(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182750
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】エッチング組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20231219BHJP
C23F 1/26 20060101ALI20231219BHJP
C23F 1/44 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
H01L21/306 F
C23F1/26
C23F1/44
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174776
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2020522354の分割
【原出願日】2018-10-18
(31)【優先権主張番号】62/574,279
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】水谷篤史
(57)【要約】
【課題】例えば、多工程半導体製造プロセスの中間工程として、半導体基板から選択的にタンタル(Ta)及び/又は窒化タンタル(TaN)を除去するために有用である、エッチング組成物を提供する。
【解決手段】フッ化水素酸;カルボン酸を含む少なくとも1種の第一の溶媒;少なくとも1種の酸化剤;及びポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤、を含む、エッチング組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)フッ化水素酸;
b)カルボン酸を含む少なくとも1種の第一の溶媒;
c)少なくとも1種の酸化剤;及び
d)ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤、
を含む、エッチング組成物。
【請求項2】
前記フッ化水素酸が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の第一の溶媒が、R-COOHを含み、Rは、H又はC1~C6アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の第一の溶媒が、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、又はカプロン酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の第一の溶媒が、前記組成物の約70重量%~約99.9重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の酸化剤が、硝酸、KMnO4、H2O2、H5IO5、又はNaClO4を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の錯化剤が、シュウ酸、クエン酸、又は2-ヒドロキシ安息香酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の錯化剤が、前記組成物の約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1種のヘキサフルオロシリケート化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のヘキサフルオロシリケート化合物が、H2SiF6、Na2SiF6、K2SiF6、又は(NH4)2SiF6を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のヘキサフルオロシリケート化合物が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のスルホン酸をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種のスルホン酸が、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種のスルホン酸が、前記組成物の約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
有機溶媒及び無機溶媒から成る群より選択される少なくとも1種の第二の溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の第二の溶媒が、水を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記水が、前記組成物の約0.01重量%~約10重量%の量で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種の第二の溶媒が、0よりも大きい分配係数(logP)を有する有機溶媒を含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記有機溶媒が、アルコール又はエーテルを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記有機溶媒が、アルコール又はアルキレングリコールエーテルを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記有機溶媒が、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、又はジプロピレングリコールジメチルエーテルを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記有機溶媒が、前記組成物の約0.1重量%~約20重量%の量で存在する、請求項16に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1種の界面活性剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
約1以下のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
Ta又はTaNを含有する半導体基板を、請求項1に記載の組成物と接触させて、前記Ta又はTaNを除去することを含む、方法。
【請求項29】
前記接触工程の後に、前記半導体基板をリンス溶媒によってリンスすることをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記リンス工程の後に、前記半導体基板を乾燥することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記半導体基板上のCu又は誘電体材料を実質的に除去しない、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
半導体デバイスである、請求項28に記載の方法によって形成された物品。
【請求項33】
