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特開2023-182776外科手術ロボットアームへの電力供給
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182776
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】外科手術ロボットアームへの電力供給
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20231219BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177826
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2021568151の分割
【原出願日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】2006046.3
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516210894
【氏名又は名称】シーエムアール・サージカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CMR SURGICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン、トーマス、ディーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外科手術ロボットシステムのための制御システムを提供する。
【解決手段】外科手術ロボットシステムが、外科医入力装置を有する遠隔外科医コンソールと、外科手術ロボットアームと、を備え、外科手術ロボットアームが、基部から、外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを備え、外科手術ロボットアームが、外科手術ロボットアームのジョイントが第1の電源によって電力供給される全電力モード601、および外科手術ロボットアームのジョイントが第2の電源によって電力供給される低減電力モードで動作可能である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術ロボットシステムのための制御システムであって、前記外科手術ロボットシステムが、外科医入力装置を有する遠隔外科医コンソールと、外科手術ロボットアームと、を備え、前記外科手術ロボットアームが、(i)基部から、外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイント、および(ii)モータのセットであって、前記モータの各々が、前記ジョイントのうちの1つ以上を駆動するように構成されている、モータのセット、を備え、前記外科手術ロボットアームが、前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを駆動する前記モータが第1の電源によって電力供給される全電力モード、および前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを駆動する前記モータが第2の電源によって電力供給される低減電力モードで動作可能であり、前記制御システムが、
前記外科手術ロボットアームが前記全電力モードで動作している間に、前記外科手術ロボットアームのジョイントを駆動するように構成された前記モータを使用して、前記外科医入力装置からの入力を、前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを移動させるための制御信号に変換することによって、前記外科手術ロボットアームを外科手術モードで制御すること、
前記第1の電源の電力障害を検出すること、
前記電力障害を検出することに応答して、前記低減電力モードを有効にし、前記外科手術ロボットアームのジョイントを駆動するように構成された前記モータを使用して、前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントをロックするための制御信号を送信することによって、前記外科手術ロボットアームをロックモードで制御すること、
前記低減電力モードの間に、前記電力障害の停止を検出すること、および
前記電力障害の前記停止を検出することに応答して、前記低減電力モードを無効にし、前記全電力モードを再度有効にして、前記外科手術ロボットアームを前記外科手術モードで制御すること、を行うように構成されている、制御システム。
【請求項2】
前記外科手術モードにおいて、前記電力障害の前および前記電力障害の停止後の両方で、前記外科手術器具と記憶された支点との間の交差を維持するための制御信号を送信するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記記憶された支点が、前記外科手術器具が患者の身体内のポートの内側にある間に前記外科手術ロボットアームの前記構成が変更されるときに、周りで前記外科手術器具が枢動する点である、請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御システムが、前記低減電力モードの間に、前記記憶された支点をメモリに記憶し、前記電力障害後に前記外科手術モードへと戻る際に前記記憶された支点を前記メモリから検索するように構成されている、請求項1または2に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1の電源が、主要な電力供給(mains power supply)である、先行請求項のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記主要な電力供給が、前記遠隔外科医コンソールを介して前記外科手術ロボットアームに提供される、請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記第2の電源が、バッテリを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記バッテリが、再充電可能である、請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記第2の電源が、さらなるバッテリを含む、請求項7に記載の制御システム。
【請求項10】
前記さらなるバッテリが、非再充電可能である、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記電力障害の前記停止を検出することに応答して、
前記第2の電源から利用可能なバッテリ容量の閾値を超えているかどうかを決定することと、
前記第2の電源から利用可能な前記バッテリ容量の閾値を超えていると決定した場合にのみ、前記外科手術ロボットアームを前記外科手術モードで制御することと、を行うように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記第2の電源から利用可能な前記バッテリ容量の閾値未満であると決定した場合に、前記外科手術ロボットアームをロックモードに維持するように構成されている、請求項11に記載の制御システム。
【請求項13】
前記第2の電源の出力電圧、電流、または電力の測定値から、前記第2の電源から利用可能な前記バッテリ容量の残りを推定するように構成されている、請求項11または12に記載の制御システム。
【請求項14】
前記第2の電源から利用可能なバッテリ容量の第2の閾値以下であると決定したことに応答して、前記外科手術ロボットアームに対して警報を発するように構成されている、請求項11~13のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項15】
前記第2の電源から利用可能なバッテリ容量の第2の閾値以下であると決定したことに応答して、前記遠隔外科医コンソールに警報信号を送信するように構成されている、請求項11~14のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項16】
前記低減電力モードの間、
前記外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具が、患者の身体内に位置するかどうかを決定すること、および
前記外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具が前記患者の身体内に位置しないと決定した場合に、前記制御システムが前記外科手術ロボットアームに対する検知された外力に、前記検知された外力に適合するように前記外科手術ロボットアームのジョイントを移動させるための制御信号を送信することによって応答する、較正モードで前記外科手術ロボットアームを制御することによって、較正モードに変更するための入力に応答するように構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項17】
外科手術器具が前記患者の身体内に位置すると決定した場合に、前記器具を前記患者の身体内の前記ポート内へとさらに挿入させることになる、前記外科手術ロボットアームの移動を防止するように、前記外科手術ロボットアームを制御するように構成されている、請求項16に記載の制御システム。
【請求項18】
前記制御システムが、電力障害を検出し、電力障害後の電力の回復を検出し、前記全電力モードおよび前記低減電力モードを有効および無効にするように構成されたロボットアームコントローラを備える、先行請求項のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項19】
前記ロボットアームコントローラが、前記外科手術ロボットアームに一体化されている、請求項18に記載の制御システム。
【請求項20】
前記外科手術ロボットアームが、支持構造上に装着され、前記ロボットアームコントローラが、前記支持構造に一体化されている、請求項18に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
外科手術を補助および実施するためにロボットを使用することが知られている。図1は、典型的な外科手術ロボットシステムを例示する。外科手術ロボット100は、基部102、アーム104、および器具106からなる。基部は、ロボットを支持し、それ自体が、例えば、手術室の床、手術室の天井、またはカートにしっかりと取り付けられ得る。アームは、基部と器具との間に延在する。アームは、その長さに沿って、外科手術器具を患者に対して所望の場所に位置特定するために使用される複数の可撓性ジョイント108によって関節式に連結される。外科手術器具は、ロボットアームの遠位端に取り付けられる。外科手術器具は、外科手術部位にアクセスするように、ポートで患者の身体を貫通する。外科手術器具は、接合された関節によって遠位エンドエフェクタ110に接続されたシャフトを備える。エンドエフェクタは、外科手術手技に従事する。図1では、例示のエンドエフェクタは、一対の顎である。外科医は、遠隔外科医コンソール112を介して外科手術ロボット100を制御する。外科医コンソールは、1つ以上の外科医入力装置114を備える。これらは、ハンドコントローラまたはフットペダルの形態を取り得る。外科医コンソールはまた、ディスプレイ116を備える。
【0002】
制御システム118は、外科医コンソール112を外科手術ロボット100に接続する。制御システムは、外科医入力装置から入力を受信し、これらをロボットアーム104のジョイントおよびエンドエフェクタ110を移動させるための制御信号に変換する。制御システムは、これらの制御信号をロボットに送信する。それに応じて、ロボットアーム104上のジョイントコントローラは、ジョイント108を駆動して移動させる。
