(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182748
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】薬剤調合システムの入力装置のための空気力学的に流線形化されたエンクロージャ
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20231219BHJP
G01G 21/23 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61J3/00 310B
A61J3/00 310K
G01G21/23
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174578
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2022082983の分割
【原出願日】2015-09-08
(31)【優先権主張番号】62/047,325
(32)【優先日】2014-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/072,160
(32)【優先日】2014-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/072,054
(32)【優先日】2014-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/078,067
(32)【優先日】2014-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/077,968
(32)【優先日】2014-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ノーウィッキ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン サンドマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】精度及び安定性の要求を満たす蓋然性を高めるための空気力学的に流線形化されたエンクロージャを提供する。
【解決手段】医薬品を調合するシステムは、物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケールを備えるベースであって、ベースの一部分に結合された第1の端部、及びスケールのプラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アームと、第1の端部および第2の端部を備えるエンクロージャハウジングを含む。システムが流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にする湾曲した前面輪郭を有するエンクロージャハウジングと、エンクロージャハウジングに受け入れられ、スケールに動作可能に接続される画像キャプチャ装置と、エンクロージャハウジングに受け入れられ、スケールに動作可能に接続されるバーコードスキャナと、プリンタとを備える。画像キャプチャ装置の視野はプラテンの上に延びる。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品を調合するシステムであって、
物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケールを備えるベースであって、前記プラテンは1つまたは複数の凹溝を備えるベースと、
前記ベースの一部分に結合された第1の端部、及び前記スケールの前記プラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アームと、
第1のエンクロージャハウジング端部および第2のエンクロージャハウジング端部を備えるエンクロージャハウジングであって、前記第1のエンクロージャハウジング端部は、前記支持アームの前記第2の端部に取り付けられ、前記支持アームの前記第2の端部から延在し、前記エンクロージャハウジングは、前記システムが流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にする湾曲した前面輪郭を有するエンクロージャハウジングと、
前記エンクロージャハウジングに受け入れられ、前記スケールに動作可能に接続される画像キャプチャ装置と、
前記エンクロージャハウジングに受け入れられ、前記スケールに動作可能に接続されるバーコードスキャナと、
プリンタと
を備え、
前記第2のエンクロージャハウジング端部は、前記画像キャプチャ装置の視野が前記プラテンを含むように前記スケールの前記プラテンの上に延びることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記エンクロージャハウジングの前記第2のエンクロージャハウジング端部は、前記システムが前記流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にする湾曲した前記前面輪郭を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記支持アームは、前記画像キャプチャ装置の前記視野の中心は前記プラテンの中心と一致するように配置されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プリンタは、前記ベースと一体に成形されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記エンクロージャハウジングに受け入れられる赤外線カメラをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ベースに配置されるユーザインタフェースをさらに備え、前記ユーザインタフェースは、前記スケールに動作可能に接続されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記スケールは、+/- 0.05gの重量精度を得られるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記エンクロージャハウジングは、前記スケールが2秒を超えない安定化時間を得られるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記エンクロージャハウジングは、前記システムが層流フード内に配置されるとき、前記スケールに一貫した圧力が作用するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記エンクロージャハウジングは、前記システムが層流フード内に配置されるとき、抗力を最小にするように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2のエンクロージャハウジング端部は、前記第1のエンクロージャハウジング端部と前記第2のエンクロージャハウジング端部によって画定される軸に沿って凹状の部分を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