前記半導体デバイスが、集積回路である、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
a)フッ化水素酸;
b)カルボン酸を含む少なくとも1種の第一の溶媒;及び
c)ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤、
を含む、エッチング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容が参照により本明細書に援用される2017年10月19日に出願された米国特許仮出願第62/574,279号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、金属導電体(例:銅)、バリア材料、絶縁体材料(例:low-k誘電体材料)などの他の露出した又は下地の材料の存在下で、タンタル及び/又は窒化タンタルを選択的にエッチングするための組成物並びに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業では、マイクロ電子デバイス、シリコンチップ、液晶ディスプレイ、MEMS(マイクロ電気機械システム)、プリント配線板などにおける電子回路及び電子コンポーネントの寸法の縮小並びに密度の上昇が急速に進められている。それらの中の集積回路は、層構造又は積層構造とされており、各回路層間の絶縁層の厚さは縮小を続け、フィーチャサイズ(feature sizes)はどんどん小さくなっている。前記フィーチャサイズが縮小されるに従って、パターンはより小さくなり、デバイスの性能パラメーターは、より厳しく、強くなってきた。その結果、これまでは許容可能であった様々な問題が、前記フィーチャサイズの縮小に起因して、もはや許容することができないものとなるか、又はますます問題となってきた。
【0004】
高度集積回路の作製において、密度の上昇に伴う問題を最小限に抑えるために、及び性能を最適化するために、high‐k及びlow‐kの両方の絶縁体、並びに組み合わせられたバリア層材料が用いられてきた。
【0005】
タンタル(Ta)及び窒化タンタル(TaN)は、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS(マイクロ電気機械システム)、プリント配線板などに、並びに貴金属、アルミニウム(Al)、及び銅(Cu)配線のグラウンド層並びにキャップ層として用いられる。半導体デバイスでは、それは、バリア金属、ハードマスク、又はゲート材料として用いられ得る。
【0006】
このような用途のためのデバイスの構築では、Ta及びTaNをエッチングする必要のある場合が多い。Ta及びTaNの様々な種類の使用及びデバイス環境では、これら2つの材料がエッチングされる際に、同時に他の層が接触しているか又は露出している。このような他の材料(例:金属導電体、誘電体、及びハードマーク(hard marks))の存在下でのTa及びTaNの高度な選択的エッチングが、デバイスの歩留まり及び長寿命のために必要とされている。Ta及びTaNのエッチングプロセスは、プラズマエッチングプロセスであってもよい。しかし、Ta又はTaNの層にプラズマエッチングプロセスを用いることは、ゲート絶縁層及び半導体基板のいずれか、又は両方への損傷を引き起こす可能性がある。加えて、前記エッチングプロセスは、ゲート電極によって露出されたゲート絶縁層をエッチングすることにより、半導体基板の一部を除去してしまう可能性がある。トランジスタの電気特性が、負の影響を受ける可能性がある。そのようなエッチングによる損傷を回避するために、追加の保護デバイス製造工程が用いられ得るが、著しいコストを伴う。
【0007】
Ta及びTaNの湿式エッチング法は公知である。そのような方法は、他の試薬と組み合わせたエッチング液の使用を含み得る。しかし、ケイ素系誘電体及び金属(例:Cu)との選択性が充分ではなく、デバイス中の他の露出金属も、腐食又はエッチングを受ける場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、Ta又はTaNの高いエッチング速度を有するが、露出しているか又はTa若しくはTaNと接触している他の半導体材料に対しては、前記エッチングプロセスの過程で低いエッチング速度及び腐食速度を有するエッチング溶液が求められている。
【0009】
本開示は、半導体デバイス中に存在する金属導電体層、ハードマスク層、及びlow‐k誘電体層に対してTa及び/又はTaNを選択的にエッチングするための組成物並びにプロセスに関する。より詳細には、本開示は、銅及びlow‐k誘電体層に対してTa及び/又はTaNを選択的にエッチングするための組成物並びにプロセスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、本開示は、a)フッ化水素酸;b)カルボン酸を含む少なくとも1種の第一の溶媒;c)少なくとも1種の酸化剤;並びにd)ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤を含むエッチング組成物に関する。
【0011】
別の態様では、本開示は、a)フッ化水素酸;b)カルボン酸を含む少なくとも1種の第一の溶媒;並びにc)ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤を含むエッチング組成物に関する。
【0012】
別の態様では、本開示は、Ta及び/又はTaNを含有する半導体基板を本明細書で述べるエッチング組成物と接触させて、Ta及び/又はTaNを除去すること、を含む方法に関する。
【0013】
さらに別の態様では、本開示は、上述した方法によって形成された物品に関し、前記物品は、半導体デバイス(例:集積回路)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で定められる場合、特に断りのない限り、表されるすべてのパーセントは、前記組成物の総重量に対する重量パーセントであるとして理解されるべきである。特に断りのない限り、周囲温度は、摂氏約16度から約27度(℃)であるとして定められる。
【0015】
一般的に、本開示は、a)フッ化水素酸(HF);b)カルボン酸である少なくとも1種の第一の溶媒;c)少なくとも1種の酸化剤;並びにd)ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤を含むエッチング組成物(例:タンタル及び/又は窒化タンタルを選択的に除去するためのエッチング組成物)に関する。
【0016】
いくつかの実施形態では、フッ化水素酸は、本開示のエッチング組成物の約0.1重量%以上(例:約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.2重量%以上、約1.4重量%以上、又は約1.5重量%以上)から約5重量%以下(例:約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、又は約2重量%以下)の量で存在する。理論に束縛されるものではないが、フッ化水素酸は、前記エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させることができるものと考えられる。
