IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182712
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】自動化された製造及び収集
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20231219BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20231219BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C12N5/07
C12M3/00 A
C12M1/26
C12N7/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023171024
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021191948の分割
【原出願日】2017-05-05
(31)【優先権主張番号】62/332,426
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/333,013
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/500,962
(32)【優先日】2017-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507114521
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー、インコーポレーテッド
【住所又は居所原語表記】10811 West Collins Avenue, Lakewood, Colorado 80215, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン、ボー
(72)【発明者】
【氏名】ナンカーヴィス、ブライアン ジェイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞から放出又は分泌された細胞生産物の製造、単離、及び/又は収集する方法を提供する。
【解決手段】細胞は、細胞増殖システムのバイオリアクターの毛細管内側(又は毛細管外側)空間において、培地によって増殖される。細胞は、バイオリアクターの流体空間に細胞生産物を放出する。放出される細胞生産物の例としては、細胞外小胞(EV)のような細胞外粒子が挙げられる。他の供給源からの細胞外粒子ではなく、増殖された細胞から放出された細胞外粒子を収集するために、増殖細胞から放出細胞外粒子を収集する前に、洗浄ステップにおいて血清タンパク質を除去する。放出細胞生産物は、出口パラメータを制御することによって、収集又は濃縮されると同時に、栄養素は、半透過性膜を通じた培地の拡散によって、細胞に到達する。そして、放出細胞生産物は収穫される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞生産物を収集する方法であって、該方法は、
細胞をバイオリアクターに投入するステップと、
培地によって前記細胞へフィーディングを行うステップと、
前記細胞を増殖するステップであって、前記細胞が細胞生産物を放出するステップと、
放出された前記細胞生産物を濃縮するステップと、
前記バイオリアクターから濃縮された前記細胞生産物を収穫するステップと、
を有する、
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、放出された前記細胞生産物は、細胞外粒子を含む、
方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記細胞外粒子は、細胞外小胞を含む、
方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、前記細胞外小胞は、エクソソームを含む、
方法。
【請求項5】
請求項3記載の方法において、前記細胞外小胞は、微小小胞を含む、
方法。
【請求項6】
請求項2記載の方法において、前記細胞外粒子は、ウイルスベクターを含む、
方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、収穫された前記細胞生産物は、バッグに集められる、
方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記方法はさらに、前記培地を置換するステップを
有する
方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記培地は血清を含む、
方法。
【請求項10】
中空糸膜を有するバイオリアクターと、
少なくとも両端部を有する第1流体流路と、
プロセッサと、
前記プロセッサと通信を行い、前記プロセッサによって読取可能なメモリと、
を備える細胞増殖システムであって、
前記第1流体流路は、前記中空糸膜の毛細管内側部分と流体的に関連付けられ、
前記メモリは一連の命令を有し、前記一連の命令が、前記プロセッサによって実行される場合、前記プロセッサは、
選択を受けて、細胞へのフィーディングを行い、
選択を受けて、前記毛細管内側部分の出口を閉じて、前記毛細管内側部分の前記細胞から放出された粒子を濃縮し、
前記粒子を収穫バッグへ移動させる動作を行う、
細胞増殖システム。
【請求項11】
請求項10記載の細胞増殖システムにおいて、前記プロセッサはさらに、
5回の洗い流し洗浄を行うこと、
陰圧限外濾過を行うこと、
洗い流し洗浄を行うこと、
のうち少なくとも1つを行う、
細胞増殖システム。
【請求項12】
請求項10記載の細胞増殖システムにおいて、前記細胞から放出された前記粒子は、細胞外粒子を含む、
細胞増殖システム。
【請求項13】
請求項12記載の細胞増殖システムにおいて、前記細胞外粒子は、エクソソームを含む、
細胞増殖システム。
【請求項14】
請求項12記載の細胞増殖システムにおいて、前記細胞外粒子は、微小小胞を含む、
細胞増殖システム。
【請求項15】
請求項10記載の細胞増殖システムにおいて、前記プロセッサはさらに、
選択を受けて、前記中空糸膜の前記毛細管内側部分及び毛細管外側部分の流体を置換する、
細胞増殖システム。
【請求項16】
請求項15記載の細胞増殖システムにおいて、前記流体を置換する際、前記細胞へのフィーディングのために使用される第1培地からタンパク質が取り出される、
細胞増殖システム。
【請求項17】
請求項16記載の細胞増殖システムにおいて、前記細胞へのフィーディングのために使用される前記第1培地は、タンパク質を含まない第2培地に置換される、
細胞増殖システム。
【請求項18】
請求項17記載の細胞増殖システムにおいて、前記プロセッサはさらに、
前記バイオリアクター内の前記第1培地及び/又は前記第2培地の試験を行って、前記タンパク質が除去されたかどうかを判断する、
細胞増殖システム。
【請求項19】
中空糸膜を有するバイオリアクターと、
前記バイオリアクターの少なくとも両端部に第1入口と第1出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管内側部分と流体的に関連付けられた第1流体流路と、
第2入口と第2出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管外側部分と流体的に関連付けられた第2流体流路と、
前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第1接続ポートと、
前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第2接続ポートと、
前記第1流体流路と前記第2流体流路とに流体的に関連付けられた第3接続ポートと、
前記第2流体流路に流体的に関連付けられた第4接続ポートと、
前記第1流体流路に流体的に関連付けられた収穫バッグと、
を備えた細胞増殖システムであって、
前記第1接続ポートに取り付けられた第1バッグによって、前記バイオリアクターに細胞が導入され、
タンパク質を含む第1培地が入った第2バッグが前記第2接続ポートに接続され、前記第2バッグから、前記第1培地が前記第1流体流路を通って前記バイオリアクターへ供給され、所定数の細胞倍加が起きるまで、前記細胞へのフィーディングが行われ、
第2培地が入った第3バッグが前記第3接続ポートに接続され、前記第3バッグから、前記第2培地が前記第1流体流路及び前記第2流体流路を通って前記バイオリアクターへ供給され、前記バイオリアクターから前記第1培地を洗い流して洗浄し、
前記洗浄の後、タンパク質を含まない第3培地が入った第4バッグが前記第4接続ポートに接続され、前記細胞へのフィーディングが行われ、前記第3培地で前記細胞にフィーディングを行う際、前記第1流体流路の前記第1出口は閉じられ、前記バイオリアクターの前記毛細管内側部分において、前記細胞から放出される粒子が濃縮され、
濃縮された前記粒子は前記収穫バッグへ移送される、
細胞増殖システム。
【請求項20】
細胞増殖システムにおいて細胞粒子を生成する方法であって、
前記細胞増殖システムは、
毛細管内側部分と毛細管外側部分とを有する中空糸膜を備えるバイオリアクターと、
前記バイオリアクターの少なくとも両端部に第1入口と第1出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管内側部分と流体的に関連付けられた第1流体流路と、
第2入口と第2出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管外側部分と流体的に関連付けられた第2流体流路と、
前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第1接続ポートと、
前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第2接続ポートと、
前記第1流体流路と前記第2流体流路とに流体的に関連付けられた第3接続ポートと、
前記第2流体流路に流体的に関連付けられた第4接続ポートと、
収穫バッグと、
を備え、
前記方法は、
前記細胞増殖システムにプライミングを行うステップと、
前記第1接続ポートに第1バッグを接続して、前記バイオリアクターに細胞を導入するステップと、
前記第2接続ポートに、タンパク質を含む第1培地が入った第2バッグを接続して、前記第1培地を、前記第1流体流路を介して前記バイオリアクターに供給し、所定数の細胞倍加が起きるまで、前記細胞へのフィーディングを行うステップと、
前記所定数の細胞倍加が起きた後、前記第3接続ポートに、第2培地が入った第3バッグを接続して、前記第2培地を、前記第1流体流路と前記第2流体流路とを介して前記バイオリアクターに供給し、前記バイオリアクターから前記第1培地を洗い流して洗浄するステップと、
前記洗浄の後、前記第1流体流路の前記第1出口を閉じて、前記バイオリアクターの前記毛細管内側部分において、前記細胞から放出された粒子を濃縮するステップと、
前記第4接続ポートに、タンパク質を含まない第3培地が入った第4バッグを接続し、前記細胞へのフィーディングを行うステップと、
収穫のために、前記第1流体流路に前記収穫バッグを接続するステップと、
濃縮された前記粒子を前記収穫バッグに収穫するステップと、
を有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年5月5日に出願された米国特許仮出願第62/332,426号(タイトル:自動化された製造及び収集)及び2016年5月6日に出願された米国特許仮出願第62/333,013号(タイトル:自動化された製造及び収集)及び2017年5月3日に出願された米国特許仮出願第62/500,962号(タイトル:自動化された製造及び収集)の優先権を主張するものであり、該米国特許仮出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
細胞増殖システム(CES)は、細胞を増殖させ、分化させるために使用される。細胞増殖システムを使用することにより、種々の接着性細胞や懸濁細胞を増殖(例えば、成長)させることができる。例えば、細胞増殖システムを用いて、例えば骨髄細胞のような、間葉系幹細胞(MSCs)やその他のタイプの細胞を増殖させることができる。ドナー細胞から増殖した幹細胞を使用することで、損傷を受けた又は欠陥のある組織を修復又は交換することができ、広範囲な疾病に対する幅広い臨床応用が存在する。接着性及び非接着性の両タイプの細胞の成長は、細胞増殖システムのバイオリアクターにおいて行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の実施形態は一般に、細胞から放出又は分泌される細胞生産物の製造、単離及び/又は収集に関する。そのような放出又は分泌される細胞生産物は、放出又は分泌された物質(agent)、放出又は分泌された成分(constituent)、細胞生産物質、細胞生産成分、放出又は分泌された粒子、放出又は分泌された分子、細胞外粒子、放出又は分泌されたタンパク質、伝達メカニズム(transfer mechanism)等と呼ばれる。細胞外粒子の例としては、細胞外小胞(EV)、ウイルスベクター等が挙げられるが、それらに限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
細胞外小胞(EV)は細胞によって産生され、細胞培養の間に、培養又は増殖が行われている流体又は培地中に放出される(増殖中に生成される重要な副産物の存在によって、条件培地と呼ばれることが多い)。EVは、例えば、エクソソームや微小小胞を含む。EVには、細胞の通信やその他の重要な細胞プロセスに不可欠なタンパク質、RNA、DNAが含まれる。EVは、例えば、血清、血漿、尿、及び細胞培養上清のような体液から単離することができる。
【0005】
実施形態において、細胞間通信は、細胞生物学において重要な機能を果たす。他の細胞と通信する細胞の能力は、タンパク質合成のような複雑な機構が起こることを可能にする。 例えば、直接的な細胞-細胞接触又は分泌された分子の移動等、細胞が互いに通信することができる多くの方法がある。微小小胞及びエクソソームのようなEVは、細胞内通信を媒介し、遺伝情報の伝達を促進する能力を有する。微小小胞は原形質膜からの直接の芽であり、しばしば起源の膜に類似した表面マーカーを含む。小胞エンドソーム(vesicular endosome)が原形質膜と融合し、細胞外空間に出芽すると、エクソソームが形成される。遺伝情報伝達におけるそれらの積極的役割のために、微小小胞及びエクソソームは治療用途に使用することができる。例えば、EVは免疫応答を刺激する抗原提示細胞として作用し、微小小胞はケモカイン受容体を転移させて活性化し、抗アポトーシス効果をもたらす。
【0006】
実施形態では、細胞増殖システムを使用して細胞を増殖する。このような増殖は、バイオリアクター又は細胞成長チャンバーの使用によって行われる。一実施形態では、このようなバイオリアクター又は細胞成長チャンバーは、例えば、中空糸膜を含む。このような中空糸膜は、毛細管外側(EC)空間及び毛細管内側(IC)空間を含む。細胞増殖システムは、間葉系幹細胞、癌細胞、T細胞、線維芽細胞、及び筋芽細胞等の様々なタイプの細胞を増殖できる。これらのタイプの細胞のそれぞれは、EVを、バイオリアクターの流体空間に放出し、その後、出口バッグを介して収集することができる。バイオリアクターの半透過性中空糸により、必須栄養素(例えば、グルコース)は細胞に到達可能となり、また代謝廃棄物(例えば、乳酸塩)は拡散を介してシステムから出ることが可能になる。細胞は中空糸の毛細管内側に保持され、EVは流体空間で濃縮され、次いで細胞の収穫を望まない場合は、細胞を収穫することなく、システムからEVが収穫される。
【0007】
本開示の実施形態はさらに、増殖細胞からの放出細胞生産物(例えば、EV又はウイルスベクター等)の収集の前に、細胞を培養又は増殖するために使用される血清タンパク質を除去するための自動洗浄手順の使用に関連する。そのような洗浄手順により、システムは、増殖中の細胞からの放出細胞生産物の収集を始める前に、まず放出された細胞生産物(例えば、EV又はウイルスベクター等)を、細胞増殖に使用された血清又は他の供給源から除去することによって、放出された細胞生産物を精製することができる。
【0008】
本開示の実施形態は、マルチコンパートメントバイオリアクターの使用によって、放出された細胞生産物の収集又は濃縮を可能にする。例えば、IC出口弁を閉じる(EC出口を開いたままにする)ことによって、出口パラメータを制御することで、放出された細胞生産物はIC側の濃度を増加させるが、栄養素(例えばグルコース)は、EC側への培地の添加及び膜を通る拡散により、IC側の細胞に到達する。このような収集は、ある期間(約24時間~約72時間等)、継続される。一実施形態では、そのような収集は、約48時間、継続される。放出された細胞生産物の濃度を増加させた後、放出された細胞生産物を収穫バッグ又は他の容器に収集する。一実施形態によれば、仮にあったとして、そのような細胞を放出し収穫することが望まれなくなるまで、付着した細胞は、収穫プロセスの間、バイオリアクターに残っていてもよい。
