(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182807
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】遺伝子およびタンパク質の発現を検出する生体分子プローブおよびその検出方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20231219BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20231219BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20231219BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALN20231219BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12N15/09 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6888 Z
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180942
(22)【出願日】2023-10-20
(62)【分割の表示】P 2020542878の分割
【原出願日】2019-02-11
(31)【優先権主張番号】62/629,180
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/771,212
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513322707
【氏名又は名称】ナノストリング テクノロジーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197169
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 潤二
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ ビーチェム
(72)【発明者】
【氏名】テ キム
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット ホアン
(72)【発明者】
【氏名】マーク グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】エリン ピアザ
(72)【発明者】
【氏名】デニース チョウ
(57)【要約】
【課題】遺伝子およびタンパク質の発現を検出する生体分子プローブおよびその検出方法の提供。
【解決手段】本発明は、特に、利用者規定の組織領域、利用者規定の細胞、および/または細胞内の利用者規定の細胞内構造における、タンパク質および/または核酸の発現を同時に多重化検出および定量するための、既存の配列決定技術での使用に適応可能なプローブ、組成物、方法、およびキットに関する。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法であって、以下:
(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメイン及び識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、ここで識別子オリゴヌクレオチドは、前記標的結合ドメインに結合した前記標的検体を識別する固有の核酸配列を含む、工程;
(2)前記識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を前記組織試料の位置に加える工程;
(3)解放された前記識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程;
(4)解放された前記識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、
ここで前記第1の核酸プローブは、
前記識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、
固有の分子識別子を含む核酸配列、および
第1の増幅プライマー結合部位を含み、
ここで前記第2の核酸プローブは、
前記識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、および
第2の増幅プライマー結合部位を含み、
ここで前記第1および第2の核酸プローブは、前記第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように前記識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程;
(5)ハイブリダイズされた前記第1および第2の核酸プローブを共に連結する工程; (6)工程(5)で生成された前記連結産物を増幅する工程;および
(7)工程(6)で生成された前記増幅産物を配列決定して前記解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の前記少なくとも1つの細胞内の前記少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記連結産物を増幅する工程は、PCRを実施する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PCRを実施する工程は、第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマーを含み、 ここで前記第1の増幅プライマーは、
第1のフローセル結合部位、
前記識別子オリゴヌクレオチドが解放された前記組織試料の前記特定の位置を識別する第1の核酸配列、および
前記第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列
を含み;
ここで前記第2の増幅プライマーは、
第2のフローセル結合部位、
前記識別子オリゴヌクレオチドが解放された前記試料の前記特定の位置を識別する第2の核酸配列、および
前記第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記増幅プライマーのうちの少なくとも1つは親和性分子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記標的結合ドメインに結合した前記標的検体を識別する前記固有の核酸配列は、約10ヌクレオチド~約50ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記増幅プライマー結合部位のうちの少なくとも1つは、約20~約50ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法であって、以下:
(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインおよび識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程であって、
ここで前記識別子オリゴヌクレオチドは、
前記標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、
固有の分子識別子を含む核酸配列、
第1の増幅プライマー結合部位、および
第2の増幅プライマー結合部位
を含む、工程;
(2)前記識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を前記組織試料の位置に加える工程;
(3)前記解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程;
(4)前記採取された識別子オリゴヌクレオチドを増幅する工程;および
(5)工程(4)で生成された前記増幅産物を配列決定して前記解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の前記少なくとも1つの細胞内の前記少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程
を含む、方法。
【請求項8】
前記採取された識別子オリゴヌクレオチドを増幅する工程は、PCRを実施する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記PCRを実施する工程は、第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマーを含み、
ここで前記第1の増幅プライマーは、
第1のフローセル結合部位、
前記識別子オリゴヌクレオチドが解放された前記組織試料の前記特定の位置を識別する第1の核酸配列、および
前記第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列
を含み;
ここで前記第2の増幅プライマーは、
第2のフローセル結合部位、
前記識別子オリゴヌクレオチドが解放された前記試料の前記特定の位置を識別する第2の核酸配列、および
前記第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フローセル結合部位のうちの少なくとも1つは、配列決定に適するフローセルアダプター配列を含む、請求項3または9に記載の方法。
【請求項11】
前記フローセル結合部位のうちの少なくとも1つは、P5フローセルアダプター配列を含み、ここで前記P5フローセルアダプター配列は配列番号3に記載の配列を含む、請求項3または9に記載の方法。
【請求項12】
前記フローセル結合部位のうちの少なくとも1つは、P7フローセルアダプター配列を含み、前記P7フローセルアダプター配列は配列番号4に記載の配列を含む、請求項3または9に記載の方法。
【請求項13】
前記フローセル結合部位のうちの少なくとも1つは、約15~約40ヌクレオチドを含む、請求項3または9に記載の方法。
【請求項14】
前記標的結合ドメインに結合した前記標的検体を識別する前記固有の核酸配列は、約5ヌクレオチド~約25ヌクレオチドを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記増幅プライマー結合部位のうちの少なくとも1つは、約10~約40ヌクレオチドを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記増幅プライマー結合部位のうちの少なくとも1つはi7配列を含み、ここで前記i7配列は配列番号1に記載の配列を含む、請求項1または7に記載の方法。
【請求項17】
前記増幅プライマー結合部位のうちの少なくとも1つはi5配列を含み、ここで前記i5配列は配列番号2に記載の配列を含む、請求項1または7に記載の方法。
【請求項18】
前記識別子オリゴヌクレオチドが解放された前記組織試料の前記特定の位置を識別する前記核酸配列のうちの少なくとも1つは、約1~約20ヌクレオチドを含む、請求項3または9に記載の方法。
【請求項19】
固有の分子識別子を含む前記核酸配列は、約5~約20ヌクレオチドを含む、請求項1または7に記載の方法。
【請求項20】
前記標的結合ドメインは、約10ヌクレオチド~約70ヌクレオチドを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景技術
本出願は、2018年2月12日に出願された米国仮出願第62/629,180号、および2018年11月26日に出願された米国仮出願第62/771,212号の優先権およびそれらの利益を主張する。前述のそれぞれの特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列リスト
本出願は、EFS-Webを通してASCII方式で提出された配列一覧を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2019年2月1日に作成された前記ASCIIの複製物は、「NATE-037_001WO.txt」と命名され、容量は48.4KBである。
【背景技術】
【0003】
標準的な免疫組織化学的かつin situハイブリダイズ法は、最大で6~10個、典型的には3~4個のタンパク質または核酸標的の同時検出を可能にする。組織の利用者規定の領域、利用者規定の細胞、および/または細胞内の利用者規定の部分細胞組織中のタンパク質発現および/または核酸発現の同時多重検出および定量のために、プローブ、組成物、方法、およびキットが必要とされている。さらに、多数の最終利用者に既に活用されている既存の配列決定技術での使用に適合可能なこのようなシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、組織の利用者規定の領域、利用者規定の細胞、および/または細胞内の利用者規定の部分細胞組織でのタンパク質発現および/または核酸発現の同時多重の空間的検出および定量のためのプローブ、組成物、方法、およびキットに関する。
【0005】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、第2の増幅プライマー結合部位、および任意に連結の偏りを最小にするための定常核酸配列を含む少なくとも1つの核酸アダプターを連結する工程、(5)工程(4)で生成された連結産物を増幅する工程、および(6)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含む。
【0006】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、固有の分子識別子を含む核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、第2の増幅プライマー結合部位、および任意に連結の偏りを最小にするための定常核酸配列を含む少なくとも1つの核酸アダプターを連結する工程であって、ここで第1または第2の増幅プライマー結合部位の少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する、工程、(5)工程(4)で生成された連結産物を増幅する工程、および(6)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含む。
【0007】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、固有の分子識別子を含む核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、第2の増幅プライマー結合部位、および任意に連結の偏りを最小にするための定常核酸配列を含む少なくとも1つの核酸アダプターを連結する工程であって、ここで前記第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む、工程、(5)第1の増幅プライマー結合部位に結合できる第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマー結合部位に結合できる第2の増幅プライマーを用いて、工程(4)で生成された伸長産物を増幅する工程、および(6)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含む。
【0008】
工程(4)の核酸アダプターは、部分的に二本鎖の核酸分子であってもよい。部分的に二本鎖の核酸アダプターは、二本鎖アニール領域、第1の一本鎖不一致領域および第2の一本鎖不一致領域を含んでもよい。第1の一本鎖不一致領域および第2の一本鎖不一致領域は、二本鎖アニール領域の反対側に存在してもよい。
【0009】
識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。
【0010】
連結の偏りを最小にするための定常核酸配列は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。
【0011】
固有の分子識別子は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの第1または第2の一本鎖不一致領域の少なくとも一つに存在してもよい。
【0012】
第1の増幅プライマー結合部位は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの第1の一本鎖不一致領域に存在してもよく、第2の増幅プライマー結合部位は、同じ部分的に二本鎖の核酸アダプターの第2の一本鎖不一致領域に存在してもよい。
【0013】
前述の本開示の方法はさらに、工程(4)の前に、末端修復反応を実施する工程を含んでもよい。この方法はさらに、工程(4)の前に、付加(tailing)反応を実施して、単一ヌクレオチドの突出部を識別子オリゴヌクレオチドの3’末端に結合させる工程を含んでもよい。この方法はさらに、工程(4)の前に、末端修復反応および付加反応を実施して、単一ヌクレオチドの突出部を識別子オリゴヌクレオチドの3’末端に結合させる工程を含んでもよい。付加反応および末端修復反応は、順次に、あるいは同時に実施してもよい。
【0014】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに第1の増幅プライマー結合部位および標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、第2の増幅プライマー結合部位、および任意に連結の偏りを最小にするための定常核酸配列を含む少なくとも1つの核酸アダプターを連結する工程、(5)工程(4)で生成された連結産物を増幅する工程、および(6)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含む。
【0015】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに第1の増幅プライマー結合部位および標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、固有の分子識別子を含む核酸配列、第2の増幅プライマー結合部位、および任意に連結の偏りを最小にするための定常核酸配列を含む少なくとも1つの核酸アダプターを連結する工程、(5)第1の増幅プライマー結合部位に結合できる第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマー結合部位に結合できる第2の増幅プライマーを用いて、工程(4)で生成された伸長産物を増幅する工程であって、ここで前記増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む、工程、および(6)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含む。
【0016】
工程(4)の核酸アダプターは、部分的に二本鎖の核酸分子であってもよい。部分的に二本鎖の核酸アダプターは、二本鎖アニール領域および一本鎖不一致領域を含んでもよい。
【0017】
識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。
【0018】
連結の偏りを最小にするための定常核酸配列は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。定常核酸配列はまた、切断可能な部分を含んでもよい。切断可能な部分は、酵素により切断可能な部分であってもよい。酵素により切断可能な部分は、ユーザー(USER)配列であってもよい。
【0019】
固有の分子識別子は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの一本鎖不一致領域内に存在してもよい。
【0020】
第2の増幅プライマー結合部位は、部分的に二本鎖の核酸アダプターの一本鎖不一致領域に存在してもよい。
【0021】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに第1の増幅プライマー結合部位および標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、識別子オリゴヌクレオチドの固有の核酸配列に相補的な領域、固有の分子識別子を含む核酸配列、第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列、および任意に親和性分子を含む一本鎖の核酸鋳型をハイブリダイズする工程、(5)工程(4)の識別子オリゴヌクレオチドを伸長させて、識別子オリゴヌクレオチド、固有の分子識別子に相補的な核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含む、一本鎖の核酸鋳型に相補的な伸長産物を生成する工程、(6)第1の増幅プライマー結合部位に結合できる第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマー結合部位に結合できる第2の増幅プライマーを用いて、工程(5)で生成された伸長産物を増幅する工程であって、ここで前記第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む、工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0022】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに第1の増幅プライマー結合部位および標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、識別子オリゴヌクレオチドの固有の核酸配列に相補的な領域、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列、および任意に親和性分子を含む一本鎖の核酸鋳型をハイブリダイズする工程、(5)工程(4)の識別子オリゴヌクレオチドを伸長させて、識別子オリゴヌクレオチド、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列に相補的な核酸配列、固有の分子識別子に相補的な核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含む、一本鎖の核酸鋳型に相補的な伸長産物を生成する工程、(6)工程(5)で生成された伸長産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0023】
一本鎖の核酸鋳型はさらに、親和性分子を含んでもよい。一本鎖の核酸鋳型が親和性分子を含む側面では、前述の本開示の方法はさらに、工程(4)と(5)の間に親和性の精製工程を含んでもよい。
【0024】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、固有の分子識別子を含む核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズされた第1および第2の核酸プローブが共に連結されるようにニック修復(nick repair)を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0025】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸および第1の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸および第2の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、固有の分子識別子を含む核酸配列を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、隣接しているが重ならないように、識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズされた第1および第2の核酸プローブが共に連結されるようにニック修復を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0026】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、固有の分子識別子を含む核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズされた第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、間隙伸長(gap extension)およびニック修復反応を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0027】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、および第1の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、および第2の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、固有の分子識別子を含む核酸配列を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズされた第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、間隙伸長およびニック修復反応を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0028】
識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列が第1の核酸プローブに位置する側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、第1の増幅プライマー結合部位の5’に位置してもよい。
【0029】
固有の分子識別子が第2の核酸プローブに位置する側面では、固有の分子識別子は、第2の増幅プライマー結合部位の3’に位置してもよい。
【0030】
識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および固有の分子識別子が第1の核酸プローブに存在する側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および固有の分子識別子は、第1の増幅プライマー結合部位の5’に位置してもよい。
【0031】
識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および固有の分子識別子が第2の核酸プローブに存在する側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および固有の分子識別子は、第2の増幅プライマー結合部位の3’に位置してもよい。
【0032】
固有の分子識別子が第1の核酸プローブに存在し、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列が第2の核酸プローブに存在する側面では、固有の分子識別子は、第1の増幅プライマー結合部位の5’に位置してもよく、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、第2の増幅結合部位の3’に位置してもよい。
