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特開2023-182745道案内システム及びそれに用いる携帯情報端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182745
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】道案内システム及びそれに用いる携帯情報端末
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20231219BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20231219BHJP
   G09B 21/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G08G1/005
G09B21/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174024
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2021524611の分割
【原出願日】2019-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鶴賀 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 保
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康宣
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 和彦
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単独の点字ブロックだけで視覚障害者の歩行方向を判断でき、安価な装置で道案内を実行できる道案内システム及びそれに用いる携帯情報端末を提供する。
【解決手段】上記課題を達成するために、携帯情報端末と点字ブロックからなる道案内システムであって、携帯情報端末は、撮影処理部と、QRコードを解析するQRコード解析処理部と、音声出力処理部と、制御部を有し、点字ブロックはQRコードが貼付されており、制御部は、撮影処理部で撮影した点字ブロックに貼付されているQRコードをQRコード解析処理部により解析してQRコード情報を得、QRコード情報から携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向に基づいて生成した道案内情報を生成し、音声出力処理部から道案内情報を音声出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯情報端末と点字ブロックからなる道案内システムであって、
前記携帯情報端末は、撮影処理部と、QRコードを解析するQRコード解析処理部と、音声出力処理部と、制御部を有し、
前記点字ブロックはQRコードが貼付されており、
前記制御部は、前記撮影処理部で撮影した前記点字ブロックに貼付されている前記QRコードを前記QRコード解析処理部により解析してQRコード情報を得、該QRコード情報から前記携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向に基づいて生成した道案内情報を生成し、前記音声出力処理部から前記道案内情報を音声出力することを特徴とする道案内システム。
【請求項2】
請求項1に記載の道案内システムであって、
前記制御部は、前記QRコードの基準方向と前記ユーザの歩行方向に基づいて前記道案内情報を生成することを特徴とする道案内システム。
【請求項3】
請求項1に記載の道案内システムであって、
前記点字ブロックは警告ブロックであることを特徴とする道案内システム。
【請求項4】
請求項1に記載の道案内システムであって、
前記点字ブロックは誘導ブロックであることを特徴とする道案内システム。
【請求項5】
請求項1に記載の道案内システムであって、
前記QRコードを貼付した点字ブロックを複数個配置したことを特徴とする道案内システム。
【請求項6】
請求項1に記載の道案内システムであって、
道案内に関する情報を格納したサーバを有し、
ネットワーク網を介して、前記サーバと前記携帯情報端末が接続されており、
前記制御部は、前記サーバから道案内に必要な情報を前記携帯情報端末にダウンロードし、該ダウンロードした道案内に必要な情報と前記生成した道案内情報とで道案内を行なうことを特徴とする道案内システム。
【請求項7】
携帯情報端末と点字ブロックからなる道案内システムに用いる携帯情報端末であって、
撮影処理部と、QRコードを解析するQRコード解析処理部と、音声出力処理部と、制御部を有し、
前記点字ブロックはQRコードが貼付されており、
前記制御部は、前記撮影処理部で撮影した前記点字ブロックに貼付されている前記QRコードを前記QRコード解析処理部により解析してQRコード情報を得、該QRコード情報から前記携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向に基づいて生成した道案内情報を生成し、前記音声出力処理部から前記道案内情報を音声出力することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、前記QRコードの基準方向と前記ユーザの歩行方向に基づいて前記道案内情報を生成することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項9】
請求項7に記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、サーバから道案内に必要な情報をダウンロードし、該ダウンロードした道案内に必要な情報と前記生成した道案内情報とで道案内を行なうことを特徴とする携帯情報端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点字ブロックを利用した道案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、視覚障害者に対する配慮が考慮されるようになってきて、白杖を用いた視覚障害者が、点字ブロックを頼りに移動する様子を目にする機会が多くなってきている。
【0003】
視覚障害者に対する移動の補助として、駅構内などの公共施設や、交差点の歩道等に、点字ブロックが設置されている。
【0004】
JIS T9251-2001の記載によれば、点字ブロックには、誘導ブロック(線状突起)と、警告ブロック(点状突起)との2種類がある。
【0005】
誘導ブロックでは、棒状の突起が所定間隔で4本以上配置され、歩行方向を案内する。棒状の突起の長手方向が、歩行方向を示している。
【0006】
警告ブロックでは、点状の突起が格子状に25個以上配置され、前方の危険の可能性や、歩行方向の変更の必要性を予告する。
【0007】
視覚障害者が、点字ブロックを頼って移動する際、点字ブロックにより、移動方向や、危険性や歩行方向変更の予告等を知ることができるが、その点字ブロックが、その目的とする内容である、どこに配置されておりどこに案内するためのものであるかを把握することはできなかった。
【0008】
