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2023-182703STAPHYLOCOCCUS感染症を処置するための治療的バクテリオファージ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182703
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】STAPHYLOCOCCUS感染症を処置するための治療的バクテリオファージ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20231219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231219BHJP
   A61K 38/14 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231219BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61K35/76 ZNA
A61K45/00
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/19
A61K47/10
A61K38/14
A61K31/43
A61K31/545
A61K31/7056
A61K31/7028
A61K31/7048
A61K31/546
A61P11/02
A61P13/02 105
A61P17/00 101
A61P7/00
A61P9/00
A61P31/04
A61P19/02
A61P43/00 121
A61K47/02
C12N15/34
C12N7/01
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023169911
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2020555752の分割
【原出願日】2019-01-02
(31)【優先権主張番号】62/731,775
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/678,611
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/613,050
(32)【優先日】2018-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519291618
【氏名又は名称】アルマタ・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】モラレス,サンドラ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】マーンズ,ジリアン
(72)【発明者】
【氏名】ランキン,デボラ・エイ
(72)【発明者】
【氏名】スムレカー,フレンク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細菌感染症を有するヒトを処置する方法を提供する。
【解決手段】細菌感染症を有するヒトを処置する方法であって、Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する1つまたは複数の異なるバクテリオファージであって、特定の3種類のポリヌクレオチド配列、および前記特定の3種類のポリヌクレオチド配列のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する1つまたは複数の異なるバクテリオファージを含む組成物を前記ヒトに投与するステップを含む方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌感染症を有するヒトを処置する方法であって、Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する1つまたは複数の異なるバクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する1つまたは複数の異なるバクテリオファージを含む組成物を前記ヒトに投与するステップを含む方法。
【請求項2】
確定された肺以外のS.aures感染症を有するヒトを処置する方法であって、Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する少なくとも2つの異なるバクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれかと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むゲノムを含む少なくとも2つの異なるバクテリオファージを含む組成物を前記ヒトに投与するステップを含み、感染症は肺のS.aureus感染症ではない方法。
【請求項3】
組成物が、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列のポリヌクレオチド配列を有するバクテリオファージから選択される少なくとも3つの異なるバクテリオファージを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
細菌感染症が、副鼻腔炎、尿路感染症、腹腔内感染症、皮膚感染症、皮膚構造感染症、菌血症、敗血症、心内膜炎またはインプラント感染症である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
インプラント感染症が、心臓インプラント感染症(例えば、補助人工心臓感染症、ペースメーカー感染症)、人工関節感染症または人工弁心内膜炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細菌感染症が抗生物質に耐性である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組成物がバクテリオファージSa87、J-Sa36およびSa83の組合せを含み、前記バクテリオファージが配列番号1、配列番号2および配列番号3のヌクレオチド配列をそれぞれ含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
組成物がエンドトキシンを実質的に含有しない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
組成物が細菌宿主細胞タンパク質を実質的に含有しない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
組成物が薬学的に許容される賦形剤、担体またはその組合せをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
薬学的に許容される賦形剤、担体またはその組合せはカルシウム塩またはマグネシウム塩を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
組成物が、液体、半液体、固体、冷凍または凍結乾燥された製剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
組成物が3×10から3×1011プラーク形成単位(PFU)の全バクテリオファージを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
組成物が1×10から1×1011PFUの各バクテリオファージを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
組成物が、3×10PFUの全バクテリオファージを含む1ミリリットルの投薬量で投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ヒトにおいて微生物フローラを改変する方法であって、Staphylococcus
aureus細菌に対して溶菌活性を有する少なくとも2つの異なるバクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むゲノムを有するバクテリオファージから選択される、少なくとも2つの異なるバクテリオファージを含む組成物を前記ヒトに投与するステップを含む方法。
【請求項17】
組成物が抗生物質をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
抗生物質が、フルオロキノロン、カルバペネム、アミノグリコシド、アンサマイシン、セファロスポリン、ペニシリン、ベータラクタム、ベータラクタマーゼ阻害剤、葉酸経路阻害剤、フシダン、グリコペプチド、グリシルサイクリン、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、オキサゾリジノン、フェニコールホスホン酸、ストレプトグラミンおよびテトラサイクリンからなる群から選択される抗生物質のクラスからのものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象に抗生物質を投与することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
抗生物質がフルオロキノロン、カルバペネム、アミノグリコシド、セファロスポリン、ペニシリン、ベータラクタムまたはベータラクタマーゼ阻害剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
細菌感染症が、細菌バイオフィルムの存在によって特徴付けられる感染症である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
組成物が静脈内投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
組成物が関節内投与される、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
組成物が少なくとも6時間おきに投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
組成物が少なくとも12時間おきに投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
組成物が少なくとも24時間おきに投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
組成物が少なくとも7日おきに投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージおよび凍結保護物質を含む、細菌構成成分を実質的に含有しないバクテリオファージ組成物であって、バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムを有し、各個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくく、抗生物質耐性遺伝子を有さない、バクテリオファージ組成物。
【請求項29】
相補性が可能である1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムを有するバクテリオファージ、および凍結保護物質を含む、細菌構成成分を実質的に含有しないバクテリオファージ組成物であって、組成物の標的細菌範囲は、組成物中のいかなる個々のバクテリオファージの範囲より広い、バクテリオファージ組成物。
【請求項30】
凍結保護物質がグリセロールを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
グリセロールが約10%から約30%(v/v)の濃度である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
細菌構成成分が細菌内毒素である、請求項28~31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
細菌構成成分が細菌宿主タンパク質である、請求項28~31のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
組成物が薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せはカルシウム塩またはマグネシウム塩を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
組成物が液体、半液体、固体、冷凍または凍結乾燥された製剤である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
組成物のバクテリオファージがメチシリン耐性Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
組成物が1×10から1×1011PFUの各バクテリオファージを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
組成物が1ミリリットル当たり3×10PFUの全バクテリオファージの投薬量で投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
組成物が2~8℃で保存される、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
少なくとも1つのバクテリオファージの配列が天然に存在しない、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
少なくとも1つの偏性溶菌性バクテリオファージおよび8℃以下の温度での保存のための保存媒体を含む、細菌構成成分を実質的に含有しないバクテリオファージ組成物であっ
て、バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムを有し、各個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくく、抗生物質耐性遺伝子を有さない、バクテリオファージ組成物。
【請求項43】
ヒトにおけるS.aureus感染症の処置における請求項28~42のいずれかに記載の組成物の使用であって、感染症は実質的または完全に肺以外の感染症であり、S.aureus感染症を患っているヒトに組成物を投与することを含む使用。
【請求項44】
Staphylococcus aureus細菌感染症を有するヒトの処置におけるStaphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する1つまたは複数の異なるバクテリオファージを含む組成物の使用であって、1つまたは複数の異なるバクテリオファージの組成物を前記ヒトに投与することを含み、前記1つまたは複数のバクテリオファージの少なくとも1つは、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含むゲノムを含む、使用。
【請求項45】
ヒトにおける確定された肺以外のS.aureus感染症の処置におけるStaphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する少なくとも2つの異なるバクテリオファージを含む組成物の使用であって、処置は、前記ヒトへの前記組成物の投与を含み、組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれかと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むゲノムを含む少なくとも2つのバクテリオファージを含み、感染症は肺のS.aureus感染症ではない、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照出願
[0001]本出願は、2018年1月2日に出願の米国特許仮出願第62/613,050号、2018年5月31日に出願の米国特許仮出願第62/678,611号および2018年9月14日に出願の米国特許仮出願第62/731,775号への優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
[0002]本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、ここに参照により完全に組み込まれる配列表を含む。2019年1月2日に作成された前記ASCIIコピーは、054249-502001WO_Sequence_Listing_ST25という名前であり、1.77メガバイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
[0003]バクテリオファージ、バクテリオファージの組成物、ならびに医学的および非医学的な適用のためのその使用が、本明細書に記載される。
