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特開2023-182725バックライト用波長変換部材、及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182725
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】バックライト用波長変換部材、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20231219BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20231219BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20231219BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231219BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20231219BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/00 Z
F21S2/00 411
F21S2/00 431
F21S2/00 481
B32B27/18 Z
G02B5/02 B
G02F1/13357
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171678
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2019549257の分割
【原出願日】2018-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2017200602
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和則
(72)【発明者】
【氏名】堤 絵美
(72)【発明者】
【氏名】庭木 美佳
(72)【発明者】
【氏名】金野 潤
(72)【発明者】
【氏名】荷方 惣一朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀敏
(57)【要約】
【課題】特に、量子ドットの凝集の問題や散乱剤使用の問題を解決し、光変換効率の低下を抑え、量子ドットを含有する樹脂成形体の光変換効率の向上を図ることが可能なバックライト用波長変換部材、及びその製造方法、並びに、波長変換部材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のバックライト用波長変換部材は、複数の樹脂層が積層され、少なくとも一層の樹脂層に量子ドットを含有し、前記複数の樹脂層が、共押出成形にて一体化されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の樹脂層が積層され、少なくとも一層の樹脂層に量子ドットを含有し、
前記複数の樹脂層が、共押出成形にて一体化されており、
前記樹脂層は、前記量子ドットを含む中層と、前記中層の上下に形成された前記量子ドットを含まない上層及び下層との3層構造であり、
前記上層及び前記下層は、光散乱剤を含み、
前記中層と前記上層との界面、及び前記中層と前記下層との界面には接着層がなく、各樹脂層が直接接合される、
ことを特徴とするバックライト用波長変換部材。
【請求項2】
前記量子ドットを含む樹脂層と、前記量子ドットを含まない樹脂層とが一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のバックライト用波長変換部材。
【請求項3】
前記量子ドットを含まない樹脂層に、機能性添加剤が含まれることを特徴とする請求項2に記載のバックライト用波長変換部材。
【請求項4】
前記量子ドットは、少なくとも、緑色発光の量子ドットと、赤色発光の量子ドットを含むことを特徴とする請求項1に記載のバックライト用波長変換部材。
【請求項5】
前記樹脂層には、非晶性樹脂が用いられることを特徴とする請求項1に記載のバックライト用波長変換部材。
【請求項6】
前記樹脂層の総厚みが、50μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のバックライト用波長変換部材。
【請求項7】
青色光強度に対する緑色光強度比、及び青色光強度に対する赤色光強度比はそれぞれ、0.3以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のバックライト用波長変換部材。
【請求項8】
青色光強度、緑色光強度、及び赤色光強度の各蛍光半値幅が、100nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のバックライト用波長変換部材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のバックライト用波長変換部材を用いて成形加工されてなることを特徴とする波長変換部材。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のバックライト用波長変換部材の製造方法であって、
量子ドットを含有する樹脂ペレットを形成する工程、
3層の樹脂層を、共押出成形により一体化する工程、を有することを特徴とするバックライト用波長変換部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライト用波長変換部材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、数百~数千個程度の原子から構成された、粒径が数nm~数十nm程度のナノ粒子である。量子ドットは、蛍光ナノ粒子、半導体ナノ粒子、またはナノクリスタルとも呼ばれる。
【0003】
量子ドットは、ナノ粒子の粒径や組成によってピーク発光波長を種々変更することができ、従って目的とする波長に調整することができる。量子ドットを樹脂中に分散させ、波長変換材料として用いることが可能であり、例えば、特許文献1では量子ドットを樹脂中に分散させたフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-167320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すフィルムでは、フィルムを貼り合せており、複雑な作業が必要になり、また光変換効率が低下しやすい問題があった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に、量子ドットを含有する樹脂成形体の光変換効率の向上を図ることが可能なバックライト用波長変換部材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバックライト用波長変換部材は、複数の樹脂層が積層され、少なくとも一層の樹脂層に量子ドットを含有し、前記複数の樹脂層が、共押出成形にて一体化されており、前記樹脂層は、前記量子ドットを含む中層と、前記中層の上下に形成された前記量子ドットを含まない上層及び下層との3層構造であり、前記上層及び前記下層は、光散乱剤を含み、前記中層と前記上層との界面、及び前記中層と前記下層との界面には接着層がなく、各樹脂層が直接接合される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバックライト用波長変換部材によれば、共押し出しで一体成形することで、複雑な製造工程が必要とならず、光変換効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明のバックライト用波長変換部材を用いることで、量子ドットを用いた高効率な波長変換部材を製造することが可能である。
【0010】
