(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182715
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】封止体
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20231219BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20231219BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20231219BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231219BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20231219BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20231219BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L23/02 D
H05B33/14 Z
H10K50/84
H10K59/10
H10K71/00
H10K77/10
G09F9/00 338
H01L23/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171128
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2022061869の分割
【原出願日】2014-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2013019095
(32)【優先日】2013-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】中村 太紀
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱性の低い材料が設けられた基板においても、生産性高くガラス層を形成する方法を提供する。
【解決手段】方法は、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペースト102を基板101上に配置する第1の工程と、レーザ光の照射開始領域111に重ならないように、レーザ光の照射領域をフリットペースト上で相対的に移動させる第2の工程と、を有し、該第2の工程は、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なるように、レーザ光の照射領域をフリットペースト上で相対的に移動させるステップを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを基板上に配置する第1の工程と、
レーザ光の照射開始領域に重ならないように、レーザ光の照射領域を前記フリットペースト上で相対的に移動させる第2の工程と、を有し、
前記第2の工程は、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なるように、レーザ光の照射領域を前記フリットペースト上で相対的に移動させるステップを有するガラス層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、ガラス層、封止体、半導体装置、発光装置、表示装置、又はそれらの
製造方法に関する。特に、本発明の一態様は、ガラス層の形成方法に関する。また、本発
明の一態様は、一対の基板及びガラス層を用いた封止体とその作製方法に関する。また、
本発明の一態様は、封止体を有する半導体装置、発光装置、表示装置、電子機器、又は照
明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光装置や表示装置に関する開発が活発に進められており、信頼性や歩留まりの向
上、高生産性などが求められている。
【0003】
特に、被封止体のうち、有機エレクトロルミネッセンス(Electrolumines
cence、以下ELとも記す)現象を利用した発光素子(有機EL素子とも記す)など
のように、水分や酸素を含む大気に曝されると信頼性等の性能が急速に低下する素子は、
密閉性の高い封止体の内部に備えることが好ましい。
【0004】
例えば、対向する一対の基板を、低融点ガラスを用いて貼り合わせることで、密閉性の高
い封止体を形成する技術が知られている。
【0005】
特許文献1には、ガラスフリットを用いて一対の基板を貼り合わせたガラスパッケージが
開示されている。また、特許文献1には、一方の基板上にガラスフリットを配置し予備焼
成した後、該基板と他方の基板とを対向させてガラスフリットを加熱し溶融することで、
一対の基板を貼り合わせる製造方法が開示されている。
【0006】
基板にガラスフリットを配置し予備焼成する工程では、例えば、ガラスフリット、有機溶
媒、及びバインダ(樹脂等)を含むペースト(フリットペーストとも記す)を基板に塗布
した後に、該ペーストを加熱することで有機溶媒や樹脂等を除去し、該基板上にガラス層
を形成する。
【0007】
ここで、フリットペーストの加熱が不十分であると、ガラス層中にバインダが残存し、封
止体の密閉性が不十分となる、又はガラス層にクラックが生じやすくなる恐れがある。
【0008】
フリットペーストからバインダを除去するために必要な温度(例えば350℃~450℃
程度)は、基板上に設けられた被封止体の耐熱温度に比べて高い場合がある。例えば、有
機EL素子やカラーフィルタ等の耐熱性の低い被封止体が設けられた基板上にフリットペ
ーストを配置した場合、フリットペーストからバインダを除去するために加熱炉等で基板
全体を加熱してしまうと、これら耐熱性の低い被封止体が熱により劣化してしまうことが
ある。
【0009】
そこで、特許文献2では、レーザ光の照射によって基板上にガラス層を形成する技術が提
案されている。レーザ光の照射によって局所的にフリットペーストを加熱することで、フ
リットペーストからバインダを除去することができ、かつ、被封止体が熱によるダメージ
を受けることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開第2004-0207314号公報
【特許文献2】米国特許公開第2012-0240628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載されている通り、フリットペーストの所定の位置Pをレーザ光の照射の
始点及び終点としてレーザ光を照射すると、該位置Pの近傍でガラス層が途切れる場合が
ある。既に固化したフリットペースト(ガラス層)の溶融始端部に、ガラスフリットの溶
融によって収縮するフリットペースト(ガラス層)の溶融終端部が接続し難いこと等が理
由として考えられている。
【0012】
そして、ガラス層における溶融始端部や溶融終端部の膜厚は、他の領域の膜厚に比べて大
きく、ガラス層を介して一対の基板を重ねた際にガラス層と基板を均一に接触させること
ができない。このような状態でレーザ光を照射し、一対の基板をガラス層によって溶着し
ても、密閉性の高い封止体を得ることは難しい。
【0013】
そこで、本発明の一態様は、ガラス層等を生産性高く形成することを目的の一とする。ま
たは、本発明の一態様は、ガラス層を耐熱性の低い材料が設けられた基板上に形成するこ
とを目的の一とする。または、本発明の一態様は、密閉性の高い封止体を作製できるガラ
ス層等を形成することを目的の一とする。特に、本発明の一態様は、密閉性の高い封止体
を作製できるガラス層を、耐熱性の低い材料が設けられた基板上に生産性高く形成するこ
とを目的の一とする。
【0014】
また、本発明の一態様は、密閉性の高い封止体を生産性高く作製することを目的の一とす
る。または、本発明の一態様は、密閉性の高い封止体を提供することを目的の一とする。
または、本発明の一態様は、新規な発光装置を提供することを目的の一とする。または、
本発明の一態様は、新規な表示装置を提供することを目的の一とする。または、本発明の
一態様は、信頼性の高い封止体、発光装置、表示装置、電子機器、又は照明装置を提供す
ることを目的の一とする。
【0015】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題
は、明細書、図面、請求項等の記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面
、請求項等の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、フリットペーストに照射するレーザ光の照射領域が描く軌跡に着眼し
て創作されたものである。本発明の一態様では、レーザ光の照射開始領域に重ならないよ
うに、レーザ光の照射領域をフリットペースト上で相対的に移動させる。そして、レーザ
光の照射開始領域以外で、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なるように、レーザ光の照
射領域をフリットペースト上で相対的に移動させる。言い換えると、レーザ光の照射領域
が描く軌跡は、交点を有する。このとき、該交点を有する交差領域は、該レーザ光の照射
開始領域と重ならないようにする。
