(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182735
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】中空微粒子の製造方法、中空微粒子、相分離微粒子、水分散体及び組成物
(51)【国際特許分類】
B01J 13/02 20060101AFI20231219BHJP
C08F 14/18 20060101ALI20231219BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20231219BHJP
C08K 7/22 20060101ALI20231219BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20231219BHJP
C08F 2/16 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B01J13/02
C08F14/18
C08L27/12
C08K7/22
C08F6/00
C08F2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】62
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172975
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2022161507の分割
【原出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021166325
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠希
(72)【発明者】
【氏名】仲西 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】南 秀人
(57)【要約】
【課題】含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい中空微粒子を製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程Aと、前記フッ素置換モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む相分離微粒子を得る工程Bと、前記相分離微粒子中の非重合性溶剤を除去して中空微粒子を得る工程Cとを含む中空微粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程Aと、
前記フッ素置換モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む相分離微粒子を得る工程Bと、
前記相分離微粒子中の非重合性溶剤を除去して中空微粒子を得る工程Cと
を含む中空微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aにおいて、前記分散液が粒子分散安定化剤を含む請求項1記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程Aにおいて、前記粒子分散安定化剤が含フッ素粒子分散安定化剤である請求項2記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素置換モノマーは、下記式で算出されるフッ素置換率FCが70%以上の高フッ素置換率モノマーである請求項1又は2記載の中空微粒子の製造方法。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【請求項5】
前記高フッ素置換率モノマーは、前記フッ素置換率FCが80%以上である請求項4記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記高フッ素置換率モノマーは、前記フッ素置換率FCが100%である請求項5記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記高フッ素置換率モノマーは、高フッ素置換率オレフィンである請求項4記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記高フッ素置換率オレフィンは、環状高フッ素置換率オレフィン、又は、下記(b)、(d)若しくは(e)で表されるモノマーである請求項7記載の中空微粒子の製造方法。
CF2=CF-Q1-CF=CF2 (b)
[式中、Q1はエーテル結合を有していてもよいC1~C5の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。]
CR20R21=CR22R23 (d)
[式中、R20~R23はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
CR30R31=CR32 (e)
|
(CR33
2)h1-(O)h2-(Rf)h3-Z
[式中、R30~R31はそれぞれ独立して、H又はFである。R32はH、F又はCF3 である。R33はH、F又はCF3である。h1~h3はそれぞれ独立して、0又は1である。ZはH、F、Cl、-OH、CH2OH、-COOH、-COF、カルボン酸誘導体、-SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基又はシアノ基である。Rfは炭素数1~20の直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基又は炭素数2~100のエーテル結合を含む直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基である。]
【請求項9】
前記環状高フッ素置換率オレフィンは、下記(a)又は(c)で表されるモノマーである請求項8記載の中空微粒子の製造方法。
【化1】
[式中、R
12~R
15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【化2】
[式中、R
16~R
19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【請求項10】
前記高フッ素置換率オレフィンは、前記式(c)で表されるモノマーである請求項9記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記溶液は、更に、架橋性モノマーを含む請求項1又は2記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記架橋性モノマーは、重合性反応基を2個以上有する多官能性モノマーである請求項11記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記架橋性モノマーは、重合性反応基を2個以上有し、かつ、下記式で算出されるフッ素置換率FCが50%以上の多官能性高フッ素置換率モノマーである請求項12記載の中空微粒子の製造方法。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【請求項14】
前記多官能性高フッ素置換率モノマーは、
CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、
CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、又は、
CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)
である請求項13記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記工程Bにおいて、前記含フッ素樹脂のガラス転移温度が60℃以上である請求項1又は2記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項16】
前記工程Bにおいて、前記含フッ素樹脂のガラス転移温度が120℃以上である請求項15記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項17】
前記非重合性溶剤は、非重合性含フッ素溶剤である請求項1又は2記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項18】
前記非重合性含フッ素溶剤は、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、含フッ素アルコール、及びハイドロフルオロエーテルからなる群より選択される少なくとも一種である請求項17記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項19】
前記非重合性含フッ素溶剤は、C3~C8ハイドロフルオロカーボン、C1~C5含フッ素アルコール、及びC3~C8ハイドロフルオロエーテルから選択される少なくとも一種である請求項18記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項20】
前記中空微粒子は、平均粒径が1.0μm以上である請求項1又は2記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項21】
前記中空微粒子は、空隙率が30体積%以上である請求項1又は2記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項22】
前記中空微粒子は、空隙率が40体積%以上である請求項21記載の中空微粒子の製造方法。
【請求項23】
フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂を含み、非重合性溶剤を実質的に含まず、平均粒径が1.0μm以上である中空微粒子。
【請求項24】
前記フッ素置換モノマーは、下記式で算出されるフッ素置換率FCが70%以上の高フッ素置換率モノマーである請求項23記載の中空微粒子。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【請求項25】
前記高フッ素置換率モノマーは、前記フッ素置換率FCが80%以上である請求項24記載の中空微粒子。
【請求項26】
前記高フッ素置換率モノマーは、前記フッ素置換率FCが100%である請求項25記載の中空微粒子。
【請求項27】
前記高フッ素置換率モノマーは、高フッ素置換率オレフィンである請求項24又は25記載の中空微粒子。
【請求項28】
前記高フッ素置換率オレフィンは、環状高フッ素置換率オレフィン、又は、下記(b)、(d)若しくは(e)で表されるモノマーである請求項27記載の中空微粒子。
CF2=CF-Q1-CF=CF2 (b)
[式中、Q1はエーテル結合を有していてもよいC1~C5の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。]
CR20R21=CR22R23 (d)
[式中、R20~R23はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
CR30R31=CR32 (e)
|
(CR33
2)h1-(O)h2-(Rf)h3-Z
[式中、R30~R31はそれぞれ独立して、H又はFである。R32はH、F又はCF3である。R33はH、F又はCF3である。h1~h3はそれぞれ独立して、0又は1である。ZはH、F、Cl、-OH、CH2OH、-COOH、-COF、カルボン酸誘導体、-SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基又はシアノ基である。Rfは炭素数1~20の直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基又は炭素数2~100のエーテル結合を含む直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基である。]
【請求項29】
前記環状高フッ素置換率オレフィンは、下記(a)又は(c)で表されるモノマーである請求項28記載の中空微粒子。
【化3】
[式中、R
12~R
15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【化4】
[式中、R
16~R
19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【請求項30】
前記高フッ素置換率オレフィンは、前記式(c)で表されるモノマーである請求項29記載の中空微粒子。
【請求項31】
前記含フッ素樹脂は、更に、架橋性モノマーに基づく重合単位を含む請求項23又は24記載の中空微粒子。
【請求項32】
前記架橋性モノマーは、重合性反応基を2個以上有する多官能性モノマーである請求項31記載の中空微粒子。
【請求項33】
前記架橋性モノマーは、重合性反応基を2個以上有し、かつ、下記式で算出されるフッ素置換率FCが50%以上の多官能性高フッ素置換率モノマーである請求項32記載の中空微粒子。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【請求項34】
前記多官能性高フッ素置換率モノマーは、
CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、
CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、又は、
CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)
である請求項33記載の中空微粒子。
【請求項35】
前記含フッ素樹脂のガラス転移温度が60℃以上である請求項23又は24記載の中空微粒子。
【請求項36】
前記含フッ素樹脂のガラス転移温度が120℃以上である請求項35記載の中空微粒子。
【請求項37】
空隙率が30%体積以上である請求項23又は24記載の中空微粒子。
【請求項38】
空隙率が40%体積以上である請求項37記載の中空微粒子。
【請求項39】
前記含フッ素樹脂が粒子分散安定化剤を含む請求項23又は24記載の中空微粒子。
【請求項40】
前記粒子分散安定化剤が含フッ素粒子分散安定化剤である請求項39記載の中空微粒子。
【請求項41】
電子材料用である請求項23又は24記載の中空微粒子。
【請求項42】
フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂と、非重合性溶剤とを含み、
平均粒径が1.0μm以上である相分離微粒子。
【請求項43】
前記フッ素置換モノマーは、下記式で算出されるフッ素置換率FCが70%以上の高フッ素置換率モノマーである請求項42記載の相分離微粒子。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【請求項44】
前記高フッ素置換率モノマーは、前記フッ素置換率FCが80%以上である請求項43記載の相分離微粒子。
【請求項45】
前記高フッ素置換率モノマーは、前記フッ素置換率FCが100%である請求項44記載の相分離微粒子。
【請求項46】
前記高フッ素置換率モノマーは、高フッ素置換率オレフィンである請求項43又は44記載の相分離微粒子。
【請求項47】
前記高フッ素置換率オレフィンは、環状高フッ素置換率オレフィン、又は、下記(b)、(d)若しくは(e)で表されるモノマーである請求項46記載の相分離微粒子。
CF2=CF-Q1-CF=CF2 (b)
[式中、Q1はエーテル結合を有していてもよいC1~C5の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。]
CR20R21=CR22R23 (d)
[式中、R20~R23はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
CR30R31=CR32 (e)
|
(CR33
2)h1-(O)h2-(Rf)h3-Z
[式中、R30~R31はそれぞれ独立して、H又はFである。R32はH、F又はCF3である。R33はH、F又はCF3である。h1~h3はそれぞれ独立して、0又は1である。ZはH、F、Cl、-OH、CH2OH、-COOH、-COF、カルボン酸誘導体、-SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基又はシアノ基である。Rfは炭素数1~20の直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基又は炭素数2~100のエーテル結合を含む直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基である。]
【請求項48】
前記環状高フッ素置換率オレフィンは、下記(a)又は(c)で表されるモノマーである請求項47記載の相分離微粒子。
【化5】
[式中、R
12~R
15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【化6】
[式中、R
16~R
19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【請求項49】
前記高フッ素置換率オレフィンは、前記式(c)で表されるモノマーである請求項48記載の相分離微粒子。
【請求項50】
前記含フッ素樹脂は、更に、架橋性モノマーに基づく重合単位を含む請求項42又は43記載の相分離微粒子。
【請求項51】
前記架橋性モノマーは、重合性反応基を2個以上有する多官能性モノマーである請求項50記載の相分離微粒子。
【請求項52】
前記架橋性モノマーは、重合性反応基を2個以上有し、かつ、下記式で算出されるフッ素置換率FCが50%以上の多官能性高フッ素置換率モノマーである請求項51記載の相分離微粒子。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【請求項53】
前記多官能性高フッ素置換率モノマーは、
CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、
CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、又は、
CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)
である請求項52記載の相分離微粒子。
【請求項54】