医薬品を調合するシステムであって、
物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケールを備えるベースであって、前記プラテンは1つまたは複数の凹溝を備えるベースと、
前記ベースの一部分に結合された第1の端部、及び前記スケールの前記プラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アームと、
第1のエンクロージャハウジング端部および第2のエンクロージャハウジング端部を備えるエンクロージャハウジングであって、前記第1のエンクロージャハウジング端部は、前記支持アームの前記第2の端部に取り付けられ、前記支持アームの前記第2の端部から延在し、前記第2のエンクロージャハウジング端部は、前記スケールの前記プラテンの上方に延在し、前記第1のエンクロージャハウジング端部と前記第2のエンクロージャハウジング端部によって画定される軸に沿って凹状の部分を備え、前記エンクロージャハウジングは、前記システムが流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にする湾曲した前面輪郭を有するエンクロージャハウジングと、
前記エンクロージャハウジングに受け入れられ、前記スケールに動作可能に接続される画像キャプチャ装置と、
前記エンクロージャハウジングに受け入れられる赤外線カメラと、
前記エンクロージャハウジングに受け入れられ、前記スケールに動作可能に接続されるバーコードスキャナと、
前記ベースと一体に成形されているプリンタと
を備え、
前記画像キャプチャ装置の視野が前記プラテンを含むことを特徴とするシステム。
【請求項13】
前記エンクロージャハウジングの前記第2のエンクロージャハウジング端部は、前記システムが前記流れフード内に配置されたとき、流れの乱れを最小にする湾曲した前記前面輪郭を有することを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記支持アームは、前記画像キャプチャ装置の前記視野の中心は前記プラテンの中心と一致するように配置されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記ベースに配置されるユーザインタフェースをさらに備え、前記ユーザインタフェースは、前記スケールに動作可能に接続されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記スケールは、+/- 0.05gの重量精度を得られるように構成されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記エンクロージャハウジングは、前記スケールが2秒を超えない安定化時間を得られるように構成されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記エンクロージャハウジングは、前記システムが層流フード内に配置されるとき、前記スケールに一貫した圧力が作用するように構成されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記エンクロージャハウジングは、前記システムが層流フード内に配置されるとき、抗力を最小にするように構成されることを特徴とする請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、「最小のユーザ入力を伴う自動化された視覚的ドキュメント機能」と題され、2014年9月8日に出願された米国仮出願第62 / 047,325号、「薬学的化合物を調合するためのシステムのための強化薬剤師レビューモジュール」と題され、2014年10月29日に出願された米国仮出願第62 / 072,160号、「薬剤調合システムの入力装置用の空気力学的に流線形化されたエンクロージャ」と題され、2014年10月29日に出願された米国仮特許出願第62 / 072,054号、「薬剤調合システムの入力装置用の空気力学的に流線形化されたエンクロージャ」と題され、2014年11月11日に出願された米国仮出願第62 / 078,067号、及び「医薬配合のための増強されたプラテン」と題され、2014年11月11日に出願された米国仮出願第62 / 077,968号、の優先権を主張し、そのそれぞれの開示全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、概して、薬剤調合システムの一部であるスキャナ及び/又はカメラのような、入力装置を収容するための空気力学的に流線形化されたエンクロージャに関する。流線形化されたエンクロージャは、流れフード内に配置され、スケールの近傍で上流側空気流に配置されてもよい。
【背景技術】
【0003】
無菌医薬品の調合は、典型的には、清浄なゾーンを作り出す空気流を提供する流れフード内で行われる。このような調合中に、カメラ、スキャナ、及び/又はスケールを使用して調合を記録することができる。これらの装置は、典型的には、流れフード内に配置され、スケールの近傍の上流側空気流に配置される。しかしながら、どのような物体でも、物体の下流の空気流に影響する空気流の乱れを生じさせる。この流れの乱れがスケールの上流付近に存在すると、例えば、スケールの秤量面の近くで一貫性のない圧力又は乱流状態が発生することになる。複数の形成パラメータ及び位置の関数である流れの乱れのレベル次第で、スケールがまったく安定しない結果になるかもしれない。安定化できないスケールは、滅菌複合薬物などの薬物を正確に調合するためには使用することができない。ある場合には、流れの乱れは、薬剤調合のためのシステムの許容限度を超える精度許容誤差をもたらすことに帰すかもしれない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、精度及び安定性の要求を満たす蓋然性を高めるため、システムのスケールの近傍でより小さい流れの乱れに帰するであろう、より小型で及び/又はより流線形の装置に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、医薬品を調合するためのシステムが提供される。このシステムは、物体をその上に配置するように構成されたプラテンを有するスケール、スケールの一部分に結合された第1の端部、及びスケールのプラテンの上方の位置にまで延びる第2の端部を備える支持アーム、及び支持アームの第2の端部から延在し、且つ少なくとも1つの入力装置を収容するように構成されたエンクロージャハウジングを備えている。エンクロージャハウジングは、システムが流れフード内に配置されているときに、流れの乱れを最小限に抑えるために湾曲した前面輪郭を有している。