【0017】
本開示のエッチング組成物は、所望に応じて、マイクロ電子機器用途での使用に適するいかなる酸化剤を含んでいてもよい。適切な酸化剤の例としては、限定されないが、酸化性酸又はその塩(例:硝酸、過マンガン酸、又は過マンガン酸カリウム)、過酸化物(例:過酸化水素、過酸化ジアルキル、過酸化水素尿素)、過スルホン酸(persulfonic acid)(例:ヘキサフルオロプロパン過スルホン酸、メタン過スルホン酸、トリフルオロメタン過スルホン酸、又はp-トルエン過スルホン酸)及びその塩、オゾン、過炭酸(例:過酢酸)及びその塩、過リン酸及びその塩、過硫酸及びその塩(例:過硫酸アンモニウム又は過硫酸テトラメチルアンモニウム)、過塩素酸及びその塩(例:過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、又は過塩素酸テトラメチルアンモニウム)、並びに過ヨウ素酸及びその塩(例:過ヨウ素酸、過ヨウ素酸アンモニウム、又は過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム)が挙げられる。これらの酸化剤は、単独で、又は組み合わせて用いられてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記酸化剤は、本開示のエッチング組成物の約0.01重量%以上(例:約0.02重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、約0.06重量%以上、約0.08重量%以上、約0.1重量%以上、約0.15重量%以上、又は約0.2重量%以上)から約0.5重量%以下(例:約0.45重量%以下、約0.4重量%以下、約0.35重量%以下、約0.3重量%以下、約0.25重量%以下、又は約0.2重量%以下)であってもよい。理論に束縛されるものではないが、前記酸化剤は、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させることができるものと考えられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、酸化剤(例:硝酸)を除外してもよい。そのような実施形態では、前記エッチング組成物は、依然として、パターン化半導体基板(例:パターン化ウェハ)において、他の材料(例:金属導電体層、ハードマスク層、及びlow‐k誘電体層)に対してTa及び/又はTaNを選択的にエッチングすることが可能であり得る。
【0020】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、適切ないかなる錯化剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記錯化剤は、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択することができる。本明細書で用いられる場合、「ポリカルボン酸」の用語は、2つ以上(例:2、3、又は4つ)のカルボキシル基(COOH)を含有する化合物を意味する。適切なポリカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「ヒドロキシカルボン酸」の用語は、少なくとも1つ(例:2、3、又は4つ)のヒドロキシル基(OH)及び少なくとも1つ(例:2、3、又は4つ)のカルボキシル基(COOH)を含有する化合物を意味する。適切なヒドロキシカルボン酸の例としては、クエン酸及び2-ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記ポリカルボン酸は、ヒドロキシル基を含まない。いくつかの実施形態では、前記ヒドロキシカルボン酸は、1つのヒドロキシル基しか含まない。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記錯化剤は、本開示のエッチング組成物の約0.1重量%以上(例:約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約2.5重量%以上、又は約5重量%以上)から約10重量%以下(例:約9.5重量%以下、約9重量%以下、約8.5重量%以下、約8重量%以下、約7.5重量%以下、約7重量%以下、約6.5重量%以下、約6重量%以下、約5.5重量%以下、又は約5重量%以下)であってもよい。理論に束縛されるものではないが、前記錯化剤は、前記エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させることができ、同時に前記エッチング組成物に曝露されたCuの除去を阻害するものと考えられる。
【0022】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例:2、3、又は4種)の溶媒を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記エッチング組成物は、カルボン酸である第一の溶媒を含んでもよい。そのような実施形態では、前記第一の溶媒は、式:R-COOHのカルボン酸であってもよく、式中、Rは、H又はC1~C6アルキルである。そのようなカルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、及びカプロン酸が挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記第一の溶媒は、本開示のエッチング組成物の主成分であってもよい。例えば、前記第一の溶媒は、前記エッチング組成物の約70重量%以上(例:約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、又は約95重量%以上)から約99.9重量%以下(例:約99重量%以下、約98重量%以下、約97重量%以下、約96重量%以下、約95重量%以下、約90重量%以下、又は約85重量%以下)であってもよい。理論に束縛されるものではないが、本明細書で述べる第一の溶媒として用いられる前記カルボン酸は、前記エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させることができるものと考えられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、2つ以上の(例:2、3、又は4つ)の溶媒を含んでもよい。例えば、前記エッチング組成物は、有機溶媒(カルボン酸ではない)及び無機溶媒から成る群より選択される少なくとも1種の第二の溶媒を含んでもよい。適切な無機溶媒の例としては、水及び水溶液が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記水は、脱イオン化された超純水であり、有機汚染物を含有せず、約4~約17メガオームの、又は少なくとも約17メガオームの最小抵抗率を有する。