【0017】
レーザ光の照射領域が描く軌跡が、レーザ光の照射開始領域において重なる場合に比べて
、他の領域において重なる場合の方が、ガラス層が途切れた領域の面積を小さくできる。
また、ガラス層の端部の膜厚と他の部分の膜厚との差を小さくできる。言い換えると、レ
ーザ光の照射領域が描く軌跡において、交差領域が、レーザ光の照射開始領域と重なる場
合に比べて、重ならない場合の方が、ガラス層が途切れた領域の面積を小さくできる。ま
た、ガラス層の端部の膜厚と他の部分の膜厚との差を小さくできる。なお、本明細書等に
おいて、ガラス層の端部とは、ガラス層が途切れた領域近傍に位置するガラス層の領域を
いう。
【0018】
具体的には、本発明の一態様は、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを
基板上に配置する第1の工程と、レーザ光の照射開始領域に重ならないように、レーザ光
の照射領域をフリットペースト上で相対的に移動させる第2の工程と、を有し、該第2の
工程は、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なるように、レーザ光の照射領域をフリット
ペースト上で相対的に移動させるステップを有する、ガラス層の形成方法である。また、
本発明の一態様は、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを基板上に配置
する第1の工程と、レーザ光の照射開始領域に重ならないように、レーザ光の照射領域を
フリットペースト上で相対的に移動させる第2の工程と、を有し、該第2の工程でレーザ
光の照射領域が描く軌跡は、交差領域において交点を有する、ガラス層の形成方法である
。
【0019】
また、本発明の一態様は、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを第1の
基板上に配置する第1の工程と、第1のレーザ光の照射開始領域に重ならないように、第
1のレーザ光の照射領域をフリットペースト上で相対的に移動させ、ガラス層を形成する
第2の工程と、ガラス層を介して第1の基板と第2の基板とを対向させ、ガラス層に第2
のレーザ光を照射することで、第1の基板と第2の基板とを溶着させる第3の工程と、を
この順で行う封止体の作製方法であり、該第2の工程は、第1のレーザ光の照射領域が描
く軌跡が重なるように、第1のレーザ光の照射領域をフリットペースト上で相対的に移動
させるステップを有する、封止体の作製方法である。また、本発明の一態様は、ガラスフ
リット及びバインダを含むフリットペーストを第1の基板上に配置する第1の工程と、第
1のレーザ光の照射開始領域に重ならないように、第1のレーザ光の照射領域をフリット
ペースト上で相対的に移動させ、ガラス層を形成する第2の工程と、ガラス層を介して第
1の基板と第2の基板とを対向させ、ガラス層に第2のレーザ光を照射することで、第1
の基板と第2の基板とを溶着させる第3の工程と、をこの順で行う封止体の作製方法であ
り、該第2の工程で第1のレーザ光の照射領域が描く軌跡は、交差領域において交点を有
する、封止体の作製方法である。
【0020】
また、本発明の一態様は、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを基板上
に配置する第1の工程と、レーザ光の照射開始領域に重ならないように、レーザ光の照射
領域をフリットペースト上で相対的に移動させる第2の工程と、を有し、該第2の工程は
、レーザ光の照射領域が描く軌跡が角度をもって重なるように、レーザ光の照射領域をフ
リットペースト上で相対的に移動させるステップを有する、ガラス層の形成方法である。
また、本発明の一態様は、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを基板上
に配置する第1の工程と、レーザ光の照射開始領域に重ならないように、レーザ光の照射
領域をフリットペースト上で相対的に移動させる第2の工程と、を有し、該第2の工程で
レーザ光の照射領域が描く軌跡は、交差領域において交点を有し、かつ、該交差領域にお
いて角度を形成する、ガラス層の形成方法である。
【0021】
また、本発明の一態様は、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを第1の
基板上に配置する第1の工程と、第1のレーザ光の照射開始領域に重ならないように、第
1のレーザ光の照射領域をフリットペースト上で相対的に移動させ、ガラス層を形成する
第2の工程と、ガラス層を介して第1の基板と第2の基板とを対向させ、ガラス層に第2
のレーザ光を照射することで、第1の基板と第2の基板とを溶着させる第3の工程と、を
この順で行う封止体の作製方法であり、第2の工程は、第1のレーザ光の照射領域が描く
軌跡が角度をもって重なるように、第1のレーザ光の照射領域をフリットペースト上で相
対的に移動させるステップを有する、封止体の作製方法である。また、本発明の一態様は
、ガラスフリット及びバインダを含むフリットペーストを第1の基板上に配置する第1の
工程と、第1のレーザ光の照射開始領域に重ならないように、第1のレーザ光の照射領域
をフリットペースト上で相対的に移動させ、ガラス層を形成する第2の工程と、ガラス層
を介して第1の基板と第2の基板とを対向させ、ガラス層に第2のレーザ光を照射するこ
とで、第1の基板と第2の基板とを溶着させる第3の工程と、をこの順で行う封止体の作
製方法であり、該第2の工程で第1のレーザ光の照射領域が描く軌跡は、交差領域におい
て交点を有し、かつ、該交差領域において角度を形成する、封止体の作製方法である。
【0022】
また、上記本発明の一態様において、レーザ光(又は第1のレーザ光)の照射領域が描く
軌跡が角度をもって重なる(言い換えると、該軌跡が交差領域において角度を形成する)
際、その角度は0°より大きく90°以下であることが好ましく、10°以上80°以下
であることがより好ましく、20°以上70°以下であることがさらに好ましく、30°
以上60°以下であることがさらに好ましく、40°以上50°以下であることが特に好
ましい。
【0023】
上記本発明の一態様において、レーザ光(又は第1のレーザ光)の照射領域が描く軌跡が
角度をもって重なる際、その角度は0°より大きく80°未満であることが好ましく、0
°より大きく60°以下であることがより好ましく、0°より大きく40°以下であるこ
とがさらに好ましく、0°より大きく20°以下であることが特に好ましい。
【0024】
また、上記本発明の一態様において、レーザ光(又は第1のレーザ光)の照射領域が描く
軌跡が角度をもって重なる際、その角度は30°以上90°以下であることが好ましく、
50°以上90°以下であることがより好ましく、70°以上90°以下であることがさ
らに好ましく、80°以上90°以下であることが特に好ましい。
【0025】
また、上記本発明の一態様において、第1の工程では、枠状にフリットペーストを配置す
ることが好ましい。
【0026】
また、上記本発明の一態様の封止体の作製方法において、第3の工程では、第2の工程に
て、第1のレーザ光の照射領域が描いた軌跡が重なった領域(又は交差領域)に、第2の
レーザ光を複数回照射することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様では、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なることでガラス層が途切れて
も、該ガラス層が途切れた領域の面積は小さい。また、ガラス層の端部の膜厚と他の部分
の膜厚との差が小さい。したがって、ガラス層を介して対向する一対の基板を、ガラス層
を溶融させることで溶着させる際に、該ガラス層が途切れた領域を十分に埋めることがで
き、密閉性の高い封止体を作製できる。
【0028】
また、本発明の一態様では、レーザ光を照射することでフリットペーストを局所的に加熱
してガラス層を形成するため、耐熱性の低い材料が設けられた基板上にガラス層を形成で
きる。または、本発明の一態様により、新規な発光装置や表示装置などを提供することが
できる。なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本
発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外
の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細
書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一態様のガラス層の形成方法を説明する図。
【
図2】比較例であるガラス層の形成方法を説明する図。
【
図3】本発明の一態様のガラス層の形成方法を説明する図。
【
図4】本発明の一態様の封止体の作製方法を説明する図。
【
図9】実施例1に係るガラス層の光学顕微鏡観察写真。
【
図10】実施例1に係るガラス層の光学顕微鏡観察写真。
【
図11】実施例1に係るガラス層の非形成領域の面積を求めた結果を示すグラフ。
【
図12】実施例1に係るガラス層のデジタル顕微鏡観察写真。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定さ
れず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し
