく、72質量%以下であることが好ましい。
上記塩素含有量が少なくなると耐熱性が低下し、多くなると成形性が低下する。
上記塩素化塩化ビニル樹脂の塩素含有量は60質量%以上であることがより好ましく、71質量%以下であることがより好ましい。
上記塩素含有量は、例えば、JIS K 7229に準拠した方法により測定することができる。
【0016】
上記塩素化塩化ビニル樹脂の平均重合度は、400~3000であることが好ましく、600~2000であることがより好ましい。
上記平均重合度が上記範囲であると燃焼時に熱分解物が飛散し難く、遮炎性能を高く維持できるという利点がある。
上記平均重合度は、例えば、JIS K 6720-2:1999に準拠した方法により測定することができる。
【0017】
上記塩素化塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル樹脂(PVC)が塩素化されてなる樹脂である。
上記塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等を用いることができる。これら重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0018】
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、α-オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル類、ハロゲン化ビニル類、N-置換マレイミド類等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上が使用される。
上記α-オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
上記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル類としては、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられる。
上記芳香族ビニル類としては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
上記ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
上記N-置換マレイミド類としては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0019】
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合させるものであれば特に限定されない。例えば、エチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されても良い。
上記エチレン共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0020】
上記PVCの平均重合度は、特に限定されず、通常用いられる400~3000のものが好ましく、より好ましくは600~2000である。平均重合度は、JIS K 6720-2:1999に記載の方法より測定することができる。
上記PVCの重合方法は、特に限定されず、従来公知の水懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等を用いることができる。
【0021】
上記樹脂の酸素指数は20以上であることが好ましい。
酸素指数が20以上であると、優れた遮炎性能を発揮することができる。
上記酸素指数は22以上であることがより好ましく、90以下であることが好ましく、70以下であることがより好ましい。
上記酸素指数は、材料が燃焼を持続するのに必要な最低酸素濃度(体積%)であり、例えば、JIS K7201-2:2007に準拠して決定される。
【0022】
上記樹脂の重量平均分子量は、1000~1000000であることが好ましい。また、熱硬化性樹脂に関しては、加熱により流動しない程度に架橋していることが好ましいが、架橋の程度は上記の程度に限定されない。
上記重量平均分子量は、例えば、ASTM D 2503に準拠した方法により測定することができる。
また、上記重量平均分子量は、適切な標準(例えば、ポリメチルメタクリレート標準)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。上記重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、TSKgel SuperAWM-H等が挙げられる。
【0023】
上記樹脂のガラス転移温度は、0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
上記ガラス転移温度は、例えば、JIS K 7121により測定することができる。
【0024】
上記繊維層における上記樹脂の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