本技術分野における背景技術として特許文献1がある。特許文献1には、点字ブロックにRFIDタグを貼り付け、そのRFIDに格納された情報を、視覚障害者の白杖に設置された受信装置で受信し、音声にて知らしめる手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2016-541065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、2個以上の点字ブロックを経由した時点で、その点字ブロックに対する視覚障害者の歩行方向が判明するが、単独の点字ブロックだけで視覚障害者の歩行方向を判断することはできなかった。また、白杖に、専用のRFID受信装置を必要とするなど、視覚障害者に経済的負担を強いるシステムであった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、単独の点字ブロックだけで視覚障害者の歩行方向を判断でき、安価な装置で道案内を実行できる道案内システム及びそれに用いる携帯情報端末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、その一例を挙げるならば、携帯情報端末と点字ブロックからなる道案内システムであって、携帯情報端末は、撮影処理部と、QRコード(登録商標)を解析するQRコード解析処理部と、音声出力処理部と、制御部を有し、点字ブロックはQRコードが貼付されており、制御部は、撮影処理部で撮影した点字ブロックに貼付されているQRコードをQRコード解析処理部により解析してQRコード情報を得、QRコード情報から携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向に基づいて生成した道案内情報を生成し、音声出力処理部から道案内情報を音声出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の技術を用いることにより、点字ブロックの前後左右の案内が直感的に理解しやすく、歩行方向に関する間違いを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における警告ブロックの模式図である。
図2】実施例1におけるスマートフォンの外観図である。
図3】実施例1におけるスマートフォンのハードウェア構成図である。
図4】実施例1におけるスマートフォンの機能ブロック構成図である。
図5】実施例1における道案内システムの処理手順を示すフローチャートである。
図6】実施例2における警告ブロックの配置図である。
図7】実施例3における警告ブロックの配置図である。
図8】実施例4における警告ブロックの配置図である。
図9】実施例5における警告ブロックの配置図である。
図10】実施例6における誘導ブロックの配置図である。
図11】実施例7におけるシステム構成図である。
図12】実施例7における道案内システムの処理手順を示すフローチャートである。
図13】実施例8におけるカメラ付きスマートウォッチの概略模式図である。
図14】実施例9におけるHMDの概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本実施例は、主に、視覚障害者を対象にした発明であるが、視覚障害者以外の歩行者にとっても有効である。
【実施例0016】
本実施例は、点字ブロックにQRコードを貼付し、そのQRコードに格納された情報を、視覚障害者の歩行方向と絡めて、言い換えれば、それらの情報を歩行方向に基づいて変換、生成して、視覚障害者に伝達する。また、スマートフォン等の既存の携帯情報端末を用いることにより、視覚障害者の経済的負担の増加を軽減する。
【0017】
ここで、2次元コードを用いたQRコードは、横方向の情報しか持たないバーコードに比べて縦横に情報を持たせることができるため、スマートフォンなどの普及に伴い、一般化されている。このQRコードには、3隅に四角い切り出しシンボル(位置検出パターン、ファインダパターンとも言う。)が存在し、QRコードの基準方向を検出することができる。また、視覚障害者にとって、スマートフォン(携帯情報端末)は、表示画面の内容を把握することは困難であるが、音声出力などのサポートにより、慣れにもよるが、スマートフォンの機能を使うことができることが、実証されている。
【0018】
図1は、本実施例における点字ブロックである警告ブロックの模式図である。図1において、30cm角の警告ブロック1には、点状突起2(高さ5mm、底円直径22mm)が、中心間隔60mmで格子状に25個配置している。
【0019】
また、警告ブロック1の中央には、10cm角のQRコード3が貼付されている。QRコード3の中央には点状突起2に掛からないように、直径22mmの円形切欠きが用意されており、QRコード貼付時のガイドにすることができる。
【0020】
また、QRコード3には、3隅に四角い切り出しシンボル(4、5、6)が配置されている。この3個の切り出しシンボル(4、5、6)の配置により、警告ブロック1に貼付されたQRコード3の基準方向が決定される。図1の警告ブロック1に貼付されたQRコードの基準方向は、切り出しシンボル5を左上とする方向である。すなわち、切り出しシンボル4から切り出しシンボル5の方向が前方向、切り出しシンボル5から切り出しシンボル4の方向が後ろ方向、切り出しシンボル5から切り出しシンボル6の方向が右方向、切り出しシンボル6から切り出しシンボル5の方向が左方向、であることを意味している。
【0021】
QRコード3には、QRコードの基準方向に対して、前後左右に関する道案内情報が含まれている。このQRコード3を、スマートフォン等の携帯情報端末で撮影することにより、QRコード3を解析し、QRコード3の道案内情報を取得することができる。
【0022】
取得したQRコード3の基準方向に関する道案内情報を、視覚障害者の歩行方向を基準とした前後左右の道案内情報に変換、生成し、スマートフォン等の携帯情報端末から音声出力することで、視覚障害者への道案内を実現することができる。
【0023】
本実施例では、携帯情報端末として、スマートフォンを適用した例を説明する。図2に、本実施例におけるスマートフォンの外観図を示す。
【0024】
図2において、スマートフォン10は、タッチパネルで構成された表示画面11および自分撮り用のフロントカメラ(インカメラとも言う)12を有するスマートフォン正面13と、リアカメラ(アウトカメラもしくは単にカメラとも言う)14を有するスマートフォン背面15、及びスマートフォン側面から構成されている。
【0025】
スマートフォン10の正面のフロントカメラ12のある方向の側面(図2では右側側面)には、図示せざるイヤフォンマイク端子、スマートフォン10の正面のフロントカメラ12と逆方向の側面(図2では左側側面)には、図示せざる外部接続端子、スマートフォン10の正面のフロントカメラ12がある方向に対する右側側面(図2では下側側面)には、図示せざる電源キーや音量キー、スマートフォン10の正面のフロントカメラ12がある方向に対する左側側面(図2では上側側面)には、図示せざるカードトレイ部、がそれぞれ設けられている。
【0026】
スマートフォン10を下に向けて、スマートフォン10のリアカメラ14で、警告ブロック1のQRコード3を撮影すると、図2に示したように、スマートフォン10の表示画面11には、警告ブロック1のQRコード3の画面が表示される。撮影したQRコード3は、スマートフォン10に標準的に内蔵されているQRコード読み取りアプリケーションにより解析される。