【0003】
ロボットアーム104のジョイントを駆動するための電力は、電力ケーブルを介して外科医コンソール112からロボットアームに提供される。電力障害の場合に、ロボットアーム104のジョイントを定位置に保持するため、および外科手術器具106を手動で患者から取り外すために、機械式ブレーキを使用することが知られている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様によれば、外科手術ロボットシステムのための制御システムであって、外科手術ロボットシステムが、外科医入力装置を有する遠隔外科医コンソールと、外科手術ロボットアームと、を備え、外科手術ロボットアームが、基部から、外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイントを備え、外科手術ロボットアームが、外科手術ロボットアームのジョイントが第1の電源によって電力供給される全電力モード、および外科手術ロボットアームのジョイントが第2の電源によって電力供給される低減電力モードで動作可能であり、制御システムが、外科手術ロボットアームが全電力モードで動作している間に、外科医入力装置からの入力を、外科手術ロボットアームのジョイントを移動させるための制御信号に変換することによって、外科手術ロボットアームを外科手術モードで制御すること、第1の電源の電力障害を検出すること、電力障害を検出することに応答して、低減電力モードを有効にし、外科手術ロボットアームのジョイントをロックするための制御信号を送信することによって、外科手術ロボットアームをロックモードで制御すること、低減電力モードの間に、電力障害の停止を検出すること、および電力障害の停止を検出することに応答して、低減電力モードを無効にし、全電力モードを再度有効にして、外科手術ロボットアームを外科手術モードで制御すること、を行うように構成されている、制御システムが提供される。
【0005】
制御システムは、外科手術モードにおいて、電力障害の前および電力障害の停止後の両方で、制御信号が外科手術器具と記憶された支点との間の交差を維持するように構成され得る。
【0006】
記憶された支点は、外科手術器具が患者の身体内のポートの内側にある間に外科手術ロボットアームの構成が変更されるときに、周りで外科手術器具が枢動する点であってもよい。
【0007】
第1の電源は、主要な電力供給(mains power supply)であってもよい。
【0008】
主要な電力供給は、遠隔外科医コンソールを介して外科手術ロボットアームに提供され得る。
【0009】
第2の電源は、バッテリを含み得る。
【0010】
バッテリは、再充電可能であってもよい。
【0011】
第2の電源は、さらなるバッテリを含み得る。
【0012】
さらなるバッテリは、非再充電可能であってもよい。
【0013】
制御システムは、電力障害の停止を検出することに応答して、第2の電源から利用可能なバッテリ容量の閾値を超えているかどうかを決定することと、第2の電源から利用可能なバッテリ容量の閾値を超えていると決定した場合にのみ、外科手術ロボットアームを外科手術モードで制御することと、を行うことができる。
【0014】
制御システムは、第2の電源から利用可能なバッテリ容量の閾値未満であると決定した場合に、外科手術ロボットアームをロックモードに維持することができる。
【0015】
制御システムは、第2の電源の出力電圧、電流、または電力の測定値から、第2の電源から利用可能なバッテリ容量の残りを推定することができる。
【0016】
制御システムは、第2の電源から利用可能なバッテリ容量の第2の閾値以下であると決定したことに応答して、外科手術ロボットアームに対して警報を発することができる。
【0017】
制御システムは、第2の電源から利用可能なバッテリ容量の第2の閾値以下であると決定したことに応答して、遠隔外科医コンソールに警報信号を送信することができる。
【0018】
制御システムは、低減電力モードの間、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具が、患者の身体内に位置するかどうかを決定すること、および外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具が患者の身体内に位置しないと決定した場合に、制御システムが外科手術ロボットアームに対する検知された外力に、検知された外力に適合するように外科手術ロボットアームのジョイントを移動させるための制御信号を送信することによって応答する、較正モードで外科手術ロボットアームを制御することによって、較正モードに変更するための入力に応答することができる。
【0019】
制御システムは、外科手術器具が患者の身体内に位置すると決定した場合に、器具を患者の身体のポート内へとさらに挿入させることになる、外科手術ロボットアームの移動を防止するように、外科手術ロボットアームを制御することができる。
【0020】
制御システムは、電力障害を検出し、電力障害後の電力の回復を検出し、全電力モードおよび低減電力モードを有効および無効にするように構成されたロボットアームコントローラを備え得る。
【0021】
ロボットアームコントローラは、外科手術ロボットアームに一体化され得る。
【0022】
外科手術ロボットアームは、支持構造上に装着され得、ロボットアームコントローラは、支持構造に一体化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで、添付図面を参照して、本発明を例として説明する。図は、以下の通りである。
図1】外科手術手技を実施するための外科手術ロボットシステムを例示する。
図2】外科手術ロボットアームを例示する。
図3図2の外科手術ロボットアームのジョイントの分解図を例示する。
図4】外科手術ロボットシステムの制御システムを例示する概略図である。
図5】外科手術ロボットアームの動作モード、および動作モード間で許容される遷移を例示する。
図6】電力障害中のロボットアームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図7】電力障害中のロボットアームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図8】電力障害中のロボットアームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図9】電力障害中のロボットアームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図10】電力障害中のロボットアームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図11】電力障害中のロボットアームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
図12】電力障害中のロボットアームコントローラの制御方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、図1に例示されるタイプの外科手術ロボットシステムを説明する。外科手術ロボットシステムは、遠隔外科医コンソールとともに、1つ以上の外科手術ロボットアームおよび外科手術器具を備える。遠隔外科医コンソールは、制御システムを介して外科手術ロボットアームに接続される。制御システムは、外科手術ロボットアームから遠隔に位置する中央コントローラを含む。制御システムはまた、外科手術ロボットアームごとに、その外科手術ロボットアームと同じ場所に位置する、ロボットアームコントローラを含み得る。
【0025】
以下に記載される制御システムおよび方法は、外科手術部位で患者の組織を操作するためのエンドエフェクタをその遠位端に有する外科手術器具を保持する外科手術ロボットアームに対してそのように行われる。エンドエフェクタは、例えば、一対の顎、メス、縫合針などであってもよい。しかしながら、同じ外科手術ロボットアーム、制御システムおよび方法は、外科手術部位のビデオフィードをキャプチャするためのカメラをその遠位端に有する内視鏡である外科手術器具に等しく適用される。
【0026】
図2は、例示的な外科手術ロボット200を例示する。ロボットは、外科手術手技が実施されるときに定位置に固定される基部201を備える。好適には、基部201は支持構造に装着される。図2では、支持構造はカート210である。このカートは、ロボットをベッドの高さに装着するためのベッドサイドカートであってもよい。代替的に、支持構造は、天井に装着された装置、またはベッドに装着された装置であってもよい。
【0027】
ロボットアーム202は、ロボットの基部201から外科手術器具204に取り付けるための末端部203まで延在する。アームは、可撓性である。アームは、その長さに沿って複数の可撓性ジョイント205によって関節式に連結される。ジョイント間にあるのは、剛性アームリンク206である。好適には、ジョイントは外旋ジョイントである。ロボットアームは、基部と末端部との間に少なくとも7つのジョイントを有する。図2に例示されるロボットアーム200は、基部201と末端部203との間に合計で8つのジョイントを有する。図2に例示されるロボットアームは、基部と末端部との間に8つのジョイントのみを有する。ジョイントは、1つ以上のロールジョイント(ジョイントのいずれかの側上のアームリンクの長手方向に沿った回転軸を有する)、1つ以上のピッチジョイント(前のアームリンクの長手方向に対して横方向の回転軸を有する)、および1つ以上のヨージョイント(また、前のアームリンクの長手方向に対して横方向であり、かつ同じ場所に位置するピッチジョイントの回転軸に対しても横方向の回転軸を有する)を含む。図2の実施例では、ジョイント205a、205c、205e、および205hはロールジョイントであり、ジョイント205b、205d、および205fはピッチジョイントであり、ジョイント205gはヨージョイントである。ロボットアームの基部201からロボットアームの末端部203までの連続的なジョイントの順番は、ロール、ピッチ、ロール、ピッチ、ロール、ピッチ、ヨー、ロールである。図2には介在するジョイントはない。
【0028】
図2の外科手術ロボットアームのジョイントを図3に例示する。ロボットアームは、8つのジョイントによって関節式に連結される。ロールジョイントJ 205aは、基部201に隣接し、その後にピッチジョイントJ 205bが続く。ピッチジョイントJは、ロールジョイントJの回転軸と直角をなす回転軸を有する。ロールジョイントJ 205cは、ピッチジョイントJに隣接し、その後にピッチジョイントJ 205dが続く。ピッチジョイントJは、ロールジョイントJの回転軸と直角をなす回転軸を有する。ロールジョイントJ 205eは、ピッチジョイントJに隣接し、その後にピッチジョイントJ 205fおよびヨージョイントJ 205gが続き、その後にロールジョイントJ 205hが続く。ピッチジョイントJおよびヨージョイントJは、球面ジョイントであってもよい複合ジョイントを形成する。ピッチジョイントJおよびヨージョイントJは、交差する回転軸を有する。
【0029】
基部の遠位にあるロボットアームの端部は、アームのジョイントのうちの1つ以上の移動によって基部に対して関節式に連結され得る。遠位ジョイントJ、J、J、およびJのセットの回転軸は、すべて外科手術ロボットアーム上の点で交差する。手首に対する参照を行う。好適には、手首は、器具がロボットアームに取り付けられるときに、その器具の遠位端にしっかりと結合される、ロボットアームの一部分である。手首は、位置および配向を有する。例えば、手首の位置は、J、J、J、およびJの回転軸の交点であってもよい。代替的に、手首の位置は、器具の1つ以上のジョイントの回転軸の交点であってもよい。代替的に、手首の位置は、ロボットアームの1つ以上の遠位ジョイントの回転軸と、器具の1つ以上のジョイントの回転軸との交点であってもよい。図2および図3に例示される外科手術ロボットアームは、冗長ジョイントを有する。外科手術ロボットアームの基部に対する手首の所与の位置に対して、2つ以上のジョイントJ1~の構成がある。したがって、外科手術ロボットアームは、同じ手首位置を維持しながら、異なる姿勢をとることができる。