得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の
記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0031】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同
一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の
機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0032】
また、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実
際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必
ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様のガラス層の形成方法、及び、本発明の一態様の封止
体の作製方法について説明する。
【0034】
<比較例であるガラス層の形成方法>
はじめに、比較例であるガラス層の形成方法について
図2を用いて説明する。
【0035】
まず、基板101上に、ガラスフリット、有機溶媒、及びバインダ(樹脂等)を含むフリ
ットペースト102を配置する(
図2(A))。そして、フリットペースト102にレー
ザ光を照射することで、有機溶媒やバインダが除去されたガラス層104を形成する(図
2(B))。
【0036】
図2(A)にレーザ光の照射開始領域111を示す。比較例では、レーザ光の照射をフリ
ットペースト102上にて開始する。照射開始領域111では、例えば、レーザとフリッ
トペースト102の間に、シャッター等のレーザ光を遮る物体を有さない状態でレーザを
点灯し、フリットペースト102にレーザ光を照射する。または、レーザとフリットペー
スト102の間に、シャッター等のレーザ光を遮る物体を有した状態でレーザを点灯した
後、該レーザ光を遮る物体を除去することで、フリットペースト102にレーザ光を照射
する。
【0037】
本実施の形態では、
図2(A)に実線の矢印で示す軌跡(
図2(B)に点線の矢印で示す
軌跡と対応)のように、レーザ光をフリットペースト102に沿って照射する。続いて、
図2(B)に実線の矢印で示す軌跡のように、照射開始領域111と重ねてレーザ光を照
射した後、レーザ光の照射を終了する。
図2(B)にレーザ光の照射終了領域112を示
す。
【0038】
図1(C)に、
図2(B)における領域106aの拡大図を示す。また、
図2(C)に、
図2(B)における領域106cの拡大図を示す。領域106cは、レーザ光の照射領域
が描く軌跡が重なる領域を含んでおり、具体的には、照射開始領域111に重ねてレーザ
光を照射した領域を含む。
【0039】
領域106aでは、
図1(C)に示すように、フリットペースト102が配置されていた
領域に沿ってガラス層104が途切れることなく形成されている。
【0040】
一方、領域106cでは、
図2(C)に示すように、フリットペースト102が配置され
ていた領域の一部にガラス層104が形成されていない領域(ガラス層が途切れた領域、
ガラス層の非形成領域とも記す)が存在しており、ガラス層104が途切れている。ガラ
ス層の非形成領域の面積Sが大きいほど、一対の基板をガラス層104によって溶着して
封止体を作製しても、該封止体の密閉性が不十分となる可能性が高い。
【0041】
また、ガラス層104の端部にはガラスフリットが凝集しており、ガラス層104には、
他の部分に比べて膜厚が大きい部分がある。ガラス層104の膜厚が不均一であると、ガ
ラス層104を介して一対の基板を重ねた際にガラス層104と基板を均一に接触させる
ことができない。このような状態でレーザ光を照射し、一対の基板をガラス層104によ
って溶着しても、密閉性の高い封止体を得ることは難しい。また、ガラス層104におけ
る他の部分より厚い部分は、溶融するために要する時間が長く、レーザの走査速度を低下
させてしまい、好ましくない。
【0042】
<本発明の一態様のガラス層の形成方法>
次に、本発明の一態様のガラス層の形成方法について
図1及び
図3を用いて説明する。
【0043】
まず、基板101上に、ガラスフリット、有機溶媒、及びバインダを含むフリットペース
ト102を配置する(
図1(A))。
【0044】
フリットペースト102は、スクリーン印刷又はグラビア印刷法等の印刷法や、ディスペ
ンス法又はインクジェット法等の塗布法等を用いて基板101上に配置する。
【0045】
フリットペーストには、ガラスフリット(粉末のガラス材料)、有機溶媒、及びバインダ
(樹脂等)が含まれる。フリットペーストは、様々な材料、構成を用いることができる。
例えば、テルピネオール、n-ブチルカルビトールアセテート等の有機溶媒や、エチルセ
ルロース等のセルロース系の樹脂を用いることができる。また、フリットペーストには、
レーザ光の波長の光を吸収する光吸収材が含まれていても良い。
【0046】
ガラス材料は、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化
バリウム、酸化セシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ホウ素、酸化バナジウム
、酸化亜鉛、酸化テルル、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化鉛、酸化スズ、酸化リン
、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化鉄、酸化銅、二酸化マンガン、酸化モリブデン、
酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化リ
チウム、酸化アンチモン、ホウ酸鉛ガラス、リン酸スズガラス、バナジン酸塩ガラス、及
びホウケイ酸ガラスよりなる群から選択された一以上の化合物を含むことが好ましい。赤
外光を吸収させるため、少なくとも一種類以上の遷移金属を含むことが好ましい。
【0047】
なお、フリットペースト102を配置した後、乾燥処理を行い、フリットペースト102
中の有機溶媒を除去してもよい。乾燥処理では、基板101上に設けられた材料の耐熱温
度よりも低い温度でフリットペースト102を乾燥させる。例えば、100℃以上200
℃以下の温度で、10分以上30分以下、乾燥処理を行えばよい。
【0048】
そして、フリットペースト102にレーザ光を照射することで、有機溶媒やバインダが除
去されたガラス層104を形成する(
図1(B))。
【0049】
なお、レーザ光の照射によって、フリットペースト102に含まれるガラスフリットが完
全に溶融、固着して一体となってもよいし、ガラスフリット同士が部分的に溶着する状態
であってもよい。また、レーザ光の照射条件によっては、有機溶媒やバインダが完全に除
去されずにガラス層104中に残存している場合もある。
【0050】
レーザ光としては、例えば、可視光領域、赤外領域、又は紫外領域の波長のレーザ光を用
いることができる。
【0051】
可視光領域又は赤外領域の波長のレーザ光を発振するレーザとしては、例えば、Arレー
ザ、Krレーザ、CO2レーザ等の気体レーザや、YAGレーザ、YVO4レーザ、YL
Fレーザ、YAlO3レーザ、GdVO4レーザ、KGWレーザ、KYWレーザ、アレキ
サンドライトレーザ、Ti:サファイアレーザ、Y2O3レーザ等の固体レーザが挙げら
れる。なお、固体レーザにおいては、基本波や第2高調波を適用することが好ましい。ま
た、GaN、GaAs、GaAlAs、InGaAsP等の半導体レーザも用いることが
できる。半導体レーザは、発振出力が安定、メンテナンス頻度が少なく運用コストが安い
といったメリットがある。
【0052】
紫外領域の波長のレーザ光を発振するレーザとしては、例えば、XeClレーザ、KrF
レーザなどのエキシマレーザや、YAGレーザ、YVO4レーザ、YLFレーザ、YAl
O3レーザ、GdVO4レーザ、KGWレーザ、KYWレーザ、アレキサンドライトレー
ザ、Ti:サファイアレーザ、Y2O3レーザ等の固体レーザが挙げられる。なお、固体
レーザにおいては、第3高調波や第4高調波を適用するのが好ましい。
【0053】
図1(A)にレーザ光の照射開始領域111を示す。ここでは、レーザ光の照射をフリッ
トペースト102と重ならない位置から開始する。
【0054】
なお、レーザ光の照射開始領域111は、基板101やフリットペースト102と重なっ
ていてもよい。ただし、基板101上に被封止体が設けられている場合、被封止体にレー
ザ光を照射することで、該被封止体が熱によるダメージを受けて劣化する恐れがある。し
たがって、基板101上の被封止体と、レーザ光の照射開始領域111やレーザ光の照射
領域の軌跡とは重ならないことが好ましい。
【0055】
本実施の形態では、レーザ光の照射領域が描く軌跡がレーザ光の照射開始領域111に重
ならないように、レーザ光をフリットペースト102に沿って照射する(
図1(A)に実
線の矢印で示す軌跡や、それに対応する
図1(B)に点線の矢印で示す軌跡を参照)。そ
して、
図1(B)に実線の矢印で示す軌跡のように、レーザ光の照射領域が描いた軌跡と
重ねてフリットペースト102にレーザ光を照射した後、レーザ光の照射を終了する。図