[0004]抗生物質耐性であるますます多くのヒト病原体は、重大な細菌感染症のための新しい治療法の切迫した必要性をもたらした。抗生物質耐性の従来の機構を回避し、バイオフィルムに対して有効であることができ、生来の腸フローラの破壊を回避することができる新規アプローチが、特に望ましい。この臨床上の課題は、バクテリオファージ(ファージ)療法への新たな関心を引き起こした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005]天然に存在しないバクテリオファージを含むバクテリオファージ、バクテリオファージ組成物が本明細書で提供される。組成物は、細菌構成成分、例えば細菌内毒素および宿主細胞構成成分(例えば、タンパク質)を実質的に含有しなくてよい。組成物は、1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージ、および場合により凍結保護物質または他の賦形剤を含むことができる。一部の態様では、バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むことができる核酸配列を含むかまたはゲノムを有する。一部の実施形態では、配列は、1つまたは複数の配列番号1~10と100%の配列同一性を有さない。一部の場合には、各個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくく、および/または抗生物質耐性遺伝子を有さない。一部の実施形態では、バクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006]一態様では、細菌構成成分、例えば細菌内毒素、細菌宿主タンパク質などを実質的に含有しないバクテリオファージ組成物が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、相補性が可能である1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージを含むバクテリオファージ組成物が本明細書で提供される。バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸またはゲノム、および場合により凍結保護物質を含むことができる。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配
列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の少なくとも1つと100%同一ではない。一部の実施形態では、組成物の標的細菌範囲は、組成物中のいかなる個々のバクテリオファージの範囲または組成物中の個々のバクテリオファージの合計より広い。一部の実施形態では、組成物中のバクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。
【0006】
[0007]一態様では、バクテリオファージ組成物が本明細書で提供される。組成物は、細菌構成成分、例えば細菌内毒素、細菌宿主タンパク質などを実質的に含有しなくてよい。組成物は、少なくとも1つの偏性溶菌性バクテリオファージを含むことができる。一部の実施形態では、組成物は、8℃以下で選択される温度での保存のための保存媒体を含む。組成物中のいかなるバクテリオファージも、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の1つまたは複数と少なくとも93%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸を含むか、またはゲノムを有することができる。一部の実施形態では、少なくとも1つのバクテリオファージ核酸またはゲノムは、配列番号1~10のいずれか1つと100%の同一性を有さない。個々のバクテリオファージの少なくとも1つは、普遍形質導入を起こしにくく、および/または抗生物質耐性遺伝子を有さない。一部の実施形態では、組成物のバクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。
【0007】
[0008]別の態様では、S.aureusに関連した細菌病の処置における医薬として使用するための、またはそこで使用するためのバクテリオファージ組成物が提供される。本明細書で提供される組成物のいずれも、S.aureus感染症などの疾患または病気の処置で使用することが企図される。一部の実施形態では、バクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。対象へのバクテリオファージ組成物の投与を含む、疾患を処置する対応する方法も提供される。
【0008】
[0009]一態様では、細菌感染症を有するヒトを処置する方法であって、Staphylococcus aureus細菌に感染しそれを溶菌する1つまたは複数の異なるバクテリオファージを含む組成物をヒトに投与するステップを含む方法が本明細書で提供される。バクテリオファージの少なくとも1つは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列の1つまたは複数から選択されるポリヌクレオチド配列を含む核酸またはゲノムを有することができる。一部の態様では、バクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。本方法は、S.aureus感染症を有する患者を選択することを含むことができる。一部の態様では、感染症は肺以外の感染症である。
【0009】
[0010]一態様では、確定された肺以外のS.aures感染症を有するヒトを処置する方法であって、Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する1つまたは複数の異なるバクテリオファージを含む組成物をヒトに投与するステップを含む方法が本明細書で提供される。バクテリオファージの少なくとも1つは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、または配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列の1つまたは複数から選択されるヌクレオチド配列を含む核酸またはゲノムを含む。一部の態様では、感染症は肺のS.aureus感染症ではない。一部の態様では、バクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。本方法は、S.aureus感染症を有する患者を選択することを含むことができる。一部の態様では、感染症は、肺以外の感染症である。
【0010】
[0011]一態様では、ヒトにおいて微生物フローラを改変する方法であって、Staph
ylococcus aureusに対する溶菌活性を有する1つまたは複数の異なるバクテリオファージを含む組成物を前記ヒトに投与することを含む方法が本明細書で提供される。1つまたは複数の異なるバクテリオファージは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つのヌクレオチド配列、または配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列を含む核酸またはゲノムを有するバクテリオファージから選択される。一部の態様では、バクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。本方法は、S.aureus感染症を有する患者を選択することを含むことができる。一部の態様では、感染症は、肺以外の感染症である。
【0011】
[0012]さらなる態様は、例えば、対象において細菌感染症の処置で使用するためのバクテリオファージ組成物であって、バクテリオファージ組成物は対象に投与され、細菌感染症はStaphylococcus(例えば、Staphylococcus aureus)感染症を含む、バクテリオファージ組成物に関する。
【0012】
[0013]一部の態様は、例えば、対象において細菌感染症の処置で使用するための医薬の製造におけるバクテリオファージ組成物の使用であって、バクテリオファージ組成物は対象に投与され、細菌感染症はStaphylococcus(例えば、Staphylococcus aureus)を含む、使用に関する。
【0013】
[0014]一部の態様は、バクテリオファージに関する。例えば、Sa87、J-Sa36、Sa83、Sa38、Sa41、Sa42、Sa44、Sa51、Sa76およびSa81と本明細書で呼ばれるバクテリオファージ。さらに、それらのいずれかと、および/または配列番号1~10の1つまたは複数と90~100%の核酸配列同一性を有するバクテリオファージ。
【0014】
[0015]一部の態様は、ヒトにおけるStaphylococcus aureus感染症の処置における本明細書に記載される任意のバクテリオファージまたは組成物の使用であって、感染症は、実質的にまたは完全に肺以外の感染症である、使用に関する。使用は、S.aureus感染症を患っているヒトに組成物を投与することを含むことができる。
【0015】
[0016]一部の態様は、ヒトにおけるStaphylococcus aureus感染症の処置における本明細書に記載される任意のバクテリオファージまたは組成物の使用に関する。使用は、例えば、1つまたは複数の異なるバクテリオファージの組成物を前記ヒトに投与することを含むことができ、ここで、前記1つまたは複数のバクテリオファージの少なくとも1つは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、および配列番号1~10のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含むゲノムを含む。一部の実施形態では、バクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。
【0016】
[0017]一部の態様は、ヒトにおける確定された肺以外のStaphylococcus
aureus感染症の処置における本明細書に記載される任意のバクテリオファージまたは組成物の使用に関する。使用は、前記ヒトへの組成物の投与を含む処置を含むことができ、組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10からなる群から選択されるヌクレオチド配列、および配列番号1~10のいずれかと少なくとも93%の同一性を有する配列を含む核酸またはゲノムを含む少なくとも2つのバクテリオファージを含み、ここで、感染症は肺のS.aureus感染症でない。一部の使用では、バクテリオファー
ジの1つまたは複数は、天然に存在しない。
【0017】
[0018]次に、例にすぎないが、添付の図面を参照して実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[0019]図1A、1Bおよび1Cは、3つの構成成分バクテリオファージSa83(図1A)、Sa87(図1B)およびJ-Sa36(図1C)の例の透過型電子顕微鏡検査(TEM)像を示す。像は、カウドウイルス目ミオウイルス科に属するファージの特徴である、直線状の収縮テールおよび細いネックを示す。
図2】[0020]図2は、(上から下へ)Sa83、Sa87、J-Sa36およびファージK(GenBank受託番号K766114)のProgressive Mauveアラインメントを示し、各々は、注釈付きの遺伝子(白色ボックス)および末端反復配列(赤色ボックス)を示す。各注釈付きのゲノムの上の赤色ブロックにおける中断は、ヌクレオチド配列における差を示す。
図3】[0021]図3Aおよび3Bは、本明細書に記載される1つまたは複数の態様によるファージの組成物(AB-SA01)が、好中球減少性CD-1マウス(2A)および免疫適格BALB/cマウス(2B)において肺細菌負荷を低減することを示すグラフである。ファージ用量は、1用量当たりの全PFUとして与えられる。
図4】[0022]図4は、ファージ候補の単一コピー核酸の類似性が(ヌクレオチド同一性%)で示されることを示している概要図である。各細胞の中で、値はアラインメント全体を通した同一性パーセントである。ギャップによって占められるアラインメントのパーセントは、これらのギャップが全体の同一性パーセントに含まれるので括弧の中に別に報告される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0023]本開示は記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら、異なり得ることを理解すべきである。本開示の範囲は添付の請求項だけによって限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することだけのためであり、限定するものではないことも理解すべきである。
【0020】
[0024]本開示の詳細な記載は読者の便宜のためだけに様々なセクションに分割されており、任意のセクションに見出される開示は別のセクションにおけるものと合わせることができる。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0021】
定義
[0025]本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」には、文脈が明らかに別に指示しない限り、複数形が含まれることに留意する必要がある。したがって、例えば、「バクテリオファージ組成物」への言及は複数のそのような候補薬剤を含み、「バクテリオファージ」への言及は1つまたは複数のバクテリオファージおよび当業者に公知であるその同等物への言及を含む、などである。
【0022】
[0026]本明細書で使用されるように、範囲を含む数値指定、例えば、温度、時間、量、濃度およびそのようなものの前に使用される場合、用語「約」は、(+)または(-)10%、5%または1%変動することができる近似値を示す。
【0023】
[0027]本明細書で範囲(例えば、投薬量範囲)が掲載される場合、その値は、終端点を含む列挙される範囲(複数可)の中の任意の個々の値または範囲を含むことができることを理解すべきである。
【0024】
[0028]本明細書で使用される用語「突然変異体」は、Sa87、J-Sa36またはSa83と遺伝子的に異なっているが、Staphylococcus aureus標的細菌に感染しそれを溶菌する能力をなお保持するバクテリオファージを指す。突然変異体は、例えば、サイレント突然変異、保存的突然変異、軽微な欠失および/または遺伝物質の軽微な複製を一般的に含み、参照バクテリオファージの表現型の特徴を保持する。一実施形態では、突然変異体は、本明細書に記載されるバクテリオファージのゲノムに依存する任意の観察可能な特徴または特性、すなわち、前記バクテリオファージの表現型の特徴および/またはStaphylococcus種に対する溶菌活性を保持する。好ましい突然変異体は、Staphylococcus aureus標的細菌に感染しそれを溶菌する能力を保持し、参照バクテリオファージのゲノムと比較して10%未満、さらに好ましくは7%未満、より好ましくは1%未満の核酸変異を有する。あるいは、または組合せで、突然変異体は、参照バクテリオファージのポリペプチドと比較して、コード化ポリペプチド配列に好ましくは7%未満のアミノ酸変異を有する。Sa87、J-Sa36またはSa83のいずれか1つと比較した場合、ゲノム全体にわたって10%未満の核酸変異を有し、Staphylococcus aureus標的細菌に対する溶菌活性を有したファージの例には、Sa38、Sa41、Sa42、Sa44、Sa51、Sa76およびSa81が含まれる(図4)。
【0025】
[0029]核酸またはアミノ酸配列に関する用語「同一性%」または「配列同一性%」は、前記配列の間の同一性または相同性のレベルを指定し、当技術分野で公知の技術によって判定することができる。同一性パーセントを判定するために、包括的な方法、局所的な方法およびハイブリッド方法、例えばセグメントアプローチ法を限定されずに含む、様々な配列アラインメント方法のいずれも使用することができる。同一性パーセントを判定するプロトコールは、当業者の範囲内のルーチンの手順である。包括的な方法は、分子の最初から末端まで配列を整列させ、個々のヌクレオチド対のスコアを合算し、ギャップペナルティを課すことによって最良のアラインメントを判定する。非限定的な方法には、例えば、CLUSTAL W、例えば以下を参照、Julie D.Thompsonら、CLUSTAL W:Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting、Position Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice、22(22)Nucleic Acids Research 4673~4680頁(1994);および、反復的な精密化が含まれる。非限定的な方法には以下のものが含まれる、例えば、BLAST、Match-box、例えば以下を参照、Align-M、例えば、Ivo Van Walleら、Align-M-A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences、Bioinformatics 20(9):1428~1435頁(2004)。この定義は、試験配列の相補体も指すか、またはそれに適用することもできる。この定義には、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものも含まれる。下記のように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明することができる。好ましくは、長さが少なくとも約100ヌクレオチドの領域にわたって、より好ましくは長さが100~1000またはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって同一性が存在する。
【0026】