また、本発明のバックライト用波長変換部材の製造方法によれば、複雑な張り合わせ工程を挟まずに製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態におけるバックライト用波長変換部材の断面図である。
図2図2Aは本実施形態における量子ドットの模式図である。図2Bは本実施形態における量子ドットの模式図である。
図3】第2実施形態におけるバックライト用波長変換部材の断面図である。
図4】第3実施形態におけるバックライト用波長変換部材の断面図である。
図5】第4実施形態におけるバックライト用波長変換部材の断面図である。
図6】本実施形態におけるバックライト用波長変換部材の製造工程を示すフローチャートである。
図7】実施例9における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図の拡大写真である。
図8】実施例10における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図の拡大写真である。
図9】実施例11における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図の拡大写真である。
図10】実施例12における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図の拡大写真である。
図11】実施例13における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図の拡大写真である。
図12】実施例14における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図の拡大写真である。
図13】実施例15における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図の拡大写真である。
図14】実施例9における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図15】実施例10における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図16】実施例11における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図17】実施例12における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図18】実施例12における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである(図17で測定した実施例12を上下裏返しにして測定)。
図19】実施例13における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図20】実施例14における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図21】実施例14における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図22】実施例15における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図23】実施例16における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図24】実施例17における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図25】実施例18における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図26】実施例19における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである。
図27】実施例12における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである(ただし、BEF無しで測定した)。
図28】実施例12における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである(ただし、BEF無しで測定した)(図27で測定した実施例12を上下裏返しにして測定)。
図29】実施例14における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである(ただし、BEF無しで測定した)。
図30】実施例14における量子ドット含有樹脂フィルムのスペクトルである(ただし、BEF無しで測定した)(図29で測定した実施例14を上下裏返しにして測定)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
図1は、第1実施形態における量子ドット含有樹脂フィルムの断面図を示す。ここで、「フィルム」とは、可撓性のあるシート物であると定義される。また、「シート」とは、一般的に、その厚さが長さ及び幅の割に小さい構成とされる。特に、量子ドット含有樹脂フィルムやシートの長さ寸法L、幅寸法W、及び厚さ寸法Tは、限定されるものでなく、製品によって種々寸法は変更される。例えば、テレビのように大型の製品のバックライト用として用いる場合もあれば、スマートフォンのように小型の携帯機器のバックライト用として用いる場合もある。したがって製品に合わせて大きさが決定されることになる。
【0014】
以下では、量子ドット含有樹脂フィルムとして説明するが、量子ドット含有樹脂シートと読み替えることも可能である。
【0015】
図1に示すように、量子ドット含有樹脂フィルム1は、例えば、3層フィルム構造である。図1に示す中層1bが、量子ドット(QD)を含有する層である。量子ドットについて説明する。
【0016】
量子ドットは、バンド端発光による蛍光特性を有し、その粒子の大きさから量子サイズ効果を発現する。
【0017】
量子ドットは、数nm~数十nm程度の粒径を有するナノ粒子を指す。例えば、量子ドットは、CdS、CdSe、ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTe、ZnTeS、InP、AgInS、CuInS等、若しくはそれら量子ドットをコアとしてシェルで被覆した構造の量子ドット等で形成される。Cdはその毒性から各国でその使用に規制があるため、量子ドットに、Cdは含まないことが好適である。
【0018】
図2Aに示すように、量子ドット10の表面には多数の有機配位子11が配位していることが好ましい。これにより、量子ドット10同士の凝集を抑制でき、目的とする光学特性が発現する。反応に用いることのできる配位子は特に限定されないが、例えば、以下の配位子が、代表的なものとして挙げられる。
脂肪族1級アミン系、オレイルアミン:C1835NH、ステアリル(オクタデシル)アミン:C1837NH、ドデシル(ラウリル)アミン:C1225NH、デシルアミン:C1021NH、オクチルアミン:C17NH
脂肪酸、オレイン酸:C1733COOH、ステアリン酸:C1735COOH、パルミチン酸:C1531COOH、ミリスチン酸:C1327COOH、ラウリル(ドデカン)酸:C1123COOH、デカン酸:C19COOH、オクタン酸:C15COOH
チオール系、オクタデカンチオール:C1837SH、ヘキサンデカンチオール:C1633SH、テトラデカンチオール:C1429SH、ドデカンチオール:C1225SH、デカンチオール:C1021SH、オクタンチオール:C17SH
ホスフィン系、トリオクチルホスフィン:(C17P、トリフェニルホスフィン:(CP、トリブチルホスフィン:(C
ホスフィンオキシド系、トリオクチルホスフィンオキシド:(C17P=O、トリフェニルホスフィンオキシド:(CP=O、トリブチルホスフィンオキシド:(CP=O
【0019】