1(B)にレーザ光の照射終了領域112を示す。
【0056】
図1(C)(D)に
図1(B)における領域106a、bの拡大図をそれぞれ示す。領域
106bは、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なる領域(交差領域とも記す)を含む。
該交差領域は、交点を有する。
【0057】
領域106aでは、
図1(C)に示すように、フリットペースト102が配置されていた
領域に沿ってガラス層104が途切れることなく形成されている。
【0058】
領域106bでは、
図1(D)に示すように、フリットペースト102が配置されていた
領域の一部にガラス層104が形成されていない領域(ガラス層が途切れた領域、ガラス
層の非形成領域とも記す)が存在しており、ガラス層104が途切れている。しかし、先
に記した比較例であるガラス層の形成方法を適用した場合に比べて、本発明の一態様を適
用することで、ガラス層の非形成領域の面積を小さくすることができる。したがって、一
対の基板をガラス層104によって溶着して封止体を作製した際に、該封止体の密閉性が
不十分となることを抑制できる。
【0059】
また、先に記した比較例であるガラス層の形成方法を適用した場合に比べて、本発明の一
態様を適用することで、ガラス層104の端部にガラスフリットが凝集することを抑制で
きる。そのため、ガラス層104の膜厚のばらつきを低減でき、ガラス層104を介して
一対の基板を重ねた際にガラス層104と基板を均一に接触させることができる。したが
って、レーザ光を照射し、一対の基板をガラス層104によって溶着することで、密閉性
の高い封止体を得ることができる。
【0060】
以上のように、本発明の一態様では、レーザ光の照射領域が描く軌跡が、レーザ光の照射
開始領域以外の領域で重なるように、レーザ光を照射する。これにより、ガラス層が途切
れる領域の面積を小さくできる。また、ガラス層の端部の膜厚と他の部分の膜厚との差を
小さくできる。
【0061】
図3(A)に、フリットペースト102上の、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なる領
域(交差領域)の拡大図を示す。
【0062】
本発明の一態様では、レーザ光の照射領域が描く軌跡が角度をもって重なる(該交差領域
において角度を形成する)ように、レーザ光を照射する。
図3(A)に示すように、レー
ザ光は、照射開始領域111から、矢印S1、矢印S2、矢印S3の順に軌跡を描くよう
にフリットペースト102上に照射される。つまり、本発明の一態様では、矢印S1と矢
印S3とがなす角度θが0°ではない。
【0063】
レーザ光の照射領域が矢印S1から矢印S2に進む際、その角度(180°-θ)が小さ
いと、フリットペースト102の一部にレーザ光が局所的に照射され続ける。これにより
、形成されたガラス層104にクラックが生じる恐れがある。
【0064】
ここで、基板上に配置されたフリットペーストに、レーザ光の照射領域が描く軌跡が角度
θをもって重なる(該交差領域において角度θを形成する)ようにレーザ光を照射し、ガ
ラス層を形成した結果について、
図12を用いて説明する。
図12(A)は、θ=10°
、
図12(B)は、θ=30°、
図12(C)は、θ=80°の条件で形成したガラス層
をデジタル顕微鏡で観察した結果である。
【0065】
ここでは、フリットペーストに対し、200℃で20分、乾燥処理を施した後、レーザ光
を照射した。レーザ光の照射は、波長820nmの半導体レーザを用い、スポット径φ0
.8mm、出力6.5W、走査速度30mm/secの条件で行った。なお、照射したレ
ーザ光は、連続発振型(CW:continuous-wave)のレーザ光である。
【0066】
図12(B)(C)に示す通り、θ=80°の条件に比べて、θ=30°の条件では、ク
ラックの数が少ないことがわかった(クラックの位置を矢印で示した)。また、
図12(
A)に示す通り、θ=10°の条件では、クラックが見られなかった。
【0067】
以上のことから、レーザ光の照射領域が描く軌跡が角度をもって重なる(該交差領域にお
いて角度θを形成する)際、その角度θが小さいほど、ガラス層104にクラックが生じ
ることを抑制できるため好ましい。具体的には、角度θは0°より大きく80°未満であ
ることが好ましく、0°より大きく60°以下であることがより好ましく、0°より大き
く40°以下であることがさらに好ましく、0°より大きく20°以下であることが特に
好ましい。
【0068】
また、実施例1にて後述するように、角度θが大きいほど、ガラス層の非形成領域の面積
Sを小さくすることができる。ガラス層の非形成領域の面積Sが小さいほど、一対の基板
をガラス層104によって溶着して封止体を作製した際に、該封止体の密閉性が不十分と
なることを抑制でき好ましい。具体的には、角度θは30°以上90°以下であることが
好ましく、50°以上90°以下であることがより好ましく、70°以上90°以下であ
ることがさらに好ましく、80°以上90°以下であることが特に好ましい。
【0069】
また、レーザ光の照射領域が描く軌跡が角度をもって重なる(該交差領域において角度θ
を形成する)際、その角度θは0°より大きく90°以下であることが好ましく、10°
以上80°以下であることがより好ましく、20°以上70°以下であることがさらに好
ましく、30°以上60°以下であることがさらに好ましく、40°以上50°以下であ
ることが特に好ましい。角度θが30°以上80°未満程度であれば、ガラス層104に
クラックが生じることを抑制し、かつ、ガラス層の非形成領域の面積Sを小さくできるた
め、該ガラス層104を用いて密閉性の高い封止体を形成できる。
【0070】
なお、
図3(B)に示すように、レーザ光の照射開始領域111から、枠状のフリットペ
ースト102の角部(曲線部)にレーザ光の照射領域を移動させてもよい。このとき、矢
印S1と矢印S3の接点における接線と矢印S1とがなす角度を上記角度θとする。
【0071】
ただし、封止体を用いた装置の作製時や使用時には、該装置の角部に力が加わりやすく、
貼り合わされた一対の基板は角部から剥がれやすい。したがって、封止体の角部は特に密
閉性が高いことが望まれる。
【0072】
そのため、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なる領域(交差領域)は、辺部(直線部)
にあることが好ましい。レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なる領域を、角部(曲線部)
以外の場所にすることで、ガラス層104の角部にクラックが生じることを抑制できる。
また、ガラス層104の角部にガラス層の非形成領域が生じることを抑制できる。
【0073】
また、
図3(C)(D)に示すように、フリットペースト102が突出部108を有する
場合、突出部108と重なるレーザ光の照射開始領域111からレーザ光を照射してもよ
い。そして、
図3(C)に実線の矢印で示す軌跡(
図3(D)に点線の矢印で示す軌跡と
対応)のように、照射開始領域111に重ねることなく、レーザ光をフリットペースト1
02に沿って照射する。その後、
図3(D)に実線の矢印で示す軌跡のように、レーザ光
の照射領域が描いた軌跡と重ねてレーザ光を照射した後、照射終了領域112にて、レー
ザ光の照射を終了する。
【0074】
<本発明の一態様を適用して作製された封止体>
次に、本発明の一態様を適用して作製された封止体と、その作製方法について
図4を用い
て説明する。
図4(A)~(C)では、それぞれ平面図と、該平面図における一点鎖線A
-B間の断面図を示す。ただし、
図4(B)(C)の平面図において、基板109は省略
する。
【0075】
まず、本発明の一態様を適用して作製された封止体を
図4(C)に示す。
図4(C)に示
す封止体は、基板101と基板109が封止材105によって貼り合わされている。基板
101、基板109、及び封止材105によって封止された空間103には、被封止体が
封入されていてもよい。
【0076】
基板101や基板109としては、封止体及び封止体に封入される被封止体の製造工程に
耐えられる程度の耐熱性を備える材料を用いる。また、その厚さ及び大きさは製造装置に
適用可能であれば特に限定されない。例えば、ガラス基板、セラミックス基板、金属基板
等の無機材料を用いた基板や、樹脂基板と無機材料の積層体、FRP(Fiber-Re
inforced Plastics)、プリプレグ等の有機材料と無機材料の複合材料
を用いた基板が挙げられる。また、基板101や基板109は被封止体が破壊しない程度
の可撓性を有していてもよい。例えば、厚さが50μm以上500μm以下の薄いガラス
や金属箔を用いることができる。ただし、基板101又は基板109の少なくとも一方は
、レーザ光を透過する材料を用いる。
【0077】
基板101、基板109、及び封止材105によって封止された空間103は、希ガスも
しくは窒素ガスなどの不活性ガス、又は樹脂などの固体で充填されていてもよく、減圧雰
囲気であってもよい。また、空間103に、乾燥剤を有していても良い。
【0078】
本発明の一態様の封止体に封入する被封止体としては、特に限定は無く、トランジスタ等
の半導体素子、発光素子、液晶素子、プラズマディスプレイを構成する素子、カラーフィ