[0030]本明細書で使用される用語「相補性」は、特定のゲノムを有するバクテリオファージの、別のゲノムを有する別の異なるバクテリオファージを補償する能力を指す。より具体的には、バクテリオファージ非感受性突然変異体コロニー(標的細菌の)は特定のバクテリオファージに対して生じ得るが、別のバクテリオファージになお感受性であり得る。言い換えると、1つのファージに対して生じるバクテリオファージ抵抗性変異株細菌は、別のファージになお感受性である。
【0027】
[0031]本明細書で使用される用語「普遍形質導入」は、バクテリオファージを通して任意の細菌DNAを別の細菌に移すことができるプロセスを指す。それは、稀な事象であり、10,000中およそ1つのファージの非常に低い百分率のファージ粒子が、偶然ドナー細菌のDNAを有することがある。本質的には、これはウイルスエンベロープの中への細菌DNAのパッケージングである。
【0028】
[0032]本明細書で使用される用語「処置する」または「処置すること」は、予防的処置ならびに矯正処置(疾患を既に患っている対象の処置)を包含するものである。
[0033]用語「溶菌性」または「溶菌活性」は、細菌細胞の溶解を引き起こすバクテリオファージの特性を指す。バクテリオファージの溶菌活性は、当技術分野で公知の技術により、細菌(例えば、S.aureus株)で試験することができる。溶菌サイクルは、ファージが細胞に感染し、新しいファージ粒子を複製し、宿主細胞膜を突破するときに起こるプロセスのために命名される。一部のファージは、バクテリオファージDNAがバクテリオファージプロセスの活性抑制のために事実上休眠状態である、溶原サイクルを示す。細菌が分裂するときはいつでも、ファージのDNAも同様にコピーされる。この方法で、ウイルスは、宿主を溶菌することなくその宿主の中で複製を続けることができる。ある特定の時点で、状態が変化することができ、ファージは溶菌サイクルに入る。「偏性溶菌性」は、溶原サイクルを経ることができないファージを指す。
【0029】
[0034]使用または方法は、本明細書に記載されるバクテリオファージまたはバクテリオファージ組成物を対象に投与することを一般的に含む。本明細書で使用されるように、「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは他の動物である。好ましくは、対象はヒトである。
【0030】
[0035]本明細書で使用される用語「単離された」は、バクテリオファージが、それが天然に存在する元の環境から取り出されることを示す。詳細には、単離されるバクテリオファージは、例えば、それが天然に位置する環境から別々に育成され、培養される。
【0031】
[0036]本明細書で使用される用語「精製された」は、バクテリオファージが、製造する宿主細菌から取り出されることを示す。詳細には、精製されたバクテリオファージは、細菌構成成分などの生産不純物がその製造または生産環境から除去されている。細菌構成成分には、限定されずに、細菌宿主タンパク質、脂質および/または細菌内毒素が含まれる。用語「精製された」は、バクテリオファージの株が遺伝子的に均一である遺伝子精製を指すこともできる。
【0032】
[0037]本明細書で使用されるように、用語「実質的に精製された」は、宿主細菌タンパク質またはエンドトキシンなどの混入物を1%未満、0.1%未満、0.001%未満含有するかまたは検出可能な量を含有しない組成物を指す。さらに、本明細書で使用されるように、バクテリオファージ株を記載するために使用される場合、用語「実質的に純粋な」は、その株が1つの特定のゲノム配列の99%を超える、99.9%を超える、99.999%を超える、または100%であるような、組成物の遺伝子的純度を指す。
【0033】
[0038]一般的に、試料中の全材料の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%(体積により、湿重量もしくは乾燥重量により、またはモルパーセントもしくはモル割合により)が、不純物も遺伝子変異体も含有しない場合、組成物は実質的に純粋である。
【0034】
[0039]用語「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト動物を指す。好ましくは、対象または患者は、本明細書に記載される組成物による処置を必要とする、例えば、組成物
による処置に感受性である細菌感染症を有する。
【0035】
[0040]本明細書で使用される「相乗量」は、相乗効果(すなわち、相加効果より大きな効果)をもたらす、第1の量(例えば、バクテリオファージ)と第2の量(例えば、異なるバクテリオファージ)の合計を指す。したがって、本明細書で互換的に使用される用語「共力作用」、「相乗作用」、「相乗的」、「合わせた相乗量」および「相乗的治療効果」は、組合せで投与される化合物の測定された効果を指し、ここで、測定された効果は、単一の薬剤として単独で投与される本明細書で提供される化合物の各々の個々の効果の合計より大きい。
【0036】
[0041]本明細書で使用される用語「実質的に含有しない」は、それが含有するべきでない物質を10%未満有するある物を指すことができる。例えば、その中の任意のサブ値およびサブ範囲を含めて0.01%~10%しか含有しない。例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10%。
【0037】
[0042]追加の用語および表現は、下で定義される。
バクテリオファージ組成物
[0043]細菌構成成分、例えば細菌内毒素、細菌宿主タンパク質などを実質的に含有しない組成物を含む、バクテリオファージ組成物が本明細書で提供される。組成物は、1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージ、および場合により凍結保護物質を含むことができる。バクテリオファージは、本明細書に記載される任意のファージであってよく、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸配列またはゲノムを有する少なくとも1つのファージを含むことができる。一部の態様では、バクテリオファージの少なくとも1つは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10の1つまたは複数と100%の同一性を有さない。一部の態様では、バクテリオファージの1つまたは複数は、天然に存在しない。一部の態様では、個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくく、および/または抗生物質耐性遺伝子を有さない、
[0044]実施形態では、バクテリオファージは、Sa87(配列番号1)、J-Sa36(配列番号2)および/またはSa83(配列番号3)のゲノム配列と比較して、ヌクレオチドまたはゲノム配列が、最高約10%、最高約9%、最高約8%、最高約7%、最高約6%、最高約5%、最高約4%、最高約3%、最高約2%または最高約1%異なる。Sa87、J-Sa36またはSa83のいずれか1つと比較した場合、ゲノム全体にわたって10%未満の核酸変異を有し、Staphylococcus aureus標的細菌に対する溶菌活性を有したファージの例には、Sa38(配列番号4)、Sa41(配列番号5)、Sa42(配列番号6)、Sa44(配列番号7)、Sa51(配列番号8)、Sa76(配列番号9)およびSa81(配列番号10)が含まれる(図4)。一部の態様では、バクテリオファージ、バクテリオファージの組成物および使用の方法の1つまたは複数は、配列番号1~10の1つまたは複数と、またはSa87、J-Sa36、Sa83、Sa38、Sa41、Sa42、Sa44、Sa51、Sa76およびSa81の核酸配列と90%~99.99%の同一性、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または100%の同一性を有する配列を有する核酸を有する1つまたは複数のバクテリオファージを含む。一部の態様では、バクテリオファージの1つまたは複数は天然に存在せず、他では、1つまたは複数のファージは天然に存在する。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、1つまたは複数の追加のバクテリオファージを含む。本明細書で開示されるバクテリオファージおよびその突然変異体は、細菌感染症、特にStaphylococcus aureus
感染症を処置するのに有益である。
【0038】
[0045]バクテリオファージSa87(ECACC参照番号17020901の下で寄託される)、J-Sa36(ECACC参照番号17020903の下で寄託される)およびSa83(ECACC参照番号17020902の下で寄託される)は、2017年2月9日に、European Collection of Cell Cultures(ECACC)、Culture Collections、Public Health England、Porton Down、Salisbury、Wiltshire、SP40JG、United Kingdomに寄託された。寄託物の全ては、Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms
for the Purposes of Patent Procedureの条項の下で実行された。
【0039】
[0046]一態様では、細菌内毒素および細菌宿主タンパク質を含む細菌構成成分を実質的に含有しないバクテリオファージ組成物が、本明細書で提供される。一部の実施形態では、組成物は、相補性が可能な1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージを含むことができる。バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸配列またはゲノム、および凍結保護物質を有することができる。組成物の標的細菌範囲は、組成物中のいかなる個々のバクテリオファージもしくはファージ全体の範囲より広くてもよいか、または、個々のバクテリオファージの効果の合計より大きい効果を有することができる。組成物は、天然に存在しない少なくとも1つのバクテリオファージを有することができる。組成物は、少なくとも1つの天然に存在するファージを含むことができるまたは天然に存在するファージを排除することができる。
【0040】
[0047]一態様では、細菌構成成分、例えば細菌内毒素、細菌宿主タンパク質などを実質的に含有しないバクテリオファージ組成物が、本明細書で提供される。バクテリオファージ組成物は、少なくとも1つの偏性溶菌性バクテリオファージ、および8℃以下で選択される温度での保存のための保存媒体を場合により含むことができる。バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸またはゲノムを含むことができる。1つまたは複数の個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくい可能性があり、抗生物質耐性遺伝子を有さない。組成物は、天然に存在しない少なくとも1つのバクテリオファージを有することができる。組成物は、少なくとも1つの天然に存在するファージを含むことができるまたは天然に存在するファージを排除することができる。
【0041】
[0048]実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有する核酸またはゲノム核酸配列を有する、少なくとも1つのバクテリオファージを含む。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有する核酸またはゲノム核酸配列を有する、少なくとも2つのバクテリオファージを含む。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つ
と少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有する核酸またはゲノム核酸配列を有する、少なくとも3つのバクテリオファージを含む。別の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するバクテリオファージを含む。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有する核酸またはゲノム核酸配列を有するバクテリオファージから本質的になる。2つ以上のバクテリオファージを含むバクテリオファージ組成物は、本明細書において「一団」のバクテリオファージと呼ぶことができる。組成物が配列番号1~10の1つまたは複数と100%の同一性を有さない1つまたは複数のバクテリオファージを含む一部の実施形態では、組成物は、100%の同一性を有する少なくとも1つのバクテリオファージを含むことができる。組成物は、天然に存在しない少なくとも1つのバクテリオファージを有することができる。組成物は、少なくとも1つの天然に存在するファージを含むことができるまたは天然に存在するファージを排除することができる。
【0042】
[0049]実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有する核酸またはゲノム核酸配列を有する、1つまたは複数のバクテリオファージを含む。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するゲノム核酸配列を有する、2つ以上のバクテリオファージを含む。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有する3つ以上のバクテリオファージを含む。組成物は、天然に存在しない少なくとも1つのバクテリオファージを有することができる。組成物は、少なくとも1つの天然に存在するファージを含むことができるまたは天然に存在するファージを排除することができる。
【0043】
[0050]実施形態では、バクテリオファージ組成物は従来の抗菌剤/治療薬の代替物であってよく、それに関連した1つまたは複数の問題を克服する。一部の態様では、バクテリオファージ組成物は、従来の抗菌剤/治療薬との同時療法として、またはそれと併用して利用することができる。一部の態様では、本明細書において、本方法は、感染症のために抗生物質療法などの別の療法によって既に処置されている患者を処置するための、本明細書に記載されるバクテリオファージおよび組成物の使用を含むことができる。感染症が完全に排除されなかったかまたは感染症が持続する前の処置を含む、そのような前の処置を受けたことに基づいて、患者を本方法のために同定することおよび/または選択することができる。他の態様では、患者は、別の前の処置を受けていない患者であることにより、選択することができる。
【0044】
[0051]実施形態では、バクテリオファージ組成物は、1つまたは複数の追加のバクテリオファージを含むことができる。好ましい実施形態では、1つまたは複数の追加のバクテリオファージは、細菌感染症、特にStaphylococcus感染症を処置するのに好適である。追加の1つまたは複数のファージは、天然に存在するまたは天然に存在しなくてもよい。1つまたは複数の追加のファージは、配列番号1~10に関連したファージを含む、本明細書に記載されるファージのいずれかと90%~100%の核酸配列同一性を有するファージであってよい。
【0045】
[0052]本明細書で使用される用語「から本質的になる」は、明示的に示されるバクテリオファージ(複数可)だけがバクテリオファージ組成物中に存在するが、前記組成物は、適当な担体、希釈剤、抗生物質(例えば、化学的抗生物質)等などの、さらなる非バクテリオファージ構成成分を含有することもできることを意味する。
【0046】
[0053]一態様では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約60%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。例えば、バクテリオファージ組成物は、所与の一団の中のStaphylococcus aureus株の少なくとも60%に対して有効である(例えば、死滅または溶菌させる)。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約70%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約75%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約76%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約77%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約78%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約79%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約80%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約81%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約82%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約83%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約84%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約85%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が標的細菌株の少なくとも約90%に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。別の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物が細菌感染症を有する対象からの1つまたは複数の細菌株(または、分離株)に対して有効であるように、少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つのバクテリオファージを含む。