【0006】
エンクロージャハウジングは、上部分及び下部分から形成されていてもよい。加えて、エンクロージャハウジングは、支持アームの第2の端部に結合された第1の端部と、スケールのプラテンの上方に延在する第2の端部とを備えていてもよい。エンクロージャハウジングの第2の端部の少なくとも一部分は、エンクロージャハウジングの第1の端部の少なくとも一部分の高さよりも高い高さを有していてもよい。
【0007】
少なくとも1つの入力装置は、画像キャプチャ装置、バーコードスキャナ、又はその両者を含んでいてもよい。もしも、画像キャプチャ装置及びバーコードスキャナの両者がエンクロージャハウジング内に設けられるなら、バーコードスキャナは、エンクロージャハウジング内の画像キャプチャ装置に対して、画像キャプチャ装置の視野に対して45°の角度などに角度付けられてもよい。
【0008】
本発明の別の態様によれば、医薬品を調合するためのシステムが提供される。システムは、プロセッサと医薬品を調合するためのインストラクションを操作者に提供するユーザインタフェースとを備えるコンピューティング装置、コンピューティング装置のプロセッサに動作可能に結合されたスケール、及び画像キャプチャ装置及びバーコードスキャナを備えるエンクロージャハウジングを備えている。エンクロージャハウジングは、支持アームによって支持され、且つスケールの一部分に結合されている。画像キャプチャ装置は、コンピューティング装置のプロセッサに動作可能に接続され、且つスケール上に配置された物体を捕捉するように配置された視野を有している。バーコードスキャナは、スケールからオフセットされたセンサを有している。
【0009】
バーコードスキャナは、エンクロージャハウジング内で画像キャプチャ装置に対して角度付けられてもよい。例えば、バーコードスキャナは、画像キャプチャ装置の視野に対して45°の角度で角度付けられてもよい。エンクロージャハウジングは、エンクロージャハウジングがスケールの上方に位置されるように、支持アームによって支持されていてもよい。エンクロージャハウジングは、流れフード内の流れの乱れを最小にするために湾曲した前面輪郭を有していてもよい。
【0010】
本発明のさらに別の態様によれば、医薬品を調合するためのシステムが提供される。このシステムは、操作者に医薬品を調合するためのインストラクションを提供するユーザインタフェースを備えるコンピューティング装置、及び流れフードであって、ユーザインタフェースに動作可能に接続されたスケール、及び医薬品の調合中にスケールの画像を捕捉するように配置されたカメラを備えるエンクロージャハウジングを、その内部に位置させている流れフードを備えている。
【0011】
エンクロージャハウジングは、スケールの上方に配置されていてもよい。エンクロージャハウジングは、バーコードスキャナをさらに備えてもよい。エンクロージャハウジングは、流れフード内の流れの乱れを最小にするために湾曲した前面輪郭を有してもよい。
【0012】
本発明のこれら及び他の特徴及び特性、並びに動作の方法及び構造の関連要素の機能並びに部品の組み合わせ及び製造の経済性は、添付の図面を参照して、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を考慮するとより明らかになるであろう。これらの図面の全ては、本明細書の一部を形成し、同様の参照符号は種々の図の対応する部分を示す。しかしながら、図面は、例示及び説明の目的のためのみのものであり、本発明の限界を定めるものとして意図されたものではないことは明白に理解されるべきである。明細書及び特許請求の範囲で使用されているように、「a」、「an」及び「the」の単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、医薬品を調合するための例示的な薬剤調合システムの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による、ユーザインタフェースを有する層流フードにおける
図1の薬剤調合システムの斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による、
図1の薬剤調合システムの一部分の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態によるスケールのプラテンの斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による、
図4のスケールのプラテンの上面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による、
図5の6-6線に沿って取った
図4のスケールのプラテンの溝の側断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態による、入力装置用の空気力学的に流線形のエンクロージャを有する流れフードシステムの斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、スケールを有し及びエンクロージャを有していない流れフード内の空気流分布の透視的視覚表示である。
【
図8B】
図8Bは、スケールを有し及びエンクロージャを有していない流れフード内の空気流分布の視覚表示側面図である。
【
図9A】
図9Aは、スケール及び大きく鈍いエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の透視的視覚表示である。
【
図9B】
図9Bは、スケール及び大きく鈍いエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の視覚表示側面図である。
【
図10A】
図10Aは、スケール及び中程度のサイズの鈍いエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の透視的視覚表示である。
【
図10B】
図10Bは、スケール及び中程度のサイズの鈍いエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の視覚表示側面図である。
【
図11A】
図11Aは、スケール及び中程度のサイズの流線形のエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の透視的視覚表示である。