ルタ等が挙げられる。発光素子は、電流又は電圧によって輝度が制御される素子をその範
疇に含んでおり、具体的には、無機EL素子、有機EL素子等が含まれる。また、電子イ
ンク表示装置(電子ペーパー)など、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体
も適用できる。
【0079】
封止材105は、ガラスフリットを用いて形成できる。また、ガラスリボンを用いて形成
してもよい。ガラスフリットやガラスリボンはガラス材料を含んでいればよい。
【0080】
<本発明の一態様の封止体の作製方法>
はじめに、基板101上に、ガラスフリット、有機溶媒、及びバインダを含むフリットペ
ースト102を配置する(
図4(A))。
【0081】
次に、フリットペースト102に第1のレーザ光117を照射することで、有機溶媒やバ
インダが除去されたガラス層104を形成する(
図4(B))。ガラス層104は、前述
の本発明の一態様のガラス層の形成方法を適用して形成すればよい。
【0082】
第1のレーザ光117は、照射開始領域111から照射し始める。第1のレーザ光117
の照射領域は、照射開始領域111に重ねることなく、フリットペースト102上で相対
的に移動させる(
図4(A)に実線の矢印で示す軌跡や、それに対応する
図4(B)に点
線の矢印で示す軌跡を参照)。
【0083】
そして、
図4(B)に実線の矢印で示す軌跡のように、第1のレーザ光117の照射領域
が描いた軌跡と重ねてフリットペースト102に第1のレーザ光117を照射した後、第
1のレーザ光117の照射を終了する。
【0084】
なお、ガラス層104の上面が平坦であると、貼り合わせる基板との密着性が高くなるた
め、好ましい。よって、厚さや平坦性を均一にするために、平板などを押し当てる、ヘラ
などで上面をならす等の処理を施しても良い。該処理は、ガラス層104の形成前や形成
後に行うことができる。
【0085】
次に、ガラス層104を介して基板101と基板109が対向するように、基板101と
基板109を配置する。そして、第2のレーザ光118を照射することで、ガラス層10
4を局所的に加熱する。これにより、ガラスフリットが溶融して基板101及び基板10
9は溶着される(
図4(C))。
【0086】
第2のレーザ光118はガラス層104が設けられた領域に沿って走査しながら照射する
ことが好ましい。第2のレーザ光118は、基板101又は基板109のいずれを介して
照射してもよい。本実施の形態では、基板109を介して第2のレーザ光118を照射す
るため、第2のレーザ光118として、基板109を透過する波長の光を照射する。例え
ば、可視光領域又は赤外領域の波長の光を照射する。また、基板を透過しない高いエネル
ギー(例えば紫外領域の波長)を有する光を用い、ガラス層に直接レーザ光を照射して加
熱することもできる。
【0087】
第2のレーザ光118を照射してガラスフリットを加熱する際には、ガラス層104と貼
り合わせる基板109とが確実に接するように、圧力をかけながら処理することが好まし
い。例えば、第2のレーザ光118の照射領域外においてクランプなどを用いて挟んだ状
態で処理してもよいし、基板101又は基板109の一方又は両方から面状に圧力をかけ
てもよい。
【0088】
また、第2のレーザ光118が照射された後に、空間103が不活性雰囲気又は減圧雰囲
気となるように処理を行うことが好ましい。例えば、第2のレーザ光118を照射する前
にあらかじめフリットペースト102が塗布される領域よりも外側又は内側の領域に紫外
線硬化樹脂や熱硬化樹脂などの樹脂を配置し、不活性雰囲気下又は減圧雰囲気下で、基板
101及び基板109を仮接着した後、大気雰囲気下又は不活性雰囲気下で、レーザ光を
照射すればよい。ガラス層104は枠状に形成されているため、空間103内部が不活性
雰囲気又は減圧雰囲気に保たれ、大気圧下でレーザ光を照射することができるため、装置
構成を簡略化することができる。また、あらかじめ空間103内を減圧状態とすることで
、第2のレーザ光118の照射時に2枚の基板を押しつけるためのクランプ等の機構を用
いずとも、ガラス層104と基板109とが確実に接する状態とすることができる。
【0089】
図4(B)に示す領域113aでは、フリットペースト102が配置されていた領域の一
部にガラス層104が形成されていない領域が存在しており、ガラス層104が途切れて
いる。しかし、ガラス層の非形成領域の面積は小さい。よって、
図4(C)に示す領域1
13bでは、第2のレーザ光118の照射によって溶融したガラス層が、ガラス層の非形
成領域を埋めており、封止材105に途切れた箇所は存在していない。このように、本発
明の一態様を適用することで、密閉性の高い封止体を作製できる。
【0090】
ガラス層の非形成領域を埋めるための方法としては、例えば、ガラス層に他よりも厚い部
分を形成し、当該厚い部分にレーザ光を照射することも挙げられる。しかし、本発明の一
態様のガラス層の形成方法では、ガラス層の非形成領域の面積を十分に小さくでき、ガラ
ス層に他よりも厚い部分を設けないことも可能であるため、ガラス層形成時や封止体作成
時における、レーザ光の照射時間の短縮や、レーザの走査速度の高速化を実現できる。
【0091】
ここで、一対の基板(基板101及び基板109)をガラス層104によって溶着する前
後におけるガラス層104をそれぞれ光学顕微鏡で観察した結果を示す。
【0092】
まず、減圧雰囲気下でガラス層104を介して一対の基板を対向させ、ガラス層104の
外側を枠状に囲むようにあらかじめ一方の基板に配置しておいた紫外線硬化樹脂によって
一対の基板を仮接着した後、ガラス層104に基板101を介してレーザ光を照射し、一
対の基板を溶着した。
【0093】
図13(A)に溶着前、
図13(B)に溶着後に観察した結果を示す。
図13(A)は、
図4(B)に示す領域113aにおけるガラス層104を、
図13(B)は、
図4(C)
に示す領域113bにおけるガラス層104を、それぞれ光学顕微鏡で観察した結果の一
例に相当する。
【0094】
なお、ここでは基板101及び基板109としてガラス基板を用いた。また、ここでは、
真空度を1Paとし、圧力を1kN加えることで、ガラス層104と基板109を密着さ
せた。また、レーザ光の照射は、波長820nmの半導体レーザを用い、スポット径φ0
.8mm、出力7W、走査速度10mm/secの条件で行った。なお、照射したレーザ
光は、連続発振型のレーザ光である。
【0095】
図13(A)に示す通り、基板101上にガラス層104を形成した時点では、ガラス層
の非形成領域が存在する。一方、
図13(B)に示す通り、基板101及び基板109を
溶着した後では、溶融したガラス層によって、ガラス層の非形成領域が埋められているこ
とがわかる。以上の結果から、本発明の一態様を適用して作製したガラス層を用いること
で、密閉性の高い封止体を作製できることがわかった。
【0096】
特に、ガラス層の非形成領域近傍(又はガラス層104の端部)に第2のレーザ光118
を複数回照射することで、より確実にガラス層104の端部を溶融させ、ガラス層の非形
成領域を埋めることができる。例えば、第2のレーザ光118の照射領域が描く軌跡を、
ガラス層の非形成領域近傍にて重ねる(言い換えると、第2のレーザ光118の照射領域
が描く軌跡の交差領域をガラス層の非形成領域近傍に有する)ことが好ましい。また、第
1のレーザ光117の照射領域が描いた軌跡が重なった領域(交差領域)に、第2のレー
ザ光118を複数回照射すればよい。
【0097】
図14(A)(B)に、ガラス層の非形成領域近傍に第2のレーザ光118を照射した後
のガラス層104を光学顕微鏡で観察した結果の一例を示す。
図14(A)は、第2のレ
ーザ光118を1回照射した後の結果であり、
図14(B)は、2回照射した後の結果で
ある。この結果から、ガラス層の非形成領域近傍に第2のレーザ光を2回照射することで
、1回照射した場合に比べて、溶融したガラス層によってガラス層の非形成領域がより埋
められていることがわかる。
【0098】
また、本発明の一態様を適用することで、ガラス層104の端部にガラスフリットが凝集
することを抑制できる。そのため、ガラス層104の膜厚のばらつきを低減でき、ガラス
層104を介して一対の基板を重ねた際にガラス層104と基板を均一に接触させること
ができる。したがって、第2のレーザ光118を照射し、一対の基板をガラス層104に
よって溶着することで、密閉性の高い封止体を得ることができる。
【0099】
以上のように、本実施の形態では、ガラス層の形成工程において、レーザ光の照射開始領
域以外で、レーザ光の照射領域が描く軌跡が重なる(又は交差領域を有する)ように、レ
ーザ光を照射する。これにより、該軌跡がレーザ光の照射開始領域において重なる場合に
比べて、ガラス層が途切れる領域の面積を小さくできる。よって、一対の基板の溶着工程
にてガラス層を溶融させることで、該ガラス層が途切れた領域を十分に埋めることができ
る。したがって、本発明の一態様を適用して作製したガラス層を用いて密閉性の高い封止
体を作製できる。
【0100】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0101】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様を適用して作製した封止体が用いられた発光装置の一
