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特開2023-182657ゲノム遺伝子座におけるヌクレオソーム修飾及び変異の定量化のための方法並びにその臨床応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182657
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ゲノム遺伝子座におけるヌクレオソーム修飾及び変異の定量化のための方法並びにその臨床応用
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6827 20180101AFI20231219BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20231219BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20231219BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231219BHJP
   C40B 40/06 20060101ALN20231219BHJP
   C40B 40/10 20060101ALN20231219BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20231219BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20231219BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20231219BHJP
   C12Q 1/6816 20180101ALN20231219BHJP
【FI】
C12Q1/6827 Z ZNA
C12Q1/02
C12N9/22
C12N9/12
C07K19/00
C40B40/06
C40B40/10
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6816 Z
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023164206
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2020538986の分割
【原出願日】2019-01-10
(31)【優先権主張番号】62/615,770
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520252664
【氏名又は名称】エピサイファー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】コウルズ,マルティス ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】キーオ,マイケル-クリストファー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】定量的クロマチンマッピングアッセイの臨床応用を提供する。
【解決手段】エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化するための方法は、対象由来のエピトープを有する細胞組織等を固体支持体に結合するステップ、エピトープを有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップ、細胞組織等とヌクレオソーム標準とをエピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップ、ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップ、ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞組織等のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップ、切断されたDNAを特定するステップ、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を、ヌクレオソーム標準に対してその存在量を比較することによって検出及び定量化するステップ、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープでのエピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化するための方法であって、
a)前記対象由来の生体サンプルからの前記エピトープを有する前記コア要素を含む細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
b)前記細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
c)前記エピトープを有する前記コア要素を含む組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、前記ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.前記DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーと、を含む、ステップと、
d)b)の透過処理された前記細胞、核、オルガネラ又は組織と、c)の結合された前記ヌクレオソーム標準とを、前記エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
e)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
f)前記ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、前記細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、前記ヌクレオソーム標準の前記ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
g)前記切断されたDNAを特定するステップと、
h)前記ゲノム遺伝子座における前記エピトープの存在を、前記ヌクレオソーム標準に対してその存在量を比較することによって検出及び定量化するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記生体サンプルは細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核は前記細胞から単離される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞は、ヒストン翻訳後修飾又はDNA修飾の変化に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官に由来する細胞である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞は、ヒストンにおける変異に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官に由来する細胞である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記生体サンプルは生検である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞は、ヒストン翻訳後修飾又はDNA修飾の変化に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官に由来する細胞ではない、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞は、ヒストンにおける変異に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官に由来する細胞ではない、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞は末梢血単核球である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記生体サンプルは、血漿、尿、唾液、便、リンパ液又は脳脊髄液である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象はヒトである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記親和性薬剤は、前記エピトープに向けられた抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
複数の標準が前記ライブラリに追加され、各標準は、(i)前記エピトープを有する前記標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)前記ヌクレオソームポジショニング配列及び前記バーコード識別子配列を含む前記標準ポリヌクレオチドとを含む再構成ヌクレオソームを含み、前記バーコード識別子配列は、前記ライブラリに追加された前記標準の濃度を示す濃度パラメータをコードし、同等の濃度を有する標準が前記ライブラリに追加される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
複数の標準が前記ライブラリに追加され、各標準は、(i)前記エピトープを有する前記標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)前記ヌクレオソームポジショニング配列及び前記バーコード識別子配列を含む前記標準ポリヌクレオチドとを含む再構成ヌクレオソームを含み、前記バーコード識別子配列は、前記ライブラリに追加された前記標準の濃度を示す濃度パラメータをコードし、少なくとも2つの異なる濃度を有する標準が前記ライブラリに追加される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも6つの異なる濃度を有する標準が前記ライブラリに追加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の標準は、(i)1つ以上のオフターゲットエピトープ及び(ii)オフターゲットエピトープ同一性と前記オフターゲットエピトープを示す濃度パラメータとをコードする標準分子バーコードを含む再構成ヌクレオソームを含む標準を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記オフターゲットエピトープの1つ以上の捕捉効率に基づいて、前記親和性試薬のオフターゲット捕捉の特異性を決定するステップと、前記オフターゲット捕捉の特異性に基づいて、前記ゲノム遺伝子座における前記コアヒストンの前記エピトープの密度を補正するステップと、を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記エピトープは、翻訳後修飾又はタンパク質アイソフォームである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記バーコード識別子配列は、前記細胞のゲノムに存在しない配列である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含む前記ポリヌクレオチドと前記標準ポリヌクレオチドのうち少なくとも1つの存在量は、PCR、qPCR、ddPCR、次世代シーケンシング、ハイブリダイゼーション、オートラジオグラフィー、蛍光標識、光学密度、及びインターカレーション蛍光プローブの使用から成る群から選択される方法によって決定される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記コアヒストンの前記エピトープは、セリン及びアラニンのN-アセチル化;セリン、スレオニン及びチロシンのリン酸化;リジンのN-クロトニル化、N-アシル化;リジンのN6-メチル化、N6,N6-脱メチル化、N6,N6,N6-トリメチル化;アルギニンのオメガ-N-メチル化、対称脱メチル化、非対称脱メチル化;アルギニンのシトルリン化;リジンのユビキチン化;リジンのSUMO化;セリン及びスレオニンのO-メチル化、並びにアルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸のADP-リボシル化から成る群から選択される少なくとも1つの翻訳後アミノ酸修飾を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記コアヒストンの前記エピトープは、H3K4M、H3K9M、H3K27M及びH3K36Mから成る群から選択される少なくとも1つの発癌性変異を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標準ポリヌクレオチドは二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
エピジェネティック修飾又は変異に関連する前記疾患又は障害は、癌、中枢神経系障害、自己免疫疾患、炎症性障害又は感染症である、請求項4~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の記載
本願は、2018年1月10日に提出された米国仮出願第62/615,770号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、クロマチン免疫沈降アッセイやテザー酵素を用いたアッセイ(例えばChIC(chromatin immunocleavage)やCUT&RUN(登録商標)(Cleavage Under Targets and Release Using Nuclease))等の定量的クロマチンマッピングアッセイの臨床応用に関する。本方法は、生体サンプルからのヌクレオソーム(ヒストン及び/又はDNA)上のエピジェネティック修飾及び変異の存在を検出及び定量化すること、修飾及び変異の状態の変化をモニタリングすること、エピジェネティック療法及び変異療法の有効性をモニタリングすること、疾患に対する適切な治療法を選択すること、対象の予後を決定すること、疾患のバイオマーカーを特定すること、及び、エピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤をスクリーニングすることに用いることができる。本発明は更に、本発明の方法に用いられるキットに関する。
【背景技術】
【0003】
制御タンパク質とヒストン翻訳後修飾(PTM)とクロマチン構造との間の協調機能は、複雑なシステムレベルのシグナル伝達ネットワークである。多数のクロマチン制御因子が、白血病(Yoo他、Int.J.Biol.Sci.8(1):59(2012年))、結腸直腸癌(Ashktorab他、Dig.Dis.Sci.54(10):2109(2009年);Benard他、BMC Cancer 14:531(2014年))、アルツハイマー病(Hendrickx他、PLoS One 9(6):e99467(2014年))、ハンチントン病(Moumne他、Front.Neurol.4:127(2013年))等、ヒトの様々な病態の一群に関係している。結果として、これらの酵素の触媒される標的(すなわちヒストンPTM)が、有用な疾患指標として浮上している(Khan他、World J.Biol.Chem.6(4):333(2015年);Chervona他、Am.J.Cancer Res.2(5):589(2012年))。現在までに、FDAに承認されたエピジェネティック標的薬が癌の治療薬として市場に出回っており、クロマチン制御を標的とする多くの治療法が、前臨床開発及び第I/II相臨床試験に入っている(Jones他、Nat.Rev.Genet.17(10):630(2016年))。
【0004】
患者の反応を直接検出し定量化することができないことは、依然として、エピジェネティック薬の開発を妨げ続けている手ごわい技術的障害である。患者固有のエピジェネティックな背景を定義し、そして治療に応じてこの景観がどのように変化するかをモニタリングすることは、患者固有の遺伝的特徴とエピジェネティック特徴に基づいて患者の反応を選択、層別化、評価するのに、非常に有用である。しかしながら、ヒストンPTMを定量化するために用いられる現在のツールは、臨床研究にとって信頼性(すなわち定量性、ロバストネス等)が不十分である。ChIPは、抗体を用いて、特定のヒストンPTMを含むヌクレオソームを濃縮する。次に、それぞれqPCR又は次世代シーケンシング(NGS)を用いて、関連するDNAが単離され、特定のゲノム遺伝子座にマッピングされ、研究対象のPTMのローカル又はゲノムワイドなビューが提供される。しかしながら、ChIP-seqアプローチは、せいぜい半定量的である(Park他、Nat.Rev.Genet.10(10):669(2009年))。或いは、ELISAを用いることもできるが、このアプローチは、PTMの全体的な変化(つまり、選択したゲノム遺伝子座ではない)の定量化に限定されるので、癌特異的なバイオマーカーを特定/測定するための解像度と感度を欠いている。その結果、疾患の進行とエピジェネティック標的療法に対する患者の反応は、定期的に間接的にモニタリングされる(例えば、下流の代謝産物、遺伝子発現等の変化を測定することによって)。結果として、患者固有のエピジェネティックな背景と治療反応の直接的な定量化は、現在、前臨床/臨床薬開発パイプラインにはない。