【0030】
外科手術ロボットアームは、図2および図3に例示されるものとは別様に接合されてもよい。例えば、アームは、8つより少ないかまたは8つより多いジョイントを有する場合がある。アームは、ジョイント、例えば、テレスコピックジョイントのそれぞれの側面の間の回転以外の動きを許容するジョイントを含み得る。
【0031】
図2に戻ると、外科手術ロボットアームは、モータ207のセットを備える。各モータ207は、ジョイント205のうちの1つ以上を駆動する。各モータ207は、ジョイントコントローラによって制御される。ジョイントコントローラは、モータ207と同じ場所に位置してもよい。ジョイントコントローラは、モータ207のうちの1つ以上を制御し得る。ロボットアームは、一連のセンサ208、209を備える。これらのセンサは、ジョイントごとに、ジョイントの位置を検知するための位置センサ208、およびジョイントの回転軸の周りに加えられたトルクを検知するためのトルクセンサ209を備える。ジョイントの回転軸の周りに加えられるトルクは、以下の成分のうちのいずれか1つまたは組み合わせを含む。ジョイントに作用する重力に起因するトルク、慣性に起因するトルク、およびジョイントに加えられた外力に起因するトルク。ジョイントの位置センサおよびトルクセンサのうちの一方または両方を、そのジョイントのモータと一体化させることができる。センサの出力は、制御システムに渡される。
【0032】
外科手術器具204は、ロボットアーム203の末端部で駆動アセンブリに取り付けられる。この取付点は、常に患者の外部にある。外科手術器具204は、細長いプロファイルを有し、ロボットアームに取り付けられるその近位端と患者の身体内の外科手術部位にアクセスするその遠位端との間にシャフトの広がりがある。外科手術器具は、アームのジョイント205hの回転軸と直線的に平行に延在するように構成されてもよい。例えば、外科手術器具は、アームのジョイント205hの回転軸と一致する軸に沿って延在してもよい。
【0033】
外科手術器具の近位端および器具シャフトは、互いに対して剛性であり、ロボットアームの遠位端に取り付けられたとき、ロボットアームの遠位端に対して剛性であってもよい。中を通ってポートが挿入される切開部が患者の身体内に作られる。外科手術器具は、外科手術部位にアクセスするように、ポートを通して患者の身体を貫通し得る。代替的に、外科手術器具は、身体の自然なオリフィスを通して身体を貫通して、外科手術部位にアクセスしてもよい。器具の近位端で、シャフトは器具インターフェースに接続されている。器具インターフェースは、ロボットアームの遠位端で駆動アセンブリと係合する。具体的には、器具インターフェースの個々の器具インターフェース要素は各々、駆動アセンブリのそれぞれの個々の駆動アセンブリインターフェース要素と係合する。器具インターフェースは、駆動アセンブリと取り外し可能に係合可能である。器具は、ツールを必要とせずに、手動でロボットアームから取り外され得る。これにより、手術中に器具を駆動アセンブリから迅速に取り外し、別の器具を取り付けることが可能になる。
【0034】
外科手術器具の遠位端では、器具シャフトの遠位端は、関節式に連結されたカップリングによってエンドエフェクタに接続される。エンドエフェクタは、外科手術部位で外科手術手技に従事する。エンドエフェクタは、例えば、一対の顎、一対の単極はさみ、針ホルダ、有窓把持器、またはメスであってもよい。関節式に連結されたカップリングは、数個のジョイントを含む。これらのジョイントは、エンドエフェクタの姿勢を、器具シャフトの方向に対して変更することを可能にする。エンドエフェクタ自体もまた、ジョイントを含んでもよい。図2および図3に例示されるエンドエフェクタは、一対の対向するエンドエフェクタ要素307、308の対を有する。エンドエフェクタのジョイントは、ピッチジョイント301、ヨージョイント302、およびピンチジョイント303として図3に例示されている。ピッチジョイント301は、器具のシャフトに隣接し、器具シャフトの長手方向軸と直角をなす軸を中心として回転する。ヨージョイント302は、ピッチジョイント301の回転軸と直角をなす回転軸を有する。ピンチジョイント303は、エンドエフェクタ要素の広がりを決定する。実際には、ピンチジョイント303は、ヨージョイント302と同じ回転軸を有する別のヨージョイントであってもよい。2つのヨージョイント302、303の独立した動作は、エンドエフェクタ要素を、互いに対して同時にヨーさせ、および/または開閉させ得る。
【0035】
駆動は、ロボットアームからエンドエフェクタまで任意の好適な様式で伝達される。例えば、器具のジョイントは、ケーブル、プッシュロッドまたはプッシュ/プルロッドなどの駆動要素によって駆動されてもよい。これらの駆動要素は、器具の近位端で器具インターフェースと係合する。ロボットアームの末端部にある駆動アセンブリは、駆動を、上述のそれぞれのインターフェース要素を介して外科手術ロボットアームから器具インターフェースに、そしてそれによって器具ジョイントに伝達する器具駆動ジョイントを備える。これらの器具駆動ジョイントは、ジョイントJ、J10、およびJ11として図3に示される。図3は、3つの器具駆動ジョイントを例示しており、器具駆動ジョイントの各々は、器具の3つのジョイントのうちの1つを駆動する。
【0036】
好適には、器具駆動ジョイントは、それによって駆動が器具ジョイントに伝達される唯一の手段である。ロボットアームは、3つより多いか3つより少ない器具駆動ジョイントを有してもよい。外科手術器具は、3つより多いか3つより少ないジョイントを有してもよい。器具駆動ジョイントは、図3に示すように、駆動する器具ジョイントに対して一対一のマッピングを有し得る。代替的に、器具駆動ジョイントは、2つ以上の器具ジョイントを駆動してもよい。
【0037】
外科医コンソールは、外科手術ロボットシステムの1つ以上の外科手術ロボットアームから遠隔に位置する。外科医コンソールは、1つ以上の外科医入力装置およびディスプレイを備える。各外科医入力装置により、外科医は制御入力を制御システムに提供することが可能になる。外科医入力装置は、例えば、ハンドコントローラ、ペダルなどのフットコントローラ、指もしくは身体の別の部分によって制御されるタッチセンサ式入力、音声制御入力装置、視線制御入力装置、またはジェスチャ制御入力装置であってもよい。外科医入力装置は、外科医が個別に操作できる数個の入力を提供し得る。
【0038】
例えば、外科医入力装置は、例えば、ジンバル配置によって、外科医コンソールに接続されたハンドコントローラであってもよい。これにより、ハンドコントローラを外科医コンソールに対して3度の並進自由度で移動させることが可能になる。こうした移動は、器具のエンドエフェクタの対応する移動を命令するために使用され得る。ハンドコントローラはまた、外科医コンソールに対して回転されてもよい。こうした移動は、器具のエンドエフェクタの対応する回転を命令するために使用され得る。
【0039】
外科医コンソールは、2つ以上の外科医入力装置を備えてもよい。各外科医入力装置は、異なる外科手術器具を制御するために使用され得る。したがって、例えば、外科医は、自身の左手でハンドコントローラを使用して1つの外科手術器具を制御し、自身の右手でハンドコントローラを使用して別の外科手術器具を制御し得る。
【0040】
制御システムは、外科医コンソールを1つ以上の外科手術ロボットに接続する。こうした制御システムを図4に例示する。外科医コンソール401は、中央コントローラ402への双方向通信リンクによって接続される。具体的には、外科医コンソール401の外科医入力装置は、中央コントローラ402に通信可能に結合される。中央コントローラ402は、外科手術ロボットシステムの各外科手術ロボットアームのアームコントローラ403、404、405への双方向通信リンクによって接続される。各アームコントローラは、外科手術ロボットアームと同じ場所に位置する。アームコントローラは、外科手術ロボットアーム内に位置し得る。代替的に、アームコントローラは、外科手術ロボットアームを支持する支持構造内、例えば、アームのカート内に位置し得る。中央コントローラは、外科手術ロボットアームのうちの少なくとも1つから遠隔に位置する。好適には、中央コントローラは、外科手術ロボットシステム内のすべての外科手術ロボットアームから遠隔に位置する。中央コントローラは、外科医コンソールに位置してもよい。代替的に、中央コントローラは、アームコントローラのうちの1つと同じ場所に位置してもよい。中央コントローラは、外科医コンソールおよびすべてのアームコントローラの両方から遠隔に位置してもよい。
【0041】
中央コントローラは、プロセッサ406およびメモリ407を備える。メモリ407は、プロセッサ406によって実行され得るソフトウェアコードを非一時的な方法で記憶して、プロセッサに、本明細書に記載の様式で外科医コンソール、ならびに1つ以上の外科手術ロボットアームおよび器具を制御させる。
【0042】
アームコントローラの各々は、プロセッサ408およびメモリ409を備える。メモリ409は、プロセッサ408によって実行され得るソフトウェアコードを非一時的な方法で記憶して、プロセッサに、本明細書に記載の様式で外科医コンソール、ならびに1つ以上の外科手術ロボットアームおよび器具を制御させる。
【0043】
中央コントローラ402は、外科医入力装置からコマンドを受信する。外科医入力装置からのコマンドは、外科手術器具の遠位端の所望の位置および/または姿勢の変化を示す。制御システムは、外科医入力装置から受信したコマンドを駆動信号に変換する。この変換は、外科医入力装置に関連付けられた中央コントローラと外科手術ロボットアームの外科手術ロボットアームコントローラのうちの一方または組み合わせによって行われる。ロボットアームコントローラは、駆動信号を、外科医入力装置に関連付けられた外科手術ロボットアームおよび/または外科手術器具のジョイントコントローラに送信する。それに応じて、これらのジョイントコントローラは、ジョイントモータを駆動することによって応答する。ジョイントは、それによって、エンドエフェクタに外科医入力装置によって命令された所望の位置および/または姿勢をとらせるように駆動される。それによって、外科手術器具の操作は、外科医入力装置の操作に応答して制御システムによって制御される。
【0044】
制御システムは、外科手術ロボットアームのジョイント上の位置センサおよびトルクセンサからの入力を受信する。制御システムは、アーム内の既知のジョイントおよびリンクの配列、ならびに検知されたジョイント位置を使用して、外科手術ロボットアームの現在の構成を決定する。外科手術ロボットアームおよび取り付けられた外科手術器具の現在の構成、ならびにロボットアームおよび器具のリンクおよびジョイントの既知の質量および寸法から、制御システムは、各ジョイントに作用する重力に起因するトルクを決定する。制御システムは、重力を補償する駆動信号をロボットアームのジョイントコントローラに送信する。ジョイントコントローラは、各ジョイントに作用する重力の力に対抗するようにジョイントモータを駆動することによって応答する。言い換えれば、各ジョイントモータは、ジョイントに作用する計算された重力の力とは正反対のトルクを加える。外科医入力装置からのコマンドおよび/またはロボットアームに作用する外力(重力以外)が存在しない場合、ロボットアームは、それによって、重力に対して定位置に保持される。重力の力で垂れ下がることはない。実際には、制御システムによって、ジョイントモータを駆動するためのジョイントコントローラに送信される各駆動信号は、外科医入力装置から受信した入力に従ってジョイントを駆動する成分、および重力に対抗する成分に分解され得る。いくつかのモードでは、以下で考察されるように、駆動信号はまた、ロボットアームに加えられる外力に適合するようにジョイントを駆動する成分を含み得る。