【0009】
本開示の実施形態は、細胞増殖システムと共に使用するための1又は複数のプロトコル又はタスクを使用して、放出された細胞生産物のそのような生成及び/又は収集を実施することを可能にする。そのようなプロトコル又はタスクは、予めプログラムされたプロトコル又はタスクを含むことができる。他の実施形態では、そのようなプロトコル又はタスクは、カスタム又はユーザ定義のプロトコル又はタスクを含むことができる。ユーザインターフェース(UI)及びグラフィカルユーザインターフェース(GUI)要素を介して、カスタム又はユーザ定義のプロトコル又はタスクを作成することができる。タスクは、1又は複数のステップを含むことができる。他の実施形態では、予めプログラムされたタスク、初期設定タスク、又は以前に保存されたタスクを選択することができる。さらに他の実施形態では、そのような生成及び/又は収集は、細胞増殖システムと共に使用するための1又は複数の手動プロトコル又はタスクの使用を通じて実施されてもよい。
【0010】
このセクションは、一連の概念を簡単な形式で提示するために設けられる。これら概念は、以下でより詳細に、詳細な説明で記載される。このセクションは、請求項が定義する主題の範囲を制限するために用いられることを意図されていない。ここで提示される特徴に加えて、等価物及び変更等を含む特徴を含んでよい。
【0011】
以下では、本発明の実施形態が、添付図面を参照して説明される。図面中、同じ参照符号は、同じ構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、細胞増殖システム(CES)の一実施形態の図である。
図1B図1Bは、バイオリアクター内を通る循環路が示されたバイオリアクターの一実施形態の正面図である。
図1C図1Cは、本開示の実施形態に係る、細胞増殖システムの動作中に細胞成長チャンバーを回転方向又は横方向に動かすための揺動装置の図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る、予め流体移送装置が取り付けられた細胞増殖システムの斜視図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る、細胞増殖システムのハウジングの斜視図である。
図4図4は、本開示の実施形態に係る、予め取り付けられる流体移送装置の斜視図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る細胞増殖システムの概略図である。
図6図6は、本開示の他の実施形態に係る細胞増殖システムの概略図である。
図7図7は、本開示の実施形態に係る、放出成分を生成及び/又は集めるためのプロセスの動作特徴を示すフローチャートである。
図8図8は、本開示の実施形態に係る、放出細胞生産物を生成及び/又は集めるためのプロセスの動作特徴を示すフローチャートである。
図9図9は、本開示の実施形態に係る、放出物質を生成及び/又は集めるためのプロセスの動作特徴を示すフローチャートである。
図10図10は、本開示の実施形態が実行される細胞増殖システムの処理システムの一例を示す図である。
図11図11は、本開示の一実施形態に係る、細胞増殖システムにおける培地からのタンパク質の抽出結果例を示す図である。
図12図12は、本開示の一実施形態に係る、細胞増殖システムを用いたEV生成の結果例を示す図である。
図13A図13Aは、本開示の一実施形態に係る、細胞増殖システムを用いたEV生成の結果例を示す図である。
図13B図13Bは、本開示の一実施形態に係る、細胞増殖システムを用いたEV生成の結果例を示す図である。
図13C図13Cは、本開示の一実施形態に係る、細胞増殖システムを用いたEV生成の結果例を示す図である。
図14図14は、本開示の一実施形態に係る、細胞増殖システムを用いたEV生成の結果例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明では、例示的な実施形態が、添付図面を参照して、説明される。ここでは特定の実施形態を含むことになるが、本開示を限定又は制限するものと解釈されるべきではない。また、実施形態を記載する際、例えば、特徴、動作、及び/又は構造に対して特有な用語が使用される場合があるが、本開示の請求項の範囲は、これら特徴、動作、及び/又は構造に制限されるものではない。当業者であれば、改良を含む他の実施形態は、本開示の精神及び範囲内にあることは理解できよう。さらに、他の実施形態として挙げられている任意のものを含む任意の代替物又は追加物が、本明細書に記載された他の任意の実施形態と共に使用されても又は組み込まれてもよい。
【0014】
本開示の実施形態は、一般に、細胞増殖システムにおいて放出された細胞生産物(cellular product)(例えば、細胞外小胞(EV)やウイルスベクター等)を生成、単離及び/又は収集するためのシステム及び方法に関する。本開示の実施形態は、例えば、マルチコンパートメントバイオリアクターの使用によって、放出された細胞生産物の収集又は濃縮を可能にすることをさらに提供する。
【0015】
ある実施形態では、中空糸膜の透過性により、細胞を毛細管内側(IC)ループ内に保持することにより、細胞を他の成分から分離することができ、同時に、可溶性分子は毛細管外側(EC)ループ内を自由に通過することができるようにすることができる。これにより、追加の分離ステップを不要にできる。バイオリアクターのEC側に添加された培地を用いて、培養中の細胞(例えば、グルコース、乳酸、アミノ酸、ビタミン)の代謝要求を満たすことができる。そのような培地は、バイオリアクターの半透過性膜を介して拡散することができる。膜を通って拡散するには分子量が大きすぎる培地構成成分を、限外濾過(例えば、連続的又は間欠的なボーラス添加のいずれか)を用いてバイオリアクターのIC側に添加してもよい。一実施形態では、膜を通って拡散するには大きすぎる成分を、バイオリアクターのIC側に維持するために、限外濾過(IC出口バルブ閉鎖)が使用される。細胞によって産生されたEVは、膜を通って拡散することができない、すなわち、それらの分子量は大きすぎる場合がある。従って、EVは、EV濃度が連続的に増加する増殖(又は所定の収集期間)の間、バイオリアクターのIC側に維持される。次いで、EVは、例えば、所定の間隔又はプロセス全体の終わりに、バイオリアクターのIC側から収穫容器又は収穫バッグへ収穫される。中空糸膜の2つの流体区画の恩恵がない場合、EV濃度又は収集は、細胞がEVを産生するレートに限定され、栄養要求を満たすために新鮮培地が培養環境に添加される。
【0016】
例えば、IC出口弁を閉じる(EC出口を開いたままにする)等の出口パラメータを制御することによって、放出された細胞生産物はIC側の濃度を増加させるが、栄養素(例えばグルコース)は、EC側への培地添加及び膜を介した拡散によって、依然としてIC側の細胞に到達可能である。他の実施形態では、栄養素は、IC側の培地の添加によりIC側の細胞に供給することができる。さらに他の実施形態では、IC側(又はEC側)に培地を添加し、膜を通って拡散し細胞に到達することによって、細胞増殖をEC側で行うこともできる。EVの収集は、約24時間又はそれ以上の期間にわたって継続することができる。他の実施形態では、そのような収集は約24時間未満継続することができる。他の実施形態では、そのような収集は、例えば、約48時間~約72時間継続することができる。放出された細胞生産物の濃縮を増加させた後、放出された細胞生産物を収穫バッグ又は他の容器に収穫することができる。ある実施形態では、付着した細胞は、仮にあったとして、該細胞を放出し収穫することが望まれるようになるまで、収穫プロセス中は、バイオリアクター内に残存していてもよい。
【0017】
実施形態は、上述のように、細胞増殖システムに関する。実施形態において、細胞増殖システムはクローズドシステムである。クローズド細胞増殖システムは、大気に直接さらされない内容物を含む。そのような細胞増殖システムは自動化されてもよい。実施形態において、接着性又は非接着性の両方のタイプ又は懸濁タイプの細胞を、該細胞増殖システムのバイオリアクターにおいて成長させることができる。実施形態によれば、細胞増殖システムは、基礎培地又は他のタイプの培地を含んでよい。培地の補充方法は、クローズド細胞増殖システムのバイオリアクターで行われる細胞成長のために提供される。実施形態において、そのようなシステムと共に使用されるバイオリアクターは、中空糸型バイオリアクターである。本発明の実施形態によれば、種々のバイオリアクターが使用されてよい。
【0018】
実施形態において、該システムは、少なくとも両端部を有する第1流体流路を備えるバイオリアクターを有し、前記第1流体流路の第1端部は、中空糸膜の第1ポートと流体的に関連付けられ、前記第1流体流路の第2端部は、前記中空糸膜の第2ポートと流体的に関連付けられ、前記第1流体流路は、前記中空糸膜の毛細管内側部分を有する。実施形態において、中空糸膜は、複数の中空糸を備える。該システムは、前記第1流体流路と流体的に関連付けられた流体入口路を有し、第1流体入口路を介して、前記第1流体流路には、複数の細胞が導入される。前記バイオリアクターの前記第1流体流路において流体を循環させる第1ポンプも含まれる。実施形態において、該システムは、前記第1ポンプの動作を制御するコントローラを有する。一実施形態において、前記コントローラは、例えば、プロセッサを有するコンピューティングシステムである。実施形態において、前記コントローラは、前記ポンプを制御して、前記第1流体流路内において、流体を、第1レートにて循環させる。いくつかの実施形態において、毛細管内側培地バッグからの毛細管内側投入流体を前記第1流体流路に移送する第2ポンプと、前記第2ポンプの動作を制御する第2コントローラと、をさらに備える。実施形態において、前記第2コントローラは前記第2ポンプを制御することによって、例えば、細胞を細胞投入バッグから前記第1流体流路に移送する。実施形態において、さらなるコントローラ(例えば第3コントローラ、第4コントローラ、第5コントローラ、第6コントローラ等)が使用されてもよい。本開示の実施形態において、さらなるポンプ(例えば第3ポンプ、第4ポンプ、第5ポンプ、第6ポンプ等)が使用されてもよい。さらに、本開示では、培地バッグ、細胞投入バッグ等について述べられるが、複数のバッグ、例えば、第1培地バッグ、第2培地バッグ、第3培地バッグ、第1細胞投入バッグ、第2細胞投入バッグ、第3細胞投入バッグ等、及び/又はその他のタイプの容器、が使用されてもよい。他の実施形態では、単一の培地バッグ、単一の細胞投入バッグ等が使用される。また、実施形態において、追加の又は別の流路(例えば、第2流体流路、第2流体入口路等)を設けてもよい。
【0019】
他の実施形態において、該システムは、例えば、細胞増殖システムに結合されたプロセッサと、該プロセッサと通信を行い、データを表示するディスプレイ装置と、該プロセッサと通信を行い、該プロセッサによって読取可能な、一連の命令を格納するメモリと、によって制御される。実施形態において、プロセッサによって命令が実行されると、プロセッサは、例えば、バイオリアクターのコーティングを指示する命令を受け取る。その命令に応答して、プロセッサは、バイオリアクターをコーティングするための一連のステップを実行し、次に、例えば、バイオリアクター内に細胞を導入する命令を受け取る。その命令に応答して、プロセッサは、例えば、細胞投入バッグから細胞をバイオリアクター内に導入するための一連のステップを実行する。
【0020】
本発明の実施形態に係る細胞増殖システム(CES)の一例が、図1Aに概略的に示される。用語「CES」及び「システム」は交換可能に使用される。CES10は、第1流体循環路12と第2流体循環路14とを有する。実施形態によれば、第1流体流路16は、中空糸型細胞成長チャンバー24(「バイオリアクター」とも呼ばれる)に流体的に関連付けられた少なくとも両端部18、20を有する。詳細には、端部18は、細胞成長チャンバー24の第1入口22と流体的に関連付けられ、端部20は、細胞成長チャンバー24の第1出口28と流体的に関連付けられる。第1循環路12において、流体は、細胞成長チャンバー24に配置された中空糸膜117(図1B参照)の中空糸116(図1B参照)の内部を通る(細胞成長チャンバー及び中空糸膜は以下でより詳細に説明される)。また、第1流量制御装置30が、第1流体流路16に動作可能に接続され、第1循環路12における流体の流れを制御する。
【0021】
第2流体循環路14は、第2流体流路34と、細胞成長チャンバー24と、第2流量制御装置32と、を有する。実施形態によれば、第2流体流路34は、少なくとも両端部36、38を有する。第2流体流路34の端部36は、細胞成長チャンバー24の入口ポート40に、端部38は、出口ポート42にそれぞれ流体的に関連付けられる。細胞成長チャンバー24を流れる流体は、細胞成長チャンバー24の中空糸膜117(図1B参照)の外側と接触する。中空糸膜は、複数の中空糸を備える。第2流体循環路14は、第2流量制御装置32と動作可能に接続される。
【0022】
このように、第1及び第2流体循環路12、14は、中空糸膜117(図1B参照)によって、細胞成長チャンバー24において分離されている。第1流体循環路12の流体は、細胞成長チャンバー24において中空糸の毛細管内側(IC)空間を流れる。従って、第1流体循環路12は「ICループ」と呼ばれる。第2流体循環路14の流体は、細胞成長チャンバー24において中空糸の毛細管外側(EC)空間を流れる。従って、第2流体循環路14は「ECループ」と呼ばれる。実施形態によれば、第1流体循環路12の流体は、第2流体循環路14の流体の流れに対して、並流方向又は逆流方向のどちらを流れてもよい。
【0023】
流体入口路44は、第1流体循環路12に流体的に関連付けられる。流体入口路44によって、流体は第1流体循環路12に導入され、流体出口路46によって、流体は、CES10から排出される。第3流量制御装置48が、流体入口路44に動作可能に関連付けられる。或いは、第3流量制御装置48は、第1出口路46に関連付けられてもよい。
【0024】
実施形態によれば、ここで使用される流量制御装置としては、ポンプ、バルブ、クランプ、又はそれらの組み合わせが可能である。複数のポンプ、複数のバルブ、複数のクランプを、任意に組み合わせて配置してもよい。種々の実施形態において、流量制御装置は、蠕動ポンプであるか又は蠕動ポンプを含む。他の実施形態において、流体循環路、入口ポート、出口ポートは、任意の材料の配管で構成されてよい。
【0025】
種々の部材に対して、「動作可能に関連付けられた」と記載されているが、ここで使用される「動作可能に関連付けられた」とは、動作可能な方式で互いに連結された部材を指し、部材が直接連結されている実施形態や、2つの連結された部材の間に別の部材が配置されている実施形態等も包含する。「動作可能に関連付けられた」部材は、「流体的に関連付けられる」ことができる。「流体的に関連付けられた」とは、流体が部材間を移動可能なように互いに連結された部材を指す。「流体的に関連付けられた」という用語は、2つの流体的に関連付けられた部材間に別の部材を配置する実施形態や、部材を直接接続する実施形態等を包含する。流体的に関連付けられた部材は、流体と接触しないが他の部材と接触することにより、システムを操作する部材を含んでもよい(例えば、可撓性の管の外側を圧縮することにより、該管を介して流体をポンピングする蠕動ポンプ等)。
【0026】
一般に、緩衝液、タンパク質含有流体、細胞含有流体のように、如何なる種類の流体でも、循環路、入口路、出口路を流れることが可能である。本明細書で使用される用語「流体」「培地」「流体培地」は交換可能に使用される。
【0027】
図1Bは、本発明と共に使用される中空糸型細胞成長チャンバー100の一例を示す正面図である。細胞成長チャンバー100は、長手方向軸LA-LAを有し、細胞成長チャンバー筐体104を備える。少なくとも1つの実施形態において、細胞成長チャンバー筐体104は、4つの開口部又は4つのポート、すなわち、IC入口ポート108、IC出口ポート120、EC入口ポート128、EC出口ポート132を有する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、第1循環路内の流体は、細胞成長チャンバー100の第1長手方向端112におけるIC入口ポート108を通って細胞成長チャンバー100に進入し、中空糸膜117を構成する複数の中空糸116の毛細管内側(種々の実施形態において、中空糸膜の毛細管内(「IC」)側又は「IC空間」と呼ぶ)に進入して通過し、細胞成長チャンバー100の第2長手方向端124に位置するIC出口ポート120を通って細胞成長チャンバー100の外に出る。IC入口ポート108とIC出口ポート120との間の流路は、細胞成長チャンバー100のIC部分126を構成する。第2循環路内の流体は、EC入口ポート128を通って細胞成長チャンバー100に進入し、中空糸116の毛細管外側又は外側(該膜の「EC側」又は「EC空間」と呼ぶ)に接触して、EC出口ポート132を通って細胞成長チャンバー100の外に出る。EC入口ポート128とEC出口ポート132との間の流路は、細胞成長チャンバー100のEC部分136を構成する。EC入口ポート128を通って細胞成長チャンバー100に入った流体は、中空糸116の外側に接触する。小分子(例えば、イオン、水、酸素、乳酸塩等)は、中空糸116を通じて中空糸の内部すなわちIC空間から外側すなわちEC空間へ、又はEC空間からIC空間へ拡散することができる。成長因子のような高分子量の分子は、通常は、大きすぎるため中空糸膜を通過できず、中空糸116のIC空間内にとどまる。実施形態において、培地は、必要であれば交換してもよい。また、必要であれば、培地を酸素供給器(oxygenator)又はガス移送モジュールを通じて循環させて、ガスを交換してもよい。実施形態において、以下で説明するが、細胞は、第1循環路及び/又は第2循環路内に含有させることができ、膜のIC側及び/又はEC側に存在させることができる。