【0005】
注目すべきことに、酵素をゲノム領域に係留し、標的物質の放出、濃縮及びその後の分析をもたらす新しいクロマチンマッピング方法が開発された(例えばDamID、ChIC、ChEC及びCUT&RUN(登録商標)アプローチ)。CUT&RUN(Cleavage Under Target and Release Using Nuclease)法(PCT/US2018/052707)は、固体支持体を用いた無傷細胞に対するロバストなプロトコルの開発により、以前のChromatin ImmunoCleavage法(ChIC;米国特許第7,790,379号)を発展させる。CUT&RUN(登録商標)とChICは、因子特異的抗体を用いて、タンパク質Aとミクロコッカスヌクレアーゼとの融合タンパク質(pA-MN)を無傷細胞のゲノム結合部位に係留し、これは次いでカルシウムの追加によって活性化され、DNAが切断される。pA-MNは、目的のPTM、転写因子又はクロマチンタンパク質に対する抗体の切断係留システムを提供する。CUT&RUNアッセイは、わずか100個の細胞と300万のリードを用いて、高品質で再現可能なゲノムワイドなPTMマッピングデータを生成する。クロマチンマッピング技術における(従来のChIPに対する)これらの驚くべき進歩にもかかわらず、サンプルの可変性と、抗体の性能をモニタリングできないことは、依然として手ごわい技術的障壁である。
【0006】
最近、ICeChIP(Internal Standard Calibrated ChIP(Grzybowski他、Mol.Cell,2015.58(5):886(2015年))及び米国公開第2016/0341743号)と呼ばれる新しい定量的アプローチが、ChIP用に開発された。このアプローチは、CAP-ChIP(登録商標)(Calibration and Antibody Profiling)及びSNAP-ChIP(登録商標)(Sample Normalization and Antibody Profiling)という名称で商品化されている。この技術は、サンプルの正規化とキャリブレーションの内部制御基準として、特定のヒストンPTMを運搬するDNAバーコード化デザイナーヌクレオソーム(dNuc)を利用する。バーコード化されたdNucは、断片化されたクロマチンサンプルに様々な濃度(それらのバーコード配列にコードされた相対量)でスパイクされ、次いで、このプールからのヌクレオソーム(細胞由来及びdNuc)がビーズ固定化抗体(目的のPTMに特異的)によって捕捉される。免疫沈降の後、NGS(又はqPCR)データは、1)各バーコードと、2)インプットプールとIP捕捉プールの両方におけるサンプルDNAについて、検出されたリード数について分析される。次に、IPのリード数を、バーコード化された各dNucのインプット濃度に正規化して、サンプルDNAリードの直接定量化のための標準曲線を提供することができる。バーコード化されたdNucは、ChIP処理中にサンプルクロマチンが経験する同じ変動性の源の影響下にあり、内因性の抗体標的である修飾モノヌクレオソームを表すので、直接的なキャリブレーターとして機能する。
【0007】
当技術分野では、臨床応用及び薬物開発に用いる生体サンプル中のヒストンPTMを定量化するための、信頼性がありロバストな方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、目的のエピジェネティック療法及び他の治療の前後の患者サンプルにおけるヒストンPTM、クロマチン関連タンパク質(例えば転写因子、クロマチン結合タンパク質、クロマチンリモデラー等)及び/又は変異をモニタリングする定量的クロマチンマッピングアッセイ(例えばChIP、ChIC又はCUT&RUN)用のスパイクイン対照としての、バーコード化された組換えデザイナーヌクレオソームの臨床応用に関する。クロマチン修飾及び制御タンパク質をゲノムワイドに直接定量化する機能により、エピジェネティックな治療有効性の強力な読み出しが提供されるとともに、疾患治療のためのコンパニオン診断の開発が可能となる。よって、このアプローチは、医薬品開発と臨床応用の両方に有用であろう。
【0009】
本発明において有用なクロマチンアッセイは、定量的結果をもたらす当該技術分野で既知の任意のクロマチンアッセイであり得る。例として、CUT&RUNアッセイ(PCT/US2018/052707)、ChICアッセイ(米国特許第7,790,379号)及びICeChIPアッセイ(WO2015/117145)等が挙げられる。これらの参考文献の各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0010】
一部の実施形態では、定量的クロマチンアッセイはクロマチン免疫沈降アッセイである。よって、本発明の一態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座にあるコアヒストンのエピトープにおけるエピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
を含み、それにより、エピトープにおけるエピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する。
【0011】
本発明の別の態様は、疾患又は障害を有する対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化する。
【0012】
本発明の更なる態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)ステップa)~g)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングする。
【0013】
本発明の追加の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングするための方法に関し、方法は、対象の生体サンプルからクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするステップを含み、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)エピジェネティック療法又は変異療法の開始後に、ステップa)~g)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングする。
【0014】
本発明の別の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象に適した治療法を、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて選択するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)コアヒストンのエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、適切な治療法を選択するステップと、
を含む。
【0015】
本発明の更なる態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象についての予後を、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて決定するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)コアヒストンのエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、対象の予後を決定するステップと、
を含む。
【0016】
本発明の追加の態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害と相関させるステップと、
を含み、それにより、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定する。
【0017】
本発明の別の態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤をスクリーニングする方法に関し、方法は、薬剤の存在下及び不在下において、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップを含み、
ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップは、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
を含み、薬剤の存在下及び不在下におけるゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態の変化により、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤が特定される。
【0018】
一部の実施形態では、定量的クロマチンアッセイは、テザー酵素を用いたクロマチンマッピングアッセイである。よって、本発明の一態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープでのエピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーと、を有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を、ヌクレオソーム標準に対してその存在量を比較することによって検出及び定量化するステップと、
を含む。
【0019】
本発明の別の態様は、疾患又は障害を有する対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップ
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含む、DNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーと、を有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を、ヌクレオソーム標準に対してその存在量を比較することによって検出及び定量化するステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化する。
【0020】
本発明の更なる態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列
ii.DNAバーコード
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーと、を有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)ステップa)~j)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングする。
【0021】
本発明の追加の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングするための方法に関し、方法は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするステップを含み、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーと、を有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)ステップa)~j)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングする。
【0022】
本発明の別の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象に適した治療法を、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて選択するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)コア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、適切な治療法を選択するステップと、を含む。
【0023】
本発明の更なる態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象についての予後を、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて決定するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)コア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、対象の予後を決定するステップと、
を含む。
【0024】
本発明の追加の態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害と相関させるステップと、
を含み、それにより、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定する。
【0025】
本発明の別の態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤をスクリーニングする方法に関し、方法は、薬剤の存在下及び不在下において、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップを含み、
ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップは、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
を含み、薬剤の存在下及び不在下におけるゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態の変化により、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤が特定される。
【0026】
本発明の更なる態様は、デザイナーのヌクレオソームのパネルを含むキットに関し、各ヌクレオソームは、1つ以上の疾患関連エピジェネティック修飾又はヒストン変異を含む。
【0027】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の本発明の説明においてより詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明をより詳細に説明する。この説明は、本発明を実施することのできるありとあらゆる方法、又は本発明に追加することのできる全ての特徴の詳細な一覧であることを意図していない。例えば、一実施形態に関して例示される特徴は、他の実施形態に組み込むことができ、特定の実施形態に関して例示される特徴は、その実施形態から削除することができる。更に、本開示に照らして、本明細書で提案される様々な実施形態に対する、本発明から逸脱しない多くの変形及び追加が、当業者には明らかになるであろう。したがって、以下の明細書は、本発明の一部の特定の実施形態を例示することを意図しており、それらの全ての置換、組合わせ及び変形を徹底的に指定することを意図していない。
【0029】
文脈上別段の指示がない限り、本明細書に記載される本発明の様々な特徴は任意の組合わせで使用できることが、特に意図される。更に、本発明はまた、本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載される任意の特徴又は特徴の組合わせが除外又は省略され得ることを予期する。例示のために、複合体が構成要素A、B及びCを含むと明細書に記載されている場合、A、B又はCのいずれか又はそれらの組合わせを、省略することができ、単独又は任意の組合わせで放棄することができることが、特に意図される。
【0030】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の説明で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0031】
本明細書では、ヌクレオチド配列は、特に別段の指示がない限り、左から右に、5’から3’の方向に一本鎖のみで提示される。本明細書では、ヌクレオチドとアミノ酸は、IUPAC-IUB生化学命名法委員会が推奨する方法で、又は(アミノ酸の場合)米国特許法施行規則1.822及び確立された使用法に準拠した1文字コード又は3文字コードのいずれかで表される。
【0032】