前記含フッ素樹脂のガラス転移温度が60℃以上である請求項42又は43記載の相分離微粒子。
【請求項55】
前記含フッ素樹脂のガラス転移温度が120℃以上である請求項54記載の相分離微粒子。
【請求項56】
空隙率が30体積%以上である請求項42又は43記載の相分離微粒子。
【請求項57】
空隙率が40体積%以上である請求項56記載の相分離微粒子。
【請求項58】
前記含フッ素樹脂が粒子分散安定化剤を含む請求項42又は43記載の相分離微粒子。
【請求項59】
前記粒子分散安定化剤が含フッ素粒子分散安定化剤である請求項58記載の相分離微粒子。
【請求項60】
請求項42又は43記載の相分離微粒子を含む水分散体。
【請求項61】
請求項23又は24記載の中空微粒子と、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂とを含む組成物。
【請求項62】
請求項42又は43記載の相分離微粒子と、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中空微粒子の製造方法、中空微粒子、相分離微粒子、水分散体及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子内部に空隙を有する中空微粒子は、軽量化、低屈折率化、低誘電性付与等に優れており、種々検討が行われている。こうした中空微粒子としては、従来、無機粒子が用いられていたが、無機粒子はその重量が重いため、最近では無機粒子に代えて、重合体による中空微粒子が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フッ素原子を有する樹脂を含有する中空樹脂微粒子であって、平均粒径が10~200nm、空隙率が10%以上、かつ、屈折率が1.30以下であることを特徴とする中空樹脂微粒子が記載されている。
【0004】
特許文献2には、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が70nm以上10μm以下であることを特徴とする中空微粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-213366号公報
【特許文献2】特開2020-183500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粒子径が小さいと取り扱い性に課題があるため、粒子径を大きくして取り扱い性を向上させることが望まれていた。
本開示は、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい中空微粒子を製造できる製造方法を提供する。
本開示はまた、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい中空微粒子と、当該中空微粒子を含む組成物とを提供する。
本開示はまた、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい相分離微粒子と、当該相分離微粒子を含む水分散体及び組成物とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示(1)は、フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程Aと、上記フッ素置換モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む相分離微粒子を得る工程Bと、上記相分離微粒子中の非重合性溶剤を除去して中空微粒子を得る工程Cとを含む中空微粒子の製造方法(以下、「本開示の製造方法」とも記載する)に関する。
【0008】
本開示(2)は、上記工程Aにおいて、上記分散液が粒子分散安定化剤を含む本開示(1)の中空微粒子の製造方法である。
【0009】
本開示(3)は、上記工程Aにおいて、上記粒子分散安定化剤が含フッ素粒子分散安定化剤である本開示(2)の中空微粒子の製造方法である。
【0010】
本開示(4)は、上記フッ素置換モノマーが、下記式で算出されるフッ素置換率FCが70%以上の高フッ素置換率モノマーである本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子の製造方法である。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【0011】
本開示(5)は、上記高フッ素置換率モノマーが、上記フッ素置換率FCが80%以上である本開示(4)の中空微粒子の製造方法である。
【0012】
本開示(6)は、上記高フッ素置換率モノマーが、上記フッ素置換率FCが100%である本開示(5)の中空微粒子の製造方法である。
【0013】
本開示(7)は、上記高フッ素置換率モノマーが、高フッ素置換率オレフィンである本開示(4)~(6)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子の製造方法である。
【0014】
本開示(8)は、上記高フッ素置換率オレフィンが、環状高フッ素置換率オレフィン、又は、下記(b)、(d)若しくは(e)で表されるモノマーである本開示(7)の中空微粒子の製造方法である。
CF2=CF-Q1-CF=CF2 (b)
[式中、Q1はエーテル結合を有していてもよいC1~C5の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。]
CR20R21=CR22R23 (d)
[式中、R20~R23はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
CR30R31=CR32 (e)
|
(CR33
2)h1-(O)h2-(Rf)h3-Z
[式中、R30~R31はそれぞれ独立して、H又はFである。R32はH、F又はCF3 である。R33はH、F又はCF3である。h1~h3はそれぞれ独立して、0又は1である。ZはH、F、Cl、-OH、CH2OH、-COOH、-COF、カルボン酸誘導体、-SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基又はシアノ基である。Rfは炭素数1~20の直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基又は炭素数2~100のエーテル結合を含む直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基である。]
【0015】
本開示(9)は、上記環状高フッ素置換率オレフィンが、下記(a)又は(c)で表されるモノマーである本開示(8)の中空微粒子の製造方法である。
【化1】
[式中、R
12~R
15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【化2】
[式中、R
16~R
19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【0016】
本開示(10)は、上記高フッ素置換率オレフィンが、上記式(c)で表されるモノマーである本開示(9)の中空微粒子の製造方法である。
【0017】
本開示(11)は、上記溶液が、更に、架橋性モノマーを含む本開示(1)~(10)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子の製造方法である。
【0018】
本開示(12)は、上記架橋性モノマーが、重合性反応基を2個以上有する多官能性モノマーである本開示(11)の中空微粒子の製造方法である。
【0019】
本開示(13)は、上記架橋性モノマーが、重合性反応基を2個以上有し、かつ、下記式で算出されるフッ素置換率FCが50%以上の多官能性高フッ素置換率モノマーである本開示(12)の中空微粒子の製造方法である。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【0020】
本開示(14)は、上記多官能性高フッ素置換率モノマーは、
CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、
CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、又は、
CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)
である本開示(13)の中空微粒子の製造方法である。
【0021】
本開示(15)は、上記工程Bにおいて、上記含フッ素樹脂のガラス転移温度が60℃以上である本開示(1)~(14)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子の製造方法である。
【0022】
本開示(16)は、上記工程Bにおいて、上記含フッ素樹脂のガラス転移温度が120℃以上である本開示(15)の中空微粒子の製造方法である。
【0023】
本開示(17)は、上記非重合性溶剤が、非重合性含フッ素溶剤である本開示(1)~(16)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子の製造方法である。
【0024】
本開示(18)は、上記非重合性含フッ素溶剤が、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、含フッ素アルコール、及びハイドロフルオロエーテルからなる群より選択される少なくとも一種である本開示(17)の中空微粒子の製造方法である。
【0025】
本開示(19)は、上記非重合性含フッ素溶剤が、C3~C8ハイドロフルオロカーボン、C1~C5含フッ素アルコール、及びC3~C8ハイドロフルオロエーテルから選択される少なくとも一種である本開示(18)の中空微粒子の製造方法である。
【0026】
本開示(20)は、上記中空微粒子が、平均粒径が1.0μm以上である本開示(1)~(19)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子の製造方法である。
【0027】
本開示(21)は、上記中空微粒子が、空隙率が30体積%以上である本開示(1)~(20)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子の製造方法である。
【0028】
本開示(22)は、上記中空微粒子が、空隙率が40体積%以上である本開示(21)の中空微粒子の製造方法である。
【0029】
本開示(23)はまた、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂を含み、非重合性溶剤を実質的に含まず、平均粒径が1.0μm以上である中空微粒子(以下、「本開示の中空微粒子」とも記載する)に関する。
【0030】
本開示(24)は、上記フッ素置換モノマーが、下記式で算出されるフッ素置換率FCが70%以上の高フッ素置換率モノマーである本開示(23)の中空微粒子である。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【0031】
本開示(25)は、上記高フッ素置換率モノマーが、上記フッ素置換率FCが80%以上である本開示(24)の中空微粒子である。
【0032】
本開示(26)は、上記高フッ素置換率モノマーが、上記フッ素置換率FCが100%である本開示(25)の中空微粒子である。
【0033】
本開示(27)は、上記高フッ素置換率モノマーが、高フッ素置換率オレフィンである本開示(24)~(26)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子である。
【0034】
本開示(28)は、上記高フッ素置換率オレフィンが、環状高フッ素置換率オレフィン、又は、下記(b)、(d)若しくは(e)で表されるモノマーである本開示(27)の中空微粒子である。
CF2=CF-Q1-CF=CF2 (b)
[式中、Q1はエーテル結合を有していてもよいC1~C5の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。]
CR20R21=CR22R23 (d)
[式中、R20~R23はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
CR30R31=CR32 (e)
|
(CR33
2)h1-(O)h2-(Rf)h3-Z
[式中、R30~R31はそれぞれ独立して、H又はFである。R32はH、F又はCF3である。R33はH、F又はCF3である。h1~h3はそれぞれ独立して、0又は1である。ZはH、F、Cl、-OH、CH2OH、-COOH、-COF、カルボン酸誘導体、-SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基又はシアノ基である。Rfは炭素数1~20の直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基又は炭素数2~100のエーテル結合を含む直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基である。]
【0035】
本開示(29)は、上記環状高フッ素置換率オレフィンが、下記(a)又は(c)で表されるモノマーである本開示(28)の中空微粒子である。
【化3】
[式中、R
12~R
15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【化4】
[式中、R
16~R
19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【0036】
本開示(30)は、上記高フッ素置換率オレフィンが、上記式(c)で表されるモノマーである本開示(29)の中空微粒子である。
【0037】
本開示(31)は、上記含フッ素樹脂が、更に、架橋性モノマーに基づく重合単位を含む本開示(23)~(30)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子である。
【0038】
本開示(32)は、上記架橋性モノマーが、重合性反応基を2個以上有する多官能性モノマーである本開示(31)の中空微粒子である。
【0039】
本開示(33)は、上記架橋性モノマーが、重合性反応基を2個以上有し、かつ、下記式で算出されるフッ素置換率FCが50%以上の多官能性高フッ素置換率モノマーである本開示(32)の中空微粒子である。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【0040】
本開示(34)は、上記多官能性高フッ素置換率モノマーが、
CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、
CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、又は、
CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)
である本開示(33)の中空微粒子である。
【0041】
本開示(35)は、上記含フッ素樹脂のガラス転移温度が60℃以上である本開示(23)~(34)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子である。
【0042】
本開示(36)は、上記含フッ素樹脂のガラス転移温度が120℃以上である本開示(35)の中空微粒子である。
【0043】
本開示(37)は、空隙率が30%体積以上である本開示(23)~(36)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子である。
【0044】
本開示(38)は、空隙率が40%体積以上である本開示(37)の中空微粒子である。
【0045】
本開示(39)は、上記含フッ素樹脂が粒子分散安定化剤を含む本開示(23)~(38)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子である。
【0046】
本開示(40)は、上記粒子分散安定化剤が含フッ素粒子分散安定化剤である本開示(39)の中空微粒子である。
【0047】
本開示(41)は、電子材料用である本開示(23)~(40)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子である。
【0048】
本開示(42)はまた、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂と、非重合性溶剤とを含み、平均粒径が1.0μm以上である相分離微粒子(以下、「本開示の相分離微粒子」とも記載する)に関する。
【0049】
本開示(43)は、上記フッ素置換モノマーが、下記式で算出されるフッ素置換率FCが70%以上の高フッ素置換率モノマーである本開示(42)の相分離微粒子である。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【0050】
本開示(44)は、上記高フッ素置換率モノマーが、上記フッ素置換率FCが80%以上である本開示(43)の相分離微粒子である。
【0051】
本開示(45)は、上記高フッ素置換率モノマーが、上記フッ素置換率FCが100%である本開示(44)の相分離微粒子である。
【0052】
本開示(46)は、上記高フッ素置換率モノマーが、高フッ素置換率オレフィンである本開示(43)~(45)のいずれかとの任意の組み合わせの相分離微粒子である。
【0053】
本開示(47)は、上記高フッ素置換率オレフィンが、環状高フッ素置換率オレフィン、又は、下記(b)、(d)若しくは(e)で表されるモノマーである本開示(46)の相分離微粒子である。
CF2=CF-Q1-CF=CF2 (b)
[式中、Q1はエーテル結合を有していてもよいC1~C5の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。]
CR20R21=CR22R23 (d)
[式中、R20~R23はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
CR30R31=CR32 (e)
|
(CR33
2)h1-(O)h2-(Rf)h3-Z
