(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182682
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】細胞外小胞の膜結合タンパク質を検出及び定量化するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01N33/53 K
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023168464
(22)【出願日】2023-09-28
(62)【分割の表示】P 2021552548の分割
【原出願日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】62/815,863
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グプタ, ヴィニタ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイディ, アン テレーセ
(72)【発明者】
【氏名】ケルバー, ジェームズ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シアンダン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ミン マイケル ヌー
(72)【発明者】
【氏名】スン, ヨンリャン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】個体中に存在する膜関連腫瘍抗原、例えば、循環CD20の量を決定するためのアッセイの提供。
【解決手段】本開示は、膜結合腫瘍抗原を含む細胞外小胞ベースのキャリブレーターを組み込んだ、膜結合タンパク質、例えば、循環CD20(cCD20)の検出及び/又は定量化のためのアッセイ、並びに過剰増殖性障害の検出及び治療におけるそのようなアッセイの使用を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の膜結合タンパク質を検出するためのアッセイであって、
a)試料中の、膜結合タンパク質を含む細胞外小胞に結合し、それにより捕捉抗体-細胞外小胞複合体を生成する捕捉抗体、及び
b)捕捉抗体-細胞外小胞複合体に結合して検出可能な結合複合体を形成する検出抗体
を含み、検出可能な結合複合体からのシグナルが、前記タンパク質を含む細胞外小胞から検出された1つ以上の既知の値に対して較正される、アッセイ。
【請求項2】
捕捉抗体が、結合について検出抗体と競合しない、請求項1に記載のアッセイ。
【請求項3】
捕捉抗体が、検出抗体とは異なるエピトープに結合する、請求項1又は2に記載のアッセイ。
【請求項4】
膜結合タンパク質が、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項5】
捕捉抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項6】
検出抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項7】
細胞外小胞キャリブレーターをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項8】
試料が、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のアッセイ。
【請求項9】
試料中の循環タンパク質の濃度を定量化するための方法であって、
a)試料中の細胞外小胞中の標的タンパク質のレベルを決定する工程、及び
b)試料中の細胞外小胞中の標的タンパク質のレベルを、標的タンパク質を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較する工程
を含む方法。
【請求項10】
標的タンパク質が、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
試料が、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
標的タンパク質の濃度及び較正曲線が、免疫アッセイ、ELISA及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
細胞外小胞マーカーの存在を検出することをさらに含み、前記細胞外マーカーが、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
試料中の循環タンパク質の濃度を定量化するための方法であって、
a)前記タンパク質を含む細胞外小胞を使用して較正曲線を生成する工程、及び
b)試料中の細胞外小胞中の前記タンパク質のレベルを較正曲線と比較して、試料中の細胞外小胞中の前記タンパク質の量を決定する工程
を含む方法。
【請求項15】
前記タンパク質が、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
試料が、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
循環タンパク質の濃度及び較正曲線が、免疫アッセイ、ELISA及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
細胞外小胞マーカーの存在を検出することをさらに含み、前記細胞外マーカーが、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
B細胞リンパ腫を有する患者が抗CD20療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを決定するための方法であって、
a)患者から試料を取得する工程、
b)試料中の細胞外小胞中の循環CD20の量を決定する工程、
c)試料中の細胞外小胞のCD20のレベルを、CD20を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較する工程、及び
d)患者がCD20療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを、試料中において決定された細胞外小胞中の循環CD20の量に基づいて決定する工程
を含む方法。
【請求項20】
抗CD20療法が抗CD20抗体の投与を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
抗CD20抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、CD20T細胞依存性二重特異性抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
試料が、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
循環タンパク質の濃度及び較正曲線が、免疫アッセイ、ELISA及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーが、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
抗CD20抗体を表面プラズモン共鳴(SPR)分析に供することを含む、抗CD20抗体の親和性を決定するための方法であって、SPR分析が、リガンドとしてCD20を、及び被分析物として抗CD20抗体を発現する細胞外小胞の使用を含む、方法。
【請求項26】
抗CD20抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、CD20T細胞依存性二重特異性抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項27】
細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーが、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
患者から取得したT細胞の活性化を決定するための方法であって、
a)CD20を発現する細胞外小胞を、T細胞及びCD20T細胞依存性二重特異性抗体と共にインキュベートすること、及び
b)T細胞の活性化を決定すること
を含む方法。
【請求項29】
細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーが、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
治療を必要とする対象における腫瘍を治療する方法であって、
a)対象から試料を取得すること、
b)腫瘍抗原を含む細胞外小胞を使用して較正曲線を生成すること、
c)試料中の細胞外小胞中の腫瘍抗原のレベルを較正曲線と比較して、試料中の細胞外小胞中の標的腫瘍抗原の量を決定すること、
d)対象が抗体療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを、試料中の細胞外小胞中の腫瘍抗原のレベルに基づいて決定すること、及び
e)d)における決定に応答して治療を適用すること
を含む方法。
【請求項31】
細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーが、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
抗体が、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
標的腫瘍抗原が、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
試料が、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
循環腫瘍抗原の濃度及び較正曲線が、免疫アッセイ、ELISA、及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
細胞外小胞マーカーの存在を検出することをさらに含み、前記細胞外マーカーがCD81、CD63、及び/又はCD9を含む、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月8日に出願された米国特許出願第62/815,863号に対する優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が組み込まれている。
【0002】
技術分野
本開示は、膜結合タンパク質を含む細胞外小胞ベースのキャリブレーターを組み込んだ、膜結合タンパク質、例えば、循環CD20(cCD20)の、検出及び/又は定量化のためのアッセイ、並びに過剰増殖性障害の検出及び治療におけるそのようなアッセイの使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
Bリンパ球抗原CD20(ヒトBリンパ球限定分化抗原、Bp35とも呼ばれる)は、およそ35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である。CD20は、プレ及び成熟Bリンパ球の表面上で検出され得る。CD20は、B細胞周期開始、細胞分化、及び細胞増殖の活性化方法における早期段階(複数可)を調節する。CD20はまた、カルシウムイオンチャネルとして機能することが知られている。
【0004】
CD20は、細胞表面上の大きな細胞外ループと、細胞質内に位置するN及びC末端の両方とを形成する4つの膜貫通領域を有する膜タンパク質である。そのC-及びN末端の両方が細胞質に位置しているため、抗体結合時、CD20は細胞表面から脱落する又は切断される可能性が低いと考えられてきた。CD20は、脂質ラフトへ転位置するとき、ダイマー又はオリゴマーを形成することができる。B細胞リンパ腫におけるCD20の発現を考慮すると、この抗原は、他の膜結合腫瘍抗原と同様に、このようなリンパ腫の「標的化」の候補として役立つ可能性がある。例えば、細胞外ループに結合するB細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体が、腫瘍性B細胞の破壊及び枯渇を促すために、患者に投与されてきた。加えて、腫瘍を破壊する潜在能力を有する化学物質又は放射性標識は、薬剤が腫瘍性B細胞に特異的に「送達される」ように、抗CD20抗体にコンジュゲートされ得る。上記を鑑みると、CD20抗体は、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、又はホジキン病を有する患者を含む、リンパ増殖性疾患を有する患者の治療法においてますます重要な役割を果たしている。
【0005】
膜結合タンパク質は、他のタンパク質と共に、細胞膜断片又は大きな膜複合体中を循環することができる。例えば、循環CD20タンパク質は、完全長タンパク質として循環中の膜結合粒子との関連で存在し得る。したがって、循環中に存在するとき、これらの膜結合タンパク質の薬物標的、例えばCD20は、治療抗体に結合してこれを隔離し、したがって腫瘍を標的とすることを意図した抗CD20抗体のドラッグシンクとして作用し得る。このような隔離は、治療抗体の治療効率を低下させ得る。膜結合タンパク質、例えば、循環CD20はまた、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、又はホジキン病といったリンパ増殖性疾患のバイオマーカーとして、並びに特異的腫瘍抗原の存在に応じた治療に対する応答の尤度に関連付けられたマーカーとして作用し得る。過剰増殖性障害の検出及び治療に関し、膜結合タンパク質、例えば循環CD20の重要な役割を考慮すると、当技術分野では、個体中に存在する膜関連腫瘍抗原、例えば、循環CD20の量を決定するためのアッセイが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の主題は、膜結合タンパク質を含む細胞外小胞ベースのキャリブレーターを組み込んだ、膜タンパク質、例えば、循環CD20(cCD20)の検出及び/又は定量化のためのアッセイ及び方法、並びに過剰増殖性障害の検出及び処置におけるそのようなアッセイの使用に関する。
【0007】
一部の実施形態では、本開示は、a)試料中の、膜結合タンパク質を含む細胞外小胞に結合することにより、捕捉抗体-細胞外小胞複合体を生成する捕捉抗体、及びb)捕捉抗体-細胞外小胞複合体に結合して検出可能な結合複合体を形成する検出抗体を含み、検出可能な結合複合体からのシグナルが、タンパク質を含む細胞外小胞から検出される1つ以上の既知の値に対して較正される、試料中の膜結合タンパク質を検出するためのアッセイを対象としている。
【0008】
一部の実施形態では、本開示のアッセイは、細胞外小胞キャリブレーターをさらに含む。
【0009】
一部の実施形態では、本開示のアッセイは、検出抗体との結合について競合しない捕捉抗体を含む。一部の実施形態では、捕捉抗体は、検出抗体とは異なるエピトープに結合する。一部の実施形態では、捕捉抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、検出抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、試料中の膜結合タンパク質が利用されるアッセイを対象としている。一部の実施形態では、試料は、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、膜結合タンパク質は、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、試料中の循環タンパク質の濃度を定量化するための方法を対象としており、この方法は、a)試料中の細胞外小胞中の標的タンパク質のレベルを決定する工程、及びb)前記試料中の細胞外小胞中のタンパク質のレベルを、標的タンパク質を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較する工程を含む。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、試料中の循環タンパク質の濃度を定量化するための方法を対象としており、この方法は、a)前記タンパク質を含む細胞外小胞を使用して較正曲線を生成する工程、及びb)前記試料中の細胞外小胞中の標的タンパク質のレベルを較正曲線と比較して、前記試料中の細胞外小胞中のタンパク質の量を決定する工程を含む。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、B細胞リンパ腫を有する患者が抗CD20療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを決定するための方法を対象としており、この方法は、a)患者から試料を取得する工程、b)試料中の細胞外小胞中の循環CD20の量を決定する工程、c)試料中の細胞外小胞のCD20のレベルを、CD20を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較する工程、及びd)試料中において決定された細胞外小胞中の循環CD20の量に基づいて、患者がCD20療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを決定する工程を含む。一部の実施形態では、抗CD20療法は、抗CD20抗体の投与を含む。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、非標的タンパク質抗体、例えば抗CD20抗体の親和性を決定するための方法を対象としており、この方法は、抗体を表面プラズモン共鳴(SPR)分析に供することを含み、SPR分析は、リガンドとしての標的タンパク質、例えばCD20を発現する細胞外小胞と、被分析物としての抗体、例えば抗CD20抗体との使用を含む。一部の実施形態では、SPR分析が、2つ以上の抗標的抗体を区別するために、本明細書に記載のようにして用いられる。一部の実施形態では、SPR分析は、抗標的抗体のランク付けを可能にする。一部の実施形態では、特定の抗標的抗体の選択は、SPR分析を介して2つ以上の抗標的抗体をランク付けし、最も高位にランク付けされた抗標的抗体を選択することにより、又は所望の親和性を呈する抗標的抗体を選択することにより、実施される。
【0015】
一部の実施形態では、本開示は、患者から得られたT細胞の活性化を決定するための方法を対象としており、この方法は、a)CD20を発現する細胞外小胞を、T細胞及びCD20T細胞依存性二重特異性抗体と共にインキュベートすること、及びb)T細胞の活性化を決定することを含む。
【0016】
一部の実施形態では、本開示は、治療を必要とする対象における腫瘍を治療する方法を対象としており、この方法は、a)対象から試料を取得すること、b)腫瘍抗原を含む細胞外小胞を使用して較正曲線を生成すること、c)試料中の細胞外小胞中の腫瘍抗原のレベルを較正曲線と比較して、試料中の細胞外小胞中の標的腫瘍抗原の量を決定すること、d)試料中の細胞外小胞中の腫瘍抗原のレベルに基づいて、対象が抗体療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを決定すること、及びe)d)における決定に応答して治療を適用することを含む。
【0017】
一部の実施形態では、本開示の方法は、細胞外マーカーを使用して細胞外小胞の存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーはCD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
一部の実施形態では、本開示は、膜結合タンパク質の濃度及び較正曲線が、免疫アッセイ、ELISA、及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される方法を対象としている。一部の実施形態では、試料は、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、腫瘍抗原は、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、及びカニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
一部の実施形態では、本開示は、抗CD20抗体を利用する方法を対象としており、抗CD20抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、CD20T細胞依存性二重特異性抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】Aは、完全長タンパク質として循環する膜結合粒子として存在している例示的なcCD20構造を示している。Bは、I型CD20抗体の例示的な四量体内結合機序を示している。