上記繊維層は、繊維を含有する。
上記繊維としては、炭素繊維、金属繊維、有機繊維、無機繊維等の強化繊維が挙げられる。
上記炭素繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、気相成長系炭素繊維等が挙げられる。
上記金属繊維としては、例えば、鉄、金、銀、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属からなる繊維が挙げられる。
有機繊維としては、例えば、アラミド、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン等の有機材料からなる繊維が挙げられる。
上記無機繊維としては、例えば、ガラス、バサルト、シリコンカーバイト、シリコンナイトライド等の無機材料からなる繊維が挙げられる。また、上記ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Tガラス等が挙げられる。
なかでも、炭素繊維、無機繊維が好ましく、炭素繊維、ガラス繊維がより好ましい。
【0026】
上記繊維の平均繊維径は、2μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、26μm以下であることがより好ましい。
上記平均繊維径は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像により、任意の10点の繊維径の平均値から算出することができる。
【0027】
上記繊維は、繊維が断続的に分断された非連続繊維であってもよく、分断されていない連続繊維であってもよい。
上記繊維が非連続繊維である場合、上記繊維の平均繊維長は、2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましく、100mm以下であることが好ましく、80mm以下であることがより好ましい。
上記平均繊維長は、例えば、任意の20サンプルをノギスにより測定して、その平均値から算出することができる。
【0028】
上記繊維の比重は、1.5以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、3.0以下であることが好ましく、2.7以下であることがより好ましく、2.6以下であることがさらに好ましい。
上記比重は、例えば、電子比重計等を用いて測定することができる。
【0029】
上記繊維の形態は、特に限定されないが、例えば、繊維状、織物、編物、不織布のシート状等が挙げられる。
上記繊維がシート状である場合、上記繊維の目付は、100g/m以上であることが好ましく、350g/m以上であることがより好ましく、1000g/m以下であることが好ましく、650g/m以下であることがより好ましい。
上記目付は、例えば、シート状の繊維を10cm×10cmにカットして重量を測定し、単位面積当たりの重量を算出すること等により求めることができる。
【0030】
上記繊維層における上記繊維の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
上記繊維の含有量が上記範囲であると、積層体の機械的強度を充分に高めることができる。
【0031】
上記繊維層は、上記樹脂及び繊維の他、必要に応じて熱安定剤、滑剤、無機充填剤、顔料、難燃剤、酸化防止剤、加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
上記繊維層の厚みは、0.2mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましい。
なお、本発明の積層体が2層以上の繊維層を有する場合、上記繊維層の厚みは、繊維層の厚みの合計を意味する。
【0033】
本発明の積層体における上記繊維層の割合は、質量比で1/10以上であることが好ましく、2/10以上であることがより好ましく、9/10以下であることが好ましく、8/10以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明の積層体における上記繊維層の厚みの割合は、1/10以上であることが好ましく、2/10以上であることがより好ましく、9/10以下であることが好ましく、8/10以下であることがより好ましい。
【0035】
本発明の積層体は、上記繊維層の少なくとも一方の面に断熱層を有する。
上記断熱層を有することで、車載用バッテリーのカバーとして用いた際に電池内部で発生した炎や熱を外部に伝わりにくくすることができる。
【0036】
上記断熱層は、樹脂を含有することが好ましい。
上記樹脂としては、例えば、上記繊維層を構成する樹脂と同様のものが挙げられる。
なかでも、塩素化塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0037】
上記断熱層における樹脂の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、99質量%以下であることが好ましく、97質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
