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特開2023-182668親和性タグ付き光スイッチ及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182668
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】親和性タグ付き光スイッチ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20231219BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20231219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231219BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALN20231219BHJP
   C12N 5/077 20100101ALN20231219BHJP
   C12N 5/079 20100101ALN20231219BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20231219BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C12N15/115 Z
C12N5/10
A61K47/68
A61K39/395 L
A61K45/00
A61P27/02
C07K19/00
C12N5/0793
C12N5/077
C12N5/079
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166592
(22)【出願日】2023-09-28
(62)【分割の表示】P 2020516912の分割
【原出願日】2018-09-21
(31)【優先権主張番号】62/561,882
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】イサコフ エフド ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】トローネル ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ブロイクハゲン ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】レーヴィッツ ジョシュア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複合体を提供し、該複合体を使用して、標的ポリペプチドの活性を調節し、標的細胞または標的細胞集団の活性を調節する方法を提供する。
【解決手段】本開示は、a)標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する親和性因子と、b)光異性化調節因子とを含む、複合体を提供する。光異性化調節因子は、i)光異性化部分と、ii)標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む。本開示は、本開示の複合体を含む細胞を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む複合体:
a)標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する親和性因子;
b)リンカー;ならびに
c)i)光異性化基と、
ii)前記標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドと
を含む、光異性化調節因子。
【請求項2】
前記親和性因子が抗体である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記親和性因子がアプタマーである、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記アプタマーがDNAアプタマーである、請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
前記アプタマーがRNAアプタマーである、請求項3に記載の複合体。
【請求項6】
前記親和性因子が小分子である、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記親和性因子がペプチドである、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記リガンドが、アロステリック部位で結合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項9】
前記リガンドが、オルソステリック部位で結合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項10】
前記標的リガンド結合ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記標的リガンド結合ポリペプチドにおける機能的変化をもたらす、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項11】
前記標的リガンド結合ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、立体構造変化をもたらす、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項12】
前記標的リガンド結合ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、立体構造の安定化をもたらす、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項13】
前記リガンドが、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節因子、または遮断剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項14】
前記光異性化基が、アゾベンゼン、環状アゾベンゼン、アゾヘテロアレーン、フルギド、スピロピラン、トリフェニルメタン、チオインジゴ、ジアリールエテン、及び過密アルケン(overcrowded alkene)から選択される部分を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項15】
前記光異性化基が、アゾベンゼンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項16】
前記標的リガンド結合ポリペプチドが、転写調節因子、イオンチャネル、カチオンチャネル、リガンド依存性イオンチャネル、電位依存性イオンチャネル、クオラムセンサー、フェロモン受容体、神経伝達物質受容体、及び酵素から選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項17】
前記カチオンチャネルが、カリウムチャネル、ナトリウムチャネル、またはカルシウムチャネルである、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項18】
前記リガンド結合ポリペプチドが、グルタミン酸受容体、代謝型グルタミン酸受容体、イオンチャネル型グルタミン酸受容体、イオンチャネル型ニコチン性アセチルコリン受容体、イオンチャネル型GABA-A受容体、またはイオンチャネル型プリン作動性P2X受容体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項19】
前記抗体が、scFv、sdAb、Fab、Fab’、ナノボディ、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、Feb、及びSMIPから選択される、請求項2に記載の複合体。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体を含む、細胞。
【請求項21】
in vitroにある、請求項20に記載の細胞。
【請求項22】
in vivoにある、請求項20に記載の細胞。
【請求項23】
神経細胞である、請求項20~22のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項24】
網膜細胞である、請求項20~22のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項25】
筋細胞である、請求項20~22のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項26】
標的ポリペプチドの活性の調節方法であって、前記方法が、
a)前記標的ポリペプチドを、請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体と接触させ、光調節性ポリペプチドを生成すること;及び
b)前記光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光に前記光調節性ポリペプチドを曝露すること
を含み、
前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの活性を調節する、前記調節方法。
【請求項27】
前記リガンドがアゴニストであり、前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの活性化をもたらす、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記リガンドがアンタゴニストであり、前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの阻害、脱感作、または不活性化をもたらす、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記標的ポリペプチドが、転写調節因子、イオンチャネル、カチオンチャネル、リガンド依存性イオンチャネル、電位依存性イオンチャネル、クオラムセンサー、フェロモン受容体、神経伝達物質受容体、酵素、酵素、モータータンパク質、輸送体、膜輸送タンパク質、Gタンパク質共役受容体、Gタンパク質、受容体チロシンキナーゼ、骨格タンパク質、アダプタータンパク質、細胞骨格タンパク質、接着タンパク質、膜標的タンパク質、分泌を指示するタンパク質、及びタンパク質の局在化ドメインまたはタンパク質相互作用ドメインから選択される、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記カチオンチャネルが、カリウムチャネル、ナトリウムチャネル、またはカルシウムチャネルである、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記標的ポリペプチドが細胞内にある、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞がin vitroにある、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞がin vivoにある、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が網膜細胞である、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が神経細胞である、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が筋細胞である、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
標的細胞集団の活性の調節方法であって、前記方法が、前記標的細胞集団を光に曝露することを含み、
前記標的細胞集団が、請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体を含み、
前記光が、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光であり、
前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記標的細胞集団の前記活性を調節する、前記調節方法。
【請求項38】
前記標的細胞集団が組織内に存在する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組織がin vivoにある、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記標的細胞集団がin vivoにある、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記標的細胞集団がin vitroにある、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記標的細胞集団が、前記標的細胞集団及び非標的細胞を含む混合細胞集団中に存在する、請求項37~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記組織が脳組織である、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記組織が筋組織である、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記組織が血液細胞を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
光に対する網膜細胞の感受性の増加方法であって、前記方法が、前記網膜細胞を光に曝露することを含み、
前記網膜細胞が、請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体を含み、
前記光が、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光であり、
前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、光に対する前記網膜細胞の前記感受性を増加させる、前記増加方法。
【請求項47】
網膜細胞への光応答性の付与方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体を、前記網膜細胞に導入することを含む、前記付与方法。
【請求項48】
光に対する応答性の低下を特徴とする眼障害の治療方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体を、前記眼障害を有する個体の眼に投与することを含む、前記治療方法。
【請求項49】
前記眼障害が遺伝性網膜変性疾患である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記疾患が、網膜色素変性症または加齢性黄斑変性症である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
標的ポリペプチドの活性の調節方法であって、前記方法が、以下:
a)前記標的ポリペプチドを含む細胞を、i)光異性化基とii)前記標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む光異性化調節因子と接触させることであって、
前記細胞が、
i)前記標的ポリペプチドによって提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子と、
ii)HALOタグ、SNAPタグ、またはCLIPタグと
を含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変されており、
前記融合ポリペプチドが、前記光異性化調節因子と複合体を形成し、
前記複合体に存在する前記親和性因子が、前記標的ポリペプチドに結合し、光調節性ポリペプチドを生成する、前記接触させること;ならびに
b)前記光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光に前記光調節性ポリペプチドを曝露することであって、前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの活性を調節する、前記曝露すること
を含む、前記調節方法。
【請求項52】
前記核酸が、組換え発現ベクター中に存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記親和性因子が抗体である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記親和性因子がナノボディまたはscFvである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記細胞がin vivoにある、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年9月22日に出願された米国仮特許出願第62/561,882号の優先権を主張し、前記出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する声明文
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成金番号EY018241に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
導入
フォトクロミック分子は、神経科学においてタンパク質及び細胞の機能を制御するための強力な光学ツールとして注目されている。光スイッチングは、リガンド上の係留分子のジオメトリを変化させて、その結合部位でのリガンドの有効濃度または結合能力を改変し、それによってタンパク質機能を調節する。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示は、以下を含む複合体を提供する:a)標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する親和性因子;b)i)光異性化部分と、ii)標的リガンド結合ポリペプチドと結合するリガンドとを含む、光異性化調節因子;ならびにc)(a)と(b)とを接続するリンカー。本開示は、本開示の複合体を含む細胞を提供する。本開示は、本開示の複合体を使用して、標的ポリペプチドの活性を調節し、標的細胞または標的細胞集団の活性を調節する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】2つの光スイッチ結合戦略(a)及び(b)を本開示の例示的な実施形態(c)と比較する。a)、b):(a)及び(b)に示す方法では、例えば、標的タンパク質に導入したシステインへのマレイミド結合により直接的に(a)、または標的タンパク質に遺伝子的に融合させたSNAP、CLIP、HALOなどの酵素ドメインを介して間接的に(b)、光スイッチを標的タンパク質に共有結合させる。c):本開示の例示的な実施形態では、標的タンパク質に選択的に結合する親和性ドメインを、光スイッチに予め結合させ、それを標的タンパク質に送達する。図1Dは、ナノボディを用いた免疫化学を使用する例示的な実施形態を示し;例えば、標的タンパク質上のエピトープに特異的なナノボディを使用して、光スイッチを標的タンパク質mGluR2に送達する。SNAPなどのタグ部分を使用して光スイッチをナノボディに結合させる。
図2】SNAPタグ付き抗緑色蛍光タンパク質(GFP)ナノボディ(NB)(SNAP-NBまたはNB-SNAP)を使用して、光スイッチをGFPタグ付き代謝型グルタミン酸受容体(GFP-mGluR2)に導入する。(a)は、NBへのSNAPタグの結合によってGFP結合が乱されないことを示し、(b,c)は、精製したNB-SNAPがHEK293T細胞において発現させたGFP-mGluR2に効率的に結合することができることを示す。(d)の概略図は、GFP-mGluR2標的との結合後の構成要素の配置を示す。(d)は、共発現Gタンパク質共役型GIRKチャネルを活性化するための、HEK293T細胞のSNAP-NB(上段)またはNB-SNAP(下段)に結合したBGAG光スイッチによるmGluR2の再現可能な光活性化及び可逆性の光活性化を示す。(e)及び(f)は、SNAP-NB及びNB-SNAPの両方についての、BGAG光スイッチ長依存性の定量化を示す。
図3】mGluR由来のシグナル配列(mGluRss)を付加した抗GFP NB(a)が、GFP-mGluR2と共発現可能であり、共局在化からわかるように共集合可能であり(b)、強力な光活性化を誘発する(c)ことを示す。
図4】GFP-mGluR2へのNB-SNAPまたはSNAP-NBの結合により、mGluR2の見かけのグルタミン酸親和性が変化しないことを示しており、すなわち、このデータは、結合集合体によって標的タンパク質の機能が乱されないことを示している。
図5】ナノボディの結合がそれ自体で標的タンパク質の活性状態を変化させることができることを示しており、例えば、NB-8260がmGluR5外部ドメインに結合すると(グルタミン酸非存在下で)、受容体が活性化し、HEK293細胞内でカルシウムウェーブが誘起される。NB-8260による活性化(下段)は、グルタミン酸によって誘発される活性(上段)と同様に強力であり、NBが緊密に結合しているため、洗浄後もはるかに長く持続する。
図6】mGluR5ホモダイマー活性化の要因となる構造再配置の単一分子分析の結果を示し、ナノボディ(NB)が、受容体を強く活性化する(NB-8260)、弱く活性化する(NB-8236)、またはまったく活性化することができない(NB-8243)ことを示しており、このことは、機能分析を用いて、標的の機能を乱すことなく光スイッチをタンパク質標的に送達するNBを選択することができることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有するものとする。未定義の用語は、その技術分野で認識されている意味を有するものとする。
【0007】
用語「アルキル」とは、例えば、1~40個の炭素原子、1~10個の炭素原子、または1~6個の炭素原子を有する、モノラジカル分岐または非分岐飽和炭化水素鎖を指す。本用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、n-デシル、テトラデシルなどの基によって例示される。
【0008】
用語「置換アルキル」とは、アルキル鎖中の1つ以上の炭素原子が、ヘテロ原子、例えば、-O-、-S(O)-(式中、nは0~2)、-NR-(式中、Rは水素またはアルキル)によって置き換えられてもよく、ならびにアルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、及び-NRRb(式中、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、水素、任意の置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環式から選択される)からなる群から選択される1~5個の置換基を有する、上記で定義されるアルキル基を指す。
【0009】
用語「アルキルアミノアルキル」、「アルキルアミノアルケニル」及び「アルキルアミノアルキニル」とは、RNHR-基を指し、式中、Rは、上記で定義されるアルキル基であり、Rは、上記で定義されるアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン基である。
【0010】
用語「アルカリル」または「アラルキル」とは、-アルキレン-アリール及び-置換アルキレン-アリール基を指し、式中、アルキレン、置換アルキレン及びアリールは、本明細書中で定義される。
【0011】
用語「アルコキシ」とは、アルキル-O-、アルケニル-O-、シクロアルキル-O-、シクロアルケニル-O-、及びアルキニル-O-基を指し、式中、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びアルキニルは、本明細書中で定義されるとおりである。
【0012】
用語「置換アルコキシ」とは、置換アルキル-O-、置換アルケニル-O-、置換シクロアルキル-O-、置換シクロアルケニル-O-、及び置換アルキニル-O-基を指し、式中、置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル及び置換アルキニルは、本明細書中で定義するとおりである。
【0013】
用語「ハロアルコキシ」とは、アルキル基上の1つ以上の水素原子がハロ基で置換されているアルキル-O-基を指し、例として、トリフルオロメトキシなどの基などが挙げられる。
【0014】
用語「アルキルアルコキシ」とは、-アルキレン-O-アルキル、アルキレン-O-置換アルキル、置換アルキレン-O-アルキル、及び置換アルキレン-O-置換アルキル基を指し、式中、アルキル、置換アルキル、アルキレン及び置換アルキレンは、本明細書中で定義するとおりである。
【0015】
用語「アルキルチオアルコキシ」とは、-アルキレン-S-アルキル、アルキレン-S-置換アルキル、置換アルキレン-S-アルキル及び置換アルキレン-S-置換アルキル基を指し、式中、アルキル、置換アルキル、アルキレン及び置換アルキレンは、本明細書中で定義するとおりである。
【0016】
用語「アルケニル」とは、2~40個の炭素原子、2~10個の炭素原子、または2~6個の炭素原子を有し、少なくとも1つのビニル不飽和部位(例えば、1~6部位)を有する分岐または非分岐不飽和炭化水素基のモノラジカルを指す。
【0017】
用語「置換アルケニル」とは、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール及び-SO-ヘテロアリールから選択される、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有する、上記で定義されるアルケニル基を指す。
【0018】
用語「アルキニル」とは、2~40個の炭素原子、2~20個の炭素原子、または2~6個の炭素原子を有し、少なくとも1つのアセチレン(三重結合)不飽和部位(例えば、1~6部位)を有する不飽和炭化水素のモノラジカルを指す。
【0019】
用語「置換アルキニル」とは、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、及び-SO-ヘテロアリールから選択される、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有する、上記で定義されるアルキニル基を指す。
【0020】