また、図2Bに示す量子ドット10は、コア10aと、コア10aの表面に被覆されたシェル10bと、を有するコアシェル構造である。図2Bに示すように、量子ドット10の表面には多数の有機配位子11が配位していることが好ましい。図2Bに示す量子ドット10のコア10aは、図2Aに示すナノ粒子である。したがって、コア10aは、例えば、上記に挙げた材質により形成される。シェル10bの材質を問うものではないが、例えば、硫化亜鉛(ZnS)等で形成される。シェル10bもコア10aと同様に、カドミウム(Cd)を含まないことが好ましい。
【0020】
なお、シェル10bは、コア10aの表面に固溶化した状態であってもよい。図2Bでは、コア10aとシェル10bとの境界を点線で示したが、これは、コア10aとシェル10bとの境界を分析により確認できてもできなくてもどちらでもよいことを指す。
【0021】
中層1bに含まれる量子ドット10は、1種類だけではなく、必要に応じて蛍光波長の異なる2種類以上のQDを含有させることができる。
【0022】
中層1bは、量子ドット10を分散した樹脂組成物により形成される。上層1a、中層1b及び下層1cはいずれも樹脂層であり、樹脂層には、非晶性樹脂が用いられることが好ましい。非晶性樹脂は、特に限定されるものでないが、透明度の高い樹脂が用いられる。一般的に全光線透過率が85%以上の樹脂が好ましいが、特に限定されるものではない。非晶性の樹脂としては、環状ポリオレフィンポリマー(Cyclic Olefin Polymer: COP)、環状ポリオレフィンコポリマー(Cyclic Olefin Copolymer: COC)、ポリスチレン(Poly(styrene): PS)、アクリル樹脂(Acrylic resin)、ポリカーボネート(Poly(carbonate):PC)、変性ポリフェニレンエーテル(modified-Poly(phenyleneether): PPE)、ポリエチレンテレフタレート(Poly(ethylene terephthalate): PET)、エチレンビニルアルコール(EVAL)、ポリメチルペンテン(Polymethylpentene: PMP)、透明度の高い半結晶樹脂としては、ポリエチレン(Polyethylene: PE)、ポリプロピレン(Polypropylene: PP)、ポリフッ化ビニリデン(Poly(vinylidene fluoride): PVDFなど、溶融押出成形可能な樹脂を使用することができる。
【0023】
また本実施形態で用いる非晶性樹脂の組み合わせは、部材に必要な物性や機能に合わせて行うため、特に限定はしない。
【0024】
また、量子ドットを分散させる樹脂成形体を構成する非晶性樹脂としては、量子ドットの樹脂への分散性や分散後の蛍光強度から、アクリル樹脂や環状オレフィン樹脂のホモポリマー(COP)やコポリマー(COC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、あるいは耐熱性の観点からはポリカーボネート(PC)が好ましい。
【0025】
図1に示す上層1aと下層1cは、量子ドット10を含有しない樹脂層となっており、中層1bの保護層としての役割を果たす。上層1a及び下層1cは、上記に挙げた樹脂材料等により形成される。上層1a及び下層1cは、例えば、アクリル樹脂等にて、中層1bの外層に形成されることで、中層1bを外傷から保護することができる。あるいは、上層1a及び下層1cが、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やエチレンビニルアルコール(EVAL)等にて、中層1bの外層に形成されることによって、水や酸素からのバリア層として機能する。又は、上層1a及び下層1cが、PETやポリカーボネート(PC)、或いは、環状ポリオレフィン(COP)や環状ポリオレフィンコポリマー(COC)等にて、中層1bの外層に用いられることで、フィルムを割れにくくでき、フィルムのハンドリング性を向上させることができる。
【0026】
また、量子ドット10を含有する中層1bの上下に形成される外層(上層1a及び下層1c)は、フィルムの平坦化やフィルム総厚みの調整にも用いられる。
【0027】
なお、上層1a及び下層1cは、必ずしも同じ厚みで形成される必要はなく、また、同じ樹脂材料である必要もない。上層1a及び下層1cは、機能的に、非対称な構造であってもよい。
【0028】
また、上層1a或いは下層1c、又は、上層1a及び下層1cには、量子ドット以外の蛍光顔料や蛍光染料等の蛍光体が含まれていてもよい。
【0029】
図1に示す量子ドット含有樹脂フィルム1は、量子ドット10を含む樹脂層(中層1b)と、量子ドット10を含まない樹脂層(上層1aと下層1c)とが共押出成形にて一体化されている。すなわち、中層1bと上層1aとの界面、及び、中層1bと下層1cとの界面には接着層がなく、各樹脂層が直接接合されている。よって、量子ドット含有樹脂フィルム1を適切に薄型化することが可能であり、また、光変換効率を高めることができる。
【0030】
図1において、量子ドットを含む樹脂層を、上層1a或いは下層1cに用いることもできる。これにより、量子ドットを膜厚方向に偏在させることができる。
【0031】
図3に示す第2実施形態の量子ドット含有樹脂フィルム2は、量子ドット10を含む中層2bと、中層2bの上下に形成された、量子ドット10を含まない上層2a及び下層2cの3層フィルム構造である。
【0032】
量子ドット含有樹脂フィルム2の上層2a及び下層2cには、夫々、添加剤が含有されている。添加剤は1種以上含まれる。添加剤の種類を限定するものではないが、例えば、添加剤としては、シリカ(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)等の光散乱剤や、タルク及び金属石鹸などの滑剤、アンチブロッキング剤、或いは、ガラス繊維やビーズなど補強剤などを加えて、各種機能を持たせることが可能である。また、上層1aや下層1cには、量子ドット以外の蛍光顔料や蛍光染料等の蛍光体が含まれていてもよい。なお、上層1aと下層1cには、必ずしも同じ添加剤が含まれていなくてもよい。
【0033】
図4に示す第3実施形態の量子ドット含有樹脂フィルム3は、上層3a及び中層3bに夫々、量子ドットが含まれている。また、下層3cは、量子ドットを含まない樹脂層である。上層3aに含まれる量子ドットと、中層3bに含まれる量子ドットとを異なる種類とすることができる。なお、下層3cには、量子ドット以外の蛍光顔料や蛍光染料等の蛍光体が含まれていてもよい。
【0034】
例えば、上層3aに赤色発光の量子ドットを含有し、中層3bに、緑色発光の量子ドットを含有することができる。中層3bに赤色発光の量子ドットを含有し、上層3aに、緑色発光の量子ドットを含有してもよい。
【0035】
例えば、量子ドット含有樹脂フィルム3を、波長変換部材として用いる場合、赤色発光の量子ドットが緑色発光の量子ドットの蛍光を吸収することを回避するために、赤色発光の量子ドットを含有する層を励起光側に配置し、励起光から離れた側の層に、緑色発光の量子ドットを含有させることが好ましい。
【0036】
すなわち、量子ドットを波長変換材料として用いる場合、蛍光波長の異なる量子ドットを2種類以上用いる。例えば、ディスプレイ用途の波長変換部材では、バックライトの励起光として青色LED光を用いて、2種類の緑色発光の量子ドットと赤色発光の量子ドットにより励起光を変換する方法が採られる。
【0037】
このとき、赤色発光の量子ドットは励起光のみではなく緑色発光の量子ドットの蛍光を吸収しうるため、緑色蛍光の強度が低下する。
【0038】
この緑色発光の強度低下を補うため、すなわち緑色の光変換効率を高く保つために量子ドットをより高濃度で用いる必要がある。この場合、粒子の凝集が起こりやすくなり、緑色単色での自己吸収も起こるため、高濃度になるに従って量子ドットの光変換効率は低くなってしまうという問題があった。
【0039】
また、光散乱剤を併用して、量子ドットの濃度を低く保つ方法が一般的に採られるが、すべての光が散乱されるため、散乱効果の増大とともに緑色光が赤色発光の量子ドットに吸収されて赤色に変換されてしまい、結果として色度に影響を与えるという弊害があった。このため散乱剤の使用によって光変換効率を上げることができても十分ではなかった。