【
図2】ウエスタンブロットによる膜結合小胞キャリブレーターの例示的特徴づけを示す。図中、カラム1はマーカーを表し、カラム2はEV 2ugを表し、カラム3はEV 1ugを表し、カラム4はEV 0.5ugを表し、カラム5はEV 0.25ugを表し、カラム6はrhCD20 250ngを表し、カラム7はrCD20 100ngを表し、カラム8はrCD20 40ngを表し、カラム9はrCD20 16ngを表し、カラム10はrCD20 6.4ngを表している。
【
図3】膜及び/又は細胞外小胞中のCD20の例示的特徴づけを示している。
【
図4】いずれか(左のパネル)2つの抗CD20抗体を用いた捕捉及び検出;又は(右のパネル)抗CD20抗体を用いた捕捉と抗CD9、抗CD63、及び抗CD81抗体を用いた検出の結果を示している。
【
図5】Aは、例示的な3日間の連続アッセイフォーマットを示している。Bは、例示的な架橋アッセイフォーマットを示している。
【
図6】例示的な代替的免疫アッセイフォーマットを示している。
【
図7】CD20検出に対するデタージェントの影響の分析例を示している。
【
図9】Aは、細胞外小胞に発現されたCD20に対する抗CD20 TDBの特徴づけのためのアッセイフォーマットの一例を示している。Bは、動態解析及びBiacore Sensorgramにより決定された抗CD20 TDBのCD20 EVに対する結合親和性の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、膜結合タンパク質を含む細胞外小胞ベースのキャリブレーターを組み込んだ、膜結合タンパク質、例えば、循環CD20の、検出及び/又は定量化のためのアッセイ、並びに過剰増殖性障害の検出及び処置におけるそのようなアッセイの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示のアッセイは、試料中の細胞外小胞中に存在するCD20のレベルを決定すること、及び試料中のCD20のレベルを、CD20を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較することにより、膜結合タンパク質、例えば細胞外小胞結合タンパク質、例えば循環CD20の濃度を定量化することを含む。一部の実施形態では、1つ以上の抗体を用いる免疫アッセイ、例えば、ELISA又はウエスタンブロットが、試料中の膜結合タンパク質の濃度を決定するために、又は較正曲線の準備に関連して、用いられる。
【0022】
限定を行うものではなく、明確化のために、本明細書にて開示する主題の詳細の説明を、以下の小節に分ける:
I.定義;
II.免疫アッセイ;
III.抗体;
IV.キット;及び
V.例示的な実施形態。
【0023】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991);及びHale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の指定がない限り、以下に記載される意味を有する。
【0024】
用語「約」又は「およそ」は、本明細書で使用される場合、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差範囲を意味することができ、これは、その値がどのように測定又は決定されるか、例えば、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、所与の値の1実施当たり1つ又は1つよりも多くの標準偏差以内を意味し得る。特定の値が本願及び本特許請求の範囲に記載されている場合、別段の記載がない限り、用語「約」は、特定の値について許容される誤差範囲、例えば用語「約」によって修飾される値の±10%を意味することができる。
【0025】
本明細書の目的のための用語「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下に定義される、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークを指す。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。一部の実施形態では、アミノ酸変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。一部の実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークの配列は、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0026】
用語「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の、合計の非共有性相互作用の強度を指す。別段の指定がない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバ(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な説明的且つ例示的な実施形態が以下に記載される。
【0027】
用語「親和性成熟」抗体は、改変などを有しない親抗体と比較して、1つ以上の超可変領域(HVR)に1つ以上の改変を有し、そのような改変により抗体の抗原に対する親和性が改善される抗体を指す。
【0028】
用語「抗体」は、本明細書では最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めた様々な抗体構造を包含するが、これらに限定されない。
【0029】
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
目的とする抗原、例えば、CD20タンパク質に「結合する抗体」は、その抗体が、アッセイ試薬、例えば、捕捉抗体又は検出抗体として有用であるように十分な親和性で抗原に結合するものである。典型的には、このような抗体は、他のポリペプチドと有意に交差反応しない。標的分子へのポリペプチドの結合に関して、特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチド又はエピトープへの「特異的結合」、又はそれに「特異的に結合する」、又はそれに「特異的な」という用語は、非特異的相互作用と測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、通常は、結合活性を有しない同様の構造を有する分子である対照分子の結合と比較した標的分子の結合を決定することによって測定され得る。
【0031】
用語「抗腫瘍抗原抗体」は、腫瘍抗原の標的化における薬剤、例えば、本明細書に記載のアッセイにおける薬剤として抗体が有用であるように、十分な親和性を有する腫瘍抗原、例えば、CD20に結合することができる抗体を指す。一部の実施形態では、抗腫瘍抗原抗体が無関係のタンパク質に結合する程度は、例えば、ラジオ免疫アッセイ(RIA)により測定した場合、標的化腫瘍抗原に対する抗体の結合の約10%未満である。一部の実施形態では、標的化腫瘍抗原に結合する抗体は、≦1M、≦100mM、≦10mM、≦1mM、≦100μM、≦10μM、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nMの解離定数(Kd)を有する。一部の実施形態では、本明細書に開示される、CD20に結合する抗体のKDは、10-3M以下、又は10-8M以下、例えば、10-8Mから10-13M、例えば、10-9Mから10-13Mであり得る。一部の実施形態では、本明細書に開示される、標的化腫瘍抗原に結合する抗体のKDは、10-10Mから10-13Mであり得る。一部の実施形態では、抗腫瘍抗原抗体は、標的化腫瘍抗原間で異なる種から保存されている標的化腫瘍抗原のエピトープに結合する。
【0032】
参照抗体と「結合について競合する抗体」は、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する抗体を指し、逆に、参照抗体は、競合アッセイにおいて抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する。例示の競合アッセイは、「Antibodies」,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY)に記載されている。
【0033】
「B細胞」は、骨髄内部で成熟するリンパ球であり、ナイーブB細胞、メモリーB細胞、又はエフェクターB細胞(形質細胞)を含む。本明細書のB細胞は、正常又は非悪性B細胞であってよい。
【0034】
「結合ドメイン」は、標的エピトープ、抗原、リガンド、又は受容体に特異的に結合する化合物又は分子の一部を意味する。結合ドメインは、抗体(例えば、モノクローナル、ポリクローナル、組み換え、ヒト化、及びキメラ抗体)、抗体断片又はその部分(例えば、Fab断片、Fab’2、scFv抗体、SMIP、ドメイン抗体、ダイアボディ、ミニボディ、scFv-Fc、アフィボディ、ナノボディ、並びに抗体のVH及び/又はVLドメイン)、受容体、リガンド、アプタマー、及び同定された結合パートナーを有する他の分子を含むが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される「捕捉抗体」は、試料中の標的分子、例えばCD20の形態に特異的に結合する抗体を指す。特定の条件下で、捕捉抗体は標的分子と複合体を形成し、これにより、抗体-標的分子複合体が試料の残りから分離され得る。一部の実施形態では、このような分離は、捕捉抗体に結合しなかった試料中の物質又は材料を洗い流すことを含み得る。一部の実施形態では、捕捉抗体は、プレート又はビーズ、例えば常磁性ビーズであるがそれに限定されない固体支持体表面に結合し得る。
【0036】
本明細書で使用される用語「CD20」は、末梢血又はリンパ器官由来のB細胞の90%を上回る表面に見られるおよそ35kDaのリンタンパク質であるCD20抗原を指す。CD20は、早期プレB細胞発生中に発現し、形質細胞の分化まで残る。CD20は、正常B細胞及び悪性B細胞の両方に存在する。文献中のCD20の別名は、「Bリンパ球限定抗原」又は「Bp35」を含む。CD20抗原は、例えばClark et al.PNAS(USA)82:1766(1985)に記載されている。
【0037】
本明細書の用語「CD20核酸」は、CD20タンパク質、及び/又は相補性核酸の少なくとも一部をコードする、DNA及びmRNAを含む核酸を指す。
【0038】
「腫瘍抗原を検出すること」が意味するのは、試料が腫瘍抗原を含むかどうかを評価することである。通常、腫瘍抗原タンパク質、例えば、CD20タンパク質が検出されるが、腫瘍抗原核酸、例えば、CD20核酸を検出することも、本明細書ではこの表現に包含される。
【0039】
本明細書の用語「腫瘍抗原核酸」は、腫瘍抗原タンパク質、及び/又は相補性核酸の少なくとも一部をコードする、DNA及びmRNAを含む核酸を指す。
【0040】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0041】
抗体の「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の5つの主要なクラス、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、又はμと呼ばれる。
【0042】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」のような変形は、記載された整数又は整数のグループの包含を意味するが、他のいかなる整数又は整数のグループの除外も意味しないことが理解されるであろう。
【0043】
用語「相関する」又は「相関すること」は、任意の方法で、第1の分析又はプロトコルの性能及び/又は結果の、第2の分析又はプロトコルの性能及び/又は結果との比較を指す。例えば、第1の分析若しくはプロトコルの結果を、第2のプロトコルを行う際に使用してもよく、及び/又は第1の分析若しくはプロトコルの結果を使用して、第2の分析若しくはプロトコルを行うべきかどうかを決定してもよい。遺伝子発現分析又はプロトコルの実施形態に関して、遺伝子発現分析又はプロトコルの結果を使用して、特定の治療レジメンが行われるべきかを決定することができる。
【0044】
用語「検出すること」は、本明細書では、標的分子、例えばCD20又はその処理形態の定性的測定と定量的測定の両方を含むように使用される。一部の実施形態では、検出することは、単に試料中の標的分子の存在を同定することと、標的分子が検出可能なレベルで試料中に存在するかを決定することとを含む。
【0045】
本明細書で使用される「検出抗体」は、試料又は試料-捕捉抗体組み合わせ材料中の標的分子に特異的に結合する抗体を指す。特定の条件下において、検出抗体は、標的分子又は標的分子-捕捉抗体複合体と複合体を形成する。検出抗体は、増幅され得る標識を用いて直接、又は例えば標識され、且つ検出抗体に結合する別の抗体を使用して間接的に、検出され得る。直接標識の場合、検出抗体は、典型的には、例えばビオチン又はルテニウムを含むがこれらに限定されない、いくつかの手段によって検出可能な部分にコンジュゲートされる。
【0046】
本明細書で使用される用語「検出手段」は、あるアッセイで後で読み取られるシグナル報告により検出可能な抗体の存在を検出するために使用される部分又は技法を指す。典型的には、検出手段は、例えば、マイクロタイタプレート上で捕捉される標識等の固定化標識を増幅する検出試薬、例えば、アビジン、ストレプトアビジン-HRP、又はストレプトアビジン-β-D-ガラクトピラノースを使用する。
【0047】
薬剤の「有効量」は、その薬剤が投与される細胞又は組織において生理学的変化を引き起こすために必要な量を指す。
【0048】
用語「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、これは抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクター機能の例としては、以下のものが挙げられる。C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);貪食;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化。
【0049】
用語「Fc領域」は、本明細書では定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異Fc領域を含む。一部の実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端に及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端のリジン(Lys447)は、存在する場合もあれば、しない場合もある。本明細書で別段の指定がない限り、Fc領域又は定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されている、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。
【0050】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(hypervariable region:HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は、一般に、VH(又はVL)中に以下の配列で現れる。FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0051】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」は、本明細書では、天然抗体構造と実質的に同様の構造を有するか、又は本明細書に定義されるFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すように同義に使用される。
【0052】
「ヘテロマルチマー」、「ヘテロマルチマー複合体」、又は「ヘテロマルチマータンパク質」は、少なくとも第1のヒンジ含有ポリペプチド及び第2のヒンジ含有ポリペプチドを含む分子を指し、第2のヒンジ含有ポリペプチドは、少なくとも1つのアミノ酸残基によって第1のヒンジ含有ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。ヘテロマルチマーは、第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドによって形成される「ヘテロダイマー」を含むことができるか、又は第1及び第2のヒンジ含有ポリペプチドに加えてポリペプチドが存在する高次三次構造を形成することができる。ヘテロマルチマーのポリペプチドは、非ペプチド、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)及び/又は非共有結合相互作用(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び/又は疎水性相互作用)によって互いと相互作用し得る。
【0053】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」は、本明細書で同義に使用され、このような細胞の子孫を含む、外因性核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞には「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらの細胞には、一次形質転換細胞及びそれに由来する子孫が、継代数に関係なく含まれる。子孫は、親細胞と完全に同一の核酸含量でない場合があるが、突然変異を含んでもよい。元々形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生体活性を有する変異体の子孫は、本明細書に含まれる。
【0054】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞が産生した抗体、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード化配列を利用した非ヒト由来の抗体に対応するアミノ酸配列を有するものである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に除外する。
【0055】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD(1991),Vols.1-3にあるようなサブグループである。一部の実施形態では、VLの場合、サブグループは、Kabatら(上掲)にあるようなサブグループカッパIである。一部の実施形態では、VHの場合、サブグループは、Kabatら(上掲)にあるようなサブグループIIIである。
【0056】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。一部の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、それにおいて、HVR(例えば、HVR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに相当し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は、場合によってはヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0057】
本明細書で使用される用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変であり(「相補性決定領域」又は「HVR」)、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触体」)を含有する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。別段の指示がない限り、HVR残基及び可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、Kabat et al.(上掲)に従って本明細書で番号付けされる。一般に、抗体は、6個のHVR、即ちVHに3個(H1、H2、H3)、VLに3個(L1、L2、L3)を含む。本明細書における例示的なHVRとしては、以下が挙げられる:
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)及び96-101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で生じるHVR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触体(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));並びに、
(d)HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)、及び94-102(H3)を含む(a),(b)、及び/又は(c)の組み合わせ
を含む。本明細書で同義に使用される「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、個体又は対象はヒトである。
【0058】
「イムノコンジュゲート」は、細胞傷害性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)にコンジュゲートされた抗体を指す。
【0059】
「単離された」核酸は、その自然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外に、又はその自然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。
【0060】
本明細書で同義に使用される「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、個体又は対象はヒトである。
【0061】
「抗体をコードする単離された核酸」(特異的抗体、例えば、抗CD20抗体への言及を含む)は、抗体重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、これには、単一のベクター又は別個のベクター中の核酸分子(複数可)及び宿主細胞内の1つ以上の位置に存在するそのような核酸分子(複数可)が含まれる。
【0062】
本明細書で使用される用語「標識」又は「検出可能な標識」は、検出又は定量化される物質に結合し得る任意の化学基又は部分、例えば、抗体を指す。標識は、物質の高感度検出又は定量化に適した検出可能な標識である。検出可能な標識の非限定的な例としては、発光標識、例えば、蛍光、リン光、化学発光、生物発光、及び電気化学発光標識、放射性標識、酵素、粒子、磁性物質、及び電気活性種等が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、検出可能な標識は、特異的結合反応に関与することによってその存在をシグナル伝達し得る。このような標識の非限定的な例としては、ハプテン、抗体、ビオチン、ストレプトアビジン、Hisタグ、ニトリロ三酢酸、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、及びグルタチオン等が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用される用語「膜結合タンパク質」は、抗原、ペプチド、及びタンパク質を含むいずれかの膜結合標的を指す。膜結合タンパク質は、膜内在性タンパク質及び/又は表在性膜タンパク質を含み得る。膜結合タンパク質の非限定的な例には、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、及びカニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指し、即ち、その集合を構成する個々の抗体が、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、但し、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体製剤の製造中に生じる変異を含む、可能なバリアント抗体は除く。このようなバリアントは、通常少量で存在する。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本願で開示される主題に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含有する、トランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない様々な技法によって作製することができ、このような方法及びモノクローナル抗体を作製するための他の例示的方法が本明細書に記載される。
【0065】
本明細書で使用される用語「添付文書」は、パッケージの構成要素の使用に関する情報を含有する、商用パッケージに習慣的に含まれる指示書を指す。
【0066】
「病原性」細胞は、疾患又は異常を生じさせるものであり、病変組織又は細胞内又は周辺に存在し得る。
【0067】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大パーセントの配列同一性を達成するために配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後の、保存的置換を配列同一性の一部として考慮しないで、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、当技術分野の熟練の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書の目的のために、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.の著作であり、ソースコードは、ユーザ文書と共に米国著作権局(U.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559)に提出されて、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であるか、又はソースコードからコンパイルされてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含めたUNIXオペレーティングシステムで使用する場合はコンパイルするべきである。全ての配列比較パラメータはALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。
【0068】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況下で、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(或いは、所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、又はそれに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有するか、又は含む所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
ここで、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によって、そのA及びBのそのプログラムのアラインメントにおいて完全な一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性と等しくないことが理解されるであろう。別段の記載がない限り、本明細書で使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落に記載されているように得られる。
【0069】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で同義に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状であっても分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸によって中断されていてもよい。これらの用語はまた、自然に、又は介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、若しくは任意の他の操作又は修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションにより修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸等を含む)の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド、及び当技術分野で既知の他の修飾もこの定義に含まれる。本明細書で使用される用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、特に抗体を包含する。
【0070】
本明細書で使用される「試料」は、より大量の材料のわずか一部を指す。一部の実施形態では、試料は、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、生体体液(例えば、血液、血漿、血清、便、尿、リンパ液、腹水、管洗浄液、唾液、及び脳脊髄液)、及び組織試料を含むが、これらに限定されない。試料の供給源は、固形組織(例えば、新鮮な、凍結した、及び/又は保存された臓器、組織試料、生検材料、若しくは穿刺液)、血液若しくは任意の血液成分、体液(例えば、尿、リンパ液、脳脊髄液、羊水、腹腔液、若しくは間質液)、又は循環細胞を含む個体由来の細胞であり得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、「治療」は、治療されている個体又は細胞の自然経過を改変することを目的とした臨床介入を指し、臨床病理過程の前又は最中に行うことができる。治療の望ましい効果には、疾患又はその状態若しくは症状の発生又は再発の予防、疾患の状態又は症状の軽減、疾患の直接的又は間接的な病理学的結果の減少、疾患進行率の低下、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後改善が含まれる。一部の実施形態では、本開示の方法及び組成物は、疾患又は障害の発症を遅らせる試みにおいて有用である。
【0072】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、概して、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(framework region:FR)と、3つの超可変領域(hypervariable region:HVR)とを含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。)単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体のVH又はVLドメインを使用し、それぞれ、相補的VL又はVHドメインのライブラリをスクリーニングして、単離してもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0073】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、連結している別の核酸を増殖することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、及びそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれるベクターを含む。一部のベクターは、それらが作用可能に連結している核酸の発現を誘導し得る。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0074】
II.免疫アッセイ
本開示は、膜結合タンパク質を含む細胞外小胞ベースのキャリブレーターを組み込んだ、膜結合タンパク質、例えば、循環CD20の検出及び/又は定量化のためのアッセイ、並びに過剰増殖性障害の検出及び処置におけるそのようなアッセイの使用を提供する。一部の実施形態では、本開示のアッセイは、試料中の細胞外小胞中に存在するCD20のレベルを決定すること、及び試料中のCD20のレベルを、CD20を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較することにより、膜結合タンパク質、例えば細胞外小胞結合タンパク質、例えば循環CD20の濃度を定量化することを含む。一部の実施形態では、1つ以上の抗体を用いる免疫アッセイ、例えば、ELISA又はウエスタンブロットが、試料中の膜結合腫瘍抗原の濃度を決定するために、又は較正曲線の準備に関連して、用いられる。
【0075】
一部の実施形態では、本開示は、膜結合タンパク質の検出及び定量化のための免疫アッセイ法を提供する。例えば、本開示の免疫アッセイ法は、サンドイッチアッセイ、酵素結合免疫吸着検定(ELISA)アッセイ、ELISAのデジタル形態、電気化学アッセイ(ECL)アッセイ、及び磁気的免疫アッセイ法を含むが、これらに限定されない、当技術分野で既知の戦略を組み込むことができる。
【0076】
一部の実施形態では、本開示は、細胞外小胞(EV)ベースのキャリブレーターを提供する。EVキャリブレーターは、膜結合タンパク質キャリブレーターとすることができる。例えば、EVキャリブレーターは、確認において天然CD20と同様であり得る。オクレリズマブは、4つの膜貫通スパンに起因する三次構造(ループの形態の)を有するCD20のエピトープに結合するので、膜結合タンパク質キャリブレーターを生成することが重要である。
【0077】
一部の実施形態では、本開示は、EVキャリブレーターを生成するための方法を提供する。例示的方法には、種系統を3から4日毎に継代培養すること、生成培地中の種系統を生成培養物へと希釈すること、生成培養物(例えば、DNA/jetPEI複合体)をトランスフェクトすること、トランスフェクトされた生成培養物からEVキャリブレーターを収集すること、及びEVキャリブレーターを精製することが含まれる。精製されたEVキャリブレーターは、ウェスタンブロット(western lot)により特徴づけすることができる。
【0078】
一部の実施形態では、本開示は、連続アッセイのための方法を提供する。連続アッセイは3日間の連続アッセイとすることができる。3日間の連続アッセイは、感度の向上が望ましい場合に使用することができる。例えば、1日目に、プレートを4℃の捕捉抗体でコーティングすることができる。2日目に、試料をプレートに付加し、4℃で一晩インキュベートすることができる。3日目に、検出抗体(例えば、ビオチンにコンジュゲートした)及び試薬(例えば、HRP)。非限定的な実施形態では、Ocre(捕捉抗体)、Ofa(検出抗体)及びHRP 100ng/mL(シグナル)を3日間の連続アッセイのために使用することができる。
【0079】
一部の実施形態では、本開示は、架橋アッセイのための方法を提供する。架橋アッセイは、2日間の架橋アッセイとすることができる。2日間の架橋アッセイは、結果までの時間の短縮が望ましい場合に使用することができる。例えば、1日目に、試料を、ビオチンコンジュゲートオクレリズマブ抗体及びdigコンジュゲートオファツムマブ抗体を含むマスターミックスと共にインキュベートすることができる。2日目に、試料をストレプトアビジンプレートに移すことができ、その後、HRPコンジュゲート抗DIG抗体を付加して検出のためにインキュベートすることができる。非限定的な実施形態では、プレートは、検出吸収度として450nmで、参照吸収度として630nmで、読み取ることができる。試料濃度は、1/y2のカーブ重み付けを用いる5パラメータロジスティックカーブフィッティングにデータを入力することにより決定することができる。
【0080】
一部の実施形態では、本開示の方法は、試料中の捕捉抗FGF21抗体(capture anti-CD20 antibody)のCD20タンパク質への結合が許容される条件下において、対象から得られた試料を、本明細書に記載されるもの等の捕捉抗体と接触させることを含む。例えば、限定するものではないが、試料を、CD20上に存在するエピトープに結合する捕捉抗体と共にインキュベートして、試料-捕捉抗体組み合わせ材料を生成することができる。試料及び捕捉抗体のインキュベーションのための条件は、アッセイの感度を最大にするため及び/又は解離を最小にするため、並びに試料中に存在するCD20タンパク質が捕捉抗体に結合することを確実にするために、選択することができる。
【0081】
一部の実施形態では、本明細書に開示される免疫アッセイ法で使用される捕捉抗体は、約0.1μg/ml~約5.0μg/mlの濃度で使用することができる。例えば、限定するものではないが、捕捉抗体は、約0.1μg/ml~約0.5μg/ml、約0.1μg/ml~約1.0μg/ml、約0.1μg/ml~約1.5μg/ml、約0.1μg/ml~約2.0μg/ml、約0.1μg/ml~約2.5μg/ml、約0.1μg/ml~約3.0μg/ml、約0.1μg/ml~約3.5μg/ml、約0.1μg/ml~約4.0μg/ml、約0.1μg/ml~約4.5μg/ml、約0.5μg/ml~約5.0μg/ml、約1.0μg/ml~約5.0μg/ml、約1.5μg/ml~約5.0μg/ml、約2.0μg/ml~約5.0μg/ml、約2.5μg/ml~約5.0μg/ml、約3.0μg/ml~約5.0μg/ml、約3.5μg/ml~約5.0μg/ml、約4.0μg/ml~約5.0μg/ml、約4.5μg/ml~約5.0μg/ml、約0.5μg/ml~約2.0μg/ml、又は約0.5μg/ml~約1.0μg/ml、例えば約0.5μg/mlの濃度で使用することができる。
【0082】
一部の実施形態では、捕捉抗体は、コーティング緩衝液中で希釈することができる。コーティング緩衝液の非限定的な例として、PBS、炭酸塩緩衝液、重炭酸塩緩衝液、又はそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、コーティング緩衝液は、重炭酸ナトリウムである。一部の実施形態では、コーティング緩衝液は、PBSである。一部の実施形態では、コーティング緩衝液は、約10mM~約1Mの濃度で使用することができる。例えば、限定するものではないが、コーティング緩衝液は、約10mM~約100mM、約10mM~約200mM、約10mM~約300mM、約10mM~約400mM、約10mM~約500mM、約10mM~約600mM、約10mM~約700mM、約10mM~約800mM、約10mM~約900mM、約100mM~約1M、約200mM~約1M、約300mM~約1M、約400mM~約1M、約500mM~約1M、約600mM~約1M、約700mM~約1M、約800mM~約1M、又は約900mM~約1Mの濃度で使用することができる。
【0083】
捕捉抗体は、本明細書で使用される場合、固相上に固定化することができる。例えば、限定するものではないが、固相は、例えば、表面、粒子、多孔質マトリクス、及びビーズ等の形態の支持体を含む、免疫測定アッセイにおいて有用な任意の不活性支持体又は担体とすることができる。一般に使用されている支持体の非限定的な例としては、小シート、SEPHADEX(登録商標)、ゲル、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン等から製造されたアッセイプレート又は試験管、例えば、96ウェルマイクロタイタプレート、並びに濾紙等の粒子材料、アガロース、架橋デキストラン、及び他の多糖が挙げられる。一部の実施形態では、固定化に使用される固相は、ビーズであってもよい。例えば、限定するものではないが、本明細書に開示される捕捉抗体は、常磁性ビーズに固定化される。一部の実施形態では、固定化捕捉抗体は、一度に複数の試料を分析するために使用することのできるマイクロタイタプレート上にコーティングされる。
【0084】