用語「アシル」とは、HC(O)-、アルキル-C(O)-、置換アルキル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、置換シクロアルキル-C(O)-、シクロアルケニル-C(O)-、置換シクロアルケニル-C(O)-、アリール-C(O)-、ヘテロアリール-C(O)-及び複素環式-C(O)-基を指し、式中、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式は、本明細書中で定義するとおりである。
【0021】
用語「アシルアミノ」または「アミノカルボニル」とは、-C(O)NRR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環式であるか、または両方のR基が結合して複素環式基(例えば、モルホリノ)を形成し、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式は、本明細書中で定義するとおりである。
【0022】
用語「アミノアシル」とは、-NRC(O)R基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であり、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式は、本明細書中で定義するとおりである。
【0023】
用語「アミノアシルオキシ」または「アルコキシカルボニルアミノ」とは、-NRC(O)OR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であり、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式は、本明細書中で定義するとおりである。
【0024】
用語「アシルオキシ」とは、アルキル-C(O)O-、置換アルキル-C(O)O-、シクロアルキル-C(O)O-、置換シクロアルキル-C(O)O-、アリール-C(O)O-、ヘテロアリール-C(O)O-、及び複素環式-C(O)O-基を指し、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式は、本明細書中で定義するとおりである。
【0025】
用語「アリール」とは、単環(例えば、フェニル)または複数の縮合(融合)環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する、6~20個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式基を指す。例示的なアリールとして、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。アリール置換基の定義によって特に制約されない限り、そのようなアリール基を、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリル、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール及びトリハロメチルから選択される1~5個の置換基、または1~3個の置換基で置換してもよい。
【0026】
用語「アリールオキシ」とは、アリール-O-基を指し、アリール基は、上記で定義するとおりであり、これには本明細書中で定義する任意置換のアリール基が含まれる。
【0027】
用語「アミノ」とは、-NH基を指す。
【0028】
用語「置換アミノ」とは、-NRR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環式からなる群から選択され、ただし、両方のRが水素にはならない。
【0029】
用語「カルボキシアルキル」または「アルコキシカルボニル」とは、「-C(O)O-アルキル」、「-C(O)O-置換アルキル」、「-C(O)O-シクロアルキル」、「-C(O)O-置換シクロアルキル」、「-C(O)O-アルケニル」、「-C(O)O-置換アルケニル」、「-C(O)O-アルキニル」及び「-C(O)O-置換アルキニル」を指し、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル及び置換アルキニルアルキニルは、本明細書中で定義するとおりである。
【0030】
用語「シクロアルキル」とは、単一の環式環または複数の縮合環を有する、3~20個の炭素原子の環式アルキル基を指す。そのようなシクロアルキル基として、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造、またはアダマンタニルなどの多環構造が挙げられる。
【0031】
用語「置換シクロアルキル」とは、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール及び-SO-ヘテロアリールから選択される、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
【0032】
用語「シクロアルケニル」とは、単一の環状環及び少なくとも1つの内部不飽和部位を有する、4~20個の炭素原子の環状アルケニル基を指す。適切なシクロアルケニル基の例として、例えば、シクロブタ-2-エニル、シクロペンタ-3-エニル、シクロオクタ-3-エニルなどが挙げられる。
【0033】
用語「置換シクロアルケニル」とは、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール及び-SO-ヘテロアリールから選択される、1~5個の置換基、または1~3個の置換基を有するシクロアルケニル基を指す。
【0034】
用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。
【0035】
用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの環(2つ以上の環がある場合)内の酸素、窒素及び硫黄から選択される1~15個の炭素原子及び1~4個のヘテロ原子の芳香族基を指す。ヘテロアリール置換基の定義によって特に制約されない限り、そのようなヘテロアリール基は、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリル、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール及び-SO-ヘテロアリール、ならびにトリハロメチルから選択される、1~5個の置換基、または1~3個の置換基で置換してもよい。
【0036】
用語「ヘテロアラルキル」とは、-アルキレン-ヘテロアリール基を指し、アルキレン及びヘテロアリールは本明細書中で定義される。そのようなヘテロアラルキル基は、例えば、ピリジルメチル、ピリジルエチル、インドリルメチルなどである。
【0037】
用語「ヘテロアリールオキシ」とは、ヘテロアリール-O-基を指す。
【0038】
用語「複素環」または「複素環式」とは、環内の1~40個の炭素原子と、窒素、硫黄、リン、及び/または酸素から選択される1~10個のヘテロ原子、例えば、1~4個のヘテロ原子との単環または複数の縮合環を有するモノラジカル飽和または不飽和基を指す。複素環式置換基の定義によって特に制約されない限り、そのような複素環式基は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO-アルキル、-SO-置換アルキル、-SO-アリール及び-SO-ヘテロアリールから選択される1~5個、または1~3個の置換基で置換してもよい。
【0039】
窒素ヘテロアリール及び複素環の例として、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピロリジン、ピぺリジン、ピペラジン、インドリン、モルフォリン、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェンなど、ならびにN-アルコキシ-窒素含有複素環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
用語「ヘテロシクロオキシ」とは、複素環式-O-基を指す。
【0041】
用語「ヘテロシクロチオ」とは、複素環式-S-基を指す。
【0042】
用語「ヘテロシクレン」とは、本明細書中で定義するように、複素環から形成されるジラジカル基を指し、例えば、2,6-モルホリノ基、2,5-モルホリノ基などである。
【0043】
用語「ヘテロアリールアミノ」とは、1つまたは2つの環原子がNであり、残りの環原子がCである5員芳香環を指す。ヘテロアリールアミノ環は、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環に融合させてもよく、1つ以上の置換基、例えば、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、シアノ、アシル、アミノ、置換アミノ、アシルアミノ、-OR(式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキルである)、または-S(O)R(式中、nは0~2の整数であり、Rは、水素(nが0の場合)、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキルである)から選択される1つまたは2つの置換基で置換してもよい。
【0044】
用語「ヘテロシクロアミノ」とは、4~8個の環原子の飽和一価環状基を指し、少なくとも1つの環原子はNであり、N、O、またはS(O)n(式中、nは0~2の整数である)からなる群から選択される1つまたは2つのさらなる環ヘテロ原子を含み、残りの環原子はCであり、1つまたは2つのC原子は、カルボニル基で置き換えてもよい。ヘテロシクロアミノ環は、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環と縮合させてもよく、1つ以上の置換基、例えば、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、ハロ、シアノ、アシル、アミノ、置換アミノ、アシルアミノ、-OR(式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキルである)、または-S(O)R(式中、nは0~2の整数であり、Rは、水素(nが0の場合)、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アミノ、ヘテロシクロ、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、またはヘテロアラルキルである)から選択される1つまたは2つの置換基で置換してもよい。
【0045】
用語「オキシアシルアミノ」または「アミノカルボニルオキシ」とは、-OC(O)NRR基を指し、式中、各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であり、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール及び複素環式は、本明細書中で定義するとおりである。
【0046】
用語「チオール」とは、-SH基を指す。
【0047】
用語「チオアルコキシ」または「アルキルチオ」とは、-S-アルキル基を指す。
【0048】
用語「置換チオアルコキシ」とは、-S-置換アルキル基を指す。
【0049】
用語「チオアリールオキシ」とは、アリール-S-基を指し、アリール基は、上記で定義されるとおりであり、これには、上記で定義される任意置換のアリール基も含まれる。
【0050】
用語「チオヘテロアリールオキシ」とは、ヘテロアリール-S-基を指し、ヘテロアリール基は、上記で定義されるとおりであり、これには、上記で定義される任意置換のアリール基が含まれる。
【0051】
1つ以上の置換基を含む上記の基のいずれかに関して、当然ながら、そのような基は、立体的に非実用的及び/または合成的に実行不可能な置換または置換パターンを含まないことが理解される。さらに、実施形態の化合物には、これらの化合物の置換から生じるすべての立体化学異性体が含まれる。
【0052】
用語「薬学的に許容される塩」とは、生物学的有効性を保持し、生物学的または他の点で望ましくないものではない塩を指す。多くの場合、実施形態の化合物は、アミノ基及び/またはカルボキシル基またはそれらに類似した基の存在により、酸及び/または塩基の塩を形成することができる。
【0053】
薬学的に許容される塩基付加塩は、無機及び有機塩基から調製することができる。無機塩基に由来する塩として、一例に過ぎないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基に由来する塩として、第1級、第2級及び第3級アミン、例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、二置換シクロアルキルアミン、三置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、二置換シクロアルケニルアミン、三置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジヘテロアリールアミン、トリヘテロアリールアミン、複素環式アミン、ジ複素環式アミン、トリ複素環式アミン、アミン上の少なくとも2つの置換基が異なり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式などからなる群から選択される混合ジアミン及びトリアミンなどの塩が挙げられるが、これらに限定されない。2つまたは3つの置換基がアミノ窒素と一緒になって複素環式基またはヘテロアリール基を形成するアミンも含まれる。適切なアミンの例として、一例に過ぎないが、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n-プロピル)アミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N-アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N-エチルピペリジンなどが挙げられる。
【0054】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸から調製し得る。無機酸由来の塩として、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸由来の塩として、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0055】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書中では同じ意味で用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。本用語には、修飾された;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、または標識成分と複合体化したアミノ酸ポリマーも含まれる。
【0056】
ポリペプチドは、別のポリペプチドに対して特定の割合の「配列同一性」を有し、これは、アラインメントした場合に2つの配列を比較するとその割合の塩基またはアミノ酸が同一であることを意味する。配列類似性は、いくつかの異なる方法で決定することができる。配列同一性を決定するために、BLAST(ワールドワイドウェブncbi.nlm.nih.gov/BLAST/において利用可能)などの方法及びコンピュータープログラムを使用して配列をアラインメントすることができる。別のアラインメントアルゴリズムは、FASTA であり、これは、Oxford Molecular Group,Incの完全子会社であるGenetics Computing Group(GCG)パッケージ(Madison,Wisconsin,USA)において利用可能である。他のアラインメント手法は、Methods in Enzymology,vol.266:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996),ed.Doolittle,Academic Press,Inc.,a division of Harcourt Brace & Co.,San Diego,California,USAに記載されている。配列内にギャップを許容するアラインメントプログラムは特に興味深い。Smith-Waterman法は、配列アラインメントのギャップを許容するアルゴリズムの一種である。Meth.Mol.Biol.70:173-187(1997)を参照のこと。また、Needleman and Wunschアラインメント法を用いたGAPプログラムを利用して、配列をアラインメントすることもできる。J.Mol.Biol.48:443-453(1970)を参照のこと。
【0057】
Smith Watermanの局所ホモロジーアルゴリズム(Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981)を用いて配列同一性を決定するBestFitプログラムは興味深い。ギャップ生成ペナルティは、一般的に1~5、通常2~4であり、多くの実施形態では3である。ギャップ拡張ペナルティは、一般的に約0.01~0.20の範囲であり、多くの例では0.10である。プログラムには、比較用に入力した配列によって決定されるデフォルトのパラメータが存在する。好ましくは、プログラムによって決定されるデフォルトのパラメータを使用して配列同一性を決定する。このプログラムは、Genetics Computing Group(GCG)パッケージ(Madison,Wisconsin,USA)からも入手可能である。
【0058】
興味深い別のプログラムは、FastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp.127-149,1988,Alan R.Liss,Incに記載されている。以下のパラメータに基づいて、FastDBにより配列同一性の割合を計算する。
ミスマッチペナルティ:1.00;
ギャップペナルティ:1.00;
ギャップサイズペナルティ:0.33;及び
結合ペナルティ:30.0。
【0059】
本明細書中で使用する場合、用語「治療」、「治療する」などは、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的であってもよく、及び/または疾患及び/または疾患に起因する悪影響に対する部分的または完全な治癒という点で治療的であってもよい。本明細書中で使用する場合、「治療」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患の任意の治療を網羅し:(a)疾患の素因があり得るか、または疾患を罹患するリスクがあるが、未だ罹患していると診断されていない対象における疾患の発症を予防し;(b)疾患を抑制、すなわちその発症を阻止し;(c)疾患を緩和する、すなわち、疾患を後退させることを含む。
【0060】
用語「個体」、「ホスト」、「対象」、及び「患者」とは、本明細書中では同じ意味で用いられ、サル及びヒトなどのヒト及び非ヒト霊長類;哺乳類の競技用動物(例えば、ウマ、ラクダなど);哺乳類の家畜動物(ヒツジ、ヤギ、ウシなど);哺乳類のペット(イヌ、ネコなど);及びげっ歯類(マウス、ラットなど)を含むがこれらに限定されない哺乳類を指す。いくつかの場合では、個体はヒトである。
【0061】
用語「リンカー」または「連鎖」とは、2つの基を接続し、長さが100原子以下の骨格を有する連結部分を指す。リンカーまたは連鎖は、2つの基または1~100原子の長さの鎖、例えば、1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18、20、またはそれ以上の長さの炭素原子の鎖を接続する共有結合であり、リンカーは、直鎖、分岐、環状または単一原子であってもよい。いくつかの場合では、リンカーは分岐リンカーであり、分岐とは3つ以上の基を接続する連結部分を指す。特定の場合では、リンカー主鎖の1、2、3、4または5つ以上の炭素原子を、硫黄、窒素または酸素ヘテロ原子で置換してもよい。いくつかの場合では、リンカー主鎖は、連結性官能基、例えば、エーテル、チオエーテル、アミノ、アミド、スルホンアミド、カルバメート、チオカルバメート、尿素、チオ尿素、エステル、チオエステルまたはイミンを含む。主鎖原子間の結合は飽和または不飽和であってもよく、いくつかの場合では、リンカー主鎖に、1つ、2つ、または3つ以下の不飽和結合が存在する。リンカーは、1つ以上の置換基、例えば、アルキル、アリールまたはアルケニル基を含み得る。リンカーには、限定されないが、ポリエチレングリコール;エーテル、チオエーテル、第3級アミン、直鎖または分岐であり得るアルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)などが含まれ得る。リンカー主鎖には、環状基、例えば、アリール、複素環またはシクロアルキル基が含まれ得、主鎖には、環状基の2つ以上の原子、例えば、2、3または4個の原子が含まれる。リンカーは、切断可能であっても切断不可能であってもよい。
【0062】
用語「ポリエチレンオキシド」、「PEO」、「ポリエチレングリコール」及び「PEG」は同じ意味で用いられ、式-(CH-CH-O-)-またはその誘導体によって記述される鎖を含むポリマー基を指す。いくつかの実施形態では、「n」は5000以下、例えば、1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、例えば、3~15、または10~15である。
【0063】
本発明をさらに説明する前に、当然のことながら、本発明は、記載する特定の実施形態に限定されるものではなく、したがって、当然のことながら様々に異なり得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書中で使用する用語が、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0064】
値の範囲が示される場合、そうでないことを文脈が明確に指示しない限り、その範囲の上限及び下限ならびにその記載範囲における他の任意の記載値または他の介在値の間で、下限の単位の10分の1までの各介在値が本発明の範囲内に包含されることを理解されたい。これらのより狭い範囲の上限及び下限は、独立して、このより狭い範囲に含まれてもよく、それはまた、記載範囲における特定の除外された制限に従い、本発明に包含される。記載範囲が境界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる境界のいずれかまたは両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
【0065】
別段の定義がない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載する方法及び材料と類似または同等の任意の方法及び材料もまた、本発明の実施または試験において使用し得るが、好ましい方法及び材料を記載する。刊行物の引用に関連して、方法及び/または材料を開示及び記載するために、本明細書中で言及するすべての刊行物を参照により本明細書に援用する。
【0066】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「複合体」への言及は、複数のそのような複合体を含み、「光異性化可能部分」への言及は、1つ以上の光異性化可能部分及び当業者に公知のその等価物への言及を含む、などである。さらに、請求項は、任意の要素を除外するように起草し得ることに留意されたい。したがって、この記載は、クレーム要素の引用、または「否定的な」制限の使用に関連して、「単独で」、「のみで」などの排他的な用語を使用するための先行詞として作用することを意図している。
【0067】
明確にするために別個の実施形態で記載されている本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態に組み合わせて提供してもよいことは理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態で記載されている本発明の様々な特徴は、別々にまたは任意の適切な部分組み合わせで提供してもよい。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかもありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態及びその要素のすべての部分組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかもすべてのそのような部分組み合わせが本明細書で個別かつ明示的に開示されたかのように本明細書で開示される。
【0068】
本明細書中で論じる刊行物は、本出願の出願日以前のそれらの開示についてのみ提供される。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと解釈するべきではない。さらに、提供する刊行物の日付は、実際の出版日とは異なる場合があり、個別に確認する必要があり得る。
【0069】
詳細な説明
本開示は、以下を含む複合体を提供する:a)標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する親和性因子;b)i)光異性化部分と、ii)標的リガンド結合ポリペプチドと結合するリガンドとを含む、光異性化調節因子;ならびにc)(a)と(b)とを接続するリンカー。本開示は、本開示の複合体を含む細胞を提供する。本開示は、本開示の複合体を使用して、標的ポリペプチドの活性を調節し、標的細胞または標的細胞集団の活性を調節する方法を提供する。
【0070】
親和性タグ付き光スイッチ
本開示は、以下を含む複合体を提供する:a)標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する親和性因子;b)i)光異性化部分と、ii)標的リガンド結合ポリペプチドと結合するリガンドとを含む、光異性化調節因子;ならびにc)(a)と(b)とを接続するリンカー。本開示の複合体は、本明細書中では「親和性タグ付き光スイッチ」とも呼ばれる。光異性化調節因子は、本明細書中では「光スイッチ」とも呼ばれる。
【0071】
本開示の複合体は、標的リガンド結合ポリペプチドの活性を調節する。光異性化調節因子は標的リガンド結合ポリペプチドと相互作用し、光異性化調節因子に存在するリガンドは、光によって制御される方式で標的リガンド結合ポリペプチドのリガンド結合部位に結合する。リガンド、光異性化調節因子の設計、及び光の波長などの要因に応じて、本開示の複合体は、標的リガンド結合ポリペプチドの活性を増加または減少させることができるか、他の刺激に対する感受性を調節する(増加または減少させる)ことができるか、標的リガンド結合ポリペプチドを特定の立体構造に安定させることができるか、または標的リガンド結合ポリペプチドの立体構造変化を誘導することができる。