[式中、R30~R31はそれぞれ独立して、H又はFである。R32はH、F又はCF3である。R33はH、F又はCF3である。h1~h3はそれぞれ独立して、0又は1である。ZはH、F、Cl、-OH、CH2OH、-COOH、-COF、カルボン酸誘導体、-SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基又はシアノ基である。Rfは炭素数1~20の直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基又は炭素数2~100のエーテル結合を含む直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基である。]
【0054】
本開示(48)は、上記環状高フッ素置換率オレフィンが、下記(a)又は(c)で表されるモノマーである本開示(47)の相分離微粒子である。
【化5】
[式中、R
12~R
15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【化6】
[式中、R
16~R
19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【0055】
本開示(49)は、上記高フッ素置換率オレフィンが、上記式(c)で表されるモノマーである本開示(48)の相分離微粒子である。
【0056】
本開示(50)は、上記含フッ素樹脂が、更に、架橋性モノマーに基づく重合単位を含む本開示(42)~(49)のいずれかとの任意の組み合わせの相分離微粒子である。
【0057】
本開示(51)は、上記架橋性モノマーが、重合性反応基を2個以上有する多官能性モノマーである本開示(50)の相分離微粒子である。
【0058】
本開示(52)は、上記架橋性モノマーが、重合性反応基を2個以上有し、かつ、下記式で算出されるフッ素置換率FCが50%以上の多官能性高フッ素置換率モノマーである本開示(51)の相分離微粒子である。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【0059】
本開示(53)は、上記多官能性高フッ素置換率モノマーが、
CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、
CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、又は、
CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)
である本開示(52)の相分離微粒子である。
【0060】
本開示(54)は、上記含フッ素樹脂のガラス転移温度が60℃以上である本開示(42)~(53)のいずれかとの任意の組み合わせの相分離微粒子である。
【0061】
本開示(55)は、上記含フッ素樹脂のガラス転移温度が120℃以上である本開示(54)の相分離微粒子である。
【0062】
本開示(56)は、空隙率が30体積%以上である本開示(42)~(55)のいずれかとの任意の組み合わせの相分離微粒子である。
【0063】
本開示(57)は、空隙率が40体積%以上である本開示(56)の相分離微粒子である。
【0064】
本開示(58)は、上記含フッ素樹脂が粒子分散安定化剤を含む本開示(42)~(57)のいずれかとの任意の組み合わせの相分離微粒子である。
【0065】
本開示(59)は、上記粒子分散安定化剤が含フッ素粒子分散安定化剤である本開示(58)の相分離微粒子である。
【0066】
本開示(60)はまた、本開示(42)~(59)のいずれかとの任意の組み合わせの相分離微粒子を含む水分散体(以下、「本開示の水分散体」とも記載する)に関する。
【0067】
本開示(61)はまた、本開示(23)~(41)のいずれかとの任意の組み合わせの中空微粒子と、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂とを含む組成物(以下、「本開示の第一の組成物」とも記載する)に関する。
【0068】
本開示(62)はまた、本開示(42)~(59)のいずれかとの任意の組み合わせの相分離微粒子と、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂とを含む組成物(以下、「本開示の第二の組成物」とも記載する)に関する。
【発明の効果】
【0069】
本開示の製造方法は、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が大きい中空微粒子を製造できる。
本開示の中空微粒子、及び、本開示の相分離微粒子は、含フッ素樹脂を含むものであるにも関わらず、平均粒径が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1(a)】実施例1で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図1(b)】実施例2で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【
図2】実施例4で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図3】実施例7で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図4(a)】実施例8で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図4(b)】実施例9で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【
図5(a)】実施例10で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図5(b)】実施例11で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【
図6】実施例12で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図7】実施例14で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図8】実施例16で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図9】実施例23で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図10】実施例24で得られた水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真である。
【
図11】実施例26で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【
図12】実施例26で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【
図13】実施例27で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【
図14】実施例30で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【
図15】実施例31で得られた中空微粒子のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本開示を具体的に説明する前に、本開示で使用するいくつかの用語を定義または説明する。
【0072】
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、または有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO2-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO2-、および、
RaNRbSO2-
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、または、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、Hまたは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0073】
また、本開示において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、および、ジ芳香族オキシホス フィニル基を包含する。
【0074】
脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基などが挙げられる。
【0075】
芳香族基は、たとえば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、たとえば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基などが挙げられる。
【0076】
ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ 基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員ヘテロ環、たとえば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基などが挙げられる。
【0077】
アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル 基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、たとえばアセチル基、プロパーノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基などが挙げられる。
【0078】
アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよく、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパーノイルアミノ基などを有していてもよい。アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパーノイルアミノ基などが挙げられる。
【0079】
脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ 基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0080】
カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、たとえばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基などが挙げられる。
【0081】
脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、たとえばメタンスルホニル基などが挙げられる。
【0082】
芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、たとえばベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
【0083】
アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。
【0084】
アシルアミノ基は、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパーノイルアミノ基などを有していてもよい。アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパーノイルアミノ基などが挙げられる。
【0085】
脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基などであってもよい。
【0086】
スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、たとえば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基などが挙げられる。
【0087】
脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などを有していてもよい。脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、たとえばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。
【0088】
芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0089】
脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、たとえばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基などが挙げられる。
【0090】
カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基などを有していてもよい。カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、たとえば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基などが挙げられる。
【0091】
本開示において、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(たとえば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0092】
本開示において、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(たとえば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0093】
(中空微粒子の製造方法)
本開示の製造方法は、フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程Aと、前記フッ素置換モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む相分離微粒子を得る工程Bと、前記相分離微粒子中の非重合性溶剤を除去して中空微粒子を得る工程Cとを含む。
本発明者等が検討したところ、フッ素置換モノマーを重合して含フッ素樹脂を含む中空微粒子を得る場合、従来の方法では平均粒径の大きな中空微粒子を得ることが困難であった。本発明者等は、上述の工程A~Cにより、含フッ素樹脂を含む中空微粒子であっても、その平均粒径を大きくすることができることを見出し、本開示の製造方法を完成したものである。
【0094】
工程Aは、フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程である。溶液を分散させることで液滴が形成され、この液滴中で高フッ素置換率モノマーを重合することで、フッ素樹脂を含む場合であっても、平均粒径が大きい相分離微粒子を得ることができる。そして、相分離微粒子中の非重合性溶剤を除去することで、平均粒径が大きい中空微粒子を得ることができる。
【0095】
フッ素置換モノマーは、下記式で算出されるフッ素置換率FCが高い高フッ素置換率モノマーであることが好ましい。
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
高フッ素置換率モノマーのフッ素置換率FCは、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは100%である。すなわち、高フッ素置換率モノマーは、パーフルオロモノマーであることが好ましい。
【0096】
高フッ素置換率モノマーとしては、高フッ素置換率アクリルモノマー、高フッ素置換率スチレンモノマー、高フッ素置換率オレフィン等が挙げられるが、高フッ素置換率オレフィンが好ましい。
高フッ素置換率オレフィンのフッ素置換率FCは、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは100%である。すなわち、高フッ素置換率オレフィンは、パーフルオロオレフィンであることが好ましい。
【0097】
高フッ素置換率オレフィンとしては特に限定されないが、環状高フッ素置換率オレフィン、又は、下記式(b)、(d)若しくは(e)で表されるモノマーを好適に使用できる。ただし、式(e)は、(d)に該当するものを除く。
CF2=CF-Q1-CF=CF2 (b)
[式中、Q1はエーテル結合を有していてもよいC1~C5の、直鎖又は分岐を有してもよいパーフルオロアルキレン基である。]
CR20R21=CR22R23 (d)
[式中、R20~R23はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
CR30R31=CR32 (e)
|
(CR33
2)h1-(O)h2-(Rf)h3-Z
[式中、R30~R31はそれぞれ独立して、H又はFである。R32はH、F又はCF3 である。R33はH、F又はCF3である。h1~h3はそれぞれ独立して、0又は1である。ZはH、F、Cl、-OH、CH2OH、-COOH、-COF、カルボン酸誘導体、-SO3H、スルホン酸誘導体、エポキシ基又はシアノ基である。Rfは炭素数1~20の直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基又は炭素数2~100のエーテル結合を含む直鎖でも分岐鎖でもよい含フッ素アルキレン基である。]
【0098】
式(b)において、Q1は、エーテル結合を有することが好ましい。その場合、パーフルオロアルキレン基におけるエーテル結合は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性に優れる点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。
【0099】
式(b)で表されるモノマーとしては、パーフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)、パーフルオロ(アリールビニルエーテル)、パーフルオロ(3,5-ジオキサへプタジエン)、パーフルオロ(3,5-ジオキサ-4,4-ジメチルへプタジエン)等が挙げられる。特に、パーフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)が好ましい。
【0100】