上記断熱層は、無機充填剤を含んでいてもよい。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。
【0039】
上記断熱層における上記無機充填剤の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
上記断熱層は、更に、熱安定剤、滑剤、発泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。
上記発泡剤としては、特に限定されず、化学発泡剤であってもよく、物理発泡剤であってもよい。
上記化学発泡剤としては、例えば、熱分解型無機発泡剤、熱分解型有機系発泡剤、重曹と酸による無機系反応型発泡剤、イソシアネートと水による有機系反応型発泡剤等が挙げられる。
上記熱分解型無機発泡剤としては、例えば、熱膨張性黒鉛、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
上記熱分解型有機系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
また、物理発泡剤としては、バーミキュライト、炭化水素を内包した熱膨張性粒子等が挙げられる。
【0041】
上記断熱層の加熱前の厚みは、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、10mm以下であることが好ましく、7mm以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明の積層体における上記断熱層の割合は、質量比で1/10以上であることが好ましく、2/10以上であることがより好ましく、9/10以下であることが好ましく、8/10以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明の積層体における上記断熱層の厚みの割合は、1/10以上であることが好ましく、2/10以上であることがより好ましく、9/10以下であることが好ましく、8/10以下であることがより好ましい。
【0044】
上記繊維層の厚みに対する上記断熱層の厚みの割合(断熱層の厚み/繊維層の厚み)は、1/10以上であることが好ましく、2/10以上であることがより好ましく、9/10以下であることが好ましく、8/10以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明の積層体は、上記断熱層の上記繊維層と対向する面に、樹脂及び繊維を含む繊維層を更に有していてもよい。
すなわち、少なくとも一方の面に断熱層が設けられた繊維層を繊維層(A)、断熱層の繊維層(A)と対向する面に設けられた繊維層を繊維層(C)としたとき、本発明の積層体は、繊維層(A)/断熱層(B)/繊維層(C)の積層構造を有するものであってもよい。
上記繊維層の構成としては、上記繊維層と同様の物が挙げられる。
【0046】
本発明の積層体が上記繊維層(A)と上記繊維層(C)とを有する場合、上記繊維層(A)の厚みと上記繊維層(C)の厚みとの比率(繊維層(A)の厚み/繊維層(C)の厚み)は10/1以上であることが好ましく、10/2以上であることがより好ましく、10/10以下であることが好ましく、10/9以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明の積層体が上記繊維層(A)と上記繊維層(C)とを有する場合、上記繊維層(A)の質量と上記繊維層(C)の質量との比率(繊維層(A)の質量/繊維層(C)の質量)は10/1以上であることが好ましく、10/2以上であることがより好ましく、10/10以下であることが好ましく、10/9以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明の積層体の形状は特に限定されず、フィルム状、板状、シート状、円筒状、環状、枠丈、箱状等が挙げられる。
【0049】
本発明の積層体は、加熱前の熱伝導率が0.05W/mK以上であることが好ましく、0.1W/mK以上であることがより好ましく、0.5W/mK以下であることが好ましく、0.4W/mK以下であることがより好ましい。
上記熱伝導率は、例えば、JIS R 2616により測定することができる。
【0050】
本発明の積層体は、800℃で1分間加熱した後の熱伝導率が0.01W/mK以上であることが好ましく、0.05W/mK以上であることがより好ましく、0.15W/mK以下であることが好ましく、0.12W/mK以下であることがより好ましい。
上記熱伝導率が上記範囲であると、車載用バッテリーのカバーとして用いた際に電池内部からの発火により生じる炎や熱が外部に伝わることを充分に抑制できる。
【0051】
本発明の積層体は、下記式(1)で表される800℃で1分間加熱した後の熱伝導率の変化率が0.5以上であることが好ましく、50以下であることが好ましい。
(熱伝導率の変化率)=[(加熱前の熱伝導率)-(加熱後の熱伝導率)]/(加熱後の熱伝導率) (1)