【0040】
これに対して、本実施形態では、上層3aに赤色発光の量子ドットを含有し、中層3bに、緑色発光の量子ドットを含有する。このため、各層での量子ドット濃度を低く抑えることができる。このとき、赤色発光の量子ドットを含有する層を励起光側に配置し、励起光から離れた側の層に、緑色発光の量子ドットを含有させることで、赤色発光の量子ドットが緑色発光の量子ドットの蛍光を吸収することを回避でき、光変換効率を向上させることができる。
【0041】
図4に示す下層3cは、図3の上層2aや下層2cと同様に機能性添加剤を含んでいてもよい。また、図4の量子ドット含有樹脂フィルム3は、上層3aと中層3bの2層で形成され、下層3cが形成されていなくてもよい。
【0042】
また、図4に示す上層3aと下層3cに、量子ドットを含有し、中層3bは、量子ドットを含有しない樹脂層としてもよい。このとき、中層3bには、量子ドット以外の蛍光顔料や蛍光染料等の蛍光体が含まれていてもよい。
【0043】
なお、量子ドットを含有しない層は、層間の界面での光の反射や屈折などを考慮して、光線透過率や屈折率を適宜選択することが好ましい。
【0044】
図5に示す第4実施形態の量子ドット含有樹脂フィルム4は、第1の量子ドットを含む樹脂層としての上層4aと、第2の量子ドットを含む樹脂層としての下層4cと、上層4aと下層4cとの間に位置し、第1の量子ドットと第2の量子ドットの双方を含む中層4bとの積層フィルム構造で形成される。例えば、第1の量子ドットが緑色発光の量子ドットであり、第2の量子ドットが赤色発光の量子ドットである。したがって、中層4bには、緑色発光の量子ドットと赤色発光の量子ドットの双方が含まれる。
【0045】
緑色発光の量子ドットは、下層4cに含まれておらず、中層4bと上層4aの双方に含まれるが、上層4aのほうが中層4bより多く含まれる。したがって、緑色発光の量子ドットは、下層4cから上層4aにかけて濃度が大きくなる濃度勾配(グラジエント)を有する。
【0046】
一方、赤色発光の量子ドットは、上層4aに含まれておらず、中層4bと下層4cの双方に含まれる。下層4cのほうが中層4bより多く含まれる。したがって、赤色発光の量子ドットは、上層4aから下層4cにかけて濃度が大きくなる濃度勾配(グラジエント)を有する。
【0047】
なお、図5では、2種類の異なる量子ドットを用いたが、例えば、1種類の量子ドットを各樹脂層に異なる濃度で含有し、1種類の量子ドットのみに対して濃度勾配(グラジエント)をつけてもよい。
【0048】
なお、図1図3から図5に示す各実施形態は、3層フィルム構造であるが、層数を限定するものではない。また各層に用いる樹脂層も2種以上であればよい。
【0049】
また、樹脂成形体は2層、3層以上の積層体であり、量子ドットがそれぞれの樹脂層に分散していることが重要である。この構造を応用して、量子ドットの自己吸収の抑制や、発光波長の異なる量子ドットによる蛍光吸収の抑制や、酸素や水分からの保護、光変換効率の増大、光散乱などの機能を発現できる。必要な機能は各層の厚みや組み合わせによって調整可能である。必要とされる機能は用途によって異なるため、本実施形態では多層フィルムの層構造を厳密には限定しない。
【0050】
本実施形態では、樹脂層の全体に占める量子ドットの濃度は、0.05%以上1.5%以下であることが好ましい。このように、本実施形態では、量子ドットの含有量を低減することが可能であるため、量子ドットの凝集の問題を根本的に回避することが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、樹脂層の総厚みが、50μm以上500μm以下であることが好ましい。本実施形態では、各樹脂層を一体化でき、接着層が必要ないため、薄型化できる。
【0052】
また、本実施形態では、青色光強度に対する緑色光強度比、及び青色光強度に対する赤色光強度比をそれぞれ、0.3以上とすることができる。特に、励起光側に赤色発光の量子ドットを含む樹脂層を形成し、励起側から離れた樹脂層に緑色発光の量子ドットを含有することで、赤色発光の量子ドットが緑色発光の量子ドットの蛍光を吸収することを回避でき、上記強度比を適切に得ることができる。
【0053】
また、本実施形態では、青色光強度、緑色光強度、及び赤色光強度の各蛍光半値幅を、100nm以下とすることができる。
【0054】
次に、本実施形態の量子ドット含有樹脂フィルム及び波長変換部材の製造方法について説明する。図6に示すように、まず量子ドット溶液と樹脂ペレットとを混合、乾燥させる(ステップST1、ST2)。これにより、表面に量子ドットが塗された樹脂ペレットを得る。
【0055】
続いて、樹脂ペレットを、例えば、2軸押出機により混練し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、量子ドットが樹脂中に分散した樹脂ペレットを得る(ステップST3、ST4)。
【0056】
次に、複数種類の樹脂ペレットを、成形機の別々の原料投入口に投入し、共押出成形機によって溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって積層構造を有する量子ドット含有樹脂フィルムを得る(ステップST5)。
【0057】
そして、量子ドット含有樹脂フィルムを成形加工して所望の波長変換部材を得ることができる(ステップST6)。
【0058】
本実施形態では、2種類以上の層分離した樹脂層を共押出成形など一般的な樹脂成形で成形可能であるため、Tダイのサイズを変えれば幅広のフィルム成形が可能である。また、樹脂層の並びを自由に変更できるため、自由度の高い機能性多層フィルムの設計を可能とする。
【0059】
また、本実施形態では、張り合わせの積層フィルムとは異なり光学接着剤を用いないため、接着層による光線透過率の低下などが抑制される。また、不必要な厚みの増大も抑えられる。
【0060】
また、本実施形態の製造方法で形成された量子ドット含有フィルムでは、量子ドットの自己吸収に起因する変換効率の低下を抑制し、発光効率を上げることが可能である。
【0061】
本実施形態では、2種類以上の量子ドットを、2種類以上の樹脂層のそれぞれに独立して分散させており、各樹脂層の積層の順番を自由に設計することが可能である。例えば、波長変換部材として用いる場合は、赤色発光の量子ドットが緑色発光の量子ドットの蛍光を吸収することを回避するために、赤色発光の量子ドットの含有する層を励起光側に配置し、その上に緑色発光の量子ドットを含有する層を配置することが好ましい。
【0062】
本実施形態では、量子ドットを含有する樹脂層以外に、光拡散機能を有する層やフィルム保護となる外層などを適宜配置できる。量子ドットを含有しない樹脂層には、量子ドット以外の蛍光顔料や蛍光染料等の蛍光体を含むことができる。
【0063】
また、本実施形態で用いることのできる樹脂は、基本的には、屈折率の異なる透明樹脂であるが、各層に同一の材料を用いてもかまわない。これらの樹脂の種類の組み合わせは数多くあるため、目的に応じた製品設計をする際に、多くの選択肢が得られるという利点がある。
【0064】
本実施形態では、押出機よる混錬によって、樹脂に量子ドットを機械的に練り込むため、分散の前処理の必要がない。従って、用いる量子ドットの組成や形状、シェル構造は特に限定されず、カドミウム(Cd)を含有するCd系の量子ドットや、Cdを含有しないCdフリーの量子ドットなどを用いることができる。
【0065】
本実施形態で用いられる樹脂層は、非晶性の透明樹脂であり、それらの屈折率が異なることから、樹脂層の界面において光の反射が起こる。樹脂層の界面における2種類の樹脂の屈折率差を調節することによって、量子ドットによって波長変換された光が漏洩するのを抑えたり、効率よく取り出したりすることができる。
【0066】