式(b)で表されるモノマーは、環化重合しうるモノマーである。式(b)で表されるモノマーの環化重合により形成される単位としては、下式(II-1)~(II-4)が挙げられる。下式が示すように、式(II-1)~(II-3)は、2つの二重結合を構成する4つの炭素原子が重合体の主鎖を構成しており、式(II-4)は、2つの二重結合を構成する末端の2つの炭素原子のみが重合体の主鎖を構成する。また、式(II-1)のように、2つの二重結合を構成する4つの炭素原子のうち、2つがQ1とともに脂肪族環を構成してもよいし、式(II-2)と式(II-3)のように、3つの二重結合がQ1とともに脂肪族環を構成してもよいし、式(II-4)のように、4つの二重結合がQ1とともに脂肪族環を構成してもよい。また、Q1を含む脂肪族環としては5員環および6員環が生成しやすく、環化重合により生成する重合体は5員環または6員環を有する単位を主たる単位とする重合体となる。
【0101】
【0102】
式(d)で表されるモノマーとしては、CF2=CF2、CF2=CF(CF3)、CF2=CF(C2F5)、CF2=CF(C3F7)、CF2=CF(C4F9)、CF2=CF(C5F11)、CF2=CF(OCF3)、CF2=CF(OC2F5)、CF2=CF(OC3F7)、CF2=CF(OC4F9)、CF2=CF(OC5F11)等が挙げられる。なかでも、CF2=CF2、CF2=CF(CF3)、CF2=CF(OCF3)、CF2=CF(OC2F5)、CF2=CF(OC3F7)が好ましい。
【0103】
式(e)で表されるモノマーとしては、CH
2=CFCF
2ORf-Z(式中、Rf及びZは前記と同じ)で表されるモノマーが好ましい。この式に該当するものとして、下記のモノマーが挙げられる。
【化8】
【0104】
式(e)で表されるモノマーとしては、CF
2=CFORf-Z(式中、Rf及びZは前記と同じ)で表されるモノマーも好ましい。この式に該当するものとして、下記のモノマーが挙げられる。
【化9】
【0105】
式(e)で表されるモノマーの他の例として、
【化10】
(式中、Rf及びZは前記と同じ)等が挙げられ、この式に該当するものとして、下記のモノマーが挙げられる。
【化11】
(式中、Zは前記と同じ)などが挙げられる。ただし、-OH基、-COOH基、-SO
3H基を有するモノマーは電気特性を低下させる可能性があるため、電気特性を低下させない範囲の量であることが好ましい。
【0106】
式(e)で表されるモノマーの他の例として、CH
2=CH-(CF
2)
nF(n=1~10)、CH
2=CF-CF
2-O-(CF(CF
3)-CF
2)
n-CF(CF
3)H(n=0~9)や、下記のモノマーも挙げられる。
【化12】
【0107】
式(e)で表されるモノマーとして、上記で説明したものの中でも、CH2=CF-CF2-O-(CF(CF3)-CF2)n-CF(CF3)CH2OH(式中、n=0~9)、CH2=CF-CF2-O-(CF(CF3)-CF2)n-CF(CF3)COOH(式中、n=0~9)、CH2=CF-CF2-O-(CF(CF3)-CF2)n-CF(CF3)CN(式中、n=0~9)、CF2=CF-O-(CF2CF(CF3)O)n-(CF2)m-Z(式中、ZはCOOH、SO3H又はCNであり、m=1~6、n=0~6である。)、CF2=CF2、CF2=CF-O-(CF2)nF(n=1~5)、CH2=CF-CF2-O-(CF(CF3)-CF2)n-CF(CF3)H(n=0~5)、CH2=CH-(CF2)nF(n=1~6)、CF2=CF-CF3が好ましく、CH2=CH-C6F13、CH2=CF(CF2OCFCF3)2CH2OHがより好ましい。
【0108】
環状高フッ素置換率オレフィンは、環状構造を有する高フッ素置換率オレフィンである。環状高フッ素置換率オレフィンとしては特に限定されないが、下記(a)又は(c)で表されるモノマーを好適に使用できる。
【化13】
[式中、R
12~R
15はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【化14】
[式中、R
16~R
19はそれぞれ独立して、フッ素原子、C1~C5のパーフルオロアルキル基、又はC1~C5のパーフルオロアルコキシ基である。]
【0109】
式(a)で表されるモノマーの具体例として、下記(a-1)~(a-5)で表されるモノマーが挙げられ、式(c)で表されるモノマーの具体例として、下記(a-6)~(a-7)で表されるモノマーが挙げられる。
【化15】
【0110】
高フッ素置換率モノマーとしては、上記で説明したものの中で、電気特性が良好であるという点から、環状高フッ素置換率オレフィンが好ましい。
同様の観点から、環状高フッ素置換率オレフィンとしては、式(c)で表されるモノマーが好ましく、式(a-6)~(a-7)で表されるモノマーがより好ましく、式(a-7)で表されるモノマーが更に好ましい。すなわち、式(c)において、R16~R19の三つがフッ素原子、一つがパーフルオロメチル基であることが好ましい。
【0111】
工程Aにおいて、フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液は、更に、フッ素置換モノマーと共重合可能なモノマーを含むことが好ましい。
フッ素置換モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、架橋性モノマー、非含フッ素モノマー(但し、架橋性モノマーを除く)等が挙げられる。また、高フッ素置換率モノマー以外の含フッ素モノマー、すなわち、フッ素置換率FCが70%未満の含フッ素モノマーも使用可能である。
【0112】
架橋性モノマーとしては、重合性反応基、特に重合性二重結合を2個以上(特に、2~4個)有する多官能性モノマーが好ましい。多官能性モノマーを使用することにより、得られる中空微粒子の強度を向上させることができる。
【0113】
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、トリメチロ-ルプロパーンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロ-ルプロパーントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロ-ルプロパーントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリト-ルトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリト-ルテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリト-ルヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリールフタレ-ト、ジアリールマレ-ト、ジアリールフマレ-ト、ジアリールサクシネ-ト、トリアリールイソシアヌレ-ト等のジアリール化合物又はトリアリール化合物;ジビニルベンゼン、ブタジエン、1,6-ヘキサンジオ-ルジビニルエーテル、1,4-ブタンジオ-ルジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノ-ルジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のジビニル化合物;エチレングリコールジαフルオロアクリレート、ジエチレングリコールジαフルオロアクリレート、トリエチレングリコールジαフルオロアクリレート、1,6-ヘキサンジオ-ルジαフルオロアクリレート、トリメチロ-ルプロパーンジαフルオロアクリレート等のジαフルオロアクリレート;トリメチロ-ルプロパーントリαフルオロアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロ-ルプロパーントリαフルオロアクリレート、ペンタエリスリト-ルトリαフルオロアクリレート等のトリαフルオロアクリレート;ペンタエリスリト-ルテトラαフルオロアクリレート等のテトラαフルオロアクリレート;ジペンタエリスリト-ルヘキサαフルオロアクリレート等のヘキサαフルオロアクリレート;等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を混合して使用できる。これらの中では、1,4-ブタンジオ-ルジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノ-ルジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等のジビニルエーテルや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0114】
また、多官能性モノマーは、多官能性高フッ素置換率モノマーであることが好ましい。これにより、電気特性を向上させることができる。
【0115】
多官能性高フッ素置換率モノマーは、上述の式で算出されるフッ素置換率FCが高いモノマーである。
多官能性高フッ素置換率モノマーのフッ素置換率FCは、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは100%である。すなわち、多官能性高フッ素置換率モノマーは、多官能性パーフルオロモノマーであることが好ましい。
【0116】
多官能性高フッ素置換率モノマーとしては、CH2=CX-COO-CH2(CF2CF2)nCH2-OCO-CX=CH2(式中、XはH、CH3、F、又は、Clであり、n=2~10)、CH2=CX-COO-CH2CF(CF3)-O-(CF2CF(CF3)O)nCF(CF3)CH2-OCO-CX=CH2(式中、XはH、CH3、F、又は、Clであり、n=1~20)、CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)、CF2=CF-(O-CF2CF(CF3))n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、CF2=CF-(CF2)n-CF=CF2(式中、n=1~20)等が挙げられる。なかでも、CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、CF2=CF-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)、CF2=CF-(CF2)m-CF=CF2(式中、m=1~20)が好ましく、CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~20)がより好ましく、CF2=CF-O-(CF2)n-O-CF=CF2(式中、n=1~5)が更に好ましく、CF2=CF-O-(CF2)3-O-CF=CF2が特に好ましい。
【0117】
非含フッ素モノマー(但し、架橋性モノマーを除く)としては特に限定されないが、フッ素原子を含まず、重合性反応基を1個有する単官能性モノマーが挙げられる。
単官能性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パールミチル(メタ)アクリレート、ステアリール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピルメタクリレ-ト等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロースチレン等の芳香族ビニルモノマー;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ネオノナン酸ビニルエステル(商品名ベオバ9)、ネオデカン酸ビニルエステル(商品名ベオバ10)、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー;ビニルピリジン、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン、ポリジメチルシロキサンマクロモノマー等が挙げられる。なかでも、メチルメタクリレ-ト、2-ヒドロキシエチルメタクリレ-ト、シクロヘキシルメタクリレ-ト、及び、イソボルニルメタクリレ-トからなる群より選択される少なくとも1種が、高フッ素置換率モノマーとの相溶性やガラス転移温度(Tg)が高くなるといった観点から好ましい。
【0118】
高フッ素置換率モノマー以外の含フッ素モノマーとしては、フッ素置換率FCが70%未満のものであれば特に限定されないが、含フッ素アクリルモノマー、含フッ素スチレンモノマー、含フッ素オレフィン等が挙げられる。
【0119】
工程Aにおいて、フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液は、モノマーの含有量が、非重合性溶剤1質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部であり、更に好ましくは0.8~3.5質量部である。
なお、モノマーの含有量は、フッ素置換モノマーのみを重合する場合にはフッ素置換モノマーの使用量であり、フッ素置換モノマー及びフッ素置換モノマーと共重合可能なモノマーを重合する場合にはそれらの合計量である。各モノマーの割合は目的とする含フッ素樹脂に応じて適宜設定すればよい。
【0120】
非重合性溶剤としては、フッ素置換モノマー等を溶解させることができ、かつ、得られる含フッ素樹脂に対する相溶性が低い溶剤を使用することができる。得られる含フッ素樹脂に対する相溶性が低いことによって、得られる含フッ素樹脂の相分離を促進し、中空微粒子の製造を可能となる。
非重合性溶剤として、好ましくは、フッ素置換モノマー等を溶解させることができ、得られる含フッ素樹脂を溶解させない溶剤である。
【0121】
非重合性溶剤としては、含フッ素樹脂に対して相溶性が低く、かつ、非重合性溶剤と水との間の界面張力(γX)、及び、工程Bの重合で得られるポリマー吸着表面と水との間の界面張力(γP)(mN/m)の関係において、γX≧γPが成立する溶剤を使用できる。
【0122】
非重合性溶剤としては、例えば、フッ素置換モノマーの重合温度において液状であり、モノマーと混合でき、モノマーと反応せず、かつ、加熱等により容易に蒸散させることができるものが好ましく、芳香族炭化水素、エステル、飽和炭化水素や、これらのハロゲン置換体等を使用できる。
飽和炭化水素及びそのハロゲン置換体としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘキサデカン、シクロヘキサン、デカン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモナフタレン、ジクロロメタン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン等が挙げられる。
エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0123】
フッ素置換モノマーの溶解性の観点から、非重合性溶剤としては、含フッ素非重合性溶剤が好ましい。
また、含フッ素非重合性溶剤としては、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、及びハイドロフルオロエーテルから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0124】
パーフルオロ芳香族化合物は、例えば、1個以上のパーフルオロアルキル基を有してもよいパーフルオロ芳香族化合物である。パーフルオロ芳香族化合物が有する芳香環はベンゼン環、ナフタレン環、及びアントラセン環からなる群から選択される少なくとも1種の環であってよい。パーフルオロ芳香族化合物は芳香環を1個以上(例えば、1個、2個、又は、3個)有してもよい。置換基としてのパーフルオロアルキル基は、例えば直鎖状又は分岐状の、C1-C6、C1-C5、又はC1-C4パーフルオロアルキル基であり、直鎖状又は分岐状のC1-C3パーフルオロアルキル基が好ましい。置換基の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。置換基が複数あるときは同一又は異なっていてよい。パーフルオロ芳香族化合物の例は、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエン、パーフルオロキシレン、パーフルオロナフタレンを包含する。パーフルオロ芳香族化合物の好ましい例は、パーフルオロベンゼン、パーフルオロトルエンを包含する。
【0125】
パーフルオロトリアルキルアミンは、例えば、3つの直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基で置換されたアミンである。当該パーフルオロアルキル基の炭素数は例えば1~10であり、好ましくは1~5、より好ましくは1~4である。当該パーフルオロアルキル基は同一又は異なっていてもよく、同一であることが好ましい。パーフルオロトリアルキルアミンの例としては、パーフルオロトリメチルアミン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリイソプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリsec-ブチルアミン、パーフルオロトリtert-ブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリイソペンチルアミン、パーフルオロトリネオペンチルアミンが挙げられ、パーフルオロトリプロピルアミン、又は、パーフルオロトリブチルアミンが好ましい。
【0126】
パーフルオロアルカンは、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のC3~C12(好ましくはC3~C10、より好ましくはC3~C6)パーフルオロアルカンである。パーフルオロアルカンの例としては、パーフルオロペンタン、パーフルオロ-2-メチルペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロ-2-メチルヘキサン、パーフルオロへプタン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ(メチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(ジメチルシクロヘキサン)(例:パーフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン))、パーフルオロデカリンが挙げられ、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロへプタン、又は、パーフルオロオクタンが好ましい。