例について、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0102】
本実施の形態の発光装置は、本発明の一態様の封止体に、被封止体である発光素子等が封
入されているため、信頼性が高い。同様に、本発明の一態様の封止体に、被封止体として
半導体素子や表示素子を封入することで、信頼性の高い半導体装置、表示装置等を作製で
きる。
【0103】
本実施の形態では、発光素子である有機EL素子を有する発光装置を例に挙げて説明する
。
【0104】
図5(A)に本発明の一態様の発光装置の平面図を示す。また、
図5(A)に示す一点鎖
線C-D間の断面図を
図5(B)に、一点鎖線E-F間の断面図を
図5(C)にそれぞれ
示す。
【0105】
図5(A)~(C)に示すように、本実施の形態の発光装置は、第1の面が互いに対向す
る基板101及び基板109と、空間103を基板101及び基板109とともに封止す
る枠状の封止材105と、基板101の第1の面に設けられた発光素子130と、を有す
る。
【0106】
発光素子130は、基板101上の第1の電極121と、第1の電極121上のEL層1
23と、EL層123上の第2の電極125と、を有する。第1の電極121の端部は隔
壁129によって覆われている。
【0107】
第2の電極125は、基板101上の導電層127と電気的に接続する。第1の電極12
1及び導電層127は封止材105の一部と重畳する。第1の電極121及び導電層12
7は隔壁129によって電気的に絶縁されている。
【0108】
第1の電極121及び導電層127は、基板101、基板109、及び封止材105によ
って封止された領域(封止領域ともいう)よりも外側に延在している。
【0109】
また、
図6(A)に本発明の一態様の発光装置の平面図を示す。また、
図6(A)に示す
一点鎖線G-H間の断面図を
図6(B)に示す。
【0110】
図6(A)(B)に示すアクティブマトリクス型の発光装置は、支持基板801上に、発
光部802、駆動回路部803(ゲート側駆動回路部)、駆動回路部804(ソース側駆
動回路部)及び封止材805を有する。発光部802及び駆動回路部803、804は、
支持基板801、封止基板806及び封止材805で形成された空間810に封止されて
いる。
【0111】
図6(B)に示す発光部802は、スイッチング用のトランジスタ140aと、電流制御
用のトランジスタ140bと、トランジスタ140bの配線(ソース電極またはドレイン
電極)に電気的に接続された第1の電極121とを含む複数の発光ユニットにより形成さ
れている。
【0112】
発光素子130はトップエミッション構造であり、第1の電極121、EL層123、及
び第2の電極125によって構成されている。また、第1の電極121の端部を覆って隔
壁129が形成されている。
【0113】
支持基板801上には、駆動回路部803、804に外部からの信号(ビデオ信号、クロ
ック信号、スタート信号、またはリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続
するための引き出し配線809が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC80
8(Flexible Printed Circuit)を設ける例を示している。な
お、FPC808にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。本明細
書における発光装置は、発光装置本体だけでなく、発光装置本体にFPCまたはPWBが
取り付けられた状態のものも範疇に含むものとする。
【0114】
駆動回路部803、804は、トランジスタを複数有する。
図6(B)では、駆動回路部
803が、nチャネル型のトランジスタ142及びpチャネル型のトランジスタ143を
組み合わせたCMOS回路を有する例を示している。駆動回路部の回路は、種々のCMO
S回路、PMOS回路又はNMOS回路で形成することができる。また、本実施の形態で
は、発光部が形成された基板上に駆動回路が形成されたドライバー一体型を示すが、この
構成に限定されるものではなく、発光部が形成された基板とは別の基板に駆動回路を形成
することもできる。
【0115】
工程数の増加を防ぐため、引き出し配線809は、発光部や駆動回路部に用いる電極や配
線と同一の材料、同一の工程で作製することが好ましい。本実施の形態では、引き出し配
線809を、発光部802及び駆動回路部803に含まれるトランジスタのゲート電極と
同一の材料、同一の工程で作製した例を示す。
【0116】
<発光装置の材料>
次に、発光装置に用いることができる材料について説明する。なお、基板、封止材、及び
空間については、先の実施の形態で例示した材料を適用することができる。
【0117】
[発光素子]
発光装置が備える発光素子は、一対の電極(第1の電極121及び第2の電極125)と
、該一対の電極間に設けられたEL層123とを有する。該一対の電極の一方は陽極とし
て機能し、他方は陰極として機能する。
【0118】
トップエミッション構造の発光素子では、上部電極に可視光を透過する導電膜を用いる。
また、下部電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。ボトムエミッシ
ョン(下面射出)構造の発光素子では、下部電極に可視光を透過する導電膜を用いる。ま
た、上部電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。デュアルエミッシ
ョン(両面射出)構造の発光素子では、上部電極及び下部電極の双方に可視光を透過する
導電膜を用いる。
【0119】
可視光を透過する導電膜は、例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム
亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛などを用いて形成することができる
。また、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、
パラジウム、もしくはチタン等の金属材料、又はこれら金属材料の窒化物(例えば、窒化
チタン)等も、透光性を有する程度に薄く形成することで用いることができる。また、グ
ラフェン等を用いても良い。
【0120】
可視光を反射する導電膜は、例えば、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングス
テン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、もしくはパラジウム等の金属材料、アル
ミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合
金等のアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)、又は、銀と銅の合金等の銀を含む
合金を用いて形成することができる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。また
、上記金属材料や合金に、ランタン、ネオジム、又はゲルマニウム等が添加されていても
良い。
【0121】
電極は、それぞれ、真空蒸着法やスパッタリング法を用いて形成すれば良い。また、銀ペ
ースト等を用いる場合には、塗布法やインクジェット法を用いれば良い。
【0122】
第1の電極121と第2の電極125の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加す
ると、EL層123に第1の電極121側から正孔が注入され、第2の電極125側から
電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層123において再結合し、EL層12
3に含まれる発光物質が発光する。
【0123】
EL層123は少なくとも発光層を有する。EL層123は、発光層以外の層として、正
孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質
、電子注入性の高い物質、又はバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物
質)等を含む層をさらに有していても良い。
【0124】
EL層123には低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機
化合物を含んでいても良い。EL層123を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着
法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができ
る。
【0125】
[隔壁]
隔壁129の材料としては、樹脂又は無機絶縁材料を用いることができる。樹脂としては
、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、エポキシ
樹脂、又はフェノール樹脂等を用いることができる。特に、隔壁129の作製が容易とな
るため、ネガ型の感光性樹脂、あるいはポジ型の感光性樹脂を用いることが好ましい。
【0126】
隔壁129は、第1の電極121の端部を覆って設けられている。隔壁129の上層に形