別段の指示がない限り、組換え及び合成のポリペプチド、抗体又はその抗原結合断片の製造、核酸配列の操作、形質転換細胞の製造、ヌクレオソーム及び一時的かつ安定的にトランスフェクトされた細胞の構築のために、当業者に知られている標準的な方法を用いることができる。そのような技術は、当業者には既知である。例えば、SAMBROOK他、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL 2nd Ed.(Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1989年);F.M.AUSUBEL他、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク)を参照されたい。
【0033】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、ヌクレオチド配列、アミノ酸配列及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0034】
本発明の説明及び添付の特許請求の範囲に用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことが意図される。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうち1つ以上のありとあらゆる可能な組合わせと、択一に解釈される場合の(「又は」)組合わせの欠如を指し、包含する。
【0036】
更に、本発明はまた、本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載される任意の特徴又は特徴の組合わせが除外又は省略され得ることを予期する。
【0037】
更に、本明細書で用いられる「約」という用語は、本発明の化合物又は薬剤の量、用量、時間、温度等の測定可能な値に言及する場合、指定量の±10%、±5%、±1%、±0.5%又は更に±0.1%の変動を包含するように意図されている。
【0038】
核酸又はタンパク質に関連して本明細書で用いられる「本質的に~から成る」という用語は、核酸又はタンパク質が、該核酸又はタンパク質の目的の機能を有意に変化させる(例えば約1%、5%又は10%を超える)列挙された要素以外の要素を含まないことを意味する。
【0039】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指すように互換的に用いられる。つまり、ポリペプチドに関する説明は、ペプチドの説明とタンパク質の説明に等しく適用され、その逆も同様である。該用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーと、1つ以上のアミノ酸残基が非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書で用いられる場合、該用語は、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基は、共有ペプチド結合及び/又は偽ペプチド結合によって連結される。
【0040】
「核酸」又は「ヌクレオチド配列」は、ヌクレオチド塩基の配列であり、RNA、DNA又はDNA-RNAハイブリッド配列(天然に存在するヌクレオチドと天然に存在しないヌクレオチドの両方を含む)であってよいが、好ましくは一本鎖又は二本鎖のいずれかのDNA配列である。
【0041】
本明細書中で用いられる場合、「単離された」核酸又はヌクレオチド配列(例えば「単離されたDNA」又は「単離されたRNA」)は、天然に存在する生物又はウイルスの他の成分(例えば、細胞若しくはウイルスの構造成分又は核酸若しくはヌクレオチド配列に関連して一般にみられる他のポリペプチド若しくは核酸)の少なくとも一部から分離されたか又は実質的にそれを含まない核酸又はヌクレオチド配列を意味する。
【0042】
同様に、「単離された」ポリペプチドは、天然に存在する生物又はウイルスの他の成分(例えば、細胞若しくはウイルスの構造成分又はポリペプチドに関連して一般にみられる他のポリペプチド若しくは核酸)の少なくとも一部から分離されたか又は実質的にそれを含まないポリペプチドを意味する。
【0043】
性質を「実質的に保持する」とは、性質(例えば活性や他の測定可能な特性)の少なくとも約75%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%が保持されることを意味する。
【0044】
「エピトープ」という用語は、親和性試薬の結合を誘発することのできる生体分子上の任意の部位を指す。親和性試薬は、生体分子又は生体分子断片の線形配列、生体分子又は生体分子断片の形状、生体分子又は生体分子断片の化学物理的性質、又はこれらの組合わせを認識し得る。
【0045】
「アミノ酸」は、本明細書では、それらの周知の3文字記号、又はIUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨されている1文字記号のいずれかによって、言及され得る。タンパク質又はペプチドのアミノ酸残基は、以下のように省略される:フェニルアラニンはPhe又はF、ロイシンはLeu又はL、イソロイシンはIle又はI、メチオニンはMet又はM、バリンはVal又はV、セリンはSer又はS、プロリンはPro又はP、スレオニンはThr又はT、アラニンはAla又はA、チロシンはTyr又はY、ヒスチジンはHis又はH、グルタミンはGln又はQ、アスパラギンはAsn又はN、リジンはLys又はK、アスパラギン酸はAsp又はD、グルタミン酸はGlu又はE、システインはCys又はC、トリプトファンはTrp又はW、アルギニンはArg又はR、グリシンはGly又はGである。
【0046】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸と天然に存在しないアミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然にコードされるアミノ酸は、20の一般のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン)並びにピロリジン及びセレノシステインである。アミノ酸類似体とは、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造(つまり、水素、カルボキシル基、アミノ基、R基に結合している炭素)をもつ化合物を指す。このような類似体は、修飾R基(ノルロイシン等)又は修飾ペプチド骨格をもつが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。
【0047】
アミノ酸配列に関して、当業者であれば認識し得るように、コードされた配列における単一のアミノ酸又はごく一部のアミノ酸を変化させ、追加し、又は削除する核酸、ペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失又は、「保存的に修飾されたバリアント」であり、該変化の結果として、化学的に類似するアミノ酸によってアミノ酸が置換される。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者には既知である。そのような保存的に修飾されたバリアントは、多型バリアント、種間ホモログ/オーソログ、及び本明細書に記載される薬剤の対立遺伝子に追加され、それらを除外しない。
【0048】
本明細書で用いられる「抗原」は、抗体によって認識されるか、又はそれに対して認識抗体が産生され得る任意の構造であってよい。特定の実施形態では、抗原は、単一のアミノ酸残基又は2つ以上の残基のアミノ酸断片を含んでよい。特定の実施形態では、抗原は、アセチル化、メチル化(例えばモノ、ジ、トリ)、リン酸化、ユビキチン化(例えばモノ、ジ、トリ、ポリ)、SUMO化、ADP-リボシル化、シトルリン化、ビオチン化、シス-トランス異性化等、アミノ酸の修飾を有してよい。特定の実施形態では、抗原は、5-メチルシトシン等のヌクレオチド修飾を有してよい。他の実施形態では、抗原は、点変異等の特定の変異を有してよい。更に他の実施形態では、抗原は、野生型のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有してよい。
【0049】
「翻訳後修飾」という用語は、インビボ又はインビトロでポリペプチド鎖に組み込まれた後に発生するか又は発生し得る天然又は非天然のアミノ酸の任意の修飾を指す。そのような修飾としては、アシル化(例えばアセチル-、ブチリル-、クロトニル-)、メチル化(例えばモノ-、ジ、トリ-)、リン酸化、ユビキチン化(例えばモノ-、ジ、トリ、ポリ-)、SUMO化、ADP-リボシル化、シトルリン化、ビオチン化、シス-トランス異性化等が挙げられる。そのような修飾は、合成的に(例えば化学的に)、ポリペプチド合成中に、又は、ポリペプチド合成又はポリペプチド精製後に酵素的に、導入することができる。
【0050】
「転写後修飾」という用語は、インビボ又はインビトロでポリヌクレオチド鎖に組み込まれた後に発生するか又は発生し得る天然又は非天然のヌクレオチドの任意の修飾を指す。そのような修飾としては、5-メチルシオシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5,6-ジヒドロウラシル、7-メチルグアノシン、キサントシン、イノシン等が挙げられる。
【0051】
「免疫沈降(IP)濃縮」という用語は、免疫沈降されたサンプルからの内部標準リードを、インプットサンプルからの内部標準リードで割ったものを指す。
【0052】
「非対称」という用語は、ヒストンの二量体のうち1つのヒストンが翻訳後修飾を含むヌクレオソームを指す。例えば、二量体のうち、1つのヒストンH3のリジン9にはトリメチル修飾があるが、2つ目のH3にはない。
【0053】
「対称」という用語は、ヒストンの二量体のうち両方のヒストンが翻訳後修飾を含むヌクレオソームを指す。例えば、両方のヒストンH3のリジン9にトリメチル修飾がある。
【0054】
本発明は、標的化されたエピジェネティック療法及び他の治療の前後の患者サンプル中のヒストンPTM及び変異の定量的モニタリングのためのCAP-ChIP及びSNAP-ChIPの臨床応用に関する。HMDをゲノムワイドに直接定量化することができるので、エピジェネティックな治療の有効性を強力に読み取ることができ、また、疾患治療のためのコンパニオン診断の開発が可能となる。そのため、このアプローチは、医薬品開発と臨床応用の両方に有用であろう。
【0055】
よって、本発明の一態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座にあるコアヒストンのエピトープにおけるエピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
を含み、それにより、エピトープにおけるエピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する。本方法のステップは、それらが列挙される順序に限定されない。例えば、標準を追加するステップ(c)は、ステップ(b)の前又は後に実行することができ、例えば、標準は、ステップ(b)が実行される前に生体サンプルに追加されてよく、又は、ステップ(b)が実行された後にライブラリに追加されてもよい。
【0056】
アッセイ方法の概要は、以下のとおりである。規定濃度(各固有のDNAバーコードにコードされた)で修飾ヒストン又は変異ヒストン(例えばリジン4のN6,N6,N6-トリメチル化を有するH3)を有する標準の半合成ヌクレオソームラダーが、ヒトの核から単離され核消化によって(例えば小球菌ヌクレアーゼにより)放出されるネイティブヌクレオソームのライブラリにドープされる。次いで、ラダー-ドープライブラリのサンプルは、免疫沈降(IP)と、DNA精製と、次世代シーケンシング等によるDNAの特性評価にかけられる。ラダー-ドープライブラリの別のサンプルは、インプットサンプルとして保持され、免疫沈降にかけられない。ここで、免疫沈降(IP)又は「プルダウン」とは、クロマチン、ヌクレオソーム、DNA-タンパク質複合体、又は1つ以上の目的エピトープを含むタンパク質を精製するための方法又は技術を指し、エピトープは、該エピトープに特異的な親和性試薬と接触し、ライブラリの他の成分から分離される。親和性試薬は、エピトープに特異的に結合し、沈殿アッセイでの使用に適した任意の試薬であってよい。親和性試薬は、抗体又はその断片又はその誘導体であってよい。親和性試薬は、アプタマーやタンパク質間相互作用ドメイン等の非抗体試薬であってよい。「免疫沈降」という用語は、本明細書では、非抗体親和性試薬を包含するように広く用いられる。
【0057】
免疫沈降されたサンプルとインプットサンプルは、DNA配列を読み取って定量化する能力を有する方法にかけられる。回収されたDNA断片は、参照ゲノムに基づいて相対ゲノム位置にマッピングされ、これらの断片の存在量は、IP(親和性試薬を用いた免疫沈降によって生成されたサンプル)とインプットと入力(免疫沈降を受けていないサンプル)から回収されたDNAのゲノムの全ての塩基対について測定される。シーケンシングデータ合成からの同じリードカウントは、半合成ヌクレオソームの作成に用いられる固有のヌクレオチド配列に対して実行される。IPとインプットの半合成ヌクレオソームの存在量の比はIP効率を測定するために用いられ、IPとインプットのゲノム遺伝子座のDNA断片の存在量の比は相対濃縮を測定するために用いられる。追加された半合成ヌクレオソームのタグカウントの結果は、ネイティブヌクレオソームのヒストン修飾又は変異密度をゲノムワイドに導出するための検量線を構成する。100%の修飾をもつ半合成ヌクレオソームラダーの平均IP濃縮比は、目的のゲノム間隔での修飾の量を比の比として計算するために、同じエピトープをもつネイティブクロマチンのスカラー補正として用いられる。その後、IP効率を相対濃縮に適用して、ヒストン翻訳後修飾又は変異のヒストン修飾密度を、全ゲノムのスパンの塩基対分解能で測定する。一部の実施形態では、ネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティをもつタンパク質エピトープは、タンパク質アイソフォーム及び/又は翻訳後修飾をもつタンパク質を含む。例えば、エピトープは、その密度がアッセイで測定されるヒストン修飾、又は同様の結合特性をもつエピトープであり得る。一実施形態では、DNA-タンパク質複合体のタンパク質部分は、コアヒストンH2A、H2B、H3及びH4を含むコアヒストンオクタマー複合体である。これらの配列は、米国特許出願第2013/044537号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。前述のコアヒストンのタンパク質エピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを再現するために、表1(a)~1(f)に列挙されるものを含む任意のヒストンバリアントによって表すことができる。本発明の一実施形態では、タンパク質エピトープは、ヒストンの断片であってよい。
【0058】
本発明の別の態様では、タンパク質-DNA複合体は、ポジショニング配列及び固有のバーコード識別子配列等を含む標準ポリヌクレオチドを含む。タンパク質ポジショニング配列を含めることにより、タンパク質との特定の天然様相互作用を通して、DNA-タンパク質複合体の作製が可能となる。一実施形態では、タンパク質ポジショニング配列はヌクレオソームポジショニング配列である。一実施形態では、ポジショニング配列は、少なくとも146塩基対の天然又は合成の二本鎖DNA配列を含む。一実施形態では、タンパク質のポジショニング配列は、「601-Widom」配列、すなわちヌクレオソームに対して親和性を示した配列の選択を通して作製された合成ヌクレオソーム結合配列である。ここではヌクレオソームポジショニング配列として「601-Widom」配列に言及したが、本実施形態は、ヌクレオソームに対して親和性を示す他の合成及び天然の配列の使用を包含する。一部の実施形態では、標準ポリヌクレオチドはポジショニング配列を含まない。標準ポリヌクレオチドがヒストン又はヒストン断片と安定したタンパク質-DNA会合を形成できる限り、本発明の方法に用いることができる。
【0059】
ユニーク配列により、ライブラリ又はネイティブDNA-タンパク質複合体のプールにおいてDNA-タンパク質複合体の特異的特定が可能になる(すなわちバーコード)。一部の実施形態では、ユニーク配列は、ポリペプチド、フルオロフォア、クロモフォア、RNA配列、ロックト核酸配列、親和性タグ等の特異的認識の別手段で置換することができる。一態様では、ユニーク配列は、既知のヌクレオチド分析技術、例えば次世代シーケンシング、PCR、qPCR、RT-PCR、ddPCR、ハイブリダイゼーション、オートラジオグラフィー、蛍光標識、光学密度、インターカレーション蛍光プローブの使用によって分析することができる。ユニーク配列とポジショニング配列は同じ配列である場合があり、認識分子として二重の機能を果たす。ユニーク配列は、ポジショニング配列の5’末端、ポジショニング配列の3’末端、ポジショニング配列の両端及び/又はポジショニング配列の内部に存在してよい。
【0060】