一部の実施形態では、捕捉抗体に結合する常磁性ビーズは、約0.1×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、例えば、約0.1×107ビーズ/ml~約0.5×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約1.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約2.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約3.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約4.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約5.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約6.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約7.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約8.0×107ビーズ/ml、約0.1×107ビーズ/ml~約9.0×107ビーズ/ml、約0.5×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約1.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約2.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約3.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約4.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約5.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約6.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約7.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約8.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約9.0×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/ml、約0.5×107ビーズ/ml~約1.0×107ビーズ/ml、約0.5×107ビーズ/ml~約2.0×107ビーズ/ml又は約0.5×107ビーズ/ml~約3.0×107ビーズ/mlの濃度で使用することができる。一部の実施形態では、常磁性ビーズは、約0.5×107ビーズ/ml~約2.0×107ビーズ/mlの濃度で使用することができる。一部の実施形態では、常磁性ビーズは、約1.0×107ビーズ/ml、例えば約1.22×107ビーズ/mlの濃度、又は約0.5×107ビーズ/ml、例えば約0.59×107ビーズ/mlの濃度で使用することができる。
【0085】
本明細書に開示される免疫アッセイ法は、試料-捕捉抗体組み合わせ材料を検出抗体と接触させることをさらに含むことができる。一部の実施形態では、検出抗体は、CD20上に存在するエピトープに結合する。一部の実施形態では、検出抗体は、試料-捕捉抗体組み合わせ材料上に存在するエピトープに結合するが、CD20の非存在下では捕捉抗体上には結合しない。一部の実施形態では、試料-捕捉抗体の組み合わせに結合した検出抗体を、続いて、検出手段、例えば1つ以上の検出試薬を使用して、検出抗体について測定又は定量し、検出抗体が結合したCD20タンパク質の量を決定する。
【0086】
一部の実施形態では、検出抗体は、約0.1μg/ml~約5.0μg/mlの濃度で使用することができる。例えば、限定するものではないが、検出抗体は、約0.1μg/ml~約0.5μg/ml、約0.1μg/ml~約1.0μg/ml、約0.1μg/ml~約1.5μg/ml、約0.1μg/ml~約2.0μg/ml、約0.1μg/ml~約2.5μg/ml、約0.1μg/ml~約3.0μg/ml、約0.1μg/ml~約3.5μg/ml、約0.1μg/ml~約4.0μg/ml、約0.1μg/ml~約4.5μg/ml、約0.5μg/ml~約5.0μg/ml、約1.0μg/ml~約5.0μg/ml、約1.5μg/ml~約5.0μg/ml、約2.0μg/ml~約5.0μg/ml、約2.5μg/ml~約5.0μg/ml、約3.0μg/ml~約5.0μg/ml、約3.5μg/ml~約5.0μg/ml、約4.0μg/ml~約5.0μg/ml、約4.5μg/ml~約5.0μg/ml、約1.0μg/ml~約3.0μg/ml、約0.5μg/ml~約3.0μg/ml、又は約0.5μg/ml~約2.0μg/mlの濃度で使用することができる。一部の実施形態では、全CD20タンパク質を検出するための免疫アッセイは、約0.1μg/ml~約1.0μg/ml、例えば約0.4μg/ml又は約0.8μg/mlの濃度の検出抗体を使用することができる。一部の実施形態では、活性CD20タンパク質を検出するための免疫アッセイは、約1.0μg/ml~約3.0μg/ml、例えば約1.1μg/ml又は約2.1μg/mlの濃度の検出抗体を使用することができる。
【0087】
一部の実施形態では、本開示の方法における使用のための抗CD20抗体を標識することができる。標識には、直接検出される標識又は部分、例えば、蛍光標識、発色性標識、電子密度標識、化学発光標識、放射性標識、及び酵素反応又は分子間相互作用を介して間接的に検出される部分、例えば、酵素又はリガンドが含まれるが、これらに限定されない。標識の非限定的な例としては、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体等のフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ(luceriferase)、例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸塩デヒドロゲナーゼ、過酸化水素を用いて色素前駆体を酸化させる酵素、例えば、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼとカップリングされたウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等の複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、並びに安定した遊離ラジカル等が挙げられる。一部の実施形態では、検出抗体はビオチンで標識され、例えば、検出抗体はビオチンにコンジュゲートされる。
【0088】
一部の実施形態では、ビオチン化検出抗体の検出試薬は、アビジン、ストレプトアビジン-HRP、又はストレプトアビジン-β-D-ガラクトピラノース(SBG)である。一部の実施形態では、検出試薬の読み出しは、蛍光定量又は比色定量である。例えば、限定するものではないが、テトラメチルベンジジン及び過酸化水素を読み出しとして使用することができる。一部の実施形態では、検出試薬がストレプトアビジン-HRPである場合、テトラメチルベンジジン及び過酸化水素を使用することによって、読み出しを比色定量することができる。或いは、一部の実施形態では、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシドを読み出しとして使用することができる。例えば、限定するものではないが、検出試薬がSBGである場合、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシドを使用することによって、読み出しを蛍光定量することができる。
【0089】
一部の実施形態では、検出試薬、例えばSBGは、約50~約500pMの濃度で使用することができる。例えば、限定するものではないが、検出試薬は、約50~約100pM、約50~約150pM、約50~約200pM、約50~約250pM、約50~約300pM、約50~約350pM、約50~約400pM、約50~約450pM、約100~約500pM、約150~約500pM、約200~約500pM、約250~約500pM、約300~約500pM、約350~約500pM、約400~約500pM、約450~約500pM、約100~約400pM、又は約200~約400pMの濃度で使用することができる。一部の実施形態では、検出試薬は、約100pM~約400pMの濃度で使用することができ、例えば、SBGは、約110pM、約155pM、又は約310pMの濃度で使用することができる。一部の実施形態では、SBGは約310pMの濃度で使用される。一部の実施形態では、検出試薬、例えばHRPは、約1/10~約1/1000の希釈で使用することができる。例えば、限定するものではないが、検出試薬は、約1/10~約1/100、約1/10~約1/500、約1/100~約1/1000、又は約1/500~約1/1000の希釈で使用することができる。一部の実施形態では、検出試薬は約1/100~約1/1000の希釈で使用することができ、例えばHRPは約1/100又は約1/500の希釈で使用することができる。
【0090】
一部の実施形態では、本開示の方法は、ブロッキング緩衝液で捕捉抗体を遮断することを含み得る。一部の実施形態では、ブロッキング緩衝液は、PBS、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin:BSA)、及び/又は殺生物剤、例えば、ProClinTM(Sigma-Aldrich,Saint Louis,MO)を含むことができる。一部の実施形態では、本方法は、複数の洗浄工程を含むことができる。一部の実施形態では、洗浄に使用する溶液は、一般に、限定されるものではないが、デタージェント、例えばTween20を含むPBS緩衝液等の緩衝液(例えば、「洗浄緩衝液」)である。例えば、限定するものではないが、捕捉抗体は遮断後に洗浄することができ、及び/又は試料は、捕捉されていない材料を除去するために、例えば洗浄によって捕捉抗体から分離することができる。
【0091】
一部の実施形態では、本明細書に開示される免疫アッセイ法は、約2pg/ml~約20pg/mlの検出感度、例えばウェル内感度を有する。例えば、限定するものではないが、本明細書に開示される免疫アッセイは、約2pg/ml~約3pg/ml、約2pg/ml~約4pg/ml、約2pg/ml~約5pg/ml、約2pg/ml~約6pg/ml、約2pg/ml~約7pg/ml、約2pg/ml~約8pg/ml、約2pg/ml~約10pg/ml、約2pg/ml~約11pg/ml、約2pg/ml~約12pg/ml、約2pg/ml~約13pg/ml、約2pg/ml~約14pg/ml、約2pg/ml~約15pg/ml、約2pg/ml~約16pg/ml、約2pg/ml~約17pg/ml、約2pg/ml~約18pg/ml、約2pg/ml~約19pg/ml、約3pg/ml~約15pg/ml、約3pg/ml~約10pg/ml、又は約3pg/ml~約5pg/mlの感度を有する。一部の実施形態では、本明細書に開示される免疫アッセイは、約2pg/ml以上、1pg/ml以上、又は0.5pg/ml以上の感度を有する。一部の実施形態では、本明細書に開示される免疫アッセイは、約0.2pg/ml~約2.0pg/ml、例えば、約0.2pg/ml~約0.5pg/ml、約0.2pg/ml~約1.0pg/ml又は約0.2pg/ml~約1.5pg/mlの検出感度、例えばウェル内感度を有する。例えば、限定するものではないが、本明細書に開示される免疫アッセイ、例えばSimoa HD-1 AnalyzerTMを使用する単一分子免疫アッセイは、約0.2pg/ml~約0.5pg/mlの感度、例えばウェル内感度を有する。
【0092】
本開示の免疫アッセイ法によって分析される試料は、臨床試料、培養中の細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清試料、血漿試料、他の生体体液(例えば、リンパ液)試料、又は組織試料とすることができる。一部の実施形態では、試料の供給源は、固体組織(例えば、新鮮な、凍結した、及び/又は保存された臓器、組織試料、血清、血漿、生検材料、又は穿刺液由来)、又は対象由来の細胞であり得る。一部の実施形態では、試料は、血液試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、試料、例えば、血液又は血漿試料を対象から得て、1つ以上のプロテアーゼ、エステラーゼ、DDP-IV、及び/又はホスファターゼ阻害剤で処理することができる。例えば、限定するものではないが、試料を、プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤のカクテル、例えばMS-SAFE(Sigma-Aldrich,Saint Louis,MO)で処理することができる。一部の実施形態では、試料は、抗凝固剤で処理されるか、又は抗凝固剤、例えばK2-EDTAを含有するチューブ内に収集される。一部の実施形態では、試料は、P800 Blood Collection System(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して収集することができる。
【0093】
一部の実施形態では、本開示は、表面プラズモン共鳴分析(SPR)を使用して治療剤の親和性を測定するための方法を提供する。例えば、細胞外小胞に発現される標的タンパク質、例えば、CD20と、非標的タンパク質抗体、例えば、抗CD20抗体との間の結合相互作用は、SPR分析によって評価することができ、ここで標的、例えば、CD20を発現する細胞外小胞はリガンドとして使用することができ、抗標的抗体、例えば、抗CD20抗体は、被分析物として使用することができる。SPR分析により、解離平衡定数(KD)、解離速度定数(kd)、及び結合速度定数(ka)の値を計算することができる。一部の実施形態では、治療剤は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、CD20T細胞依存性二重特異性抗体、及びこれらの組み合わせを含むことができる。一部の実施形態では、SPR分析が、2つ以上の抗標的抗体を区別するために、本明細書に記載のようにして用いられる。一部の実施形態では、SPR分析は、抗標的抗体のランク付けを可能にする。一部の実施形態では、特定の抗標的抗体の選択は、SPR分析を介して2つ以上の抗標的抗体をランク付けし、最も高位にランク付けされた抗標的抗体を選択することにより、又は所望の親和性を呈する抗標的抗体を選択することにより、実施される。
【0094】
III.抗体
本開示は、CD20に結合する抗体をさらに提供する。本開示の抗体は、試料中のCD20タンパク質レベルの検出及び定量化に有用である。一部の実施形態では、本開示の抗体は、本明細書に開示されるCD20タンパク質を検出及び定量化するための免疫アッセイ法において使用することができる。例えば、限定するものではないが、本開示の抗体を使用して、試料中の循環CD20タンパク質のレベルを検出することができる。
【0095】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、ヒト化することができる。一部の実施形態では、本開示の抗体は、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。一部の実施形態では、本開示の抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体を含むモノクローナル抗体であり得る。一部の実施形態では、本開示の抗体は、抗体断片、例えば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ダイアボディ、又はF(ab’)2断片であり得る。一部の実施形態では、抗体は、IgGである。一部の実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択される。一部の実施形態では、抗体は、完全長抗体、例えば、本明細書において定義されるインタクトなIgG1抗体、又は他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体を標識することができ、例えば、ビオチンにコンジュゲートすることができる。一部の実施形態では、本開示の抗体は、以下に詳述される項目1~7に記載されるような特徴のうちのいずれかを単独で又は組み合わせで組み込むことができる。
【0096】
A.例示的抗体
一部の実施形態では、本開示の抗体、例えば、抗CD20抗体は、≦1M、≦100mM、≦10mM、≦1mM、≦100μM、≦10μM、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM又は≦0.001nM.の解離定数(KD)を有し得る。一部の実施形態では、本開示の抗体は、約10-3以下、又は10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13MのKDを有し得る。一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、約10-10M~10-13MのKDを有し得る。例えば、限定するものではないが、本開示の捕捉抗体又は検出抗体は、その標的抗原に、約10-10M~10-13MのKDで結合する。
【0097】
一部の実施形態では、KDは、放射標識抗原結合アッセイ(radiolabeled antigen binding assay:RIA)によって測定することができる。一部の実施形態では、RIAは、目的とされる抗体のFabバージョン及びその抗原で実施することができる。例えば、限定するものではないが、抗原に対するFabの溶液結合親和性は、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、Fabを最小濃度の(125I)標識抗原で平衡化し、その後抗Fab抗体コーティングプレートと結合した抗原を捕捉することによって測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mLの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間、室温(およそ23℃)でブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc#269620)中で、100pM又は26pMの[125I]-抗原を、目的のFabの段階希釈物と混合する(例えば、Presta et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997)における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致する)。次いで、目的のFabを一晩インキュベートする;しかしながら、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)継続して平衡に達することを保証してもよい。その後、混合物は、室温でのインキュベーションのための捕捉プレートに移される(例えば、1時間)。次いで、溶液を除去し、プレートを、PBS中の0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したときに、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20TM;Packard)を添加し、プレートを10分間TOPCOUNTTMガンマカウンター(Packard)でカウントする。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度が、競合結合アッセイでの使用のために選択される。
【0098】
一部の実施形態では、KDは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定することができる。例えば、限定するものではないが、BIACORE(登録商標)-2000、BIACORE(登録商標)-3000、BIACORE X100、又はBIACORE T200処理ユニット(Biacore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用するアッセイが、~10応答単位(response unit:RU)での固定化抗原CM5チップを用いて25℃で実施される。一部の実施形態では、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサチップ(CM5、Biacore、Inc.)は、供給業者の指示書に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/mL(~0.2μM)に希釈した後、5μL/分の流量で注入し、結合タンパク質のおよそ10応答単位(RU)を達成する。抗原の注入後、1Mのエタノールアミンを注入して未反応基を遮断する。キネティクス測定のために、Fab(0.78nM~500nM)の2倍の段階希釈物を、およそ25μl/分の流量で25℃で0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20TM)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合速度(kon)及び解離速度(koff)は、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合及び解離センサグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算することができる。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic)といった分光計で測定される、漸増濃度の抗原の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域通過)の増加又は減少を測定する蛍光消光技法を使用することにより決定することができる。
