IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

特開2023-182795制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法
<>
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図1
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図2
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図3
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図4
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図5
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図6
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図7
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図8
  • 特開-制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182795
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 61/3015 20220101AFI20231219BHJP
   H04L 67/12 20220101ALI20231219BHJP
   H04L 67/50 20220101ALI20231219BHJP
【FI】
H04L61/3015
H04L67/12
H04L67/50
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179604
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2020010238の分割
【原出願日】2020-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 雅大
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減することができる制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法を提供する。
【解決手段】制御装置は、制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶する記憶部と、通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信する受信部と、制御部とを備え、制御部は、受信部で受信したデータ識別子及び関連情報に基づいて自身の特定子を決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶する記憶部と、
通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信する受信部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記受信部で受信したデータ識別子及び前記関連情報に基づいて自身の特定子を決定する制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記受信部で受信したデータ識別子に基づいて前記記憶部に記憶した関連情報を参照し、受信したデータ識別子と一致するデータ識別子に関連付けられた特定子を自身の特定子として決定する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
決定した特定子をプログラム提供装置へ出力し、
前記プログラム提供装置から前記特定子で特定される機能又は動作を実現するためのプログラムを取得する請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
取得したプログラムに基づく処理を実行する請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記受信部で受信したデータ識別子が前記関連情報に含まれていない場合、関連情報提供装置から関連情報を取得し、
前記記憶部に記憶した関連情報を、取得した関連情報によって更新する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記受信部で受信したデータ識別子が前記記憶部に記憶した関連情報に含まれていない場合、前記データ識別子をエラーログとして記録する記録部を備える請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記受信部で受信したデータ識別子が前記記憶部に記憶した関連情報に含まれていない場合、特定子の未決定を中央制御装置へ通知する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