一部の実施形態では、ユニーク配列は、調査されている生物のゲノム配列とサンプルに含まれ得る他の全ての配列とのハミング距離を少なくとも1に維持するための最小限の長さをもつ二重DNA配列である。一実施形態では、ネイティブゲノム配列の環境においてバーコードのロバストな区別を保証するために、各バーコードは、ヒト及びマウスのゲノムに存在しない2つの11塩基対(bp)配列から成り(Herold他、BMC Bioinformatics 9:167(2008年))、11bp配列は、ヒト及びマウスのゲノムのハミング距離が少なくとも1であることを保証する最短の配列である。別の実施形態では、バーコード配列は、細胞のゲノムには存在しない配列である。別の実施形態では、バーコード配列は、自然界には存在しない配列である。ここでは、11bpがヒトとマウスのハミング距離が少なくとも1である可能な最短の配列として言及されているが、前述のユニーク配列として正常に用いることのできる、ハミング距離が少なくとも1であるより長い配列は無数に存在する。更に、他の生物のゲノムのハミング距離が少なくとも1であるユニーク配列の最短配列は11bpよりも短い場合があるので、これらの生物には11bpよりも短い配列を利用することができる場合がある。バーコードは、次世代シーケンシングやPCR等の既知のDNA分析技術によって分析することのできる分子(一実施形態ではDNA)である。バーコード配列は、所定の内部標準ヌクレオソームの濃度/又は識別情報をコードする。
【0061】
一部の実施形態では、固有のヌクレオチド配列は、所定の内部標準の濃度及び識別情報を示す。本発明の一態様では、ユニーク配列は、少なくとも又は最大で10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90又は100の塩基対の長さをもつ。更に別の実施形態では、ポジショニング配列とユニーク配列の全長は、少なくとも100塩基対の長さである。一態様では、ユニーク配列は、小球菌ヌクレアーゼ耐性である。本発明の一実施形態では、ポジショニング配列及びユニーク配列又はバーコード等を含む標準分子は、配列番号1;配列番号2;配列番号3;配列番号4;配列番号5;配列番号6;配列番号7;配列番号8;配列番号9;配列番号10;配列番号11;配列番号12;配列番号13;配列番号14;又は配列番号15を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る。一実施形態では、ポジショニング配列及びユニーク配列又はバーコード等を含む標準分子は、配列番号16;配列番号17;配列番号18;配列番号19;配列番号20;配列番号21;配列番号22;配列番号23;配列番号24;配列番号25;配列番号26;配列番号27;配列番号28;配列番号29;配列番号30;配列番号31;配列番号32;配列番号33;配列番号34;配列番号35;配列番号36;配列番号37;配列番号38;配列番号39;配列番号40;配列番号41;配列番号42;配列番号43;配列番号44;配列番号45;配列番号46;配列番号47;配列番号48;配列番号49;配列番号50;配列番号51;配列番号52;配列番号53;配列番号54;配列番号55;配列番号56;配列番号57;配列番号58;配列番号59;配列番号60;配列番号61;配列番号62;配列番号63;配列番号64;配列番号65;配列番号66;配列番号67;配列番号68;配列番号69;配列番号70;配列番号71;配列番号72;配列番号73;配列番号74;配列番号75;配列番号76;配列番号77;配列番号78;配列番号79;配列番号80;配列番号81;配列番号82;配列番号83;配列番号84;配列番号85;配列番号86;配列番号87;配列番号88;配列番号89;配列番号90;配列番号91;配列番号92;配列番号93;配列番号94;配列番号95;配列番号96;配列番号97;配列番号98;配列番号99;配列番号100;配列番号101;配列番号102;配列番号103;配列番号104;配列番号105;配列番号106配列番号107;配列番号108;配列番号109;配列番号110;配列番号111;配列番号112;配列番号113;配列番号114;又は配列番号115を含む、本質的にそれから成る、又はそれから成る。
【0062】
本明細書に記載されるような、エピトープ密度を決定する方法の一実施形態では、標準ポリヌクレオチドを有する前述の半合成ヌクレオソームのセットが、ネイティブヌクレオソームのコレクションにドープされる。該セットは、標準ポリヌクレオチド内部に複数のエピトープを含むが少なくとも1つの関心エピトープを含む半合成ヌクレオソームを含んでよい。例えば、半合成ヌクレオソームのセットは、翻訳後修飾(例えばH3K9me3)と、ヒストンのポリペプチド配列等の保存又はインバリアンのエピトープとを内部に含んでよい。或いは、半合成ヌクレオソームのセットは、複数の翻訳後修飾を内部に含んでよい。別の態様では、標準のセットは、関心エピトープとは異なる偽陽性エピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを備えた、少なくとも1つの半合成、再構成又はバリアント含有のDNA結合タンパク質を含む。一実施形態では、半合成又はバリアント含有のヌクレオソームのセットは、真陽生エピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを備えた少なくとも1つのヌクレオソームと、偽陽性エピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを備えた少なくとも1つのヌクレオソームとを含む。
【0063】
タンパク質-DNA複合体のプールからネイティブ又は半合成のヌクレオソームの集団を精製するために、親和性試薬がヌクレオソームのインバリアント断片、例えばヒストンを認識する親和性捕捉ステップを用いることができる。本発明の方法において用いられる親和性薬剤は、関心エピトープを認識して特異的に結合する任意の適切な分子であってよい。一態様では、関心エピトープに接触する親和性試薬は、抗体又はその断片、モノボディ、scFv、アプタマー、Fab又は結合ペプチドを含む。ヌクレオソームの集団を精製する方法は、半合成ヌクレオソームのみ、ネイティブヌクレオソームのみ、又は半合成ヌクレオソームがドープされたネイティブヌクレオソームに適用することができる。
【0064】
一実施形態では、本発明の方法を実施するために、ChIP読出しを比較することのできる前述の内部標準のセットが、ネイティブDNA-タンパク質複合体のコレクションにドープされる。以下では、これらの標準を用いて標準IP効率を計算する方法について説明する。これを用いて、調査対象のエピトープがインバリアントタンパク質断片、タンパク質アイソフォーム、タンパク質翻訳後修飾又はポリヌクレオチド転写後修飾であるかどうかに応じて、タンパク質又はエピトープ密度(PD)、タンパク質バリアント密度(PVD)又はタンパク質修飾密度(PMD)を計算することができる。ネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを備えた半合成又はバリアント含有のヌクレオソームに基づく標準により、ヒストン修飾密度(HMD)又はヒストンバリアント密度(HVD)の絶対定量化を実行できるようにすることで、クロマチン免疫沈降が改善される。
【0065】
ヒストン修飾密度は、標準化された尺度であり、所定のゲノム位置にある全てのヌクレオソームのうち特定のエピトープを有するヌクレオソームの見かけのパーセンテージとして定義される。ヒストン修飾密度は、0%(不在を意味する)から100%(エピトープの存在が飽和していることを意味する)の範囲のアナログ尺度で表現される。例えば、GAPDH遺伝子のヌクレオソーム+1(転写開始部位の下流にある最初のヌクレオソーム)の90%H3K4me3ヒストン修飾密度は、GAPDH遺伝子プロモーターでヌクレオソーム+1を構成する全てのヒストンH3分子の集団において、それらの90%がヒストンH3(H3K4me3)のリジン4の翻訳後修飾N6,N6,N6-トリメチル化を含み、10%がH3K4me3を含まないこととして解釈される。この例は、単一のヌクレオソームにまたがるゲノムの領域(およそ147bp)に対して与えられたが、単一の塩基対からゲノム全体に及ぶゲノムの任意のスパンに同じことを適用することができる。
【0066】
タンパク質又はエピトープ密度を計算するためには、ゲノム遺伝子座サイズ、エピトープ存在量、一般タンパク質存在量及び免疫沈降効率(「IP効率」)の4つを知る必要がある。ゲノム遺伝子座のサイズは、ユーザによって定義され、単一の塩基対からゲノム全体まで様々であり得る。エピトープ存在量は、ゲノム遺伝子座のスパンにわたるエピトープの存在量として定義される。存在量は通常、タンパク質に対して化学量論的であるので、DNA-タンパク質複合体に結合したDNAの量を定量化することによって推測され、DNAは、PCR、RT-PCR、ddPCR、次世代シーケンシング、ハイブリダイゼーション、オートラジオグラフィー、蛍光標識、光学密度、インターカレーション蛍光プローブ等の様々な方法で簡単に定量することができる。しかしながら、存在量はまた、光学密度、蛍光、オートラジオグラフィー、質量分析、比色分析、ポリペプチド全分解等を通してタンパク質濃度を測定することによって、直接測定することもできる。
【0067】
エピトープ存在量は、特定の親和性試薬がエピトープを認識する親和性捕捉ステップの後に測定され、そのステップの後、エピトープ-親和性試薬複合体は、DNA-タンパク質複合体の非結合集団から分離される。ほとんどの場合、エピトープ-親和性試薬複合体は、表面にエピトープ-親和性試薬複合体を固定化し、DNA-タンパク質複合体の非結合集団を洗い流すことにより、非結合ヌクレオソームから分離される。一般タンパク質存在量は、所定のゲノム遺伝子座の範囲内でDNA複合体を形成する所定の種類の全てのタンパク質の存在量として定義される。一般タンパク質存在量は、エピトープ存在量と同じ方法で測定される。
【0068】
他のタンパク質-DNA複合体からヌクレオソームの集団を精製するために、親和性試薬がヌクレオソームのインバリアント断片、例えばヒストンを認識する親和性捕捉ステップを用いることができる。しかしながら、タンパク質-DNA複合体の作成に関与する所定のインバリアント断片が、考慮されるゲノム遺伝子座サイズよりも支配的である場合、一般タンパク質集団の親和性捕捉ステップは、他のタンパク質-DNA複合体の集団は取るに足らないものであるという仮定の下で、スキップすることができる。エピトープ存在量と一般タンパク質存在量の比は、タンパク質あたりのエピトープ密度をもたらすはずである。しかしながら、親和性捕捉ステップが100%効率的である場合は稀であり、2つ以上の親和性捕捉ステップが利用される場合、それらの捕捉効率が互いに等しくなることは稀である。この問題を解決するためには、エピトープ存在量と一般タンパク質存在量測定の間の相対IP効率を知る必要がある。
【0069】
「IP効率」とは、1つ以上のプルダウン間のエピトープの相対的な回収を指す。標準のIP効率を知ることで、1つ以上のプルダウン間の回収の差を補正することにより、絶対的な定量化を実行することができる。一実施形態では、前述のIP効率は、ネイティブエピトープと同じ親和性、特異性及びアビディティを有し、複雑な混合物において存在量の測定が容易である前述の標準のセットを用いて測定される。これらの半合成標準は、ネイティブDNA-タンパク質複合体のプールにドープされ、そのサンプルは親和性捕捉を受けることになる。このステップに続いて、前述のエピトープ存在量と一般タンパク質密度の測定が、半合成標準とネイティブDNA-タンパク質複合体集団のプールとに対して、前述の存在量測定方法のうち1つを用いて実行される。一実施形態では、標準のセットは、異なる濃度で追加された標準を含む。ここで、追加された濃度は、バーコードによって一意に識別される。
【0070】
一実施形態では、エピトープ存在量は、標準DNA-タンパク質複合体及びネイティブDNA-タンパク質複合体について、DNA-タンパク質複合体に結合したDNAの定量化を通して測定することができる。一実施形態では、半合成ヌクレオソームのインプット材料に対するIP内の所定の標準バーコードのエピトープの比は、標準IP効率と等しい。或いは、この標準IP効率は、エピトープ特異的IPのバーコード存在量と一般タンパク質存在量の比として計算することができる(ヒストンH3の場合、例えば抗H3一般IPのバーコードカウント)。IP効率が計算されると、この標準IP効率を、任意のゲノム遺伝子座のIP/インプットDNA又はIP-エピトープ/IP-一般タンパク質比に適用することができる。これは、インプットに存在する同じ間隔をカバーするDNAの量に対するIPのエピトープ存在量のゲノムIP効率比(親和性ステップで捕捉された所定のゲノム間隔のDNA量)を、標準IP効率で割ることによって計算される。或いは、これは、いずれかのゲノム遺伝子座について、IPの所定のゲノムDNA断片を、一般エピトープ存在量IPの同種の量で割ってから、標準IP効率で割った比として計算することができる。結果の値は、タンパク質又はエピトープ密度(PD)(タンパク質バリアント密度(PVD)としても知られる)又はタンパク質修飾密度(PMD)である。
【数1】
【0071】
プルダウン実験の分析に挑戦する別の問題は、プルダウンアッセイに用いられる親和性試薬のオフターゲット特異性に起因する予測の精度が低いことである。「偽陽性」と「オフターゲット」という用語は同義語であり、無差別に又は非特異的に又は誤った結果として親和性試薬に接触するエピトープを指す。「真陽生」と「オンターゲット」という用語は同義語であり、関心エピトープ又は正しい結果を指す。
【0072】
偽陽性エピトープシグナルの有病率は、プルダウンごとに異なり、親和性試薬の品質(目的のエピトープに対するその固有の結合親和性対他の関連エピトープに対するその親和性)、ネイティブクロマチンにおけるオンターゲットエピトープの存在量対オフターゲットエピトープの存在量、プルダウンにおける親和性試薬の容量とDNA-タンパク質複合体の負荷レベルの比、及びプルダウンが実行される他の条件に依存する。異なる親和性試薬の場合、オンターゲットとオフターゲットの結合の両方が見かけのChIPシグナルに様々な程度で寄与するが、従来のChIPを用いた所定の実験内でどちらのソースが寄与するかは不明である。オフターゲット結合の存在量についての知識がない場合、観察されたエピトープ存在量が有意であるかどうかを判断することができず、医療診断や研究でプルダウンを利用することが実用的ではなくなる。発明者らは、インサイチュでのプルダウンアッセイにおいて偽陽性及び真陽生のエピトープのIP効率を定量化する方法を見出した。これにより、陽性予測値(PPV)を容易に計算できるので、データ解釈の精度が向上する。PPVにより、特定の信頼水準でのエピトープの最小存在量の推定を真陽生と見なすことができる。
【0073】
IP効率及び標準IP効率を計算する前述の方法を用いて、陽性予測値(PPV)(精度(Precision)とも呼ばれる)を計算することができる。PPVの知識があると、タンパク質密度の違いが有意であるかどうかの推定が可能になるので、データ分析が合理化される。これは、現在利用可能な方法や技術では達成することができない。
【数2】
【0074】
ηTPは真陽生エピトープのIP効率であり、aは真陽生エピトープの所定の重みであり、ηFPは偽陽性エピトープ(オフターゲットエピトープとしても知られる)のIP効率であり、βは偽陽性エピトープの重みである。事前に重量分布が分からない場合、α=β=1である。この方程式には他にも変形があり、偽陽性と真陽生のエピトープの有病率に関する知識を他の用途に用いることができる。
【0075】
ChIPを較正するには、外部標準を用いたグローバルヒストン修飾密度較正と直接内部標準較正の2つの代替方法がある。この研究で主に採用された相対内部標準アプローチのように、これら2つは、「ヒストン修飾密度」単位で表される結果を生成することができ、これは、所定の遺伝子座において利用可能な他の全てのエピトープに対するプローブされたエピトープの見かけの比に等しい。
【0076】
グローバルヒストン修飾密度較正は、ヒストンの量に対する修飾の総比の測定に依存し、例えば、K4がトリメチル化されている全てのH3のパーセンテージを把握する。質量分析又は定量的イムノブロット測定から導き出されるこのグローバルヒストン修飾密度は、任意の所定の遺伝子座のインプット深度を補正した全てのIPピーク間で再分配することができる。この方法の欠点は、グローバル存在量測定を行う際のかなりのエラー(例えば、MSの精度に加えて、おそらく修飾の全ての潜在的な形式を観察できないという曖昧さ)とは別に、ChIPで用いられるのと同じヌクレオソームサンプルから、直交方によるこのような外部測定が実施される必要があることであり、両方の手法でのサンプル処理の損失は、かなりの誤差の原因である。特に、IP-効率が100%になることはない(実際には、これはかなり小さい可能性がある)ので、効率が理論上の最大値から逸脱する度合いは、見かけのHMDについて相応に暴騰した値に反映されることになる。
【0077】
直接内部標準較正は、スパイクされたバーコードヌクレオソーム標準のタグカウントをChIPプロセスを通して測定し、インプットの各内部標準ラダーメンバーの正確なモル濃度を把握して、元のサンプルにおいてプローブされたエピトープの絶対モル存在量を推定する。この種類の較正は、小球菌ヌクレアーゼ消化を受ける核の数をカウントする精度と、この十分に定量化された数から完全に断片化されたクロマチン単離株に至るまでの偏った損失によって制限される。高度に最適化された消化及び単離の条件下で、消化された核から総核酸の80%を少ししか回収しないので、偏ったゲノム回収に起因するいくつかの系統誤差がある(Henikoff他、Nat.Rev.Genet.9:15(2009年))。