【0027】
本実施例は、QRコード読み取りアプリケーションと連動したQRコード道案内アプリケーション(以下、「道案内システム」と称する。)を実現する。
【0028】
図3は、本実施例におけるスマートフォンのハードウェア構成図である。図3において、スマートフォン10は、主制御装置21、システムバス22、記憶装置40、センサ装置50、通信処理装置60、映像処理装置70、音声処理装置80、操作入力装置90で構成される。
【0029】
主制御装置21は、アプリケーションなど所定の動作プログラムに従ってスマートフォン10全体を制御するマイクロプロセッサユニットである。
【0030】
システムバス22は、主制御装置21とスマートフォン10内の各構成ブロックとの間で各種コマンドやデータなどの送受信を行うためのデータ通信路である。
【0031】
記憶装置40は、スマートフォン10の動作を制御するためのプログラムなどを記憶するプログラム部41、動作設定値や後述するセンサ装置からの検出値やコンテンツを含むオブジェクトなどの各種データを記憶する各種データ部42、各種プログラム動作で使用するワークエリアなどの書き替え可能なプログラム機能部43から構成している。また、記憶装置40は、ネットワーク上からダウンロードした動作プログラムや前記動作プログラムで作成した各種データ等を記憶可能である。また、ネットワーク上からダウンロードした動画や静止画や音声等のコンテンツを記憶可能である。また、カメラ部を使用して撮影した動画や静止画等のデータを記憶可能である。また、記憶装置40は、スマートフォン10に外部から電源が供給されていない状態であっても記憶している情報を保持する必要がある。したがって、例えば、フラッシュROMやSSD(Solid State Drive)などの半導体素子メモリ、等のデバイスが用いられる。尚、記憶装置40に記憶された前記各動作プログラムは、ネットワーク上の各サーバ装置からのダウンロード処理により更新及び部拡張することが可能である。
【0032】
センサ装置50は、スマートフォン10の状態を検出するための各種センサのセンサ群である。センサ装置50は、GPS(Global Positioning System)受信部51、地磁気センサ装置52、距離センサ装置53、加速度センサ装置54、ジャイロセンサ装置55で構成される。これらのセンサ群により、スマートフォン10の位置、傾き、方角、動き、移動方向等を検出することが可能となる。また、スマートフォン10が、照度センサ、近接センサ等、他のセンサを更に備えていても良い。更に、手や腕に、それらのセンサと対をなす装置を装着すれば、手や腕の動きを検出することができる。これらのセンサ群を総合的に活用することにより、スマートフォン10を所持したユーザの歩行方向や、スマートフォン10の傾きや方向、などを検出することができる。
【0033】
通信処理装置60は、LAN(Local Area Network)通信部61、電話網通信部62、で構成される。
【0034】
LAN通信部61は、アクセスポイント等を介してインターネット等のネットワークと接続され、前記ネットワーク上の各サーバ装置とデータの送受信を行う。前記アクセスポイント等との接続はWi-Fi(登録商標)等の無線接続で行われて良い。
【0035】
電話網通信部62は、移動体電話通信網の基地局等との無線通信により、電話通信(通話)及びデータの送受信を行う。前記基地局等との通信はW-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)(登録商標)方式やGSM(Global System for Mobile communications)(登録商標)方式、LTE(Long Term Evolution)方式、或いはその他の通信方式によって行われて良い。LAN通信部61と電話網通信部62は、それぞれ符号化回路や復号回路やアンテナ等を備える。また、通信処理装置60が、BlueTooth(登録商標)通信部や赤外線通信部等、他の通信部を更に備えていても良い。
【0036】
映像処理装置70は、撮像部71、表示部72で構成される。撮像部71は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の電子デバイスを用いてレンズから入力した光を電気信号に変換することにより、周囲やQRコードなどの対象物の画像データを入力するカメラユニットである。表示部72は、例えば液晶パネル等の表示デバイスであり、画像データをスマートフォン10のユーザに提供する。表示部72は図示を省略したビデオRAMを備える。前記ビデオRAMに入力された画像データに基づいて表示画面上に表示される。撮像部71によりQRコードを撮影する。
【0037】
音声処理装置80は、音声入出力部81、音声認識部82、音声復号部83とで構成される。音声入出力部81の音声入力はマイクであり、ユーザの声などを音声データに変換して入力する。また、音声入出力部81の音声出力はスピーカもしくはイヤフォンであり、ユーザに必要な音声情報等を出力する。音声認識部82は、入力された音声情報を解析し、指示コマンド等を抽出する。音声復号部83は、必要に応じて、符号化音声信号の復号処理(音声合成処理)等を行う機能を有する。
【0038】
操作入力装置90は、スマートフォン10に対する操作指示の入力を行う指示入力部である。操作入力装置9は、表示画面上のタッチパネルや、ボタンスイッチ等を並べた操作キー、等で構成される。その他の操作デバイスを更に備えても良い。通信処理装置60を利用し、有線通信または無線通信により接続された別体の携帯端末機器を用いてスマートフォン10の操作を行っても良い。また、音声処理装置80の音声認識部82を利用して、操作指示の音声コマンドによりスマートフォン10の操作を行なっても良い。
【0039】
なお、図3に示したスマートフォン10の構成例は、本実施例に必須ではない構成も多数含んでいるが、これらが備えられていない構成であっても本実施例の効果を損なうことはない。また、デジタル放送受信部や電子マネー決済部等、図示していない構成が更に加えられていても良い。
【0040】
図4は、本実施例におけるスマートフォンの機能ブロック構成図である。図4において、制御部30は、主に、主制御装置21と、記憶装置40のプログラム部41及びプログラム機能部43で構成される。この制御部30により、本実施例の道案内システムのアプリケーションを実行する。
【0041】
各種センサ情報取得部31は、センサ装置50の各種センサからの情報を取得する機能を有し、スマートフォン10の傾きや歩行方向などを把握する。
【0042】
撮影処理部32は、映像処理装置70の撮像部71により、QRコードを撮影する機能を有する。撮影されたQRコードは、QRコード解析処理部33により解析し、QRコードに格納されている情報を抽出する。
【0043】
QRコード情報保存部34は、抽出されたQRコードの情報を、記憶装置40の各種データ部42に保存する機能を有する。
【0044】
音声出力処理部35は、撮影を補助する音声や、QRコードの情報をユーザの歩行方向に配慮した内容の音声を、音声入出力部81のスピーカもしくはイヤフォンで出力する機能を有する。
【0045】
通信処理部36は、主に、通信処理装置60のLAN通信部61で構成され、スマートフォン10の各種情報を、インターネット網を介して外部のネットワークサーバへアップロードしたり、インターネット網を介して外部のネットワークサーバからの各種情報をダウンロードしたりする機能を有する。