成されるEL層123や第2の電極125の被覆性を良好なものとするため、隔壁129
の上端部又は下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。
【0127】
隔壁の形成方法は、特に限定されないが、フォトリソグラフィ法、スパッタ法、蒸着法、
液滴吐出法(インクジェット法等)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)等を
用いれば良い。
【0128】
[トランジスタ]
表示装置が有するトランジスタ(トランジスタ140a、140b、142、143等)
の構造は特に限定されない。例えば、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ
型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型又はボトムゲート型のいずれのト
ランジスタ構造としてもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例え
ば、シリコン、ゲルマニウム等が挙げられる。または、In-Ga-Zn系金属酸化物等
の、インジウム、ガリウム、亜鉛のうち少なくとも一つを含む酸化物半導体を用いてもよ
い。
【0129】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結
晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域
を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジ
スタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0130】
[絶縁層]
絶縁層114は、トランジスタを構成する半導体への不純物の拡散を抑制する効果を奏す
る。絶縁層114としては、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜
などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0131】
絶縁層116としては、トランジスタ起因の表面凹凸を低減するために平坦化機能を有す
る絶縁膜を選択するのが好適である。例えば、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテ
ン系樹脂等の有機材料を用いることができる。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料
(low-k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を
複数積層させることで、絶縁層116を形成してもよい。
【0132】
[カラーフィルタ、ブラックマトリクス、オーバーコート]
カラーフィルタ166は、画素からの透過光を調色し、色純度を高める目的で設けられて
いる。例えば、白色の発光素子を用いてフルカラーの表示装置とする場合には、異なる色
のカラーフィルタを設けた複数の画素を用いる。その場合、赤色(R)、緑色(G)、青
色(B)の3色のカラーフィルタを用いてもよいし、これに黄色(Y)を加えた4色とす
ることもできる。また、R、G、B(及びY)に加えて白色(W)の画素を用い、4色(
又は5色)としてもよい。
【0133】
また、隣接するカラーフィルタ166の間に、ブラックマトリクス164が設けられてい
る。ブラックマトリクス164は隣接する画素から回り込む光を遮光し、隣接画素間にお
ける混色を抑制する。ブラックマトリクス164は異なる発光色の隣接画素間にのみ配置
し、同色画素間には設けない構成としてもよい。ここで、カラーフィルタ166の端部を
、ブラックマトリクス164と重なるように設けることにより、光漏れを抑制することが
できる。ブラックマトリクス164は、画素の透過光を遮光する材料を用いることができ
、金属材料や顔料を含む樹脂材料などを用いて形成することができる。なお、ブラックマ
トリクス164を駆動回路部などの発光部802以外の領域に設けると、導波光などによ
る意図しない光漏れを抑制できるため好ましい。
【0134】
また、
図6(B)に示すように、カラーフィルタ166とブラックマトリクス164を覆
うオーバーコート168を設けると、カラーフィルタ166やブラックマトリクス164
に含まれる顔料などの不純物が発光素子等に拡散することを抑制できる。オーバーコート
168は透光性の材料を用い、無機絶縁材料や有機絶縁材料を用いることができる。
【0135】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0136】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様を適用して作製した封止体が用いられた電子機器及び
照明装置の一例について、
図7及び
図8を用いて説明する。
【0137】
本実施の形態の電子機器や照明装置は、本発明の一態様の封止体に、被封止体である素子
(半導体素子、発光素子、又は表示素子等)が封入されているため、信頼性が高い。
【0138】
本発明の一態様を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテ
レビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタル
ビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう
)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機など
が挙げられる。これらの電子機器及び照明装置の具体例を
図7及び
図8に示す。
【0139】
図7(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐
体7101に表示部7102が組み込まれている。表示部7102では、映像を表示する
ことが可能である。本発明の一態様の表示装置は、表示部7102に用いることができる
。また、ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0140】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が有する操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機7111により行うことができる。リモコン操作機7111が有する操作キー
により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7102に表示される映像を
操作することができる。また、リモコン操作機7111に、当該リモコン操作機7111
から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0141】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを有する構成とする。受信機に
より一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線によ
る通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送
信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0142】
図7(B)は、コンピュータの一例を示している。コンピュータ7200は、本体720
1、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポ
インティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、本発明の一態様の表示
装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0143】
図7(C)は、携帯型ゲーム機の一例を示している。携帯型ゲーム機7300は、筐体7
301a及び筐体7301bの二つの筐体で構成されており、連結部7302により、開
閉可能に連結されている。筐体7301aには表示部7303aが組み込まれ、筐体73
01bには表示部7303bが組み込まれている。また、
図7(C)に示す携帯型ゲーム
機は、スピーカ部7304、記録媒体挿入部7305、操作キー7306、接続端子73
07、センサ7308(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液
、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、
湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、LEDランプ、マイ
クロフォン等を有している。もちろん、携帯型ゲーム機の構成は上述のものに限定されず
、少なくとも表示部7303a、表示部7303bの両方、又は一方に本発明の一態様の
表示装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる
。
図7(C)に示す携帯型ゲーム機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータ
を読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型ゲーム機と無線通信を行って情報を共
有する機能を有する。なお、
図7(C)に示す携帯型ゲーム機が有する機能はこれに限定
されず、様々な機能を有することができる。
【0144】
図7(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に
組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピ
ーカ7405、マイク7406などを有している。なお、携帯電話機7400は、本発明
の一態様の表示装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0145】
図7(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報
を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、
表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0146】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表
示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示
モードと入力モードの二つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0147】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を
主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。
【0148】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロセンサ、加速度センサ等の傾きを検出するセ
ンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断し
て、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0149】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作
ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類に
よって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画の
データであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0150】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示
部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モード
から表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0151】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部74
02に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。ま
た、表示部に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源
を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0152】
図7(E)は、二つ折り可能なタブレット型端末(開いた状態)の一例を示している。タ
ブレット型端末7500は、筐体7501a、筐体7501b、表示部7502a、表示
部7502bを有する。筐体7501aと筐体7501bは、軸部7503により接続さ
れており、該軸部7503を軸として開閉動作を行うことができる。また、筐体7501
aは、電源7504、操作キー7505、スピーカ7506等を有している。なお、タブ
レット型端末7500は、本発明の一態様の表示装置を表示部7502a、表示部750
2bの両方、又は一方に用いることにより作製される。
【0153】
表示部7502aや表示部7502bは、少なくとも一部をタッチパネルの領域とするこ
とができ、表示された操作キーにふれることでデータ入力をすることができる。例えば、
表示部7502aの全面にキーボードボタンを表示させてタッチパネルとし、表示部75
02bを表示画面として用いることができる。
【0154】
図8に示す室内の照明装置7601、卓上照明装置7603、及び面状照明装置7604
は、それぞれ本発明の一態様の発光装置を用いた照明装置の一例である。本発明の一態様
の発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。
また、厚みが薄いため、壁に取り付けて使用することができる。
【0155】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例0156】
本実施例では、本発明の一態様を適用して、ガラス層を形成した結果について説明する。
【0157】
本実施例では、10個の試料(試料1~9、及び比較試料)を作製した。試料1~9では
、実施の形態1にて示した本発明の一態様のガラス層の形成方法を適用し、比較試料は、
実施の形態1にて示した比較例であるガラス層の形成方法を適用した。
【0158】
はじめに、スクリーン印刷法を用いて、基板101上に枠状のフリットペースト102を
配置した(
図4(A))。基板101にはガラス基板を用い、フリットペースト102に
は酸化ビスマス等を含むガラスペーストを用いた。
【0159】
そして、クリーンオーブン内にて、200℃で20分の乾燥処理を行った。
【0160】
次に、フリットペースト102に第1のレーザ光117を照射することでガラス層104
を形成した(
図4(B))。レーザ光の照射は、波長820nmの半導体レーザを用い、
スポット径φ0.8mm、出力3.5W、走査速度10mm/secの条件で行った。な
お、照射したレーザ光は、連続発振型のレーザ光である。
【0161】
試料1~9では、第1のレーザ光117の照射開始領域111を、フリットペースト10
2と重ならない基板101上の領域とした。第1のレーザ光117は、照射開始領域11
1と重ならないように、フリットペースト102に沿って照射した。そして、第1のレー
ザ光117の照射領域が描く軌跡が重なるように、フリットペースト102に第1のレー
ザ光117を照射した後、第1のレーザ光117の照射を終了した。試料1~9では、フ
リットペースト102上で第1のレーザ光117の照射領域が描く軌跡は角度をもって重
なり、その角度(
図3(A)の角度θ)は、それぞれ10°、20°、30°、40°、
50°、60°、70°、80°、90°とした。
【0162】
比較試料では、第1のレーザ光117の照射をフリットペースト102上にて開始し、フ
リットペースト102に沿って第1のレーザ光117を照射した。具体的には、レーザと
フリットペースト102の間にシャッターを有した状態でレーザを点灯した後、レーザと
フリットペースト102の間からシャッターを除去することで、フリットペースト102
にレーザ光を照射した。第1のレーザ光117の照射領域が描いた軌跡は、第1のレーザ
光117の照射開始領域で重なった。また、第1のレーザ光117の照射領域が描いた軌
跡は角度をもたずに(θ=0°、該軌跡が第1のレーザ光117の照射開始領域で重なる
ように、ともいえる)重なった。
【0163】
図9(A)(B)及び
図10(A)(B)に、基板101上に形成されたガラス層104
を光学顕微鏡で観察した結果を示す。ここでは
図4(B)に示す領域113aに相当する
領域の観察結果を示す。
図9(A)はθ=30°、
図9(B)はθ=50°、
図10(A
)はθ=80°の条件で形成した試料の結果であり、
図10(B)は、比較試料(θ=0
°)の結果である。
【0164】
図9(A)(B)及び
図10(A)(B)に示すように、各試料には、ガラス層の非形成
領域が存在しており、ガラス層104が途切れていることがわかる。
【0165】
ここで、各試料におけるガラス層の非形成領域の面積Sを求めた結果について
図11に示
す。
図11では、試料1~9における面積Sを、比較試料における面積Sを1とした場合
の相対比でそれぞれ表している。
【0166】
図11に示すように、本発明の一態様が適用された試料1~9では、比較試料に比べて面
積Sが小さいことがわかった。特に、角度θが30°以上90°以下である試料では、面
積Sが、比較試料における面積Sの半分以下となり、さらに角度θが80°以上90°以
下である試料では、面積Sは、比較試料における面積Sの1/5以下となった。
【0167】
ガラス層の非形成領域の面積が大きいと、後の溶着工程で、一対の基板とガラス層との溶
着が十分にできず、作製した封止体の密閉性も不十分となってしまう。しかし、本発明の
一態様を適用することで、ガラス層の非形成領域の面積を小さくすることができ、溶着工
程により密閉性の高い封止体を得られることが示唆された。