【0078】
本実施形態の更に別の利点は、以下の行列方程式A*x=bを解くことにより、ここでヒストン修飾密度の例で提示された偽陽性エピトープシグナルから真陽生エピトープシグナルをデコンボリューションする能力である。指示のデータセットについて、CAP-ChIP及びSNAP-ChIP-seqトラックは、以下の行列方程式A*x=bを解くことにより、オフ特異性について修正された。
【0079】
本発明の別の実施形態は、以下の行列方程式A*x=bを解くことにより、ここで提示されるヒストン修飾密度の例である、偽陽性エピトープシグナルから真陽生エピトープシグナルをデコンボリューションする方法を説明する。
【数3】
ここで、xは修正されたHMDスコアの行列、Aは補正因子の行列、bは補正されていないHMDスコアの行列である。ここで、tは、「a」から「z」のヒストンマーク(下付き文字)のセットからヒストンマークに向かう特異性についての補正因子である(抗体を用いる免疫沈降では、「a」から「z」のヒストンマーク(上付き文字)のセットからヒストンマークに向かう);HMDは、1番目からn番目の遺伝子座から所定のヒストンマーク(「a」から「z」)のヒストン修飾密度である;HMD(Cor)は、1番目からn番目の遺伝子座から所定のヒストンマークの、補正されたヒストン修飾密度である。
【数4】
ここで、tは、「a」から「z」のヒストンマーク(下付き文字)のセットからヒストンマークに向かう特異性についての補正因子である(抗体を用いる免疫沈降では、「a」から「z」のヒストンマーク(上付き文字)のセットからヒストンマークに向かう);HMDは、1番目からn番目の遺伝子座から所定のヒストンマーク(「a」から「z」)のヒストン修飾密度である;HMD(Cor)は、1番目からn番目の遺伝子座から所定のヒストンマークの、補正されたヒストン修飾密度である。
【数5】
ここで、
【数6】
及び
【数7】
は、IP又はインプットの所定のバーコードの存在量を指し、上付き文字は、抗体が生成されたヒストンマークを指し、下付き文字は、プルダウンされた半合成ヌクレオソーム上のマークを指す。
【0080】
従来のChIPアッセイが臨床で採用されなかった主な理由は、微妙な取り扱いの違いと様々な抗体特異性を理由に再現性がないことが多く、IPの濃度%が実験ごとに大きく異なり、不偏比較に問題があり信頼性が低いことである。ばらつきに敏感なChIPのステップを受ける内部標準のおかげで、CAP-ChIPとSNAP-ChIPは、結果の複製と信頼性の点ではるかにロバストであり、また、HMDは普遍的な生体関連尺度であり、明確に定義された内部標準との直接のインサイチュ比較によって作成されるので、数値を容易に比較することができる。
【0081】
ヒストン修飾及び他のエピジェネティックメカニズムは、遺伝子活性及び細胞プロセスを調節するために重要である。異なるヒストン修飾は、転写、DNA複製、DNA修復等の異なるプロセスを制御する。これらの修飾のいずれかの制御解除は、遺伝子発現のバランスをシフトさせ、異常なエピジェネティックパターンと細胞異常をもたらす。例えば、様々な癌においてヒストン翻訳後修飾とバリアントの変化が検出されており、一部の症例では、異常な修飾パターンが疾患のドライバーであることが知られている(Daigle他、Cancer Cell 20:53(2011年);Chi他、Nat.Rev.Cancer 10:457(2010年))。
【0082】
本発明は、ヒストン翻訳後修飾、転写後修飾及び変異(患者(例えばヒトの患者)の癌を含む)の変化に関連する疾患の診断、予後、分類、疾患リスクの予測、再発の検出、治療の選択及び治療効果の評価に使用することができる。そのような分析は、患者細胞又は人工多能性幹細胞のエクスビボ培養と組み合わせて、真の多能性幹細胞を生成するための所定の脱分化プロトコル、又は幹細胞を特定の細胞種に分化させるためのプロトコルの適合性を評価するのにも役立つ。
【0083】
特定のヒストンPTM若しくは変異の有無又はHMDに基づく診断、予後、リスク評価、分類、再発の検出又は治療の選択において、PTM又は変異の量は、ある診断、予後、リスク評価、分類等を別のものと区別する閾値と比較することができる。例えば、閾値は、所望のレベルの感度と特異性で、癌サンプルと正常な生検サンプルを適切に区別するヒストンメチル化の程度を表すことができる。ICe-ChIPを用いると、使用する抗体や取扱い条件によって閾値が変化することがない。閾値又は範囲は、ICe-ChIPを用いて、疾患サンプル及び正常サンプルで特定の関心ヒストンPTMを測定してから、癌サンプルの少なくとも過半数を非癌サンプルの過半数から区別する値を決定することによって、決定することができる。
【0084】
本発明の方法に用いられる生体サンプルは、任意の適切なサンプルであってよい。生体サンプルは、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、精液、前立腺液、乳頭吸引液、涙液、汗、糞、頬スワブ、脳脊髄液、細胞溶解物サンプル、羊水、消化液、生検組織、リンパ液又は脳脊髄液であってよい。
【0085】
一部の実施形態では、生体サンプルは細胞を含み、クロマチンは細胞から単離される。特定の実施形態では、細胞は、ヒストン翻訳後修飾又はDNA修飾の変化に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官に由来する細胞、例えば疾患細胞である。一部の実施形態では、細胞は、ヒストンにおける変異に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官に由来する細胞、例えば疾患細胞である。細胞は、生検、吸引、外科手術等、当技術分野において既知の任意の手段によって、疾患器官又は疾患組織から得ることができる。
【0086】
他の実施形態では、細胞は、ヒストン翻訳後修飾又はDNA修飾の変化に関連する、又はヒストンの変異に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官に由来する細胞ではない。細胞は、例えば、疾患細胞の代理として機能する細胞であってよい。細胞は、例えば、生検等の複雑な又は痛みを伴う手順を必要とせずに得ることができる、疾患細胞よりも容易に入手可能な細胞であってよい。適切な細胞の例として、末梢血単核球等が挙げられる。
【0087】
一部の実施形態では、生体サンプルは、血中遊離ヌクレオソーム、例えば死にかけている細胞から放出されたヌクレオソームを含む。特定の実施形態では、血中遊離ヌクレオソームは、血液細胞由来であってよい。特定の実施形態では、血中遊離ヌクレオソームは、ヒストン翻訳後修飾又はDNA修飾の変化に関連する、又はヒストンの変異に関連する疾患又は障害の影響を受けた組織又は器官の細胞に由来してよい。
【0088】
対象は、本発明の方法が望まれるいかなる対象であってもよい。一部の実施形態では、対象は哺乳類、例えばヒトである。一部の実施形態では、対象は、マウス、ラット、イヌ又はサル等の実験動物、例えば疾患の動物モデルである。特定の実施形態では、対象は、疾患又は障害を有すると診断された又は有すると疑われるものであってよい。一部の実施形態では、対象は、遺伝学、家族歴、毒素への曝露等により、疾患又は障害を発症するリスクがあるものであってよい。
【0089】
特定の実施形態では、複数の標準がライブラリに追加される。一部の実施形態では、複数の標準がライブラリに追加され、各標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、バーコード識別子配列は、ライブラリに追加された標準の濃度を示す濃度パラメータをコードし、同等の濃度を有する標準がライブラリに追加される。一部の実施形態では、各PTM又は変異は、2つ以上の標準(例えば2、3、4、5、6、7、8、9又は10)によって表され、それぞれ同じ又は類似の濃度である。任意に、重複する標準にはそれぞれ、例えば内部標準として用いられる異なるバーコード識別子配列がある。
【0090】
一部の実施形態では、複数の標準がライブラリに追加され、各標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、バーコード識別子配列は、ライブラリに追加された標準の濃度を示す濃度パラメータをコードし、少なくとも2つの異なる濃度を有する標準がライブラリに追加される。一部の実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9又は10以上の異なる濃度の標準が追加される。任意に、各濃度での重複する標準は、それぞれ、例えば内部標準として用いられる異なるバーコード識別子配列を有する。
【0091】
特定の実施形態では、複数の標準は、(i)1つ以上のオフターゲットエピトープ及び(ii)オフターゲットエピトープ同一性とオフターゲットエピトープを示す濃度パラメータとをコードする標準分子バーコードを含む再構成ヌクレオソームを含む標準を更に含んでよい。
【0092】
一部の実施形態では、本方法は更に、オフターゲットエピトープの1つ以上の捕捉効率に基づいて、親和性試薬のオフターゲット捕捉の特異性を決定するステップと、オフターゲット捕捉の特異性に基づいて、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を補正するステップとを含む。
【0093】
エピトープは、定量化及び/又はモニタリングが望まれるコアヒストン上の任意のエピトープであってよい。一部の実施形態では、エピトープは、翻訳後修飾又はタンパク質アイソフォームである。一部の実施形態では、コアヒストンのエピトープは、例えば、セリン及びアラニンのN-アセチル化;セリン、スレオニン及びチロシンのリン酸化;リジンのN-アシル化(例えばクロトニル化又はブチル化);リジンのN6-メチル化、N6,N6-脱メチル化、N6,N6,N6-トリメチル化;アルギニンのオメガ-N-メチル化、対称脱メチル化、非対称脱メチル化;アルギニンのシトルリン化;リジンのユビキチン化;リジンのSUMO化;セリン及びスレオニンのO-メチル化;セリン、スレオニン又はチロシンのリン酸化;アルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸のADP-リボシル化、及びこれらの任意の組合わせから成る群から選択される、少なくとも1つの翻訳後アミノ酸修飾を含む。修飾は、表1(a)~1(f)に列挙されているもののいずれかであってよい(単独で、又は任意の組合わせで)。
【0094】
一部の実施形態では、エピトープはコアヒストンの変異であり、例えば疾患又は障害に関連する変異である。一部の実施形態では、変異は発癌性変異であり、例えばH3K4M、H3K9M、H3K27M、H3G34R、H3G34V、H3G34W、H3K36M及びそれらの任意の組合わせ等を含む変異である。H3変異体は、H3の任意のバリアント骨格、例えばH3.1、H3.2又はH3.3に基づいてよい。
【0095】
特定の実施形態では、本発明の方法は更に、
ドープライブラリのゲノム遺伝子座におけるコアヒストンの量を決定するステップと、
ドープライブラリにおける標準の量を決定するステップと、
を含んでよい。
【0096】
一部の実施形態では、ドープライブラリのゲノム遺伝子座におけるコアヒストンの量を決定するステップは、
ドープライブラリに第2の親和性試薬を追加して、第2のエピトープを含むヌクレオソームの量を回収するステップであり、第2のエピトープは、コアヒストン上に存在するインバリアントエピトープである、ステップと、
第2のエピトープを含むヌクレオソームの回収量におけるポリヌクレオチドの量を決定するステップと、
を含んでよい。
【0097】
一部の実施形態では、ドープライブラリにおける標準の量を決定するステップは、
再構成ヌクレオソームの量を回収するステップであり、再構成ヌクレオソームは第2のエピトープを含む、ステップと、
第2のエピトープを含む再構成ヌクレオソームの回収量における標準分子の量を決定するステップと、
を含んでよい。
【0098】
これらの実施形態では、親和性試薬は、エピトープに向けられた抗体若しくは断片又はそれらのバリアント、又は非抗体試薬であってよく、第2の親和性試薬は、第2のエピトープに向けられた抗体若しくは断片又はそれらのバリアント、又は非抗体試薬であってよい。
【0099】
本発明の別の態様は、疾患又は障害を有する対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化する。
【0100】
エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する方法についての上記詳細は、この方法にも当てはまる。
【0101】
本発明の更なる態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)ステップa)~g)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングする。
【0102】
エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する方法についての上記詳細は、この方法にも当てはまる。
【0103】
本方法のステップは、エピジェネティック修飾又は変異のステータスの変化をモニタリングするために、必要に応じて何回でも、例えば2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、25回、50回又は100回又はそれ以上、繰り返すことができる。本方法は、定期的なスケジュール(例えば毎日、毎週、毎月、毎年)又は必要に応じて、繰り返すことができる。本方法は、例えば、対象の治療的処置の前、最中及び/又は後に;対象の疾患又は障害の診断の後に;対象の疾患又は障害の診断を決定することの一部として;対象に疾患又は障害の発症のリスクがあるという特定の後に、又は、エピジェネティック修飾又は変異の潜在的な変化をモニタリングすることが望ましいその他の状況において、繰り返されてよい。
【0104】
本発明の追加の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングするための方法に関し、方法は、対象の生体サンプルからクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするステップを含み、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)エピジェネティック療法又は変異療法の開始後に、ステップa)~g)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングする。
【0105】
エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する方法についての上記詳細は、この方法にも当てはまる。
【0106】
エピジェネティック療法は、タンパク質(例えばヒストン)又はDNAのエピジェネティック状態を変化させるように設計されたものである。エピジェネティック療法の一例として、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)の治療、又は血液系腫瘍及び固形腫瘍(肺癌、乳癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、メラノーマ、膠芽腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫等)の治療のための臨床試験に用いられるリジン脱アセチル化酵素阻害剤(以前はヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と呼ばれた)(例えばボリノスタット(スベロイルアニリドヒドロキサム酸)、CI-994(タセジナリン)、MS-275(エンチノスタット)、BMP-210、M344、NVP-LAQ824、LBH-529(パノビノスタット)、MGCD0103(モセチノスタット)、PXD101(ベリノスタット)、CBHA、PCI-24781、ITF2357、バルプロ酸、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム)が挙げられる。エピジェネティック療法の更なる例は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばエピガロカテキン-3-ガレート、ガルシノール、アナカルド酸、CPTH2、クルクミン、MB-3、MG149、C646、ロミデプシン)である。エピジェネティック療法の別の例は、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び慢性骨髄単球性白血病の治療用に承認されており、固形腫瘍の治療用に臨床実験中である、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばアザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、カフェ酸、クロロゲン酸、エピガロカテキン、ヒドララジン、プロカインアミド、プロカイン、RG108)である。他のエピジェネティック療法としては、リジンメチルトランスフェラーゼ(例えばピノメトスタット、タゾメトスタット、CPI-1205);リジンデメチラーゼ(例えばORY1001);アルギニンメチルトランスフェラーゼ(例えばEPZ020411);アルギニンデイミナーゼ(例えばGSK484);及びイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(例えばエナシデニブ、イボシデニブ)等が挙げられる。Fischle他、ACS Chem.Biol.11:689(2016年);DeWoskin他、Nature Rev.12:661(2013年);Campbell他、J.Clin.Invest.124:64(2014年)及びBrown他、Future Med.Chem.7:1901(2015年)を参照されたい(各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる)。