上記変化率が上記範囲であると、加熱前の積層体の厚みを大幅に厚くすることなく、遮熱性能を高められるという利点がある。
上記変化率は1以上であることがより好ましく、30以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。
【0052】
本発明の積層体は、下記式(2)で表される800℃で1分間加熱した後の熱伝導率の減量率が50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
(熱伝導率の減少率)=[(加熱前の熱伝導率)-(加熱後の熱伝導率)]/(加熱前の熱伝導率)×100 (2)
【0053】
上記積層体は、800℃で1分間加熱した後の下記式(3)で表される体積膨張率が2倍以上であることが好ましい。
(体積膨張率)=[(加熱後の最大厚み)-(加熱前の厚み)]/(加熱前の厚み) (3)
上記体積膨張率が2倍以上であると加熱前の積層体の厚みを大幅に厚くすることなく、遮熱性能を高められるという利点がある。
上記体積膨張率は2.2倍以上であることがより好ましく、10倍以下であることが好ましく、7倍以下であることがより好ましい。
【0054】
本発明の積層体を製造する方法としては、例えば、上記繊維層を構成する樹脂、繊維等を含有する組成物、及び、上記断熱層を構成する樹脂等を含有する組成物を作製して、繊維層及び断熱層を形成すればよい。また、必要に応じて、繊維層(A)/断熱層(B)/繊維層(C)となるように各層を形成してもよい。
上記繊維層、断熱層を形成する方法としては、例えば、押出成形法、射出成型法等が挙げられる。
【0055】
本発明の積層体は、優れた遮炎性能、遮熱性能を有することから、輸送機用部材、電池装置用部材等の各種の成形部材として好適に用いることができる。更に、本発明の積層体は、輸送機に使用される電池装置用部材に好適に用いることができる。
【0056】
上記輸送機としては、ガソリン自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等の自動車、ガソリンバイク、ハイブリッドバイク、電動バイク等のバイク、電動アシスト自転車等の自転車、鉄道車両、船舶、航空機等が挙げられる。
また、上記輸送機用の部材としては、機構部材、内装部材、外装部材、窓ガラス、ライトカバー等が挙げられる。
上記機構部材としては、冷却パイプ、エアバッグカバー、エアーダクト、ヒーターユニット、車載用バッテリー用カバー等が挙げられる。
上記内装部材としては、天井、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、アームレスト、シートベルトバックル、スイッチ類、ドアトリム等が挙げられる。
上記外装部材としては、エンブレム、ナンバープレートハウジング、バンパー芯材、アンダーカバー等が挙げられる。
【0057】
上記電池装置としては、ニッケルマンガン電池、リチウム電池、空気亜鉛電池等の一次電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、鉛蓄電池等の二次電池、シリコン系太陽電池、色素増感太陽電池、ペロブスカイト型太陽電池等の太陽電池、固体高分子型燃料電池、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池、固体酸化物型燃料電池等の燃料電池等が挙げられる。
上記電池装置用の部材としては、バッテリー用カバー、バッテリー冷却用ウォータージャケット、水素タンクカバー、コネクタ、絶縁シート等が挙げられる。
更に、輸送機に使用される電池装置用部材としては、輸送機用バッテリー用カバー、車載用バッテリー用カバー等が挙げられる。
特に、本発明の積層体は、リチウムイオンバッテリー用カバーとして好適に用いることができ、更に、衝突事故等の外部からの衝撃により電池が熱暴走した際にも、電池内部からの発火により生じる炎や熱が外部に伝わることを抑制できることから、車載用バッテリー用カバーとして好適に用いることができる。
本発明の積層体は、リチウムイオンバッテリー用カバーとしての使用が特に好ましい。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、優れた遮炎性能、遮熱性能を有し、特に車載用バッテリーのカバーとして用いた際に電池内部からの発火により生じる炎や熱が外部に伝わることを抑制できる積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】バッテリーカバー成形用金型を示す斜視図である。
図2】バッテリーカバーの成形の様子を示す断面図である。
図3】絞り加工後の曲げ強度の測定に用いる絞り加工サンプルを示す斜視図である。
図4】絞り加工サンプルから切り出した曲げ試験サンプルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0061】
実施例及び比較例では以下の材料を用いた。
【0062】
(実施例1)
(繊維層(A)及び(C)の作製)
塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC、徳山積水工業社製、平均重合度1000、塩素含有量72.0質量%)100質量部、熱安定剤(日東化成社製、有機錫系熱安定剤「TVS#1380」)10質量部をテトラヒドロフラン(THF、富士フイルム和光純薬社製)400質量部と混合して、樹脂溶液を作製した。
なお、樹脂の塩素含有量はJIS K 7229に準拠した方法により測定し、樹脂の平均重合度はJIS K 6720-2:1999に準拠した方法により測定した。
次に、シート状のガラス繊維(日東紡社製「MC450A」、平均繊維径7μm、平均繊維長50nm、比重2.6、目付450g/m)にハンドレイアップ法を用いて樹脂溶液を含浸させた。上記工程を7回繰り返してガラス繊維7層を積層させた。その後、乾燥機によりTHFを蒸発乾燥させて、繊維層(A)及び(C)を得た。得られた繊維層(A)及び(C)の厚みは1.7mmであった。なお、(繊維質量/樹脂質量)は1.13であった。また、ガラス繊維の平均繊維径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した画像により、任意の10点の繊維径の平均値から算出し、平均繊維長は、任意の20サンプルをノギスにより測定して、その平均値から算出し、比重は、電子比重計(ミラージュ社製、「ED120T」)を使用して算出した。更に、ガラス繊維の目付は、シート状のガラス繊維を10cm×10cmにカットして重量を測定し、1mあたりの重量(g)を算出して求めた。
【0063】
(断熱層(B)の作製)
塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC、徳山積水工業社製、平均重合度500、塩素含有量67.3質量%)100質量部、熱安定剤(日東化成社製、有機錫系熱安定剤「TVS#1380」)10質量部、滑剤(クラリアント社製「WAX-OP」)2質量部、無機充填剤(カーボンブラック、キャボット社製「BLACKPEARLS L」)1質量部を混合し、ロール混錬して厚さ0.3mmの断熱層(B)を作製した。
【0064】
(積層体の作製)
上記繊維層(A)-断熱層(B)-繊維層(C)を重ねて、プレス機にてプレスすることにより積層体を得た。
【0065】
(実施例2)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、(繊維質量/樹脂質量)を1.13とし、(断熱層(B)の作製)において、カーボンブラック1質量部に代えて、酸化チタン(石原産業社製「TIPAQUE CR-90」)10質量部を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0066】
(実施例3)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、ポリアミド樹脂を含むガラス繊維強化熱可塑性プリプレグ(LANXESS社製「Tepexdynalite 102-FG290(x)/45%」)を用いて厚み1.7mmの繊維層(A)及び(C)を作製した。なお、(繊維質量/樹脂質量)は1.12であった。
得られた繊維層(A)及び(C)を用いた以外は実施例2と同様にして積層体を得た。
【0067】
(実施例4)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、ポリカーボネート樹脂を含むガラス繊維強化熱可塑性プリプレグ(LANXESS社製「Tepexdynalite 102fr-FG290(x)/45%」)を用いて厚み1.7mmの繊維層(A)及び(C)を作製した。なお、(繊維質量/樹脂質量)は1.13であった。
得られた繊維層(A)及び(C)を用いた以外は実施例2と同様にして積層体を得た。
【0068】
(実施例5)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、樹脂として塩化ビニル樹脂(PVC、徳山積水工業社製、平均重合度1000、塩素含有量56.7質量%)を用い、(繊維質量/樹脂質量)を1.54とした以外は実施例2と同様にして積層体を得た。
【0069】
(実施例6)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、樹脂として塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC、徳山積水工業社製、平均重合度500、塩素含有量67.3質量%)を用い、(繊維質量/樹脂質量)を1.54とした以外は実施例2と同様にして積層体を得た。
【0070】
(実施例7)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、繊維としてシート状の炭素繊維(東レ社製「T-700」、平均繊維径10μm、比重2.1、目付220g/m)を用い、(繊維質量/樹脂質量)を1.09とした以外は実施例6と同様にして積層体を得た。
【0071】
(実施例8)
(断熱層(B)の作製)において、樹脂として塩化ビニル樹脂(PVC、徳山積水工業社製、平均重合度500、塩素含有量56.7質量%)を用いた以外は実施例6と同様にして積層体を得た。