【0033】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、第1の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第1のフローセル結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、第2の固有の分子識別子を含む核酸配列、第3の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第2のフローセル結合部位を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズした第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、ニック修復反応を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0034】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、第1の増幅プライマー結合部位、第1の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第1のフローセル結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、第2の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第2のフローセル結合部位を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、第3の固有の分子識別子を含む核酸配列を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程(5)ハイブリダイズされた第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、ニック修復を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0035】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、第1の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第1のフローセル結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸、第2の固有の分子識別子を含む核酸配列、第3の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第2のフローセル結合部位を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズされた第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、間隙伸長およびニック修復反応を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0036】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸、第1の増幅プライマー結合部位、第1の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第1のフローセル結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸、第2の固有の分子識別子を含む核酸配列、および第2のフローセル結合部位を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、第3の固有の分子識別子を含む核酸配列を含み、ここで第1または第2の核酸プローブの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズされた第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、間隙伸長およびニック修復反応を実施する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0037】
識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および第1の固有の分子識別子が第1の核酸プローブに存在する側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および第1の固有の分子識別子は、第1のフローセル結合部位の5’に位置してもよい。
【0038】
第2および第3の固有の分子識別子が第2の核酸プローブに存在する側面では、第2および第3の固有の分子識別子は、第2のフローセル結合部位の3’に位置してもよい。
【0039】
側面によっては、第1の固有の分子識別子は、第1の核酸プローブに存在してもよく、第1のフローセル結合部位の5’に位置してもよい。他の側面では、第2の固有の分子識別子は、第2の核酸プローブに存在してもよく、第2のフローセル結合部位の3’に位置してもよい。
【0040】
側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および第3の固有の分子識別子は、第1の核酸プローブに存在してもよく、第1のフローセル結合部位の5’に位置してもよい。
【0041】
側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および第3の固有の分子識別子は、第2の核酸プローブに存在してもよく、第2のフローセル結合部位の3’に位置してもよい。
【0042】
側面によっては、第3の固有の分子識別子は、第1の核酸プローブに存在してもよく、第1のフローセル結合部位の5’に位置してもよい。これと同じ側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、第2の核酸プローブに存在してもよく、第2のフローセル結合部位の3’に位置してもよい。
【0043】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、および第2の増幅プライマー結合部位を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)第1の増幅プライマー結合部位に結合できる第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマー結合部位に結合できる第2の増幅プライマーを用いて、解放された識別子オリゴヌクレオチドを増幅する工程であって、ここで前記第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む、工程、および(5)工程(4)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0044】
本開示はまた、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、および第2の増幅プライマー結合部位を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)第1の増幅プライマー結合部位に結合できる第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマー結合部位に結合できる第2の増幅プライマーを用いて、解放された識別子オリゴヌクレオチドを増幅する工程であって、ここで前記第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含み、ここで前記第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、固有の分子識別子を含む核酸配列を含む、工程、および(5)工程(4)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0045】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列および捕捉プローブ結合部位を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、親和性分子および捕捉プローブ結合部位に相補的な領域を含む捕捉プローブをハイブリダイズする工程、および(5)工程(4)で生成された増幅ハイブリダイズ産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0046】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、捕捉プローブ結合部位、および多重プローブ結合部位を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、親和性分子および捕捉プローブ結合部位に相補的な領域を含む捕捉プローブ、ならびに識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列および多重プローブ結合部位に相補的な領域を含む多重プローブをハイブリダイズする工程、および(5)工程(4)で生成されたハイブリダイズ産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0047】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程であって、ここで第1の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、および第2の増幅プライマー結合部位を含み、ここで第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする、工程、(5)ハイブリダイズした第1および第2の核酸プローブを共に連結する工程、(6)工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0048】
本開示は、組織試料からの少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する方法を提供し、この方法は、(1)組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を、標的結合ドメインならびに標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、第1の増幅プライマー結合部位、および第2の増幅プライマー結合部位を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む少なくとも1つのプローブと接触させる工程、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を組織試料の位置に加える工程、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程、(4)採取された識別子オリゴヌクレオチドを増幅する工程、および(5)工程(4)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出することを含む。
【0049】
本開示のすべての方法では、連結工程は、ニック連結工程であってもよい。ニック連結工程は、ニック修復工程であってもよい。
【0050】
本開示のすべての方法では、配列決定は、酵素を含まない配列決定法であってもよい。
【0051】
本開示のすべての方法では、識別子オリゴヌクレオチドは二本鎖であってもよい。識別子オリゴヌクレオチドが二本鎖である側面では、識別子オリゴヌクレオチドの2つの鎖のうちの少なくとも1つは、少なくとも2つの異なる核酸分子を含んでもよい。あるいは、識別子オリゴヌクレオチドの少なくとも1つの3’末端は、単一のヌクレオチド突出部を含んでもよい。
【0052】
本開示のすべての方法では、識別子オリゴヌクレオチドは、一本鎖であってもよい。
【0053】
本開示のすべての方法では、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列は、約5ヌクレオチド~約40ヌクレオチド、好ましくは約35ヌクレオチド、さらに好ましくは約10ヌクレオチドを含んでもよい。
【0054】
本開示のすべての方法では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、約6ヌクレオチド~約15ヌクレオチド、好ましくは約12ヌクレオチド、さらに好ましくは約10ヌクレオチドを含んでもよい。
【0055】
本開示のすべての方法では、第1の核酸プローブまたは第2の核酸プローブの少なくとも1つは、親和性分子を含んでもよい。例えば、第1の核酸プローブまたは第2の核酸プローブの少なくとも1つは、ビオチンを含んでもよい。
【0056】
本開示のすべての方法では、増幅プライマー結合部位は、約18ヌクレオチド~約40ヌクレオチド、好ましくは約32ヌクレオチド、さらに好ましくは約25ヌクレオチドを含んでもよい。増幅プライマー結合部位は、i7配列を含んでもよく、このi7配列は、配列番号1に記載の配列を含む。増幅プライマー結合部位は、i5配列を含んでもよく、このi5配列は、配列番号2に記載の配列を含む。
【0057】
本開示のすべての方法では、増幅プライマーは、フローセルアダプター配列を含んでもよく、このフローセルアダプター配列は、配列決定をするのに適している。増幅プライマーは、P5フローセルアダプター配列を含んでもよく、このP5フローセルアダプター配列は、配列番号3に記載の配列を含む。増幅プライマーは、P7フローセルアダプター配列を含んでもよく、このP7フローセルアダプター配列は、配列番号4に記載の配列を含む。
【0058】
本開示のすべての方法では、フローセル結合部位は、フローセルアダプター配列を含んでもよく、このフローセルアダプター配列は、配列決定をするのに適している。フローセル結合部位は、P5フローセルアダプター配列を含んでもよく、このP5フローセルアダプター配列は、配列番号3に記載の配列を含む。フローセル結合部位は、P7フローセルアダプター配列を含んでもよく、このP7フローセルアダプター配列は、配列番号4に記載の配列を含む。
【0059】
本発明のすべての方法では、第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、親和性分子を含んでもよい。例えば、第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つはビオチンを含んでもよい。
【0060】
本開示のすべての方法では、増幅は、PCRを実施することを含んでもよい。PCRの実施には、増幅プライマーを含んでもよい。
【0061】
増幅プライマーは、フローセル結合部位を含んでもよい。増幅プライマーは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含んでもよい。増幅プライマーは、増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでもよい。
【0062】
上記のいずれの側面も、その他のいずれの側面と組み合わせてもよい。
【0063】
別途定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が通常理解しているのと同じ意味を有する。本明細書では、文脈中に明確な指示がない限り、単数形には複数形も含まれ、例として、「a」、「an」、および「the」という用語は単数または複数であると理解され、「or」という用語は包括的であると理解される。例として、「1つの要素」は、1つ以上の要素を意味する。本明細書を通して、「含むこと(comprising)」という単語、または「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」などの変形例は、記述された要素、整数または工程、あるいは要素、整数または工程の群を含むことを意味するが、その他の要素、整数または工程、あるいは要素、整数または工程の群の排除を意味しないと理解される。「約」とは、記載された数値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解してもよい。文脈に別途明確にされない限り、本明細書で提供されるすべての数値は、「約」という用語によって加減されている。
【0064】
本明細書での記載と同様または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用してもよいが、適切な方法および材料は、以下に記載される通りである。本明細書で記載されるすべての出版物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれている。本明細書で引用される参考文献は、請求される本発明の先行技術であるとは認められない。矛盾がある場合には、定義を含んで本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は、単に例示であり、限定することを意図するものではない。本開示のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求項から明らかになる。
【0065】
上記の特徴かつさらなる特徴は、添付の図面と併せて解釈すると、以下の詳細な説明からより明確に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、本開示の二末端アダプター連結法の概略図である。
【0067】
【
図2】
図2は、本開示の一末端アダプター連結法の概略図である。
【0068】
【
図3】
図3は、本開示の鋳型プライマー伸長法の概略図である。
【0069】
【
図4】
図4は、本開示の鋳型を伸長した識別子オリゴヌクレオチドの概略図である。
【0070】
【
図5】
図5は、本開示の短プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0071】
【
図6】
図6は、本開示の短プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0072】
【
図7】
図7は、本開示の短プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0073】
【
図8】
図8は、本開示の長プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0074】
【
図9】
図9は、本開示の長プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0075】
【
図10】
図10は、本開示の長プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【
図14】
図14は、標的核酸に間接的に結合する本開示のプローブの概略図である。
【0080】
【
図15】
図15は、本開示の識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の概略図である。
【0081】
【
図16】
図16は、本開示の短プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0082】
【
図17】
図17は、本開示の識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の概略図である。
【0083】
【
図18】
図18は、本開示の短プローブハイブリダイズ法の概略図である。
【0084】
【0085】
【0086】
【
図21-1】
図21は、本開示の方法を用いるタンパク質標的検体の空間的検出を示す。
【0087】
【
図22-1】
図22は、本開示の方法を用いるRNA標的検体の空間的検出を示す。
【0088】
【
図23】
図23は、本開示の方法を用いるタンパク質標的検体の空間的検出を示す。
【0089】
【
図24】
図24は、本開示の方法を用いるRNA標的検体の空間的検出を示す。
【0090】
【
図25】
図25は、本開示の方法を用いるタンパク質標的検体の空間的検出を示す。
【0091】
【0092】
【
図27】
図27は、本開示の方法でのプローブタイリング(tiling)の使用を示す。
【0093】
【
図28】
図28は、組織のマイクロアレイ上に選択された対象領域を示す。
【0094】
【
図29】
図29は、本開示の方法を用いて達成された読取り深さを示す一連のグラフである。
【0095】
【
図30】
図30は、本開示の方法を用いる、陰性対照試料中のRNA標的検体の空間的検出を示す一連のグラフである。
【0096】
【
図31】
図31は、本開示の方法を用いる、HEK293試料(上部図)およびジャーカット(Jurkat)細胞試料(下部図)中のRNA標的検体の空間的検出を示す一連のグラフである。
【0097】
【
図32-1】
図32は、本開示の方法を用いる、16個のFFPE試料中のRNA標的検体の空間的検出を示す一連のグラフである。
【0098】
【
図33】
図33は、本開示の方法を用いる、HEK293試料中のRNA標的検体の空間的検出を示すグラフである。
【0099】
【
図34】
図34は、本開示の方法を用いる、ジャーカット細胞試料中のRNA標的検体の空間的検出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明の詳細な説明
本開示は、既存の配列決定法を用いて、組織中の利用者規定の領域、利用者規定の細胞、および/または細胞内の利用者規定の部分細胞組織でのタンパク質発現および/または核酸発現を同時に多重かつ空間的に検出および定量するためのプローブ、組成物、方法、およびキットに、一部基づいている。
【0101】
本開示は、第1の対象領域(例えば、組織型、(正常細胞および異常細胞を含む)細胞、および細胞内の部分細胞組織)内に存在する標的タンパク質および/または標的核酸の識別および存在量、および第2の対象領域内に存在する標的タンパク質および/または標的核酸の識別および存在量を比較する。対象領域の数および実行可能な比較の数には所定の上限はなく、その上限は、試料のサイズに対する対象領域のサイズに関与している。例として、1個の細胞が対象領域である場合に、1つの断片には数百から数千の対象領域が存在する可能性があるが、組織断片に2種類の細胞型しか含まれないのなら、その断片には、(それぞれが1つの細胞型のみを含む)2つの対象領域しか存在しないことになる。
【0102】
本開示は、標準的な免疫組織化学的またはin situハイブリダイズ法により可能となる多重処理に比較して、より多くの多重処理を提供する。標準的な免疫組織化学的方法では、最大で6~10個、より典型的には3~4個のタンパク質標的を同時に検出可能である。同様にin situハイブリダイズ法では、10個未満の核酸標的の同時検出が限界となる。本開示は、試料の規定領域からの核酸標的および/またはタンパク質標的の多くの組合せによる検出を提供する。本開示は、デジタル化定量によって客観測定数を増やすことができ、かつ信頼性および一貫性を向上でき、それにより多数の対象間での結果の比較が可能になる。
【0103】
本開示の様々な組成物および方法は、本明細書に細部にわたり詳細に記載されている。
【0104】
一側面では、本開示は、本明細書で「二末端アダプター連結法」と呼ばれる方法で本開示のプローブを用いて、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0105】
本開示の二末端アダプター連結法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を、本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる工程を含んでもよい。本開示のプローブおよび試料は、本明細書にさらに詳細に説明される。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。
【0106】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、二末端アダプター連結法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を試料の位置に加える工程を含んでもよい。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間に光切断性リンカーを含む側面では、対象領域は、光切断性リンカーを切断可能とするのに十分な波長の光によって励起される。
【0107】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、二末端アダプター連結法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の位置のみに力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドは、その位置内のプローブのみから解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、その位置内の標的に結合しているプローブのみに対して採取され、それによって、その位置内にのみ配置される標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0108】
解放された識別子オリゴヌクレオチドの採取後に、二末端アダプター連結法はさらに、(4)工程(3)で採取された解放された識別子オリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの核酸アダプターを連結する工程を含んでもよい。
【0109】
核酸アダプターは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含んでもよい。例えば、識別子オリゴヌクレオチドが「ROI#1」と命名された試料の位置から解放されるのなら、核酸アダプターは「ROI#1」に対応する核酸配列を含むと思われる。
【0110】
核酸アダプターはまた、固有の分子識別子を含んでもよい。
【0111】
核酸アダプターはまた、第1の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。別の側面では、核酸アダプターはまた、第2の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。
【0112】
側面によっては、核酸アダプターはまた、特定の識別子オリゴヌクレオチドの配列の差異によってもたらされる連結の偏りを最小にするために、定常核酸配列を含んでもよい。
【0113】
核酸アダプターは、部分的に二本鎖の核酸分子であってもよい。核酸アダプターが部分的に二本鎖である側面では、核酸アダプターは、二本鎖アニール領域、第1の一本鎖不一致領域、および第2の一本鎖不一致領域を含む。第1の一本鎖不一致領域および第2の一本鎖不一致領域は、二本鎖アニール領域の反対側に存在してもよい。
【0114】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列は、核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。
【0115】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ連結の偏りを最小にするために定常核酸配列を含む側面では、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列は、核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。
【0116】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ固有の分子識別子を含む側面では、固有の分子識別子は、核酸アダプターの第1または第2の一本鎖不一致領域の少なくとも1つに存在してもよい。
【0117】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ第1および第2の増幅プライマー結合部位を含む側面では、第1の増幅プライマー結合部位は、核酸アダプターの第1の一本鎖不一致領域に存在してもよく、第2の増幅プライマー結合部位は、核酸アダプターの第2の一本鎖不一致領域に存在してもよい。
【0118】
少なくとも1つの核酸アダプターの連結後に、二末端アダプター連結法はさらに、(5)第1および第2の増幅プライマー結合部位に結合する増幅プライマーを用いて、工程(4)で生成された連結産物を増幅する工程を含んでもよく、(6)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放されたオリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含んでもよい。
【0119】