本実施形態では、量子ドットを含む樹脂層の多層化以外に、必要な機能を追加することが可能であり、図3で説明したように、様々な添加剤を使用することが可能である。例えば、光散乱剤、安定剤や酸化防止剤、滑剤やアンチブロッキング剤、可塑剤などが代表的な添加剤として挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0067】
本実施形態では、有機系または無機系の光散乱剤などを用いることが可能である。この場合、光散乱剤は押出成形の際にパウダーと樹脂ペレットの形式で直接混錬することも可能であるが、特定の相に分散させるべく、あらかじめ光散乱剤を練り込んだ樹脂を原料として用いることによって光拡散層を形成することが可能である。
【0068】
また、量子ドットを分散させる樹脂層以外に最外層を配置する場合、例えば、酸素や水からの保護とする場合は、酸素や水の透過率が比較的低いポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂、ポリビニルアルコール(Poly(vinylalchol): PVA)やポリエチレンビニルアルコール(Poly(ethylenevinylalchol): EVAL)などを用いることが望ましい。
【0069】
このように本実施形態では、量子ドットを含有した透明樹脂を任意のサイズ、形状に成形することができる。成形方法は従来の押出成形を応用した共押出成形であるため、連続的な生産が可能であり、フィルムの張り合わせ工程を含む製造方法などと比較すると、光学的機能を備えた多層フィルムを安価に製造することが可能である。
【0070】
また、量子ドットを分散させる多層フィルムを構成する非晶性樹脂としては、用いる樹脂の屈折率差が大きいほうが望ましい。このため、屈折率の低い樹脂と屈折率の高い樹脂の組み合わせが好ましい。代表的なものとしてアクリル樹脂と環状ポリオレフィンポリマーといった組み合わせ、アクリル樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂などの組み合わせなどが好ましい。これによって、樹脂層の界面での光の反射、屈折によって散乱剤を用いずに光の変換効率の増大が可能となる。
【0071】
本実施形態では、樹脂成形体は2層または3層以上の透明樹脂からなっているが、層構造は共押出成形によって1工程で製造されるため、基本的に端面や切断面が剥離することがない一体構造となる。この層構造はマイクロスコープなどの光学機器で確認することが可能である。
【実施例0072】
以下、本発明の実施例により本発明の効果を説明する。なお、本発明の実施形態は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0073】
[材料]
実験では、樹脂成形体を作製するにあたり以下の材料を用いた。なお、いずれの原料も使用前には真空乾燥オーブン内で、減圧下80℃以上の条件で1日以上乾燥した。
樹脂:
環状オレフィンポリマー(COP):日本ゼオン株式会社 ゼオノア(登録商標)1060R
アクリル系樹脂(PMMA):三菱ガス化学株式会社 オプティマス(登録商標)7500FS
ポリエステル系樹脂(PET):三菱ガス化学株式会社 アルテスタ(登録商標)4203F
添加剤:
ステアリン酸亜鉛(ZnSt):Aldrich株式会社製
【0074】
実験では、量子ドット(QD)として以下の材料を用いた。なお、いずれの量子ドット(QD)も、ヘキサン(Hexane:C12)溶媒に分散させた状態で用いた。また濃度は日本分光株式会社製の紫外-可視分光光度計(UV-Vis Spectrophotometer)V-770を用いて吸収率を定量することによって光学的に求めた。
Cd系量子ドット(QD):コア/シェル構造を有する緑色発光量子ドット(以下、G-QDと称する)と赤色発光量子ドット(以下、R-QDと称する)
Cdフリー量子ドット(QD):コア/シェル構造を有する緑色発光量子ドット(G-QD)と赤色発光のCdフリー量子ドット(R-QD)
【0075】
[押出機]
ペレット製造用押出機
メーカー名 テクノベル株式会社
仕様 スクリュ径:25mmの2軸押出機
L/D:40
最高混練温度:400℃
共押出用フィルム押出機
メーカー名 テクノベル株式会社
仕様 スクリュ径:15mmの2軸押出機、15mmの単軸押出機2機の計3機
L/D:40
最高射出温度:400℃
Tダイ幅200mm
【0076】
[光学測定機器]
分光放射計
メーカー名 トプコンテクノハウス株式会社 SR3-AR、及び、SR3A
【0077】
[光学測定機器]
マイクロスコープ
メーカー名 キーエンス株式会社 VHX-5000
【0078】
[実施例1]
アクリル樹脂2kgをCd系G-QDのヘキサン分散溶液、30mL(濃度は、光学的な吸収率より求め、この値から必要溶液量を計算した)と混合し、分散溶液をペレット全体に塗した。ヘキサン溶液を蒸発させることによってQDが表面に塗された樹脂ペレットを得た。
【0079】
これにZnSt(6.0g:0.3wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをペレット表面に塗した。
【0080】
こうして得られたペレットを2軸押出機によって、成形温度200~230℃で混錬し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDが樹脂中に分散したアクリル樹脂ペレットを得た。
【0081】
得られたG-QD含有アクリル樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンにて60℃で24時間以上乾燥し、Cd系G-QD含有アクリル樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0082】
[実施例2]
アクリル樹脂、2kgをCd系R-QDのヘキサン分散溶液、25mLと混合し、分散溶液をペレット全体に塗した。ヘキサン溶液を蒸発させることによってQDが表面に塗されたアクリル樹脂ペレットを得た。
【0083】
これにZnSt(4.0g:0.2wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをペレット表面に塗した。
【0084】
こうして得られたペレットを2軸押出機によって、成形温度200~230℃で混錬し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDがアクリル樹脂中に分散したアクリル樹脂ペレットを得た。
【0085】
得られたR-QD含有アクリル樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンにて60℃で24時間以上乾燥し、Cd系R-QD含有アクリル樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0086】
[実施例3]
COP2kgをCd系G-QDのヘキサン分散溶液、30mLと混合し、ヘキサン溶液を素早く蒸発させつつ、QDがペレット表面に塗されたCOP樹脂ペレットを得た。
【0087】
これにZnSt(6.0g:0.3wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをペレット表面に塗した。
【0088】
こうして得られたペレットを2軸押出機によって、成形温度200~220℃で混錬し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDがCOP樹脂中に分散したペレットを得た。
【0089】
得られたG-QD含有COP樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンにて60℃で24時間以上乾燥し、Cd系G-QD含有COP樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0090】
[実施例4]
COP2kgをCd系R-QDのヘキサン分散溶液、25mLと混合し、ヘキサン溶液を素早く蒸発させつつ、QDがペレット表面に塗されたCOP樹脂ペレットを得た。