【0047】
[0054]実施形態では、組成物の標的細菌の範囲は、組成物の中に含まれるいかなる単一のバクテリオファージの標的細菌の範囲よりも広い。組成物の効果(標的死滅範囲)は各構成成分バクテリオファージの個々の効果(標的死滅範囲)の合計より大きいので、そのような活性は相乗的であると考えることができる。
【0048】
[0055]一実施形態では、(あるいは、またはさらに)、「突然変異体」バクテリオファージは、Sa87、J-Sa36、Sa83、Sa38、Sa41、Sa42、Sa44、Sa51、Sa76および/またはSa81の1つまたは複数と同じ標的細菌株の一部または全てを溶菌することが可能であり、および/または、1つまたは複数の追加の細菌株を溶菌することがさらに可能である。一実施形態では、突然変異体は、Sa87、J-Sa36、Sa83、Sa38、Sa41、Sa42、Sa44、Sa51、Sa76およびSa81の1つまたは複数の核酸配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有することができる。一部の実施形態では、突然変異体または変異体は、Sa87、J-Sa36、Sa83、Sa38、Sa41、Sa42、Sa44、Sa51、Sa76およびSa81の1つまたは複数と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有することができる。一実施形態では、突然変異体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号10と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有することができる。
【0049】
[0056]実施形態では、「突然変異体」は、バクテリオファージの後代であってよい。バクテリオファージの後代は、本明細書に記載されるバクテリオファージ(すなわち、「親バクテリオファージ」)を使用して、Staphylococcus(例えば、S.aureus)標的細菌を溶菌させた後に得られるバクテリオファージであってよい。言い換えると、バクテリオファージの後代は、第2の(または、より先の)世代のバクテリオファージであってよい。
【0050】
[0057]実施形態では、バクテリオファージの後代は、例えばSa87、J-Sa36および/またはSa83から選択されるものを含む、本明細書に記載される1つまたは複数のバクテリオファージ(複数可)を、Staphylococcus標的細菌と接触させ、それにより1つまたは複数のバクテリオファージ(複数可)を標的細菌に感染させて溶菌させること;ならびに標的細菌の溶菌の後に放出されるバクテリオファージを得ることによって入手できる。関連する親バクテリオファージと比較した場合、バクテリオファージの後代は、1つまたは複数のヌクレオチド突然変異(複数可)を一般的に含む。
【0051】
[0058]本明細書で使用される用語「入手できる」は、用語「得られる」も包含する。一実施形態では、用語「入手できる」は、得られるを意味する。
[0059]バクテリオファージ組成物は、1つまたは複数のStaphylococcus種または株を標的にする(好ましくは死滅させる)。実施形態では、組成物は、例えばStaphylococcus aureusの1つまたは複数の株を含む、Staphylococcus aureusを標的にする。一実施形態では、バクテリオファージが標的にするStaphylococcusの種または株は、化学的抗生物質に耐性のStaphylococcusの種または株、例えば多剤耐性Staphylococcusの種または株である。一実施形態では、バクテリオファージが標的にするStaphylococcusの種または株は、化学的抗生物質に耐性のStaphylococcus
aureus株、例えば多剤耐性Staphylococcus aureusである。
【0052】
[0060]実施形態では、本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物は、化学的抗生物質に耐性のStaphylococcusの種または株による感染症、例えば多剤耐性のStaphylococcusの種または株を処置するのに特に有効であることが示されている。実施形態では、本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物は、化学的抗生物質に耐性のStaphylococcus aureusによる感染症、例えば多剤
耐性Staphylococcus aureus株を処置するのに特に有効であることが示されている。
【0053】
[0061]バクテリオファージは、単一の治療組成物(好ましい)の形で、または、組成物の1つまたは複数のメンバーを各々含んでいるいくつかの別個の組成物として提供することができる。バクテリオファージがいくつかの別個の組成物で提供される実施形態では、前記バクテリオファージは、逐次的または同時に対象に投与することができる(好適には同時に)。
【0054】
[0062]複数のバクテリオファージがバクテリオファージ組成物に存在する実施形態では、組成物は、各バクテリオファージが、組成物中のいかなる他のバクテリオファージの量(例えば、濃度)と比較して1:10~10:1の間(または、その間の任意のサブ値または終端点を含むサブ範囲)の比で存在することができるように製剤化される。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:1の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:2の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:3の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:4の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:5の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:6の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:7の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:8の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:9の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約1:10の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約10:1の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約5:1の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約10:3の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約5:2の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約2:1の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約5:3の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約10:7の比で存在する。実施形態では、各バクテリオファージは、組成物中の1つまたは複数の他のバクテリオファージと比較して約5:4の比で存在する。
【0055】
[0063]組成物に包含させるためのバクテリオファージは、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって増殖させることができる。例えば、バクテリオファージの増殖を支援することが可能な宿主細菌株の中で、1つまたは複数のバクテリオファージ(複数可)を別々に増殖させることができる。一般的に、バクテリオファージは前記宿主細菌株の中で高い濃度まで増殖させられ、滴定され、組み合わされて組成物を形成する。用いられる(例えば、バクテリオファージ組成物、方法または使用において)各バクテリオファージの量は、標的細菌種に対するその病原性に依存する。
【0056】
[0064]用いられる(例えば、本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物、方法ま
たは使用において)各バクテリオファージの量は、標的細菌分離株に対するその病原性に依存することができる。
【0057】
[0065]組成物の開発において、カウント細菌株、すなわち、組成物の個々の予定されるメンバー(例えば一団)の指標である細菌株を使用することができる。カウント株は、別のものよりも、バクテリオファージ組成物の予定される1メンバーによる少なくとも1000倍多くのプラーク形成を可能にすることができる。このように、広範囲の細菌分離株に対して一貫して有効である組成物(例えば一団)を達成することができる。
【0058】
[0066]一般的に、1つまたは複数のバクテリオファージ(複数可)を組み合わせて、組成物1mlにつき各ファージの少なくとも約1×10、1×10、1×10、1×10、1×10または1×1010または1×1011のプラーク形成単位(PFU)を含む組成物を形成することができる。組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×1011PFUを含むことができる。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFUまたは1×10~1×1010PFUを含むことができる。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含むことができる。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含むことができる。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含むことができる。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含むことができる。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×1010~1×1011PFUを含むことができる。実施形態では、1つまたは複数のバクテリオファージ(複数可)を組み合わせて、組成物1mlにつき各ファージの1×10、1×10、1×10、1×10、1×10または1×1010または1×1011PFUを含む組成物を形成することができる。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に含まれる各バクテリオファージの等しい(または、実質的に等しい)濃度を含む。好適な濃度には、終端点を含む示された範囲内の任意の値またはサブ範囲が含まれる。
【0059】
[0067]一部の態様では、組成物中のバクテリオファージ(複数可)は、精製されるかまたは実質的に精製される。
[0068]組成物における包含のためにバクテリオファージを選択するとき、方法は、(a)2つ以上の異なるバクテリオファージを提供するステップであって、前記2つ以上の異なるバクテリオファージの各々は規定の増殖条件下でStaphylococcusの種または株の増殖を独立して遅延させるステップ;(b)前記2つ以上の異なるバクテリオファージの少なくとも2つを組み合わせるステップ;および(c)2つ以上の異なるバクテリオファージの前記組合せの存在下でStaphylococcusの種または株の増殖を判定するステップであって、Staphylococcusの種または株の増殖条件はステップ(a)および(c)において同じであるまたは同等であり;ここで、前記組合せが、前記2つ以上の異なるバクテリオファージのいずれか1つによって独立して達成される最大の増殖遅延に少なくとも同等にStaphylococcusの種または株の増殖を遅延させる場合、組合せはバクテリオファージの組成物として認められるステップを含む。実施形態では、前記組合せが、前記2つ以上の異なるバクテリオファージのいずれか1つによって独立して達成される最大の増殖遅延未満で標的細菌の種または株の増殖を遅延させる場合、組合せはバクテリオファージの組成物として当初拒絶される。
【0060】
[0069]バクテリオファージSa87、J-Sa36およびSa83(ならびに、場合によりその突然変異体および同一性変異体)の1つまたは複数を含むバクテリオファージ組成物が、本明細書で提供される。バクテリオファージ組成物は、Sa87、J-Sa36およびSa83を含むかまたはそれから本質的になる。バクテリオファージ組成物は、本明細書に記載されるファージまたはファージ配列と90%~100%同一であるヌクレオチドゲノム配列を有するバクテリオファージ(複数可)を含むかまたはそれから本質的になる。例えば、一態様では、バクテリオファージ組成物は、Sa87、J-Sa36およびSa83のゲノム配列(または、本明細書に記載される任意の他の配列)と少なくとも93%であるが100%でない同一性を有するファージを含むかまたはそれから本質的になることができる。実施形態では、Sa87、J-Sa36および/またはSa83のゲノム配列に少なくとも93%同一であるヌクレオチドゲノム配列を有するバクテリオファージだけが、組成物に存在する。一部の実施形態では、組成物中のバクテリオファージは、Sa87、J-Sa36および/またはSa83の少なくとも1つのゲノム配列に少なくとも93%同一であるヌクレオチドゲノム配列を有するバクテリオファージからなり、他のいかなる(検出可能な)バクテリオファージも組成物中に存在しない。実施形態では、S.aureusを標的にする組成物中に存在する唯一のバクテリオファージは、Sa87、J-Sa36および/またはSa83のゲノム配列に少なくとも93%同一であるヌクレオチドゲノム配列を有するバクテリオファージである。実施形態では、Sa87、J-Sa36および/またはSa83のゲノム配列に少なくとも93%同一であるヌクレオチドゲノム配列を有するバクテリオファージは、Sa87、J-Sa36および/またはSa83のゲノム配列と100%の同一性を有さない。一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つの、または少なくとも2つ、少なくとも3つもしくはそれ以上のバクテリオファージを含む。一部の実施形態では、組成物は、Sa87、J-Sa36およびSa83の1つまたは複数のバクテリオファージ、ならびに、それの少なくとも1つと少なくとも90~99%の配列同一性を有する1つまたは複数の他のバクテリオファージ、またはS.aureusに対して有効な少なくとも1つの他のバクテリオファージを含む。
【0061】
[0070]一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、1つまたは複数の追加のバクテリオファージをさらに含むことができる。前記1つまたは複数の追加のバクテリオファージは、Staphylococcus aureusの種もしくは株、または、例えば、以下の属Staphylococcus、Helicobacter、Klebsiella、Listeria、Mycobacterium、Escherichia、Meningococcus、Campylobacter、Streptococcus、Enterococcus、Shigella、Pseudomonas(例えばPseudomonas aeruginosa)、Burkholderia、Clostridium、Legionella、Acinetobacter、Salmonellaまたはその組合せの1つまたは複数から選択される異なる細菌標的を標的にすることができる。
【0062】
[0071]1つまたは複数の追加のバクテリオファージは、国際出願第2009/044163号(そのバクテリオファージ、組成物、組成物構成成分/賦形剤、および使用方法の全部に関して参照により本明細書に完全に組み込まれる)に教示されるもの、その中に記載されるバクテリオファージKおよび/またはバクテリオファージP68であってよい。
【0063】
[0072]一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、1つまたは複数のバクテリオファージ(複数可)および保管のための保存剤を含む。保存には、冷凍、冷蔵および室温保存が含まれる。一実施形態では、保存剤は、グリセロールである。一実施形態では、保存剤は、例えば、(例えば、約0℃~約-80℃、より好ましくは約-20℃~約-8