【0127】
ハイドロフルオロカーボンは、例えば、C3~C8ハイドロフルオロカーボンである。ハイドロフルオロカーボンの例としては、CF3CH2CF2H、CF3CH2CF2CH3、CF3CHFCHFC2F5、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、CF3CF2CF2CF2CH2CH3、CF3CF2CF2CF2CF2CHF2、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH3が挙げられ、CF3CH2CF2H、CF3CH2CF2CH3、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンが好ましく、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンがより好ましい。
【0128】
パーフルオロ環状エーテルは、例えば、1個以上のパーフルオロアルキル基を有してもよいパーフルオロ環状エーテルである。パーフルオロ環状エーテルが有する環は3~6員環であってよい。パーフルオロ環状エーテルが有する環は環構成原子として1個以上の酸素原子を有してよい。当該環は、好ましくは1又は2個、より好ましくは1個の酸素原子を有する。置換基としてのパーフルオロアルキル基は、例えば直鎖状又は分岐状の、C1~C6、C1~C5、又はC1~C4パーフルオロアルキル基である。好ましいパーフルオロアルキル基は直鎖状又は分岐状のC1~C3パーフルオロアルキル基である。置換基の数は、例えば1~4個、好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個である。置換基が複数あるときは同一又は異なっていてよい。パーフルオロ環状エーテルの例は、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-メチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-エチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-プロピルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロピランを包含する。パーフルオロ環状エーテルの好ましい例は、パーフルオロ-5-エチルテトラヒドロフラン、パーフルオロ-5-ブチルテトラヒドロフランを包含する。
【0129】
ハイドロフルオロエーテルは、例えば、フッ素含有エーテルである。ハイドロフルオロエーテルの地球温暖化係数(GWP)は400以下が好ましく、300以下がより好ましい。ハイドロフルオロエーテルの例としては、CF3CF2CF2CF2OCH3、CF3CF2CF(CF3)OCH3、CF3CF(CF3)CF2OCH3、CF3CF2CF2CF2OC2H5、CF3CH2OCF2CHF2、C2F5CF(OCH3)C3F7、トリフルオロメチル1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227me)、ジフルオロメチル1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチルエーテル(HFE-227mc)、トリフルオロメチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル(HFE-227pc)、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE-245mf)、及び2,2-ジフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル(HFE-245pf)が挙げられる。ハイドロフルオロエーテルとしては、CF3CH2OCF2CHF2、C2F5CF(OCH3)C3F7や、CF3CF2CF2CF2OCH3、CF3CF2CF2CF2OC2H5等の下記式(D1):
R41-O-R42 (D1)
[式中、R41は、直鎖状又は分岐鎖状のパーフルオロブチルであり、R42は、メチル又はエチルである。]で表される化合物が好ましく、式(D1)で表される化合物がより好ましい。
【0130】
非重合性含フッ素溶剤は、フッ素置換モノマーの溶解性が高く、かつ、フッ素置換モノマーの重合体である含フッ素樹脂の溶解性が低いものが好ましい。このような観点から、非重合性含フッ素溶剤は、水素及びフッ素を含有するものが好ましい。
【0131】
非重合性含フッ素溶剤としては、上記で説明したもののなかでも、C3~C8ハイドロフルオロカーボン、C1~C5含フッ素アルコール、及びC3~C8ハイドロフルオロエーテルから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0132】
本開示の製造方法では、非重合性溶剤の種類を変えることで、得られる中空微粒子を、単孔構造にも、多孔構造にもすることができる。多孔構造になるか単孔構造になるのかの理由は定かではないが、生成した含フッ素樹脂と溶剤の組合せにおいて、完全に非相溶の系では単孔構造になり、若干相溶性がある場合は多孔構造を示す。
完全に非相溶の系とは、生成した含フッ素樹脂が非重合性溶剤中に5質量%、重合温度の条件で6時間経過後に目視で膨潤していない系であればよい。例えば、非重合性溶剤として飽和炭化水素類を用いることで単孔構造の中空微粒子を製造することができる。
【0133】
非重合性溶剤の使用量は、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、モノマー1質量部に対して、0.1~10質量部であり、0.5~5質量部とすることが好ましい。
【0134】
工程Aにおいて、分散液は、粒子分散安定化剤を含むことが好ましい。粒子分散安定化剤を含むことによって、相分離をより促進させることができ、粒子径の大きい中空微粒子を得ることができる。
粒子分散安定化剤は、工程Aの前に、水と予め混合しておいてもよいし、フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤を含む溶液に予め混合しておいてもよい。また、工程Aで、溶液とは別に水に添加してもよい。
【0135】
粒子分散安定化剤としては、モノマー成分、相分離促進剤及び非重合性溶剤を含む溶液を、水中に分散して形成した液滴が、合一しないようにする作用を有するものを広い範囲から使用できる。
例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルイミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリ(ハイドロオキシステアリン酸-g-メタクリル酸メチル-co-メタクリル酸)共重合体等の高分子分散安定剤や、含フッ素粒子分散安定化剤等が挙げられる。なかでも、含フッ素粒子分散安定化剤が好ましい。
【0136】
含フッ素粒子分散安定化剤としては、一般式(α)で表される単量体(α)のフルオロポリマー(α)が挙げられる。
一般式(α):
CX1CX2=CX3
│
(CX4CX5)a-(O)c-Rf-A
(式中、X1、X2、X3、X4およびX5は、独立に、H、F、CH3またはCF3であり、X1、X2、X3、X4およびX5のうち、少なくとも1つはFである。aおよびcは同じかまたは異なり0または1である。Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基、または炭素数2~100のケト基を有する含フッ素アルキレン基である。である。Aは、-COOM、-SO3M、-OSO3Mまたは-C(CF3)2OM(Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である)である。)
aが1の場合、cは1が好ましく、X1およびX2はHまたはFが好ましく、Hがより好ましい。X3、X4およびX5はHまたはFが好ましく、Fがより好ましい。aが0の場合、cは1が好ましく、X1およびX2はHまたはFが好ましく、Fがより好ましい。X3、X4およびX5はHまたはFが好ましく、Fがより好ましい。
すなわち、単量体(α)は、フルオロポリマーの水溶性が一層向上することから、(式1a)CF2=CF-O-Rf-Aおよび(式2a)CH2=CF-CF2-O-Rf-Aより選択される1種以上が好ましい。
式中、Rfが炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である場合は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0137】
含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、6以下が特に好ましく、3以下が最も好ましい。含フッ素アルキレン基としては、-CF2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-、-CF2CF2CF2-、-CF2CH2-、-CF2CF2CH2-、-CF(CF3)-、-CF(CF3)CF2-、-CF(CF3)CH2-等が挙げられる。含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
aが1の場合、含フッ素アルキレン基は分岐しているパーフルオロアルキレン基が好ましく、aが0の場合、含フッ素アルキレン基は分岐していない直鎖状のパーフルオロアルキレン基が好ましい。
【0138】
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下がさらに好ましく、9以下が特に好ましく、6以下が最も好ましい。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
【化16】
(式中、Z
1はFまたはCF
3;Z
2およびZ
3はそれぞれHまたはF;Z
4はH、FまたはCF
3;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
【0139】
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、
-CF2CF(CF3)OCF2CF2-、-CF(CF3)CF2-O-CF(CF3)-、-(CF(CF3)CF2-O)n-CF(CF3)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF 3)CF2-O-CF(CF3)CH2-、-(CF(CF3)CF2-O)n-CF(C F3)CH2-(式中、nは1~10の整数)、-CH2CF2CF2O-CH2CF2C H2-、-CF2CF2CF2O-CF2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2CF2-、-CF2CF2CF2O-CF2CF2CH2-、-CF2CF2O-CF2-、-CF2CF2O-CF2CH2-等が挙げられる。エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0140】
ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。
【0141】
ケト基を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF2CF(CF3)CO-CF2-、-CF2CF(CF3)CO-CF2CF2-、-CF2CF(CF3)CO-CF2CF2CF2-、-CF2CF(CF3)CO-CF2CF2CF2CF2-等が挙げられる。ケト基を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0142】
含フッ素アルキレン基中のケト基に水が付加してもよい。したがって、単量体(α)は水和物であってもよい。ケト基に水が付加した含フッ素アルキレン基としては、-CF2CF(CF3)C(OH)2-CF2-、-CF2CF(CF3)C(OH)2-CF2CF2-、-CF2CF(CF3)C(OH)2-CF2CF2CF2-、-CF2CF(CF3)C(OH)2-CF2CF2CF2CF2-等が挙げられる。
【0143】
式中、Aは、-COOM、-SO3M、-OSO3Mまたは-C(CF3)2OMである。Aとしては、-COOMまたは-SO3Mが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0144】
Mは、H、金属原子、NR7
4、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、R7は、Hまたは有機基である。
【0145】
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
【0146】
Mとしては、H、金属原子またはNR7
4が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR7
4がより好ましく、H、Na、K、LiまたはNH4が更に好ましく、H、Na、KまたはNH4が更により好ましく、H、NaまたはNH4が最も好ましい。
【0147】
CF2=CF-O-Rf-A(式1a)としては、
たとえば、CF2=CFOCF2COOM、CF2=CFOCF2CF2COOM、CF2=CFO(CF2)3COOM、CF2=CFOCF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2SO3M、CF2=CFOCF2CF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2SO3M、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO3M(式中、Mは、H、NH4またはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
中でも、
CF2=CFOCF2COOM、CF2=CFOCF2CF2COOM、CF2=CFO(CF2)3COOM、CF2=CFOCF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2SO3M、CF2=CFOCF2CF2CF2SO3M、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOM(式中、Mは、H、NH4またはアルカリ金属を表す。)
が好ましい。
【0148】
CH2=CF-CF2-O-Rf-A (式2a)
としては、
【0149】
【0150】
なかでも
【0151】
【0152】
であることが好ましい。
【0153】
一般式(2a)で表される単量体としては、式(2a)中のAが-COOMであることが好ましく、特に、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOM、および、CH2=C FCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOMがより好ましい。
【0154】
単量体(α)は、他の単量体と共重合されてもよい。すなわち、フルオロポリマー(α)は、一般式(α)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。また、フルオロポリマー(α)は、2種以上の異なる一般式(α)で表される単量体に基づく重合単位(α)を含んでいてもよい。
【0155】
他の単量体としては、一般式CFR=CR2(式中、Rは、独立に、H、Fまたは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である)で表される単量体が好ましい。また、他の単量体としては、炭素数2または3の含フッ素エチレン性単量体が好ましい。他の単量体としては、たとえば、CF2=CF2、CF2=CFCl、CH2=CF2、CFH=CH2、CFH=CF2、CF2=CFCF3、CH2=CFCF3、CH2=CHCF3、CHF=CHCF3(E体)、CHF=CHCF3(Z体)などが挙げられる。
【0156】
他の単量体としては、なかでも、共重合性が良好である点で、テトラフルオロエチレン(CF2=CF2)、クロロトリフルオロエチレン(CF2=CFCl)およびヘキサフルオロプロピレン(CF2=CFCF3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、テトラフルオロエチレンがより好ましい。従って、他の単量体に基づく重合単位は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位であることが好ましい。他の単量体に基づく重合単位は、各出現において、同一または異なっていてもよく、フルオロポリマーは、2種以上の異なる他の単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。
【0157】
他の単量体としては、また、一般式(n1-2):
【0158】
【0159】
(式中、X1、X2は同じかまたは異なりHまたはF;X3はH、F、Cl、CH3またはCF3;X4、X5は同じかまたは異なりHまたはF;aおよびcは同じかまたは異なり0または1である。Rf3は炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体が挙げられる。
【0160】
具体的には、CH2=CFCF2-O-Rf3、CF2=CF-O-Rf3、CF2=C FCF2-O-Rf3、CF2=CF-Rf3、CH2=CH-Rf3、CH2=CH-O-Rf3(式中、Rf3は式(n1-2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0161】
フルオロポリマー(β)における重合単位(β)の含有量としては、フルオロポリマー(β)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、99モル%以上である。重合単位(β)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、フルオロポリマー(β)は、重合単位(β)のみからなることが最も好ましい。フルオロポリマー(β)中の重合単位(β)の含有量が多い方が、フルオロポリマー(β)の水溶性が高まる利点がある。
【0162】