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の第二の溶媒(例:水)は、前記エッチング組成物の約0.01重量%以上(例:約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、又は約5重量%以上)から約10重量%以下(例:約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、又は約4重量%以下)の量で存在する。理論に束縛されるものではないが、水の量が前記組成物の10重量%を超える場合、前記エッチングプロセスの過程で、Ta及び/又はTaNのエッチング速度に有害な影響を与えて、それらの除去を低下させる可能性があるものと考えられる。他方、理論に束縛されるものではないが、水の量が0.01重量%未満である場合は、前記組成物の酸化能力が低減され、それによって、Ta及び/又はTaNのエッチング速度が低下されることになるものと考えられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記第二の溶媒は、カルボン酸ではない有機溶媒であってもよい。例えば、前記有機溶媒は、0より大きく(例:約0.1以上、約0.2以上、約0.3以上、約0.5以上、約1以上、約1.5以上、又は約2以上)、約5以下の分配係数(logP)を有する疎水性有機溶媒であってもよい。本明細書で用いられる場合、前記分配係数logPは、n-オクタノール及び水の二相系から得られる。いくつかの実施形態では、前記有機溶媒は、アルコール又はエーテルであってもよい。前記エーテルは、アルキレングリコールエーテル(例:ジアルキレングリコールエーテル、トリアルキレングリコールエーテル、及びテトラアルキレングリコールエーテル)であってもよい。そのような有機溶媒の例としては、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。理論に束縛されるものではないが、疎水性有機溶媒を用いることにより、前記エッチングプロセスの過程で、Ta又はTaNの除去を低下させることなく、Cuの除去を阻害することができるものと考えられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の第二の溶媒(例:有機溶媒)は、本開示のエッチング組成物の約0.1重量%以上(例:約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約2.5重量%以上、又は約5重量%以上)から約20重量%以下(例:約15重量%以下、約10重量%以下、約8重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、又は約4重量%以下)の量で存在する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、さらに、少なくとも1種(例:2、3、又は4種)のヘキサフルオロシリケート化合物を含んでもよい。適切なヘキサフルオロシリケート化合物の例としては、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)及びその塩が挙げられる。ヘキサフルオロシリケート化合物の具体例としては、H2SiF6、Na2SiF6、K2SiF6、及び(NH4)2SiF6が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記ヘキサフルオロシリケート化合物は、前記エッチング組成物の約0.1重量%以上(例:約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、又は約2.5重量%以上)から約5重量%以下(例:約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、又は約2重量%以下)の量で存在する。理論に束縛されるものではないが、上記で述べたヘキサフルオロシリケート化合物は、前記エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させることができ、同時に前記エッチング組成物に曝露された誘電体材料(SiO2)の除去を阻害するものと考えられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、さらに、少なくとも1種(例:2、3、又は4種)のスルホン酸を含んでもよい。適切なスルホン酸の例としては、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記スルホン酸は、前記エッチング組成物の約0.1重量%以上(例:約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約2.5重量%以上、又は約5重量%以上)から約10重量%以下(例:約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、又は約2重量%以下)の量で存在する。理論に束縛されるものではないが、上記で述べたスルホン酸は、前記エッチングプロセスの過程で、半導体基板上のTa及び/又はTaNの除去を促進し、向上させることができるものと考えられる。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、さらに、少なくとも1種(例:2、3、又は4種)の界面活性剤を含んでもよい。適切な界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記界面活性剤は、前記エッチング組成物の約0.0001重量%以上(例:約0.001重量%以上、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、又は約0.5重量%以上)から約1重量%以下(例:約0.9重量%以下、約0.8重量%以下、約0.7重量%以下、約0.6重量%以下、又は約0.5重量%以下)の量で存在する。理論に束縛されるものではないが、前記界面活性剤は、前記エッチング組成物の均一性を促進し、前記ポリカルボン酸溶媒中での成分(例:スルホン酸)の溶解を補助することができるものと考えられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、約1以下(例:約0.9以下、約0.8以下、約0.7以下、約0.6以下、又は約0.5以下)及び/又は約0以上(例:約0.1以上、約0.2以上、約0.3以上、約0.4以上、又は約0.5以上)のpHを有してもよい。理論に束縛されるものではないが、1よりも高いpHを有するエッチング組成物は、充分なTa及び/又はTa/Nのエッチング速度を有さず、なぜなら、これらの材料の除去には充分に高い酸性が必要であるからであり、並びに0よりも低いpHを有するエッチング組成物は、強い酸性のために前記組成物中のある特定の成分を分解し得るものと考えられる。
【0031】
