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特開2023-18274積層化細胞シートの作製支援装置、作製支援システム、作製支援方法、及び、プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018274
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】積層化細胞シートの作製支援装置、作製支援システム、作製支援方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/04 20060101AFI20230201BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230201BHJP
【FI】
C12M3/04 A
C12N5/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122277
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】322004393
【氏名又は名称】株式会社エビデント
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】下地 恵令奈
(72)【発明者】
【氏名】鎌戸 耀子
(72)【発明者】
【氏名】出澤 拓磨
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029DG10
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB01
4B029GB02
4B029GB06
4B065AA90X
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】積層化細胞シートの作製効率を改善する。
【解決手段】制御装置30は、複数の細胞シートが積層された積層化細胞シートの作製支援装置である。制御装置30は、積層化細胞シートの光学特性に関する情報である光学的情報を取得する取得部31と、取得部31で取得した光学的情報に基づいて、積層化細胞シートの厚さ分布を算出する厚さ分布算出部32と、厚さ分布算出部32で算出した厚さ分布に基づいて、積層化細胞シート上に新たに積層する細胞シートの積層位置を判定する判定部33と、判定部33で判定した積層位置の情報を出力する出力部37と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細胞シートが積層された積層化細胞シートの作製支援装置であって、
前記積層化細胞シートの光学特性に関する情報である光学的情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記光学的情報に基づいて、前記積層化細胞シートの厚さ分布を算出する厚さ分布算出部と、
前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート上に新たに積層する細胞シートの積層位置を判定する判定部と、
前記判定部で判定した前記積層位置の情報を出力する出力部と、を備える
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作製支援装置において、
前記判定部は、前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シートの最も厚い領域と前記新たに積層する細胞シートとが重なるように、前記積層位置を決定する
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作製支援装置において、
前記判定部は、
前記積層化細胞シートの目標厚さに達した領域が前記積層化細胞シートにない場合、前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シートの最も厚い領域と前記新たに積層する細胞シートとが重なるように、前記積層位置を決定し、
前記目標厚さに達した領域が前記積層化細胞シートにある場合、前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記目標厚さに達した領域に隣接する前記目標厚さに達しない領域と前記新たに積層する細胞シートとが重なるように、前記積層位置を決定する
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の作製支援装置において、
前記判定部は、
前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シートの領域を1つ以上の部分領域に区画する区画部と、
前記1つ以上の部分領域のサイズと厚さの少なくとも一方に基づいて、前記1つ以上の部分領域の中から積層対象とする対象部分領域を選択する選択部と、
前記対象部分領域と前記新たに積層する細胞シートとが重なるように、前記積層位置を決定する決定部と、を備える
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の作製支援装置において、さらに、
前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布から特定される前記複数の細胞シートの配置のばらつきに基づいて、前記積層化細胞シート上への前記新たな細胞シートの積層中止を判定する第2判定部を備える
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の作製支援装置において、さらに、
前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート中の損傷部分を検出する検出部を備える
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の作製支援装置において、さらに、
前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート中の損傷部分を検出する検出部を備え、
前記判定部は、前記検出部で検出した損傷部分と前記新たに積層する細胞シートとが重ならないように、前記積層位置を決定する
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の作製支援装置において、さらに、
前記検出部で検出した前記損傷部分の位置に応じて、前記積層化細胞シート上への前記新たな細胞シートの積層中止を判定する第3判定部を備える
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の作製支援装置において、さらに、
既知の厚さ分布を有する細胞シートの光学特性に関する情報に基づいて、前記光学的情報を前記厚さ分布に変換する変換基準を作成する基準作成部を備え、
前記厚さ分布算出部は、前記変換基準を用いて、前記積層化細胞シートの厚さ分布を算出する
ことを特徴とする作製支援装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の作製支援装置と、
前記作製支援装置が出力した前記積層位置の情報に基づいて、前記積層化細胞シートに新たな細胞シートを積層する積層装置と、を備える
ことを特徴とする作製支援システム。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の作製支援装置と、
前記作製支援装置が出力した前記積層位置の情報を表示する表示装置と、を備える
ことを特徴とする作製支援システム。
【請求項12】
請求項11に記載の作製支援システムにおいて、
前記光学的情報は、前記積層化細胞シートの画像を含み、
前記表示装置は、前記積層位置の情報を前記画像に重ねて表示する
ことを特徴とする作製支援システム。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の作製支援システムにおいて、
前記作製支援装置は、さらに、
前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布を可視化したモデル画像を生成するモデル化部と、を備え、
前記表示装置は、前記モデル画像を表示する
ことを特徴とする作製支援システム。
【請求項14】
複数の細胞シートが積層された積層化細胞シートの作製支援方法であって、
前記積層化細胞シートの光学特性に関する情報である光学的情報を取得し、
取得した前記光学的情報に基づいて、前記積層化細胞シートの厚さ分布を算出し、