本開示の二末端アダプター連結法はさらに、工程(4)の前に、当技術分野で既知の方法を用いて末端修復反応を実施する工程を含んでもよい。この方法はさらに、工程(4)の前に、当技術分野で既知の方法を用いて、単一のヌクレオチド突出部を識別子オリゴヌクレオチドの3’末端に結合させる付加反応を実施する工程を含んでもよい。側面によっては、末端修復反応および付加反応は、順次に、または同時に実施してもよい。
【0120】
二末端アダプター連結法の好ましい側面では、核酸アダプターは、解放・採取された識別子オリゴヌクレオチドの両末端に連結される。
【0121】
二末端アダプター連結法の他の側面では、工程(4)で生成された連結産物を増幅する工程(5)で用いられる第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む。例えば、識別子オリゴヌクレオチドが「ROI#1」と命名された試料の位置から解放された場合に、第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、「ROI#1」に対応する核酸配列を含むと思われる。
【0122】
図1は、本開示の二末端アダプター連結法の好ましい側面の概略図を示す。この側面では、プローブは、標的タンパク質に結合する抗体を含む標的結合ドメインを含む。左上部の図では、プローブが標的タンパク質に結合している。右上部の図では、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間に位置するUV光切断性リンカーが切断されて、識別子オリゴヌクレオチドが解放されている。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的タンパク質を識別する固有の核酸配列を含む。下部の図では、核酸アダプターは、識別子オリゴヌクレオチドの両末端に連結されている。この非限定的な例では、核酸アダプターは部分的に二本鎖であり、かつ二本鎖アニール領域、第1の一本鎖不一致領域、および第2の一本鎖不一致領域を含む。二本鎖アニール領域には、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列が存在している。第1の一本鎖不一致領域には、第1の増幅プライマー結合部位が存在している。第2の一本鎖不一致領域には、固有の分子識別子および第2の増幅プライマー結合部位が存在している。核酸アダプターの識別子オリゴヌクレオチドへの連結後に、生成物を、第1および第2の増幅プライマー結合部位を結合する増幅プライマーを用いて増幅し、配列決定してプローブが結合する標的タンパク質を識別する。
【0123】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、2つの核酸アダプターに二重に連結された識別子オリゴヌクレオチドの組成物を提供する。2つの核酸アダプターに二重に連結された識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の標的検体を識別可能な固有の核酸配列を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドの各末端は、核酸アダプター分子に結合され、この核酸アダプター分子は、部分的に二本鎖であり、かつ二本鎖アニール領域、第1の一本鎖不一致領域、および第2の一本鎖不一致領域を含む。第1の一本鎖不一致領域および第2の一本鎖不一致領域は、二本鎖アニール領域の反対側に存在する。二本鎖不一致領域は、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列、および試料の特定の位置を識別可能な核酸配列を含む。第1の一本鎖不一致領域は、第1の増幅プライマー結合部位を含む。第2の一本鎖不一致領域は、第2の増幅プライマー結合部位および固有の分子識別子を含む核酸配列を含む。2つの核酸アダプターに二重に連結された識別子オリゴヌクレオチドの概略図を、
図1の下部の図に示す。
【0124】
別の側面では、本開示は、本明細書で「一末端アダプター連結法」と呼ばれる方法で、本開示のプローブを用いて試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0125】
本開示の一末端アダプター連結法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を、本開示の少なくとも1つのプローブと接触させることを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドはまた、第1の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドはまた、単一のヌクレオチド突出部を備える少なくとも1つの3’末端を含む。
【0126】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、一末端アダプター連結法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を試料の特定の位置に加える工程を含んでもよい。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間に光切断性リンカーを含む側面では、対象領域(ROI)は、光切断性リンカーを切断可能とするのに十分な波長の光によって励起される。
【0127】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、一末端アダプター連結法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の場所のみに力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドは、その位置内のプローブからのみ解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、工程(3)でその位置内の標的に結合されたプローブに対してのみ採取され、それによって、その位置内にのみ配置される標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0128】
解放された識別子オリゴヌクレオチドの採取後に、一末端アダプター連結法はさらに、(4)工程(3)で採取した解放されたオリゴヌクレオチドに、少なくとも1つの核酸アダプターを連結する工程を含んでもよい。
【0129】
核酸アダプターは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含んでもよい。例えば、識別子オリゴヌクレオチドが「ROI#1」と命名された試料の位置から解放されるのなら、核酸アダプターは、「ROI#1」に対応する核酸配列を含むと思われる。核酸アダプターはまた、固有の分子識別子を含んでもよい。核酸アダプターはまた、第2の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。
【0130】
側面によっては、核酸アダプターはまた、特定の識別子オリゴヌクレオチドの配列の差異によってもたらされる連結の偏りを最小にするために、定常核酸配列を含んでもよい。定常核酸配列は、切断可能な部分を含んでもよい。切断可能な部分は、酵素により切断可能であってもよい。非限定的な例では、酵素により切断可能な部分は、ユーザー(USER)配列であってもよく、このユーザー配列は、配列GUGUATUGを含む。
【0131】
核酸アダプターは、上述の形質の任意の組み合わせを含んでもよい。
【0132】
核酸アダプターは、部分的に二本鎖の核酸分子であってもよい。核酸アダプターが部分的に二本鎖である側面では、核酸アダプターは、二本鎖アニール領域および一本鎖不一致領域を含む。
【0133】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列は、核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。
【0134】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ連結の偏りを最小にするために定常核酸配列を含む側面では、連結の偏りを最小にする定常核酸配列は、核酸アダプターの二本鎖アニール領域に存在してもよい。
【0135】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ固有の分子識別子を含む側面では、固有の分子識別子は、一本鎖の不一致領域に存在してもよい。
【0136】
核酸アダプターが部分的に二本鎖であり、かつ第2の増幅プライマー結合部位を含む側面では、第2の増幅プライマー結合部位は、核酸アダプターの一本鎖不一致領域に存在してもよい。
【0137】
少なくとも1つの核酸アダプターの連結後に、二末端アダプター連結法はさらに、(5)工程(4)で生成された連結産物を増幅する工程を含んでもよく、(6)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放されたオリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含んでもよい。
【0138】
本開示の一末端アダプター連結法の他の側面では、工程(4)で生成された連結産物を増幅するために工程(5)で用いられる第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む。例えば、識別子オリゴヌクレオチドが「ROI#1」と命名された試料の位置から解放されるのなら、増幅プライマーの少なくとも1つは、「ROI#1」に対応する核酸配列を含むと思われる。
【0139】
図2は、本開示の一末端アダプター連結法の好ましい側面の概略図を示す。この側面では、プローブは、標的タンパク質に結合する抗体である標的結合ドメインを含む。左上部の図では、プローブは標的タンパク質に結合している。右上部の図では、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間に配置されるUV光切断性リンカーが切断され、識別子オリゴヌクレオチドが解放されている。識別子オリゴヌクレオチドは、標的タンパク質を識別する固有の核酸配列および第1の増幅プライマー結合部位を含む。この非限定的な例では、識別子オリゴヌクレオチドは、3種の異なる核酸分子を含む1本の鎖を備える2本鎖である。識別子オリゴヌクレオチドはまた、単一のヌクレオチド突出部を備えた1つの3’末端を含む。
【0140】
図2の下部の図では、核酸アダプターは、3’単一ヌクレオチド突出部を含む識別子オリゴヌクレオチドの末端に連結される。この非限定的な例では、核酸アダプターは、部分的に二本鎖であり、かつ二本鎖アニール領域および一本鎖不一致領域を含む。二本鎖アニール領域には、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列が存在する。一本鎖不一致領域には、固有の分子識別子および第2の増幅プライマー結合部位が存在する。核酸アダプターの識別子オリゴヌクレオチドへの連結後に、生成物を、第1および第2の増幅プライマー結合部位に結合する増幅プライマーを用いて増幅し、配列決定してプローブが結合する標的タンパク質を識別する。
【0141】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、1つの核酸アダプターに連結された識別子オリゴヌクレオチドの組成物を提供する。1つの核酸アダプターに連結された識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位を含む識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドの一末端は、核酸アダプター分子に結合され、この核酸アダプター分子は、部分的に二本鎖であり、かつ二本鎖アニール領域ならびに一本鎖不一致領域および第2の一本鎖不一致領域を含む。二本鎖不一致領域は、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列、および試料の特定の位置を識別できる核酸配列を含む。一本鎖不一致領域は、第2の増幅プライマー結合部位を含む。1つの核酸アダプターに連結された識別子オリゴヌクレオチドの概略図を、
図2の下部の図に示す。
【0142】
別の側面では、本開示は、本明細書で「鋳型プライマー伸長法」と呼ばれる方法で、本開示のプローブを用いて試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0143】
本開示の鋳型プライマー伸長方法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を、本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる工程を含んでもよい。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドはまた、第1の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。
【0144】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、鋳型プライマー伸長法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を試料の位置に加える工程を含んでもよい。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間に光切断性リンカーを含む側面では、対象領域(ROI)は、光切断性リンカーを切断可能となるのに十分な波長の光により励起される。
【0145】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、鋳型プライマー伸長法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の位置のみに力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドは、その位置内のプローブからのみ解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、工程(3)でその位置内の標的に結合されたプローブに対してのみ採取され、それによって、その位置内にのみ配置する標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0146】
解放された識別子オリゴヌクレオチドの採取後に、鋳型プライマー伸長法はさらに、(4)工程(3)で採取された解放された識別子オリゴヌクレオチドに、一本鎖核酸鋳型をハイブリダイズする工程を含んでもよい。
【0147】
一本鎖核酸鋳型は、識別子オリゴヌクレオチドの固有の核酸配列に相補的な領域を含んでもよく、それにより一本鎖核酸鋳型の採取された識別子オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズが可能となる。
【0148】
一本鎖核酸鋳型はまた、固有の分子識別子を含む核酸配列を含んでもよい。
【0149】
一本鎖核酸鋳型はまた、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含んでもよい。
【0150】
一本鎖核酸鋳型はまた、第2の増幅プライマー結合部位に相補的である核酸配列を含んでもよい。
【0151】
一本鎖核酸鋳型は、上述の形質の任意の組合わせを含んでもよい。
【0152】
識別子オリゴヌクレオチドの一本鎖核酸鋳型へのハイブリダイズ後に、鋳型プライマー伸長法はさらに、(5)工程(4)の識別子オリゴヌクレオチドを伸長して、一本鎖核酸鋳型に相補的な伸長産物を生成する工程であって、ここで伸長産物は、識別子オリゴヌクレオチドおよび一本鎖核酸鋳型に相補的な配列を含む、工程、(6)第1および第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーを用いて、工程(6)の伸長産物を増幅する工程、および(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含み得る。
【0153】
側面によっては、一本鎖核酸鋳型は、親和性分子を含んでもよい。一本鎖核酸鋳型が親和性分子を含む側面では、鋳型プライマー伸長法はさらに、工程(4)と(5)の間に親和性の精製工程を含んでもよい。
【0154】
図3は、本開示の鋳型プライマー伸長法の好ましい側面の概略図を示す。この側面では、プローブは、標的タンパク質に結合する抗体である標的結合ドメインを含む。左上部の図では、プローブは標的タンパク質に結合している。右上部の図では、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間に配置されるUV光切断性リンカーが切断され、識別子オリゴヌクレオチドが解放されている。識別子オリゴヌクレオチドは、標的タンパク質を識別する固有の核酸配列および第1の増幅プライマー結合部位を含む。右下部の図では、識別子オリゴヌクレオチドは、一本鎖核酸鋳型にハイブリダイズしている。この非限定的な例では、一本鎖核酸鋳型は、親和性分子、識別子オリゴヌクレオチドの固有の核酸配列に相補的な核酸配列、第1の固有の分子識別子、および第2の増幅プライマー結合部位に相補的な配列を含む。識別子オリゴヌクレオチドは伸長されて、一本鎖核酸鋳型に相補的な伸長産物を生成する。左下部の図に示すように、伸長産物は、識別子オリゴヌクレオチド、第1の固有の分子識別子に相補的な核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含む。伸長反応に続いて、プライマー伸長産物は、第1および第2の増幅プライマー結合部位に結合する増幅プライマーを用いて増幅される。この非限定的な例では、前記第1および第2の増幅プライマーのうちの1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む。次に増幅産物を配列決定して、プローブが結合した標的タンパク質を識別する。
【0155】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、鋳型伸長識別子オリゴヌクレオチドの組成物を提供する。鋳型伸長識別子オリゴヌクレオチドは、配列決定に適する第1のフローセルアダプター配列、続いて第1の固有の分子識別子、続いて識別子オリゴヌクレオチド、続いて第2の固有の分子識別子、続いて第2の増幅プライマー結合部位、続いて第3の固有の分子識別子、続いて配列決定に適する第2のフローセルアダプター配列を含む。識別子オリゴヌクレオチドは、第1の増幅プライマー結合部位、および試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列を含む。鋳型伸長識別子オリゴヌクレオチドの概略図を
図4の下部の図に示す。
【0156】
別の側面では、本開示は、本明細書で「短プローブハイブリダイズ法」と呼ばれる方法で、本開示のプローブを用いて試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0157】
本開示の短プローブハイブリダイズ法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を、本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる工程を含んでもよい。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。
【0158】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、短プローブハイブリダイズ法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放させるのに十分な力を試料の位置に加えることを含んでもよい。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間に光切断性リンカーを含む側面では、対象領域(ROI)は、光切断性リンカーを切断可能となるのに十分な波長の光により励起される。
【0159】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、短プローブハイブリダイズ法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の位置にのみ力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドは、その位置内のプローブからのみ解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、工程(3)でその位置内の標的に結合されているプローブに対してのみ採取され、それによって、その位置内にのみに配置する標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0160】
解放された識別子オリゴヌクレオチドの採取後に、短プローブハイブリダイズ法はさらに、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズさせる工程を含んでもよい。
【0161】
第1または第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含んでもよい。第1または第2の核酸プローブはまた、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含んでもよい。第1または第2の核酸プローブはまた、固有の分子識別子を含む核酸配列を含んでもよい。第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。
【0162】
第1または第2の核酸プローブは、上述の形質の任意の組合せを含んでもよい。
図5に示す好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列は、第1の増幅プライマー結合部位の5’に位置し、固有の分子識別子は、第2の増幅プライマー結合の3’に位置する。
【0163】
図6に示す別の好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。この同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列および固有の分子識別子は、第1の増幅プライマー結合部位の5’に位置する。
【0164】
図7に示す別の好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。この同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列および固有の分子識別子は、第2の増幅プライマー結合部位の3’に位置する。
【0165】
図15に示す別の好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、固有の分子識別子を含む核酸配列は、第1の増幅結合部位の3’に位置する。
【0166】
図17に示される別の好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、固有の分子識別子を含む核酸配列は、第1の増幅結合部位の5’に位置する。
【0167】
第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブは、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように、識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてもよい。あるいは、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブは、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブが隣接せずにかつ重ならないように、識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてもよい。
【0168】
第1および第2の核酸プローブの識別子オリゴヌクレオチドへのハイブリダイズ後に、ショートプローブハイブリダイズ法はさらに、(5)第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする側面では、例えばニック修復反応を実施して、第1および第2の核酸プローブを共に連結する工程を含んでもよい。あるいは、第1および第2の核酸プローブが隣接せずにかつ重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする側面では、この方法は、例えば間隙伸長反応およびニック修復反応を実施して第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、第1および第2の核酸プローブを共に連結する工程を含む。
【0169】
第1および第2の核酸プローブの連結後に、短プローブハイブリダイズ法はさらに、(6)工程(5)で生成された連結産物を、第1および第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーを用いて増幅する工程を含んでもよく、(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含んでもよい。
【0170】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の組成物を提供する。識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体は、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブにハイブリダイズされた識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列を含む。第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、続いて試料中の特定の位置を識別できる固有の核酸配列、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、続いて固有の分子識別子を含む核酸配列、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の概略図を
図5に示す。
【0171】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の組成物を提供する。識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体は、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブにハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列を含む。第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、続いて固有の分子識別子を含む核酸配列、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含み、この固有の分子識別子を含む核酸配列は、第1の増幅プライマー結合部位の3’に位置する。第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の概略図を
図15に示す。
【0172】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の組成物を提供する。識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体は、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブにハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列を含む。第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、続いて固有の分子識別子を含む核酸配列、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含み、この固有の分子識別子を含む核酸配列は、第1の増幅プライマー結合部位の5’に位置する。第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の概略図を