決定した特定子を前記中央制御装置へ通知する請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
機能又は動作が異なる複数の請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の制御装置と、
通信線を介して前記複数の制御装置と接続された中央制御装置と
を備える制御システム。
【請求項10】
前記中央制御装置は、
前記複数の制御装置それぞれの特定子が決定されているか否かの情報を記憶する記憶部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、
一の制御装置が特定子の未決定を自身に通知した場合、前記記憶部に記憶した情報に基づいて、前記一の制御装置の特定子を決定し、
決定した特定子を前記一の制御装置へ通知する請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶部に記憶し、
通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信し、
受信されたデータ識別子及び前記関連情報に基づいて特定子を決定する、制御装置の機能又は動作の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の進展により、車両には、エンジン、バッテリ、ドア、ランプ、ワイパー、エアコンなど様々な車載部品を制御するためのECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)が多数搭載されるようになった。ECUは、CPU、メモリ、入出力インタフェースなどを備え、CANやイーサネット(登録商標)などの車載LANを通じて相互に情報の送受信を行っている。
【0003】
特許文献1には、車両の組立構造に応じてモジュール化された複数の車両モジュールを備え、各車両モジュールには、車両モジュール制御装置(ECU)が設けられた車両システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-188146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のECUは、車両の組立構造に応じて配置され、それぞれのECUが異なる機能を有し、また異なる動作を行う。このため、それぞれECUを個別に製造する必要があり製造コストが高くなる。
【0006】
本開示は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、製造コストを低減することができる制御装置、制御システム及び制御装置の機能又は動作の決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る制御装置は、制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶する記憶部と、通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信する受信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記受信部で受信したデータ識別子及び前記関連情報に基づいて自身の特定子を決定する。
【0008】
本開示に係る制御システムは、機能又は動作が異なる複数の制御装置と、通信線を介して前記複数の制御装置と接続された中央制御装置とを備える。
【0009】
本開示に係る制御装置の機能又は動作の決定方法は、制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶部に記憶し、通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信し、受信されたデータ識別子及び関連情報に基づいて特定子を決定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態の制御システムの構成の一例を示す模式図である。
図2】セントラルECUの構成の一例を示すブロック図である。
図3】ゾーンECUの構成の一例を示すブロック図である。
図4】関連情報の一例を示す模式図である。
図5】ゾーンECUの機能又は動作の決定方法の一例を示す模式図である。
図6】ゾーンECUが機能又は動作を決定できない場合の処理の一例を示す模式図である。
図7】セントラルECUによるゾーンECUの機能又は動作の決定方法の一例を示す模式図である。
図8】関連情報の更新方法の一例を示す模式図である。
図9】本実施の形態の制御システムの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
本実施の形態の制御装置は、制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶する記憶部と、通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信する受信部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記受信部で受信したデータ識別子及び前記関連情報に基づいて自身の特定子を決定する。
【0014】