【
図11B】
図11Bは、スケール及び中程度のサイズの流線形のエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の視覚表示側面図である。
【
図12A】
図12Aは、スケール及び小さなサイズの流線形のエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の透視的視覚表示である。
【
図12B】
図12Bは、スケール及び小さなサイズの流線形のエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の視覚表示側面図である。
【
図13A】
図13Aは、スケール及び小さなサイズで短縮された流線形のエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の透視的視覚表示である。
【
図13B】
図13Bは、スケール及び小さなサイズで短縮された流線形のエンクロージャを有する流れフード内の空気流分布の視覚表示側面図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態による、スケール及びハウジングエンクロージャの側面図である。
【
図15】
図15は、線15-15に沿って取った
図14のハウジングエンクロージャの断面図である。
【
図16】
図16は、線16-16に沿って取った
図14のハウジングエンクロージャの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明の目的のために、用語「上方」、「下方」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「横方向」、「長手方向」及びそれらの派生語は、図面に示されている向きのように、本発明に関連するものとする。しかしながら、本発明は、明示的に反対に指定されている場合を除いて、様々な代替変形を取り得ることが理解されるべきである。添付の図面に示され、以下の明細書に記載される特定の装置は、本発明の単なる例示的な実施形態であることも理解されるべきである。したがって、ここに開示された実施形態に関連する具体的な寸法及び他の物理的特性は、限定的であるとみなされるべきではない。
【0015】
本発明は、滅菌薬物配合システムのような薬剤調合システムの一部分であるスキャナ及び/又はカメラのような入力装置を収容する、空気力学的に流線形化されたエンクロージャに関する。これらの装置は、典型的には、流れフード内に配置され、スケールの近傍で上流側空気流に配置される。空気力学的に流線形化されたエンクロージャは、層流の空気流の中に装置を有することによって生じる、空気流の乱れを最小にするように設計されている。この構成は、装置がスケールの近傍の上流側に配置され、及び薬剤調合目的を検証するために許容可能な重量精度(すなわち、+/- 0.05g)及び安定化時間(すなわち、2秒を超えない)をさらに有することを可能にする。
【0016】
全ての物体は、物体の下流の空気流に影響を与える空気流の乱れを生成する。この流れの乱れがスケールの上流付近に存在すると、スケールの秤量面の近くで、一貫性のない圧力又は乱流状態が発生する蓋然性がある。複数の形成パラメータ及び位置の関数である流れ乱れのレベルに対応して、まったく安定しないスケール状態になる蓋然性がある。安定化できないスケールは、滅菌複合薬物などの薬物を正確に調合するためには使用することができない。ある場合には、流れの乱れは、薬剤調合のためのシステムの許容限度を超える精度許容誤差をもたらすことに帰すかもしれない。
【0017】
より小さい及び/又はより流線形化された装置は、より小さい流れの乱れをもたらし、したがって、精度及び安定性の要求を満たす蓋然性が高くなる。本発明の流線形化されたエンクロージャは、流れの崩壊及び抗力を最小にする形態を有し、薬剤調合目的のために必要とされる、安定した正確な重量測定値を可能にする。本発明の流線形化されたエンクロージャは、入力装置を、スケールに対して近傍の上流側空気流に配置しながら、要求される重量スケール精度及び安定性を可能にする。これらの物体(すなわち、スキャナ及び/又はカメラ)をスケール近傍に配置することは、通常、多くの理由から理想的な領域である。本発明の流線形化されたエンクロージャの第2の利点は、薬剤の滅菌調合のための清潔な作業環境を提供し維持することである。使用時には、流れフード内の空気流の目的は、衛生上の理由からクリーンゾーンを作り出すことである。空気流の近く又は上流の物体によって生成される乱流ゾーンは、薬剤調合中に潜在的に汚染の危険をもたらす可能性がある。その結果、空気力学的に成形された入力装置用のエンクロージャハウジングを有することにより、層流の乱れの量が最小限に抑えられ、あらゆる種類の汚染の機会が減少する。
【0018】
本発明の一態様によれば、単一のエンクロージャが、スケールの上方で少なくとも1つの入力装置を収容する。エンクロージャは、スケールの上方でスキャナやカメラなどの複数の入力装置を収容してもよい。エンクロージャは小さく、流線形化されており、スケールの安定性と精度にはほとんど影響しない。
【0019】
ある場合には、入力装置のエンクロージャは、スケールの側部又は後部に配置され、空気流の方向に対して、スケールの秤量面の近傍の上流側には直接に設けられていない。この構成は、乱された空気流がスケールの秤量面近傍に到達しないので、安定した正確な重量スケール読み取り値を提供することができるが、入力装置はより理想的でない位置に設けられるであろう。例えば、入力装置がカメラである場合、カメラのこの側部又は後部への配置は、写真が透視図で撮影されるべく要求する蓋然性が最も高い。入力装置がスキャナである場合、この側部又は後部への配置は、ユーザによる使用のために、より人間工学的でない場所にスキャナを設けることになろう。
【0020】
他の場合では、入力装置は、エンクロージャなしで使用するのに適すべく十分に小さな設置面積を有することがある。この構成は、効率的な人間工学的な走査と、直接に上から見下ろして撮られた写真を有する能力を提供することができる。この構成は、装置自体のハウジングが空気流をほとんど乱さないように最適化されることを必要とするかもしれない。
【0021】
さらに他の場合には、入力装置をスケールの上であるが、ある向きに、及び/又は追加の空気流操作特徴部からの助けと共に配置すると、スケール秤量面から十分に離れて導かれる空気をもたらすことができ、スケールの重量測定値への相当な効果を有さない。同様に、追加の空気流操作特徴部は、空気がスケール秤量面に当たったときに、それがスケールの安定性及び精度に悪影響を及ぼさないように、十分に偏向及び/又は減衰されるように、乱された空気を十分に再配向するように設計することができる。