0℃、最も好ましくは約-80℃の温度の)フリーザーまたはウルトラフリーザーの中での、または液体窒素の中での保存の間、組成物を保存するのに十分な量で組成物中に存在する。別の実施形態では、保存剤は、例えば、フリーザー、ウルトラフリーザーまたは液体窒素の中での長期保存の間、組成物を保存するのに十分な量で組成物中に存在する。一実施形態では、保存剤は、約5%~約50%のグリセロール;より好ましくは約10%~約30%のグリセロール;最も好ましくは約20%のグリセロールである。好適な濃度は、終端点を含む挙げられた範囲内の任意の値またはサブ値であってよい。
【0064】
製剤
[0073]本明細書に記載されるバクテリオファージの1つまたは複数を含むかまたはそれから本質的になるバクテリオファージ組成物が、本明細書で提供される。一部の態様では、組成物は、細菌構成成分、例えば細菌内毒素、細菌宿主細胞構成成分および材料(例えば、タンパク質)などを実質的に含有しなくてよい。一部の実施形態では、組成物は、1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージを含むことができる。1つまたは複数のバクテリオファージは、核酸、例えば、配列番号1~10の1つまたは複数と90%~100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムを含むことができる。一部の実施態様では、少なくとも1つまたは複数のファージは、配列番号1~10のいずれか1つ、好ましくは配列番号1、配列番号2または配列番号3と、少なくとも93%であるが100%でない核酸配列同一性を有する。各個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくく、および/または抗生物質耐性遺伝子を有さないものであってよい。ファージは、天然に存在するもの、または天然に存在しないものであってもよい。例えば一部の実施形態では、複数のバクテリオファージを有する組成物において、少なくとも1つは天然に存在するものであってよく、少なくとも1つは天然に存在しないものであってよく、またはいずれも天然に存在するものでなくてもよい。組成物は、凍結保護物質または賦形剤を場合により含むことができる。賦形剤は、例えば、ファージ効力を安定化させるまたは経時的な効力喪失を低減することができる。
【0065】
[0074]一部の実施形態では、本明細書で提供されるバクテリオファージ組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せをさらに含む。好適な担体、希釈剤および/または賦形剤は、リン酸緩衝食塩水などの等張性の食塩水を含むことができる。「薬学的に許容される賦形剤」および「薬学的に許容される担体」は、対象への活性剤の投与および/または対象による吸収を助ける物質を指し、患者に対するかなりの有害な毒性作用を引き起こすこと無しに、本開示の組成物に含めることができる。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例には、水、NaCl、規定の食塩水、乳酸加リンガー液、規定のスクロース、規定のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング、甘味料、フレーバー、塩溶液(リンガー液など)、アルコール、油、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロースまたはデンプン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジンおよび着色剤などが含まれる。そのような調製物は滅菌することができ、所望の場合、滑沢剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、例えば浸透圧に影響を及ぼす塩、緩衝液、着色剤および/または芳香物質など、本開示の化合物と有害反応を起こさない補助剤と混合されてもよい。当業者は、他の医薬賦形剤が本開示において有益であることを認める。
【0066】
[0075]本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物は、消毒組成物として製剤化することができる。消毒組成物は、表面のための噴霧剤または洗浄液の形であってよい。組成物は、ハンドウオッシュであってよい。好適には、組成物が局所適用のための製剤である場合、それは、ローション、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、フォームの形態、または局所投与のために公知である担体としての任意の他の物理的形態をとることができる。そのような増粘された局所製剤は、その物質が置かれる皮膚の領域に接着し、したがって、局所の高い濃度のバクテリオファージが消毒すべき特定の領域に導入されることを可能
にするので、特に有利である。例えば、鼻腔への製品の塗布のために特に有益であるパラフィンおよびラノリンベースのクリームが、当技術分野で公知である。しかし、重合体増粘剤などの他の増粘剤を使用することができる。製剤は、以下の1つまたは複数を含むこともできる:水、保存剤、界面活性剤、乳化剤、抗酸化剤または溶媒。
【0067】
[0076]本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物は、経鼻、経口、非経口、筋肉内、関節内、静脈内、皮下、経皮、眼または耳投与のために製剤化することができる。そのようなバクテリオファージ調製物は、直接的に使用すること、冷蔵すること、凍結乾燥すること、場合により適当な凍結保護物質(例えば、20%グリセロール)と一緒に水溶液もしくは他の溶液の中で凍結保存すること、フリーズドライして使用前に再水和させること、または、錠剤、乳濁液、軟膏もしくは含浸創傷被覆材もしくは他のアイテムを(限定されずに)含む一部の他の製剤に入れて安定させることができる。実施形態では、凍結保護物質は、10~30%グリセロールである。実施形態では、凍結保護物質は、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%または30%グリセロールである。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、食塩水(例えば、マグネシウムを有するまたは有さないリン酸緩衝食塩水)を含む。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、緩衝剤を含む。実施形態では、緩衝剤は、カルシウム塩またはマグネシウム塩を含む。一実施形態では、緩衝剤は、リン酸緩衝食塩水およびMgSOを含む。緩衝剤は、1mM~20mMのMgSO、2mM~19mMのMgSO、3mM~17mMのMgSO、4mM~16mMのMgSO、5mM~15mMのMgSO、6mM~14mMのMgSO、7mM~13mMのMgSO、8mM~12mMのMgSO、9mM~11mMのMgSOまたは約10mMのMgSOを含むことができる。濃度は、終端点を含む挙げられた範囲内の任意の値またはサブ範囲であってよい。例えば、緩衝液は、約1mMのMgSO、約2mMのMgSO、約3mMのMgSO、約4mMのMgSO、約5mMのMgSO、約6mMのMgSO、約7mMのMgSO、約8mMのMgSO、約9mMのMgSO、約10mMのMgSO、約11mMのMgSO、約12mMのMgSO、約13mMのMgSO、約14mMのMgSO、約15mMのMgSO、約16mMのMgSO、約17mMのMgSO、約18mMのMgSO、約19mMのMgSOまたは約20mMのMgSOを含むことができる。
【0068】
[0077]バクテリオファージ組成物は、経鼻、経口、非経口、関節内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、眼または耳投与のために製剤化することができる。そのようなバクテリオファージ調製物は、直接的に使用すること、場合により適当な凍結保護物質(例えば、10%スクロースまたはグリセロール)と一緒に水もしくは他の溶液中に冷凍保存すること、冷蔵温度で保存すること、フリーズドライして使用時に再水和すること、または、錠剤、乳濁液、軟膏または含浸創傷ドレッシングもしくは他のアイテムを(限定されずに)含む一部の他の製剤の中で安定化させることができる。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、静脈内送達手段の中に含まれてもよい。
【0069】
[0078]一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は無菌である。そのような無菌生成物は、対象における非経口投与のために好適である可能性がある。
[0079]一部の実施形態では、本明細書に記載されるバクテリオファージを含むエアゾール製剤および/またはバクテリオファージ組成物/製剤が、本明細書で提供される。一部の実施形態は、そのようなエアゾール製剤の方法および使用に関する。
【0070】
[0080]実施形態では、本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物は、静脈内(IV)投与のために製剤化される。静脈内投与は、静脈内プッシュまたはIVバッグの使用によることができる。
【0071】
使用/使用方法
[0081]医薬(例えば、Staphylococcus感染症を処置するための)としての1つまたは複数のバクテリオファージまたはバクテリオファージ組成物の使用が、本明細書で提供される。1つまたは複数のバクテリオファージまたはバクテリオファージ組成物(複数可)を対象に投与するステップを含む、疾患を処置する対応する方法も提供される。一部の実施形態では、米国特許出願公開第2017-0065649号および国際出願第2018/146437号(そのバクテリオファージ、組成物、構成成分、賦形剤および方法の全てに関して参照により本明細書に完全に組み込まれる)に示す病気/疾患の処置は、本明細書に記載される方法から特異的に排除される。例えば、一部の実施形態では、肺感染症を処置する方法は、特異的に排除することができる。
【0072】
[0082]一態様では、細菌感染症の処置で使用するためのバクテリオファージ組成物が提供される。関連する態様では、細菌感染症を処置するための医薬の製造におけるバクテリオファージ組成物の使用、ならびに、対象へのバクテリオファージ組成物の投与を含む、細菌感染症を処置する方法が提供される。
【0073】
[0083]一態様では、細菌感染症を処置する方法であって、確定されたStaphylococcus感染症を有する対象を選択して、本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物を投与することを含む方法が本明細書で提供される。一実施形態では、本方法は、1つまたは複数の抗生物質による処置に応答しなかったStaphylococcus感染症を有する対象を選択することを含む。
【0074】
[0084]バクテリオファージ組成物は、Staphylococcus(例えば、S.aureus)細菌感染症の処置において有益である。一実施形態では、細菌感染症は、洞、鼻または呼吸器の感染症である。一実施形態では、細菌感染症は副鼻腔炎である。一実施形態では、細菌感染症は、尿路感染症(または、合併した尿路感染症)、腹腔内感染症(または、合併した腹腔内感染症)、敗血症(例えば、熱傷、無制御の菌血症による敗血症)または菌血症(例えば、肺炎、尿路感染症、心内膜炎等による)である。一実施形態では、細菌感染症はインプラント感染症、例えば、心臓インプラント感染症(例えば、補助人工心臓感染症;ペースメーカー感染症)、または人工関節感染症である。一実施形態では、細菌感染症は、心内膜炎または人工弁心内膜炎である。一実施形態では、細菌感染症は、皮膚感染症または皮膚構造感染症である。好ましい実施形態では、細菌感染症は肺感染症ではない。一実施形態では、細菌感染症は、病院または院内感染である。
【0075】
[0085]一部の実施形態では、感染症は、細菌バイオフィルムの存在によって特徴付けられる。
[0086]一部の実施形態では、対象は、1つまたは複数の抗生物質に応答しない細菌感染症を有する。一部の実施形態では、対象は、医療標準抗生物質に応答しない細菌感染症を有する。
【0076】
[0087]実施形態では、投与の前に、対象からの1つまたは複数の細菌分離株が細菌組成物への感受性について試験される。
[0088]本明細書に記載される使用または方法は、本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物を対象に投与することを一般的に含む。本明細書で使用されるように、「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは他の動物である。好ましくは、用語「対象」は、ヒト対象を指す。一実施形態では、対象は、Staphylococous感染症(例えば、S.aureus感染症)を有するヒト対象である。
【0077】
[0089]バクテリオファージ組成物は、治療的有効量または予防的有効量で対象に投与す
ることができる。
[0090]本明細書で使用されるように、「治療的有効量」は、細菌感染症(または、その症状)を処置するために対象に単独でまたは組み合わせて投与されるとき、感染症またはその症状のそのような処置を実行するのに十分である組成物の任意の量である。
【0078】
[0091]本明細書で使用されるように、「予防的有効量」は、対象に単独でまたは組み合わせて投与されるとき、細菌感染症(またはその症状)の発症または再発を阻止するかまたは遅延させる組成物の任意の量である。一部の実施形態では、予防的有効量は、細菌感染症の発症または再発を完全に予防する。発症を「阻止する」ことは、細菌感染症の発症(または、その症状)の可能性を少なくするか、または発症を完全に予防することを意味する。
【0079】
[0092]適当な投薬量範囲は、所望の治療効果をもたらすものである(例えば、組成物は、治療的または予防的有効量で投与される)。
[0093]一実施形態では、対象は、Staphylococcus感染症(例えば、Staphylococcus aureus感染症)を有するヒト対象である。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×1011PFUを含む。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFUまたは1×10~1×1010PFUを含む。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含む。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×10PFU、1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含む。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×10PFU、1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含む。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×10~1×1010PFUまたは1×10~1×1011PFUを含む。実施形態では、組成物は、組成物1mlにつき各ファージの1×1010~1×1011PFUを含むことができる。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき各ファージの少なくとも約1×10PFU、各ファージの少なくとも約1×10PFU、各ファージの少なくとも約1×10PFU、各ファージの少なくとも約1×10PFU、各ファージの少なくとも約1×10PFU、各ファージの少なくとも約1×1010PFUまたは各ファージの少なくとも約1×1011PFUの投薬量で対象に投与される。実施形態では、1つまたは複数のバクテリオファージ(複数可)を組み合わせて、組成物1mlにつき各ファージの1×10、1×10、1×10、1×10、1×10または1×1010または1×1011のPFUを含む組成物を形成することができる。投薬量には、終端点を含む示された範囲内の任意の値または範囲が含まれる。
【0080】
[0094]一部の実施形態では、本明細書で提供されるバクテリオファージ組成物は、少なくとも約1×10PFUの全ファージ、少なくとも約1×10PFUの全ファージ、少なくとも約1×10PFUの全ファージ、少なくとも約1×10PFUの全ファージ、少なくとも約1×10PFUの全ファージ、少なくとも約1×1010PFUの全ファージまたは少なくとも約1×1011PFUの全ファージの投薬量で対象に投与される。バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき約1×10~約1×1011PFUの全ファージの投薬量で投与される。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×10PFUまたは約1×10~約1×1010PFUの全ファージの投薬量で投与される。実施形態では、
バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×1010PFU、または約1×10~約1×1011PFUの全ファージの投薬量で投与される。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×1010PFU、または約1×10~約1×1011PFUの全ファージの投薬量で投与される。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき約1×10~約1×10PFU、約1×10~約1×1010PFU、または約1×10~約1×1011PFUの全ファージの投薬量で投与される。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき約1×10~約1×1010PFU、または約1×10~約1×1011PFUの全ファージの投薬量で投与される。実施形態では、バクテリオファージ組成物は、組成物1mlにつき約1×1010~約1×1011PFUの全ファージの投薬量で投与される。投薬量は、組成物1ミリリットル当たり3×10PFUであってよい。投薬量には、終端点を含む示された範囲内の任意の値または範囲が含まれる。
【0081】
[0095]一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。好適には、バクテリオファージ組成物は、1日に2回投与することができる。したがって、一実施形態では、各ファージの少なくとも約1×10PFUの投薬量が、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。したがって、一実施形態では、各ファージの少なくとも約1×10PFUの投薬量が、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。別の実施形態では、各ファージの少なくとも約1×10PFUが、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。さらなる実施形態では、各ファージの少なくとも約1×10PFUが、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。別の実施形態では、各ファージの少なくとも約1×10PFUが、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。別の実施形態では、各ファージの少なくとも約1×1010PFUが、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。別の実施形態では、各ファージの少なくとも約1×1011PFUが、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与される。各ファージの約1×10PFUから各ファージの約1×1011PFUの間の投薬量範囲を、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与することができる。好ましくは、各ファージの約1×10PFUから各ファージの約1×10PFUの間の投薬量範囲を、1日に少なくとも1回、2回、3回または4回投与することができる。
【0082】
[0096]一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、2時間おきに、4時間おきに、6時間おきに、8時間おきに、12時間おきに、24時間おきに、48時間おきにまたは72時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、2時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、4時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、6時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、8時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、12時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、24時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、48時間おきに投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、72時間おきに投与される。投与の頻度には、終端点を含む挙げられた範囲内の任意の値または範囲が含まれる。
【0083】
[0097]一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少な
くとも10週間または10週を超える間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも1日間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも1週間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも2週間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも3週間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも4週間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも5週間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも6日間投与される。一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、約3日間~約100日間投与される。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、約7日間~約60日間投与される。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、約14日間~約30日間投与される。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、約3日間~約28日間投与される。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、少なくとも14日間投与される。一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、14日間を超えて投与される。投与の期間には、終端点を含む挙げられた範囲内の任意の値または範囲が含まれる。
【0084】
[0098]医薬用のバクテリオファージ組成物は、処置する状態に基づいて選択される任意の経路によって投与することができる。一実施形態では、投与経路は、経鼻、経口、肺、非経口、筋肉内、関節内、静脈内、皮下、経皮、眼、耳またはその組合せである。肺細菌感染症の処置で使用する場合、バクテリオファージ組成物は、例えば、吸入器、ネブライザーまたは人工呼吸器などの適当な肺送達手段を使用したエアゾール投与または噴霧療法を通して、経鼻的または経口的に投与することができる。組成物は、患者に対して複数の経路を通して、例えば静脈内および吸入によって、または静脈内および関節内に投与することができる。
【0085】
[0099]一実施形態では、抗生物質(好適には化学的抗生物質)をバクテリオファージ組成物と併用して投与することができる。抗生物質およびバクテリオファージの組合せ投与は、国際出願第2008/110840号および国際出願第2005/009451号に教示され、その教示は、その組成物、バクテリオファージ、構成成分/賦形剤および方法の全てに関して参照により本明細書に完全に組み込まれる。抗生物質は、バクテリオファージ組成物と同時に、または逐次的に投与することができる。好適には、バクテリオファージの複製が抗生物質の処置が始まる前に確立されているように、1つまたは複数の抗生物質を組成物の後に投与することができる。この場合、抗生物質処置は、1つまたは複数のバクテリオファージの適用から1時間もしくは複数時間、または1日もしくは複数日、例えば、1日から2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10日遅延させることができる。複数のバクテリオファージを含むバクテリオファージ組成物が用いられ、組成物の各メンバーが異なる株特異性を示す場合、組成物の少なくとも一部(例えば、1つまたは複数のバクテリオファージ)が細菌感染症を標的にすることが可能であることで十分である。
【0086】
[0100]したがって、一部の実施形態では、バクテリオファージ組成物は、1つまたは複数の抗生物質、例えば、1つまたは複数の化学的抗生物質を含む。抗生物質は、前記抗生物質へのStaphylococcus種または株の感受性に基づいて選択することができる。抗生物質(複数可)には、フルオロキノロン、カルバペネム、アミノグリコシド、アンサマイシン、セファロスポリン、ペニシリン、ベータラクタム、ベータラクタマーゼ阻害剤、葉酸経路阻害剤、フシダン、グリコペプチド、グリシルサイクリン、リンコサミド、リポペプチド、マクロライド、オキサゾリジノン、フェニコールホスホン酸、ストレプトグラミンまたはテトラサイクリンを含む抗生物質のクラスから選択される抗生物質が含まれる。一部の実施形態では、上記の抗生物質の1つまたは複数は、本明細書の組成物および方法から特異的に排除されてもよい。一部の実施形態では、抗生物質は、同じ組成物の一部でない同時療法として使用することができる。好適には、Staphyloco
ccusの種または株は、処置対象に存在するのと同じ種または株であってよい。一実施形態では、Staphylococcusの種または株は、処置対象からとられ、抗生物質感受性について試験される。感受性は、当技術分野で公知のin vitro感受性アッセイによって判定することができる。
【0087】
[0101]あるいは、またはさらに、処置されるStaphylococcus感染症と一緒に存在する(例えば、細菌性バイオフィルムの一部として)ことが知られている(または、おそらく存在すると考えられている)細菌に対して活性であるとの理由で、抗生物質を選択することができる。
【0088】
[0102]一実施形態では、抗生物質は、以下から選択される1つまたは複数である:バンコマイシン、テイコプラニン、ペニシリン、メチシリン、フルクロキサシリン、ジクロキサシリン、セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン)、クリンダマイシン、リンコマイシン、エリスロマイシンまたはその組合せ。好適には、抗生物質は、バンコマイシンおよび/またはテイコプラニンであってよい。一部の実施形態では、上記の抗生物質の1つまたは複数は、本明細書の組成物および方法から特異的に排除されてもよい。
【0089】
[0103]対象へのバクテリオファージ組成物のin vivo投与;感染症(例えば、対象に存在する)からの、または同じ株による別の感染症からの細菌細胞の試料の1つまたは複数の抗生物質(複数可)への感受性のin vitroモニタリング;および、前記1つまたは複数の抗生物質(複数可)への前記感受性が誘導されていることが確立されたときの前記1つまたは複数の抗生物質(複数可)の投与、を含む使用または方法が本明細書で提供される。
【0090】
[0104]一実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することによって抗生物質(複数可)への感受性を回復する方法が、本明細書で提供される。実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することによってバイオフィルムを粉砕する方法が提供される。一実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することによってバイオフィルムを破壊する方法が提供される。
【0091】
[0105]一実施形態では、抗生物質(例えば化学的抗生物質)は、抗生物質への採取された細菌の感受性が組成物によって誘導される時間に投与される。一部の実施形態では、時間は、6時間、12時間、24時間または48時間であってよい。他の実施形態では、バクテリオファージ組成物および抗生物質は、1日~2カ月間隔で、好ましくは1~4週間隔で、好適には2週間隔で投与することができる。
【0092】
[0106]一実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することによって抗生物質(複数可)への感受性を回復する方法が提供される。一実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することによってバイオフィルムを崩壊させる方法が提供される。一実施形態では、本明細書に記載される組成物を投与することによってバイオフィルムを破壊する方法が提供される。
【0093】
[0107]一実施形態では、バクテリオファージ組成物は、表面のStaphylococcus(例えば、S.aureus)細菌を死滅させる方法であって、バクテリオファージ組成物(例えば、消毒剤組成物として製剤化される)を表面に塗布することを含む方法において使用することができる。好適には、表面は、汚染部位または汚染が予想される部位である。
【0094】
[0108]一実施形態では、表面は、哺乳動物(例えばヒト)の皮膚である。あるいは、ま
たはさらに、表面は、装置(好適には医療器具)、ベディング、家具、壁または床(例えば、臨床環境の中の)であってよい。
【0095】
[0109]例えば、一部の態様は、以下を含むキットに関する:バクテリオファージ組成物;およびそれの使用(例えば、医療における)のための説明書。キットは、バクテリオファージ組成物と組み合わせた抗生物質(例えば、化学的抗生物質)および場合によりその使用のための説明書をさらに含むことができる。
【0096】
[0110]一実施形態では、説明書は、本明細書に記載されるバクテリオファージ組成物を投与することに関する詳細を提供する。一実施形態では、キットに含まれる説明書は、Staphylococcus感染症の処置における使用のためである。
【0097】
[0111]一部の態様は、例えば、非医療適用のためのバクテリオファージ組成物またはキットの使用に関する。例えば、バクテリオファージ組成物またはキットは、食品衛生、農業または作物保護、および/または環境衛生適用において使用することができる。したがって、一実施形態では、キットは、非医療適用におけるバクテリオファージ組成物の使用説明書を含む。
【0098】
[0112]バクテリオファージ組成物は、包帯または創傷ドレッシングに含まれてもよい。創傷ドレッシングは、パッドまたは絆創膏タイプのドレッシングであってよい。バクテリオファージは、創傷ドレッシングまたは包帯に適用する前に、消毒製剤または局所クリームとして創傷ドレッシングまたは包帯に適用することができる。あるいは、創傷ドレッシングまたは包帯は、バクテリオファージを含有する担体に浸して乾燥させ、ドレッシングまたは包帯の中に前記バクテリオファージを含浸させることができる。バクテリオファージは、当技術分野で公知である技術を使用して、包帯または創傷ドレッシングの表面に吸着させることもできる。このアプローチの利点は、包帯または創傷ドレッシングによって、バクテリオファージが、細菌を含有している可能性がある創傷と接触することが可能になるということである。一態様は、例えば、包帯または創傷ドレッシングを対象に適用することによって細菌を抑制または処置する方法に関する。
【0099】
[0113]バクテリオファージ組成物は医療で使用するために特に有利であり、Staphylococcus感染症の処置において臨床効能を示す。
[0114]さらに、バクテリオファージ組成物は、広範囲のStaphylococcusの種および株に対して有効である。
【0100】
[0115]バクテリオファージ組成物と抗生物質(例えば化学的抗生物質)の組合せは、抗生物質療法単独に対して強化された(例えば、相乗的)治療薬を提供することができる。
[0116]別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、この開示が属する分野の当業技術者が通常理解するのと同じ意味を有する。
【0101】
[0117]この開示は、本明細書に開示される方法および材料の例によって限定されず、本明細書に記載されるそれらに類似するかまたは同等である任意の方法および材料を、この開示の実施形態の実施または試験で使用することができる。数値範囲は、範囲を規定する数を含む。本明細書で提供される見出しは、明細書全体を参照して有することができるこの開示の様々な態様または実施形態を限定するものでない。したがって、これ以降に定義される用語は、明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0102】
[0118]用語の他の定義は、明細書全体で出現することがある。実施形態の例をより詳細に記載する前に、この開示は記載される特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら、異なり得ることを理解すべきである。本開示の範囲は添付の請求項だけによって
限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することだけのためであり、限定するものではないことも理解すべきである。
【0103】