本実施の形態の制御システムは、機能又は動作が異なる複数の制御装置と、通信線を介して前記複数の制御装置と接続された中央制御装置とを備える。
【0015】
本実施の形態の制御装置の機能又は動作の決定方法は、制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶部に記憶し、通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信し、受信されたデータ識別子及び関連情報に基づいて特定子を決定する。
【0016】
記憶部は、制御装置の機能又は動作を特定する特定子とデータの送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた関連情報を記憶する。車両に搭載される複数の制御装置それぞれの記憶部に同じ関連情報を記憶しておく。例えば、車両に4個の制御装置が搭載されるとし、制御装置の機能又は動作をA、B、C、Dで表し、機能又は動作A、B、C、Dを特定する特定子を、AAA、BBB、CCC、DDDで表す。また、機能又は動作がAの制御装置がデータ通信を行う送信元デバイスのデータ識別子を#100、#150で表し、同様に、機能又は動作がBの制御装置に対応するデータ識別子を#170、#200で表し、機能又は動作がCの制御装置に対応するデータ識別子を#250、#300で表し、機能又は動作がDの制御装置に対応するデータ識別子を#350で表すとする。
【0017】
受信部は、通信線を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信する。共通の制御装置を車両に組み込んだ製造段階又は組立段階において、各送信元デバイスからデータの送信を開始することによって、受信部はデータ識別子を受信することができる。
【0018】
制御部は、受信部で受信したデータ識別子及び関連情報に基づいて自身の特定子を決定する。例えば、ある制御装置が、データ識別子が#100、#150のデータを受信した場合、記憶部に記憶した関連情報に基づいて、自身の機能又は動作が、特定子AAAで特定される、機能又は動作Aであると決定することができる。他の制御装置についても同様である。
【0019】
すなわち、共通の制御装置を車両に組み込み、製造段階又は組立段階において、それぞれの制御装置の機能又は動作を決定することができる。これにより、共通の制御装置を製造して、車両の製造段階や組立段階で、それぞれの制御装置の機能又は動作を決定できるので、予め機能や動作が異なる制御装置を個別に製造する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0020】
本実施の形態の制御装置において、前記制御部は、前記受信部で受信したデータ識別子に基づいて前記記憶部に記憶した関連情報を参照し、受信したデータ識別子と一致するデータ識別子に関連付けられた特定子を自身の特定子として決定する。
【0021】
制御部は、受信部で受信したデータ識別子に基づいて記憶部に記憶した関連情報を参照し、受信したデータ識別子と一致するデータ識別子に関連付けられた特定子を自身の特定子として決定することができる。
【0022】
本実施の形態の制御装置において、前記制御部は、決定した特定子をプログラム提供装置へ出力し、前記プログラム提供装置から前記特定子で特定される機能又は動作を実現するためのプログラムを取得する。
【0023】
制御部は、決定した特定子をプログラム提供装置へ出力する。プログラム提供装置は、例えば、共通の制御装置に、機能又は動作別のプログラムを導入することにより、共通の制御装置を、機能又は動作別の制御装置に変更することができる。
【0024】
制御部は、プログラム提供装置から特定子で特定される機能又は動作を実現するためのプログラムを取得する。制御装置は、取得したプログラムを導入(インストール)することにより、特定子で特定される機能又は動作を実現することができる。すなわち、車両の製造段階又は組立段階において、共通の制御装置を、機能又は動作別の制御装置に変更することができる。なお、プログラムを取得するとは、プログラムの全部又は一部を取得することの他に、プログラムが読み込むパラメータ(例えば、コンフィグファイル)を取得することも含む。
【0025】
本実施の形態の制御装置において、前記制御部は、取得したプログラムに基づく処理を実行する。
【0026】
制御部は、取得したプログラムに基づく処理を実行する。これにより、車両に搭載された制御装置それぞれは、共通の機能又は動作だけでなく、独自の機能又は動作を実行することができる。
【0027】
本実施の形態の制御装置において、前記制御部は、前記受信部で受信したデータ識別子が前記関連情報に含まれていない場合、関連情報提供装置から関連情報を取得し、前記記憶部に記憶した関連情報を、取得した関連情報によって更新する。
【0028】
制御部は、受信部で受信したデータ識別子が関連情報に含まれていない場合、関連情報提供装置から関連情報を取得する。関連情報提供装置は、最新の関連情報を保有することができる。制御部は、記憶部に記憶した関連情報を第2取得部で取得した関連情報によって更新する。
【0029】