【0029】
中空糸膜117を作製するために使用される材料は、中空糸になるものであれば、任意の生体適合性高分子材料でよい。本発明の一実施形態によれば、使用される材料の1つとしては、合成ポリスルホン系材料が挙げられる。細胞を中空糸の表面に付着させるため、実施形態によれば、表面は何らかの方法で修飾されてよい。例えば、少なくとも細胞成長表面をフィブロネクチン(FN)やコラーゲンのようなタンパク質でコーティングすることによって、或いは、表面を放射線で照射することによって、表面は修飾されてよい。膜表面のガンマ線処理によって、フィブロネクチンやクリオプレシピテート(cryoprecipitate)等で追加コーティングをすることなく、付着性細胞を付着させることができる。ガンマ照射処理された膜で作製されたバイオリアクターは再利用することができる。本開示の実施形態において、細胞付着のためのその他のコーティング及び/又は処理が行われてもよい。
【0030】
実施形態において、CES(例えば、CES500(図5)及び/又はCES600(図6))は、回転方向及び/又は横方向揺動装置に取り付けることによって、細胞増殖システムの他の部品に対して細胞成長チャンバーを動かす、すなわち「揺らす」ように構成された装置を有する。図1Cは、そのような装置の1つを示す。一実施形態では、該装置において、バイオリアクター100は、2つの回転方向揺動部品と1つの横方向揺動部品とに回転するように接続されている。
【0031】
第1回転方向揺動装置部品138は、バイオリアクター100を、バイオリアクター100の中心軸142を中心に回転させる。回転方向揺動装置部品138は、バイオリアクター100に、回転するように関連付けられる。実施形態において、バイオリアクター100は、中心軸142を中心に、単一の方向(時計回り方向又は反時計回り方向)に連続して回転することができる。或いは、バイオリアクター100は、例えば、中心軸142を中心に、最初は時計回り、続いて反時計回りのように、交互に回転させることも可能である。
【0032】
CESはまた、バイオリアクター100を回転軸144中心に回転させる第2回転方向揺動部品を有する。回転軸144は、バイオリアクター100の中心点を通り、中心軸142に対して垂直である。実施形態において、バイオリアクター100は、回転軸144を中心に、時計回り方向又は反時計回り方向のいずれかの単一方向に連続回転可能である。或いは、バイオリアクター100は、回転軸144を中心に、例えば、最初は時計回り、続いて反時計回りのように、交互に回転させることが可能である。種々の実施形態において、バイオリアクター100を、回転軸144を中心に回転させることが可能であり、重力に対して水平方向姿勢に又は垂直方向姿勢に配置することができる。
【0033】
実施形態において、横方向揺動部品140は、バイオリアクター100と横方向に動くように関連付けられる。実施形態において、横方向揺動部品140の平面は、x方向及びy方向に動く。これにより、バイオリアクターにおける細胞の沈殿は、中空糸内の細胞含有培地の動きによって、減らされる。
【0034】
揺動装置の回転方向及び/又は横方向の動きによって、装置内における細胞の沈殿が減らされ、また、バイオリアクターのある部分に細胞が捕獲される可能性も抑えられる。細胞成長チャンバーにおける細胞の沈殿速度は、ストークスの式に従って、細胞と懸濁培地との密度差に比例する。ある実施形態において、上述のように、180°回転(速い)と休止(例えば、合計時間30秒)を繰り返すことにより、非接着性の赤血球の懸濁状態が維持される。一実施形態では、約180°の最小回転が好ましい。しかしながら、360°以上の回転を行うこともできる。異なる揺動部品を別個に又は組み合わせて使用してもよい。例えば、バイオリアクター100を中心軸142中心に回転させる揺動部品を、バイオリアクター100を軸144中心に回転させる揺動部品と組み合わせることができる。同様に、異なる軸を中心に時計回り及び反時計回りを独立に組み合わせて行うこともできる。
【0035】
図2において、本発明の実施形態に係る、プリマウントタイプの流体輸送組立体を有する細胞増殖システム200の実施形態が示される。CES200は、細胞増殖装置202を有する。細胞増殖装置202は、細胞増殖装置202の後側部分206と係合するハッチ又は閉可能なドア204を有する。細胞増殖装置202内の内部空間208は、プリマウントタイプの流体輸送組立体を受容し係合固定するような特徴を有する。プリマウントタイプの流体輸送組立体210は、細胞増殖装置202に取り外し可能に取り付けられており、細胞増殖装置202において、使用された流体輸送組立体210を、新しい又は未使用の流体輸送組立体210に比較的迅速に交換できるようになっている。単一の細胞増殖装置202の動作によって、第1の流体輸送組立体210を用いて細胞の第1のセットを成長又は増殖させ、その後、第1の流体輸送組立体210を第2の流体輸送組立体210に交換する際に細胞増殖装置202を殺菌することなく、第2の流体輸送組立体210を用いて細胞の第2のセットを成長又は増殖させることができる。プリマウントタイプの流体輸送組立体210は、バイオリアクター100と酸素供給器又はガス移送モジュール212(図4参照)を有してよい。流体輸送組立体210に接続される種々の培地用配管を受容する実施形態に係る配管案内スロットが214として示される。
【0036】
図3は、本発明の実施形態に係る、プリマウントタイプの流体輸送組立体210(図2参照)を取り外し可能に取り付ける前の、細胞成長装置202の後側部分206を示す。閉可能なドア204(図2参照)は、図3では省略されている。細胞増殖装置202の後側部分206には、流体輸送組立体210の構成要素と組み合わせて動作する複数の異なる構造が設けられている。詳細には、細胞増殖装置202の後側部分206は、流体輸送組立体210におけるポンプループと協働する複数の蠕動ポンプ(IC循環ポンプ218、EC循環ポンプ220、IC入口ポンプ222、EC入口ポンプ224)を有する。また、細胞増殖装置202の後側部分206は、複数のバルブ(IC循環バルブ226、試薬バルブ228、IC培地バルブ230、空気除去バルブ232、細胞入口バルブ234、洗浄バルブ236、分配バルブ238、EC培地バルブ240、IC廃棄バルブ242、EC廃棄バルブ244、収穫バルブ246)を有する。さらに、複数のセンサ(IC出口圧力センサ248、IC入口圧力/温度センサ250、EC入口圧力/温度センサ252、EC出口圧力センサ254)が、細胞増殖装置202の後側部分206に関連付けられる。一実施形態によれば、さらに、空気除去チャンバー(ARC)のための光学センサ256が示されている。
【0037】
実施形態によれば、バイオリアクター100を回転させるための軸又はロッカー制御部258が示されている。軸又はロッカー制御部258と関連付けられた軸嵌合部260によって、細胞増殖装置202の後側部分206に対して、流体輸送組立体210又は流体輸送組立体400の軸アクセス開口部(例えば、配管収納部300(図4)の開口部424(図4))の適切な位置合わせが行える。軸又はロッカー制御部258の回転によって、軸嵌合部260及びバイオリアクター100に対して回転運動が付与される。従って、CES200のオペレータ又はユーザが、新しい又は未使用の流体輸送組立体400(図4)を、細胞増殖装置202に取り付ける際、位置合わせは、軸嵌合部260に対して、流体輸送組立体210又は流体輸送組立体400の軸アクセス開口部(例えば、図4の開口部424)を適切に方向付けるといった比較的簡単な作業となる。
【0038】
図4は、取り付け・取り外し自在のプリマウントタイプの流体輸送組立体400の斜視図である。プリマウントタイプの流体輸送組立体400は、細胞増殖装置202(図2及び図3)に取り外し可能に取り付けられており、細胞増殖装置202において、使用された流体輸送組立体400を、新しい又は未使用の流体輸送組立体400に比較的迅速に交換できるようになっている。図4に示されるように、バイオリアクター100は、軸嵌合部402を含むバイオリアクターカップリングに取り付けられる。軸嵌合部402は、細胞増殖装置202の軸(図3では258)を係合させるための1以上の軸締結機構(付勢された腕部又はバネ部材404)を有する。
【0039】
実施形態によれば、流体輸送組立体400は、配管408A、408B、408C、408D、408E等及び管継手を有する。これらにより、以下で説明されるように、図5図6に示されるような流体路が提供される。ポンプループ406A、406Bもポンプのために設けられる。実施形態において、細胞増殖装置202が配置される場所に、種々の培地が設けられてもよいが、実施形態によれば、プリマウントタイプの流体輸送組立体400は、細胞増殖装置202の外部に延在する程度に十分な長さの配管を有することで、培地バッグ又は培地容器に関連付けられた配管が溶着接続されることが可能となる。
【0040】
次に、図5は、細胞増殖システム500の実施形態の概略図である。図6は、他の実施形態である細胞増殖システム600の概略図である。図5及び図6に示される実施形態では、以下で説明するように、細胞は、IC空間で成長される。しかしながら、本発明は、そのような例に限定されない。他の実施形態では、細胞はEC空間で成長されてもよい。
【0041】
図5は、実施形態に係るCES500を示している。CES500は、第1流体循環路502(「毛細管内側ループ」又は「ICループ」とも呼ぶ)と第2流体循環路504(「毛細管外側ループ」又は「ECループ」とも呼ぶ)とを有する。第1流体流路506は、細胞成長チャンバー501に流体的に関連付けられて、第1流体循環路502を構成する。流体は、IC入口ポート501Aを介して細胞成長チャンバー501に流入し、細胞成長チャンバー501内の中空糸を通って、IC出口ポート501Bを介して流出する。圧力測定器510は、細胞成長チャンバー501を離れる培地の圧力を測定する。培地は、培地流量を制御するために用いられるIC循環ポンプ512を介して、流れる。IC循環ポンプ512は、第1方向又は第1方向の反対の第2方向に、流体をポンピング可能である。出口ポート501Bは、逆方向では、入口として使用することができる。ICループに流入する培地は、バルブ514を介して流入することができる。当業者であれば理解できるように、追加のバルブ、圧力測定器、圧力/温度センサ、ポート及び/又は他の装置を種々の位置に配置して、流体経路のある部分において、培地を隔離し及び/又は該培地の特性を測定することもできる。従って、示される概略図は、CES500の複数の要素に対する1つの可能な構成であり、1以上の実施形態の範囲において、変形可能であると理解されるべきである。
【0042】
ICループ502に対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート516又はサンプルコイル518から得られる。第1流体循環路502に配置された圧力/温度測定器520によって、動作中において、培地圧力及び温度が測定できる。そして、培地は、IC入口ポート501Aに戻って、流体循環路502を完了する。細胞成長チャンバー501で成長/増殖した細胞は、細胞成長チャンバー501から流し出され、バルブ598を通って収穫バッグ599に入るか、中空糸内に再分配され、さらに成長される。
【0043】
第2流体循環路504において、流体は、EC入口ポート501Cを介して、細胞成長チャンバー501に入り、EC出口ポート501Dを介して細胞成長チャンバー501を離れる。ECループ504では、培地は、細胞成長チャンバー501の中空糸の外側と接触し、それによって、小分子の中空糸への及び中空糸からの拡散が可能となる。
【0044】
実施形態において、培地が細胞成長チャンバー501のEC空間に入る前に、第2流体循環路504に配置された圧力/温度測定器524によって、該培地の圧力及び温度が測定可能である。培地が細胞成長チャンバー501を離れた後、圧力測定器526によって、第2流体循環路504の培地の圧力が測定可能である。ECループに対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート530から又はサンプルコイルから得られる。
【0045】
実施形態において、細胞成長チャンバー501のEC出口ポート501Dを離れた後、第2流体循環路504の流体は、EC循環ポンプ528を通って、酸素供給器又はガス移送モジュール532に至る。EC循環ポンプ528は、両方向に流体をポンピング可能である。第2流体流路522は、酸素供給器入口ポート534及び酸素供給器出口ポート536を介して酸素供給器又はガス移送モジュール532と流体的に関連付けられている。動作中は、流体培地は、酸素供給器入口ポート534を介して、酸素供給器又はガス移送モジュール532に流入し、酸素供給器出口ポート536を介して、酸素供給器又はガス移送モジュール532から流出する。酸素供給器又はガス移送モジュール532は、例えば、CES500における培地に対して、酸素を付加し、気泡を除去する。種々の実施形態において、第2流体循環路504における培地は、酸素供給器又はガス移送モジュール532に入るガスと平衡状態にある。酸素供給器又はガス移送モジュール532は、適当なサイズの任意の酸素供給器又はガス移送装置でよい。空気又はガスは、フィルタ538を介して酸素供給器又はガス移送モジュール532に流入し、フィルタ540を介して、酸素供給器又はガス輸送装置532から流出する。フィルタ538、540は、酸素供給器又はガス移送モジュール532及び関連する培地の汚染を減少又は防止する。プライミング工程の一部を行っている際にCES500からパージされた空気又はガスは、酸素供給器又はガス移送モジュール532を介して大気にベント可能である。
【0046】
CES500を含む構成において、第1流体循環路502及び第2流体循環路504における流体培地は、同じ方向で(並流構成で)細胞成長チャンバー501を流れる。CES500は、対向流で流れるように構成してもよい。
【0047】
少なくとも1つの実施形態において、(バッグ562からの)細胞を含む培地及びバッグ546からの流体培地は、第1流体流路506を介して第1流体循環路502に導入される。流体容器562(例えば、細胞投入バッグ又は空気をシステム外にプライミングするための生理食塩水プライミング流体)は、バルブ564を介して、第1流体流路506及び第1流体循環路502に流体的に関連付けられる。
【0048】
流体容器(又は培地バッグ)544(例えば、試薬)は、バルブ548を介して第1流体入口路542に、又はバルブ576を介して第2流体入口路574に流体的に関連付けられ、流体容器546(例えば、IC培地)は、バルブ550を介して第1流体入口路542に、又はバルブ570を介して第2流体入口路574に流体的に関連付けられる。また、滅菌され密封可能な第1及び第2入力プライミング路508、509が設けられる。空気除去チャンバー(ARC)556が、第1循環路502に流体的に関連付けられる。空気除去チャンバー556は、1以上の超音波センサを有してもよい。該センサには、空気除去チャンバー556内における特定の測定点において、空気、流体の不足、及び/又はガス/流体境界、例えば、空気/流体境界、を検知するための上部センサ及び下部センサが含まれる。例えば、空気除去チャンバー556の底部近傍及び/又は頂部近傍で、超音波センサを用いて、それらの場所における空気、流体、及び/又は空気/流体境界を検知することができる。実施形態において、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、他のタイプのセンサを使用することができる。例えば、本開示の実施形態に従って、光学センサを使用してもよい。プライミング工程の一部又はその他のプロトコルを行っている際にCES500からパージされる空気又はガスは、空気除去チャンバー556と流体的に関連付けられたライン558を通って、エアバルブ560から大気中へベント可能である。
【0049】