【0091】
これにZnSt(4.0g:0.2wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをペレット表面に塗した。
【0092】
こうして得られたペレットを2軸押出機によって、成形温度200~220℃で混錬し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDがCOP樹脂中に分散したペレットを得た。
【0093】
得られたR-QD含有COP樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンにて60℃で24時間以上乾燥し、Cd系R-QD含有COP樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0094】
[実施例5]
PET樹脂2kgをCd系G-QDのヘキサン分散溶液、30mLと混合し、QDがペレット表面に塗されたPET樹脂ペレットを得た。
【0095】
これにZnSt(6.0g:0.3wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをペレット表面に塗した。
【0096】
こうして得られたペレットを2軸押出機によって成形温度220~230℃で混錬し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDがPET樹脂中に分散したペレットを得た。
【0097】
得られたG-QD含有PET樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンにて60℃で24時間以上乾燥し、Cd系G-QD含有PET樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0098】
[実施例6]
PET樹脂2kgをCd系G-QDのヘキサン分散溶液、25mLと混合し、QDがペレット表面に塗されたPET樹脂ペレットを得た。
【0099】
これにZnSt(4.0g:0.2wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをPETペレット表面に塗した。
【0100】
これを2軸押出機の原料投入口に投入し、220℃~230℃の温度で混錬した。得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDがPET樹脂中に分散したペレットを得た。
【0101】
得られたR-QD含有PET樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンで乾燥し、Cd系R-QD含有PET樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0102】
[実施例7]
アクリル樹脂2kgをCdフリーのG-QDのヘキサン分散溶液、40mLと混合し、分散溶液をペレット全体に塗した。ヘキサン溶液を蒸発させることによってQDが表面に塗された樹脂ペレットを得た。
【0103】
これにZnSt(10.0g:0.5wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをペレット表面に塗した。
【0104】
こうして得られたペレットを2軸押出機によって、成形温度200~230℃で混錬し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDが樹脂中に分散したアクリル樹脂ペレットを得た。
【0105】
得られたG-QD含有アクリル樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンにて60℃で24時間以上乾燥し、CdフリーG-QD含有アクリル樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0106】
[実施例8]
アクリル樹脂2kgをCdフリーのR-QDのヘキサン分散溶液、60mLと混合し、分散溶液をペレット全体に塗した。ヘキサン溶液を蒸発させることによってQDが表面に塗された樹脂ペレットを得た。
【0107】
これにZnSt(6.0g:0.3wt%)を添加して、ペレットとパウダーをドライミキシングすることによってZnStをペレット表面に塗した。
【0108】
こうして得られたペレットを2軸押出機によって成形温度200~230℃で混錬し、得られたストランドをペレタイザーで切断することによって、QDがアクリル樹脂中に分散したペレットを得た。
【0109】
得られたR-QD含有アクリル樹脂ペレットは、真空乾燥オーブンにて60℃で24時間以上乾燥し、CdフリーR-QD含有アクリル樹脂マスターバッチとして次の工程で用いた。
【0110】
実施例1から実施例8を表1にまとめた。なお表1に示すQD濃度は、光学的に求めた濃度と熱重量分析(Thermo Gravimetric Analysis:TGA)によるQD重量(wt%)の相関より求めた計算値である。
【0111】
【表1】
【0112】
[実施例9]
PET樹脂ペレット原料1kgを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例1で作製したCd系G-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ400gをアクリル樹脂原料600gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、PET樹脂ペレット原料1kgを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0113】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0114】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み320μmのフィルムを成形した。得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0115】
[実施例10]
PET樹脂ペレット原料1kgを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例2で作製したCd系R-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ800gをアクリル樹脂原料200gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、PET樹脂ペレット原料を原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0116】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0117】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み350μmのフィルムを成形した。
【0118】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0119】
[実施例11]
PET樹脂ペレット原料500gを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例1で作製したCd系G-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ250gと実施例2で作製したCd系R-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ500gとアクリル樹脂ペレット原料250gとを混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、アクリル樹脂ペレット原料を原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0120】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0121】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み360μmのフィルムを成形した。