算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート上に新たに積層する細胞シートの積層位置を判定し、
判定した前記積層位置の情報を出力する
ことを特徴とする作製支援方法。
【請求項15】
複数の細胞シートが積層された積層化細胞シートの作製支援装置のコンピュータに、
前記積層化細胞シートの光学特性に関する情報である光学的情報を取得し、
取得した前記光学的情報に基づいて、前記積層化細胞シートの厚さ分布を算出し、
算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート上に新たに積層する細胞シートの積層位置を判定し、
判定した前記積層位置の情報を出力する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、積層化細胞シートの作製支援装置、作製支援システム、作製支援方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療の分野において、生体から採取した細胞をシート状に培養した細胞シートが注目されている。細胞シートは、損傷した組織に貼り付けることで組織の再生と機能の回復を図るものである。
【0003】
細胞シートは、接着タンパク質によって生体組織と結合されるため、生体組織の損傷部分に貼り付けるだけで縫合することなく短時間で移植可能である。また、細胞シートの利用は、細胞懸濁液注射による治療において課題となる細胞の流出が少なく、治療効果も高いことが知られている。このため、現在、様々な分野で臨床応用が開始されている。
【0004】
また、一度により多くの細胞を移植するために、細胞シートを積層化する積層化技術についても多くの提案がなされている。例えば、特許文献1には、細胞シートの積層枚数を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-147687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、積層化された細胞シート(以降、積層化細胞シートと記す。)を効率良く作製するには、細胞シートの積層状況に応じて新たな細胞シートの配置を変更することが望ましい。
【0007】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、細胞シートを配置すべき位置の決定を支援することで、積層化細胞シートの作製効率を改善する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る作製支援装置は、複数の細胞シートが積層された積層化細胞シートの作製支援装置であって、前記積層化細胞シートの光学特性に関する情報である光学的情報を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記光学的情報に基づいて、前記積層化細胞シートの厚さ分布を算出する厚さ分布算出部と、前記厚さ分布算出部で算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート上に新たに積層する細胞シートの積層位置を判定する判定部と、前記判定部で判定した前記積層位置の情報を出力する出力部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る作製支援システムと、上記の態様に係る作製支援装置と、前記作製支援装置が出力した前記積層位置の情報に基づいて、前記積層化細胞シートに新たな細胞シートを積層する積層装置と、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る作製支援方法は、複数の細胞シートが積層された積層化細胞シートの作製支援方法であって、前記積層化細胞シートの光学特性に関する情報である光学的情報を取得し、取得した前記光学的情報に基づいて、前記積層化細胞シートの厚さ分布を算出し、算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート上に新たに積層する細胞シートの積層位置を判定し、前記判定部で判定した前記積層位置の情報を出力する。
【0011】
本発明の一態様に係るプログラムは、複数の細胞シートが積層された積層化細胞シートの作製支援装置のコンピュータに、前記積層化細胞シートの光学特性に関する情報である光学的情報を取得し、取得した前記光学的情報に基づいて、前記積層化細胞シートの厚さ分布を算出し、算出した前記厚さ分布に基づいて、前記積層化細胞シート上に新たに積層する細胞シートの積層位置を判定し、前記判定部で判定した前記積層位置の情報を出力する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、積層化細胞シートの作製効率を改善する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るシステム1の構成を例示した図である。
図2】第1の実施形態に係る制御装置30の機能的構成を例示した図である。
図3】第1の実施形態に係るシステム1が行う処理のフローチャートの一例である。
図4】第1の実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。
図5】第1の実施形態に係る判定処理のフローチャートである。
図6】部分領域の領域値を例示した図である。
図7】第1の実施形態に係る対象部分領域選択処理のフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係る判定処理で決定した積層位置の一例を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る判定処理で決定した積層位置の別の例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係るシステムが行う処理のフローチャートの一例である。
図11】積層位置が表示された画面の一例を示した図である。
図12】第3の実施形態に係る制御装置30aの機能的構成を例示した図である。
図13】第3の実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。
図14】積層が中止される細胞シートの配置の一例を示した図である。
図15】第4の実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。
図16】積層中止を提案する画面の一例を示した図である。
図17】第5の実施形態に係る制御装置30bの機能的構成を例示した図である。
図18】第5の実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。
図19】第5の実施形態に係る判定処理で決定した積層位置の一例を示す図である。
図20】第6の実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。
図21】積層中止を提案する画面の別の例を示した図である。
図22】第7の実施形態に係る制御装置30cの機能的構成を例示した図である。
図23】第7の実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。
図24】モデル画像の一例を示した図である。
図25】第8の実施形態に係るシステム2の構成を例示した図である。
図26】第8の実施形態に係る制御装置30dの機能的構成を例示した図である。
図27】細胞シートの種類と検出される光量の関係について示した図である。
図28】異なる種類の細胞シートの積層状態を判定する方法を説明するための図である。
図29】制御装置を実現するためのコンピュータ100のハードウェア構成を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係るシステム1の構成を例示した図である。図1を参照しながら、システム1について説明する。システム1は、積層化細胞シートの作製を支援するシステムである。システム1は、例えば、ユーザが積層化細胞シートに求めるサイズ(以降、目標サイズとも記す。)と厚さ(以降、目標厚さとも記す。)を指示することで、予めプログラムされた処理を実行して、要求を満たす積層化細胞シートを自動的に作製する。
【0015】
システム1は、図1に示すように、積層装置10と、計測装置20と、制御装置30を備えている。システム1は、さらに、表示装置40と、入力装置41を備えてもよい。
【0016】