【0072】
本開示の複合体に存在する親和性因子は、標的リガンド結合ポリペプチドに結合し、それにより、複合体に存在するリガンドを標的リガンド結合ポリペプチドに近接させ、リガンドが標的リガンド結合ポリペプチドのリガンド結合部位に光依存的に結合できるようにする。本開示の複合体が標的リガンド結合ポリペプチドに結合すると、標的リガンド結合ポリペプチドは光調節性ポリペプチドになる。
【0073】
光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長及び/または強度の変化(Δλ)は、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位へのリガンド結合に変化をもたらし、例えば、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位への本開示の複合体のリガンド部分の結合に変化をもたらす。「光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化」には、以下が含まれる:1)λからλへの変化;2)λからλへの変化;3)λから暗(光なし)への変化;4)暗からλへの変化。λからλへ、次いでλからλへ、そして元へと、反復的に変化させること、例えば、第1の波長から第2の波長へスイッチングし、そして反復的に再び元に戻すことも考えられる。明から暗へ、暗から明へなど、反復的に変化させることも考えられる。
【0074】
いくつかの場合では、波長の変化(λからλへ;明から暗へ;または暗から明へ)は、リガンド結合部位へのリガンドの結合に変化をもたらす。本明細書中で使用する場合、「リガンド結合部位へのリガンドの結合の変化」には、結合の増加及び結合の減少が含まれる。本明細書中で使用する場合、「結合の増加」には、以下の1つ以上が含まれる:リガンド結合部位にリガンドが結合する確率の増加;リガンド結合部位に対するリガンドの結合親和性の増加;リガンド結合部位でのリガンドの局所濃度の増加;及びリガンド結合部位におけるリガンドの占有率の増加。本明細書中で使用する場合、「結合の減少」には、以下の1つ以上が含まれる:リガンド結合部位にリガンドが結合する確率の減少;リガンド結合部位に対するリガンドの結合親和性の低下;リガンド結合部位でのリガンドの局所濃度の低下;及びリガンド結合部位におけるリガンドの占有率の低下。本明細書中で使用する場合、本開示の調節因子の複合体が曝露されるか、または受容体/合成光調節因子複合体が曝露される、用語「波長の変化」とは、λからλへの波長の変化;明から暗への変化;または暗から明への変化を指す。結合の増加には、結合の約10%~約20%、約20%~約50%、約50%~約2倍、約2倍~約5倍、約5倍~約10倍、約10倍~約50倍、約50倍~約10倍、約10倍~約10倍、約10倍~約10倍、約10倍~約10倍、または10倍超の増加が含まれる。結合の減少には、結合の約5%~約10%~約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%の減少、または約90%~100%の減少が含まれる。
【0075】
例えば、いくつかの場合では、リガンドは、第1の光波長でのリガンド部位への第1の結合確率を有し;リガンドは、第2の光波長でのリガンド結合部位への第2の結合確率を有し;第2の確率は第1の確率よりも低い。他の場合では、リガンドは、第1の光波長でのリガンド部位への第1の結合確率を有し;リガンドは、第2の光波長でのリガンド結合部位への第2の結合確率を有し;第2の確率は第1の確率よりも高い。他の場合では、リガンドは、光に曝露させた場合にリガンド部位への第1の結合確率を有し;リガンドは、光の非存在下(例えば、暗条件下)では第2の光波長でのリガンド結合部位への第2の結合確率を有し;第2の確率は第1の確率よりも低い。他の場合では、リガンドは、光に曝露させた場合にリガンド部位への第1の結合確率を有し;リガンドは、光の非存在下では第2の光波長でのリガンド結合部位への第2の結合確率を有し、第2の確率は第1の確率よりも高い。
【0076】
光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位に存在する、複合体のリガンド部分の局所濃度は高い。例えば、対象における光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位における本開示の複合体のリガンド部分の局所濃度は、約500nM~約50mM、例えば、約500nM~約750nM、約750nM~約1mM、約1mM~約5mM、約5mM~約10mM、約10mM~約20mM、約20mM~約30mM、または約30mM~約50mMの範囲である。
【0077】
リガンド結合部位へのリガンドの結合、またはリガンド結合部位へのより高い親和性のリガンド結合をもたらす、波長変化
いくつかの場合では、光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化は、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位に対する本開示の複合体のリガンド部分の結合親和性の増加をもたらす。例えば、いくつかの場合では、光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化は、結合親和性を、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約25倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、少なくとも約10倍、少なくとも約5×10倍、少なくとも約10倍、少なくとも約5×10倍、またはそれ以上増加させる。
【0078】
リガンドがアゴニストである場合、いくつかの場合では、波長の変化は、光調節性ポリペプチドの活性化をもたらす。リガンドがアゴニストである場合、いくつかの場合では、波長の変化は、光調節性ポリペプチドの脱感作をもたらす。逆に、リガンドがアンタゴニストである場合、波長の変化は、光調節性ポリペプチドの活性化の遮断、例えば、遊離アゴニストが光調節性ポリペプチドを活性化する能力の遮断をもたらす。リガンドが遮断剤(例えば、イオンチャネルの細孔遮断剤、またはポリペプチドもしくは核酸などの他の生体高分子に結合する相互作用ドメイン)である場合、波長の変化はポリペプチド活性の遮断をもたらす。
【0079】
別の表現をすれば、リガンドがアゴニストであり、光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化が、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位への複合体のリガンド部分のより高い結合親和性をもたらす場合、波長の変化は、不活性状態から活性状態、または脱感作状態への遷移をもたらす。リガンドがアンタゴニストである場合、波長の変化は、応答状態から非応答状態への遷移をもたらす。リガンドが遮断剤である場合、波長の変化は、活性状態から非活性状態への遷移をもたらす。
【0080】
リガンド結合部位からのリガンドの除去、または結合親和性の低下をもたらす、波長変化
いくつかの場合では、光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化は、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位からの本開示の複合体のリガンド部分の除去をもたらし、例えば、リガンドはリガンド結合部位に結合しない。いくつかの場合では、光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化は、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位に対する本開示の複合体のリガンド部分の結合親和性の低下をもたらし、例えば、リガンドは、リガンド結合部位に対する結合親和性が低下する。例えば、いくつかの場合では、光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上の結合親和性の低下をもたらす。
【0081】
リガンドがアゴニストである場合、いくつかの場合では、波長の変化は、光調節性ポリペプチドの活性化をもたらす。リガンドがアゴニストである場合、いくつかの場合では、波長の変化は、光調節性ポリペプチドの不活性化をもたらす。リガンドがアゴニストである場合、いくつかの場合では、波長の変化は、光調節性ポリペプチドの脱感作からの回復をもたらす。逆に、リガンドがアンタゴニストである場合、いくつかの場合では、波長の変化は、リガンド結合部位の占有及びポリペプチドのバックグラウンド活性の低下、あるいは、生理学的刺激による活性化の喪失をもたらす。リガンドがアンタゴニストである場合、いくつかの場合では、波長の変化は、拮抗作用の除去をもたらし、生理学的刺激による活性化を可能にする。リガンドが負のアロステリック調節因子である場合、結合を引き起こす波長の変化により、別の刺激に対する感受性または効力を増加させることができる。リガンドが正のアロステリック調節因子である場合、結合を引き起こす波長の変化により、別の刺激に対する感受性または効力を低下させることができる。いくつかの場合では、リガンド結合部位は、リガンドによる結合が別の刺激に対する感受性または効力を増加または減少させる調節部位であり、それにより、光スイッチ調節因子の結合を光が制御することによってこのプロセスを調節する。いくつかの場合では、リガンドは、ポリペプチドの活性部位の遮断剤(例えば、イオンチャネルの細孔遮断剤、または他の生体高分子、例えば、ポリペプチドもしくは核酸に結合する相互作用ドメイン、または酵素活性部位の遮断剤)であり、波長の変化は、ポリペプチド活性の遮断または軽減をもたらし、受容体が正常に機能することを防止するか、または可能にする。
【0082】
別の表現をすれば、リガンドがアゴニストであり、光調節性ポリペプチドが曝露される光の波長の変化が、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位からの本開示の複合体のリガンド部分の除去(または非結合)をもたらす場合、波長の変化は、より高い活性状態からより低い活性状態への、または脱感作状態から応答状態への遷移をもたらす。リガンドが負のアロステリック調節因子である場合、非結合を引き起こす波長の変化は、別の刺激に対する感受性または効力の増加をもたらす。リガンドが正のアロステリック調節因子である場合、非結合を引き起こす波長の変化は、別の刺激に対する感受性または効力の低下をもたらす。リガンドがアンタゴニストである場合、非結合を引き起こす波長の変化は、非応答状態から応答状態へ、または非活性状態からバックグラウンド「基底」(非リガンド結合)活性状態への遷移をもたらす。リガンドが遮断剤である場合、非結合を引き起こす波長の変化は、不活性状態から活性状態への遷移をもたらす。
【0083】
親和性因子
親和性因子は、標的リガンド結合ポリペプチドを標的とするよう光異性化調節因子を仕向ける。いくつかの場合では、親和性因子は標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する。したがって、例えば、いくつかの場合では、親和性因子は、少なくとも10-6M、少なくとも10-7M、少なくとも10-8M、少なくとも10-9M、または少なくとも10-10Mの親和性で標的リガンド結合ポリペプチドに結合する。
【0084】
適切な親和性因子として、小分子、RNAアプタマー、DNAアプタマー、ペプチド、及び抗体が挙げられるが、これらに限定されない。適切な親和性因子には、位相表示によって同定される親和性因子が含まれる。
【0085】
抗体
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する親和性因子は抗体である。本開示の複合体に含めるのに適した抗体は、標的リガンド結合ポリペプチドに結合する。標的リガンド結合ポリペプチドの例を以下に示す。本開示の複合体に含めるのに適した抗体は、光異性化調節因子に存在するリガンドが標的リガンド結合ポリペプチドに結合することを阻害しない。一般的に、本開示の複合体に含めるのに適した抗体は、標的リガンド結合ポリペプチドの活性を実質的に変化させない。
【0086】
用語「抗体」及び「免疫グロブリン」には、Fab、Fv、scFv、及びFdフラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体(scAb)、単一ドメイン抗体(sdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体、ナノボディ、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ならびに抗体の抗原結合(antigen-binding)(本明細書中では抗原結合(antigen binding)とも呼ばれる)部分と非抗体タンパク質とを含む融合タンパク質を含むがこれらに限定されない、抗原(例えば、標的リガンド結合ポリペプチド)への特異的結合を保持する任意のアイソタイプの抗体または免疫グロブリン、抗体の断片が含まれる。この用語には、Fab’、Fv、F(ab’)、及び/または抗原への特異的結合を保持する他の抗体断片、及びモノクローナル抗体も含まれる。
【0087】
本明細書中で使用する場合、用語「ナノボディ」(Nb)とは、天然の重鎖抗体に由来する最小抗原結合断片または単一可変ドメイン(VHH)を指し、これは当業者には公知である。これらはラクダに見出される重鎖のみ抗体に由来する。「ラクダ科」ファミリーには、軽鎖ポリペプチドを欠損した免疫グロブリンが見出される。「ラクダ科」には、旧世界ラクダ科動物(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)及びヒトコブラクダ(Camelus dromedarius))及び新世界ラクダ科動物(例えば、アルパカ(Llama paccos)、リャマ(Llama glama)、グアナコ(Llama guanicoe)、及びビクーニャ(Llama vicugna))が含まれる。単一可変ドメイン重鎖抗体は、本明細書中ではナノボディまたはVHH抗体と呼ばれる。
【0088】
軟骨魚類もまた、重鎖抗体(IgNAR;「免疫グロブリン新規抗原受容体」)を有し、これらからVNARフラグメントと呼ばれる単一ドメイン抗体を得ることができる。したがって、いくつかの場合では、親和性因子はIgNARである。
【0089】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の部分、例えば、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント;ダイアボディ;線状抗体(Zapata et al.(1995)Protein Eng.8(10):1057-1062);ドメイン抗体(dAb;Holt et al.(2003)Trends Biotechnol.21:484);一本鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、「Fab」フラグメントと呼ばれる、各々が単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残りの「Fc」フラグメントとが生成される。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、なお抗原を架橋することができるF(ab’)フラグメントが生成する。抗体断片には、例えば、scFv、sdAb、dAb、Fab、Fab’、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、Feb、及びSMIPが含まれる。sdAbの例は、ラクダ科VHH及び軟骨魚類VNARである。
【0090】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの緊密な非共有結合による二量体からなる。この構成では、各可変ドメインの3つの相補性決定領域(CDR)が相互作用して、V-V二量体の表面に抗原結合部位を画定する。総合すると、6つのCDRが抗原結合特異性を抗体に付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(すなわち抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識し、結合する能力を有する。
【0091】
「一本鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。いくつかの実施形態では、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、sFvは抗原結合のための所望の構造を形成することができる。sFvの概説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。
【0092】
用語「ダイアボディ」とは、同一ポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片(V-V)を指す。同一鎖内の2つのドメイン間で対形成するには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインはもう一方の鎖の相補的ドメインと対形成し、2つの抗原結合部位が作出される。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollinger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448にさらに完全に記載されている。
【0093】
本開示の複合体に含めるのに適した抗体は、融合ポリペプチド、例えば、i)標的ポリペプチドに結合する抗体とii)融合パートナーとを含む融合ポリペプチドであり得る。いくつかの場合では、融合パートナーは、直接的にまたはリンカーを介して、光異性化調節因子の共有結合を提供するアンカードメインである。いくつかの場合では、融合パートナーはHALOタグである。いくつかの場合では、融合パートナーはCLIPタグである。いくつかの場合では、融合パートナーはSNAPタグである。
【0094】
小分子
本開示の複合体における親和性因子としての使用に適した小分子には、2kDa未満、1kDa未満、500ダルトン未満、250ダルトン未満、200ダルトン未満、100ダルトン未満、75ダルトン未満、または50ダルトン未満の分子量を有する小分子が含まれる。例えば、本開示の複合体における親和性因子としての使用に適した小分子は、10ダルトン~2kDa、例えば、10ダルトン~25ダルトン、25ダルトン~50ダルトン、50ダルトン~100ダルトン、100ダルトン~150ダルトン、150ダルトン~250ダルトン、250ダルトン~500ダルトン、500ダルトン~1kDa、または1kDa~2kDaの分子量を有し得る。
【0095】
本開示の複合体における親和性因子としての使用に適した小分子は、一般的に、標的リガンド結合ポリペプチドのリガンドではない。本開示の複合体における親和性因子としての使用に適した小分子は、一般的に、リガンドが結合する部位以外の部位で標的リガンド結合ポリペプチドに結合し、標的リガンド結合ポリペプチドへのリガンドの結合を実質的に阻害しない。
【0096】
アプタマー
親和性因子としての使用に適したアプタマーには、RNAアプタマー、DNAアプタマー、及びペプチドアプタマーが含まれる。本開示の複合体に含めるのに適したアプタマーは、光異性化調節因子に存在するリガンドが標的リガンド結合ポリペプチドに結合することを阻害しない。一般的に、本開示の複合体に含めるのに適したアプタマーは、標的リガンド結合ポリペプチドの活性を実質的に変化させない。
【0097】
核酸アプタマーは、約10ヌクレオチド~約200ヌクレオチド、例えば、10ヌクレオチド(nt)~15nt、10nt~15nt、15nt~20nt、20nt~25nt、25nt~50nt、50nt~75nt、75nt~100nt、100nt~150nt、または150nt~200ntの長さを有し得る。核酸アプタマーは、約10ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの長さを有し得る。核酸アプタマーは、約10ヌクレオチド~約25ヌクレオチドの長さを有し得る。
【0098】
DNAアプタマーは、任意の公知の方法を使用して調製することができる。例えば、DNA-SELEX法を使用することができる。SELEX法では、ラウンド数を増やしたり、競合物質を用いたりして厳しい選択条件を設定することにより、標的ポリペプチドに対してより強い結合能を示すアプタマーを濃縮し、選択する。したがって、SELEXのラウンド数を調整し、及び/または競合条件を変更したりすることにより、結合力が異なるアプタマー、結合モードが異なるアプタマー、結合力または結合モードは同じであるが塩基配列が異なるアプタマーを取得することができる。SELEX法は、ポリメラーゼ連鎖反応による増幅プロセスを含み;そのプロセス中にマンガンイオンなどを用いて変異を起こすことにより、より多様性の高いSELEXを行うことができる。ポリペプチド(またはポリペプチドの部分)に特異的なアプタマーは、例えば、Ogawa,A.,et al.,Bioorg.Med.Chem,Lett,14:4001-4004,2004;及びJayasena,S.D.,Clinical Chemistry 45:1628-1650,1999に記載されているような標準的な技術を用いて産生することができる。
【0099】
核酸アプタマーには、天然ヌクレオチドを含ませることができ、非天然ヌクレオチドも含ませてもよい。天然ヌクレオチドのみを含むDNAアプタマーには、天然塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、及びチミンのいずれかを有するデオキシリボヌクレオチドからなるDNAアプタマーが含まれる。天然ヌクレオチドのみを含むRNAアプタマーには、天然塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、及びウラシルのいずれかを有するリボヌクレオチドからなるRNAからなるRNAアプタマーが含まれる。非天然ヌクレオチドは、非天然塩基、リン酸基、及び糖を含む。非天然塩基(または「人工塩基」)とは、天然ヌクレオチドを構成する天然塩基の特性と同様の特性を有し、天然塩基と同様に、そのパートナー塩基類似体(「補完的人工塩基」と呼ばれる)と人工塩基対合を形成することができる人工的に構築された塩基類似体を指す。用語「人工塩基対合」とは、相補的な天然塩基であるアデニンとチミン、アデニンとウラシル、またはグアニンとシトシンのペアのように、相補的人工塩基のペアの間で形成される塩基対合を指す。人工塩基対合には、天然塩基間の塩基対合において認められる水素結合による化学的結合、人工塩基間の分子構造に基づく会合による物理的結合、及び疎水性相互作用によるスタッキング効果が含まれる。
【0100】
アプタマーは、例えば、以下のような1つ以上の部分を含むように改変し得る:2’-O-メチル部分;2’-NH部分など。
【0101】
様々なポリペプチドに結合するアプタマーは、当技術分野で公知である。例えば、アプタマーのデータベースは、インターネット上のwww.aptagen.com/aptamer-index/aptamer-listにおいて入手可能である。さらに、上記のように、当業者であれば、目的の標的リガンド結合ポリペプチドに結合するアプタマーを容易に設計することができる。
【0102】
光異性化調節因子
上記のように、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、i)光異性化基と、ii)標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む。
【0103】
光異性化基
光異性化基は当技術分野で公知であり、任意の公知の光異性化基を、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子に含ませることができる。適切な光異性化基として、アゾベンゼン、環状アゾベンゼン及びアゾヘテロアレーンならびにその誘導体;スピロピラン及びその誘導体;トリフェニルメタン及びその誘導体;4,5-エポキシ-2-シクロペンテン及びその誘導体;フルギド及びその誘導体;チオインジゴ及びその誘導体;ジアリールエテン及びその誘導体;ジアリルエテン及びその誘導体;過密アルケン(overcrowded alkene)及びその誘導体;ならびにアントラセン及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、適切な光異性化基は、本明細書の実施例に示すような光異性化基である。
【0104】
適切なスピロピラン誘導体として、1,3,3-トリメチルインドリノベンゾピリロスピラン;1,3,3-トリメチルインドリノ-6’-ニトロベンゾピリロスピラン;1,3,3-トリメチルインドリノ-6’-ブロモベンゾピリロスピラン;1-n-デシル-3,3-ジメチルインドリノ-6’-ニトロベンゾピリロスピラン;1-n-オクタデシ-1-3,3-ジメチルインドリノ-6’-ニトロベンゾピリロスピラン;3’,3’-ジメチル-6-ニトロ-1’-[2-(フェニルカルバモイル)エチル]スピロ;[2H-1-ベンゾピラン-2,2’-インドリン];1,3,3-トリメチニルインドリノ-8’-メトキシベンゾピリロスピラン;及び1,3,3-トリメチルインドリノ-β-ナフトピリロスピランが挙げられるが、これらに限定されない。スピロピランまたはスピロピラン誘導体に対応するメロシアニン型も使用に適している。
【0105】
適切なトリフェニルメタン誘導体として、マラカイトグリーン誘導体が挙げられるが、これに限定されない。具体的には、例えば、ビス[ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、ビス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、ビス[4-(ジブチルアミノ)フェニル]フェニルメタノール、及びビス[4-(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメタンが挙げられる。
【0106】
適切な4,5-エポキシ-2-シクロペンテン誘導体として、例えば、2,3-ジフェニル-1-インデノンオキシド及び2’,3’-ジメチル-2,3-ジフェニル-1-インデノンオキシドが挙げられる。
【0107】