加えて、いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、所望に応じて含まれてもよい成分として、pH調節剤、腐食防止剤、さらなる界面活性剤、さらなる有機溶媒、殺生物剤、及び消泡剤などの添加剤を含有してもよい。適切な消泡剤の例としては、ポリシロキサン消泡剤(例:ポリジメチルシロキサン)、ポリエチレングリコールメチルエーテルポリマー、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、及びグリシジルエーテル封止アセチレン系ジオールエトキシレート(参照により本明細書に援用される米国特許第6,717,019号に記載のものなど)が挙げられる。適切な界面活性剤の例は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、又は両性であってもよい。
【0032】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、比較的高いTa/Cu及び/又はTaN/Cuエッチング選択性を有し得る(すなわち、Taエッチング速度対Cuエッチング速度の比が高い、及び/又はTaNエッチング速度対Cuエッチング速度の比が高い)。いくつかの実施形態では、前記エッチング組成物は、約2以上(例:約3以上、約4以上、約5以上、約6以上、約7以上、約8以上、約9以上、約10以上、約15以上、約20以上、約30以上、約40以上、又は約50以上)及び/又は約500以下(例:約100以下)のTa/Cu及び/又はTaN/Cuエッチング選択性を有し得る。
【0033】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、比較的高いTa/誘電体材料(例:SiO2又はlow-k材料)及び/又はTaN/誘電体材料エッチング選択性を有し得る(すなわち、Taエッチング速度対誘電体材料エッチング速度の比が高い、及び/又はTaNエッチング速度対誘電体材料エッチング速度の比が高い)。いくつかの実施形態では、前記エッチング組成物は、約2以上(例:約3以上、約4以上、約5以上、約6以上、約7以上、約8以上、約9以上、約10以上、約15以上、約20以上、約30以上、約40以上、又は約50以上)及び/又は約500以下(例:約100以下)のTa/誘電体材料及び/又はTaN/誘電体材料エッチング選択性を有し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、前記添加剤成分の1又は複数を、2つ以上の場合はいずれの組み合わせであっても、特に除外してもよい。そのような成分は、酸化剤(本明細書で述べるものなど)、ポリマー、酸素捕捉剤、四級アンモニウム塩(四級水酸化アンモニウムを含む)、アミン、アルカリ性塩基(NaOH、KOH、及びLiOHなど)、消泡剤以外の界面活性剤、消泡剤、フッ化物含有化合物、研磨剤、シリケート、3つ以上のヒドロキシル基を含有するヒドロキシカルボン酸、アミノ基を含まないカルボン酸及びポリカルボン酸、シラン(例:アルコキシシラン)、環状化合物(例:アゾール(ジアゾール、トリアゾール、又はテトラゾールなど)、トリアジン、及び置換若しくは無置換ナフタレン、又は置換若しくは無置換ビフェニルエーテルなどの少なくとも2つの環を含有する環状化合物)、緩衝剤、非アゾール腐食防止剤、並びにハロゲン化金属から成る群より選択される。
【0035】
本開示のエッチング組成物は、前記成分を単に一緒に混合することによって作製されてよく、又はキット中の2つの組成物をブレンドすることによって作製されてもよい。前記キット中の第一の組成物は、酸化剤(例:硝酸)の水溶液であってもよい。前記キット中の第二の組成物は、前記2つの組成物のブレンドによって所望される本開示のエッチング組成物が得られるように、本開示のエッチング組成物の残りの成分を、所定の比率で濃縮された形態で含有してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示は、Ta及び/又はTaNを含有する半導体基板(例:Ta及び/又はTaNを含有するフィーチャ)をエッチングする方法に関する。前記方法は、Ta及び/又はTaNを含有する半導体基板を本開示のエッチング組成物と接触させて、Ta及び/又はTaNを除去すること、を含む。前記方法は、さらに、前記接触工程の後に、前記半導体基板をリンス溶媒でリンスすること、及び/又は前記リンス工程の後に、前記半導体基板を乾燥すること、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記半導体基板中のCu又は誘電体材料(例:SiO2)を実質的に除去しない。例えば、前記方法は、前記半導体基板中のCu又は誘電体材料の約5重量%超(例:約3重量%超又は約1重量%超)を除去することがない。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記エッチング法は:
(A)Ta及び/又はTaNを含有する半導体基板を提供する工程;
(B)前記半導体基板を本明細書で述べるエッチング組成物と接触させる工程;
(C)前記半導体基板を1又は複数の適切なリンス溶媒でリンスする工程;並びに
(D)所望に応じて、前記半導体基板を乾燥する工程(例:前記リンス溶媒を除去し、前記半導体基板の完全性を損なわない適切ないずれかの手段によって)、
を含む。
【0038】
この方法でエッチングされるべきTa及び/又はTaNを含有する前記半導体基板は、有機及び有機金属残渣を含有してもよく、さらには前記エッチングプロセスの過程でやはり除去され得る様々な金属酸化物も含有してよい。
【0039】
半導体基板(例:ウェハ)は、典型的には、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsなどの第III族-V族化合物、又はこれらのいずれかの組み合わせから構築される。前記半導体基板は、さらに、相互接続フィーチャ(例:金属線及び誘電体材料)などの露出した集積回路構造を含有してもよい。相互接続フィーチャに用いられる金属及び金属合金としては、これらに限定されないが、アルミニウム、銅との合金化アルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、及びタングステンが挙げられる。前記半導体基板は、層間誘電体、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化チタン、及び炭素ドープ酸化ケイ素の層を含有してもよい。
【0040】
半導体基板と前記組エッチング成物との接触は、適切ないかなる方法で行われてもよく、前記エッチング組成物をタンクに入れ、前記エッチング組成物中に前記半導体基板を浸漬させること及び/若しくは沈めること、前記エッチング組成物を前記半導体基板上にスプレーすること、前記エッチング組成物を前記半導体基板上に流動させること、又はこれらのいずれかの組み合わせなどである。
【0041】
本開示のエッチング組成物は、実質的に、約85℃までの温度で用いられてもよい(例:約20℃~約80℃、約55℃~約65℃、又は約60℃~約65℃)。Ta及び/又はTaNの前記エッチング速度は、この範囲内で温度と共に増加し、したがって、より高い温度での前記プロセスは、より短い時間で行われ得る。逆に、より低い温度でのエッチングは、典型的には、より長いエッチング時間を必要とする。
【0042】