例えば、車両に各制御装置が搭載され、オプションやカスタマイズによって新たな送信元デバイス(ECUも含む)が追加された場合、記憶部に記憶した関連情報に、新たに追加した送信元デバイスの情報が記憶されていない場合がある。そのような場合に、関連情報を更新することにより、関連情報を最新の情報にすることができる。
【0030】
本実施の形態の制御装置は、前記受信部で受信したデータ識別子が前記記憶部に記憶した関連情報に含まれていない場合、前記データ識別子をエラーログとして記録する記録部を備える。
【0031】
記録部は、受信部で受信したデータ識別子が記憶部に記憶した関連情報に含まれていない場合、データ識別子をエラーログとして記録する。受信したデータ識別子が記憶部に記憶した関連情報に含まれていない場合、データ通信において、データ化けが発生している可能性が高い。データ化けの原因としては、送信元のデバイスの不良、通信線のコネクタ等の接続不良など種々の要因が考えられる。そこで、エラーログを記録することにより、不良原因を特定し、所要の対策を行うことができる。
【0032】
本実施の形態の制御装置において、前記制御部は、前記受信部で受信したデータ識別子が前記記憶部に記憶した関連情報に含まれていない場合、特定子の未決定を中央制御装置へ通知する。
【0033】
制御部は、受信部で受信したデータ識別子が記憶部に記憶した関連情報に含まれていない場合、特定子の未決定を中央制御装置へ通知する。中央制御装置は、各制御装置を管理する上位の制御装置とすることができる。これにより、中央制御装置は、各制御装置が、機能又は動作を決定することができたか否かを判定することができる。
【0034】
本実施の形態の制御装置において、前記制御部は、決定した特定子を前記中央制御装置へ通知する。
【0035】
制御部は、決定した特定子を中央制御装置へ通知する。これにより、中央制御装置は、各制御装置が、機能又は動作を決定することができたか否かを判定することができる。
【0036】
本実施の形態の制御システムにおいて、前記中央制御装置は、前記複数の制御装置それぞれの特定子が決定されているか否かの情報を記憶する記憶部と、制御部とを備え、前記制御部は、一の制御装置が特定子の未決定を自身に通知した場合、前記記憶部に記憶した情報に基づいて、前記一の制御装置の特定子を決定し、決定した特定子を前記一の制御装置へ通知する。
【0037】
中央制御装置は、複数の制御装置それぞれの特定子が決定されているか否かの情報を記憶する記憶部を備え、制御部は、一の制御装置が特定子の未決定を自身に通知した場合、記憶部に記憶した情報に基づいて、当該一の制御装置の特定子を決定し、決定した特定子を当該一の制御装置へ通知する。
【0038】
例えば、車両に4個の制御装置が搭載されるとし、制御装置の機能又は動作をA、B、C、Dで表し、機能又は動作A、B、C、Dを特定する特定子を、AAA、BBB、CCC、DDDで表す。4個の制御装置のうち、3個の制御装置から、それぞれ特定子がBBB、CCC、DDDであると決定した旨の通知がされ、残りの1個の制御装置から特定子が未決定の通知を受けたとする。中央制御装置は、特定子が未決定の制御装置の特定子がAAA(BBB、CCC及びDDD以外)であると決定し、当該制御装置へ通知する。これにより、自身では特定子を決定できない制御装置が存在しても、中央制御装置によって、特定子を決定することができる。
【0039】
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の制御システムの構成の一例を示す模式図である。制御システムは、中央制御装置としてのセントラルECU10、制御装置としてのゾーンECU20A、20B、20C、20Dを備える。ゾーンECU20A、20B、20C、20Dを纏めてゾーンECU20とも称する。セントラルECU10は、各ゾーンECU20を管理する上位のECUとすることができる。図では4個のゾーンECUを備える構成であるが、ゾーンECUは複数個備えればよく、4個に限定されない。セントラルECU10と各ゾーンECU20A、20B、20C、20Dとの間は通信線2によって接続されている。通信線2は、例えば、イーサネット(登録商標)とすることができるが、これに限定されない。
【0040】
ゾーンECU20A、20B、20C、20Dは、共通の機能又は動作を行う他、それぞれの車両内の制御対象の配置(例えば、車両の前後左右など)に応じて、異なる機能又は動作を行う。例えば、ゾーンECU20Aは、通信線1を介してデバイス31、32と通信可能であり、ゾーンECU20Bは、通信線1を介してデバイス33、34と通信可能であり、ゾーンECU20Cは、通信線1を介してデバイス35と通信可能であり、ゾーンECU20Dは、通信線1を介してデバイス36と通信可能である。通信線1は、例えば、CAN(Controller Area Network)とすることができるが、これに限定されない。
【0041】
デバイス31~36は、例えば、アクチュエータ、センサ、スイッチ、ECU(Electronic Control Unit)などを含む。ゾーンECU20A、20B、20C、20Dは、様々な機能を集約したECUということができる。
【0042】
図2はセントラルECU10の構成の一例を示すブロック図である。セントラルECU10は、制御部11、通信部12、記憶部13を備える。制御部11は、CPU、ROM、RAM等で構成することができ、セントラルECU10全体を制御する。