適切なアゾベンゼン化合物として、例えば、側鎖に架橋されたアゾベンゼン残基を有する化合物、例えば、4-カルボキシアゾベンゼンがポリビニルアルコールのヒドロキシル基にエステル結合されている化合物、または4-カルボキシアゾベンゼンがポリアリルアミンのアミノ基にアミド結合されている化合物が挙げられる。主鎖にアゾベンゼン残基を有するアゾベンゼン化合物、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン(ビスフェノールAとも呼ばれる)と4,4’-ジカルボキシアゾベンゼンとのエステル結合、またはエチレングリコールと4,4’-ジカルボキシアゾベンゼンとのエステル結合で形成される化合物も適している。
【0108】
対象の複合体及び光異性化調節因子での使用に適合させることができる適切な環状アゾベンゼン及びアゾヘテロアレーン化合物として、11,12-ジヒドロジベンゾ[c,g][1,2]ジアゾシン-5-オキシド、
、ヘテロジアゾシン、例えば、Hammerich et al. J.Am.Chem.Soc.,2016,138(40),pp13111-13114)に記載されている光スイッチ、ならびにその開示を参照により本明細書に援用するCalbo et al. J.Am.Chem.Soc.,2017,139(3),pp1261-1274に記載されているアゾヘテロアレーン光スイッチ、例えば、3-ピラゾール(3pzHまたは3pzMe)、5-ピラゾール(5pzHまたは5pzMe)、3-ピロール(3pyHまたは3pyMe)、トリアゾール及びテトラゾール(tetまたは3tri)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
適切なフルギド誘導体として、イソプロピリデンフルギド及びアダマンチリデンフルギドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
適切なジアリルエテン誘導体として、例えば、1,2-ジシアノ-1,2-ビス(2,3,5-トリメチル-4-チエニル)エタン;2,3-ビス(2,3,5-トリメチル-4-チエチル)無水マレイン酸;1,2-ジシアノ-1,2-ビス(2,3,5-トリメチル-4-セレニル)エタン;2,3-ビス(2,3,5-トリメチル-4-セレニル)無水マレイン酸;及び1,2-ジシアノ-1,2-ビス(2-メチル-3-N-メチルインドール)エタンが挙げられる。
【0111】
適切なジアリールエテン誘導体として、置換パーフルオロシクロペンテン-ビス-3-チエニル及びビス-3-チエニルマレイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
適切な過密アルケンとして、シス-2-ニトロ-7-(ジメチルアミノ)-9-(2’,3’-ジヒドロ-1’H-ナフト[2,1-b]チオピラン-1’-イリデン)-9H-チオキサンテン及びトランス-ジメチル-[1-(2-ニトロ-チオキサンテン-9-イリデン)-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[f]チオクロメン-8-イル]アミンが挙げられるが、これらに限定されない。過密アルケンは文献に記載されている。例えば、terWiel et al.(2005)Org.Biomol.Chem.3:28-30;及びGeertsema et al.(1999)Agnew CHem.Int.Ed.Engl.38:2738を参照のこと。
【0113】
他の適切な光異性化部分として、例えば、ジアゾケトン、アジ化アリール、ジアゼレン、及びベンゾフェノンを含む、親和性標識に一般的に使用される反応基が挙げられる。
【0114】
リガンド
本明細書中で使用する場合、用語「リガンド」とは、ポリペプチドに結合し、ポリペプチドの活性に変化を与え、及び/またはポリペプチドの立体構造に変化を与え、及び/またはポリペプチドへの別のポリペプチドの結合に作用するか、またはポリペプチドに対する別のリガンドの影響に作用する分子(例えば、小分子、ペプチド、またはタンパク質)を指す。リガンドには、アゴニスト、部分アゴニスト、逆アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節因子、及び遮断剤が含まれる。
【0115】
いくつかの場合では、リガンドは天然リガンドである。他の場合では、リガンドは合成リガンドである。いくつかの場合では、リガンドは内在性リガンドである。いくつかの場合では、リガンドはアゴニストである。いくつかの場合では、リガンドは逆アゴニストである。他の場合では、リガンドは部分アゴニストである。他の場合では、リガンドはアンタゴニストである。他の場合では、リガンドはアロステリック調節因子である。他の場合では、リガンドは遮断剤である。用語「アンタゴニスト」とは、一般的に、リガンド結合ポリペプチドに結合し、リガンド結合ポリペプチドの結合を阻害する作用物質を指す。「アンタゴニスト」は、オルソステリック部位(アゴニストが結合するのと同じ部位)またはアロステリック部位にまたはその近くに結合するが、リガンド結合ポリペプチドを活性化しない作用物質であってもよく;代わりに、アンタゴニストは一般的に、アゴニストによる結合を排除するか、アゴニストによる活性化を妨害し、したがって活性化を防止または妨害する。「アロステリック調節因子」は、オルソステリックリガンド結合部位から離れたアロステリック部位に結合する作用物質であってもよく、アロステリックリガンドの結合がオルソステリックリガンドに対する感受性または効力を低下させる(負のアロステリック調節因子)か、またはオルソステリックリガンドの感受性または効力を増加させる(正のアロステリック調節因子)。用語「遮断剤」とは、活性部位、細孔、またはアロステリック部位に直接作用する作用物質を指す。本明細書における使用に適したリガンドは、リガンド結合ポリペプチドのリガンド結合部位に可逆的に結合する。
【0116】
リガンドは、部分的には、標的リガンド結合ポリペプチド、及び標的リガンド結合ポリペプチドに対する所望の効果に基づいて選択する。例えば、ホルモン結合転写因子のリガンドは、いくつかの場合では、ホルモン、もしくはホルモンの合成類似体、またはホルモン結合もしくはホルモン作用を正もしくは負に干渉もしくは調節するリガンドである。テトラサイクリントランスアクチベーターのリガンドは、いくつかの場合ではテトラサイクリンまたはその合成類似体である。酵素のリガンドは、いくつかの場合では、酵素の合成アゴニストまたはアンタゴニストである。いくつかの場合では、リガンドはリガンド結合部位を遮断する。酵素またはイオンチャネルのリガンドは、いくつかの場合では、酵素の活性部位またはイオンチャネルの細孔の遮断剤である。リガンド依存性イオンチャネルもしくはGタンパク質共役受容体または他の膜関連もしくは可溶性受容体のリガンドは、いくつかの場合では、天然リガンド、もしくはリガンドの合成版、例えばリガンドの合成類似体、または、そのリガンドの結合もしくは作用を正もしくは負に干渉もしくは調節するリガンドである。
【0117】
いくつかの場合では、リガンドは小分子リガンドである。小分子リガンドは、約50ダルトン~約3000ダルトン、例えば、約50ダルトン~約75ダルトン、約75ダルトン~約100ダルトン、約100ダルトン~約250ダルトン、約250ダルトン~約500ダルトン、約500ダルトン~約750ダルトン、約750ダルトン~約1000ダルトン、約1000ダルトン~約1250ダルトン、約1250ダルトン~約1500ダルトン、約1500ダルトン~約2000ダルトン、約2000ダルトン~約2500ダルトン、または約2500ダルトン~約3000ダルトンの範囲の分子量を有し得る。
【0118】
他の場合では、リガンドはペプチドリガンドである。ペプチドリガンドは、約1kDa~約20kDa、例えば、約1kDa~約2kDa、約2kDa~約5kDa、約5kDa~約7kDa、約7kDa~約10kDa、約10kDa~約12kDa、約12kDa~約15kDa、または約15kDa~約20kDaの範囲の分子量を有し得る。ペプチドリガンドは、2アミノ酸~20アミノ酸の長さを有し得る。例えば、ペプチドリガンドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸の長さを有し得る。ペプチドリガンドは、2アミノ酸~5アミノ酸、5アミノ酸~10アミノ酸、10アミノ酸~15アミノ酸、または15アミノ酸~20アミノ酸の長さを有し得る。ペプチドリガンドは、20アミノ酸より長く、例えば、最大200アミノ酸であり得る。
【0119】
適切なリガンドには、リガンド結合タンパク質の機能を遮断または活性化するリガンドが含まれるが、これらに限定されず、ここで、リガンド結合タンパク質として、イオン及び高分子透過チャネル;受容体(トランスミッターに結合するイオンチャネル型受容体;ホルモンに結合するイオンチャネル型受容体;代謝型受容体及び他のGタンパク質共役受容体;受容体チロシンキナーゼ;増殖因子受容体;及び可溶性または膜結合型または細胞外小分子またはタンパク質への結合によりシグナル伝達する他の膜受容体が挙げられるが、これらに限定されない);輸送体(イオン輸送体、有機分子輸送体、ペプチド輸送体、タンパク質輸送体が挙げられるが、これらに限定されない);酵素(キナーゼ;ホスファターゼ;ユビキチンリガーゼ;アセチラーゼ;オキソ-レダクターゼ;リパーゼ;タンパク質に脂質部分を付加するかまたは除去する酵素;プロテアーゼ;ならびにリガーゼ、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、及びテロメラーゼを含むがこれらに限定されない、核酸を修飾する酵素が挙げられるが、これらに限定されない);モータータンパク質(キネシン、ダイニン及び他の微小管ベースのモーター、ミオシン及び他のアクチンベースのモーター、DNA及びRNAポリメラーゼならびにポリヌクレオチドに沿って追跡する他のモーターを含む);骨格タンパク質;アダプタータンパク質;細胞骨格タンパク質;ならびに細胞内のタンパク質ドメイン及び上部構造を局在化または組織化する他のタンパク質が挙げられる。
【0120】
適切なリガンドには、全身麻酔薬として機能するリガンド;局所麻酔薬として機能するリガンド;鎮痛剤として機能するリガンド;合成及び半合成のオピオイド鎮痛薬(例えば、フェナントレン、フェニルヘプチルアミン、フェニルピペリジン、モルフィナン、及びベンゾモルファン)(例示的なオピオイド鎮痛薬として、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ペンタゾシン、ヒドロモルホン、メペリジン、メサドン、レボルファノール、オキシモルフォン、レバロルファン、コデイン、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、プロポキシフェン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、及びペンタゾシン;イオンチャネル型グルタミン酸受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、例えば、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体アゴニスト、アンタゴニスト、及びアロステリック調節因子、カイニン酸(KA)受容体アゴニスト及びアンタゴニスト、及びアロステリック調節因子、α-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチルイソオキサゾール-4-プロピオン酸(AMPA)受容体アゴニスト及びアンタゴニスト及びアロステリック調節因子、ならびに代謝型グルタミン酸受容体アゴニスト及びアンタゴニスト及びアロステリック調節因子;非オピオイド鎮痛薬、例えば、アセチルサリチル酸、トリサリチル酸コリンマグネシウム、アセトアミノフェン、イブプロフェン、フェノプロフェン、ジフルシナル、及びナプロキセン;ムスカリン受容体アゴニスト;ムスカリン受容体拮抗薬;アセチルコリン受容体アゴニスト;アセチルコリン受容体アンタゴニスト;セロトニン受容体アゴニスト;セロトニン受容体アンタゴニスト;酵素阻害剤;ベンゾジアゼピン、例えば、クロルジアゼポキシド、クロラゼペート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパムまたはトリアゾラム;バルビツール酸系鎮静剤、例えば、アモバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メホバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、タルブタール、チアミラール、またはチオペンタール;鎮静作用を有するHアンタゴニスト、例えばジフェンヒドラミン、ピリラミン、プロメタジン、クロルフェニラミン、またはクロルシクリジン;NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、デキストロメトルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)またはその代謝産物であるデキストロルファン((+)-3-ヒドロキシ-N-メチルモルフィナン)、ケタミン、メマンチン、ピロロキノリンキノン、シス-4-(ホスホノメチル)-2-ピペリジンカルボン酸、ブジピン、トピラマート、ネラメキサン、またはペルジンホテル;αアドレナリン作動薬、例えば、ドキサゾシン、タムスロシン、クロニジン、グアンファシン、デクスメタトミジン、モダフィニル、フェントラミン、テラザシン、プラザシンまたは4-アミノ-6,7-ジメトキシ-2-(5-メタン-スルホンアミド-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノール-2-イル)-5-(2-ピリジル)キナゾリン;三環系抗うつ薬、例えば、デシプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン、またはノルトリプチリン;抗けいれん薬、例えば、カルバマゼピン、ラモトリジン、トピラマート、またはバルプロ酸塩;タキキニン(NK)アンタゴニスト、特にNK-3、NK-2またはNK-1アンタゴニスト、例えば、(α-R,9R)-7-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル]-8,9,10,11-テトラヒドロ-9-メチル-5-(4-メチルフェニル)-7H-[1,4]ジアゾシノ[2,1-g][1,7]-ナフチリジン-6-13-ジオン(TAK-637)、5-[[(2R,3S)-2-[(1R)-1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エトキシ-3-(4-フルオロフェニル)-4-モルホリニル]-メチル]-1,2-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾール-3-オン(MK-869)、アプレピタント、ラネピタント、ダピタントまたは3-[[2-メトキシ-5-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-メチルアミノ]-2-フェニルピペリジン(2S,3S);ムスカリンアンタゴニスト、例えば、オキシブチニン、トルテロジン、プロピベリン、塩化トロスピウム、ダリフェナシン、ソリフェナシン、テミベリン、またはイプラトロピウム;シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)選択的阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、パレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、またはルミラコキシブ;バニロイド受容体アゴニスト(例えば、レジンフェラトキシン)またはアンタゴニスト(例えば、カプサゼピン);プロプラノロールなどのβアドレナリン作動薬;5-HT受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、例えば、5-HTB/Dアゴニスト、例えば、エレトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタンまたはリザトリプタン;R(+)-α-(2,3-ジメトキシ-フェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニルエチル)]-4-ピペリジンメタノール(MDL-100907)などの5-HTA受容体アンタゴニストなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
Naチャネルに適したリガンドとして、リドカイン、ノボカイン、キシロカイン、リグノカイン、ノボカイン、カルボカイン、エチドカイン、プロカイン、プロントカイン、プリロカイン、ブピバカイン、シンコカイン、メピバカイン、キニジン、フレカイニド、プロカイン、N-[[2’-(アミノスルホニル)ビフェニル-4-イル]メチル]-N’-(2,2’-ビチエン-5-イルメチル)スクシンアミド(BPBTS)、QX-314、サキシトキシン、テトロドトキシン、及びIII型コノトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。Naチャネルに適したリガンドとしてはまた、テトロドトキシン、サキシトキシン、グアニジニウム、ポリアミン(例えば、スペルミン、カダベリン、プトレシン、μ-コノトキシン、及びδ-コノトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
チャネルに適したリガンドとして、第4級アンモニウム(例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム)、4-アミノピリジン、スルホニル尿素、グリベンクラミド、トルブタミド;フェントラミン、キウニン、クニジン、ペプチドトキシン(例えば、カリブドトキシン、アジトキシン-2、アパミン、デンドロトキシン、VSTX1、ハナトキシン-1、ハナトキシン-2、及びチチウストキシンK-αが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
CNG及びHCNチャネルのための適切なリガンドとして、1-シスジルチアゼム及びZD7288が挙げられるが、これらに限定されない。グリシン受容体に適したリガンドとして、ストリキニーネ及びピクロトキシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
ニコチン性アセチルコリン受容体に適したリガンドとして、(+)ツボクラリン、メチルリカコニチン、ガラミン、ニコチン;アナトキシンA、エピバチジン、ABT-94、ロフォトキシン、シチシン、ヘキサメトニウム、メカミラミン、及びジヒドロ-β-エリスロジンが挙げられるが、これらに限定されない。ムスカリン性アセチルコリン受容体に適したリガンドとして、米国特許第7,439,255号に記載されているムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニスト;AF267B(例えば、米国特許第7,439,251号を参照のこと);フェニルプロパルギルオキシ-1,2,5-チアジアゾール-キヌクリジン;カルバコール;ピレンザピン;ミグラスタチン;米国特許第7,232,841号に記載されている化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
GABA受容体に適したリガンドとして、ムシモール、THIP、プロカビド、ビククリン、ピクロトキシン、ガバジン、ガバペンチン、ジアゼパム、クロナゼパム、フルマゼニル、β-カルボリンカルボン酸エチルエステル、バクロフェン、ファクロフェン、及びバルビツール酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
多くの適切なリガンドが当業者に公知であり;リガンドの選択は、部分的には、リガンドが結合する標的(例えば、受容体、イオンチャネル、酵素など)に依存するであろう。
【0127】
複合体及び光異性化調節因子の化学式
いくつかの場合では、本開示の光異性化調節因子を含む複合体は、式:(A)-X-(B)-X-(C)を有する化合物であり、式中:
Aは親和性因子であり;
Bは光異性化基であり;
Cはリガンドであり;
は、存在する場合、リンカーであり;及び
は、存在する場合、リンカーである。
【0128】
適切なリガンドは、上記の式を有する。いくつかの場合では、リガンドは、ナトリウムチャネルリガンド、合成リガンド、イオンチャネル型受容体のリガンド結合部位に結合するリガンド、代謝型受容体のリガンド結合部位に結合するリガンド、麻酔薬として機能するリガンド、カリウムチャネルリガンド、γアミノ酪酸受容体リガンドである。これらの実施形態のいくつかでは、リガンドは、ナトリウムチャネルリガンド、カリウムチャネルリガンド、またはγアミノ酪酸受容体リガンドである。いくつかの場合では、リガンドは、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節因子、または遮断剤である。
【0129】
任意の便利な光スイッチまたは光異性化基を、本開示の複合体及び光異性化調節因子での使用に適合させることができる。目的の光スイッチまたは光異性化基として、米国特許第8,114,843号、米国特許第8,178,496号、及びWO2010/051343に記載されているものが挙げられ、これらの開示はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0130】
いくつかの場合では、本開示の複合体は、式:(A)-X-(B)-X-(C)を有する化合物であり、式中:
Aは親和性因子であり;
Bは、アゾベンゼン、環状アゾベンゼン、アゾヘテロアレーン、フルギド、スピロピラン、トリフェニルメタン、チオインジゴ、ジアリールエテン、または過密アルケンから選択される光異性化基であり;
Cはリガンドであり;
は、存在する場合、リンカーであり;及び
は、存在する場合、リンカーである。
【0131】
適切なリンカーとして、ポリカーボン鎖;ポリ(エチレングリコール);ペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、リンカーはC-C25アルキルである。いくつかの場合では、リンカーは、置換C-C25アルキルである。いくつかの場合では、リンカーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)であり、PEGは2~50個のエチレングリコールモノマーを含み;例えば、PEGは、2~5、5~10、10~15、15~20、20~25、25~30、30~35、35~40、40~45、または45~50のエチレングリコール単位を含む。いくつかの場合では、リンカーは、2アミノ酸~50アミノ酸のペプチド、例えば、2アミノ酸~5アミノ酸、5アミノ酸~10アミノ酸、10アミノ酸~15アミノ酸、15アミノ酸~20アミノ酸、20アミノ酸~25アミノ酸、25アミノ酸~30アミノ酸、または30アミノ酸~50アミノ酸のペプチドである。いくつかの場合では、リンカーは、長さが、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸のペプチドである。
【0132】
適切なリガンドとして、上記のリガンドが挙げられる。いくつかの場合では、リガンドは、ナトリウムチャネルリガンド、合成リガンド、イオンチャネル型受容体のリガンド結合部位に結合するリガンド、代謝型受容体のリガンド結合部位に結合するリガンド、麻酔薬として機能するリガンド、カリウムチャネルリガンド、γアミノ酪酸受容体リガンドである。いくつかの例では、リガンドは、ナトリウムチャネルリガンド、カリウムチャネルリガンド、またはγアミノ酪酸受容体リガンドである。いくつかの場合では、リガンドは、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節因子、または遮断剤である。
【0133】
いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した光異性化調節因子は:i)適合性のある反応性官能基を有する親和性因子に共有結合した化学選択性官能基(CFG)(例えば、本明細書に記載されるような、例えば、抗体);ii)リンカー;iii)光異性化部分;及びiv)リガンドを含む。例えば、式CFG-X-(B)-X-(C)の化合物は、親和性因子(A)と複合体化することができる。本明細書中で使用する場合、用語「化学選択性官能基」及び「化学選択的タグ」は同じ意味で用いられ、いくつかの場合では官能基のうちの1つの任意の活性化後に、別の適合性官能基と選択的に反応して共有結合を形成することができる官能基を指す。目的の化学選択性官能基として、チオール及びマレイミドまたはヨードアセトアミド、アミン及びカルボン酸またはその活性エステル、ならびにクリックケミストリーを介して互いに反応することができる基、例えば、アジド及びアルキン基(例えば、シクロオクチン基)、テトラジン、トランスシクロオクテン、ジエン及びジエノフィル、及びアジド、硫黄(VI)-フッ化物交換化学(SuFEX)、フッ化スルホニル、ならびにヒドロキシル、ヒドラジド、ヒドラジノ、アルデヒド、ケトン、アジド、アルキン、ホスフィン、エポキシドなどが挙げられる。
【0134】
いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した光異性化調節因子は:i)SNAPタグ、HALOタグ、CLIPタグ、または他の親和性タグに共有結合する部分;ii)リンカー;iii)光異性化部分;及びiv)リガンドを含む。例えば、いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した光異性化調節因子は:i)ベンジルグアニン(SNAPタグ、例えば、抗体-SNAPタグ融合ポリペプチド中に存在するSNAPタグへの共有結合用);ii)リンカー;iii)光異性化部分;及びiv)リガンドを含む。別の例として、いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した光異性化調節因子は:i)クロロアルカン(HALOタグ、例えば、抗体-HALOタグ融合ポリペプチドに存在するHALOタグへの共有結合用);ii)リンカー;iii)光異性化部分;及びiv)リガンドを含む。別の例として、いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した光異性化調節因子は:i)ベンジルシトシン(CLIPタグ、例えば、抗体-CLIPタグ融合ポリペプチドに存在するCLIPタグへの共有結合用);ii)リンカー;iii)光異性化部分;及びiv)リガンドを含む。
【0135】