【0046】
本実施例における道案内システムは、QRコード解析処理部33で得られたQRコードの情報を、各種センサ情報取得部31で得られたスマートフォン所持者の歩行方向と絡めて出力すべき音声を決定し、音声出力処理部35によりスピーカもしくはイヤフォンで音声出力するシステムである。勿論、音声出力無しで、表示画面に文字情報などで表示することもできることは言うまでも無い。
【0047】
ここで、視覚障害者がスマートフォンで、QRコードを撮影し、QRコードの情報を取得し、音声案内を受ける手順を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0048】
視覚障害者は、踏みつけた足裏の感触や、白杖を用いて、点字ブロックの場所を探している。点字ブロックには、歩行方向を補助する誘導ブロックと、前方の危険の可能性や、歩行方向の変更の必要性を予告する警告ブロックとがある。
【0049】
視覚障害者は、点字ブロックが誘導ブロックであると判断した場合は、誘導ブロック上に存在する棒状の突起の長手方向に沿って歩行する。
【0050】
図5のフローチャートは、視覚障害者が、点字ブロックが警告ブロックである判断した時点から、QRコードの情報を取得し、音声による道案内に至るまでの手順を示すフローチャートである。
【0051】
図5において、QRコード処理手順が開始(S301)されると、視覚障害者は、先ず白杖の感触で、警告ブロックの位置を確認する(S302)。
【0052】
次に、視覚障害者は、スマートフォンの正面か背面かの識別を手の感触で確認し、スマートフォン背面のリアカメラを警告ブロックに向けて撮影処理部32を用いて撮影動作を開始する(S303)。勿論、アプリケーションによっては、スマートフォン正面のフロントカメラで撮影することもできることは言うまで無い。撮影開始の指示は、例えば「撮影」や「カメラ」などの音声コマンドにより行なう。このスマートフォンによる撮影状態は、正常に撮影が終了した時点、もしくは撮影停止が指示される時点まで継続する。
【0053】
次に、スマートフォンの傾きや、スマートフォンから警告ブロックのQRコードまでの距離等により、QRコードが正常に認識できるように、必要に応じてスマートフォンの傾きやQRコードまでの距離を変更する撮影補助音声を、音声出力処理部35により出力する(S304)。例えば、「もっとカメラを警告ブロックに近づけてください。」、「もう少し右に移動してください。」、「もう少し前に傾けてください。」などの撮影補助音声を出力する。視覚障害者は、その音声出力された撮影補助音声に基づき、スマートフォンの姿勢等を修正する。勿論、必要が無ければ撮影補助音声の音声出力はしない。
【0054】
次に撮影が成功したかどうかは、「撮影が成功しました。」もしくは「撮影ができませんでした。」等の音声出力により判断する(S305)。所定のタイムアウト時間内にQRコードの撮影が正常に行われなかった場合に、撮影が成功しなかったと判断している。「撮影が成功しました。」の音声出力は、シャッター音にて代用できるので、省略することもできる。
【0055】
S305の処理で、撮影が正常にできなかったとアプリケーションが判断した場合、処理手順を終了する(S308)。
【0056】
S305の処理で、撮影が成功したとアプリケーションが判断した場合、QRコード解析処理部33でQRコードの存在有無を判断する(S306)。QRコードが正常に認識できなかった場合は、QRコードが存在しなかったと判断する。
【0057】
なお、QRコードが存在しなかったと判断した場合は、QRコードの存在有無を音声出力する。例えば、「情報はありませんでした。」、「情報を取得しました。」などの音声出力をする。「情報を取得しました。」の音声出力は省略することもできる。
【0058】
S306で、QRコードが存在しないと判断された場合、道案内システムの処理手順を終了する(S308)。
【0059】
S306で、QRコードが存在すると判断した場合、スマートフォンのQRコード解析処理部33で、3個の切り出しシンボルの配置により、警告ブロック1の基準方向を決定した上、QRコードの内容を解析し、その情報をQRコード情報保存部34に保存した上、その情報を音声出力処理部35により音声出力する(S307)。
【0060】
誘導ブロックを経由する事無く、警告ブロックに達した場合は、QRコードの基準方向と歩行方向とが一致しない場合がある。QRコードの基準方向と歩行方向とが0度、右90度、右180度、左90度の場合は、前後左右の情報を読み替えることにより対応する。それ以外の角度の場合は、歩行方向を0度、右90度、右180度、左90度のいずれかの角度に変更するように音声指示を行なうか、歩行方向と警告ブロックの基準方向の角度を補正した音声で音声出力処理部35により音声出力する。その後、道案内システムの処理手順を終了する(S308)。
【0061】
次に、音声出力処理部35により音声出力するQRコードの情報について、図1の警告ブロックの例を用いて説明する。
【0062】
図1の警告ブロック1に貼付したQRコードの基準方向は、切り出しシンボル5を左上とする方向である。また、QRコード3には、QRコードの基準方向に対して、前後左右に関する情報が含まれている。例えば、前方5mに下り階段、後方20mに分岐、右方向10mにエレベータ、左方向15mに3番線ホーム、などの情報が含まれている。また、それぞれのQRコードには、その方向にある次のQRコードが存在する点字ブロック(以下QRコードが存在する点字ブロックを「QRコード点字ブロック」と称する。)までの距離情報が含まれている。
【0063】
スマートフォン10を所持した視覚障害者の歩行方向は、スマートフォン10の各種センサ情報取得部31により判断している。
【0064】
視覚障害者の歩行方向に基づいて、QRコードの情報が音声出力処理部35により音声出力される。例えば、視覚障害者の歩行方向が、QRコードの基準方向(図1では、下から上への方向を指す。)の場合、出力する視覚障害者の歩行方向に基づいた音声出力処理部35により音声出力は、「前方5mに下り階段があります。次のQRコード点字ブロックまで2mです。」、「後方20mに歩道の分岐があります。次のQRコード点字ブロックまで10mです。」、「右方向10mにエレベータがあります。次のQRコード点字ブロックまで5mです。」、「左方向15mに3番線ホームがあります。次のQRコード点字ブロックまで7mです。」となる。
【0065】
また、例えば、視覚障害者の歩行方向が、QRコードの基準方向に対して右から左の歩行方向の場合、出力する視覚障害者の歩行方向に基づいた音声出力は、「右方向5mに下り階段があります。次のQRコード点字ブロックまで3mです。」、「左方向20mに歩道の分岐があります。次のQRコード点字ブロックまで10mです。」、「後方10mにエレベータがあります。次のQRコード点字ブロックまで5mです。」、「前方15mに3番線ホームがあります。次のQRコード点字ブロックまで7mです。」となる。
【0066】
また、歩行方向に依存せず、スマートフォン10の特徴部分を、その方向に関連付けて音声案内することもできる。例えば、スマートフォン10の正面を上にし、長手方向であるフロントカメラ12の方向側を右方向とした場合、前後左右は、前方がカードトレイ部がある方向、右方向がイヤフォンマイク端子のある方向、後方が電源キーがある方向、左方向が外部接続端子がある方向、とそれぞれ置き換えることができる。