エッチング時間は、ある特定のエッチング法、厚さ、及び用いられる温度に応じて、広範囲にわたって様々であってもよい。浸漬バッチタイプのプロセスでエッチングを行う場合、適切な時間範囲は、例えば、約10分間までである(例:約1分間~約7分間、約1分間~約5分間、又は約2分間~約4分間)。枚葉処理の場合のエッチング時間は、約30秒間から約5分間の範囲であってもよい(例:約30秒間~約4分間、約1分間~約3分間、又は約1分間~約2分間)。
【0043】
本開示のエッチング組成物のエッチング能力をさらに向上させるために、機械的撹拌手段が用いられてもよい。適切な撹拌手段の例としては、前記基板上での前記エッチング組成物の循環、前記基板上での前記エッチング組成物の流動又はスプレー、及び前記エッチングプロセス中における超音波又は高周波超音波撹拌が挙げられる。地表面に対する前記半導体基板の配向は、いかなる角度であってもよい。水平又は垂直配向が好ましい。
【0044】
前記エッチングに続いて、前記半導体基板は、適切なリンス溶媒により、撹拌手段を用いて、又は用いずに、約5秒間~約5分間にわたってリンスされてもよい。異なるリンス溶媒を用いる複数のリンス工程が用いられてもよい。適切なリンス溶媒の例としては、これらに限定されないが、脱イオン(DI)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、ガンマ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。別の選択肢として、又は追加として、pH>8の水性リンス液(希釈水酸化アンモニウム水溶液など)が用いられてもよい。リンス溶媒の例としては、これらに限定されないが、希釈水酸化アンモニウム水溶液、DI水、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールが挙げられる。前記リンス溶媒の適用は、本明細書で述べるエッチング組成物の適用に用いられる手段に類似の手段を用いて行われてもよい。前記エッチング組成物は、前記リンス工程の開始前に前記半導体基板から除去されていてもよく、又は前記リンス工程の開始時に依然として前記半導体基板と接触していてもよい。いくつかの実施形態では、前記リンス工程で用いられる温度は、16℃~27℃である。
【0045】
所望に応じて、前記半導体基板は、前記リンス工程の後に乾燥される。本技術分野で公知である適切ないかなる乾燥手段が用いられてもよい。適切な乾燥手段の例としては、スピン乾燥、前記半導体基板全体にわたる乾燥ガスの流動、又はホットプレート若しくは赤外線ランプなどの加熱手段を用いた前記半導体基板の加熱、マラゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、IPA乾燥、又はこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。乾燥時間は、用いられる具体的な方法に応じて異なるが、典型的には、30秒間から数分間のオーダーである。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書で述べるエッチング方法は、さらに、上述した方法によって得られる前記半導体基板から半導体デバイス(例:半導体チップなどの集積回路デバイス)を形成することを含む。
【0047】
説明のためのものであり、本開示の範囲を限定するとして解釈されてはならない以下の例を参照して、本開示をより詳細に説明する。
【実施例0048】
列挙したパーセントはいずれも、特に断りのない限り、重量基準(重量%)である。試験では、特に断りのない限り、1インチの撹拌バーによる300rpmでの制御撹拌を行った。
【0049】
一般手順1
製剤のブレンド
エッチング組成物のサンプルを、算出した量の溶媒に製剤の残りの成分を撹拌しながら添加することによって作製した。均一な溶液が得られた後、用いる場合は、所望に応じて含まれてもよい添加剤を添加した。
【0050】
一般手順2
材料及び方法
膜に対するブランケット膜エッチング速度測定を、市販の未パターン化300mm径ウェハを評価のための0.5×0.5インチの試験クーポン(test coupons)にダイシングしたものを用いて行った。試験に用いた主要なブランケット膜材料は、1)シリコン基板上に約1000Åの厚さで堆積されたlow-k膜(k値2.55)、2)シリコン基板上に約1000Åの厚さで堆積された非合金化銅金属膜、3)シリコン基板上の1000ÅのSiO2上に約250Åの厚さで堆積されたタンタル膜、4)シリコン基板上の1000ÅのSiO2上に約250Åの厚さで堆積された窒化タンタル膜、5)シリコン基板上に約1000Åの厚さで堆積されたブランケットCVD SiO2膜及び/又は熱酸化物(SiO2)膜を含む。
【0051】
前記ブランケット膜試験クーポンを、処理前及び処理後の厚さについて測定して、ブランケット膜のエッチング速度を特定した。銅及びタンタル金属ブランケット膜の場合、膜厚は、Keithley Model 8009抵抗率試験フィクスチャ4点プローブを用い、シート抵抗によって測定した。TaN、SiO2、及びlow-k膜の場合、膜厚は、Woollam VASEを用いたエリプソメトリによって処理前及び処理後に測定した。
【0052】
パターン化試験クーポンは、一般手順1によって作製した試験溶液中でのエッチング及び材料適合性について、一般手順3で述べる手順に従って評価した。
【0053】
パターン化試験クーポンCu/Ta(3nm)/TaN(3nm)/ILDを、材料適合性及び/又はエッチング応答性について評価した。次に、処理後試験クーポンを、走査型電子顕微鏡(SEM)による評価に掛けた。前記処理後クーポンからのSEM画像を、予め撮影しておいた処理前SEM画像セットと比較して、前記パターン化試験デバイスフィーチャとの各試験製剤の材料適合性及びエッチング応答性を評価した。
【0054】
一般手順3
ビーカー試験によるエッチング評価
ブランケット膜エッチング試験はすべて、600mLガラスビーカーに200gのサンプル溶液を入れ、蒸発によるロスを最小限に抑えるためのParafilm(登録商標)カバーを装着したままにして、250rpmで連続撹拌しながら室温(21~23℃)で行った。1つの側が前記サンプル溶液に暴露されるブランケット金属膜、又は誘電体膜を有するブランケット試験クーポンはすべて、ダイヤモンドスクライバによって、ビーカースケール試験用の0.5×0.5インチの正方形試験クーポンサイズにダイシングした。個々の試験クーポンは、各々、単一の長さ4インチのプラスチック製ロッキングピンセットクリップ(locking plastic tweezers clip)を用いて所定の位置に固定した。一方のエッジ部を前記ロッキングピンセットクリップで固定した前記試験クーポンを、600mLガラスビーカー中に吊り下げ、200gの試験溶液中に浸漬し、同時に、前記溶液を、室温、250rpmで連続撹拌した。各サンプルクーポンを、前記撹拌溶液中に入れた後すぐに、600mLガラスビーカーの上部をParafilm(登録商標)でカバーして再度密封した。処理時間(一般手順3Aに記載)が経過するまで、前記試験クーポンを前記撹拌溶液中に静止状態で保持した。前記試験溶液での前記処理時間が経過した後、600mLガラスビーカーから前記サンプルクーポンを直ちに取り出し、一般手順3Aに従ってリンスした。最終DIリンス工程の後、すべての試験クーポンを、手持ち型の窒素ガスブロアを用いたろ過済み窒素ガスによる吹き飛ばし工程に掛け、これによって、微量に残ったDI水がすべて強制的に除去され、試験測定用の最終乾燥サンプルを得た。