【0022】
別の構成では、重量測定値への全てのタイプの潜在的な空気流の乱れを排除するように、スケールの周りにエンクロージャ(すなわち、高精度スケールと共に使用される箱型ハウジング)が設けられてもよい。スケールのための鈍い非空気力学的エンクロージャは、空気流パターン及び流速がフード間で異なるので、重量測定の安定性及び精度要求を満たすことができよう。
【0023】
さらに別の構成では、スケールには、雑音の多い環境に対しての高いフィルタリングを施すか、又はスケールの論理システムの外部で重量信号を処理することが提供されてもよい。この構成は、鈍い又は非流線形の物体でもって、より正確で安定した結果を得るための解決策として使用できる。
【0024】
さらに別の構成では、スケールの読み取りに対する空気流の乱れの影響を最小にするように、スケールのプラテンが設けられている。装置をスケールの上方に十分に高くすることは、鈍い又は非流線形の物体でもって、より正確で安定した結果を得るための解決策となり得る。
【0025】
滅菌配合において使用される典型的なフードの下で、スケールが有する感度の程度は、55~80cfm(立方フイート/分)のダウンフローに対して(+/- 0.05g)のオーダーである。なぜこれが当てはまるのか理解するためには、スケールの秤量面に見られる圧力と、その所望の精度レベルとの関係を理解する必要がある。シミュレーションによれば、プラテン(スケールの秤量面)が経験する圧力は、平均が約-0.07Paで-1.2Paから0.1Paの範囲である。+/- 0.05gの精度を得るためには、空気流の乱れのせいで、スケールによって+/- 0.0126Pa以下の偏差が、スケールによって経験されてもよい。これは、スケールが経験する圧力の全範囲に比べて非常に小さい。定性的には、この大きさは非常に小さいので、表面の近くを移動するユーザの手が、空気の動きを容易に誘発し、結果として圧力擾乱をはるかに大きくする。その結果、フード内の形の位置(異なる領域では流れパターンが異なる)やフードのブランド/モデルなどのパラメータが、スケールの安定性と精度の性能に十分大きな影響を与えるように実現された。
【0026】
図1~2を参照するに、参照番号1として概略的に示されている薬剤調合システムは、1つ以上の処方された医薬品で、注射器、薬剤バイアル、又は静脈内(IV)バッグを調合する際に、薬剤師又は非薬剤師の技術者などを支援する。薬剤調合システムは、プロセッサ及び記憶されたメモリを有するコンピュータと、並びに表示部5と、キーボード、マウスなどのユーザ入力装置7とを含むユーザインタフェース3に動作可能に接続されている。スケール出力のインタフェース11を有するスケール9は、ユーザインタフェース3のプロセッサに動作可能に接続されてもよい。スケール9は、対象物がその上に置かれたとき、質量又は重量の変化を検出するための任意の適切な装置として実施され得る。したがって、スケール9は、物体の質量又は重量が所定の閾値より大きい又は小さいときに信号を送信する装置、又はその上に置かれた物体の重量の正確な読取りを提供する、高精度のスケールとして単純に構成されてもよい。
【0027】
一実施形態では、バーコードスキャナ13は、バーコードスキャナ13がスケール9の一部分に置かれバーコードを有している薬剤バイアルをスキャンし得るように、ユーザインタフェース3のプロセッサ及びスケール9の少なくとも1つに、動作可能に接続されている。別の実施形態では、画像キャプチャ装置15は、画像キャプチャ装置15が、スケール9の一部分の上に置かれた薬剤バイアル、IVバッグ、又は注射器のような物品の画像を撮り得るように、ユーザインタフェース3及びスケール9の少なくとも1つに、動作可能に接続されている。一実施形態では、画像キャプチャ装置15は、スケール9の一部分に置かれた物品の複数の静止画像又はランニングビデオを、文書化及び/又は調合プロセスのその後の検討のために、薬剤調合プロセスの間中、取得することができる。
【0028】
さらに別の実施形態では、バーコードスキャナ13及び画像キャプチャ装置15の少なくとも1つは、ハウジング17内に少なくとも部分的に封入されていてもよい。特定の構成では、ハウジング17は、バーコードスキャナ13及び画像キャプチャ装置15を完全に囲むことができる。選択肢として、ハウジング17は、バーコードスキャナ13及び画像キャプチャ装置15のうちの1つのみを含むことができる。1つの構成では、バーコードスキャナ13は、バーコードスキャナ13がスケール9の一部分上に置かれた物品のバーコードをユーザによるさらなる操作なしに、容易にスキャンすることができるようにハウジング17内に配置される。別の構成では、画像キャプチャ装置は、画像キャプチャ装置15がスケール9の一部分上に置かれた物品の画像を、ユーザによるさらなる操作なしに容易に取得することができるように、エンクロージャ17内に配置されている。
【0029】
図3を特に参照すると、ハウジング17は、微生物又は他の病原体などの汚染物質の表面付着を最小限に抑えるために、最小限の表面摂動をもたらすべく結合される、上部分17A及び下部分17Bから形成されてもよい。一実施形態では、ハウジング17の製造はUSP797に準拠する。光学レンズ6、8は、USP797への付着をさらに確実にするために、ハウジング17に取り付けられてもよい。1つの構成では、光学レンズ6は、画像キャプチャ装置15と光学的に通信するハウジング17に取り付けられてもよい。別の構成では、光学レンズ8は、バーコードスキャナ13と光学的に通信するハウジング17に取り付けられてもよい。
【0030】
1つの構成では、バーコードスキャナ13は、バーコードスキャナ13が、ユーザによるさらなる操作なしに、スケール9の一部分に置かれた物品のバーコードを直ちにスキャンすることからオフセットされているスキャナを有するように、ハウジング17内に配置されている。この構成では、誤ったスキャンが回避される。
図3に示すように、バーコードスキャナ13は、センサが、取付ブラケット18によって例えば45°の角度でスケールのプラテン31に対して角度を成すように、配置されてもよい。この構成では、ユーザは、バーコードスキャナ13のセンサの範囲内でスキャンされるべく、物体を能動的に配置しなければならない。別の構成では、画像キャプチャ装置は、画像キャプチャ装置15がスケール9の一部分上に置かれた物品の画像をユーザによるさらなる操作なしに容易に取得することができるようにハウジング17内に配置されてもよい。
【0031】
ハウジング17は、支持アーム19によって支持されるように、スケール9の一部分の上方に配置されてもよい。
図2に示すように、薬剤調合システム1は、層流フード25の内部29に空気の層流を生成するための流入空気源23及び流出空気ポート27を有する層流フード25内に配置されてもよい。ハウジング17の外面21は、