特定の例では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、シス異性型において遮断剤(例えば、カリウムチャネル遮断剤及び/またはナトリウムチャネル遮断剤及び/またはカルシウムチャネル遮断剤)として機能する。他の場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、トランス異性型において遮断剤(例えば、カリウムチャネル遮断剤、及び/またはナトリウムチャネル遮断剤、及び/またはカルシウムチャネル遮断剤)として機能する。
【0136】
いくつかの例では、複合体の光異性化基(例えば、本明細書中で定義するような)は、以下の式のうちの1つのアゾベンゼンまたはアゾヘテロアレーン光スイッチであり:
式中、
Hetは、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであり;
及びRは、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択される1つ以上の任意の置換基であり、式中、R10~R13は、以下に定義するとおりであり、またはRとRが環状に連結して環状アゾベンゼンまたは環状アゾヘテロアレーンを提供する。
【0137】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式I:
の化合物またはその薬学的に許容される塩から誘導され、
式中、
は-CH-または-C(=O)-であり;
は、
であり;
各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは、1~5の整数であり;
yは、1~4の整数であり;
は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
、R、及びRは、水素、C-Cアルキル、置換C2-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから独立して選択され;
各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、S(O)10から選択され;
10及びR11は、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
12は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
13は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C-C10アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、-CH-N(CHCH 、及びCH-SO -から選択される。
【0138】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式IIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、
各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは、1~5の整数であり;
yは、1~4の整数であり;
は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
、R、及びRは、独立して、水素、C2-8アルキル、置換C2-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR10R11、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
10及びR11は、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
12は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、及び置換C4-10シクロアルケニルから選択され;
13は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C-C10アリール、置換C6-20アリール、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、-CH-N(CHCH3+、及びCH-SO -から選択される。
【0139】
式(I)のいくつかの例では、Rのうちの1つは、親和性因子に共有結合することができる化学選択性官能基を含むリンカーである(例えば、本明細書中に記載するように)。式(I)のいくつかの例では、Rのうちの1つは、連結された親和性因子へのリンカーである(例えば、本明細書中に記載するように)。
【0140】
式Iの特定の実施形態では、Qは-CH-である。式Iの特定の実施形態では、Qは-C(=O)-である。
【0141】
式Iの特定の実施形態では、Q
である。式Iの特定の実施形態では、Q
である。
【0142】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRは、C2-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRはC2-5アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRはCアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRはCアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRはCアルキルである。式I及びIIの特定の実施形態では、R、R、及びRは水素である。
【0143】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRは、独立して、C2-8アルキルまたは置換C2-8アルキルから選択される。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRは、独立して、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニルから選択される。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRは、独立して、C6-20アリールまたは置換C6-20アリールから選択される。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R、R、及びRは、独立して、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、または置換C4-10シクロアルケニルから選択される。
【0144】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは水素である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、RはC1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、RはC1-5アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは水素またはC1-5アルキルである。
【0145】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは、C1-10アルキルまたは置換C1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは、C6-20アリールまたは置換C6-20アリールである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、または置換C4-10シクロアルケニルである。
【0146】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、またはハロである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つはC1-4アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つはハロである。
【0147】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは-NR1011または-NR12C(O)R13である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、または置換C2-10アルキニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、または複素環式である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、またはヘテロシクロアミノである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、または置換C4-10シクロアルケニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、または-S(O)10である。
【0148】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは水素である。
【0149】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C1-8アルキル、例えばC1-6アルキル、C1-5アルキルまたはC1-4アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つのいくつかの実施形態では、Rの少なくとも1つはC1-4アルキルである。
【0150】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは-NR12C(O)R13である。
【0151】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは-NR1011である。
【0152】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C1-10アルキルまたは置換C1-10アルキルである。
【0153】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、または置換C2-10アルキニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C6-20アリールまたは置換C6-20アリールである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、ヘテロアリール、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、またはヘテロシクロアミノである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、または置換C4-10シクロアルケニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rの少なくとも1つは、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10である。
【0154】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は水素である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12はC1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は、C1-5アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は、水素またはC1-5アルキルである。
【0155】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は水素である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は、C1-10アルキルまたは置換C1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、または置換C2-10アルキニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は、C6-20アリールまたは置換C6-20アリールである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、または置換C4-10シクロアルケニルである。
【0156】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、水素またはC1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13はC1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13はC1-5アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、水素またはC1-5アルキルである。
【0157】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、アルケニルまたは置換アルケニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13はC1-10アルケニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13はC1-5アルケニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は水素またはC1-5アルケニルである。
【0158】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、Cアリールまたは置換Cアリールである。
【0159】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、-CH-N(CHCH または-CH-SO である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は-CH-N(CHCH である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は-CH-SO である。
【0160】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は水素である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、C1-10アルキルまたは置換C1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、C2-10アルケニルまたは置換C2-10アルケニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、C2-10アルキニルまたは置換C2-10アルキニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、C6-10アリールまたは置換C6-20アリールである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、または置換C4-10シクロアルケニルである。
【0161】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは水素である。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、C1-10アルキルまたは置換C1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、または置換C2-10アルキニルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、C6-20アリールまたは置換C6-20アリールである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、または置換C4-10シクロアルケニルである。
【0162】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、C1-10アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つはC2-5アルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つはCアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つはCアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つはCアルキルである。
【0163】
上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、またはヘテロシクロオキシで置換されたアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、アリール、ヘテロアリール、または複素環で置換されたアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、アリールで置換されたアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、ヘテロアリールで置換されたアルキルである。上記の式I及びIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R10及びR11の少なくとも1つは、複素環で置換されたアルキルである。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式IIIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは1~5の整数であり;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0165】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式IVの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C10アルケニル、C2-10アルキニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは1~5の整数であり;
は、水素またはC10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、Cアルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0166】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式Vの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、-NR1011、及び-NR12C(O)R13から選択され;
xは1~5の整数であり;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0167】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式VIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、各Rは、独立して、水素、C1-10アルキル、-NR1011、及び-NR12C(O)R13から選択され;
xは1~5の整数であり;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0168】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式VIIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、Rは、水素、C1-10アルキル、-NR1011、及び-NR12C(O)R13から選択され;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0169】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式VIIIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、Rは、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。いくつかの場合では、式VIIIの化合物はカルボニル基を有さない。
【0170】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式IXの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、Rは、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは1~4の整数であり;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
及びRのそれぞれは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0171】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式Xの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中、Rは、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは1~4の整数であり;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
及びRのそれぞれは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。いくつかの場合では、窒素は永続的に荷電していない。
【0172】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式XIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中
は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは1~4の整数であり;
yは1~4の整数であり;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
、R、及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
及びRのそれぞれは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0173】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、式XIIの化合物またはその薬学的に許容される塩であり:
式中
は、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
xは1~4の整数であり;
yは1~4の整数であり;
は、水素またはC1-10アルキルであり;
及びRは、独立して、水素及びC2-8アルキルから選択され;
及びRのそれぞれは、独立して、水素、C1-10アルキル、置換C1-10アルキル、-NR1011、-NR12C(O)R13、C2-10アルケニル、置換C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、置換C2-10アルキニル、C6-20アリール、置換C6-20アリール、ヘテロアリール、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロチオ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロシクロアミノ、C4-10シクロアルキル、置換C4-10シクロアルキル、C4-10シクロアルケニル、置換C4-10シクロアルケニル、シアノ、ハロ、-OR10、-C(O)OR10、-SR10、-S(O)R10、-S(O)10から選択され;
10及びR11は、独立して、水素及びC1-10アルキルから選択され;
12は、水素またはC1-10アルキルであり;
13は、水素、C1-10アルキル、C1-8アルケニル、C6-10アリール、及び置換C1-10アルキルから選択される。
【0174】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは水素である。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、RはC1-10アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、RはC1-5アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは、水素またはC1-5アルキルである。
【0175】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは水素である。
【0176】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは、C1-8アルキル、例えばC1-6アルキル、C1-5アルキルまたはC1-4アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つのいくつかの実施形態では、RはC1-4アルキルである。
【0177】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、Rは-NR12C(O)R13である。
【0178】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は水素である。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12はC1-10アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12はC1-5アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R12は、水素またはC1-5アルキルである。