【0072】
(実施例9)
(断熱層(B)の作製)において、樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製、PCZ-500)を用い、熱安定剤及び滑剤を添加せずに断熱層(B)を作製した以外は実施例6と同様にして積層体を得た。
【0073】
(実施例10)
(断熱層(B)の作製)において、樹脂としてポリアミド樹脂(ユニチカ社製、A1030BRT)を用い、熱安定剤及び滑剤を添加せずに断熱層(B)を作製した以外は実施例9と同様にして積層体を得た。
【0074】
(実施例11)
(断熱層(B)の作製)において、酸化チタンに代えて膨張黒鉛(富士黒鉛工業社製「EXP-50S300」)を用いた以外は実施例6と同様にして積層体を得た。
【0075】
(実施例12)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、繊維としてシート状のガラス繊維(日東紡社製「MC 380A」、平均繊維径7μm、平均繊維長50nm、比重2.6、目付380g/m)を用い、(繊維質量/樹脂質量)を1.35とした以外は実施例6と同様にして積層体を得た。
【0076】
(実施例13)
(繊維層(A)及び(C)の作製)において、繊維としてシート状のガラス繊維(日東紡社製「MC 600A」、平均繊維径7μm、平均繊維長50nm、比重2.6、目付600g/m)を用い、(繊維質量/樹脂質量)を2.10とした以外は実施例6と同様にして積層体を得た。
【0077】
(実施例14)
(断熱層(B)の作製)において、樹脂としてポリアミド樹脂(ユニチカ社製、A1030BRT)を用い、熱安定剤及び滑剤を添加せずに断熱層(B)を作製した以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
【0078】
(実施例15)
(断熱層(B)の作製)において、樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学社製、PCZ-500)を用い、熱安定剤及び滑剤を添加せずに断熱層(B)を作製した以外は実施例4と同様にして積層体を得た。
【0079】
(比較例1)
塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC、徳山積水工業社製、平均重合度1000、塩素含有量72.0質量%)100質量部、熱安定剤(日東化成社製「TVS#1380」)10質量部、滑剤(クラリアント社製「WAX-OP」)2質量部を混合し、ロール混錬して厚み0.3mmの樹脂層を作製した。
得られた樹脂層を積層しプレス成形することにより厚み2.0mmの積層体を得た。
【0080】
(比較例2)
塩素化塩化ビニル樹脂(CPVC、徳山積水工業社製、平均重合度1000、塩素含有量72.0質量%)100質量部、熱安定剤(日東化成社製、有機錫系熱安定剤「TVS#1380」)10質量部をテトラヒドロフラン(THF、富士フイルム和光純薬社製)400質量部と混合して、樹脂溶液を作製した。
次に、シート状のガラス繊維(日東紡社製「MC450A-104SS」、平均繊維径7μm、目付450g/m)にハンドレイアップ法を用いて樹脂溶液を含浸させた。上記工程を繰り返してガラス繊維を積層させた。その後、乾燥機によりTHFを蒸発乾燥させて、厚み2.0mmの積層体を得た。なお、(繊維質量/樹脂質量)は0.98であった。
【0081】
(比較例3)
ポリアミド樹脂を含むガラス繊維強化熱可塑性プリプレグ(LANXESS社製「Tepexdynalite 102-FG290(x)/45%」)を用いて厚み2.5mmの繊維層を作製した。なお、(繊維質量/樹脂質量)は1.12であった。
【0082】
(比較例4)
ポリカーボネート樹脂を含むガラス繊維強化熱可塑性プリプレグ(LANXESS社製「Tepexdynalite 102fr-FG290(x)/45%」)を用いて厚み2.0mmの繊維層を作製した。なお、(繊維質量/樹脂質量)は1.13であった。
【0083】
(評価)
実施例及び比較例で用いた樹脂、積層体、繊維層について、以下の評価を行った。結果を表1~4に示した。
【0084】
(1)樹脂の酸素指数、重量平均分子量、ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7201-2:2007に準拠した方法により樹脂の酸素指数を測定した。また、ASTM D 2503に準拠した方法により樹脂の重量平均分子量を測定した。更に、JIS K 7121に準拠した方法により樹脂のガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0085】
なお、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、具体的には以下の方法により測定した。