積層装置10は、細胞シートCSを積層して、積層化細胞シートLCSを作製する。積層装置10は、インキュベータ11から培養容器12を取り出して所定位置まで搬送する機構と、培養容器12から細胞シートCSを剥離し積層するマニピュレーター13を備えている。積層装置10による積層作業は、制御装置30によって制御される。マニピュレーター13は、特に限定しないが、例えば、図1に示すような、細胞シートCSを支持体へ押し当てることで培養容器12から支持体へ細胞シートCSを写し取って搬送する、スタンプ型の装置であってもよい。
【0017】
計測装置20は、積層装置10で作製した積層化細胞シートLCSの光学的特性を計測し、光学的特性に関する情報(以降、光学的情報と記す。)を生成する。計測装置20は、積層化細胞シートLCSに照射する光を出射する光源21と、積層化細胞シートLCSを透過した光を集光する光学系22と、光学系22が集光した光を検出する検出器23を備えている。計測装置20は、積層化細胞シートLCSの光学的特性として、特定波長の透過率を計測してもよく、また、複数の異なる波長の透過率を計測してもよい。なお、透過率を計測するとは、透過率そのものを算出して透過率情報を生成することであってもよく、透過率を反映した情報を生成することであってもよい。従って、積層化細胞シートLCSの光学的特性に関する光学的情報は、透過率を反映した積層化細胞シートLCSの画像であってもよい。計測装置20は、例えば、透過照明で明視野画像を取得する顕微鏡である。
【0018】
制御装置30は、積層化細胞シートLCSの作製支援装置の一例である。制御装置30は、計測装置20で生成された光学的情報に基づいて積層装置10を制御することで、積層化細胞シートLCSの作製を支援する。より具体的には、制御装置30は、積層化細胞シートLCS上に新たに積層する細胞シートCSの位置である積層位置を算出し、算出した積層位置の情報を用いて積層装置10を制御する。なお、以降では、積層位置とは、積層化細胞シートLCS上に新たに積層する細胞シートCSの位置、より詳細には、積層化細胞シートLCS上に新たに細胞シートCSを積層するときに目標となる位置をいう。積層位置は、例えば、新たな細胞シートCSと同等の形状でサイズを有する領域の位置である。ただし、新たな細胞シートCSの形状とサイズが既知でない場合には、積層位置は、予め決められた形状とサイズを有する領域の位置であってもよく、新たな細胞シートCSについて予想される形状とサイズを有する領域の位置であってもよい。また、積層位置は、積層化細胞シートLCS上の一点の位置であってもよい。さらに、積層位置は、積層化細胞シートLCS上の二点以上の位置の集合であってもよい。
【0019】
表示装置40は、任意の表示装置であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどである。表示装置40には、例えば、ユーザが積層化細胞シートLCSに求めるサイズと厚さなどの各種設定情報を入力するための設定画面が表示される。また、表示装置40には、計測装置20で生成された積層化細胞シートLCSの画像などが表示されてもよい。
【0020】
入力装置41は、任意の入力装置であり、例えば、キーボード、マウス、タッチデバイスなどである。ユーザは、入力装置41を用いて各種設定情報の入力や変更などを行う。
【0021】
以上のように構成されたシステム1では、制御装置30が計測装置20で生成された光学的情報に基づいて積層位置を算出して、算出した積層位置の情報を用いて積層装置10を制御する。また、積層装置10では、マニピュレーター13が制御装置30から指示された積層位置に細胞シートCSを配置して細胞シートCSを積層する。これにより、積層化細胞シートLCSの作製過程における細胞シートの積層状況に応じて最適な位置に細胞シートCSが配置されることになる。このため、システム1によれば、ユーザが要求する仕様(厚さや面積)の積層化細胞シートLCSを効率良く作製することができる。また、積層位置の算出に当たり利用される光学的情報は計測装置20による非接触かつ非侵襲的な測定によって生成される。このため、積層位置を算出するために、積層化細胞シートLCSに過度のダメージを強いることがない。従って、システム1によれば、積層化細胞シートLCSの質を犠牲にすることなく作製効率を改善することができる。
【0022】
図2は、本実施形態に係る制御装置30の機能的構成を例示した図である。以下、図2を参照しながら、制御装置30が有する作製支援機能に関連する構成について説明する。
【0023】
制御装置30は、システム1による積層化細胞シートLCSの作製を支援するために、図2に示すように、取得部31と、厚さ分布算出部32と、判定部33と、出力部37を備えている。
【0024】
取得部31は、積層化細胞シートLCSの光学特性に関する情報である光学的情報を取得する。取得部31は、計測装置20で生成された光学的情報を取得する。光学的情報は、例えば、積層化細胞シートLCSの画像である。
【0025】
厚さ分布算出部32は、取得部31で取得した光学的情報に基づいて、積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する。厚さ分布算出部32は、例えば、細胞シートCSの単位厚さあたりの透過率の情報を用いて、光学的情報である積層化細胞シートLCSの画像から積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する。
【0026】
判定部33は、厚さ分布算出部32で算出した厚さ分布に基づいて、積層化細胞シートLCS上に新たに積層する細胞シートCSの積層位置を判定する。判定部33は、例えば、算出した厚さ分布に基づいて、積層化細胞シートLCSの最も厚い領域と新たに積層する細胞シートとが重なるように、積層位置を決定してもよい。また、判定部33は、積層化細胞シートLCSに目標厚さに達した領域がある場合とない場合で異なる基準で積層位置を決定してもよい。判定部33は、目標厚さに達した領域が積層化細胞シートLCSにない場合、厚さ分布に基づいて、積層化細胞シートLCSの最も厚い領域と新たに積層する細胞シートCSとが重なるように、積層位置を決定してもよい。一方で、判定部33は、目標厚さに達した領域が積層化細胞シートLCSにある場合、厚さ分布に基づいて、目標厚さに達した領域に隣接する目標厚さに達しない領域と新たに積層する細胞シートCSとが重なるように、積層位置を決定してもよい。望ましくは、判定部33は、図2に示すように、区画部34と、選択部35と、決定部36を含んでいる。
【0027】
区画部34は、厚さ分布算出部32で算出した厚さ分布に基づいて、積層化細胞シートLCSの領域を1つ以上の部分領域に区画する。区画する方法は特に限定しないが、例えば、以下の様にして区画してもよい。
【0028】
区画部34は、まず、画像の各画素をその位置における積層化細胞シートLCSの厚さ(つまり、画素値)でクラス分けする。クラス分けは、1画素毎に限らず所定数の画素(以降、画素セットと記す。)毎に行われてもよい。その場合、所定数の画素の値の平均値や中央値などに基づいて画素セットを代表する厚さを決定し、決定した厚さに基づいてクラス分けを行ってもよい。
【0029】
なお、区画部34は、少なくとも、目標厚さ以上の厚さ範囲に対応するクラスと、目標厚さ未満の厚さ範囲に対応するクラスとに、画素(画素セット)をクラス分けすることが望ましい。各クラスに対応する厚さ範囲の幅は、例えば、細胞シートCS1枚分程度の厚さであることが望ましい。これにより、実質的に細胞シートCSの積層枚数で各画素をクラス分けすることができる。ただし、各クラスに対応する厚さ範囲の幅は同じであってもよく、異なってもよい。
【0030】
区画部34は、画素(画素セット)がクラス分けされると、同じクラスに分類された連続領域のそれぞれを部分領域として区画する。例えば、このような方法により、積層化細胞シートLCSの領域を1つ以上の部分領域に区画することができる。
【0031】
選択部35は、区画部34で定義された1つ以上の部分領域のサイズと厚さの少なくとも一方に基づいて、1つ以上の部分領域の中から積層対象とする対象部分領域を選択する。ここで、積層対象とは、新たな細胞シートCSを積層する対象という意味である。
【0032】
各部分領域のサイズは、例えば、面積であり、部分領域に属する画素数(画素セット数)を用いて換算してもよい。各部分領域の厚さは、部分領域に対応するクラスを代表する厚さ(例えば、クラスに対応する厚さ範囲の中心値、最大値、最小値など)であってもよい。また、各部分領域の厚さは、部分領域内の各位置における積層化細胞シートLCSの厚さに基づいて算出されてもよく、例えば、部分領域に属する画素の画素値の平均値、中央値、最大値、最小値などであってもよい。