[0119]値の範囲が提供される場合、文脈が明らかに別途指示しない限り、その範囲の上限と下限の間の下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解される。明記された範囲の中の任意の明記された値または介在値と、その明記された範囲の中の任意の他の明記されたまたは介在する値の間のより小さい範囲の各々は、この開示の中に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、その範囲の中に独立して含まれてもまたは除外されてもよく、上下限のいずれかまたは両方がそのより小さな範囲に含まれるかまたはいずれも含まれない場合も、各範囲は、明記される範囲内の任意の具体的に排除される制限に従って、この開示の中に同様に含まれる。明記される範囲が限界の片方または両方とも含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方とも除外した範囲もこの開示に含まれる。
【0104】
[0120]本明細書で議論される刊行物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためだけに提供される。本明細書の中のいずれも、そのような刊行物が本明細書に添付される請求項の先行技術を構成することの承認と解釈されるべきでない。本明細書で参照される全ての刊行物は、全てのバクテリオファージ、組成物、構成成分、賦形剤および方法を限定されずに含む、それらの教示の全てに関して参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【実施例0105】
[0121]実施例1:3ファージバクテリオファージ組成物のアセンブリー
[0122]以下の判定基準を満たしたバクテリオファージ療法を形成するために実験を実行した:1)細菌遺伝子の特殊形質導入を回避するために偏性溶菌性である;2)実験的試験および/またはゲノム研究からの推測によって普遍形質導入を起こしやすいことが知られていない、および3)抗生物質耐性を有することが知られている遺伝子または細菌性病原性遺伝子を有するファージを回避するために、および他のライフスタイル形質の調査を助けるために、完全に配列決定をされている。
【0106】
[0123]集団で、患者を処置するために一緒に使用されるファージは、1)潜在的有用性を最大にし、標的外作用を最小にするために、標的病原体に対する広い活性を有するべきであるが、他の種に活性を有するべきでなく、および2)1つのファージに対して生じる耐性突然変異体が別のファージに感受性である、相補性が可能であるべきである。
【0107】
[0124]ファージ自体の特徴に加えて、臨床使用のための材料は、最終生成物がこれらの特徴を保持し(すなわち、なお同じファージである)、エンドトキシンまたは宿主細胞タンパク質などの潜在的に有害な(または、有害な量の)不純物を含有しないことの信頼性をもたらすような方法で生成されるべきである。
【0108】
[0125]選択されたファージの各々は環境中の供給源から単離し、その後、その製造宿主の役目をする特徴の明らかなS.aureus株と対にした。継代および反復選択の後、候補ファージを選択した。これらのゲノム配列は、元の天然に存在する配列と同じでない。結果として生じるマスター保存株が各ファージの遺伝子的および表現型的に一貫したバッチを生成することを確実にするために、宿主と対のファージを精製した。特記しない限り、全てのデータは、宿主と対のプラーク精製ファージに由来する。植物性ペプトン培地を使用した液体培養において、ファージを増殖させた(VP0101、Oxoid、UK)。大きな細胞デブリを除去するために溶解物を0.2μmフィルターに通し、以降の試験の必要に応じて、宿主細胞タンパク質および他の細菌デブリをさらに除去し、増殖培地を10mM硫酸マグネシウムを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)(PBS+Mg)に交換するために、カラムベースの精製工程の専用プロセスに付した。各バクテリオファー
ジの等濃度を組み合わせて、バクテリオファージカクテル(AB-SA01として知られる)を形成した。バクテリオファージは、保存および生産工程全体を通して遺伝子的に一貫している。
【0109】
[0126]細菌:AB-SA01製造宿主は、本来ヒトから分離されたS.aureus株である。S.aureusの多様性の一団および種固有性の一団は、アメリカ基準株保存機構(Manassas、USA)、Walter Reed Army Institute of Research Multidrug-resistant Organism Repository and Surveillance Network(「MRSN」、Silver Spring、USA)ならびにオーストラリアおよびUKの臨床現場から供給された。S.aureus株の包括監視の一団は、JMI Laboratories(North Liberty、USA)から得られた。標的化された目的の一団には、ベルギーからの慢性副鼻腔炎(CRS)株、ならびにCenters for Disease Control(CDC)およびFood and Drug Administration(FDA)Antimicrobial Resistance Isolate Bank(Atlanta、USA)からのバンコマイシン中間(VISA)株が含まれる。多剤耐性(MDR)および広範囲薬剤耐性(XDR)株の定義は、Magiorakosら(Clin Microbiol Infect
18(3):268~281頁、2012年)による。
【0110】
[0127]ファージ感受性アッセイ:S.aureus団での試験では、プレートの場合1.5%寒天で、またはオーバレイの場合0.7%寒天で修正したハートインフュージョンブロスを使用した。ファージ活性は、スモールドロップ寒天重層方法の改変型(Mazzoccoら、Methods Mol Biol.501:81~5頁、2009)を使用して調査した。簡潔には、16~18時間浮遊細菌培養の100μLを融解0.7%上層寒天と混合し、寒天プレートの上に均一に注いだ。上の寒天層が固化したとき、標準化ファージ溶液の段階希釈をオーバレイの上へスポットし、プレートを37℃で一晩インキュベートした。ファージ活性は、ファージ適用部位の細菌菌叢の消失によって、およびファージ試料の希釈に従った個々のプラークの発達によって示された。試料が希釈されるに従って個別のプラークを観察することができ、ファージ複製を示す場合だけ、株は感受性であると考えられた。均一な菌叢を生成するのに好適な特異的細菌種および細菌培養体積のために推奨される培地を使用して、種固有性の一団での試験を同様に実行した。
【0111】
[0128]耐性および相補性の頻度:生成物選択の間に実行した相補性研究は、個々の候補ファージによって感受性S.aureus株を感染させた後に単離された、見かけ上のバクテリオファージ非感受性突然変異体(BIM)コロニーを使用した。寒天プレートの上で、コロニーを画線精製した。ファージ感受性についてスクリーニングするために、PBSまたはファージの10μLのスポット(約1×10PFU/mL;PFU:プラーク形成単位)を栄養寒天プレートの上にスポットした。10分後、各BIMまたは親株からの一晩の栄養培地培養の5μLを、各ファージスポットに適用した。37℃で24時間のインキュベーションの後、ファージ+細菌スポットをPBS+細菌対照と比較し、R(耐性;対照スポットと差はない)、I(中間、細菌スポットの中にファージ活性が見られる)またはS(感受性、スポットの中に<10個の細菌コロニー)で評価した。最終AB-SA01組成物に関して、同じS.aureus株の3反復の集団における自発的なファージ耐性の頻度について、O’Flynnら(2004年 Appl Environ.Microbio.70(6):3417~3424頁)の変法を使用して調査した。200μLの中で、6~8×10CFU(コロニー形成単位)を、精製されたファージ(AB-SA01または個々の構成成分)の2~3×10PFUと混合し、37℃で10分間インキュベートし、次に3mLの融解0.4%栄養寒天と混合して、10mmの円形1.5%栄養寒天プレートの上に注いだ。37℃で24時間および48時間のインキュベ
ーションの後に、細菌コロニーを数えた。BIMの見かけ上の頻度は、その反復における細菌の投入数によって割った各試験プレート上のコロニー数で計算した。反復測定ANOVAを使用して結果を比較し、対応のあるt検定を使用してAB-SA01と3つの構成成分ファージの間の事前計画比較を実行した。各ファージ+宿主組合せ(<10の場合全てのBIM)からの最高10個のBIMを寒天プレートの上で画線精製し、ファージ感受性試験のスポット希釈方法を使用して、遺伝性の耐性の存在について試験した。
【0112】
[0129]ゲノムシークエンシングおよび分析:フィルター処理した溶解物または精製された調製物からファージゲノムDNAを精製し、PCR非含有ライブラリーを使用してIllumina paired-end(ACGT)またはPacBioテクノロジー(発現分析)によって配列決定をした。アノテーションは、myRASTを使用して実行した。配列の50%にわたる少なくとも30%の同一性およびE≦0.05を必要とするblast検索を使用して、インテグラーゼへの注釈されたタンパク質の類似性および細菌の病原性または抗生物質耐性遺伝子への注釈された遺伝子の類似性を調査し;ヒットの元のアノテーションの可能な精度およびHHPred(Sodingら、2005年、Bioinformatics.21(7):951~960頁;Sodingら、2005年、Nucl.Acid Res.33(増補2):W244~W248、2005年)によって予測された二次構造からの証拠などの因子に基づいて、いかなるヒットも正当性について手動で検査した。デフォルトパラメータでProgressive Mauve(Darlingら、2004年、Genome Res 14(7):1394~1403頁)を使用して、ゲノムアラインメントを構築した。
【0113】
[0130]動物研究:全ての動物研究のために、精製されたファージ材料を使用した。AB-SA01:5匹の雌BALB/cマウスの3群に麻酔をかけ、メチシリン感受性S.aureus株Xen29(Perkin Elmer)の3.0×10CFUの接種原を、35μLの体積で鼻腔内(IN)に送達した。感染の2および6時間後(hpi)、未処置対照は50μLのPBS-Mg INを受け、ファージ処置群は50μLのIN用量で1ファージにつき5×10PFUを受けた。2、6および12hpiに、抗生物質対照は、SC注射として110mg/kgバンコマイシンを受けた。24hpiに、CO吸入によってマウスを安楽死させ、肺を細菌力価のために処理した。細菌数をミュラーヒントン寒天の上で数え、対照へのダネットの検定多重比較によるlog10変換値でのANOVAを使用して、処置群を対照と比較した。両方のマウス研究の後、マウス肺組織から回収された細菌を、前述の通りにファージ感受性について試験した。
【0114】
[0131]AB-SA01構成成分ファージの物理化学的特徴:全ての3つのAB-SA01構成成分ファージは、それらと対になったS.aureus宿主の上で平板培養したとき、小さい透明なプラークを生成する。3つのAB-SA01構成成分ファージの透過型電子顕微鏡検査(TEM)像は、カウドウイルス目ミオウイルス科に属するファージの特徴である、直線状の収縮テールおよび細いネックを示す(図1)。
【0115】
[0132]全てのAB-SA01構成成分ファージは、ゲノム領域の相対頻度を明らかにすることが可能な増幅非含有ライブラリーから配列決定をされた。読み取りマッピングデータは、ゲノム末端および概ね8から10kbの関連した固定直接末端反復配列を同定する、概ね二倍のカバレージの領域を示した。このゲノム構造は、普遍形質導入に関連していない配列特異的パッケージング機構を示す。同一直線上の単一コピー構成成分ファージゲノムのペアワイズ相関性は、93から97%のヌクレオチド同一性であり(図2)、全ては良く研究されたS.aureusミオウイルスファージKに関連している。AB-SA01構成成分ファージゲノムの中で識別可能なインテグラーゼは見出されず、3つのファージの各々の中の約200個の予測されたファージ遺伝子のいずれも、公知の細菌病原性および抗生物質耐性遺伝子に類似していなかった。
【0116】
[0133]AB-SA01のin vitro活性
[0134]AB-SA01の標的種は、S.aureusである。全体的に、MDRであることが公知である205個の分離株の95%を含め、401個の臨床S.aureus分離株の94%はAB-SA01に感受性であって(表1)、遺伝子の系統、単離の年または感染症のタイプによる見かけ上の変異はほとんどなかった。正常なヒト微生物相および関連したブドウ球菌の代表種で試験したとき、AB-SA01およびその構成成分ファージは、5つの試験したS.epidermidis株のうち2つに対して多少の活性を示したが、属の間の交差活性を示さなかった(表2)。S.aureus株で試験したとき、構成成分ファージの間の干渉の証拠は観察されなかった。AB-SA01で観察された力価は、構成成分ファージ活性とほとんど一貫し、構成成分ファージのいずれも生成しなかったけれども、AB-SA01がプラークを生成した可能性がある相乗作用の2、3の例があった。さらに、Sa87、J-Sa36またはSa83のいずれか1つと比較した場合、ゲノム全体にわたって10%未満の核酸変異を有するバクテリオファージを、7つのS.aureus分離株に対して試験した。2つのファージの代表的データを、表3に示す。
【0117】
[0135]AB-SA01構成成分ファージは、全ての主要な地域感染型(CA-)および院内感染性(HA-)MRSA系統の代表種を含む68メンバーの多様性団に一部基づいて選択された(Stefaniら 2012年、Int J Antimicrob Agents 39(4):273~282頁;Otterら 2010年、Lancet
Infect Dis 10(4):227~239頁。)。各構成成分ファージは、異なる宿主範囲を有し、ほとんどの細菌株はAB-SA01ファージの複数に感受性であった。後年の血液、創傷、肺、尿および他の感染症からの世界的に多発しているS.aureusを代表する分離株の団にわたって、AB-SA01活性は同様に高かった。標的化された目的の一団を使用して、AB-SA01は、比較的稀であるがVISA表現型に関する株、排他的CRS分離株の団、および様々な臨床的に重要なUSA300系統に活性を有することも示された。
【0118】
[0136]
[0137]
【0119】
【表1-1】
【0120】
【表1-2】
【0121】
【表2-1】
【0122】
【表2-2】
【0123】
[0138]
[0139]
【0124】
【表3】
【0125】
[0140]耐性および相補性の頻度。
[0141]細菌耐性が生じる場合にお互いに補うファージの可能性は、AB-SA01開発の一環と考えられた。広いかまたは異なる宿主範囲を有する6つの候補ファージを、感受性S.aureus株で調査した。1つのファージを使用して生成されたBIMは、それらが画線精製の後に低減されたファージ感受性を真に示すかどうか確認するために先ず試験し、次に他のファージへの交差耐性を同じ方法によって試験した(表4)。Sa83、Sa81およびSa76は、Sa87によって誘導された耐性を補うことが同様にでき、非常に類似した宿主範囲を以前に示しており、したがって、Sa83だけをAB-SA01の一部として保持した。J-Sa37は、相補性より交差耐性をよりしばしば示したので、AB-SA01に含まれなかった。J-Sa36は、Sa87またはSa83のいずれとも異なる相補性挙動を示した。
【0126】
[0142]
【0127】
【表4-1】
【0128】
【表4-2】
【0129】
[0143]AB-SA01組成物が確定された後、AB-SA01への耐性の平均の見かけの頻度は、24時間後および48時間後の両方で個々のファージで観察された値より低かった(表5)。しかし、おそらくこの研究で観察された値が検出限界の近くにあったので、この傾向は統計的に有意でなかった(P>0.05)。これは、感受性S.aureus集団の間のAB-SA01耐性の自発的な頻度が、約3×10-9以下であることを示唆する。この数は、観察された細菌コロニーの数を最初に存在した細菌細胞の総数によって割ることによって生成される。この研究で観察されたBIMコロニーのいずれも、寒天プレートの上での再線条接種によって単離することができず、試験プレートの上でのそれらの増殖が安定した遺伝性の耐性によるものでなく、代わりに、一時的な表現型、または平板培養の前のファージ-細菌混合物のインキュベーションの間のファージとの接触を細胞が逃避する空間現象によるものであったことを暗示する。
【0130】
[0144]
【0131】
【表5】
【0132】
[0145]実施例2:ヒト患者へのバクテリオファージ投与
[0146]単独の抗生物質処置に応答しなかったStaphylococcus aureus感染症を有するヒト患者に、バクテリオファージカクテルを投与した。患者は、菌血
症、心内膜炎(生来の弁)、人工弁心内膜炎または補助人工心臓感染症を患っていた。
【0133】
[0147]概ね等しい比の3つのバクテリオファージ、Sa87、J-Sa36、Sa83を含有するバクテリオファージカクテル(参照により本明細書に完全に組み込まれる、米国特許出願公開第2017/0065649号を参照)を、S.aureus感染症を有する患者の4人に投与した。ファージカクテルは、多剤耐性分離株を含む、S.aureus株の概ね96%をカバーしていた。患者からのS.aureus分離株の感受性は、処置の前に軟寒天重層スモールドロップアッセイによって判定した。患者は、3×10PFUのファージカクテルで、静脈内投与により12時間おきに処置した。適応症により、療法は3~14日間実施した。主治医による決定に従い、患者には最良の利用可能な抗生物質療法も実施した。