図17に示す。
【0173】
図16は、典型的な本開示の短プローブハイブリダイズ法の全体概略図を示す。まず試料中の少なくとも1つの標的検体を、本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。
【0174】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の特定の位置に加える。
図16の最上部の図に示すように、識別子オリゴヌクレオチドを解放後に採取する。
【0175】
図16の上から2番目の図に示すように、解放された識別子オリゴヌクレオチドは、次に、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブにハイブリダイズされる。この非限定的な例では、第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。固有の分子識別子を含む核酸配列は、第1の増幅プライマー結合部位の3’に位置する。第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。この非限定的な例では、第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように、識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。識別子オリゴヌクレオチドへのハイブリダイズ後に、第1および第2のプローブは、例えばニック修復反応を実施して、共に連結される。
【0176】
第1および第2の核酸プローブの連結後に、連結産物は、第1および第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーを用いて、PCRにより増幅される。
図16の下部から2番目の図に示すように、第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーは、第1のフローセル結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する第1の核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含む。第1の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーは、第2のフローセル結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された特定の位置を識別する第2の核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含む。次に
図16の最下部の図に示すPCR産物に配列決定を実施し、解放されたオリゴヌクレオチドを識別して、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する。
【0177】
図18は、典型的な本開示の短プローブハイブリダイズ法の全体概略図を示す。まず試料中の少なくとも1つの標的検体を、本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。
【0178】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加える。
図18の最上部の図に示すように、識別子オリゴヌクレオチドを解放後に採取する。
【0179】
図18の上部から2番目の図に示すように、解放された識別子オリゴヌクレオチドは、次に第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブにハイブリダイズされる。この非限定的な例では、第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。固有の分子識別子を含む核酸配列は、第1の増幅プライマー結合部位の5’に位置する。第2の核酸プローブは、第2の増幅プライマー結合部位、および識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含む。この非限定的な例では、第1および第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように、識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。識別子オリゴヌクレオチドへのハイブリダイズ後に、第1および第2のプローブは、例えばニック修復反応を実施して、共に連結される。
【0180】
第1および第2の核酸プローブの連結後に、連結産物は、第1および第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーを用いて、PCRにより増幅される。
図18の下部から2番目の図に示すように、第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーは、第1のフローセル結合部位、識別子のオリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する第1の核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含む。第1の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーは、第2のフローセル結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された特定の位置を識別する第2の核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含む。次に
図18の最下部に示すPCR産物に配列決定を実施し、解放されたオリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する。
【0181】
別の側面では、本開示は、本明細書で「長プローブハイブリダイズ法」と呼ばれる方法で、本開示のプローブを用いて試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0182】
本開示の長プローブハイブリダイズ法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる工程を含んでもよい。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。
【0183】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、長プローブハイブリダイズ法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加える工程を含んでもよい。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間に光切断性リンカーを含む側面では、対象領域(ROI)は、光切断性リンカーを切断可能とするのに十分な波長の光により励起される。
【0184】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、長プローブハイブリダイズ法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の位置のみに力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドはその位置内のプローブからのみ解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、工程(3)でその位置内の標的に結合されたプローブに対してのみ採取され、それによりその位置内にのみ配置する標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0185】
解放された識別子オリゴヌクレオチドの採取後に、長プローブハイブリダイズ法はさらに、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブをハイブリダイズする工程を含んでもよい。
【0186】
第1または第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列を含んでもよい。第1または第2の核酸プローブはまた、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含んでもよい。
【0187】
第1または第2の核酸プローブはまた、第1の固有の分子識別子を含んでもよい。第1または第2の核酸プローブはまた、第2の固有の分子識別子を含んでもよい。第1または第2の核酸プローブはまた、第3の固有の分子識別子を含んでもよい。
【0188】
第1の核酸プローブは、第1の増幅プライマー結合部位を含んでもよい。
【0189】
第1の核酸プローブはまた、第1のフローセル結合部位を含んでもよい。第2の核酸プローブは、第2のフローセル結合部位を含んでもよい。
【0190】
第1および第2の核酸プローブは、上述の形質の任意の組合せを含んでもよい。
図8に示す好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1のフローセル結合部位、第1の固有の分子識別子、第1の増幅プライマー結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2のフローセル結合部位、第2の固有の分子識別子、第3の固有の分子識別子、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列および第1の固有の分子識別子は、第1のフローセル結合部位の5’に位置し、第2および第3の固有の分子識別子は、第2のフローセル結合部位の3’に位置する。
【0191】
図9に示す別の好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1のフローセル結合部位、第1の固有の分子識別子、第2の固有の分子識別子、第1の増幅プライマー結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2のフローセル結合部位、第3の固有の分子識別子、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、第1の固有の分子識別子、第2の固有の分子識別子、および識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列は、第1のフローセル結合部位の5’に位置し、第3の固有の分子識別子は、第2のフローセル結合部位の3’に位置する。
【0192】
図10に示す別の好ましい側面では、第1の核酸プローブは、第1のフローセル結合部位、第1の固有の分子識別子、第1の増幅プライマー結合部位、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。この同じ好ましい側面では、第2の核酸プローブは、第2のフローセル結合部位、第2の固有の分子識別子、第3の固有の分子識別子、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドに相補的な核酸配列を含む。この好ましい側面では、第1の固有の分子識別子は、第1のフローセル結合部位の5’に位置し、第2の固有の分子識別子、第3の固有の分子識別子、および識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列は、第2の増幅プライマー結合部位の3’に位置する。
【0193】
第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように、識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてもよい。あるいは、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブは、第1および第2の核酸プローブが隣接せずにかつ重ならないように、識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズしてもよい。
【0194】
第1および第2の核酸プローブの識別子オリゴヌクレオチドへのハイブリダイズ後に、長プローブハイブリダイズ法はさらに、(5)第1および第2の核酸プローブが隣接しているが重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする側面では、第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、ニック修復反応を実施する工程を含んでもよい。あるいは、第1および第2の核酸プローブが隣接せずにかつ重ならないように識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする側面では、この方法は、第1および第2の核酸プローブが共に連結されるように、間隙伸長およびニック修復反応を実施する工程を含む。
【0195】
この方法はさらに、(6)第1および第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーを用いて、工程(5)で生成された連結産物を増幅する工程を含んでもよく、(7)工程(6)で生成された増幅産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含んでもよい。
【0196】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、識別子オリゴヌクレオチド-長核酸プローブ複合体の組成物を提供する。識別子オリゴヌクレオチド-長核酸プローブ複合体は、第1の核酸プローブおよび第2の核酸プローブにハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列を含む。第1の核酸プローブは、配列決定に適する第1のフローセル結合部位、続いて第1の固有の分子識別子、続いて第1の増幅プライマー結合部位、続いて試料中の特定の位置を識別できる固有の核酸配列、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。第2の核酸プローブは、第2のフローセル結合部位、続いて第2の固有の分子識別子、続いて第3の固有の分子識別子、続いて識別子オリゴヌクレオチドに相補的な領域を含む。識別子オリゴヌクレオチド-短核酸プローブ複合体の概略図を
図8に示す。
【0197】
別の側面では、本開示は、本明細書で「直接PCR法」と呼ばれる方法で、本開示のプローブを用いて試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0198】
本開示の直接PCR法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる工程を含んでもよい。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドはまた、第1の増幅プライマー結合部位、第2の増幅プライマー結合部位、または固有の分子識別子を含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドは、これらの形質の任意の組合せを含んでもよい。これらの形質のいずれも、約1ヌクレオチド~約10ヌクレオチドの定常核酸配列を含む領域に隣接してもよい。
【0199】
少なくとも1つの検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、直接PCR法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加える工程を含む。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間に光切断性リンカーを含む側面では、対象領域(ROI)は、光切断性リンカーを切断可能とするのに十分な波長の光により励起される。
【0200】
直接PCR法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の位置のみに力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドはその位置内のプローブからのみ解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、工程(3)でその位置内の標的に結合されたプローブに対してのみ採取され、それによりその位置内にのみ配置される標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0201】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、直接PCR法はさらに、(4)第1の増幅プライマー結合部位に結合できる第1の増幅プライマーおよび第2の増幅プライマー結合部位に結合できる第2の増幅プライマーを用いて、解放された識別子オリゴヌクレオチドを増幅する工程を含んでもよい。側面によっては、第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む。例えば、識別子オリゴヌクレオチドが「ROI#1」と命名された試料の位置から解放されるのなら、第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは「ROI#1」に対応する核酸配列を含むと思われる。さらに他の側面では、第1および第2の増幅プライマーのうちの少なくとも1つは、固有の分子識別子を含む。
【0202】
増幅後に、本開示の直接PCR法はさらに、(5)工程(5)で生成された増幅産物を配列決定して解放されたオリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含んでもよい。
【0203】
図11は、本開示の直接PCR法の好ましい側面の概略図を示す。この側面では、プローブは、標的核酸に相補的な核酸配列を含む標的結合ドメインを含む。上部の図では、プローブは標的核酸にハイブリダイズしている。下部の図では、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間にあるUV光切断性リンカーが切断されて、識別子オリゴヌクレオチドが解放される。識別子オリゴヌクレオチドは、第1の増幅プライマー結合部位、第2の増幅プライマー結合部位、固有の分子識別子、および標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む。これらの4つの形質の間には、長さが3ヌクレオチドの定常スペーサー領域が配置されている。識別子オリゴヌクレオチドは二本鎖であり、3つの異なる核酸分子を含む一本の鎖を含む。解放の後に、識別子オリゴヌクレオチドは、第1の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズしかつ識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む第1増幅プライマー、および第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする第2増幅プライマーを用いて増幅される。次に増幅産物を配列決定して、プローブが結合した標的核酸を識別する。
【0204】
図19は、本開示の直接PCR法の好ましい側面の概略図を示す。この側面では、識別子オリゴヌクレオチドは、
図19の上部の図に示すように、第1の増幅プライマー結合部位、固有の分子識別子を含む核酸配列、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含む。識別子オリゴヌクレオチドは、第1および第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーを用いて増幅される。
図19の中央の図に示すように、第2の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーは、第1のフローセル結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する第1の核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含む。第1の増幅プライマー結合部位にハイブリダイズする増幅プライマーは、第2のフローセル結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する第2の核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含む。
図19の下部の図に示すPCR産物を配列決定して、解放されたオリゴヌクレオチドを識別し、それにより試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する。
【0205】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、直接PCRに適合する識別子オリゴヌクレオチドの組成物を提供する。直接PCRに適合する識別子オリゴヌクレオチドは、第1の増幅プライマー結合部位、続いて試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列、続いて固有の分子識別子、続いて第2の増幅プライマー結合部位を含む。直接PCRに適合する識別子オリゴヌクレオチドの概略図を
図11の下部の図に示す。
【0206】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、直接PCRに適合する識別子オリゴヌクレオチドの組成物を提供する。直接PCRに適合する識別子オリゴヌクレオチドは、第1の増幅プライマー結合部位、続いて固有の分子識別子を含む核酸配列、続いて試料中の標的検体を識別できる固有の核酸配列、続いて第2の増幅プライマー結合部位を含む。直接PCRに適合する識別子オリゴヌクレオチドの概略図を
図19の上部の図に示す。
【0207】
本開示の方法の側面によっては、1個以上、または2個以上、または3個以上、または4個以上、または5個以上、または6個以上、または7個以上、または8個以上、または9個以上、または10個以上、または11個以上、または12個以上、または13個以上、または14個以上、または15個以上、または16個以上、または17個以上、または18個以上、または19個以上、または20個以上、または30個以上、または40個以上、または50個以上、または60個以上、または70個以上、または80個以上、または90個以上、または100個以上のプローブが、1個の標的検体に対応してもよい。本明細書で使用される「タイリング(tiling)」という用語は、本開示の2個以上のプローブが標的検体に結合される際の説明に使用される。
図27の上部の図では、1個の標的RNAへの複数のプローブのタイリングを示している。1個の標的検体に複数のプローブをタイリングすることにより、標的検体の各部が個別に複数回検出され、測定値の全体の精度が向上することを示している。非限定的な例では、
図27の下部の図に示すように、10個のプローブが1個の標的RNAにタイリングされる場合に、プローブうちの1つが誤って非常に多くの回数で検出される可能性があり(異常な多計数プローブ)、別のプローブが誤って非常に少ない回数で検出される可能性がある(異常な少計数プローブ)。しかし、他の8個のプローブは、同等の計数程度で検出できるので、解析中に2個の異常値は破棄した方がよく、8個のプローブからの信号を使用して標的RNAの存在量のより正確な測定値が得られることを示している。
【0208】
本開示は、「無酵素法」と本明細書で呼ばれる方法で、本開示のプローブを用いて試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0209】
本開示の無酵素法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる工程を含んでもよい。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドはまた、捕捉プローブ結合部位を含んでもよい。
【0210】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、無酵素法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加える工程を含んでもよい。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間にある光切断性リンカーを含む側面では、対象領域(ROI)は、光切断性リンカーを切断可能とするのに十分な波長の光により励起される。
【0211】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、無酵素法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の位置のみに力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドはその位置内のプローブからのみ解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、工程(3)でその位置内の標的に結合されたプローブに対してのみ採取され、それによりその位置内にのみ配置される標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0212】
解放された識別子オリゴヌクレオチドの採取後に、無酵素法はさらに、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに捕捉プローブをハイブリダイズする工程を含んでもよい。
【0213】
捕捉プローブは、捕捉プローブ結合部位に相補的な領域を含んでもよい。捕捉プローブはまた、親和性分子を含んでもよい。
【0214】
捕捉プローブのハイブリダイズ後に、無酵素法はさらに、(5)工程(4)で生成されたハイブリダイズ産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含んでもよい。
【0215】
工程(4)で生成されたハイブリダイズ産物を、無酵素の配列決定法を用いて配列決定してもよい。無酵素の配列決定法は、例えば、米国特許第2014946386号および米国特許第15/819,151号に記載されており、それら特許のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0216】
図12は、本開示の無酵素法の好ましい側面の概略図を示す。この側面では、プローブは、標的核酸に相補的である核酸配列を含む標的結合ドメインを含む。上部の図では、プローブは標的核酸にハイブリダイズしている。中央の図では、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間にあるUV光切断性リンカーが切断され、識別子オリゴヌクレオチドが解放される。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的核酸を識別する固有の核酸配列および捕捉プローブ結合部位を含む。解放の後に、識別子オリゴヌクレオチドは、下部の図に示すように捕捉プローブにハイブリダイズされる。捕捉プローブは、捕捉プローブ結合部位に相補的な核酸配列および親和性分子を含む。次にハイブリダイズ産物は、無酵素の配列決定法を用いて配列決定されて、プローブが結合した標的核酸を識別する。