図1乃至3に示すように、層流フード25内の空気流れの乱れを低減するべく、最適化された流線形の形状及び/又は輪郭をそれに提供するために、湾曲した前面輪郭を有していてもよい。
【0032】
再び
図1~
図3を参照するに、スケール9は、その上でプラテン31を支持するベース部分43を含むことができる。ベース部分43は、プラテン31上に載置された対象物の歪みを測定する歪ゲージロードセルと、プラテン31に加わる力をスケール出力インターフェース11に中継される電気信号に変換するロードセルセンサ等の力変換器とを収容している。ベース部分43は、画像キャプチャ装置15によって取得されるべき画像の中心又は他の所望の部分の十字状凹部35のような視覚的表示を技術者に提供する、スケール9の秤量面の一部分のような、プラテン31を支持している。これは、技術者が、スケール9のプラテン31の上に配置されたハウジング17内に封入されている画像キャプチャ装置などの画像キャプチャ装置15の視野内に、薬物配合関連薬剤37及び関連する供給物を適切に配置することを可能にする。1つの構成では、
図4乃至6に示すように、プラテン31の上面41は、複数の凹溝39及び/又はプラテン31の表面から延びる突起を画定して、薬物配合関連薬剤37及び関連する供給物を、プラテン31の上面41に摩擦により拘束する。別の構成では、プラテン31の上面41は、プラテン31の上面41上の薬物配合関連薬剤37及び関連する供給物を同様に拘束するべく、粘着付与剤又は他の摩擦強化面を含むことができる。溝39及び/又は突起の配置は、ユーザに、画像キャプチャ装置15の視野の中心と一致するように配置され得るプラテン31の中心を容易に示すことができる。プラテン31の表面は、化学療法化合物及び薬物などの腐食剤、並びに漂白剤、イソプロピルアルコールなどの洗浄剤への暴露によって引き起こされる劣化に抵抗する耐久性のある組成物で、コーティングすることができる。特定の構成では、耐久性組成物は、エポキシ又はエポキシベースの塗料又はコーティングであってもよい。
【0033】
複数の凹溝39及び/又はプラテン31の表面から延びる突起は、配合作業中にプラテン31の上面41に偶発的にこぼれた全ての液体材料を拘束するように構成することができる。複数の凹溝39は、適切な処分技術を採用することができるまで、プラテン31内の限定された領域に、偶発的にこぼれた材料を集めて拘束するように働く受容ウェル47(
図1に示す)を画定することができる。
【0034】
別の実施形態では、プラテン31は、スケール9のベースユニット43から取り外し可能であってもよい。この構成では、プラテン31は使い捨て可能であり、技術者は、単一の無菌薬物配合手順の後に、プラテン31を取り外して処分することができる。この構成では、ベース43に係合されている個々のプラテン31ごとに、スケール9の較正が必要となることがある。別の構成では、プラテン31は、滅菌薬物配合手順の後に取外して処分され得る、使い捨てのカバー層(図示せず)を含むことができる。プラテン31の使い捨ての態様は、各薬物配合手順の前に、プラテン31が清浄であり、汚染物が薬物配合手順の構成要素に移行しないことを保証する。プラテン31は、従来のスケール秤量面で知られているような、金属、複合材料又はポリマー材料で形成することができる。さらなる構成では、各プラテン31は、その中に埋め込まれた、又はその表面に取り付けられた固有の個別識別子45を含むことができ、画像キャプチャ装置15によって取り込まれた画像に取得することができる。これは、薬物配合手順の画像キャプチャ装置15によって取り込まれた画像の技術者及び/又は後の査読者が、プラテン31が調合の間に変更されたことを確認することを可能にする。これにより、技術者が制度上の安全性と無菌性要求を遵守していることの文書化された証拠を提供し得る。特定の構成では、プラテン31が、指定された間隔、例えば、シフト、一日、準備中、及び/又は汚染が検出され後の特定の時点で交換されたかどうかを判定するために、個々の識別子45がシステムソフトウェアによって検出され得る。さらなる構成では、ユーザがプラテン31を変更する必要性が、GUIなどを介したユーザインタフェース3を介して示されてもよい。さらなる構成では、システムは、プラテン31が交換されるまで、ユーザが配合手順を実行することを防止できるように、安全機能を含むことができる。ユーザは、プラテン31の使用期間がコンプライアンスパラメータ内にあることが確認されるまで、スケール9及びプラテン31を使用して滅菌配合手順を準備することが防止されてもよい。
【0035】
さらなる実施形態では、プラテン31は、適切な処分技術が採用されるまで、偶発的にこぼれた材料を吸収する吸収材料を含むことができる。さらなる構成では、プラテン31の少なくとも1つの受容ウェル47が、その中に吸収材料を含むことができる。
【0036】
エアロゾル化などの特定の状況では、技術者が、細胞毒性物質が容器から誤って放出されたか否かを判定することは困難である。したがって、プラテン31の上面41は、コーティング層に接触する流体に応答して、色の変化などの視覚的表示を提供するコーティング層を含むことができる。1つの構成では、コーティング層は、プラテン31のコーティング層上への材料の漏出又は意図しない流出に応答する視覚的表示を提供する。コーティング層は、細胞毒性物質との接触時に色の変化を提供するように構成することができる。視覚的指示は、システムの技術者又はユーザに視覚的に観察され得る。他の構成では、視覚的指示は、画像キャプチャ装置15、又は赤外線カメラなどの追加の画像キャプチャ装置によって観察可能であってもよい。
【0037】
別の構成では、プラテン31は、そこを通る光の通過を可能にする透明及び/又は半透明材料で形成されてもよい。この構成では、スケール9のベース部分43もまた、例えば、プラテン31の下の位置からプラテン31を通って光を通過させるなどして、プラテン31の一部を照明するための光源49を含むこともできる。これにより、薬物配合関連薬剤37及び関連する供給物の視覚的検査が向上し、欠陥のないことを保証することが可能になる。例えば、照明されたプラテン31は、技術者が流体で満たされたIVバッグに見られるコアリング(coring)を視覚化することを可能にすることができる。光源49は、薬物配合関連薬剤37内に存在する特定の粒子を照射するのに適した、特定の波長に調整されてもよい。特定の構成では、プラテン31は、プラテン31の特定部分の照明を選択的に可能にするために、不透明又は実質的に不透明な領域、及び透明、実質的に透明、半透明、及び/又は実質的に半透明である領域を含んでもよい。
【0038】