【0107】
変異療法は、遺伝子(例えばヒストンをコードする)のヌクレオチド配列を変えるように設計された治療を含む。例として、遺伝子治療等が挙げられる。
【0108】
本方法のステップは、治療の有効性を監視するために、必要に応じて何度でも繰り返すことができる(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、25、50又は100回又はそれ以上)。本方法は、定期的なスケジュール(例えば毎日、毎週、毎月、毎年)で、又は必要に応じて、例えば、治療的処置が終了するまで繰り返すことができる。本方法は、例えば、対象の治療的処置の前、最中及び/又は後に(例えば処置の各実施後に)繰り返すことができる。一部の実施形態では、治療が効果的であることを本発明の方法が示すまで、治療は継続される。
【0109】
本発明の別の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象に適した治療法を、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて選択するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)コアヒストンのエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、適切な治療法を選択するステップと、
を含む。
【0110】
エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する方法についての上記詳細は、この方法にも当てはまる。
【0111】
本方法は、例えば、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有すると診断されたか又は有することが疑われる対象に適用することができる。エピトープのエピジェネティック状態又は変異状態の決定は、エピトープの状態が変更されており、エピジェネティック療法又は変異療法を対象に実施して、修飾を修正する必要があることを示すことができる。逆に、エピトープの状態が改変されていないという決定は、エピジェネティック療法又は変異療法が効果的であることが期待されず、回避されるべきであることを示し得る。例えば、あるゲノム遺伝子座が脱アセチル化されているという決定は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による治療が適切であり得ることを示すことができる。同様に、あるゲノム遺伝子座が高メチル化されているという決定は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤による治療が適切であり得ることを示すことができる。
【0112】
本発明の更なる態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象についての予後を、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて決定するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)コアヒストンのエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、対象の予後を決定するステップと、
を含む。
【0113】
エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する方法についての上記詳細は、この方法にも当てはまる。
【0114】
一部の例では、エピトープのエピジェネティック状態又は変異状態は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害の予後を示す。よって、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有すると診断された又は有すると疑われる対象におけるエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態の決定は、対象の予後の決定に有用であり得る。当技術分野では、多くのそのような例が既知である。一例は、前立腺癌と、グルタチオンS-トランスフェラーゼP1(GSTP1)遺伝子プロモーター、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)遺伝子、遺伝子PITX2、C1orf114及びGABRE~miR-452~miR-224、並びに3遺伝子マーカーパネルAOX1/C1orf114/HAPLN3と13遺伝子マーカーパネルGSTP1、GRASP、TMP4、KCNC2、TBX1、ZDHHC1、CAPG、RARRES2、SAC3D1、NKX2-1、FAM107A、SLC13A3、FILIP1Lの高メチル化である。別の例は、前立腺癌とヒストンPTMS(前立腺腫瘍再発の有意に高いリスクに関連するH3K18Acetylation及びH3K4diMethylationの増加、腫瘍ステージと相関するH4K12Acetylation及びH4R3diMethylation、腫瘍再発のリスクのある低悪性度の前立腺癌患者に関連するH3K9diMethylation等)である。別の例は、乳癌患者の全生存率と、遺伝子CREB5、EXPH5、ZNF775、ADCY3及びADMA8のCpGのメチル化状態との関連である。別の例は、膠芽腫と、EGFR、PTEN、NF1、PIK3R1、RB1、PDGFRA、QKI等の遺伝子のイントロン領域の高メチル化である。更なる例は、結腸癌の予後不良と、CNRIP1、FBN1、INA、MAL、SNCA及びSPG20遺伝子のプロモーターのメチル化状態である。
【0115】
本発明の別の態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
h)ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害と相関させるステップと、
を含み、それにより、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定する。
【0116】
エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する方法についての上記詳細は、この方法にも当てはまる。
【0117】
この方法では、疾患組織の生体サンプルは、疾患又は障害と、決定された1つ以上のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態とを有する多数の患者から採取することができる。次に、当技術分野で周知の分析技術を用いて、エピトープ状態と、発生、ステージ、サブタイプ、予後等の間の相関を特定することができる。
【0118】
本発明の方法のいずれにおいても、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害は、癌、中枢神経系(CNS)障害、自己免疫疾患、炎症性障害又は感染性疾患であり得る。
【0119】
癌は、聴神経腫、急性顆粒球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺癌、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、退形成星細胞腫、血管肉腫、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、気管支原性肺癌、子宮頸癌、子宮頸部過形成、脊索腫、絨毛癌、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺腫(cystadenosarcoma)、胎児性癌、子宮内膜癌、内皮肉腫、上衣腫、上皮癌、食道癌、本態性血小板血症、ユーイング肉腫、線維肉腫、泌尿生殖器癌、膠芽腫、神経膠腫、神経膠肉腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、血管芽腫、肝癌、ホジキン病、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ腫、悪性カルチノイド腫瘍、悪性高カルシウム血症、悪性メラノーマ、悪性膵頭部インスリノーマ、肥満細胞腫、髄様癌、髄芽腫、メラノーマ、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄腫、粘液腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞性肺癌、乏突起神経膠腫、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腺癌、乳頭状肉腫、松果体腫、真性多血症、原発性脳腫瘍、原発性マクログロブリン血症、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、脂線肉腫、セミノーマ、皮膚癌、小細胞肺癌、軟部肉腫、扁平上皮癌、胃癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣癌、咽喉癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍等、細胞の良性又は悪性の異常な成長であってよい。
【0120】
CNS障害は、遺伝性障害、神経変性障害、精神障害及び腫瘍を含む。CNSの疾患の例としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、カナバン病、リー病、レフサム病、トゥレット症候群、原発性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症、進行性筋萎縮症、ピック病、筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、ビンスワンガー病、脊髄又は頭部の負傷による外傷、テイ‐サックス病、レッシュ・ナイハン症候群、てんかん、脳梗塞、気分障害を含む精神障害(例えば鬱、双極性感情障害、持続性抑うつ障害、二次気分障害、狂躁、躁病)、統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様障害、薬物依存(例えばアルコール又は他の物質への依存)、ノイローゼ(例えば不安、強迫性障害、身体表現性障害、解離性障害、悲嘆、産後うつ病)、精神病(例えば幻覚妄想、特定不能の精神病性障害(Psychosis NOS))、認知症、老化、パラノイア、注意欠陥障害、精神性的障害、睡眠障害、疼痛障害、摂食障害(例えば肥満、悪液質、神経性無食欲症及び神経性大食症)、網膜、後方管(posterior tract)及び視神経を含む眼科障害(例えば網膜色素変性、糖尿病性網膜症及び他の網膜変性疾患、ぶどう膜炎、加齢黄斑変性、緑内障)、並びにCNSの癌及び腫瘍(例えば脳下垂体腫瘍)等が挙げられる。
【0121】
自己免疫性及び炎症性の疾患及び障害としては、心筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、亜急性細菌性心内膜炎、抗糸球体基底膜抗体病、間質性膀胱炎、ループス腎炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、アンチシンセターゼ症候群、副鼻腔炎、歯周炎、アテローム性動脈硬化、皮膚炎、アレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、好酸球性肺炎、好酸球性食道炎、好酸球増多症候群、移植片対宿主病、アトピー性皮膚炎、結核、喘息、慢性消化性潰瘍、円形脱毛症、自己免疫性血管浮腫、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性蕁麻疹、水疱性類天疱瘡、瘢痕性類天疱瘡、疱疹状皮膚炎、円板状エリテマトーデス、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、妊娠性類天疱瘡、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病、モルフェア、尋常性天疱瘡、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹、ムッカ・ハーベルマン病、乾癬、全身性強皮症、白斑、アジソン病、自己免疫性多内分泌腺症候群1型、自己免疫性多内分泌腺症候群2型、自己免疫性多内分泌腺症候群3型、自己免疫性膵炎、1型糖尿病、自己免疫性甲状線炎、オード甲状腺炎、グレーブス病、自己免疫性卵巣炎、子宮内膜症、自己免疫性精巣炎、シェーグレン症候群、自己免疫性腸症、セリアック病、クローン病、過敏性腸症候群、憩室炎、顕微鏡的大腸炎、潰瘍性大腸炎、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性リンパ増殖症候群、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性血小板減少性紫斑病、寒冷凝集素症、本態性混合型クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、悪性貧血、赤芽球ろう、血小板減少症、有痛脂肪症、成人スチル病、強直性脊椎炎、CREST症候群、薬剤誘発性ループス、若年性特発性関節炎、好酸球性筋膜炎、フェルティ症候群、IgG4関連疾患、若年性関節炎、ライム病(慢性)、混合性結合組織病、回帰性リウマチ、パリー・ロンバーク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、乾癬性関節炎、反応性関節炎、再発性多発軟骨炎、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュニッツラー症候群、全身性エリテマトーデス、未分化結合組織病、皮膚筋炎、線維筋痛症、筋炎、重症筋無力症、ニューロミオトニア、傍腫瘍性小脳変性症、多発性筋炎、急性散在性脳脊髄炎、急性運動性軸索型ニューロパチー、抗NMDA受容体脳炎、バロー同心円性硬化症、ビッカースタッフ脳炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、ギラン・バレー症候群、橋本脳症、特発性炎症性脱髄疾患、ランバート・イートン筋無力症候群、多発性硬化症、オシュトラン症候群、小児自己免疫性溶連菌関連性精神神経障害(PANDAS)、進行性炎症性ニューロパチー、下肢静止不能症候群、スティッフパーソン症候群、シデナム舞踏病、横断性脊髄炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性ぶどう膜炎、コーガン症候群、グレーブス眼症、中間部ぶどう膜炎、木質性結膜炎、モーレン潰瘍、視神経脊髄炎、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、強膜炎、スザック症候群、交感性眼炎、トロサ・ハント症候群、自己免疫性内耳疾患、メニエール病、ベーチェット病、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、巨細胞性動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症、IgA血管炎、川崎病、白血球破砕性血管炎、ループス血管炎、リウマチ性血管炎、顕微鏡的多発血管炎、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛、蕁麻疹様血管炎、血管炎、原発性免疫不全等が挙げられる。
【0122】