【0045】
外科手術ロボットアームは、いくつかの異なる動作モードで動作可能である。図5は、外科手術ロボットアームのいくつかの例示的な動作モード、およびこれらの動作モード間で許容される遷移を例示する。
【0046】
図5は、較正モード501を例示する。較正モード501では、外科手術ロボットアームは、ロボットアームに加えられた外力に適合するように駆動される。具体的には、トルクセンサ209は、ロボットアームに加えられた外力を検出する。外力は、(例えば、ロボットアームを押し出すことによって)ロボットアームに力を加える、例えば、臨床チームのメンバであってもよい。上述のように、ジョイントの回転軸の周りで検知されるトルクは、以下の成分のうちのいずれか1つまたは組み合わせを含む。ジョイントに作用する重力に起因するトルク、慣性に起因するトルク、およびジョイントに加えられた外力に起因するトルク。制御システムは、重力および慣性に起因するトルクを、ジョイントの周りで検知されたトルクから差し引いて、外力に起因する、当該ジョイントの周りのトルクの成分を決定する。次いで、制御システムは、外力に適合するように、ジョイントを駆動するための駆動信号を決定する。制御システムは、駆動信号を、当該ジョイントを制御するジョイントコントローラに送信する。ジョイントコントローラは、制御システムによって命令されるように、当該ジョイントのモータを制御して、ジョイントを駆動する。このようにして、外力がジョイントに加えられると、そのジョイントは、その力に準拠するように駆動される。したがって、ロボットアームは、オペレータによってロボットアームに加えられた力に準拠する。
【0047】
較正モード501では、上述のように、制御システムは、ロボットアームに作用する重力のトルクに対抗するように、ロボットアームを駆動する。したがって、較正モード501では、臨床チームのメンバは、ロボットアームの任意の部分を所望の位置に押し出すか、または引っ張ることによって、ロボットアームを定位置へと操作することができ、その部分は、ロボットアームおよびロボットアームに依存する任意の部分への重力の影響にもかかわらず、当該定位置にとどまる。
【0048】
較正モード501では、制御システムは、外科医入力装置の検出された操作を、ロボットアームのジョイントを移動するための駆動信号に変換しない。制御システムが外科医入力装置から受信するいずれの入力も、ロボットアームの移動に変換されない。
【0049】
較正モード501は、動作の開始前に、外科手術ロボットシステムのセットアップ中に主に使用される。例えば、外科手術器具が、較正モード501の間、ロボットアームに取り付けられていてもよく、臨床スタッフのメンバが、外科手術器具を、外科手術部位に到達させるために所望の方向に沿って、患者の身体内のポートに挿入するように、ロボットアームを操作することができる。ロボットアームおよびその支持構造が動作中に移動または再位置特定された場合、較正モード501を再び使用して、ロボットアームを定位置へと操作する。
【0050】
外科手術ロボットシステムのセットアップ中に、較正モードを使用して、仮想ピボット点を決定する。仮想ピボット点は、器具が患者の身体内を移動する際の、剛性シャフトを有するその器具の回転の自然な中心である。仮想ピボット点は、外科手術ロボットアームの構成が、患者の身体内のポートの内側にある間に変更されたときに、周りで外科手術器具が枢動する支点である。ポートは、患者の腹壁内に挿入される。ポートは、約2~10cmの長さである。器具は、ポートを通して患者の身体内に挿入される。仮想ピボット点は、ポートの長さに沿って置かれる。仮想ピボット点の正確な場所は、患者の解剖学的構造に依存し、したがって患者ごとに異なっている。
【0051】
仮想ピボット点は、以下の方法を使用して決定され得る。器具がポート内に位置する状態で、オペレータは、ロボットアームの遠位端を、器具シャフトに対して概して横方向に移動させる。この動きにより、ポートに、ポートを通過する所で器具シャフト上に横方向の力を加え、その結果、器具は、その軸が器具シャフトの長手方向軸に対して横方向であるアームのジョイント(この場合、ジョイントJ 205fおよびJ 205g)にトルクを加える。各アームジョイントの位置は、その関連する位置センサ208によって測定され、この検知された位置は、制御システムに出力される。各アームジョイントのトルクは、その関連するトルクセンサ209によって測定され、この検知されたトルクは、制御システムに出力される。したがって、オペレータがロボットアームの遠位端を横方向に移動させるにつれて、制御システムは、アームジョイント上の位置および力を示す検知された入力を受信する。その情報により、制御システムは、(a)固定された基部に対するロボットの遠位端の位置、および(b)ロボットの遠位端に対する器具シャフトのベクトルを推定することができる。器具シャフトはポートの通路を通過するため、ポートの通路はそのベクトルに沿って置かれる。ロボットアームの遠位端が移動するにつれて、コントローラは、遠位端位置および器具シャフトベクトルの複数の対を計算する。これらのベクトルはすべて、それぞれの遠位端位置から、ポートの通路にある仮想ピボット点の場所で収束する。一連のそれらのデータ対を収集し、次いで、器具シャフトベクトルが収束する平均の場所を解くことによって、制御システムは、基部に対する仮想ピボット点を決定する。
【0052】
仮想ピボット点は、較正モード501で決定されると、図5に例示した残りのモードに対して設定される。仮想ピボット点は、制御システムによって記憶される。図5に例示した他のモードの各々において、外科手術ロボットアームは、取り付けられた外科手術器具のシャフトの長手方向軸が仮想ピボット点と交差するように常に駆動される(器具が実際にロボットアームに取り付けられるか否かにかかわらず)。外科手術器具のシャフトの長手方向軸は、ロボットアームの末端部の長手方向軸と既知の関係を有する。例えば、図2に示されるように、外科手術器具のシャフトの長手方向軸は、ロボットアームの末端部の長手方向軸と一致し得る。
【0053】
較正モードから、外科手術ロボットアームは、ロックモード502に遷移することができる。ロックモード502では、制御システムは、外科手術ロボットアームを固定位置に保持する。その固定位置は、外科手術ロボットアームが較正モードからロックモード502に遷移した時点にあった位置である。ロックモードでは、制御システムは、(上述のように)重力を補償するようにロボットアームのジョイントを駆動する。そうでなければ、制御システムは、いかなる外科医入力装置の操作、またはロボットアームに加えられた外力も、ロボットアームのジョイントを駆動するための駆動信号に変換しない。
【0054】
ロックモード502から、外科手術ロボットアームは、器具調整モード503に遷移することができる。器具調整モード503では、制御システムは、(較正モードに関して上述したように)ロボットアームに加えられた外力に適合するように外科手術ロボットアームを駆動する一方で、外科手術器具のシャフトの長手方向軸と、較正モードで決定された仮想ピボット点との交差を保つ。器具調整モード503は、患者の身体内の器具の位置を調整するために使用され得る。例えば、器具調整モード503を使用することにより、臨床チームのメンバが、較正モードでの仮想ピボット点の設定の後に、エンドエフェクタが外科手術部位に到達するように、器具を患者の身体内に押し出すことを可能にすることができる。器具調整モード503では、制御システムは、(上述のように)重力を補償するようにロボットアームのジョイントを駆動する。器具調整モード503では、制御システムは、外科医入力装置のいかなる操作も、ロボットアームのジョイントを駆動するための駆動信号に変換しない。
【0055】
器具調整モード503から、外科手術ロボットアームは、外科手術モード504または器具変更モード505に遷移することができる。外科手術モード504では、制御システムは、外科医入力装置から受信した入力に対して、これらの入力を、(上述したように)その外科医入力装置に関連付けられた、外科手術ロボットアームおよび/または外科手術器具の動きを制御するための制御信号に変換することによって、応答する。外科手術器具のエンドエフェクタは、それによって、外科医入力装置が命令した通りに移動する。変換を実施する際、制御システムは、外科手術器具のシャフトの長手方向軸と仮想ピボット点との間の交差を維持する。
【0056】
外科手術モード504は、クラッチモードを含み得る。クラッチモードは、例えば、外科医入力装置に対する入力を介して、外科医コンソールによって開始され得る。代替的に、クラッチモードは、外科手術ロボットアーム、または外科手術ロボットアームが装着される支持部に対する入力によって開始され得る。クラッチモードでは、外科医入力装置の操作は、ロボットアームから一時的に接続解除される。クラッチモードに係合したことを示す入力を受信する際、制御システムは、外科医入力装置の操作を、ロボットアームのジョイントを駆動するための制御信号に変換しない。クラッチモードは、外科医入力装置の動きを外科手術器具のエンドエフェクタに伝達することなく、外科医入力装置を外科医入力装置の作業空間内のより快適な場所へと移動させるために、外科医によって使用される。クラッチモードはまた、外科医が別の外科医入力装置によって操作されている外科手術器具に集中している間に、1つの外科手術器具を一時的に係合解除するように外科医によって使用される。
【0057】
外科手術モード504は、半準拠モードであってもよい。言い換えれば、ロボットアームは、ロボットアームに加えられた外力に対して、何らかの準拠挙動を呈し得る。例えば、外科手術モード504では、制御システムは、肘ジョイント205d、およびアームの周囲のジョイントを駆動するモータを制御して、これらのジョイントを検知された外力に準拠するように駆動することによって、肘ジョイント205dの近位に加えられた、検知された外力に応答し得る。このようにして、臨床チームのメンバは、肘ジョイント205dまたは肘ジョイントの近位にあるアームの部分を邪魔にならないように押し出すことにより、これらが外科手術モード中に患者にアクセスすることを可能にすることができる。これを実装するために、制御システムは、準拠として指定されたロボットアームの1つ以上の部分に対する許容面積/体積を定義することができ、これにより、外部から加えられた力に応答するこれらの部分の移動は、許可面積/体積内に限られる。許容面積/体積は、その面積/体積内での移動が、外部から加えられた力に応答して、器具の構成に影響を与えないように定義される。ロボットアームは、制御システムが、準拠として指定された部分以外のロボットアームの任意の部分に加えられた外力に適合することによって応答しないため、外科手術モード504においてのみ半準拠である。
【0058】