【0055】
一般手順3A(ブランケット試験クーポン)
一般手順3に従う10分間の処理時間の後直ちに、前記クーポンを、20℃で約1リットル/分のオーバーフロー速度の1000mL体積の超高純度脱イオン(DI)水中に30秒間、続いて緩やかに撹拌しながらさらに30秒間浸漬した。一般手順3に従って処理を完了した。
【0056】
一般手順3B(パターン化試験クーポン)
2.5~3分間の処理時間(実験に応じて異なる)の後直ちに、前記パターン化試験クーポンを、イソプロピルアルコール(IPA)又は超高純度脱イオン水中に、20℃で20秒間、緩やかに撹拌しながら浸漬して、処理後リンスを行った。前記パターン化試験クーポンを、前記IPA又はDI水から取り出し、直ちに1重量%クエン酸溶液中に、緩やかに撹拌しながら30秒間入れ、続いて1000mLのDI水オーバーフローリンスで最終30秒間リンスを行った。一般手順3に従って処理を完了した。
【0057】
例1
製剤例1~4(FE-1~FE-4)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表1にまとめる。
【0058】
【0059】
表1に示されるように、FE-1(錯化剤非含有)及びFE-2(錯化剤としてクエン酸を含有)は、比較的高いCuエッチング速度及び比較的低いTaN/Cuエッチング選択性(すなわち、TaNとCuとのエッチング速度の比)を呈した。加えて、FE-4(錯化剤としてベンゾグアナミンを含有)は、TaNエッチング速度を呈さなかった。対照的に、FE-3(錯化剤としてシュウ酸(ポリカルボン酸)を含有)は、驚くべきことに、高いTaNエッチング速度及び低いCuエッチング速度を呈し、その結果、高いTaN/Cuエッチング選択性が得られた。言い換えると、FE-3は、前記エッチングプロセスの過程で、効果的にTaNを除去することができ、同時に、半導体基板上の曝露されたCuの除去は最小限に抑えられた。
【0060】
例2
製剤例5~11(FE-5~FE-11)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表2にまとめる。
【0061】
【0062】
表2に示されるように、FE-9(錯化剤としてグリセロールを含有)及びFE-10(錯化剤として酒石酸二アンモニウム塩を含有)は、低いTa及びTaNエッチング速度、並びに低いTa/Cu及びTaN/Cuエッチング選択性を呈した。対照的に、FE-5~FE-7(錯化剤としてシュウ酸を含有)、FE-8(錯化剤としてクエン酸を含有)、及びFE-11(錯化剤として2-ヒドロキシ安息香酸を含有)は、驚くべきことに、高いTa及びTaNエッチング速度、並びに低いCuエッチング速度を呈し、その結果、高いTa/Cu及びTaN/Cuエッチング選択性が得られた。言い換えると、これら3つの製剤は、前記エッチングプロセスの過程で、効果的にTa及びTaNを除去することができ、同時に、半導体基板上の曝露されたCuの除去は最小限に抑えられた。
【0063】
例3
製剤例12~16(FE-12~FE-16)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤、試験結果を表3にまとめる。
【0064】
【0065】
表3に示されるように、FE-12~FE-16(logPが0よりも大きい疎水性溶媒(すなわち、ジプロピレングリコールジメチルエーテル又はベンジルアルコール)含有)は、Cuに対する低いエッチング速度、並びに許容されるTa/Cu及び/又はTaN/Cuエッチング選択性を呈した。言い換えると、これらのデータは、前記エッチングプロセスの過程で、疎水性溶媒がCuの腐食を阻害することができることを示唆している。
【0066】
例4
製剤例17~19(FE-17~FE-19)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表4にまとめる。
【0067】
【0068】
表4に示されるように、FE-17~FE-18(スルホン酸含有)は、FE-19(スルホン酸非含有)と比較して、比較的高いTaNエッチング速度を呈した。
【0069】
例5
製剤例20~24(FE-20~FE-24)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表5にまとめる。
【0070】
【0071】
表5に示されるように、FE-20~FE-24(スルホン酸含有)は、比較的高いTaNエッチング速度、比較的低いCuエッチング速度、及び比較的高いTaN/Cuエッチング選択性を呈した。
【0072】
例6
製剤例25~27(FE-25~FE-27)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表6にまとめる。
【0073】
【0074】
表6に示されるように、FE-25からFE-27においてベンジルアルコールの量が増加すると、それらのCuエッチング速度が低下した。
【0075】
例7
製剤例28~34(FE-28~FE-34)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表7にまとめる。
【0076】
【0077】
表7に示されるように、FE-28~FE-30、及びFE-32(各々、0未満のlogP値を有する溶媒を含有)は、比較的低いCuエッチング速度を呈したが、同時にTaNエッチング速度も比較的低かった。他方、FE-31及びFE-33(各々、0より大きいlogP値を有する溶媒を含有)は、比較的低いCuエッチング速度を呈したが、TaNエッチング速度は比較的高く、したがって、比較的高いTaN/Cuエッチング選択性が得られた。
【0078】
さらに、これらの結果は、FE-28~FE-33(各々アルコール溶媒を含有)が、FE-34(アルコール溶媒非含有)よりも低いTaNエッチング速度を呈したことも示している。理論に束縛されるものではないが、アルコールの存在が、エッチング組成物のTaNエッチング速度を低下させる可能性があると考えられる。
【0079】
例8
製剤例35~39(FE-35~FE-39)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表8にまとめる。
【0080】
【0081】
表8に示されるように、FE-35~FE-37(各々、0未満のlogP値を有する溶媒を含有)は、比較的低いTaN/Cuエッチング選択性を呈した。他方、FE-36(0より大きいlogP値を有する溶媒を含有)は、比較的低いCuエッチング速度を呈したが、TaNエッチング速度は比較的高く、したがって、比較的高いTaN/Cuエッチング選択性を得た。加えて、FE-38及びFE-39(各々、酢酸以外の有機溶媒を非含有)も、比較的高いTaN/Cuエッチング選択性を呈した。
【0082】
例9