(例えば、バッグ568からの)EC培地又は(例えば、バッグ566からの)洗浄液が第1流体流路又は第2流体流路に加えられる。流体容器566は、バルブ570と流体的に関連付けられる。バルブ570は、分配バルブ572及び第1流体入口路542を介して第1流体循環路502と流体的に関連付けられる。また、バルブ570を開け、分配バルブ572を閉じることにより、流体容器566は、第2流体入口路574及びEC入口路584を介して第2流体循環路504と流体的に関連付けることができる。同様に、流体容器568は、バルブ576と流体的に関連付けられる。バルブ576は、第1流体入口路542及び分配バルブ572を介して第1流体循環路502と流体的に関連付けられる。また、バルブ576を開け、分配バルブ572を閉じることにより、流体容器568は、第2流体入口路574と流体的に関連付けることができる。
【0050】
培地試薬の導入又は洗浄液の導入のために、オプションで熱交換器552を設けてもよい。
【0051】
ICループにおいて、流体はまず、IC入口ポンプ554によって送られる。ECループでは、流体はまず、EC入口ポンプ578によって送られる。超音波センサのようなエア検知器580がEC入口路584と関連付けられてもよい。
【0052】
少なくとも1つの実施形態において、第1及び第2流体循環路502、504は、廃棄ライン588と接続される。バルブ590を開けると、IC培地は、廃棄ライン588を流れ、廃棄物バッグ又は出口バッグ586に至る。同様に、バルブ582を開けると、EC培地は、廃棄ライン588を介して廃棄物バッグ又は出口バッグ586に流れる。
【0053】
実施形態において、細胞は、細胞収穫路596を通って収穫される。ここでは、細胞成長チャンバー501からの細胞は、細胞収穫路596及びバルブ598を通るように、細胞を含むIC培地をポンピングして、細胞収穫バッグ599へ送ることによって、収穫される。
【0054】
CES500の種々の構成要素は、細胞増殖装置202(図2図3参照)のような装置又はハウジング内に収納される。そこでは、該装置が、細胞及び培地を、例えば、所定の温度に維持する。
【0055】
図6は、細胞増殖システム600の他の実施形態の概略図である。CES600は、第1流体循環路602(「毛細管内側ループ」又は「ICループ」とも呼ぶ)と第2流体循環路604(「毛細管外側ループ」又は「ECループ」とも呼ぶ)とを有する。第1流体流路606は、細胞成長チャンバー601に流体的に関連付けられて、第1流体循環路602を構成する。流体は、IC入口ポート601Aを介して細胞成長チャンバー601に流入し、細胞成長チャンバー601内の中空糸を通って、IC出口ポート601Bを介して流出する。圧力センサ610は、細胞成長チャンバー601を離れる培地の圧力を測定する。圧力の他に、センサ610は、作動中において、培地圧力及び培地温度を検知する温度センサであってもよい。培地は、培地流量を制御するために用いられるIC循環ポンプ612を介して、流れる。IC循環ポンプ612は、第1方向又は第1方向の反対の第2方向に、流体をポンピング可能である。出口ポート601Bは、逆方向では、入口として使用することができる。ICループに流入する培地は、バルブ614を介して流入することができる。当業者であれば理解できるように、追加のバルブ、圧力測定器、圧力/温度センサ、ポート及び/又は他の装置を種々の位置に配置して、流体経路のある部分において、培地を隔離し及び/又は該培地の特性を測定することもできる。従って、示される概略図は、CES600の複数の要素に対する1つの可能な構成であり、1以上の実施形態の範囲において、変形可能であると理解されるべきである。
【0056】
ICループに対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルコイル618から得られる。そして、培地は、IC入口ポート601Aに戻って、流体循環路602を完了する。細胞成長チャンバー601で成長/増殖した細胞は、細胞成長チャンバー601から流し出され、バルブ698及びライン697を介して収穫バッグ699に入る。或いは、バルブ698が閉じている場合、細胞は、チャンバー601に再分配され、さらに成長される。
【0057】
第2流体循環路604において、流体は、EC入口ポート601Cを介して、細胞成長チャンバー601に入り、EC出口ポート601Dを介して細胞成長チャンバー601を離れる。ECループでは、培地は、細胞成長チャンバー601の中空糸の外側と接触し、それによって、チャンバー601内における小分子の中空糸への及び中空糸からの拡散が可能となる。
【0058】
培地が細胞成長チャンバー601のEC空間に入る前に、第2流体循環路604に配置された圧力/温度センサ624によって、該培地の圧力及び温度を測定することができる。培地が細胞成長チャンバー601を離れた後に、センサ626によって、第2流体循環路604の培地の圧力及び/又は温度を測定することができる。ECループに対して、培地のサンプルは、動作中に、サンプルポート630から又はサンプルコイルから得られる。
【0059】
細胞成長チャンバー601のEC出口ポート601Dを離れた後、第2流体循環路604の流体は、EC循環ポンプ628を通って、酸素供給器又はガス移送モジュール632に至る。実施形態において、EC循環ポンプ628もまた、両方向に流体をポンピング可能である。第2流体流路622は、酸素供給器又はガス移送モジュール632の入口ポート632A及び出口ポート632Bを介して酸素供給器又はガス移送モジュール632と流体的に関連付けられている。動作中は、流体培地は、入口ポート632Aを介して、酸素供給器又はガス移送モジュール632に流入し、出口ポート632Bを介して、酸素供給器又はガス移送モジュール632から流出する。酸素供給器又はガス移送モジュール632は、例えば、CES600における培地に対して、酸素を付加し、気泡を除去する。種々の実施形態において、第2流体循環路604における培地は、酸素供給器又はガス移送モジュール632に入るガスと平衡状態にある。酸素供給器又はガス移送モジュール632は、酸素供給又はガス移送に有用な、適当なサイズの任意の装置でよい。空気又はガスは、フィルタ638を介して酸素供給器又はガス移送モジュール632に流入し、フィルタ640を介して、酸素供給器又はガス移送装置632から流出する。フィルタ638、640は、酸素供給器又はガス移送モジュール632及び関連する培地の汚染を減少又は防止する。プライミング工程の一部を行っている際にCES600からパージされた空気又はガスは、酸素供給器又はガス移送モジュール632を介して大気にベント可能である。
【0060】
CES600として示された該構成において、第1流体循環路602及び第2流体循環路604における流体培地は、同じ方向で(並流構成で)細胞成長チャンバー601を流れる。実施形態に係るCES600は、対向流で流れるように構成してもよい。
【0061】
少なくとも1つの実施形態において、(細胞容器、例えばバッグのようなソースからの)細胞を含む培地は、取り付け点662に取り付けられ、培地源からの流体培地は、取り付け点646に取り付けられる。細胞及び培地は、第1流体流路606を介して第1流体循環路602に導入される。取り付け点662は、バルブ664を介して、第1流体流路606と流体的に関連付けられる。取り付け点646は、バルブ650を介して、第1流体流路606と流体的に関連付けられる。試薬源を、点644に流体的に接続して、バルブ648を介して流体入口路642に関連付けてもよいし、又はバルブ648、672を介して第2流体入口路674に関連付けてもよい。
【0062】
空気除去チャンバー(ARC)656が、第1循環路602に流体的に関連付けられる。空気除去チャンバー656は、1以上のセンサを有してもよい。該センサには、空気除去チャンバー656内における特定の測定点において、空気、流体の不足、及び/又はガス/流体境界、例えば、空気/流体境界、を検知するための上部センサ及び下部センサが含まれる。例えば、空気除去チャンバー656の底部近傍及び/又は頂部近傍で、超音波センサを用いて、それらの場所における空気、流体、及び/又は空気/流体境界を検知することができる。実施形態において、本開示の範囲を逸脱しない範囲で、他のタイプのセンサを使用することができる。例えば、本開示の実施形態に従って、光学センサを使用してもよい。プライミング工程の一部又はその他のプロトコルを行っている際にCES600からパージされる空気又はガスは、空気除去チャンバー656と流体的に関連付けられたライン658を通って、エアバルブ660から大気中へベント可能である。
【0063】
EC培地源が、EC培地取り付け点668に取り付けられる。洗浄液源が、洗浄液取り付け点666に取り付けられる。これにより、EC培地及び/又は洗浄液が第1流体流路又は第2流体流路に加えられる。取り付け点666は、バルブ670と流体的に関連付けられる。バルブ670は、バルブ672及び第1流体入口路642を介して第1流体循環路602と流体的に関連付けられる。また、バルブ670を開け、バルブ672を閉じることにより、取り付け点666は、第2流体入口路674及び第2流体流路684を介して第2流体循環路604と流体的に関連付けることができる。同様に、取り付け点668は、バルブ676と流体的に関連付けられる。バルブ676は、第1流体入口路642及びバルブ672を介して第1流体循環路602と流体的に関連付けられる。また、バルブ676を開け、分配バルブ672を閉じることにより、流体容器668は、第2流体入口路674と流体的に関連付けることができる。
【0064】
ICループにおいて、流体はまず、IC入口ポンプ654によって送られる。ECループでは、流体はまず、EC入口ポンプ678によって送られる。超音波センサのようなエア検知器680がEC入口路684と関連付けられてもよい。
【0065】
少なくとも1つの実施形態において、第1及び第2流体循環路602、604は、廃棄ライン688と接続される。バルブ690を開けると、IC培地は、廃棄ライン688を流れ、廃棄物バッグ又は出口バッグ686に至る。同様に、バルブ692を開けると、EC培地は、廃棄物バッグ又は出口バッグ686に流れる。
【0066】
細胞が細胞成長チャンバー601にて成長した後、該細胞は、細胞収穫路697を介して収穫される。細胞成長チャンバー601からの細胞は、バルブ698を開けた状態において、細胞を含むIC培地をポンピングすることにより、細胞収穫路697を介して、細胞収穫バッグ699に収穫される。
【0067】
CES600の種々の構成要素は、細胞増殖装置202(図2図3参照)のような装置又はハウジング内に収納される。そこでは、該装置が、細胞及び培地を、例えば、所定の温度に維持する。さらに、CES600及びCES500(図5参照)の構成要素は、組み合わせられてもよい。他の実施形態において、CESは、図5及び図6に示されるよりも、本発明の範囲内において、少ない構成要素又は多い構成要素を含んでもよい。本発明の特徴を含む細胞増殖システムの一例としては、Terumo BCT社(コロラド州 レイクウッド)によって製造されている、Quantum(登録商標)細胞増殖システムが挙げられる。
【0068】
細胞増殖システムの実施例及び詳細な説明は、米国特許第8,309,347号明細書(「細胞増殖システム及び使用方法」2012年11月13日発行)に与えられている。該米国特許出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0069】
細胞増殖システム及び該システムと関連付けられた方法の種々の実施形態が記載されてきたが、図7では、本開示の実施形態に係る、CES500(図5)又はCES600(図6)のような細胞増殖システムと一緒に使用される、放出成分を製造、純化及び/又は収集するためのプロセスの動作ステップ700の例が示される。STARTステップ702が開始すると、プロセス700は、バイオリアクターに細胞を播種するステップ704に進む。実施形態において、細胞は0日目(Day0)に播種される。ある実施形態では、MSCsが播種される。当業者であれば理解できるように、所望の細胞生産物(例えばEVやウイルスベクター等)を放出するのであれば、任意の細胞を用いることができる。
【0070】
次に、一実施形態によれば、コンフルエントになるまで、細胞を培地で増殖させる(ステップ706)。他の実施形態では、所望の数の細胞倍加数が起こるまで細胞を増殖させる(例えば、細胞倍加1回、細胞倍加2回、細胞倍加3回、細胞倍加4回、細胞倍加5回、細胞倍加6回以上等)。他の実施形態では、細胞は、特定の期間にわたって増殖されてもよい。例えば、細胞は、約24時間~約48時間の期間にわたって増殖させることができる。他の実施形態では、細胞は、約48時間~約72時間の間、増殖させることができる。他の実施形態において、細胞は、約24時間~約72時間の期間にわたって増殖させることができる。実施形態では、このような増殖は、例えば1日目~3日目に起こる。他の実施形態によれば、細胞は、約24時間未満の時間にわたって増殖される。他の実施形態では、72時間を超える時間にわたって細胞を増殖させることができる。例えば、一実施形態では、エクソソームを収集する前に、細胞を約7日間~約8日間増殖させることができる。本開示の実施形態に従って、任意の期間が使用される。
【0071】
細胞は、例えば、完全培地で増殖させることができる(ステップ706)。一実施形態では、培地は、アルファ-MEM(α-MEM)と血清のような、血清含有培地を含む。一実施形態では、動物由来血清を使用することができる。他の実施形態では、ヒト由来の血清を使用することができる。他の実施形態では、合成血清を使用することができる。さらに他の実施形態では、別のタイプの血清を使用することができる。血清含有培地の例には、α-MEM+GlutaMAX+10%ウシ胎児血清(FBS)が含まれる。さらなる実施形態では、無血清培地を使用することができる。当業者に公知の任意のタイプの培地を使用することができる。
【0072】
図7に戻って、次に、プロセス700は、血清含有培地等の第1培地を洗い流すための任意ステップ708に進む。一実施形態では、血清含有培地は、第2培地、例えば基礎培地、に置換される。基礎培地の例には、α-MEM+GlutaMAXが含まれる。当業者に公知の任意のタイプの培地を使用することができる。放出される成分を(血清又は他のタンパク質源にも存在するものとは対照的に)増殖している細胞から単離又は精製するために、洗い流し洗浄手順によって、実施形態に従って、血清(例えば、血清タンパク質)が除去される。一実施形態では、洗浄手順は、3日目に行われる。一実施形態では、例えば、動物由来の血清が使用されない場合、ヒト由来の血清のみが使用される場合、無血清培地が使用される場合、及び/又は、例えば、除去されるべき他の追加のタンパク質源がない場合は、ステップ708の実行は任意である。
【0073】
次に、プロセス700は、放出された構成要素又は物質(例えば、EV又はウイルスベクター等)をループ(例えばICループ)において収集するステップ710に進む。一実施形態では、このような収集は、IC出口を閉じる(例えば、IC出口バルブを閉じる)ことによって放出された構成要素又は物質(例えば、EV又はウイルスベクター等)を、ICループ内で濃縮することによって行われる。そのような濃縮は、規定された期間にわたって行われる。一実施形態では、このような時間は、放出された構成成分をICループ内で約48時間濃縮することを含む。他の実施形態では、このような期間は、放出された成分を約24時間~約48時間濃縮することを含むことができる。他の実施形態では、このような期間は、放出された成分を約24時間~約72時間濃縮することを含むことができる。他の実施形態では、このような期間は、放出された構成成分を約48時間~約72時間濃縮することを含むことができる。一実施形態では、このような期間は、放出された成分を約72時間より長く濃縮することを含むことができる。一実施形態では、このような収集は、例えば3日目~5日目に行われる。さらに他の実施形態では、このような期間は、放出された成分を約24時間未満で濃縮することを含むことができる。任意の期間を、本開示の実施形態に従って使用することができる。そのような収集期間中、細胞には、タンパク質を含まない培地が補充される。そのような培地は、EC側から添加され、半透過性膜を通して拡散される。他の実施形態では、培地はIC側から添加され、例えば、タンパク質を含まない培地が細胞に補充される。
【0074】
IC(又はEC)ループ内において放出された成分を収集した後、プロセス700は、放出された成分を収穫するステップ712に進む。一実施形態では、このような収穫は、例えば5日目に行われる。一実施形態では、放出された成分(例えば、EV又はウイルスベクター等)は、懸濁状態で、バイオリアクターの毛細管内側循環ループから収穫バッグ又は収穫容器に移される。一実施形態では、タンパク質を含まない培地が、このような収穫タスクにおいて使用される。
【0075】