外科手術モード504から、外科手術ロボットアームは、器具調整モード503または器具変更モード505に遷移することができる。器具変更モード505は、患者の身体から器具を取り外す、および/または患者の身体内に器具を挿入するために係合される。器具変更モード505では、制御システムは、外科手術ロボットアームに向かって、または外科手術ロボットアームから離れる方向に、外科手術器具の長手方向軸に沿ってロボットアームに加えられた、検知された外力の成分に適合するように、外科手術ロボットアームを駆動する。器具変更モード505では、制御システムは、外科手術器具のシャフトの長手方向軸と、較正モードにおいて決定された仮想ピボット点との交差を保つ。制御システムは、較正モードに関して上述したのと同じ様式で、検知された外力に適合し、唯一の違いは、(i)制御システムが、指定された方向において(すなわち、外科手術ロボットアームに向かって、または外科手術ロボットアームから離れる方向に外科手術器具の長手方向軸に沿って)検知された力の成分のみに適合すること、および(ii)制御システムが、外科手術器具と仮想ピボット点との交差を維持することである。
【0059】
外科手術器具を外科手術部位から取り外すときの動作終了時、または外科手術器具を別のものと交換するときの動作中に、臨床チームのメンバが器具変更モード505を使用することにより、メンバは器具を患者の身体から引っ張り出し、次いで、別の器具を患者の身体に挿入することができる。器具変更モード505では、制御システムは、外科手術ロボットアームに向かって、または外科手術ロボットアームから離れる方向に、外科手術器具の長手方向軸以外の任意の方向において臨床チームのメンバによって加えられた力が、外科手術ロボットアームの対応する移動に変換されることを防止する。したがって、臨床チームのメンバによって加えられた横方向の力は、外科手術ロボットアームの対応する移動には変換されない。これは、外科手術器具の抽出が、ポートと外科手術部位との間の入口の線に沿っており、それに伴って、この線から離れた組織への損傷を回避することを確実にする。
【0060】
器具変更モード505では、制御システムは、患者の身体に向かって外科手術器具の長手方向軸に沿って臨床チームのメンバによって加えられた力が、外科手術ロボットアームの対応する移動に変換されるのを制限する。この制限は、取り付けられた器具のエンドエフェクタが、器具変更モードに入った時点での器具のエンドエフェクタよりもさらに患者の身体内に前進することができないようなものである。この制限は、器具抽出中に器具変更モードに入った時点でアームに取り付けられたものと同じ器具に適用される。この制限は、器具変更後に患者の身体内に挿入される、新しく取り付けられる器具にも適用される。これは、外科手術器具を患者の身体内にさらに押し出し、外科手術部位への損傷を引き起こし得ないことを確実にする。
【0061】
器具変更モード505では、制御システムは、(上述のように)重力を補償するようにロボットアームのジョイントを駆動する。器具変更モード505では、制御システムは、外科医入力装置のいかなる操作も、ロボットアームのジョイントを駆動するための駆動信号に変換しない。
【0062】
器具変更モード505から、外科手術ロボットアームは、器具調整モード503または外科手術モード504に遷移することができる。
【0063】
ロックモード502、器具調整モード503、外科手術モード504、および器具変更モード505の各々から、外科手術ロボットアームは、待機モード506に遷移することができる。その待機モード506から、外科手術ロボットアームは、外科手術ロボットアームが前にいたロックモード、器具調整モード、外科手術モード、および器具変更モードのうちの1つに再び遷移することができる。待機モード506から、外科手術ロボットアームは、較正モード501に遷移することもできる。
【0064】
外科手術ロボットアーム、またはロボットアームが装着される支持構造は、1つ以上のインターフェースを備え得る。これらのインターフェースは、ボタンまたはボタンのセットであってもよい。インターフェースは、例えば、臨床チームのメンバによって作動して、図5に関して説明される動作モード間で遷移させることができる。外科医のコンソールは、図5に関して説明される動作モード間で遷移させるために、例えば、外科医によって作動され得る、1つ以上のインターフェースを備え得る。
【0065】
ジョイントを駆動するようにジョイントモータに電力供給するため、ならびにロボットアームコントローラおよびジョイントコントローラを含む、外科手術ロボットアーム内のすべての回路に電力供給するために、外科手術ロボットアームによって電力が必要とされる。外科手術ロボットアームは、概して、一次電源によって電力供給される全電力モードで動作する。この一次電源は、外科手術手技全体を通して外科手術ロボットアームの電力要件に耐えるのに十分である。例えば、一次電源は、電気の主要な電力供給などの電気供給であってもよい。電力は、外科医のコンソールを通して、一次電源から外科手術ロボットアームまでルーティングされ得る。
【0066】
外科手術ロボットアームはまた、二次電源によって電力供給される低減電力モードで動作可能であってもよい。この低減電力モードでは、外科手術ロボットアームのより少ない動作モードが使用のために利用可能である。図5を参照すると、ロックモード502、器具調整モード503、外科手術モード504、および器具変更モード505は、全電力モードでのみ利用可能であってもよい。これらは、低減電力モードでは利用可能ではない。較正モード501および待機モード506は、全電力モードで完全に利用可能であってもよく、かつ低減電力モードで部分的または完全に利用可能であってもよい。
【0067】
二次電源は、1つ以上のバッテリを含み得る。これらのバッテリは、外科手術ロボットアームに対して局所的であってもよい。例えば、1つ以上のバッテリの各々が、外科手術ロボットアーム自体の中に、または外科手術ロボットアームが装着される支持構造の中に位置し得る。二次電源は、2つのバッテリを含み得る。第1のバッテリは、再充電可能バッテリであってもよく、第2のバッテリは、非再充電可能バッテリであってもよい。第1のバッテリは、完全に充電されている場合、外科手術ロボットアームのモータを駆動して、少なくともN分間、重力に対して外科手術ロボットアームの位置を保持するのに十分な電力を提供することができる。例えば、5<N<30。例えば、N=5。第2のバッテリは、(以下に説明されるように)外科手術ロボットアームのモータを駆動して、少なくともT秒間、外科手術ロボットアームを保持するのに十分な電力を提供することができる。例えば、20<T<180。例えば、T=30。NおよびTは、バッテリが説明される電力をどのくらい長く提供することができるかの推定値である。これらの推定値は、バッテリの典型的な放電対時間のグラフ、または経時的なバッテリの理想的な放電の数学的モデルに基づき得る。各バッテリの残りのバッテリ寿命は、経時的なバッテリの電圧、電流、または電力出力を測定すること、ならびにこれらの電圧/電流/電力の読み取り値を電圧対バッテリ容量の典型的なバッテリ寿命グラフと比較することによって推定され得る。第1のバッテリの最大容量は、5000~6000mAhであってもよい。第2のバッテリの最大容量は、300~600mAhであってもよい。
【0068】
外科手術ロボットアームは、全電力モードで一次電源に接続されている場合にのみ、使用のために電力供給することができる。外科手術ロボットアーム上のロボットアームコントローラは、外科手術ロボットアームの機能に電力供給するのに十分な電力が一次電源から受信されていることを検出する。一次電源の電力障害を検出すると、ロボットアームコントローラは、外科手術ロボットアームを低減電力モードに切り替える。低減電力モードでは、ロボットアームコントローラは、二次電源から電力供給されるように外科手術ロボットアームを制御する。例えば、最初は、低減電力モードで、ロボットアームコントローラは、第1のバッテリから電力供給されるように外科手術ロボットアームを制御し得る。第1のバッテリが消耗した場合、ロボットアームコントローラは、第2のバッテリから電力供給されるように外科手術ロボットアームを制御し得る。ロボットアームコントローラは、電力障害を検出し、電力障害後の電力の回復を検出し、全電力モードおよび低減電力モードを有効および無効にすることができる。
【0069】
ここで、外科手術ロボットアームに対する電力障害の検出に応答して制御システムによって行われ得る制御方法を、図6図12を参照して説明する。好適には、これらの制御方法は、電力を損失した外科手術ロボットアームのロボットアームコントローラによって実施される。
【0070】
図6から始めると、ステップ601において、外科手術ロボットアームを、電力が一次電源によって外科手術ロボットアームに提供されている状態で、全電力モードで動作させる。ステップ602において、制御システムは、外科手術ロボットアームを外科手術モードで動作させる。ステップ603において、制御システムは、外科手術ロボットアームに対する電力障害が検出されたかどうかを決定する。電力障害が検出されなかった場合、制御システムは、ステップ602に戻り、そこで外科手術ロボットアームを外科手術モードで動作させ続ける。ステップ603において電力障害が検出された場合、制御システムは、ステップ604において低減電力モードを有効にし、ステップ605で待機モードに入ることによって応答する。待機モードは、ロックモードであり、ロックモードにおいて、制御システムは、制御信号をロボットアームのジョイントコントローラに送信し、ジョイントコントローラに、ジョイントモータを制御してジョイントを駆動するように命令し、それにより、外科手術ロボットアームのジョイントを適所に保持する。次いで、制御方法は、ステップ606に移動し、全電力が回復したかどうか、すなわち、電力障害が停止したかどうかを決定する。答えが「いいえ」であった場合、制御システムは、外科手術ロボットアームを待機モード605に保つ。答えが「はい」であった場合、制御システムは、ステップ607に移動する。ステップ607において、制御システムは、低減電力モードを無効にし、全電力モードを再度有効にすることによって、電力障害の停止を検出することに応答する。次いで、制御システムは、外科手術モード602に戻る。
【0071】
ステップ604および605は、図6に示される順番で、もしくは逆方向に、または同時に実装され得る。ステップ607は、外科手術モード602に戻ると同時に実装され得る。
【0072】
外科手術モードに関して説明されているが、図6の方法は、図5に関して説明される外科手術ロボットアームの動作モードのいずれか、すなわち、ロックモード、器具調整モード、および器具変更モードに適用される。
【0073】
図6の制御方法は、機械式ブレーキを有していないが、代わりに電気的にブレーキがかけられる、外科手術ロボットアームに有用である。一次電源からの電力が損失した場合、図6の制御方法は、外科手術ロボットアームが待機モードで外科手術ロボットアームの現在の位置にロックされた状態で保持されることを確実にする。これは、外科手術ロボットアームが重力で垂れ下がるのを防止し、そうでなければ、ロボットアームがロボットアームのジョイントに作用する重力のトルクに対抗するように電力供給されていない場合に、この垂れ下がりが起こるであろう。ロボットアームをバックアップバッテリ供給上で定位置に保持することによって、ロボットアームへの全電力を回復させるため、またはロボットアームに取り付けられた外科手術器具を患者の身体から安全に取り外すための時間が提供される。
【0074】
図6の制御方法は、手技のために手術室をセットアップする際、および手技後に手術室を解体する際に役立つ。概して、いくつかの外科手術ロボットアームおよび他の設備が、患者の臨床周りに適切に位置し、外科手術の施行を始める前に、セットアップされる必要がある。図6の制御方法により、外科手術ロボットアームへの電力ケーブルのプラグを意図的に抜くことが可能になり、これにより、他の設備を、電力ケーブル上を車輪によって動かす必要なしに、外科手術ロボットアームを越えて車輪によって動かすことが可能になる。次いで、電力ケーブルのプラグを再度差し込み、外科手術ロボットアームを、いずれの較正手技も再度実施する必要なしに、前にあった動作モードに戻すことができる。電力ケーブルのプラグが抜かれている間、ロボットアームは定位置に保持される。図6の制御方法はまた、外科手術ロボットアームに取り付けられた電力ケーブルの経路を介して、他の構成要素を車輪によって動かすことを可能にするために、中間動作にも有用である。