フルオロポリマー(β)において、単量体(β)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、フルオロポリマー(β)を構成する全重合単位に対して、好ましい順に、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下、1モル%以下である。単量体(β)と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量 は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、フルオロポリマー(β)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
【0163】
フルオロポリマー(β)の重量平均分子量(Mw)の下限としては、好ましい順に、1.4×104以上、1.7×104以上、1.9×104以上、2.1×104以上、2.3×104以上、2.7×104以上、3.1×104以上、3.5×104以上、3.9×104以上、4.3×104以上、4.7×104以上、5.1×104以上である。フルオロポリマーの重量平均分子量(Mw)の上限としては、好ましい順に、150.0×104以下、100.0×104以下、60.0×104以下、50.0×104以下である。
【0164】
フルオロポリマー(β)の数平均分子量(Mn)の下限としては、好ましい順に、0.7×104以上、0.9×104以上、1.0×104以上、1.2×104以上、1.4×104以上、1.6×104以上、1.8×104以上である。フルオロポリマーの数平均分子量(Mn)の上限としては、好ましい順に、75.0×104以下、50.0×104以下、40.0×104以下、30.0×104、20.0×104以下である。
【0165】
フルオロポリマー(β)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.2以下であり、特に好ましくは2.0以下であり、最も好ましくは1.9以下である。
【0166】
フルオロポリマー(β)は、通常、末端基を有する。末端基は、重合時に生成する末端基であり、代表的な末端基は、水素、ヨウ素、臭素、鎖状または分岐鎖状のアルキル基、および、鎖状または分岐鎖状のフルオロアルキル基から独立に選択され、任意追加的に少なくとも1つのカテナリ-ヘテロ原子を含有してもよい。アルキル基またはフルオロアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。これらの末端基は、一般的には、フルオロポリマー(β)の形成に使用される開始剤または連鎖移動剤から生成するか、または連鎖移動反応中に生成する。
【0167】
含フッ素粒子分散安定化剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤も挙げられる。アニオン性含フッ素界面活性剤としては例えば式(1)で表されるものである:
Rf§(X-)j(M+)j 式(1)
(式中、Rf§は、C1~C30の(パー)フルオロアルキル鎖、又は(パー)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン鎖であり、X-は、-COO-、-PO3-、又は-SO3-であり、M+は、H+、NH4
+、アルカリ金属イオンから選択され、jは1であってもよく、2であってもよい)。
【0168】
アニオン性含フッ素界面活性剤の具体的な例としては、(パー)フルオロ(オキシ)カルボン酸アンモニウム、(パー)フルオロ(オキシ)カルボン酸アンモニウムナトリウム、1個以上のカルボキシル末端基を有する(パー)フルオロポリオキシアルキレンを挙げることができる。
【0169】
フッ素化界面活性剤、特に(パー)フルオロオキシアルキレン界面活性剤についての例は、米国特許出願公開第2007/015864号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES)8/01/2007、米国特許出願公開第2007/015865号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO)18/01/2007、米国特許出願公開第2007/015866号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO)18/01/2007、米国特許出願公開第2007/025902号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO)1/02/2007に特に記載されている。
【0170】
含フッ素粒子分散安定化剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が800以下の含フッ素界面活性剤であってよい。
なお、「アニオン性部分」は、アニオン性含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。式(1)において「Rf§(X-)j」の部分である。
【0171】
粒子分散安定化剤としては、上記で説明したものの中で、含フッ素粒子分散安定化剤が好ましく、その中でも下式で表される単量体のフルオロポリマーがあげられる。なお、下式中、Mは、H、NH4またはアルカリ金属を表す。
CF2=CFOCF2COOM、CF2=CFOCF2CF2COOM、CF2=CFO(CF2)3COOM、CF2=CFOCF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2SO3M、CF2=CFOCF2CF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2COOM、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2SO3M、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CF2SO3M、CH2=CF-CF2-OCF(CF3)COOM、CH2=CF-CF2-OCF(CF3)SO3M、CH2=CF-CF2-OCF(CF
3
)CF2OCF(CF3)COOM、CH2=CF-CF2-O(CF(CF3)CF2O)2CF(CF3)COOM、CH2=CF-CF2-OCF(CF3)CF2OCF(CF3)SO3M、CH2=CF-CF2-O(CF(CF3)CF2O)2CF(CF3)SO3M。
【0172】
単量体は、特に、CF2=CFOCF2COOM、CF2=CFOCF2CF2COOM、CF2=CFO(CF2)3COOM、CF2=CFOCF2CF2SO3M、CF2=CFOCF2SO3M、CF2=CFOCF2CF2CF2SO3M、CH2=CFCF2OCF(CF3)COOM、および、CH2=C FCF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COOMが好ましい。
【0173】
粒子分散安定化剤の含有量は、溶液1質量部に対して、0.005~10質量部であることが好ましく、0.01~5質量部であることがより好ましい。
【0174】
工程Aにおいて、溶液は、相分離促進剤の含有量が少ないことが好ましい。これにより、電気特性がより良好となる。相分離促進剤の含有量は、溶液1質量部に対して、好ましくは0.005質量部以下、より好ましくは0.001質量部以下である。下限は特に限定されず、0質量部であってもよい。
【0175】
相分離促進剤は、例えば、室温(例えば、25℃)で非重合性溶剤に溶解し、かつ、相分離促進剤のSp値をSA(J/cm3)1/2、非重合性溶剤のSp値をSB(J/cm3)1/2とした時、│SA-SB│<3(J/cm3)1/2の関係を満たす化合物を使用できる。
具体例として、芳香族ビニルポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニルポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル等が挙げられる。
【0176】
工程Aは、フッ素置換モノマー及び非重合性溶剤、並びに、必要に応じて使用されるフッ素置換モノマーと共重合可能なモノマー、開始剤、分散安定剤等を含む溶液を水に分散させて分散液を得る工程である。
分散方法としては、例えば、ホモジナイザ-や膜乳化法など機械的せん断力による分散方法等の公知の方法を種々採用できる。分散の際の温度条件は、0℃以上100℃未満であってよく、0~90℃が好ましい。分散工程における溶液が開始剤を含む場合、使用する開始剤の分解に影響する温度以下である必要があり、通常は室温付近以下、特に0~30℃程度であるのが好ましい。
【0177】
工程Aにおいて、通常、溶液が分散されて形成される液滴の大きさは単分散ではなく、一般に種々の異なる粒子径の液滴が混在したものとなる。したがって、最終的に得られる中空微粒子も異なる粒子径を有する。
なお、分散方法を選択することにより、液滴の大きさを均一にして、単分散の液滴を得ることもできる。そのような単分散液滴を得る方法としては、例えば、多孔質ガラス(SPG)を利用した膜乳化法による単分散液滴を作製する方法を挙げることができる。このような粒子径が均一に揃った単分散の液滴を調製した場合は、最終的に得られる中空微粒子も粒子径が均一に揃った単分散となる。
いずれの場合も、液滴の平均粒径は、所望とする中空微粒子の平均粒径に応じて適宜決定すればよい。
【0178】
工程Aは、50℃以上(好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上)の温度で溶液を水に分散させて分散液を得る工程A-1、又は、50℃未満の温度で溶液を水に分散させて分散液を得て、得られた分散液を50℃以上(好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上)の温度に加熱する工程A-2であることも好ましい。
工程A-1、A-2ともに上限温度は100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。
これらの工程を採用することによって、フッ素置換モノマーを使用していても、分散液が相分離しにくく、重合を効率よく進行させることができる。
【0179】
本開示の製造方法は、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤は、工程Aの前に溶液に添加してもよいし、工程Aの後、工程Bの前に、分散液に添加してもよいが、上記のように分散工程を比較的高温(例えば50℃以上)で行う場合、工程Aの前に溶液に予め重合開始剤を添加していると、工程Aで重合が開始するおそれがある。よって、工程Aの後、工程Bの前に、分散液に添加することが好ましい。これにより、工程Aを比較的高温で行うことが可能となる。
【0180】
重合開始剤は、溶液を水に分散して形成される液滴中でモノマーの重合を開始させるものであり、油溶性開始剤等、従来から使用されているものを使用することができる。例えば、ラジカル重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾ化合物;クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物;等が挙げられる。
また、紫外線等の光により重合開始する光重合開始剤を用いてもよい。このような光重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、従来から使用されているものを使用することができる。
【0181】
重合開始剤としては、下記式(C1)、(C2)及び(C3)で表される化合物(本明細書中、各々、「化合物(C1)」、「化合物(C2)」、及び「化合物(C3)」と称することがある。)、並びに無機過酸化物も挙げられる。化合物(C1)~化合物(C3)、及び無機過酸化物は、1種単独又は組み合わせて使用できる。
【化20】
[式中、R
31及びR
32は、同一又は異なって、パーフルオロフェニルで置換されていてもよいC3~C10のパーフルオロアルキル基における少なくとも1個のフッ素原子が水素原子に置換された基、又は、直鎖状又は分岐状C1~C4パーフルオロアルキル基で置換されてもよいパーフルオロフェニルにおける少なくとも1個のフッ素原子が水素原子に置換された基である。]、
【化21】
[式中、R
33及びR
34は、同一又は異なって、パーフルオロフェニルで置換されていてもよいC3~C10のパーフルオロアルキル基における少なくとも1個のフッ素原子が水素原子に置換された基、又は、直鎖状又は分岐状C1-C4パーフルオロアルキル基で置換されてもよいパーフルオロフェニルにおける少なくとも1個のフッ素原子が水素原子に置換された基である。]、及び
式(C3):
【化22】
[式中、R
35及びR
36は、同一又は異なって、パーフルオロフェニルで置換されていてもよいC1-C10のパーフルオロアルキル基における少なくとも1個のフッ素原子が水素原子に置換された基、又は、直鎖状又は分岐状C1-C4パーフルオロアルキル基で置換されてもよいパーフルオロフェニルにおける少なくとも1個のフッ素原子が水素原子に置換された基である。]。
【0182】
R31及びR32は、好ましくは、同一又は異なって、少なくとも1個以上のフッ素原子が水素原子に置換された、パーフルオロプロピル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロ2-フェニル-2-プロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロsec-ブチル、パーフルオロtert-ブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロイソペンチル、パーフルオロネオペンチル、パーフルオロ2-メチル-2-ペンチル、パーフルオロ2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロ2-メチルヘキシル、パーフルオロ2-エチルヘキシル、パーフルオロシクロヘキシル、パーフルオロ4-メチルシクロヘキシル、パーフルオロ4-エチルシクロヘキシル、パーフルオロ4-tertブチルシクロヘキシル、パーフルオロヘプチル、パーフルオロ2-ヘプチル、パーフルオロ3-ヘプチル、パーフルオロオクチル、パーフルオロ2-メチル-2-オクチル、パーフルオロノニル、パーフルオロデシル、パーフルオロフェニル、パーフルオロ2-メチルフェニル、パーフルオロ3-メチルフェニル、パーフルオロ4-メチルフェニルである。
【0183】
R31及びR32において、水素原子に置換されるフッ素原子の数は、1個~置換可能な最大個数であり、好ましくは置換可能な最大個数より3少ない個数~置換可能な最大個数であり、より好ましくは、置換可能な最大個数より2少ない個数~置換可能な最大個数であり、さらに好ましくは置換可能な最大個数より1少ない個数~置換可能な最大個数であり、特に好ましくは置換可能な最大個数である。
R31及びR32は、より好ましくは、同一又は異なって、プロピル、イソプロピル、sec-ブチル、2-エチルヘキシル、4-tertブチルシクロヘキシルである。
R31及びR32は、特に好ましくは、同一又は異なって、プロピル、イソプロピルである。
【0184】
化合物(C1)の好ましい例は、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4-tertブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを包含する。
特に好ましい化合物(C1)は、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートである。
【0185】
R33及びR34は、好ましくは、同一又は異なって、少なくとも1個以上のフッ素原子が水素原子に置換された、パーフルオロプロピル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロ2-フェニル-2-プロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロsec-ブチル、パーフルオロtert-ブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロイソペンチル、パーフルオロネオペンチル、パーフルオロ2-メチル-2-ペンチル、パーフルオロ2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロ2-メチルヘキシル、パーフルオロ2-エチルヘキシル、パーフルオロシクロヘキシル、パーフルオロ4-メチルシクロヘキシル、パーフルオロ4-エチルシクロヘキシル、パーフルオロ4-tertブチルシクロヘキシル、パーフルオロヘプチル、パーフルオロ2-ヘプチル、パーフルオロ3-ヘプチル、パーフルオロオクチル、パーフルオロ2-メチル-2-オクチル、パーフルオロノニル、パーフルオロデシル、パーフルオロフェニル、パーフルオロ2-メチルフェニル、パーフルオロ3-メチルフェニル、パーフルオロ4-メチルフェニルである。
【0186】
R33及びR34において、水素原子に置換されるフッ素原子の数は、1個~置換可能な最大個数であり、好ましくは置換可能な最大個数より3少ない個数~置換可能な最大個数であり、より好ましくは、置換可能な最大個数より2少ない個数~置換可能な最大個数であり、さらに好ましくは置換可能な最大個数より1少ない個数~置換可能な最大個数である。
R33及びR34は、より好ましくは、同一又は異なって、イソプロピル、2,4,4-トリメチルペンチル、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘキシル、ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロオクチル、フェニル、3-メチルフェニルである。
【0187】
化合物(C2)の好ましい例は、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルm-メチルベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイドを包含する。
特に好ましい化合物(C2)は、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドである。
【0188】