【0099】
1.抗体断片
一部の実施形態では、本開示の抗原抗体は、抗体断片である。抗体断片としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、及びscFv断片、及び以下に記載する他の断片が挙げられるがこれらに限定されない。特定の抗体断片の概説としては、Hudson et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照されたい。scFv断片の概説としては、例えばPluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照;国際公開第93/16185号;米国特許第5,571,894号及び同5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボでの半減期が延長されたFab及びF(ab’)2断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0100】
一部の実施形態では、本開示の抗体はダイアボディであり得る。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってよい2つの抗原結合部位を含む抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号、国際公開第1993/01161号、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。また、本開示の抗体の範囲内にある追加の抗体断片である、トリアボディ及びテトラボディが、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0101】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、単一ドメイン抗体であり得る。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含む抗体断片である。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516号を参照のこと)。
【0102】
抗体断片は、本明細書に記載されているように、インタクトな抗体のタンパク質分解消化、及び組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による生産を含むがこれらに限定されない様々な技法によって作製することができる。
【0103】
2.キメラ抗体及びヒト化抗体
一部の実施形態では、本開示の抗体は、キメラ抗体である。一部のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)に開示されている。一部の実施形態では、本開示のキメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類由来の可変領域)、及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のクラス又はサブクラスから変化した「クラススイッチ」抗体であり得る。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0104】
一部の実施形態では、本開示のキメラ抗体は、ヒト化抗体であり得る。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減させながら、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、そのHVR(又はそれらの部分)は、非ヒト抗体に由来し、そのFR(又はそれらの部分)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、場合によっては、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。一部の実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を復元又は改善するように、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0105】
ヒト化抗体及びその作製方法については、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説があり、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトについて記載);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」について記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフル」について記載);及びOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)((FRシャッフルの「ガイド付き選択」アプローチの記載)にさらに記載されている。
【0106】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、以下のものが含まれるが、これらに限定されるものではない:「ベストフィット」法を用いて選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖細胞フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson、Front.Biosci.13:1619-1633(2008)参照);並びにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)参照)。
【0107】
3.ヒト抗体
一部の実施形態では、本開示の抗体はヒト抗体であり得る。ヒト抗体は、当技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0108】
抗原投与に対して応答するヒト可変領域を有するインタクトなヒト抗体又は完インタクトな抗体を産生するために修飾したトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより、ヒト抗体を調製することができる。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含むか、又は染色体外に存在するか、又は動物の染色体にランダムに統合されている。このようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSETM技法を記載する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技法を記載する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技法を記載する米国特許第7,041,870号;及びVELOCIMOUSE(登録商標)技法を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。このような動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾され得る。
【0109】
また、ヒト抗体は、ハイブリドーマを用いた方法で作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい。)また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法を介して生成されたヒト抗体が、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。さらなる方法は、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)、及びNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)を含む。ヒトハイブリドーマ技法(トリオーマ技法)は、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)にも記載されている。
【0110】
ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することができる。次いで、このような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法を、以下に記載する。
【0111】
4.ライブラリ由来の抗体
本開示の抗体は、コンビナトリアルライブラリを1つ以上の所望の活性を有する抗体についてスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当技術分野で知られている。そのような方法については、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説があり、さらに、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554;Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)に記載されている。
【0112】
一部のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーはポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリ内でランダムに再結合され、次いでWinter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されているように、抗原結合ファージに対してスクリーニングすることが可能である。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片として、抗体断片を提示する。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。或いは、ナイーブレパートリーは、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)によって記載されるように、(例えば、ヒトから)クローニングされて、いかなる免疫化も伴うことなく、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する単一抗体源を提供することができる。一部の実施形態では、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞からの再編成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して高度に可変的なHVR領域をコードし、インビトロでの再編成を達成することによってナイーブライブラリを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば:米国特許第5,750,373号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が挙げられる。
【0113】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書ではヒト抗体又はヒト抗体断片とみなされる。
【0114】
5.多重特異性抗体
一部の実施形態では、本開示の抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体であり得る。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、結合特異性の一方は、CD20上に存在するエピトープに対するものであり、他方は、任意の他の抗原へのものである。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0115】
多重特異性抗体を作製するための技術は、限定されるものではないが、異なる特異性を有する二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照)及び「ノブ・イン・ホール」エンジニアリング(例えば米国特許第5731168号を参照)を含む。多重特異抗体は、抗体Fcヘテロダイマー分子を作製するために静電ステアリング効果(electrostatic steering effects)を操作すること(国際公開第2009/089004号)、2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば米国特許第4676980号及びBrennan et al.,Science、229:81(1985)を参照)、二重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを使用すること(例えばKostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照)、二重特異性抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えばHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444-6448(1993)を参照)、及び一本鎖Fv(sFv)ダイマーを使用すること(例えばGruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照)、並びに、例えばTutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されているように三重特異性抗体を調製することによっても作製することができる。
【0116】
「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作された抗体も本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号を参照のこと)。
【0117】
6.抗体バリアント
本願で開示された主題はさらに、開示された抗体のアミノ酸配列バリアントを提供する。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切な修飾を、抗体をコードするヌクレオチド配列に組み込むことにより、又はペプチド合成により調製することができる。このような修飾としては、本抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれへの挿入、及び/又はその置換が挙げられるが、これらに限定されない。最終構築物に到達するために欠失、挿入、及び置換を任意に組み合わせることができるが、但し、その最終抗体修飾、即ち修飾された抗体が、所望の特性、例えば抗原結合を保有することを条件とする。
【0118】
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
抗体バリアントは、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を有し得る。このような変異のための目的部位は、HVR及びFRを含むが、これらに限定されない。保存的置換の非限定的な例は、表1において「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化の非限定的な例を表1で「例示的置換」の見出しの下に示し、アミノ酸側鎖クラスに関して以下でさらに記載する。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入することができ、その産物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善された補体依存性細胞傷害(CDC)若しくは抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)についてスクリーニングされ得る。
【0119】
【0120】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従ってグループ化され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0121】
一部の実施形態では、非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバを別のクラスと交換することを伴うことになる。
【0122】
一部の実施形態では、一種の置換バリアントは、親抗体、例えばヒト化抗体又はヒト抗体の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、さらなる試験のために選択される結果として生じるバリアント(複数可)は、修飾、例えば、限定されないが、親抗体と比較して、親和性の増加、免疫原性の低減といった特定の生物学的特性の改善、及び/又は実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有する。置換型バリアントの非限定的な例は、例えば、本明細書に記載される技法等のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。要するに、1つ以上のHVR残基が変異され、バリアント抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0123】
一部の実施形態では、例えば、抗体親和性を向上させるために、HVRに改変(例えば、置換)を加えることができる。そのような改変は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照のこと)、及び/又は抗原と接触する残基内で行うことができ、結果として得られるバリアントVH又はVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリからの構築及び再選択による親和性成熟化は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa、NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態では、多様性が、様々な方法(例えば、エラー-プローンPCR、鎖シャフリング、又はオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟させるために選択された可変遺伝子に導入され得る。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、複数のHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に特定され得る。
【0124】
一部の実施形態では、置換、挿入、及び/又は欠失は、このような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存的置換)が、HVR中になされてもよい。そのような改変は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であってもよい。上記に提供されるバリアントVH及びVL配列の一部の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、若しくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
【0125】