【0134】
[0148]結果は、療法の最後までにAB-SA01で処置した改変治療企図集団(mITT、臨床診断の判定基準を満たし、その細菌分離株がAB-SA01に感受性であり、AB-SA01の少なくとも1回の投与を受けた全ての患者と規定される)の患者の75%(3人)において、処置奏効を示した(ベースライン徴候および症状の完全解消またはかなりの改善として、治療にあたる医師によって判定された)。処置は十分に寛容され、処置関連の重大な有害事象はなかった。処置患者の一人を除く全員は、ベースライン徴候および症状の完全解消またはかなりの改善を示した。
【0135】
[0149]AB-SA01の90用量を投与した。処置期間全体で、患者からの細菌分離株は、カクテルに感受性のままだった。
[0150]実施例3:ヒト患者におけるバクテリオファージ投与
[0151]単独の抗生物質処置に応答しなかったS.aureus感染症を有するヒト患者に、バクテリオファージカクテルを投与した。患者は、菌血症および敗血症、心内膜炎(生来の弁)、人工弁心内膜炎、骨髄炎、補助人工心臓(VAD)感染症、人工関節感染症または慢性副鼻腔炎を含むS.aureus感染症を患っていた。
【0136】
[0152]概ね等しい比の3つのバクテリオファージ、Sa87、J-Sa36、Sa83を含有するバクテリオファージ組成物「カクテル」(参照により本明細書に完全に組み込まれる、米国特許出願公開第2017/0065649号を参照)を、S.aureus感染症を有する15人の患者に投与した。ファージカクテルは、多剤耐性分離株を含む、S.aureus株の概ね96%をカバーしていた。患者からのS.aureus分離株の感受性は、処置の前に軟寒天重層スモールドロップアッセイによって判定した。患者は、3×10PFUのファージカクテルで、静脈内、関節内または副鼻腔内投与により12時間おきに、または一度処置した。適応症により、療法は3~28日間実施した。主治医による決定に従い、患者には最良の利用可能な抗生物質療法も投与した。
【0137】
[0153]結果は、療法の最後までにAB-SA01で処置した改変治療企図集団(mITT、臨床診断の判定基準を満たし、その細菌分離株がAB-SA01に感受性であり、AB-SA01の少なくとも1回の投与を受けた全ての患者と規定される)の患者の85%(11人)において、処置奏効を示した(ベースライン徴候および症状の完全解消またはかなりの改善として、治療にあたる医師によって判定された)。一人の患者は改善(7.5%)を示した(「改善」は、治療にあたる医師によってベースライン徴候および症状の臨床的に意味のある改善として判定された)。一人の患者は、AB-SA01による処置の後に改善を示さなかった(「改善なし」は、治療にあたる医師によってベースライン徴候および症状の解消が無いかまたは死亡として判定された)。
【0138】
[0154]静脈内300+用量、関節内2および副鼻腔内50+を含む、AB-SA01の400+を超える用量を投与した。全ての患者で、処置は十分に寛容された。処置関連の
SAEはなかった。
【0139】
[0155]上の明細書で指摘される全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の記載される方法およびシステムの様々な修正および変更は、本発明の範囲および趣旨を逸脱しない範囲で当業者にとって明らかになる。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載されたが、請求される発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、生化学およびバイオテクノロジーまたは関連分野の熟練者にとって明らかである、本発明を実行するための記載モードの様々な修正は、特許請求の範囲内にあるものである。
【0140】
[0156]実施形態
[0157]実施形態1-1。対象で細菌感染症を処置する方法であって、Sa87、J-Sa36、Sa83およびその突然変異体から選択される1つまたは複数のバクテリオファージを含むバクテリオファージ組成物を対象に投与するステップを含み、ここで、細菌感染症はStaphylococcusを含む方法。
【0141】
[0158]実施形態1-2。前記組成物が、Sa87、J-Sa36、Sa83またはその突然変異体から選択される少なくとも2つのバクテリオファージを含む、実施形態1-1の方法。
【0142】
[0159]実施形態1-3。前記組成物が、Sa87、J-Sa36、Sa83またはその突然変異体から選択される少なくとも3つのバクテリオファージを含む、実施形態1-1の方法。
【0143】
[0160]実施形態1-4。前記組成物が、Sa87、J-Sa36およびSa83、またはその突然変異体を含む、実施形態1-1の方法。
[0161]実施形態1-5。前記組成物が、Sa87、J-Sa36およびSa83、またはその突然変異体から本質的になる、実施形態1-1の方法。
【0144】
[0162]実施形態1-6。突然変異体が、Sa87、J-Sa36またはSa83と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも75%の配列同一性を有する、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0145】
[0163]実施形態1-7。突然変異体が、Sa87、J-Sa36またはSa83と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも80%の配列同一性を有する、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
[0164]実施形態1-8。突然変異体が、Sa87、J-Sa36またはSa83と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも90%の配列同一性を有する、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
[0165]実施形態1-9。突然変異体が、Sa87、J-Sa36またはSa83と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも95%の配列同一性を有する、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
[0166]実施形態1-10。配列番号1、配列番号2、配列番号3およびその突然変異体から選択されるゲノム配列を有する1つまたは複数のバクテリオファージを含む、前記実施形態のいずれか1つに記載のバクテリオファージ組成物。
【0149】
[0167]実施形態1-11。配列番号1、配列番号2、配列番号3、およびそれらの突然
変異体から選択されるゲノム配列を有する少なくとも2つのバクテリオファージを含む、実施形態1-10に記載のバクテリオファージ組成物。
【0150】
[0168]実施形態1-12。配列番号1、配列番号2、配列番号3およびその突然変異体から選択されるゲノム配列を有する3つのバクテリオファージを含む、実施形態1-10に記載のバクテリオファージ組成物。
【0151】
[0169]実施形態1-13。配列番号1、配列番号2および配列番号3またはその突然変異体のゲノム配列を有するバクテリオファージから本質的になる、実施形態1-10から1-12のいずれか1つに記載のバクテリオファージ組成物。
【0152】
[0170]実施形態1-14。突然変異体が、配列番号1、配列番号2および/または配列番号3と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも75%の配列同一性を有する、実施形態1-10から1-12のいずれか1つに記載のバクテリオファージ組成物。
【0153】
[0171]実施形態1-15。突然変異体が、配列番号1、配列番号2、および/または配列番号3と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも80%の配列同一性を有する、実施形態1-10から1-12のいずれか1つに記載のバクテリオファージ組成物。
【0154】
[0172]実施形態1-16。突然変異体が、配列番号1、配列番号2、および/または配列番号3と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも90%の配列同一性を有する、実施形態1-10から1-12のいずれか1つに記載のバクテリオファージ組成物。
【0155】
[0173]実施形態1-17。突然変異体が、配列番号1、配列番号2、および/または配列番号3と比較した場合、そのゲノム全体にわたって少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態1-10から1-12のいずれか1つに記載のバクテリオファージ組成物。
【0156】
[0174]実施形態1-18。組成物が、抗生物質(例えば、化学的抗生物質)をさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
[0175]実施形態1-19。抗生物質が、フルオロキノロン、カルベペネム、アミノグリコシド、セファロスポリン、ペニシリン、ベータラクタムまたはベータラクタマーゼ阻害剤である、実施形態3-28の方法。
【0157】
[0176]実施形態1-20。組成物が、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せをさらに含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
[0177]実施形態1-21。薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せはMgSOを含む、実施形態3-20に記載の方法。
【0158】
[0178]実施形態1-22。細菌感染症が、Staphylococcus aureusを含む、前記実施形態のいずれか1つの方法。
[0179]実施形態1-23。抗生物質(例えば、化学的抗生物質)を対象に投与することをさらに含む、前記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
[0180]実施形態1-24。抗生物質が、フルオロキノロン、カルベペネム、アミノグリコシド、セファロスポリン、ペニシリン、ベータラクタムまたはベータラクタマーゼ阻害剤である、実施形態1-23に記載の方法。
【0160】
[0181]実施形態1-25。細菌感染症が、細菌バイオフィルムの存在によって特徴付けられる感染症である、前記実施形態のいずれか1つの方法。
[0182]実施形態1-26。細菌感染症が肺感染症ではない、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0161】
[0183]実施形態1-27。細菌感染症が、副鼻腔炎、尿路感染症、腹腔内感染症、皮膚感染症、皮膚構造感染症、菌血症、心内膜炎またはインプラント感染症である、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0162】
[0184]実施形態1-28。インプラント感染症が、心臓インプラント感染症(例えば、補助人工心臓感染症、ペースメーカー感染症)、人工関節感染症または人工弁心内膜炎である、実施形態1-27の方法。
【0163】
[0185]実施形態1-29。細菌感染症が抗生物質耐性である、前記実施形態のいずれか1つの方法。
[0186]実施形態1-30。組成物が、組成物のエアゾール化製剤を通して投与される、前記実施形態のいずれか1つの方法。
【0164】
[0187]実施形態1-31。組成物が静脈内投与される、実施形態1-22から1-30のいずれか1つの方法。
[0188]実施形態1-32。Sa87、J-Sa36、Sa83およびその突然変異体から選択される1つまたは複数のバクテリオファージ、ならびに凍結保護物質を含むバクテリオファージ組成物。
【0165】
[0189]実施形態1-33。配列番号1、配列番号2、配列番号3およびその突然変異体から選択されるゲノム配列を有するバクテリオファージから選択される1つまたは複数のバクテリオファージ、ならびに凍結保護物質を含むバクテリオファージ組成物。
【0166】
[0190]実施形態1-34。凍結保護物質がグリセロールを含む、実施形態1-32または1-33のバクテリオファージ組成物。
[0191]実施形態1-35。組成物のバクテリオファージがStaphylococcusに感染しそれを溶菌する、前記実施形態のいずれか1つの組成物または方法。
【0167】
[0192]実施形態1-36。組成物のバクテリオファージがStaphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する、前記実施形態のいずれか1つの組成物または方法。
【0168】
[0193]実施形態1-37。組成物のバクテリオファージはメチシリン耐性Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する、前の実施形態のいずれか1つの組成物または方法。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2023182703000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌感染症を有するヒトを処置するための医薬組成物であって、Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する1つまたは複数の異なるバクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含むゲノムを有する1つまたは複数の異なるバクテリオファージを含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
確定された肺以外のS.aures感染症を有するヒトを処置するための医薬組成物であって、Staphylococcus aureusに感染しそれを溶菌する少なくとも2つの異なるバクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれかと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むゲノムを含む少なくとも2つの異なるバクテリオファージを含み、感染症は肺のS.aureus感染症ではない、前記医薬組成物。
【請求項3】
組成物が、配列番号1、配列番号2、配列番号3または配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列のポリヌクレオチド配列を有するバクテリオファージから選択される少なくとも3つの異なるバクテリオファージを含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
細菌感染症が、副鼻腔炎、尿路感染症、腹腔内感染症、皮膚感染症、皮膚構造感染症、菌血症、敗血症、心内膜炎またはインプラント感染症である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ヒトにおいて微生物フローラを改変するための医薬組成物であって、Staphylococcus aureus細菌に対して溶菌活性を有する少なくとも2つの異なるバクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%の同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むゲノムを有するバクテリオファージから選択される、少なくとも2つの異なるバクテリオファージを含む、前記医薬組成物。
【請求項6】
1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージおよび凍結保護物質を含む、細菌構成成分を実質的に含有しないバクテリオファージ組成物であって、バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムを有し、各個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくく、抗生物質耐性遺伝子を有さない、バクテリオファージ組成物。
【請求項7】
相補性が可能である1つまたは複数の偏性溶菌性バクテリオファージであって、配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムを有するバクテリオファージ、および凍結保護物質を含む、細菌構成成分を実質的に含有しないバクテリオファージ組成物であって、組成物の標的細菌範囲は、組成物中のいかなる個々のバクテリオファージの範囲より広い、バクテリオファージ組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの偏性溶菌性バクテリオファージおよび8℃以下の温度での保存のための保存媒体を含む、細菌構成成分を実質的に含有しないバクテリオファージ組成物であって、バクテリオファージは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のいずれか1つと少なくとも93%であるが100%ではない同一性を有するヌクレオチド配列を含むゲノムを有し、各個々のバクテリオファージは、普遍形質導入を起こしにくく、抗生物質耐性遺伝子を有さない、バクテリオファージ組成物。
【外国語明細書】