【0033】
選択部35は、例えば、部分領域のサイズと厚さに加えて、積層化細胞シートLCSの目標サイズと目標厚さに基づいて、対象部分領域を選択することが望ましい。これらの情報を用いることで、目標サイズと目標厚さを有する積層化細胞シートLCSを作製する上で効率のよい積層位置を決定することが可能である。
【0034】
決定部36は、選択部35で選択した対象部分領域と新たに積層する細胞シートCSとが重なるように、積層位置を決定する。具体的には、決定部36は、例えば、対象部分領域と新たなに積層する細胞シートCSとの重複領域が最大となるように、積層位置を決定してもよい。また、決定部36は、例えば、対象部分領域の中心に新たなに積層する細胞シートCSの中心が位置するように、積層位置を決定してもよい。
【0035】
出力部37は、決定部36で判定した積層位置の情報を出力する。出力部37は、例えば、積層位置の情報を積層装置10に出力する。これにより、積層装置10は、出力部37から出力された積層位置の情報に基づいて細胞シートCSを積層する。
【0036】
なお、出力部37は、積層位置の情報をその他の装置、例えば、表示装置40に出力してもよい。また、出力部37は、積層位置の情報をその他の情報と組み合わせて出力してもよい。例えば、計測装置20で生成した画像と組み合わせて積層位置の情報を出力してもよく、画像上に積層位置を示すマークを重ねた合成画像を出力してもよい。
【0037】
以上の様に構成された制御装置30では、計測装置20で計測した光学特性に基づいて積層化細胞シートLCSの厚さ分布が算出され、その厚さ分布に基づいて積層化細胞シートLCSの領域中から適切な積層位置が判定され、その積層位置の情報がシステム1の他の装置へ出力される。これにより、システム1は、制御装置30が出力した積層位置の情報を用いて積層化細胞シートLCSの作製を効率良く行うことができる。従って、制御装置30によれば、積層化細胞シートの作製効率を改善することができる。
【0038】
図3は、本実施形態に係るシステム1が行う処理のフローチャートの一例である。図4は、本実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。図5は、本実施形態に係る判定処理のフローチャートである。図6は、部分領域の領域値を例示した図である。図7は、本実施形態に係る対象部分領域選択処理のフローチャートである。図8及び図9は、それぞれ本実施形態に係る判定処理で決定した積層位置の一例を示す図である。以下、図3から図9を参照しながら、本実施形態に係るシステム1が行う処理について具体的に説明する。
【0039】
図3に示す積層化細胞シートLCSの自動作製処理は、例えば、ユーザが入力装置41を用いて制御装置30に積層化細胞シートLCSの自動作製を指示することで開始される。図3に示す自動作製処理は、計測装置20で行われる計測処理(ステップS1)と、制御装置30で行われる積層支援処理(ステップS2)と、積層装置10で行われる積層処理(ステップS3)を含んでいる。なお、これらの処理は、例えば、目標サイズで目標厚さを有する積層化細胞シートLCSが完成するまで繰り返し行われる。
【0040】
まず、ステップS1の計測処理では、計測装置20が複数の細胞シートCSが積層した積層化細胞シートLCSを撮像し、生成した画像を制御装置30へ出力する。画像を受信した制御装置30は、例えば、所定のプログラムを実行して、図4に示す積層支援処理を開始する。
【0041】
制御装置30は、まず、作製する積層化細胞シートLCSについて目標を設定する(ステップS11)。ここでは、制御装置30は、例えば、積層化細胞シートLCSの目標サイズと目標厚さを設定する。制御装置30は、ユーザが入力した情報を取得することで設定してもよく、目標サイズと目標厚さが記載された設定ファイルを読み出すことで設定してもよい。
【0042】
目標が設定されると、制御装置30では、取得部31が計測装置20から受信した情報、この例では、画像を取得し(ステップS12)、厚さ分布算出部32が画像に基づいて画像に写っている積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する(ステップS13)。
【0043】
その後、判定部33は、ステップS13で算出した厚さ分布を用いて、図5に示す判定処理を行う(ステップS14)。判定処理では、区画部34は、まず、積層化細胞シートLCSの領域を部分領域に区画する(ステップS21)。次に、選択部35が、各部分領域の領域値を算出する(ステップS22)。ここでは、選択部35は、例えば、図6に示すように、部分領域毎に、部分領域の面積と厚さを領域値として算出する。図6には、積層化細胞シートLCSが7つの部分領域に区画されそれぞれ厚さと面積が算出された例が示されている。なお、部分領域の厚さは、その部分領域を代表する厚さであり、例えば、部分領域の平均的な厚さである。
【0044】
領域値が算出されると、選択部35は、図7に示す対象領域選択処理を行う(ステップS23)。ここでは、選択部35は、まず、目標厚さに達した部分領域があるかどうかを、ステップS22で算出した領域値(厚さ)と目標厚さとを比較することで判定する(ステップS31)。
【0045】
目標厚さに達した部分領域がない場合には、選択部35は、1つ以上の部分領域の中から最も厚い部分領域を対象部分領域に決定する(ステップS32)。例えば、最も厚い部分領域(1)が目標厚さに達していない場合には、図8に示すように、部分領域(1)を対象部分領域に決定する。
【0046】
一方、目標厚さに達した部分領域がある場合には、選択部35は、目標厚さに達した部分領域に隣接する目標厚さに達しない部分領域の中から最も大きな部分領域を対象部分領域に決定する(ステップS33)。例えば、最も厚い部分領域(1)が目標厚さに達している場合には、図9に示すように、部分領域(1)に隣接する部分領域(2)~(4)の中から最大の面積の部分領域(2)を対象部分領域に決定する。
【0047】
対象部分領域が決定されると、決定部36は、積層位置を決定する(ステップS24)。例えば、対象部分領域として部分領域(1)が選択された場合であれば、図8に示すように、部分領域(1)と積層位置Pが重なるように、積層位置Pを決定する。また、対象部分領域として部分領域(2)が選択された場合であれば、図9に示すように、部分領域(2)と積層位置Pが重なるように、積層位置Pを決定する。
【0048】
積層位置が決定されると、出力部37は、ステップS24で決定した積層位置の情報を積層装置10へ出力し(ステップS15)、制御装置30は、図4に示す積層支援処理を終了する。
【0049】
その後、ステップS3では、積層装置10が制御装置30から受信した積層位置の情報に基づいて、新たな細胞シートCSを積層化細胞シートLCS上の積層位置に配置することで、細胞シートCSを積層する。
【0050】
システム1が図3の処理を繰り返すことで、目標サイズで目標厚さの積層化細胞シートLCSを効率良く作製することができる。特に、システム1では、制御装置30は、積層化細胞シートLCSが目標厚さに達していない状態では、最も厚い部分に細胞シートCSが重なるように、積層位置を決定する。これにより、積層化細胞シートの作製過程で無駄になる領域を少なくすることが可能であり、結果として積層化細胞シートLCSを効率良く作製することができる。また、制御装置30は、積層化細胞シートLCSの少なくとも一部が目標厚さに達している場合には、その領域に隣接する領域に細胞シートCSが重なるように細胞シートCSの積層位置を決定する。これにより、目標厚さの積層化細胞シートLCSの面積を広げるように細胞シートCSが配置されることになるため、必要な面積の積層化細胞シートLCSを効率良く作製することができる。さらに、隣接領域の中から最大領域を選択して積層位置を決定することで、厚さのばらつきの少ない積層化細胞シートLCSを作製することができる。このように、本実施形態に係る制御装置30によれば、積層化細胞シートの作製効率を改善することができる。
【0051】
また、制御装置30は、部分領域毎に算出した領域値に基づいて細胞シートCSを積層すべき領域を粗く決定し(つまり、領域単位で決定し)、その緩やかな制約の範囲内で積層位置を決定する。このような手順で積層位置を決定することで、細胞シートCSを実際に積層する際に生じる多少の位置ずれへの感度を低下させることが可能である。このため、積層装置10の位置決め精度に過度に依存することなく安定した作製効率で積層化細胞シートを作製することができる。従って、本実施形態に係る制御装置30によれば、積層化細胞シートの作製効率の安定性についても改善することもできる。