変異導入の標的となり得る抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085に記載されているように「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれる。この方法では、一残基又は一群の標的残基(例えば、arg、asp、his、lys、及びglu等の荷電残基)が同定され、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかが判定される。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入されてもよい。或いは、又は加えて、抗体と抗原との間の接点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するかどうかを決定するためにスクリーニングされてもよい。
【0126】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端の融合、並びに1個又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型バリアントとしては、抗体の血清半減期を増加させる、酵素(例えば、抗体指向性酵素プロドラッグ療法(Antibody-directed enzyme prodrug therapy:ADEPT)のため)又はポリペプチドへの抗体のN末端又はC末端の融合が挙げられる。
【0127】
b)グリコシル化バリアント
本開示の抗体は、一部の実施形態では、抗体がグリコシル化される程度を増加又は減少させるように改変することができる。例えば、限定するものではないが、抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製又は除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0128】
本開示の抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が存在するならば、それを改変することができる。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN-連結によって一般的に結合された分岐した二分オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNac)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分オリゴ糖構造の「ステム」のGlcNAcに結合したフコースを含んでもよい。一部の実施形態では、特定の特性が改善された抗体バリアントを作製するために、本開示の抗体におけるオリゴ糖の修飾を行うことができる。
【0129】
一部の実施形態では、Fc領域に(直接又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は、約1%~約80%、約1%~約65%、約5%~約65%、又は約20%~約40%、及びこれらの間の値であり得る。
【0130】
一部の実施形態では、フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載のMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対するAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定することができる。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体内のわずかな配列変異のため、297位から約±3アミノ酸上流又は下流に、即ち、294位と300位との間に位置し得る。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta,L.);同第2004/0093621号(協和発酵工業株式会社)を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠乏」抗体バリアントに関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。
【0131】
脱フコシル化抗体は、タンパク質のフコシル化が欠損している任意の細胞株において生成することができる。細胞株の非限定的な例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願公開第2003/0157108号、Presta,L;及び国際公開第2004/056312号,Adams et al.の特に実施例11)、並びにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞等のノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号)が挙げられる。
【0132】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに提供される。そのような抗体バリアントは、低減されたフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体バリアントの非限定的な例は、例えば、国際公開第2003/011878号(Jean-Mairet et al.);米国特許第6,602,684号(Umana et al.);及び米国特許出願公開第2005/0123546号(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖の少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有することができる。このような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号(Patel et al.)、国際公開第1998/58964号(Raju,S.)、及び国際公開第1999/22764号(Raju,S.)に記載される。
【0133】
c)Fc領域バリアント
一部の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾を本明細書に提供される抗体のFc領域に導入し、それにより、Fc領域バリアントを生成することができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置でのアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4 Fc領域)を含んでいてもよい。
【0134】
一部の実施形態では、本開示は、いくつかの、しかし全てではないエフェクター機能を有する抗体バリアントを提供する。そのような限定されたエフェクター機能は、抗体バリアントを、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCC等)が不要又は有害である用途のための、望ましい候補にすることができる。インビトロ及び/又はインビボの細胞傷害性アッセイを行い、CDC及び/又はADCC活性の低減/消失を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行い、抗体がFcγR結合を欠く(ゆえに、ADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能力を保持することを保証することができる。ADCCの媒介のための主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現し、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現については、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)参照)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリー(Cell Technology,Inc.Mountain View,CA)のためのACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ;及びCYTOTOX 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルで評価することができる。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び同第2005/100402号における、C1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照のこと)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定はまた、当技術分野で既知の方法を使用して実施することができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。一部の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるように、変化した(即ち、改善されたか又は減少した)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす改変を、Fc領域において行うことができる。
【0135】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、アミノ酸265、269、270、297、及び327位のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体が挙げられ、これは残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0136】
FcRへの結合が改善又は減少された特定の抗体バリアントが記載されている。例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号,及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照のこと。)
【0137】
一部の実施形態では、本開示の抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334位(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗体、例えば二重特異性抗体のFc領域で起こる改変は、増加した半減期及び新生児型Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有するバリアント抗体を生成することができ、これは母体IgGの胎児への移入の原因であり(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)and Kim et al.,J.Immunol.24:249(1994))、米国特許出願公開第2005/0014934号(Hinton et al.)に記載される。 これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントは、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの1つ以上での置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するバリアントを含む(米国特許第7,371,826号)。
【0139】
Fc領域バリアントのその他の例に関係するDuncan & Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;同第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0140】
d)システイン改変抗体バリアント
一部の実施形態では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば、「thioMAb」を生成することが望ましいかもしれない。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書にさらに記載されるように、抗体を薬物部分又はリンカ-薬物部分といった他の部分にコンジュゲートさせてイムノコンジュゲートを作成するために使用することができる。特定の実施形態では、以下の残基のうちの任意の1つ以上がシステインで置換されていてもよい:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成することができる。
【0141】
e)抗体誘導体
一部の実施形態では、本開示の抗体は、当技術分野で既知であり、容易に入手可能な、追加の非タンパク質性部分を含有するように、さらに修飾することができる。抗体の誘導体化に適した部位としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(N-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量を有していてよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に結合したポリマーの数は異なってもよく、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは、同じ分子であっても、異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が規定の条件下である治療に使用されるかどうか等を含むがこれらに限定されない検討事項に基づいて決定することができる。
【0142】
一部の実施形態では、放射線への曝露によって選択的に加熱され得る抗体及び非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非保護性部分はカーボンナノチューブである(Kam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600-11605(2005))。一部の実施形態では、放射線は、いずれの波長のものでよく、これには、限定されないが、通常の細胞を傷つけないが、抗体-非タンパク質性部分に近接する細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長が含まれる。
【0143】
B.抗体生成の方法
抗体、例えば、本明細書に開示される捕捉抗体及び/又は検出抗体は、当技術分野で利用可能な技術又は既知の技術を用いて作製することができる。例えば、限定するものではないが、抗体は、例えば米国特許第4,816,567号に記載されているように、組み換え方法及び組成物を使用して生成することができる。抗体を生成するための詳細な手順は、以下の実施例に記載されている。
【0144】
本開示の主題は、本明細書に開示される抗体をコードする単離された核酸をさらに提供する。例えば、単離された核酸は、抗体、例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖のVLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列をコードすることができる。
【0145】
一部の実施形態では、核酸は、1つ以上のベクター、例えば発現ベクター中に存在し得る。本明細書で使用される用語「ベクター」は、それが結合した別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1種は「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに統合され、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクター、発現ベクターは、それらが作動可能に連結する遺伝子の発現を指示することができる。一般に、組み換えDNA技法において有用な発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態である場合が多い。しかしながら、開示される主題は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)のような他の形態の発現ベクターを含むことを意図している。
【0146】
一部の実施形態では、本開示の抗体をコードする核酸、及び/又は核酸を含む1つ以上のベクターを、宿主細胞に導入することができる。一部の実施形態では、核酸の細胞への導入は、トランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション、核酸配列含有ウイルス又はバクテリオファージベクターでの感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子導入、マイクロセル媒介遺伝子導入、スフェロプラスト融合等を含むがこれらに限定されない任意の既知の方法により実施することができる。一部の実施形態では、宿主細胞は、以下を含むことができ、例えば、以下により形質転換されている:(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列と、抗体のVHを含むアミノ酸配列とをコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一部の実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary:CHO)細胞又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0147】
一部の実施形態では、開示される抗CD20抗体を作製する方法は、抗体をコードする核酸が導入された宿主細胞を抗体の発現に適した条件下で培養することと、任意で、宿主細胞及び/又は宿主細胞培養培地から抗体を回収することとを含むことができる。一部の実施形態では、抗体は、クロマトグラフィ技法によって宿主細胞から回収される。
【0148】
本開示の抗体の組み換え生成のために、例えば上記のような、抗体をコードする核酸を単離して、宿主細胞内でのさらなるクローニング及び/又は発現のために1つ以上のベクターに挿入することができる。そのような核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離及び配列決定され得る。
【0149】
抗体コード化ベクターのクローニング又は発現のための適切な宿主細胞には、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされないとき、細菌中で生成され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、及び第5,840,523号を参照されたい。(大腸菌における抗体断片の発現について記載するCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は、可溶性画分中で細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製することができる。
【0150】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母といった真核微生物は、抗体をコードするベクターの適切なクローニング又は発現宿主であり、それにはグリコシル化経路が「ヒト化」された菌株及び酵母株が含まれ、その結果、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体が生成される。Gerngross、Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株が同定されており、それらは昆虫細胞と組み合わせて使用することができ、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用することができる。
【0151】
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株が同定されており、それらは昆虫細胞と組み合わせて使用することができ、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用することができる。
【0152】
一部の実施形態では、植物細胞培養物を宿主細胞として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、及び第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を生成するためのPLANTIBODIESTM技法について記載)を参照されたい。
【0153】