【0043】
通信部12は、通信線2で定められている通信プロトコルを用いて、各ゾーンECU20A、20B、20C、20Dと通信を行う機能を有する。
【0044】
記憶部13は、例えば、半導体メモリ等で構成することができ、各ゾーンECU20A、20B、20C、20Dから受信した情報を記憶することができる。また、記憶部13は、各ゾーンECU20A、20B、20C、20Dへ送信する情報を記憶することができる。記憶部13は、各ゾーンECU20A、20B、20C、20Dの特定子が決定済であるか否かの情報を記憶することができる。特定子は、各ゾーンECU20A、20B、20C、20Dの機能又は動作を特定するものである。
【0045】
制御部11は、後述のように、一のゾーンECUが特定子の未決定をセントラルECU10に通知した場合、記憶部13に記憶した情報に基づいて、当該一のゾーンECUの特定子を決定することができる。特定子が未決定とは、搭載位置が未割当であるとうこともできる。特定子の決定方法の詳細は後述する。
【0046】
制御部11は、決定した特定子を一のゾーンECU(特定子が未決定である旨を通知したゾーンECU)へ通知することができる。また、制御部11は、特定子が未決定のゾーンECUがあった場合、異常として警告を出力することができる。警告の出力は、表示による出力形態でもよく、音声による出力形態でもよい。
【0047】
図3はゾーンECU20の構成の一例を示すブロック図である。ゾーンECU20は、制御部21、通信部22、広域通信部23、記憶部24、エラーログ記録部25を備える。制御部21は、CPU、ROM、RAM等で構成することができ、ゾーンECU20全体を制御する。
【0048】
通信部22は、通信線1で定められている通信プロトコルを用いて、当該ゾーンECUと接続されるデバイス(31~36のいずれか)と通信を行う機能を有する。通信部22は、受信部としての機能を有し、通信線1を介してデバイス(送信元デバイス)からデータ識別子を受信することができる。データ識別子は、データの送信元デバイスを識別するものであり、例えば、通信プロトコルがCANである場合、CAN-IDを用いることができる。また、通信部22は、通信線2で定められている通信プロトコルを用いて、セントラルECU10と通信を行う機能を有する。
【0049】
広域通信部23は、インターネットや電話回線等を通じて外部サーバ(関連情報提供装置、プログラム提供装置)とデータの送受信を行うことができる。
【0050】
記憶部24は、例えば、半導体メモリ等で構成することができ、関連情報を記憶することができる。関連情報の詳細は後述する。
【0051】
制御部21は、通信部22で受信したデータ識別子及び記憶部24に記憶した関連情報に基づいて当該ゾーンECUの特定子を決定することができる。特定子の決定方法の詳細は後述する。
【0052】
制御部21は、記憶部24に記憶した関連情報を、外部のサーバから取得した関連情報によって更新することができる。
【0053】
エラーログ記録部25は、記録部としての機能を有し、通信部22で受信したデータ識別子が記憶部24に記憶した関連情報に含まれていない場合、データ識別子をエラーログとして記録することができる。
【0054】
次に、関連情報について説明する。
【0055】
図4は関連情報の一例を示す模式図である。関連情報は、ゾーンECUの機能又は動作を特定する特定子と、当該ゾーンECUに対してデータを送信する送信元デバイスを識別するデータ識別子とを、複数の特定子毎に関連付けた情報である。図4に示すように、関連情報は、機能又は動作、特定子、データ識別子、送信元デバイスの各項目で構成することができる。
【0056】
車両の製造段階又は組立段階において、車両に搭載される各ゾーンECUの記憶部24には、同じ関連情報が記憶される。例えば、車両に4個のゾーンECUが搭載されるとし、車両内の搭載位置等に応じて、4個のゾーンECUの異なる機能又は動作をA、B、C、Dで表し、機能又は動作A、B、C、Dそれぞれを特定する特定子を、AAA、BBB、CCC、DDDで表すとする。
【0057】
また、機能又は動作がAのゾーンECUは、送信元デバイス32からデータ識別子#100を受信し、送信元デバイス31からデータ識別子#150を受信するとする。ゾーンECUと各送信元デバイスの車両内の搭載位置から、ゾーンECUの機能又は動作(すなわち、特定子)とデータを送受信するデバイスとは予め対応付けすることができる。同様に、機能又は動作がBのゾーンECUは、送信元デバイス33からデータ識別子#170を受信し、送信元デバイス34からデータ識別子#200を受信するとする。機能又は動作がCのゾーンECUは、送信元デバイス35からデータ識別子#250、#300を受信するとし、機能又は動作がDのゾーンECUは、送信元デバイス36からデータ識別子#350を受信するとする。
【0058】
車両の製造段階又は組立段階において、車両に搭載される各ゾーンECUは、例えば、同一の品番で製造されており、共通化されている。すなわち、各ゾーンECUは、車両に組み込んだ時点では、自身がいずれの機能又は動作を行うゾーンECUであるかは決定されていない。
【0059】
次に、各ゾーンECU20の機能又は動作の決定方法について説明する。
【0060】