【0052】
[第2の実施形態]
図10は、本実施形態に係るシステムが行う処理のフローチャートの一例である。図11は、積層位置が表示された画面の一例を示した図である。以下、図10及び図11を参照しながら、本実施形態について説明する。
【0053】
本実施形態に係るシステムは、システム1と同様に、積層化細胞シートの作製を支援するシステムである。本実施形態に係るシステムは、例えば、積層装置10のマニピュレーター13が手動で動作するなど、細胞シートCSの積層作業が手動で行われる点が、システム1と異なっている。また、システムに含まれる制御装置は、積層位置を含む合成画像を表示装置40へ出力する点が、制御装置30とは異なっている。なお、本実施形態は、積層装置10を使用せずに、ユーザがピンセットなどの器具を用いて細胞シートCSを積層する場合にも適用可能である。即ち、本実施形態に係るシステムでは、積層装置10が省略されてもよい。
【0054】
図10に示す積層化細胞シートLCSの手動作製支援処理は、計測装置20で行われる計測処理(ステップS41)と、制御装置30で行われる積層支援処理(ステップS42)と、表示装置40で行われる表示処理(ステップS43)を含んでいる。なお、ステップS41とステップS42の処理は、図3に示すステップS1及びステップS2の処理と同様である。
【0055】
ステップS43では、表示装置40が、作製支援装置である制御装置が出力した積層位置の情報を表示する。具体的には、表示装置40は、例えば、図11に示すように、積層位置の情報を積層化細胞シートLCSの画像に重ねて表示する。これにより、ユーザは、表示装置40に表示されている合成画像を見ながら、マニピュレーター13を操作して新たな細胞シートCSを積層化細胞シートLCSに配置することができる。また、ピンセットなどの器具で新たな細胞シートCSを積層化細胞シートLCSに配置してもよい。このように、本実施形態に係るシステム及び制御装置によれば、ユーザが手動で行う細胞シートCSの積層作業を支援することができる。従って、本実施形態によっても、積層化細胞シートの作製効率を改善することができる。
【0056】
なお、制御装置30は、ユーザの操作に応じて様々な情報を表示装置40に表示してもよい。例えば、表示装置40に表示されている積層化細胞シートLCSの画像の任意の位置にカーソルを合わせることで、例えば、図11に示すように、積層化細胞シートLCSのその位置の厚さを表示してもよい。このような表示は、積層化細胞シートLCSの厚さ分布が予め算出されているために容易に行うことができる。
【0057】
[第3の実施形態]
図12は、本実施形態に係る制御装置30aの機能的構成を例示した図である。以下、図12を参照しながら、本実施形態に係る制御装置30aが有する作製支援機能に関連する構成について説明する。なお、本実施形態に係るシステムは、制御装置30の代わりに制御装置30aを含む点を除き、システム1と同様である。
【0058】
制御装置30aは、図12に示すように、第2判定部51を含む点が、制御装置30とは異なっている。その他の構成は、制御装置30は同様である。
【0059】
第2判定部51は、厚さ分布算出部32で算出した厚さ分布から特定される複数の細胞シートCSの配置のばらつきに基づいて、積層化細胞シートLCS上への新たな細胞シートCSの積層中止を判定する。ここでいうばらつきとは、積層化細胞シートLCSにおける細胞シート間の重なり具合といった程度の意味であり、良く重なっている状態をばらつきが少ないと評価し、あまり重なっていない状態をばらつきが大きいと評価してもよい。具体的には、例えば、ある一定の積層(厚さ)を形成している領域、つまり、細胞シートが重なっている領域、の面積が、ある一定の値よりも小さい場合にばらつきが大きいと評価してもよい。第2判定部51が積層中止を判定すると、判定結果は、例えば、判定部33へ出力され、積層位置の判定処理が中止される。
【0060】
以上の様に構成された制御装置30aでは、積層化細胞シートLCSを構成する細胞シートCSの配置のばらつきが許容範囲を超える場合には積層が中止されるため、細胞シートCSの利用効率の悪い積層化細胞シートLCSの自動作製処理が継続することを回避することができる。
【0061】
図13は、本実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。図14は、積層が中止される細胞シートの配置の一例を示した図である。以下、図13及び図14を参照しながら、本実施形態に係る制御装置30aが行う積層支援処理について具体的に説明する。
【0062】
図13に示す積層支援処理が開始されると、制御装置30aは、まず、作製する積層化細胞シートLCSについて目標を設定する(ステップS51)。さらに、取得部31が計測装置20から受信した画像を取得し(ステップS52)、厚さ分布算出部32が取得した画像に基づいて画像に写っている積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する(ステップS53)。なお、ステップS51からステップS53の処理は、図4のステップS11からステップS13の処理と同様である。
【0063】
その後、第2判定部51が細胞シートCSの配置のばらつきを算出する(ステップS54)。細胞シートCSの配置のばらつきの大きさは、特に限定しないが、例えば、積層化細胞シートLCSの全領域に占める2枚以上の細胞シートCSが積層されている領域の割合(以降、積層率と記す。)により評価されてもよい。なお、2枚以上の細胞シートCSが積層されているか否かは、厚さが予め決められた閾値を上回っているか否かによって判定してもよい。
【0064】
なお、ばらつきの大きさは、2枚以上の細胞シートCSが積層されている領域の面積(以降、積層面積と記す。)により評価されてもよい。ただし、積層面積は積層を繰り返すことで増加し、自動作製処理中に減少することがない。このため、自動作製処理の期間中に一定の閾値で運用すると、特に自動作製処理の後半において配置のばらつきを正しく評価することが難しくなる。このため、積層面積でばらつきを評価する場合には、例えば、積層回数(繰り返し回数)毎に、ステップS55で使用する許容範囲を示す閾値を設定してもよい。また、積層回数毎に、積層面積と見做す基準の厚さを設定してもよい。
【0065】
ばらつきが算出されると、第2判定部51は、ばらつきが大きいか否かを判定し(ステップS55)、ばらつきが大きいと判定した場合には、制御装置30aは、積層支援処理を中止することで、積層を中止する。なお、ばらつきが許容できる範囲を超えて大きいか否かは、例えば、図14に示すように、積層率や積層面積を予め設定されている閾値と比較することで判定すればよい。
【0066】
ばらつきが大きくないと判定した場合、判定部33がステップS53で算出した厚さ分布を用いて判定処理を行う(ステップS56)。そして、判定処理によって積層位置が決定されると、出力部37が積層位置の情報を積層装置10へ出力し(ステップS57)、制御装置30aは、図13に示す積層支援処理を終了する。
【0067】
本実施形態に係る制御装置30aによっても、制御装置30と同様に、積層化細胞シートの作製効率を改善することができる。また、制御装置30aでは、細胞シートCSの利用効率の悪い自動作製処理が制限なく行われる防止することができる。従って、制御装置30aによれば、積層化細胞シートLCSの作製効率に加えて細胞シートCSの利用効率を改善することができる。
【0068】
[第4の実施形態]
図15は、本実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。図16は、積層中止を提案する画面の一例を示した図である。以下、図15及び図16を参照しながら、本実施形態について説明する。
【0069】
本実施形態に係るシステムは、例えば、積層装置10のマニピュレーター13が手動で動作するなど、細胞シートCSの積層作業が手動で行われる点が、第3の実施形態に係るシステムと異なっている。また、システムに含まれる制御装置は、積層位置を含む合成画像を表示装置40へ出力する点と、積層を中止すべきと判断した場合、ユーザに積層中止を提案する点が、制御装置30aとは異なっている。なお、本実施形態は、積層装置10を使用せずに、ユーザがピンセットなどの器具を用いて細胞シートCSを積層する場合にも適用可能である。即ち、本実施形態に係るシステムでは、積層装置10が省略されてもよい。
【0070】