次に、プロセス700は、オプションステップである、追加処理を行うステップ714に進む。ここでは、例えば、収穫された放出成分が、分析のために処理される。他の実施形態では、追加処理を行うステップ714は、収穫バッグに収集された培地から放出物質をさらに濃縮することを含むことができる。他の実施形態では、追加処理を行うステップ714は、バッグ内の他の成分(例えば、懸濁細胞が使用されて、放出物質と一緒に収穫された場合の細胞)から、放出物質を分離することを含むことができる。一実施形態では、このような追加処理を行うステップ714は、放出された成分のさらなる単離及び/又は特徴付けを含み得る。オプションである追加処理を行うステップ714から、プロセス700は、終了ステップ716で終了する。或いは、オプションである追加処理を行うステップ714に対する希望がない場合は、プロセス700は、収穫ステップ712から終了ステップ716へ直接進み、終了することができる。
【0076】
次に、図8が、設定例及び培地導入例と共に説明される。しかしながら、本明細書に提示された実施形態はこの例に限定されず、他の要件又はシステム設計又は構成を満たすように実施形態を修正することができる。STARTステップ802が開始され、プロセス800は、ディスポーザブルチュービングセットを細胞増殖システムに装填するステップ804に進む。
【0077】
次に、システムは、ステップ806において、プライミングされる。一実施形態では、例えば、ユーザ又はオペレータは、プライミングのためのタスクを選択することによってプライミングするようにシステムに指示を提供することができる。一実施形態では、プライミングのためのそのようなタスクは、予めプログラムされたタスクであってもよい。システム500(図5)又はシステム600(図6)は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でプライミングすることができる。バイオリアクター501、601をプライミングするために、バッグ(546)が、システム500、600に(例えば、接続点646に)取り付けられる。図中の符号を参照する際、例えば「参照符号、参照符号」(例えば、500、600)となっている場合、そのような表現形式は、「参照符号及び/又は参照符号」(例えば、500及び/又は600)を意味する。バルブ550、650が開けられる。次いで、PBSを第1の流体循環路502、602内にポンプ注入するようにIC入口ポンプ554、654を設定することによって、PBSを第1流体循環路502、602に導く。バルブ614が開けられ、PBSは、入口501A、601Aを通って、バイオリアクター601に入り、出口501B、601Bから出る。一実施形態によれば、空気除去チャンバー556、656によって空気が除去されながら、バイオリアクター501、601及び/又は第1流体循環路502、602に培地が入り、バイオリアクター501、601がプライミングされる。
【0078】
バイオリアクター501、601をさらにプライミングするために、バッグ586が、システム500、600に(例えば、接続点668に)取り付けられる。バルブ576、676が開けられる。次いで、PBSを第1流体循環路504、604内にポンプ注入するようにIC入口ポンプ554、654を設定することによって、PBSを第2流体循環路502、602に導くことができる。バルブ692を閉じて、PBSは、入口501C、601Cを通り、バイオリアクター601に入り、ECループの出口501D、601Dから出る。一実施形態によれば、空気除去チャンバー580、680によって空気が除去されながら、バイオリアクター501、601及び/又は第2流体循環路504、604に培地が入り、バイオリアクター501、601はプライミングされる。
【0079】
次いで、プロセス800は、バイオリアクターをコーティングするステップ808に進む。ここでは、バイオリアクター501、601がコーティング剤、例えば、5mgのフィブロネクチン(FN)でコーティングされる。例えば、ある実施形態では、試薬バッグ544が空になるまで、試薬をICループ502、602内に(例えば、接続点644から)投入することができる。試薬544は、空気除去チャンバー556、656からICループ502、602内に流され、次いで、試薬544は、循環ポンプ512、612及び/又は入口ポンプ554、654を操作することによって、ICループ502、602内を循環する。当業者に知られている任意のコーティング試薬(例えば、FN又はクリオプレシピテート)を使用することができる。
【0080】
バイオリアクターをコーティングするためにシステム500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0081】
【表1】
【0082】
バイオリアクターのコーティングは、3段階で行われる。上記の溶液を導入する第1段階のためのシステム500、600に対する設定の例が、以下に示される。
【0083】
【表2】
【0084】
空気除去チャンバー556、656から試薬を流し込む、バイオリアクターをコーティングする第2段階のためのシステム500、600の設定の例が、以下に示される。
【0085】
【表3】
【0086】
ICループ502、602内において試薬を循環させる、バイオリアクターをコーティングする第3段階のためのシステム500、600の設定の例が、以下に示される。
【0087】
【表4】
【0088】
バイオリアクターがコーティングされると、ステップ810において、IC/EC洗浄タスクが実行される。ここでは、IC循環ループ502、602及びEC循環ループ504、604における流体が置換される。置換体積は、IC体積及びEC体積の置換回数によって決定される。IC/EC洗浄タスク中にCES500、600に導入される溶液の例が、次に示される。
【0089】
【表5】
【0090】
システム500、600のIC/EC洗浄タスクの設定の例が、以下に示される。
【0091】
【表6】
【0092】
次に、バイオリアクター膜内のファイバーにわたって適正又は所望のガス濃度を維持するために、培地調整タスク812を実行して、細胞がバイオリアクターに投入される前に、培地が提供されたガス供給と平衡に達するようにする。例えば、高いEC循環レートを使用することによって、培地と、ガス移送モジュール又は酸素供給器532、632によって提供されるガス供給との間の迅速な接触が行われる。次いで、例えば、ユーザ又はオペレータが細胞をバイオリアクター501、601にロードする準備が整うまで、システム500、600は適切な状態又は所望の状態に維持される。一実施形態では、CES500、600は、例えば、完全培地で調整される。完全培地は、細胞増殖のために使用される任意の培地源である。一実施形態において、完全培地は、例えば、アルファ-MEM(α-MEM)及びウシ胎児血清(FBS)を含む。当業者に公知の任意のタイプの培地を使用することができる。
【0093】
培地調整タスク812は、2段階プロセスである。第1ステップでは、システム500、600は、高いEC循環レートを使用することによって、培地とガス供給とを迅速に接触させる。第2ステップでは、システム500、600は、オペレータが細胞を投入する準備が整うまで、バイオリアクター501、601を適切な状態に維持する。培地調整タスク812の間に、CES500、600に投入される溶液の一例が、以下に示される。
【0094】
【表7】
【0095】
培地調整タスク812の第1ステップの設定の例が、以下に示される。
【0096】
【表8】
【0097】
培地調整タスク812の第2ステップの設定の例が、以下に示される。
【0098】
【表9】
【0099】
プロセス800は、次に、細胞投入バッグ562(接続点662)からバイオリアクター501、601に細胞を投入するステップ814に進む。細胞投入は3段階のプロセスであってよい。第1段階では、バッグ562が空になるまで、(接続点662における)セル投入バッグ562からバイオリアクター501、601へ、均一な懸濁液で細胞が投入される(ステップ814)。他の実施形態では、細胞は、例えばブルズアイ投入(bulls-eye loading)手順のような、別のタイプの投入手順によって投入されてもよい(ステップ814)。任意のタイプの投入手順が、実施形態に従って使用されてよい。第2段階では、細胞は、空気除去チャンバー556、656からバイオリアクター501、601に向かって流し込まれる。より大きな流し込み体積を利用する構成では、細胞は、拡がり、IC出口590、690に向かって移動することができる。第3段階では、IC循環を通じて(例えば、IC投入無しの状態のIC循環ポンプ514、614を通じて)、膜にわたった細胞の分散が促進される。
【0100】
細胞を投入するステップ814においてシステム500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0101】
【表10】
【0102】
上述したように、細胞投入ステップ814は、3つの段階で行われる。第1段階のためのシステム500、600に対する設定の一例が、以下に示される。
【0103】
【表11】
【0104】
第2段階のためのシステム500、600に対する設定の一例が、以下に示される。
【0105】
【表12】
【0106】
第3段階のためのシステム500、600に対する設定の一例が、以下に示される。
【0107】
【表13】
【0108】
さらに、細胞(例えば、接着性細胞)は、例えば中空糸に付着させることができる(816)。一実施形態では、細胞を付着させる際(816)、ICループ502、602に対するポンプ514、614の流量をゼロにした状態で、EC循環ループ504、604上でのフローを行いながら、接着性細胞をバイオリアクター膜に付着させることが可能である。膜に細胞を付着させるプロセス816においてCES500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0109】
【表14】
【0110】
システム500、600における膜への付着816のための設定例が以下に示される。
【0111】
【表15】
【0112】
細胞は、ステップ818でフィーディングされる。ある流量(例えば、低流量)がIC循環ループ502、602及び/又はEC循環ループ504、604に連続的に付加される。出口設定は、システム500、600に加えられる流体の除去を考慮した設定である。フィーディングステップ818において、システム500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0113】
【表16】
【0114】
システム500、600におけるフィーディングステップ818のための設定例が以下に示される。
【0115】
【表17】
【0116】
次に、プロセス800は、オプションのステップ820に進み、血清含有培地を洗い流し、基礎培地又はタンパク質を含まない培地に置換する。前の処理で、タンパク質を含まない培地を用いて細胞の投入、細胞へのフィーディング等を行った場合、ステップ820は行う必要はない。しかしながら、血清含有タンパク質が使用される場合は、放出された細胞生産物(例えば、EV又はウイルスベクター)の単離及び/又は収集を見込んで、例えば、細胞がコンフルエントに達した後、又は規定された期間後、又は所望の細胞倍加の数に達した後、洗浄手順820が開始される。
【0117】
例えば、最小2回の細胞倍加、3回の細胞倍加、4回の細胞倍加、5回の細胞倍加、6回以上の細胞倍加等の後に、放出された細胞生産物の精製及び/又は収集を開始することが望ましい。1又は複数のプロセスを行うことで、放出されたEV生成物の収集のために、システム500、600内の培地を浄化することができる。そのような浄化手順としては、5×IC・EC洗浄(5回のIC・EC洗浄)820、陰圧限外濾過洗浄822、IC・EC洗浄824、及び/又は別のタイプの洗浄手順がある。第1に、5×IC・EC洗浄820は、IC循環ループ502、602及びEC循環ループ504、604両方の流体を置換することを含む。ここで、置換体積は、置換されるIC体積及びEC体積の回数によって指定される。
【0118】
5×IC/EC洗浄タスク820において、システム500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0119】
【表18】
【0120】
システム500、600の5×IC/EC洗浄タスク820の設定例が以下に示される。
【0121】
【表19】
【0122】
さらに、オプションの陰圧限外濾過洗浄822は、陰圧限外濾過を使用してIC循環ループ502、602を洗浄して、中空糸のIC側に沈着した可能性のある成分をリフトオフするのを助けることができる。陰圧限外濾過822においてCES500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0123】
【表20】
【0124】
システム500、600の陰圧限外濾過822のための設定例を以下に示す。
【0125】
【表21】
【0126】
さらに、オプションステップであるIC・EC洗浄ステップ824を使用することにより、IC循環ループ502、602及びEC循環ループ504、604両方の流体を置換することができる。置換体積は、IC体積及びEC体積の置換回数によって指定される。そのような洗浄手順において、使用される培地は、例えば、基礎培地又はタンパク質を含まない培地である。オプションステップであるIC・EC洗浄824においてシステム500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0127】
【表22】
【0128】
システム500、600のIC・EC洗浄824のための設定例を以下に示す。
【0129】
【表23】
【0130】
上述のタスクは、カスタムタスク又はユーザ定義タスクである。他の構成では、そのようなタスクは、予めプログラムされたタスク又はデフォルトのタスクでもよい。他の実施形態では、そのようなタスクは、例えば、ユーザ又はオペレータによって手動で実行されてもよい。
【0131】
実施形態では、血清又は血清タンパク質の除去(例えば、完全な除去)を実証確認するため、システム500、600における総タンパク質は、洗浄手順中に、異なる時点で(例えば、5×洗浄の前、5×洗浄820の後、陰圧限外濾過822の後、基礎培地置換824の後に)、IC側(又は他の構成ではEC側)において測定される。さらに、例えば、動物由来の血清を使用しない場合、ヒト由来の血清のみを使用する場合、無血清培地を使用する場合、及び/又は除去すべき他のそのような追加タンパク質源がない場合は、ステップ820、822、及び/又はステップ824は、任意に行えばよい。
【0132】
一実施形態によれば、上記の方法の有効性は、図11のグラフ1100によって表される。グラフ1100は、上述した手順を実施するシステム500、600のようなシステムによって、もたらせ得るタンパク質の測定結果を表す。示されるように、システム500、600におけるタンパク質の量は、ライン1104によって表される。上記の手順820、822、824の前では、システム500、600におけるタンパク質の量は、ピーク1108(例えば、7000μg/mL以上)である。5×洗浄820の間、タンパク質の量は、ライン1104の部分1112によって表されるように、徐々に低下する。実際に、5×洗浄820の終わりでは、タンパク質濃度は、ライン1104の部分1116によって表されるように、略0μg/mLである。そのような場合には、例えば、陰圧限外濾過洗浄822も基礎培地置換824も行う必要はない。しかしながら、手順822、824は、一実施形態によれば、システム500、600においてタンパク質をさらに効果的に除去することができる。
【0133】
バイオリアクターから血清含有培地を洗い流した後、バイオリアクター502、602のEC側504、604に培地を添加し半透過性膜中を拡散させることで、規定の時間(例えば約48時間)、バイオリアクター中の細胞はタンパク質を含まない培地でフィーディングされる(826)。EC入口668は、放出された細胞生産物が濃縮されている間に細胞に栄養素を提供するために、EC培地(例えば、タンパク質を含まない培地)を供給することができる。このような構成においては、IC投入は行わない。代わりに、バイオリアクター502、602の半透過性中空糸によって、必須栄養素(例えば、グルコース)は、連続灌流(continuous perfusion)を通じて、細胞に到達することが可能になり、代謝老廃物(例えば、乳酸)は能動的に除去され、拡散を通じて、システム500、600から外に出る(EC出口を開582、692)。そのようなフィーディングは、所定の期間(例えば、約48時間)、行われる。他の状況において、細胞への補給を行うために、タンパク質を含まない培地が、約24時間~約72時間にわたって使用される。他の実施形態では、タンパク質を含まない培地(例えば、第2培地)によるこのようなフィーディングは、細胞への補給を行うために約48時間~約72時間の間、行われる。他の実施形態では、第2培地(例えば、タンパク質を含まない培地)によるこのようなフィーディングは、約24時間~約48時間にわたって、行われる。他の実施形態では、第2培地によるこのようなフィーディングは、約24時間~約48時間行われる。さらに他の実施形態では、タンパク質を含まない培地を用いたそのようなフィーディングは、約24時間未満、行われる。第2培地による任意の時間のフィーディングが、実施形態に従って使用される。別の構成では、IC入口は、細胞に栄養素を提供するために、IC培地(例えば、タンパク質を含まない培地)を供給することができる。そのようなフィーディングは、本開示の実施形態に従う任意の期間にわたって行われる。このような細胞のフィーディング826は、IC出口バルブ590、690を閉じることによってIC出口を閉じることを含む。細胞フィーディング826におけるシステム500、600に導入される溶液の例が