【0067】
このように、本実施例の道案内システムでは、視覚障害者は、自分の歩行方向に基づいた道案内が音声出力されるので、直感的で理解し易いという効果がある。また、警告ブロックが1個の場合でも道案内ができるという利点がある。
【0068】
また、本実施例の手法は、視覚障害者以外の健常者等にも適用することもできる。健常者や聴力障害者に適用する場合は、自分の歩行方向に基づいた道案内を、音声出力無しで、表示画面上に移動方向を示す矢印等の図形や、テキスト文章にて表示する。勿論、健常者の場合は、音声出力を併用できることは言うまでも無い。
【0069】
また、本実施例の道案内システムを利用するには、予めスマートフォンに、使用する利用者が、視覚障害者、聴覚障害者、健常者等の識別を指定し、スマートフォンのアプリケーションをそれぞれ利用者向けにチューニングしておくことが望ましい。
【0070】
このように、本実施例は、既存の点字ブロックにQRコードを貼付し、そのQRコードを、スマートフォン等の既存の携帯情報端末で撮影し、QRコードに格納された情報を、利用者の歩行方向と絡めて音声出力する。これにより、利用者は、前後左右の案内が直感的に理解しやすく、歩行方向に関する間違いを低減することができる。また、単独の点字ブロックだけで利用者の歩行方向を判断でき、汎用の携帯情報端末だけで実施できるので、安価な装置で道案内を実行できる道案内システムを提供できる。
【実施例0071】
実施例1では、警告ブロックが1個の場合を想定していたが、本実施例では、複数個の警告ブロックが存在した場合についての対応について説明する。
【0072】
図6は、本実施例における警告ブロックの配置図である。図6に示すように、警告ブロックを5個配置しており、各警告ブロックには、それぞれにQRコードを貼付している。図6では、QRコードの基準方向は、すべて同じ方向としている。
【0073】
警告ブロック400を中央に配置し、基準方向の上方向に警告ブロック401、基準方向の右方向に警告ブロック402、基準方向の下方向に警告ブロック403、基準方向の左方向に警告ブロック404を配置し、それぞれの警告ブロックには、それぞれQRコード(410、411、412、413、414)を貼付している。
【0074】
それぞれのQRコードには、5個の警告ブロックの配置に関する情報を格納している。すなわち、QRコード410には中央、QRコード411には上、QRコード412には右、QRコード413には下、QRコード414には左、に関する情報である。
【0075】
QRコード処理手順は、実施例1で示した図5のフローチャートと同じ手順であるが、検出した警告ブロックに応じて、出力される音声出力が異なるようにしている。
【0076】
視覚障害者は、誘導ブロックに沿って、歩行方向に存在する警告ブロックに到達する。
【0077】
歩行方向が、図6で下から上の方向の場合、最初に到達する警告ブロックは、中央の警告ブロック400の下方向に存在する警告ブロック403である。
【0078】
警告ブロック403に貼付しているQRコード413に格納されている情報から、手前の警告ブロックであるので、例えば、「手前の警告ブロックです。」、「前方5mに下り階段があります。」、「後方20mに歩道の分岐があります。」等の音声が音声出力される。
【0079】
歩行方向に沿って、次の警告ブロック400に到達すると、警告ブロック400に貼付しているQRコード410に格納されている情報から、中央の警告ブロックであるので、例えば、「中央の警告ブロックです。」、「前方5mに下り階段があります。」、「後方20mに歩道の分岐があります。」、「右方向10mにエレベータがあります。」、「左方向15mに3番線ホームがあります。」、等の音声が音声出力される。
【0080】
例えば、3番ホームに行きたい場合は、警告ブロック400の位置で、左に歩行方向を変え、中央の警告ブロック400の左方向に存在する次の警告ブロック404を検出する。歩行方向が、右から左方向となっているので、警告ブロック404に貼付しているQRコード414に格納されている情報から、視覚障害者にとって前方の警告ブロックであるので、「前方の警告ブロックです。」、「前方15mに3番線ホームがあります。」、「後方10mにエレベータがあります。」等の音声が音声出力される。歩行方向が確定しているので、「後方10mにエレベータがあります。」の音声出力は省略することもできる。
【0081】
このように、視覚障害者は、自分の歩行方向に基づいた道案内が、音声出力されるので、直感的で、理解し易いという効果がある。また、警告ブロックが複数個なので、歩行方向を確実に確認できるという利点がある。
【0082】
また、本実施例の手法は、視覚障害者以外にも適用することもできる。視覚障害者以外の聴力障碍者や健常者などに適用する場合は、自分の歩行方向に基づいた道案内を、音声出力無しで、表示画面上に文章にて表示することもできる。視覚障害者以外の聴力障碍者や健常者などの場合は、中央の警告ブロック400に貼付しているQRコード410に格納されている情報のみでも目的を達することができることは、言うまでも無い。
【実施例0083】
実施例2では、5個の警告ブロックに貼付しているQRコードの基準方向は、すべて同じ方向としていたが、本実施例では、QRコードの基準方向が異なる場合について説明する。
【0084】
図7は、本実施例における警告ブロックに貼付しているQRコードの基準方向が異なる警告ブロックの配置図である。図7においては、中央の警告ブロック400に対して、前後左右の警告ブロック401、402、403、404に貼付した、QRコード415、416、417、418の基準方向が、全て、中央の警告ブロック400の方向としている。
【0085】
このような場合でも、それぞれのQRコードには、5個の警告ブロックの配置に関する情報を格納しているので、QRコードの基準方向に依存せず、実施例2と同じ効果や利点を得ることができる。
【実施例0086】
実施例2、3では、歩行する通路の分岐が歩行方向を含めて、前後左右の4方向(それぞれの方向が90度ずつ異なる。)を想定していたが、本実施例では前後左右と異なる分岐についても適用できる点について説明する。
【0087】
図8は、本実施例における直進前方の直進方向に歩道が無く、左45度方向に歩道がある場合の警告ブロックの配置図である。図8に示すように、中央の警告ブロック400の前には警告ブロックが無く、中央の警告ブロック400の基準方向から前方左45度の方向に警告ブロック405を配置している。
【0088】
警告ブロック405のQRコード415には、中央の警告ブロック400の基準方向から前方左45度の方向に傾いていることを示す情報が格納されている。前述の実施例で「前方に」と表現する代わりに、本実施例では「左45度の方向に」と表現する。また、警告ブロック405の位置(QRコード415の位置)では、「左45度方向の警告ブロックです。」と表現する。また、警告ブロック405のQRコード415では、中央の警告ブロック400の基準方向に対して、右方向は右135度方向、左方向は左45度方向、後方は、左135度、と置き換えて表現する。
【0089】
本実施例によれば、視覚障害者は、左45度方向にある警告ブロックの存在を事前に認識することができるので、不明な分岐に対する不安状態を解消することができる。
【0090】
勿論、視覚障害者以外の聴覚障害者や健常者などにとっては、QRコードが貼付された誘導ブロックを見出すだけなので、比較的容易に、次の警告ブロックのQRコードの情報を取得することができることは言うまでも無い。