「感染性疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、感染性病原体による感染に関連する任意の疾患を指す。感染性病原体の例としては、ウイルス及び微生物(例えば細菌、寄生虫、原生動物、クリプトスポリジウム)が挙げられる。ウイルスとしては、A型、B型、C型、D型、E型、F型、G型等の肝炎を含むヘパドナウイルス科;ヒトC型肝炎ウイルス(HCV)、黄熱ウイルス及びデング熱ウイルスを含むフラビウイルス科;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV1及びHTLV2)を含むレトロウイルス科;単純ヘルペスウイルス(HSV-1及びHSV-2)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)及びヘルペスBウイルスを含むヘルペスウイルス科;ヒトパピローマウイルスを含むパポバウイルス科;狂犬病ウイルスを含むラブドウイルス科;RSウイルスを含むパラミクソウイルス科;ロタウイルスを含むレオウイルス科;ハンタウイルスを含むブニヤウイルス科;エボラウイルスを含むフィロウイルス科;アデノウイルス科;パルボウイルスB19を含むパルボウイルス科;ラッサウイルスを含むアレナウイルス科;インフルエンザウイルスを含むオルトミクソウイルス科;オーフウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、天然痘ウイルス及びサル痘ウイルスを含むポックスウイルス科;ベネズエラウマ脳炎ウイルスを含むトガウイルス科;重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス等のコロナウイルスを含むコロナウイルス科;ポリオウイルスを含むピコルナウイルス科;ライノウイルス;オルビウイルス;ピコルナウイルス;脳心筋炎ウイルス(EMV);パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ヒトパピローマウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌ伝染性肝炎ウイルス、ネコカリシウイルス、ネコ鼻気管炎ウイルスウイルス、TGEウイルス(ブタ)、口蹄疫ウイルス、サルウイルス5、ヒトパラインフルエンザウイルス2型、ヒトメタニューモウイルス、エンテロウイルス、現在知られている又は後で特定される他の病原性ウイルス等が挙げられる(例えばFundamental Virology、Fields他編、第3版、Lippincott-Raven、ニューヨーク、1996年を参照、病原ウイルスの教示について、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0123】
病原微生物としては、リケッチア、クラミジア、クラミドフィラ、マイコバクテリア、クロストリジア、コリネバクテリア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、レジオネラ、シゲラ、サルモネラ、病原性大腸菌属、ボルダテラ、ナイセリア、トレポネーマ、バチルス、ヘモフィルス、モラクセラ、ビブリオ、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、カンピロバクター属、ボレリア属、レプトスピラ属、エールリヒア属、クレブシエラ属、シュードモナス属、ヘリコバクター属、現在知られている又は後で特定される他の病原微生物等が挙げられる(例えばMicrobiology、Davis他編、第4版、Lippincott、ニューヨーク、1990年を参照、病原微生物の教示について、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。微生物の具体例としては、ヘリコバクター・ピロリ、クラミジア・ニューモニエ、クラミジア・トラコマチス、ウレアプラズマ・ウレアリチカム、マイコプラズマ・ニューモニエ、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、肺炎レンサ球菌、緑色連鎖球菌、エンテロコッカス・フェカリス、髄膜炎菌、淋菌、梅毒トレポネーマ、炭疽菌、チフス菌、コレラ菌、ペスト菌(Yersinia pestis)、緑膿菌、カンピロバクター・ジェジュニ、クロストリジウム・ディフィシル、ボツリヌス菌、結核菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、軟性下疳菌、ジフテリア菌、百日咳菌、パラ百日咳菌、気管支敗血症菌、インフルエンザ菌、リステリア・モノサイトゲネス、赤痢菌、アナプラズマ・ファゴサイトフイルム、腸管毒素原性大腸菌、ビルハルツ住血吸虫等が挙げられる。
【0124】
一部の実施形態では、疾患又は障害として、肥満、糖尿病、心臓疾患、自閉症、脆弱X症候群、ATR-X症候群、エンジェルマン症候群、プラダ・ウィリ症候群、ベックウィズヴィーデマン症候群、レット症候群、ルビンスタイン・タイビ症候群、コフィン・ローリー症候群、免疫不全-動原体不安定性-顔面奇形症候群、α-サラセミア、白血病、コーネリアデラング症候群、歌舞伎症候群、進行性全身性硬化症、心肥大等が挙げられる。
【0125】
本発明の更なる態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤をスクリーニングする方法に関し、方法は、薬剤の存在下及び不在下において、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップを含み、
ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップは、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルのクロマチンからネイティブヌクレオソームのライブラリを作製するステップであり、ライブラリは、エピトープを含むコアヒストンを有するヌクレオソームと、ゲノム遺伝子座を示すヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとを含む、ステップと、
c)ライブラリに標準を追加して、ドープライブラリを作製するステップであり、標準は、(i)エピトープを含む標準ヒストン又はヒストン断片と(ii)ヌクレオソームポジショニング配列及びバーコード識別子配列を含む標準ポリヌクレオチドとを有する再構成ヌクレオソームを備え、標準ヒストン又はヒストン断片と標準ポリヌクレオチドは、安定したタンパク質-DNA会合を形成する、ステップと、
d)ドープライブラリに親和性試薬を追加して、エピトープを含むネイティブヌクレオソームと標準の量をキャプチャするステップと、
e)エピトープを含むキャプチャされたネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量と、ドープライブラリからのインプット量におけるネイティブヌクレオソームに関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて相対ゲノム存在量を決定するステップと、
f)キャプチャされた標準に関連するバーコード識別子配列の量と、ドープライブラリからのインプット量における標準に関連する所定のヌクレオチド配列の量とを比較することにより、エピトープについて標準キャプチャ効率を決定するステップと、
g)相対ゲノム存在量を標準キャプチャ効率と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるコアヒストンのエピトープの密度を決定するステップと、
を含み、薬剤の存在下及び不在下におけるゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態の変化により、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤が特定される。
【0126】
エピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化する方法についての上記詳細は、この方法にも当てはまる。
【0127】
エピジェネティック修飾又は変異を増大又は減少させる薬剤を特定するために、スクリーニング法を用いることができる。一部の実施形態では、検出される増大又は減少は統計的に有意であり、例えば少なくともp<0.05、例えばp<0.01、0.005又は0.001である。他の実施形態では、検出される増大又は減少は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上である。
【0128】
本発明によれば、任意の関心化合物をスクリーニングすることができる。適切な試験化合物としては、有機分子及び無機分子が挙げられる。適切な有機分子としては、小分子(約1000ダルトン未満の化合物)、ポリペプチド(酵素、抗体及び抗体断片を含む)、炭水化物、脂質、補酵素、核酸分子(DNA、RNA、キメラとその類似体を含む)、ヌクレオチドとヌクレオチド類似体等が挙げられる。
【0129】
更に、本発明の方法は、化合物ライブラリ(例えば小分子ライブラリ、コンビナトリアル化合物ライブラリ、ポリペプチドライブラリ、cDNAライブラリ、アンチセンス核酸のライブラリ等)、又はポリペプチド及び核酸アレイ等の化合物のアレイ化されたコレクションをスクリーニングするために実施することができる。
【0130】
任意の適切なスクリーニングアッセイ形式、例えばハイスループットスクリーニングを用いることができる。
【0131】
本方法はまた、クロマチンにおける特定のゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を改変する薬剤として特定された薬剤を特性評価するために用いることができる。特性評価、例えば前臨床特性評価は、例えば有効濃度の決定、有効投与計画の決定、並びに薬物動態学及び薬力学の測定を含んでよい。
【0132】
一部の実施形態では、定量的クロマチンアッセイは、テザー酵素を用いたクロマチンマッピングアッセイである。
よって、本発明の一態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープでのエピジェネティック修飾又は変異の存在を検出及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を、ヌクレオソーム標準に対してその存在量を比較することによって検出及び定量化するステップと、
を含む。
【0133】
本発明の別の態様は、疾患又は障害を有する対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップ、ヌクレオソーム標準は以下を含む:
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を、ヌクレオソーム標準に対してその存在量を比較することによって検出及び定量化するステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定及び定量化する。
【0134】
本発明の更なる態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップ
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップ
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップ
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)ステップa)~j)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、ゲノム遺伝子座におけるエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングする。
【0135】
本発明の追加の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングするための方法に関し、方法は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態の変化を経時的にモニタリングするステップを含み、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)ステップa)~j)を少なくとも1回繰り返すステップと、
を含み、それにより、対象におけるエピジェネティック療法又は変異療法の有効性をモニタリングする。
【0136】
本発明の別の態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象に適した治療法を、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて選択するための方法に関し、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)コア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、適切な治療法を選択するステップと、
を含む。
【0137】
本発明の更なる態様は、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害を有する対象についての予後を、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて決定するための方法に関し、方法は、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)コア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、対象の予後を決定するステップと、
を含む。
【0138】
本発明の追加の態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態に基づいて、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定するための方法に関し、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
k)ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害と相関させるステップと、
を含み、それにより、エピジェネティック修飾又は変異に関連する疾患又は障害のバイオマーカーを特定する。
【0139】
本発明の別の態様は、対象の生体サンプルからのクロマチンの特定のゲノム遺伝子座におけるコア要素のエピトープのエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤をスクリーニングする方法に関し、方法は、薬剤の存在下及び不在下において、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップを含み、
ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を決定するステップは、
a)対象から生体サンプルを単離するステップと、
b)生体サンプルからのエピトープを含むコア要素を有する細胞、核、オルガネラ又は組織を、固体支持体に結合させるステップと、
c)細胞、核、オルガネラ又は組織を透過処理するステップと、
d)エピトープを含むコア要素を有する組換えヌクレオソーム標準を固体支持体に結合させるステップであり、ヌクレオソーム標準は、
a.ヒストンH2A、H2B、H3及びH4並びに任意にリンカーヒストンH1の各々の2つのコピーを含むタンパク質8量体と、
b.DNA分子であり、
i.ヌクレオソームポジショニング配列、
ii.DNAバーコード、
iii.ヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列を含むDNA分子と、
c.DNA分子に連結され、結合パートナーに特異的に結合する結合メンバーとを有する、ステップと、
e)c)の透過処理された細胞、核、オルガネラ又は組織と、d)の結合されたヌクレオソーム標準とを、エピトープに特異的に結合する親和性試薬に接触させるステップと、
f)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに連結された親和性試薬結合薬剤を追加するステップと、
g)ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼが、細胞、核、オルガネラ又は組織のDNAと、ヌクレオソーム標準のヌクレアーゼ認識配列又はトランスポザーゼ認識配列とを切断できるようにするステップと、
h)切断されたDNAを分離するステップと、
i)切断されたDNAを特定するステップと、
j)相対ゲノム存在量をヌクレオソーム標準と比較することにより、ゲノム遺伝子座におけるエピトープの存在を検出及び定量化するステップと、
を含み、薬剤の存在下及び不在下におけるゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態の変化により、ゲノム遺伝子座のエピジェネティック状態又は変異状態を変更する薬剤が特定される。
【0140】
これらのテザー酵方法の各々について、クロマチン免疫沈降アッセイについての上記の説明が適用可能である。
【0141】
一部の実施形態では、DNA分子は、長さが約10~約80ヌクレオチド(約15~約40ヌクレオチド又は約15~約30等)である、ヌクレオソームポジショニング配列と結合メンバーとの間のリンカーを含み、リンカーは、ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼ認識配列を含む。