【0075】
全電力が回復した後に、外科手術ロボットアームが外科手術モードに戻るために、較正モード中に決定された仮想ピボット点が制御システムによって記憶される。仮想ピボット点は、低減電力モードの間、制御システムによって記憶され続ける。電力障害後に外科手術モードに戻ると、仮想ピボット点は、制御システムによってメモリから回収され、ジョイントコントローラに送信してロボットアームのジョイントモータを駆動するための駆動信号を決定する際に、制御システムによって使用される。この方法では、電力障害後の再較正は必要ない。再較正を必要としないようにするために、外科手術ロボットアームの支持構造は、待機モードの間、静止したままでなければならない。支持構造が、例えば、上にロボットアームが装着されたカートのブレーキを外すこと、および再度ブレーキをかけることによって移動する場合、仮想ピボット点は変化する。したがって、記憶された仮想ピボット点は、外科手術ロボットアームへの全電力の回復後にはもはや使用するための効力がない。
【0076】
図7は、図6の制御方法の修正例を例示する。ステップ601~606は、図6のものと同じである。ステップ606において全電力が回復したことを検出した後、制御システムは、ステップ701に移動する。ステップ701において、制御システムは、二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値を超えているかどうかを決定する。例えば、制御システムは、二次電源から利用可能な電力がP秒を超えているかどうかを決定し得る。二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値を超えている場合、制御システムは、ステップ607に進み、ここで、制御システムは、低減電力モードを無効にし、全電力モードを再度有効にする。ステップ607から、制御システムは、ステップ602での外科手術モードに戻る。二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値未満である場合、制御システムは、ステップ605の待機モードに戻る。二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値未満である場合、制御システムは、ステップ702で警報を発し得る。制御システムは、外科手術ロボットアーム上のインジケータとして警報信号を出力し得る。例えば、ロボットアーム上のスピーカから出力される音響警報信号、および/またはロボットアーム上の点滅ライトなどの視覚的インジケータ。制御システムは、遠隔の外科医のコンソールに警報信号を送信することもできる。この警報信号は、コンソール上のスピーカからの音響警報信号、または外科医のコンソールディスプレイ画面上の視覚的インジケータとして、外科医のコンソール上に出力され得る。
【0077】
図7の制御方法は、図6の制御方法の範囲を越えて追加の安全要素を導入する。具体的には、図7の制御方法は、全電力が回復しても、外科手術ロボットアームを外科手術モードに戻す前に、外科手術ロボットアームを少なくともP秒間、定位置に保持するのに十分な利用可能なバッテリ電力がまだあることを確実にする。したがって、全電力が再度損失された場合、外科手術ロボットアームは、臨床チームが器具を患者の身体から取り外すことができるほど十分に長い間、バッテリからの電力を使用して定位置に保持される。
【0078】
二次電源が、上述のような、第1の再充電可能バッテリおよび第2の非再充電可能バッテリを含む場合、Pは、Tと同じであってもよい。この場合、図7のステップ701は、第1の再充電可能バッテリが完全に放電されたかどうか、および第2の非再充電可能バッテリが、外科手術ロボットアームを保持するための残りの電力がT秒を下回るまで消耗したかどうかを決定する。その場合、利用可能な唯一のバッテリ電力は、第2の非再充電可能バッテリの残りの電力であり、これは、T秒を下回る場合に、外科手術器具を患者の身体から安全に取り外すことができるほど十分に長いとはみなされない。T秒を超える電力が残っている場合、第2の非再充電可能バッテリおよび/または第1の再充電可能バッテリは、一次電源の別の電力障害が発生した場合に、臨床チームが外科手術器具を安全に取り外すことができるのに十分な利用可能な電力を有する。
【0079】
図8は、図6のステップ601~605を参照して説明されるように、外科手術ロボットアームが待機モード605に入る制御方法を例示する。ステップ801で待機モードに入ると、制御システムは、較正モードに変更するためのコマンドがユーザ入力から受信されたかどうかを決定する。ユーザ入力は、外科手術ロボットアーム上に位置するか、または外科手術ロボットアームに隣接する、インターフェースであってもよい。例えば、インターフェースは、外科手術ロボットアームまたはその支持構造上に位置し得る。ユーザ入力は、外科医のコンソール上に位置するインターフェースであってもよい。いずれの場合も、インターフェースは、ボタン、スイッチ、スライダ、タッチ感応式入力、音声制御入力、視線制御入力、またはジェスチャ制御入力の形態を取り得る。
【0080】
もしステップ801において、制御システムが、ユーザ入力が受信されていないと決定した場合、制御システムは、ステップ605で待機モードに戻る。もしステップ801において、制御システムが、ユーザ入力が受信されていると決定した場合、制御方法は、ステップ802に移動する。ステップ802において、制御システムは、外科手術ロボットアームの制御を待機モードから較正モードに遷移させることによって、ユーザ入力からのコマンドに応答する。
【0081】
図8の方法により、臨床チームまたは外科医は、一次電源の電力障害を検出すると、外科手術手技において外科手術ロボットアームの部分を安全に終了することができる。ユーザ入力を受信すると、制御システムは、ロボットアームを、ロボットアームが、ロボットアームに加えられた外力に準拠するように駆動される、較正モードに遷移させる。したがって、臨床チームは、ロボットアームおよびその支持構造を患者のベッドの邪魔にならない場所に移動させることができる。
【0082】
図9は、図8の制御方法の修正例を例示する。ステップ601~801は、図8のものと同じである。ステップ801において較正モードに変更するためのコマンドがユーザ入力から受信されたことを検出した後、制御方法は、ステップ901に移動する。ステップ901において、制御システムは、二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値を超えているかどうかを決定する。例えば、制御システムは、二次電源から利用可能な電力がP秒を超えているかどうかを決定し得る。二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値を超えている場合、制御方法は、ステップ902に進む。ステップ902において、制御システムは、外科手術ロボットアームの制御を待機モードから較正モードに遷移させる。もしステップ901において、制御システムが、二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値未満であると決定した場合、制御方法は、ステップ605の待機モードに戻るか、またはステップ903に遷移し、ここで、器具は手動で取り外される。二次電源から利用可能なバッテリ容量が閾値未満である場合、制御システムは、ステップ904で警報を発し得る。図7を参照して上述したように、制御システムは、外科手術ロボットアーム上のインジケータとして警報信号を出力し得る。図7を参照して上述したように、制御システムは、遠隔の外科医のコンソールに警報信号を送信することもできる。二次電源が、上述のような、第1の再充電可能バッテリおよび第2の非再充電可能バッテリを含む場合、Pは、Tと同じであってもよい。
【0083】
ステップ903において、臨床チームは、器具をロボットアームから引き離すことによって器具を手動で取り外し、間に把持された任意の組織を解放するように器具の顎を手動で開き、器具インターフェース要素を操作することによって器具を手動でまっすぐにし、次いで、器具を患者から引っ張ることができる。この機能を実施するのにツールは必要ない。
【0084】
図10は、図8の制御方法の修正例を例示する。ステップ601~801は、図8のものと同じである。ステップ801において較正モードに変更するためのコマンドがユーザ入力から受信されたことを検出した後、制御方法は、ステップ1001に移動する。ステップ1001において、制御システムは、患者の身体の内側にある、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具があるかどうかを決定する。この条件は、(i)外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具がない場合、または(ii)外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具があるが、その外科手術器具が患者の身体内のポートに挿入されていない場合、満たされない。制御システムが、患者の身体内に位置する、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具がないと決定した場合、ステップ1002において、制御システムは、待機モードから較正モードに遷移する。もしステップ1001において、制御システムが、患者の身体内に位置する、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具があると決定した場合、制御方法は、(i)制御システムが外科手術ロボットアームを待機モードに維持するステップ605、または(ii)器具が手動で取り外されるステップ1003、のいずれかに移動する。
【0085】
図11は、図9および図10両方の修正例を含む、図8の制御方法に対する修正例を例示する。ステップ601~901は、図9のものと同じである。もしステップ901において、制御システムが、第2の電源から利用可能なバッテリ容量が閾値未満であると決定した場合、制御システムは、(i)外科手術ロボットアームを待機モード605に維持するか、または(ii)ステップ1103において器具が手動で取り外される。いずれの場合でも、ステップ903において警報が発され得る。
【0086】
しかしながら、もしステップ901において、制御システムが、第2の電源から利用可能なバッテリ容量が閾値を超えていると決定した場合、制御システムは、ステップ1101に移動する。ステップ1101において、制御システムは、患者の身体の内側にある、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具があるかどうかを決定する。制御システムが、患者の身体内に位置する、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具がないと決定した場合、ステップ1102において、制御システムは、待機モードから較正モードに遷移する。もしステップ1101において、制御システムが、患者の身体内に位置する、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具があると決定した場合、ステップ1103において、制御方法は、(i)ステップ605において外科手術ロボットアームを待機モードに維持するか、または(ii)ステップ1103において器具を手動で取り外す。
【0087】