図15に示す積層支援処理が開始されると、制御装置は、まず、作製する積層化細胞シートLCSについて目標を設定する(ステップS61)。さらに、取得部31が計測装置20から受信した画像を取得し(ステップS62)、厚さ分布算出部32が取得した画像に基づいて画像に写っている積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出し(ステップS63)、第2判定部51が細胞シートCSの配置のばらつきを算出し(ステップS64)、ばらつきが大きいか否かを判定する(ステップS65)。なお、ステップS61からステップS65の処理は、図13のステップS51からステップS55の処理と同様である。
【0071】
ばらつきが大きいと判定した場合には、制御装置は、積層中止を提案する(ステップS66)。ここでは、表示装置40は、例えば、図16に示すように、制御装置からの出力に基づいて積層中止を提案する画面を表示して、ユーザに積層を中止するか否かについて選択させてもよい(ステップS67)。ユーザが提案を承諾して中止を選択した場合、制御装置は、積層支援処理を中止する。
【0072】
ステップS67でユーザが中止を選択しない場合、又は、ステップS65で制御装置がばらつきが大きくないと判定した場合、判定部33がステップS63で算出した厚さ分布を用いて判定処理を行う(ステップS68)。そして、判定処理によって積層位置が決定されると、出力部37が積層位置を含む合成画像を出力して(ステップS69)、制御装置は、図15に示す積層支援処理を終了する。
【0073】
制御装置が合成画像を出力することで、積層位置を含む合成画像が表示装置40に表示される。このため、制御装置は、ユーザがマニピュレーター13やピンセットなどの器具を用いて手動で行う細胞シートCSの積層作業を支援することができる。さらに、制御装置は、細胞シートCSの利用効率の悪い場合に、ユーザに作製中止を促すことができる。従って、本実施形態に係る制御装置によれば、積層化細胞シートLCSの作製効率に加えて、細胞シートCSの利用効率を改善することができる。
【0074】
[第5の実施形態]
図17は、本実施形態に係る制御装置30bの機能的構成を例示した図である。以下、図17を参照しながら、本実施形態に係る制御装置30bが有する作製支援機能に関連する構成について説明する。なお、本実施形態に係るシステムは、制御装置30の代わりに制御装置30bを含む点を除き、システム1と同様である。
【0075】
制御装置30bは、図17に示すように、検出部52と第3判定部53を含む点が、制御装置30とは異なっている。その他の構成は、制御装置30は同様である。
【0076】
検出部52は、厚さ分布算出部32で算出した厚さ分布に基づいて、積層化細胞シートLCS中の損傷部分を検出する。損傷部分では、少なくとも細胞シートCS1枚分の厚さだけ周囲と厚さが異なる。また、損傷部分は、通常、局所的なものである。このため、単に積層数の違いによって生じた周囲とは厚さの異なる領域とは区別可能であり、厚さ分布に基づいて検出可能である。検出部52は、このような特徴を利用して損傷部分を検出する。
【0077】
なお、損傷部分とは、例えば、マニピュレーター13での搬送時に細胞シートCSが破れたことにより穴が生じた部分のことである。また、穴に限らず細胞シートCSに生じた裂け目などであってもよい。このような損傷部分を含む積層化細胞シートLCSは、例えば、搬送時になどに生じる外力によって損傷部分がさらに大きく広がる可能性がある。このため、損傷部分を含まない積層化細胞シートLCSを作製することが望ましい。
【0078】
検出部52が損傷部分を検出すると、検出結果は、決定部36と第3判定部53に出力される。決定部36は、検出部52で検出した損傷部分と新たに積層する細胞シートCSとが重ならないように、積層位置を決定する。
【0079】
第3判定部53は、検出部52で検出した損傷部分の位置に応じて、積層化細胞シートLCS上への新たな細胞シートCSの積層中止を判定する。例えば、損傷部分が積層化細胞シートLCSの中心付近があると、その損傷部分を避けて目標の大きさの積層化細胞シートLCSを作製することが困難になる。このため、第3判定部53は、例えば、損傷部分の位置が積層化細胞シートLCSの中心付近か否かに基づいて積層中止を判断してもよい。第3判定部53が積層中止を判定すると、判定結果は、例えば、判定部33へ出力され、積層位置の判定処理が中止される。
【0080】
以上の様に構成された制御装置30bでは、積層化細胞シートLCS中の損傷部分の有無と位置に基づいて積層が中止されるため、質の低い積層化細胞シートLCSが作製されることを回避することができる。また、積層を中止しない場合であっても、損傷部分を避けて細胞シートCSの積層が継続されるため、最終成果物である積層化細胞シートLCSの目標サイズの領域に損傷部分が含まれることを回避することができる。従って、制御装置30bによれば、質の高い積層化細胞シートLCSを作製することができる。
【0081】
図18は、本実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。図19は、本実施形態に係る判定処理で決定した積層位置の一例を示す図である。以下、図18及び図19を参照しながら、本実施形態に係る制御装置30bが行う積層支援処理について具体的に説明する。
【0082】
図18に示す積層支援処理が開始されると、制御装置30bは、まず、作製する積層化細胞シートLCSについて目標を設定する(ステップS71)。さらに、取得部31が計測装置20から画像を取得し(ステップS72)、厚さ分布算出部32が取得した画像に基づいて画像に写っている積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する(ステップS73)。なお、ステップS71からステップS73の処理は、図4のステップS11からステップS13の処理と同様である。
【0083】
その後、検出部52が、ステップS73で検出した厚さ分布に基づいて積層化細胞シートLCSから損傷部分を検出する(ステップS74)。そして、損傷部分が見つかると(ステップS75)と、第3判定部53が、損傷部分の位置が積層化細胞シートLCSの中心付近か否かを判定し(ステップS76)、中心付近であると判定した場合には、制御装置30bは、積層支援処理を中止する。なお、損傷部分の位置が中心付近か否かの判断基準は、例えば、目標サイズに応じて変更してもよい。例えば、目標サイズが小さい場合であれば、損傷部分が比較的中心付近に近い場合であっても損傷部分を避けて目標サイズの積層化細胞シートLCSを作製することが可能である。このため、目標サイズが大きいほど中心付近に該当する領域を広く設定してもよい。
【0084】
中心付近でないと判定した場合、判定部33がステップS73で算出した厚さ分布とステップS74で検出した損傷部分の位置を用いて判定処理を行う(ステップS77)。これにより、例えば、図19に示すように、損傷部分Dが存在する場合であっても損傷部分Dを避けながら積層位置Pを決定することができる。そして、判定処理によって積層位置が決定されると、出力部37が積層位置の情報を積層装置10へ出力し(ステップS78)、制御装置30bは、図18に示す積層支援処理を終了する。
【0085】
本実施形態に係る制御装置30bによっても、積層化細胞シートの作製効率を改善することができる。また、制御装置30bでは、積層化細胞シートLCSの作製に用いられた細胞シートCS中に損傷部分が含まれている場合であっても、積層化細胞シートLCSの目標サイズの領域(つまり、最終成果物)に損傷部分が含まれることを回避することができる。従って、制御装置30bによれば、質の高い積層化細胞シートLCSの作製を支援することができる。また、損傷位置に基づいて積層継続の適否を判断することで積層処理を一からやり直す事態を極力回避することができる。従って、細胞シートに損傷が生じている場合でも、細胞シートを有効利用して積層に用いることができる。
【0086】
[第6の実施形態]
図20は、本実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。図21は、積層中止を提案する画面の別の例を示した図である。以下、図20及び図21を参照しながら、本実施形態について説明する。
【0087】
本実施形態に係るシステムは、例えば、積層装置10のマニピュレーター13が手動で動作するなど、細胞シートCSの積層作業が手動で行われる点が、第5の実施形態に係るシステムと異なっている。また、システムに含まれる制御装置は、積層位置を含む合成画像を表示装置40へ出力する点と、積層を中止すべきと判断した場合、ユーザに積層中止を提案する点が、制御装置30bとは異なっている。