別の構成では、スキャナは、スケール9のベース部分43内に収容されてもよい。スキャナは、プラテン31の半透明部分及び/又は透明部分を介して、薬物配合関連薬剤37に存在するバーコードラベルをスキャンするように光学的に構成されたバーコードスキャナであってもよい。バーコードスキャナは、バーコードから情報を取得してプラテン31上に置かれたバイアルの内容を決定するように構成することができる。別の構成では、プラテン31上に置かれた薬物配合関連薬剤37のラベルに情報を書き込むべく、バーコードライタ又は一体型ラベルプリンタが、スケール9のベース部分43内に配置されてもよい。1つの構成では、バーコードライタは、調合結果、日付、時、ロット番号などに関連する薬物配合薬剤37のラベルに、情報を書き込むように構成され得る。
【0039】
さらに別の構成では、プラテン31は、1つ以上のシステム構成要素と無線通信することができる。例えば、無線インターフェースは、プラテン31と電気的に連絡して設けられ、プラテン31の頂部に設けられた装置へのデータの読み取り及び/又は書き込みができる。無線インターフェースは、プラテン31上に設けられた薬剤容器に接続されたポンプへのブルートゥース(Bluetooth(登録商標))接続であってもよい。それによって伝達される情報は、患者固有の流量及び容量などのポンプ動作パラメータを含むことができる。したがって、自動的にプログラムされた装置が、さらなるユーザの手動(handling)ステップを必要とせずに提供され得る。
【0040】
さらに別の構成では、プラテン31は、スケール9によって測定された重量が指定された公差内にあるときに、色の変化などの視覚的指示を呈するように構成されてもよい。例えば、プラテン31には、スケール9が安定化され、測定された単位が所与の薬物配合プロセスのための特定の許容差内にある場合に活性化される、照射表示部が装備されてもよい。
【0041】
動作中、薬剤師/技術者は、以下のステップを実行するために、ユーザインタフェース3の表示部上に設けられた一連の表示画面を介して促されてもよい。まず、操作者は、処方された薬剤化合物を調合するために、再構成すべき薬剤を含む薬物配合関連薬剤37の第1のバーコードを、バーコードスキャナ13によりスキャンしてもよい。薬剤容器は、スキャン時にスケール9上に置かれてもよく、又はユーザが最初にバーコードをスキャンし、続いてスケール9のプラテン31上に薬剤調合関連薬剤37を置くことができる。重量が安定すると、システムは、数学的アルゴリズムを使用して、測定された重量が、重量目標プラス/マイナスの所定の許容値を満たすことを検証(確認)する。加えて、画像キャプチャ装置15は、薬物配合関連薬剤37の画像を撮影し、それをユーザインタフェース3の表示部にユーザに対し表示する。次いで、ユーザは、薬物配合関連薬剤37をプラテン31から取除き、そして画像は薬剤調合物のデータ記録に保存される。測定された重量がその目標重量許容値内であることをシステムが検証(確認)できない場合には、技術者は、正しい重量が達成されるまで、このステップを再実行することが要求される。
【0042】
次に、技術者は、再構成される薬物と混合される流体の流体容器の第2のバーコードをスキャンする。上述したように、流体を包含する薬剤容器は、スキャン時にスケール9上に置かれてもよいし、ユーザが最初にバーコードをスキャンし、その後、薬剤調合関連薬剤37をスケール9のプラテン31上に置くことができる。重量が安定すると、画像キャプチャ装置15は、薬物配合関連薬剤37の画像を撮影し、それをユーザインタフェース3の表示部上にユーザに対し表示する。次に、ユーザは、薬物配合関連薬剤37を除去し、画像が薬剤調合物のデータ記録に保存される。再度、システムが、測定された重量がその目標重量許容値内であることを検証(確認)できない場合には、技術者は、正しい重量が達成されるまで、このステップを再実行することが要求される。
【0043】
その後、ユーザは、流体容器から薬剤容器に流体を注入することによって、再構成される薬剤を流体容器内の流体(両方の薬物配合関連薬剤37)と混合する。次いで、薬剤容器はスケール9のプラテン31に戻され、そして薬剤容器の重量が検証(確認)される。一旦、重量が安定して検証(確認)されると、画像キャプチャ装置15は、スケールから受信された信号に基づいて完成された薬物配合関連薬剤37の画像を自動的に取得し、その画像をユーザインタフェース3の表示部上に表示する。仮に、システムが測定された重量がその目標重量許容値内であることを検証(確認)できない場合には、技術者は、正しい重量が達成されるまで、このステップを再実行することが要求される。
【0044】
技術者が、上記の画像のいずれかが特定の要求を満たしていないと判断した場合、新規又は追加の画像を要求する選択肢がある。別の画像を要求すると、画像キャプチャ装置15をユーザインタフェース3に表示された「ライブビデオモード」に自動的に切り替えることができる。技術者は、今や、スケール9上の薬剤容器を好ましい位置に移動させ、ユーザインタフェース3を介して画像キャプチャをトリガすることができる。前と同様に、取得された画像はユーザインタフェース3に表示され、スケール9から物品を取り除くことによって、技術者は画像を受け入れ、システムは自動的に次の配合ステップに移動する。
【0045】
薬剤の調合が完了すると、システムは、薬剤及び患者情報の名前を表している符号化された情報を含むバーコードラベルを、完成された薬剤調合に配置するために任意に印刷してもよい。
【0046】
薬剤調合システム1は、例えば化学療法化合物などの処方された流体化合物を調合及び投与するためのいくつかの順次コンピュータ実行モジュールと連携して、機能することができる。モジュールは、それぞれ、ユーザからの入力、出力の生成、及び計算、及び1つ又は複数のプロセッサ上で実施され得る医薬品の調合及び投与のためのインストラクションの決定を可能にする、コードを含んでいる。より具体的には、モジュールは、正確さについて後で検証され、コンピュータ支援インストラクションに基づいて準備され、重量測定に基づいて検証され、そして患者に投与される、患者の処方箋に医師が入力することを可能にする。モジュールは、薬剤の調合中に、(i)病院内ネットワークからCPOEモジュール内の医師によって入力された処方情報データを検索する、(ii)スキャンされたバーコードが処方情報に対応することを検証する、(iii)シリンジ及び/又はIVバッグの重量が、投与される医薬品の量について所定の閾値精度レベル内にあるかどうかを決定する、(iv)重量が正確でない場合には、どのような調整が行われなければならないかを決定する、及び(v)シリンジ及び/又はIVバッグの重量に関するデータを病院内ネットワークに送り返してもよい。これらのモジュール及びプロセスは、いくつかのネットワーク化されたコンピューティング装置、又はそれ自体のプロセッサを有する独立したコンピューティング装置で実施されてもよく、データ及び情報は、限定されないが、イーサネット(登録商標) WiFi、セルラ、ブルートゥースなどの適切な有線又は無線の通信プロトコルを用いて通信され得る。