図5はゾーンECU20の機能又は動作の決定方法の一例を示す模式図である。ゾーンECUや各デバイスを車両に組み込み、各部が通信線で接続された状態で(製造段階又は組立段階)、例えば、システムの電源を投入して動作を開始させることにより、各デバイスは、予め定められた手順に従って、データを周期的にゾーンECUへ送信することができる。
【0061】
通信部22は、通信線1を介して送信元デバイスからデータ識別子を受信する。共通の制御装置を車両に組み込んだ製造段階又は組立段階において、各送信元デバイスからデータの送信を開始することによって、通信部22はデータ識別子を受信することができる。図5の例では、データ識別子を、#100、#150とする。
【0062】
制御部21は、通信部22で受信したデータ識別子及び記憶部24に記憶した関連情報に基づいてゾーンECU20の特定子を決定する。図5の例では、受信したデータ識別子#100、#150に対応する特定子は、特定子AAAであることが分かるので、ゾーンECU20の機能又は動作は、機能又は動作Aであると決定することができる。他のゾーンECUについても、同様にして特定子を決定することができ、機能又は動作も決定できる。このように、各ゾーンECUの機能又は動作を自動的に決定することができ、製造要員などによる手作業も不要である。
【0063】
すなわち、共通化された汎用のゾーンECUを車両に組み込み、製造段階又は組立段階において、車両内のそれぞれのゾーンECUの機能又は動作を決定することができる。これにより、共通化された汎用のゾーンECUを製造して、車両の製造段階や組立段階で、それぞれのゾーンECUの機能又は動作を決定できるので、予め機能や動作が異なるECUを個別に製造する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0064】
制御部21は、広域通信部23を介して、決定した特定子をプログラム提供装置としての外部サーバへ出力する。外部サーバは、例えば、共通化された汎用のゾーンECUに、機能又は動作別のプログラムを導入することにより、共通化された汎用のゾーンECUを、機能又は動作別のゾーンECUに変更することができる。
【0065】
制御部21は、広域通信部23を介して、外部サーバから特定子で特定される機能又は動作を実現するためのプログラムを取得することができる。ゾーンECU20は、取得したプログラムを導入(インストール)することにより、特定子で特定される機能又は動作を実現することができる。すなわち、車両の製造段階又は組立段階において、共通化された汎用のゾーンECU20を、機能又は動作別のゾーンECU20に変更することができる。なお、プログラムを取得するとは、プログラムの全部又は一部を取得することの他に、ゾーンECU20のプログラムが読み込むパラメータ(例えば、コンフィグファイル)を取得することも含む。
【0066】
制御部21は、外部サーバから取得したプログラムに基づく処理を実行することができる。これにより、車両に搭載されたゾーンECU20それぞれは、共通の機能又は動作だけでなく、例えば、車両の搭載位置に応じた独自の機能又は動作を実行することができる。なお、プログラムの取得先は、外部サーバに限定されるものではない。例えば、セントラルECU10に予め各ゾーンECUの異なる機能又は動作を実現するためのプログラムを記憶しておき、セントラルECU10からプログラムを取得してもよい。
【0067】
制御部21は、通信部22を介して、決定した特定子をセントラルECU10へ通知することができる。これにより、セントラルECU10は、各ゾーンECU20が、機能又は動作を決定することができたか否かを判定することができる。
【0068】
次に、ゾーンECU20が機能又は動作を決定できない場合について説明する。
【0069】
図6はゾーンECU20が機能又は動作を決定できない場合の処理の一例を示す模式図である。エラーログ記録部25は、通信部22で受信したデータ識別子が記憶部24に記憶した関連情報に含まれていない場合、データ識別子をエラーログとして記録することができる。図の例では、通信部22は、データ識別子#110を受信したが、データ識別子#110に対応する特定子は存在していない。また、データ識別子の送信元デバイスをエラーログに記録することもできる。例えば、図4の例では、仮にデータ識別子#100を受信し、データ識別子#150に代わりにデータ識別子#110を受信しているとすると、デバイス31をエラーログに記録することができる。受信したデータ識別子が記憶部24に記憶した関連情報に含まれていない場合、データ通信において、データ化けが発生している可能性が高い。データ化けの原因としては、送信元のデバイスの不良、通信線のコネクタ等の接続不良など種々の要因が考えられる。そこで、エラーログを記録することにより、不良原因を特定し、所要の対策を行うことができる。
【0070】
制御部21は、通信部22を介して、受信したデータ識別子が記憶部24に記憶した関連情報に含まれていない場合、特定子の未決定をセントラルECU10へ通知することができる。これにより、セントラルECU10は、各ゾーンECU20が、機能又は動作を決定することができたか否かを判定することができる。
【0071】
次に、セントラルECU10によるゾーンECU20の機能又は動作の決定方法について説明する。
【0072】