ステップ901および1101は、図11に示される順番で、もしくは逆方向に、または同時に実装され得る。
【0088】
図6と同様に、図7図8図9図10、および図11の方法は、外科手術モードに関して説明されているが、これらの方法は、図5に関して説明される外科手術ロボットアームの動作モードのいずれか、すなわち、ロックモード、器具調整モード、および器具変更モードに適用される。これらのモードはすべて、外科手術ロボットアームがこれらのモードにあるときに、制御システムが、外科手術器具のシャフトの長手方向軸と仮想ピボット点との間の交差を維持するように、外科手術ロボットアームの動きを制約する、共通の特徴を有する。
【0089】
電力障害の後、外科手術ロボットアームへのバッテリ供給が大きく消耗し、これにより、ロボットアームコントローラが外科手術ロボットアームを最小電力モードに入れることがあり、最小電力モードにおいて、電力は、外科手術器具が患者の身体内にさらに前進するのを防止するように、外科手術ロボットアームの位置を維持するためにのみ使用される。
【0090】
外科手術ロボットアームは、ジョイントの3つのセットからなるとみなされ得る。ジョイントの各セットは、1つ以上のジョイントを備える。ここで、このジョイントの3つのセットについて説明する。
【0091】
第1のジョイントのセットの各ジョイントに対して、基部が水平表面上に着座しているときに、当該ジョイントが、(i)重力のトルクまたは力を経験し、かつ(ii)重力のトルクまたは力に準拠するジョイントの移動が、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具を外科手術部位に向かって患者の身体内に前進させることになる、外科手術ロボットアームの構成が存在する。この定義を満たすために、ジョイントが第1の条件および第2の条件の両方を満たす、外科手術ロボットアームの1つの構成のみが必要である。これは、その同じジョイントが、外科手術ロボットアームのいくつかの他の構成に対する、第1の条件および第2の条件を満たさない場合であってもよい。この定義を満たす特定の外科手術ロボットアームのジョイントは、当該外科手術ロボットアームのジョイントの配列を含む、当該外科手術ロボットアームの特定の構造に依存する。
【0092】
重力のトルクまたは力に準拠する第1のジョイントのセットのうちのあるジョイントの移動により、外科手術器具を、閾値距離Kを超えて、ポートを通して患者の身体内へと前進させることができる。例えば、この閾値距離Kは、0.1cm<K<5cmの範囲内であってもよい。Kは、1cm<K<3cmの範囲内であってもよい。Kは、2cmであってもよい。
【0093】
図2および図3の外科手術ロボットアームについては、第1のジョイントのセットは、ピッチジョイントJ 205b、ロールジョイントJ 205c、およびピッチジョイントJ 205dからなる。これらのジョイントの各々は、重力下で移動し、かつそれによって、器具を患者の身体内に前進させることができる。Jは、外科手術ロボットアームの基部が水平表面上にあるときに水平方向の回転軸を有するピッチジョイントである。したがって、重力により、Jが水平方向の回転軸を中心として回転する。Jは、J~Jのアームリンクに沿って回転軸を有するロールジョイントである。J~Jのアームリンクの方向は、外科手術ロボットアームの姿勢によって変化する。J~Jのアームリンクが垂直である場合、Jは、重力のトルクを経験しない。しかしながら、J~Jのアームリンクが任意の非垂直方向に沿って置かれている場合、Jは、重力下でトルクを経験する。Jは、回転軸がロボットアームの姿勢に応じて変化するピッチジョイントである。ロボットアームが完全に折り畳まれた位置にある場合を除き、ロボットアームのJから末端部までの重量は、重力下でJに力を及ぼす。
【0094】
第2のジョイントのセットの各ジョイントに対して、基部が水平表面上に着座しているときに、当該ジョイントが重力のトルクまたは力を経験する、外科手術ロボットアームの構成は存在しない。この定義を満たす特定の外科手術ロボットアームのジョイントは、当該外科手術ロボットアームのジョイントの配列を含む、当該外科手術ロボットアームの特定の構造に依存する。
【0095】
図2および図3の外科手術ロボットアームに対して、第2のジョイントのセットは、外科手術ロボットアームの基部に隣接する。第2のジョイントのセットは、基部と第1のジョイントのセットとの間にある。第2のジョイントのセットは、ロールジョイントJ 205aからなる。このロールジョイントは、外科手術ロボットアームの基部が水平表面上にあるときに水平方向の回転軸を有する。したがって、このロールジョイントは、重力の力の下では、水平方向の回転軸を中心として移動しない。
【0096】
第3のジョイントのセットの各ジョイントに対して、基部が水平表面上に着座しているときに、重力下での当該ジョイントのみの移動が、外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具を患者の身体内の外科手術部位に向かってポートを通して前進させることになる、外科手術ロボットアームの構成は存在しない。この定義を満たす特定の外科手術ロボットアームのジョイントは、当該外科手術ロボットアームのジョイントの配列を含む、当該外科手術ロボットアームの特定の構造に依存する。
【0097】
重力下での第3のジョイントのセットのうちのあるジョイントのみの移動では、患者の身体内への器具の前進を実質的に引き起こさない場合がある。重力下での第3のジョイントのセットのうちのあるジョイントのみの移動により、患者の身体内への器具のわずかな前進を引き起こすことができる。重力のトルクまたは力に準拠する第3のジョイントのセットのうちのあるジョイントの移動により、外科手術器具を、閾値距離Lよりも少ない距離だけ、患者の身体内へと前進させることができる。例えば、この閾値距離Lは、0cm<L<2cmの範囲内であってもよい。Lは、0cm<L<0.2cmの範囲内であってもよい。Lは、2cmであってもよい。
【0098】
ポートまたは患者の腹部は、器具の重量を部分的に支持し、それによって、重力のみの下での第3のジョイントのセットのうちのあるジョイントの移動に起因して、器具が患者の身体内にさらに挿入されることを防止することができる。器具は、重力下での第3のジョイントのセットのうちの1つのジョイントのみの移動に起因して、患者の腹部の弾性によって許容される距離を超えて患者の身体内にさらに移動することはできない。
【0099】
図2および図3の外科手術ロボットアームについては、第3のジョイントのセットは、外科手術ロボットアームの末端部に隣接する、連続するジョイントである。第3のジョイントのセットは、外科手術ロボットアームの末端部と第1のジョイントのセットとの間にある。第3のジョイントのセットは、ロールジョイントJ 205e、ピッチジョイントJ 205f、ヨージョイントJ 205g、およびロールジョイントJ 205hからなる。Jは、J~J/Jのアームリンクに沿って回転軸を有するロールジョイントである。したがって、Jは、手首の回転にのみ寄与する。Jの移動により、器具を患者の身体内にさらに挿入することはできない。ロボットアームのJから末端部までの重量は、ジョイントJにトルクを及ぼさない。JおよびJは、手首の位置の定義と一致する回転軸と一致する軸、および回転軸と直角をなす軸を有する(上記参照)。JまたはJの移動により、器具を患者の身体内にさらに挿入することはできない。手首の重量は、ジョイントJまたはJのいずれにもトルクを及ぼさない。Jは、器具のシャフトの長手方向軸に沿って回転軸を有するロールジョイントである。回転軸を中心としたJの回転により、器具を患者の身体内にさらに挿入させることはできない。手首の重量は、Jにトルクを及ぼさない。
【0100】
図12は、ロボットアームコントローラによって行われる方法を例示する。ステップ1201において、ロボットアームコントローラは、電力損失を検出する。電力損失は、上述のものなど、任意の好適な方法で検出され得る。別の実施例として、電力損失は、ロボットアームまたはその支持構造への電力ケーブルの物理的接続を検出するセンサの使用を介して検出され得る。電力ケーブルの物理的接続の欠如を検出すると、電力損失が検出される。これに応答して、ステップ1202において、ロボットアームコントローラは、第1のジョイントのセットを駆動して、重力に対して第1のジョイントのセットの各ジョイントの位置を保持する。ロボットアームコントローラは、第1のジョイントのセットのみを駆動して、重力に対して第1のジョイントのセットの位置を保持する。ロボットアームコントローラは、重力に対して第2のジョイントのセットまたは第3のジョイントのセットの位置を保持するために、第2のジョイントのセットまたは第3のジョイントのセットを駆動しない。より具体的には、ロボットアームコントローラは、制御信号を第1のジョイントのセットのジョイントコントローラに送信して、第1のジョイントのセットに電気的にブレーキをかける。ジョイントコントローラは、第1のジョイントのセットのジョイントのためのジョイントモータを制御して、第1のジョイントのセットの各ジョイントにブレーキをかけ、かつそれによって、重力に対してジョイントの各々の位置を保持することによって、ロボットアームコントローラからの制御信号に応答する。ロボットアームコントローラは、制御信号を第2のジョイントのセットおよび第3のジョイントのセットのジョイントコントローラに送信せず、第2のジョイントのセットおよび第3のジョイントのセットに電気的にブレーキをかけるように、ジョイントコントローラに命令する。
【0101】
好適には、図12の制御方法は、完全な電力障害が差し迫っているときに実装される。ロボットアームコントローラは、安全性の観点から重要である、外科手術ロボットアームのこれらのジョイントのみを能動的に駆動して、重力に対してこれらのジョイントの位置を保持することによって、図12を参照して説明されるように、電力使用量を最小化することによって、この状況に応答する。安全上重要なジョイントとは、(i)電気的にブレーキをかけることよって定位置に保持されなかった場合に重力下で移動し得るジョイント、および(ii)重力下でのかかる移動により、器具を患者の身体内にさらに前進させることができるジョイントである。他のジョイントは、これらのジョイントの位置を重力に対して保持するために能動的に駆動されない場合に、患者の身体内で外科手術器具の回転を引き起こす可能性があるが、外科手術器具が患者の身体内にさらに前進されないため、これらのジョイントは、安全上重要なジョイントではない。
【0102】
図2および図3を参照して説明される外科手術ロボットアームにおいて、ジョイントJ2、J3、およびJ4は、外科手術ロボットアームの基部が水平表面上にあるとき、外科手術ロボットアームの少なくともいくつかの構成において重力下で垂れ下がり、この垂れ下がりが、外科手術ロボットアームに取り付けられた器具を患者の身体内にさらに前進させ得る。したがって、この実施例では、ジョイントJ、J、およびJは、図12のステップ1202において重力に対して当該ジョイントの位置を維持するように電気的にブレーキがかけられる、安全上重要なジョイントである。器具が患者の身体内にさらに移動することを防止することに加えて、ジョイントJ、J、およびJに電気的にブレーキをかけることは、外科手術ロボットアームの手首が重力下で移動することも防止する。これは、器具が、患者の身体内での器具の移動を引き起こす可能性のある仮想ピボット点を中心として枢動することを防止する。
【0103】
外科手術ロボットアームに最小電力を加えて、外科手術器具が患者の身体内にさらに前進することを防止するだけで、残りのバッテリ寿命が可能な限り延長される。図12のステップ1202により、少なくともR秒間、安全上重要なジョイントに電気的にブレーキをかけることが可能な場合がある。例えば、30秒<R<120秒。Rは、例えば、60秒であってもよい。この時間の間、臨床チームは、外科手術器具を患者の身体から安全に抜去するように行動し得る。