まず、樹脂サンプルをTHFに溶解し、孔径0.2μmのフィルターでろ過した。その後、日本分光社製のGPCユニット(ポンプユニット:PU-4180、検出器ユニット:RI-4030、カラムオーブン:CO-4065)を用い、測定流量0.7ml/min、オーブン温度40℃条件で測定を行いサンプルを溶出分離させ、標準ポリスチレン換算で作成した検量線ベースにて分子量を求めた。なお、カラムとしてSHODEX社製カラムLF-804(2連結)を使用した。
【0086】
また、ポリアミド樹脂の重量平均分子量は以下の方法により測定した。
具体的には、まず、積層体試料を秤量し、所定量の溶離液を加えて室温で1晩静置して溶解させた。その後、緩やかに振り混ぜた後、0.45μmのPTFEカートリッジフィルターで濾過し、濾液分としてポリアミド樹脂を分離した。
その後、以下の条件により測定を行った。
<GPC装置>
HLC-8420GPC(東ソー社製)
<カラム>
TSKgel Super AWM-H(6.0mmI.D.×15cm)×2本(東ソー社製)
<検出器>
示差屈折率計(RI検出器),polarity=(+)
<溶離液>
HFIP(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール)(富士フイルム和光純薬社製)
+10mM-CF3COONa(富士フイルム和光純薬社製1級)
<測定条件>
流速:0.3ml/min
カラム温度:40℃
試料濃度:1mg/ml(ポリアミドを基準とした濃度)
試料注入量:20μL
検量線:標準PMMA (Agilent Technologies社製)を用いた3次近似曲線
【0087】
(2)熱伝導率及び体積膨張率
実施例1~15、比較例1、2で得られた積層体及び比較例3、4で得られた繊維層について、100mm×100mmにカットして測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルについて、JIS R 2616により熱伝導率を測定した。
また、得られた測定用サンプルを厚み方向が垂直方向となるように治具に固定し、サンプルとバーナーとの距離を20mmとして下方から加熱して800℃の状態で1分間加熱を続けた後、同様にして熱伝導率を測定し、下記式(1)及び(2)により熱伝導率の変化率及び減少率を算出した。
(熱伝導率の変化率)=[(加熱前の熱伝導率)-(加熱後の熱伝導率)]/(加熱後の熱伝導率) (1)
(熱伝導率の減少率)=[(加熱前の熱伝導率)-(加熱後の熱伝導率)]/(加熱前の熱伝導率)×100 (2)
更に、800℃で1分間加熱した後の測定用サンプルの厚みを測定し、下記式(3)により体積膨張率を測定した。
(体積膨張率)=[(加熱後の最大厚み)-(加熱前の厚み)]/(加熱前の厚み) (3)
なお、比較例1で得られた積層体については、800℃に到達する前に樹脂が焼失したため、加熱後の熱伝導率、熱伝導率の変化率、減少率、体積膨張率を測定することができなかった。
【0088】
(3)炎の漏れ、裏面温度
実施例1~15、比較例1、2で得られた積層体及び比較例3、4で得られた繊維層について、150mm×150mmにカットして測定用サンプルを得た。得られた測定用サンプルを厚み方向が垂直方向となるように治具に固定し、サンプルとバーナーとの距離を20mmとして下方から5分間加熱した。加熱時の状態を確認し、以下の基準で評価した。
〇:測定用サンプル上方への炎の漏れが確認されなかった。
×:測定用サンプル上方への炎の漏れが確認された。
また、加熱面の裏面側の温度をサーモグラフィーにより観察して、裏面温度が300℃に到達するまでの時間を測定した。
【0089】
(4)バッテリーカバーの外観
(リチウムイオンバッテリー用カバーの作製)
実施例1~15で得られた積層体を、図1に示す金型を用いて、図2のようにプレス成形(温度200℃、予熱4分、加圧4分、冷却4分)することによりリチウムイオンバッテリー用カバーを想定した成形体を作製した。上記成形体は、亀裂、ヒビが無く外観の良好なものが得られた。
【0090】
(5)絞り加工後の曲げ強度
実施例1~15、比較例1、2で得られた積層体及び比較例3、4で得られた繊維層について、赤外線ヒーターを用いて表面温度が210℃(樹脂がポリカーボネート樹脂を含む場合は230℃、ポリアミド樹脂を含む場合は240℃)になるまで加熱した。
金型温度を170℃としたプレス型に加熱後の積層体を入れ、型締め力30tでプレスして10秒間保持した。その後、金型を20分かけて50℃まで冷却して図3のような絞り加工サンプルを得た。
絞り加工サンプルの平面部分(図3破線部)から図4のように複合材料切断機 AC-300CF(丸東製作所製)を用いて曲げ試験サンプル(65mm×10mm)を切り出し、ORIENTEC社製「テンシロン」を使用して、JIS K7171に準拠して、曲げ強度を測定した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によれば、優れた遮炎性能、遮熱性能を有し、特に車載用バッテリーのカバーとして用いた際に電池内部からの発火により生じる炎や熱が外部に伝わることを抑制できる積層体を提供できる。
【符号の説明】
【0096】
1 金型
2 積層体
図1
図2
図3
図4