【0217】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、ハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチド-捕捉プローブ複合体の組成物を提供する。ハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチド-捕捉プローブ複合体は、捕捉プローブにハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の特定の標的検体を識別できる固有の核酸配列および捕捉プローブ結合部位を含む。捕捉プローブは、親和性分子および捕捉プローブ結合部位に相補的な領域を含む。ハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチド-捕捉プローブ複合体の概略図を
図12の下部の図に示す。
【0218】
本開示は、本明細書の「多重化無酵素法」と呼ばれる方法で、本開示のプローブを用いて試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するための組成物および方法を提供する。
【0219】
本開示の多重化無酵素法は、(1)試料中の少なくとも1つの標的検体を本開示の少なくとも1つのプローブと接触させる工程を含んでもよい。少なくとも1つの標的検体は、標的タンパク質または標的核酸であってもよい。少なくとも1つの標的検体が標的タンパク質である側面では、プローブは、対象の標的タンパク質に特異的に結合できる標的タンパク質結合領域である標的結合ドメインを含んでもよい。少なくとも1つの標的検体が標的核酸である側面では、プローブは、対象の標的核酸に直接的にまたは間接的にハイブリダイズできる標的核酸結合領域を含んでもよい。プローブはさらに、識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドはまた、捕捉プローブ結合部位を含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドはまた、多重プローブ結合部位を含んでもよい。
【0220】
少なくとも1つの標的検体を少なくとも1つのプローブと接触させた後に、多重化無酵素法はさらに、(2)識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加える工程を含んでもよい。非限定的な例で、プローブが識別子オリゴヌクレオチドと標的結合ドメインとの間にある光切断性リンカーを含む側面では、対象領域(ROI)は、光切断性リンカーを切断可能とするのに十分な波長の光により励起される。
【0221】
識別子オリゴヌクレオチドの解放後に、多重化無酵素法はさらに、(3)解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取する工程を含んでもよい。工程(2)で特定の位置のみに力を導いて、識別子オリゴヌクレオチドはその位置内のプローブからのみ解放され、その位置の外側にあるプローブからは解放されない。したがって、識別子オリゴヌクレオチドは、工程(3)でその位置内の標的に結合されたプローブに対してのみ採取され、それによりその位置内にのみ配置される標的(タンパク質および/または核酸)の識別および量の検出が可能となる。
【0222】
解放された識別子オリゴヌクレオチドの採取後に、多重化無酵素法はさらに、(4)解放された識別子オリゴヌクレオチドに捕捉プローブおよび多重プローブをハイブリダイズする工程を含んでもよい。
【0223】
捕捉プローブは、捕捉プローブ結合部位に相補的な領域を含んでもよい。捕捉プローブはまた、親和性分子を含んでもよい。
【0224】
多重プローブは、多重プローブ結合部位に相補的な領域を含んでもよい。多重プローブはまた、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列および多重プローブ結合部位に相補的な領域を含んでもよい。
【0225】
捕捉プローブと多重プローブのハイブリダイズ後に、多重化無酵素法はさらに、(5)工程(4)で生成されたハイブリダイズ産物を配列決定して解放された識別子オリゴヌクレオチドを識別し、それにより組織試料中の少なくとも1つの細胞内の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する工程を含んでもよい。
【0226】
工程(4)で生成されたハイブリダイズ産物は、無酵素の配列決定法を用いて配列決定してもよい。無酵素の配列決定法は、例えば、米国特許第2014946386号および米国特許第15/819,151号に記載されており、それら特許のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0227】
図13は、本開示の多重化無酵素法の好ましい側面の概略図を示す。この側面では、プローブは、標的核酸に相補的な核酸配列を含む標的結合ドメインを含む。上部の図では、プローブは標的核酸にハイブリダイズしている。中央の図では、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間にあるUV光切断性リンカーが切断され、識別子オリゴヌクレオチドを解放する。識別子オリゴヌクレオチドは、中央の図に示すように、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、捕捉プローブ結合部位、および多重プローブ結合部位を含む。解放の後に、識別子オリゴヌクレオチドは、下部の図に示すように、捕捉プローブおよび多重プローブにハイブリダイズする。捕捉プローブは、捕捉プローブ結合部位に相補的な核酸配列および親和性分子を含む。多重プローブは、多重プローブ結合部位に相補的な核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列を含む。次にハイブリダイズ産物を、無酵素の配列決定法を用いて配列決定して、プローブが結合した標的核酸を識別する。
【0228】
一側面では、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出するために、ハイブリダイズされた識別子オリゴヌクレオチド-捕捉プローブ-多重プローブ複合体の組成物を提供する。ハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチド-捕捉プローブ-多重プローブ複合体は、捕捉プローブおよび多重プローブにハイブリダイズした識別子オリゴヌクレオチドを含む。識別子オリゴヌクレオチドは、試料中の特定の標的検体を識別できる固有の核酸配列、捕捉プローブ結合部位、および多重プローブ結合部位を含む。捕捉プローブは、親和性分子および捕捉プローブ結合部位に相補的な領域を含む。多重プローブは、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する核酸配列、および多重プローブ結合部位に相補的な領域を含む。ハイブリダイズされた識別子オリゴヌクレオチド-捕捉プローブ-多重プローブ複合体の概略図を
図13の下部の図に示す。
【0229】
図20は、本開示の典型的な方法の全体概略図である。まず顕微鏡スライド上の試料を本開示の複数のプローブと接触させる(
図20の工程1)。次にスライドを画像化して特定の対象領域(ROI)を選択する(
図20の工程2)。次に特定のROIをUV光で照射して、ROI内で結合したプローブから識別子オリゴヌクレオチドを解放する。次に解放された識別子オリゴヌクレオチドを、マイクロキャピラリーを用いた吸引により採取する。吸引後に、識別子オリゴヌクレオチドを96ウェルプレート内の特定のウェルに移す。次に工程2で特定されたROI毎に工程4および5を繰返す。すべてのROIが照射され、かつすべての解放された識別子オリゴヌクレオチドが採取された後に、識別子オリゴヌクレオチドを次世代シーケンス法(next generation sequencing method)を用いて配列決定して、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する。
【0230】
前述のように、本開示は、試料中の少なくとも1つの標的検体を空間的に検出する組成物および方法に適するプローブを提供する。本開示は、標的結合ドメインおよび識別子オリゴヌクレオチドを含むプローブを提供する。標的結合ドメインは、試料中の少なくとも1つの標的検体に特異的に結合するプローブの所定の領域である。
【0231】
本開示のプローブは、標的核酸を空間的に検出するのに使用できる。この側面では、標的結合ドメインは、標的核酸結合領域であってもよい。標的核酸結合領域は、好ましくは長さが少なくとも15ヌクレオチドであり、より好ましくは長さが少なくとも20ヌクレオチドである。特定の側面では、標的核酸結合領域は、長さが約10~500、20~400、25、30~300、35、40~200、または50~100ヌクレオチドである。標的核酸を結合および識別するためのプローブおよび方法は、例えば、米国特許第2003/0013091号、第2007/0166708号、第2010/0015607号、第2010/0261026号、第2010/0262374号、第2010/0112710号、第2010/0047924号、および第2014/0371088号に記載されていて、これら特許のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0232】
標的核酸結合領域は、試料中に存在する標的核酸に直接的にハイブリダイズしてもよい。あるいは、本開示のプローブは、(中間オリゴヌクレオチドを介して)試料中に存在する標的核酸に間接的にハイブリダイズしてもよい。
図14は、この側面のプローブ(または組成物)を示している。プローブは、合成オリゴヌクレオチド(中間オリゴヌクレオチド)に結合し、さらに次々に生体試料中の標的核酸に結合する標的核酸結合ドメインを含む。中間オリゴヌクレオチドは、核酸の骨格を含みかつ標的核酸に結合できるので、本明細書に定義されるようなプローブであると言える。これらの側面では、プローブの標的核酸結合領域は、試料中に存在する標的核酸とは異なる中間オリゴヌクレオチド(即ち合成オリゴヌクレオチド)の領域にハイブリダイズする。したがって、プローブの標的結合領域は、試料中の最終的な標的核酸に支配されない。これにより、検定の(試料中に存在する)標的に固有の成分は、高価なプローブではなく安価で広く入手可能な合成DNAオリゴヌクレオチド中に含まれるので、検定の設計時には経済的で迅速に対応できるという融通が利く。この合成オリゴヌクレオチドは、試料中に存在する標的核酸にハイブリダイズする領域、およびプローブにハイブリダイズする領域を含むことにより容易に設計できる。したがって、1組の間接的な結合プローブを用いて、検定の標的特異的(合成)オリゴヌクレオチド部分を単に置き換えるだけで、様々な試験で(試料中に存在する)膨大で多様な標的核酸を検出できる。
【0233】
標的核酸は、DNAまたはRNAであってもよく、好ましくはメッセンジャーRNA(mRNA)またはmiRNAであってもよい。
【0234】
本開示のプローブを用いて、標的タンパク質を検出できる。この側面では、標的結合ドメインは、標的タンパク質結合領域であってもよい。標的タンパク質結合領域には、少なくとも1つの標的タンパク質、少なくとも1つの標的タンパク質代用物、またはその両方に結合するように設計され、かつ適切な条件でプローブおよび標的タンパク質を含む分子複合体を生成できる分子または構築物が含まれる。標的タンパク質結合領域は、抗体、ペプチド、アプタマー、またはペプトイドを含んでもよい。抗体は、限定はされないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、組換え発現抗体、ヒト化抗体、植物抗体などを含む種々の供給源から取得できる。タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、およびアミノ酸配列という用語は、本明細書では互換的に使用されて、任意の長さのアミノ酸ポリマーを指す。このポリマーは、鎖状あるいは分岐状であってもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸または合成アミノ酸によって分断されていてもよい。この用語はまた、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合などその他の操作によって修飾されたアミノ酸ポリマーも包含する。本明細書で使用されるアミノ酸という用語は、限定はされないが、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方を含む天然および/または非天然または合成アミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模擬物を指す。標的タンパク質を結合および識別するためのプローブおよび方法は、例えば、米国特許第2011/0086774号に記載されていて、その特許の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0235】
識別子オリゴヌクレオチドは、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する核酸分子である。識別子オリゴヌクレオチドは、プローブの標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列を含む。非限定的な例では、タンパク質P53に結合する標的結合ドメインを有するプローブは、P53に対応する固有の核酸配列を有する識別子オリゴヌクレオチドを含み、タンパク質P97に結合する標的結合ドメインを有するプローブは、P97に対応する固有の核酸配列を有する識別子オリゴヌクレオチドを含む。
【0236】
識別子オリゴヌクレオチドは、DNA、RNA、またはDNAとRNAの組合せであってもよい。
【0237】
側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの増幅プライマー結合部位を含んでもよい。増幅プライマー結合部位は、増幅プライマーに結合できる核酸配列である。増幅プライマーを用いて、限定はされないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの当技術分野で既知の方法を使用して、その増幅プライマーが結合している核酸分子を増幅してもよい。
【0238】
側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの固有の分子識別子を含んでもよい。
【0239】
識別子オリゴヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、または部分的に二本鎖の核酸分子であってもよい。識別子オリゴヌクレオチドが二本鎖または部分的に二本鎖である側面では、2本の鎖のうちの少なくとも1本は、理論に束縛されることなく、識別子オリゴヌクレオチドの低温での変性を可能にする少なくとも2つの異なる核酸分子を含んでもよい。
【0240】
識別子オリゴヌクレオチドはまた、単一のヌクレオチド突出部を含む少なくとも1つの3’末端を含んでもよい。
【0241】
識別子オリゴヌクレオチドはまた、捕捉プローブ結合部位を含んでもよい。捕捉プローブ結合部位は、捕捉プローブが結合できる核酸配列である。
【0242】
本開示の捕捉プローブは、捕捉プローブ結合部位に相補的な核酸配列を含んでもよい。捕捉プローブはまた、親和性分子を含んでもよい。
【0243】
識別子オリゴヌクレオチドはまた、多重プローブ結合部位を含んでもよい。多重プローブ結合部位は、多重プローブが結合できる核酸配列である。
【0244】
本開示の多重プローブは、多重プローブ結合部位に相補的な核酸配列を含んでもよい。多重プローブはまた、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列を含んでもよい。
【0245】
本開示のプローブは、適切な力を加えた後に識別子オリゴヌクレオチドの解放を可能にする領域を含んでもよい。非限定的な一例では、この領域は切断可能なモチーフ(例えば、制限酵素部位または切断可能なリンカー)である。切断可能なモチーフは、結合した標的核酸またはタンパク質からの識別子オリゴヌクレオチドを解放し、次いで識別子オリゴヌクレオチドが採取および検出される。識別子オリゴヌクレオチドを解放可能とする領域は、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間に配置されて、標的結合ドメインからの識別子オリゴヌクレオチドの解放を可能とする。識別子オリゴヌクレオチドがプローブの残りの部分から分離(即ち切断および解放)される場合に、識別子オリゴヌクレオチドは解放可能であると言える。切断可能なモチーフの例として、限定はされないが、光切断性リンカーが挙げられる。光切断性リンカーは、適切な干渉性光源(例えばレーザーおよびUV光源)、または適切な非干渉性光源(例えばアーク灯および発光ダイオード(LED))によって提供される光によって切断できる。
【0246】
側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドは、識別子オリゴヌクレオチドが解放される地点または少なくとも1つの細胞に、例えば少なくともそのすぐ上またはその周りなど、近位の溶液から採取される。近位の溶液を、例えば、ピペット、毛細管、マイクロアレイピン、穴を含むフローセル、または当技術分野で既知の別の適切な吸引システム、あるいはそれらの任意の組合せなどの吸引によって採取してもよい。毛細管は、光の力を、例えばUV光を少なくとも1つの細胞に送達できる光学装置を含んでもよい。1つのピペットまたはマイクロアレイピンは、複数のピペットまたはマイクロアレイピンを含むアレイに取り付けられてもよい。近位の溶液は、アニオン性ポリマー、例えば、硫酸デキストランおよび/またはサケ精子DNAを含んでもよく、および/または採取された信号となるオリゴヌクレオチドは、アニオン性ポリマー、例えば、硫酸デキストランおよび/またはサケ精子DNAを含む溶液に添加されてもよい。サケ精子DNAに加えて、またはその代わりに、当技術分野で既知の他の非特異的遮断剤を使用してもよい。
【0247】
側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドは、組織、少なくとも1つの細胞、または識別子オリゴヌクレオチドが、液体の層流、乱流、または移行流を介して解放される地点の近位から採取される。この流れは、例えば、組織と組織の上に配置された流体装置または不透過性バリアとの間に25~500mの深さを有する流路を通過してもよい。
【0248】
プローブの標的結合ドメインが抗体である側面では、プローブは、好ましくは抗体のヒンジ領域重鎖に対して安定で部位特異的であるシステイン生体共役反応法を用いて調製してもよい。この調製法は、抗体の化学量論比に対して相対的に制御可能な識別子オリゴヌクレオチドを提供する。プローブは、1抗体当たり複数(即ち2個以上、例えば、2、3、4、5個、またはそれ以上)の識別子オリゴヌクレオチドを含んでもよい。一般に、1抗体当たり3個または4個の識別子オリゴヌクレオチドを含む「より重い」プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの少ない抗体、すなわち1抗体当たり1個または2個の識別子オリゴヌクレオチドを含む「より軽い」プローブよりも著しく感度が劣る。
【0249】
側面によっては、プローブは、典型的には、免疫組織化学(IHC)またはin situハイブリダイズ(ISH)に使用される濃度よりも低い濃度で試料に提供される。あるいは、濃度は、IHCまたはISHに使用される濃度よりも大幅に低い場合もある。例えば、プローブ濃度は、2倍少なく、5倍少なく、10倍少なく、20倍少なく、25倍少なく、30倍少なく、50倍少なく、60倍少なく、70倍少なく、80倍少なく、90倍少なく、100倍少なく、200倍少なく、300倍少なく、400倍少なく、500倍少なく、600倍少なく、700倍少なく、800倍少なく、900倍少なく、1000倍少なく、2000倍少なく、またはそれ以上に少なく、およびそれら数値の間の倍数で少なくてもよい。側面によっては、プローブは、100nM、70nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、0.01nM、およびそれ未満の濃度、ならびにそれら数値の間の任意の濃度で提供される。
【0250】
タンパク質検出中の背景ノイズは、未処理のプローブ分子に負の精製を実施することで低減できる。これは、対象領域から溶出液を採取した後に、抗体または光切断性リンカーのアフィニティ精製によって実施できる。通常は、解放された信号となるオリゴヌクレオチドは、溶液からは引き出せない。この工程には、ピペット先端、管、または皿中でのタンパク質-Gまたはタンパク質-Oの機序を使用してもよい。このための装置および試薬は市販されている。
【0251】
核酸検出中の背景ノイズは、未処理のプローブ分子に負の精製を実施することで低減できる。これは、対象領域から溶出液を採取した後に、標的結合ドメインまたは光切断性リンカーのアフィニティ精製によって実施できる。通常は、解放された信号となるオリゴヌクレオチドは、溶液から引き出せない。負の精製を促進するために、汎用的な精製配列が、例えば、標的結合ドメイン内のプローブに含まれてもよい。
【0252】
タンパク質標的プローブおよび核酸標的プローブは、条件がタンパク質標的および核酸標的の両方の結合を許容する限り、同時に適用してもよい。あるいは、タンパク質標的および核酸標的の両方の結合を許容する条件が受け入れられない場合には、タンパク質標的プローブおよび核酸標的プローブは、順次適用してもよい。
【0253】
1組のプローブは、複数のプローブの混成物と同じ意味を指している。1組のプローブは、少なくとも1種の、すなわち1個の標的が対象のプローブを含む。1組のプローブは、好ましくは、2種以上、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000種、またはそれ以上の種のプローブを含む。1組のプローブには、各種プローブの1個以上のコピーを含んでもよい。
【0254】
プローブの第1の組のみを試料に適用してもよい。あるいは、プローブの第2の組(またはそれ以上の組)をその後に試料に適用してもよい。第1の組および第2の組(またはそれ以上の組)は、核酸だけ、タンパク質だけを標的にしてもよく、またはそれらの組合わせを標的にしてもよい。
【0255】
本開示では、2個以上の標的(即ち、タンパク質、核酸、またはそれらの組合せ)が検出され、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000個、またはそれ以上の個数の標的、およびそれら数字の間の任意の個数の標的が検出される。
【0256】
1組のプローブは、標的とされる細胞型または組織型に基づいて予め規定されてもよい。例えば、組織が乳がんの場合に、その1組のプローブには、乳がん細胞に関連するタンパク質(例えば、Her2、EGFR、PR)を対象とするプローブ、および/または正常な乳房組織に関連するタンパク質を対象とするプローブが含まれる。さらに、その1組のプローブは、標的にされる細胞または組織の発達状態に基づいて予め規定されてもよい。あるいは、その1組のプローブは、対象の細胞内での局在部、例えば、核、細胞質、および膜に対して、予め規定されてもよい。例えば、Foxp3、ヒストンH3、またはP-S6を対象とする抗体は核を標識し、CD3、CD4、PD-1、またはCD45ROを対象とする抗体は細胞質を標識し、PD-L1を対象とする抗体は膜を標識する。
【0257】
プローブは、化学的に合成されてもよく、プローブをコードする核酸がクローニングされたベクターを用いて生物学的に生成されてもよい。
【0258】
本明細書に記載される任意のプローブまたは任意のプローブ組は、本開示の方法およびキットに使用できる。
【0259】
本明細書に記載のプローブに関して、特定の標的核酸または標的タンパク質に対する固有の核酸配列の関連性は固定されていない。
【0260】
前述のように、本開示のプローブを用いて、任意の試料中、例えば生体試料中に存在する標的核酸または標的タンパク質を検出できる。当業者には分かっているように、試料は、限定はされないが、(初代細胞および培養細胞株の両方を含む)細胞、および(培養または外植を含む)組織を含む多くのものを含んでもよい。側面によっては、(定型または不定型の)組織試料は、埋め込まれて連続的に切片にされ、顕微鏡のスライド上に固定される。周知のように、1対の連続切片では、2つの連続切片中に少なくとも1つの細胞が存在する。第1の連続切片に位置する構造および細胞型は、隣接の連続切片の同じ位置にも含まれる。試料は、スライド上に固定された(定型または不定型の)培養細胞または解離細胞である。試料は、ホルマリン固定パラフィン埋設(FFPE)組織試料であってもよい。
【0261】
側面によっては、組織試料は、生検された腫瘍またはその一部分、すなわち、臨床的な関連組織試料である。例えば、腫瘍は乳がん由来の場合がある。試料は切除されたリンパ節であってもよい。
【0262】
試料は、例えば、植物、真菌、および動物界の多細胞生物を含む実質的に任意の生物由来であり、好ましくは、試料は、動物、例えば哺乳動物由来である。ヒトからの試料が特に好ましい。
【0263】
側面によっては、本明細書に記載されるプローブ、組成物、方法、およびキットは、病気の診断に使用される。本明細書で使用される用語「診断または病気の診断」は、病気の予測または診断、病気の素因の決定、病気の治療の監視、疾患の治療反応の診断、ならびに病気の予後、病気の進行、および病気の特定の治療に対する応答の診断を包含する。例えば、組織試料を、本明細書に記載のプローブ、方法、またはキットのいずれかに従って検査して、試料中の疾患マーカーまたは悪性細胞型のマーカーの存在および/または量を(非罹患状態と比較して)決定して、それにより疾患または癌を診断または病期分類することができる。
【0264】
一般的に、スライドに固定された試料を、まず蛍光(例えば、蛍光抗体または蛍光染色(DAPIなど))を用いて画像化し、形態、対象の領域、対象の細胞型、および単一の細胞を識別して、次にタンパク質および/または核酸の発現を、同一のスライド上の試料からデジタル方式で計数してもよい。
【0265】
本開示の組成物およびキットは、プローブ、および他の試薬を含んでもよく、例えば、試料中のタンパク質および/または核酸の結合を促進するために、すなわちハイブリダイズ反応を引き起こすように、緩衝液および当技術分野で既知の他の試薬を含んでもよい。
【0266】
キットはまた、限定はされないが、標識オリゴヌクレオチドをプローブにハイブリダイズするのに、プローブを標的特異的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズするのに、標的特異的オリゴヌクレオチドを標的核酸にハイブリダイズするのに、かつ/あるいはプローブを標的タンパク質にハイブリダイズするのに必要な情報を含む、キットの成分の使用説明書を含む。
【0267】
対象領域は、試料中に存在する組織型、細胞型、細胞、または細胞内の部分細胞組織であってもよい。
【0268】
同時に、第1の対象領域(例えば、組織型、(正常および異常細胞を含む)細胞型、および細胞内の部分細胞組織)に存在する標的タンパク質および/または標的核酸の識別および存在量と、第2の対象領域またはより多くの対象領域に存在する標的タンパク質および/または標的核酸の識別および存在量との比較を、本開示の方法を用いて実施してもよい。
【0269】
前述のように、本開示の方法によって生成された産物は、核酸増幅に使用してもよい。好ましい側面では、核酸増幅は、固相の核酸増幅であってもよい。したがって、さらなる側面では、本発明は、本開示の方法を用いて5’末端および3’末端に共通配列を有する鋳型ポリヌクレオチド分子のライブラリーを作成する工程、および前記鋳型ポリヌクレオチド分子が増幅される固相の核酸増幅反応を実行する工程を含む、鋳型ポリヌクレオチド分子の固相の核酸増幅方法を提供する。核酸増幅および配列決定用の組成物および方法は、例えば、米国特許第9376678号に記載されていて、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0270】