【0104】
図12のステップ1201において電力損失を検出するようにロボットアームコントローラをトリガする電力損失の程度は、実装例に固有である。例えば、ロボットアームコントローラは、第2の電源の残りのバッテリ寿命が閾値の値Wを下回ったと決定された場合に、電力損失を検出するように構成され得る。その閾値の値Wは、30秒<W<5分の範囲内であってもよい。その閾値の値Wは、60秒<W<2分の範囲内であってもよい。Wは、60秒であってもよい。
【0105】
別の実施例として、ロボットアームコントローラは、第2の電源の残りの電力容量が閾値の電力容量を下回ったと決定された場合に、電力損失を検出するように構成され得る。
【0106】
別の実施例として、ロボットアームコントローラは、第2の電源によって供給される電圧または電流が閾値の値Vを下回ると決定された場合に、電力損失を検出するように構成され得る。例えば、Vは、6V<V<11Vの範囲内であってもよい。
【0107】
別の実施例として、二次電源が第1のバッテリおよび第2のバッテリを含む場合、ロボットアームコントローラは、第1のバッテリが消耗していると決定する際に電力損失を検出するように構成され得る。ロボットアームコントローラは、その第1のバッテリによって供給される電圧または電流が閾値の値Uを下回ると、第1のバッテリの消耗を検出し得る。例えば、Uは、8V<U<15Vの範囲内であってもよい。ロボットアームコントローラは、外科手術ロボットアームの電源の状態を監視するウォッチドッグ回路を備え得る。好適には、ロボットアームコントローラは、一次電源、第1のバッテリ、および第2のバッテリの各々から電力入力を受信する。ロボットアームコントローラは、どの電源が外科手術ロボットアームに電力を供給するかを制御する。第1のバッテリからの電力の損失を検出すると、ロボットアームコントローラは、第1のバッテリから外科手術ロボットアームへの電力入力の接続から、第2のバッテリから外科手術ロボットアームへの電力入力の接続へと切り替える。ロボットアームコントローラはまた、ロボットアームコントローラのプロセッサと外科手術ロボットアームの残りの部分との間の通信を防止し得る。例えば、ロボットアームコントローラは、外科医入力装置の移動に従って、外科手術ロボットアームのジョイントを移動させるようにジョイントコントローラに命令する通信が送信されることを防止し得る。ロボットアームコントローラは、外科手術ロボットアームを、保持する駆動信号が、重力に対抗するために、重要なジョイントのみを駆動するジョイントコントローラに送信されて、これらの重要なジョイントが駆動される、故障ロック状態に入れる。第2のバッテリが非再充電可能バッテリである場合、ステップ1201で重力に対してロボットアームを保持するために使用した後に、第2のバッテリを交換する必要がある場合がある。
【0108】
ロボットアームコントローラは、ロボットアームコントローラが既に一次電源からの電力の損失を検出した場合にのみ、図12のステップ1201で電力損失を検出するように構成され得る。
【0109】
ロボットアームコントローラが図12の制御方法を実装すると、たとえ一次電源からの電力が回復したとしても、外科手術ロボットアームを図5の動作モードのうちのいずれにも遷移させないように構成され得る。代わりに、外科手術ロボットアームは、再度使用される前にメンテナンスのために電源が切られる。
【0110】
本明細書に記載のロボットは、外科手術以外の目的のために使用され得る。例えば、ポートは、自動車エンジンなどの製造品内の検査ポートであってもよく、ロボットは、エンジン内部を見るための視認ツールを制御し得る。
【0111】
本明細書によって、本出願人は、本明細書に説明される各個々の特徴および2つ以上のかかる特徴の任意の組み合わせを、かかる特徴または組み合わせが、当業者に共通する一般知識に照らして、全体として本明細書に基づいて行うことができるような程度まで、かかる特徴または特徴の組み合わせが、本明細書に開示する任意の問題を解決するかにかかわらず、かつ特許請求の範囲を限定することなく、分離して開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のかかる個々の特徴または特徴の組み合わせからなり得ることを示している。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術ロボットシステムのための制御システムであって、前記外科手術ロボットシステムが、外科医入力装置を有する遠隔外科医コンソールと、外科手術ロボットアームと、を備え、
前記外科手術ロボットアームが、
(i)基部から、外科手術器具に取り付けるための末端部まで延在する一連のジョイント、および
(ii)モータのセットであって、前記モータの各々が、前記ジョイントのうちの1つ以上を駆動するように構成されている、モータのセット、
を備え、
前記外科手術ロボットアームが、
前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを駆動する前記モータが第1の電源によって電力供給される全電力モード、および
前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを駆動する前記モータが第2の電源によって電力供給される低減電力モードで動作可能であり、
前記制御システムが、
前記外科手術ロボットアームが前記全電力モードで動作している間に、前記外科手術ロボットアームのジョイントを駆動するように構成された前記モータを使用して、前記外科医入力装置からの入力を、前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントを移動させるための制御信号に変換する外科手術モードで前記外科手術ロボットアームを制御すること、
前記第1の電源の電力障害を検出すること、
前記電力障害を検出することに応答して、前記低減電力モードを有効にし、前記外科手術ロボットアームのジョイントを駆動するように構成された前記モータを使用して、前記外科手術ロボットアームの前記ジョイントをロックするための制御信号を送信するロックモードで前記外科手術ロボットアームを制御すること、
前記低減電力モードの間に、前記電力障害の停止を検出すること、および
前記電力障害の前記停止を検出することに応答して、前記低減電力モードを無効にし、前記全電力モードを再度有効にして、前記外科手術ロボットアームを前記外科手術モードで制御すること、
を行うように構成され、
前記外科手術モードにおいて、前記電力障害の前および前記電力障害の停止後の両方で、前記外科手術器具と記憶された支点との間の交差を維持するための制御信号を送信するように構成され、
前記記憶された支点が、前記外科手術器具が患者の身体内のポートの内側にある間に前記外科手術ロボットアームの構成が変更されるときに、周りで前記外科手術器具が枢動する点である、
制御システム。
【請求項2】
前記制御システムが、前記低減電力モードの間に、前記記憶された支点をメモリに記憶し、前記電力障害後に前記外科手術モードへと戻る際に前記記憶された支点を前記メモリから検索するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第2の電源が、再充電可能なバッテリを含む、請求項1又は請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第2の電源が、非再充電可能なさらなるバッテリを含む、請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記電力障害の前記停止を検出することに応答して、
前記第2の電源から利用可能なバッテリ容量の残りの閾値を超えているかどうかを決定することと、
前記第2の電源から利用可能な前記バッテリ容量の閾値を超えていると決定した場合にのみ、前記外科手術ロボットアームを前記外科手術モードで制御することと、を行うように構成されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記第2の電源から利用可能な前記バッテリ容量の残りの閾値未満であると決定した場合に、前記外科手術ロボットアームをロックモードに維持するように構成されている、請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記第2の電源の出力電圧、電流、または電力の経時的な測定をすること、および前記第2の電源の出力電圧、電流、または電力の経時的な測定値を典型的なバッテリ寿命グラフまたは経時的なバッテリの理想的な放電の数学的モデルと比較することから、前記第2の電源から利用可能な前記バッテリ容量の残りを推定するように構成されている、請求項5又は請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記第2の電源から利用可能なバッテリ容量の第2の閾値以下であると決定したことに応答して、前記外科手術ロボットアームに対して警報を発するように構成されている、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記低減電力モードの間、
患者の身体内に位置する前記外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具があるかを決定することであって、(i)前記外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具が無い場合、または、(ii)前記外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具があるが、当該外科手術器具が前記患者の身体内のポートに挿入されていない場合、に前記患者の身体内に位置する前記外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具がないと決定されること、および
前記患者の身体内に位置する前記外科手術ロボットアームに取り付けられた外科手術器具がないと決定した場合に、前記制御システムが前記外科手術ロボットアームに対する検知された外力に、前記検知された外力に適合するように前記外科手術ロボットアームのジョイントを移動させるための制御信号を送信することによって応答する、較正モードで前記外科手術ロボットアームを制御することによって、較正モードに変更するための入力に応答するように構成されている、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項10】
外科手術器具が前記患者の身体内に位置すると決定した場合に、前記外科手術器具を前記患者の身体内のポート内へとさらに挿入させることになる、前記外科手術ロボットアームの移動を防止するように、前記外科手術ロボットアームを制御するように構成されている、請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記制御システムが、電力障害を検出し、電力障害後の電力の回復を検出し、前記全電力モードおよび前記低減電力モードの双方を有効および無効にするように構成されたロボットアームコントローラを備える、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項12】
前記ロボットアームコントローラが、前記外科手術ロボットアームに一体化されている、請求項11に記載の制御システム。
【請求項13】
前記外科手術ロボットアームが、支持構造上に装着され、前記ロボットアームコントローラが、前記支持構造に一体化されている、請求項11に記載の制御システム。