、以下に示される。
【0134】
【表24】
【0135】
システム500、600における細胞フィーディング826のための設定例が、以下に示される。
【0136】
【表25】
【0137】
他の実施形態では、放出された細胞生産物の収集を可能にするIC出口の閉鎖は、例えば、ステップ828で行われる。このようなIC出口の閉鎖(バルブ590、598又はバルブ690、698の閉鎖による)は、細胞によって放出された細胞生産物をバイオリアクターにおいて集める又は濃縮することを可能にする(828)。EC出口を開いた状態に保つことによって(バルブ582、692)、限外濾過により、EC側504、604を介して老廃物を能動的に除去することができる。さらに、半透過性膜により、必須栄養素が連続灌流によって細胞に到達することができる。例えば、表24、25に示されているように、一実施形態によれば、細胞は、IC側に(例えば、タンパク質を含まない)培地を任意に添加することによってフィーディングされる(826)。一実施形態では、培地バッグ546を接続点646に接続することができる。バッグ546からの培地(例えばタンパク質なし)は、バルブ550、650を介してIC入口ライン506、606に送られる。入口ライン506、606から、培地はICループ502、602に入り、バイオリアクター501、601のIC部分において細胞に対してフィーディングを行う。
【0138】
追加的又は代替的に、ステップ826及び/又はステップ828は、出口バッグ又は廃棄物バッグ586、686の交換ステップ827、829も任意に含むことができる。一実施形態において、出口バッグ又は廃棄物バッグ586、686の交換を行うことによって、バッグの内容物の監視又は試験が実施可能となり、グルコース/乳酸量の監視、(IC出口が閉鎖されているので)放出された細胞生成物が膜を横切っているかどうかの決定等が行える。上記のように、細胞によって産生される細胞生産物(例えば、EV又はウイルスベクター等)は、膜を通って拡散するには大きい(例えば、分子量が大きい)。IC出口が閉鎖されている場合、放出された細胞生産物(例えばEV)は、放出された細胞生成物(例えば、EV)濃度が継続的に増加する増殖中において(又は規定の収集期間において)、バイオリアクター501、601のIC側に維持される。細胞フィーディング826は、IC出口の閉鎖と同時に行うことができる。他の実施形態では、ステップ826は、例えば、収集ステップ828においてIC出口の閉鎖の後に行われる。さらに他の実施形態では、ステップ826は、例えば、収集ステップ828においてIC出口の閉鎖の前に行われる。他の実施形態では、出口バッグ586、686は、IC出口の閉鎖後に試験/監視が望まれない場合には交換されない。さらに他の実施形態では、出口容器又は廃棄物容器又は出口バッグ又は廃棄物バッグは、放出された物質を収集及び収穫するために使用される。プロセス800においてIC出口が閉じられると記載されているが、例えば、EC側で細胞成長が行われる他の実施形態では、EC出口が閉じられることに留意すべきである。
【0139】
(例えば、約48時間後、又は別の時間期間の後等に)、ループ(例えば、ICループ502、602)内の濃縮又は収集された細胞生産物828の収集を開始すると決定された場合、一実施形態では、収穫バルブ598、698が開けられ、細胞生産物は、バイオリアクター501、601のIC側502、602から収穫容器599、699へ収穫される(830)。一実施形態では、収穫可能にするため、IC出口586、686のICバルブ590、690が開けられる。他の実施形態では、収穫バッグ599、699又は収穫容器に収穫できるように、収穫バルブ598、698が開けられる。一実施形態では、このような収穫はプロセス全体の終わりに行われる。他の実施形態では、そのような収穫は、所定の間隔で行われる。一実施形態では、細胞生産物(例えば、EV又はウイルスベクター等)は、バイオリアクター501、601内の毛細管内側循環ループ502、602から懸濁状態で、収穫バッグ599、699又は収穫容器に移送される。一実施形態では、タンパク質を含まない培地が、このような収穫タスクにおいて使用される。濃縮又は収集された細胞生産物の収集828においてシステム500、600に導入される溶液の例が、以下に示される。
【0140】
【表26】
【0141】
システム500、600を用いた濃縮又は収集された細胞生産物828の収集のための設定例が、以下に示される。
【0142】
【表27】
【0143】
放出された物質の収穫830後、プロセス800は、追加処理832又は細胞の収穫836が望まれない場合、細胞生産物収穫830から直接ENDステップ838に進み、終了することができる。
【0144】
或いは、収穫ステップ830から、プロセス800は任意に、追加処理832を可能にするように進むことができる。このような追加処理832は、一実施形態において、分析のための処理を含む。他の実施形態では、このような追加処理832は、収穫バッグに集められた培地又は流体からの細胞生産物のさらなる濃縮を含む。他の実施形態では、このような追加処理832は、バッグ中の他の成分(懸濁細胞を成長して放出物と共に収穫する場合、そのような細胞)から細胞生産物を分離することを含む。一実施形態では、このような追加処理832は、放出された細胞生産物のさらなる単離及び/又は特徴付けを含む。バイオリアクター内に残っている細胞(例えば、接着性細胞等)を収穫しない場合は、プロセス800は、任意選択の追加処理ステップ832から、ENDステップ838で終了することができる。
【0145】
一方、バイオリアクター内に残っている細胞(例えば、接着性細胞又は付着した細胞)を収穫することが望ましい場合、プロセス800は細胞を剥離するステップ834に進む。或いは、追加処理832が所望されないがバイオリアクターからの細胞の剥離834が望まれる場合は、プロセス800は、細胞生産物収穫ステップ830から直接細胞剥離ステップ834に進む。付着した細胞は、バイオリアクターの膜から剥離され(834)、例えばICループ中に懸濁される。ある実施形態では、細胞を剥離するための試薬を添加するために備えてIC/EC洗浄タスクが、ステップ834の一部として実行される。例えば、IC/EC培地は、接着性細胞を剥離するためにトリプシン又は他の化学剥離剤を添加するのに備えて、タンパク質、カルシウム(Ca2+)及びマグネシウム(Mg2+)を除去するために、例えば、IC/EC培地は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に置換される。試薬は、試薬バッグが空になるまで、システムに投入される。試薬はICループ内に流し込まれ、該試薬はICループ内で混合される。接着性細胞の剥離後、収穫ステップ836において、例えば、バイオリアクターに残存する細胞を含むIC循環ループから、懸濁状態の細胞が、収穫バック又は収穫容器へ移送される。そして、プロセス800は、ENDステップ838で終了する。
【0146】
次に、図9は、本開示の実施形態によるCES500(図5)又はCES600(図6)のような細胞増殖システムと共に使用することができる、放出された物質(例えば、EV又はウイルスベクター)を製造、単離及び/又は収集するためのプロセスの例示的な動作ステップ900を示す。STARTステップ902が開始され、プロセス900は、ディスポーザブルチュービングセットを細胞増殖システムに装填するステップ904に進む。次に、システムは、ステップ906において、プライミングされる。一実施形態では、例えば、ユーザ又はオペレータは、プライミングのためのタスクを選択することによってプライミングするようにシステムに指示を提供することができる。一実施形態では、プライミングのためのそのようなタスクは、予めプログラムされたタスクであってもよい。次いで、プロセス900は、バイオリアクターをコーティングするステップ908に進む。ここでは、バイオリアクターは、コーティング剤によってコーティングされる。例えば、ある実施形態では、試薬容器が空になるまで、試薬はICループに投入される。試薬は、空気除去チャンバーからICループ内に流し込まれてもよく、その後、試薬はICループ内を循環する。フィブロネクチン又はクリオプレシピテートのような、当業者に公知の任意のコーティング試薬を使用することができる。バイオリアクターがコーティングされると、IC/EC洗浄タスクが実行される(910)。ここでは、IC循環ループ及びEC循環ループ上の流体が置換される。一実施形態によれば、置換体積は、IC体積及びEC体積の置換回数によって決定される。
【0147】
次に、バイオリアクター膜内の糸にわたって適正又は所望のガス濃度を維持するために、培地調整タスク912を実行して、細胞をバイオリアクターに投入する前に、培地と提供されたガス供給とが平衡状態になるようにする。例えば、高いEC循環レートを使用することによって、培地と、ガス移送モジュール又は酸素供給器によって提供されるガス供給との間の迅速な接触が行われる。次いで、システムは、例えば、ユーザ又はオペレータが細胞をバイオリアクターにロードする準備が整うまで、適切な状態又は所望の状態に維持される。一実施形態では、システムは、例えば、完全培地で調整される。完全培地は、細胞成長のために使用される任意の培地源である。一実施形態において、完全培地は、例えば、アルファ-MEM(α-MEM)及びウシ胎児血清(FBS)を含む。当業者に公知の任意のタイプの培地を使用することができる。
【0148】
次に、プロセス900は、ステップ914に進み、例えば、細胞投入バッグからバイオリアクターへ細胞の投入を行う。一実施形態において、細胞は、細胞投入バッグが空になるまで、該バッグからバイオリアクターへ投入される。細胞は空気除去チャンバーからバイオリアクターへ流し込まれる。より大きな流し込み体積を利用する実施形態では、細胞は拡がって投入され、IC出口へと向かうことができる。細胞の膜への分配は、例えば、ICの投入ではなく、例えば、IC循環ポンプを介して、IC循環によって、促進される。さらに、細胞(例えば、接着性細胞)は、ステップ916において、中空糸に付着させられ、ステップ918においてフィーディングされる。一実施形態では、細胞を付着させる際(916)、ICループに対するポンプの流量をゼロに設定した状態で、EC循環ループ上でのフローを可能にしながら、接着性細胞をバイオリアクター膜に付着させることが可能である。細胞は、ステップ920において成長/増殖する。一実施形態では、細胞は3日間~4日間にわったて増殖する。他の実施形態では、細胞は、所望の細胞倍加の数を達成するための期間だけ、増殖する。他の実施形態では、細胞は、コンフルエントに達するための期間だけ、増殖する。一実施形態では、細胞は、EV(例えば、エクソソーム)を集める前の、約7日間~約8日間、増殖させられる。本開示の実施形態に従えば、任意の期間でよい。
【0149】
次に、プロセス900は、クエリステップ922へ進み、細胞成長/増殖ステップ920中に条件培地に細胞が放出した細胞生産物(EV又はウイルスベクター等)の収集が所望されているかどうかを判断する。例えば、2回の倍加、3回の倍加、4回の倍加、5回の倍加、6回以上の細胞倍加等、特定の又は規定された回数の細胞倍加後に、収集のため、放出された物質の単離又は精製を開始することが望ましい。例えば、一実施形態では、最小2回の細胞倍加後に放出された物質の単離及び/又は収集を開始することが望ましい。他の実施形態では、例えば、最小5回以上の細胞倍加後に、放出された物質の精製及び/又は収集を開始することが望ましい。一実施形態では、放出された物質の単離及び/又は収集を開始する前に、定められた数の細胞倍加が設定されない場合もある。当業者に理解されるように、任意の数の細胞倍加、所定期間、及び/又は他の指標を使用することができる。
【0150】
クエリステップ922に戻って、放出された物質を単離及び/又は収集することが望まれる場合、プロセス900は、「Yes」に分岐し、洗浄置換ステップ924へ進む。一実施形態では、ステップ924では、血清含有培地の洗い流しが行われる。ここでは、例えば、該培地は基礎培地に置換される。一実施形態において、洗浄置換ステップは、以下のステップのうちの1又は複数のステップを有する:(1)5×IC・EC洗浄、(2)バイオリアクターからできるだけ多くの血清を除去するためのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)による陰圧限外濾過洗浄、(3)PBS洗浄において失われた代謝産物分を補給するための基礎培地による2.5×IC・EC洗浄。一実施形態では、上記ステップ(1)~(3)の全てが行われる。他の実施形態では、上記ステップ(1)~(3)のうちの1つのみが行われる。他の実施形態では、上記ステップ(1)~(3)のうちの2つが行われる。さらに、実施形態に従っていれば、ステップは任意の順番でよい。さらに他の実施形態では、洗浄ステップ924は行わなくてもよい。例えば、動物由来の血清を使用しない場合、ヒト由来の血清のみを使用する場合、無血清培地を使用する場合、及び/又は除去すべき他のそのような追加タンパク質源がない場合は、ステップ924は任意に行われればよい。
【0151】
バイオリアクターから血清含有培地が洗い流された(924)後、IC出口バルブを閉鎖することによってIC出口を閉じて(926)、細胞によって放出された物質の濃度をバイオリアクター内で増加させる。ステップ926の一部として、出口バッグ又は廃棄物バッグの交換を任意に行ってもよい(928)。出口バッグ又は廃棄物バッグの交換を行うことによって、バッグの内容物の監視又は試験が実施可能となり、グルコース/乳酸量の監視、(IC出口が閉鎖されているので)放出された物質が膜を横切っているかどうかの決定等が行える。上記のように、細胞によって産生される放出物質(例えば、EV又はウイルスベクター等)は、膜を通って拡散するには大きすぎる(例えば、分子量が大きすぎる)。IC出口が閉鎖されている場合、放出された物質(例えばEV)は、放出された物質(例えば、EV又はウイルスベクター等)濃度が継続的に増加する増殖中において(又は規定の収集期間において)、バイオリアクターのIC側に維持される。一実施形態では、ステップ928は、IC出口の閉鎖と同時に行うことができる。他の実施形態では、ステップ928は、IC出口の閉鎖の後に行われる。さらに他の実施形態では、ステップ928は、IC出口の閉鎖の前に行われる。他の実施形態では、出口バッグは、IC出口の閉鎖後に試験/監視又は出口バックの別目的のための使用が望まれない場合には交換されなくてもよい。プロセス900においてIC出口が閉じられると記載されているが、例えば、EC側で細胞成長が行われる他の実施形態では、EC出口が閉じられることに留意すべきである。
【0152】
次に、プロセス900は、細胞フィーディングステップ930、放出物質収集ステップ932へ進み、タンパク質を含まない培地をバイオリアクターのEC側に添加し、半透過性膜を通じてIC側に拡散させる。このような実施形態において、EC入口では、放出された物質が濃縮されている間に、細胞に栄養素を提供するために、EC培地(例えば、タンパク質を含まない培地)が供給される。この場合、例えば、IC投入は行わない。代わりに、バイオリアクターの半透過性中空糸によって、必須栄養素(例えば、グルコース)は、連続灌流(continuous perfusion)を通じて、細胞に到達することが可能になり、代謝老廃物(例えば、乳酸)は能動的に除去され、拡散を通じて、システムから外に出る(EC出口を開)。他の実施形態では、細胞は、培地をIC側に添加することによってフィーディングされる。一実施形態では、細胞への補給を行うために、基礎培地が約48時間、使用される。他の実施形態では、細胞への補給を行うため、基礎培地が、約24時間~約72時間、使用される。実施形態では、ICループ(IC出口閉926)における放出された物質(例えば、EV又はウイルスベクター等)の収集又は濃縮は、規定の時間、例えば約48時間、又は他の実施形態では、約24時間~約72時間、行われる。他の実施形態では、基礎培地によるフィーディング及び放出粒子の収集は、約72時間よりも長い期間(例えば、約72時間~約96時間)、行われる。他の実施形態では、第2培地によるフィーディング及び放出粒子の収集は、約72時間~約120時間、行われる。さらに他の実施形態では、そのようなフィーディング及び収集は、24時間よりも短い期間、行われる。
【0153】