【0142】
本明細書で用いられる場合、「コア要素」は、ヒストン、核酸、転写因子、クロマチンリーダー、クロマチンリモデラー等(例えばライター、イレイサー)(例えばヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、SWI/SNF、ISWI)、ヌクレオソームに共有結合又は非共有結合された、又はヌクレオソームの一部である任意のタンパク質又は核酸である。
【0143】
ヌクレオソーム標準は、生体サンプルで検出されるものと同じ標的エピトープを含むことになる。ヌクレオソーム標準は、1つ又は複数の標的エピトープを含んでよい。ヌクレオソーム標準は、様々な濃度で存在してよい。
【0144】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼ認識配列は、小球菌ヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、緑豆ヌクレアーゼ、膵臓デオキシリボヌクレアーゼI、酵母HOエンドヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ等の、エンドデオキシリボヌクレアーゼによって認識される。一部の実施形態では、認識配列は、ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼによって結合される特定の配列であってよい。一部の実施形態では、認識配列は、特定の配列に基づいてヌクレアーゼ又はトランスポザーゼによって認識されないが、好ましくはヌクレアーゼ又はトランスポザーゼに結合されるような特性を有する配列であってよい。一実施形態では、認識配列はA/Tリッチな領域である。
【0145】
一部の実施形態では、ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼ認識配列は、Tn5、Mu、IS5、IS91、Tn552、Ty1、Tn7、Tn/O、マリナー、Pエレメント、Tn3、Tn1O、Tn903等、トランスポザーゼによって認識される。
【0146】
一部の実施形態では、結合メンバーとその結合パートナーは、ビオチンとアビジン又はストレプトアビジン、ナノタグとストレプトアビジン、グルタチオンとグルタチオントランスフェラーゼ、抗原/エピトープと抗体、ポリヒスチジンとニッケル、ポリヌクレオチドと相補的ポリヌクレオチド、アプタマーとその特異的標的分子、Siタグとシリカ等の対合である。
【0147】
一部の実施形態では、結合メンバーは、DNA分子の5’及び/又は3’末端に連結される。
【0148】
一部の実施形態では、DNAバーコードは、約7~約30塩基対や約8~約20塩基対等、約6~約50塩基対の長さを有する。
【0149】
一部の実施形態では、ヌクレオソームの各ヒストンは、独立して完全に合成、半合成、又は組換えである。
【0150】
一部の実施形態では、ヒストン翻訳後修飾、変異及び/又はヒストンバリアント及び/又はDNA転写後修飾は、セリン及びアラニンのN-アセチル化;セリン、スレオニン及びチロシンのリン酸化;リジンのN-クロトニル化、N-アシル化;リジンのN6-メチル化、N6,N6-脱メチル化、N6,N6,N6-トリメチル化;アルギニンのオメガ-N-メチル化、対称脱メチル化、非対称脱メチル化;アルギニンのシトルリン化;リジンのユビキチン化;リジンのSUMO化;セリン及びスレオニンのO-メチル化、アルギニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸のADP-リボシル化;発癌性変異(例えばH3K4M、H3K9M、H3K27M、H3G34R、H3G34V、H3G34W又はH3K36M);5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-フォルミルシトシン、5-カルボキシシトシン、3-メチルシトシン等の転写後修飾;並びにヒストンバリアント(例えばH3.3、H2A.Bbd、H2A.Z.1、H2A.Z.2、H2A.X、mH2A1.1、mH2A1.2、mH2A2及びTH2B)等の翻訳後修飾から選択される。
【0151】
一部の実施形態では、ヌクレオソームはパネルの一部であってよく、パネルは、異なるヒストン翻訳後修飾、変異及び/又はヒストンバリアント及び/又はDNA転写後修飾を含む少なくとも2つのヌクレオソームを含む。特定の実施形態では、パネルの各ヌクレオソームは、異なるヒストン翻訳後修飾、変異及び/又はヒストンバリアントを含み、かつ/又は、DNA転写後修飾は、パネル内に同じ濃度で存在する。特定の実施形態では、パネルの各ヌクレオソームは、異なるヒストン翻訳後修飾、変異及び/又はヒストンバリアントを含み、かつ/又は、DNA転写後修飾は、パネルにおいて複数の濃度で存在し、各ヌクレオソームのDNAバーコードは、ヌクレオソームがパネル内に存在する当該濃度を示す。一部の実施形態では、パネルは更に、翻訳後修飾、変異若しくはヒストンバリアント及び/又はDNA転写後修飾を含まない合成ヌクレオソームを含む。
【0152】
一部の実施形態では、ヌクレオソームは、例えば2~10個のヌクレオソームを含む、ポリヌクレオソームの一部である。特定の実施形態では、ポリヌクレオソームはアレイの一部である。一部の実施形態では、アレイはアレイのプールの一部であり、各アレイは、固有のヒストン翻訳後修飾、変異若しくはヒストンバリアント及び/又はDNA転写後修飾を含む。
【0153】
一部の実施形態では、ステップ(f)のヌクレアーゼ又はトランスポザーゼは不活性であり、ステップ(g)は、例えばカルシウム等の活性化イオンを加えることにより、ヌクレアーゼ又はトランスポザーゼを活性化することを含む。
【0154】
一部の実施形態では、切断されたDNAを特定するステップは、切断されたDNAを増幅及び/又はシーケンシング、例えばqPCR、次世代シーケンシング又はナノストリングにかけることを含む。
【0155】
一部の実施形態では、本方法は更に、切断されたDNA中のDNAバーコードの配列に基づいて、ヌクレオソーム、パネル、ポリヌクレオソーム、アレイ又はプールの同一性を決定することを含む。
【0156】
上記の方法において、固体支持体は、例えばビーズ(例えば磁性ビーズ)又はウェルであってよい。
【0157】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法の1つを実施するための試薬を含む試薬及びキットを提供する。試薬は、適切なパッケージ又は容器に収容されてよい。キットは、例えばプルダウンアッセイ、クロマチン免疫沈降アッセイ又はクロマチンテザード酵素アッセイにおいて、真陽生エピトープ及び偽陽性エピトープの絶対定量化のために、本明細書に記載の標準を含む1つ以上の試薬を含んでよい。キットはまた、本明細書に記載されるような少なくとも1つの親和性試薬、例えば抗体又はその断片若しくはバリアントを含んでもよい。キットはまた、バーコード識別子配列をシーケンシングするための試薬(例えばプライマー、プローブ)を含んでよい。標準は、真陽生エピトープに対するネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを有してよい。キットはまた、偽陽性エピトープに対するエピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを備えた少なくとも1つの標準を含むこともできる。
【0158】
一部の実施形態では、標準は、ヒストン、ヒストンアイソフォーム、ヒストン翻訳後修飾、又はネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティとバーコード識別子配列を備えるヒストン変異で形成された半合成ヌクレオソームを含むDNA-タンパク質複合体を含む。様々な実施形態では、コアヒストン配列(当技術分野で既知である)の任意のバリアント、又は翻訳後修飾(表1(a)~1(f)に定義されるものを含む)は、エピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティが維持されるという推測の下で、ヒストン8量体を備えるヒストンに設置することができる。一実施形態では、標準のセットは、真陽生エピトープに対してエピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを備えたDNA複合体の単一の標準と、DNA-タンパク質複合体のネイティブプールに存在する様々な潜在的なオフターゲットエピトープ(偽陽性エピトープ)をカバーする、エピトープのネイティブ様の親和性、特異性及びアビディティを備えた複数の標準DNA-複合体とから成る。
【0159】
他の実施形態では、キットは、1つ以上の洗浄緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)及び/又は他の緩衝液をパッケージ又は容器に含んでよい。更に他の実施形態では、キットは、捕捉された薬剤の分離に必要な試薬、例えば固相捕捉試薬(例えば、第2の抗体又はタンパク質-Aに連結された常磁性粒子等)を含んでよい。キットはまた、捕捉された標準又はサンプルの量の測定に必要な試薬を含んでよい。
【0160】
キットが供給されるとき、異なる成分は、別々の容器に包装され、使用の直前に混合されてもよい。成分をこのように個別に包装すると、活性成分の機能を失うことなく、長期保管が可能となる。キットには教材が付属してもよい。説明書は、紙又は他の基材に印刷されてもよいし、かつ/又は、電子可読媒体として供給されてもよい。
【0161】
一部の実施形態では、キットは、例えば単一のヒストン又は複数のヒストンの、PTMの特定のクラスの異なる可能性の一部又は全部を表す標準のパネルを備えてよい(例えばリジンメチル化、リジンアシル化又はアルギニンメチル化)。パネルは、1つ以上の疾患に関連すると考えられる修飾の一部又は全部を含んでよい。一部の実施形態では、キットは、例えば単一のヒストン又は複数のヒストンの発癌性ヒストン変異等、ヒストン変異の様々な可能性の大部分又は全部を表す標準のセットを備えてよい。パネルは、親和性試薬の特異性を評価し、技術的なばらつきをモニタリングし、実験を正規化するために用いることができる。標準の回収を定量化することは、アッセイ(例えば次世代シーケンシング)の残りの部分に進むための停止/前進決定ポイントとしても用いることができる。
【0162】
一部の実施形態では、パネル内の各種が複数回含まれてよい。一部の実施形態では、各種は同じ濃度で複数回表される場合があり、種の反復ごとに内部制御の形式として、異なるバーコード識別子配列をもつ。一部の実施形態では、各種は同じ濃度で複数回表される場合があり、種の反復ごとに、標準の濃度を表す固有のバーコード識別子配列をもつ。そのような一連の濃度を用いて、アッセイの標準曲線を提供することができる。それぞれの濃度は複数回表される場合があり、種の反復ごとに、内部制御の形式として異なるバーコード識別子配列をもつ。
【0163】
標準のリジンメチル化パネルの一例は、それぞれ0、1、2又は3つのメチル基をもつパネルに潜在的に表されるH3K4、H3K9、H3K27、H3K36及びH4K20から選択されるPTMの一部又は全部を含む。一実施形態では、パネルには16の種があってよい(それぞれ1、2又は3つのメチル基と未修飾の標準をもつ5つのリジン残基)。一部の実施形態では、パネルは、内部制御の形式として異なるバーコード識別子配列をもつ各標準の複製を含んでよい。よって、パネルは、最大32の異なる種を含んでよい。一部の実施形態では、最大16の異なる標準の各々は、同じ又は異なる濃度で複数回表示される場合があり、各標準は、標準の濃度を表す固有のバーコード識別子配列をもつ。例えば、各標準は、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる濃度でパネルに存在してよく、各濃度は異なるバーコード識別子配列をもつ。よって、パネルは、8又は16の倍数、例えば合計で16、24、32、40、48、56、64、72、80、96、104、112、120、128、136、144、152又は160の種の固有の標準を含んでよい。
【0164】
アルギニンメチル化標準パネルの一例は、H2AR2me1、H2AR2me2a、H2AR2me2s、H3R2me1、H3R2me2a、H3R2me2s、H3R8me1、H3R8me2a、H3R8me2s、H3R17me1、H3R17me2a、H4R3me1、H4R3me2a及びH4R3me2sから選択されるPTMの一部又は全部を含み、aは非対称であり、sは対称である。一実施形態では、パネルは15の種を有してよい(14のPTMの各々と未修飾の標準)。一部の実施形態では、パネルは、内部制御の形式として異なるバーコード識別子配列をもつ各標準の複製を含んでよい。よって、パネルは、最大30の異なる種を含んでよい。一部の実施形態では、最大15の異なる標準の各々は、同じ又は異なる濃度で複数回表示される場合があり、各標準は、標準の濃度を表す固有のバーコード識別子配列をもつ。例えば、各標準は、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる濃度でパネルに存在してよく、各濃度は異なるバーコード識別子配列をもつ。よって、パネルは、15の倍数、例えば合計で30、45、60、75、90、105、120、135又は150の種の固有の標準を含んでよい。
【0165】
標準のリジンアシル化パネルの一例は、H2AtetraAc、H3K4ac、H3K9ac、H3K9bu、H3K9cr、H3K14ac、H3K18ac、H3K18bu、H3K18cr、H3tetraAc(K4-9-14-18ac)、H3K23ac、H3K27ac、H3K27bu、H3K27cr、H3K36ac、H3K56ac、H4K5ac、H4K8ac、H4K12ac、H4K16ac、H4tetraAc(K5-8-12-16ac)及びH4K20acから選択されるPTMの一部又は全部を含む。一実施形態では、パネルは23種を含んでよい(22種のPTMの各々と未修飾の標準)。一部の実施形態では、パネルは、内部制御の形式として異なるバーコード識別子配列をもつ各標準の複製を含んでよい。よって、パネルは最大46の異なる種を含んでよい。一部の実施形態では、最大23の異なる標準の各々は、同じ又は異なる濃度で複数回表示される場合があり、各標準は、標準の濃度を表す固有のバーコード識別子配列をもつ。例えば、各標準は、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる濃度でパネルに存在してよく、各濃度は異なるバーコード識別子配列をもつ。よって、パネルは、23の倍数、例えば合計で46、69、92、115、138、161、184、207又は230種の固有の標準を含んでよい。
【0166】
標準の発癌性変異パネルの一例は、H3K4M、H3K9M、H3K27M、H3G34R、H3G34V、H3G34W、H3K36M及びそれらの任意の組合わせ等の変異の一部又は全てを含む。パネルはまた、野生型H3を含んでよい。H3変異体は、H3の任意のバリアント骨格、例えばH3.1、H3.2又はH3.3に基づいてよい。よって、パネルは最大8つの異なる種を含んでよく、各々に固有のバーコード識別子配列がある。一部の実施形態では、パネルは、内部制御の形式として異なるバーコード識別子配列をもつ各標準の複製を含んでよい。よって、パネルは最大16の異なる種を含んでよい。一部の実施形態では、最大8の異なる標準の各々は、同じ又は異なる濃度で複数回表示される場合があり、各標準は、標準の濃度を表す固有のバーコード識別子配列をもつ。例えば、各標準は、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる濃度でパネルに存在してよく、各濃度は異なるバーコード識別子配列をもつ。よって、パネルは、8又は16の倍数、例えば合計で16、24、32、40、48、56、64、72、80、96、104、112、120、128、136、144、152又は160種の固有の標準を含んでよい。
【0167】
一部の実施形態では、キットは、テザー酵素を用いたクロマチンアッセイに適している。一部の実施形態では、キットは、本発明のヌクレオソーム、パネル、ポリヌクレオソーム、アレイ、プール又はビーズを含む。一部の実施形態では、キットは更に、ヒストン翻訳後修飾、変異若しくはヒストンバリアント又はDNA転写後修飾に特異的に結合する抗体、アプタマー又は他の親和性試薬を含む。一部の実施形態では、キットは更に、抗体結合タンパク質(タンパク質A、タンパク質G、タンパク質Aとタンパク質Gの融合、タンパク質L、又はタンパク質Y等)、又は認識薬剤に結合するエンティティ(例えばタンパク質)に連結されたヌクレアーゼ又はトランスポザーゼを備える。一部の実施形態では、キットは更に、磁気ビーズ等の、結合メンバーに対する結合パートナーを含むビーズを備える。
【0168】
上記は本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物も本発明に含まれる。
【表1】

【表2】

【表3】
【表4】

【表5】

【表6】
【配列表】
2023182657000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023182657000001.xml