【0179】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は水素またはC1-10アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13はC1-10アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13はC1-5アルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、水素またはC1-5アルキルである。
【0180】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、アルケニルまたは置換アルケニルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、C1-10アルケニルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、C1-5アルケニルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、水素またはC1-5アルケニルである。
【0181】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、Cアリールまたは置換Cアリールである。
【0182】
上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、SOH、-SO 、-NR、-Nで置換されたアルキルであり、式中、R、R及びRは、同じであっても異なっていてもよく、水素、任意の置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環から選択される。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、SOHまたは-SO で置換されたアルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、-NRまたは-Nで置換されたアルキルである。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、-NRまたは-Nで置換されたアルキルであり、式中、R、R、及びRは同じであっても異なっていてもよく、水素及び任意の置換アルキルから選択される。上記の式III~XIIのいずれか1つの特定の実施形態では、R13は、-NRまたは-Nで置換されたアルキルであり、R、R及びRはアルキルである。
【0183】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、非永続的に荷電した化合物である。いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、置換アゾベンゼン基を含む。いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、シス遮断剤であり、例えば、シス異性型の場合に受容体(イオンチャネルなど)を遮断する。他の場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、トランス遮断剤であり、例えば、トランス異性型の場合に受容体(イオンチャネルなど)を遮断する。
【0184】
いくつかの場合では、本開示の複合体は、複数のポリペプチドに結合する。例えば、QAQは電位依存性カリウムチャネル(K)、電位依存性ナトリウムチャネル(Na)、及び電位依存性カルシウムチャネル(Ca)チャネルを遮断する。他の場合では、本開示の複合体は選択性を示し、例えば、いくつかの実施形態では、目的の合成調節因子は、電位依存性カリウムチャネルを選択的に遮断するが、電位依存性ナトリウムチャネルまたは電位依存性カルシウムチャネルを実質的に遮断しない。
【0185】
いくつかの場合では、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子は、赤方偏移光異性化基を含み、例えば、本開示の複合体に存在する光異性化調節因子の光異性化基は、第1の波長の光に曝露されると第1の異性型になり、第2の波長の光にさらされると第2の異性型になり、その場合、第2の波長は第1の波長の光に比べてスペクトルの赤色端方向にシフトしている。一例として、DAAQは、472nmで第1の異性型になり、550nmで第2の異性型になる。
【0186】
いくつかの場合では、本開示の複合体は膜透過性であり、例えば、細胞に加える追加の物理的、電気的、または化学的刺激を必要とせずに真核細胞膜を通過する。
【0187】
いくつかの場合では、本開示の複合体は膜不透過性であり、例えば、いくつかの場合では、本開示の複合体は、細胞に追加の物理的、電気的、または化学的刺激を加えることによってのみ真核細胞に侵入する。例えば、いくつかの場合では、本開示の複合体は、非選択的イオンチャネルを活性化する物理的、電気的、または化学的刺激の適用時にのみ真核細胞(例えば、ニューロン)に侵入する。非選択的イオンチャネルには、例えば、リガンド依存性非選択的カチオンチャネルが含まれる。非選択的カチオンチャネルとして、例えば、TRPV、P2XRなどが挙げられる。P2XR(すなわちP2Xプリン受容体7)は、例えば、Chessell et al.(2005)Pain 114:386;及びRassendren et al.(1997)J.Biol.Chem.272:5482に記載されている。P2XRは、アデノシン三リン酸(ATP)またはATP類似体によって活性化することができる。膜不透過性の光異性化調節因子の例はQAQである。
【0188】
TRPV(一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーV、メンバー1;バニロイド受容体1型としても知られる)は、例えば、43℃以上の熱、低pH、内在性カンナビノイドアナンダミド、N-アラキドノイル-ドーパミン、及びカプサイシンを含む、様々な内在性及び外来性の物理的及び化学的刺激により活性化されるリガンド依存性非選択的カチオンチャネルである。TRPVについては、例えば、Cui et al.(2006)J.Neurosci.26:9385を参照のこと。
【0189】
TRPVアゴニストとして、例えば、カプサイシン;カプサイシノイド(カプサイシノイドには、例えば、カプシエート(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル(E)-8-メチル-6-ノナノエート);ジヒドロカプシエイト(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル8-メチルノナノエート);ノルジヒドロカプシエート(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル7-メチル-オクタノエート);バニリルデカノエート、バニリルノナノエート、バニリルオクタノエートなどのカプシエート誘導体;バニリルアルコールの脂肪酸エステル;及びノルジヒドロカプシエートの鎖長と同様の脂肪酸鎖長を有する様々な直鎖または分岐鎖脂肪酸が含まれる);レシニフェラトキシン;オルバニル;チニアトキシン;米国特許公開第2006/0240097号に記載の化合物;米国特許公開第2009/0203774号に記載の化合物;米国特許公開第2009/0203667号に記載のペンタジエンアミド誘導体;米国特許公開第2009/0170942号に記載の化合物などが挙げられる。
【0190】
本開示の複合体に含めるのに適した例示的な化合物として、以下の構造が挙げられる:
【0191】
いくつかの場合では、標的ポリペプチドは、代謝調節型グルタミン酸受容体、例えば、mGluR2またはmGluR8(アマクリン細胞に存在し得る)またはmGluR6またはmGluR7(双極細胞に存在し得る)またはmGluR4(神経節細胞に存在し得る)である。これらの場合、適切な光異性化部分-リガンドの組み合わせは、D立体異性体結合を有するアゾベンゼン-グルタメートである。
【0192】
いくつかの場合では、標的ポリペプチドは、GluK2、GluK5、GluN2AまたはGluN2B(双極性細胞、アマクリン細胞または神経節細胞に存在し得る)などのイオンチャネル型グルタミン酸受容体である。これらの場合、適切な光異性化部分-リガンドの組み合わせは、L立体異性体結合を有するアゾベンゼン-グルタメートである。
【0193】
いくつかの場合では、標的ポリペプチドは、GluRA1などのイオンチャネル型グルタミン酸受容体である。一例として、適切な光異性化部分-リガンドの組み合わせは、ShuBQX-3である。
【0194】
いくつかの場合では、標的ポリペプチドは、イオンチャネル型ニコチン性アセチルコリン受容体(アマクリン細胞または神経節細胞に存在し得る)であり、リガンドは、AC-5、MAACh、HoChPE、MG-624またはMAHoChである。
【0195】
いくつかの場合では、標的ポリペプチドは、イオンチャネル型GABA-A受容体(アマクリン細胞または神経節細胞に存在し得る)であり、リガンドは、PAG-2A、PAG-2B、またはPAG-3Cである。
【0196】
いくつかの場合では、標的ポリペプチドは、イオンチャネル型P2X受容体(神経節細胞に存在し得る)であり、リガンドは、MEA-TMAである。
【0197】
本開示の複合体は、光の使用による標的リガンド結合ポリペプチドの活性の調節に有用である。本開示の複合体に含めるのに適した光異性化調節因子は、線状及び分岐を含む、任意の数の構成で提供することができ、光で影響を与えることができる。
【0198】
例えば、BzAQの構成を、特定の波長の光の照射により変化させることができる。
【0199】
BzAQの他の特徴として、トランス遮断剤、外部遮断剤であること、及びKvチャネルに対して選択的であることが挙げられる。
【0200】
別の例では、BEAAQの構成を、特定の波長の光の照射により変化させることができる。
BEAAQの他の特徴として、シス遮断剤であること、及びKチャネルを遮断することができることが挙げられる。
【0201】
別の例では、DAAQの構成を、特定の波長の光の照射により変化させることができる。
DAAQの他の特徴として、トランス遮断剤、外部遮断剤、赤方偏移化合物であること、及びKチャネルを遮断することができることが挙げられる。
【0202】
別の例では、QAQの構成は、特定の波長の光の照射により変化させることができる。
QAQの他の特徴として、トランス遮断剤、内部遮断剤であること、及びKv、Nav、及びCavチャネルを遮断することができることが挙げられる。
【0203】
標的リガンド結合ポリペプチド
適切な標的リガンド結合ポリペプチドには、リガンドに結合する任意の様々なポリペプチドが含まれる。適切な標的リガンド結合ポリペプチドとして、イオンチャネル(例えば、カリウムチャネル、塩素イオンチャネル、ナトリウムチャネルなど);アセチルコリン受容体;ニコチン性アセチルコリン受容体;ムスカリン性アセチルコリン受容体;カプサイシン受容体;セロトニン受容体;カプサイシン受容体などが挙げられるが、これらに限定されない。適切なイオンチャネルとして、電位制御性イオンチャネル、cAMP制御性イオンチャネル、及びリガンド依存性イオンチャネルが挙げられる。
【0204】
親和性因子と光異性化調節因子のカップリング
様々な周知の化学のいずれかを用いて、親和性因子を光異性化調節因子とカップリング(例えば、共有結合)させることができる。親和性因子を、直接的に、またはリンカーを介して、光異性化調節因子とカップリング(例えば、共有結合)させることができる。
【0205】
親和性因子がポリペプチド(例えば、抗体)である場合、HALOタグ、SNAPタグ、CLIPタグ、lumioタグなどの使用により、親和性因子を光異性化調節因子にカップリング(例えば、共有結合)させることができる。例えば、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、またはナノボディにインフレームで融合させたSNAPタグをコードするヌクレオチド配列を有する核酸を、SNAP-抗体融合タンパク質の産生のために細胞に導入する。次いで、SNAP-抗体融合タンパク質を光異性化調節因子と組み合わせるが、その場合、光異性化調節因子を、SNAPタグを介してSNAP-抗体融合タンパク質に連結する。したがって、いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した親和性因子は、SNAPタグ-抗体融合ポリペプチドである。いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した親和性因子は、HALOタグ-抗体融合ポリペプチドである。いくつかの場合では、本開示の複合体に含めるのに適した親和性因子は、CLIPタグ-抗体融合ポリペプチドである。
【0206】
SNAPタグは、以下のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る:
。SNAPタグは、ベンジルグアニンに結合する。
【0207】
HALOタグは、以下のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る:
。HALOタグは、クロロアルカンに結合する。
【0208】
CLIPタグは、以下のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る:
。CLIPタグは、ベンジルシトシンに結合することができる。
【0209】
いくつかの場合では、カップリングは、ポリペプチド親和性因子内のアミノ酸側鎖を介して行う。ポリペプチド親和性因子への光異性化調節因子の結合は、チロシン残基、トリプトファン残基、セリン残基、スレオニン残基、システイン残基、ヒスチジン残基、アルギニン残基、リジン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、または光異性化調節因子に存在する結合部分と反応するためにアクセス可能なポリペプチド親和性因子内の任意の天然または非天然アミノ酸を介して行うことができる。適切な結合部分として、マレイミド、アクリル酸エステル、アクリルアミド(アクリルアミド)、α-ハロアセトアミド、エポキシド、O-スクシンイミジルエステル、ジスルフィド、及びメタンチオスルホネート化合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、結合部分はブロモメチル部分以外であり;例えば、いくつかの場合では、ブロモメチル部分を特に除外する。アミノ酸残基への共有結合の例については、例えば、Hermanson(1996)Bioconjugate Techniques,Academic Pressを参照のこと。
【0210】
光異性化調節因子に連結するアミノ酸がシステイン残基である場合、光異性化調節因子には、例えば、ビニルスルホン基、マレイミド;無水マレイン酸などの置換マレイミド;オルトピリジル-ジスルフィド;メタンチオスルホネート;ジスルフィドなどの部分を含ませることができる。光異性化調節因子に結合させるアミノ酸がリジン残基である場合、光異性化調節因子には、例えば、カルボジイミドEDC(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)などの部分を含ませることができる。光異性化調節因子に連結させるアミノ酸がアルギニン残基である場合、光異性化調節因子には、例えば、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール、またはグリオキサールを含ませることができる。
【0211】
例えば、システイニル残基は、最も一般的には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα-ハロアセテート(及び対応するアミド)と反応し、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体が得られる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(4-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリベンゾエート、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとも反応する。ヒスチジル残基は、ヒスチジル側鎖に比較的特異的であるため、pH5.5~7.0でジエチルピロカーボネートと反応する。パラブロモフェナシルブロミドも有用であり;反応は、一般的に0.1Mカコジル酸ナトリウム中、pH6.0で行う。リジニル及びアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。α-アミノ含有残基と反応するための他の適切な試薬として、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル;ピリドキサールリン酸;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O-メチルイソ尿素;及び2,4-ペンタンジオンが挙げられる。アルギニル残基は、1つまたはいくつかの従来の試薬、特にフェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、または1,2-シクロヘキサンジオンと反応する。カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R-N=C=N-R’)と反応し、式中、R及びR’は、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの異なるアルキル基である。
【0212】
光異性化調節因子には、アルキル化剤、アシル化剤、ケトン、アルデヒド、スルホネートまたはリン酸化剤を含ませることができる。特定の結合部分の例として、フルオロホスホニル、フルオロホスホリル、フルオロスルホニル、α-ハロケトンもしくはアルデヒドまたは、それぞれ、それらのケタールもしくはアセタール、α-ハロアシル、ニトリル、スルホン化アルキルまたはアリールチオール、ヨードアセチルアミド基、マレイミド、ハロゲン化スルホニル及びエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、テトラフルオロフェニルエステル、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、酸ハロゲン化物、酸無水物、不飽和カルボニル、アルキン、ヒドロキサメート、α-ハロメチルヒドロキサメート、アジリジン、エポキシド、あるいはヒ酸塩及びそれらの酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。適切なスルホニル基として、スルホネート、硫酸塩、スルフィナート、スルファミン酸などが挙げられ、実際には、2つの酸素原子に結合した硫黄基を有する任意の反応性官能基が挙げられる。適切なエポキシドとして、脂肪族、アラルキル、脂環式及びスピロエポキシドが挙げられる。
【0213】
組成物
実施形態は、本開示の親和性タグ付き光スイッチを含む組成物をさらに提供する。本開示の複合体を含む組成物には、以下のうちの1つ以上を含ませることができる:塩、例えば、NaCl、MgCl、KCl、MgSOなど;緩衝剤、例えば、トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)など;可溶化剤;界面活性剤、例えば、Tween-20、Nonidet-P40などの非イオン性界面活性剤;プロテアーゼ阻害剤など。
【0214】
医薬組成物
実施形態は、本開示の複合体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの場合では、医薬組成物は、それを必要とする個体への投与に適している。いくつかの場合では、医薬組成物は、それを必要とする個体への投与に適しており、個体はヒトである。
【0215】
本開示の複合体を含む医薬組成物は、単独で、または他の補助活性剤と併用して患者に投与してもよい。医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、及び凍結乾燥を含むがこれらに限定されない様々なプロセスのいずれかを使用して製造してもよい。医薬組成物は、無菌溶液、懸濁液、乳濁液、凍結乾燥物、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル、粉末、シロップ、エリキシルまたは投与に適した他の剤形を含むがこれらに限定されない様々な形態のいずれかを取ることができる。
【0216】
本開示の複合体を含む医薬組成物には、薬学的に許容される担体(複数可)を任意で含ませることができ、これは、活性成分から薬学的に許容される組成物への加工を容易にする。本明細書中で使用する場合、用語「薬理学的に許容される担体」とは、投与時に実質的に長期間のまたは永続的な有害効果を及ぼさない任意の担体を指し、「薬理学的に許容されるビヒクル、安定剤、希釈剤、補助剤または賦形剤」などの用語を包含する。そのような担体は、一般的に、活性化合物と混合するか、または活性化合物を希釈もしくは封入することが可能であり、固体、半固体、または液剤であり得る。活性成分は、可溶性であり得るか、または所望の担体もしくは希釈剤中の懸濁液として送達し得ることを理解されたい。例えば、蒸留水、脱イオン水、生理食塩水などの水性媒体;溶媒;分散媒;コーティング;抗菌剤及び抗真菌剤;等張剤及び吸収遅延剤;または他の不活性成分を含むがこれらに限定されない、様々な薬学的に許容される担体のいずれかを使用することができる。薬理学的に許容される担体の選択は、投与方式に依存し得る。薬理学的に許容される担体が活性成分と不適合である場合を除いて、薬学的に許容される組成物におけるその使用が企図される。そのような医薬担体の特定の使用の非限定的な例は、“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems”(Howard C.Ansel et al.,eds.,Lippincott Williams & Wilkins Publishers,7th ed.1999);“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”(Alfonso R.Gennaro ed.,Lippincott,Williams & Wilkins,20th 2000);“Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics”Joel G.Hardman et al.,eds.,McGraw-Hill Professional,10.sup.th ed.2001);及び“Handbook of Pharmaceutical Excipients”(Raymond C.Rowe et al.,APhA Publications,4th edition 2003)に記載されている。
【0217】
目的の医薬組成物には、限定されないが、緩衝剤、保存剤、等張化剤、塩、抗酸化剤、生理学的物質、薬理学的物質、増量剤、乳化剤、湿潤剤、甘味料または香味料などを含むがこれらに限定されない、他の薬学的に許容される成分を任意で含ませることができる。得られる製剤が薬学的に許容される限りにおいて、様々な緩衝液及びpH調整手段を用いて、本明細書中に開示する医薬組成物を調製することができる。そのような緩衝液として、限定されないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水及びホウ酸緩衝液が挙げられる。酸または塩基を使用して、必要に応じて組成物のpHを調整することができることを理解されたい。薬学的に許容される抗酸化剤として、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。有用な保存剤として、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、及び安定化オキシクロロ組成物、例えば、PURITE(商標)が挙げられるが、これらに限定されない。目的の医薬組成物に含めるのに適した等張化剤として、限定されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリンなどの塩、及び他の薬学的に許容される等張剤が挙げられる。薬理学の分野で公知のこれらの物質及び他の物質を目的の医薬組成物に含ませることができることを理解されたい。
【0218】
薬学的に許容される担体として作用し得る物質のいくつかの例として、以下が挙げられる:(1)ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)セルロース、及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及びセルロースアセテート;(4)トラガント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリーの水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ無水物;ならびに(22)医薬製剤中で使用する他の非毒性適合物質。
【0219】
本開示の複合体は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化することができる。多種多様な薬学的に許容される賦形剤が当技術分野で公知であり、本明細書中で詳細に説明する必要はない。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、A.Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th edition,Lippincott,Williams,& Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(1999)H.C.Ansel et al.,eds.,7th ed.,Lippincott,Williams,& Wilkins;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients(2000)A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed. Amer.Pharmaceutical Assocを含む様々な刊行物に詳細に記載されている。
【0220】
ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤などの薬学的に許容される賦形剤は、一般的に容易に入手可能である。さらに、pH調整剤及び緩衝剤、等張剤、安定剤、湿潤剤などの薬学的に許容される補助剤は、一般に容易に入手可能である。
【0221】