(例えば、約48時間後、又は別の時間期間の後に)、濃縮又は収集された放出物質の収穫を開始すると決定された場合、一実施形態では、収穫用バルブが開けられ(934)、放出物質は、バイオリアクターのIC側から収穫容器に収穫される(936)。一実施形態では、収穫可能にするため、IC出口のICバルブが開けられる。他の実施形態では、収穫バッグ又は収穫容器に収穫できるように、収穫バルブが開けられる。一実施形態では、このような収穫はプロセス全体の終わりに行われる。他の実施形態では、そのような収穫は、所定の間隔で行われる。一実施形態では、放出物質(例えば、EV又はウイルスベクター等)は、バイオリアクター内の毛細管内側循環ループから懸濁状態で、収穫バッグ又は収穫容器に移送される。一実施形態では、タンパク質を含まない培地が、このような収穫タスクにおいて使用される。
【0154】
放出物質収穫ステップ936の後、プロセス900は任意に、追加処理944に進むことができる。このような追加処理944は、一実施形態において、分析のための処理を含む。他の実施形態では、このような追加処理944は、収穫バッグに集められた培地からの放出物質のさらなる濃縮を含む。他の実施形態では、このような追加処理944は、バッグ中の他の成分(懸濁細胞を成長して放出物質と共に収穫する場合、そのような細胞)から放出物質を分離することを含む。一実施形態では、このような追加処理944は、放出物質のさらなる単離及び/又は特徴付けを含む。バイオリアクター内に残っている細胞(例えば、接着性細胞等)を収穫しない場合は、プロセス900は、任意選択の追加処理ステップ944から、ENDステップ946に進み、終了することができる。他の実施形態において、プロセス900は、追加処理944も細胞の収穫940も望まれない場合、生産物収穫ステップ936から直接ENDステップ946に進み、終了することができる。
【0155】
ステップ944に戻って、バイオリアクター内に残っている細胞(例えば、接着性細胞又は付着した細胞)を収穫することが望ましい場合、プロセス900は任意選択の細胞剥離ステップ938に進む。或いは、追加処理944が所望されないがバイオリアクターからの細胞の剥離938が望まれる場合は、プロセス900は、細胞生産物収穫ステップ936から直接、任意選択の細胞剥離ステップ938に進む。付着した細胞は、バイオリアクターの膜から剥離され(938)、例えばICループ中に懸濁される。ある実施形態では、細胞を剥離するための試薬を添加するために備えてIC/EC洗浄タスクが、ステップ938の一部として実行される。例えば、接着性細胞を剥離するためにトリプシン又は他の化学剥離剤を添加するのに備えて、タンパク質、カルシウム(Ca2+)及びマグネシウム(Mg2+)を除去するために、IC/EC培地は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に置換される。試薬は、試薬バッグが空になるまで、システムに投入されてもよい。試薬はICループ内に流し込まれ、ICループ内で混合される。接着性細胞の剥離後、収穫ステップ940において、例えば、バイオリアクターに残存する細胞を含むIC循環ループから懸濁状態の細胞が、収穫バック又は収穫容器へ移送される。そして、プロセス900の一部として、ステップ942において、ディスポーザブルセットが細胞増殖システムから任意に取り外され、プロセス900は、ENDステップ946で終了する。
【0156】
本開示の実施形態によれば、図7図8図9に示されるプロセスにおいて記述された動作ステップは、あくまで例示の目的であり、変更されてもよく、他のステップと組み合わせてもよく、又他のステップと並行に行われてもよい。実施形態では、本開示の精神及び範囲から逸脱しなければ、ステップを減らしてもよいし、ステップを追加してもよい。また、例えば、プライミング、バイオリアクターのコーティング、細胞の投入のようなステップ(及びサブステップ)は、いくつかの実施形態では、例えば、メモリに記憶された予めプログラムされたタスクを実行するプロセッサによって、自動的に行ってもよい。ここでは、そのようなステップは、あくまでも例示の目的で提示されている。
【0157】
細胞増殖システムと共に用いられるカスタムタスクや予めプログラムされたタスク等のタスク及びプロトコルの例や詳細な説明は、米国特許出願公開第13/269,323号明細書(2011年10月7日出願 タイトル「中空糸バイオリアクターシステムにおける細胞成長及び細胞収穫の設定可能な方法及びシステム」)及び米国特許出願公開第13/269,351号明細書(2011年10月7日出願 タイトル「中空糸バイオリアクターシステムにおける細胞成長及び細胞収穫のカスタマイズ可能な方法及びシステム」)に提示される。該米国特許出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0158】
次に、図10は、本発明の実施形態を実行するコンピューティングシステム1000の構成要素の一例を示す。コンピューティングシステム1000は、例えば、上述のプロセス700、800、900のようなプロセスの一部として、カスタムタスクや予めプログラムされたタスクのようなタスクを実行するために、細胞増殖システムがプロセッサを使用する実施形態において使用される。実施形態において、予めプログラムされたタスクは、例えば、「IC/EC洗浄」及び/又は「細胞フィーディング」を含んでよい。
【0159】
コンピューティングシステム1000は、ユーザインターフェース1002、処理システム1004、及び/又は記憶装置1006を有する。ユーザインターフェース1002は、当業者であればわかるように、出力装置1008、及び/又は入力装置1010を有する。出力装置1008は、1以上のタッチスクリーンを有してよい。タッチスクリーンは、1以上のアプリケーションウィンドウを提供するためのディスプレイ領域を有してよい。タッチスクリーンはまた、例えば、ユーザやオペレータからの物理的な接触を受容及び/又は取り込み可能な入力装置1010であってもよい。タッチスクリーンは、当業者であれば理解できるように、処理システム1004による接触位置の推定を可能とする静電容量構造の液晶ディスプレイ(LCD)でもよい。この場合、処理システム1004は、接触位置を、アプリケーションウィンドウの所定位置に表示されるUI要素にマッピングすることができる。また、タッチスクリーンは、本発明において、1以上のその他の電子構造を介して接触を受容してもよい。他の出力装置1008としては、プリンター、スピーカ等が挙げられる。その他の入力装置1010としては、当業者であれば理解できるように、キーボード、その他のタッチ式入力装置、マウス、音声入力装置等が挙げられる。
【0160】
本発明の実施形態において、処理システム1004は、処理ユニット1012、及び/又はメモリ1014を有してもよい。処理ユニット1012は、メモリ1014に記憶された命令を実行するために動作可能な汎用プロセッサであってよい。処理ユニット1012は、本発明の実施形態では、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを含んでよい。さらに、実施形態では、各プロセッサとしては、別個に命令を読み込んで実行するための1以上のコアを有するマルチコアプロセッサが可能である。プロセッサは、当業者であれば理解できるように、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、その他の集積回路を含んでよい。
【0161】
本発明の実施形態において、メモリ1014は、データ及び/又はプロセッサ実行可能命令を短期に又は長期に記憶する任意の記憶装置を含んでよい。メモリ1014は、当業者であれば理解できるように、例えば、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、又は電気的消去・プログラム可能型リード・オンリ・メモリ(EEPROM)を含む。他の記憶媒体としては、例えば、当業者であれば理解できるように、CD-ROM、テープ、デジタル多用途ディスク(DVD)、又は、他の光学記憶装置、テープ、磁気ディスク記憶装置、磁気テープ、その他の磁気記憶装置等がある。
【0162】
記憶装置1006は、任意の長期データ記憶装置又は部品である。本発明の実施形態において、記憶装置1006は、メモリ1014と関連して記載されたシステムのうちの1以上を含んでよい。記憶装置1006は、常設してもよいし、取り外し可能でもよい。一実施形態において、記憶装置1006は、処理システム1004によって生成された又は与えられたデータを記憶する。
【0163】
実施例
実施形態の態様を実施することができる方法/プロセス/プロトコル/構成のいくつかの例を以下に説明する。特定の特徴はこれらの実施例に記載されているかもしれないが、それらはあくまで説明の目的のために提供されているだけである。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0164】
実施例1
上記のシステム及び方法の実施による細胞の増殖及び細胞外粒子の収集の結果の例を図12のグラフ1200に示す。グラフ1200は、例えば、上述の方法700、800、900及びCES500、600を用いた一連のEV製造実行結果を示す。例えば、製造/収集においては、Terumo BCT社(コロラド州、レイクウッド)製のQuantum(登録商標)細胞増殖システム(Quantum(登録商標)システム又はQuantum(登録商標)CES)を用いることができる。示されるように、上記プロセス及びシステムを用いて、種々の濃度のEVを製造・収集することができる。そのような製造によって、2.5E+07 EVs/mLを超える高い値(1208)から5.00E+06 EVs/mLと1.00E+07 EVs/mLとの間の低い値(1212)にわたって、種々の濃度のEVが得られる。
【0165】
実施例2
実施形態に係る上記の方法700、800、900及び/又はシステム500、600を用いて細胞外粒子の生成及び/又は収集の結果の例を図13A図13B図13Cのグラフ1300、1304、1308に示す。システム500、600によって生成された場合のEV濃度1312a、1312cのそれぞれは、225cm2の組織培養フラスコ(T225)内で生成された場合のEV濃度1316a、1316cに近いか、又はそれより高い。ここで、該フラスコは、比較のために、システム500、600と実質的に同様の細胞密度で播種され、同様に処理された(例えば、同様の細胞密度及び同様のフィーディングを用いる)。図13Bに示すように、225cm2の組織培養フラスコ(T225)内で生成された場合のEV濃度1316bは、システム500、600によって生成された場合のEV濃度1312bよりも高い。ここで、該フラスコは、比較のために、システム500、600と実質的に同様の細胞密度で播種され、同様に処理された。
【0166】
一例として、図13Aは、Tフラスコ(Q1468T-flask)内で製造及び/又は収集されるEV1316aと比較して、Quantum(登録商標)細胞増殖システムの「Q1468」1312aとして番号付けした実験におけるEV生成収集の結果を示す。該フラスコは、比較のために、実質的に同様の細胞密度で播種され、同様に処理される。例えば、Q1468では、Quantum(登録商標)システム(21,000cm2の表面積)中のバイオリアクターには、1.25E+08の培養細胞が投入され、Q1468T-flaskのTフラスコ(225cm2の表面積)には、9.24E+05の培養細胞が投入された。これは、Quantum(登録商標)システム及びTフラスコの両方に実質的に同様の細胞密度を投入することと同等である。図13Aの結果では、1312a(Quantum(登録商標)システム)及び1316a(Tフラスコ)の両方について、6.00E+07 EVs/mLと7.00E+07 EVs/mLの間の濃度を示し、グラフ1300は、Tフラスコ(Q1468T-flask)から集められたEV濃度1316aと比較して、Quantum(登録商標)システムから集められたEV濃度1312aは高いことを示す。
【0167】
図13A及び図13Cの結果は、例えば、従来のTフラスコ内で同様の細胞投入(例えば、同様の細胞密度)及びフィーディング量を使用することによって得られる濃度よりも、該システム(例えば、Terumo BCT社(コロラド州、レイクウッド)製のQuantum(登録商標)細胞増殖システム)の製造/収集によって得られるEV濃度の方が高いことを示す。CES500、600を使用した場合、いくつかの機能の自動化が可能であるため、労力を下げることができ、また、いくつかの実施形態では、より大きな表面積で細胞を成長させるため、より多くのEVを提供することができる。
【0168】
実施例3
例えば、実施形態に係る、上記の方法700、800、900及び/又はシステム500、600を用いた場合における抗原特異的細胞外粒子(例えばEV)の生成及び/又は収集の結果の例を図14に示す。図14に示すように、従来のTフラスコ及びシステム500、600(例えば、Terumo BCT社(コロラド州、レイクウッド)製のQuantum(登録商標)細胞増殖システム)から得られた精製エクソソームの代表的なサンプルから、例示的な結果を得ることができる。グラフ1400に示すように、抗原特異的エクソソームのタイプは、CD9、CD63及び/又はCD81を含む。システム500、600から製造され収集されたCD9エクソソームの数はコラム1404で示され、システム500、600から製造され収集されたCD63エクソソームの数はコラム1408で示され、システム500、600から製造され収集されたCD81エクソソームの数はコラム1412で示される。さらに、細胞は、225cm2組織培養フラスコ(T225)において、比較のために、システム500、600(例えばQuantum(登録商標)システム)と実質的に同様の細胞密度で播種され且つ同様に処理される。グラフ1400に示されるように、組織培養フラスコ(T225)から製造され収集されたCD9エクソソームの数はコラム1416で示され、組織培養フラスコ(T225)から製造され収集されたCD63エクソソームの数はコラム1420で示され、組織培養フラスコ(T225)から製造され収集されたCD81エクソソームの数はコラム1424で示される。図14に示すように、各抗原に関して、システム500、600によって製造及び収集されたエクソソームの数は、組織培養フラスコ(T225)によって製造され収集されたエクソソームの数よりも高い。例えば、図14は、一実施形態によれば、CES収穫からの抗原特異的エクソソームの各々の量は、T225収穫の場合の2~3倍であることを示している。
【0169】
実施例4
図8に関して説明したように、Quantum(登録商標)システム(例えばCES500、600)はPBSでプライミングされ、5mgのFNで一晩コーティングされる。次の日、システムは、2.5×IC・EC洗浄を受け、完全培地(GlutaMAX+10%FBSを含むαMEM)で調整される。予め選択したMSCをバイオリアクターに播種し、4~5日間増殖させる。この時点で、システムは、バイオリアクターからできるだけ多くの血清を除去するために、PBSで、5×IC・EC洗浄及び陰圧限外濾過洗浄を受ける。次いで、PBS洗浄中に失われた代謝産物を補充するために、基礎培地(GlutaMAXのみを含むαMEM)を用いた2.5×IC・EC洗浄が実施される。基礎培地を用いて、48時間、細胞への補給が行われ、同時に条件培地は収穫バッグへ集められる。フラスコはまた、比較目的のために、バイオリアクターと実質的に同様の播種密度で播種され、Quantum(登録商標)システムと同様に処理される。
【0170】
例えば、実施例4の一部として使用される、上記の方法700、800、900及び/又はシステム500、600からの結果では、9.9×106個の細胞をバイオリアクター501、601に投入し、6日間増殖し、システムから血清を除去し、エクソソームをICループで2日間収集した場合、合計で4.71×1011個のエクソソームを生成することが観察された。エクソソームが収集された後、エクソソームは、ICループから収穫され、この場合、1億3500万個のMSCがバイオリアクター501、601から回収されることが観察された。
【0171】
本開示の実施形態は、例えば、以下のように1又は複数の態様を含む。
【0172】
本発明の実施形態及び/又は実施態様は、細胞生産物を収集する方法を含む。該方法は、細胞をバイオリアクターに投入するステップと、培地によって前記細胞へフィーディングを行うステップと、前記細胞を増殖するステップであって、前記細胞が細胞生産物を放出するステップと、放出された前記細胞生産物を濃縮するステップと、前記バイオリアクターから濃縮された前記細胞生産物を収穫するステップと、を有する。
【0173】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、放出された前記細胞生産物は、細胞外粒子を含む。
【0174】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞外粒子は、細胞外小胞を含む。
【0175】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞外小胞は、エクソソームを含む。
【0176】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞外小胞は、微小小胞を含む。