R35及びR36は、好ましくは、同一又は異なって、少なくとも1個以上のフッ素原子が水素原子に置換された、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロ2-フェニル-2-プロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロsec-ブチル、パーフルオロtert-ブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロイソペンチル、パーフルオロネオペンチル、パーフルオロ2-メチル-2-ペンチル、パーフルオロ2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロ2-メチルヘキシル、パーフルオロ2-エチルヘキシル、パーフルオロシクロヘキシル、パーフルオロ4-メチルシクロヘキシル、パーフルオロ4-エチルシクロヘキシル、パーフルオロ4-tertブチルシクロヘキシル、パーフルオロヘプチル、パーフルオロ2-ヘプチル、パーフルオロ3-ヘプチル、パーフルオロオクチル、パーフルオロ2-メチル-2-オクチル、パーフルオロノニル、パーフルオロデシル、パーフルオロフェニル、パーフルオロ2-メチルフェニル、パーフルオロ3-メチルフェニル、パーフルオロ4-メチルフェニルである。
【0189】
R35及びR36において、水素原子に置換されるフッ素原子の数は、1個~置換可能な最大個数であり、好ましくは置換可能な最大個数より3少ない個数~置換可能な最大個数であり、より好ましくは、置換可能な最大個数より2少ない個数~置換可能な最大個数であり、さらに好ましくは置換可能な最大個数より1少ない個数~置換可能な最大個数であり、特に好ましくは置換可能な最大個数である。
R35及びR36は、より好ましくは、同一又は異なって、イソプロピル、2-フェニル-2-プロピル、tert-ブチル、2-メチル-2-ペンチル、2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、2-ヘプチル、2-メチル-2-オクチル、フェニル、3-メチルフェニルである。
【0190】
化合物(C3)の好ましい例は、パーオキシネオデカン酸tert-ブチル、パーオキシピバル酸tert-ブチル、パーオキシピバル酸tert-ヘキシル、パーオキシ炭酸OO-tert-ブチルO-イソプロピル、パーオキシ酢酸tert-ブチルを包含する。
特に好ましい化合物(C3)は、パーオキシピバル酸tert-ブチル、パーオキシピバル酸tert-ヘキシルである。
【0191】
無機過酸化物の好ましい例は、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸、過マンガン酸の、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩を包含する。
特に好ましい無機過酸化物は、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムである。
無機過酸化物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、無機化酸化物は、サルファイト系還元剤(例:亜ジチオン酸ナトリウム)、亜硫酸塩還元剤(例:亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、及び亜硫酸水素ナトリウム)のような還元剤と組み合わせて用いてもよい。
【0192】
重合開始剤の好ましい例は、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシピバル酸tert-ブチル、パーオキシピバル酸tert-ヘキシル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムを包含する。
【0193】
アゾ化合物としては、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び、アゾビスイソブチロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。
【0194】
特に好ましい重合開始剤は、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソブチリルパーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、パーオキシピバル酸tert-ブチル、パーオキシピバル酸tert-ヘキシル、過硫酸アンモニウムである。
【0195】
工程Bは、フッ素置換モノマーを重合して、含フッ素樹脂を含む相分離微粒子を得る工程である。工程Bは、少なくともフッ素置換モノマーを重合するものであればよく、フッ素置換モノマーのみを重合してもよいし、フッ素置換モノマーと、上述したフッ素置換モノマーと共重合可能なモノマーとを重合するものであってもよい。
【0196】
工程Bにおける重合は、従来公知のマイクロエマルジョン重合、ミニエマルジョン重合、マイクロサスペンジョン重合等の重合方法に準ずる方法を用いることができる。
また、工程Bにおける重合は、懸濁重合であってもよい。溶液が分散された分散液を懸濁重合に供するには、該分散液を撹拌しながら加熱すればよい。
【0197】
重合温度としては、フッ素置換モノマー(及び、必要に応じて使用されるフッ素置換モノマーと共重合可能なモノマー)が開始剤により重合開始されるに足りる温度であれば特に限定されないが、一般には、10~90℃であり、好ましくは30~80℃である。
【0198】
重合は、所望の中空微粒子が得られるまで行う。重合に要する時間は、使用する含フッ素モノマー(及び、必要に応じて使用される含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)、重合開始剤及び非重合性溶剤の種類等により変動するが、一般には3~24時間程度である。
【0199】
また、重合に際しては、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0200】
こうして重合を行うことにより、溶液の液滴中で、フッ素置換モノマー(又は、フッ素置換モノマー及び含フッ素モノマーと共重合可能なモノマー)が重合する。
得られたポリマー(相分離微粒子)は、非重合性溶剤の存在により相分離が促進され、単層構造のシェルと、非重合性溶剤が内包されたコア部とを有する。相分離微粒子のシェル部は、フッ素置換モノマーに基づく重合単位(又はフッ素置換モノマー及びフッ素置換モノマーと共重合可能なモノマーに基づく重合単位)を含む含フッ素樹脂で構成される。
【0201】
含フッ素樹脂のガラス転移温度は、高強度および高硬度が期待できるという点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは120℃以上である。
本開示において、ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量計:日立ハイテクサイエンス社製 DSC7000)を用いて、30℃から200℃までの温度範囲を10℃/分の条件で昇温(ファーストラン)-降温-昇温(セカンドラン)させ、セカンドランにおける吸熱曲線の中間点として求めることができる。
【0202】
含フッ素樹脂は、フッ素置換モノマーに基づく重合単位のみからなるものであってもよいし、フッ素置換モノマーに基づく重合単位、及び、フッ素置換モノマーと共重合可能なモノマーに基づく重合単位を含むものであってもよい。
なお、フッ素置換モノマー、及び、フッ素置換モノマーと共重合可能なモノマーは、上述の本開示の製造方法で説明したものと同様である。
【0203】
含フッ素樹脂は、フッ素置換モノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。フッ素置換モノマーに基づく重合単位が上記範囲であることによって、得られる中空微粒子の電気特性が良好となる。
【0204】
含フッ素樹脂は、フッ素置換モノマーに基づく重合単位及び架橋性モノマーに基づく重合単位を含むことが好ましい。これにより、中空微粒子のシェルが強固になるため、シェルの厚さを薄くし、空隙率を高くすることができる。
【0205】
含フッ素樹脂は、架橋性モノマーに基づく重合単位が、全重合単位に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。架橋性モノマーに基づく重合単位が上記範囲であることによって、得られる中空微粒子を強度に優れ、かつ、電気特性にも優れるものとすることができる。
【0206】
含フッ素樹脂において、非含フッ素モノマーに基づく重合単位は、全重合単位に対して0~70質量%であることが好ましく、より好ましくは、0~50質量%である。
【0207】
含フッ素樹脂において、フッ素置換モノマー以外の含フッ素モノマーに基づく重合単位は、全重合単位に対して0~70質量%であることが好ましく、より好ましくは、0~50質量%である。
【0208】
含フッ素樹脂は、粒子分散安定化剤を含むことが好ましい。粒子分散安定化剤の含有量は、例えば、含フッ素樹脂に対して0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。上記範囲であると、水中での分散安定性が増し、保存安定性に優れる。
なお、粒子分散安定化剤は、上述の本開示の製造方法で説明したものと同様である。
【0209】
含フッ素樹脂は、フッ素含有率が10質量%以上であることが好ましい。フッ素含有率が10質量%以上であることによって、電気特性、耐水性がより良好となる。フッ素含有率は、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。このような含フッ素樹脂を含む中空微粒子は、上述した本開示の製造方法、特に、工程Aが工程A-1又は工程A-2である製造方法により得ることができる。
【0210】
含フッ素樹脂は、フッ素置換モノマーに基づく重合単位(C)と架橋性モノマー(E)に基づく重合単位との質量比(C/E)が、80/20~20/80であることが好ましく、70/30~30/70であることがより好ましく、60/40~40/60であることが更に好ましい。
【0211】
含フッ素樹脂は、比誘電率(1kHz)が5.0以下であることが好ましい。比誘電率は、4.0以下がより好ましく、3.7以下が更に好ましく、3.5以下が特に好ましい。比誘電率の下限値は特に限定されないが、例えば、1.1以上であってよい。
本開示において、比誘電率は、JIS C 2138に準じた測定方法より求める値である。
【0212】
含フッ素樹脂は、屈折率が1.40以下であることが好ましい。屈折率は、1.39以下がより好ましく、1.38以下が特に好ましい。屈折率の下限値は特に限定されないが、例えば、1.30以上であってよく、非重合性溶剤への溶解性の観点からは1.35以上が好ましい。
屈折率は、液浸法により求める値である。
【0213】
工程Cは、相分離微粒子中の非重合性溶剤を除去して中空微粒子を得る工程である。工程Cにより、非重合性溶剤を実質的に含まない中空微粒子が得られる。
非重合性溶剤を除去する方法としては特に限定されないが、例えば、加熱処理、減圧処理、自然乾燥等が挙げられる。簡便性、経済性の観点からは加熱処理が好ましい。加熱処理の条件は非重合性溶剤の種類や量等により適宜設定すればよいが、温度20~300℃、圧力1~100000Pa程度の条件下で加熱することが好ましい。
【0214】
本開示の製造方法は、工程A~工程Cにより、粒径が大きい中空微粒子を製造することができる。中空微粒子の平均粒径は、1.0μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましく、5.0μm以上が更に好ましい。平均粒径は、粒子安定性の観点から、50.0μm以下が好ましく、30.0μm以下がより好ましい。
本開示において、平均粒径は、DLS(動的光散乱法)の方法により測定することができる。また、光学顕微鏡写真から粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することもでき、その場合、粒子数が合計50以上になるように写真を複数枚撮影して解析する事が望ましい。
【0215】
中空微粒子は、いわゆる入れ子構造を有するものであってもよいが、含フッ素樹脂を含むシェル及び中空部からなり、単孔構造を有することが好ましい。
なお、本開示において、「単孔構造」とは、多孔質状等のように複数の空隙を有する場合は含まず、ただ1つの閉じた空隙を有する構造のことをいう。また、以下の説明において、中空微粒子の空隙以外の部分を「シェル」という。
【0216】
中空微粒子において、中空部の孔径は、中空微粒子の直径に対して、66%以上が好ましく、74%以上がより好ましく、79%以上が更に好ましい。また、95%以下が好ましく、93%以下がより好ましく、90%以下が更に好ましく、88%以下が特に好ましい。
本開示において、中空部の孔径は、中空微粒子のTEM写真の画像解析を粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することができる。具体的には、TEM写真中の約200個の中空微粒子を無作為に抽出し、内半径(R1)を計測することで下記式により中空部の孔径を算出することができる。
中空部の孔径=R1×2
【0217】
中空微粒子は、中空微粒子の直径に対するシェルの厚さの割合が17%以下であることが好ましく、13%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、9%以下が特に好ましい。シェルの厚さが薄いと空隙率が高くなるため、より低誘電率の中空微粒子とすることができる。
上記割合は、中空微粒子の強度の観点から、4%以上が好ましく、6%以上が更に好ましい。
本開示において、シェルの厚さは、中空微粒子の光学顕微鏡写真又はTEM写真の画像解析を粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出することができる。具体的には、光学顕微鏡写真又はTEM写真中の約50~200個の中空微粒子を無作為に抽出し、内半径(R1)と外半径(R2)を計測することで下記式によりシェルの厚さを算出することができる。
シェルの厚さ=R2-R1
【0218】
中空微粒子の空隙率は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、更に好ましくは50体積%以上、特に好ましくは55体積%以上である。空隙率が高いと、中空微粒子の比誘電率を低くすることができ、電材用途に好適である。空隙率の上限は特に限定されないが、強度の観点から、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
本開示において、空隙率は、以下の式で算出した。
空隙率M(体積%)=非重合性溶剤量(g)/(フッ素置換モノマー量(g)+架橋性モノマー量(g)+非重合性溶剤量(g))×100
【0219】
中空微粒子の屈折率は、好ましくは1.40以下、より好ましくは1.35以下、更に好ましくは1.30以下、特に好ましくは1.25以下である。屈折率の下限値は特に限定されないが、例えば、1.10以上であってよい。
本開示において、屈折率は、液浸法により求める値である。
【0220】
相分離促進剤を使用した場合、相分離促進剤が中空微粒子のシェルに含まれることとなるが、電気特性の観点から、中空微粒子は、相分離促進剤の含有量が少ないことが好ましい。よって、本開示の製造方法では、相分離促進剤の使用量をできるだけ少なくすることが好ましい。
中空微粒子において、相分離促進剤の含有量は、例えば、含フッ素樹脂に対して5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が好ましい。下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
【0221】
低誘電性、低屈折率の観点から、中空微粒子の中空部に充填されているのは、気体であることが好ましく、空気であることがより好ましい。
【0222】
(中空微粒子)
本開示の製造方法により、本開示の中空微粒子が得られる。本開示の製造方法で説明した好適な形態は、本開示の中空微粒子にも適用可能である。
【0223】
本開示の中空微粒子は、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂を含み、非重合性溶剤を実質的に含まず、平均粒径が1.0μm以上である。
【0224】
本開示の中空微粒子は、いわゆる入れ子構造を有するものであってもよいが、含フッ素樹脂を含むシェル及び中空部からなり、単孔構造を有することが好ましい。
なお、本開示において、「単孔構造」とは、多孔質状等のように複数の空隙を有する場合は含まず、ただ1つの閉じた空隙を有する構造のことをいう。また、以下の説明において、中空微粒子の空隙以外の部分を「シェル」という。
【0225】
本開示の中空微粒子の粒子径は、上述した本開示の製造方法において、液滴の大きさを変化させることにより調節することができるが、従来の方法では、含フッ素樹脂を含む中空微粒子において、平均粒径を大きくすることは困難であった。
上述した本開示の製造方法を用いることにより、含フッ素樹脂を含む中空微粒子であっても平均粒径を大きくすることができ、平均粒径が1.0μm以上である中空微粒子を製造することができる。
【0226】
本開示の中空微粒子は、非重合性溶剤を実質的に含まない。ここで、中空微粒子が非重合性溶剤を実質的に含まないとは、中空微粒子に対して非重合性溶剤が0.1質量%以下であることを意味する。本開示の中空微粒子は、非重合性溶剤を完全に含まないものであってもよい。
【0227】
本開示の中空微粒子は、平均粒径が1.0μm以上である。平均粒径は、2.0μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましい。また、平均粒径は、50.0μm以下が好ましく、40.0μm以下がより好ましく、30.0μm以下が更に好ましい。
【0228】
本開示の中空微粒子は、中空であるため低誘電性に優れ、高周波特性に優れるため、電子材料用途に好適である。すなわち、本開示の中空微粒子は電子材料用であることが好ましい。
【0229】
本開示の中空微粒子は、含フッ素樹脂を含み、平均粒径が1.0μm以上であることから、誘電率を低くすることができるとともに、同体積で用いた場合の表面積を小さくすることができるため、電子材料用として好適である。平均粒径が小さいと比表面積が増えるため、界面に付着した水分等の影響で電気特性が著しく低下する場合がある。
【0230】
(相分離微粒子)