【0088】
図20に示す積層支援処理が開始されると、制御装置は、まず、作製する積層化細胞シートLCSについて目標を設定する(ステップS81)。さらに、取得部31が計測装置20から受信した画像を取得し(ステップS82)、厚さ分布算出部32が取得した画像に基づいて画像に写っている積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する(ステップS83)。さらに、検出部52が、ステップS83で検出した厚さ分布に基づいて積層化細胞シートLCSから損傷部分を検出し(ステップS84)、損傷部分の有無を判定する(ステップS85)。損傷部分が見つかるとと、第3判定部53が、損傷部分の位置が積層化細胞シートLCSの中心付近か否かを判定する(ステップS86)。なお、ステップS81からステップS86の処理は、図18のステップS71からステップS76の処理と同様である。
【0089】
損傷部分が中心付近であると判定すると、制御装置は、積層中止を提案する(ステップS87)。ここでは、表示装置40は、例えば、図21に示すように、制御装置からの出力に基づいて積層中止を提案する画面を表示して、ユーザに積層を中止するか否かについて選択させてもよい(ステップS88)。なお、この際、損傷部分を注目領域として指し示すマークROIを表示することで、ユーザに損傷部分の位置を把握させることが望ましい。ユーザが提案を承諾して中止を選択した場合、制御装置は、積層支援処理を中止する。
【0090】
ステップS87でユーザが中止を選択しない場合、ステップS86で第3判定部53が損傷部分が中心付近にないと判定した場合、判定部33がステップS83で算出した厚さ分布とステップS84で検出した損傷部分の位置を用いて判定処理を行う(ステップS89)。また、ステップS85で検出部52が損傷部分がないと判定した場合には、判定部33がステップS83で算出した厚さ分布を用いて判定処理を行う(ステップS89)。そして、判定処理によって積層位置が決定されると、出力部37が積層位置を含む合成画像を出力して(ステップS90)、制御装置は、図20に示す積層支援処理を終了する。
【0091】
制御装置が合成画像を出力することで、積層位置を含む合成画像が表示装置40に表示される。このため、制御装置は、ユーザが手動で行う細胞シートCSの積層作業を支援することができる。さらに、制御装置は、損傷部分を避けて目標サイズの積層化細胞シートLCSを作成することが困難な場合に、ユーザに作製中止を促すことができる。従って、本実施形態に係る制御装置によれば、質の高い積層化細胞シートLCSを高い作製効率で作製することができる。また、損傷位置に基づいて積層継続の適否を判断することで積層処理を一からやり直す事態を極力回避することができる。従って、細胞シートに損傷が生じている場合でも、細胞シートを有効利用して積層に用いることができる。
【0092】
[第7の実施形態]
図22は、本実施形態に係る制御装置30cの機能的構成を例示した図である。以下、図22を参照しながら、本実施形態に係る制御装置30cが有する作製支援機能に関連する構成について説明する。なお、本実施形態に係るシステムは、制御装置30の代わりに制御装置30cを含む点を除き、システム1と同様である。
【0093】
制御装置30cは、図22に示すように、モデル化部54を含む点が、制御装置30とは異なっている。その他の構成は、制御装置30は同様である。
【0094】
モデル化部54は、厚さ分布算出部32で算出した厚さ分布を可視化したモデル画像を生成する。モデル画像は、積層化細胞シートLCSの厚さ分布を色で表したヒートマップ画像であってもよく、また、積層化細胞シートLCSの厚さの変化を等高線の間隔で表した等高線画像であってもよい。モデル化部54で生成されるモデル画像は、表示装置40へ出力される。
【0095】
以上の様に構成された制御装置30cでは、積層位置の情報に代えてモデル画像が表示装置40へ出力されるため、ユーザは、表示装置40に表示される情報を確認することで、積層位置に加えて厚さ分布を把握することができる。ユーザは、積層位置と厚さ分布に基づいて、実際に細胞シートCSを積層する位置を決定してもよい。
【0096】
図23は、本実施形態に係る積層支援処理のフローチャートの一例である。図24は、モデル画像の一例を示した図である。以下、図23及び図24を参照しながら、本実施形態に係る制御装置30cが行う積層支援処理について具体的に説明する。
【0097】
図23に示す積層支援処理が開始されると、制御装置30cは、まず、作製する積層化細胞シートLCSについて目標を設定する(ステップS91)。さらに、取得部31が計測装置20から画像を取得し(ステップS92)、厚さ分布算出部32が取得した画像に基づいて画像に写っている積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する(ステップS93)。なお、ステップS91からステップS93の処理は、図4のステップS11からステップS13の処理と同様である。
【0098】
その後、モデル化部54が、ステップS93で検出した厚さ分布に基づいて厚さ分布を可視化したモデル画像を生成し(ステップS94)、モデル画像を表示装置40へ出力する。ここでは、例えば、図24に示すようなヒートマップ画像をモデル画像Mとして生成してもよい。また、モデル画像Mとともに積層化細胞シートLCSの厚さとモデル画像Mの色の関係を示すカラーバーBを生成してもよい。
【0099】
さらに、判定部33がステップS93で算出した厚さ分布を用いて判定処理を行う(ステップS95)。判定処理によって積層位置が決定されると、出力部37が積層位置を含む合成画像を表示装置40へ出力して(ステップS96)、制御装置30cは、図20に示す積層支援処理を終了する。なお、表示装置40は、ステップS94で出力されたモデル画像とステップS96で出力された合成画像を対応付けて表示することが望ましく、これらを重ねて表示してもよい。
【0100】
本実施形態に係る制御装置30cによっても、表示装置40に表示される画像により、ユーザが手動で行う細胞シートCSの積層作業を支援することができる。さらに、積層位置に加えて厚さ分布が可視化されることで、制御装置cが推奨する積層位置の妥当性を判断するための判断材料をユーザに提供することができる。
【0101】
[第8の実施形態]
図25は、本実施形態に係るシステム2の構成を例示した図である。図26は、本実施形態に係る制御装置30dの機能的構成を例示した図である。システム2は、積層装置と、計測装置と、制御装置を備える点は、システム1と同様である。ただし、システム2は、積層装置10の代わりに積層装置10aを、計測装置20に加えて計測装置60を、制御装置30の代わりに制御装置30dを備える点が、システム1と異なっている。
【0102】
計測装置60は、積層化細胞シートLCSに新たに積層する細胞シートCSの光学的特性を計測する。計測装置20に加えて計測装置60を備えることで、システム1では、積層に使用する細胞シートCSを事前に検査することができる。
【0103】
積層装置10aは、計測装置20と計測装置60の両方に対応する点が、積層装置10とは異なるが、その他の点は積層装置10と同様である。
【0104】
制御装置30dは、図26に示すように、基準作成部55と、腫瘍検出部56を含む点が、制御装置30とは異なっている。その他の構成は、制御装置30は同様である。
【0105】
基準作成部55は、光学的情報を厚さ分布に変換する変換基準を作成する。計測装置60で既知の厚さ分布を有する細胞シートCSの光学特性を計測し、計測装置60で取得した光学特性に関する情報(例えば、画像)に基づいて、積層化細胞シートLCSの光学的情報を厚さ分布に変換する変換基準を作成する。厚さ分布算出部32は、基準作成部55で作成した変換基準を用いて、積層化細胞シートLCSの厚さ分布を算出する。
【0106】
腫瘍検出部56は、細胞シートCS中の腫瘍の有無を判定する。腫瘍検出部56は、画像に基づいて細胞シートCSに腫瘍がないか否かを判定してもよく、算出された細胞シートCSの厚さ分布に基づいて、細胞シートCSに腫瘍がないか否かを判定してもよい。腫瘍検出部56が腫瘍を発見した場合には、制御装置30dは、腫瘍が発見された細胞シートCSの使用を中止してもよい。なお、腫瘍は、例えば、厚さ分布から特定される凹凸に基づいて検出されるが、学習済みモデルを用いた細胞シートCSの画像に対する物体検出などで検出されてもよい。
【0107】