本開示の方法(以下に記載)において、本開示の複合体は、病状または症状の所望の低減をもたらすことができる任意の簡便な手段を使用してホストに投与してもよい。したがって、治療的投与のために、本開示の複合体を様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、本開示の複合体を、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせて医薬組成物に製剤化することができ、固体、半固体、液体または気体、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、液剤、坐剤、注射剤、吸入剤及びエアロゾル剤の形態の製剤に製剤化してもよい。
【0222】
本開示の複合体を、単独で、または適切な添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはジャガイモデンプンなどの従来の添加剤;結晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及び必要に応じて、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤及び香味料と併用して、錠剤、粉末、顆粒またはカプセルを作製することができる。そのような製剤は、経口投与用に用いることができる。
【0223】
本開示の複合体は、水性または非水性溶媒、例えば、植物性または他の同様の油類、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステルまたはプロピレングリコールに、溶解、懸濁または乳化することにより注射用製剤に製剤化することができ;所望により、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存剤などの従来の添加剤を加える。注射に適した製剤は、硝子体内、眼内、筋肉内、皮下、舌下、または他の投与経路、例えば歯肉組織または他の口腔組織への注射によって投与することができる。そのような製剤は局所投与にも適している。
【0224】
いくつかの場合では、本開示の複合体を含む本開示の組成物は、硝子体内注射を介して投与する。いくつかの場合では、本開示の複合体を含む本開示の組成物を、眼内投与を介して投与する。いくつかの場合では、本開示の複合体を含む本開示の組成物を、網膜下注射を介して投与する。
【0225】
本開示の複合体は、吸入により投与するエアロゾル製剤において利用することができる。本開示の複合体は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴霧剤に製剤化することができる。
【0226】
さらに、本開示の複合体は、乳化基剤または水溶性基剤などの様々な基剤と混合することにより、坐剤にすることができる。本開示の複合体は、坐剤により直腸投与することができる。坐剤には、ココアバター、カーボワックス及びポリエチレングリコールなどの、体温で溶解するが室温では固化するビヒクルを含ませることができる。
【0227】
シロップ、エリキシル、及び懸濁液などの経口または直腸投与用の単位剤形を提供してもよく、各投薬単位、例えば、小さじ1杯、大さじ1杯、錠剤または坐剤は、1つ以上の阻害剤を含む所定量の組成物を含む。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、無菌水、生理食塩水または別の薬学的に許容される担体中の溶液として、組成物中に本開示の複合体を含み得る。
【0228】
本明細書中で使用する場合、用語「単位剤形」とは、ヒト及び動物対象の単位用量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと関連した所望の効果を生成するのに十分な量で計算される所定量の本開示の複合体を含む。本開示の複合体の仕様は、使用する特定の化合物及び達成しようとする効果、ならびにホストにおける各化合物に関連する薬力学に依存する。
【0229】
本開示の複合体は、注射剤として投与することができる。注射組成物は、液体溶液または懸濁液として調製し;また、注射前に液体ビヒクルに溶解または懸濁するのに適した固体形態を調製してもよい。製剤はまた、乳化してもよく、またはリポソームビヒクルにカプセル化された活性成分であってもよい。
【0230】
いくつかの場合では、本開示の複合体を、連続送達系によって送達する。用語「連続送達系」は、本明細書中では「制御送達系」と同じ意味で用いられ、カテーテル、注射装置などと組み合わせた連続(例えば、制御)送達装置(例えば、ポンプ)を包含し、そのような多種多様な装置が当技術分野で公知である。
【0231】
方法
本開示の複合体は、標的リガンド結合ポリペプチドの活性の調節に利用することができる。本開示の複合体は、本開示の複合体を含む細胞の活性の調節に利用することができ、その場合、細胞は、標的リガンド結合ポリペプチドを含む。したがって、本開示は、標的リガンド結合ポリペプチドの活性の調節方法;及び本開示の複合体を含む細胞の活性の調節方法を提供し、その場合、細胞は、標的リガンド結合ポリペプチドを含む。いくつかの場合では、本開示の方法は、複合体(または複合体を含む細胞もしくは組織)を適切な光条件に曝露し、それにより、リガンドを標的リガンド結合ポリペプチドのリガンド結合部位に結合させることを含む。いくつかの場合では、本開示の方法は、複合体(または複合体を含む細胞もしくは組織)を適切な光条件に曝露し、それにより、リガンドを標的リガンド結合ポリペプチドのリガンド結合部位に結合させないことを含む。
【0232】
本開示は、標的リガンド結合ポリペプチドの活性の調節方法を提供し、方法は以下を含む:a)標的リガンド結合ポリペプチドを本開示の複合体と接触させ、光調節性ポリペプチドを生成し;及びb)光調節性ポリペプチドを、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光に曝露し、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合により、光調節性ポリペプチドの活性を調節する。本開示は、標的リガンド結合ポリペプチドの活性の調節方法を提供し、方法は以下を含む:a)標的リガンド結合ポリペプチドを本開示の複合体と接触させ、光調節性ポリペプチドを生成し;及びb)光調節性ポリペプチドを、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位からのリガンドの放出をもたらす波長の光に曝露し、光調節性ポリペプチドのリガンド結合部位からのリガンドの放出により、光調節性ポリペプチドの活性を調節する。
【0233】
標的リガンド結合ポリペプチド(または光調節性ポリペプチド)の「調節活性」は、ポリペプチドの活性を増加させ;ポリペプチドの活性を阻害し;ポリペプチドを別の(例えば、非光)刺激に感作させ;別の刺激に対するポリペプチドの感受性を低下させ;別の刺激がポリペプチドを活性化する効力を高め;別の刺激がポリペプチドを活性化する効力を減少させることを含む。活性は、調節しようとするポリペプチドに依存する。例えば、いくつかの場合では、リガンドはアゴニストであり、標的リガンド結合ポリペプチド(または光調節性ポリペプチド)へのリガンドの結合は、標的リガンド結合ポリペプチド(または光調節性ポリペプチド)の活性化をもたらす。他の例では、リガンドはアンタゴニストであり、標的リガンド結合ポリペプチド(または光調節性ポリペプチド)へのリガンドの結合は、標的リガンド結合ポリペプチド(または光調節性ポリペプチド)の阻害、脱感作、または不活性化をもたらす。
【0234】
標的リガンド結合ポリペプチドとして、転写調節因子、イオンチャネル、カチオンチャネル、リガンド依存性イオンチャネル、電位依存性イオンチャネル、クオラムセンサー、フェロモン受容体、神経伝達物質受容体、酵素、酵素、モータータンパク質、輸送体、膜輸送タンパク質、Gタンパク質共役受容体、Gタンパク質、受容体チロシンキナーゼ、骨格タンパク質、アダプタータンパク質、細胞骨格タンパク質、接着タンパク質、膜標的タンパク質、分泌を指示するタンパク質、及びタンパク質の局在化ドメインまたはタンパク質相互作用ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドはカチオンチャネルである。いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドはアニオンチャネルである。いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドはカリウムチャネルである。いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドはナトリウムチャネルである。いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドはカルシウムチャネルである。
【0235】
いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドは、無細胞組成物中に存在し;すなわち、標的リガンド結合ポリペプチドは細胞内に存在しない。
【0236】
いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドは、in vitroで細胞内に存在する。いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドは、in vivoで細胞内に存在する。
【0237】
標的リガンド結合ポリペプチドが細胞内に存在する場合、細胞は任意のタイプの細胞であり得る。例えば、細胞は、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞、げっ歯類細胞などであり得る。細胞は、網膜細胞、筋肉細胞、神経細胞、血液細胞(例えば、有核血液細胞)、上皮細胞、内皮細胞、皮膚細胞、肺細胞などであり得る。
【0238】
いくつかの場合では、標的リガンド結合ポリペプチドは細胞内に存在する。いくつかの場合では、細胞は網膜細胞である。いくつかの場合では、細胞はアマクリン細胞である。いくつかの例では、細胞は神経節細胞である。いくつかの場合では、細胞は双極細胞である。いくつかの場合では、細胞はミュラー細胞である。
【0239】
本開示は、標的細胞の活性の調節方法を提供し、方法は、標的細胞を光に曝露することを含み、その場合、標的細胞は、本開示の複合体及び標的リガンド結合ポリペプチドを含み、光は、標的リガンド結合ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光であり、標的リガンド結合ポリペプチドへのリガンドの結合が、標的細胞の活性を調節する。本開示は、標的細胞の活性の調節方法を提供し、方法は、標的細胞を光に曝露することを含み、その場合、標的細胞は、本開示の複合体及び標的リガンド結合ポリペプチドを含み、光は、標的リガンド結合ポリペプチドからのリガンドの放出をもたらす波長の光であり、標的リガンド結合ポリペプチドからのリガンドの結合の放出が、標的細胞の活性を調節する。いくつかの場合では、細胞は標的細胞集団である。いくつかの場合では、標的細胞または標的細胞集団は、組織に存在する。
【0240】
本開示は、通常は光に直接応答しない網膜細胞に光に対する感受性を導入する方法、またはすでに光感受性の網膜細胞の光応答を増強する方法を提供し、方法は、網膜細胞を光に曝露することを含み、網膜細胞は、本開示の複合体及び標的リガンド結合ポリペプチドを含み、光は、標的リガンド結合ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光であり、光に応答した標的リガンド結合ポリペプチドへのリガンドの結合は、網膜細胞の活性を調節する。例えば、網膜細胞中の標的ポリペプチドは、代謝調節型グルタミン酸受容体、例えばアマクリン細胞内のmGluR2もしくはmGluR8、または双極細胞内のmGluR6もしくはmGluR7、または神経節細胞内のmGluR4であってもよい。これらの場合、適切な光異性化部分-リガンドの組み合わせは、D立体異性体結合を有するアゾベンゼン-グルタメートであり得る。例えば、Broichhagen et al.(2015)ACS Central Science 1,383-393;及びLevitz et al.(2017)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 114,E3546-E3554を参照のこと。他の例として、標的ポリペプチドは、双極細胞、アマクリン細胞または神経節細胞におけるGluK2、GluK5、GluN2AまたはGluN2Bなどのイオンチャネル型グルタミン酸受容体であってもよい。これらの場合、適切な光異性化部分-リガンドの組み合わせは、L立体異性体結合を有するアゾベンゼン-グルタメート(例えば、Volgraf et al.(2006)Nature Chem.Bio.2:47;Volgraf et al.(2007)J.Am.Chem.Soc.129:260;及びBerlin et al.(2016)Elife 5:e12040を参照のこと)、またはATG(例えば、Laprell et al.(2015)Nat.Commun.6:8076)であり得る。別の例として、標的ポリペプチドは、GluRA1などのイオンチャネル型グルタミン酸受容体であってもよい。この場合、適切な光異性化部分-リガンドの組み合わせは、ShuBQX-3であり得る(例えば、Barber et al.(2017)Chem.Sci. 8:611を参照のこと)。別の例として、標的ポリペプチドは、アマクリンまたは神経節細胞のイオンチャネル型ニコチン性アセチルコリン受容体であってもよく、リガンドは、AC-5、MAACh、HoChPE、MG-624またはMAHoChであってもよい(例えば、Tochitsky et al.(2012)Nat.Chem.4:105を参照のこと)。別の例として、標的ポリペプチドは、アマクリン細胞または神経節細胞のイオンチャネル型GABA-A受容体であってもよく、リガンドはPAG-2A、PAG-2B、またはPAG-3Cであってもよい。別の例として、標的ポリペプチドは、神経節細胞におけるイオンチャネル型P2X受容体であってもよく、リガンドは、MEA-TMAであってもよい(例えば、Lemoine et al.(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 110:20813を参照のこと)。
【0241】
本開示は、光への応答性の低下を特徴とする眼障害の治療方法を提供し、方法は、眼障害を有する個体の眼に、本開示の複合体、または本開示の複合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)を投与することを含む。いくつかの場合では、複合体、または複合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)は、硝子体内注射により個体に投与する。いくつかの場合では、複合体、または複合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)を、眼内投与により個体に投与する。いくつかの場合では、複合体、または複合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)を、網膜下注射により個体に投与する。
【0242】
光に対する応答性の低下を特徴とする眼障害として、網膜色素変性症及び加齢性黄斑変性症などの遺伝性網膜変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の方法による治療に適した眼障害として、網膜色素変性症、黄斑変性症、網膜分離症、及びレーバー先天性黒内障、及び糖尿病性網膜症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0243】
光スイッチアンカードメインと親和性因子とを含む融合ポリペプチドを含む、細胞
本開示は、標的ポリペプチドの活性の調節方法を提供し、方法は、a)標的ポリペプチドを含む細胞を、i)光異性化基とii)標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む光異性化調節因子と接触させることを含み、その場合、細胞は、標的ポリペプチドによって提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子をコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変されており、親和性因子は、細胞内で光異性化調節因子の結合を提供する部分を含む。例えば、親和性因子には:i)光スイッチアンカードメイン(例えば、HALOタグ、SNAPタグ、またはCLIPタグ);ii)非天然アミノ酸;iii)例えばチオール反応性光スイッチの結合のための、単一のシステイン残基を含むアミノ酸配列;を含ませることができる。いくつかの場合では、方法は、標的ポリペプチドによって提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を細胞に導入する工程を含む。
【0244】
本開示は、標的ポリペプチドの活性の調節方法を提供し、方法は、a)標的ポリペプチドを含む細胞を、i)光異性化基とii)標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む光異性化調節因子と接触させることを含み、その場合、細胞は標的ポリペプチドにより提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子を含み、親和性因子は、細胞内で光異性化調節因子の結合を提供する部分を含む。例えば、親和性因子には:i)光スイッチアンカードメイン(例えば、HALOタグ、SNAPタグ、またはCLIPタグ);ii)非天然アミノ酸;iii)例えばチオール反応性光スイッチの結合のための、単一のシステイン残基を含むアミノ酸配列;を含ませることができる。いくつかの場合では、親和性因子を、それ自体をポリペプチドとして細胞に導入する。
【0245】
本開示は、標的ポリペプチドの活性の調節方法を提供し、方法は、a)標的ポリペプチドを含む細胞を、i)光異性化基とii)標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む光異性化調節因子と接触させることであって、ここで、細胞は:i)標的ポリペプチドにより提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子とii)光スイッチアンカードメイン(例えば、HALOタグ、SNAPタグ、またはCLIPタグ)とを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変されており、融合ポリペプチドは、光異性化調節因子と複合体を形成し、複合体に存在する親和性因子は、標的ポリペプチドに結合して、光調節性ポリペプチドを形成する、接触させること;ならびにb)光調節性ポリペプチドを、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光に曝露し、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合により、光調節性ポリペプチドの活性を調節することを含む。適切な光異性化調節因子は上記のとおりである。例えば、上記の光異性化調節因子(親和性因子と複合体化していない)のいずれかを使用することができる。いくつかの場合では、方法は、標的ポリペプチドによって提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子をコードするヌクレオチド配列を有する核酸を細胞に導入する工程を含む。
【0246】
いくつかの場合では、本開示の方法は、標的ポリペプチドを含む細胞または組織(細胞は:i)標的ポリペプチドによって提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子とii)光スイッチアンカードメイン(例えば、HALOタグ、SNAPタグ、またはCLIPタグ)とを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸を含むように遺伝子改変されている)を、リガンドが標的リガンド結合ポリペプチドのリガンド結合部位に結合しないような適切な光条件に曝露することを含む。
【0247】
例えば、いくつかの場合では、細胞を、ベンジルグアニン部分(SNAPタグへの共有結合用、その場合、標的細胞は、i)親和性因子とii)SNAPタグとを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変されている)を含む光異性化調節因子と接触させる。別の例として、いくつかの場合では、細胞を、クロロアルカン部分(HALOタグへの共有結合用、その場合、標的細胞は、i)親和性因子とii)HALOタグとを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変されている)を含む光異性化調節因子と接触させる。別の例として、いくつかの場合では、細胞を、ベンジルシトシン部分(CLIPタグへの共有結合用、その場合、標的細胞は、i)親和性因子とii)CLIPタグとを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変されている)を含む光異性化調節因子と接触させる。
【0248】
いくつかの場合では、標的細胞を、i)親和性因子とii)SNAPタグ、HALOタグ、またはCLIPタグとを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変する。いくつかの場合では、親和性因子は抗体である。いくつかの場合では、親和性因子はナノボディである。いくつかの場合では、親和性因子はscFvである。いくつかの場合では、融合ポリペプチドは、N末端からC末端の順に:i)親和性作用物質;及びii)アンカードメイン(SNAPタグ、HALOタグ、またはCLIPタグ)を含む。いくつかの場合では、親和性因子はscFvである。いくつかの場合では、融合ポリペプチドは、N末端からC末端の順に:i)親和性因子;ii)約1アミノ酸~約25アミノ酸のペプチドリンカー;及びiii)アンカードメイン(SNAPタグ、HALOタグ、またはCLIPタグ)を含む。いくつかの場合では、融合ポリペプチドは、N末端からC末端の順に:i)アンカードメイン(SNAPタグ、HALOタグ、またはCLIPタグ);及びii)親和性因子を含む。いくつかの場合では、融合ポリペプチドは、N末端からC末端の順に:i)アンカードメイン(SNAPタグ、HALOタグ、またはCLIPタグ);ii)約1アミノ酸~約25アミノ酸の(または25アミノ酸を上回る)長さのペプチドリンカー;及びiii)親和性因子を含む。例えば、ペプチドリンカーは、1アミノ酸(aa)~5aa、5aa~10aa、10aa~15aa、15aa~20aa、20aa~25aa、25aa~50aa、50aa~100aa、100aa~150aa、150aa~200aa、または200aa超の長さを有し得る。
【0249】
SNAPタグは、以下のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る:
。SNAPタグは、ベンジルグアニンに結合する。
【0250】
HALOタグは、以下のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る:
。HALOタグは、クロロアルカンに結合する。
【0251】
CLIPタグは、以下のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る:
。CLIPタグは、ベンジルシトシンに結合することができる。
【0252】
いくつかの場合では、i)親和性因子とii)アンカーポリペプチド(例えば、SNAPタグ、HALOタグ、またはCLIPタグ)とを含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸は、組換え発現ベクター内に存在する。適切な発現ベクターとして、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの場合では、アンカーポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸は、組換えレンチウイルスベクター、組換えHSVベクター、組換えアデノウイルスベクター、組換えレトロウイルスベクター、または組換えAAVベクターである。
【0253】
いくつかの場合では、ヌクレオチド配列は、網膜細胞内での発現を提供するプロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの場合では、ヌクレオチド配列は、真核細胞内または哺乳類細胞内での発現を一般的に提供するプロモーターに作動可能に連結されている。
【0254】
適切なプロモーターとして、CAGプロモーター(Miyazaki et al.(1989)Gene 79:269);シナプシンプロモーター;サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター;グルタミン酸代謝調節受容体-6(grm6)プロモーター(Cronin et al.(2014)EMBO Mol.Med.6:1175);プレアデスプロモーター(Portales-Casamar et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 107:16589);コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)プロモーター(Misawa et al.(1992)J.Biol.Chem.267:20392);小胞性グルタミン酸輸送体(V-glut)プロモーター(Zhang et al.(2011)Brain Res.1377:1);グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)プロモーター(Rasmussen et al.(2007)Brain Res.1144:19;Ritter et al.(2016)J.Gene Med.18:27);コレシストキニン(CCK)プロモーター(Ritter et al.(2016)J.Gene Med.18:27);パルブアルブミン(PV)プロモーター;ソマトスタチン(SST)プロモーター;ニューロペプチドY(NPY)プロモーター;及び血管作用性小腸ペプチド(VIP)プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。適切なプロモーターとして、赤錐体オプシンプロモーター、ロドプシンプロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、及びGluRプロモーター(例えば、GluR6プロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。適切なプロモーターとして、卵黄様黄斑変性症2(VMD2)遺伝子プロモーター、及び光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。L7プロモーター(Oberdick et al.(1990)Science 248:223)、thy-1プロモーター、レコベリンプロモーター(Wiechmann and Howard(2003)Curr.Eye Res.26:25)、カルビンジンプロモーター;及びβアクチンプロモーターもまた、使用に適している。