本開示の製造方法における工程A~Bまでを実施することで、本開示の相分離微粒子を含む水分散体(本開示の水分散体)が得られる。本開示の相分離微粒子は、水分散体のままで使用してもよいし、濾過し、必要に応じて水洗した後、粉体の形態で使用してもよい。本開示の製造方法で説明した好適な形態は、本開示の相分離微粒子にも適用可能である。
【0231】
本開示の相分離微粒子は、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂と、非重合性溶剤とを含み、平均粒径が1.0μm以上である。
【0232】
本開示の相分離微粒子は、中空部分に非重合性溶剤を含むという点で、本開示の中空微粒子と相違する。非重合性溶剤の含有量は、相分離微粒子に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、非重合性溶剤の含有量は、相分離微粒子に対して、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0233】
本開示の相分離微粒子は、平均粒径が1.0μm以上である。平均粒径は、2.0μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましい。また、平均粒径は、50.0μm以下が好ましく、40.0μm以下がより好ましく、30.0μm以下が更に好ましい。
【0234】
本開示の相分離微粒子は、本開示の中空微粒子と同様、電子材料用途に好適である。すなわち、本開示の相分離微粒子は電子材料用であることが好ましい。
【0235】
(組成物)
本開示の第一の組成物は、本開示の中空微粒子と、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂とを含む。
【0236】
本開示の第一の組成物は、中空微粒子及び含フッ素樹脂を意図的に混合したものであってもよいし、中空微粒子を製造する工程で生成されるものであってもよい。
【0237】
本開示の第一の組成物において、含フッ素樹脂は、中空微粒子に含まれる含フッ素樹脂とは別に添加されるものである。当該フッ素樹脂としては、本開示の製造方法で説明したものを使用可能である。
【0238】
本開示の第一の組成物において、含フッ素樹脂と中空微粒子との組成比に制限はないが、例えば、質量比(含フッ素樹脂/中空微粒子)が5/95~95/5の任意の組成物である。
【0239】
本開示の第一の組成物は、フッ素含有率が高いまま、電気特性の制御が可能であるという点で好ましい。
【0240】
本開示の第二の組成物は、本開示の相分離微粒子と、フッ素置換モノマーに基づく重合単位を含む含フッ素樹脂とを含む。
【0241】
本開示の第二の組成物は、相分離微粒子及び含フッ素樹脂を意図的に混合したものであってもよいし、相分離微粒子を製造する工程で生成されるものであってもよい。
【0242】
本開示の第二の組成物において、含フッ素樹脂は、相分離微粒子に含まれる含フッ素樹脂とは別に添加されるものである。当該フッ素樹脂としては、本開示の製造方法で説明したものを使用可能である。
【0243】
本開示の第二の組成物において、含フッ素樹脂と相分離微粒子との組成比に制限はないが、例えば、質量比(含フッ素樹脂/相分離微粒子)が5/95~95/5の任意の組成物である。
【0244】
本開示の第二の組成物は、本開示の第一の組成物と同様、フッ素含有率が高いまま、電気特性の制御が可能であるという点で好ましい。
【実施例0245】
次に本開示を実施例をあげて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0246】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0247】
[平均粒径]
微粒子の光学顕微鏡写真の画像解析を粒子径解析ソフトLUZEX APを用いて算出した。具体的には異なる場所の写真を撮影し、粒子数として合計50以上になるようにして平均粒径を算出した。
【0248】
[空隙率]
下記式により空隙率を算出した。
空隙率M(体積%)=非重合性溶剤量(g)/(フッ素置換モノマー量(g)+架橋性モノマー量(g)+非重合性溶剤量(g))×100
なお、空隙率Mは、相分離微粒子と中空微粒子とで同じ値となる。
【0249】
[ガラス転移温度]
DSC(示差走査熱量計:日立ハイテクサイエンス社、DSC7000)を用いて、30℃以上から200℃以下の温度範囲を10℃/分の条件で昇温(ファーストラン)-降温-昇温(セカンドラン)させ、セカンドランにおける吸熱曲線の中間点をガラス転移温度(℃)とした。
【0250】
[フッ素置換率FC(%)]
フッ素置換率FC(%)=モノマー分子中のC-F結合の数/(モノマー分子中のC-F結合の数+モノマー分子中のC-H結合の数)×100
【0251】
[重合率]
重量後に温度100℃、24時間の条件で乾燥させ、その残差より、固形分濃度比Zを算出し、仕込みのモノマー比率(全重量に対するフッ素置換モノマー量と架橋性モノマー量の合計比率Q)から下式にて重合率C(%)を計算した。
重合率C(%) = Z/Q×100(%)
【0252】
[実施例1]
含フッ素モノマーとしてパーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)(モノマーa7(式(a-7)で表されるモノマー))を、架橋性モノマーとして1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-ビス〔(1,2,2-トリフルオロビニル)オキシ〕プロパーン(PFDVE)(CF2=CF-O-(CF2)3-O-CF=CF2)を、非重合性溶剤としてハイドロフルオロカーボンである1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(HFCP)溶液を、重合開始剤として、過酸化ラウロイルを、粒子分散安定剤としてPn=1700、ケン化度=88%のポリビニルアルコール(PVA)を用いた。
含フッ素モノマーであるモノマーa7のフッ素置換率FCは100%であり、架橋性モノマーであるPFDVEのフッ素置換率FCも100%であった。
【0253】
下記表1の組成に従い、HFCP溶液に架橋性モノマーであるPFDVE、含フッ素モノマーであるモノマーa7を質量比3:2で加え、さらに重合開始剤である過酸化ラウロイルを溶解させた均一な油相をあらかじめ所定の濃度にPVAを溶解させた水媒体にホモジナイザ-を用いることにより分散させ懸濁滴を作製した。これを、窒素雰囲気下にて60℃で24時間、180rpmで攪拌して重合することによって水中分散懸濁粒子を作製した。
【0254】
表1
量(g)
フッ素置換モノマー モノマーa7 0.36
架橋性モノマー PFDVE 0.24
非重合性溶剤 HFCP 0.6
粒子分散安定剤 PVA 0.02
重合開始剤 過酸化ラウロイル 0.012
分散媒 水 5
【0255】
図1(a)に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(多孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0256】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は19μmであった。
この相分離微粒子の空隙率Mは50体積%であった。
【0257】
[実施例2]
実施例1で得られた相分離微粒子を60℃、24時間の条件で単離乾燥後、SEMで観察した。その結果を
図1(b)に示す。あきらかな多孔構造を持つ中空微粒子が得られた。
実施例1の光学顕微鏡写真(
図1(a))からもわかるが、明瞭なシェルが形成されていなかったため、SEMで観察された表面は多孔構造が観測された。
【0258】
[実施例3]
実施例2で得られた中空微粒子を構成する含フッ素樹脂のガラス転移温度を測定したところ138℃であった。
【0259】
[実施例4]
モノマーの割合を変更した点(架橋性モノマーは不使用)、攪拌時の回転数を200rpmとした点以外は実施例1と同様にして重合を行い、水中分散懸濁粒子を作製した。表2に組成を示す。
【0260】
表2
量(g)
フッ素置換モノマー モノマーa7 0.6
非重合性溶剤 HFCP 0.6
粒子分散安定剤 PVA 0.02
重合開始剤 過酸化ラウロイル 0.012
分散媒 水 5
【0261】
図2に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(多孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0262】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は11μmであった。
この相分離微粒子の空隙率Mは50体積%であった。
[実施例5]
実施例4で得られた相分離微粒子を60℃、24時間の条件で単離乾燥し、球形構造の中空微粒子を得た。
【0263】
実施例4の光学顕微鏡写真(
図2)からもわかるが、明瞭なシェルが形成されているため、SEMで観察された表面にはそのままシェルに基づく球形構造が観測された。
ただ、一部に陥没した様子も観測され、内部が多孔構造になっている事が伺えた。
【0264】
[実施例6]
実施例5で得られた中空微粒子を構成する含フッ素樹脂のガラス転移温度を測定したところ130℃であった。
【0265】
[実施例7]
モノマーの割合を変更した点、攪拌時の回転数を200rpmとした点以外は実施例1と同様にして重合を行い、水中分散懸濁粒子を作製した。表3に組成を示す。
【0266】
表3
量(g)
フッ素置換モノマー モノマーa7 0.24
架橋性モノマー PFDVE 0.36
非重合性溶剤 HFCP 0.6
粒子分散安定剤 PVA 0.02
重合開始剤 過酸化ラウロイル 0.012
分散媒 水 5
【0267】
図3に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(単孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0268】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は16μmであった。
また、空隙率Mは50体積%であった。
また、実施例5と同様に実施例7で得られた相分離微粒子を60℃、24時間の条件で単離乾燥して中空微粒子(図示せず)を得た。
【0269】
[実施例8]
重合開始剤を過酸化ベンゾイル(BPO)に変更した点、重合温度を70℃とした点以外は実施例7と同様にして重合を行い、水中分散懸濁粒子を作製した。表4に組成を示す。
【0270】
表4
量(g)
フッ素置換モノマー モノマーa7 0.24
架橋性モノマー PFDVE 0.36
非重合性溶剤 HFCP 0.6
粒子分散安定剤 PVA 0.02
重合開始剤 BPO 0.012
分散媒 水 5
【0271】
図4(a)に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(単孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0272】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は17μmであった。
また、空隙率Mは50体積%であった。
【0273】
[実施例9]
実施例8で得られた相分離微粒子を70℃、24時間の条件で単離乾燥後、SEMで観察した。その結果を
図4(b)に示す。一部粒子径の大きな中空微粒子はその中空構造が崩れた形状で得られた。
【0274】
[実施例10]
重合温度を80℃にした以外は実施例8と同様にして水中分散懸濁粒子を作製した。
【0275】
図5(a)に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(多孔)の粒子が得られていることが示唆された
【0276】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は13μmであった。
また、重合率は73.3%であった。
空隙率Mは50体積%であった。
【0277】
[実施例11]
実施例10で得られた相分離微粒子を80℃、24時間の条件で単離乾燥後、SEMで観察した。その結果を
図5(b)に示す。一部の中空微粒子では中空構造が陥没した形状で得られた。
大きな陥没も観測されたが、表面は多孔になっていることがわかった。こちらも光学顕微鏡写真から明瞭なシェルが観測されてなかったので、多孔部が露出したものと思われた。
【0278】
[実施例12]
開始剤の量を変更した点以外は実施例8と同様にして水中分散懸濁粒子を作製した。表5に組成を示す。
【0279】
表5
量(g)
フッ素置換モノマー モノマーa7 0.24
架橋性モノマー PFDVE 0.36
非重合性溶剤 HFCP 0.6
粒子分散安定剤 PVA 0.02
重合開始剤 BPO 0.06
分散媒 水 5
【0280】
図6に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(多孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0281】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は13μmであった。
空隙率Mは50体積%であった。
【0282】
[実施例13]
実施例12で得られた相分離微粒子を70℃、24時間の条件で単離乾燥することで、球状構造の中空微粒子を得た。SEM観察で表面は多孔部が一部露出していた。
【0283】
[実施例14]
表6の組成とした点、重合温度を80℃とした点、重合時間を9時間とした点以外は実施例1と同様にして水中分散懸濁粒子を作製した。
【0284】
表6
量(g)
フッ素置換モノマー モノマーa7 1.2
非重合性溶剤 HFCP 1.2
粒子分散安定剤 PVA 0.2
重合開始剤 BPO 0.024
分散媒 水 10
【0285】
図7に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(比較的大きい多孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0286】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は7.2μmであった。
【0287】
[実施例15]
実施例14で得られた相分離微粒子を80℃、9時間の条件で単離乾燥することで、球状構造の中空微粒子が得られた。
【0288】
比較的大きい多孔構造であったためか、SEMでの表面には多孔構造の露出は観測されなかった。
実施例15で得られた中空微粒子を構成する含フッ素樹脂のガラス転移温度は129℃であった。
【0289】
[実施例16]
表7の組成とした点、重合温度を70℃とした点以外は実施例1と同様にして水中分散懸濁粒子を作製した。
【0290】
表7
量(g)
フッ素置換モノマー モノマーa7 0.31
架橋性モノマー PFDVE 0.29
非重合性溶剤 HFCP 0.6
粒子分散安定剤 PVA 0.2
重合開始剤 BPO 0.012
分散媒 水 10
【0291】
図8に重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(単孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0292】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は11μmであった。
空隙率Mは50体積%であった。
【0293】
[実施例17~22]
組成、重合条件および重合結果を表8に示す。フッ素置換モノマーであるCF2=CF-OC3F7のフッ素置換率FCは100%であり、CH2=CH-C6F13のフッ素置換率FCは81%であり、CH2=CF(CF2OCFCF3)2CH2OHのフッ素置換率FCは76%であった。
【0294】
【表8】
ここで、含フッ素粒子分散安定剤は、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)COOHのホモポリマーでMw=430,000である。
ここで、組成の欄の値は量(g)である。
これらは、下記表9~10においても同様である。
【0295】
[比較例1~2]
組成、重合条件および重合結果を表9に示す。
【0296】
【0297】
[実施例23~25]
組成、重合条件および重合結果を表10に示す。
【表10】
【0298】
図9に実施例23の重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(比較的大きい多孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0299】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は17μmであった。
空隙率Mは50体積%であった。
【0300】
また、
図10に実施例24の重合後の水中分散懸濁粒子の光学顕微鏡写真を示す。重合後の光学顕微鏡写真では、中空構造(比較的小さい多孔)の粒子が得られていることが示唆された。
【0301】
得られた水中分散懸濁粒子は、内部に非重合性溶剤を含む相分離微粒子であった。
光学顕微鏡写真より計算された平均粒径は6μmであった。
空隙率Mは50体積%であった。
【0302】
[実施例26]
実施例23で得られた相分離微粒子を80℃、9時間の条件で単離乾燥後、SEMで観察した。その結果を
図11および
図12に示す。
図12で中空構造が確認でき、中空微粒子が得られていた。
【0303】
[実施例27]
実施例24で得られた相分離微粒子を80℃、9時間の条件で単離乾燥後、SEMで観察した。その結果を
図13に示す。
図13の右側は枠内を拡大したものである。
図13では中空の入れ子構造が確認でき、中空微粒子が得られていた。
[実施例28及び29]
組成、重合条件および重合結果を表11に示す。
【表11】
【0304】
実施例28、29では、粒子分散安定剤として、CF2=CFCF2CF2SO3HのホモポリマーでMw=10,000を用いて検討した。
【0305】
[実施例30]
実施例28で得られた相分離微粒子を80℃、9時間の条件で単離乾燥後、SEMで観察した。その結果を
図14に示す。
図14で多孔が観測され、中空微粒子が得られていた。
【0306】
[実施例31]
実施例29で得られた相分離微粒子を80℃、9時間の条件で単離乾燥後、SEMで観察した。その結果を
図15に示す。
図15で多孔が観測され、中空微粒子が得られていた。