一部の実施形態では、脊椎動物細胞を宿主として使用することもできる。例えば、限定するものではないが、懸濁液中で増殖するように適合された哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の非限定的な例は、SV40(COS-7)により形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されている293又は293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスのセルトリ細胞(例えばMather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されているTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頚癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、例えばMather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されているTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));及びY0、NS0及びSp2/0といった骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体生成に適した特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu、Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa、NJ),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0154】
一部の実施形態では、二重特異性抗体及び/又は多重特異性抗体を作製するための技法としては、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え同時発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983))、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照)、及び「ノブ・イン・ホール」エンジニアリング(例えば、米国特許第5,731,168号を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。二重特異抗体は、抗体Fcヘテロダイマー分子を作製するために静電ステアリング効果(electrostatic steering effects)を操作すること(国際公開第2009/089004号)、2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば米国特許第4676980号及びBrennan et al.,Science、229:81(1985)を参照)、二重特異性抗体を生成するためにロイシンジッパーを使用すること(例えばKostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照)、二重特異性抗体断片を作製するために「ダイアボディ」技術を使用すること(例えばHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444-6448(1993)を参照)、及び一本鎖Fv(sFv)ダイマーを使用すること(例えばGruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照)、並びに、例えばTutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されているように三重特異性抗体を調製することによっても作製することができる。
【0155】
本開示の二重特異性及び多重特異性分子は、科学技術(例えば、Kranz(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5807)、「ポリドーマ(polydoma)」技術(例えば、米国特許第4,474,893号)、又は組み換えDNA技術を使用して作製することもできる。本願で開示される主題の二重特異性及び多重特異性分子は、当技術分野で既知の方法を使用して本明細書に記載されているように、成分結合特異性、例えば第1のエピトープ及び第2のエピトープ結合特異性をコンジュゲートさせることによって調製することもできる。例えば、限定するものではないが、二重特異性及び多重特異性分子の各結合特異性は、別々に生成し、次いで互いにコンジュゲートさせることができる。結合特異性がタンパク質又はペプチドであるとき、種々のカップリング剤又は架橋剤を共有結合に使用することができる。架橋剤の非限定的な例としては、タンパク質A、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロハキサン-1-カルボキシレート(sulfosuccinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohaxane-1-carboxylate)(スルホ-SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky(1984)J.Exp.Med.160:1686;Liu(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8648を参照されたい)。他の方法としては、Paulus(Behring Ins.Mitt.(1985)No.78、118-132;Brennan(1985)Science 229:81-83),Glennie(1987)J.Immunol.139:2367-2375)により記載される方法が挙げられる。結合特異性が抗体(例えば、2つのヒト化抗体)である場合、それらは2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介してコンジュゲートされ得る。一部の実施形態では、ヒンジ領域は、コンジュゲーションの前に、奇数、例えば1つのスルフヒドリル残基を含有するように修飾することができる。
【0156】
一部の実施形態では、二重特異性抗体の両方の結合特異性は、同じベクター中にコードされ、同じ宿主細胞中で発現され、組み立てられ得る。この方法は、二重特異性及び多重特異性分子が、MAb×MAb、MAb×Fab、Fab×F(ab’)2、又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。一部の実施形態では、本開示の二重特異性抗体は、一本鎖二重特異性抗体、1つの一本鎖抗体と結合決定基とを含む一本鎖二重特異性分子、又は2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異性分子といった一本鎖分子であり得る。二重特異性及び多重特異性分子は、一本鎖分子であってもよく、又は少なくとも2つの一本鎖分子を含んでもよい。二重特異性及び多重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;及び米国特許第5,482,858号に記載されている。「オクトパス抗体」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位(例えば、エピトープ結合部位)を有する操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号を参照のこと)。
【0157】
一部の実施形態では、動物系を用いて、本開示の抗体を生成することができる。ハイブリドーマを調製するための1つの動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ生成は非常によく確立された手法である。融合のための免疫化脾細胞の単離のための免疫化プロトコル及び技法は、当技術分野において既知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)及び融合手順も既知である(例えば、Harlow and Lane(1988)、Antibodies,Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor New Yorkを参照されたい)。
【0158】
IV.キット
本願で開示される主題は、本明細書に開示される免疫アッセイを実施するために有用な材料を含むキットをさらに提供する。一部の実施形態では、キットは、本明細書に開示される抗体、例えば抗CD20抗体を含有する容器を含む。適切な容器の非限定的な例としては、ボトル、試験管、バイアル、及びマイクロタイタプレートが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックといった様々な材料から形成することができる。一部の実施形態では、キットは、開示された免疫アッセイ法において抗体、例えば抗CD20抗体を使用するための指示を提供する添付文書をさらに含む。
【0159】
一部の実施形態では、キットは、1つ以上の抗体を含有する1つ以上の容器を含むことができる。例えば、限定するものではないが、キットは、捕捉抗体を含む少なくとも1つの容器と、検出抗体を含む少なくとも1つの容器とを含むことができる。
【0160】
一部の実施形態では、試料中の腫瘍抗原タンパク質を検出するためのキットは、標的タンパク質のアミノ酸配列内に存在するエピトープに結合する捕捉抗体を含有する第1の容器、標的タンパク質のアミノ酸配列内に存在するエピトープに結合する検出抗体を含有する第2の容器、及び検出試薬を含有する第3の容器を含む。いくつかの実施形態では、捕捉抗体及び検出抗体は、標的タンパク質のアミノ酸配列内に存在する異なるエピトープに結合する。
【0161】
一部の実施形態では、捕捉及び/又は検出抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、CD20T細胞依存性二重特異性抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0162】
一部の実施形態では、捕捉抗体及び/又は検出抗体は、約0.1μg/ml~約5.0μg/mlの濃度で本開示のキット内に提供することができる。例えば、捕捉抗体及び/又は検出抗体は、約0.1μg/ml~約5.0μg/mlの濃度でELISAキット内に提供することができる。非限定的な実施形態では、捕捉抗体及び/又は検出抗体は、約0.1μg/ml~約2.0μg/mlの濃度でQuanterixキット内に提供することができる。一部の実施形態では、検出抗体を、例えば、ビオチンで標識することができる。
【0163】
一部の実施形態では、本開示のキット内に提供される検出試薬は、アビジン、ストレプトアビジン-HRP、又はストレプトアビジン-β-D-ガラクトピラノース(SBG)であり得る。一部の実施形態では、本開示のキットは、テトラメチルベンジジン、過酸化水素、及び/又はレゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシドをさらに含むことができる。一部の実施形態では、キットがストレプトアビジン-HRPを含む場合、キットはテトラメチルベンジジン及び過酸化水素をさらに含むことができる。一部の実施形態では、キットがSBGを含む場合、キットはレゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシドをさらに含むことができる。一部の実施形態では、SBGは、約100pM~約400pMの濃度でキット内に提供することができる。
【0164】
一部の実施形態では、捕捉抗体は、例えば、限定されないが、常磁性ビーズ等のプレート又はビーズといった固体支持体表面に結合させて提供することができる。或いは又は加えて、キットは、捕捉抗体に連結され得る固体支持体表面をさらに含むことができる。一部の実施形態では、固体支持体は常磁性ビーズとすることができ、約0.1×107ビーズ/ml~約10.0×107ビーズ/mlの濃度で提供することができる。
【0165】
或いは又は加えて、キットは、他の緩衝液、希釈液、及びフィルタを含む、商業的観点及びユーザの観点から望ましい他の材料を含むことができる。一部の実施形態では、キットは、血液試料を収集及び/又は処理するための材料を含むことができる。
【0166】
以下の実施例は、本願で開示される主題の単なる例示であり、いかなる意味においても制限とみなすべきではない。
【0167】
IV.例示的実施形態
A1.一部の非現知的な実施形態では、本開示は:試料中の膜結合タンパク質を含む細胞外小胞に結合することにより、捕捉抗体-細胞外小胞複合体を生成する捕捉抗体;及びb)捕捉抗体-細胞外小胞複合体に結合して検出可能な結合複合体を形成する検出抗体を含み、検出可能な結合複合体からのシグナルが、タンパク質を含む細胞外小胞から検出される1つ以上の既知の値に対して較正される、試料中の膜結合タンパク質を検出するためのアッセイを提供する。
A2.A1の一部の実施形態では、捕捉抗体は、結合について検出抗体と競合しない。
A3.A1及びA2の一部の実施形態では、捕捉抗体は、検出抗体とは異なるエピトープに結合する。
A4.A1-A3の一部の実施形態では、膜結合タンパク質は、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
A5.A1-A4の一部の実施形態では、捕捉抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
A6.A1-A5の一部の実施形態では、検出抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
A7.A1-A6の一部の実施形態では、アッセイは、細胞外小胞キャリブレーターをさらに含む。
A8.A1-A7の一部の実施形態では、試料は、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0168】
B1.一部の非限定的な実施形態では、本開示は、a)試料中の細胞外小胞中の標的タンパク質のレベルを決定する工程;及びb)試料中の細胞外小胞中の標的タンパク質のレベルを、標的タンパク質を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較する工程を含む、試料中の循環タンパク質の濃度を定量化するための方法を対象としている。
B2.B1の一部の実施形態では、標的タンパク質は、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
B3.B1又はB2の一部の実施形態では、試料は、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
B4.B1-B3の一部の実施形態では、標的タンパク質の濃度及び較正曲線は、免疫アッセイ、ELISA及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される。
B5.B1-B4の一部の実施形態では、方法は、細胞外小胞マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーは、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0169】
C1.一部の非限定的な実施形態では、本開示は、試料中の循環タンパク質の濃度を定量化するための方法を対象としており、この方法は、a)前記タンパク質を含む細胞外小胞を使用して較正曲線を生成する工程、及びb)試料中の細胞外小胞中の前記タンパク質のレベルを較正曲線と比較して、試料中の細胞外小胞中の前記タンパク質の量を決定する工程を含む。
C2.C1の一部の実施形態では、タンパク質は、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
C3.C1又はC2の一部の実施形態では、試料は、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
C4.C1-C3の一部の実施形態では、循環タンパク質の濃度及び較正曲線は、免疫アッセイ、ELISA及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される。
C5.C1-C4の一部の実施形態では、方法は、細胞外小胞マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーは、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0170】
D1.一部の非限定的な実施形態では、本開示は、B細胞リンパ腫を有する患者が抗CD20療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを決定するための方法を対象としており、この方法は:a)患者から試料を取得する工程;b)試料中の細胞外小胞中の循環CD20の量を決定する工程;c)試料中の細胞外小胞のCD20のレベルを、CD20を含む細胞外小胞を使用して生成された較正曲線と比較する工程;及びd)試料中において決定された細胞外小胞中の循環CD20の量に基づいて、患者がCD20療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを決定する工程を含む。
D2.D1の一部の実施形態では、抗CD20療法は、抗CD20抗体の投与を含む。
D3.D1又はD2の一部の実施形態では、抗CD20抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、CD20T細胞依存性二重特異性抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
D4.D1-D3の一部の実施形態では、試料は、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
D5.D1-D4の一部の実施形態では、循環タンパク質の濃度及び較正曲線は、免疫アッセイ、ELISA及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される。
D6.D1-D5の一部の実施形態では、方法は、細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーは、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0171】
E1.一部の非限定的な実施形態では、本開示は、抗CD20抗体を表面プラズモン共鳴(SPR)分析に供することを含む、抗CD20抗体の親和性を決定するための方法を対象としており、SPR分析は、CD20をリガンドとして、及び抗CD20抗体を被分析物として発現する細胞外小胞の使用を含む。
E2.E1の一部の実施形態では、抗CD20抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、CD20T細胞依存性二重特異性抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
E3.E1-E2の一部の実施形態では、方法は、細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーは、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0172】
F1.一部の非限定的な実施形態では、本開示は、患者から得られたT細胞の活性化を決定するための方法を対象としており、この方法は、a)CD20を発現する細胞外小胞を、T細胞及びCD20T細胞依存性二重特異性抗体と共にインキュベートすること、及びb)T細胞の活性化を決定することを含む。
F2.F1の一部の実施形態では、方法は、細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーは、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0173】
G1.一部の非限定的な実施形態では、本開示は、治療を必要とする対象における腫瘍を治療する方法を対象としており、この方法は、a)対象から試料を取得すること、b)腫瘍抗原を含む細胞外小胞を使用して較正曲線を生成すること、c)試料中の細胞外小胞中の腫瘍抗原のレベルを較正曲線と比較して、試料中の細胞外小胞中の標的腫瘍抗原の量を決定すること、d)試料中の細胞外小胞中の腫瘍抗原のレベルに基づいて、対象が抗体療法への応答を呈する可能性が高いかどうかを決定すること、及びe)d)における決定に応答して治療を適用することを含む。