【実施例0091】
実施例1では、警告ブロックに貼付するQRコードの基準方向と東西南北の絶対方位との関係について言及していないが、本実施例では、警告ブロックに貼付するQRコードの基準方向と東西南北の絶対方位が一致している場合について説明する。
【0092】
図9は、本実施例における警告ブロック1に貼付するQRコード7の基準方向が、東西南北の絶対方位と一致させた例を示す模式図である。
【0093】
この場合のQRコード7には、警告ブロック1が東西南北の絶対方位からのずれ角度の情報が含まれている。図9は、図の上方が北方向であり、QRコード7の基準方向が北方向と一致している場合を示し、その結果、警告ブロック1が左に45度傾いている場合の例を示している。よって、図9の場合は、QRコード7には警告ブロック1が左に45度傾いていることを示す情報が格納されている。従って、誘導ブロックに沿って歩行してきた視覚障害者に対して、前後左右の情報に変換するには、QRコード7に格納されている情報を全て左に45度傾けた情報に変換する必要がある。すなわち、QRコード7の左45度の方向が前方、QRコード7の右45度の方向が右方向、QRコード7の右135度の方向が後方、QRコード7の左135度の方向が左方向となる。
【0094】
これにより、視覚障害者にとっては、前述の実施例1と同じ効果や利点を得ることができる。
【0095】
視覚障害者以外の聴力障碍者や健常者などにとっては、QRコードの絶対方位の情報を表示画面に表示することにより、地図とのイメージ一致が図られ、理解し易くなるという効果がある。
【実施例0096】
実施例1から5では、警告ブロックについて説明しているが、本実施例は、誘導ブロックを用いた例について説明する。
【0097】
図10は、本実施例における誘導ブロックの模式図である。図10において、30cm角の誘導ブロック101には、棒状の突起(高さ5mm、底面幅27mm、長手方向の長さ280mm)102が、中心間隔75mmで4本配置されている。
【0098】
QRコード103は、誘導ブロック101のほぼ中央に貼付し、そのサイズは、棒状突起120の間に収まる37.5mm角となっている。
【0099】
QRコード103には、3隅に四角い切り出しシンボル(104、105、106)が配置されている。この3個の切り出しシンボル(104、105、106)の配置により、誘導ブロック101の基準方向が決定される。すなわち切り出しシンボル104から切り出しシンボル105の方向(棒状突起の長手方向)が、誘導ブロックの誘導方向となっている。
【0100】
QRコード103には、QRコード基準方向に対して、前後に関する情報が含まれている。例えば、前方5mに下り階段、後方20mに分岐、などの情報が含まれている。
【0101】
全ての誘導ブロックにQRコードを貼付することが望ましいが、例えば、QRコードが貼付されていない誘導ブロックが4個継続(120cm)したら、次の誘導ブロックにはQRコードを貼付することで対応することもできる。すなわち150cm毎にQRコードの情報を取得することができる。視覚障害者は、誘導ブロックを最大5個なぞると、QRコードが貼付された誘導ブロックに到達する。その後4個の誘導ブロックを飛ばし、次の誘導ブロックで、QRコードの情報を取得することができる。
【0102】
視覚障害者以外の聴覚障害者や健常者などにとっては、QRコードが貼付された誘導ブロックを見出すだけなので、比較的容易にQRコードの情報を取得することができる。
【実施例0103】
実施例1では、スマートフォン単独で道案内システムを構築していたが、本実施例では、外部情報を用いて、より効果を高めた手法について説明する。
【0104】
図11は、本実施例における、スマートフォン10と、道案内の情報を管理する道案内サーバ502が、無線ルータ503、ネットワーク網504、無線ルータ505、を介して、接続されているシステム構成図である。
【0105】
スマートフォン10の所持者は、道案内サーバ502の情報を利用した道案内を受けることができる。
【0106】
道案内サーバ502には、地図情報、施設情報(トイレ・階段・エレベータなどの位置を示す情報を含む。)、点字ブロックの配置情報等が格納されている。有効な例として、例えば、駅構内の改札口や出口情報、ショッピングモールの店舗配置情報、などがある。
【0107】
視覚障害者は、予め、利用する場所の情報(駅名やショッピングモールなどの施設名など)が、道案内サーバ502に存在していることを確認し、必要な情報をダウンロードしておく必要がある。
【0108】
点字ブロックに貼付されているQRコードに、そのQRコードの絶対的位置情報(緯度、経度等)、その点字ブロックを個別に識別する固有の識別情報(番号)、道案内サーバ502のリンク情報、等を格納しておくことにより、道案内サーバ502の情報との整合性を高めることができる。また、ネットワーク網504を介して必要な情報を入手するための道案内サーバ502以外のリンク情報を格納することもできる。
【0109】
視覚障害者は、利用する場所に関する道案内サーバ502の情報を、予めスマートフォン10に、ダウンロードしておくことが望ましい。
【0110】
図12は、本実施例における、道案内サーバ502に格納されている道案内情報を用いて、視覚障害者が希望する目的地に到達するまでの手順を示すフローチャートである。
【0111】
図12において、道案内サーバ502に格納されている道案内情報を用いた道案内システムが開始(S601)されると、先ず視覚障害者は、自分の現在位置をスマートフォン10の各種センサ情報取得部31により、確認する(S602)。
【0112】
スマートフォン10の平面上の位置は、センサ装置50のGPS受信部51にて検出する。複数のGPS衛星からの電波を受信することにより、スマートフォン10の位置座標(緯度、経度)を検出することができる。GPS衛星からのGPS情報以外にも、Wi-Fi、Bluetooth、携帯基地局から発信される情報を使って位置情報を取得することもできるので、GPS情報が取得できない場合は、それらの情報によりスマートフォン10の位置情報を取得している。勿論、GPS情報を含めたそれらの情報を組み合わせることもできることは言うまでも無い。本実施例の道案内システムでは、GPS情報もしくは他の情報からの位置情報が取得できない場合は、センサ装置50の加速度センサ装置54やジャイロセンサ装置55などからの情報により、補完している。そして、歩行中のどこかのポイントで、GPS情報もしくは他の情報からの位置情報が取得できた場合に補正することにより対応している。
【0113】
次に、スマートフォン10に目的地を設定する(S603)。目的地の設定は、音声処理装置80の音声入出力部81のマイクから、目的地の音声を入力し、音声認識部82により、目的地を認識し、設定する。該当する目的地が道案内サーバ502に無かった場合は、「希望する目的地が見つかりません。他の目的地を設定してください。」との音声を音声出力処理部35により音声出力する。視覚障害者が良く利用する目的地を、予め道案内サーバ502に登録しておくことが望ましい。
【0114】
S603の処理でスマートフォン10に目的地が設定されたら、道案内サーバ502から目的地までの必要な経路情報を、スマートフォン10にダウンロードする。以後スマートフォン10に格納された道案内サーバ502の情報を用いる。