【0177】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞外粒子は、ウイルスベクターを含む。
【0178】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、収穫された前記細胞生産物は、バッグに集められる。
【0179】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記方法はさらに、前記培地を置換するステップを有する。
【0180】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記培地は血清を含む。
【0181】
本発明の実施形態及び/又は実施態様は、細胞増殖システムを有する。該細胞増殖システムは、中空糸膜を有するバイオリアクターと、少なくとも両端部を有する第1流体流路と、プロセッサと、前記プロセッサと通信を行い、前記プロセッサによって読取可能なメモリと、を備える。前記第1流体流路は、前記中空糸膜の毛細管内側部分と流体的に関連付けられる。前記メモリは一連の命令を有し、前記一連の命令が、前記プロセッサによって実行される場合、前記プロセッサは、選択を受けて、細胞へのフィーディングを行い、選択を受けて、前記毛細管内側部分の出口を閉じて、前記毛細管内側部分の前記細胞から放出された粒子を濃縮し、前記粒子を収穫バッグへ移動させる動作を行う。
【0182】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記プロセッサはさらに、5回の洗い流し洗浄を行うこと、陰圧限外濾過を行うこと、洗い流し洗浄を行うこと、のうち少なくとも1つを行う。
【0183】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞から放出された前記粒子は、細胞外粒子を含む。
【0184】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞外粒子は、エクソソームを含む。
【0185】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞外粒子は、微小小胞を含む。
【0186】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記プロセッサはさらに、選択を受けて、前記中空糸膜の前記毛細管内側部分及び毛細管外側部分の流体を置換する。
【0187】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記流体を置換する際、前記細胞へのフィーディングのために使用される第1培地からタンパク質が取り出される。
【0188】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記細胞へのフィーディングのために使用される前記第1培地は、タンパク質を含まない第2培地に置換される。
【0189】
1以上の上記実施形態及び/又は1以上の上記実施態様のいずれかにおいて、前記プロセッサはさらに、前記バイオリアクター内の前記第1培地及び/又は前記第2培地の試験を行って、前記タンパク質が除去されたかどうかを判断する。
【0190】
本発明の実施形態及び/又は実施態様は、細胞増殖システムを含む。該細胞増殖システムは、中空糸膜を有するバイオリアクターと、前記バイオリアクターの少なくとも両端部に第1入口と第1出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管内側部分と流体的に関連付けられた第1流体流路と、第2入口と第2出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管外側部分と流体的に関連付けられた第2流体流路と、前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第1接続ポートと、前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第2接続ポートと、前記第1流体流路と前記第2流体流路とに流体的に関連付けられた第3接続ポートと、前記第2流体流路に流体的に関連付けられた第4接続ポートと、前記第1流体流路に流体的に関連付けられた収穫バッグと、を備える。前記第1接続ポートに取り付けられた第1バッグによって、前記バイオリアクターに細胞が導入され、タンパク質を含む第1培地が入った第2バッグが前記第2接続ポートに接続され、前記第2バッグから、前記第1培地が前記第1流体流路を通って前記バイオリアクターへ供給され、所定数の細胞倍加が起きるまで、前記細胞へのフィーディングが行われ、第2培地が入った第3バッグが前記第3接続ポートに接続され、前記第3バッグから、前記第2培地が前記第1流体流路及び前記第2流体流路を通って前記バイオリアクターへ供給され、前記バイオリアクターから前記第1培地を洗い流して洗浄し、前記洗浄の後、タンパク質を含まない第3培地が入った第4バッグが前記第4接続ポートに接続され、前記細胞へのフィーディングが行われ、前記第3培地で前記細胞にフィーディングを行う際、前記第1流体流路の前記第1出口は閉じられ、前記バイオリアクターの前記毛細管内側部分において、前記細胞から放出される粒子が濃縮され、濃縮された前記粒子は前記収穫バッグへ移送される。
【0191】
本発明の実施形態及び/又は実施態様は、細胞増殖システムにおいて細胞粒子を生成する方法を含む。前記細胞増殖システムは、毛細管内側部分と毛細管外側部分とを有する中空糸膜を備えるバイオリアクターと、前記バイオリアクターの少なくとも両端部に第1入口と第1出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管内側部分と流体的に関連付けられた第1流体流路と、第2入口と第2出口とを有し、前記中空糸膜の毛細管外側部分と流体的に関連付けられた第2流体流路と、前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第1接続ポートと、前記第1流体流路に流体的に関連付けられた第2接続ポートと、前記第1流体流路と前記第2流体流路とに流体的に関連付けられた第3接続ポートと、前記第2流体流路に流体的に関連付けられた第4接続ポートと、収穫バッグと、を備える。該方法は、前記細胞増殖システムにプライミングを行うステップと、前記第1接続ポートに第1バッグを接続して、前記バイオリアクターに細胞を導入するステップと、前記第2接続ポートに、タンパク質を含む第1培地が入った第2バッグを接続して、前記第1培地を、前記第1流体流路を介して前記バイオリアクターに供給し、所定数の細胞倍加が起きるまで、前記細胞へのフィーディングを行うステップと、前記所定数の細胞倍加が起きた後、前記第3接続ポートに、第2培地が入った第3バッグを接続して、前記第2培地を、前記第1流体流路と前記第2流体流路とを介して前記バイオリアクターに供給し、前記バイオリアクターから前記第1培地を洗い流して洗浄するステップと、前記洗浄の後、前記第1流体流路の前記第1出口を閉じて、前記バイオリアクターの前記毛細管内側部分において、前記細胞から放出された粒子を濃縮するステップと、前記第4接続ポートに、タンパク質を含まない第3培地が入った第4バッグを接続し、前記細胞へのフィーディングを行うステップと、収穫のために、前記第1流体流路に前記収穫バッグを接続するステップと、濃縮された前記粒子を前記収穫バッグに収穫するステップと、を有する。
【0192】
本発明の実施形態及び実施態様は、上記実施形態及び上記実施態様のうちの1以上又はそれらを組み合わせたもののうちのいずれかを含む。
【0193】
本発明の実施形態及び実施態様は、上記実施形態及び上記実施態様のうちの1以上を実行する手段を含む。
【0194】
本発明の実施形態及び適用例が示され説明されてきたが、本発明は、上記した構成に制限されないと理解されるべきである。当業者に明らかな種々の変形、変更等は、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の構成、動作、また方法及びシステムにおける詳細において行うことが可能である。
【0195】
ここで使用される「少なくとも1つ」、「1以上の」、「及び/又は」は、結合的及び選言的の両方として機能する非限定的表現である。例えば、「A、B及びCのうち少なくとも1つ」、「A、B又はCのうち少なくとも1つ」、「A、B及びCのうち1以上」、「A、B又はCのうち1以上」、「A、B及び/又はC」のこれら各表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、又は、AとBとC、のいずれかであることを意味する。
【0196】
当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の方法及び構造に対して種々の変形及び変更を行えることは理解できよう。従って、本発明は、上記の特定の実施形態又は実施例に限定されないと理解されるべきである。むしろ、本発明は、以下の請求項及びそれらの等価物の範囲内において、変形形態及び変更形態をも含むことが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオリアクターにおいて細胞外小胞を収集する方法であって、該方法は、
前記バイオリアクターの中空糸膜を緩衝液でプライミングするステップと、
前記中空糸膜をコーティング剤でコーティングするコーティングステップと、
前記バイオリアクターから、前記緩衝液を含む流体を洗い流す流体洗浄ステップと、
細胞を前記中空糸膜の毛細管内側部分に投入するステップであって、前記中空糸膜の前記毛細管内側部分における毛細管内側循環によって、前記細胞が、前記中空糸膜の前記毛細管内側部分にわたって分配されるように該細胞を投入するステップと、
前記細胞を前記中空糸膜の前記毛細管内側部分に定着させる定着ステップと、
たんぱく質を含まない培地を前記中空糸膜の毛細管外側部分にフィーディングするフィーディングステップであって、前記たんぱく質を含まない前記培地は、灌流を通じて、前記中空糸膜の前記毛細管内側部分に定着した前記細胞に栄養素を供給するフィーディングステップと、
前記中空糸膜の前記毛細管内側部分に定着した前記細胞を増殖する増殖ステップであって、前記細胞を増殖することによって、前記細胞外小胞を、前記細胞から、前記中空糸膜に含まれる流体培地に、放出する増殖ステップと、
前記毛細管内側部分の出口を閉じて、前記バイオリアクターの前記毛細管外側部分を循環させ続けることによって前記細胞に前記培地を供給し続けることで、前記毛細管内側部分に放出される前記細胞外小胞を濃縮するステップと、
前記中空糸膜から、前記細胞外小胞を含む前記流体培地を洗い流す流体培地洗浄ステップと、
前記中空糸膜から洗い流された前記流体培地から前記細胞外小胞を収集するステップと、を有する、
方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記細胞外小胞は、エクソソームである、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法において、前記定着ステップは、
前記バイオリアクターの毛細管外側循環ループに対して流れを許可し、
前記バイオリアクターの前記毛細管外側循環ループに対して流れを許可しながら、前記バイオリアクターの毛細管内側循環ループに対しては流れを止める、
方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、前記コーティングステップは、前記コーティング剤を前記バイオリアクターの前記毛細管内側部分に投入する、
方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記コーティング剤はフィブロネクチンである、
方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、該方法は、前記中空糸膜から洗い流された前記流体培地を基礎培地で置換するステップをさらに有する、
方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記流体培地洗浄ステップの前に、該方法は、所定数の細胞倍加が起きた後、前記細胞外小胞の単離を開始することを決定するステップをさらに有し、
前記細胞外小胞の単離は、前記流体培地洗浄ステップの開始を含む、
方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記所定数の細胞倍加は2回である、
方法。
【請求項9】
請求項7記載の方法において、前記所定数の細胞倍加は5回である、
方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法において、前記細胞を増殖することによって、所定の時間にわたって、前記細胞外小胞を、前記細胞から、前記中空糸膜に含まれる前記流体培地に、放出し、
前記所定の時間は48時間である、
方法。
【請求項11】
毛細管内側部分と毛細管外側部分とを有する中空糸膜を有するバイオリアクターと、
プロセッサと、
前記プロセッサと通信を行い、前記プロセッサによって読取可能なメモリと、
を備える細胞増殖システムであって、
前記メモリは一連の命令を有し、一連の前記命令が、前記プロセッサによって実行されることによって、前記プロセッサは、
選択を受けて、前記中空糸膜を緩衝液でプライミングし、
選択を受けて、前記中空糸膜をコーティング剤でコーティングし、
選択を受けて、前記バイオリアクターから、前記緩衝液を含む流体を洗い流し、
選択を受けて、前記毛細管内側部分における毛細管内側循環によって細胞が前記毛細管内側部分にわたって分配されるように、該細胞を前記毛細管内側部分に投入し、
選択を受けて、前記細胞を前記毛細管内側部分に定着させ、
選択を受けて、前記毛細管内側部分に定着した前記細胞を増殖し、前記細胞を増殖することによって、細胞外小胞を、前記細胞から、前記中空糸膜に含まれる流体培地に、放出し、
選択を受けて、前記毛細管内側部分の出口を閉じて前記バイオリアクターの前記毛細管外側部分を循環させ続けることによって前記細胞にたんぱく質を含まない培地を供給し続けることで、前記毛細管内側部分に放出される前記細胞外小胞を濃縮し、
選択を受けて、前記中空糸膜から、前記細胞外小胞を含む前記流体培地を洗い流し、
選択を受けて、前記中空糸膜から洗い流された前記流体培地から前記細胞外小胞を収集する、
細胞増殖システム。
【請求項12】
請求項11記載の細胞増殖システムにおいて、前記細胞外小胞は、エクソソームである、
細胞増殖システム。
【請求項13】
請求項11又は12記載の細胞増殖システムにおいて、前記選択を受けて、前記細胞を前記毛細管内側部分に定着させる際、前記プロセッサによって前記命令がさらに実行されることによって、前記プロセッサはさらに、
前記バイオリアクターの毛細管外側循環ループに対して流れを許可し、
前記バイオリアクターの前記毛細管外側循環ループに対して流れを許可しながら、前記バイオリアクターの毛細管内側循環ループに対しては流れを止める、
細胞増殖システム。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか1項に記載の細胞増殖システムにおいて、前記選択を受けて、前記中空糸膜を前記コーティング剤でコーティングする際、前記プロセッサによって前記命令がさらに実行されることによって、前記プロセッサはさらに、前記コーティング剤を前記バイオリアクターの前記毛細管内側部分に投入する、
細胞増殖システム。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項に記載の細胞増殖システムにおいて、前記コーティング剤はフィブロネクチンである、
細胞増殖システム。
【請求項16】
請求項11~15のいずれか1項に記載の細胞増殖システムにおいて、一連の前記命令が、前記プロセッサによって実行されることによって、前記プロセッサはさらに選択を受けて、前記中空糸膜から洗い流された前記流体培地を基礎培地で置換する、
細胞増殖システム。
【請求項17】
請求項11~16のいずれか1項に記載の細胞増殖システムにおいて、前記選択を受けて、前記中空糸膜から、前記細胞外小胞を含む前記流体培地を洗い流す前に、一連の前記命令が、前記プロセッサによって実行されることによって、前記プロセッサはさらに、所定数の細胞倍加が起きた後、前記細胞外小胞の単離を開始することを決定し、
前記細胞外小胞の単離は、前記流体培地の洗い流しの開始を含む、
細胞増殖システム。
【請求項18】
請求項17記載の細胞増殖システムにおいて、前記所定数の細胞倍加は2回である、
細胞増殖システム。
【請求項19】
請求項17記載の細胞増殖システムにおいて、前記所定数の細胞倍加は5回である、
細胞増殖システム。
【請求項20】
請求項11~19のいずれか1項に記載の細胞増殖システムにおいて、前記細胞を増殖することによって、所定の時間にわたって、前記細胞外小胞を、前記細胞から、前記中空糸膜に含まれる前記流体培地に放出し、
前記所定の時間は48時間である、
細胞増殖システム。
【外国語明細書】