本明細書で使用される用語「固相増幅」は、増幅産物の全部または一部が生成されたままに固形支持体に固定されるように、固形支持体上で、または固形支持体と共に実施される任意の核酸増幅反応を指す。特にこの用語は、順方向および逆方向の増幅プライマーのうちの一方または両方が固形支持体に固定されていることを除いて、標準的な液相のPCRに類似した反応である固相ポリメラーゼ連鎖反応(固相PCR)を包含する。
【0271】
本発明には、一方の増幅プライマーのみが固定される「固相」の増幅方法も包含するが(もう一方のプライマーは、通常は遊離溶液中に存在する)、固形支持体には、固定された順方向プライマーおよび逆方向プライマーの両方が設けられることが好ましい。実際には、PCR工程は増幅を継続するために過剰なプライマーを必要とするので、固形支持体に固定された「複数」の同一の順方向プライマーおよび/または「複数」の同一の逆方向プライマーが存在する。本明細書での順方向プライマーおよび逆方向プライマーについては、文脈でそうではないと示さない限り、「複数」の両方のプライマーを包含するものとして適宜に解釈すべきである。
【0272】
当業者には分かるように、任意の所定のPCR反応は、増幅される鋳型に特異的な少なくとも1種の順方向プライマーおよび少なくとも1種の逆方向プライマーを必要とする。しかしながら、特定の側面では、順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、同一の配列の鋳型特異的部分を含んでもよく、また(任意の非ヌクレオチド修飾を含む)完全に同一のヌクレオチド配列および構造を有してもよい。言い換えると、1種のプライマーのみを用いて固相増幅を実施することも可能であり、この単一プライマー法も本発明の範囲に包含される。他の側面では、同一の鋳型特異的配列を含むが、その他のいくつかの構造的特徴が異なる順方向および逆方向プライマーを使用してもよい。例えば、一方のプライマーは、他方のプライマーには存在しない非ヌクレオチド修飾を含んでもよい。
【0273】
本発明の他の側面では、順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、異なる配列の鋳型特異的部分を含んでもよい。
【0274】
固相PCR用の増幅プライマーは、好ましくは、プライマーの5’末端にまたはその近傍に固形支持体との共有結合により固定され、プライマーの鋳型特異的部分はその同族の鋳型へのアニールのために固定しないままとし、3’ヒドロキシル基はプライマー伸長のために固定しないままとする。当技術分野で既知の任意の適切な共有結合手段を、この目的に使用してもよい。結合化学手段は、固形支持体の性質、およびそれに適用される誘導体化または官能化に応じて選択される。プライマー自体は、結合を促進するために、非ヌクレオチド化学修飾であってもよい部分を含んでもよい。特に好ましい一側面では、プライマーは、5’末端に、ホスホロチオ酸またはチオリン酸などの硫黄含有求核剤を含んでもよい。(以下に説明する)固形支持されたポリアクリルアミドヒドロゲルの場合には、この求核剤はヒドロゲル内に存在する「C」基に結合する。プライマーと鋳型を固形支持体に結合する最も好ましい手段は、重合アクリルアミドおよびN-(5-ブロモアセトアミジルペンチル)アクリルアミド(BRAPA)からなるヒドロゲルへの5’ホスホロチオ酸結合を介することである。
【0275】
用語「クラスター」および「コロニー」は、本明細書では互換的に使用されて、複数の同一の固定核酸鎖および複数の同一の固定相補的核酸鎖からなる固形支持体上での個々の部位を指す。用語「クラスター化アレイ」は、これらクラスターまたはコロニーから形成されるアレイを指す。この文脈において、用語「アレイ」では、クラスターの秩序だった配列が必要になるとは考えるべきではない。
【0276】
本発明はまた、固相増幅によって生成された増幅核酸を配列決定する方法を含む。したがって、本発明は、上述の本開示の方法により核酸鋳型のライブラリーを増幅する工程、上述の固相増幅を用いてこのライブラリーを固形支持体上で増幅する工程、および核酸配列決定反応を実施して、固相増幅反応で生成された少なくとも1本の増幅核酸鎖の全体または一部分の配列を決定する工程を含む核酸配列決定法を提供する。
【0277】
本明細書で言う配列決定は、任意の適切な「合成による配列決定」技術を用いて実行されてもよく、この技術では、複数のヌクレオチドが、遊離した3’ヒドロキシル基に連続的に付加されて、結果として5’から 3’の方向へのポリヌクレオチド鎖が合成される。付加されるヌクレオチドの性質は、それぞれのヌクレオチドの付加後に決定されるのが好ましい。
【0278】
配列決定反応の開始点は、配列決定プライマーを全ゲノムまたは固相増幅反応の産物にアニールすることにより提供されてもよい。これに関連して、鋳型ライブラリーの形成中に付加されるアダプターの一方または両方は、鋳型ライブラリーの全ゲノムまたは固相増幅により誘導される増幅産物に配列決定プライマーをアニールさせるヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0279】
順方向および逆方向増幅プライマーの両方が固形表面に共有結合的に固定されている固相増幅反応の産物は、固定ポリヌクレオチド鎖および固定相補鎖の対をアニールすることによって形成されるいわゆる「架橋」構造であり、両方の鎖は5’末端で固形支持体に結合されている。この架橋構造からなるアレイは、これら固定鎖のうちの1本に対する通常の配列決定プライマーのハイブリダイズが、ハイブリダイズのための標準条件で、固定相補鎖に対するこの固定鎖のアニールに比較して適切ではないので、核酸配列決定のためには非効率な鋳型を提供することになる。
【0280】
核酸配列決定のためにより適切な鋳型を提供するには、少なくとも部分的に一本鎖である鋳型を生成するために、「架橋」構造中の固定鎖のうちの1本の実質的にすべてまたは少なくとも一部分を除去することが好ましい。したがって、一本鎖である鋳型の一部分は、配列決定プライマーへのハイブリダイゼーションに利用可能である。「架橋」された二本鎖核酸構造中の1本の固定鎖のすべてまたは一部分を除去する工程は、本明細書では「直線化」と呼ばれる場合がある。
【0281】
架橋鋳型構造は、制限エンドヌクレアーゼによる一方または両方の鎖の切断により、またはニッキング・エンドヌクレアーゼによる一方の鎖の切断により、直線化されてもよい。制限酵素またはニッキング酵素の代替として、α間の化学的切断(例えば過ヨウ素酸塩によるジオール結合の切断)、エンドヌクレアーゼによる切断または熱またはアルカリへの曝露による脱塩基部位の切断、別の方法でデオキシリボヌクレオチドから構成された増幅産物に組み込まれたリボヌクレオチドの切断、光化学的切断、またはペプチドリンカーの切断など、その他の切断方法を使用してもよい。
【0282】
固相増幅反応が、共有結合により固定された1本のみのプライマーを用いて、また遊離溶液中の他のプライマーを用いて実施される場合には、直線化工程は必須ではない場合があることが分かっている。
【0283】
配列決定に適する直線化された鋳型を生成するためには、完全にまたは部分的に一本鎖である配列決定のための直線化した鋳型を残すように、増幅によって形成される架橋構造中の「均等でない」量の相補鎖を除去する必要がある。架橋構造の1本の鎖は、実質的にまたは完全に除去されるのが、最も好ましい。
【0284】
切断工程の後に、切断に用いた方法に関係はなく、切断反応の生成物は、固形支持体に結合されていない切断された鎖部分を除去するために、変性条件に曝されてもよい。適切な変性条件は、標準的な分子生物学手順を参照すれば、当業者には明らかである。
【0285】
変性(およびその後の切断された鎖の再アニール)により、部分的または実質的に一本鎖である配列決定鋳型が生成される。次いで鋳型の一本鎖部分への配列決定プライマーのハイブリダイズにより、配列決定反応を開始してもよい。
【0286】
したがって、核酸配列決定の反応は、配列決定プライマーを直線化増幅産物の一本鎖領域にハイブリダイズする工程、配列決定される増幅鋳型鎖の領域に相補的なポリヌクレオチド鎖中に1つ以上のヌクレオチドを連続的に組み込む工程、1つ以上の組み込まれたヌクレオチド中に存在する塩基を識別する工程、およびそれにより鋳型鎖の領域の配列を決定する工程を含む。
【0287】
本発明に従って使用できる1つの好ましい配列決定法は、連鎖停止剤として機能できる修飾ヌクレオチドの使用に依存している。修飾ヌクレオチドが、配列決定される鋳型の領域に相補的な増殖中のポリヌクレオチド鎖内に組み込まれても、さらなる配列伸長を誘導するために利用できる遊離の3’-OH基がないために、ポリメラーゼはさらなるヌクレオチドを付加できない。増殖中の鎖に組み込まれた塩基の性質が決定されると、3’区画を除去して、次の連続するヌクレオチドを付加できる。これらの修飾ヌクレオチドを用いて誘導された産物を順序付けして、DNA鋳型のDNA配列を推定できる。この反応は、修飾ヌクレオチドのそれぞれが特定の塩基に対応することが既知である異なる標識を付加している場合には、1回の実験で実施することができ、各取り込み工程で付加された塩基間の識別を容易にできる。あるいは、それぞれの修飾ヌクレオチドを個別に含有する個々の反応を実施してもよい。
【0288】
修飾ヌクレオチドには、それらの検出を容易にするように標識を担持させてもよい。好ましくは、この標識は蛍光標識である。ヌクレオチドの種類毎に異なる蛍光標識を担持させてもよい。しかしながら、検出可能な標識としては蛍光標識である必要はない。組み込まれたヌクレオチドの検出を可能にする任意の標識を使用してもよい。
【0289】
蛍光標識ヌクレオチドを検出する1つの方法は、標識ヌクレオチドに特異的な波長のレーザー光の使用、または他の適切な照明源の使用を含む。ヌクレオチドの標識からの蛍光は、CCDカメラまたは他の適切な検出手段によって検出してもよい。
【0290】
本発明は、ヌクレオチドのポリヌクレオチド鎖への連続的取り込みに基づく本質的にいかなる配列決定方法も使用できるので、上記に概説した配列決定法の使用に限定することを意図していない。適切な代替技術には、例えば、パイロシーケンス(Pyrosequencing)、FISSEQ(蛍光インサイチュ配列決定、fluorescent in situ sequencing)、MPSS(大規模並列シグネチャ配列決定、massively parallel signature sequencing)および連結ベースの方法による配列決定が含まれる。
【0291】
本開示の方法では、プローブの標的結合ドメインに結合した標的検体を識別するプローブの識別子オリゴヌクレオチド中に存在する固有の核酸配列は、約5ヌクレオチド~約50ヌクレオチドを含んでもよい。好ましくは、この配列は、約20ヌクレオチド~約40ヌクレオチドを含む。さらにより好ましくは、この配列は約35ヌクレオチドを含む。いくつかの好ましい側面では、この配列は10ヌクレオチドを含む。
【0292】
本開示の方法では、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、約6ヌクレオチド~約15ヌクレオチドを含む。好ましくは、この配列は約12ヌクレオチドを含む。
【0293】
本開示の方法では、増幅プライマー結合部位は、約18ヌクレオチド~約40ヌクレオチドを含む。好ましくは、増幅プライマー結合部位は、約32ヌクレオチドを含む。
【0294】
本開示の方法の側面によっては、増幅プライマー結合部位は、i7配列を含んでもよく、このi7配列は、配列番号1に記載の配列を含む。
【0295】
本開示の方法の側面によっては、増幅プライマー結合部位は、i5配列を含んでもよく、このi5配列は、配列番号2に記載の配列を含む。
【0296】
本開示の方法の側面によっては、増幅プライマーは、フローセルアダプター配列を含んでもよく、このフローセルアダプター配列は、配列決定に適している。好ましくは、本開示の方法で使用される少なくとも1つの増幅プライマーは、P5フローセルアダプター配列を含み、このP5フローセルアダプター配列は、配列番号3に記載の配列を含む。さらに好ましくは、本開示の方法で使用される少なくとも1つの増幅プライマーは、P7フローセルアダプター配列を含み、このP7フローセルアダプター配列は、配列番号4に記載の配列を含む。
【0297】
本開示の方法では、固有の分子識別子は、約6ヌクレオチド~約30ヌクレオチドを含んでもよい。好ましくは、固有の分子識別子は、約15ヌクレオチドを含んでもよい。用語「固有の分子識別子およびランダム分子タグ」は、本明細書では互換的に使用される。当技術分野で既知の方法を用いる場合に、固有の分子識別子は、配列決定前に増幅の偏りを補正するために使用できるランダム配列である。
【0298】
本開示の方法では、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列は、約1ヌクレオチド~約15ヌクレオチドを含む。好ましくは、定常配列は約8ヌクレオチドを含む。
【0299】
側面によっては、フローセル結合部位は、約15~約40ヌクレオチドを含んでもよい。フローセル結合部位は、約29ヌクレオチドを含んでもよい。フローセル結合部位は、約24ヌクレオチドを含んでもよい。
【0300】
側面によっては、標的結合ドメインは、約10~約70ヌクレオチドを含んでもよい。標的結合ドメインは、約30~約55ヌクレオチドを含んでもよい。標的結合ドメインは、約35~約50ヌクレオチドを含んでもよい。
【0301】
側面によっては、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列は、約20~約40を含んでもよい。標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列は、約25ヌクレオチド、または約35ヌクレオチド、または約12ヌクレオチドである。
【0302】
側面によっては、増幅プライマー結合部位は、約20~約50ヌクレオチドを含んでもよい。増幅プライマー結合部位は、約33ヌクレオチド、または約34ヌクレオチドを含んでもよい。
【0303】
側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、約1~約20ヌクレオチドを含んでもよい。識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、約8ヌクレオチドを含んでもよい。
【0304】
側面によっては、固有の分子識別子を含む核酸配列は、約5~約20ヌクレオチドを含んでもよい。固有の分子識別子を含む核酸配列は、約14ヌクレオチドを含んでもよい。
【0305】
本明細書で使用される用語「対象領域」および「ROI」は、それらの最も広い意味で使用されて、本開示の方法を用いて分析される試料内の特定の位置を指す。
【0306】
本明細書で使用される用語「隣接する」は、約1ヌクレオチド以内、または約2ヌクレオチド以内、または約3ヌクレオチド以内、または約4ヌクレオチド以内、または約5ヌクレオチド以内、または約6ヌクレオチド以内、または約7ヌクレオチド以内、または約8ヌクレオチド以内、または約9ヌクレオチド以内、または約10ヌクレオチド以内、または約11ヌクレオチド以内、または約12ヌクレオチド以内、または約13ヌクレオチド以内、または約14ヌクレオチド以内、または約15ヌクレオチド、または約16ヌクレオチド以内、または約17ヌクレオチド以内、または約18ヌクレオチド以内、または約19ヌクレオチド以内、または約20ヌクレオチド以内、または約21ヌクレオチド以内、または約22ヌクレオチド以内、または約23ヌクレオチド以内、または約24ヌクレオチド以内、または約25ヌクレオチド以内、または約26ヌクレオチド以内、または約27ヌクレオチド以内、または約28ヌクレオチド以内、または約29ヌクレオチド以内、または約30ヌクレオチド以内、または約40ヌクレオチド以内、または約50ヌクレオチド以内、または約60ヌクレオチド以内、または約70ヌクレオチド以内、または約80ヌクレオチド以内、または約90ヌクレオチド以内、または約100ヌクレオチド以内を意味してもよい。
【0307】
本明細書で使用される用語「空間的に検出する」は、その最も広い意味で使用されて、試料中の特定の対象領域内での特定の標的検体の存在の識別を指す。空間的に検出することは、試料中の特定の対象領域内に存在する特定の標的検体の量を決定することを含んでもよい。空間的に検出することはさらに、試料の特定の対象領域内の第1の標的検体の相対量を、試料の特定の対象領域内の少なくとも第2の標的検体の量と比較して決定することを含んでもよい。空間的に検出することはまた、試料中の第1の対象領域内の特定の標的検体の相対量を、同一の試料または異なる試料の少なくとも第2の対象領域の同一の標的検体の量と比較して決定することを含んでもよい。
【0308】
本開示の方法および組成物の側面によっては、標的検体は、空間的に検出される試料内の任意の分子であってもよい。標的検体には、限定はされないが、核酸分子およびタンパク質分子が含まれる。標的検体がタンパク質である場合に、このタンパク質は標的タンパク質と呼んでもよい。標的検体が核酸である場合に、この核酸は標的核酸と呼んでもよい。標的核酸として、限定はされないが、mRNA分子、マイクロRNA(miRNA)分子、tRNA分子、rRNA分子、gDNA、または試料内に存在するその他の核酸を挙げてもよい。
【0309】
本開示の方法および組成物の側面によっては、用語「標的結合ドメイン」は、その最も広い意味で使用されて、試料中に存在する標的検体に直接的にまたは間接的に結合する本開示のプローブの一部分を指す。標的結合ドメインは、核酸、タンパク質、少なくとも1つの抗体、アプタマー、またはそれらの任意の組合せを含んでもよい。標的結合ドメインは、DNA、RNA、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。標的結合ドメインは、任意の数の修飾ヌクレオチドおよび/または核酸類似体を含んでもよい。
【0310】
空間的に検出される標的検体が標的タンパク質である側面では、標的結合ドメインは、タンパク質標的結合ドメインであってもよい。タンパク質標的結合ドメインは、標的タンパク質に結合する抗体または抗体断片を含んでもよい。
【0311】
空間的に検出される標的検体が標的核酸である側面では、標的結合ドメインは、標的核酸結合領域であってもよい。標的核酸結合領域は、空間的に検出される標的核酸に相補的な核酸を含んでもよい。標的核酸結合領域は、検出される標的核酸にハイブリダイズする核酸を含んでもよい。
【0312】
本明細書中で使用される用語「ハイブリダイズする」は、その最も広い意味で使用されて、安定な核酸二本鎖の生成を意味する。一側面では、「安定な二本鎖」とは、二本鎖構造が、例えば、二本鎖中の1本の鎖のTmより約5℃低いまたは約5℃高い温度、および例えば0.2M未満、あるいは0.1M未満または当業者に既知の塩濃度未満などの低い一価塩濃度などの条件での厳しい洗浄でも破壊されないことを意味する。二本鎖は、二本鎖を構成するポリヌクレオチド鎖および/またはオリゴヌクレオチド鎖が互いに二本鎖構造を形成するように、各鎖中のすべてのヌクレオチドが他の鎖のヌクレオチドとワトソン-クリック塩基対を形成するように、「完全に一致」できる。用語「二本鎖」は、限定はされないが、デオキシイノシン、2-アミノプリン塩基を有するヌクレオシド、およびPNAなど、使用可能なヌクレオシド類似体の対を包含する。二本鎖は、少なくとも1つの不一致を含んでもよく、用語「不一致」は、二本鎖中の一対のヌクレオチドがワトソン-クリック結合を起こすことができないことを意味する。
【0313】
本明細書で使用される用語「ハイブリダイズ条件」は、典型的には、約1M未満の塩濃度を含み、より一般的には約500mM未満、さらにより一般的には約200mM未満の塩濃度を包含する。ハイブリダイズ温度は、5℃まで低くしてもよいが、典型的には22℃超、より典型的には約30℃超、多くの場合には約37℃超である。ハイブリダイズは、一般的には、厳密な条件で、例えば、プローブがその標的検体に特異的にハイブリダイズする条件で実施される。この厳密な条件は、配列に依存し、環境毎に異なる。より長い断片には、特定のハイブリダイズのために、より高いハイブリダイズ温度を必要とする可能性がある。相補鎖の塩基組成とその長さ、有機溶媒の存在、および塩基の不一致範囲などの他の要因がハイブリダイズの厳密性に影響を及ぼす可能性があるので、それらパラメーターの組合せは、いずれかの単独のパラメーターでの無条件の測定よりも重要となる。特定のハイブリダイズ条件は、標的結合ドメインの全長と標的検体の間に二本鎖の生成を促進する。その他のハイブリダイズ条件は、標的結合ドメインの特定の部分のみに沿って、二本鎖の生成を促進する。
【0314】
本開示の方法および組成物の側面によっては、プローブは、直接的にまたは間接的に識別子オリゴヌクレオチドに連結される標的結合ドメインを含んでもよい。プローブとの関連では、識別子オリゴヌクレオチドは、そのプローブの標的結合ドメインに結合する標的検体を識別する核酸配列を含むポリヌクレオチドである。すなわち、識別子オリゴヌクレオチドは、識別子オリゴヌクレオチドが付加している標的結合に結合した特定の標的検体に先験的に割り当てられる特定の核酸配列を含む。非限定的な例では、「標的検体X」を空間的に検出するように設計された「プローブX」と命名されたプローブは、「識別子オリゴヌクレオチドX」と命名された識別子オリゴヌクレオチドに連結された「標的結合ドメインX」と命名された標的結合ドメインを含む。標的結合ドメインXは標的検体Xに結合し、識別子オリゴヌクレオチドXは、標的検体Xに対応する「核酸配列X」と命名された核酸配列を含む。したがって、本開示の方法を実施する当業者が試料中の対象領域から解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取し、その配列決定後に核酸配列Xを得たのなら、当業者には、その対象領域に標的検体Xが存在したことが分かることになる。核酸配列Xの量または配列決定での読取り数値を用いて、対象領域内の標的検体Xの量を絶対的または相対的な表現で決定できる。
【0315】
本明細書で使用される用語「増幅プライマー結合部位」は、その最も広い意味で使用されて、少なくとも1つの増幅プライマーに相補的または少なくとも部分的に相補的な核酸配列を指し、この増幅プライマーは、例えばPCRによるDNAおよび/またはRNAの合成を刺激するのに十分である短い一本鎖または部分的に一本鎖のオリゴヌクレオチドである。
【0316】
本開示の方法および組成物の側面によっては、標的結合ドメインは、切断可能なリンカーによって識別子オリゴヌクレオチドに連結されてもよい。適切な切断性リンカーとして、限定はされないが、化学切断性リンカー(例えば、特定の化学物質、あるいは化学物質または反応条件の組合せに曝されると切断されるリンカー)、光切断性リンカー(例えば、十分な波長の光または十分な波長範囲を含む光に曝されると切断されるリンカー)、または酵素切断性リンカー(例えば、特定の酵素または酵素類によって切断されるリンカー)が挙げられる。したがって、本明細書で使用される「識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加えること」という語句は、その最も広い意味で使用されて、対象領域内の標的検体に結合する任意のプローブに対して、プローブの標的結合ドメインとプローブの識別子オリゴヌクレオチドとの間のリンカーが切断され、それにより識別子オリゴヌクレオチドは標的結合ドメインから分離されて識別子オリゴヌクレオチドをその後に溶液から採取できるように、試料内の特定の対象領域内の状態を変更することを説明している。例えば、プローブが標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間に化学切断性リンカーを含む側面では、識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加えることは、試料のその位置を特定の化学物質、あるいはリンカーの切断を触媒する化学物質または反応条件の組合せに曝すことを含んでもよい。別の非限定的な例で、プローブが標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間に光切断性リンカーを含む側面では、識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加えることは、光切断性リンカーを切断可能とするのに十分な波長の光を用いて、試料のその位置を曝露/励起することを含んでもよい。別の非限定的な例で、プローブが標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドとの間に酵素切断性リンカーを含む側面では、識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加えることは、リンカーの切断を触媒するのに十分な酵素の量に、試料のその位置を曝すことを含んでもよい。
【0317】
識別子オリゴヌクレオチドを解放するのに十分な力を試料の位置に加えると、試料のその位置内の標的検体に結合する約10%以上、または約20%以上、または約30%以上、または約40%以上、または約50%以上、または約60%以上、または約70%以上、または約80%以上、または約85%以上、または約90%以上、または約95%以上、または約99%以上のプローブが、標的結合ドメインと識別子オリゴヌクレオチドを連結するリンカーの切断を被ることになる。
【0318】
当業者には分かっているように、用語「固有の分子識別子」または「UMI」は、配列決定反応の前に核酸増幅によって引き起こされる偏り量を測定しかつ低減するのに用いられる短い核酸配列を指す。
【0319】
本開示の方法および組成物の側面によっては、親和性部分は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、核酸、またはそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0320】
本開示の方法および組成物の側面によっては、プローブは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、または少なくとも約200ヌクレオチドを含んでもよい。
【0321】
本開示の方法および組成物の側面によっては、標的結合ドメインは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、または少なくとも約200ヌクレオチドを含んでもよい。
【0322】
本開示の方法および組成物の側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、または少なくとも約200ヌクレオチドを含んでもよい。
【0323】
本開示の方法および組成物の側面によっては、増幅プライマーは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、または少なくとも約200ヌクレオチドを含んでもよい。
【0324】
本開示の方法および組成物の側面によっては、核酸プローブは、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190、または少なくとも約200ヌクレオチドを含んでもよい
【0325】
本開示の方法および組成物の側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸は、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、または少なくとも約100ヌクレオチドを含んでもよい。
【0326】
本開示の方法および組成物の側面によっては、分子識別子を含む核酸配列は、少なくとも約5、または少なくとも約10、または少なくとも約15、または少なくとも約20、または少なくとも約25、または少なくとも約30、または少なくとも約35、または少なくとも約40、または少なくとも約45、または少なくとも約50ヌクレオチドを含んでもよい。
【0327】
本開示の方法および組成物の側面によっては、増幅プライマー結合部位は、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、または少なくとも約70ヌクレオチドを含んでもよい。