【0115】
勿論、利用する場所に関する道案内サーバ502の情報を、予めスマートフォン10に、ダウンロードしておけば、目的地までの必要な経路情報をスマートフォン10のアプリケーションにより、生成することができることは、言うまでも無い。
【0116】
次に、スマートフォン10の現在位置情報と、道案内サーバ502から通信処理部36にて入手した点字ブロックの配置情報から、スマートフォン10の現在位置から最も近い位置にある点字ブロックをアプリケーションにより特定し、スマートフォン10の現在位置からの距離と歩行方向を、音声出力処理部35により音声案内する(S604)。
【0117】
次に、スマートフォン10のアプリケーションにより指示された、スマートフォン10の現在位置からの距離と歩行方向、もしくはその近傍を、視覚障害者が白杖の感触により探索して、点字ブロックの存在を検出する(S605)。
【0118】
次に、S605の処理で検出した点字ブロックが、警告ブロックかどうかを、視覚障害者の白杖の感触により、判断する(S606)。
【0119】
S606の処理で、検出した点字ブロックが、警告ブロックでないと判断した場合、検出した点字ブロックが誘導ブロックであることを意味している。この誘導ブロックを検出時点で、音声もしくはボタン等で、スマートフォン10に誘導ブロックを検出したことを入力し、道案内サーバ502から入手した点字ブロックの配置情報から、スマートフォン10の歩行方向と、検出した誘導ブロックの誘導方向(長手方向)との角度により、進むべき歩行方向を指示する(S607)。その後、S605の点字ブロック検索処理に戻る。
【0120】
なお、誘導ブロックでは、棒状突起の長手方向が誘導ブロックの誘導方向となっているので、歩行方向が分かっており、警告ブロックが検出されるまで、QRコードのある点字ブロックを敢えて検索しなくても、実用上問題無いと考える。また、音声もしくはボタン等でスマートフォン10に誘導ブロックを検出したことを入力しなくてもよい。当然、その間、進むべき歩行方向の指示(S607の処理)は発生しない。
【0121】
S606の処理で、検出した点字ブロックが、警告ブロックであると判断した場合、確認のために、図5のフローチャートで説明した手順で、撮影処理部32でQRコードを撮影し、QRコードに格納された情報を、QRコード解析処理部33で解析し、QRコード情報を取得する(S608)。この場合、取得したQRコードの位置情報と、スマートフォンに格納されている点字ブロック配置情報との整合が図られ、スマートフォンの物理的位置情報を補正することができる。これは、全てのQRコード点字ブロックにおいて、個々のQRコードの位置情報により、スマートフォンの物理的位置情報を補正できることを意味している。なお、取得した情報はQRコード情報保存部34により保存する。
【0122】
次に、取得したQRコード情報から、どこの警告ブロックかを特定し、進行方向指示を得る(S609)。すなわち、スマートフォン10のアプリケーションが、音声出力処理部35により、進むべき歩行方向を音声指示する。
【0123】
ここで、検出した警告ブロックが歩行方向に対して前後左右もしくは中央の位置により、音声出力処理部35による道案内する音声の音声出力の内容が異なる。たとえば、目的地に至るための歩行進行歩行が、QRコードの基準方向の左側であり、警告ブロックに至る歩行方向がQRコードの基準方向と一致した場合を想定すると、音声出力処理部35による音声の音声出力は、以下のように音声出力される。
(1)検出した警告ブロックの位置が、中央の警告ブロックの手前である場合、「前にある次の警告ブロックを経由して左方向に進んでください。次のQRコード点字ブロックまで10mです。」。
(2)検出した警告ブロックの位置が、中央の警告ブロックである場合、「左にある次の警告ブロックの方向に進んでください。次のQRコード点字ブロックまで5mです。」。検出した警告ブロックの位置が、中央の警告ブロックの左側である場合、「左方向に進んでください。次のQRコード点字ブロックまで7mです。」。
(3)検出した警告ブロックの位置が、中央の警告ブロックの右側である場合、「左にある次の警告ブロックを経由してその方向に進んでください。次のQRコード点字ブロックまで15mです。」。
(4)検出した警告ブロックの位置が、中央の警告ブロックの前である場合、「後ろにある次の警告ブロックを経由して左方向に進んでください。」
次に、目的地に到達したかどうかを判断する(S610)。目的地に到達したかどうかの判断は、スマートフォン10のアプリケーションにより、行なう。すなわち、取得したQRコードの情報が、目的地のQRコード点字ブロックであるかどうかで判断する。
【0124】
S610の処理で、まだ目的地に到達していないと判断した場合は、音声出力処理部35により、次のQRコード点字ブロックまでの方向と距離を音声指示し、S605の点字ブロック検索処理に戻る。
【0125】
S610の処理で、目的地に到達したと判断した場合は、外部情報を用いた道案内システムを終了する(S611)。
【0126】
視覚障害者以外の聴覚障害者や健常者などの場合は、点字ブロックを検出する事無く、スマートフォン10の表示画面上に文字情報や、地図情報(歩行方向の矢印などの表示も有効である。)などにより、比較的容易に道案内が実現できる。
【0127】
本実施例の応用として、GPSの高い精度(cm程度)を取得する装置が、安価に提供されるようになった場合、スマートフォンにその装置が組み込まれ、個々の点字ブロックの位置が明確に判断できるようになる。その場合、スマートフォンに格納されている点字ブロックの配置情報から、QRコード点字ブロックの位置を特定し、QRコード点字ブロックの直上にスマートフォンを誘導できる。かつ、次のQRコード点字ブロックへの方向及び距離を指示できるようになる。従って、より利便性が向上する。
【実施例0128】
実施例1から7では、スマートフォンを所持して利用することを前提としていたが、本実施例では、スマートフォン以外の場合について説明する。
【0129】
スマートフォン以外の適用例として、従来の携帯電話機や、タブレット端末やノートPC等の情報端末が考えられるが、視覚障害者が白杖を保持していることを考慮すると、従来の携帯電話機や、タブレット端末を適用する方が望ましい。
【0130】
勿論、視覚障害者以外の聴力障碍者や健常者などでは、ノートPCで適用することができることは、言うまでも無い。
【0131】
図13は、本実施例における、スマートフォン以外のその他の適用例として、カメラ付きスマートウォッチを適用する場合のカメラ付きスマートウォッチの概略模式図である。図13に示すように、スマートウォッチ710は、そのベルト711に撮影部が内蔵されており、カメラレンズ712を用いて、撮影することができる。
【0132】
また、歩行方向に依存せず、スマートウォッチ710の特徴部分を、その方向に関連付けて音声案内することもできる。例えば、スマートウォッチ710のカメラレンズ側を上方向とした場合、前後左右は、カメラレンズ側の方向と絡めて置き換えることができる。
【0133】
また、時計の短針方向を利用して、前後左右を表現することもできる。例えば、前方は12時方向、右方向は3時方向、後方は6時方向、左方向は9時方向、とそれぞれ置き換えて表現する。
【0134】
以上のように、本実施例では、カメラ付きスマートウォッチでQRコードが貼付された点字ブロックにおいて、QRコードを撮影することにより、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【実施例0135】