【0122】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0123】
[実施例12]
実施例2で作製したCd系R-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ500gを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例1で作製したCd系G-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ250gをアクリル樹脂アクリル樹脂ペレット原料250gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、アクリル樹脂ペレット原料500gを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0124】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0125】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み350μmのフィルムを成形した。
【0126】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0127】
[実施例13]
アクリル樹脂ペレット原料1kgを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例1で作製したCd系G-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ250g、実施例2で作製したCd系R-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ500gとアクリル樹脂ペレット原料250gを混合した計1kgのペレット混合物を成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、アクリル樹脂ペレット原料1kgを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0128】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0129】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み380μmのフィルムを成形した。
【0130】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0131】
[実施例14]
実施例4で作製したCd系R-QD含有COP樹脂ペレット原料マスターバッチ500gを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例3で作製したG-QD含有COP樹脂マスターバッチ250gをCOP樹脂ペレット原料250gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、COP樹脂ペレット原料500gを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0132】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0133】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み320μmのフィルムを成形した。
【0134】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0135】
[実施例15]
PET樹脂ペレット原料500gを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例4で作製したCd系R-QD含有COP樹脂マスターバッチ250gをCOP樹脂ペレット原料250gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、PET樹脂ペレット原料500gを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0136】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0137】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み360μmのフィルムを成形した。
【0138】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0139】
[実施例16]
実施例6で作製したCd系R-QD含有PET樹脂マスターバッチ250gとPET樹脂ペレット原料250gを混合したものを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例1で作製したCd系G-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ250gをアクリル樹脂ペレット原料250gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、PET樹脂ペレット原料500gを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0140】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0141】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み200μmのフィルムを成形した。
【0142】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0143】
[実施例17]
実施例4で作製したCd系R-QD含有COP樹脂マスターバッチ250gとCOP樹脂ペレット原料250gを混合したものを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例3で作製したCd系G-QD含有COP樹脂マスターバッチ250gを実施例4で作製したCd系R-QD含有COP樹脂マスターバッチ250gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、実施例3で作製したCd系G-QD含有COP樹脂マスターバッチ250gとCOP樹脂ペレット原料250gを混合したものを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0144】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0145】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、厚さ140μmのフィルムを成形した。
【0146】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0147】
[実施例18]