【0328】
本開示の方法および組成物の側面によっては、配列決定に適するフローセルアダプター配列は、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、または少なくとも約100ヌクレオチドを含んでもよい。
【0329】
本開示の方法および組成物の側面によっては、フローセル結合部位は、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約95、または少なくとも約100ヌクレオチドを含んでもよい。
【0330】
本開示の方法および組成物の側面によっては、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列は、少なくとも約5、または少なくとも約10ヌクレオチド、または少なくとも約15、または少なくとも約20、または少なくとも約25、または少なくとも約30、または少なくとも約35、または少なくとも約40、または少なくとも約45、または少なくとも約50ヌクレオチドを含んでもよい。
【0331】
本開示の方法および組成物の側面によっては、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列は、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約95、または少なくとも約100ヌクレオチドを含んでもよい。
【0332】
本開示の方法および組成物の側面によっては、プローブ、標的結合ドメイン、識別子オリゴヌクレオチド、増幅プライマー、核酸プローブ、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、分子識別子を含む核酸配列、増幅プライマー結合部位、フローセルアダプター配列、フローセル結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、またはそれらの任意の組合せは、少なくとも1つの天然塩基を含んでもよく、天然塩基を含まなくてもよく、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたは核酸類似体を含んでもよく、修飾ヌクレオチドまたは核酸類似体を含まなくてもよく、少なくとも1つのユニバーサル塩基を含んでもよく、ユニバーサル塩基を含まなくてもよく、少なくとも1つの縮重塩基を含んでもよく、または縮重塩基を含まなくてもよい。
【0333】
本開示の方法および組成物の側面によっては、プローブ、標的結合ドメイン、識別子オリゴヌクレオチド、増幅プライマー、核酸プローブ、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸、分子識別子を含む核酸配列、増幅プライマー結合部位、フローセルアダプター配列、フローセル結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された組織試料の特定の位置を識別する核酸配列、標的結合ドメインに結合した標的検体を識別する固有の核酸配列、またはそれらの任意の組合せは、天然塩基(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の天然塩基)、修飾ヌクレオチドまたは核酸類似体(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の修飾ヌクレオチドまたは類似体ヌクレオチド)、ユニバーサル塩基(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のユニバーサル塩基)、または縮重塩基(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の縮重塩基)の任意の組合せを含んでもよい。組合せにより存在する場合には、天然塩基、修飾ヌクレオチドまたは核酸類似体、ユニバーサル塩基、および縮重塩基は、任意の順序で配列させてもよい。
【0334】
用語「修飾ヌクレオチド」または「核酸類似体」には、限定はされないが、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、プロピン修飾核酸、zip核酸(ZNA(登録商標))、イソグアニン、およびイソシトシンが包含される。好ましくは、修飾ヌクレオチドまたは核酸類似体はロックド核酸(LNA)である。
【0335】
本明細書で使用される用語「ロックド核酸(LNA)」には、限定はされないが、リボース部分が2’酸素および4’炭素を連結するメチレン架橋を含む修飾RNAヌクレオチドが包含される。このメチレン架橋は、A型RNA二本鎖に見られる、ノース確認部とも呼ばれる3’内確認部にリボースを固定する。用語「隔絶RNA」はLNAと互換的に使用できる。本明細書で使用される用語「架橋核酸(BNA)」は、限定はされないが、ノース確認部としても知られる固定3’内確認部を有する5員または6員の架橋構造を含む修飾RNA分子を包含する。架橋構造は、リボースの2’酸素をリボースの4’炭素に連結する。炭素原子、窒素原子、および水素原子を含む様々な異なる架橋構造が可能となる。本明細書で使用される用語「プロピン修飾核酸」は、限定はされないが、核酸塩基のC5位にプロピン修飾を含むピリミジン、すなわちシトシンおよびチミン/ウラシルを包含する。本明細書で使用される用語「zip核酸(ZNA(登録商標))」は、限定はされないが、カチオン性スペルミン部分と共役しているオリゴヌクレオチドを包含する。
【0336】
本明細書で使用される用語「ユニバーサル塩基」は、限定はされないが、ワトソン-クリックの塩基対の規則に従わずに、むしろ標的核酸に位置する4つの標準塩基(A、T/U、C、G)のうちのいずれかに結合できるヌクレオチド塩基を包含する。本明細書で使用される用語「縮重塩基」は、限定はされないが、ワトソン-クリックの塩基対の規則に従わずに、むしろ4つの標準塩基(A、T/U、C、G)のうちの4つすべてではないが少なくとも2つに結合できるヌクレオチド塩基を包含する。縮重塩基は、ゆらぎ塩基とも呼ばれ、これら用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0337】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈にそうでないことを明示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0338】
本明細書で使用される用語「または」は、具体的に記載されるか、または文脈に明示されない限り、包括的であると理解され、「または」および「および」の両方を含む。
【0339】
本明細書で使用される用語「約」は、具体的に記載されるか、または文脈に明示されない限り、当技術分野での通常の許容範囲以内、例えば平均の2標準偏差以内であると解釈される。「約」は、記載値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%と解釈してもよい。文脈からそうでないことが明確でない限り、本明細書に提供されるすべての数値は、用語「約」によって加減されている。
【0340】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者が通常に解釈するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の他のプローブ、組成物、方法、およびキットを本開示の実施に使用できるが、本明細書には好ましい材料および方法が記載されている。なお、本明細書で使用される用語は、特定の側面の説明のみを目的としており、限定を意図するものではない。
【実施例0341】
実施例1:96個の多重化試料用の二末端アダプター連結法
【0342】
この実施例では、本開示の二末端アダプター連結法を用いて、96個の多重化試料から採取された識別子オリゴヌクレオチドを配列決定した。この実験で用いた核酸アダプターは部分的に二本鎖であった。この核酸アダプターは第1の鎖および第2の鎖を含んでいた。第1の鎖は連結用の5’リン酸部分を含んでいた。第1の鎖はまた、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列(GCGTAGTG)、固有の分子識別子を含む核酸配列、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する固有の核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位(配列番号2)を含んでいた。第2の鎖は、3’末端に単一の突出チミンヌクレオチド、第1の鎖内に存在する連結の偏りを最小にするための定常核酸配列に相補的な配列、第1の鎖内に存在する識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する固有の核酸配列に相補的な配列、および第2の増幅プライマー結合部位(配列番号1)を含んでいた。
【0343】
部分的に二本鎖の核酸アダプターを生成するために、第1の鎖のオリゴヌクレオチドおよび第2の鎖のオリゴヌクレオチドを等モル比で組合せて、50mMのNaClを含む緩衝液中で28μMの総オリゴヌクレオチド最終濃度を得た。オリゴヌクレオチド混合液を95℃で2分間加熱し、周囲温度で30分間冷却し、それにより第1の鎖と第2の鎖のオリゴヌクレオチドを共にアニールして、部分的に二本鎖の核酸アダプターを生成した。アニールした核酸アダプターを、pH8の10mMのTrisと0.05%のTween20の溶液中で、0.02μM~0.002μMの範囲の最終濃度になるように希釈した。
【0344】
採取された識別子オリゴヌクレオチドを、補正された手順によりIllumina用のNEBNext Ultra II DNA Library Prep Kit(New England Biolabs)を用いて、末端修復およびA付加処理を実施した。末端修復/A付加処理用のマスターミックスは、627.8μLのPCR等級のH2O、143.9μLのNEBNext Ultra II End Prepの反応緩衝液、61.7μLのNEBNext Ultra II End Prepの酵素ミックスを組合わせて調製した。8.3μLの末端修復/A付加処理用のマスターミックスを、4μLの識別用オリゴヌクレオチドの各試料に添加した。75℃超に加熱した蓋をして、反応物を20℃で30分間培養し、その後に65℃で30分間第2の培養を実施した。次に修復/A付加処理した識別子オリゴヌクレオチド混合液を4℃で保存した。
【0345】
末端修復およびA付加処理に続いて、修復/A付加処理した識別子オリゴヌクレオチド混合液のそれぞれに、6.4μLのNEBNext Ultra II連結マスターミックス、0.2μLのNEBNext連結エンハンサー、および1μLの核酸アダプター希釈液を添加して、核酸アダプターを修復/A付加処理した識別子オリゴヌクレオチドに連結した。これらの反応物を、加熱した蓋を外して20℃で15分間培養し、続いて1μLの0.5MのEDTAにより停止した。次にすべての反応物を、15mLの1本の円錐管に貯蔵して、貯蔵アダプター連結試料を作製した。
【0346】
貯蔵アダプター連結試料を、希釈したAgencourt AMPure XP磁気ビーズ(Beckman Coulter Genomics Inc.)を用いて精製した。この磁気ビーズは、350μLのAMPure XPビーズおよび3.15mLのAMPure XP緩衝液(2.5MのNaCl、20%のPEG8000)を組合わせて調製した。AMPure XPビーズ精製を、3.5mLの希釈AMPure XPビーズを用いて実施し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む200μLの緩衝液中に溶出した。次にAMPure XPビーズ精製を、400μLのAMPure XPビーズを用いて繰り返し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液中に溶出して、精製アダプター連結試料を得た。
【0347】
AMPure XP精製に続いて、精製アダプター連結試料を用いたPCR反応を調製して、アダプター連結識別子オリゴヌクレオチドを増幅した。6μLの精製アダプター連結試料に、10μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス、0.2μLの100μMの順方向および逆方向プライマー、および3.6μLのPCR等級のH
2Oを添加した。順方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および核酸アダプターの第1の鎖に位置する第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。用いた順方向プライマーの配列を表1に示す。
表1.二末端アダプター連結用の順方向プライマー
【表1】
【0348】
逆方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および核酸アダプターの第2の鎖に位置する第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。用いた逆方向プライマーの配列を表2に示す。
表2.両末端アダプター連結用の逆方向プライマー
【表2】
【0349】
PCRサイクルの最適な回数を、3通りのPCR反応により経験的に決定した。あるいは、リアルタイム/qPCRを用いてPCRサイクルの最適な回数を決定することもできた。用いたPCRプログラムは、以下の工程を含んだ。(1)98℃で30秒(2)98℃で10秒(3)65℃で1分(4)(2)と(3)を9回繰返す(5)65℃で5分
【0350】
増幅産物を、18μLのAMPure XPビーズを用い、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液で溶出して精製した。
【0351】
増幅産物を、2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)での高感度DNA片およびIlluminaプラットフォーム用のKAPA Library Quantification Kit(Kapa Biosystems)を用いて検定した。増幅産物をまた、15pMまで希釈して、ヌクレオチド配列ACACTCTTTAAGACGACGTCGCTATGGCCTCTCC(配列番号25)を含む特注のスパイクインプライマーを用いて、製造元の指示書(MiSeq Reagent Kit v3 2×75bp)に従ってMiSeq(Illumina)で配列決定した。
【0352】
実施例2:96個の多重化試料用の一末端アダプター連結法
【0353】
この実施例では、本開示の一末端アダプター連結法を用いて、96個の多重化試料から採取された識別子オリゴヌクレオチドを配列決定した。この実験で用いた核酸アダプターは部分的に二本鎖であった。核酸アダプターは第1の鎖および第2の鎖を含んでいた。第1の鎖は連結用の5’リン酸部分を含んでいた。第1の鎖はまた、連結の偏りを最小にするための定常核酸配列(CACTACGC)、固有の分子識別子を含む核酸配列、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する固有の核酸配列、および第1の増幅プライマー結合部位(配列番号1)を含んでいた。第2の鎖は、3’末端に単一の突出チミンヌクレオチド、第1の鎖内に存在する連結の偏りを最小にするための定常核酸配列に相補的な配列、および第1の鎖内に存在する識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する固有の核酸配列に相補的な配列を含んでいた。
【0354】
部分的に二本鎖の核酸アダプターを生成するために、第1の鎖のオリゴヌクレオチドおよび第2の鎖のオリゴヌクレオチドを等モル比で組合せて、50mMのNaCl中で28μMの総オリゴヌクレオチド最終濃度を得た。オリゴヌクレオチド混合液を95℃で2分間加熱し、周囲温度で30分間冷却し、それにより第1の鎖と第2の鎖のオリゴヌクレオチドを共にアニールして、部分的に二本鎖の核酸アダプターを生成した。アニールした核酸アダプターを、pH8の10mMのTrisと0.05%のTween20の溶液中で、0.02μM~0.002μMの範囲の最終濃度になるように希釈した。
【0355】
採取した識別子オリゴヌクレオチドの各試料に10μLの2X高速連結緩衝液(Enzymatics)、1μLのT4 DNA高速連結酵素(Enzymatics)、および1μLのアニールした核酸アダプター希釈液を添加して、核酸アダプターを採取した識別子オリゴヌクレオチドに連結した。加熱された蓋を外して試料を20℃で15分間培養し、続いて1μLの0.5MのEDTAにより停止した。次にすべての反応物を1本の15mLの円錐管に貯蔵して、貯蔵アダプター連結試料を生成した。
【0356】
貯蔵アダプター連結試料を、希釈したAgencourt AMPure XP磁気ビーズ(Beckman Coulter Genomics Inc.)を用いて精製した。この磁気ビーズは、350μLのAMPure XPビーズおよび3.15mLのAMPure XP緩衝液(2.5MのNaCl、20%のPEG8000)を組合わせて調製した。AMPure XPビーズ精製を、3.5mLの希釈AMPure XPビーズを用いて実施し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む200μLの緩衝液中に溶出した。次にAMPure XPビーズ精製を、400μLのAMPure XPビーズを用いて繰り返し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液中に溶出して、精製アダプター連結試料を得た。
【0357】
AMPure XP精製に続いて、精製アダプター連結試料を用いたPCR反応を調製して、アダプター連結識別子オリゴヌクレオチドを増幅した。6μLの精製アダプター連結試料に、10μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス、0.2μLの100μMの順方向および逆方向プライマー、および3.6μLのPCR等級のH
2Oを添加した。順方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および核酸アダプターの第1の鎖に位置する第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。用いた順方向プライマーの配列を表3に示す。
表3.二末端アダプター連結用の順方向プライマー
【表3】
【0358】
逆方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および核酸アダプターの第2の鎖に位置する第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。用いた逆方向プライマーの配列を表4に示す。
表4.二末端アダプター連結用の逆方向プライマー
【表4】
【0359】
PCRサイクルの最適な回数を、3通りのPCR反応により経験的に決定した。あるいは、リアルタイム/qPCRを用いて、PCRサイクルの最適な回数を決定することもできた。用いたPCRプログラムは、以下の工程を含んだ。(1)98℃で30秒(2)98℃で10秒(3)65℃で1分(4)(2)と(3)を9回繰返す(5)65℃で5分
【0360】
増幅産物を、18μLのAMPure XPビーズを用い、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液で溶出して精製した。
【0361】
増幅産物を、2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)での高感度DNA片およびIlluminaプラットフォーム用のKAPA Library Quantification Kit(Kapa Biosystems)を用いて評価した。増幅産物をまた、15pMまで希釈して、ヌクレオチド配列ACACTCTTTAAGACGACGTCGCTATGGCCTCTCC(配列番号25)を含む特注のスパイクインプライマーを用いて、製造元の指示書(MiSeq Reagent Kit v3 2×75bp)に従ってMiSeq(Illumina)により配列決定した。
【0362】
実施例3:96個の多重化試料用の鋳型プライマー伸長法
【0363】
この実施例では、本開示の鋳型プライマー伸長法を用いて、96個の多重化試料から採取した識別子オリゴヌクレオチドを配列決定した。この例で用いられる一本鎖核酸鋳型は、3’ビオチン部分、採取した識別子オリゴヌクレオチドに存在する固有の核酸配列に相補的な領域、固有の分子識別子を含む核酸配列、および第2の増幅プライマー結合配列(GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT、配列番号26)を含んでいた。この実施例で用いた一本鎖核酸鋳型の配列を表5に示す。
表5.鋳型プライマー伸長法用の一本鎖核酸鋳型
【表5-1】
【表5-2】
【0364】
一本鎖核酸鋳型は、Integrated DNA Technologies, Inc.から取り寄せて、NanoDrop 1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量した。個々の一本鎖核酸鋳型を標準濃度に正規化し、その後等モルにして貯蔵した。一本鎖核酸鋳型の貯蔵物を、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む緩衝液中に0.83nMまで希釈した。
【0365】
採取した識別子オリゴヌクレオチドを、一本鎖核酸鋳型にハイブリダイズし、2μLの識別子オリゴヌクレオチドの各試料に10μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス(New England Biolabs)、4μLの希釈した一本鎖核酸鋳型貯蔵物、および4μLのH2Oを添加して伸長した。以下のPCRプログラムを使用して、識別子オリゴヌクレオチドを伸長した。
(1)98℃で30秒、10回
(2)98℃で1分、
(3)68℃で1分
(4)72℃で1分
(5)工程(2)~(4)を10回繰返す
(6)72℃で2分
【0366】
伸長産物を4℃で保存した。ストレプトアビジン磁性ビーズ(MyOne Streptavidin C1 beads, Thermo Fisher Scientific)を1X Binding and Washing Buffer(5mMのTris-HCl、0.5mMのEDTA、1MのNaCl)で洗浄し、5μLのストレプトアビジンビーズを各伸長産物試料に添加した。伸長産物試料を、軌道型攪拌器でビーズと共に最短15分間培養した。培養後に、試料を95℃で3分間加熱し、磁気皿に移した。十分にビーズとペレット化した直後に上清を抽出して、精製した伸長産物試料を得た。
【0367】
7.5μLの精製伸長産物試料のそれぞれに、12.5μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス、0.25μLの100μMの順方向プライマー、1μLの25μMの逆方向プライマー、および3.8μLのPCR等級のH
2Oを添加して、この精製伸長産物試料を増幅した。順方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および識別子オリゴヌクレオチドに位置する第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。この例で用いた順方向プライマーの配列を表6に示す。
表6.鋳型プライマー伸長法用の順方向プライマー
【表6】
【0368】
逆方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および一本鎖核酸鋳型に位置する第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。用いた逆方向プライマーの配列を表7に示す。
表7.鋳型プライマー伸長法用の逆方向プライマー
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【0369】
精製伸長産物を増幅するのに使用されるPCRプログラムは、以下の工程を含んでいた。
(1)98℃で30秒
(2)98℃で10秒
(3)65℃で30秒
(4)72℃で30秒
(5)工程(2)~(4)を18回繰り返す
(6)72℃で2分
【0370】
増幅伸長産物を4℃で保存した。4μLの各PCR反応液を、1個の貯蔵物当たりに24個の試料からなる4個の貯蔵物としてまとめた。
【0371】
貯蔵PCR反応液を、希釈したAgencourt AMPure XP磁性ビーズ(Beckman Coulter Genomics Inc.)を用いて精製した。この磁気ビーズは、100μLのAMPure XPビーズおよび400μLのAMPure XP緩衝液(2.5MのNaCl、20%のPEG8000)を組合わせて調製した。精製を76.8μLの希釈AMPure XPビーズを用いて実施し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液中に溶出した。ビーズをそのまま留めて、精製工程を24μLのAMPure XP緩衝液を用いて繰り返し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液中に溶出した。
【0372】
精製PCR産物を、2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)での高感度DNA片およびIlluminaプラットフォーム用のKAPA Library Quantification Kit(Kapa Biosystems)を用いて評価した。精製PCR産物をまた、15pMまで希釈して、ヌクレオチド配列ACACTCTTTAAGACGACGTCGCTATGGCCTCTCC(配列番号25)を含む特注のスパイクインプライマーを用いて、製造元の指示書(MiSeq Reagent Kit v3 2×75bp)に従ってMiSeq(Illumina)により配列決定した。
【0373】
実施例4:96個の多重化試料用の長プローブハイブリダイズ法
【0374】
この実施例では、本開示の長プローブハイブリダイズ法を使用して、96個の多重化試料から採取した識別子オリゴヌクレオチドを配列決定した。この例では、第1の核酸プローブは、5’リン酸部分、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列、i7配列(配列番号1)を含む第1の増幅プライマー結合部位、識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する固有の核酸配列、およびP7フローセルアダプター配列(配列番号4)を含む。第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、i5配列(配列番号2)を含む第2の増幅プライマー結合部位、およびP5フローセルアダプター配列(配列番号3)を含む。
【0375】
第1および第2の核酸プローブは、Integrated DNA Technologies, Inc.から取り寄せて、NanoDrop 1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量した。個々の核酸プローブを標準濃度に正規化し、等モルにして貯蔵し、かつpH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む緩衝液中に0.83nMまで希釈した。核酸プローブおよび識別子オリゴヌクレオチドを、0.5μLの希釈した核酸プローブ貯蔵物と試料溶液から採取した2μLの識別子オリゴヌクレオチドの混合液とを50mMのNaClを含む緩衝液中で組合せてハイブリダイズした。この混合液を95℃で2分間加熱し、周囲温度で30分間冷却して、アニール済みの識別子オリゴヌクレオチド-核酸プローブ混合液を生成した。
【0376】