G2.G1の一部の実施形態では、方法は、細胞外マーカーの存在を検出することをさらに含み、細胞外マーカーは、CD81、CD63、CD9、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
G3.G1-G2の一部の実施形態では、抗体は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
G4.G1-G3の一部の実施形態では、標的腫瘍抗原は、ヒトCD20抗原、マウスCD20抗原、ラットCD20抗原、ウサギCD20抗原、カニクイザルCD20抗原、ヒトCD3抗原、マウスCD3、ラットCD3抗原、ウサギCD3抗原、カニクイザルCD3抗原、ヒトFcRH5抗原、ヒトLy6G6抗原、ヒトHER2抗原、ヒトEGFR抗原、ヒトHER3抗原、ヒトHER4抗原、ヒトPSMA抗原、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
G5.G1-G4の一部の実施形態では、試料は、血漿試料、血清試料、組織培養上清試料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
G6.G1-G5の一部の実施形態では、循環腫瘍抗原の濃度及び較正曲線は、免疫アッセイ、ELISA及び/又はウエスタンブロットを使用して決定される。
【実施例0174】
実施例1.腫瘍抗原アッセイ較正曲線の準備
A.腫瘍抗原発現細胞の培養
種系統の維持:種系統を3~4日毎に継代培養した。3日間の継代培養の場合、細胞を、バッフル無し振盪フラスコ内において、32%充填(例えば250mLのバッフル無し振盪フラスコに80mL充填)又は50%充填(例えば2Lのバッフル無し振盪フラスコに1L充填)のExpi293発現培地に0.8×106細胞/mLで播種した;125rpm(32%充填)又は160rpm(50%充填)、軌道径25mmでかき混ぜ、8% CO2、湿度80%、37℃でインキュベートする;細胞は>4×106細胞/mL、>95%生存率に増殖するはずである。4日間の継代培養の場合、細胞を、バッフル無し振盪フラスコ内において、32%充填(例えば250mLのバッフル無し振盪フラスコに80mL充填)又は50%充填(例えば2Lのバッフル無し振盪フラスコに1L充填)のExpi293発現培地に0.4×106細胞/mLで播種した;125rpm(32%充填)又は160rpm(50%充填)、軌道径25mmでかき混ぜ、8% CO2、湿度80%、37℃でインキュベートする;細胞は>4×106細胞/mL、>95%生存率に増殖するはずである。
【0175】
採種栽培:Expi293種系統を、Hyclone HyCell TransFX-H培地、10mg/mLゲンタマイシン(A466)、10%プルロニックF-68、20mM L-グルタミン(A0821)で培養した。希釈には容器及び125mL振盪フラスコ/50mLチューブスピンを使用した。
【0176】
生細胞密度及び生存率、生存率(>4×106細胞/mL、>95%生存率、生存率)について種系統培養物をカウント:トランスフェクションに必要な培養物の容積を計算した(VF=30mL×トランスフェクションの数)。
【0177】
生成培地を調製する:Hyclone培地を、0.5g/LプルロニックF-68(5mLの10%プルロニックF-68を1LのHyclone培地に付加);4mM L-グルタミン(20mLの20mM L-グルタミン(A0821)を1LのHyclone培地に付加);及び0.21g/Lゲンタマイシン(21mLの10mg/mLゲンタマイシン(A466)を1LのHyclone培地に付加)(任意)で補った。
【0178】
Expi293種系統を、適量の生成培地において2.0×106細胞/mLに希釈した;これは、トランスフェクトされる培養物である。以下の式を使用して、希釈に必要な種系統培養物を計算した:
VC=XFVF/XC
[式中:
VC=必要とされる種系統培養物の容積(mL)
XF=トランスフェクションのための最終的な所望の生細胞密度(2.0×106細胞/mL)
VF=全トランスフェクションに必要な最終的な培養物容積(mL)
XC=種系統培養物の生細胞密度(細胞/mL)]
【0179】
Expi293生成培養物の希釈物を、フラスコ/チューブスピン当たり25.5mLに分注した。フラスコ/チューブスピンを37℃、8% CO2、125rpm(フラスコの軌道径25mm)又は225rpm(チューブスピンの軌道径50mm)に置き、平衡させた(少なくとも15分)。
【0180】
B.細胞外小胞腫瘍抗原キャリブレーター精製プロトコル
pB_EF1_hCD20コンストラクトでトランスフェクトされたExpi293の7日培養物を収集し、500gで10分間遠心沈殿させた。上清を、別の50mlの円錐体にデカントし、2000gで10分間回転させた。上清を0.22um真空フィルタにデカントし、濾過した。濾過した培地を70mlの遠心分離コンセントレーター(Centricon Plus-70,UFC710008)で濃縮した:60mlの上清をローディング、3750rpmで4℃で10分、穏やかに混合した上清;3750rpmで4℃で10分;濾液をデカントし、さらなる上清を加え、容積が12ml未満になるまでさらなる回数回転させた。濃縮物を4℃で2分間、750g(最大1000g)で回収した。濃縮物の回転は、沈殿及び凝集を回避するために10分以下とした。濃縮培地を、30krpm及び4℃で75分間、超遠心機内で回転させた。チューブは、試料を含まないものを含め、PBSを用いて0.01g以内に適切にバランスさせた(バランスさせるためにH2Oを使用)。Accel及びDecelはどちらもMaxを使用した。上清をデカントした。ペレットがチューブの底に見えなければならない。ペレットを500uLのPBSに再懸濁し、次いで超遠心機のチューブを12mLの1X PBSで充填した。混合物を再びPBSでバランスさせ、4℃で75分間30krpm(100,000g)で再度遠心分離した。上清を流出させ、ペレットを0.5~1mlのPBSに穏やかに再懸濁した。
【0181】
C.ウエスタンブロットによるEV腫瘍抗原キャリブレーター値の割り付け
図2は、本明細書に記載のように調製したEV腫瘍抗原キャリブレーターの例示的特徴づけを示す。図の値はウエスタンブロットにより割り付けられている。カラム1はマーカーを表し、カラム2はEV 2ugを表し、カラム3はEV 1ugを表し、カラム4はEV 0.5ugを表し、カラム5はEV 0.25ugを表し、カラム6はrhCD20 250ngを表し、カラム7はrCD20 100ngを表し、カラム8はrCD20 40ngを表し、カラム9はrCD20 16ngを表し、カラム10はrCD20 6.4ngを表している。
【0182】
図3は、捕捉抗体としての抗CD20 Ab、及び検出抗体としての抗CD20又は検出抗体としての抗テトラスパニン抗体を使用した、健常及びNHL(例えば、DLBCL及びFL)ドナー由来の血漿試料中のCD20の存在を示している。テトラスパニン抗体を使用して細胞外小胞中のCD20の存在を検出することもできる。例えば、CD20を使用した捕捉及びCD81、CD9、Cd63を使用した検出は、膜(又は細胞外小胞)中にこれらマーカーが共局在し、CD20が存在することを実証した。全ての小胞が全部又は同じマーカーを有するわけでないため、したがって、検出のためにカクテルが必要であった。
【0183】
図4は、抗CD20抗体を使用して健常及びNHL(例えば、DLBCL及びFL)由来の血漿中のCD20を検出するときの例示的ELISAフォーマットを示している。
図4のELISAデータは、超遠心分離していないニートな血漿中にこれらマーカーが共局在することの証拠を示している。
【0184】
D.QuanterixによるEV腫瘍抗原標準曲線
以下の材料を、Quanterixアッセイのために使用した:a)標準曲線及び試料希釈剤PBS、1.5% BSA、0.05% ポリソルベート20、0.05% Proclin 300、pH7.4、b)抗DIG抗体結合ビーズ、c)CD20抗原の捕捉抗体としてのDIG結合オファツムマブ、d)検出抗体としてのビオチン結合オファツムマブ、e)酵素試薬としてのストレプトアビジン結合ベータガラクトシダーゼ(SBG)、及びf)RGP、シグナルのレポーターとして使用されるSBGの基質(
図10も参照のこと)。
【0185】
細胞外小胞に発現されるCD20を、濃度500ng/mLから開始して標準曲線希釈剤中で希釈した。最終濃度が0.5ng/mLになるように2倍の段階希釈を10回行う。11レベル+非特異的ブランクをピペットでQuanterixポリプロピレン(polyproyilene)低結合プレートに入れた。PBS、1.5% BSA、0.05%ポリソルベート20、0.05% Proclin 300、pH7.4中で0.5ug/mLに希釈した検出及び捕捉抗体を調製し、96ウェルプレートの前に機器にローディングした。酵素試薬SA Betaガラクトシダーゼを、それ自体のバッファー中で濃度150pMに希釈した。機器から生データをエクセルcvsファイルにダウンロードし、5plフィットのSoftMax Proソフトウェアを使用して回帰させた。表2は、Quanterixによる例示的EV CD20標準曲線を提供する。
【0186】
【0187】
実施例2.較正曲線がある場合及びない場合の腫瘍抗原の検出
血漿の収集.6mLの全血を収集し、血漿ラベンダートップVacutainerチューブ(血漿採集チューブ、BD #367863)に移した。血流が停止するまで、採集チューブを完全にファイルした。全血採取後、血漿ラベンダートップVacutainerチューブを5回穏やか且つ完全に反転させて均一に混合した。赤血球はチューブを強く反転させても破裂しなかった。細胞溶解は検体の分解につながる可能性がある。標本を、採血直後に湿式氷上に置いた。この過程は採血後30分以内に開始された。
【0188】
試料は処理後直ちに凍結した。Vacutainerチューブを1600×gで15分4℃で遠心分離した。細胞の白層を乱すことなく、移送ピペットを使用してチューブ(~3mL)の最上層から血漿をゆっくりと注意深く収集し、前標識した2つの4.5mL NUNCチューブに移した。残りの細胞ペレットは適切に廃棄した。全ての可能な血漿が除去されたわけではなかった。血漿はバフィーコートから約5mm離れたところに留まり、細胞物質(単核細胞)による血漿の汚染が回避された。血漿を、5~6回反転することにより混合し、前標識した2.0mLのSarstedtチューブに分注した。試料を、保存のために、直立位で-70/-80℃の冷凍機(好ましい)又は-20℃の冷凍機(代替的に)に移した。
【0189】
試料を-70/-80℃(好ましい)又は-20℃(代替的に)で分析まで保存した。
【0190】
連続アッセイ.感度の向上が望ましい場合、3日間の連続アッセイ(
図5A)を使用することができる。1日目:プレートを、捕捉抗体を用いて一晩4℃でコーティングした。2日目:試料を加え、一晩4℃でインキュベートした。3日目:検出抗体(ビオチンにコンジュゲートさせた)及びSA-HRPを加えた。以下の抗体及びシグナル条件を使用した:Ocre 1ug/ml(捕捉抗体)、Ofa 0.5ug/ml(検出抗体)及びHRP 100ng/mL(シグナル)。表3は、連続アッセイによって生成された例示的データを提供する。
【0191】
【0192】
架橋アッセイ.2日間の架橋アッセイ(
図5B)は、結果までの時間を短縮することが望ましい場合に使用することができる。1日目:100uLの試料を100uLのマスターミックス(Ab-DIG+Ab-ビオチン)と共に一晩4℃でインキュベートした。2日目:マスターミックスを含む100uLの試料を取り出し、SAプレートに移した。シグナルを、抗DIG-HRPで検出した。以下の抗体及びシグナル条件:マスターミックス1ug/mL(ofa-DIG+抗DIG-ビオチン)及びHRP 50ng/mL(シグナル)を使用した。表4は、架橋アッセイにより生成された例示的データを提供する。
【0193】
【0194】
較正曲線を用いないシグナル検出:試料及び試薬を、EVキャリブレーターなしの標準曲線希釈剤で希釈した。試料は2倍に段階希釈した。希釈した試料をピペットでQuanterixポリプロピレン低結合プレートに入れた。抗DIG抗体、オファツムマブ-DIG及びオファツムマブ-ビオチンに結合したビーズは、標準曲線希釈剤に入れて濃度0.5ug/mLに希釈される。ビーズは公称ビーズ濃度1.4×109ビーズ/mLに希釈される。酵素(ストレプトアビジンβ-ガラクトシダーゼ、SBG)を、SBG希釈剤中で150pMに希釈した。ビーズ、検出器、酵素、基質及び標準物質/試料を含む96ウェルプレートを機器にローディングした。生データを機器からエクセルcvsファイルにダウンロードした。生データを、Excelスプレッドシートを使用して処理した。
【0195】
表5に示されるように、組み換えヒトを用いて生成した較正曲線はなかった。オクレリズマブが捕捉抗体として使用され、オファツムマブが検出抗体として使用された。市販の組み換えヒトは、おそらくは膜貫通ヘリックスによるループの形成を欠くことに起因して、Ocre/Ofaの組み合わせでシグナルを誘発しなかった。膜に結合していない直鎖ペプチド又は組み換えタンパク質は、ELISAにシグナルを誘発せず、このことは、オクレリズマブ又はオファツムマブがそのそのコンホーメーションでCD20に結合しないことを示唆している。
【0196】
【0197】
較正曲線を用いたシグナル検出:CD20 EVを、開始濃度500ng/mLの標準曲線希釈剤で希釈した。最終濃度が0.5ng/mLになるように2倍の段階希釈を10回行った。11レベル+非特異的ブランクをピペットでQuanterixポリプロピレン低結合プレートに入れた。
【0198】
オファツムマブ-DIG及びオファツムマブ-ビオチンをBA003+1.5% BSA中で濃度0.5ug/mLに希釈した。抗DIG Ab-ビーズをBA003+1.5% BSA中で公称ビーズ濃度1.4×109ビーズ/mLに希釈する。酵素(ストレプトアビジンβ‐ガラクトシダーゼ、SBG)をSBG希釈剤中で150pMに希釈した。ビーズ、検出器、酵素、基質及び標準物質/試料を含む96ウェルプレートを機器にローディングした。生データをエキスポートし、Softmax Proを使用して分析した。
【0199】
表6は、用量依存性シグナル(ビーズ当たり平均酵素、
図10も参照)、標準偏差、CD観察濃度、濃度変動係数、及び回収を提供する。以下の式を使用した:
シグナル:ビーズ当たり平均酵素(AEB)、
変動係数(%C.V.)=(標準偏差/理論値)×100、
、及び
理論値との差(回収%)=[(平均計算濃度/理論濃度)-1]×100
【0200】
【0201】
実施例3.ビーズベースの免疫アッセイフォーマット
タンパク質、例えば、腫瘍抗原を検出するために有用な別のフォーマットには、ビーズベースの免疫アッセイ、例えば、Quanterixプラットフォームが含まれる。このようなアッセイでは、抗DIG抗体に続いてオファツムマブ-DIGコーティングを使用してcCD20及びオファツムマブ-ビオチンを捕捉することができ、続いてストレプトアビジンβガラクトシダーゼを検出に使用することができる(
図6)。
【0202】
例示的なビーズベースの免疫アッセイフォーマットでは、オファツムマブ-DIG及びオファツムマブ-ビオチンをBA003+1.5% BSA中で濃度0.5ug/mLに希釈した。Digoxinに対する抗体(抗DIG-ビーズ)で標識したビーズをBA003+1.5% BSA中で公称ビーズ濃度1.4×109ビーズ/mLに希釈した。酵素(ストレプトアビジンβ‐ガラクトシダーゼ、SBG)を、SBG希釈剤中で150pMに希釈した。ビーズ、検出器、酵素、基質及び標準物質/試料を含む96ウェルプレートが、機器にローディングされる。
【0203】
図6に示されるように、第1の工程では、試料、抗DIGビーズ、オファツムマブ-ビオチン及びオファツムマブDIG検出器をピペットでキュベットに取り、およそ67ケイデンスのインキュベーションのためにサンドイッチを形成した(50分)。次いで、第2の工程において、サンドイッチをSBGで標識し、7ケイデンス(5分)インキュベートした。工程間に、磁石でビーズをペレットに取り、続いて洗浄工程を行った。ビーズを、レゾルフィンβ‐D‐ガラクトピラノシド(RGP)基質に再懸濁し、画像化のためにSimoa Discに移した。表7は、用量依存性のビーズ当たり平均酵素(AEB)、変動係数(CV)、計算濃度、濃度のCV、回収、信号対バックグラウンド比を提供する。
【0204】
【0205】
実施例4.検出性に対するデタージェントの影響
1組のCD20コントロール(5及び50ng/mL)を、PBS、1.5% BSA、0.15%ポリソルベート20、0.05% Proclin 300、pH7.4中で調製した。第2の組を、PBS、1.5% BSA、0.0 5%ポリソルベート20、0.05% Proclin 300、pH7.4中で調製した。コントロールをQuanterix機器でアッセイした。
図7に示されるように、このアッセイでは低い方のデタージェントが改善された信号対バックグラウンド(S/B)比を示した。
【0206】
実施例5.薬物耐性アッセイ
薬物耐性コントロールを、内因性の影響を軽減するために、緩衝液マトリックス中で調製した(
図8)。CD20 TDB及びCD20を、それぞれPBS、1.5% BSA、0.05% ポリソルベート20、0.05% Proclin 300、pH7.4中で公称濃度の2倍に希釈し、次いで1対1で合わせた。最終濃度は、0、0.05、0.5、及び5ug/mLのTDB及び50ng/mLのCD20であった。コントロールをアッセイし、標準曲線に対して定量した。薬物耐性試験は、5ug/mLのTDB(例えば、抗CD20-CD3)の存在下で50ng/mLのCD20 EVで約50%の干渉を示した。
【0207】
実施例6.細胞外小胞に発現されるCD20に対する抗CD20 TDBの、BiacoreTMを用いた特徴づけ
細胞外ビヒクル(EV)に発現したCD20と抗CD20 TDBの間の結合相互作用を、BiacoreTM T200機器(GE Healthcare;Piscataway,NJ)で表面プラズモン共鳴(SPR)技法により評価した。解離平衡定数(KD)、解離速度定数(kd)、及び結合速度定数(ka)の値を、不均一被分析物結合モデルを使用してBiacoreTM T200評価ソフトウェア(Version 3.0;GE Healthcare)で計算した。
【0208】
CD20 EVを、間接捕捉方法を使用してSAセンサチップ上の異なるフローセル(FC)上に捕捉した(
図9A)。ビオチン化抗CD81及び抗CD9抗体(30ug/mLの等濃度で混合)が、4つのFC全てへのビオチン-ストレプトアビジン相互作用を介してまず捕捉され、およそ2500の反応単位(RU)の捕捉レベルが得られた。次いでCD20 EVを、0.25μg/mLの濃度で40~120秒(s)間FC2又はFC4に注入した。その結果得られたEVの捕捉レベルは600~1800RUの範囲であった。様々な濃度の抗CD20 TDBをランニングバッファー(0.01M HEPES、0.15M NaCl、及び3mM EDTA、pH 7.4)中で希釈し、次いで4つのFCに流量100μL/分で1又は2分(min)間注入した;抗体からの抗CD20 TDBの解離を、動力学的親和性測定のために10分間進行させた。実験は37℃で実施された。結果は
図9Bにまとめられている。
図9Bには、37Cでの抗CD20 TBDのCD20 EVへの結合の代表的なBiacore Sensorgramも提示されている。
【0209】
図示及び特許請求される様々な実施形態に加えて、本開示の主題は、本明細書に開示及び特許請求される特徴の他の組み合わせを有する他の実施形態も対象とする。したがって、本明細書に提示される特定の特徴は、本開示の主題が本明細書に開示される特徴の任意の適切な組み合わせを含むように、本開示の主題の範囲内において他の様式で互いに組み合わせられてよい。本開示の主題の特定の実施形態の前述の説明は、例証及び説明の目的のために提示されている。この説明は、包括的であることも、又は本開示の主題を開示した実施形態に限定することも意図していない。
【0210】
本開示の主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本開示の主題の組成物及び方法に様々な修正及び変形を加えることができることは、当業者には明らかである。したがって、本開示の主題が特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内の修正及び変形を含むことが意図されている。
【0211】
様々な刊行物、特許、及び特許出願が本明細書に引用されており、それらの内容は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。