実施例8で作製したCdフリーR-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ500gを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例7で作製したCdフリーG-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ250gをアクリル樹脂ペレット原料250gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、PET樹脂ペレット原料500gを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0148】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0149】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み240μmのフィルムを成形した。
【0150】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0151】
[実施例19]
実施例8で作製したCdフリーR-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ250gとアクリル樹脂ペレット原料250gを混合したものを成形機の原料投入口1に投入し(樹脂層1)、実施例1で作製したCd系G-QD含有アクリル樹脂マスターバッチ250gをアクリル樹脂ペレット原料250gと混合したものを成形機の原料投入口2に投入し(樹脂層2)、アクリル樹脂ペレット原料500gを原料投入口3に投入した(樹脂層3)。
【0152】
これを共押出成形機によって成形温度200~240℃で溶融しつつ、Tダイから押し出すことによって3層構造を有するフィルムを得た。
【0153】
押出速度や巻き取り速度の調節によって、総厚み220μmのフィルムを成形した。
【0154】
得られたフィルムはロールで巻き取られ、必要サイズにカットされたものを分光放射計でスペクトル測定した。
【0155】
実施例9から実施例19を表2にまとめた。ここで、表2に示すQD濃度は、光学的に求めた濃度と熱重量分析(Thermo Gravimetric Analysis:TGA)によるQD重量(wt%)の相関より求めた計算値である。また、表2に示す総厚みは、マイクロメーターを用いて測定した実測値である。
【0156】
【表2】
【0157】
図7から図13のフィルム断面の拡大観察の結果により、フィルムが実際に3つの層から成っており、目的とする量子ドット(QD)が均一に分散した構造になっていることが証明された。
【0158】
また、実施例9から実施例19における3層フィルムは、実施例15を除いていずれも一体構造をとっており、細かく粉砕しても断片となったフィルムからは表層の剥離は一切起こらなかった。実施例15のみは力を加えると、層間で剥離するが、これはPET樹脂とCOP樹脂との相溶性が低いためであると考えられる。
【0159】
図14から図26は、量子ドット含有樹脂フィルムを、バックライト点灯した際のRGBスペクトルである。測定はトプコンテクノハウス社のSR3-Aで行った。なお、3M社製輝度上昇フィルム(Brightness Enhancement Film:BEF)を用いて測定した。
【0160】
図14図15図22はそれぞれ、Cd系G-QD(実施例9)、Cd系R-QD(実施例10)、Cd系R-QD(実施例15)を中層にそれぞれ単色で含有するフィルムのスペクトルである。励起光(450nm)がQDによってそれぞれ緑色、赤色に変換されたピークが確認された。これにより、確かにQDが含有され、且つ励起光の波長変換が行われていることが確認された。
【0161】
図16図17図19図20はそれぞれ、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14のフィルムのスペクトルである。いずれのフィルムもG-QDとR-QDの両方をフィルム内の同一の層、または別々の層に含有する。単一のフィルムによって、励起光が緑色と赤色の両方に変換されていることが各図のピークより確認された。
【0162】
実施例11、及び、実施例13は、中層にG-QDとR-QDの両方が分散しており、各QDの濃度を励起光の吸収率(absorbance)が同等となるように調整した。このように、G-QDとR-QDは、理想的には同等の強度のピーク強度となるよう設計されている。しかしながら、図16、及び、図19では赤色の蛍光ピークの強度が緑色と比較して圧倒的に大きくなっている。これは、R-QDがG-QDの蛍光を吸収するためであり、このため緑の蛍光強度は大きく低下し、赤の蛍光強度はその分増大する。フィルム全体としては、輝度を大きく損なっており、このことが冒頭で記述したQDフィルムを用いた光変換効率の低下の問題である。
【0163】
一方、実施例12、及び、実施例14ではG-QDとR-QDは別々の層に存在している。図17、及び、図20では緑の蛍光ピークと赤の蛍光ピークは近い強度となっている。すなわち、G-QDとR-QDを別々の層に存在させることによって、上記の問題をかなりの程度で改善できることが証明された。
【0164】
図18、及び、図21は実施例12、及び、実施例14のフィルムの表裏を逆にしてバックライト上で測定したものである。すなわち、図17図18は実施例12のフィルムのスペクトルであり、図18は、図17の実施例12のフィルムの表裏を逆にして測定したものである。また、図20図21は実施例14のフィルムのスペクトルであり、図21は、図20に示す実施例14の表裏を逆にして測定したものである。
【0165】
実施例12のフィルムの表裏を逆にして測定することによって緑と赤の蛍光の強度比が異なる。すなわち、R-QDを含む層がG-QD層よりも上になる場合(図17)も、逆にG-QD層がR-QD層よりも上になる場合(図18)も、スペクトルは変化なく、RGB比は等しくなった。
【0166】
同様に実施例14のフィルムに関しても、フィルムの層構造は非対称であるが、光学特性に裏表の差異は見られなかった(図20図21)。
【0167】
この原因として、輝度上昇フィルム(BEF)を用いて測定していることが原因として考えられる。BEFを載せて測定することによって、光がフィルム内を何度も繰り返し反射することから、すなわち光が下から上のみならず、上から下にも吸収、散乱、波長変換しつつ透過するため、フィルム構造の非対称性が光学特性に発現しなかったと考えられる。
【0168】
フィルム構造の非対称性が光学特性に影響することを確認するために、実施例12で作製したフィルムを、BEFを用いずに同様の測定をした。図27図28のスペクトルはG/Rの比が実際に異なり、フィルムの光学特性が表裏によって異なることが証明された。
【0169】
実施例14で作製したフィルムに関しても同様に表裏の違いが確認された(図29図30)。励起光側に配置されたQDが最初に光変換することと、R-QDが励起光のみならず、緑の蛍光を吸収し赤色に変換することの両方が影響していると考えられる。
【0170】
図23は、実施例16のスペクトルである。下層から上層に向けてR-QDの濃度が増す設計となっている。
【0171】
図25は、実施例18で作製したCdフリーのG-QDとCdフリーのR-QDを含んだ3層構造のフィルムのスペクトルである。スペクトルからは確かにフィルムは緑の蛍光と赤の蛍光を含んでいることが証明された。
【0172】
図26は、実施例19で作製したCd系のG-QDを中層に、CdフリーのR-QD外層に含んだ3層構造のハイブリッドQDフィルムのスペクトルである。スペクトルからは確かにフィルムはCd系のG-QDで変換された緑の蛍光と赤の蛍光を含んでいることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明によれば、光変換効率に優れたバックライト用波長変換部材を、波長変換部材として好適に用いることができる。
【0174】
1、2、3、4 :量子ドット含有樹脂フィルム
1a、2a、3a、4a:上層
1b、2b、3b、4b:中層
1c、2c、3c、4c:下層
10 :量子ドット
10a :コア
10b :シェル
11 :有機配位子
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