第1および第2の核酸プローブは隣接せずにかつ重ならないように、第1および第2の核酸プローブが識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする場合には、間隙伸長反応を実施した。2.5μLのアニール済みの識別子オリゴヌクレオチド-核酸プローブ混合液のそれぞれに、3.8μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックスおよび1.3μLのPCR等級のH2Oを加えた。次に混合液を以下の間隙伸長の温度サイクルに供した。(1)98℃で30秒
(2)98℃で1分
(3)68℃で1分
(4)72℃で1分
(5)工程(2)~(4)を10回繰り返す
(6)72℃で2分
【0377】
次に間隙伸長産物を4℃で保存した。続いて1μLの間隙伸長産物に、10μLの2X高速連結緩衝液(Enzymatics)、1μLのT4 DNA高速連結酵素(Enzymatics)、および8μLのPCR等級のH2Oを加えて、第1および第2の核酸プローブを共に連結した。これらの連結反応液を20℃で15分間培養した後に、1μLの0.5MのEDTAにより停止して、1本の15mLの円錐管に貯蔵した。
【0378】
第1および第2の核酸プローブは隣接しているが重ならないように第1および第2の核酸プローブが識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする場合には、ニック修復連結反応を実施した。2.5μLのアニール済みの識別子オリゴヌクレオチド-核酸プローブ混合液のそれぞれに、10μLの2X高速連結緩衝液(Enzymatics)、1μLのT4 DNA高速連結酵素(Enzymatics)、および1μLのPCR等級のH2Oを加えた。これらの連結反応液を20℃で15分間培養した後に、1μLの0.5MのEDTAにより停止して、1本の15mLの円錐管に貯蔵した。
【0379】
次に停止した連結反応液の貯蔵物を、希釈したAgencourt AMPure XP磁気ビーズ(Beckman Coulter Genomics Inc.)を用いて精製した。この磁気ビーズは、350μLのAMPure XPビーズおよび3.15mLのAMPure XP緩衝液(2.5MのNaCl、20%のPEG8000)を組合わせて調製した。精製を3.5mLの希釈AMPure XPビーズを用いて実施し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む200μLの緩衝液中に溶出した。次に、AMPure XPビーズの精製を400μLのAMPure XPビーズにより繰り返し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液中に溶出した。
【0380】
精製連結産物を増幅するために、精製連結産物およびプライマーを有するPCR反応液を調製した。6μLの精製連結産物に、10μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス、0.2μLの100μMの順方向プライマー(CAAGCAGAAGACGGCATACGA、配列番号153)ならびに逆方向プライマー(AATGATACGGCGACCACCGA、配列番号154)、および3.6μLのPCR等級のH2Oを加えた。精製伸長産物を増幅するのに使用されるPCRプログラムは、以下の工程を含んだ。
(1)98℃で30秒
(2)98℃で10秒
(3)65℃で30秒
(4)72℃で30秒
(5)工程(2)~(4)を18回繰り返す
(6)72℃で2分
【0381】
増幅産物を4℃で保存した。4μLのPCR反応液をそれぞれ、1個の貯蔵物当たり16個の試料となる6個の貯蔵物としてまとめた。増幅産物をさらに、64μLのAMPure XPビーズによるAMPure XPビーズ精製を用いて、かつpH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液に溶出して精製した。
【0382】
精製増幅産物を、2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)での高感度DNA片およびIlluminaプラットフォーム用のKAPA Library Quantification Kit(Kapa Biosystems)を用いて評価した。精製増幅産物をまた、15pMまで希釈して、標準の配列決定プライマーまたは特注のスパイクインRead1プライマー(配列番号25)のいずれかを用いて、製造元の指示書(MiSeq Reagent Kit v3 2×75 bp)に従ってMiSeq(Illumina)により配列決定した。
【0383】
実施例5:96個の多重化試料用の短プローブハイブリダイズ法
【0384】
この実施例では、本開示の短プローブハイブリダイズ法を使用して、96個の多重化試料から採取した識別子オリゴヌクレオチドを配列決定した。この例では、第1の核酸プローブは、5’リン酸部分、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列、i7配列(配列番号1)を含む第1の増幅プライマー結合部位、および識別子オリゴヌクレオチドが解放された試料の特定の位置を識別する固有の核酸配列を含む。第2の核酸プローブは、識別子オリゴヌクレオチドの一部分に相補的な核酸配列、固有の分子識別子を含む核酸配列、およびi5配列(配列番号2)を含む第2の増幅プライマー結合部位を含む。
【0385】
第1および第2の核酸プローブは、Integrated DNA Technologies, Inc.から取り寄せて、NanoDrop 1000分光光度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量した。個々の核酸プローブを標準濃度に正規化し、等モルにして貯蔵し、かつpH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む緩衝液中で0.83nMまで希釈した。核酸プローブおよび識別子オリゴヌクレオチドを、0.5μLの希釈した核酸プローブ貯蔵物と試料溶液から採取した2μLの識別子オリゴヌクレオチドの混合液とを50mMのNaClを含む緩衝液中で組合せてハイブリダイズした。この混合液を95℃で2分間加熱し、周囲温度で30分間冷却して、アニール済みの識別子オリゴヌクレオチド-核酸プローブ混合液を生成した。
【0386】
第1および第2の核酸プローブは隣接せずにかつ重ならないように、第1および第2の核酸プローブが識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする場合には、間隙伸長反応を実施した。2.5μLのアニール済みの識別子オリゴヌクレオチド-核酸プローブ混合液のそれぞれに、3.8μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックスおよび1.3μLのPCR等級のH2Oを加えた。次に、混合液を以下の間隙伸長の温度サイクルに供した。
(1)98℃で30秒
(2)98℃で1分
(3)68℃で1分
(4)72℃で1分
(5)工程(2)~(4)を10回繰り返す
(6)72℃で2分
【0387】
次に、間隙伸長産物を4℃で保存した。続いて、1μLの間隙伸長産物に10μLの2X高速連結緩衝液(Enzymatics)、1μLのT4 DNA高速連結酵素(Enzymatics)、および8μLのPCR等級のH2Oを加えて、第1および第2の核酸プローブを共に連結した。これらの連結反応液を20℃で15分間培養した後に、1μLの0.5MのEDTAにより停止して、1本の15mLの円錐管内に貯蔵した。
【0388】
第1および第2の核酸プローブは隣接しているが重ならないように、第1および第2の核酸プローブが識別子オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする場合には、ニック修復連結反応を実施した。2.5μLのアニール済みの識別子オリゴヌクレオチド-核酸プローブ混合液のそれぞれに、10μLの2X高速連結緩衝液(Enzymatics)、1μLのT4 DNA高速連結酵素(Enzymatics)、および1μLのPCR等級のH2Oを加えた。これらの連結反応液を20℃で15分間培養した後に、1μLの0.5MのEDTAにより停止して、1本の15mLの円錐管内に貯蔵した。
【0389】
次に停止した連結反応液の貯蔵物を、希釈したAgencourt AMPure XP磁性ビーズ(Beckman Coulter Genomics Inc.)を用いて精製した。この磁性ビーズは、350μLのAMPure XPビーズおよび3.15mLのAMPure XP緩衝液(2.5MのNaCl、20%のPEG8000)を組合わせて調製した。精製を3.5mLの希釈AMPure XPビーズを用いて実施し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む200μLの緩衝液中に溶出した。次に、AMPure XPビーズの精製を400μLのAMPure XPビーズにより繰り返し、pH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液中に溶出した。
【0390】
精製連結産物を増幅するために、精製連結産物およびプライマーを有するPCR反応液を調製した。6μLの精製連結産物に、10μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス、0.2μLの100μMの順方向プライマーならびに逆方向プライマー、および3.6μLのPCR等級のH
2Oを添加した。順方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および核酸アダプターの第1の鎖に位置する第1の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。用いた順方向プライマーの配列を表8に示す。
表8.短プローブハイブリダイズ法用の順方向プライマー
【表8】
【0391】
逆方向プライマーは、配列決定に適するフローセルアダプター配列、固有の分子識別子、および核酸アダプターの第2の鎖に位置する第2の増幅プライマー結合部位に相補的な核酸配列を含んでいた。用いた逆方向プライマーの配列を表9に示す。
表9.短プローブハイブリダイズ法用の逆方向プライマー
【表9】
【0392】
精製伸長産物を増幅するのに使用されるPCRプログラムは、以下の工程を含んだ。
(1)98℃で30秒
(2)98℃で10秒
(3)65℃で30秒
(4)72℃で30秒
(5)工程(2)~(4)を18回繰り返す
(6)72℃で2分
【0393】
増幅産物をを4℃で保存した。4μLのPCR反応液をそれぞれ、1個の貯蔵物当たり16個の試料である6個の貯蔵物として纏めた。増幅産物をさらに、64μLのAMPure XPビーズによるAMPure XPビーズ精製を使用して、かつpH8の10mMのTrisおよび0.05%のTween20を含む20μLの緩衝液で溶出して精製した。
【0394】
精製増幅産物を、2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)での高感度DNA片およびIlluminaプラットフォーム用のKAPA Library Quantification Kit(Kapa Biosystems)を用いて評価した。精製増幅産物をまた、15pMまで希釈して、標準の配列決定プライマーまたは特注のスパイクインRead1プライマー(配列番号25)のいずれかを用いて、製造元の指示書(MiSeq Reagent Kit v3 2×75bp)に従ってMiSeq(Illumina)により配列決定した。
【0395】
実施例6:96個の多重化試料用の直接PCR法
【0396】
この実施例では、本開示の直接PCR法を使用して、96個の多重化試料から採取した識別子オリゴヌクレオチドを配列決定した。この例では、8種の順方向増幅プライマーおよび12種の逆方向増幅プライマーを用いた。順方向プライマーは、P5フローセルアダプター(配列番号3)、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドに存在する第1の増幅プライマー結合部位に相補的な領域を含んでいた。用いた順方向増幅プライマーの配列を表10に示す。
表10.直接PCR法用の順方向増幅プライマー
【表10】
【0397】
逆方向プライマーは、P7フローセルアダプター(配列番号4)、固有の分子識別子を含む核酸配列、および識別子オリゴヌクレオチドに存在する第2の増幅プライマー結合部位に相補的な領域を含んでいた。用いた逆方向増幅プライマーの配列を表11に示す。
表11.直接PCR法用の逆方向増幅プライマー
【表11】
【0398】
8種の順方向増幅プライマーおよび12種の逆方向増幅プライマーの場合に、一対の順方向プライマーおよび逆方向プライマーからの固有の分子識別子を組合せると、合計96個の固有の組合せを得ることができ、96試料の多重化が可能となる。
【0399】
配列決定用に採取した識別子オリゴヌクレオチドを増幅するために、採取した識別子オリゴヌクレオチドならびに順方向および逆方向増幅プライマーを有するPCR反応液を、2μLのそれぞれの識別子オリゴヌクレオチド試料、10μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス、2μLの10μMの順方向増幅プライマー、2μLの逆方向増幅プライマー、および4μLのPCR等級のH2Oとともに、96個のウェルプレートに調製した。96個のウェルプレート内の各ウェルには、識別子オリゴヌクレオチド試料ならびに順方向増幅プライマーおよび逆方向増幅プライマーの固有の組合せが含まれていた。使用したPCRプログラムは、以下の工程を含んだ。
(1)98℃で30秒
(2)98℃で10秒
(3)65℃で30秒
(4)72℃で30秒
(5)工程(2)~(4)を6~10回繰り返す。
(6)72℃で2分
【0400】
増幅産物を4℃で保存した。10μLのPCR反応液を、それぞれ1本の15mLの円錐管に貯蔵した。
【0401】
貯蔵されたPCR反応液を、希釈したAgencourt AMPure XP磁性ビーズ(Beckman Coulter Genomics Inc.)を用いて精製した。この磁性ビーズは、115.2μLのAMPure XPビーズと1036.8μLのAMPure XP緩衝液(2.5MのNaCl、20%のPEG8000)を組合せて調製した。精製を1152μLの希釈したAMPure XPビーズにより実施し、pH8の10mMのTrisを含む60μLの緩衝液中に溶出した。精製工程を60μLのAMPure XPビーズにより繰返し、pH8の10mMのTrisを含む70μLの緩衝液中に溶出した。
【0402】
AMPure XP精製に続いて、ユニバーサルプライマーを有するPCR反応液を、9μLの貯蔵された直接PCR産物、15μLのNEBNext Ultra II Q5マスターミックス、3μLの10μMのユニバーサルP7プライマー(配列番号153)、および2μLの10μMのユニバーサルP5プライマー(配列番号154)を用いて調製した。使用したPCRプログラムは以下の通りである。
(1)98℃で30秒
(2)98℃で10秒
(3)65℃で30秒
(4)72℃で30秒
(5)工程(2)~(4)を15~24回繰り返す
(6)72℃で2分
【0403】
2回のAMPure XPビーズ精製を実施した。1回目は、30μLのビーズで実施して、pH8の10mMのTrisを含む20μLの緩衝液により溶出し、2回目は、20μLのビーズで実施して、pH8の10mMのTrisを含む11μLの緩衝液により溶出した。
【0404】
これらの精製PCR産物を、2100 Bioanalyzer(Agilent Genomics)での高感度DNA片を用いて評価した。精製PCR産物をまた希釈して、特注のスパイクインプライマー(配列番号25)を用いて、製造元の指示書(MiSeq Reagent Kit v3 2×75bp)に従ってMiSeq(Illumina)により配列決定した。
【0405】
実施例7:FFPE試料中の標的検体の空間的検出
【0406】
本発明の方法を使用して、炎症を起こしたヒト扁桃腺組織のFFPE切片試料中の、標的タンパク質および標的RNAを含む複数の異なる標的検体を空間的に検出した。
【0407】
一実験では、炎症を起こしたヒト扁桃腺組織のFFPE断片から切断された2個の連続切片で、本開示の方法を使用して30種の異なる標的タンパク質を空間的に検出した。30種の標的タンパク質を表12に示す。30種の標的タンパク質には、陰性対照としてIgGウサギアイソタイプおよびIgGマウスアイソタイプを含み、これらの標的タンパク質は、炎症を起こしたヒト扁桃腺試料に存在すべきものではなく、したがって検出されるべきものではない。
表12.標的タンパク質
【表12】
【0408】
30種の標的タンパク質を空間的に検出するために、本開示の30個の異なるプローブが用いられた。それぞれのプローブは、表12の30種の標的タンパク質のうちの1つに特異的に結合する抗体を含む標的結合ドメインを含んでいた。2個の連続切片を、30個の異なるプローブのうちの大部分と接触させた。次に96個の対象領域(ROI)を特定した。各ROIでは、ROIをUV光で照射して、ROI内で結合したプローブから識別子オリゴヌクレオチドを解放した。続いて解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取し、本開示の短プローブハイブリダイズ法を使用して識別し、それにより2個の連続切片中の30種の標的タンパク質を空間的に検出した。
図21に示すように、2個の連続切片の各ROI中の標的タンパク質ごとの読取り数値はよく相関していて、この方法が再現性のある結果を導くことを示していた。
【0409】
第2の実験では、炎症を起こしたヒト扁桃腺組織のFFPE断片から切断した2個の異なる連続切片で、本開示の方法を使用して20種の異なる標的RNAを空間的に検出した。20種の異なる標的RNAを表13に示す。20種の標的RNAには、試料中に検出されるべきものではない6種の陰性対照(陰性プローブ)を含んでいた。
表13.標的RNA
【表13】
【0410】
20種の標的RNAを空間的に検出するために、本開示の20個の異なるプローブが用いられた。それぞれのプローブは、20種の標的RNAのうちの1つの少なくとも一部分に相補的な核酸配列を含む標的結合ドメインを含んでいた。2個の連続切片を、20個の異なるプローブのうちの大部分と接触させた。次に96個の対象領域(ROI)を特定した。各ROIでは、ROIをUV光で照射して、ROI内で結合したプローブから識別子オリゴヌクレオチドを解放した。続いて解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取し、本開示の直接PCR法を使用して識別し、それにより2個の連続切片中で20種の標的RNAを空間的に検出した。
図22に示すように、2個の連続切片の各ROI中の標的RNAごとの読取り数値はよく相関していて、この方法が再現性のある結果を導くことを示していた。
【0411】
実施例8:蛍光染色されたFFPE試料中の標的タンパク質の空間的検出
【0412】
別の実験では、炎症を起こしたヒト扁桃腺組織の5μmのFFPE切片を4種の蛍光可視化マーカー、すなわち
図23の左の図に示す(1)CD3E(T細胞マーカー)、(2)PanCK(上皮細胞マーカー)、(3)Ki-67(増殖マーカー)、および(4)SYTO83(DNA染色)により染色した。次に染色されたFFPE切片を、実施例7で説明したように、30種の標的タンパク質を対象としたプローブと接触させた。
図23の左の図に示すように、96個の対象領域(ROI)を選択した。ROIはそれぞれ、直径500μmの円形であった。それぞれのROIでは、ROIをUV光で照射して、ROI内で結合したプローブから識別子オリゴヌクレオチドを解放した。続いて解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取し、本開示の短プローブハイブリダイズ法を使用して識別して、それによりFFPE切片内の30種の標的タンパク質を空間的に検出した。
図23の右側の図に示すように、PanCK、CD3E、およびKi67は、それら蛍光可視化マーカーと関連付いたROIで空間的に検出された。したがって、本開示の方法によって得られた結果は、既定の免疫組織化学的方法を使用して得られた結果と相関している。
【0413】
実施例9:FFPE試料中の標的RNAの空間的検出
【0414】
別の実験では、実施例7の説明のように、炎症を起こしたヒト扁桃腺組織のFFPE塊からの5μm切片を20種の標的RNAを対象したプローブと接触させた。次に96個の対象領域(ROI)を選択した。ROIはそれぞれ、直径500μmの円形であった。それぞれのROIでは、ROIをUV光で照射して、ROI内で結合したプローブから識別子オリゴヌクレオチドを解放した。続いて解放された識別子オリゴヌクレオチドを採取し、本開示の直接PCR法を使用して識別して、それにより2個の連続切片中の20種の標的RNAを空間的に検出した。次に、同一の炎症を起こしたヒト扁桃腺組織FFPE塊の20μm切片からのすべてのRNAを分離した。すべてのRNAを、NanoString nCounter(登録商標)システムを用いて分析した。
図24は、本開示の方法を使用して記録された11個の異なるRNA標的の平均カウント数が、nCounter(登録商標)システムを使用して記録された同一の11個の異なるRNA標的の平均カウント数とよく相関することを示している。したがって、本開示の方法を使用して得られた結果は、既定の直接検出方法を使用して得られた結果に相関している。
【0415】
実施例10:ROIの特定の部分領域での標的RNAの空間的検出
【0416】
別の実験では、実施例7の説明のように、炎症を起こしたヒト扁桃腺組織のFFPE塊からの5μm切片を30種の標的タンパク質を対象とするプローブと接触させた。同一の5μm切片はまた、4種の蛍光可視化マーカー、すなわち(1)CD3E(T細胞マーカー)、(2)PanCK(上皮細胞マーカー)、(3)Ki-67(増殖マーカー)、および(4)SYTO83(DNA染色)により染色された。
図25に示すように、48個の対象領域(ROI)を特定した。それぞれのROIでは、次に2個の部分領域を蛍光染色に基づいて識別した。
図25に示すように、PanCK(PanCK+)に対して陽性に蛍光染色されたROIの区域は、「腫瘍」部分領域と命名され、PanCKの蛍光染色が見られなかったROIの区域は、「微小環境」部分領域と命名された。それぞれのROIでは、腫瘍部分領域および微小環境部分領域を別々にUV光で照射して、PanCKの蛍光染色の強度に基づく特注のマスクを作成して、各部分領域内に結合したプローブから識別子オリゴヌクレオチドを解放した。解放された識別子オリゴヌクレオチドをさらに個別に採取した。続いて採取した識別子オリゴヌクレオチドを、本開示の短プローブハイブリダイズ法およびNanoString nCounter(登録商標)システムを使用して分析した。
図25の下部の図に示すように、NanoString nCounter(登録商標)システムおよび本開示の短プローブハイブリダイズ法を使用した両方の結果はよく相関していた。さらに腫瘍の部分領域では、微小環境の部分領域と比較して、PanCKが顕著に高い濃度で検出された。したがって、本開示の方法によって得られる空間的検出の結果は、既定の蛍光免疫組織化学的方法に一致していて、試料の極めて特異的な領域内での空間的検出が可能であることを示す。
【0417】
実施例11:96項目のヒト免疫腫瘍学パネル
【0418】
本発明の直接PCR法に使用するために、96項目のヒト免疫腫瘍学パネルを設計した。このパネルは、本開示の直接PCR法を使用して96個の異なるヒト標的RNAを空間的に検出するのに用いることができる複数のプローブを含んでいた。96個の標的RNAを表14に示す。
表14.標的RNA
【表14】
【0419】
全体として、パネルは928個の異なるプローブを含んでいた。それぞれのプローブは、第1の増幅プライマー結合部位を含む識別子オリゴヌクレオチド、固有の分子識別子を含む核酸配列、標的結合ドメインに結合した標的RNAを識別する固有の核酸配列、および第2の増幅プライマー結合部位を含んでいた。
図26は、パネルで用いられるプローブの概略図を示す。96個の標的RNAのそれぞれには、その標的RNAに直接的にまたは間接的にハイブリダイズする標的結合ドメインを含む928個のプローブ組のうちの少なくとも1個のプローブが存在していた。96個の標的RNAの大部分では、特定の標的RNAに直接的にまたは間接的にハイブリダイズする10個の異なるプローブが存在していた。
図27の上部の図に示すように、これらの10個の異なるプローブは、標的RNAの異なる位置に直接的にまたは間接的にハイブリダイズして、「タイリング」効果を生み出した。標的RNAに複数のプローブをタイリングすると、標的RNAのそれぞれが個別に複数回で検出されて、測定値の全体的な精度が向上する。例えば
図27の下部の図に示すように、10個のプローブが1本の標的RNAにタイリングされる場合に、プローブのうちの1個が誤って非常に多くの回数で検出される可能性があり(異常な多計数プローブ)、別のプローブが誤って非常に少ない回数で検出される可能性がある(異常な少計数プローブ)。しかし、他の8個のプローブは、同等の計数程度で検出できるので、解析中に2個の異常値は破棄した方がよく、8個のプローブからの信号を使用して標的RNAの存在量のより正確な測定値が得られる。
【0420】
928個のプローブの組は80個の陰性対照プローブも含んでいた。80個の陰性対照プローブのそれぞれは、標的結合ドメインがヒト試料内に存在するRNA分子に相補的にならないように、外部RNA標準コンソーシアム(the External RNA Controls Consortium)からの指針を用いて設計された、組換えされた非特異的核酸配列を含む標的結合ドメインを含んでいた。したがって、これらの80個の陰性対照プローブは分析中には検出されるべきものではない。
【0421】
96項目のヒト免疫腫瘍学パネルを用いて、組織マイクロアレイを分析した。組織マイクロアレイは、正常細胞型および癌性細胞型を含む、22種の一般的なヒト細胞株のFFPE試料を含んでいた。いくつかの細胞株を表15に示す。
【0422】
【0423】
組織マイクロアレイはまた、陰性対照として1個のマウス細胞株(3T3)を含んでいた。マイクロアレイ上のFFPE試料のそれぞれを、免疫腫瘍学パネル中の928個の異なるプローブの大部分と接触させた。
図28に示すように、各FFPE試料には、直径300μmの少なくとも3個の円形対象領域(ROI)を選択した。陰性対照として、FFPE試料を含まないマイクロアレイの領域にもROIを選択した(ガラス陰性対照)。それぞれのROIでは、ROIをUV光で照射して、ROI内で結合したプローブから識別子オリゴヌクレオチドを解放した。続いて解放した識別子オリゴヌクレオチドを採取し、本開示の直接PCR法を使用して識別して、それにより組織マイクロアレイ上の各FFPE試料中の96種の標的RNAを空間的に検出した。
【0424】
図29は、十分な読み取り深度がMiSeq v3フローセルを用いて達成されたことを示している。
図30の上部の図は、ガラス陰性対照ROIでは、標的RNAが空間的に検出されなかったことを示している。同様に
図30の下部の図は、陰性対照のマウス3T3のFFPE試料でも、標的RNAが殆ど検出されなかったことを示している。対照的に、
図31、33、および34に示すように、HEK293(ヒト胚性腎臓)のFFPE試料およびジャーカット(ヒトT細胞リンパ球)のFFPE試料で、特定の標的RNAが正常に検出された。
図31、33、および34では、「タイリングした(tiled)」プローブの集団が、AKT1、B2M、CD3E、HIF1A、PTEN、RPS6、STAT1、STAT2、STAT3、VEGF、PTPRC(CD45)、およびKRT1/10/18/19を含む特定の標的RNAに対して検出されたことを示している。これらの結果は、2つの異なる細胞株には特異的に転写される特定の標的RNAが存在することを示している。この実験の結果をまた、NanoString nCounterシステムを使用して検証して、採取した識別子オリゴヌクレオチドを識別した。
図27に示すように、本開示の直接PCR法を使用した結果は、NanoString nCounterシステムを使用して得られた結果と一致していた。