製剤例40~43(FE-40~FE-43)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表9にまとめる。
【0083】
【0084】
表9に示されるように、FE-40~FE-43はすべて、高いTa/Cu及びTaN/Cuエッチング選択性を呈した。しかし、4つの製剤はすべて、SiO2(誘電体材料)に対して比較的高いエッチング速度を呈した。他方、FE-42及びFE-43にH2SiF6を含めることで、それらのSiO2エッチング速度を大きく高めることなく、それらのTaNエッチング速度が大きく向上され、それによって、TaN/SiO2エッチング選択性が向上される結果となった。
【0085】
例10
製剤例44~45(FE-44~FE-45)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3aに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表10にまとめる。
【0086】
【0087】
表10に示されるように、FE-45は、比較的高いTa/Cu及びTaN/Cuエッチング選択性を呈した。加えて、FE-45は、酸化剤(すなわち、硝酸)をまったく含んでいなかったが、それでも、比較的高いTaN/Cuエッチング選択性を呈した。
【0088】
例11
製剤例46~49(FE-46~FE-49)を、一般手順1に従って作製し、一般手順2及び3bに従って評価した。前記製剤及び試験結果を表11にまとめる。
【0089】
【0090】
表11に示されるように、FE-46~FE-49は、酸化剤(すなわち、硝酸)をまったく含まなかったが、それでも、比較的高いTaN/Cuエッチング選択性を呈し、パターン化ウェハの前記TaN層を除去することができた。
【0091】
本発明をそのある特定の実施形態を参照して詳細に記載してきたが、改変及び変更が、記載され請求される本発明の趣旨及び範囲内であることは理解される。
本開示は、以下の実施形態を含む。
<1> a)フッ化水素酸;
b)カルボン酸を含む少なくとも1種の第一の溶媒;
c)少なくとも1種の酸化剤;及び
d)ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤、
を含む、エッチング組成物。
<2> 前記フッ化水素酸が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、前記<1>に記載の組成物。
<3> 少なくとも1種の第一の溶媒が、R-COOHを含み、Rは、H又はC1~C6アルキルである、前記<1>に記載の組成物。
<4> 前記少なくとも1種の第一の溶媒が、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、吉草酸、又はカプロン酸を含む、前記<1>に記載の組成物。
<5> 前記少なくとも1種の第一の溶媒が、前記組成物の約70重量%~約99.9重量%の量で存在する、前記<1>に記載の組成物。
<6> 前記少なくとも1種の酸化剤が、硝酸、KMnO4、H2O2、H5IO5、又はNaClO4を含む、前記<1>に記載の組成物。
<7> 前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量で存在する、前記<1>に記載の組成物。
<8> 前記少なくとも1種の錯化剤が、シュウ酸、クエン酸、又は2-ヒドロキシ安息香酸を含む、前記<1>に記載の組成物。
<9> 前記少なくとも1種の錯化剤が、前記組成物の約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、前記<1>に記載の組成物。
<10> 少なくとも1種のヘキサフルオロシリケート化合物をさらに含む、前記<1>に記載の組成物。
<11> 前記少なくとも1種のヘキサフルオロシリケート化合物が、H2SiF6、Na2SiF6、K2SiF6、又は(NH4)2SiF6を含む、前記<10>に記載の組成物。
<12> 前記少なくとも1種のヘキサフルオロシリケート化合物が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、前記<10>に記載の組成物。
<13> 少なくとも1種のスルホン酸をさらに含む、前記<1>に記載の組成物。
<14> 前記少なくとも1種のスルホン酸が、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸を含む、前記<13>に記載の組成物。
<15> 前記少なくとも1種のスルホン酸が、前記組成物の約0.1重量%~約10重量%の量で存在する、前記<13>に記載の組成物。
<16> 有機溶媒及び無機溶媒から成る群より選択される少なくとも1種の第二の溶媒をさらに含む、前記<1>に記載の組成物。
<17> 前記少なくとも1種の第二の溶媒が、水を含む、前記<16>に記載の組成物。
<18> 前記水が、前記組成物の約0.01重量%~約10重量%の量で存在する、前記<17>に記載の組成物。
<19> 前記少なくとも1種の第二の溶媒が、0よりも大きい分配係数(logP)を有する有機溶媒を含む、前記<16>に記載の組成物。
<20> 前記有機溶媒が、アルコール又はエーテルを含む、前記<19>に記載の組成物。
<21> 前記有機溶媒が、アルコール又はアルキレングリコールエーテルを含む、前記<19>に記載の組成物。
<22> 前記有機溶媒が、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、又はジプロピレングリコールジメチルエーテルを含む、前記<19>に記載の組成物。
<23> 前記有機溶媒が、前記組成物の約0.1重量%~約20重量%の量で存在する、前記<16>に記載の組成物。
<24> 少なくとも1種の界面活性剤をさらに含む、前記<1>に記載の組成物。
<25> 前記少なくとも1種の界面活性剤が、非イオン性界面活性剤を含む、前記<24>に記載の組成物。
<26> 前記少なくとも1種の界面活性剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、前記<24>に記載の組成物。
<27> 約1以下のpHを有する、前記<1>に記載の組成物。
<28> Ta又はTaNを含有する半導体基板を、前記<1>に記載の組成物と接触させて、前記Ta又はTaNを除去することを含む、方法。
<29> 前記接触工程の後に、前記半導体基板をリンス溶媒によってリンスすることをさらに含む、前記<28>に記載の方法。
<30> 前記リンス工程の後に、前記半導体基板を乾燥することをさらに含む、前記<29>に記載の方法。
<31> 前記半導体基板上のCu又は誘電体材料を実質的に除去しない、前記<28>に記載の方法。
<32> 半導体デバイスである、前記<28>に記載の方法によって形成された物品。<33> 前記半導体デバイスが、集積回路である、前記<32>に記載の物品。
<34> a)フッ化水素酸;
b)カルボン酸を含む少なくとも1種の第一の溶媒;及び
c)ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸から成る群より選択される少なくとも1種の錯化剤、
を含む、エッチング組成物。