図7はセントラルECU10によるゾーンECU20の機能又は動作の決定方法の一例を示す模式図である。セントラルECU10の記憶部13は、各ゾーンECU20の特定子が決定済であるか否かの情報を記憶することができる。図7に示すように、車両に4個のゾーンECU20が搭載されるとし、ゾーンECU20の機能又は動作をA、B、C、Dで表し、機能又は動作A、B、C、Dを特定する特定子を、AAA、BBB、CCC、DDDで表すとする。4個のゾーンECU20のうち、3個のゾーンECU20から、それぞれ特定子がBBB、CCC、DDDであると決定した旨の通知がされ、残りの1個のゾーンECU20から特定子が未決定の通知を受けたとする。セントラルECU10は、特定子が未決定のゾーンECU20の特定子がAAA(BBB、CCC及びDDD以外)であると決定し、当該ゾーンECU20へ通知する。これにより、自身では特定子を決定できないゾーンECU20が存在しても、セントラルECU10によって、特定子を決定することができる。
【0073】
次に、関連情報の更新方法について説明する。
【0074】
図8は関連情報の更新方法の一例を示す模式図である。図8に示すように、オプションやカスタマイズによって新たなデバイス37が追加され、デバイス37からデータ識別子#160が送信されたとする。この場合、ゾーンECU20Cは、関連情報(特定子CCCと、データ識別子#250、#300との関連付け情報)に含まれていないデータ識別子#160を受信する。この場合、制御部21は、広域通信部23を介して、関連情報提供装置としての外部サーバから最新の関連情報を取得することができる。制御部21は、記憶部24に記憶した関連情報を、外部サーバからで取得した関連情報で更新する。
【0075】
このように、車両に各ゾーンECU20が搭載され、オプションやカスタマイズによって新たな送信元デバイス(ECUも含む)が追加された場合、記憶部24に記憶した関連情報に、新たに追加した送信元デバイスの情報が記憶されていない場合がある。そのような場合に、関連情報を更新することにより、関連情報を最新の情報にすることができる。なお、仮に更新しても関連情報にないデータ識別子を受信する場合には、異常を報知してもよい。
【0076】
図9は本実施の形態の制御システムの処理手順の一例を示すフローチャートである。セントラルECU10は、関連情報を設定する(S11)。関連情報の設定は、車両の製造段階又は組立段階において、作業者の指定により行うことができる。セントラルECU10は、関連情報を各ゾーンECU20へ送信する(S12)。
【0077】
ゾーンECU20は、関連情報を受信し、記憶する(S31)。ゾーンECU20は、デバイス(送信元デバイス)からデータ識別子を受信し(S32)、ゾーンECUの特定子を決定可であるか否かを判定する(S33)。特定子を決定できる場合(S33でYES)、ゾーンECU20は、決定した特定子に対応するプログラムをダウンロードし(S34)、決定した特定子をセントラルECU10に通知し(S35)、処理を終了する。セントラルECU10は後述のステップS13の処理を行う。
【0078】
特定子を決定できない場合(S33でNO)、ゾーンECU20は、エラーログを記録し(S36)、特定子が未決定であることをセントラルECU10に通知し(S37)、セントラルECU10は後述のステップS14の処理を行う。
【0079】
セントラルECU10は、特定子を決定済として記録し(S13)、後述のステップS15の処理を行う。また、セントラルECU10は、特定子を未決定として記録し(S14)、特定子が未決定のゾーンECU20の有無を判定する(S15)。特定子が未決定のゾーンECU20がある場合(S15でYES)、セントラルECU10は、特定子が未決定のゾーンECUの特定子を決定し、ゾーンECU20に通知し(S16)、ゾーンECU20は後述のステップS38の処理を行う。特定子が未決定のゾーンECU20がない場合(S15でNO)、セントラルECU10は、処理を終了する。
【0080】
ゾーンECU20は、セントラルECU10から特定子の通知の有無を判定し(S38)、通知がない場合(S38でNO)、ステップS38の処理を続ける。通知があった場合(S38でYES)、ゾーンECU20は、特定子を決定し(S39)、処理を終了する。
【0081】
本実施の形態において、各ゾーンECUは、電力分配器としての機能も備えることができる。例えば、バッテリからの電力を、ゾーンECUを介して、デバイスへ供給することができる。
【0082】
以上に開示された実施の形態及び実施例は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本開示の範囲は、以上の実施の形態及び実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての修正や変形を含むものと意図される。
【符号の説明】
【0083】
1、2 通信線
10 セントラルECU
11 制御部
12 通信部
13 記憶部
20 ゾーンECU
21 制御部
22 通信部
23 広域通信部
24 記憶部
25 エラーログ記録部
31、32、33、34、35、36、37 デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9