【0047】
したがって、本発明は、薬局において投薬指示を準備するのに、コンピュータ画面上で段階的なインストラクションを与え、そしてスケールでもって配合された液体の重量を測定することによって異なる配合ステップを検証することにより、薬剤師又は技術者を案内する。測定された重量は、その後、必要な配合精度が達成されているかどうかをチェックする数学的アルゴリズムで分析される。物品がスケール上に置かれるたびに、配合プロセスの視覚的なドキュメントトレイル(documentation trail)を作成するために、スケールの頂部分の写真が取り込まれる。写真はスケールから記録された測定値と一緒に保存され、アルゴリズムはログファイルになる。薬物の測定された重量が予想された重量の所定の許容範囲内にない場合、ソフトウェアは薬物の量を許容可能な範囲内に変えるために、インストラクションを生成する。ソフトウェアは、本ステップの要求される許容誤差が達成されない限り、次の配合ステップに進むことはない。
【実施例0048】
特に
図7を参照するに、70ft/min(0.3m/min)の入口層流状態、及び533ft/minの出口流状態を有する流れフードが示されている。流れフードは、0Paの入口環境圧力状態を含んでいる。流れフードはまた、スケールの秤量面と評価されているエンクロージャとを含んでいる。モデリングの目的ために、単純化された半モデル環境が示されている。
【0049】
図8A~
図13Bを参照するに、一連の計算(computational)流体力学シミュレーションが反映され、異なるエンクロージャ形状間の空気流の乱れの差を示している。これらの図のそれぞれについて、流れの軌道及び速度の等高線が出力として使用され、そして同一の環境、グリッド及び境界条件が各シミュレーションにおいて使用された。各試験運転について、3分間の安定性試験が使用され、ここでは、接触されずに3分以内に起こる振動が記録された。試験実施のために、100gの重量が使用され、25回の試料試験が行われた。登録されたスケールが記録された最初の安定化された値と2つの標準偏差が計算され、精度として記録された。
【0050】
また、
図8A~
図8Bは、流れフード内にエンクロージャが存在しない理想化された状態での流れフード内の空気流を表している。これらの状態でのスケールの実験的評価は、+/- 0.00gの安定性及び+/- 0.0229gの精度であった。スケールの安定性に重要な設計変数を理解するためには、
図8Aに示されるような、配合フード内の典型的な空気流が理解されねばならない。
図8Aにおいて、流れはフードの頂部から底部に向けられ、そして空気はフードの前部及び後部の2つの領域(赤色で見られる)に存在する。スケールのプラテンの近くにおいて、空気は別々の経路に分かれている。
図8Bを参照すると、エンクロージャハウジングがスケールの上方に配置されているため、エンクロージャハウジングは、スケールの不安定性及び不正確さをもたらし、下流での空気流の乱れを生じさせやすい。特定のエンクロージャハウジングの設計は、この下流の空気流の乱れを低減するように最適化され得る。
【0051】
また、
図9A~
図9Bは、スケールの上方に配置された流れフード内に存在する、大きな比較的鈍いエンクロージャヘッドを有する流れフード内の空気流を表している。これらの条件下でのスケールの実験的評価は、+/- 0.06gの安定性であり、得られたスケールの読みがあまりにも不安定であったため、未知の精度であった。
【0052】
また、
図10A及び
図10Bは、スケールの上方に位置された流れフード内に存在する、中型サイズの比較的鈍いエンクロージャヘッドを有する流れフード内の空気流を表している。これらの条件下でのスケールの実験的評価は不確定であった。
【0053】
また、
図11A及び
図11Bは、スケールの上方に位置された流れフード内に存在する、中型サイズの比較的流線形化されたエンクロージャヘッドを有する流れフード内の空気流を表している。これらの条件下でのスケールの実験的評価は+/- 0.02gの安定性及び+/- 0.0445gの精度であった。
【0054】
また、
図12A及び
図12Bは、スケールの上方に位置された流れフード内に存在する、中型サイズの非常に流線形化されたエンクロージャヘッドを有する流れフード内の空気流を表している。これらの条件下でのスケールの実験的評価は+/- 0.015gの安定性及び+/- 0.0297gの精度であった。
【0055】
また、
図13A~
図13Bは、スケールよりも上方に位置された流れフード内に存在する、中型サイズであるが短くされ比較的流線形化されたエンクロージャヘッドを有する流れフード内の空気流を表している。これらの条件下でのスケールの実験的評価は、+/- 0.1gの安定性及び+/- 0.0153gの精度であった。
【0056】
また、
図8A~
図13Bの各々には、流れフード内の空気の圧力及び空気速度が示されている。Bとラベル表示された領域は、空気流の乱れが最小である最小空気速度と最低圧力に対応している。対照的に、Rとラベル表示された領域は、最大の空気流の乱れに対応する最大の空気速度と最高の圧力に対応している。
【0057】
図14~
図16に示されるように、スケール9のプラテン31に到達する乱れの量を最小にすることが本発明の目的である。ハウジング17とプラテン31との間の距離「Z」を最大限にすることは、ハウジング17によって生じさせられた全ての乱れが、プラテン31の表面に到達する前に、フードの後ろに向けてスイープされるのを許容するのを助ける。距離「Y」を最小限にすることは、これは、乱された空気がスケール9のプラテン31に到達する前に移動する必要がある距離に直接に関連するので、同様のやり方で助ける。「Y」及び断面直径「a」を最小化することは、流れストリームに対して最小の直交する面積をもたらし、それにより空気流の乱れを最小限に抑える。ハウジング17の滑らかな湾曲に関連して、b / aの断面比を最大化することにより、流れストリームの方向に流線形化された輪郭が形成される。これは、層流の流れを徐々に分割し、その後、それが再連結するのを可能にすることによって、乱流になる空気の量を最小にするであろう。
【0058】
本発明の特定の実施形態が詳細に説明されたが、本開示の全体的な教示に照らして、それらの詳細に対する様々な修正及び代替が開発され得ることは、当業者には理解されるであろう。したがって、開示された特定の構成は、例示的なものに過ぎず、添付の特許請求の範囲及びその任意の及び全ての均等物の全範囲に与えられるべき本発明の範囲を限定するものではない。