本実施例は、スマートフォン以外のその他の適用例として、HMD(Head Mounted Display)を適用した場合について説明する。
【0136】
図14は、本実施例における、スマートフォン以外のその他の適用例として、HMDを適用する場合のHMDの概略模式図である。
【0137】
図14に示すように、HMD720は、非透過型HMDであって、撮影部が内蔵されており、撮影することができる。QRコードが貼付された点字ブロックにおいて、QRコードを撮影することにより、前述の実施例と同様の効果が得られる。
【0138】
非透過型HMD720を適用すると、非透過型HMD720を装着した顔の向いている方向が判別できるので、顔の向きに対する前後左右の方向で、歩行方向を指示することもできる。
【0139】
勿論、視覚障害者以外の聴力障碍者や健常者などの場合は、透過型HMDで適用できることは、言うまでも無い。視覚障害者以外の聴力障碍者や健常者などの場合、更に、透過型HMDの表示画面上に、実空間の映像と、コンピュータによる拡張現実(AR:Augmented Reality)の生成画像(アバター)とを重畳させて表示することができるので、アバターにより道案内をすることが可能になるという効果が付加される。
【0140】
尚、QRコードに格納する情報を増加させるには、QRコードの連結部や、長方形のiQRコード規格を用いること等により対応する。
【0141】
以上、本発明の実施例を説明したが、言うまでもなく、本発明の技術を実現する構成は前記実施例に限られるものではなく、様々な変形例が考えられる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成と置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。これらは全て本発明の範疇に属するものである。また、文中や図中に現れる数値やメッセージ等もあくまでも一例であり、異なるものを用いても本発明の効果を損なうことはない。
【0142】
また、以上の説明では、QRコードを用いる例について説明したが、QRコードの代わりにいわゆるマトリクス型2次元コードと呼ばれる2次元コードを用いても本発明の効果が得られることは言うまでもない。マトリクス型2次元コードは、2次元コードの位置検出を容易にするために、正方形の枠やL字のフレームで囲われていたり、ファインダパターン(切り出しシンボル)と呼ばれる特徴的なマークがシンボルのなかに配置されているので、これを検出することにより2次元コードの基準方向を把握することができる。
【0143】
また、前述した本実施例の機能等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、ハードウェアとソフトウェアを併用しても良い。前記ソフトウェアは、製品出荷の時点で、予めスマートフォンのプログラム部41等に格納された状態であっても良い。製品出荷後に、インターネット上の各種サーバ装置等から取得するものであっても良い。また、メモリカードや光ディスク等で提供されて取得するものであっても良い。
【符号の説明】
【0144】
1:警告ブロック、2:点状突起、3:QRコード、4~6:切り出しシンボル、10:スマートフォン、30:制御部、31:各種センサ情報取得部、32:撮影処理部、33:QRコード解析処理部、34:QRコード情報保存部、35:音声出力処理部、36:通信処理部、101:誘導ブロック、102:棒状突起、103:QRコード、104~106:切り出しシンボル、502:道案内サーバ、710:スマートウォッチ、720:HMD
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯情報端末と2次元コードと道案内サーバからなる道案内システムであって、
前記携帯情報端末は、前記道案内サーバとネットワークを介して接続されており、
前記道案内サーバは、前記2次元コードの配置情報を格納しており、
前記携帯情報端末は、該携帯情報端末の現在位置を取得し、
前記携帯情報端末は、前記現在位置と、前記道案内サーバから入手した前記2次元コードの配置情報から、前記現在位置から最も近い位置にある所定の2次元コードを特定し、前記現在位置からの距離と前記携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向を、音声出力し、
前記音声出力に基づき、前記携帯情報端末が前記所定の2次元コードの存在を検出したときは、前記携帯情報端末で撮影した前記所定の2次元コードを解析して2次元コード情報を取得し、2次元コード情報から前記携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向に基づいて生成した道案内情報を生成し、前記道案内情報を音声出力することを特徴とする道案内システム。
【請求項2】
請求項1に記載の道案内システムであって、
前記携帯情報端末は、前記2次元コードの基準方向と前記ユーザの歩行方向に基づいて前記道案内情報を生成することを特徴とする道案内システム。
【請求項3】
請求項1に記載の道案内システムであって、
道案内に関する情報を格納したサーバを有し、
ネットワーク網を介して、前記サーバと前記携帯情報端末が接続されており、
前記携帯情報端末は、前記サーバから道案内に必要な情報を前記携帯情報端末にダウンロードし、該ダウンロードした道案内に必要な情報と前記生成した道案内情報とで道案内を行なうことを特徴とする道案内システム。
【請求項4】
2次元コードと道案内サーバからなる道案内システムに用いる携帯情報端末であって、
撮影処理部と、
2次元コードを解析する2次元コード解析処理部と、
音声出力処理部と、
情報取得部と、
制御部と、
通信処理部と、を備え、
前記通信処理部は、前記2次元コードの配置情報を格納している前記道案内サーバとネットワークを介して接続し、
前記情報取得部は、前記携帯情報端末の現在位置を取得し、
前記制御部は、前記現在位置と、前記道案内サーバから入手した前記2次元コードの配置情報から、前記現在位置から最も近い位置にある所定の2次元コードを特定し、
前記音声出力処理部は、前記現在位置からの距離と前記携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向を、音声出力し、
前記2次元コード解析処理部は、前記音声出力に基づき、前記携帯情報端末が前記所定の2次元コードの存在を検出したときは、前記撮影処理部で撮影した前記所定の2次元コードを解析して2次元コード情報を取得し、2次元コード情報から前記携帯情報端末を保持したユーザの歩行方向に基づいて生成した道案内情報を生成し、
前記音声出力処理部は、前記道案内情報を音声出力する
ことを特徴とする携帯情報端末。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、前記2次元コードの基準方向と前記ユーザの歩行方向に基づいて前記道案内情報を生成することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項6】
請求項4に記載の携帯情報端末であって、
前記制御部は、サーバから道案内に必要な情報をダウンロードし、該ダウンロードした道案内に必要な情報と前記生成した道案内情報とで道案内を行なうことを特徴とする携帯情報端末。