【0255】
開示の非限定的な態様の例
上記の本発明の実施形態を含む態様は、単独で、または1つ以上の他の態様もしくは実施形態との組み合わせにおいて有益であり得る。前述の記載を限定することなく、1~55で付番された本開示の特定の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を通読することにより当業者には明らかとなるように、個々に付番された態様のそれぞれは、前述のまたは以下の個々に付番された態様のいずれかと共に使用または組み合わせてもよい。これは、すべてのそのような態様の組み合わせをサポートすることを目的としており、以下に明示的に示す態様の組み合わせに限定されるものではない。
【0256】
態様1.以下を含む複合体:a)標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する親和性因子;b)リンカー;ならびにc)i)光異性化基と、ii)前記標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む、光異性化調節因子。
態様2.前記親和性因子が抗体である、態様1に記載の複合体。
態様3.前記親和性因子がアプタマーである、態様1に記載の複合体。
態様4.前記アプタマーがDNAアプタマーである、態様3に記載の複合体。
態様5.前記アプタマーがRNAアプタマーである、態様3に記載の複合体。
態様6.前記親和性因子が小分子である、態様1に記載の複合体。
態様7.前記親和性因子がペプチドである、態様1に記載の複合体。
態様8.前記リガンドが、アロステリック部位で結合する、態様1~7のいずれか一つに記載の複合体。
態様9.前記リガンドが、オルソステリック部位で結合する、態様1~7のいずれか一つに記載の複合体。
態様10.前記標的リガンド結合ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記標的リガンド結合ポリペプチドにおける機能的変化をもたらす、態様1~9のいずれか一つに記載の複合体。
態様11.前記標的リガンド結合ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、立体構造変化をもたらす、態様1~9のいずれか一つに記載の複合体。
態様12.前記標的リガンド結合ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、立体構造の安定化をもたらす、態様1~9のいずれか一つに記載の複合体。
態様13.前記リガンドが、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリック調節因子、または遮断剤である、態様1~12のいずれか一つに記載の複合体。
態様14.前記光異性化基が、アゾベンゼン、フルギド、スピロピラン、トリフェニルメタン、チオインジゴ、ジアリールエテン、及び過密アルケンから選択される部分を含む、態様1~13のいずれか一つに記載の複合体。
態様15.前記光異性化基が、アゾベンゼンを含む、態様1~13のいずれか一つに記載の複合体。
態様16.前記標的リガンド結合ポリペプチドが、転写調節因子、イオンチャネル、カチオンチャネル、リガンド依存性イオンチャネル、電位依存性イオンチャネル、クオラムセンサー、フェロモン受容体、神経伝達物質受容体、及び酵素から選択される、態様1~15のいずれか一つに記載の複合体。
態様17.前記カチオンチャネルが、カリウムチャネル、ナトリウムチャネル、またはカルシウムチャネルである、態様1~15のいずれか一つに記載の複合体。
態様18.前記リガンド結合ポリペプチドが、グルタミン酸受容体、代謝型グルタミン酸受容体、イオンチャネル型グルタミン酸受容体、イオンチャネル型ニコチン性アセチルコリン受容体、イオンチャネル型GABA-A受容体、またはイオンチャネル型プリン作動性P2X受容体である、態様1~15のいずれか一つに記載の複合体。
態様19.前記抗体が、scFv、sdAb、Fab、Fab’、ナノボディ、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、Feb、及びSMIPから選択される、態様2に記載の複合体。
態様20.態様1~19のいずれか一つに記載の複合体を含む、細胞。
態様20.in vitroにある、態様20に記載の細胞。
態様22.in vivoにある、態様20に記載の細胞。
態様23.神経細胞である、態様20~22のいずれか一つに記載の細胞。
態様24.網膜細胞である、態様20~22のいずれか一つに記載の細胞。
態様25.筋細胞である、態様20~22のいずれか一つに記載の細胞。
態様26.標的ポリペプチドの活性の調節方法であって、前記方法が、
a)前記標的ポリペプチドを態様1~19のいずれか一つに記載の複合体と接触させ、光調節性ポリペプチドを生成すること;及び
b)前記光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光に前記光調節性ポリペプチドを曝露すること
を含み、
前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの活性を調節する、前記調節方法。
態様27.前記リガンドがアゴニストであり、前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの活性化をもたらす、態様26に記載の方法。
態様28.前記リガンドがアンタゴニストであり、前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの阻害、脱感作、または不活性化をもたらす、態様26に記載の方法。
態様29.前記標的ポリペプチドが、転写調節因子、イオンチャネル、カチオンチャネル、リガンド依存性イオンチャネル、電位依存性イオンチャネル、クオラムセンサー、フェロモン受容体、神経伝達物質受容体、酵素、酵素、モータータンパク質、輸送体、膜輸送タンパク質、Gタンパク質共役受容体、Gタンパク質、受容体チロシンキナーゼ、骨格タンパク質、アダプタータンパク質、細胞骨格タンパク質、接着タンパク質、膜標的タンパク質、分泌を指示するタンパク質、及びタンパク質の局在化ドメインまたはタンパク質相互作用ドメインから選択される、態様26~28のいずれか一つに記載の方法。
態様30.前記カチオンチャネルが、カリウムチャネル、ナトリウムチャネル、またはカルシウムチャネルである、態様26~28のいずれか一つに記載の方法。
態様31.前記標的ポリペプチドが細胞内にある、態様26~30のいずれか一つに記載の方法。
態様32.前記細胞がin vitroにある、態様31に記載の方法。
態様33.前記細胞がin vivoにある、態様31に記載の方法。
態様34.前記細胞が網膜細胞である、態様31~33のいずれか一つに記載の方法。
態様35.前記細胞が神経細胞である、態様31~33のいずれか一つに記載の方法。
態様36.前記細胞が筋細胞である、態様31~33のいずれか一つに記載の方法。
態様37.標的細胞集団の活性の調節方法であって、前記方法が、標的細胞集団を光に曝露することを含み、
前記標的細胞集団が、態様1~19のいずれか一つに記載の複合体を含み、
前記光が、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光であり、
前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記標的細胞集団の前記活性を調節する、前記調節方法。
態様38.前記標的細胞集団が、組織内に存在する、態様37に記載の方法。
態様39.前記組織がin vivoにある、態様38に記載の方法。
態様40.前記標的細胞集団がin vivoにある、態様37に記載の方法。
態様41.前記標的細胞集団がin vitroにある、態様37に記載の方法。
態様42.前記標的細胞集団が、前記標的細胞集団及び非標的細胞を含む混合細胞集団中に存在する、態様37~41のいずれか一つに記載の方法。
態様43.前記組織が脳組織である、態様39に記載の方法。
態様44.前記組織が筋組織である、態様39に記載の方法。
態様45.前記組織が血液細胞を含む、態様39に記載の方法。
態様46.光に対する網膜細胞の感受性の増加方法であって、前記方法が、前記網膜細胞を光に曝露することを含み、
前記網膜細胞が、態様1~19のいずれか一つに記載の複合体を含み、
前記光が、光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光であり、
前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、光に対する前記網膜細胞の前記感受性を増加させる、前記増加方法。
態様47.網膜細胞への光応答性の付与方法であって、態様1~19のいずれか一つに記載の複合体を前記網膜細胞に導入することを含む、前記付与方法。
態様48.光に対する応答性の低下を特徴とする眼障害の治療方法であって、態様1~19のいずれか一つに記載の複合体を、前記眼障害を有する個体の眼に投与することを含む、前記治療方法。
態様49.前記眼障害が遺伝性網膜変性疾患である、態様48に記載の方法。
態様50.前記疾患が、網膜色素変性症または加齢性黄斑変性症である、態様49に記載の方法。
態様51.標的ポリペプチドの活性の調節方法であって、前記方法が、以下:
a)前記標的ポリペプチドを含む細胞を、i)光異性化基とii)前記標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドとを含む光異性化調節因子と接触させることであって、
前記細胞が、
i)前記標的ポリペプチドによって提示されるエピトープに特異的に結合する親和性因子と、
ii)HALOタグ、SNAPタグ、またはCLIPタグと
を含む融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸で遺伝子改変されており、
前記融合ポリペプチドが、前記光異性化調節因子と複合体を形成し、
前記複合体に存在する前記親和性因子が、前記標的ポリペプチドに結合し、光調節性ポリペプチドを生成する、前記接触させること;ならびに
b)前記光調節性ポリペプチドへのリガンドの結合をもたらす波長の光に前記光調節性ポリペプチドを曝露することであって、前記光調節性ポリペプチドへの前記リガンドの結合が、前記光調節性ポリペプチドの活性を調節する、前記曝露すること
を含む、前記調節方法。
態様52.前記核酸が、組換え発現ベクター中に存在する、態様51に記載の方法。
態様53.前記親和性因子が抗体である、態様51に記載の方法。
態様54.前記親和性因子が、ナノボディまたはscFvである、態様52に記載の方法。
態様55.前記細胞がin vivoにある、態様51~54のいずれか一つに記載の方法。
【実施例0257】
以下の実施例は、本発明の作成及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示するものであり、本発明者らが考える本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が、実施したすべてのまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものでもない。使用する数値(例えば、量、温度など)に関して、正確性を確保するための努力が払われてはいるが、一定の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に明記しない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧であるかまたは大気圧に近い。標準的な略語、例えば、bp、塩基対(複数可);kb、キロベース(複数可);pl、ピコリットル(複数可);sまたはsec、秒(複数可);min、分(複数可);hまたはhr、時間(複数可);aa、アミノ酸(複数可);kb、キロベース(複数可);bp、塩基対(複数可);nt、ヌクレオチド(複数可);i.m.、筋肉内(ly);i.p.、腹腔内(ly);s.c.、皮下(ly)などを使用してもよい。
【0258】
実施例1:親和性因子-光異性化調整因子複合体の生成
標的タンパク質への光スイッチの非遺伝的送達のための方法を開発した。このアプローチには、標的タンパク質または関連タンパク質に特異的な親和性部分の使用が含まれる。親和性部分は、抗体、ペプチド、ポリヌクレオチドアプタマー、または合成化学物質とすることができ、結合は、標的タンパク質の機能にほとんどまたはまったく影響を及ぼさないが、標的タンパク質に光スイッチを付与する。以下の実施例は、親和性部分としてナノボディ(NB)を使用することにより、本方法を実証する。
【0259】
一端にSNAP選択的ベンジルグアニン(BG)反応基、調節可能な長さのリンカー、アゾベンゼン(A)光異性化基、及び遠位端にグルタミン酸(G)リガンドを含む光異性化調節因子(BGAG)を使用した(図1B、C)。BGAG光スイッチを結合させたSNAPタグドメインをコードする遺伝子を、ナノボディ(NB)をコードする遺伝子にインフレームで融合して、2部の複合体:NB-SNAPを生成し、次いでこれにBGAGを結合させることができる(図1D、左及び中央)。この実施例の場合、緑色蛍光タンパク質(GFP)に結合するナノボディ(NB)を使用したため、SNAPに結合させたBGAG光スイッチをGFPタグ付き標的タンパク質に選択的に送達することができる。標的タンパク質は、リガンド結合ドメイン(LBD)のすぐ「上」のGFPがそのN末端に融合したmGluR2を含む融合タンパク質であった(図1D、右)。SNAP-抗GFP NB融合タンパク質を精製し、溶液中でBGAGと複合体化させ、3部複合体:SNAP(BGAG)-NBを生成した。SNAP(BGAG)-NB光スイッチ-タンパク質複合体を、GFP-mGluR2を発現する細胞に投与した。GFP-mGluR2へのSNAP(BGAG)-NBの結合は、380nmの光照射がBGAG光スイッチをシスに異性化し、リガンドをLBDに結合させるようにBGAGを配置する(図1D)。これにより受容体は活性化するが、一方、500nmの光はBGAG光スイッチを異性化してトランスに戻し、リガンドが解離して受容体が不活性化する。
【0260】
GFP-mGluR2を発現する細胞へのSNAP-NBタンパク質複合体の結合は、BGと複合体化したSNAPを蛍光色素で標識することにより測定することができる。これにより特異的結合が示された(図2A~C)。SNAP(BGAG)-NB結合GFP-mGluR2またはmGluR2-GFP 4部複合体(図2D)を光により活性化し、活性化mGluR2によって放出されるGβγによるGIRKチャネルの活性化により検出した(図2E)。380nmの光を照射すると、BGAG光スイッチがシスに異性化し、リガンド結合ドメイン(LBD)にリガンドが結合し、受容体を活性化し、したがってチャネルが活性化された。これにより、湯浴内で、高(150mM)Kの存在下、負の保持電位(-60mV)でHEK293細胞に内向き電流が流れた。500nmの光照射は、BGAG光スイッチを異性化してトランスに戻し、リガンド結合ドメイン(LBD)からリガンドが解離し、受容体が不活性化し、GIRK電流を打ち消した。予想通り、光活性化の効力は、BGとアゾベンゼンとの間のリンカーの長さに依存する(図2F)。標的タンパク質へのNB-SNAPまたはSNAP-NBの結合は非常に安定していたため、NB-SNAPまたはSNAP-NBをGFPタグ付きmGluR2と共発現させた場合、細胞内で複合体が形成し、この方法でもBGAG光スイッチを細胞に投与すると光活性化が得られた(図3)。
【0261】
GFPは、mGluR2標的タンパク質に融合させる大きな別個のドメインであるため、GFPへのNBの結合は、mGluR2の機能を変化させない(図4)。しかしながら、目標は、細胞、組織、またはインタクトな生物の、天然の未修飾タンパク質を標的とすることであり、これには、親和性部分が標的タンパク質に直接結合することが必要となると考えられ、それは標的タンパク質の機能に影響を与え得る。結合により標的タンパク質の機能を変化させない親和性部分が望ましいであろう。この考えを、mGluRに結合するナノボディに機能的影響があるかどうかを調べることによって試験した。この目的のために、mGluR5を選択した。mGluR5はGq共役受容体であり、その活性化はホスホリパーゼCを刺激し、IP3を生成し、内部貯蔵からのカルシウムの放出を誘発するが、これを、AMエステル形態で細胞に充填したカルシウム指示薬FLUO-4を用いて検出することができる。mGluR5を発現するHEK293細胞内でグルタミン酸がカルシウムウェーブを活性化するのと同様に(図5、上段)、抗mGluR5ナノボディNB-8260もカルシウムウェーブを活性化することがわかった(図5、下段)。NB-8260は親和性が高いため、過剰なNB-8260を湯浴から洗い流した後(図5、下段)は、グルタミン酸を洗い流した後(図5、上段)よりもずっと長くウェーブが持続した。NB-8260による受容体の活性化は、単一分子の蛍光共鳴エネルギー移動(smFRET)を使用して直接検出することができる。HEK293細胞内でFRETドナー及びアクセプター(緑及び赤)BG色素の混合物で標識したSNAP-mGluR5二量体を、細胞溶解により単離し、免疫精製し、全反射照明蛍光(TRIF)顕微鏡法のための不動態化ガラス表面に低密度で固定化した(図6A)。緑と赤の両方の色素を含む個々のスポット(すなわち、二量体の各サブユニットに1つ)を分析のために選択し、FRETレベルを:i)リガンドの非存在下で;ii)0.8mMグルタミン酸中で;iii)ナノボディの存在下で;またはiv)0.8mMグルタミン酸とナノボディの組み合わせにおいて測定した。活性化リガンドが存在しない場合、受容体はLBDの「開放型」立体構造をとり、ドナーとアクセプターが比較的近接して配置され、約0.5の「高」FRETレベルが得られる(図6B)。グルタミン酸によって活性化されると、LBDが閉じて色素がさらに離れ、約0.3の低いFRET状態が得られる(図6B)。図6Cに認め得るように、NB-8260はグルタミン酸と同様に強力な活性化因子であったが、NB-8236は弱く活性化し、NB-8243はまったく活性化しなかった。したがって、NB-8243を安定した(non-perturbing)親和性部分として使用して、光スイッチを未修飾の天然型mGluR5へ持ってくることができる。
【0262】
本発明を、その特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者であれば、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な改変を行い得ること、及び等価物に置換し得ることを理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの工程、またはプロセスの複数の工程を、本発明の目的、精神、及び範囲に適合させるために、多くの改変を加えてもよい。そのような改変はすべて、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0263】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> The Regents of the University of California
<120> Affinity-Tagged Photoswitches and Methods of Use Thereof
<150> US 62/561,882
<151> 2017-09-22
<160> 3
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 182
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 1
Met Asp Lys Asp Cys Glu Met Lys Arg Thr Thr Leu Asp Ser Pro Leu
1 5 10 15
Gly Lys Leu Glu Leu Ser Gly Cys Glu Gln Gly Leu His Arg Ile Ile
20 25 30
Phe Leu Gly Lys Gly Thr Ser Ala Ala Asp Ala Val Glu Val Pro Ala
35 40 45
Pro Ala Ala Val Leu Gly Gly Pro Glu Pro Leu Met Gln Ala Thr Ala
50 55 60
Trp Leu Asn Ala Tyr Phe His Gln Pro Glu Ala Ile Glu Glu Phe Pro
65 70 75 80
Val Pro Ala Leu His His Pro Val Phe Gln Gln Glu Ser Phe Thr Arg
85 90 95
Gln Val Leu Trp Lys Leu Leu Lys Val Val Lys Phe Gly Glu Val Ile
100 105 110
Ser Tyr Ser His Leu Ala Ala Leu Ala Gly Asn Pro Ala Ala Thr Ala
115 120 125
Ala Val Lys Thr Ala Leu Ser Gly Asn Pro Val Pro Ile Leu Ile Pro
130 135 140
Cys His Arg Val Val Gln Gly Asp Leu Asp Val Gly Gly Tyr Glu Gly
145 150 155 160
Gly Leu Ala Val Lys Glu Trp Leu Leu Ala His Glu Gly His Arg Leu
165 170 175
Gly Lys Pro Gly Leu Gly
180

<210> 2
<211> 297
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 2
Met Ala Glu Ile Gly Thr Gly Phe Pro Phe Asp Pro His Tyr Val Glu
1 5 10 15
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20 25 30
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35 40 45
Arg Asn Ile Ile Pro His Val Ala Pro Thr His Arg Cys Ile Ala Pro
50 55 60
Asp Leu Ile Gly Met Gly Lys Ser Asp Lys Pro Asp Leu Gly Tyr Phe
65 70 75 80
Phe Asp Asp His Val Arg Phe Met Asp Ala Phe Ile Glu Ala Leu Gly
85 90 95
Leu Glu Glu Val Val Leu Val Ile His Asp Trp Gly Ser Ala Leu Gly
100 105 110
Phe His Trp Ala Lys Arg Asn Pro Glu Arg Val Lys Gly Ile Ala Phe
115 120 125
Met Glu Phe Ile Arg Pro Ile Pro Thr Trp Asp Glu Trp Pro Glu Phe
130 135 140
Ala Arg Glu Thr Phe Gln Ala Phe Arg Thr Thr Asp Val Gly Arg Lys
145 150 155 160
Leu Ile Ile Asp Gln Asn Val Phe Ile Glu Gly Thr Leu Pro Met Gly
165 170 175
Val Val Arg Pro Leu Thr Glu Val Glu Met Asp His Tyr Arg Glu Pro
180 185 190
Phe Leu Asn Pro Val Asp Arg Glu Pro Leu Trp Arg Phe Pro Asn Glu
195 200 205
Leu Pro Ile Ala Gly Glu Pro Ala Asn Ile Val Ala Leu Val Glu Glu
210 215 220
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275 280 285
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290 295

<210> 3
<211> 182
<212> PRT
<213> Artificial sequence
<220>
<223> Synthetic polypeptide
<400> 3
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1 5 10 15
Gly Lys Leu Glu Leu Ser Gly Cys Glu Gln Gly Leu His Arg Ile Ile
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50 55 60
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65 70 75 80
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145 150 155 160
Gly Leu Ala Val Lys Glu Trp Leu Leu Ala His Glu Gly His Arg Leu
165 170 175
Gly Lys Pro Gly Leu Gly
180
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023182668000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む複合体:
a)標的リガンド結合ポリペプチドに特異的に結合する親和性因子;
b)リンカー;ならびに
c)i)光異性化基と、
ii)前記標的リガンド結合ポリペプチドに結合するリガンドと
を含む、光異性化調節因子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2023182668000001.xml