制御装置30cでは、積層開始前に、細胞シートCSの画像を取得することで画像から厚さ分布を算出するための変換基準が作製される。このため、透過率が不明な細胞シートが用いられる場合であって画像から作成した変換基準を用いて厚さ分布を算出することができる。従って、任意の種類の細胞シートを用いて積層化細胞シートLCSを作製することができる。
【0108】
さらに、制御装置30cでは、積層開始前に、細胞シートCSの画像を取得することで、積層化細胞シートLCSの作製に用いられる細胞シートCSを事前に検査することができる。このため、腫瘍がない細胞シートCSを用いて積層化細胞シートLCSを作成することが可能であり、質の高い積層化細胞シートLCSを作製することができる。
【0109】
図27は、細胞シートの種類と検出される光量の関係について示した図である。図28は、異なる種類の細胞シートの積層状態を判定する方法を説明するための図である。以上では、単位厚さ当たりの透過率が一定の同種の細胞シートを扱う場合を例に説明したが、複数種類の細胞シートを用いて積層化細胞シートLCSを作製してもよい。以下、図27及び図28を参照しながら、複数種類の細胞シートを用いて積層化細胞シートLCSの作製を支援する方法について説明する。
【0110】
種類の異なる細胞シートでは、単位厚さ当たりの透過率が異なることがあり、光量から厚さを特定することが難しい。このような場合には、複数の波長の光を用いて厚さを特定すればよい。図27に示すように、予め、積層化細胞シートLCSの作製に使用される複数種類の細胞シート(細胞シートCS1、細胞シートCS2、細胞シートCS3)のそれぞれについて複数の波長で透過率を測定してそのバランスを把握しておくことで、積層化に複数種類の細胞シートが使用される場合であっても、図28に示すように、細胞シートの種類や組み合わせを特定することが可能であり、厚さ分布を正しく算出することができる。
【0111】
複数の細胞シートの組み合わせを特定することで、複数種類の細胞シートを積層してより複雑な積層化細胞シートを作製することができる。また、正しい組み合わせで積層化細胞シートが作製されているかについても検査することができるため、制御装置を、積層化細胞シートの作製を支援する作製支援装置としてだけではなく、積層化細胞シートの検査装置としても利用することができる。
【0112】
図29は、上述した実施形態に係る、制御装置を実現するためのコンピュータ100のハードウェア構成を例示した図である。図29に示すように、コンピュータ100は、ハードウェア構成として、プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103、読取装置104、通信インタフェース106、及び入出力インタフェース107を備えている。なお、プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103、読取装置104、通信インタフェース106、及び入出力インタフェース107は、例えば、バス108を介して互いに接続されている。
【0113】
プロセッサ101は、例えば、シングルプロセッサであっても、マルチプロセッサやマルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサ101は、記憶装置103に格納されているプログラムを読み出して実行することで、上述した制御装置に含まれる各種の機能部(取得部31、厚さ分布算出部32、判定部33、出力部37、第2判定部51、検出部52、第3判定部53、モデル化部54、基準作成部55、腫瘍検出部56)として動作する。
【0114】
メモリ102は、例えば、半導体メモリであり、RAM領域およびROM領域を含んでいてよい。記憶装置103は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、または外部記憶装置である。
【0115】
読取装置104は、例えば、プロセッサ101の指示に従って着脱可能記憶媒体105にアクセスする。着脱可能記憶媒体105は、例えば、半導体デバイス、磁気的作用により情報が入出力される媒体、光学的作用により情報が入出力される媒体などにより実現される。なお、半導体デバイスは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリである。また、磁気的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、磁気ディスクである。光学的作用により情報が入出力される媒体は、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、Blu-ray Disc等(Blu-rayは登録商標)である。
【0116】
通信インタフェース106は、例えば、プロセッサ101の指示に従って、積層装置10、計測装置20などの他の装置と通信する。入出力インタフェース107は、入力装置および出力装置との間のインタフェースである。入力装置は、例えば、入力装置41であり、ユーザからの指示を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネルなどのデバイスである。出力装置は、例えば、表示装置40、およびスピーカなどの音声装置である。
【0117】
上述した取得部31及び出力部37は、入出力インタフェース107と通信インタフェース106の少なくとも一方を含んでもよい。
【0118】
プロセッサ101が実行するプログラムは、例えば、下記の形態でコンピュータ100に提供される。
(1)記憶装置103に予めインストールされている。
(2)着脱可能記憶媒体105により提供される。
(3)プログラムサーバなどのサーバから提供される。
【0119】
なお、図29を参照して述べた制御装置を実現するためのコンピュータ100のハードウェア構成は例示であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述の構成の一部が、削除されてもよく、また、新たな構成が追加されてもよい。また、別の実施形態では、例えば、上述の機能部の一部または全部の機能がFPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、およびPLD(Programmable Logic Device)などによるハードウェアとして実装されてもよい。即ち、制御装置に含まれる任意の電気回路が上述した作成支援処理を行ってもよい。
【0120】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上述の実施形態を変形した変形形態および上述した実施形態に代替する代替形態が包含され得る。つまり、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形することが可能である。また、1つ以上の実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、新たな実施形態を実施することができる。また、各実施形態に示される構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよく、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加してもよい。さらに、各実施形態に示す処理手順は、矛盾しない限り順序を入れ替えて行われてもよい。即ち、本発明の積層化細胞シートの作製支援装置、作製支援システム、作製支援方法、及び、プログラムは、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
1、2 システム
10、10a 積層装置
11 インキュベータ
12 培養容器
13 マニピュレーター
20、60 計測装置
21、61 光源
22、62 光学系
23、63 検出器
30、30a~30d 制御装置
31 取得部
32 厚さ分布算出部
33 判定部
34 区画部
35 選択部
36 決定部
37 出力部
40 表示装置
41 入力装置
51 第2判定部
52 検出部
53 第3判定部
54 モデル化部
55 基準作成部
56 腫瘍検出部
100 コンピュータ
101 プロセッサ
102 メモリ
103 記憶装置
104 読取装置
105 着脱可能記憶媒体
106 通信インタフェース
107 入出力インタフェース
108 バス
CS、CS1~CS3 細胞シート
LCS 積層細胞シート
P 積層位置
D 損傷部分
M モデル画像
図1
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